本田ちゃんの一件があってから、唯香の将に対する疑心は、もはや自分でもコントロールできないレベルまで膨らんでしまった。
将のやさしくする対象の女性が、みんな将を好きになって、将を追いかけているように見えてきた。
将が、道行くキレイな女性に目をやるだけで、動悸が激しくなった。将を誰もいない島に閉じ込めて、二度と他の女に会わせたくない!と思うほどだった。遅かれ早かれ崩壊の日は来ていたのだと思う。
将が、唯香に内緒で合コンに出席したことを、同僚経由で聞いてしまったとき、唯香の中で、最後の糸がぷっつり切れてしまった。
呆れて突っ立っている将の前で、わーわー泣いて、将をなじった。
「そんなにほかの女と浮気したいなら、すればいい!サイテーの軽薄男!」と意味不明なことを泣きわめき、将のアパートの部屋を裸足で飛び出した。
それまでも、鬱々とした視線を投げかける唯香にうんざりしていたのだろう。将は、追いかけても来なかった。
そして、その日、買ったばかりのスニーカーと一緒に、唯香は将という彼氏を失ったのだった。
■これって千載一遇のチャンス?!
それから、3年。唯香は、部署異動の希望を出して支社勤務に変わり、ずっと将とは会わずに暮らしてきた。