海賊たちの勇壮な踊りや強い絆が前面に押し出された、心躍るアドベンチャー大作となっており、殊にコンラッドに対してアリが見せる忠節は特長的だ。コンラッド役の遅沢佑介はリーダーにふさわしい堂々たる踊りを見せ、アリ役の伊坂文月は陽性のオーラと直向きなパワーでその場を盛り上げたり撹乱したり。一方、途中でコンラッドに反旗を翻すビルバント役の杉野慧は独特の陰影や鬱屈を踊りに昇華させ、卑劣なランケデム役の堀内將平は狡猾さを巧みに表すと共に軽やかな跳躍でも観客を魅了。それぞれに多彩な男性像を造形した。
一方、女性陣も負けてはいない。今回、神々しい輝きで観る者の心を引きつけたのは、メドーラ役の中村祥子。長い四肢を活かした伸びやかな踊りは息を飲むほど美しく、ヒロインに相応しい気高さに満ちている。また、グルナーラ役の小林美奈は、確かな技術に裏打ちされた、可憐で表情豊かな動きが光る。
奴隷となってランケデムやパシャを相手に繰り広げる踊りには、悲嘆と苦悩が滲み出て秀逸だった。コンラッド、メドーラ、アリが踊るパ・ド・トロワは活気にあふれ、会場の熱気も最高潮に。
前日に行われた囲み会見で熊川は「うちの海賊達はジャック・スパローズよりカッコいい」