東野圭吾の真骨頂! ミステリ&人間ドラマで感動を呼ぶ「仮面山荘殺人事件」開幕
東野作品がこれほど絶大な人気を得ている要素のひとつが、ミステリ、推理小説としてのクオリティの高さ、謎解きの面白さだけにとどまらない、人間ドラマのパートがもたらす感動だが、本作でもそれはいかんなく発揮されている。
本作でこの部分を大きく担っているのが、平野が演じるいまは亡きヒロイン・朋美の存在である。事故で夢を絶たれた絶望、高之との出会いをきっかけに明るさを取り戻していくさまが、決して多いとは言えない出演シーンの中で感情豊かに表現されているのに加え、そんな彼女を心から大切に思っている周囲の人々(とそう思わない人間)によって、彼女の人間性、そしてこの事件の真相が浮かび上がってくる。
山荘での殺人事件は誰が何のために起こしたのか? 朋美の死は本当に事故なのか? それとも他殺なのか? 登場人物のひとりが途中でこう漏らす。「死体よりも生きている人間の方が怖い」――。登場人物たちの仮面が1枚ずつはがされ、その素顔が露わになっていくが、全てが明らかになったとき、観客は東野が紡ぎ出し、成井が組み立てたこの芝居の構造そのものにあっと驚かされる。
「仮面山荘殺人事件」は、10月6日(日)までサンシャイン劇場、10月11日(金)