パヴァロッティの愛弟子。22歳の若さでザルツブルク音楽祭にデビューし、キャリアの初期はモーツァルトを中心に活躍していたが、近年はベッリーニやドニゼッティなどのベル・カントもの、そしてフランス・オペラ、特に今回のウェルテルのような、ヴェリズモ的な性格も孕む重めのテノールの役にレパートリーを広げている。「声のキャラクター的にも心理的にも、いまの私はそれが歌える成熟期に入っていると思います」と手応えを語るように、取材後に見学した舞台稽古でも、美しい声はもちろん、人妻への破滅的な愛に突き進む激しい感情を表現しきって、まさにハマり役と思わせる熱演だった。
今回、彼以外は全員日本人キャスト。「唯一の外国人だというのは、たまらなく気に入ってますよ。テノールはみんな目立ちたがり屋ですから(笑)。素敵な経験を楽しんでいるところです。稽古の間に、音楽全体のクォリティが非常に高く作り上げられてきたのも強く感じます。
美術・演出も含め、トータルに高いレベルで、アジア屈指の劇場にふさわしいプロダクション。必ず気に入っていただける、とても素敵な舞台ですので、ぜひお越しください」
取材を終え謝意を述べると、「もう少しいい?」