夫婦愛が軸となる。「身を焦がすような恋も、浮気も裏切りもない夫婦愛はオペラにはなりにくいテーマ。悲劇が足りないという人もいるが、この作品はそんな俗説を超越して、より深く、より高貴な人間性という理念を追求している。声楽的オペラというより、むしろ器楽的で、歌手にも高度な技術が要求される。しかも気品とパワーが必要な、ある意味ワーグナーより難しいオペラ」(飯守)
演出はバイロイト音楽祭総監督のカタリーナ・ワーグナー。リヒャルト・ワーグナーの曾孫でもある。父ヴォルフガングは20年前に新国立劇場開場記念公演の《ローエングリン》(ワーグナー)を演出しているので、父娘2代にわたる演出家としての登場となる。
「《フィデリオ》に新しい視点を提供したい。
大きなテーマとなるのは、人はどのように認識するかということ。同じものを見ても人それぞれ異なる認識を持つ。たとえばレオノーレは女性だけれど男性として認識される。それをもう少し広く考えてもよいのではないか。人物だけでなく「自由」がどのように認識されるのかも考えなければならない。オペラではピツァロとフロレスタンの関係もはっきりとは見えてこない。最終的にどちらが勝ったのかわからないまま終わってしまう。