そうやって、何事にも誠意を尽くす男だから惚れたのだ。別れるなんて、とても考えられない。
自分が望んでいるのは、ほんのわずかなことなのだ。大それたことなど望んでいない。ただほんの少しだけ、舞のことも思い出してほしい。
1日の終わりだけでもいい。5分でいい。ホッと一息ついた時に、会いたい、声を聞きたい、と思ってほしい。
声だけでも、文字だけでもいい、つながっている証しがほしい。それは、そんなに大それた望みなんだろうか?このままでは自分は壊れてしまう。
一真にとっての理想の彼女でありたい自分と、寂しさに耐えられずに叫びだしてしまいそうな自分と。真っ二つに引き裂かれてしまう。
舞は、スマホを取り出した。
先ほど確認した時から、たったの47分しか経っていなかった。何もすることがない、帰宅後のこの時間ほど長い時間はない。舞は、その日何十回目かわからないため息をついた。
■時間はつくるものだから
「え~、それはさあ、舞がやさしすぎるんだと思うよ」
友人の由佳は、気の毒そうな顔で言った。
「言いにくいけど、・・・・・・一真君、それホントに忙しいだけなのかな?」その言葉に、舞は、じわっと胃液がせり上がるような感覚を覚えた。