一筋縄ではいかない恋愛小説家に学ぶ正反対の2つの視点を持つことについて
に思えなくもない『日々の泡』ですが、よく読むと「肺に睡蓮の花……?」とそもそもクロエの病気が意味不明だし、コランについては資産家の息子のくせに花代くらいで生活苦になるのかよ、と突っ込みたくなるところも満載です。だけどそのシュールさがこの小説のいちばんの魅力でもあり、他にも水道の蛇口からウナギが出てきたり、ネズミがしゃべったりするので、細かいことはいちいち気にしていられません。ところどころで「はあああああ???」と思いつつも作品世界に吸い込まれ、意味不明なはずのその描写に、この世の物とは思えない美しさや儚さが見てとれてしまう、というのがこの『日々の泡』なのです。
しかし、『日々の泡』はかなり奇妙であるとはいえ、基本的にはどこまでもロマンチックな恋愛小説です。12月に『日々の泡』を読んだりしたら、もしかしたら1人でいるのがちょっとさみしくなってしまうかもしれません。そこで、そんなあなたにおすすめしたいもう1冊が、ヴァーノン・サリヴァンの小説『墓に唾をかけろ』。こちらはタイトルからしてとんでもねえですが、ストーリーもとんでもない。黒人の弟をリンチされ殺された兄が、白人の姉妹を弄んだ上に殺して復讐するという物語です。