「キャストが変わればまったく違う芝居になる」と蓬莱も期待する。
それにしても、蓬莱はなぜ母と娘を書いたのか。「今の日本では、女性はいろんなものと戦っていて、戦わなきゃいけない量が男性より多い気がするんです。どう生きることが幸せなのかと、ファッションから結婚や出産まで、あらゆることが常に世の中から定義づけられていて。なかでも、子どもを産んで母になるということについては、産まないという選択を含め、女性が抱える大きなテーマだなというふうに感じるんですね。だから、今この日本で戦っている女性をそのまま舞台に乗せたいと思ったんです。タフさとユーモアを忘れずに戦っている女性たちへのリスペクトを込めて」
もちろん、女性たちの苦しみを描いたからといって世の中がすぐに変わるわけではない。しかし、蓬莱は言う。
「舞台上の彼女たちが前へ進もうとしている姿を体感して感動するだけで、きっと力になるんじゃないかなと思うんです。フィクションというのは作家が祈りを込められることが強み。そこにどんな祈りを込めるのか、そこにこそ僕が書く意味があると思っています」
3月5日(火)に東京・紀伊國屋ホールで開幕したあと、高知、北九州、京都、豊橋、長崎と各地をめぐる。