はじめに
狩猟時代の後、農耕時代には、作物が生産できる「土地」があれば生活の保障になりました。しかし時代が進み、都市の発達とともに、事業や生活を守るために仲間同士の助け合いの制度が生まれました。それが、「生命保険」の始まりです。
助け合いとしての生命保険
最初の「仲間同士の助け合い組織」は、中世ヨーロッパの諸都市で発達した「ギルド」という同業組合であると考えられます。ギルドでは、組合員に一定の組合費を払ってもらい、積み立てをしました。積立金は、仲間の葬式代や遺族の生活保障、病気や事業の失敗の救済等のためにも使われました。ギルドが生命保険の始まりであるといわれることもあります。
その後、17世紀終わり頃になって、イギリスのセントポール寺院で「香典前払い組合」が生まれました。この制度は、セントポール寺院の牧師全員で組合を作り、毎月一定の金額を払い込んでおいて、その資金で組合員(牧師)の死に備えるというものでした。
また、1706年には、健康状態、年齢に関係なく一定の掛け金を集め、その年の死亡者に公平に分配する「アミカブル(親愛な)・ソサエティー」という組合が、やはりイギリスで生まれました。
さて、香典前払い組合は、掛け金を払い込んだ年月に関係なく受け取る金額を同じにしたため、長く掛け金を払い続けなければならない若い牧師が、不公平感から次々と組合を抜け、老齢の牧師ばかりとなり、10年ぐらいでつぶれてしまいました。
一方、アミカブル・ソサエティーは、年による死亡者数の違いにより、遺族がもらえる金額が異なるという不公平が分かり、ここでも若い人の加入が減り、老齢の方の加入が増える状況になりました。そこでその対策として、加入資格を、「健康で、12歳~45歳までの者」と改め、死ぬ率の高い老齢の方は入れないという制限が設けられました。
ただし、この加入制限に科学的な根拠はありませんでした。
大数の法則に基づく生命保険の誕生
14~16世紀のルネッサンスの時代以後、ヨーロッパでは、科学の研究が盛んになり「大数の法則」も発見されました。