一筋縄ではいかない恋愛小説家に学ぶ正反対の2つの視点を持つことについて
性描写や暴力描写がかなり生々しく下品なので、俗悪な人種差別小説として、出版当時は裁判沙汰にもなったそう。
なんでそんな小説を『日々の泡』と一緒にすすめるのかというと、実はこの2つ、作者が同じなんですよ。ヴァーノン・サリヴァンというのは、ボリス・ヴィアンが名乗った別の名前として、広く知られています。一方でベタベタに甘い恋愛小説(変だけど)を書いておいて、別の名前で裁判沙汰になるほどの禁書を書くボリス・ヴィアンという作家、ミステリアスで謎が尽きないので私は大好きなんです。
賞賛しつつ唾を吐きけるという態度なぜボリス・ヴィアンは、こうも相反するイメージの小説を書いたのでしょうか?小説家以外にも、ヴィアンはトランペット奏者であり、俳優であり、歌手であったりと多才な人物でありましたが、彼のことを知れば知るほど、私はなんだかこの人に欺かれているような気分になってきます。
いよいよ2015年も終わりが近付き冬も深まってきましたが、1人でさみしくなったときも、恋にズブズブとのめり込みそうになったときも、思い出してほしいのは『日々の泡』と『墓に唾をかけろ』です。片方で赤面するほどのスウィートな恋愛を描きつつ、片方で読むだけで不快になる女性への暴力を描いたボリス・ヴィアン。