人を信じ、本気でぶつかる。薮宏太主演ミュージカル『ハル』開幕
という言葉から自動的に連想される、希望や輝きなどとはある意味逆の面持ちで暮らすハル。病気になる前までは無邪気で元気だったのに、病気を克服してからは心を閉ざした覇気のない生活をしていた。それはなぜなのか。本人だけではなく、母親や親友という周りの人間たちの思いが絡み合い生まれた複雑な状況が、歌で、芝居で、丁寧に描かれる。そこに突然現れる真由という存在。ハルの過去とも現在ともつながっていない新しい人物との出会いは、ハルの閉鎖的な気持ちに大きな風穴を開ける。真由の「あなたを知りたい」という言葉から生まれる安心、正直になる心、初めて口に出す言葉……。たったひとりの存在がもたらす変化、広がっていくハルの世界は、観ていて救われるようだった。
さまざまな思いを抱えるハルを演じる薮の歌声と、北乃ののびのびとした歌声が、時に離れ、時に重なりながら物語は動いていく。さまざまな立場の人たちの前向きな気持ちも後ろ向きな気持ちも掬いながら結末へと進んでいくなかで、幅広い楽曲の数々が登場人物それぞれの繊細な気持ちをあぶり出し、物語をより深いものにしていた。関西テレビ放送開局60周年記念 ミュージカル「ハル」は、4月22日(月)から28日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。