椎名桔平が3度目の『レインマン』で新たに兄役に挑戦
一方椎名は「レイモンドが難役なのは、過去に目の前で見てきたわけですから…」と苦笑い。「ただ僕が(当時レイモンドを演じた)橋爪功さんと同じうまみを出せるかといえば、そこでは勝負出来ない。だから例えばこの人がこういう心理状態にある時、体をどう作動させているかなど、ひとつひとつ自分の中で消化していくことで、自ずとこの役の動きや話し方といったものが生まれていくんじゃないかと思います」と、新たなレイモンド役に臨む心境を明かした。
そんな椎名の言葉に、「今の話を聞いて、ご一緒するのがさらに楽しみになりました」と松井。「やっぱりその人がそうなってしまう理由というのは、誰かの模倣ではなく、その体の、心の中にあるわけですからね。それがお客さんにとっても一番強い表現になるはずなので」と語ると、椎名も「やはり、そういった役への深い探求が出来るのが舞台の稽古であり、とても贅沢な時間。優れた演出家の方に、“それは違うぞ”とかいろいろ言われるのは、役者にとっては大きな喜びでもありますから」と笑う。すると松井も「そこは僕も一緒に楽しみたいですね」と、これから始まる稽古の充実ぶりを予感させ、さらに「その中でお客さんがグッと惹きつけられるような、濃密な空間をつくっていけたらと思います」