舞は、うつむいたまま黙りこくる。由佳は、今さらのように慌ててフォローした。
「もちろん、そんなことないって私は思いたいよ!でも目をそらしちゃいけないこともあるから。友達だから言うんだよ!」
舞は、ずきずき痛む胃を押さえて、席を立った。そして、「ごめん、帰るね」とだけ言って、なにかアワアワ言っている「友達」を置いて、喫茶店を出た。会わなければよかった。相談なんかしなければよかった。
ぐるぐると後悔だけがめぐる。
あとちょっとで崩れ落ちそうな心を必死で保ってきたのに。もうダメだ。決壊だ。舞は目を閉じて立ちすくんだ。
不安がまるで真夏の入道雲のように膨らんでいる。その底は真っ黒。
一真は、もう私を必要としてない。邪魔なだけ。
もうどうでもいい存在。
そんな凶器のような言葉が次々浮かんで切りつけてくる。
信じよう、待っていよう、そんな風に思えた自分が今はもう信じられない。
一真の何を信じればいいのだろう?もう何ヶ月も会っていない、形だけの「恋人」を。
もしかしたら、一真だって、もう別れたいのかもしれない。仕事の邪魔になる彼女なんて。学生時代に付き合っていた女なんか、もう新しさも驚きもない。