ドラッグの誘い、断れますか?『エスケープ』が描く現実から目を背けてしまう人間の弱さ
あなたのすぐそばにあるかもしれないドラッグの罠
(c)by bradleygee
ドラッグへの第一歩は、本当に簡単なことから始まるのだと思います。私が今、そういうものと縁のない生活をしているのは、単に身近に触れる機会がなかったからです。強い意志があってその世界に入らなかったわけではありません。
芸能人でなくても、飲みに行けば誘いの場所はあったのだし、若い頃はそれこそ他人に責任を負っているわけでもない。目の前に甘い誘惑があったら「試してみよう」と思ったかもしれません。ほんの軽い気持ちでたばこを吸い始めたように。
そうして加奈子はドラッグを入手し、なんでもないことで人志とはうまくいかなくなり、そして売人をするまでになってしまうのです。
「まとまったお金があれば人志とふたりで南の島に行ける。
そしたらもう一度前みたいにうまくやれるって……。私、バカだよね……」
誰だって幸せになりたい。できれば誰かと。恋人同士のふわふわとした甘い時間は、非現実的で夢をみるようでしょう。
でも生きていくのに、どんなに甘い関係の二人でも、現実から目を背けてはいられないのです。生活していくお金、未来を考える力、愛情とエゴのバランス。