男が全員フツー以下!『空と海と蜃気楼と』に見る昼ドラ常連作家津雲むつみ作品のリアル
この作品含め、津雲作品をひと言で言い表すなら、「ドロドロ」です。それ故、どの作品も奪い合うように昼ドラ化されたわけですが、そこで気が付いたことがあります。
津雲作品に登場する男性は、みなフツー以下なんですよ。ものすごく現実的なんです。自分に甘いし、約束は破るし、浮気はするし。ホント夢のカケラもありません。
だからこそドロドロの展開になるんですよね。男が少女マンガのヒーローみたいに、女に一途で気が利いて頭がよかったら、女同士のゴタゴタとか起こらないんです。
ヒーローがその辺うまく処理しちゃいますから。主人公が襲われそうになったって、足首捕まれる前に助けてくれるに決まってます。
カッコイイ男子が出てこないのに、なにが津雲作品の魅力かって?そりゃ、男が一般のダメ男なのが、異様にリアルだからです。
セクハラやレイプに近い「性に対する嫌悪感を起こす事件」って、女ならたいてい経験しているはずです。いかにも現実にありそう、こういう男いそうっていうヒリヒリした感じが、とても生々しいんです。
子ども時代から老いて死ぬまでを描くので、「女の業」をつくづく感じます。
「人生楽じゃない」と、しみじみ秋の夜長ってことで。
Text/和久井香菜子