名だたる古典バレエを自身のプロダクションとして生まれ変わらせてきた熊川哲也が、2017年、原作も音楽も存在しない全幕作品に挑み、熊川哲也の最高傑作と名高い「クレオパトラ」。この度、またとない最高のキャスティングで4年ぶりに上演いたします。このほど、タイトルロールの一人である日高世菜(※2)の公演ビジュアルとスポットが解禁となりました(※1)。また3年半ぶりの全幕出演であり、ジュリアス・シーザー役で本作に初登場となる熊川哲也からのメッセージも併せてお届けいたします。(※1)詳細URL: (※2)「高」は、はしごだか。メインビジュアル (C)Toru Hiraiwa絶世の美女の代名詞でありながらいまだ多くの謎に包まれているクレオパトラを、熊川が壮大な史実を紐解きオリジナルのストーリーを構築、全2幕にわたるグランド・バレエに仕立てました。作品の成功を大きく左右する音楽にはカール・ニールセンの楽曲を使用。舞台美術デザインにはメトロポリタン歌劇場やミラノ・スカラ座など世界の一流オペラ劇場の舞台を手がけるダニエル・オストリング。現代的感性が光る前田文子の衣裳。そして、クラシック・バレエの既成概念を大胆な創意で押し広げた熊川の振付。これらすべてが完璧なる融合を果たした、振付家・熊川哲也の最高傑作がこの「クレオパトラ」なのです。■熊川哲也、出演決定!今回の公演では、ジュリアス・シーザー役で熊川哲也の出演も決定し大きな話題に。ギリシャ・ローマの歴史を決定的に変えた政治家であり軍人という役所のシーザーは、クレオパトラの激動の人生におけるキー パーソン。圧巻の存在感を必要とされる役だけに、期待は尽きません。熊川哲也 (C)Toru Hiraiwa<ジュリアス・シーザー役にて初登場!芸術監督/熊川哲也コメント>「クレオパトラ」は、原作も音楽も存在しないところから産み出した、まさに“創作の真骨頂”ともいえる作品であり、私自身にとっても非常に特別なものです。ニールセンの音楽に出会い、演出が降ってきた瞬間から、極めて完璧に近い領域に到達したと感じ得た初日の舞台まで、この作品が誕生するまでの一刻一刻は、非常に満ち足りた時間でした。3度目の上演となる今回は、初演の奇跡を蘇らせてくれるであろう浅川紫織に加え、第二世代ともいえるキャストが揃います。容姿はもとより、バレエの形式美を超えて、各々のありのままの姿が顕になるこのタイトルロールを、彼女たちがいかに創り上げるか、ご期待ください。初演の2017年から5年の時が過ぎ、その間に私も節目を迎える歳となりました。「五十にして天命を知る」といわれますが、有限たる時において自らがすべきこととは何か――。自身の若い頃を振り返ると、ヌレエフと同じバーを握って稽古した日や、当時のスターと一緒に舞台に立った経験は、かけがえのない光景として脳裏に刻まれています。それを思うと、伸び盛りの若手と自分が舞台上で同じ空気を吸うことは、私が思う以上に彼らにとって意味あることであり、バレエに生かされた者として今なすべきことのひとつが“継承”であるという想いから、今回の出演を決断いたしました。この機会を後進のため、存分に生かしたいと思います。熊川哲也 Tetsuya Kumakawa ~芸術監督 Artistic Director of K-BALLET COMPANY~北海道生まれ。1987年、英国ロイヤル・バレエ学校に留学。89年、ローザンヌ国際バレエコンクールで日本人初の金賞受賞。同年、英国ロイヤル・バレエ団に東洋人として初めて入団。91年、史上最年少でソリスト、93年にプリンシパル昇格。99年、K-BALLET COMPANY設立。芸術監督として団を率いるほか、演出・振付家としても才能を発揮し、「白鳥の湖」「くるみ割り人形」など全幕古典作品の演出・再振付や、完全オリジナル全幕作品「クレオパトラ」「蝶々夫人」などの新作を数多く上演。2012年1月、Bunkamuraオーチャードホール芸術監督に就任。2013年、紫綬褒章受章。■クレオパトラ役 ~Kバレエのプリンシパルたち~日高世菜Kバレエ初のプリンシパル入団を果たし熊川に「完璧バレリーナの象徴」と言わしめる日高世菜 Sena Hidaka兵庫県生まれ。2008年同年ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミーに留学。11年ルーマニア国立バレエ団に入団、14年プリンシパルに昇格。16年アメリカのタルサバレエに移籍、19年プリンシパルに昇格。数々の作品で主演を踊る。21年1月、Kバレエカンパニー初のプリンシパル入団を果たす。飯島望未容姿に反し、強靭な身体の能力が生む野性的な魅力を持つ飯島望未 Nozomi Iijima大阪府生まれ。2008年ヒューストン・バレエに当時最年少の16歳で入団。19年3月、同団のプリンシパルに昇格。21年に帰国し5月にKバレエカンパニー『ドン・キホーテ』にゲストで主演。同年8月プリンシパル・ソリストとして入団。22年3月プリンシパルに昇格。19年、シャネルビューティアンバサダーに就任。浅川紫織初演当時からのキャストとしてこの役の真髄を知り尽くす浅川紫織 Shiori Asakawa長野県生まれ。2001年イングリッシュ・ナショナル・バレエスクールに留学。03年4月、Kバレエカンパニーに入団。2008年12月プリンシパル・ソリスト、14年1月プリンシパルに昇格。18年股関節の深刻な怪我により引退するが、手術が成功し本年6月「カルメン」で4年振りの全幕復帰を予定。■~STORY~紀元前1世紀のエジプト。クレオパトラは父王亡き後、弟のプトレマイオス13世と結婚、共同で王位に就いていた。実権を握っているのはクレオパトラだが、プトレマイオスを擁立する官僚たちにより王朝は二派に分裂、熾烈な権力争いが起こっている。そんな折、ローマではジュリアス・シーザーとポンペイウスの間で内戦が起こり、シーザーが勝利する。弟一派により王座を奪われたクレオパトラは、ローマきっての実力者たるシーザーを味方につけようと画策。その美しさは瞬く間にシーザーの心を奪い、二人は恋に落ちる。一方、シーザーの暗殺を企てたプトレマイオス一派は亡き者にされる。再び王位を手中に収めたクレオパトラは、今や名実共にローマの最高権力者となったシーザーとの間に子をもうけ、まさに幸福の絶頂にある。だが、その幸せは長くは続かなかった。腹心ブルータスらによってシーザーが暗殺されたのだ。遺言により後継者に指名されていたオクタヴィアヌスは、シーザー直属の部下であったアントニウスの存在を警戒し、同盟を強固にするため、妹オクタヴィアと結婚させる。だが、クレオパトラに想いを寄せていたアントニウスは彼女を忘れられずエジプトへと向かう。クレオパトラはアントニウスの愛を受け入れ、ひととき平穏な日々が訪れる。だが、オクタヴィアヌス率いるローマの軍勢がエジプトへと攻め入り……そして、激動の人生を生き抜いたクレオパトラに、最期の時が訪れる――。(C)Hidemi Seto(C)Hidemi Seto(C)Hidemi Seto■熊川哲也 Kバレエカンパニー Autumn Tour 2022 『クレオパトラ』 公演概要【日時】2022年10月26日(水)~30日(日)【会場】Bunkamuraオーチャードホール【チケット料金(税込)】※6/18(土)10:00~ 一般発売開始!!★10/26(水)18:00、10/28(金)14:00、10/29(土)17:30S席¥17,500/A席¥13,000/B席¥10,000/C席¥8,000 A親子席¥17,500学生券¥5,500☆10/27(木)14:00、10/29(土)13:00、10/30(日)13:00S席¥15,000/A席¥11,000/B席¥8,000/C席¥6,000 A親子席¥15,000学生券¥3,500※A親子席 大人1名+子供1名(5歳以上小学6年生以下)(A席エリア)※学生券 中学生以上25歳以下/当日学生証を提示の上引き換え/席位置未定※A親子席・学生券は、TBSチケット、チケットぴあWEBにて取り扱い【チケット販売】TBSチケット、チケットスペース、他【お問い合わせ】チケットスペース:03-3234-9999/ 公式WEBサイト: Instagram : @k_ballet_company_officialTwitter : @kballetofficialFacebook : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年06月01日熊川哲也が芸術監督を務めるKバレエ カンパニー「カルメン」のリハーサルの模様が公開され、カルメンとホセを演じる4組のうち日高世菜&石橋奨也、成田紗弥&山本雅也、小林美奈&堀内將平の3組が、2幕2場(闘牛場の前)のシーンを披露。さらに4年ぶりの舞台出演となる浅川紫織はアリア「ハバネラ」のシーンのダンスを披露し、その存在感を見せつけた。2幕2場の闘牛場前のシーンは、ホセが闘牛場からカルメンを連れ出すも、もはやカルメンの心は彼にはなく、何を言っても彼女の心には響かず、嫉妬に駆られたホセはカルメンの首に手をかけ、最後は逃げるカルメンを銃で撃つというシーン。演出・振付を手掛けた熊川だが、基本的に演出を押し付けることなく、それぞれのダンサーの解釈に委ねているとのこと。最初に登場したのは日高と石橋のペア。昨年、カンパニー史上初のプリンシパル入団を果たし、新時代を背負う存在と期待を集める日高はカルメンの自由奔放な魅力に重きを置き「歌うように踊れたら」と語り、石橋はホセを「真面目で一途」と評し、最後の感情は「怒りが強い。プロローグから(覚悟を)決めている感じ」と語る。その言葉を体現するかのように、石橋のホセは激しくカルメンを求め、すがりくつも、日高のカルメンはするりと彼の束縛を振りほどき、感情のまま奔放に踊り、最後は激情をそのまま込めたようなホセの弾丸を受けて倒れる。続いて、成田&山本ペアが登場。山本はホセの根底にあるのは「怒り」と「哀しみ」であり「なんで伝わらないんだ?」という思いが彼に引き金を引かせることになると分析。一方の成田は、そもそもカルメンにとってホセはあくまで「一晩限りの相手」であったのにも関わらず、激しく迫ってくるホセを「煙たがっている」と語っており、まさに2人の温度差の違いを巧みに表現。怒りと悲しみを激しくぶつける山本のホセを、成田のカルメンは冷たい怒りさえ感じさせるほど決然と拒否するさまが感じられる。3組目の小林と堀内のパフォーマンスからは、とにかく豊かな感情のぶつかり合いが伝わってくる。「真面目に生きてきた青年が全てを捨てて来たのに、捨てられてしまう。傷ついて、愛を伝えようとするけど、伝わらずに混乱してしまう」と語るように、堀内のホセからは戸惑いと混乱が、そして「ストレートに生きてきた自由な女。周りを巻き込んでいきたい」という小林のカルメンからは天衣無縫の彼女の魅力が情感豊かに伝わってくる。最後に浅川が「ハバネラ」を披露。「今日はわからない。明日かもしれないし、一生ないかも。私に惚れるのは自由だけどお気をつけなさい」という劇中の歌詞を心に宿し、カルメンを演じていると語る浅川。群がる男たちに挑発的な笑みを振りまきつつ、女王然とした強さと誰にも縛られない奔放さを備えた魔性の女を見事に体現する圧巻のパフォーマンスを見せつけた。本公演は6月1日から5日までオーチャードホールで上演。取材・文:黒豆直樹
2022年05月25日今井哲也著『ぼくらのよあけ』が映画化されることが発表された。『ぼくらのよあけ』は、『アフタヌーン』(講談社刊)にて連載され、星雲賞候補にもなった傑作SFジュブナイル漫画。舞台は2049年、宇宙とロボットが大好きな主人公の少年は、まもなく地球に大接近するという彗星に夢中になっていた。そんなある日、彼が出会ったのは、宇宙からきたという“未知なる存在”。公開されたティザービジュアルに描かれているのは、何やら怪しく輝く少年らが住む阿佐ヶ谷団地と、その奥にひっそりとそびえ立つ給水塔。そして、黎明の光が差し込む中、団地の屋上に佇む少年とロボットの姿。そんな彼らに訪れた、前代未聞の極秘ミッションとは?あわせて公開された特報映像では、ホルスト作曲の組曲『惑星』第4曲「木星」の有名なフレーズに合わせて、ティザービジュアルに描かれた団地屋上が美しく光り、徐々に朝陽が登っていく様子が映し出され、宇宙の壮大さを感じられる映像となっている。本作の映画化について、原作者の今井哲也からは「たくさんの方がすてきなアイデアを持ち寄って、作品がどんどん出来上がっている最中です。未来ってすごいですね。わくわくしています。みなさんもぜひわくわくしてください」と興奮のコメントが到着。さらには、映画化を祝う描き下ろしイラストも寄せられている。『ぼくらのよあけ』2022年初秋公開(C)今井哲也・講談社/2022「ぼくらのよあけ」製作委員会
2022年03月18日株式会社K-BALLET(所在地:東京都文京区)は2022年3月5日(土)、熊川 哲也の誕生日という節目を記念し、YouTube K-BALLET公式チャンネルにて、2つの無料配信企画を開催いたします。熊川 哲也ライブトーク「クラリモンド」全編無料配信■YouTube K-BALLET公式チャンネル特別企画熊川 哲也 プレミアム・ライブトーク開催!芸術監督熊川 哲也の声をお届けするYouTube K-BALLET公式チャンネル特別企画を開催いたします。これまで応援してくださった多くの方への感謝を込めて、熊川本人と半生を振り返りながら、その尽きぬ思考の全貌に迫ります。当日は、貴重な動画や写真もご紹介するほか、コメント欄で質問も募ります。特別な機会をどうぞお見逃しなく。日時:2022年3月5日(土)16時~YouTube K-BALLET公式チャンネル にてライブ配信(無料配信)*アーカイブ配信の予定はございません■K-BALLET COMPANY 熊川 哲也 演出・振付 最新作1日限定無料配信!1月末に上演された話題の新作『クラリモンド~死霊の恋~』全編。物語バレエによる新境地開拓と呼び声が高い傑作を、YouTubeにて特別に無料配信いたします。1日限定の特別公開となりますのでお見逃しなく!公開日時 : 2022年3月5日(土)0:00~23:59YouTube K-BALLET公式チャンネル : TBS公式YouTubeチャンネル YouTuboo: 『クラリモンド~死霊の恋~』全編演出・振付:熊川 哲也出演 :クラリモンド:日高 世菜 ※ロミュオー :堀内 將平セラピオン :石橋 奨也バーバラ :浅川 紫織ほか :K-BALLET COMPANY指揮 :井田 勝大ピアニスト:塚越 恭平管弦楽 :シアター オーケストラ トーキョー収録日時 :2022年1月30日(日)※日高 世菜さんの「高」は、「はしごだか」になります。【『クラリモンド~死霊の恋~』全編(2022年1月初演)】演出・振付:熊川 哲也 音楽:フレデリック・ショパン熊川 哲也が19世紀フランスの作家テオフィル・ゴーティエによる短編小説「死霊の恋」に着想を得た同名のバレエ作品を発表したのは2018年のこと。ショパンの「ピアノ協奏曲第1番」第1楽章の調べに乗せ綴られたのは、死してヴァンパイアとなった美しき娼婦クラリモンドと、彼女に魅入られた若き聖職者ロミュオーの禁断の恋物語。熊川はゴーティエの描いた夢現の世界を、持ち前の卓越した感性とドラマツルギーにより1場の作品として構成、ロマン主義の薫香漂う切なくも美しいラブストーリーに仕立て上げた。そして、約20分の小品ながら観客の胸に忘れがたい感動の記憶を刻み付けたあの絶賛の初演から4年――ついに満を持しての全編版が実現!『クラリモンド~死霊の恋~』全編として新たな命を得ることになる。ゴーティエの原作にはバレエ作品として昇華させるにふさわしい魅力的な要素が数々秘められていると熊川は言う。それこそが、小品創作時からすでにして振付家に全編化という展望を抱かせた理由に他ならない。本作では、小品で描かれた物語の前段となるストーリーを新たに加筆、生前のクラリモンドとロミュオーとの出会いと今生での別れも描き出され、生死を超える愛のドラマがより鮮明に立ち上がることになる。稀代の振付家・熊川が挑む“完成された名作”への新たなアプローチは、我々をどんな境地へと運んでくれるのか。ぜひその目で確かめてほしい。【STORY】19世紀末パリ。稀代の高級娼婦と名高いクラリモンドは、自らがヴァンパイアの血筋を引くことを気付かずに暮らしている。その正体を知るのは、彼女の後見人であり、娼館のマダムであるバーバラただ一人。その娼館に初めて訪れたのは若き修道士ロミュオー。神父就任の式を目前に控えた彼は、俗世を知らぬまま聖職者として生を全うすることへの葛藤を抱き、修道院から逃走、夜の街へとやって来たのだ。バーバラは言葉巧みに彼を娼館へと誘い、クラリモンドと引き合わせる。娼館の華やかな饗宴に心を躍らせるロミュオーは、次第に彼女に惹かれていくのだった。だが、ロミュオーの居場所の噂を聞きつけた修道院長の乱入により事態は急変する。彼は、クラリモンドの正体に気づきロミュオーを連れ戻そうとしたものの、彼女の悪魔的力に打ちのめされ娼館を後にする。愛し合う2人は夜をともにするが、運命には抗えず、引き裂かれる。せめてもと、ロミュオーは、クラリモンドのヴェールを握り締め館を離れるのだった。修道院長との一件以来、体調の異変を感じていたクラリモンドは、ついに容体が悪化し、バーバラの腕の中で、早すぎる死を迎える。そんなある日、失意のうちにいるロミュオーがクラリモンドが残したヴェールを握り締めながら眠りにつくと...。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年03月04日仲よし3人組の旅のひとコマ女優・冨士眞奈美が語る、古今東西つれづれ話。今回は、食にまつわる出会いと岸田今日子さんの食べっぷりについて言葉を紡ぐ。渡哲也さんとの相席いまから何十年前だっただろう、日活の食堂でのこと。1人でご飯を食べていると、向こうからザッザッと草履の音が聞こえてきた。突然、その音が私の前で止まり、「ここに座ってもよろしいでしょうか」と声をかけられた。食堂はすでに満席。どうやら2人席にいる私の前の席しか空きがないらしい。申し訳なさそうな声が印象的だった。声の主の足元からゆっくりとパンナップすると、草履なのにジーパン。そして、凛とした顔つきの男性が目に飛び込んできた。雑誌『少年倶楽部』の表紙みたいなお顔。まだ新人だったころの渡哲也さんだった。可愛らしさと精悍さがないまぜになったような。たとえるなら、私が大好きな大谷翔平選手のような印象。当然返事は「もちろんです」。といっても、実は渡さんに会ったことがあるのはその一度。昭和を代表する俳優のおひとりだから、お芝居の世界で顔を合わせていそうなものだけれど、不思議と日活の食堂で会ったきりお会いすることはなかった。一方、渡さんの実弟である渡瀬恒彦さんとは、山城新伍さんが監督を務めた『せんせい』という作品で共演したことがある。その撮影の合間、渡瀬さんが月島でもんじゃ焼きをごちそうしてくださった。上手に焼いて、同席している人全員にサーブする姿に感動してしまった。渡瀬さんは、ケンカが強いことから“芸能界最強”なんて噂もあるらしいけど、女性の前では紳士そのもの。どうしてそんな噂があったのか不思議でならないけれど、それも魅力かな。気持ちのよい人という意味では、中村勘三郎さんもその筆頭格だったなぁ。吉行淳之介さんが亡くなったとき、和子っぺ(吉行和子)を慰めようと勘三郎さんがお声をかけてくださり、私と、歌舞伎にまつわるエッセイを数多く執筆されている関容子さんと、朝方まで飲んだことがあった。またあるときは、私と和子っぺ、岸田今日子ちゃんの3人組に勘三郎さんご夫妻が参加する形で、オペラを見に行ったことも。勘三郎さんはとても人付き合いがスマートな人。記憶に残る気持ちのよい人だった。今日子ちゃんの名前が出てきたから、彼女にまつわるエピソードも披露しようかしら。彼女はとってももの静かな顔をしているけど、実はすごい大食漢。端から見ていると、あっという間に消え去るように、静かに品よく食べてしまう。私の記憶の中では、親しかった戦中生まれの友人は、食に関して敏感なところがあった。ある人は、食べることそのものに過度に意識を払い、ある人は貪欲に食を探求した。今日子ちゃんは、自分が気に入ったものに関しては、食べることに夢中になる人だった。彼女とは、和子っぺと私、3人でオーストラリアやハワイなど、いろいろなところを旅した。今でいう、女子旅のさきがけかもしれない。旅先で今日子ちゃんが、あの独特な口調で「あらぁ~おいしい」と言ったら、それでおしまい。そのお言葉は「これはみんな私のものよ」といった勅令のようなもので、誰もその料理に箸をつけられなくなる。でも、和子っぺは、本当におっとりしていて気にしない。「あらぁ~おいしい」と、飴を一袋取り上げられたこともあった。私は、その様子を面白がってしまったから、いつも楽しい3人組だった。台湾に行ったときは、とってもおいしい小籠包があって、今日子ちゃんがひと口ほおばるや、「あらぁ~おいしい」が発令してしまった。お肉と、細かく刻んだほうれん草がぎっしりと詰まった、熱々の汁がしたたる小籠包。ゆったりと微笑んで、それを次々に口に入れていく今日子ちゃん。あの小籠包は、私も思いっきり食べてみたかったな。〈構成/我妻弘崇〉冨士眞奈美 ●ふじ・まなみ静岡県生まれ。県立三島北高校卒。1956年NHKテレビドラマ『この瞳』で主演デビュー。1957年にはNHKの専属第1号に。俳優座付属養成所卒。俳人、作家としても知られ、句集をはじめ著書多数。
2022年02月27日クリスマスのバレエ作品と言えば『くるみ割り人形』。毎年12月に多くのバレエ団が上演するが、芸術監督・熊川哲也が率いるKバレエ カンパニーの『くるみ割り人形』は豪華で美しく、2005年の初演以来、子どもも大人もワクワクさせるファンタジー超大作として人気が高い。Daiwa House PRESENTS 熊川哲也 Kバレエ カンパニー 「くるみ割り人形」 Winter Tour 2021チケット情報物語は19世紀初め、ねずみたちとの争いの中で魔法をかけられた人形の国。魔法を解くカギとなる少女クララは、人間界から人形の国へ時空を超えた愛と冒険の旅に出て…。今回の大阪公演は主要キャストを替えて2ステージを上演。魔法でねずみに変えられるマリー姫を、今年Kバレエデビューした注目の日高世菜(※高ははしごだかが正式表記)と飯島望未がダブルキャストで演じる。西宮出身の日高、大阪出身の飯島のふたりが、見どころや意気込みを語った。まずは日高世菜。ワガノワ・バレエ・アカデミーで学び、ルーマニア国立バレエ団とアメリカのタルサ・バレエ団のプリンシパルを経て、1月にKバレエにプリンシパルとして入団。熊川は「踊りに別格の芸術性を感じる、完璧なバレリーナの象徴」と絶賛する。また飯島望未は、アメリカのヒューストン・バレエ団でプリンシパルとして活躍し、シャネルのビューティーアンバサダーも務めている。Kバレエにはゲスト出演を経て8月にプリンシパル・ソリストとして正式入団。「非常にドラマティックなダンサー。優れた演劇性を特に高く評価しています」と熊川の期待を担う。今回は「私は身長が高いので、舞台を大きく使って大きな動きでみせるところをご覧いただければ」(日高)、「お姫様なので凛としていて、でも温かさもあるマリー姫を演じられたら」(飯島)と話す。巨大化するツリー、人形とねずみたちの大バトル、銀世界で舞い踊る粉雪たち…。熊川版『くるみ』の魅力は?「ストーリーがすごくわかりやすくて、子どもから大人までどなたでも作品に入り込んで楽しめます。特に舞台転換の演出や舞台美術、衣装も含め、すべてがとても豪華です」とふたり。久しぶりの地元関西で「フェスティバルホールの公演はよく観ていましたが、自分が舞台に立つのは初めてですごく楽しみ」と、家族や友人を客席に、憧れの舞台に立つ喜びを語る。「温かい気持ちや幸せな気分になれる、夢のある作品だとすごく思うので、ぜひ観に来ていただけたらうれしいです」(日高)。「少しでも芸術やファンタジーの世界に触れて、心を豊かに素敵なクリスマスを迎えていただけるよう頑張ります。お客様を通して私たちも夢を与えていただいているので、それを舞台上で共有できたら。12月、日本で一番熱い場所にします!」(飯島)熊川哲也 Kバレエ カンパニー『くるみ割り人形』は、12月10日(金)、大阪・フェスティバルホールにて。チケット発売中。取材・文:高橋晴代
2021年12月07日熊川哲也Kバレエ カンパニーSpirng2021『ドン・キホーテ』が19日(水)に開幕。前日のゲネプロを鑑賞した。観客をハッピーな気持ちで満たしてくれる古典の名作『ドン・キホーテ』。数ある版の中でも、Kバレエのそれは格別だ。当代髄一のバジル・熊川哲也その人が、自身の経験と理想のすべてを注ぎ込み、生まれたのがこの熊川版。舞台美術と衣裳デザインも自ら手掛けるほどこだわり抜いた本作は、2004年の初演以来、カンパニーの看板作品の一つとして磨かれてきた。舞台は、老騎士ドン・キホーテが憧れの姫ドルシネアを追って旅に出るプロローグで始まる。幕が開くと、この恋物語の主人公、キトリとバジルが住むバルセロナの町。石造りの重厚な建物がそびえ立つ。若者たちの衣裳をモノトーンで統一するなど、全体の色調は意外なほどシック。だが、そこで暮らしを営む住人たちが、談笑し、戯れ、踊ることで、たちどころに鮮やかな色彩が放たれる。そう、町の“色”は人々によって作られるのだ。しかも、あらゆる登場人物たちが個性を持ち、ドラマを繰り広げているので、隅から隅まで見飽きることがない。熊川ならではの緻密でダイナミズムあふれる振付、それを踊りこなす技量の高いダンサーたちが畳みかけるように展開する舞踊の見応えは圧倒的。ドラマとしての面白さの追求も、熊川版は抜かりがない。例えば、キトリをドルシネア姫と思い込むドン・キホーテが、二人を別人と悟る第2幕・夢の場は、底抜けに明るいこの物語に、切なさというスパイスを効かせてくれるし、続く酒場は熊川のユーモアセンスの真骨頂。おなじみの名場面・バジルの狂言自殺はもとより、貴族ガマーシュとドン・キホーテのヘンテコな決闘、新たに加わった闘牛士エスパーダとバジルのコミカルなダンス・バトルも、一層この場面を盛り上げる。そして終幕、キトリと結ばれたバジルが舅ロレンツォの髭をそる光景の、なんという幸福感!彼らの日常をいつまでも見ていたくなるような、心に刻まれる名シーンだ。この日のキトリ役は、ヒューストン・バレエ団でトップに上り詰め、8月にKバレエ入団が決まっている飯島望未。登場の瞬間から観客の心を掴む華やかな存在感はさすがで、愛らしくも粋なキトリが実に魅力的。バジル役の山本雅也はプリンシパル昇格から1年、その進化は留まるところを知らない。正確無比なテクニックを自在に操りながら魅せる彼のバジルは心憎いほどカッコよく、ふと熊川を彷彿とさせるほど。また、絵に描いたような気障な男っぷりで場を盛り立てる杉野慧扮するエスパーダも秀逸で、芸達者な彼の踊るバジル(22日夜)も楽しみになる。公演は23日(日)まで、Bunkamuraオーチャードホールにて。取材・文:遠藤清子撮影:Hidemi Seto
2021年05月21日女優の松本まりかが、7日に公開されるハインツ日本「大人むけのパスタ」のWeb動画「大人のおうちダイニング」に出演する。レストラン「sio」のオーナーシェフ・鳥羽周作氏のもとを、「こんにちは~素敵なキッチンですね」と松本が訪れるシーンから始まる動画。アレンジコース料理を振る舞われ、「めちゃくちゃおいしい……めっちゃくちゃおいしいです!」と笑顔を見せたり、おいしさのあまり、たまらないと言った表情で何度も頷く松本のリアクションに注目だ。ドラマやバラエティ番組などに引っ張りだこで、多忙な生活を送っている松本。動画内では、自炊事情について「最近はほぼできていないですね。テイクアウトか、ロケ弁か……」と語っている。Web動画「大人のおうちダイニング」は、バレエダンサーの熊川哲也が出演するバージョンも同時配信された。
2021年04月07日熊川哲也 Kバレエ カンパニー Spring 2021『白鳥の湖』が、3月24日に開幕。ひと足早く鑑賞したゲネプロの様子をレポートする。芸術監督の熊川による演出・再振付で2003年に初演され、レパートリーとなった本作。今回の目玉は新プリンシパルとして1月に入団した日髙世菜のほか、カンパニーの次代を担うダンサーが集結したことだろう。取材日にオデット / オディールを演じていたのは、成田紗弥。王子ジークフリードには2020年10月にプリンシパルへ昇格した堀内將平、悪魔ロットバルトに栗山廉がキャスティングされた。ゲネプロは、オデットがロットバルトに翻弄される紗幕越しのプロローグから幕開け。成人祝いのパーティーを抜けたジークフリードは、湖で舞う白鳥オデットに出会う。彼女に惹かれながらも城へ戻り、花嫁探しの舞踏会に参加した王子は、ロットバルトに伴われて現れたオデットそっくりの黒鳥オディールに求婚してしまう。彼らが選んだ愛の結末とは──。白鳥に姿を変えられた身の上を嘆くオデットに対して、自信たっぷりに王子を誘惑するオディール。一人二役に扮する成田は、この二面性を全身で表現する。指先から爪先まで意識を張り巡らせながらも、はかなさと気高さを両立させる繊細なオデット像を覗かせた。一方で、オディール時は口元に絶えず笑みを浮かべる勝気な表情を見せ、王子の気持ちを手に入れた勝利宣言といえる30回転以上のグラン・フェッテ・アン・トゥールナンで観客の心も躍動させる。堀内は、王子の感情の起伏を体現するようなバラエティ豊かな踊りで劇世界を支える。特に空中でもう一段高く弧を描くような跳躍力に目を見張った。初役でロットバルトに扮する栗山は常に妖しさをたたえ、チャイコフスキー作曲の有名な旋律に乗せて舞う2幕冒頭のシーンで客席を魅了。このほか、完成度の高いコール・ド・バレエを繰り広げる白鳥たちの静謐な美しさにも思わず息を飲んだ。クラシックバレエの代名詞といえる定番の演目を、熊川はレパートリー化に際して再構成。オデットと出会って恋に落ちる高揚感、オディールに翻弄された挙げ句の絶望など、ジークフリードの心の軌跡を主軸に置いたストーリーテリングが最たる特徴だ。なお、このKバレエ版を小説化するアートノベル『白鳥の湖 Swan Lake』の巻末には、熊川によるインタビューも収録。クライマックスの意図やオリジナリティの発揮方法など舞台裏を明かしている。公演は3月28日(日)まで、東京・Bunkamuraオーチャードホールにて。ぴあでは、座席指定できるチケットを販売中。取材・文:岡山朋代
2021年03月24日新時代を牽引するダンサーが集結する、熊川哲也 Kバレエ カンパニー Spring 2021『白鳥の湖』。昨年1月、同演目にてプリンシパルに昇格したジークフリード役の山本雅也にその魅力を尋ねた。芸術監督の熊川による演出・再振付で2003年に初演され、レパートリーとなった本作。今回は、オデット / オディール役に新プリンシパルとして1月に入団した日髙世菜のほか、小林美奈、成田紗弥、毛利実沙子、ジークフリード役に堀内將平、石橋奨也、髙橋裕哉、ロットバルト役に栗山廉、杉野慧、西口直弥、グレゴワール・ランシエもキャスティングされている。熊川が「Kバレエ カンパニーは世代交代という大きな転換期を迎えました」と述べるように、次世代に託された期待は大きい。初日を約2週間後に控え、稽古に明け暮れる山本自身も「キャストが全員20代なので、熊川ディレクターは僕たちの年齢に合わせた演出を意識している気がします」と自覚がある様子。具体例を聞くと「30代なら大人の風格が醸し出されるポイントで、こう……フレッシュに?」と若さを前面に押し出した上半身の動きを実践しつつ、「初役だった去年から進化した姿をお見せできたら」と意気込む。クラシックバレエの代名詞といえる定番を、熊川は再構成。白鳥オデットと出会って恋に落ちる高揚感、黒鳥オディールに翻弄された挙げ句の絶望など、山本らが演じるジークフリードの心の軌跡を主軸に置いたストーリーテリングが、熊川版の最たる特徴といえるだろう。なお、この熊川版『白鳥の湖』を小説化するアートノベルが開幕に合わせて刊行されるが、王子の感情を丁寧に描くことはどんな劇効果を生み出すのか──。そう問いかけると、山本は「物語の“運び手”であるジークフリードの感情の起伏が伝わるほど、観客の皆さんに緻密かつ説得力ある人間ドラマが届けられると思うんです」と即答。アートノベルの王子像が「初役の時に自分が想像して演じようとしたキャラクターと似ていたんですよね」と続き、役づくりの舞台裏を明かす。昨年、ジークフリードを演じ終えた直後のカーテンコールで熊川からプリンシパル昇格を告げられた山本。客席からも祝福されたサプライズ任命は「3位入賞したローザンヌ国際バレエコンクールで熊川ディレクターと初めてお会いした瞬間(2013年)と重なり、今までのバレエ人生がフラッシュバックしました」と振り返るほどだった。今回はどのようなパフォーマンスで観客を楽しませてくれるのか、本番を見届けたい。公演は、3月24日(水)~28日(日)に東京・Bunkamura オーチャードホールにて。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2021年03月19日渡哲也さん1971年3月の結婚翌年から48年。葉間肋膜炎、膠原病や直腸がん、大腸がん、心筋梗塞、呼吸器疾患など多くの病気と闘ってきた渡哲也さんが、2020年8月10日に肺炎で亡くなった。だが、その事実が石原プロから発表されたのは4日後のことだった。「発表を遅らせたのは、 “静かに送ってほしい”という渡さんの強い希望からです。葬儀はごく身内だけで、同じ事務所の神田正輝さんや舘ひろしさんも立ち会えませんでした」(スポーツ紙記者)実直な人柄で日本中の人気を集めた渡さん。その人間味あふれるイメージは映像の外でも変わらなかった。「2007年にNHKでドラマ『新マチベン』を撮っていたときだったかな。何人かを連れて渡さんが局内の食堂に現れたんです」(NHK関係者)一般客は入れないとはいえ、単なる社食。いったい何を食べるのかと思いきや、「食堂でいちばん安い280円の“しょうゆラーメン”を全員のぶん注文したんだよ。特別なものが入っているわけでもない、普通のラーメンをね」(同・NHK関係者)そのラーメンの味を全員で共有することが、とてもうれしそうだった。「“NHKに来るといつも食うんだ”と言ってたな。連れていたカメラマンが写真を撮ろうとすると、 “撮るな撮るな”って言いながらラーメンを指さして“早く食え、麺がのびちゃうぞ”と急かしてたっけ。単に写真が照れくさかったのかも(笑)。“うまいなあ。うまいだろ”とニコニコしてたのを、今でも覚えてるよ」(同・NHK関係者)■石原裕次郎とのCMはどうなる?渡さんが美味しいものを口にして微笑む場面といえば、なじみ深いのは日本酒『松竹梅』のCM。最新作では石原裕次郎さんと合成映像で共演も果たしたが、11月末に終了していた。発売元の宝酒造に聞くと、「故人を使い続けるのは失礼と思い、11月末で放映をいったん終了しました。ただ、渡さんとのCM契約は来年の9月までですので、再放映の可能性もあります」(広報課)『松竹梅』の顔だった2人の後継は、石原プロの誰かに決まっているのか。「今のところ、そういった話はありません」(広報課)石原プロにも聞いてみたが、「決めるのは宝酒造さんですので、こちらが口を出すことではありません」2021年1月16日で事務所じまいとなる石原プロだが、渡さんを慕い続けた神田や舘の進退はまだ発表されていない。浅野謙治郎専務に彼らの今後を聞くと、「神田や舘は渡の遺志を守り事務所じまいまでは何も決めない、と誓っています。彼らが行き先を決めるまで、私たちは協力を続けるだけです」事務所がなくなっても渡さんの思いは受け継がれていく。
2020年12月20日熊川哲也 Kバレエ カンパニー Winter 2020『くるみ割り人形』が開幕。ひと足早くゲネプロを鑑賞した。芸術監督の熊川による演出・振付で2005年に初演され、レパートリーとなった本作。クリスマスシーズンに世界中の劇場で上演される風物詩にして定番といえる古典を、熊川版では再構成。豪華絢爛な美術がダイナミックに転換されていく効果で、壮大なスケールのファンタジーな冒険譚が立ち上がる。ゲネプロは、人形のマリー姫がねずみに翻弄される紗幕越しのシーンで幕開け。人形の国と領地を争っているねずみ国の王様は魔法で、マリー姫をねずみに・彼女の婚約者である王子をくるみ割り人形に変えてしまう。一方、人形の国王から命を受けたドロッセルマイヤーは呪いを解くための硬いくるみを割れる純粋な人間を探す旅へ。そこで出会った少女クララを待ち受けるものとは──。一幕の見どころは、人間のクララを人形の世界へ連れ出そうとするドロッセルマイヤーの鮮やかな手さばき。サイズの異なる人形と人間の世界を対比させるため、大広間のクリスマスツリーが巨大化する様子に目を奪われた。チーズ砲をはじめ、ツリーの麓で繰り広げられる人形vsねずみの大戦争の描写もユニークだ。一転、クララ・くるみ割り人形・ドロッセルマイヤーのパ・ド・トロワが終わり、青い幕が降りると舞台上は一面の銀世界に。粉雪の中で幻想的に舞い踊る雪の精たちの姿に、思わず息をのんだ。クララに助けられ、本来の姿を取り戻したマリー姫と王子は、祝祭ムードの中でグラン・パ・ド・ドゥを踊る。作品のクライマックスを飾るこのデュエットを取材日に繰り広げていたのは、毛利実沙子と高橋裕哉。クララ役の河合有里子が振りまくピュアな魅力に対して、堂々と成熟したステップで客席を魅了した。ドロッセルマイヤーに扮したのは、杉野慧。不思議な力で物語を動かす、ミステリアスな存在感を見せつけた。なお現在、熊川が本作について語るコメント動画が公開されている。バレエ界の“アイコン”ともいえる『くるみ割り人形』を「絶対に毎年やらなければならない、マストな公演」と語る理由を聞き届けよう。コロナ禍においてこの作品が果たす役割を、改めて見つめ直してみては。公演は12月2日(水)~6日(日)に、東京・Bunkamuraオーチャードホールにて。ぴあでは、座席指定できるチケットを販売中。なお、小林美奈(マリー姫)・栗山廉(くるみ割り人形 / 王子)・吉田このみ(クララ)・宮尾俊太郎(ドロッセルマイヤー)のキャスティングで上演される5日(土)17:00開演回はオンラインでの生配信も。PIA LIVE STREAMから翌日17:00までアーカイブ視聴できる。取材・文:岡山朋代
2020年12月03日熊川哲也 Kバレエ カンパニー Autumn 2020『海賊』が開幕。ひと足早くゲネプロを鑑賞する機会に恵まれた。芸術監督の熊川による演出・振付で全幕作品として2007年に初演され、レパートリー化された本作。19世紀イギリスの詩人ジョージ・ゴードン・バイロンが発表した長編の詩をもとに多くの振付家が生み出した様々なバリエーションを、熊川は再構成。ストーリーを編み直し、起承転結に呼応する音楽を選ぶことによって、七つの海を渡る屈強な海賊コンラッドらの壮大な冒険譚に仕立て上げた。ゲネプロは、船の難破を活写するプロローグで幕開け。海賊の首領コンラッド、その部下ビルバントやアリの躍動する姿が、紗幕越しに浮かび上がる。トルコ領ギリシャの浜辺に打ち上げられた彼らは、メドーラとグルナーラ姉妹から介抱されることに。メドーラの美しさに心を奪われ、恋に落ちるコンラッド。しかし姉妹と仲間の娘は奴隷商人ランケデムに捕らえられ、市場へ売りに出されてしまう。彼女たちを奪還すべく、立ち上がった海賊の行方は──。強い絆を前面に押し出した勇壮な踊りの中に見え隠れする、個性豊かな海賊たちのキャラクター。中でも、かつて熊川も扮した従者アリは命がけの忠誠心をもって首領を守り抜く存在感を見せつける。取材日にこの役を演じていた山本雅也は、1月に上演された『白鳥の湖』でプリンシパルに昇格した次世代の踊り手。2017年の『海賊』出演時にも見せた高い跳躍力で、鳴り響く銃声に立ち向かう。周りを取り囲むダンサーも実力派が揃い踏みだ。コンラッド役の堀内將平は、リーダーにふさわしい堂々たる踊りを披露。伸びやかな舞いで観客を魅了した成田紗弥は、柔らかい肢体の中に可憐なメドーラ像を覗かせた。なお、回替わりでコンラッドを務める遅沢佑介とメドーラを務める中村祥子は、本作でKバレエのラストステージを飾る。ゲネプロ後には熊川からコメントが到着。約半年の活動休止期間を経てカンパニー再始動を果たす思いを『海賊』に乗せ、「この作品が持つ力強さこそ、カンパニーが踏み出す新たな第一歩にふさわしく、かつてないほどのエネルギーと感動が劇場を満たすはず」と語った。なお、熊川は10月28日(水)に刊行される小説版『海賊 Le Corsaire』の巻末インタビューで演目の成り立ちや舞台裏などを明かしている。公演は10月15日(木)~18日(日)に、東京・Bunkamuraオーチャードホールにて。チケット販売中。なお15日18:30、17日(土)12:30、18日12:30開演回ではオンラインでの生配信も。それぞれ翌日23:59までアーカイブ視聴できる。取材・文:岡山朋代
2020年10月15日舘ひろし8月10日に肺炎で死去した渡哲也さんの四十九日法要が9月16日、都内で営まれた。法要には家族のみが参列し、神田正輝や舘ひろしなど、所属事務所の俳優らの姿はなかった。「渡さんが“大げさにしないでほしい”と生前から伝えていたんです。そのかわり、四十九日の前に神田さんと舘さんはふたりで渡さんの自宅を訪れ、遺骨の前で手を合わせたそうですよ」(スポーツ紙記者)日本の芸能史に数々の伝説を残してきた“石原軍団”だが、そのピリオドは来年1月16日と決まっている。「石原プロが解散し、俳優のマネージメント業務も終了することになっています。さっそく移籍を決めた俳優もいますね」(同・スポーツ紙記者)金児憲史は8月31日をもって移籍を発表したが、神田や舘も身の振り方をすでに考えているのだろうか。「舘さんは、解散の前に移籍することはなさそうです。“1月16日まで石原プロはあるんだから、わざわざその前に出ていくことはないだろう”と周囲に話していますからね。事務所じまいがすっかりすんでから、どうするのかを決めるといいます。事務所の解散は、もともとは石原裕次郎さんの遺言で、渡さんもそれを気にかけていました。仏前で、渡さんに“石原プロの最後を見届けます”と、改めて約束していたのかもしれませんね」(芸能プロ幹部)■うさぎの着ぐるみでCM出演責任感の強い舘は、石原プロのスタッフの処遇についても考えているようだ。「『マイナポイント』のCMでうさぎの着ぐるみを身につけるなど、これまでなら考えられないような仕事もいとわずに“石原プロ”として引き受けているようです。最後まで“石原軍団”の一員として仕事をこなし、事務所の売り上げに貢献しようということなんでしょう」(広告代理店関係者)『西部警察』で共演した渡さんに心酔して1983年に石原プロ入りしてから37年。今や軍団の一翼を担う役者に成長した。そんな舘を慕い、背中を追う仲間も現れたという。「徳重聡さんや池田努さんも、今後の進退を解散まで明かさない、としました。舘さんの男気に共感し“ついて行きます”と宣言した形ですね」(前出・スポーツ紙記者)徳重は2019年9月の週刊女性のインタビューで、《オーディションの賞金として1億円いただいていたので、まだその金額分は仕事していないから辞められないな……》と冗談まじりに話していたが、気持ちは本気のよう。「池田さんも、徳重さんと同様です。来年まで石原プロとして受けた仕事があり、“けじめ”をつけるため解散まで出ないと言い切ったようです。石原プロに重きを置いてくれた彼らのために、解散後は舘さんが個人事務所を立ち上げ、ふたりはそこに所属すると言われています」(前出・スポーツ紙記者)昭和の男くさい友情が、まだ彼らには残っている。
2020年10月14日もうすぐ開幕される「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2020」(SSFF & ASIA2020)にて、別所哲也、河瀬直美、「King Gnu」常田大希が参加するオンライントークイベントが配信されることが決定した。今回のイベントは、ソニー株式会社と、ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社が、共同で新しい映像文化や潮流を次世代クリエイターと一緒に探求する「Creators’ Junction partnered with XperiaTM(クリエイターズ ジャンクション パートナー ウィズ エクスペリア)」のオンライントークイベント。モデレーターに映画祭代表の別所さん、河瀬監督がゲスト出演。さらに、スペシャルゲストとして「King Gnu」常田さんが参加する。トークでは、コロナ禍におけるエンタテインメント・映像業界の変化や、ニューノーマル時代の映像クリエイティブの在り方、スマートフォンでの映画製作の可能性などについて、三者の目線から可能性を探る。また、先月からスタートした2021年度の「オフィシャルコンペティション supported by Sony」および「スマートフォン 映画作品部門 supported by Sony」などの作品応募に向けて、これからの映像製作のヒントにも迫っていく。「Creators’ Junction partnered with XperiaTM」は9月28日(月)20時スタート予定「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2020」は9月16日(水)~27日(日)開催。(cinemacafe.net)
2020年09月10日米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」(SSFF & ASIA)の代表を務める俳優・別所哲也が、8月28日、東京都庁にて小池百合子都知事を表敬訪問した。「(ニュー)ボーダレス」~変化を力に変えていこう~をテーマに掲げる今年の映画祭は、9月16日(水)より開催。本映画祭について都知事は「今年は、withコロナの中で、新しい日常との両立に合わせて、客席を減らしたりセレモニーのライブ配信をしたりと、まさしく新しい日常の一つのパターンを表しているかと思います。そして、各会場には新型コロナの感染予防対策をしっかりおこない、安心・安全な運営をして頂くことを期待しております」と語った。映画祭と東京都が共同で行っている映画製作プロジェクトが今年で3回目を迎える。本年の作品には、主演に森崎ウィン、シンガポール・中国で活躍するジネット・アウを迎え『This is Tokyo』を製作。作品に対して都知事は「森崎ウィンさんはミャンマー出身でいらっしゃいますよね。女優さんもシンガポール出身とのことで、アジアの魅力がそっくりそのまま映画の中に表現されていると思います」とコメント。本編は公式サイトにて公開されている。一方、東京の魅力を国内外に発信するショートフィルムを全世界から募集する「Cinematic Tokyo」部門では、全世界から今年は236本の応募があり、その中から優秀賞作品として、オーストラリアの監督が手掛けた『グッピー』が選ばれた。別所さんは「東京を訪れている若い外国人カップルが、ある出来事をきっかけにお互いを見つめなおす、というシンプルなストーリーの背景に、映画的な東京の街、主人公の繊細な感情が最もうまく表現されていました」と称賛した。この『グッピー』は、9月27日に行われるアワードセレモニーにて都知事賞が授与される。今回の表敬訪問後、別所さんは「今年はコロナ禍で、海外チームと連絡が取れなくなるなど、様々な試練がありましたが、どうやったら皆様に映画を届けられるのか、世界とどう繋がれるのかを何度も協議し、今回の映画祭実施に至りました。オンライン開催も実施しますので、より多くの方々に楽しんで頂ければと思います」とメッセージを寄せた。●『This is Tokyo』(監督:鈴木勉)2019年秋、ラグビーワールドカップ開催で、街に活気があふれる東京。シンガポールの企業との提携を進めるチームに抜擢された健人は、来日したクァン社長をアテンドする仕事を任されるが、彼女の冷たい態度に困惑する。2人で東京を観光するうちに、互いの心に小さな変化が生まれ──。▽予告編●『グッピー』(監督:Charles Richardson)外国の地、東京で若いカップルの片方が最終電車に乗りそびれ、2人はバラバラになってしまう。コミュニケーションだけが2人を引き戻せる唯一の手段だったが、携帯電話の充電と共に緊張の糸も切れてしまった2人。彼らの関係はどうなるのか…。「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2020」は9月16日(水)~27日(日)オンライン会場および東京計4会場にて開催予定。『This is Tokyo』『グッピー』は映画祭のオンライン会場にて無料先行配信。(cinemacafe.net)
2020年08月28日俳優の別所哲也が28日、映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(略称:SSFF & ASIA)2020」の代表として東京都知事の表敬訪問を行った。同映画祭は米国アカデミー賞公認、日本発・アジア最大級の国際短編映画祭で、9月16日~27日までの開催が決定している。もともとは6月開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の状況で延期することに。オンライン開催を拡大するとともに、「客席数も減らしまして、感染症対策もしっかりして、リアルな上映会も試行錯誤で行なっていきたい」(別所)と語る。東京都知事・小池百合子は「長い間世界への発信を映像を通じてアートという形でお伝えいただいていること、大変嬉しく思います」と称える。「新型コロナウイルス禍にあって、ウィズコロナの認識のもとで、新しい日常との両立ということになろうかと思います。会場では感染防止宣言も行い、安心安全な運営に期待をしているところです。大変楽しみにしております」と期待を寄せた。同映画祭では、シネマスポーツプロジェクト 特別製作作品として森崎ウィン主演の映画『This is Tokyo』も上映されるが、小池都知事は「森崎ウィンさん。ミャンマー出身で、小学校4年の時に日本に来られた。そしてシンガポールの女優さん(ジネット・アウ)が出られる。アジアそっくりそのものがつまってる感じで、楽しみであります」と語る。都知事により、東京の魅力を伝える「Cinematic Tokyo部門」の優秀賞・東京都知事賞としてオーストラリアのCharles Richardson監督の作品『グッピー』も発表され、最後に2人は握手代わりのグータッチで締めくくった。改めて取材に応じた別所は、「中止をしたりひるむのではなく、できることを工夫をして世界発信する。祭りの意味をもう1回考える。人間には祭りが必要だと常々言っております。カンヌやベルリンも試行錯誤しているし、僕らも世界に示すことが1つの勇気につながると信じて開催をしていきたいと思います」と宣言。「9月になってどのような状況かによって考えるところなんですが、関東圏以外の監督、審査員のみなさん、どこまでお招きするかは東京の状況に合わせて様々なプランを用意してお迎えしようと思っています」と明かした。
2020年08月28日2020年8月10日、俳優の渡哲也さんが肺炎で亡くなりました。78歳でした。俳優の渡哲也が逝去10日に肺炎でネットで「涙が止まらない」の声芸能界からは、渡さんを悼む声が次々とあがっています。渡さんと親交の深かった、女優の吉永小百合さんもその1人です。吉永小百合「泳いで恒彦さんのところに行ってしまったのでしょうか」渡さんと映画『愛と死の記録』で初共演して以降、宝酒造株式会社『松竹梅』のCMなど、数々の作品で共演をしてきた吉永さん。長年渡さんを先輩として慕い、突然の訃報に驚きを隠せなかったそうです。同月14日、吉永さんはさびしい胸の内を、こう明かしました。この日、本紙など報道各社に寄せた直筆の追悼コメントには「夏の海が大好きだった渡さんは、泳いで泳いで(実弟で俳優の渡瀬)恒彦さんのところに行ってしまったのでしょうか」と寂しさを隠せず。渡さんが天国に旅立ったことがいまだに信じられない様子で、「大きな病気を何度も乗り越えてこられたのに残念です」と無念の思いをつづった。サンケイスポーツーより引用俳優の渡瀬恒彦さんは、渡さんの実弟で2017年に亡くなりました。吉永さんは、渡さんが大好きな夏の海を泳いで天国の弟のもとへ行ったのではないかと感じたようです。長年、渡さんの背中を見てきた吉永さんだからこそ感じた最後の思い。きっと海を渡り、天国で恒彦さんと再会できたことでしょう。渡さんのご冥福をお祈りいたします。[文・構成/grape編集部]
2020年08月18日8月10日に俳優・渡哲也さんは東京都内の病院で肺炎により逝去した。享年78。この数年、渡さんは肺気腫のために苦しんでいた。本誌が渡さんの闘病生活を目撃したのは、昨年4月、東京都内にある病院の前。酸素ボンベの入ったバッグを右手に持ち、バッグからは鼻まで酸素を送るためのチューブがのびていた。通院に付き添い、車の乗り降りを介助していたのは、愛妻・俊子さん(77)だった。ベテランの映画関係者は言う。「俊子さんは大手鉄鋼会社の役員の令嬢で、青山学院大学では渡さんの1年後輩。渡さんの一目ぼれだったそうです。しかし結婚にこぎつけるまでは何年もかかりました。当時の渡さんには大勢の女性ファンがいたため、なかなか公表することができなかったのです。ハワイで2人きりの結婚式を挙げたのは’71年3月、渡さんが29歳のときです」渡さんと俊子さんの結婚生活は49年と5カ月。しかしその間に、渡さんは幾度も病魔に襲われた。48年前の’72年7月には、京都でテレビドラマ撮影中に高熱を出して病院に運ばれた。「その後、俊子さんの伯父が院長を務めていた東京都内の病院に転院します。当時の俊子さんは妊娠中でしたが、病院食が苦手な渡さんのために、自宅で食事を作っては、運んでいたのです。肉体的・精神的負担が大きかったためか、俊子さんは何度も流産の危機に襲われました」(前出・映画関係者)’74年に放映されたNHK大河ドラマ『勝海舟』では主演だった渡さんだが、肋膜炎のため途中で降板。さらに’91年には、直腸がんに襲われる。その大手術後、渡さんは妻・俊子さんへの感謝の気持ちを雑誌のインタビューで語っている。《女房にも助けられました。(6月)二十日に手術して二十八日抜糸があったんですが、直腸をとっていますから猛烈に痛むのです。看護というのは患者と一緒に痛がっていたら絶対にできないんですね。私が痛がっていることは当然わかっている。その上で、一つ次元の高いところで、ある意味では冷静に患者を見なければいけない》(『文藝春秋』’92年2月号)実は俊子さんは、渡さんの入院中に看護法を看護師から直接指導してもらっていたという。’15年に渡さんは、急性心筋梗塞のため緊急手術を受けたが、俳優復帰のためにリハビリのフォローをしたのも俊子さんだった。当時、夫妻の知人は、その奮闘ぶりについてこう語っていた。「渡さんの退院前から、俊子さんは自宅にリハビリ用のマシンを運び入れていました。室内ランニングやウオーキング用のトレッドミルなどです。マシンを使用する運動のほかにも、階段の上り下りもリハビリになりますが、俊子さんはいつも付き添っているのです。もともと食事にうるさい渡さんですが、いまは減塩食になっており、味つけの工夫も大変です。しかし、かつて石原裕次郎さんが解離性大動脈瘤の手術後に、奥さんのまき子さんが作った減塩食の写真付きレシピがあるそうで、俊子さんもそれを参考にしているようです」渡さんと俊子さんのかつての姿について、石原プロモーションで常務取締役を務めていた仲川幸夫氏はこう語る。「渡さんの自宅には松田優作さんや地井武男さんたちも遊びに行っていましたが、もてなしてくれるのは俊子さん。彼女はとっても料理が上手なので。俊子さんは聡明な女性で、渡さんは何でも彼女に相談していました。芸能界以外の人脈も広くて、そこから得た情報を、渡さんに伝え、彼も仕事の参考にしていたようです。ただ俊子さんは、“表”に出ることは一切ありませんでした。渡さんが石原プロの社長を務めていたときも、もちろんプロダクションの経営に口をはさむこともしなかった。渡さんの長年の介護は本当に大変だったと思いますよ。できればお会いしてお悔やみも申し上げたいです……」この数年、石原裕次郎さんも食べたという俊子さん手作りの減塩料理を口にしながらも、渡さんの頭から離れなかった課題が、“石原プロの幕引き”だったという。実は昨年4月、本誌は石原プロの関係者のこんな証言を報じていた。「渡哲也さんが、ついに俳優引退と石原プロモーションの幕引きを決断したのです」当時、渡さん本人に決断の理由などについて取材を試みた。すると渡さんは目をつぶり、数秒間真剣な表情で黙考した後、付き添っていた運転手に、「事務所に連絡するように伝えなさい」と、静かに言い残して、自宅へと戻っていったのだった。だが石原プロの元幹部は次のように語っていた。「石原プロを“自分の目が黒いうちにきれいに終わらせる”というのは、渡さんにとって長年の悲願でもありました。ほかの(勝プロや三船プロのような)“スタープロダクション”のような終わり方にはしたくないということです。渡さんとしては倒産とか分裂とかで、石原裕次郎さんの名前を汚したくない。それが彼の美学なんです。’11年に健康上の理由で社長からは退きましたが、渡さんが決定したとなれば、ほかの社員たちも従います。幕引きを急いでいるのは、渡さんが自分の体調に自信を持てなくなっているからなのでしょうね」しかし俳優たちの移籍先を探す必要もあったからなのだろうか、石原プロが’21年1月をもって解散することが発表されたのは1年後の今年7月17日。“幕引き”を見届けたかのように渡さんが逝去したのは、それから3週間後のことだった。生前、渡さんは妻に「静かに送ってほしいから、自分が死んでも、葬儀などすべてが終わるまでは誰にも知らせないように」と、伝えていたという。その言葉どおり、お別れ会や偲ぶ会の予定もない。“幕引きは静かに”……、石原プロのみならず、自身の人生の終幕にも美学を貫いた渡哲也さん。その傍らにはいつも辛苦をともにし続けた妻・俊子さんがいた。「女性自身」2020年9月1日号 掲載
2020年08月18日俳優・渡哲也さんが8月10日に肺炎で死去した。78歳だった。訃報を受け、日活映画時代から50年以上も親交のある吉永小百合(75)が追悼メッセージを14日に発表した。「夏の海が大好きだった渡さんは、泳いで泳いで恒彦さんのところに行ってしまったのでしょうか。大きな病気を何度も乗り越えてこられたのに残念です。ご冥福を心からお祈りいたします」66年に映画『愛と死の記録』で初共演した2人。渡さんは印刷会社に務める原爆症の青年役で、吉永扮する楽器店で勤める娘との悲恋物語だ。当時若い2人の迫真の演技は、感動を巻き起こしたという。「当初は、吉永さんと“青春・純愛路線”を築いた浜田光夫さん(76)がキャスティングされていたといいます。ですが浜田さんは右眼を負傷し、降板。アクション専門だった渡さんが、代役に起用されました。原爆がテーマの本作は、当初『被爆者の描写が刺激的すぎる』とカットを命じられたそうです。ですが吉永さんと渡さんは、原爆の悲劇を自分のことのように受け止めていました。そのため、スタッフたちと撮影所前で座り込みの抗議をしたほどだったそうです」(映画関係者)その後も『白鳥』(66)や『青春の海』(67)、『嵐の勇者たち』(69)などで共演し、“日活黄金期”を支えた2人。互いにキャリアを積んでからは、『時雨の記』(98)で中年男女のプラトニックな恋愛を好演。だが、00年の『長崎ぶらぶら節』で共演したことが最後となった。いっぽう渡さんが長年出演した宝酒造「松竹梅」のCMには、10回も登場した吉永。19年末に公開されたCMでは、令和初のお正月を2人で飾った。各メディアによると、この撮影が2人にとって最後の現場になったという。「17年のCM撮影時、闘病中だった渡さんは『最後の1本は大ラブシーンをやりましょう』と吉永さんに呼びかけていました。98年の『時雨の記』では、吉永さんが渡さんを相手役に指名したといいます。歳を重ねても、日活時代で築いた“あうんの呼吸”があるのでしょう。吉永さんも渡さんの“最後のお願い”に、『老夫婦の恋愛作品を作りましょう』と応えていました」(制作関係者)叶わなかった最後の共演。だが残された2人の作品は、これからも愛され続けるだろう。
2020年08月15日渡哲也さんが肺炎のため亡くなったと8月14日に発表された。78歳だった。各メディアによると渡さんは10日、妻の俊子さんに見守られて息を引き取ったという。渡さんの俳優人生には、“闘病”がつきものだった。71年3月に結婚したものの、翌72年7月に葉間肋膜炎で3カ月療養。さらに73年には膠原病との診断を受け、74年2月には胸膜癒着症にかかった。そして91年には直腸がんが見つかった。がんは渡さんの父、そして師である石原裕次郎さん(享年52)の命を奪った病でもあった。「お父さんと裕次郎さんを亡くした経験から、渡さんは『がんは早期治療が肝心だ』と理解していました。病名を公表することでいっそう、がんと向き合いたいと考えていました」(芸能関係者)そんな渡さんを支えたのは、俊子さんだったという。「渡さんが仕事で穴をあけることになり、俊子さんは関係各所に頭を下げて回りました。また医師には『どんな形でもいいから生きてほしい』と頼み込んだといいます。そんな姿に、渡さんのお母さんは『あなたには苦労のかけっぱなしで……』と涙ながらに感謝したそうです」(前出・芸能関係者)97年にも早期の大腸がんが見つかった渡さん。15年6月には、心筋梗塞で緊急入院をしている。「渡さんが突然胸の苦しみと息苦しさを訴え、俊子さんはすぐに病院へ。俊子さんが素早く異常に気付いてくれた甲斐もあって手術は1時間30分ほどで済み、数日後には一般病棟へ移りました」(病院関係者)渡さんの窮地を救った俊子さんは、献身的に看護し続けた。「俊子さんは1カ月もの間、病室に泊まり込みで看病していました。退院前から自宅にリハビリ用のマシンを運び入れ、さらに退院後には食事を減塩食に切り替えました。その際には、裕次郎さんの奥さんであるまき子さんのレシピを参考にしていたそうです」(渡夫妻の知人)晩年には呼吸器疾患などのため、外出時に酸素吸入器を手放せなかった渡さん。結婚翌年から48年。病との戦いだった人生を支えたのは、俊子さんという“戦友”だった――。
2020年08月15日2020年8月10日、肺炎により逝去していたことが判明した、俳優の渡哲也さん。連続ドラマ『大都会』(日本テレビ系)や『西部警察』(テレビ朝日系)などで一世を風靡した俳優の死に、人々からは悲しみの声が広がっています。俳優の渡哲也が逝去10日に肺炎でネットで「涙が止まらない」の声同月14日、お笑いコンビ『ドランクドラゴン』の塚地武雅さんがTwitterを更新。テレビドラマ『おいしいごはん 鎌倉・春日井米店』(テレビ朝日系)にて、渡さんと共演した際のエピソードを明かしました。ドランク塚地が感じた、渡哲也の『プロ根性』ドラマの撮影中、主演である渡さんが、椅子を手刀で割るシーンがあったといいます。しかし、本番になると、渡さんは手刀ではなく、頭で椅子を割ったというのです!渡さんのサービス精神と勇ましさに感動した塚地さんは、「プロだ!僕もこうならなければいけない!」と、身の引き締まる思いだったといいます。渡哲也さん…おいしいごはん というドラマで師弟の役でご一緒させていただきました。椅子を手刀で割るというシーンで本番、いきなり頭で割る姿を見て驚きとサービス精神と漢気を感じ、プロだ!僕もこうならなきゃいけない!と思ったのを覚えています!— ドランクドラゴン塚地武雅 (@tsukajimuga) August 14, 2020 茶目っ気あるエピソードも明かす塚地さんは、ドラマの撮影をしていたある日、渡さんに「塚地くん、ちょっと!」と呼ばれたといいます。「僕のお芝居がよくなかったのか」と怒られる覚悟で向かうと、各国のミス・ユニバースが写る新聞を広げて、「塚地くんはどの子がタイプ?」と聞いてきたそうです。渡さんの意外な問いかけに、「茶目っ気のある面白い人」だと感じた塚地さん。「短い間でしたが、近くで色々見せていただいたことは勉強になることばかりで忘れません」と、渡さんへ追悼の言葉を贈りました。ある日、渡哲也さんに前室で「塚地君、ちょっと!」と呼ばれ、僕のお芝居が良くなかったのか…?怒られると思いながらむかうと新聞のミス・ユニバースの各国の代表の写真を見せて「塚地君はどの子がタイプ?」と。茶目っ気たっぷりの面白い方で。笑— ドランクドラゴン塚地武雅 (@tsukajimuga) August 14, 2020 塚地さんの投稿には、さまざまなコメントが寄せられています。・とてもお優しい人だったのですね…。・素敵なエピソード。渡さんの人柄がよく分かります。・すごくいい話。思わず泣いてしまいました。茶目っ気あふれる行動は、塚地さんを和ませようとした、渡さんなりの心遣いだったのかもしれませんね。[文・構成/grape編集部]
2020年08月15日2020年8月14日、俳優の渡哲也さんが肺炎のため亡くなったことが発表されました。渡さんは、昭和時代を彩る数々の名作に出演。俳優の石原裕次郎さんが創立した石原プロモーションに所属し、ドラマ『西部警察』シリーズなどでも活躍しました。渡さんはテレビドラマで活躍する一方、多くのCMにも出演しています。裕次郎さんがCMキャラクターだった清酒『松竹梅』を引き継ぐ形で、渡さんがオファーを受けました。同年7月29日からは、2人が共演するCMが公開されており、多くの人が悲しみにくれながら動画に注目をしたようです。酒を飲みかわす渡さんと裕次郎さん。生前、2人が『松竹梅』のCMで共演することは叶いませんでした。裕次郎さんがCMキャラクターを務めて50年となる節目に、合成技術を使って夢の共演となったのです。動画を見た人たちからは悲しみの声が寄せられていました。・合成だと分かっていても、このCMで2人の姿を見ることができてよかった。・悲しいです。天国でもおいしいお酒を飲んでもらいたいです。・昭和の名俳優がまた1人亡くなってしまい、言葉がありません。きっと今頃、天国で裕次郎さんとゆっくりお酒を飲んでいるのかもしれませんね。[文・構成/grape編集部]
2020年08月15日俳優の渡哲也(本名:渡瀬道彦)さんが10日、肺炎のため都内の病院で死去した。78歳だった。石原プロモーションは、公式ツイッターに文書を掲載し、「弊社 渡哲也(本名:渡瀬道彦)が長きにわたり病との闘いの末去る令和2年8月10日午後6時30分に肺炎のため享年79をもって都内の病院にて旅立ちました。ここに生前のご厚誼を深く感謝いたしますとともに、謹んでお知らせ申し上げます」と報告。「葬儀につきましては、静かに送ってほしいという故人の強い希望により本日、家族葬というかたちで執り行わせていただきました」と伝え、「誠に勝手ながらご香典、お供物、ご弔電、ご供花などの儀は故人の遺志により固くご辞退申し上げます」と記した。そして、「尚、お別れ会・偲ぶ会等の実施につきましては、故人の意向により執り行いません。何卒、故人の遺志をご理解いただけますようお願いいたします。皆様のお心の中にて故人への祈りを捧げていただけますことを心よりお願い申し上げます」と呼びかけた。
2020年08月14日2020年8月14日、俳優の渡哲也さんが逝去したことが分かりました。78歳でした。サンケイスポーツによると、同月10日に肺炎で逝去したとのこと。すでに近親者のみで密葬を行っています。複数の関係者によると、入院先の東京都内の病院で親族に看取られ、静かに息を引き取ったという。2015年6月に心筋梗塞の手術を受けて以降、入退院を繰り返し、ここ数年は呼吸器疾患などで自宅療養を続けていた。サンケイスポーツーより引用渡さんは、俳優・石原裕次郎さんが創立した石原プロモーションが制作した連続ドラマ『大都会』や『西部警察』シリーズなどに出演。渋い演技が好評を得て、数多くの作品で活躍しました。ご冥福をお祈りいたします。渡哲也さんについての記事はこちら[文・構成/grape編集部]
2020年08月14日「SSFF & ASIA」代表の別所哲也、フィルムメイカー・俳優の斎藤工、「SSFF & ASIA」アンバサダーのLiLiCoが参加するオンライントークが、8月6日(木)に配信される。米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」(SSFF & ASIA)は、「ショートフィルムの日」を皮切りに、映画祭が延期となった秋までの間、未曾有のパンデミックにより大きく変化しようとしている映像制作や映画祭、映画配給・興行といった映画業界の各立場からゲストを迎え、現状と未来像を語るトークセッションシリーズをYouTubeチャンネルでオンライン配信中。そのシリーズ第5回目では、別所さんがホストを務め、LiLiCoさんと共に斎藤さんを迎え、ビヨンド・コロナ(アフターコロナ/with コロナ)と言われる中で挑戦する映画業界についてトークを展開。斎藤さんがスタートさせたリモート製作の『TOKYO TELEWORK FILM』の挑戦や経緯について、「A TAKUMI SAITOH FILMS」として自らの監督、出演作をオンライン発信するプラットフォームをローンチした意図、岩井俊二監督作『8日で死んだ怪獣の12日の物語』出演で感じた俳優としての視点。そして今後、映像制作や俳優としての仕事がどんな新たな局面を迎えていくのかトークをしていく。ライブ配信中には、本年の「SSFF & ASIA」とのコラボレーションイベントについて発表もあるという。トークセッションシリーズ第5回「別所哲也×斎藤工×LiLiCo 映画業界が挑戦するビヨンド・コロナを徹底トーク」は8月6日(木)20時~SSFF & ASIA YouTubeチャンネルにてライブ配信。(cinemacafe.net)
2020年07月16日バレエは、親が子どもにさせたい習い事のひとつとして根強い人気がありますよね。華やかだというだけでなく、習うと姿勢や身のこなしが美しくなることも、バレエの魅力ではないでしょうか。そんなバレエは何歳から習い始めるのがいいのか、悩むお父さん・お母さんは少なくないはずです。このコラムでは、子どものからだの成長を踏まえた「バレエを習い始めるベストなタイミング」を説明しましょう。バレエスクールに入学できるのは何歳から?子どもがバレエを習うことができる最低年齢は何歳なのか調べてみたところ、多くの幼児向けバレエスクールが3歳以上を対象としているようです。3歳といえば、自分の意志でトイレに行きたいと伝えられるようになる年齢。バレエを習い始めるのは早くても3歳からという見方が一般的だといえます。また、3歳以後何歳までが習い始めに適しているのかも気になるところ。本場パリで研鑽を積んだ講師陣が教える「堀文雄クラシックバレエ・スタジオ」や、創立60年以上の伝統を持つ「渡バレエ学校」をはじめとした複数のバレエスクールは、「本格的にバレエを身につけたいのであれば、小学校低学年(6歳~8歳)までに習い始めるのが理想的だ」としています。つまり、子どもにバレエを習わせるなら3~8歳ごろがベストだと考えられているのです。3歳から、踊りが好きならいつでも始め時です。小学生低学年までに始められると良いでしょう。(引用元:堀文雄クラシックバレエ・スタジオ|よくあるご質問)バレエスクールの多くは、子どもの年齢に沿った複数のクラスを用意しています。前出の2つのスクールでは未就学児か小学生かでクラスが分かれます(小学生以上は、経験や学年によりステップアップ)。ほかには、未就学児をさらに細分化してクラス分けしているスクールも。たとえば、英国ロイヤル・バレエ団元プリンシパルの熊川哲也氏が率いるKバレエスクールの子ども向けバレエ教室では、3~4歳が対象の「Toddler Class」、5~6歳が対象の「Kids Class」、7~10歳が対象の「Junior Class」と3つのクラスが用意されています。バレエを「低学年までに」習い始めるべき理由とは?次に、多くのバレエスクールが「バレエは小学校低学年までに習い始めるのが理想的だ」とする理由を掘り下げてみましょう。これには、子どもが運動能力の基礎を築くうえで重要な「ゴールデンエイジ」と「プレ・ゴールデンエイジ」が大きく関係しています。■ 一生に一度しかこない「ゴールデンエイジ」ゴールデンエイジとは、9~12歳ごろにおとずれる、運動能力が著しく発達する時期のことです。その根拠は、アメリカの医学者・人類学者のスキャモンが発表した「スキャモンの発育発達曲線」(下図)によって説明することができます。(画像引用元:国立スポーツ科学センター|女性アスリート指導者のためのハンドブック 1 発育・発達について)スキャモンの発育発達曲線では、人間の器官を一般型、神経型、生殖型、リンパ型の4つに分類し、それぞれが100%に成熟するまでの発達の仕方が曲線で示されています。このうち「神経型」の青い線を見ると、10歳ごろまでに大人と同等のレベルまで発達することがわかります。神経型は脳や神経の働きのことであり、スポーツの面ではすばやい身のこなしや反射神経といった重要な能力に関与しています。この能力が10歳ごろまでに完成することから、9~12歳ぐらいのゴールデンエイジは運動能力の基礎を築くうえで重要な時期だと言われているのです。ちなみに、ゴールデンエイジは一生に一度しかやってきません。「神経が急激に発達するこの時期に運動することで、スポーツがうまくなる」という、まさに「黄金期」なのです。■ 年中~低学年にあたりにやってくる「プレ・ゴールデンエイジ」このゴールデンエイジの前段階が「プレ・ゴールデンエイジ」です。リオ五輪で陸上日本代表のコーチを務めた堀籠佳宏氏によると、プレ・ゴールデンエイジは骨も筋肉も発達途上な時期。この年齢のうちに競技を問わず幅広い運動経験をすることが、のちの運動能力の基礎になるのだそう。ゴールデンエイジを最大限充実させるには、プレ・ゴールデンエイジからの運動経験が重要なのです。そんなプレ・ゴールデンエイジがやってくるのは、5~8歳ごろ。年中~低学年ごろにあたる時期です。運動能力を高める一生に一度のチャンスを最大限に活かすためにも、プレ・ゴールデンエイジにしっかり運動経験を積むべきである……。これが、3歳~低学年ごろまでにバレエを習うべきとされる理由だというわけです。8歳を過ぎてからバレエを習い始めたら、遅すぎるの?では、子どもが8歳を過ぎてからバレエに興味を持ち始め、習いたいと思っても、それでは遅すぎるのでしょうか?答えは「ノー」です。老舗バレエ用品メーカーのチャコットによると、8歳以降から始める子どもたちは、“憧れの○○さんのように踊りたい”など目的意識がはっきりしているため、バレエを習う意義は十分にあるのだそう。本人にしっかりと意思があれば、遅めのスタートでも問題ないのです。現に、8歳以降からバレエを習い始めた方でも活躍している人はいます。たとえば、熊川哲也氏の習い始めは10歳。英国の2つのロイヤル・バレエ団でプリンシパルを22年間にわたって務めた吉田都氏も、9歳から習い始めたそうです。また、43歳で引退するまでバレエの第一線で活躍し続けた草刈民代氏も8歳からバレエを習い始めたので、比較的遅いスタートだったと言えます。子どもが「バレエを習いたい」という高い意欲を持っていたら、年齢に縛られず、ぜひ挑戦させてあげてください。***華やかな舞台が、大人も子どもも惹きつけるバレエ。頑張ってレッスンを積み重ね、初めてトウシューズを履けるようになったら感動もひとしおでしょう。3歳を過ぎたら、レッスンを始めるかどうか、ぜひご検討ください。文/かのえかな(参考)Kバレエスクール|熊川哲也のキッズ・バレエ Ballet Garden堀文雄クラシックバレエ・スタジオ|よくあるご質問渡バレエ学校|よくあるご質問松山バレエ団|松山バレエ団に関するよくある質問チャコット株式会社 公式Webサイト ニュース|これからバレエをはじめたいキッズ&ママ・パパへ株式会社 明治|成長期に必要なトレーニング~「敏しょう性」~Hanako ママ web|あらゆるスポーツの基礎を作る、プレ・ゴールデンエイジって?国立スポーツ科学センター|女性アスリート指導者のためのハンドブック 1 発育・発達についてDews (デュース)|引退を発表したバレリーナ吉田都の魅力をバレエ経験者が解説!STAGE(ステージ)|〈草刈民代〉キャリア35年のバレエを完全引退。女優道をまい進する彼女が見出した試行錯誤の人生とは…
2020年02月20日昨年創立20周年を迎えたKバレエ カンパニーの21年目の幕開けを飾る公演、『白鳥の湖』が1月29日(水)から2月2日(日)まで東京・Bukamuraのオーチャードホールで上演される。このクラシックバレエの代名詞の、熊川哲也演出・再振付版の初演は2003年。英国を代表する舞台美術家ヨランダ・ソナベンドが手がけた美しい舞台装置や、熊川による巧みなストーリーテリングが好評を博し、初演以来たびたび上演されてきたプロダクションだ。毎回大きな話題になるのはやはり、白鳥オデットと黒鳥オディールという、相反するキャラクターを演じ分ける主演ダンサー。今回も、Kバレエ カンパニーならではの豪華な競演が実現する。まずは、今作に主演するのは5年ぶりとなる、世界最高峰の舞姫・中村祥子。そして、熊川をして「天才」と言わしめる若きプリンシパル・矢内千夏。さらには、2018年の公演で急きょ代役を務めて高い評価を得た小林美奈に、今回が初役となる成田紗弥。彼女たちがそれぞれのパートナー、遅沢佑介、高橋裕哉、堀内將平、山本雅也とともに織りなす、ドラマティックな『白鳥の湖』の世界に期待したい。文:町田麻子
2020年01月28日クリスマスを舞台にした作品であることから、毎年このシーズンになると世界中で上演される古典バレエの名作『くるみ割り人形』。チャイコフスキー作曲によるお馴染みの音楽と、イブの夜に少女が見る夢という大筋は変わらないながら、その演出・振付はバレエ団によって異なっており、熊川哲也が手がけたKバレエ カンパニー版は豊かな娯楽性を最大の特徴とする。スケール感あふれる舞台転換や、時にユーモラスな展開など、バレエを観たことがなくても楽しめるファンタジー大作だ。初演は2005年で、2008年から10年間はTBS赤坂ACTシアターにて、比較的小さな劇場だからこそ表現できる親密さや温かさを前面に押し出した「赤坂Sacasバージョン」として上演。しかし2018年には舞台を大劇場へと戻し、スケールアップした演出、そしてフルオーケストラによる生演奏とともに上演され好評を博した。今年も、会場は昨年と同じ東京・Bunkamuraのオーチャードホール。熊川哲也のこと、さらに進化した『くるみ割り人形』を届けてくれることだろう。11月28日(木)から12月1日(日)までオーチャードホールで上演された後、12月5日(木)に愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール、12月7日(土)に大阪・堺市民芸術文化ホール(フェニーチェ堺)大ホール、12月10日(火)に福岡サンパレス、12月14日(土)に福島・とうほう・みんなの文化センター 大ホールにて公演を行う。文:町田麻子
2019年11月27日熊川哲也率いるKバレエカンパニー『マダム・バタフライ』が開幕。プッチーニのオペラに熊川独自の目線を加えて送る新作だ。初日のもようをレポートしよう。【チケット情報はこちら】舞台上には、月岡芳年や喜多川歌麿の美人画を思わせる洋装と和装の女性が二重写しになった、オリジナルの幕。実際、和洋の対比は、この作品の大きな特徴となっている。プロローグで、目隠しをした少女の傍らでひとりの武士が短刀で自害する。この少女こそ幼き日のバタフライ。蝶々夫人の父が帝から短刀を下賜されて切腹して娘に短刀を遺し、その短刀で蝶々夫人が自害するというオペラのエピソードを発展させた場面だ。続く1幕1場の舞台は、アメリカ海軍士官学校。卒業を控えた水兵の卵達が、若々しく喜びに満ちた踊りを見せる。教官のピンカートン(堀内將平)が颯爽と登場。敬礼も織り交ぜたダンスが小気味良い。やがて、ピンカートンの恋人のケイト(小林美奈)、さらに色とりどりのドレスに身を包んだ女性達も現れ、男女の踊りの輪が広がっていく。だがピンカートンには長崎行きの辞令が下る。1幕2場は、来日したピンカートンが仲間と遊郭を訪れる場面。小部屋に入った女性達が買い手を待っている。女性達をきびきびととりまとめるスズキ(荒井祐子)。やがて花魁道中が始まった。優美に扇をひらめかせる夜の蝶達の中心にいる花魁(中村祥子)は、憂いを帯びた圧倒的な美しさだ。と、そこにバタフライ(矢内千夏)が飛び出してくる。さくらさくらのメロディで天真爛漫に踊るバタフライに、すっかり魅了されるピンカートン。道化的な斡旋人ゴロー(石橋奨也)の仲立ちで二人の”結婚”が決まり、その場は祝祭モードに。ここまでが、オペラにはない、いわば熊川が創った前日譚だ。2幕以降はオペラをベースに、クライマックスまで、息を呑むような美しく哀しい人間ドラマが展開する。バタフライとピンカートンの結婚式。矢内のバタフライからは、これまで信じてきた宗教を変える戸惑いと、アメリカ人の妻としての誠を捧げようと心を決めるいじらしさが手に取るように伝わってくる。幼馴染のヤマドリ(小林雅也)も祝福するが、バタフライの叔父ボンゾウ(遅沢佑介)はピンカートンに刀を向ける。すると、バタフライがその前に立ちはだかり、さらにあの小刀がボンゾウを止めるのだった。その後のバタフライをいたわるピンカートンとの甘やかなパ・ド・ドゥは感動的。しかしそれは束の間の愛に過ぎず、ピンカートンは帰国。洋装もすっかりさまになったバタフライは、愛の結晶である一子を育てながらその帰りを待つが、彼女を待ち受けるのは悲しい運命だったーー。バタフライが凄絶な覚悟を決めるラストシーンでの、能さながらの舞は必見。なお、この日のレッドカーペットには、三田佳子、コシノ・ジュンコ、斉藤由貴、トリンドル玲奈、デヴィ・スカルノ、瀧川鯉斗も登場。『マダム・バタフライ』世界初演という特別な日を彩った。10月10日(木)~10月14日(月・祝)まで東京文化会館大ホールにて公演。チケット発売中。取材・文:高橋彩子
2019年10月04日