仏で大成功!亜門が挑む日本人オペラの金字塔!いよいよ開幕
と教え込まれて育った少年時代の溝口を象徴する彼が、大人になった溝口と常に対峙し、並行して溝口の内面を表現する。演じる中学生の少年ダンサー(この日は木下湧仁)の動きがキレキレだ。
溝口のもうひとりの分身とも言える友人・鶴川(高田智士)や、父(小林由樹)、母(林正子)、道詮和尚(畠山茂)がそれぞれに存在感を示すなか、非常に限られた出番ながら強烈なインパクトを残すのが、若き日の溝口が好意を寄せていた有為子(嘉目真木子)と、溝口がその生まれ変わりと感じた女(冨平安希子)だ。嘉目と冨平は、ダブルキャストの一方の公演では、それぞれの役を入れ替えて出演する。これはオペラ台本にはない、原作の意図を巧みに反映したキャスティング側のファインプレイと言えそうだ。
そして、このオペラのもう一方の主役とも言えるのが合唱(二期会合唱団)。古代ギリシア劇のコロスのような物語の進行役であり、群衆であり、この作品の音楽上の特徴のひとつでもある経文も唱える。終幕の最後、禅宗の経文である「楞厳呪(りょうごんしゅう)」が導くクライマックスには鳥肌が立った。
その音楽全体をシュアにまとめる指揮者は、フランソワ=グザヴィエ・ロトの秘蔵っ子、1985年生まれのフランスの新鋭マキシム・パスカル。