くらし情報『観客も判決に関与。緊張感溢れる法廷劇『TERROR テロ』』

観客も判決に関与。緊張感溢れる法廷劇『TERROR テロ』

従って争点となるのは、彼の行為の是非をどう判断するかという一点のみ。コッホ本人および彼の上官にあたるラウターバッハ中佐(堀部圭亮)の理路整然とした供述からは、7万人を救うために164名を犠牲にしたコッホの判断が、軍人として理にかなった冷静な判断であるという見解がうかがえる。一方、被害者の妻であるマイザーの涙ながらの証言からは、命の尊さに加え、飛行機がスタジアムに落ちる前に乗客がテロリストを取り押さえることに成功した可能性も示される。果たして、コッホの行動はどう裁かれるべきなのか……?

飄々とした話しぶりに情熱を滲ませて熱弁をふるい、被告を弁護する橋爪。知略に富んだ鮮やかな弁舌で、被告の罪を問いただしていく神野。名優ふたりの長台詞は実に聴き応えがある。共にカントを引用するところにドイツのお国柄もうかがえるが、同時に、世界中がテロの脅威にさらされている今、ここで議論される事柄は私達にとってもまったくもって他人事ではない。リアルなテーマを前に、観客はそれぞれの価値観や問題意識を問われ、有罪・無罪のどちらかの箱にカードを入れるというかたちで答えを出す。
その得票数によって、劇の最後に裁判官が読み上げる判決は変わる。

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