私が気になるしのくんの行動しのくんは現在4歳の、発達障害グレーゾーンの男の子です。今回は、ある日公園で出会ったママとの会話がきっかけで定型発達かそうでないのかの境界線が難しく、「グレーゾーン」について考えさせられたお話です。2歳まで意味のある発語がなく、集団行動が苦手だったしのくん。そんなしのくんも4歳になって、ある程度しゃべることができるようになり、集団行動も少しずつですが慣れてきました。そうすると、次に気になるところが二つでてきました。一つ目は、「集中力は1時間が限界」。集中力はもって1時間が限界で、それを過ぎると言うことを聞いてくれなくなる。二つ目は、「人見知りがなく誰にでも話しかける」です。例えば、水族館に行くと隣の知らない人に声をかけたり、公園では誰彼構わず「おはよー」「それ何ー?」などと声をかけに行きます。Upload By keikoこの二つの行動に困っていました…。そして私は、これはきっとしのくんがグレーゾーンだからだと思っていたのです。公園で出会ったママとの会話ある日家の近くの公園で、しのくんと年齢の近い女の子のママと出会いました。そのママとの会話が弾み、しのくんが療育へ通っていることなどを話し、最近悩んでいた「集中力は1時間が限界」のことや、「人見知りがなく誰にでも話かける」ことを打ち明けました。すると…Upload By keikoそのママから、「うちもそうです」とか「うらやましい」など、思いがけない返事が返ってきたのです。私はとても驚きました!グレーゾーンとは?Upload By keiko公園で出会ったママとしゃべって、「グレーゾーンとは?」という疑問だけが残りました。白黒はっきりしてないからグレーゾーンなんでしょうね。できるちゃあできるし、できないっちゃあできない…ほかにもこんなことがありました。ルールを守ってお友達と遊ぶことができない?しのくんはお友達と遊ぶときに、「かくれんぼ」と「だるまさんが転んだ」はできるのに、「鬼ごっこ」はできません。しのくんがお友達と鬼ごっこをしているとき、ずっとしのくん自ら鬼をやっているところを見かけました。どうしてできる遊びとできない遊びがあるんだろう? ルールを理解するのに時間がかかるんだろうか?だとしたら、家で練習した方がいいのかな?と思っています。できることが少しずつ増えている一方で、いろいろと考え込んでしまうこともある…私のグレーゾーンならではの悩みについてでした。執筆/keiko(監修:井上先生より)グレーゾーンについていろいろと考えさせられたお話ですね。4歳で1時間の集中はすごいと思いますし、人見知りせず話しかけることができるのも見方を変えればプラスの特性といえるかもしれません。ほかの子どもと違った点があっても、それが強みや個性として活かせる環境であれば、成功体験をたくさん積むことができます。変わった行動は確かに気になりますが、その中には思わぬお宝が隠れています。きっと、その特性のよいところを見出してあげられるようになると思います。「鬼ごっこ」ができないのではなく、鬼役が好きという子どももいます。原因をさまざまな角度から謎解きしていくと少しずつ理解が深まっていくと思います。
2022年08月11日障害があるとは本当に分からなかった息子Upload By カタバミはじめまして。中度知的障害を伴う自閉スペクトラム症のある息子「まちゃ」の母でカタバミと申します。息子の障害に涙して真っ暗になったり、それでも成長を感じて可愛さに悶絶したり。情緒が忙しい日々を送っています。息子は支援級に通う1年生です。息子の2歳上の娘と夫とインコもいます。私はいつか育児ブログを書きたいと思っていたので、ほぼ毎日子どもの成長を日記につけていました。今それを読み返しても、1歳より前に息子の異変に気づく記述はありません。健康で9ヶ月で歩き出し、喃語もたくさん出ていました。あまり寝ない子どもだったので私が眠かった記憶はありますが、離乳食も良く食べて、ときには家族とは目も合い抱きついてくることもあったので発達に関して何も心配していませんでした。息子が2歳になったときに、2歳上の娘の真似をして「いないいないばあ」と言いました。うれしくて動画に撮りましたが、「いないいないばあ」が言えたのはこの日だけでした。消えてしまったのです。今から思えば息子は退行という症状だったのかもしれません。最初に「あれ?」と思ったのは私の不注意から負わせた火傷。Upload By カタバミ息子が1才1ヶ月のころのことです。朝アイロンをかけている途中で娘を起こしに行きました。そのとき寝ていると思っていた息子がヨチヨチと歩いてきて、置いてあったアイロンを触って足の上に落としてしまいました。「ギャーッ!」という息子の悲鳴を聞いて、慌てて息子の患部を冷やしながら病院に連絡をしましたが、すぐに泣き止み遊びだしたので冷やしつつ予約時間を待ちました。予約時間になり診察を受けた際に、普段温厚な医師から「こんなひどい火傷なら予約なんて取らずすぐに電話して来て下さい!大人なら何日も眠れないほどの火傷なのにこの子は…」と口を濁されました。これが最初に(あれ?)と感じた出来事でした。今なら息子は感覚鈍麻だったんだなと思います。その後、実父から発語が遅いと言われ母子相談室に行きますが「中身が大人で落ち着いたお子さんですね」と言われて終わり。1歳半健診で言葉の遅れを相談したら発達センターの受診をすすめられましたが育児支援センターに相談すると「まちゃ君よりもっと動き回っている子はいるし、活発なお子さんで発語が遅いことはよくあるから大丈夫よ」と複数の方から言われました。2歳まではしゃべり出すのを待とうと思っていた。Upload By カタバミ息子の2歳の誕生日が近づいたころ、近所の育児支援センターに来た言語聴覚士に相談しました。「発語が少ないことよりも、コミュニケーションが取れていないことが問題だ」など、たくさん指摘をされました。そういえば息子は「これをお父さんに持って行って」もできないし「遊んで」とせがんで来ることもなかったのです。私は息子は1人で遊ぶのが好きなマイペースな子だと思っていて、それが問題だとは思っていませんでした。声のかけ方などを教わり、大きなショックを受けました。私は、この日から壊れたラジオのように息子に話し掛けました。そして2歳の誕生日には発達センターの検査の予約を取りました。半年待ちだったのでそれまでに話し始めるかもという期待もしていました。白?黒?グレー?臨床心理士に言われたこと。Upload By カタバミ検査のあとで臨床心理士に「発達の遅れは気のせいでしょうか?」と聞くと「気のせいではありません。せっかく早く来てくれたのですぐに療育を始めましょう」と言われました。そのあと小児科医から「自閉スペクトラム症です」とはっきりと告げられました。大ショックでしたが息子は2歳半で療育につながることができました。療育は早期に受けることが大切だと言われています。私の経験上、発達に不安を感じたら「詳しそうな人」ではなくて「発達の専門職の方」にみていただくことをおすすめします。私は今まで生きてきて障害のある方とほとんど接したことがなかったので、無知だし受け入れることにも時間がかかっています。でも、息子は少なくとも家庭内では温厚ですし、家族も協力的です。こちらでは息子と、私の散らかった頭の中が少しずつ進んで行く様子をお伝えして、それを楽しんでいただければ幸いです。執筆/カタバミ(監修:鈴木先生より)知的に遅れがあるお子さんは感覚が鈍麻なことが多くあります。そして言葉の発達が遅れている場合が多いです。そのため、できるだけ早期介入が重要です。病名は医者でしか告知できません。できるだけ早く医師に相談することをおすすめします。そして担当医が告知したら責任をもってフォローし、さらに知的に遅れている場合はその病因検索をする必要があります。脳CT、甲状腺機能などの血液検査、難聴があるかどうかのABR(聴性脳幹反応)検査などです。中には知的に遅れている原因が分かって、原疾患の治療で言葉の遅れが改善したケースもあります。視力が弱くて多動傾向だったお子さんが眼科で調整することで、多動が治ったという例もあります。子どもは総合的に診ていく必要があります。
2022年08月10日自閉スペクトラム症のある太郎と学校のテスト自閉スペクトラム症のある太郎は、小学校の低学年から中学年のころ、学校でテストを受けるときに強いこだわりがありました。そんな当時の太郎の様子と、自分の気持ちを振り返ってみたいと思います。空白はすべて埋めたいUpload By まゆんテストで出された問題は全て分かりたい。でも分からない。空白は全て埋めたい。でも埋まらない。分からないや。まぁいいか、次の問題へ進もう。太郎にそういう考えはなかった。書きたい、分かりたい、全部埋めたい。そういう思いがあってもテストの1問目からつまずくことが多かった。Upload By まゆん先生がずっと1問目の問題を見つめ、フリーズしてる太郎に声をかけてくださった。それでも太郎は解かなかった。目の前の問題が気になるから次の問題は視界に入らない。そうして時間はいつも過ぎていった。テストは名前だけ書いて終わることも多かった。点数の意味も分かってはいた。でも点数が低いことを悪いことと認識はしていない。それが私としては救いだった。私も点数が低いことで怒ったり注意したりもしなかった。そう育ててきたし、何よりも太郎は家でも学校でも努力はしていたから。出された宿題は時間がかかっても悶えながらも必ず全てしていってた、そういう努力や真面目な太郎を私は見ていた。「正解」を書きたいそしてもう1つ。太郎は間違うことが嫌だった。「正解」を書きたかった。間違うことをおそれて少しでも自信がないと答えを書かなかった。家で宿題を解いていても1問1問、間違えていないかを確認してきた。Upload By まゆん間違えることはできない。正解を書きたい。それが太郎の世界だった。あとがきこの状態はいまだに続いています。小学校高学年のころからずいぶんと柔軟にテストを受けられるようにはなりました。きっかけは、特別支援学級の先生がしてくださった工夫でした。テストを個室で受けられるようにしてくださったり、太郎が大好きなぬいぐるみを目の前に置いて「次へ進もう」と先生が腹話術などもしてくださいました。そうしているうちに、ある日ひょんと初めて100点を取ってきました。そのときの喜びを知ったのか「高い点数を取りたい」という気持ちが芽生えてきたように思います。ときと場合によりますが…晴れの日もあれば曇りの日もあるように、太郎の世界も同じです。私はそんな太郎の成長を傍でゆっくり見守れたらいい…。そう思っています。執筆/まゆん(監修:鈴木先生より)自閉スペクトラム症特有のこだわりがあって問題を飛ばせないお子さんを、ときどき見かけます。音に敏感なお子さんは個室で静かな環境の中でテストが受けられるのが理想です。一方、投薬でこだわりを軽減することも可能です。初めのうちはトークン法の利用も効果があります。人生で初めての受験になる可能性が高い高校進学までにテストが柔軟に受けられるよう、できるだけ早期に学校側や教育委員会と相談して対策を練る必要があります。
2022年08月09日ガイドヘルパーとしての悩み障害児者にとって、家族以外のほかの大人と関わることは、大切なことだと思います。移動支援の制度を使うことで、週末の余暇活動として、ガイドヘルパーに外出の同行をしてもらうことができます。私は週末、ガイドヘルパーの仕事をしています。外出同行の際に、保護者の希望を通すべきなのか、本人の希望を通すのが良いのか、て悩むことがある場面があります。とくに、利用者の方が成人の場合、悩むことが多いです。成人の異性の利用者と手をつなぐことについて知的には5歳児くらいであるとされている、30歳の青年との外出の際には、手をつなぐかどうかについて悩みます。私は年齢に合わせた対応をした方がよいと思っています。どうしてかというと実年齢が30歳だからです。もちろん、中には隙を見て一人で走って行ってしまったり、非常ベルやホームの緊急停止ボタンを押してしまったりすることもあるかもしれません。この場合は手をつないでいる必要がありますが、そうした行動がほとんどない方については実年齢通りの対応が必要だと思っています。ですが、危険忌避のために手をつないでほしいと考えられる保護者の方の場合、どのように対応したらいいか悩んでしまうのです。お金について駅の券売機で切符を買うとき、本人に購入してもらった方がよいのか、私がかわりに購入した方がよいのかも、すごく悩みます。お金についてよく分からないと感じている場合、利用者自身で購入をしてもらおうとしたら自信をなくしてしまわないか?でも、親御さんは「一人でやらせる経験をさせてほしい」と思っているのではないか?私は、本人の楽しみのための余暇活動なので、できないことを無理じいして訓練するような場にはしたくないとも思い、逡巡してしまいます。徒歩で行くか、交通機関をつかうか親御さんは普段の運動不足を解消するため、「できるだけ歩かせてほしい」という希望があるけれど、本人は「歩きたくない。大好きな電車やバズを使って移動したい」と思っている場合があります。こんなときも、どちらを優先させたらよいのか悩みますが、本人の余暇活動なので、私は本人の意向を優先させた方がよいと思っています。こだわりを通せる場面と通せない場面ある日のことです。発語のない知的障害と自閉スペクトラム症がある利用者の方とラーメン屋に入りました。混んでいるのに麺を一本ずつ食べていました。待っている人や次の電車の時刻も気にせず、マイペースです。私が「残してよいからもう出よう」と言ってもガンとして動かなかったので、食事がすんだ私は外で待っていました。結局、1時間以上かけて完食しました。店を出てから、利用者の方がマスクをなくしたことに気付きました。代わりのマスクを渡しても断固拒否するため店に戻り、お客さまに席を移動していただいて探す状態になりました。しかし、見つかりませんでした。でもパニックを起こさず、代わりのマスクを使ってくれました。私は麺を一本ずつ食べるこだわりには応じました。でも、失くしたマスクは見つからないので応じられません。利用者の方は、自分のこだわりを通せる状況と、そうではない状況を理解できたのでしょう。この青年も、幼いころは失くしたものが出てこないと大パニックになっていたのではないかと思います。自閉スペクトラム症がある私の息子も、幼いころ、パズルの一片がなくなったとき、手がつけられないほどパニックになりました。そのために、同じパズルを何セットが予備で買っておいたことを思い出しまた。今は例えば靴下の片方がなくなっても、マスクを落としても大騒ぎせず、別のものを使ってくれます。軽度でも中度でも重度でも、成長しています。Upload By 立石美津子支援者の対応に統一性がないことも課題同じ事業所でも手をつなぐがどうか、本人の意向を優先させるか親御さんの意向を優先させるかなど統一されておらず、支援者の個人の考えに任せている場合もあります同じ事業所で一致した対応をしたとしても、移動支援をやっている事業所は増えているので、利用者さんも複数の事業所をかけもっています。そうなるとまた対応が違ってきます。本人が混乱することのないように、情報ややり方を共有して、支援のあり方を考える必要性を感じています。執筆/立石美津子(監修者・鈴木先生より)神経発達症(発達障害)のある患者さんが高校生になってバイトを始めることは社会性を高めるうえで有意義なことだと思います。親と学校の教師以外の大人と接することで自立を促し、将来の就職率が上がっています。最近は訪問看護という手段もあります。主治医の指示により定期的に専門の看護師やリハビリのスタッフが患者さんを預かってくれます。その間、親は美容院へ行ったり、普段相手してあげられない兄弟と触れ合ったりすることができます。費用はワンコインほどです。訪問看護というと寝たきり老人の看護というイメージが強いですが、自閉スペクトラム症の患者さんも扱える会社も増えてきました。今後は神経発達症に特化した訪問看護が全国に広まることを願っております。
2022年08月08日運動が苦手で不器用なグレーゾーン(境界知能)娘おっとりした性格で、インドア派、発語や言葉の理解などもゆっくりだった娘。そんなグレーゾーンの娘に境界知能の診断がおりたのは小4のころです。娘は不器用(発達性協調運動症)なことも合わさり、運動が大の苦手!鉄棒は前回りは可能ですが、逆上がりはできません。跳び箱も踏切るタイミングが取れずに3段以上は飛べず、跳び箱の前で立ち止まってしまいます。プールも25m泳げず、バタ足で最高20m程度泳げるくらいです。うまく身体の力が抜けないのか、泳いでいるとお尻が出っ張ってしまい背浮きができず、クロールをすると、どんどん水に潜っていってしまいます。小4、小6のときの担任がこのような娘の特性への理解があまりなかったこともあり、無理にクロールで25m泳がせようとして溺れそうになったこともあります。Upload By ユーザー体験談そんな娘なのでもちろん自転車にも乗れません。出かけたい場合は私の運転する車に乗りますし、中学は徒歩通学ということもあり自転車に乗る必要もないので、娘も私も乗れないことを気にしていませんでした。補助輪をつけて練習していたころもあったのですが、進んで練習したがるようなこともなく、補助輪を取ってから土手を転げ落ち、田んぼに突っ込んだ経験などがトラウマになっているのか、「上手く乗れないので嫌になった」という気持ちもあると思います。中1になったある日…娘に試練が!ですが先日、授業の一環として秋に自転車に乗り近隣の特別支援学校へ交流に出かけることになったというのです。担任の先生から「自転車に乗れない人はいますか?」と聞かれ、娘はクラス全員の前で挙手をすることになり…さらには先生から「練習しておくように」と言われました。みんなの前で挙手させられ、恥ずかしい思いをしたそうです。ただ、「練習しなくてはいけない」という強い気持ちはそこで芽生えたようです。Upload By ユーザー体験談さらには、入部した美術部でも自転車に乗りスケッチに出掛けたり、体育祭&文化祭の看板や横断幕を作成するために学校外へ自転車で出かける可能性もあります。娘は早速自転車の練習を始めました。Upload By ユーザー体験談自転車の練習を始めたけど…前途多難でしかし、練習してもやはり不器用さや身体の使い方の下手さにより公道を走行できるレベルに達さず…。こぎ出してしまえば何とかなるのですが、肝心のこぎ出しが上手くいかないことや、ブレーキ操作が上手くいかず、危険な思いをする度に、自転車=難しい・怖い・練習が嫌だ…と負のループに。久しぶりに大きな運動公園に連れて行き、練習した際も、サッカー場の周囲を1周はできましたが、やはりこぎ出しとブレーキ操作、シフト(ギア)チェンジがうまくいかずに、2周目で土手から転げ落ちてしまい、やる気がなくなってしまいました(そしてフェンスに激突し、自転車の前輪を交換する羽目になりました…)。Upload By ユーザー体験談家の近くの公道(アスファルト)を50mくらい、往復するときは実際は片道25mくらいしかこげていない状態ですが、30分程度練習すると娘ももう練習をやりたくなくなってしまうようでした。ですが、交流授業までになんとか乗れるようになりたいという思いはある…。私が仕事から帰った土日は声掛けをすると30分程度は自転車の練習に取り組むようになりました(平日は部活や宿題、習い事などもありやる気にならないそうです)。練習の結果、なんとかサッカー場の周囲1周だけは走れるようになりました。娘もそれが自信につながったようですが、公道を走るとなるとまだまだ不安です。自転車に乗れなくても…母の想い結局、現在もまだ自転車に完全に乗れていません。特別支援学校との交流授業までに乗れるようになれたらとは思いますが、母としては絶対に乗れないといけないとは考えていません。娘はおっとり、まったりした性格ですが、自己肯定感が低い訳ではありません。そこは変わりなく成長してほしいです。苦手なこと(他者に言葉で困りごとを伝えるなど)は、娘に合う方法を試行錯誤しながら良い対応方法などを見つけられるようにサポートをしたり、アドバイスをしていけたらと思います。また、娘の得意なこと(物の場所の記憶や人と違う着眼点を持っていること、黙々と同じ作業に飽きずに取り組めること)もたくさんあるので、そのような部分を伸ばしていき、上手く社会で自立した生活をしていってほしいと願っています。イラスト/taekoエピソード参考/ヒヨコ(監修:三木先生より)一生懸命頑張っておられるんですね。苦手なことでも繰り返し取り組めるのは、自己肯定感が維持されているからかもしれません。学校の先生の提案にもくじけずに前向きに取り組んでいる姿勢は、ぜひ評価してあげたいですね。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは「反抗期・思春期」「自傷」「学習」「不登校」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「ご近所トラブル」などに加え、今回より「パートナーや両親(義両親)、親族間トラブル」「冠婚葬祭」のお悩みも追加募集!パートナーなどとの意見の相違、冠婚葬祭でのルールが分からない、反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年08月07日Q:合理的配慮ってなんですか?A:過度な負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な配慮を行うこと。なお、学校(or教育現場での)合理的配慮は「一人ひとりの障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されるもの」です。Upload By 専門家インタビュー合理的配慮を英語でいうと、「Reasonable accommodation」。過度な負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な配慮を行うというです。そしてその配慮は、子ども一人ひとりの障害の状態や教育的ニーズなどに応じて決定されるべきです。子どもの権利を保障するために各教育行政の支援としては、まず国は全国規模で、都道府県は各都道府県で、市町村は各市町村で、それぞれ環境整備(基礎的環境整備)をしていきます。これらが「合理的配慮」の基礎となります。そして、基礎的環境整備をベースに一人ひとりに合わせた合理的配慮が検討され、決定すると「個別の教育支援計画」に明記されます。設置者、学校、本人、保護者により発達の段階を考慮しつつ合意のもと内容を決定し提供されることが望ましいとされています。もし、設置者、学校、本人、保護者の意見が一致しない場合は教育委員会の諮問機関である「教育支援委員会(仮称)」の助言や、その子にかかわる関係者がつどう「個別支援会議」および校内にある「校内委員会」での話し合いなどにより問題点を解決することが望ましいです。現在はまだなされていない「基礎的環境整備」や「合理的配慮」について、希望が出されて協議がなされたこと、将来的には実現することが望まれることなどを、「個別の教育支援計画」に書き込ませることも次の一歩につなげる工夫です(『改訂新版障がいのある子の就学・進学ガイドブック』p.115-120の「個別の支援計画」「個別支援会議」、p.134-135の「Q&A合理的配慮と基礎的環境整備という言葉を聴きますが、どういうことでしょうか。」参照)。
2022年08月06日なかなか新しい友達がつくれない娘小学校高学年になると 、周りのみんながぐっと成長していくことを実感します。低学年のころから仲の良かったゆいのお友達も、身長は大人と変わらなくなったし、言動も大人びてきて子どもと会話しているような感覚はもうなくなりました。ゆいももちろん成長しているのですが、周りに比べるとまだ幼い感じがあります。同じクラスにゆいと仲の良かったお友達が一人いました。でも彼女に新しい友達が増え、仲良しグループが離れたことであまり話さなったようです。高学年の女子ならよくあることだと思いますが、心配なのはゆいが会話できる友達がゼロになってしまったことでした。ゆいは人と話すことがとても苦手でなかなか新しい友達をつくることができないのです。Upload By 吉田いらこ「わたし、クラスではいつも一人でいるんだ」とゆいは話すようになりました。ゆいの小学校ではいわゆる「ボッチ」であってもそれでからかわれたりするようなことはありません。でも本人はひとりが寂しかったようです。私は「勇気を出して話しかけてみたら?」など一般的なアドバイスしかできませんでした。勉強に関しては特別支援学級に移り配慮してもらうことで負担が減りました。でも次は人間関係で悩みごとが出てきました。このままでは学校に行くことが苦痛になってしまうかも…と心配していたのですが、数ヶ月すると意外なことがありました。Upload By 吉田いらこいつも一人でいるゆいに変化が!?ゆいはクラスのある男子と仲良く話せるようになったそうです。その男子はあまりグループで固まるということがなく、だれとでも接する子のようです。休憩時間も一緒に笑っているところをよく見ますよ、と個人面談のときに担任の先生から聞いたときは驚きました。ゆいに話を聞いてみると、その男子はだれにも気軽に話しかけるようで、ゆいにも話しかけるそうです。ゆいがうまく話せなくてもまったく気にしないので緊張せずに話せるらしく、だんだん会話も増えてきたということでした。ゆいは人と話すのが苦手で自分から話しかけることが難しかったのですが、向こうから来てくれる人がいるなんて。これをきっかけに会話ができるお友達が増えて学校へ行くことがたのしくなればと願っています。Upload By 吉田いらこ子どもから大人へ精神的に成長していくなかで、友人関係もどんどん変化していくと思います。ゆいは その特性から今後も人間関係に悩むことがあるかもしれません。ですが、人間関係というものは障害とは関係なく難しいものです。そして、人間関係の変化によって、ゆい自身が成長していくこともあるかと思います。子どもの友達関係に保護者が介入することはできませんが、これからも成長の様子を見守っていけたらなと考えています。執筆/吉田いらこ(監修:井上先生より)お子さんの成長とともに人間関係も変化していきますね。思春期の女子グループの中での人間関係やコミュニケーションは複雑で難易度が高いと思います。今回、今までお話のできなかった異性と話せるように広がったのは、とても素晴らしいことだと思います。この出来事が、また新たな友達関係が広がるきっかけになると良いですね。
2022年08月05日常に次男を信じ、寄り添ってくれた特別支援教室の先生発達に凸凹のあるわが家の次男は、小1から小6の現在も通常学級に在籍しており、週1日、特別支援教室(※1)に通っています。次男が学校生活を送る中で、常に寄り添ってくださっていた先生がいます。それは、特別支援教室専門員(※2)のA先生です。※1 特別支援教室…通級指導教室のように障害による学習上または、生活上の困難を改善・克服する指導を児童・生徒が在籍校で受けられる東京都の仕組み※2 特別支援教室専門員…臨床発達心理士などの発達障害の支援に関する専門資格を持つ人(教員免許は必須ではない)Upload By スガカズいわゆる「普通」とされる環境の中で次男は、聴覚過敏、見通し不安、「0か100か」の白黒思考、叱られることへの苦手さなどから、入学当初から頻繁に癇癪を起こしていました。小1のころは、壁を蹴ったり大声での暴言が多かった次男。大人が本人の話に耳を傾けることなく、強く叱るなどすると本人は取り乱して周りが余計に見えなくなってしまうことがあり、そのような関わり方をしてしまうと万が一他害につながる恐れもあります。そのため、次男にとって家庭での関わり方や、学校での本人に寄り添った関わりがとても重要でした。A先生は次男のことを、「乱暴な子」「言うことを聞かない子」ではなく、「嘘をつかない自分に正直な子」「心の優しい子」「たくさんの可能性を秘めた子」として関わってくれました。また、私が次男との関わりで悩んでいるときにも、A先生は傾聴して、決して自分の意見を押しつけず私と次男の気もちを言語化してくれ、最後には励ましてくれました。私は、次男が学校生活での困難にぶち当たるたびに、どうしても周りの人と比べてしまったり、落胆してしまうこともあり、次男の行動に対して受け止めきれない状態に陥ることが度々ありました。トラブルを経験するたびに、私の気もちが落ちて浮上して、また落ちて持ち堪えて…。目の前の状況に対して、まずはその日を無事に終わらせることに注力します。そのためには、感情をできるだけ抑えて、次男と話し合うことが重要でした。そんなときは特にA先生の存在が大きく感じました。A先生はいつでも私と次男の味方をしてくださいました。お陰で次男との関係は良好なまま日々を過ごすことができましたし、少しずつ…少しずつ…時間をかけて、次男も学校生活に適応するようになってきたと思います。次男が小5になり、大好きなA先生が異動することに…。私にとっても次男にとっても、A先生は心の拠り所になっていました。しかし、A先生は次男が小5になる年度に、他校に異動することになりました。異動の知らせを聞いたときにも挨拶に行きましたが、離任式の際にも学校にお伺いし、感謝の気もちを直接伝えることにしました。Upload By スガカズUpload By スガカズ先生との別れを経験して、支え合うことの大切さ、人への感謝を学びましたUpload By スガカズ現在は次男は小6になり、A先生との別れを経験してから1年が経過しました。最初のころは、「オレが知っている△教室(特別支援教室)じゃない…」と、浮かない様子でしたし、心にポッカリと穴が空いているようでした。「A先生がここにいてくれればいいのに」と泣くこともありました。それでも、次男なりに少しずつ現状を受けとめながら、現在も学校生活を送っています。今でも私がA先生の話をすると、次男の表情はパッと明るくなります。先日、A先生に手紙を書きました。次男は書字障害があり、文字を書くことは大の苦手ですが、A先生への思い入れが強く、苦手な中頑張って手紙を書いていました。何度も「この文章変じゃないよね?」と、うれしそうに私に聞いてきました。人生の中で人との別れは何度か繰り返していきます。その中でも、大好きな人との別れは、本人にとって大きな衝撃で、情緒が乱れてしまう場合も多いのではないかと思います。悲しい経験をすることになりますが、そういった経験から、支え合うことの大切さ、人に感謝するこころを学び、今後の人間関係の構築のあり方について考えるきっかけになっていくのではないかと思いました。執筆/スガカズ(監修:井上先生より)すばらしい先生に出会えた経験は子どもさんにとっても親御さんにとっても大きな成長や心の支えになったと思います。子どもが大人に相談できるようになるためには、その大人が子どもにとって「自分を分かってくれる存在」になることです。A先生はまさにそんな人だったのだと思います。このお話は、多くの現場の先生たちにとって、元気を与えるように思います。
2022年08月05日息子の発達障害、誰に伝えてる?むっくんが発達障害の診断を受けて5年半ほど経ちました。現在、むっくんの家族や親戚はみんな診断があることを知っています。祖父母などよく会う家族には診断がついたことは早々に伝えました。また、年に数回会う親戚にも徐々に伝えていきました。発達障害について、知識のある人もいますし、発達障害をよく知らない人もいますが「そうなんだねー」くらいの反応で、伝えたことで何かもやっとすることを言われたり、関係にしこりが残るようなやり取りを経験したことは私にはありません。また親戚で集まると、つい「学校どう?」なんて話題が出てしまうので、不登校を選んだことも早々に家族にも親戚にも伝えました。こちらも「そういう選択もありだよね~」という反応で何か言われることはなく、私もむっくんも心地よく過ごすことができています。私と家族や親戚はもともと信頼関係がしっかりできていましたし、親戚にはユニークな人が多く、価値観が多様な人も多いことをこれまでの付き合いから知っていたので、私は安心して息子のことをみんなに話すことができたのだと思います。Upload By ウチノコどんなふうに伝えた?私は発達障害のことを他者に話すとき、診断名だけ伝えても大切なことは伝わらないと考えています。なぜなら診断名が同じでも特性のあらわれ方は人それぞれ異なっているからです。発達障害の知識がある人にだって、診断名だけ伝えてもむっくんのことは何も伝わりません。そのためむっくんのことを他者に説明するとき、私はむっくんの行動に対して【むっくんの具体的な特性】【その背景についての私なりの解釈】【これから行う対処とその理由】を順序だてて説明するようにしています。小さなころの話ですが、いくつか例をあげてみると…祖父母の家で走り回って部屋や押し入れなどを確認したがったときは…【具体的な特性】この子はとっても好奇心旺盛でいろいろ気になりがちでね、でもその背景には分からないことや知らないものに対して不安を感じやすいっていう理由があるの。【私なりの解釈】おばけやしきって仕掛けが分からないと怖いけど、どこで何がでてくるか分かったら不安も和らぐでしょ?そんなふうに、自分の不安を和らげたくて動き回って、見えない引き出しや押し入れの中を確認して安心しようとしているんだと思う。【対処とその理由】しばらく確認したら安心できて落ち着くと思うから、今は見守らせてもらえると助かります。いとこなどと遊ぶうちに楽しくなりすぎて興奮から癇癪につながりそうなときは…【具体的な特性】些細なことでも感情の振れ幅がとても大きくなるの。悲しいときはものすごく悲しいし、楽しかったら楽しすぎちゃう。【私なりの解釈】楽しすぎてハイテンションになって、あとからどっと疲れる経験ってない?そんなふうなのかなって私は考えていてね。今日は楽しすぎるを通り越して癇癪を起こしてしまいそうなんだと思う。【対処とその理由】今は自分の力だけで落ち着くことが難しいから、音や光の少ない静かな部屋に行って落ち着けるように休んでくるね。周囲の音に疲れ果ててしまったときは…【具体的な特性】とても音に敏感で、自分に必要のない音まで聞きすぎてしまうところがあるんだよね。【私なりの解釈】この部屋も話し声やテレビの音、食器の音、たくさん音があるけれど会話に集中するとほかの音って少しミュートされるでしょう?むっくんはその機能があまり働かなくて音を聞きすぎて疲れちゃうときもあって。【対処とその理由】疲れたときは静かな場所で好きなことをさせてあげるのがいいから、今日はもう家へ帰って休ませようと思うよ。Upload By ウチノコ伝わるように伝えるこれらの特性は多動衝動、易刺激性、感覚過敏などと言われる特性ですが、こういう聞きなれない言葉では伝わるものも伝わらなくなってしまうので、できるだけ日常的に使うイメージしやすい言葉で伝えるようにしています。また「自閉スペクトラム症があるから切り替えが難しい」や「ADHDがあるからじっとできない」などという、理屈を省いた伝え方では誤解や差別を生みかねないと感じていました。私の言葉を起点にそういったものが広がっていくとしたら、それはとても恐ろしいことです。だから私はできるだけ、【具体的な特性】【私なりの解釈】【対処とその理由】と言葉を尽くし、順序だてて伝えることを心がけています。実はこの伝え方は、むっくんに物事を伝えるときの言い回しなんです。むっくんに伝わりやすい言葉選びは、ほかの人にも伝わりやすい。発達障害のある子への適切な関わり方というのは、誰に対しても大正解なんだなーと感じています。さらに、人によって理解しやすい伝え方が違うこともあります。イラストの方が伝わる人、文字が伝わりやすい人。言葉だけで十分なのか、図の方が理解しやすいのか、その辺りも相手に合わせて使い分けることも意識しています。そういう見えない背景を伝えてきたことが、家族それぞれむっくんの行動について背景を考える意識を持つきっかけになり、むっくんの成長を温かく見守る今の環境をつくることにつながっているのだと思います。Upload By ウチノコ何のために伝えるのか子どもに障害があることを他者に伝えるとき、私は【何のために伝えるのか】という目的を明確にすると【何を】伝えるのか言葉にしやすくなる気がします。私の場合は、むっくんのことをみんなで見守っていく環境をつくることことが何より大切で、そのためには診断名よりもむっくん自身のことをできるだけ分かりやすく伝えることが大切でした。「どう伝えよう?」と悩んだときは「何のために伝えるのか?」という目的から考えてみると、自分なりの答えが見えてくるかもしれません。執筆/ウチノコ(監修:初川先生より)とても素晴らしいですね…!診断名だけでは何の説明にもならないのは本当にその通りです。診断名を聞いた人がイメージするその障害のありようがさまざまですし、実際のむっくんの様子における特性の強さの色合いもさまざまです。「何のために伝えるのか」を考えて伝える。むっくんをみんなで見守ることができる環境をつくるために伝える。そして、その伝え方は、むっくんが自分自身を理解するのに役立つ言葉と文脈で伝える。どれもとても良いと思います。お子さんの理解と周りの理解がずれないこと、お子さんでも理解できる平易な言葉で説明すること、とても大切です。何より、ウチノコさんのあたたかいまなざしが、周りの方々へと伝播しますね。それがとてもいいなぁと感じました。
2022年08月04日二人の弟のお姉ちゃんになって・・・昨年、わが家に誕生した次男のなーさん。家族みんなに愛され、すくすくと成長し、現在9ヶ月になりました。Upload By SAKURA妊娠中から、二人目の弟の誕生を、一番心待ちにしてくれたのは、広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘、あーさん(小学6年生)で、次男が産まれたときは、誕生の知らせを聞いて号泣したほどでした。Upload By SAKURA長男、きーさんが生まれたときは、赤ちゃんにあまり興味がなく、関わることが少なかった娘でしたが、次男に対しては、興味津々。ミルクをあげてくれたり、ゲップをさせてくれたり・・・率先してお世話をしてくれていました。Upload By SAKURA動き回る弟に、心配性な姉は・・・新生児のうちは、まだ動けない次男に寄り添い寝転がって、一緒に過ごすことが多かったのですが・・・最近は、そうはいきません。9ヶ月になった次男は、ハイハイ、つかまり立ち、つたい歩きをマスターし、とにかくじっとしていません。触っては駄目なものほど、手を伸ばしてつかみ、不安定な場所でも、すぐにつかまり立ちをするので、すぐ転んでしまいます。Upload By SAKURAそんな次男にいつも付き添う娘。過剰な心配から、最近は少し過保護気味に。ちょっとの段差でも、抱っこして降ろしたり、つかまり立ちをすぐ止めさせたりします。Upload By SAKURAそんな心配性の娘ですが、次男のお世話は、見ていて安心できるものになってきていて、抱っこもスムーズで安定感もばっちり。私が手が離せないときは、離乳食も食べさせてくれます。赤ちゃんとどうやって遊べばいい?ただ、娘は遊び相手になるのが苦手。私が「遊んであげて~」と言うと…Upload By SAKURA人形や赤ちゃん用のおもちゃを次男に渡し、自分は正面に座って、じーっと見つめる…。どうやって遊んでいいか分からないようで、声もかけません。元々、相手の立場になって、考えるのが苦手な娘。私は日ごろから娘に「相手がどう感じているか、相手の気持ちを想像してごらん」と声をかけていました。どうやら娘は、何を考えているか分からない赤ちゃんの気持ちを想像することができないようでした。Upload By SAKURA次男の正面に、ただ黙って座るだけの娘。次男は退屈で、すぐにその場から離れてしまいます。その状況(自分から弟が離れてしまうこと)に、娘はショックを受けていました。Upload By SAKURA赤ちゃんの相手が上手な弟に、ショックを受けて・・・反対に、次男との遊び方が上手な長男。次男が産まれるまで、わが家一甘えん坊だった長男なので、私は正直、弟に嫉妬するんじゃないか・・・と心配していたのですが、予想以上に、弟の相手をする、優しいお兄ちゃんになりました。長男は、次男を抱っこすることができず、お世話系はほとんどしませんが、遊びの相手はとても上手で…。Upload By SAKURA一度も教えたことはありませんが、次男の近くで人形を左右に振り、長男が声を出して、ごっこ遊びのようなことを始めます。次男はこれが大好きで、大興奮。体を大きく使って、リアクションをとる長男を見ながら、ケラケラと笑い続けます。Upload By SAKURA長男の上手な遊び方を、娘も見て真似すればいいと思ったのですが、「見て、真似して、吸収」という一連の流れを、自主的にはしない娘。しばらく様子を見ていると、遊びのとき、長男といる方がよく笑う次男を見て、娘が『私と一緒にいるときは笑ってくれない…』とショックを受け始めました。弟を観察し、真似をしてみると・・・そこで私は「きーさんの遊び方、見て真似してごらん」と声をかけました。すると、じっと観察を始めた娘。Upload By SAKURAしばらくすると人形を手に持ち、次男の相手を始めました。Upload By SAKURA次男は声を出して笑い、それを見た娘はとても嬉しそうでした。私が「よかったね」と声をかけると、得意げに「まあね」と答えていました。それから娘は自信がついたようで、率先して遊び相手をしてくれるようになりました。逆に長男は、抱っこができる娘が羨ましいようで、「おれは抱っこできない…」とショックを受けていたので…Upload By SAKURA座ったままの抱っこを教えると、できるようになったことにご満悦でした。これからの3人に期待!末っ子のためだと、自分の「できない」を「できる」に変えようとしてくれる、姉と兄。そんな二人に囲まれて、次男はいったいどんな子になるのか…そして、次男はこれから娘と長男にどんな刺激を与えてくれるのか…本当に楽しみです!Upload By SAKURA執筆/SAKURA(監修:三木先生より)とても楽しいきょうだいですね!お姉ちゃんとお兄ちゃんがそれぞれの様子をしっかりと観察して学んで、そして自分の行動に取り込んでいるのが素晴らしいです。「誰かのため」に時間とエネルギーを割くことのできる二人にこれからも期待ですね。
2022年08月03日高校生の頃の自傷傾向私に自傷の傾向が出たのは高校生のころだったと記憶しています。この時期、私にはいま思えば離人症と思われる症状がありました。現実感がなくなる、自分だけ少し床から浮いて暮らしているように感じられる、幽体離脱したように感じる、など。当時は自分の発達障害にも、抱えている複雑なトラウマにも気づいていませんでした。精神科など専門家にかかることも思いつかず、「頭がおかしいのだ」と自分を責めて、恥じる日々。そんな中、恥や罪の感覚、また、失われた現実感を強い刺激で取り戻したいといった理由から、さまざまな自傷的行動に走るようになりました。軽い摂食障害と日焼けへの執着当時の私は、「自分は罪深く恥ずかしい存在だから、その存在感をできるだけ薄めたい。自分の汚(けが)れをきれいにしたい」という感覚を抱えていました。そこで、必要のないダイエットをしたり、休み時間に学校の庭に出て肌を焼いたりするように。どんどん痩せて身体が薄くなっていくほど、自分の存在の罪が軽くなるような気がしました。食べ物のかわりに水を飲めば文字通り「存在が薄まる」、日光に当たれば「日光消毒ができる」と感じたり。この頃の写真を見ると、私はカリカリに痩せて真っ黒に日焼けしています。リストカットをしたこともつきまとって離れない離人感に難儀していた私は、何か強い刺激を受ければ「悪い夢から目が覚める」ように現実感を取り戻せるのではと考えました。そこで友達に頼んでビンタしてもらったり、尖ったもので皮膚をつついてみたりするように。ささくれを剥いたり、ニキビを潰しまくったりもしました。リストカットをすれば、痛みと赤い血の刺激で「目が覚める」のではと考えて、手首の皮膚一枚切るようなごく軽いリストカットをしてみたこともありますが、あまり効果を感じられずに数回で終わりました。私がなぜリストカットが癖にならなかったかと言うと、精神疾患があり、ささいなことで激しく取り乱してしまう母親のことが頭にあったのかもしれないと今は思います。私がリストカットすれば母親が取り乱すのは容易に想像がつきました。そういう母親に対処するストレスのほうが大きく感じられたのかもしれません。安心できる居場所ができたら自然と脱した高校を卒業したあとも、吸うとしんどくなるのに無理に煙草を吸う、不健全な性的関係に身を投じるなど、いろいろと自傷的とも言える行動を続けていた私。いつの間にかそういうことをしなくなったなあ、と思い返していて、20代後半でつきあいはじめた恋人のことを思い出しました。彼は私にとって生まれて初めて、私のことを大事にしてくれる人だったのです。彼の愛情にひたひたに浸かるようにして過ごしていたら、いつの間にか煙草が欲しくなくなりました。わざわざ危険な異性関係に飛び込もうという気もなくなったのです。何かに動揺したら電話で彼と話せば落ち着くことができる。ときどき会って抱きしめてもらえばフーッと深呼吸ができて、それまで自分がずっと浅い呼吸をしていたことに気づくのでした。居場所があれば…自分の中を探ってみて、今は自傷傾向はほとんどないと感じます。優しい夫や友人知人といった理解者に周囲を囲まれ、自分にもこの世界には居場所があると感じられるのです。それでも、私がこの世においては発達障害者としてマイノリティであるのは事実。誤解され攻撃され排除されやすい側であることも事実です。実際にそうされてきたトラウマ記憶もたくさんあります。そういった記憶のフラッシュバックとしてだと思うのですが、ときどき、自分が集団から歩き去り、孤独に夜空を見上げながら、若いころ吸っていた細巻きの煙草をふかす夢を見たりします。そんなときはポロポロと涙をこぼしながら目を覚まします。すべての人に、ありのままの本人を認め、受け入れてくれる人がひとりでも、場がひとつでもあれば… と祈る日々です。傷つきながら生きてきた人が、幸運にも何かの時点で居場所を見つけられるとしたら素晴らしい。それでもその人には、ふとしたときに蘇ってくる孤独で痛ましい記憶との戦いが日々続きますが、その人が、一日ずつを踏みしめるようにどうにか生きていけたら嬉しいことだなと、私は思うのです。文/宇樹義子(監修・鈴木先生より)話を聞いてくれる人が一人でもいればいいですね。学校の先生でも、職場の上司や同僚や医者や心理カウンセラーでもいいのです。親や担任の理解がないと子どもたちは現実逃避の一つの方法としてゲームやスマホ依存に走ることもあります。リストカット(最近はアームカットが多いですが)は特に女性に多く見られます。クリニックでは、心理カウンセリングだけでなく、ADHDのあるお子さんには衝動性を回避する意味でADHD治療を、また自傷をやめさせる意味で抗精神病薬の併用も行っています。
2022年08月02日虫や生き物との触れ合いを通して、学べることがありますわが家にはたくさんの生き物がいます。猫、ヤモリ、カニ、どじょう、カエル、ダンゴムシ、季節によってオタマジャクシ、アオムシなどなど。そうです、ミミは虫や生き物が大好きなんです。Upload By taekoそんなミミが通う小学校のクラスで、アオムシを飼育することになりミミは大喜び!もちろんクラスでは虫が苦手な子もいるので、虫に慣れている男の子やミミがお世話を率先してやっているようです。理科の授業や放課後など、友だちと一緒に虫のお世話をすることをとても楽しんでいます。友だちからの信頼を集めて、イキイキしている様子が嬉しいです。そして何より、その時間を通してミミにとっては人との関わり方の学びにもなっている様子でした。Upload By taeko学校から帰宅すると、お世話をしているアオムシの様子を楽しそうに話してくれます。そして家にいるときも、図書室で借りてきた虫の飼育の本を読んだり、youtubeを見て飼い方を学んでいます。その興味は学校のアオムシに留まらず、自分で虫を探して捕まえることへと広がっていきました。虫が増える春ごろには、来る日も来る日も虫を探しに行く日々を過ごしました。パパのために始まった、1ヶ月間のカマキリ大捜索中でも、「パパが好きな昆虫のカマキリ」をどうにか見つけたいミミ。きっと、パパを喜ばせたいという優しい気持ちがあったのだと思います。土手や公園に探しに行きました。それでも、簡単には見つかりません。カマキリが見つからなかったときも、次はどこに行こう?と考えて、自宅から行きやすく昆虫採集が可能な公園を探します。自分から進んで考えたり行動したりすることができて、成長を感じられるのも嬉しいです。休みのたびにいろんな場所へ行くけれど、それでも本命は見つかりません。ただ、その途中で見つけたちょうちょやてんとう虫を観察することを、楽しんでいました。Upload By taekoそして、カマキリを探し始めて約1ヶ月。「あっ!カマキリいた!」やっとの思いで早朝の公園で見つけられたときは、私もミミも大喜び!!それはそれは、とても大きな達成感でした。生き物を飼育することで、寿命まで飼う大事さや、餌を確保するのが難しいときは捕まえた場所に戻したり、学びにつながっています。パパもミミの頑張りを喜んでくれましたが、同時にちゃんと伝えるべきことは伝えてくれます。「生き物を飼うってことは、責任が生まれるんだよ」パパはいつも、捕まえた生き物のお世話の大切さを厳しくも愛をもって教えてくれるので、良い親子の関係になっているなと感じます。生き物に限らずだとは思いますが、夢中になれる本当に好きなことからは、たくさんの学びを吸収することができます。これからも生き物と付き合いながら、さまざまな発見をしていって欲しいと思います。執筆/taekoUpload By taeko(監修:井上先生より)お子さんに夢中になれる対象が見つかり、クラスの子どもやご家族もそれに理解を示し、本人もより学びを深めたり、そこから発展させたりできていることは、とても素晴らしいことだと思います。生き物を飼育することは、成長とともにその生き物が死んでしまうということにも接するかと思います。このことを通して命の大切さや、育てることの責任を、考えるきっかけにしていけると良いですね。
2022年08月02日その人らしい生活を支援するのが作業療法士(OT)の役割作業療法士(OT)の役割というと、病気やケガのあとのリハビリの印象が強いかもしれません。ですが実は、発達障害の領域でも作業療法の重要性が高まってきています。今回は、日本作業療法士協会の中村春基会長に、作業療法士の仕事や発達障害のあるお子さんを支援する際のポイントを伺いました。――はじめに、作業療法で対象となる「作業」について教えてください。中村:作業療法でいう「作業」とは、日常生活のすべての行為を指しています。たとえば、料理や掃除といった家事、接客やパソコン作業など仕事の場面で必要なこと、スポーツや音楽鑑賞、手芸などの趣味の活動はもちろん、食事や休息、眠ることだって作業の1つです。発達障害のあるお子さんの場合は、たとえば「食が細い」「なかなか寝つけない」といったことから、「黒板の文字を写すのが苦手」「授業中じっと座っていられない」といった学習や集団行動の悩みまで、そのすべてが支援の対象となります。――とても幅広いのですね。中村:驚かれるかもしれませんね。作業療法士の仕事は、「その人らしく生きるために、困りごとを軽減、解決するためのサポート」と言い換えられるのではないでしょうか。発達障害の領域でも作業療法の重要性が知られるように――現在、日本ではどれくらいの作業療法士の方がどのような分野で活躍されているのでしょうか?中村:作業療法士は1966年にできた国家資格で、自立支援についての医学、心理学、社会学的な知識を持つプロフェッショナルです。現在、日本国内で資格を持つ人は10万人を超えています。日本の作業療法士は、その多くが医療機関で仕事をしていることも大きな特徴です。ほかには、児童発達支援センター、放課後等デイサービスなどの児童福祉サービスなど。最近では就労支援施設や学校、学童保育、また刑務所などで支援にあたる作業療法士も増えています。Upload By 専門家インタビュー最近では、医療機関における子どもを対象とする作業療法で割合が大きくなっているのが発達障害です。自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)の支援においても作業療法が重要であることが知られるようになりつつあります。日本作業療法士協会では5年毎で「作業療法白書」を取りまとめています。最新の2021年度版を編集中なのでまだ正確な数字がお伝えできないのですが、傾向としては下記のとおりです。【医療機関】新生児期から18歳以上まで幅広い。割合としては未就学が約45%、就学~15歳までが約25%。【児童福祉サービス】未就学が5割強、就学後が5割弱で、やや未就学のお子さんの方が多い。施設種別としては、作業療法士が多くいる順に、児童発達支援センター、放課後等デイサービス、障害児入所施設。【対象とする障害や疾患】・ASD、ADHD、DCD、LDなど・脳性麻痺・精神遅滞 知的障害・てんかん・ダウン症などの染色体異常・重症心身障害・筋ジストロフィーを含む神経難病+障害が診断される前の気になる段階の子どもたちとは言え、「リハビリ」「高齢者」というイメージがまだまだ強いようです。病院や療育センターで作業療法を受けることになっても、作業療法士は何をする人なのか、保護者の方には分かりにくいかもしれません。実際の作業療法の場面では、お子さんへの対応が中心になるので、なかなか「作業療法とは何か」「作業療法士が何を目指しているのか」を伝える時間を持てないのも実情です。そこで、協会では、作業療法を「知って」、上手に「使って」もらえるよう、広報活動にも力を入れています。たとえば、『○○○とつなぐ』という協会が発達障害のお子さんを支援する方向けに発行したパンフレットは、手帳に挟んで持ち帰ってもらい、気になったときに読んでもらえるように手のひらサイズで作成しました。○○○とつなぐー子どもの育ちを支える作業療法士ー――日本以外の国では、どのような状況なのでしょうか。中村:イギリスでは7割もの作業療法士が、地域の学校や通園施設、訪問施設などで働いていると聞いています。アメリカでも、延べ13万人の作業療法士のうち3万人が教育現場で働いており、なりたい職業ベスト10にもランクインしたことがあるくらい、子どもたちにとっては身近な存在のようです。――医療機関が中心の日本とは、大きく違うのですね…!中村:そうですね。 「友達づきあいが苦手で、悪気はないのにすぐに相手を怒らせちゃう」「ボールを投げたり、鉄棒をしたりするのが苦手で、みんなにバカにされてるみたい」、こうした悩みを気軽に話せて、その解決策を一緒に考えてくれる人がいたら子どもたちはどれだけ気持ちがラクになるでしょう。医学的知識のある作業療法士が身近な存在となれば、必要があればスムーズに医療機関と連携し、早期に治療や療育を始める助けともなるはずです。作業療法士が、生活と医療を結びつける架け橋となれたら!作業療法士協会がめざす大きな目標の1つです。将来的には日本でも「町の作業療法室」のような場所があちこちにできて、困りごとがある人がふらっと相談できるようにしていけたら、と考えています。作業療法士(OT)がプロの経験と知識で、保護者の不安を解消!出典 : ――作業療法の支援計画はどのように立てていくのでしょうか?中村:ひとくちに発達障害の作業療法といっても、実にさまざまなアプローチがあります。たとえばおもちゃやボール、楽器を使った手先や運動の訓練のほか、スーパーに買い物に行ったり、子どもたち同士で料理をしたり、ときにはみんなでスポーツ観戦に出かけたりすることも。具体的な生活の場面で、何ができていて、どんなことに困っているかといったことを、学校や園、また地域社会での経験を通して子どもと一緒に考えていきます。豊富な医学的な知識に加え、心理学や社会資源に関する知識をもとに、子どもの成長の一歩先を見ながらお子さん自身の気づきと変化をサポートしていくのです。だから、作業療法の現場はいつでも前向き!作業療法士は、「この子が持っている能力は何か」「今の運動機能と知的な能力だったらどんな遊び、勉強、作業ができるか」をすばやく見つけ、子どもが成功体験を感じられるシーンをたくさんつくっていきます。――保護者の方にとっても、発見が多そうですね。中村:そうですね。こうした働きかけは、そのまま保護者へのサポートにもつながります。保護者はともすると、わが子の苦手や不得意な面に目が行ってしまい「なんとか克服させてあげたい」と思いつめがち。そこに作業療法士のプロフェッショナルな視点が入ることで、「子どもの可能性や能力に気づき、子育てがより楽しく気が楽になった」という声も聞かれます。――学校や園の先生はどうでしょうか?中村:学校や園の先生からも、作業療法士と協働することで支援がしやすくなった、という声が届いています。例を挙げると、「学習が困難なことの背景には、眼球の動きや姿勢を保つことの難しさなどの原因があることを知り、決して怠けているわけではないということが分かって教師としてもうれしかった」「授業の様子をこまかく観察してもらい、道具や教材の工夫で困りごとがある子どもたちにもできることが増えることが分かりました!」などです。こうした声を聞くことは、私たち作業療法士の何よりの喜びです。発達が気になるお子さんの保護者同士をつなげられる機会を――発達が気になるお子さんの保護者の方へメッセージをお願いします。中村:私にも3人の子どもがいますが、今振り返れば、息子の1人は発達障害の特性があったのではないかなと思います。3歳児健診で運動機能面での発達の遅れを指摘されたほか、小学校に入学してからも片づけられない、翌日の準備ができない、といった困りごとがどんどん出てきました。ただ、30数年前は発達障害についての認知が進んでいなくて、私も恥ずかしながらまったく知識がなかったんですね。例えるなら、息子を無理やり学校に引っ張っていたような状況で、のちに発達障害についても勉強を深めるなかで「なんて親だったんだ」とつくづく反省しました。今は、発達障害について以前よりも社会の理解が進み、専門機関だけでなく、学校や放課後等デイサービスでも相談できる体制があります。発達障害のあるお子さんを育てるなかでは、悩んだり、不安になったりすることもあるでしょう。そんなときは、どんなことでもプロに聞いてみてください。家庭のなかだけで抱え込むと、追い込まれてしまいます。相談するのにも、最初は勇気がいるかもしれない。でも、勇気を出した先には、きっと気持ちがラクになる、親子ともに笑顔が増えるうれしい変化があるはずです。――相談することは子どもにとってだけではなく親にとっても、大切なのですね。中村:そうなんですよね。子どもはとても敏感で、親が不安になっていたらすぐに気づくものです。その子らしい発達を支援するためには、保護者のサポートが重要なのです。専門家と一緒に、その子の特性を正しく理解できれば、いたずらに不安が大きくなったり、できないことばかりにフォーカスしてストレスをためたりしてしまうこともなくなります。作業療法の現場では、同じような悩みを抱える保護者同士が話せる場を設けたり、発達障害のあるお子さんを育てた先輩パパ&ママから数年先の見通しについて聞く機会をつくったりと、さまざまな取り組みをしています。気になることがあったら、ぜひお住まいの地域の作業療法士会に問い合わせてみてください。――ありがとうございました。取材・文/浦上藍子Upload By 専門家インタビュー高校時代に重度心身障害者施設にボランティアに行ったことをきっかけに、作業療法士をめざす。1977年国立療養所近畿中央病院附属リハビリテーション学院卒業後、兵庫県社会福祉事業団玉津福祉センター附属中央病院などを経て、2009年より現職。日本作業療法士協会
2022年08月01日「先輩の口から恋バナがあふれ出てた」という話があふれ出るコウUpload By 丸山さとこ普段は「場の空気や人の気持ちを理解するのが苦手」「こだわりが強い」「人より物に対する興味が強い」などのASDの特性が目立つコウですが、ADHDの特性もいろいろとあり、ADHD治療薬を服用しています。授業中に立ち歩いたり道路に飛び出したりするようなことはなく、一見目立った多動や衝動性はありません。ですが、注意欠如や頭の中の多動はしっかりあるため、忘れ物・聞きもらし・うっかりミス・とめどないおしゃべりはかなりのもので、そんなときは『ADHDの特性もけっこうあるな~』と改めて思います。おしゃべりもウロウロするのも止まらない!帰宅直後のコウそんな彼も学校ではある程度周囲を意識して気を張って生活しているようで、その反動なのか帰宅直後はおしゃべりが止まらない状態になることがあります。そういうときは大抵動きも落ち着きがなく、右に左にウロウロしながらしゃべっています。Upload By 丸山さとこダイニングテーブルで本を読んでいた私の向かいで1.5メートル程度の距離を右に左にウロウロし続けるコウ。おしゃべりも移動も止まる気配がありません。そんな彼の姿に「めっちゃウロウロしながらしゃべるやん」とツッコミつつ、座るよう促したところ…Upload By 丸山さとこ一瞬静かになり、歩き回るのをやめてダイニングの椅子に座った彼は、Upload By 丸山さとこ椅子に座ったまま再びペラペラと話し出しました。先輩の口から恋バナがあふれ出た日、コウの口からは「今日学校であったできごと」があふれ出ていました。Upload By 丸山さとこそしてその間、床に放置され続けるリュックや帽子たち。普段は話しながら片づけを進めることもあるコウなのですが、ウロウロペラペラモードに入っているときは無目的にウロウロするだけなので、話の隙間に「片づけ始めるまで踏まないよう端に寄せておいてね」と促すようにしています。止まらないおしゃべりタイムは「特性を解放しているとき」なのかも?元々「中学生男子にしては家庭内でよく話す方だ」と言われることもあるコウですが、学校帰りに話があふれ出てくるときは、学校で抑えていた特性を解放しているときなのかもしれないなと感じることがあります。学校では興味のあることを話したくても一方的な独演会はできませんし、会話のキャッチボールをするときも「相手に伝わるかな?」と考えながら話さなくてはいけません。衝動性を刺激する要素は多くても、「今すぐ言いたい!」を我慢するシーンは家庭よりも多いだろうと思います。Upload By 丸山さとこそんなコウが家でノビノビとおしゃべりをあふれさせている間、「私は『王様の耳はロバの耳!』と叫ぶための穴のような存在になれたらいいのかな?」と思いながら、日々学校でのようすを楽しく聞かせてもらっています。執筆/丸山さとこ(監修:初川先生より)面白いですね。おそらく学校の中であった、コウくんなりの興味関心をそそられたこと(ちょっとした興奮状態になったり、覚醒度の上がった出来事)を家で話して整理しているようですね。学校の中ではさほど多動衝動が出ていないのだとしたら、さとこさんが思われたように「特性を解放する」時間なのかもしれませんね。特に何らか反応することを求めているというよりも、話したいから聞いていてほしいというところだと思うので、「王様の耳はロバの耳」の穴のつもりで、楽しく聞くだけで十分ですね。助言や話の骨を折るような質問などすることなく、コウくんが話しやすいように聞くという役を求められているようですね。
2022年08月01日クレーン現象とは?発達障害(自閉スペクトラム症)との関連性は?Upload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンクレーン現象とは、子どもが何かをしたいときに、保護者やほかの人の手を取って物を指す、保護者やほかの人の手を使って欲求を解消しようとするなど、相手の手などで自分の要求を表現する動作のことです。まだ言葉が使えないので、動作で要求を実現させようとするものだと言われています。クレーン現象は問題ない?子どもにクレーン現象が見受けられたら?自閉スペクトラム症や知的障害がある子どもなどに、この「クレーン現象」がしばしば見受けられます。自閉スペクトラム症の特性として「人」よりも「もの」への関心が強いため、相手の気持ちよりも、物事の達成を重要視する傾向があるからだと言われています。ただ、クレーン現象が多く出ると言われている1歳前後の年齢は、まだまだ言葉を使っての要求を伝えることができないことも多くあります。その場合、さまざまな方法で要求を伝えますが、その方法の1つとしてクレーン現象も挙げられます。例えば、定型発達の子どもでもジュースをとってほしい場合には「ジュース」や「冷蔵庫」などの単語が分からなければ、意思を言葉で伝えることはできません。言葉や指さしでの要求がまだできない場合は、保護者の手を介してその欲求を伝えることも多くあります。子どもに何度かクレーン現象が見られたからといって、必ず自閉スペクトラム症や知的障害がある訳ではありません。クレーン現象とは、まだうまく言葉で伝えられない子どもが起こす表現方法の一つなのです。コミュニケーションの発達を促すためにクレーン現象が見られるなどの場合には、指さしの意味に気づくための練習が必要なこともあります。指さしができることによって、子どもの意図が周囲に伝わりやすくなるなど、子どもにとってもメリットがあるでしょう。大人の指さしに注目する練習まずは大人が指さしのお手本をやってみましょう。ぬいぐるみや絵本などを目の前において、指さししながら「かわいいね」「わんわんだね」と言ってみます。「一緒に見ようね」と注意を引きながら行いましょう。どっちが欲しいか選ぶ練習おもちゃと絵本を置いて、どっちで遊ぼうか? と聞いてみます。子どもは自分の興味があるほうに手を伸ばします。指をささなくても、「こっちがいいのね」「選べたね」とほめてあげてください。欲しい物を指さしで伝える練習たくさんの種類があるものを並べて、あるいは表示されているところで、どれがいいのかを選ばせてみましょう。指さし練習の動画を見せる指さしの練習には、動画や絵本を活用してみましょう。ただし、動画の音声があったとしても、一人で見させっぱなしにはしないで、大人が近くにいて、「どれかな~?」「できたね!」など、肉声で声をかけるようにしましょう。情報をキャッチする力・見て・聞いて・体験して「分かる」力を育む・聞こえてくる音や言葉へ耳を傾けることを楽しむものを操作する音や、電話やチャイム・飛行機の音に耳を澄ましてみたり、楽器や歌を楽しんだり、関わり合い遊びの中で言葉かけをすることで、さまざまな音や言葉に親しむ子どもの正面で、ものを見せたり身体に触れたりしてから声をかけるなど、注意をひきつけてから言葉をかける子どもが何気なく音や言葉を聞いている様子が見られたら「リンリンと音がするね」「楽しいね」「よく聞いているね」と声をかける・見たり、聞いたり、体験して分かることを増やすその場所に行く・体験して「分かる」:プールに入ってようやく「水遊びをするんだな」ということが分かる、身体介助をされ座ってようやく「座る」ということが分かる繰り返し習慣化しているものは「分かりやすい」:玄関に行くと「靴を履く」ことが分かる、朝起きると「トイレに行く」ことが分かっている実物を見ると、次に起こること・何をすべきかが「分かる」:プールバッグを見ると「プールに行く」ことが分かる、車の鍵を見せられると「車に乗る」ことが分かる情報を「伝える」力・言葉や言葉以外の手段を使って「表現する力」を育む・子どもの伝えたいことは何か、身近な大人が推測する子どもの現在の気持ちを探り、「伝えたいこと」を推測、代弁してあげることから始める・表現手段を紹介し、一緒に練習してみる相手に向かっていく、肩をトントンとたたく、行動で示す、実物・写真・絵を持っていく、絵や文字を書いて示すなど人と一緒に過ごしたい、分かりたい、伝えたいと思えるモチベーションの源「関わる」力を育む・子どもの世界で一緒に過ごす子どもが注目しているものや、取り組んでいることに対して嫌がらない程度に近づき、声をかけ過ぎず、干渉し過ぎず、一緒にゆったりと過ごす・子どもの見ているもの・聞いているもの・感じていること・動きにコメントしてみるする世話をしながら話しかける:オムツをはかせながら「はい、オムツがはけました」「気持ちいいね」子どもの興味関心に合わせて言葉をかける:おもちゃの車を走らせながら「パトカーがくるよ」、青いブロックを積みながら「青いブロックだね」など・子どもが「思いが叶った」「気持ちを満たしてもらえた」と思えるよう関わる嬉しいことが起こった、思いが叶った、不快な気持ちが軽減した、不安が和らいだという体験を積み重ねることが大切・子どもにもっと期待してワクワクしてもらえるような関わりを心がける体を使ったふれあい遊び、繰り返し遊び(いないいないばあ、シャボン玉あそび、かくれんぼ)などまとめ定型発達の子どもにとっても自閉スペクトラム症のある子どもにとってもクレーン現象は要求を伝える方法の一つです。クレーン現象が気になったとしても、注意をしたり、無理矢理に直す必要はありません。無理のない要求であれば応えてあげてください。子どもがクレーンなど何らかの方法で要求を伝えようとしたときには、指さしで欲しいものを指す、言葉で伝えるなど、より伝わりやすいコミュニケーション方法を教えてあげる機会としてみてはかがでしょうか。
2022年07月31日ASDとADHDのある息子との帰省は大変!Upload By かなしろにゃんこ。ASDとADHDのある息子が小学1年生のとき、私の父の故郷で法事があり、遠方にある父の故郷へ家族みんなで飛行機で行きました。お盆と少し時期がずれていた8月下旬だったので空港の混雑は少し緩和されていましたが、それでも夏休み中でまだまだ人が多く、特性によりじっとしていられない息子を連れての遠出は一苦労です。私と夫はあいさつ用の手土産物などを抱えて両手がふさがり、息子と手をつなぐ余裕がありません。目を離すと勝手にどこかへ行ってしまうような息子ですから、親は気が気じゃない!それだけではなく、普段とは違うお出かけで気分が上がると息子はソワソワ、ウロウロ…そしてベラベラとおしゃべりも止まりません。Upload By かなしろにゃんこ。どこでもおかまいなしに「今、その話重要???」とツッコミたくなるようなことを思いついたまま延々と話します。「ちょっと黙ってなさーーーーーい!!!!」と私がパニックになって叫びたくなるほどです。それに、迷子にならないように「手荷物忘れないでね」「はぐれないでついてきて」「トイレは?」など気を回さなければならないことが山ほどあります。公衆の面前で「怒らない」「取り乱さない」など、気をつけようと思っていましたが、ハッキリ言って親が精神を鍛える試練の場としか思えませんでした(笑)。Upload By かなしろにゃんこ。ASDとADHDのある息子が落ち着いて移動できるように母が与えたミッションとは?それでも「家族で思い出をつくりたい!」そんな気持ちでいざ帰省へ!となったのでした。空港では、はぐれてしまわないように息子をトランク係に任命しました。大きな荷物を管理する役目を担うと息子は係に集中し、少し口数が減るので効果がありました。トランクに乗ったりしながら前進する楽しさもよかったみたいです。Upload By かなしろにゃんこ。また、機内で長時間大人しく座っていられないのではないか、という心配がありました。そこで、搭乗前に飛行機の非常口前の席に座らせていただけないか相談し、乗務員さんの隣の席にしてもらうことができました。(※現在、非常口の側の席に座る人は非常時のサポートができる年齢である必要があるため子どもは座れませんが、航空会社によっては知的障害・発達障害がある人のためのサポートがあるようなのでスタッフの方に事前に相談ができるとよいかもしれません)座席の前が広いので足さばきで前の座席の人に迷惑をかけることもなくいけました。Upload By かなしろにゃんこ。機内では息子が飛行機を怖がってソワソワしてしまったり、緊張を和らげるためなのか口数が増えることが心配でした。普段ならケチって購入しない母ですが、周りの人に迷惑にならないように事前にシールブックを3つほど購入して、目的地までシール貼りに夢中になってもらうことにしました。アニメなど映像などを見て気持ちを和らげるのもいいのですが、体の動きを少しの間封じ込めたいので手元に集中してもらえたらいいなと思ったのです。Upload By かなしろにゃんこ。多分ですが羽田から九州上空までは大人しくできていました。以後足バタバタでしたが…(汗)。目的地に到着してから、息子にはゲートなど行先を確認したり、チケットを渡す係を担ってもらいました。係があることにより息子自身が常に親がいるのかを意識して、そばから離れないようにしてくれたので乗り切れました。Upload By かなしろにゃんこ。そして帰宅後Upload By かなしろにゃんこ。普段のお出かけでは「まだー?」「どこまで行くの~?」「疲れたー」などとを言う息子。折角の楽しい帰省ですから、何が何でもテンションを下げたくないという親の必死な作戦だったのでした。せわしないので帰宅後は疲れ果て「二度と息子と遠出はしたくないな…」と思ってしまいましたが、今では良い思い出です。執筆/かなしろにゃんこ。(監修:井上先生より)これから夏休みで家族で帰省する機会も多いと思いますが、非常に参考になるコラムだと思います。「静かにしなさい」「じっとして」とか注意するだけでなく、時間つぶしのグッズを用意されたり本人の特性を活かせるような役割を与えたり、さまざまな工夫があると長い時間の移動も楽しくなると思います。楽しい雰囲気の中で新しい体験を積むことが今後の子どもさんの自信にもなっていくとよいと思います。
2022年07月31日ADHDがある子どもへの薬物療法。治療にはどんな種類の薬が使われるの?Upload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンADHDは投薬で治療できるの?薬物療法との向き合い方ADHDのある子どもへの薬物療法にはどのような薬が使われるのでしょうか。今回は「ビバンセ」「コンサータ」「ストラテラ」「インチュニブ」の用量、用法や、効き方、副作用などについて説明致します。発達障害の特性によって、家庭生活、学業、友人関係に支障をきたしてしまう…そんな子どもに対しては、さまざまな支援や医療的なケアを利用することができます。その中で、親として最も判断に迷うものに、薬物療法が挙げられるのではないでしょうか。薬物療法を始めても、「薬物療法が本当に良い決断なのか、子どものためになるのか」「副作用などでかえって子どもを苦しめてしまわないか」など、迷いや不安があるのは当然だと思います。薬物療法に対しては、さまざまな考え方や意見があります。中には判断に迷う情報もあるでしょう。薬物療法が全てを解決してくれる訳ではなく、過度な期待は禁物です。投薬を始める場合には、環境調整や本人への説明を行うことが重要で、ただ薬だけ投与しても効果は期待できません。逆に、薬を絶対に使わず本人の努力のみが求められるとしたら、それも子どもにとってつらいことになってしまう可能性もあります。不安な気持ちのまま薬物療法を進めるのではなく、疑問を解消して自分なりに「薬との向き合い方」を考えていくことが大切です。発達障害(ADHD)における薬の効き方とは発達障害に対して薬物療法はしばしば行われることですが、発達障害自体を完全に治癒させる薬物療法はありません。発達障害における薬物療法は、対症療法であると言えます。注意欠如・多動症(ADHD)の中核的な症状である多動性—衝動性、不注意に対して、メチルフェニデート徐放錠(コンサータ®)、アトモキセチン(ストラテラ®)、グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)が使用できます。また、2019年12月からは、リスデキサンフェタミン塩酸塩カプセル(ビバンセ®)が使用できるようになりました。それぞれの薬剤は、効果が出現するまでの時間や効果の強さ、効果がみられる時間の長さや作用のプロフィールが異なっており、患者さんの状況や薬物への反応性に応じて使い分けられます。Upload By マンガで分かる発達障害のキホンリスデキサンフェタミン塩酸塩カプセル(ビバンセ®)ビバンセとは、リスデキサンフェタミンを成分とする薬の販売名で、不注意、多動、衝動性を改善させる効果があります。6~18歳の小児を対象に、2019年3月に販売承認され、2019年12月3日より販売が開始されました。※18歳以前に服用を開始した人に限って、18歳以降も服用することが認められています。6歳未満の子どもへの安全性は確認されていません。また、現時点では、本邦における成人期の適応は取得されていません。これまでにADHDの治療薬として、中枢神経刺激薬のコンサータ、非中枢神経刺激薬のストラテラとインチュニブが販売されています。ビバンセはコンサータと同じ中枢神経刺激薬に属します。ビバンセは体内に吸収された後、アンフェタミンに変化します。このアンフェタミンがADHD症状を改善するのです。ADHDのある人は、脳内で神経に情報を伝える働きを担う神経伝達物質の作用が十分ではないと考えられています。特に、喜び、快楽に関連したドーパミンと、恐怖、驚き、興奮に関連したノルアドレナリンです。ビバンセは、神経と神経の間(シナプス間隙)における神経伝達物質のドーパミンとノルアドレナリンの働きを高める作用があるのです。参考:ドパミン|e-ヘルスネット 厚生労働省参考:ノルアドレナリン / ノルエピネフリン|e-ヘルスネット 厚生労働省ビバンセはカプセルの薬で、20mg、30mgの2種類が用意されています。通常は、30mgから服用を始め、70mgを上限として必要に応じて増量し、1日1回朝経口投与します。増量の必要があるかどうかは診察のうえで医師が判断するため、自分で増量して服用することはやめましょう。ビバンセには併用が禁止されている薬があることから、医師の診察では服用している薬を忘れずに報告してください。ビバンセは服用し始めると、初日からその効果があらわれ始めます。服用すると薬効が12時間程度続き、不注意、多動性、衝動性を改善します。●モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤セレギリン塩酸塩(エフピー)ラサギリンメシル酸塩(アジレクト)●尿のpHをアルカリ化する薬剤炭酸水素ナトリウム等●尿のpHを酸性化する薬剤アスコルビン酸等●メチルフェニデート塩酸塩コンサータリタリンビバンセで特に注意が必要なの副作用は、ごくまれに生じるショック、アナフィラキシー(顔面蒼白、呼吸困難、そう痒など)などです。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行ってください。代表的な副作用は、食欲減退(79.1%),不眠 (45.3%),体重減少 (25.6%)などです。フェニデート徐放錠(コンサータ®)コンサータは、「メチルフェニデート塩酸塩」という成分の入った薬の販売名です。ADHDのある人に処方される飲み薬で、ADHDが原因であらわれる不注意、多動性、衝動性を改善させる効果があります。2007年に6歳から18歳未満の小児に対する治療薬として承認され、2013年には18歳以上の成人にも適応されるようになりました。コンサータは錠剤の薬で、18mg、27mg、36mgの3種類があります。子どもも大人も18mgから服用を始め、その人の適量となるように必要に応じて増量していくようです。なお、18歳未満の子どもでは54mg、18歳以上では72mgが服用の上限です。医師が診断のもとで、その人にとって適正な量を処方するので、自分で増量して服用することはできません。コンサータは1日1回朝に服用します。服用時間が遅くなると夜眠れなくなってしまうことがあるため、午後には服用しないように気をつけましょう。コンサータは服用し始めると、初日からその効果があらわれ始めます。服用すると薬効が12時間程度続き、不注意、多動性、衝動性を改善します。コンサータの副作用としてもっとも多かったものは食欲減退(40.8%)、続いて不眠(18.2%)、体重減少(16.4%)、動悸(12.1%)、悪心(11.7%)となります。※ビバンセとコンサータについては、いずれも医師から処方されるものですので、処方箋なしでは入手できません。特にビバンセとコンサータは流通規制がとられており、登録した医師だけが処方できるような厳しいシステムが整備されています。アトモキセチン(ストラテラ®)ストラテラは不注意、多動性、衝動性といったADHDの症状を改善するために処方される薬です。2003年にアメリカで発売開始されてから海外でも広く使用されており、日本では2009年に18歳未満の子どもに承認されました。さらに、2012年には18歳以上の成人にも承認が拡大され、幅広い年齢の人への処方が可能となっています。ただ、6歳未満の子どもへの安全性と有効性は確立されていません。ストラテラはアトモキセチン塩酸塩という成分の入った薬で、脳の前頭前野部分に多く存在する神経伝達物質「ノルアドレナリン」を活性化させる働きを持っています。脳の前頭前野部分は、順序だてた行動や、行動をコントロールする役割を果たしており、ADHDの人はこの部分に何らかの不具合があると推測されています。ストラテラはドーパミンの代謝も調節することで、症状を改善させると推測されています。また、ストラテラは薬物依存に関係する中枢神経系には作用しないために、薬への依存性は低いといわれています。ストラテラは飲み薬で、現在カプセルと液体薬剤のどちらかが処方されます。カプセルは5mg・10mg・25mg・40mgの4種類あり、医師が処方した用量になるように組み合わせることが可能です。カプセル内の物質は刺激物のためカプセルを分解することは禁止されています。そこで、まだカプセルが飲めない子どもや、カプセルが飲みづらい人には、液体薬剤(内用液)0.4%を選べるようになっています。18歳未満の子どもと18歳以上の成人では処方量や処方回数が異なります。子どもには体重に基づき決定した1日分の用量を1日2回に分けて処方される一方、成人では体重に関係なく用量が決められ1日1回もしくは2回に分けて処方されます。また、子どもも成人も少量からの服用で治療がはじまります。どのように処方されるかは、医師が診断の上で判断しますので、かかりつけの医療機関で相談してください。薬には飲んですぐ効果があらわれるものと、効果があらわれるまでに時間がかかるものがあります。ストラテラは後者のタイプで、毎日飲み続けることで効果があらわれる薬ですから、ADHD症状が改善するためには少し待つ必要があります。約2週間で不注意、多動性、衝動性の改善がみられるようになり、安定した効果が得られるまでには6~8週間ないし人によってはそれ以上かかるといわれています。なお、薬の効果があらわれれば、その効果は途切れることなく終日にわたって続くとされています。特に気をつけなければいけない副作用は、重大な副作用の肝機能障害・黄疸・肝不全・アナフィラキシーです。非常にまれなもので、先ほどご紹介した2009年に高橋道宏医師らが実施した試験でも、これらの副作用は報告されていません。しかし、どのくらいの頻度で起こるかは不明であるものの、服用する場合には念のため注意する必要があります。重大な副作用ではないものの、ストラテラを服用すると起きやすい副作用としては、悪心(31.5%)、食欲減退(19.9%)、頭痛(15.4%)、傾眠(15.8%)などが挙げられます。このような症状が出た場合でも、すぐに医師に相談しましょう。食欲がなくなる、吐き気や腹痛などといった消化器系の副作用を防ぐためには、食事直後に薬をのむなどの対策をとることも重要です。グアンファシン徐放錠(インチュニブ®)インチュニブは、グアンファシン塩酸塩という薬の商品名のADHD治療薬です。グアンファシンという成分が脳の情報伝達機能を助け、ADHDの多動性、不注意、衝動性の症状を改善する効果があります。日本で製造販売が承認され、販売が開始されたのは2017年5月ですが、アメリカ、イギリス、オーストラリアでは以前からADHDの治療薬として、コンサータ、ストラテラと共に使用されてきました。インチュニブは、患者の体重、症状、薬の効き方を踏まえて飲む量を決めるので、医師の処方が必要です。また、処方される年齢は6歳~と決められており、6歳未満の患者が使用した場合の安全性、有用性はまだ確認されていません(2022年6月現在)。従来の薬とは違う作用で働くため、ストラテラやコンサータでは効果を感じられなかったり、副作用などにより継続できなかった人への効果が期待されています。ADHDの原因は解明されていませんが、脳の前頭前皮質という部分での情報伝達に問題があるとされています。中でも、シナプスという情報の送受信をする部位がうまく働かないことが原因の一つではないかといわれています。ADHDのある人の中には、後シナプス(情報を受け取る側)に伝達された情報が漏れ出てしまい、神経伝達量が減少してしまっている場合があると考えられています。インチュニブの役割は、後シナプスの情報の取りこぼしを減らすことです。インチュニブの主成分であるグアンファシンが、後シナプス中のアドレナリン受容体という物質を活性化させることで、シナプス内のHCNチャネルという穴を塞ぎ、入ってきた情報を漏れにくくさせます。インチュニブは1日1回服用する薬です。飲む量は、医師が体質、症状、薬のきき方などをもとに決めます。飲む時間帯はなるべく決まっていたほうが良いでしょう。インチュニブと併用すると、効果が変わったり、副作用が出たりする薬や食品があります。もともと服用している薬がある場合や、インチュニブを服用しながら他の薬を服用することになった場合は、主治医に相談しましょう。インチュニブの対象年齢は6歳以上です。6歳未満における有効性・安全性は確認されていません。インチュニブには、傾眠(49.8%)、起立性低血圧、頭痛などの副作用が認められています。インチュニブ服用時に特に起こりやすい副作用としては、低血圧、徐脈(心臓の拍動数が異常に減少する)、鎮静、傾眠があります。インチュニブの成分であるグアンファシンはもともと血圧を下げる薬として開発されていたこともあり、特に起立性低血圧(立ちくらみ)を生じやすい人での使用には十分な注意が必要です。まとめ子どもが一定期間薬を服用することに対して保護者の方が不安になるのは当然のことだと思います。投薬を開始するにあたって、子ども本人に薬のことをどう伝えるか、また周囲への伝え方などさまざまな悩みを抱えることと思います。子どもが発達障害とともにどのように暮らしていくか、医療とどう付き合い、利用していくのか、こういった視点の中で、自分なりの薬に対する向き合い方を考えていくことが大切です。
2022年07月30日ADHDとASDのある息子が小学4年生のころ、ショッピングモールへ行ったら…!?息子にはADHDとASDの特性があります。息子がまだ小学4年生だった、10年ほど前の夏休みのことです。8月中盤になると出かける場所も行きつくし、暇な私たち親子は近所にあるショッピングモールに涼みに行くことがよくありました。落ち着きない息子は、いつもショッピングモールに着くなり「ぼくオモチャ屋行ってくる」と勝手に走って行ってしまいます。この日は迷子にならないように、私が迎えに行くまで息子にはおもちゃ屋で待機しているようにと約束をしていました。息子にはミニカーを一つ買えるだけのお金を持たせることがありましたが、この日は「先週ミニカーを買ったから今日は買えないよ、おもちゃ屋さんは見るだけね!」と言ってお金は持たせませんでした。息子が おもちゃ屋さんを見ている間、私は子育てから解放されてカフェで冷たいドリンクを楽しむ、しばしの至福のひととき。しかし、おもちゃ屋で待機!と約束していたのに、しばらくすると母がいるカフェまでやってきた息子。少し高そうな車のおもちゃを持ってテーブルの上で走らせて遊びはじめました。私が「それどうしたの?お金持ってないから買えないはずだよね?」と聞くと、「うん、ミニカー売り場に置いてあったんだよ、誰かが忘れていったんだと思う、だからもらっちゃった」と息子は言います。私は真っ先に「勝手に持ってきちゃったんじゃないの!?」と疑いました。それに忘れ物にしては新品のキレイなおもちゃに見えます。追及すると息子は「本当だよ!このおもちゃは箱から出ていたんだ、売ってる物じゃないんだ、だから誰かが忘れたものなんだよ!」とムキになって言い返してきました。Upload By ユーザー体験談息子は勘違いをしているのでは…?息子はどうも「同じ商品が箱に入って並んでいるけれど、箱から出ている物は一度誰かが購入して箱から出した物であり、売り物ではない」という誤った捉え方をしているようです。また、誰かの忘れ物であった場合でも、勝手に持ち去っていいわけではありません。息子は、2つの間違いをしているのかもしれないと思いました。Upload By ユーザー体験談はたまた、そうではなく、本当は店の物を盗んでしまったのに嘘をついているのかもしれません。店に謝りに行き、買い取る必要があるかもしれない、などと頭の中でいろいろなことがかけめぐりました。息子は「本当だよ!」の一点張りでした。私の心の中では(いや、絶対に売り物を持ってきちゃったんだろう)という疑いが60パーセントくらい占めていました。あぁ…もう息子から目を離すのはやめよう…、と反省する出来事でした。Upload By ユーザー体験談今は成人した息子。当時を振り返ると…今は成人している息子。当時のことを聞いてみると、「箱から出ていたおもちゃを誰かが忘れていった」思い込んでいたのだそうです。今ならあれが間違いなく売り物だということは分かるけど、当時はそうは考えなかったとのことでした。息子は、「お母さんがスゴイ疑って聞いてきたからムキになったな。でもよく考えたら店の物ということになるね!あのときはオレが欲しいおもちゃが箱にはいっていない状態で置いてあったから、深く考えずに純粋に『ヤッター!もらおう』って思っちゃったんだよね」と話してくれました。Upload By ユーザー体験談売り物や人の物を勝手に持ち出すのはあってはならないことです。子どもを信じたいけど信じきれない、でも一方的に追及しすぎるのはよくないのかな?と考えてしまったり…。あとから息子の口から話を聞くことができましたが、このときどう対応するのが一番よかったのか?分からなかった母でした。イラスト:かなしろにゃんこ。エピソード参考:星野 真弓(監修:三木先生より)ご本人の後日コメントにあるように、発達障害のあるお子さんは、大人の常識とは違った思い込みでものごとを判断することが往々にしてあります。お子さんの言い分を信じるかどうかは結果論で良い対応にも悪い対応にもなってしまいますが、時には大人が先入観を外して子どもの言葉を素直に聞いてみることも大事かもしれませんね。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは「反抗期・思春期」「自傷」「学習」「不登校」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「ご近所トラブル」などに加え、今回より「パートナーや両親(義両親)、親族間トラブル」「冠婚葬祭」のお悩みも追加募集!パートナーなどとの意見の相違、冠婚葬祭でのルールが分からない、反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年07月29日神奈川県児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報てらぴぁぽけっと海老名さがみ野駅前教室は2022年6月に開所した児童発達支援事業所です。友達と上手く遊べない・席に座れない・名前を呼んでも振り向かない・話を聞いていないように見える・落ち着きがなく集中して遊べない・手足をそわそわ動かすなどの悩みについて、保育士などの有資格者のスタッフ・セラピストがお子さん一人ひとりに合わせたプログラムを組み、お子さんの楽しいを大切にしながら、無理なく、より細かく、確実に、丁寧に遊びの中に支援を組み込むことを大切にしながら支援を提供している施設です。神奈川県の児童発達支援事業所をもっとみる大阪府放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報poppy fam(ポピーファム)は2022年10月にオープン予定の児童発達支援と放課後等デイサービスの多機能型事業所です。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による専門的な療育を行い、言葉の発達や語彙、体の動かし方や体幹、手先の動かし方や衣服の着脱など、お子さんの日常生活における「苦手」を「できた!」に変えるサポートを行う予定です。専門療育だけではなく、職員、お友達との集団での関わりを通し、お片づけ、整理整頓といった「身辺自立」、おもちゃの貸し借りや、気持ちを言葉で伝えるなど「社会性」を育むサポートを行います。大阪府の放課後等デイサービスをもっとみる広島県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報開所したばかりの放課後等デイサービスイチバンボシ庚午では、以下のプログラムを提供しています。学習プログラム:『できた』という達成感を大切にし、各学年別に個別で支援を行っています。運動プログラム:体操や運動機器を使用したサーキットトレーニングや、想像力・バランス感覚・体力向上・リズム感等の要素を取り入れたトレーニングを行っています。社会参加プログラム:集団での活動をしていく中で、他者との関わり方やルールを学び、協調性を養っていけるよう支援を行っています。広島県の放課後等デイサービスをもっとみる福岡県放課後等デイサービスUpload By 発達ナビ施設情報2022年7月にオープンした、療育ケアMARINE RAINBOW 久留米高校前は、作業療法士による専門的療育を提供している放課後等デイサービスと児童発達支援の多機能型事業所です。個別療育では学習・認知面のサポートを行い、集団療育では適切なコミュニケーションや集団生活面での必要なスキルなどのサポートを行っています。また、お子さんの特性に合わせて、身の回りの動作の訓練を行ったり、身体を動かす遊びや運動動作を通じて、身体の動きをスムーズにしたり、力の使い方を上手にできるようサポートを行っています。福岡県の放課後等デイサービスをもっとみる鹿児島県児童発達支援事業所Upload By 発達ナビ施設情報ブロッサムジュニア玉里教室は2022年4月に開所した、児童発達支援と放課後等デイサービスを提供する多機能型事業所です。ソーシャルスキル、知育、感覚統合等、お子さんに合った多様な療育プログラムを提供しています。集団療育では「遊び心満載」のプログラムを通して、不得意に取り組み得意を伸ばせるような支援を、個別療育ではお子さまの特性に応じて、オーダーメイドのプログラムをマンツーマンで行い、「心身機能面・行動面・生活面」のサポートをしながら、小さな自信の積み重ねにつながるようなきめ細やかな支援を行っています。鹿児島県の児童発達支援事業所をもっとみる「もっと施設の情報を詳しく知りたい!」「見学をしてみたい!」と思ったら、WEBからもお問い合わせが可能です。施設情報ページでは、掲載されている施設の情報を地域ごとに検索して見ることができますよ。
2022年07月28日「こどもかいぎ」って?――子どもたちによる傾聴、そして話し合う大切な時間Upload By 発達ナビニュース映画『こどもかいぎ』は、子どもたちが「かいぎ」をする保育園を1年間に渡って撮影したドキュメンタリー作品です。「こどもかいぎ」では子どもたちが輪になって自由に話し合います。何を話してもいいけれど、相手の言うことはきちんと聞くのがルール。テーマはそのときによってさまざまです。ふしぎに思うこと、最近知ったこと、保育園でいやなこと…。さて、どんな意見が飛び出すのでしょうか。「こどもかいぎ」では結論を出すわけではありません。それぞれが自分の思いを伝え合う中で、子どもたちは成長していきます。子どもたちは、 自分にも相手にも全力でまっすぐ。気持ちを伝えるというのは単に「言葉で」だけではありません。子どもたちは何を考え、自分の可能性や、人と人との関係をどのように育んでいくのでしょうか。映画『こどもかいぎ』、そこには社会の中で生きていくために大切なヒントがあふれていました。コロナ禍だからこそ、対話をテーマにしたこの映画を届けたいUpload By 発達ナビニュース今回、監督の豪田トモさんにお話をうかがいました。発達ナビ編集部(以下、ーー):映画『こどもかいぎ』の完成に至るまでの背景を教えて下さい。豪田トモ監督(以下、監督):2017年から映画『こどもかいぎ』のプロジェクトがスタートしました。撮影場所探しに1年。ようやくご縁があって舞台となる保育園で2018年の春から1年に渡り撮影させていただきました。150時間の撮影を映画として1時間半にまとめるまでに2年かかりました。しかし、 完成したタイミングで新型コロナウィルスの流行がはじまり、その当初、映画を公開できるような状況でなくなってしまいました。仕方なく、この映画はお蔵入りにするしかないと思ったんです。ーーそのような中、公開に踏み切ったきっかけはなんでしょうか?監督:わが家には娘がいるのですが、当時小5で、分散登校をしていました。ある日、タブレット端末で学校の様子を見せてもらったんですが、そこには給食の時間に黙食している子どもたちの姿があり、ショックを受けました。そのとき一番に思ったのは、「この子たちは、きっと言いたいことがあるはず。大人は子どもの声を聞けているんだろうか」ということでした。一度は公開をあきらめた『こどもかいぎ』だったのですが、このことがきっかけになり、コロナ禍だからこそ、対話をテーマにしたこの映画を公開しようと決意したんです。「対話」とは、思考と思想を交換するものUpload By 発達ナビニュースーーこの映画の大きなテーマである「対話」というキーワードですが、豪田監督が思う「対話」とはどのようなものでしょうか。監督:「対話」についてお話するときに、「『会話』と『対話』はどうちがうんですか?」と聞かれることが多くあります。「会話」と「対話」は、それぞれ辞書で調べると同じようなことが書いてあるのですが、僕自身はそこには大きな違いがあると思っています。「会話」というのは、感情と情報を交換するものだと思っています。今日会ったこと、楽しかったことを聞いて、それに答えたり、ときに怒っていること、悲しかったことなど感情をぶつけることもあると思います。一方で、「対話」というのは、思考と思想を交換するものだと思っています。会話よりも、もっと深いところにある、考えていることに根ざしている哲学を相手に伝えるものではないかと感じています。今回、子どもたちが対話する姿をみて、子どもは周りの子たちと考え方や、その裏にある気持ちを交換していると感じました。違う考え方に出合ったとき、大人はときに偏見につながることもあると思うのですが、子どもにとって対話で出合った「自分と違う意見」は、発見になるんだと感じました。ーーお話するのが得意な子ども、苦手な子ども、どちらもいると思います。それぞれがその子らしく対話の場に参加するために、大人ができることはどんなことでしょうか。監督:対話って言葉で話すことだけではないと思うんです。「お話しないといけないんですか?」と聞かれることもよくあるのですが、無理して話す必要はありません。対話では、その場にいて話を聞くということがとても重要です。それだけでも対話を重ねることで、対話の場に自分の居場所を感じることができる、子どもたちの姿を見てそう感じました。「対話」がもたらす3つの影響Upload By 発達ナビニュースーー「対話」することは、子どもたちへどのような影響があると感じていますか?監督:これはたくさんありますね! その中でも大きく3つの影響があると思っています。1つ目は、その子なりの力がのびていくこと。聴く力、表現する力、思考する力、想像する力、語彙力、タイミングを見極める力など。 対話は相手がいることなので、相手と関係性の中で場を良くしていく力や仲間意識、共感性なども育まれると感じます。また「何でも話していい居場所」があることで、自尊心や自己肯定感が育まれていると感じました。2つ目は、子どもたちを取り巻くさまざまな社会問題の解決につながるのではないかということです。対話を重ねることで話してみないと分からないこと、話してみたら分かり合えることがあると気づくことができると思います。それは不登校、ひきこもり、いじめ、貧困、ヤングケアラー、精神疾患があることからの困りごとなどの問題解決のヒントにもなると思います。対話ができるようになることで、「困っていることがある」とSOSを出したり、自分の感情を言葉にする力が育まれ、それは自分の抱えている問題を解決する力になっていくと感じています。3つ目は、将来をつくる力です。たとえば、年中から高校まで週1回「対話の授業」があったら、それまでに400〜500回は対話ができるんです。自分の思いを話す、相手の話を聞くという経験を重ねることで暴力、暴言、DV、依存症などのコミュニケーション上の社会問題の予防になるのではないかと思っています。子どもの思いを聞いてほしいUpload By 発達ナビニュースーー最後に発達ナビの読者である、障害や特性があるお子さんを育てる保護者の方へのメッセージをお願いいたします。対話は保育園や幼稚園、学校だけでなく、家庭でもできます。子どもの話を聞く、思っていることを知るというのは、愛情表現です。その子の心の中にある声を、時には待って、すべてを受け止めていく。お子さんが小さいころは身体的なスキンシップが多いかもしれませんが、思春期以降そのようなスキンシップが減っていくことが多いと思います。スキンシップが減り、精神的なスキンシップもとらなくなるとだんだんと対話できなくなり、会話もなくなっていく…そうなってくると子どもに親の愛情が伝わらないということが多くあることを感じました。「対話」さえできていれば、大丈夫ではないかと僕は思っています。「対話」は自己肯定感を育み、子どもたちの可能性を広げます。ぜひ子どもの思いを聞いてほしいなと思っています。ーーありがとうございました!たとえ一見対話は難しいと思えるような子どもや場面であっても、きっとその子の中に「思い」があるはず。それを聞き、受け止めようとする姿勢の大切さを教えてくれる映画でもあると感じました。子どもとの関わり方に迷ったり悩んだりする大人に、きっとたくさんのヒントをもたらしてくれる映画だろうと思います。映画『こどもかいぎ』上演情報Upload By 発達ナビニュース『こどもかいぎ』2022年7月22日(金)よりロードショー。東京都・シネスイッチ銀座、シネリーブル池袋、イオンシネマ多摩センターほか、全国順次公開予定です映画『こどもかいぎ』劇場情報※クリックすると発達ナビから映画『こどもかいぎ』の公式サイトに遷移します企画・監督・撮影:豪田トモプロデューサー:牛山朋子編集:池宮三葉プロダクションマネージャー:徳田香織、宮澤朋子後援:内閣府、日本保育協会、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、認定NPO法人フローレンス推薦:厚生労働省※クリックすると発達ナビから映画『こどもかいぎ』の公式サイトに遷移します
2022年07月27日こだわりと興味の偏りが強い子なので…Upload By ゆきみ自閉スペクトラム症のあるけんとが3歳のとき、年齢が進むにつれて周りの子たちと成長の差が広がっていくことに不安を感じ、焦っていました。やりたいことはとことんやるけれど、やりたくないことは一切やらず、こだわりも強い性格。けんとが興味を示すものがとにかく少なく、生活面も含め、いろいろなことができるようになる気がしませんでした。どうしたらいいのか分からず、発達支援施設の先生に相談したり、ネットや本で調べてみたりすると、いろいろな苦手に対して家で遊びながら練習する方法もたくさんあることを知りました。長男のけんとと弟の場合は、どのようにすればできるようになるのか。難しくてやる気を出さないことも、やろうとしてくれるのか。そう考えるようになり…数ある方法の中から少しずつ試し、子どもたちの様子を観察する「うちの子研究」をはじめました。自閉症長男が好きな数字とラムネで重ねた成功体験Upload By ゆきみ移動用に親子3人が乗れる電動自転車を購入。しかし、けんとはヘルメットを嫌がり、かぶってくれませんでした。そこで、けんとは数字が大好きだったので、数字にからめながらやってみることに。「1秒ヘルメットに触ったら、大好きなラムネ(1粒)を食べよう♪」と、私が見本を見せてから誘ってみると、喜んでやってくれました。できたらハイタッチでイェーイ!テンションをあげてゲームみたいにしながら「3秒触ったら→5秒触ったら→1秒頭にのせたら→3秒のせたら、10秒のせたら…」と段階をふんでいくことに成功。そしていざ、自転車で実践!ヘルメットをかぶるのか?自転車に乗るのか?と心配しましたが「自転車で公園へ行って、ラムネを食べて遊ぼう♪」と声をかけると喜んでヘルメットをかぶり自転車に乗ってくれました。この体験で、ヘルメットは痛くない、怖くないということが分かった様子。数日かけて、ご褒美なしでもできるようになりました。失敗…ダメならすぐに方法をかえてみたUpload By ゆきみ4歳のとき、外出すると好きなところに走って行ってしまい、常に追いかけまわしてました。家族や友達といても、みんなで一緒に行動することができず落ち込む日々。何か方法はないかな?と思うようになりました。そこで、「ママから離れたら、プチ財布に入れたボールを減らしていく」「ボールがなくなったらラムネが食べられない」という方法をやってみることに。子どもにもよるのだと思いますが、けんとの場合は、この方法だと全くなおらず、本人も嬉しそうじゃない。結果はうまくいきませんでした。Upload By ゆきみその後、やり方を変えながら試行錯誤。うちの子の場合うまくいったのは…ショッピングモールで「あのエレベーター(50メートルほどの距離)まで手をつないで歩けたらラムネ(1粒)食べようか♪」と誘い、できたらイェーイ!「次はどこまでにする?あの本屋さんまで行こうか?」などと距離を伸ばしていく方法。このとき、行先は子どもの好きな場所にしました。これで人と歩くことに慣れてくれたのか、公園や動物園、遊園地などへ行っても、一緒に手をつないで家族みんなで歩けるようになり感動しました。ご褒美はペットみたい?悩んだ日々Upload By ゆきみけんとと同じことを弟にやってもうまくいかないことがたくさんありました。弟は天邪鬼なところがあり、やりたいと思っていることでも「やらない!」とふてくされてしまいます。そんなときは様子をみて、やりたい雰囲気が少しだけ出てきたときに声をかけ、すかさず褒めて気分をあげるとうまくいくことがありました。その子によって、声のかけかた、かけるタイミング、楽しみかた、できるまでの道のりや、かかる時間は全然違うのだと分かりました。ネットや友人の意見で、ご褒美をあげるというのは「お菓子をあげて、ペットみたい」というのがありました。確かにそう見えるのかも…と悩んだ日々。しかし「怖がりなうちの子の扉を開いてあげる手段の1つ。とにかく少しでもできることを増やしてあげたい!周りにどう思われてもいい。とにかくやってみよう」と決意しました。うちの子に合った方法を家でも模索しながら、これからも新しい扉を開いてあげられるようにサポートしていけたらと思っています。執筆/ゆきみ(監修:鈴木先生より)ある行動ができたご褒美には本人が喜ぶ行動で返してあげるといいですね。例えば肩車をしてあげる、本人の好きなところに連れて行くなどです。慣れてきたら、できたときだけ言葉で褒めて頭をなでたり、ぎゅっと抱きしめてあげたりなどして褒め方を変えていく工夫も必要です。こういった即時報酬のトークン法以外に、遅延報酬というトークン法も次のステップでは重要です。簡単に言うとお子さん専用のポイントカードをつくることです。ある行動ができたらシールを貼って、5枚までたまったらどこかに連れて行くという考えです。大人がスーパーでシールやスタンプを集めて何かをもらうことと同じです。会社のボーナスも、あとでもらえるからその日まで頑張れるのです。
2022年07月27日歯が生える時期と、虫歯ケアの関係は?歯が生える時期や順番は個人差が大きいですが、平均的には生後5~6ヶ月ごろに、下の前歯(下顎乳中切歯)から生え始めます。20本の子どもの歯(乳歯)が生えそろうのはだいたい3歳ごろです。永久歯は、歯を支える骨の中に、お母さんのおなかにいるときから存在しています。乳歯から永久歯の生え変わりのときは、乳歯の下にある永久歯から押し出されるようにして乳歯が抜けるのです。5~6歳、ちょうど小学校の入学前後ごろになると、下顎乳中切歯(かがくにゅうちゅうせつし)が抜けて、下から大人の歯(永久歯)が生えてきます。これとほぼ同じ時期に乳歯のいちばん奥の歯のさらに奥に、6歳臼歯といわれる下顎第一大臼歯がゆっくりと生えます。その後、乳歯は永久歯へと生え変わり、13歳ころまでに永久歯列となります。ですから乳歯が最後まで虫歯にならず、しっかり生えていないと、狭い口の中で永久歯が生えてくるスペースを確保できず、それでもなんとか歯ぐきから顔を出そうとするために、まっすぐ生えてこないことがあります。乳歯はそのうち生え変わるから、虫歯になっても問題ないのでは…と思っている方も多くいるのではないでしょうか。ですが、乳歯をケアして虫歯にしないことは、永久歯を守ることにつながるといわれています。子どもの虫歯の原因・特徴について子どもの歯を磨いていたつもりでも、虫歯になってしまう場合にはどんな原因が考えられるでしょうか。歯磨きだけでなく、普段の食生活も虫歯には関係します。そもそも虫歯は、虫歯菌による感染症。虫歯菌は歯の表面や隙間に残った食べカスに含まれる糖質を食べて、ネバネバしたグルカンという物質をつくり、そこに多くの虫歯菌がくっついてプラークという固まりをつくります。このプラークの中で、酸性物質をつくり、歯を表面から溶かしてしまい、歯に穴があいてしまうのです。だ液の働き方によっても、虫歯ができやすいかどうかが変わります。だ液がたくさんでると、だ液で口の中を洗い流すことができます。だ液には虫歯菌を殺す成分も含まれています。だ液をたくさんだすためには、よくかんで食事を楽しみましょう。食事をするたびに口内は酸性になりますが、間食などをせずに、食事と食事の間が数時間空いていれば、だ液は中性(おおよそpH6.8)で、緩衝作用があるので酸性の状態の口内を元の状態に戻そうとします(人の口の中の、pH(ペーハー)変化をグラフで表したものを「ステファンカーブ」と言います)。それでは、子どもの虫歯にはどんな原因や特徴があるのでしょうか。乳歯は永久歯に比べて小さく、エナメル質も薄く弱いので、虫歯から守るためにも歯磨きは必須です。歯が1本でも生えたときから始めましょう。歯が生えそろってから歯磨きスタート、では遅いと言われています。食事、おやつのあとに毎回歯磨きをするのは大変そうに思われますが、歯の本数も少ないうちなら、簡単に歯を拭いたり、歯ブラシでさっと数秒こすったりするだけでも構いません。小さいうちから習慣化してしまえば、歯磨きを嫌がらなくなるかもしれません。ミルク(人工乳)やジュースをほ乳瓶で与えると、糖分が口の中に残ってしまい、虫歯の原因になってしまうこともあります。そのため、歯が生えてからも、一定期間授乳が続きますが、卒乳していない場合、寝る前などに授乳してそのまま寝てしまうことも虫歯の原因につながってしまいます。母乳の場合は、糖分が歯に残ることはあまりないといわれています。ただし、日中の歯磨きができていなければ、残った食べカスにさらに糖分が付着して残ってしまいます。虫歯菌のエサとなる砂糖はさまざまな食品に含まれますが、特に多いのはお菓子類、そしてジュースやスポーツ飲料のような清涼飲料水です。時間を決めずにだらだら摂っていると、歯についた砂糖をだ液によって洗い流す時間がとれず、口の中は虫歯ができやすい環境になってしまいます。離乳食の段階が終ったら、おやつも含めて決まった時間に食事をする習慣をつけましょう。鼻が詰まっていることなどが原因で、口呼吸をしていると口の中が乾きます。虫歯を予防するためにはだ液がたくさん出ることが大事ですが、だ液の出る量が少ないと口の中がすぐに乾燥して虫歯ができやすくなってしまいます。ほかの感染症予防と同様に、虫歯対策にも鼻呼吸は大切です。鼻が詰まっているようだったら、耳鼻科を受診しましょう。小学校に上がるころになると、トイレや着替えなど身の回りのことを自分でできるようになってきます。ですが、歯磨きはまだ十分にできないことが多くあり、どうしても磨き残しができてしまい、そこから虫歯になることも。「もう自分でできるでしょう」と思わず、必ず大人が仕上げ磨きをしましょう。生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には虫歯菌はいません。虫歯菌をもっている親や家族が一度口に含んだ食べ物を与えることで、虫歯菌が子どもに移行して虫歯の原因となります。虫歯菌だけでなく、ほかの感染症のことを考えても、口移しで食べ物を与えることはやめましょう。虫歯を予防する3つのポイント虫歯を予防するには、1.歯磨き 2.糖分を含む食べ物・飲み物をだらだら摂らない、3.エナメル質を強化するフッ化物を利用する、という大きく3つの予防法があります。3つのうちどれか1つではなく、それぞれを続けることが重要です。歯が生える前から、口腔用ガーゼなどで口内(歯茎と頬の間や上あご、舌など)を拭うと口内もさっぱりして、適度な刺激になります。口内の過敏もなくなり、歯が生えてからの歯磨きへの受け入れがスムーズになることもあります。歯が生えたら歯磨きをスタートします。はじめは、さっと歯を拭くだけでもOKです。やがて、棒状のものを握ってコントロールできるようになったら、自分で歯ブラシを持つ練習をスタートします。こうして遊びやおしゃぶりの延長で、敏感な口の中に歯ブラシを入れる練習を始めます。このときに、のどつき防止機能がついた歯ブラシを選びましょう。ただ、この「自分磨き」では歯の汚れを完全にとることができません。自分磨きをさせたあとに、必ず大人が歯ブラシを使って仕上げ磨きをしてあげることが大切です。歯ブラシは、子どもの口のサイズに合った、ヘッドが小さいものを選ぶようにしましょう。だ液は、よくかむことでたくさん出るようになります。だ液がしっかり口の中に行きわたることで、歯に付着した砂糖を流し、だ液に含まれる虫歯菌を殺す成分の働きで虫歯を予防します。お菓子やジュースをだらだらと食べ続けると、虫歯菌が活動しやすくなってしまうので、おやつは決めた時間にとるようにしましょう。特にキャラメルなどは歯にくっつきやすいので注意が必要です。ジュースや甘い清涼飲料水を少しずつ飲み続けるのもやめましょう。うがいがまだできないころは、歯磨きのときに歯磨き剤を使わなくても大丈夫です。「ぶくぶくぺー」と自分で口がゆすげるようになったら、フッ化物が配合されているものをつけて磨くのもよいでしょう。研磨成分を含まないジェル状、泡状、液体などであれば、「ぶくぶくぺー」ができない低年齢児でも使用できるものもあります。歯を強化してくれるのがフッ化物です。ただし、たくさんとると骨への影響があるため、使用には制限があります。厚生労働省では、フッ化物の含有量を6~14歳までの子どもには1000ppm、3~5歳までは500ppmの歯磨き剤の使用を推奨しています。参考:フッ化物配合歯磨剤|e-ヘルスネット 厚生労働省発達障害がある子どもの場合の口腔ケア歯のケアが必要なことは分かっているけれど、どうしてもうまく歯磨きができない、という場合があります。発達障害のある子どもの場合、特性などにより、食生活が乱れたり、歯磨きがうまくできなかったりして、虫歯になってしまうこともあります。自閉スペクトラム症の特性から、こだわりが強いために極端な食べ物の好き嫌い(偏食)があったり、パニックをなだめるためにお菓子やジュースなどを頻繁に与えてしまったりという場合もあるのではないでしょうか。ADHDがある場合は、歯磨きの間じっとしていられなかったり、歯磨きをすること自体を忘れてしまったり。手先の不器用さやボディイメージの弱さがあると、自分ではうまく磨けないということもあります。また、感覚過敏があると、口や顔を触られることを嫌がって歯磨きするのが難しいということもあります。歯磨きの時間がバトルになってしまい、そのことを考えるだけで憂うつ、という保護者の方も少なくありません。こうした特性がある場合は、後述する脱感作(だつかんさ)などの方法をはじめ、子どもがいやがらない歯磨きの工夫を試してみてください。また、かかりつけの歯科医ともよく相談してみることも大切です。基礎疾患がある子どもの場合の口腔ケア低出生体重児や先天性の心疾患、脳性麻痺、重症心身障害などがある子どもの場合には、体質や特性、生活環境によって虫歯ができやすいことを知っておきましょう。上記のような虫歯予防を守っても虫歯ができてしまう、あるいは歯磨きをしようと思ってもできない、という場合があります。低出生体重児や先天性の心疾患、脳性麻痺、重症心身障害などがある子どもの場合、歯の表面のエナメル質など歯の質が弱い場合があります。また、基礎疾患などで服薬をしていると薬剤の影響で歯肉増殖や唾液分泌低下などが起こることで虫歯になりやすいともいわれています。重度の障害などによって、よくかんで食べることや飲み込みがうまくできず、食形態がペースト食に限られている場合は、歯に食べ物が付着しやすくなります。また、反芻癖があって口の中にいつも食べ物が残っている状態や酸性の状態が長く続くといったことによっても、虫歯予防がしづらくなります。歯周病になると歯肉に炎症がおきますが、この炎症の原因は細菌によるものです。歯茎から細菌が血管に侵入し、血流にのって心臓に到達して心臓の損傷がある部分に付着し、感染性心内膜炎などを起こすことがあります。毎日の歯磨きのための工夫って?毎日の歯磨きで大変なのは、何よりも子どもがいやがること。歯磨きが親子ともにストレスとなっているということもあるでしょう。子どもがいやがる原因を考えてみると、少し解決の糸口が見えるかもしれません。毎日の歯磨きを続けるためには、次のようなことが大切です。仕上げ磨きをされるときに、どこかに痛みを感じている場合があります。ゴシゴシと強く磨こうとして歯ブラシがあたって痛いことも、子どもが歯磨きをいやがる原因になります。歯ブラシは鉛筆を持つようにしてやさしく握り、こまかく震わせるようにして歯に当てましょう。特に、上唇小帯(じょうしんしょうたい)という上唇の真ん中で、唇と歯茎をつないでいる「すじ」が長く伸びていることがあります。この部分に歯ブラシが当たると、とても痛いです。歯ブラシを持っていない手指で上唇をしっかり排除して、確認しながら磨いてあげましょう。感覚過敏がある子どもの場合は、口の中を触られること自体がいやで暴れてしまう、という場合があります。その場合は、脱感作を試してみましょう。脱感作とは、触っても大丈夫な体の部分から、手のひらを動かさないようにしっかり触れて、声をかけながら少しずつ慣れさせていくことで、歯磨きなら口周りを触ることができるようにしていく方法です。肩→首→頬→口の周り→口の中の順序で触れていき、慣らしていきます。口の中に指を入れる時は指の腹でしっかり歯茎に触れて、いやがらなくなるまで動かさないようにするのがポイントです。そのようなアプローチをすることで、歯ブラシのような刺激が強いものも受け入れられるようになります。歯磨きができてもできなくても、ブクブクうがいで食べカスを口の中から減らすことができます。でも、いきなり「ブクブクうがい」と言っても、やり方が分かりません。プロセスを分解して、少しずつトライしてみましょう。ブクブクうがいには、①水を口に含む →②口の中に水をためておく →③口の中で頬を膨らませて、水を左右に移動させる →④吐き出す、という動作のプロセスがあります。このプロセスを1つひとつ確認しながらやってみましょう。最初の①水を口に含む では、口を閉じないと水がこぼれてしまうので、そこから挑戦します。ぶくぶくうがいのやり方の動画などもあるので活用してみましょう。水を含まずに、1つひとつ動きを模倣しながら練習するのも良いでしょう。大人になるまでに、歯磨きが自分でできるようになることが最終的な目標ですが、まずは歯磨き習慣の定着が大切です。口の中が過敏な子どもの場合は、前述のように、歯が生える前からミルクを飲んだ後に口腔用ガーゼや柔らかいガーゼなどで口内を拭くことで、過敏を防ぐことにつなげていきます。また、歯磨きの前に、指で過敏を和らげるなどを行うことで、仕上げ磨きの歯ブラシをいやがらないで受け入れられるようになり、仕上げ磨きもしやすくなります。歯磨きする部分を絵カードなどで示して、時間の長さを決めて、「10まで数えるよ。1、2…10、はいOK」というようにカウントします。終わったらほめてあげましょう。このようにして、終わりを提示することで、最終的には歯磨きを受け入れてもらいます。一見、歯磨きができているようでも、特に小学校中学年くらいまでは、細かいところまで自分で歯ブラシを当てることが難しいので、大人が仕上げ磨きしてあげることが必要です。磨き残し部分が赤く染まる液なども市販されていますから、親子でときどき磨き残しをチェックして、残っているところをうまく磨く方法を研究したり教えたりしましょう。家庭で口腔ケアをするときに、正しいやり方が分からないことがあるでしょう。歯磨きの習慣づけも、歯ブラシのじょうずな使い方も、専門家の指導を一度受けてみてください。歯医者さんは、虫歯の治療や歯科検診だけでなく、気軽に口の健康についての相談ができる場所です。最初の乳歯が生え始める頃から、ぜひかかりつけの歯科医を通いやすい場所で見つけてください。もし、子どもに障害がある方で、どこに相談していいか分からないという場合は、各地域に障害のある子どもを専門にみている口腔保健センターなどがありますので、利用してみてください。日本障害者歯科学会のホームページにも、口腔保健センターや障害者歯科学会の認定医の案内があります。かかりつけの歯医者に、気になることは気軽に相談して、定期的に健診を受けることで、虫歯を予防することもできます。まずは、子どもが安心していやがらずに通える歯医者さんを探しましょう。まとめ歯の大切さは分かっていても、実際にケアしていくことが難しい場合や、障害の特性によっては特別なケアが必要なこともあります。虫歯予防は毎日のことなので、毎回完璧にできなくても少しずつ続けていくことが大切です。口は体の中でも特に敏感なパーツに触れるケアだからこそ、子どもとの信頼関係がとても大切です。ひどく嫌がるときには、かかりつけの歯科医ともよく相談しながら続けていきましょう。
2022年07月26日4周年を迎えた福祉実験ユニット「ヘラルボニー」の新たな挑戦Upload By 発達ナビ編集部福祉実験ユニットとして活動する「ヘラルボニー」。印象的なテキスタイルのファッションプロダクトやインテリアファブリック、駅舎や工事現場の仮囲いなどを活用した作品の展示など、幅広い活躍を目にした人も多いのではないでしょうか?障害のある人たちの生み出すアートには、障害があるからこその強み、異彩がある――「障害ある人の作品だから支援しよう」ではない。アート・デザインの文脈で勝負したい、「すばらしい」からコラボしたいと思う。社会の側にある「今までの常識」をシフトさせる挑戦をしたい。その想いで歩み、4周年を迎えた「ヘラルボニー」が、この度新たな一歩を踏み出しました。原画展を開催――テキスタイルやライセンシー事業から一歩踏み出してテキスタイルとして、アパレルに活かすだけではなく、魅力ある「アート作品」としてうちだしていく第一歩として、金沢21世紀美術館のキュレーター黒澤浩美氏が企画監修をつとめる美術展「ヘラルボニー4周年記念 The Colours!」を開催。Upload By 発達ナビ編集部このイベントの開催直前、キュレーター黒澤浩美氏や、アーティストの一人である井口直人さんも列席してのギャラリートークが行われました。東京・六本木にあるアートギャラリー、ANB Tokyoで2022年7月16日から開催される「ヘラルボニー4周年記念 The Colours!」には、12名のアーティストの原画が並びます。どの作品も力強く、迷いがなく、まっすぐに心の琴線に触れるものばかりです。Upload By 発達ナビ編集部黒澤浩美氏は「社会の中にある障害を低くし、メルティングし、一つの世界にしていきたい。それがこの展覧会にこめたテーマ」だと言います。アーティストたちは「あるがままに生きる中で、自由な線や色、形を発見します。自分の生きる姿の写しともいえる表現」だと言い、一人ひとりの作品を、「ヘラルボニー」の代表・松田崇弥氏と共に、丁寧に解説していきました。Upload By 発達ナビ編集部トーク後は、展示アーティストの一人、井口直人氏による制作の様子も披露されました。「ヘラルボニー」代表、松田兄弟にインタビュー発達ナビでは、「ヘラルボニー」の共同代表の松田崇弥氏・松田文登氏に、発達ナビ編集長・牟田が話を伺いました。「ヘラルボニー」は今まで、障害のある人のアート作品を・ファッションテキスタイルに活用・街をキャンパスに、工事現場の仮囲い街を美術館化・アートライセンス事業で障害のある人たちの収益を向上という取り組みを進めてきました。Upload By 発達ナビ編集部「ヘラルボニー」を立ち上げた二人は、子ども時代、自閉スペクトラム症がある人のことを「スペ」と悪く言う同級生に許しがたい気持ちを抱えていたといいます。彼らの兄には重度の自閉スペクトラム症があったこともあり「障害があっても、同じ人間なのに」と感じていました。そしていつか、この「スペ」という言葉が、差別的な用語として使われるのではなく、「スペ」だからこんなかっこいいものがつくれるんだ、という発想の転換をさせたいと考えたそうです。アートに興味がない人に「障害のある人の作品展を見に行って」と言っても、きっと行かないだろう。その魅力を理解してもらうには、「ブランド」の傘の下で魅力あるプロダクトとすることが一つの手段なのではないか。そう考えて、ファッションテキスタイルとして活用しようと思い至ったのだそうです。知的に障害のある人、自閉スペクトラム症の特性のある人には「同じことをくり返すこだわり」などがあることが多くあります。細かな点だけで描いたり、小さな丸でぎっしりと紙面を埋め尽くしたり。そのこだわり、くり返すという性質による「作品」は、テキスタイル化と相性がいいと気づきました。Upload By 発達ナビ編集部そこから生まれたブランドコラボや、アートライセンス事業では、売上の数パーセントをアーティストに還元する仕組みをつくりました。例えばアパレルなどとのコラボで1000万の商品売上があれば、アパレル側から50万円が「ヘラルボニー」へ、30万円がアーティストに支払われます。重度障害のある契約アーティストの場合、生活介護の事業所に通所していることも多くあります。その場合、月にもらえるお金は数百円であることも稀ではありません。それでは、アーティストたちは「福祉」の枠の中から出ては生きていけません。「ヘラルボニー」の契約アーティストの中には、確定申告を行うほどになった人もいるそうです。また、工事現場の仮囲いを活用した展示では、積極的に地域の事業所に通所するアーティストの作品を採用しています。身近な場所にアートを楽しむ環境をつくり、さらに地域に住む障害のあるアーティストの存在も顕在化する取り組みは、今までにありそうでなかったインクルーシブの形を見せてくれるものとなっています。しかしそのような取り組みの中で、松田兄弟は気づきます。「とても魅力的な作品でも、アパレルのテキスタイルとしては相性がよくないこともある」例えば、今回ギャラリーに原画が展示されている、国保幸宏さんの作品。オイルパステルを使い、力強く塗りこめられた大胆で迫力がある作品ですが、配色や絵柄の性格上、テキスタイル化はしづらい。Upload By 発達ナビ編集部「テキスタイルが相性がいいアーティストもいる、しかし、原画で見せるほうが魅力が生きるアーティストもいる」そうした気づき、そして今まで積み重ねてきた「ヘラルボニー」の実績を背景に、今回ブランドなどとのコラボでのテキスタイルとして人々の暮らしの中に拡がっていくだけでなく、「アート作品として勝負する」という、ヘラルボニーとしても分岐点となる試みとして、ギャラリー展を企画したのです。Upload By 発達ナビ編集部しかし、「ヘラルボニー」の挑戦は、まだまだ途上にあると言います。「福祉施設の方から、『ヘラルボニーと契約したいという利用者さんの保護者の声が多く寄せられている』と言われることが増えたんです。収益が生まれると思っていなかったところに、実は大きな価値があることに気づけた、意識が変わったことは、革命だと思っています」それと同時に、課題も感じています。「障害のある人すべてがアーティストとして活躍できるわけではないし、ほかの仕事をしたい人もいます。『ヘラルボニー』はもっと事業の幅を広げて、さまざまな『ハレの場』をつくりたいし、そうした場を通じて社会の意識をもっと変え、社会の側にある障害を取り除く存在になっていきたい」そう語る二人が、今後実現させたいと計画しているのは「福祉施設」なのだそう。「レストランやカフェなどもやりたいですね。丸の内でも、地元の盛岡でも。街の景色の中に、あたりまえのように、障害のある人たちも働く素敵な店がある社会にしたい」現在、障害のある人は、可視化されにくい場所で働いていることも多く、実際彼らの兄も、事業所で毎日缶つぶしの作業をしているそう。ですが、店員になりたい人だって、厨房で働きたい人だっているはず。さまざまな選択の幅が合っていいのではないかという彼らの課題意識が、新たな挑戦につながります。Upload By 発達ナビ編集部「ヘラルボニー」のレストラン、おしゃれでおいしくて、その街に行くたびに立ち寄りたくなるとっておきの場所になりそうですよね。「『ヘラルボニー』の契約アーティストになれるように絵画教室に通わせ始めました、なんて言葉をかけていただくこともあります。そのように言ってくださるのはありがたい。ですが僕たちは、本人に”好き”に忠実でいてほしいなと考えています。社会の側がそこにアジャストして仕事にしていけばいいのだと。できないものをできるようにするという考え方は、生活の質を上げるという点では必要かもしれないけれど、才能という点ではやりたくないなと思うんです」「ヘラルボニー」のアーティストたちの作品の中には「狙い」はありません。そこにあるのは「好き」だから、そして「おもしろいから」「やりたいから」というまっすぐな心です。その本質を大切にしたいという「ヘラルボニー」の二人の想いに強く共感をしました。「『ヘラルボニー』の活動をとおして、障害のある人のアートだから高いんだね、というくらいの価値観が逆転する未来をつくっていきたいと思っています。僕らが子どものころに傷ついた『スペ』という言葉すら、その内包する意味を変え、リスペクトを意味する言葉にしたい」「ヘラルボニー」の作品を、毎日の暮らしのなかに取り込み、楽しんでみる。「そのスカーフ素敵だね」「ヘラルボニーのテキスタイルっておしゃれだよね」「あのアーティストの作品が憧れ」と、福祉の枠を超えて「素敵だから、身につけたい」「新居に飾るのが夢」と思える社会への”地続きの「今」”に、私たち一人ひとりも、楽しみながら参加してみたいと感じました。Upload By 発達ナビ編集部「ヘラルボニー4周年記念The Colors!」は、2022年8月7日まで六本木ANB TOKYOにて開催常に挑戦し続ける、福祉実験ユニット「ヘラルボニー」、そして彼らがリスペクトし、社会へ魅力を発信するアーチストたちの作品に出合いにギャラリーを訪れてみませんか?3F・4Fのギャラリーでは原画作品の展示と販売が、2Fのポップアップショップでは、ハンカチやバッグ、スカーフなどアートライフスタイルブランド「HERALBONY」のプロダクトの販売がされています。出展作家:井口直人、伊藤大貴、岩瀬俊一、岡部志士、衣笠泰介、木村全彦、国保幸宏、Juri、高田祐、中尾涼、早川拓馬、森啓輔(12名)※敬称略会期:2022年7月16日(土)~2022年8月7日(日)11:00-19:00会場:ANB Tokyo (港区六本木5-2-4)※六本木駅から徒歩3分休館日:月曜※月曜祝日の場合は翌日定休に振替入場料:無料※予約不要 / 直接会場にお越しください問合せ:official@heralbony.com主催:株式会社ヘラルボニー、一般財団法人東京アートアクセラレーション企画:黒澤浩美(金沢21世紀美術館キュレーター/ヘラルボニー企画アドバイザー)ヘラルボニー
2022年07月26日里親家族と里子の幸せな日々Upload By 発達ナビニュース生後18ヶ月のシモンを受け入れた里親のアンナと夫のドリスには、2人の息子がいました。シモンと息子たちは、朝から晩まで一緒に遊び、きょうだいのように成長しました。いつでもどこでも笑いが絶えない家族5人。幸せな4年半が過ぎようとしていました。Upload By 発達ナビニュース突然訪れた家族のタイムリミットある日、月に1度の面会交流をしていたシモンの実父であるエディからシモンとの生活を再開したいという申し出があります。シモンが産まれて間もないころ、シモンの母は他界。シモンの父、エディは悲しみに打ちのめされ、福祉機関にシモンを託したのでした。数年をかけエディは悲しみから立ち上がり、シモンとの生活を再開させるために、努力を重ねてきました。エディの申し出を福祉機関が認め、週1回週末にシモンと実父エディが過ごすというトライアルがはじまったのです。それぞれの葛藤Upload By 発達ナビニュース里親であるアンナはシモンを受け入れてから怪我や病気にならないようにといつも心配りをし、末っ子のようなシモンを大切に大切に育ててきました。突然はじまったシモンと実父の再始動をアンナは心配していました。息子たちにとってもシモンはいつも一緒にいるのが当たり前の存在。シモンがいない週末、シモンがいない誕生日会…家族の心は揺れ動きます。Upload By 発達ナビニュース一方で、シモン自身も葛藤しながらも実父エディとの距離を少しずつ縮め、親子の絆を育んでいきました。ある日、シモンはエディの家から1枚の写真を持ち帰ります。そこには生前のシモンの母の姿が。アンナと夫のドリスは、忘れかけていた「シモンには実の両親が存在し自分たちは里親である」という事実を改めて実感するのでした。家族が選んだ未来とはシモンが実父のエディと過ごすようになり、半年ほどになる12月。シモンはエディの家でクリスマスを一緒に過ごすことが、福祉機関からの連絡でも決まっていました。アンナたち家族は雪山にバカンスへ。楽しみにしていた息子たちとシモンは、その決定に不満がありました。納得できないのは、実はアンナも同様でした。5人でクリスマスを過ごすためにアンナがしたこと、そして、それぞれが選んだ未来とは…。Upload By 発達ナビニュース映画『1640日の家族』は2022年7 月 29 日(金)からTOHO シネマズ シャンテほか全国で公開Upload By 発達ナビニュース本作は、監督が子どものころ、両親が里子を迎え、4年半一緒に暮らした体験を基に描かれています。里親家族として1640日、里子と一緒に過ごした少年時代。つらい別れを見つめ直した監督が到達したのは、今は一緒にいなくても、血がつながっていなくても、家族だった時間は消えないという事実です。さまざまなかたちの家族に贈る映画、ぜひ劇場でご覧いただきたいと思います。『1640日の家族』2022年7月29日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国公開監督・脚本:ファビアン・ゴルジュアール出演:メラニー・ティエリー、リエ・サレム、フェリックス・モアティ、ガブリエル・パヴィ2021年/フランス/仏語/102分/1.85ビスタ/5.1ch/原題:La vraie famille/英題: The Family/日本語字幕:横井和子配給:ロングライド※クリックすると発達ナビのサイトから映画『1640日の家族』公式サイトに遷移します
2022年07月25日検査の結果、場面緘黙の診断が出たUpload By まりまり次女が小2のときに場面緘黙を疑い、児童精神科クリニックを受診しました。そこで発達検査を受けて、その結果と医師の総合的な判断から、次女の場合は、発達障害はたぶんなく、場面緘黙であるとの診断が出ました。診断が出たことで、今後の関わり方や支援に関してなんとなく道筋が見えたことで私としてはホッとしましたが、もちろん不安もありました。病院での場面緘黙の治療って何をするのか私として不安だったことのひとつとして、場面緘黙の治療って何をするのかということでした。Upload By まりまりネットや、場面緘黙についての本で調べたりはしてみました。そこで見たのは、行動療法や認知行動療法などが有効であるが、それらを実施している場所はとても限られていて少ないということでした。なので、とりあえず今のクリニックでできることをしていこうということがわが家の方針となりました。医師からのお話診断が出て、医師からお話がありました。不安や緊張で話せなくなるため、例えばあまりに不安が強く生活に支障のある場合は、不安を抑えるお薬や漢方を使うこともあるとのこと。ただ、次女の場合は、不安は強いものの、日常生活を送る上で大きな障害があるほどではなく、服薬は必要ないとのことでした。Upload By まりまりそのため、学校や家で安心して過ごせる環境をつくっていくことが大事とのお話がありました。それ以外では、臨床心理士によるカウンセリングができるとのことで、カウンセリングを行っていくことにしたのでした。臨床心理士と何をしていくのか(わが家の場合)Upload By まりまりわが家の次女の場合ですが、とにかくカウンセリングの場での緊張が高く心理士さんと次女がほとんどコミュニケーションを取れる状態ではありませんでした。なので、まずは、心理士さんとのカウンセリングの場に慣れること、ボディランゲージや筆談でなどで心理士さんとコミュニケーションを取れるようにするということを目標にカウンセリングを始めていくこととなったのでした。自分だけじゃない安心感Upload By まりまりわが家の場合はこんな感じで進んでいきました。児童精神科に行くまでは、学校では「問題ありません」と言われ続けて特に支援も得られず、次女への対応は母親である私中心という感じでした。なので、第3者の目が入るというだけでとても心が楽になった感じがしたのを覚えています。執筆/まりまり(監修:鈴木先生より)場面緘黙は神経発達症のある患者さんによくみられる症状です。家の中では普通に話せるのに、玄関を出た瞬間に話さなくなるのが典型例です。待合室では話しているが診察室に入ると喋らなくなるケースもあります。また、親と一緒では喋らないけど別々に入れると話せるときもあります。話さなくても頷いたり首を横に振ったりすることだけで意思表示する子どももいます。このような社会不安を取り除くために、SSRIという抗不安薬を投与したり、毎月外来でフォローしながら必要に応じて音楽療法を、そして心理カウンセリングでは箱庭療法や絵画療法なども当クリニックでは行っています。次女さん本人に合う治療法を見つけていくことが大切だと思います。
2022年07月25日2人目出産のために里帰りしたい!でも、息子の療育はあきらめるしかないの?Upload By べっこうあめアマミ娘を妊娠していたころ、息子はまだ障害の診断が出ていなかったとはいえ、療育に通っていました。当時息子は3歳、息子の発達における大事な時期に、療育を途切れさせたくないと思っていました。でも、夫が育休をとるのは難しい。かといって、実年齢より幼く手もかかる息子をほぼ1人で見ながら、妊娠後期、出産、新生児期の子育てをしていくことは不安が大きい…。2人目の出産をどのように迎えるのが家族にとってベストなのか、私は悩んでいました。あるとき、そのことを母に相談すると、思いもしなかった発想が飛び込んできました。「里帰り中だけこっちで療育に通えないのかね?」そのときは、「療育って待機も多いのに無理でしょ」なんて思って気にもしていなかったのですが、その後、母からさらに意外な連絡を受けました。Upload By べっこうあめアマミなんと、私が無理だと決めつけていたことを、母が水面下でなんとか調整できないか、動いてくれていたのです。そして「里帰り中だけ期間限定で療育を受ける」ことの可能性が見えてきました。「里帰り中だけ地元で療育を受ける」実現のために押さえるべきポイントとはいろいろと調べてみると、「里帰り中だけ地元で療育を受ける」ことは、意外と「押さえるべきポイント」を押さえれば可能なことが分かってきました。※地域や施設によりできないこともありますただし、できるだけ早めに動き出し、長めに準備期間を持つ必要があります。具体的には、次の6つのことを確認し、全てが押さえられるかがポイントでした。Upload By べっこうあめアマミこの中で特にハードルが高いのは、1.里帰り中の期間限定で療育を受けられるかという発達支援施設側の事情だと思います。わが家の場合、問い合わせたのが2月という、次年度の調整をしている時期で、さらに里帰りまで5ヶ月ほど時間があるという好条件が重なっていたためか、受け入れてもらうことができました。2.療育を受けるための条件は何かについては、里帰り先で利用したかった施設が公的な児童発達支援センターだったため、「住民票の移動」が必須でした。ですが、これも里帰り中だけ息子の住民票を移動することで解決できました。345.の受給者証に関することですが、これは、受給者証のしくみや「誰に」発行されているものなのかを理解すれば、対応できました。まず、受給者証は厳密に言うと、通園する子どもではなく、その子どもの保護者に対して発行されるものです。そして、発行するのは保護者(世帯主)がいる自治体です。今回、里帰りするのは息子と私だけなので、世帯主である夫の住民票は動きません。そして、受給者証は発行された自治体以外の地域でも使えます。そのため、今ある受給者証で対応できることが分かりました。※自治体や療育施設により通えない場合もありますので、各自治体、施設にご確認ください。ただし、地域によって見解が分かれる可能性もあると思ったので、念のため、「このやり方で使えるか?」と、それぞれの自治体に確認しました。不安もありましたが、その点は県を跨いだどちらの自治体でも問題ないと言われました。6.里帰り中だけお休みして、里帰り後また同じ日数通わせてもらえるか?これも、事前に必ず確認したほうが安心です。ただしわが家の場合、この確認だけは必要なくなりました。さらに里帰りと同時に引っ越し⁈ややこしすぎる状況を上手に切り抜けたワケ実はわが家の場合、里帰りとほぼ同時に新たな自治体に引っ越しをする、というさらにややこしいことをしました。そのため、里帰り後は新たな自治体で暮らすことになったので、里帰り前に通っていた療育は、里帰りと同時に解約させてもらいました。里帰り後に息子が通う新たな療育は、里帰り期間中にコツコツ探して話を進めていきました。Upload By べっこうあめアマミ引っ越しの際、夫は里帰り後に家族で住む自治体に住民票を移動、息子は里帰り先の自治体に住民票を移動し、一時的に家族が別居している状態になりました。そして、受給者証も一旦仕切り直しになります。息子が里帰り先ですぐに療育を受けられるようにするには、夫の住民票が移ったらすぐに、引っ越し先の自治体で受給者証を発行してもらう必要がありました。この流れがスムーズに進むように、引っ越し先の自治体に早くから事情を説明し、お願いしておきました。この事前の根回しと、役所の方の柔軟な対応、もともと受給者証の取得実績があったということが幸いして、住民票を移動したタイミングですぐに受給者証を発行してもらうことができました。そして、息子はすぐに里帰り先で療育に通いはじめられたのです。正直、全てにおいてすごく忙しくて大変でしたし、交渉力や情報収集力も求められました。家族の協力も必要でした。そして、関わった3つの自治体や発達支援施設が、どこも協力的に動いてくれたこと、タイミングなどの運もよかったことなど、いろいろな幸運が合わさっての結果だと思います。そのため、場合によってはうまくかみ合わず、できないこともあると思います。ただ、この経験から私は、最初から「できない」と決めつけず、「やってみる」大切さを学びました。里帰り中の療育に助けられた私たちUpload By べっこうあめアマミ息子が里帰り中に通った療育は、都会にはあまりないタイプの、後ろは山で自然いっぱいの、とても広い施設でした。毎日砂遊び、毎日プール、日常的に自然とふれあえて、息子は毎日砂だらけで帰宅し、新たな成長も見せてくれました。そして、親子分離の療育だったため、息子が日中行く場所があることで、私も両親も里帰り期間中はずいぶん助けられました。1人目の子どもが療育に通っていたり、何らかの支援が必要だったりすると、2人目の妊娠出産をどう乗り切ろうか悩む人も多いと思います。私のようなパターンは、全国どこでも通用するとはいえませんが、あきらめずに試してみる価値はあるのではないかとも思います。もし、同じような状況にいる方は、一つの例として参考にしていただけたら幸いです。執筆/べっこうあめアマミ(監修:井上先生より)べっこうあめアマミさんのように2人目の出産のために里帰りをするということは意外に多いのかもしれません。とても貴重な情報だと思います。住民票の移動や場合によっては受給証の再発行など手続きが大変かと思いますが、交渉力すごいです。家族や周りの人たちの協力を得ながら進められると良いですね。以前の療育機関で作成されていた個別の支援計画やアセスメントの情報などを新しい療育機関に引き継いでもらうなどもできるとさらにより良いと思います。
2022年07月25日自閉スペクトラム症のある娘、嘘をついてお金を得て12歳のころに自閉スペクトラム症の診断を受けた娘。相手の気持ちを考えたり、自分の気持ちを伝えることが苦手でいつもイライラとストレスを抱えており、私もそんな娘にどのように接したらいいのかを悩んでいました。娘が中学1年生のある日、私の父(娘にとっての祖父)からある相談を受けました。話を聞いてみると、なんと娘が父から何度もお金をもらっていたことが発覚!最初はお小遣い程度だったのが、そのうち欲しいものができたら父に言えばお金くれるという認識に…。その都度金額は違いましたが、だんだん額が上がり、1万円以上を要求することもあり、友達にも「おじいちゃんに言えばいつでもお金をくれる」と言っていたようでした。Upload By ユーザー体験談私が娘に注意をしても効果はなく…あまりに頻繁になってきたので、何度も父には「娘がお金が欲しいと言ってきても断ってほしい」とお願いもしました。しかし、父も可愛い孫には厳しく言えなかったようで、結局いくら娘にお金をあげたのか…私の方でも把握できなくなってしまいました。一体何のためにそんなにもお金がいるのか…父に聞くと「遊びに行く」「参考書を買う」など言っていたようですが、娘を問い詰めると「アイドルのCDを買うのに使っている」との答えが…。金銭トラブルを注意すると、目の前で自傷なんと娘は男性アイドルにのめり込み、そのアイドルと握手をしたりチェキなどを撮るためにCDを大量に購入していたのです!父を半ば騙す形でお金を要求して、そのようなお金の使い方をするのはよくないことだと何度も話をしました。娘自身も自分が悪いのは重々承知しているのでしょう。しかし何度も私に責められ、都合が悪くなった娘は「もうじゃあ死ぬ!」、「死ねばいいんだ!」「死にたい!」などと叫び、自分の首を両手で締め始めたり、「飛び降りてやる!」と自宅の2階から飛び降りようとしたりと危ない行動を起こし始めました。Upload By ユーザー体験談もともと癇癪などを起こしやすい娘。こうなってしまうと暴れて私だけではどうにもすることができません。夫にも協力してもらい馬乗りになって制止することで精一杯でした。言葉でのフォローなども逆効果になってしまうため、娘自身が落ち着くまでそっとしておくことしかできませんでした…。友達とのトラブル、そして学校でも起きた自傷行為娘のトラブルは家だけではなく学校でも。ある日担任の先生から「娘さんが休み時間に手首を切ったのですぐ学校に来てほしい」と電話がありました。学校から連絡あったときは息ができなくなるほど震え、動揺した気持ちのまま学校へ向かったのを覚えています。トラブルを起こすことはある程度予測できていたものの、予想以上のことが起き、どうしよう、どうしようと混乱をしていました。学校に着くと、娘は職員室の隅の方に座っていました。バツの悪そうな顔をしていたものの、少し時間も経っていたので落ち着いている様子でした。学年主任の先生と担任の先生が慌てることもなく、丁寧に娘に寄り添ってくださってくれました。手首の傷も収納式の簡易バサミだったので、軽く傷がついた程度でした。一体原因は何なのか…。話を聞いてみると友達とのトラブルのようでした。トラブルの相手は当時娘が一番仲の良かった友達。何かのきっかけで友達とトラブルになり、同じく「死ぬ!」と叫んだ所を、友達から「死ぬ気もないくせに」などと言われ、パニックになり、ハサミで自分の手首を切りつけてしまったとのことでした。当時の娘は、友達のことが好きなのに、わざと悪口をSNSのグループに書き込むなど、トラブルの素を自分でつくり、相手の気持ちを試すような行動が多く見られました。Upload By ユーザー体験談トラブルを起こしても、落ち着いたあとは何事もなかったような様子になる娘。毎回トラブルを起こしては友達に謝らず、時間の経過とともに元に戻っている様子を見て私はため息がでました。担任の先生には娘の特性は伝えていましたが、「学校では特性以前にダメなものはダメ、生徒同士のトラブルは生徒同士で解決する、保護者は傍観者」という体制を取っていただきました。これ以外にも娘は幾度となくトラブルを起こしましたが、このスタンスは親の心労も減り、とてもありがたく、そんな学校の対応のおかげで幾多のトラブルも乗り越えられたのではないかと思っています。トラブルを乗り越えて…21歳になった娘の想いこのように中学時代はトラブルばかり起こしていた娘。私自身も娘とどう向き合っていいのか分からず、頭では理解しているのに、抱きしめてあげることも、受け入れてあげることもできずに出口のない真っ暗なトンネルの中にいるようでした。しかし、そんな娘も成長するにつれてだんだんと変化が。21歳になった今、ようやく娘と対話できるようになり、これまで会話もなかったのがうそのようになんでも相談してくれるようになりました。日常のなんでもない会話をしたり、当時を振り返り「あのときはこうだった」「こんな気持ちだった」などと2人で振り返ることもできるようになりました。娘が中一だったあのとき…それ以前からも、もっとしっかり娘と向き合えていたら…と今更ながら思います。娘は今、保育士をしていますが、困り感のある子どもたちに寄り添える保育士になりたいと言っているのを聞き、とても嬉しい気持ちになりました。21歳と言えば、世間的にはすでに自立している年齢なのかもしれないですが、私としては関わりを避けてきた10年以上もの時間を今補うことができ、とても楽しい日々を過ごすことができています。Upload By ユーザー体験談イラスト/taekoエピソード参考:るみちゃん(監修:三木先生より)行動の枠を作るのは大切なことなので、学校の対応はとても良かったと思います。また、発達特性のあるお子さんは情緒的に幼いことが多いため、だいぶ大人になってからやっと自分の気持ちを語れるようになることも多いです。それまでの我慢はとても大変ですが、繰り返しものごとの是非とあるべき姿を伝え続けることも重要になるでしょう。あなたのエピソードもコラムになるかも?体験談募集中!保護者の方が日々子育てをする中で「こんなトラブルがあった」「こんなハプニングがあった」など悩みはつきないと思います。そんな発達ナビユーザーのみなさんの「困った」エピソードを募集しています。テーマは「反抗期・思春期」「自傷」「学習」「不登校」「ゲーム」「不器用」「ママ友・保護者」「ご近所トラブル」などに加え、今回より「パートナーや両親(義両親)、親族間トラブル」「冠婚葬祭」のお悩みも追加募集!パートナーなどとの意見の相違、冠婚葬祭でのルールが分からない、反抗期による親との言い争い、癇癪を起こして自分の頭を叩く、地団太を踏むなどの自傷行為…読み書きや計算の困りはもちろん、授業を落ち着いて受けられないなどの学習の悩み…行き渋りや不登校などの悩み…いろいろなお悩みエピソード、お待ちしております。お寄せいただいたエピソードの中から数作品、発達ナビの連載ライターさんにコラムとしてコミックマンガエッセイ化していただき、発達ナビで公開いたします!あるあるのエピソードからヒヤリとしたエピソード、SNSなどではなかなか言えないような家族やママ友とのトラブルまで。いろいろな「困った」エピソードをぜひ教えてください。
2022年07月24日Q:特別支援教育を利用する子どもが年々増えているのは何故?必要な支援は?A:義務教育段階の全児童数は減少傾向にあるのに、通級、特別支援学級、特別支援学校へ通う「特別支援教育利用児」の割合は2009年の2.3%に対して、2019年には5.0%へと増加しています。これは2004年の「発達障害者支援法」公布、その後2016年の発達障害者支援法の改正の影響が大きいです(『改訂新版障がいのある子の就学・進学ガイドブック』p.106-11の「『発達障害児』への支援」参照)。Upload By 専門家インタビュー2016年の発達障害者支援法の改正により発達障害に限らず個人と環境の相互作用によって生じる困難や制限を解消するために「必要な合理的配慮」を行われるようになりました。教育に関しても同法案の第八条に「可能な限り、発達障害児が発達障害児ではない児童と共に教育を受けられるよう配慮しつつ」の文言が追加されました。社会的障壁の軽減や除去を進める方向性がクローズアップされると同時に世間でも「発達障害」に対する理解が増えてきたことも理由の一つでしょう。Upload By 専門家インタビュー
2022年07月23日「りふじんだ!」と泣きながら鉄の扉を殴る息子、これって自傷行為?わが家の長男タケル(ASD・21歳)は、滅多に怒ったり、癇癪を起したりしません。妹のいっちゃんと喧嘩したのも15年間で2回だけです。ただ、ほんの小さな幼稚園生だった3歳か4歳のころから、予定どおりに物事が運ばないときや、裏切られたと感じたときは、しっかり抗議してきていました。Upload By 寺島ヒロこちらからすると、そこまで怒ることないのに..!と感じるようなことなのですが、タケルには許せないことのようで、涙を「びゅびゅっ」と、とめどなく噴き出しながら、1時間でも2時間でも泣いていました。このようなことから、タケルには、他人に暴力を振るうことこそないけど、かなり気性の激しいところがあるなとは感じていました。ルール通りじゃないとイヤ!な息子タケルに、ずいぶん大きくなってから聞いた話ですが、小学校5~6年生のころは「りふじんだ!」と思うことがあると、少し溜めておいて、あとで学校の鉄扉を叩いていたそうです。Upload By 寺島ヒロなんで鉄扉?というと、「音が良かった」のだそうです。暴れたくて殴ったのではない?タケルなりの理由「嫌だ」という気持ちを伝えても相手が引いてくれない場合、タケルは強い怒りを感じるようです。しかし、だからといって、相手を殴ったりしても「理解」はしてもらえないと思うので、相手にはもう働きかけをしないんですね。ただ、怒りが体の中に渦巻くと、「うわーってなって、自分がズレていくような感じ」がする、だから叩いたり、自分が反応するような音を出して刺激を与えたくなるのだそうです。「そうすると「はっ」って何かが戻って、少し落ち着くんだよ。」とタケルは言います。怪我をするというほどではないけれど、これも自傷行為の一種のようです。見守るしかない?働きかけの正解は?実は私も、小学校の高学年の頃、タケルが暗い顔で部屋をぐるぐるしていたり、手に血がにじんでいたりすることがあるのには気付いていました。そんなとき、「何かあったのか?」と、すぐ聞いたりもしていましたが、「うぐぐ...。」と呻くだけで、ほとんど何も答えてくれることはありません。当時のタケルには、「何が」「どうなった」か、を説明することができなかったようなのです。説明させることで余計にプレッシャーをかけていると気付き、次第に問い詰めるようなことはやめました。Upload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロ私の対応の仕方が正解だったのか、どうなのかは分かりません。一応、鉄扉を殴るようなことは、ここ数年はやっていないようです。執筆/寺島ヒロ(監修:初川先生より)大きくなってから、強い怒りを感じた際の自分自身の気持ちや、その気持ちの対処法としての行動の意味を語ることが出来ていることに、まずはすごいなぁと感心しました。頭や心の中は怒りでいっぱいだけれど、自分の体がそうした行動を取れていないこととの間に不協和があり、そこを一致させようとしていたのかなと感じました。ある程度その怒りを外に表出することができると収まる面もあったのかもしれませんね。さて、その当時に一体どのように対応していたらよかったかということですが、私は寺島さんの関わりは家庭での対応としてよかったように感じます。うろうろしたり、物に当たっていたりするときは、おそらくやや興奮状態にあると思うので、そこでそのきっかけとなる出来事や気持ちを言語化させても、場合によっては火に油を注ぐような関わりになったり、強制的にその火を鎮火させてしまったり(よくある対応でいうと「怒るんじゃないの!」とたしなめてしまう場合もありますね)ということが考えられます。いったん自室でドタバタしたとしても、落ち着いてリビングに出てきたときにこそ、話をしようとすること、とても理に適っています。そして、無理に語らせないことも大事です。自室でそれなりに自分の中で怒りを収めたと思っていても、もし火がくすぶっていたら、再炎上してしまい、本人がまたも不快な気持ちに見舞われることになります。話せるときに話してもらう、話したいと思ったときに話してもらうのはとても良いです。話してくれた際には、何であれ、話してくれたことを褒めたり、自分で頑張ってその怒りを収めようとしたことを労ったりすることが大切です。とても落ち着いている場合には、「どうしてたらよかったかな?」「今度似たようなことあったら、どうする?」も一緒に考えておけるといいかもしれません(が、お子さんの年齢や状態にもよります)。話すことが上手にできない場合には、5W1Hのように、説明の仕方のコツを事前に紙に書いておき、そのコツに従って話してもらうなど工夫をしておくのもよいかもしれません。また、怒りのような「気持ちについての語り」が出てきたときには、気持ちを1つに単純化しすぎない(例えば怒りと同時に、悲しみや恥ずかしさ、悔しさもある場合などがあります)というのもポイントですね。…など、細かいことを言い始めればさまざま工夫ができる、「不快な出来事の振り返り」場面ですが、一番大事なことは、寺島さんがやられていたように、落ち着いたときに話を(できるなら)する、です。
2022年07月23日二次障害にならないように「二次障害にならないように」私はたびたびこの言葉を投げかけられました。医師から、支援員さんから、療育先から、発達障害に関する本から。発達について学ぶたびにこの言葉はついて回りました。子どもが小さなころはもっともだと思っていました。だって子どもには幸せでいてほしいから。大人になって手を離れたあとも、できる限り幸せを感じながら生きていってほしいから。「二次障害」なんて響きだけでも恐ろしい。ならずにすむならなってほしくない。そのために私にできることを頑張ろうと、ずっとそう思ってやってきました。それでも思うようにいかない育児。学んで、工夫して、自分の感情をコントロールして、頑張って頑張って頑張って。だけど、やっぱり声を荒げずはいられない日もあります。心無い言葉を浴びせてしまうことだって、不適切なかかわりと分かった上で、それをせずにいられない瞬間もあります。周囲の無理解から子を身を挺して守ったきたつもりだけど、どんなに頑張ってもどうにもできないこともありました。Upload By ウチノコ私は成長していく息子の中に「傷」が隠れていることを知っています。私がつけたかもしれない、私が守れなかったからかもしれない「傷」です。いつからか「二次障害にならないように」と言われるたびに、私は苦痛を感じるようになりました。まるでそうなったら「おしまい」と言われているようで、そうなったらどうしようという不安が膨らんでしまいます。私の努力が足らないのだと。私の学びが足りないのだと。親なのに子どもを不幸にするのかと。お前は親失格だと。そんなふうにその言葉を受け止めてしまいます。だって私が「適切なかかわり」通りにできていないことを一番よく知っているのは、私自身だからです。二次障害の中へ息子は小1の秋から不登校を選びました。不登校は資料によっては「二次障害」に分類されることもある状態です。そして私自身も若いころに鬱や適応障害の経験があります。その根底にたくさんの理由がありました。その中には生まれ育った環境に起因する認知の歪みもあったと思います。周囲の不適切なかかわりもあったと思います。もし、私に発達障害の診断があれば、私はきっと「二次障害を起こしている人」というカテゴリーに含まれるのでしょう。二次障害にならないように頑張ってきたけれど。気づけば私たちは二次障害の中にいたのです。Upload By ウチノコ昔、私が鬱と診断されたとき。悩むし、苦しいし、生きることがつらくて仕方なくなったこともありました。そして今も息子とのことを悩みながら、日々試行錯誤しています。どちらも「もがく」という表現がしっくりくる時間のように感じています。それでも、その日を境に「おしまい」になんてなりませんでした。楽しいことも幸せなことも変わらずたくさんありました。そして、それと真摯に向き合う中でたくさんの「気づき」を得ることができています。苦しいこともあるけれど、充実した大切な時間だとも感じています。息子と私が、私たちらしくあるためにどうしても必要で通らないといけない時間のようにも思うのです。通り過ぎたと思うから、そう言えるのかもしれません。だけど、あの時間を私は後悔していません。あのおかげで、自分の生きづらさに気がつけました。生き方を変えることができました。少々のことは乗り越えられる力を得ることができました。そして今、息子との不登校生活に悩みもあるけれど、そんな悩みも吹き飛ぶくらい楽しいことがたくさんあります。そう思えるのも、若いころに苦しんだ時間があったからだと思っています。幸せにいきていくために「二次障害にならないように」この言葉に呪いを感じてしまうのは、私なりに必死で子どもと向き合っているからなのかもしれません。だけど私は「二次障害にならないように」するために発達障害を学んでいるわけではありません。適切なかかわりへの努力をしているわけではありません。愛おしい息子たちが、幸せな人生を送ることを願い、祈り、そのために自分にできることを模索するために努力しているのです。発達障害のある子は「二次障害」を起こしやすいかもしれません。だけど大切なことは「二次障害にならないこと」ではなく、この先何が起こっても、どんな目にあったとしても。たとえ二次障害を起こしたとしても。それでも幸せを感じ生きていけるように、人間としての確かな基盤を子どもともに作りあげていくことではないでしょうか?私はそろそろ「二次障害」という言葉に怯えることから卒業したいと思っています。そのために「二次障害にならないように」という言葉は「何があっても幸せに生きていくために」と、私の中で言い替えることにしています。それは、何が起ころうと子どもを愛し続け、絶対に支えていく覚悟を決めるという一つの受容の形だと思っています。Upload By ウチノコ執筆/ウチノコ(監修:初川先生より)「二次障害にならないように」という言葉がウチノコさんにとっては重くのしかかる言葉と感じられることのシェアをありがとうございます。二次障害にならないように、悪い子にならないように、不登校にならないように、引きこもりにならないように…世の中にはこうした良かれと思っての言葉、留意しておく観点としての言葉はたくさんありますね。ただ、「○○しないように(○○にならないように)」という目標はあまり上手な目標設定ではありません。どうしたら○○にならないか、という方法が確立していないこともあり、ただただ委縮してしまうリスクの方が高いだろうと感じます。○○にならないようにと委縮して、必要以上に厳しいまなざしでお子さんのことを見てしまったり、ご自身を律したり、そうした展開に陥りやすい気がします。そういった意味で、「幸せに生きていくために」という目標は、あるかかわりや出来事を振り返る際に、それは幸せに近づくかどうかを体感で確かめながらやっていける視点のように感じます。二次障害の予防に関して言えば、環境に子どもの側を合わせて無理させすぎることを防ぐということが大きなポイントとしてあるでしょう。そもそも二次障害の前にある発達障害も、環境との兼ね合いで問題行動や本人・周囲の困り感が出てくるという側面も大きいですね。お子さん本人に無理を強いると、二次的に問題が現れるということです。そういう意味で、ウチノコさんがむっくんとともに、もがきながら適切なかかわりを模索されたり、環境調整されたり、それ以前に発達障害というものを学んだりすることは、まさに二次障害の予防的な手立てといえます。用意された環境に適応して生きていくことがすんなりできる人もいるのでしょうが、工夫や配慮がないとなかなか適応できないから、あるいはウチノコさんの言葉でいうところの「幸せに生きていく」ために、環境やかかわりと、お子さんのありようとのすり合わせをしていくことはどうしても模索的・探索的になります。そうした日々の模索・探索の中で、これでいいのか、無理させないようにとはいえ、もう少しできることはあるのではないか…など悩むこともあると思います。適宜、心理や教育、あるいは医療の専門家などにご相談しながら、保護者の方が「よし、これで大丈夫」と思いながらやっていけるといいなぁと思います。
2022年07月22日