”必要な情報”を伝えることが苦手なコウの大きな成長にビックリ!Upload By 丸山さとこコウは自分の状況や意思を説明することが苦手です。必要な情報が抜けてしまって「何の話?」「どういうこと?」と突っ込まれることも多く、こちらから「〇〇のこと?」などと情報を引き出したり推測したりしなければ会話が成り立たないことも珍しくありません。かと思えば、微に入り細に入り説明し過ぎて「話が長い」「結局何だったの?」と突っ込まれることも多く、必要な情報を話すことの難しさを感じさせられます。そんな彼がある日、小さな厚紙を数枚手に乗せて「これどうしたらいい?」と聞きにきました。私は「どうしたらいいって…それは何なの?」と戸惑い、何と答えればよいのか困ってしまいました。Upload By 丸山さとこ「えっと…それは工作の材料なの?ゴミなの?」と聞くと、コウも「あぁ、そうだよね」とハッとし、「これゴミなんだけど、どこに捨てたらいい?」と聞き直してくれました。それだけで十分に意味は伝わったのですが、彼はそこからさらに少し考えて「これ、どこに捨てたらいい?」と言い直したので、私はとても驚きました。必要な情報を足したり引いたりするということ以前のコウであれば、私の質問に対して「えっと…これ…工作してて…あの、これもう使わないから…何て言えばいいんだろう…?」と困り果てて固まっていただろうと思います。Upload By 丸山さとここれが、もし夫とコウの会話だったとしたら、多分以下のようなやりとりになっただろうと思います。コウ:「これどうしたらいい?」夫:「どうしたらいいって何が?」コウ:「何って…?」夫:「それは何なの?」コウ:「何って…えっ?コレ…(紙を差し出す)」夫:「だからそれは何なの?」コウ:「えっ…?」夫:「どういうこと?」Upload By 丸山さとこ多少コウとの会話に慣れている私であったとしても、疲れているときは上記のようなやりとりになることは珍しくありません。そんなコウが「これはゴミです」ということを伝えられたということは、それだけでも画期的なことなのです。それなのに、さらに「捨てるって言ってるんだから『これゴミなんだけど』はいらないよね」という判断までしたのですから、その成長の大きさには本当にビックリです。必要な情報を足すことで「何の話か分からない」をクリアした後に、更なる成長があったとは!と思うと、”自然な会話”というものの面白さと難しさを改めて感じます。周囲もまだ幼かった低学年のころと違い、11歳になったコウが学校での会話で求められるものは”本人ができること”よりも高く、いろいろと苦労しているのだろうなということがチラリと見えることも多々あります。Upload By 丸山さとこ見えれば気にはなりますが、それらの難しさに対して親があれこれ言うことはできなくなっていく年頃だなー…ということも感じるこのごろです。そんな日々の中で、「コウはいろいろなことを吸収して試行錯誤しているんだなー…」としみじみした、日常のひとこまでした。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月25日いじわるが嫌で、泣いてしまう娘。1年生の頃は・・・広汎性発達障害の娘が、小学1年生のころ、周りにされるいじわるやいたずらに、いつも泣いていました。相手にとってはちょっとふざけたことでも、娘にとっては涙が出るほど嫌なこと...小学生になればある程度のもめ事は仕方ないと、覚悟していた私でしたが、帰宅するたびに、「今日も泣いちゃった...」という娘の言葉に、頭を抱えていました。Upload By SAKURA1年生のころの娘は言われっぱなしで、先生に助けを求めることができませんでした。そのため、私が娘の話を聞き、悪質だと感じたものは事後報告として先生に連絡帳で伝えていました。Upload By SAKURA先生は事実確認をしてくれ、もめた子に注意はしてくれていましたが、娘に対するいじわるがなくなることはありませんでした。娘が第一子である私にとっては、初めての経験。先生に「この時期の子は、こんな感じですよ~」と言われても納得ができず、モヤモヤしていました。Upload By SAKURA2年生になると、先生に助けを求められるように。2年生になるころには少しずつ先生に助けを求められるようになりましたが、冗談やふざけただけの行為で大泣きしてしまうことは変わらず、娘はちょっかいをかけてくる特定の男の子たちをとても怖がっていました。Upload By SAKURAただ、幸運にも2年生のときの担任の先生は超体育会系の先生で、「人の嫌がることをする」「いじわるをする」ということに対して、指導がとても厳しい先生でした。Upload By SAKURAおかげで、娘のことも注意してみてくれ、娘も先生を頼るようになりました。3年生からは、友達の言葉に嫌な思いをするように・・・しかし3年生になると、子どもたちも知恵をつけてきます。先生のいないところで、娘にちょっかいを出したりするようになりました。また、「バカ」「死ね」といった言葉も飛び交うようになり、冗談と本気の区別がうまくつけられない娘は、その言葉を聞くだけで泣いてしまうことがありました。特別支援学級の先生から、泣いてしまったという報告も多くあり、言葉や行動を繊細に感じやすい娘は、これから人よりたくさん嫌な思いをしなければならないのかと心配になりました。私に何ができるのか、どうしたら娘が辛くないのか、考えても答えは出ず、いつも何事もなく学校から帰るのを祈っていました。Upload By SAKURA4年生の今、いじわるはされるけど・・・現在4年生の娘。今は先生からのお友達とのもめ事で「泣いた」報告は、ほとんどありません。他の子からのいじわるが、なくなったのだと思っていた私。娘に聞いてみると...Upload By SAKURA以前は一つひとつを真剣に捉えて大泣きしていた娘でしたが、その対応は、なんというか...いい意味で冷めていました。Upload By SAKURA1、2、3年生のころの娘からは、全く想像できない姿でした。家での様子にも変化が・・・確かに娘は4年生になってから、家でも少し変わり、弟のからかいをとても冷静に返すようになっていました。Upload By SAKURA以前なら弟の言葉に大泣きしていた娘ですが、ちゃんと指摘したり、相手にしなかったりして、うまく対応できるようになっていました。どうして変わった?思い出した主治医の言葉。正直、どうしてこういう変化を遂げたか、私にもさっぱりわかりません。娘が成長した...そういうことなのだろうか...と思ったとき、私は、以前主治医の先生に発達の定期健診のときに言われた「娘さんはずーっとこのままではありません。少しずつ変わっていきます」という言葉を思い出しました。その言葉通り、私が慌てたり、心配したりしている間に娘は変わっていき、私の心配から抜け出していたようでした。小学校に入ると、本当にいろんな心配事が増えます。泣いてしまうこと、人より時間がかかってしまうこと、パニックを起こしてしまうこと...しかし、1年生の娘と、4年生の娘は、全く違います。1年生のときに大騒ぎしていたことが、今はすんなりできています。「ずっとこのままではない」という主治医の先生の言葉が、とても身に染みる結果となりました。これから先、中学生、高校生と成長していく上で、最初は壁にぶつかったり、できないことで頭を悩ませるかもしれません。しかし、「ずっとそのままではない」ということを忘れずに、娘と一緒に成長していきたいと思っています。発達ナビライターによる小学校生活での困りごとエピソードをあつめたまとめコラムはこちらです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月24日食事や着替え、手洗いまでも介助が必要でUpload By かさはらあやこ3歳8ヶ月、自閉症の息子は朝起きてから寝るまで、身の回りの動作については全介助の生活。全介助とは、移動・食事・入浴・排泄・更衣など、生活するうえで必要な動作全てに助けが必要であるということです。どのような介助が必要なのかはひとりひとり違うのでイメージしにくいためか、こんなことを言われることが多々あります。「大変だね。でも、子どもが大変なのは皆同じ。幼児なんて障害があるなしに関わらずみんな手がかかるでしょ?」子どもが大変なのは皆同じ。それはごもっともです。でも身辺自立に関しての大変さは、障害があるなしでは違うと思います。いや、ぜんぜん違います。そこはわかってもらいたい。現在1歳10ヶ月の娘は、器用にスプーンやフォークを使って自分で食事をし、ズボンを履こうとしたり、歯磨きや手洗いを自らやろうとしたりするし、オムツを替えるときに腰を浮かせてくれたりもします。些細な動作ですが、あるのとないのとでは雲泥の差。そんな小さな動作に気づくたび、こんなことができるのかと衝撃を受けています。Upload By かさはらあやこ全介助で気力も体力も消耗...夕方にはヘトヘトにUpload By かさはらあやこ息子を着替えさせるとき、手足の動かない人形に服を着せているような感じで、腕や脚を曲げたり伸ばしたりしてくれないため、スムーズに着脱ができません。靴を履かせるときは、足を靴にねじ込むものの、履けた手応えは感じられず、すぐ脱げてしまったり。関節を本人の意思とは関係なく可動させなければいけないため、今のは痛かったのではないだろうか…。と、日々気にしています。オムツ替えでは、全く拭けていない状態で衝動的に動くため、凄く焦るし、イライラもします。また、履かせるときは下半身を持ち上げなくてはいけないため、手首は負担がかかりすぎて常に痛い。手を洗うことも、本人には全く意思がないので、手を引いたり、時には抱き抱えたりして連れて行き、真っ直ぐ立つことなくグニャグニャしながら寄り掛かってくる息子を脚で支え、左手で息子の両手首を持ちながら右手で手に泡をつけて無理やり洗い、暴れるのをおさえつけてタオルで拭いて…やっと終わったと思ったら、床はべちゃべちゃ、自分もべちゃべちゃ。床を拭いて、ため息。なんてことを毎日やっています。歯磨きや入浴に関しては、日によって泣く・暴れるがプラスされるので、日中の育児で疲れ切っている私では手に負えず、帰宅した夫に任せていますが、 一緒に入浴できないことに寂しさを感じることもあります。甘やかしすぎかな?と不安もあったけれどUpload By かさはらあやこきっと息子は、身の回りのことについて、なぜその動作をするのかをまだ理解できておらず、慌ただしい朝など、何も分からない状態で振り回されるているだけ。相当なストレスを感じていると思います。朝起きてから約束の時間までに身だしなみを整えて車に乗せ、出発する。そんな簡単で当たり前のことが、私にとっては前日から入念にイメージトレーニングをして、気合を入れなければこなすことができない、大変なことなのです。本当は、息子にはもう少し自分でできることがあるのではないかと思っています。しかし、今はスムーズに支度が進むことを優先させてしまっている部分があり、時間をかけて向き合ってあげられていないことを反省しています。食事の介助など、フォークを使うことができるのに、自分で食べずに口を開けて待っている状態で、こんなに全てやってしまっていいのだろうか?甘やかしているのではないか?と悩んだこともありますが、息子に関しては、「今は食べさせて欲しいというなら、食べさせてあげて大丈夫。一度できたことができなくなったわけではない」と療育の先生が言ってくれたおかげで、身辺自立を焦ることはなく、安心して見守ることができています。4月から保育園に入園する予定の息子。小さな世界が少し拡がることで、どう変わっていくのか楽しみです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月23日書くことが苦手だったミミミミが鉛筆を持つようになったのは年長のころですが、とにかく嫌いで苦手でした。1年生になって仕方なく鉛筆を持つようになったけれど、平仮名のドリルはまったくやる気なし。年長向けの運筆ドリルもイヤイヤでした。国語の宿題では、同じ文字を何回も書かなければならず、1文字書くのにも時間がかかっていました。興味のわかない文字を何回も書くことは私もつまらないと感じるはず、ミミが国語を好きじゃない気持ちもわかりました。Upload By taekoミミが文字を書くように?小学生になり半年くらいたったころ、学童で昆虫の名前と絵がある「昆虫カード」をたくさん紙に書いてきました。ミミは自分の好きなことなら文字を書けるんだとわかりました。ちなみに足し算や引き算は得意で、ミミは 「好き」らしいです。だから数字は嫌がらずに書いています。昨年の休校時期に、iPadの算数アプリをやって、算数を好きになれたことが良かったのかも?Upload By taeko新しい苦手も出てきたけれど授業はだいぶ進んできて、算数では「60マス計算」が始まりました。プリントを見ると、得意なはずの計算が間違っている!ミミに聞くと、計算する数字を誤って見てしまうとのこと。先生も丁寧に教えてくださっているようですが、ミミはバツのチェックが付くので「算数キライ」と言うようになりました。ネットで探した計算のやり方をミミに伝えても、聞く気がなく、学校の先生じゃないとダメなのかも?Upload By taekoミミは、家でも積極的に漢字を書いてくれるように。パパとのゲームに出てくる漢字や、外で見かける漢字が分かって、楽しんでいるようです。学校の授業で手紙を書くようで、私の誕生日に書いてくれました。保育園のころはまったく文字を書こうとしないので、興味を持ってくれたらいいなと思い、「だいすきだよ」と書いた手紙を持たせると保育園で破いていたことも。あのころはつらかったけど、今は私に手紙を書いてくれるなんて、成長がとっても嬉しい。Upload By taeko手紙を書く相手は...?休日に動物との触れ合い体験に行き、そこにいるオカメインコがすっかり気に入ったミミ。学校でインコ宛に手紙を書いてきました!封筒に入れて、次の休日に手紙を持って行きました。インコの前で手紙を読み、手紙を差し出すとインコは手紙をガジガジかじりました。「ありがとうって言ってるみたいだね」と言うとミミは嬉しそう。「また手紙を書くね!ほかの〇〇ちゃんにも書く!」と、10羽くらいいるインコの名前と性別を全部覚えていたことにびっくりです。Upload By taeko「好き」の力は大きいミミにとって、好きかどうかが大きいのだなと感じました。好きになると、勉強もうまくいくようです。国語を好きになってくれて良かったです!LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月22日社会の常識を疑う…兄の自由帳に書かれた“謎の言葉”筆者がヘラルボニーという存在を初めて知ったのは、とある意見広告だった。2019年12月当時の背景としては、内閣府が「桜を見る会」の招待者名簿を廃棄した問題について、安倍晋三首相(当時)は、名簿をシュレッダーで廃棄した人物は「障害者雇用の職員で、短時間勤務だった」と答弁したのだった。そうした中、東京・霞が関の弁護士会館の前に掲示されたのがこの意見広告だ。「この国のいちばんの障害は、『障害者』という言葉だ。」Upload By 桑山 知之29歳、岩手県出身の一卵性双生児。4歳上に、重度自閉症と重度知的障害のある兄・翔太さん(33)を持つ。崇弥さんと文登さんは、保育園から小学校、中学校、高校までをともに岩手県で過ごし、その後は別々の道を歩んでいた。Upload By 桑山 知之文登さんは東北学院大学(宮城・仙台市)に進学後、大手ゼネコンに就職。一方、崇弥さんは東北芸術工科大学(山形市)の企画構想学科へと進学した。そこで放送作家を軸にマルチに活動する小山薫堂さんのゼミに所属。卒業展示では、社会の“常識”を疑う「常識展」を企画した。インドと日本の水を比べるものや、駅に花を植えることに心からの喜びを感じているホームレスなど、常識を問うさまざまな作品を並べた。その主軸こそが、自らの兄だった。「常識展っていうタイトルやアイデアの出発点も、兄貴がかわいそうではないという伝え方をしたいっていうところから入っているので。障害=かわいそう、とか、障害=欠落、というものをそうではないという世界観を提示したいって思って。だから兄貴を題材にすると決めて最初からスタートしていました。昔からそういうのを提示したい思いはありましたね」(崇弥さん)Upload By 桑山 知之現在の屋号「ヘラルボニー」。一度耳にしたら忘れない“謎の言葉”に出合ったのは、この卒業展示の制作のため実家を訪れたときだった。「兄貴の部屋の押し入れをバーッて探していたんですよ、いろんなものを。母親もよく残していたなと思うんですけど、何十冊も自由帳とか絵日記とかあって。けっこう絵日記も世界観がおもしろいものが多くて、これなんかフォントおもしろいですよね」(崇弥さん)Upload By 桑山 知之「障害者だって同じ人間なんだ」中学時代に母とすれ違いも2人が幼いころから、自閉症の兄とともに福祉団体に遊びに行くのが毎週末の決まり事だった。そこでは、自閉症に限らずダウン症や精神障害などさまざまな人が集っていた。2人にとっては、そこで“障害”というものはあまり関係なく接しているのが当たり前だった。ただ、小学4年のころに覚えた違和感を、文登さんは作文に綴っていた。「団体の人と土日一緒に出掛けていたときに、目線とか……同い年ぐらいの人が指を差して、僕らの兄の集団を笑っていたんです。それに対して腹が立って。小4ながらに自分の中で思ってた感情っていうものがけっこう多くあったんだろうなって。僕ら双子の中でのフツウの感覚と、社会側のフツウの感覚のズレみたいなものとか、単純に『兄をバカにすんなよ』っていう思いもそこに乗っかっているのかなと」(文登さん)Upload By 桑山 知之2人はやがて中学校に進学し、卓球部に所属した。兄は県内の特別支援学校へと進学。しかしここで、関係性は一度悪化してしまったという。「僕らの中学校は自閉症スペクトラムのことを『スぺ』って言ったりする子がいて、『お前、スぺの教室行けよ』みたいな。自閉症=欠落、スぺ=欠落みたいな風な使い方をするような中学校だったんです。試合の応援にも母親が兄貴をよく連れてきていたんですけど、僕もすごい兄貴が応援に来ることにアレルギーが起きるようになったんですね。それで母親に『兄貴連れてこないでよ』ってすごい言っていたんですけど、母親はしきりに『隠すことじゃないよ』って逆上するわけですよ」(崇弥さん)「自分たちの心の弱さから、小4のころはふざけんなよって言えても、中学ぐらいになって言えなくなってしまう自分もけっこういて。『スぺ』っていうものが蔓延して、スぺのきょうだいだって思われるのがすごく嫌になってしまった時期があって」(文登さん)Upload By 桑山 知之障害者の兄がいることは決して恥ずべきことではない。そんな思いから、部活を引退するまで母親は兄を連れて試合に応援へ駆けつけ続けたのではないかと2人は推測する。しかし、地元から200キロ離れた高校へ進学すると、自然にこの“すれ違い”はなくなった。「周りから言われることを避けるために、兄貴を迫害することによって自分を守っていた」と崇弥さんは振り返る。「中学時代も、兄貴のことを嫌いになったりとか、兄貴のことを大切に思ってない、ではないんですよね。兄貴のことはずーっと大切で、好きな状態はずっと今も思っていて。ただ、中学のころは防衛本能が働いていたっていうか……。高校に上がると、その当時の友達とかもいなくなったので、環境が変わったので普通に兄のことも言えるようになったんですよ。なので、自分で過ごしている環境ってすごく大事なんだろうなってホント感じますね」(崇弥さん)Upload By 桑山 知之子育てに正解はないという。「もしかすると正解は『ずっと連れて来るもの』って書かれるかもしれないけど…」としながら、きょうだいにはきょうだいの生活があり、親としてはその立場を考えるのもアリではないかと崇弥さんは語った。文登さんはそれを「逆張りだ」と笑いながら、親子で話し合う場の必要性を思案していた。前身ブランドからヘラルボニーができるまで崇弥さんは、小山薫堂さんが代表を務めるオレンジ・アンド・パートナーズという広告会社に4年半勤務した。かつて薫堂さんが住んでいた東京・赤坂のアパートも紹介してもらい、住んでいたという。社会人2年目の夏、岩手へ帰郷した際、衝撃を受けた。「岩手県にある『るんびにい美術館』(岩手・花巻市)っていう、それこそ知的障害のある作家が描いた作品が展示されている、社会福祉法人が運営している美術館がありまして。そこに行ったときにものすごい衝撃を受けて、これはおもしろい!っていう風に思ったんです。一発目に文登に電話をかけて、『なんかやろう!』って。何かを立ち上げようと」(崇弥さん)あの衝撃からちょうど1年後、2人はヘラルボニーの前身となるブランド『MUKU』を立ち上げた。ラッパーの晋平太さんを介して、『見えない障害と生きる。』にも出演したGOMESSさんに依頼し、楽曲も誕生した。見た人を惹きつけるプロダクトはすぐに話題となった。しかし一方で、崇弥さんはもどかしさを感じていたという。「当時は副業だったので、もっと全然いけるのに……っていつも思っていたんですよ。もっとコミットしたら絶対にいけるのに、でもこんなにリソースを割けないから悔しいなっていつも思っていて」(崇弥さん)Upload By 桑山 知之そこから2年後の2018年7月、謎の言葉「ヘラルボニー」を掲げた会社を設立した。翌年には経済誌『Forbes』が選ぶ「世界を変える30才未満の30人」に双子起業家として選ばれたほか、先述の意見広告でも一大ムーブメントを巻き起こした。建設現場の仮囲いを期間限定のミュージアムと捉えたプロジェクトも話題を呼んだ。そして何より、障害のある作家がつくるアートを生かした製品は、飛ぶ鳥を落とす勢いでファンを獲得し続けている。その大きな要因として、「着想の出発点」が違うからだと筆者は思う。「時代に後押しされているというのはものすごく感じます。もともとSDGsやりたいとかそういう思いで始めたわけでは全然ないけれども、社会側がSDGsっていう文脈を持ってきてくれているし、ダイバーシティやりたいって思ってダイバーシティって言ったこともないけれども、社会側がダイバーシティ&インクルージョンっていう文脈をウチに紐づけてくれるし。社会側が色んな文脈をウチの会社にありがたいことに紐づけてくれたっていうところがすごくある」(崇弥さん)「10年前やっていたら全然違う結果になっているだろうけれども、今っていう時代にやれているからこそっていうのもあるだろうなと。僕ら双子揃って運が良くて、いろんな方に恵まれているというか、自分たち双子としては大したことないんですけど、関わってくれている皆さんが本当に素晴らしい人が多いんです」(文登さん)Upload By 桑山 知之異彩放つ活躍数字で語れる会社に人気セレクトショップ『TOMORROWLAND』での製品販売や、吉本興業とのコラボブランド『DARE?』など、ヘラルボニーの躍進は止まらない。今年度の売り上げは1億円を超えるという。もちろん、アーティストへの還元も忘れない。「正直ホント数字面ではまだまだなんで。数字で語れる会社になれたらいいなってすごい思いますね。あそこは数字も素晴らしいよね、障害のある作家にもめっちゃ還元するよね、っていう会社になりたい」(崇弥さん)「今後の目標設定とかもすべて透明化させたいなと来期から思っていて。障害のある作家さんにどれぐらいバックしていて、これまでどれだけバックしてきたか、みたいなところとかも全部見える化して、それに対する社会的なインパクトとかもつくっていきたいなと」(文登さん)Upload By 桑山 知之兄・翔太さんは現在、岩手県奥州市にある就労継続支援施設(B型)「わかくさ」で、コーヒーのパック詰めや空き缶つぶしをしている。週に3回はグループホーム、残りは自宅で暮らしているという。きっと弟2人の“異彩を放つ”活躍を、誇らしく感じているだろう。Upload By 桑山 知之平成元年愛知県名古屋市生まれ。慶應義塾大学経済学部在学中からフリーライターとして活動。2013年に東海テレビ入社後、東京支社営業部を経て、報道部で記者/ディレクター。2018年から公共キャンペーンのプロデューサーとして「いま、テレビの現場から。」や「見えない障害と生きる。」、「この距離を忘れない。」といったドキュメンタリーCMを制作。主な受賞歴は、日本民間放送連盟賞CM部門最優秀賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSゴールド、JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール経済産業大臣賞、ギャラクシー賞CM部門優秀賞、広告電通賞SDGs特別賞など。取材・文:桑山知之取材協力:若者支援ネットワーク研究会in東海LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月21日レンジャーたちにもそれぞれの趣味や特技があってそれぞれのライフワークを楽しんでいるレンジャーたち。一方、マジョリティー隊にも動きがあったようで...マジョリティー隊長が隊長職を退く?『PP団』とはいったい...!?Upload By 荒木まち子マジョリティー隊をPP団に委ねた隊長、意外な本業に専念Upload By 荒木まち子執筆後記隊長の名前は『鏡 大慈』。鏡を“きょう”と読み替えると...そう、隊長は“きょうだいじ”だったのです。きょうだい児のケアやフォローもとても大切ですよね。さてマジョリティー隊の上層団体PP団とは一体...?次回はPP団のお話です。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月20日外国にルーツを持つ子どもの人口変移日本に暮らす外国人は、年々増え続けています。2020年12月に法務省が公開した統計によると、2012年12月時点で約203万人だった在留外国人の総数は2019年12月時点では約293万人となり、7年間で約90万人増えていることが分かっています。そして、在留外国人の人数は今後も更に増える見込みだと言われています。そんな中で、外国にルーツを持つ子どもたちの、特別支援級・特別支援学校への在籍率の高さについて指摘されることが増えてきました。ある調査では、全児童生徒のうち特別支援学級に在籍する日本人児童は2.25%程度であるのに対し、外国人の子どものみで見た場合は5.01%と、日本人児童生徒の約2倍の割合で外国人児童生徒が特別支援学級に在籍しているというデータが示されています。私は、人口の8人に1人(総数およそ4400万人)が移民であるアメリカに、私自身も移民として長年住んでいました。アメリカの国家資格である Speech-Language Pathologist (CCC-SLP)という資格を取得し、言語病理学の専門家として発達障害、先天性の疾患、後天性の脳障害によるコミュニケーション障害や嚥下障害を抱える子どもや成人の検査・評価を行い、訓練や指導も実施していました。また、言語心理学も専門としており、アメリカの大学で外国語としての日本語教育にも携わっていた経験があります。現在は、LITALICOジュニアでシニアスーパーバイザーとして、支援のスーパーバイズや研修を行っています。そしてまた、外国にルーツを持つ子どもたちの支援に特化したプログラムの開発なども行っています。このコラムでは、言語的・文化的に多様なバックグラウンドを持ち、発達障害の可能性も疑われる子どもの支援について検討していきます。外国にルーツを持つ子ども達の抱える困難さ現在日本に住んでいる在留外国人のうち、20歳未満の子どもは約35万人ということが分かっています。2018年に実施された文科省の調査では、今現在日本に住む外国にルーツを持つ子ども達のうち、約5万人が日本語での日常会話が十分にできなかったり、日常会話ができても学年相当の学習言語が不足していることで学習活動への参加に困難さが生じており、特別な日本語指導が必要な児童生徒とされています。言葉の分からない異国の地で学校に通い、現地で生まれ育った同級生と一緒にさまざまな活動に参加することの困難さは想像に難くないでしょう。また、外国にルーツを持つ親御さんにとっても、自分自身が受けた母国の教育システムとは異なる日本の学校に自分の子どもを通わせるとなると、日々の学校生活の中でどんな活動が行われ、お子さまがどのように毎日を過ごしているのか想像しにくく、大きな不安を抱えている人が多いのではないでしょうか。そして、外国にルーツを持つ児童生徒を取り巻く環境として顕著なのが、冒頭でも触れた特別支援学級・特別支援学校の在籍率の高さです。これは移民の多い諸外国でも見られている傾向で、米国でも、英語を第二言語として話す児童生徒の中で特別支援を受けている児童生徒の割合は、ネイティブスピーカーで特別支援を受けている児童生徒の割合よりも高くなる傾向が知られています。なぜこういったことが起こるのか。それは、バイリンガルの児童の言語スキルや知能を正確に測ることの難しさにあります。ある研究では、発達心理検査の一つであるWISC-IVを外国にルーツがある子どもに対して施行したところ、対象児童の第二言語(日本語)で施行した場合は、母語(ポルトガル語)で施行した場合に比べて低いスコアが算出されたという結果が出ています。このように、第二言語で発達心理検査を受けた結果、誤って発達障害の診断を受けてしまう「過大診断」と言われるケースが多く存在します。一方で、発達心理検査の結果子どもが抱える困難さは認められたものの、検査の結果が振るわなかったのは第二言語で検査を受けたことの影響だと考えられ、適切な診断に繋がらないという「過少診断」のケースもあると言われています。こういった背景もあってか、外国にルーツを持つ子どもの支援に関わる際に、ほとんどのご家庭が直面する問題に「家庭内で何語を使うべきか」という疑問があります。子どもに発達障害の診断が下っている場合はもちろん、診断がない場合でも、子どもの発達に不安を抱えている家庭において、「子どもの言語発達を促し、スキルを育むためには、一つの言語に絞った方が良いのではないか」という疑問を持つことは、ごく自然なことだと言えるでしょう。また、ご家族が今後長きに渡って日本に住むことを予定している場合は特に、今後の居住地となる日本で話されている言語である日本語が一番重要だという想定のもと、日本語力を最優先で伸ばすべきなのではないかと考える方も多いようです。しかし、現地語である日本語の獲得を優先させるあまり母語を蔑ろにすることは、長期的な目で見ると、外国にルーツを持つ子ども達と親の間の絆である母語をなくすこと(母語喪失)につながります。母語喪失により、親子間のコミュニケーションが難しくなり、親子の関係構築にネガティブな影響があることも指摘されています。世界規模でみると、人口の約半数が複数の言語を話す「マルチリンガル」であると言われており、複数言語環境下で育つことが子どもの言語発達にどういう影響があるのかは、世界各国のさまざまな言語の組み合わせで研究がされてきています。ここでは、そういった研究で分かっていることを紹介していきます。参考:外国にルーツをもつ児童の発達アセスメントと言語の問題について | 松田真希子・中川郷子(著),(2017)複数の言語を聞いて育つことで子どもが「混乱」することはない複数の言語を聞きながら育つと、今何語を話されているのか理解できず複数の言語を切り分けて理解することができないのではないかという説がよく聞かれますが、複数言語下で育つ子どもがさまざまな言語を聞いているときの行動や脳波を分析した研究では、新生児や幼児であっても、複数の言語を聞き分けており、異なる反応を示していることが分かっています。また、バイリンガルの子どもや大人が二つの言語を混ぜて使う「コードスイッチング」という現象がありますが、これも、どちらの言語を使ったらよいか分からないから混同しているというわけではなく、一方の言語では伝わりにくい概念などを他方の言語で的確に伝えるために、複数の言語をうまく使い分けているという解釈が実情に近いとされています。参考:Evidence of Early Language Discrimination Abilities in Infants From Bilingual Environments | Infancy, 2(1), 29-49. | Bosch, L.&Sebastián-Gallés, N. (2001)発達障害のある子どもの言語発達においても、複数言語環境の悪影響はないASD(自閉症スペクトラム)、発達性言語障害、知的障害のあるモノリンガルの子どもとバイリンガルの子どもの言語発達を比較した複数の研究で、バイリンガル環境自体が発達障害を持つ子どもの言語発達に悪影響を及ぼすことはないという結果が出ています。これは音声言語だけでなく、社会的コミュニケーションの点においてもバイリンガル環境自体が不利に働くことはないとされています。例えば日本語と中国語を使用する環境で育った子どもと日本語だけを使用する環境で育った子どもを比べたとき、語彙数などには差が見られることも多いです。しかしこれは、多くの場合一時的な差と言われています。また、比較している語彙数に関しても、バイリンガル環境で育った子どもの日本語語彙数とモノリンガル環境で育った子どもの日本語語彙数を単純に比べると前者の方が少ない傾向があっても、バイリンガルの子どもが第一言語と第二言語のそれぞれで知っている語彙数を合計した場合、バイリンガルの子どもの方が語彙数が多いという結果が見られています。このことから見ても、言語発達をさまざまな観点から包括的に分析すると、バイリンガル環境で育つことが悪影響を及ぼすことはないというのが、多くの研究で立証されている結果です。参考:Comparative language development in bilingual and monolingual children with autism spectrum disorder: A systematic review | Journal of Early Intervention, 39(2), 106-124. | Lund, E. M., Kohlmeier, T. L., & Durán, L. K. (2017)参考:Bilingual children with primary language impairment: Issues, evidence and implications for clinical actions. | Journal of communication disorders, 43(6), 456-473. | Kohnert, K. (2010)参考:The language abilities of bilingual children with Down syndrome. | American journal of speech-language pathology. | Bird, E. K. R., Cleave, P., Trudeau, N., Thordardottir, E., Sutton, A., & Thorpe, A. (2005).親の第一言語で子どもに話しかけることが、子どもの言語発達に良い効果をもたらす子どもの将来を考えると居住国の言語を習得することが最優先なのではないかという認識のもと、家庭内での使用言語を日本語に絞るようアドバイスされるケースが少なくありません。しかし、親が得意としない第二言語のみを家庭内で使うことは、期待されている第二言語の上達には繋がりにくいとされています。第二言語で話すとなると、親から子に語りかける自然な発話の量が減り、使う語彙や文型も限られてしまい、子どもが触れる言語のモデルが量・質ともに下がってしまうからです。一方で、親の第一言語を家庭内で育んでいた場合、親から得る言語のインプットがより豊かになり、言語発達だけでなく、認知的能力にも良い効果が見られています。また、家庭内で親の第一言語を使ったコミュニケーションを促すことで、親子関係の向上にも繋がり、情緒面のサポートにも繋がるとされています。更には、家庭内で第一言語を使って第一言語の土台を強くすることで、読み書きのスキルが上がり、学齢期以降に学習面で必要となる複雑な概念などの理解もしやすくなり、学習によって得た知識は第二言語へも汎化されるという研究結果が出ています。このように、親の第一言語を家庭内で使用し外国にルーツを持つ子どもの母語支援をすることがさまざまな良い影響を及ぼすということが分かっており、居住国の言語のみに絞る減算型支援ではなく、加算型支援が諸外国でも進められているバイリンガル児童の支援の方向性と言えます。外国にルーツを持つ子ども達の持つ背景や成育歴は非常に多種多様です。何語をどのぐらいの割合で、どんな場面で使っているのか、周りにいる大人の言語習得度はどれぐらいなのか、生まれたときから二言語に触れていた「同時バイリンガル」なのか、それとも後から第二言語に触れるようになった「後続性バイリンガル」なのか…というように、一口に「バイリンガル」と言っても、さまざまな状況が複雑に絡み合って子どもの発達に影響を与えています。外国にルーツを持つ子どもや家族のルーツはアイデンティティそのものです。彼らのアイデンティティを否定することなく、育みサポートしていく方法を、それぞれの家庭の環境に合わせて考えていけると良いでしょう。このシリーズでは、今後複数回にわたって、外国にルーツを持ち発達障害の疑いがある子ども達やその家族の支援について、異文化理解、言語発達理論、第二言語習得論といった観点から検討していきます。参考:What clinicians need to know about bilingual development. | Seminars in speech and language (Vol. 36, No. 2, p. 89), NIH Public Access. | Hoff, E., & Core, C. (2015)参考:在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表| 総務省参考:「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(平成 28 年度)」の結果について | 文部科学省参考:外国にルーツをもつ特別支援学級在籍児童の複言語能力に関する調査研究|松田真希子(金沢大学 国際機構 准教授)
2021年02月19日小学校1年生、はじまった問題行動。物がなくなる...?長男が小学校に入学したときのこと。私は彼が新しい環境になじめるだろうかと不安だらけでした。けれど授業中の離席や、給食の食べ残しなどといったことはほとんどなく、思ったよりスムーズに学校生活は進んでいったようでした。そのときは「あ~、よかった」と胸をなでおろしていたのです。ところが...、長男の、問題行動が始まってしまったのです。気づいたのは、朝学校に行くときに持たせたハンカチやタオルがなくなっていることでした。Upload By シュウママ連絡帳でそのことを伝えると、次の日先生から書かれたお返事にびっくりしました。「シュウちゃん、実は2階の教室の窓からタオルやハンカチを落としてしまうんです。今1階の屋根にタオルが引っかかってますので、風が吹いたら下に落ちると思います。そのときお返しできるかと。本当に申し訳ありません」へっ…?タオルを落とす?戻ってくるのは風次第?Upload By シュウママ長男は、自宅で窓から物を落とすことはなかったので、それを聞いたときはなかなかの衝撃でした。その後も先生が目を離した隙に、靴や帽子を投げ落としたりしていたようです。学校で応急処置として、窓を下半分だけほんの少し開けて(窓を完全に締めると換気ができないので)対策してくださいました。やってはいけないことだと本人はわかっていたようです。投げ落とした後、ワーッと泣き叫んでいたらしいので。なぜそんなことをするのか理由ははっきりとはわかりませんが、おそらく周りの人が「駄目だよ!」と激しく反応する様子が見たかったのかもしれません。やっとおさまった問題行動。でも他にも困りごとはいっぱいあって...この行動はしばらく続き、たぶん3年生くらいまで隙を見てやっていたようでした。先生や私がどれだけ注意したり、怒ったりしても効果はなくて悩んでいたのですが、高学年になるとおさまりました。成長とともに物を落としたいという衝動が徐々に消えていったのだと思います。やっとおさまった問題行動に、一安心した私。しかし思い返せば、長男の小学校生活の困りごとはこの問題行動以外にもいろいろとありました。Upload By シュウママほかにもこんなことが大変でした...先ほど紹介した物を落とす問題行動以外にも、シュウには小学校生活での困りごとがたくさんありました。ここからはシュウが成長したなと私が思ったことを紹介していきたいと思います。これは1年生のときから根気強く先生が練習を手伝ってくださり、始めは前後を逆に着たりしていましたが、3年生くらいには一人で間違えずに着られるようになりました。1年生の運動会では、一応完走したものの他の人のコースに平気で侵入していたシュウ。しかし、2年生の時には自分のコースを走り切り、見事1等賞をとりました。乗り物、食べ物、体のパーツ、数字や色など、学校でカードを使って学習した効果か、今では身の周りのものの名前はたいてい理解しているようです。これが一番大変だったと思います。先生の話によると、9時のチャイムの音が聞きたくて校舎の時計の前で座り込んだり、途中先生に抱っこをせがんでみたり、「嫌だー!」と泣いて暴れたりとなかなか大変だったようです。実は一人で歩いて教室まで行けるようになったのは、ごく最近のことでした。きっかけはなんだったのでしょう。先生に聞いてみると「たぶん、お兄ちゃんになったんだと思います」とのことでした。先生は「もうすぐ中学生になるよ!と繰り返し学校で言っているので、お兄ちゃんになるという自覚がめばえてきたのかな」と笑っておられました。もしそうなら、嬉しいことだなと私は思います。Upload By シュウママUpload By シュウママどれもひとつひとつは小さな小さな成長で、定型発達の小学6年生なら、当たり前のようにできることです。けれど長男は6年かけてひとひとつ壁を越えて克服していったのです。それは先生方のご支援のおかげも大きかったのですが、長男の心が見えにくいけれど、ゆっくりゆっくりと育っていったことも大きかったと思います。6年間、よく頑張りました3月にはいよいよ卒業です。よく頑張ったねと長男の頭をなでてやりながら、果たして母は泣かずにいられるか。今から心配しています。Upload By シュウママ発達ナビライターによる小学校生活での困りごとエピソードをあつめたまとめコラムはこちらです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月18日「オンラインまなびフェスタ2021」特設サイトがオープンしました!発達に凸凹があるお子さんの「まなび」の形は十人十色。良いものってなんだろう、なにが子どもに合うんだろう。悩むことがたくさんあると思います。そんなあなたのお役に少しでも立ちたくて、いろんなことを一気に知るためのイベントをつくりました。プロや専門家から学べる。良い商品やサービスと出合える。そんな特別な一日をお届けします。Upload By 発達ナビ編集部先日も開催決定をお伝えした、「オンラインまなびフェスタ2021」。発達ナビユーザーの皆さんが、出演する専門家や企業のことを知っていただき、もっと当日を楽しみにお待ちいただけるように。「オンラインまなびフェスタ2021」の全てが分かる、特設サイトを心を込めてつくらせていただきました。当日ご登壇いただく専門家や企業を一挙公開していますので、内容をご確認いただきどの講演を視聴するか、今のうちから考えていただけると幸いです。Upload By 発達ナビ編集部【開催概要】●日 時 2021.3.7(日)10:00~17:00●場 所 インターネット環境のあるところなら全国どこからでもご参加できます。●参加費用 無料(要事前参加登録)●主 催 LITALICO発達ナビ●参加方法 参加登録された方に、視聴用のURLをお送りいたしますので、パソコンやタブレット、スマートフォンからご参加ください。●視聴について どうしても当日ご参加いただけない方は、アーカイブでの視聴も可能となっています。当日は、各タームで参加するセミナーを選び、視聴することが可能です。どれも専門家や企業の方が、発達が気になるお子さんがいるご家族のために準備を重ねた特別な内容ばかり。たくさんの情報にまとめて触れることができるので、この日を境にお子さんの学びへの環境や姿勢、関わり方が大きくアップデートされるはず。Upload By 発達ナビ編集部当日企業コラボセミナーに参加いただいた方には、豪華プレゼントが当たるチャンスも!プレゼントの詳細も、特設サイトで公開しています。参加するためには事前の参加予約が必要となりますので、特設サイトよりぜひお申し込みください。発達ナビユーザーの皆さんと、「オンラインまなびフェスタ2021」を盛り上げていけることを楽しみにしています。たくさんのご参加を、心よりお待ちしています!
2021年02月17日これ...普通なのかな?ハル2歳。イヤイヤ期?という感じのものは特になく、でも大げさではなく外に出れば1分もそこに留まっていることはありませんでした。毎日毎日、息子を追いかけて、てんやわんやして。初めてのことだらけで、正解がわからない!!育児については、本でもネットでも勉強しました。マニュアルは見ないほうがいいと思っていたけれど、当時目にしたものはほぼマニュアルでした。でも、やっぱり当てはまらない。こんなに多種多様な人類の発達を、年代別にくくれるわけがないのだろうと思ったりしました。比べると気持ちが病んでくるので見るのをやめたけれど、見るのをやめたとて正解がわかるわけでもなく。「子育てに正解なんてない」、それはわかる。とはいえこの毎日は?これでいいのか?正解?まちがい?答えがほしい。みんなこんなもん?と。Upload By beth(ベス)そうだ、周りの子育て経験者に聞いてみよう!ちなみに当時24歳前後、周りに3歳以上の子どもがいる友達はいませんでした。男の子を育てていない実母に聞いてみました。「男の子ってそうなのかねぇ...元気だねー大変そう」男の子を育てた義母に聞いてみました。「男の子はみんなそう!子どもはみんなそうだよー」親戚たちは気をつかって「そのうち落ち着くものだから...」とお盆や正月に会うたび、そう言ってくれました。そう言うほかなかったのだと思います。笑そうか、そういうものなのか。落ち着いて周りをよく見てみよう!ハルみたいな子、周りを見てもたまにいるもんね。けっこうやんちゃで動き回ってる子、いるもんね...と安心しようとしました。Upload By beth(ベス)同級生でわちゃわちゃ動いていた元気な子たちも幼稚園の準備に入るころには大体落ち着いていて、座って話を聴いたりできる子が大半になっていて、いつの間に!?あれ、わが子はまだまだ絶賛多動だけど!?と衝撃を受けました。同年代の子たちの成長に、うろたえるばかりでした。3歳、最初の迷子騒動の思い出ショッピングモールの中の子育て広場(乳幼児の遊び場)にはよく行ったけれど、絵本を取って振り向いたらもういなかったことがあります。一瞬のことすぎてもはや忍びかと思いました。本をとり、顔をあげると、もういない。(五・七・五、多動育児しんどみ俳句)Upload By beth(ベス)Upload By beth(ベス)近くにいるだろうと思って探したけれど、ついに職員の方に助けを求めることに。青ざめた職員の方に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、「よくあるんで!すぐ見つかるんで探してきます!アハハ〜」と言って探しに行きました。こんなときにも人の顔色を見ているのか私は...とまた自分のことが少し嫌になりました。そうして1人で集中して探しに。建物の外に出たらどうしよう。すぐに駅もある。道路もある。改札をするりと抜けたら?道路の向こうに興味をひくものがあったら渡ってしまったこともある。ひょいと連れ去られて車に乗せられたら?どんどん想像してぞっとしました。地下の食品売り場へ行っただろうか。本屋?外ではありませんように!どちらに探しに行くかはいつも賭けでした。たくさんの選択肢が頭に浮かんでは、選ぶごとにプレッシャーはつのっていくのです。必死に探し、館内放送もかけてもらい、座って休んでいたお年寄りにも「3歳くらいの男の子を見ませんでしたか」と聞くと、お年寄りを慌てさせてしまい、これも心苦しかったです。Upload By beth(ベス)わたしのアンテナがキャッチしたその声のほうへ行くと...色々予想して頭をフル回転させる。足もフル回転させる。そうして駆け回って探していると、小さな高い声が聴こえた気がした。蚊の鳴くような、普段なら雑踏に埋もれるくらいの音量の音にも似た声。それは毎日聴き慣れたもので、楽器みたいな、動物の赤ちゃんみたいな...Upload By beth(ベス)いた。やっぱりハルの鳴き声だった(鳴き声って)。ちょっと暗い中階段に腰かけていた。最上段から見下ろしていたその顔は、というと、何食わぬ顔すぎた。Upload By beth(ベス)わたしはというと、無表情で無感情でした。なんだか感情を動かすことに疲れていて、無言で抱っこして子育て広場に戻りました。そして報告と、迷惑をかけたことを謝らなくては、と思いました。Upload By beth(ベス)周りの反応は...子育て広場の職員さんは私たちが現れた瞬間、歓声を上げてくれました。みんなそれぞれに安堵してくれて、「よかったよかった」と言ってくれました。ちらっとしか見ることができなかったけれど、その30代くらいの女性職員さんは、少し泣いてくれていて。それを見たら、涙が出てしまいました。Upload By beth(ベス)そうしてだんだん気づいたこれが覚えている限りの最初の、人をお騒がせした大きめな迷子だと思います。人に迷惑をかけてしまうことがひどくストレスでした。もうあのころは、ストレスによってアンテナが張り巡らされ、それによってストレスを拾っていたようで、なんだって疲れました。そうしてだんだん気づいたんです。この子育て広場に週に何回も通っていたけれど、こんな風に子どもが外に出ていってしまってお母さんが捜索に出るといった光景、こういった親子は、一度も見たことなかったなと。なのでいやでも、「やっぱりわが子は普通ではない...?」という思いが、ハルの行動を目にするたび頭をよぎるようになっていました。幼稚園に行けばきっと...あっという間に、幼稚園へ入園する年齢が迫ってきていました。不安もあったけれど「集団の中でお友達をまねて、一緒に行動できるようになるのでは」と期待もありました。そして入園のための面談の日を迎えることとなったのです...LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月17日できるやり取りはたった2つ。『ちょうだい』と『ごめんなさい』自閉症と中度知的障害をあわせ持つわが家のほぺろうは、5歳の今でも発語なし。言葉も出ない・目も合いにくいので他人とのコミュニケーションは難しく、何を考えているのか読みにくい分、周りに要求を理解してもらえず癇癪を起こすこともしばしばでした。そんなほぺろうですが、保育園に通い出したときくらいから「ジェスチャーで意思表示できれば癇癪が減るかも?」と保育園や発達サポートの先生からいろいろアプローチしてもらいました。ゴチャゴチャにならないように基本的なものだけ教わっていましたが、ほぺろうには習得が難しく…『こんにちは』『ありがとう』は意味を理解していないので促されてお辞儀するだけだし、クレーン現象もよく出るけれど“意思表示”というよりは人の手を“道具”と思っているだけの感じです。5歳の現在でも、根気よく教え続けて習得できたのは『ちょうだい』と『ごめんなさい』だけ(しかもジェスチャーが何かおかしい)。Upload By ぼさ子変なジェスチャーでも、ほぺろうが自らの意思で表現してくるのはこの2つだけ。コミュニケーションに関してはまだまだ課題が山積です。将来を考えると一日も早く発語してほしい。だけど…言葉が出てくれたらほぺろうの考えも伝わる、言葉が便利と気づけばクレーン現象もなくなる、何より言葉で気持ちを表現できれば癇癪が減る。大きくなるにつれ他人に意思を伝えなければならないシーンは増えてくるし、その度に癇癪を起こすワケにはいかない、思春期になったら余計喋ってくれないかも知れない、親の私だってずっと一緒にはいられない…。正直、毎日そんな心配がグルグルと頭を巡ります。「いつかは喋るかも?もうずっと喋る日はこないかも?」そんな思いを抱えながら、発語を促すために基礎の基礎ですが常に『言葉添え』を欠かしません。Upload By ぼさ子ところが頑張り虚しく、ほぺろうには全く通用していない様子。喋ろうという意識が見られなくて親としては気が遠くなります。だけど以前と比べて、ちょっとだけ変化が…言葉のかわりに身体中で表す喜怒哀楽が面白い頑として喋ろうとしないほぺろう。ですが、それ故か今では『言葉以外の表現力』が伸びてきてしまいました。(良いのか悪いのか…)以前は癇癪が強過ぎて、喜怒哀楽の『怒』しか出ていなかったのですが、最近は「好物を食べたときの喜び」「期待が外れたときの悲しみ」などなど、全身からあふれ出る感情表現が面白くて私はついつい笑ってしまうのです。Upload By ぼさ子他にも「恨みがましい顔」とか「甘えん坊フェイス」とか「笑って誤魔化す顔」とか「イタズラを考えてる顔」とか…言葉はなくても、LINEスタンプ並みのアクションでほぺろうの考えてることが大体わかってしまいます。親だからわかってしまうのかと思いきや、保育園の先生からも「表現が面白い」とお墨付き。まだ他人に主張するためにやっている感じではないですが、ほぺろうの中でいろんな感情が育っていることを嬉しく思います。本来はわからないフリして焦らすなど言葉を引き出すべきだと思ってはいるのですが、ほぺろうの意外にも豊かな表現力をもう少し見ていたいと思ってしまうダメな母親なのです。Upload By ぼさ子LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月16日法人の垣根をこえて、障害福祉施設の生産品を販売!ECサイト『あさがお広場』Upload By 発達ナビニュース『あさがお広場』は、障害者支援施設で生産された食品を中心に販売を行っているECサイトです。障害者就労支援事業所にて生産した加工食品は、地元の食材にこだわった商品や、品質の高い商品が数多くあります。しかし、販売チャネルが少なく、福祉施設が自らオンラインショップ運営を検討しても、経費負担の問題、アイテム数の問題等、サイトの立ち上げまで至らないケースが多く存在しました。また、新型コロナウイルスの影響から、店舗での販売が難しい状況もあります。そうした中で、オンラインショップ『あさがお広場』が立ち上げられました。『あさがお広場』では、北海道、東北の福祉事業所を中心に、品質の高い、美味しい商品を多数提供しています。地元食材を使用した商品などの紹介で、日本全国の人たちに、北海道、東北の魅力を知ってもらうとともに、この取り組みを通じて社会課題にもなっている「就労支援事業所の工賃問題」の改善にも貢献したいと考えているそうです。まずはサイトを訪れて、こだわりのつまった商品を見てみてはいかがでしょうか。【お問い合わせ先】合同会社あさがお広場(福島県白河市)メール:sys@asagao-hiroba.com2021年3月1日から障害者の法定雇用率が引き上げに、対象事業主の範囲も拡大出典 : 年3月1日から、障害者の雇用法定率が引き上げになり、対象となる事業主の範囲が拡大します。そもそも企業における障害者の法定雇用率は、2018年の4月1日に施行された改正障害者雇用促進法によって、民間事業主2.3%、国・地方公共団体2.6%まで引き上げられたものの経過措置として、民間事業主2.2%、国・地方公共団体2.5%となっていました。しかし、3月1日からは予定通り、民間事業主2.3%、国・地方公共団体2.6%に引き上げられることになります。また、対象となる事業主の範囲にも変更がありました。これまでは、「従業員が45.5人以上」の企業主が対象でしたが、このたび適用の範囲が「従業員が43.5人以上」となりました。下記におもな変更点をまとめて掲載しています。あわせてご確認ください。【変更点】<法定雇用率の改正>Upload By 発達ナビニュース<対象となる事業主の範囲>従来:従業員が45.5人以上2021年3月1日より:従業員が43.5人以上LITALICO発達ナビ 「オンラインまなびフェスタ2021」開催のご案内Upload By 発達ナビニュース2021年に5周年を迎えたLITALICO発達ナビが贈る、「オンラインまなびフェスタ2021」が2021年3月7日(日)に開催されます。当日は幅広いテーマのセミナーをご用意しており、専門家や企業と一緒に、家庭学習が楽しくなる教材や、進路選びのポイント、おすすめの学用品などをチェックすることができます。他にも、公認心理師による子どもの「かんしゃく」について解説した専門家セミナーや、特別講演として、鳥取大学大学院で教授をつとめ臨床心理学の講座をもつ井上雅彦先生と発達ナビ編集長牟田によるトークライブもご用意。未就学~中学生まで、発達が気になるお子さんの保護者の方々にぜひ知っていただきたい情報が満載です。また、オンライン開催なので、全国どこからでもご参加可能となっています。<開催概要>【日時】2021年3月7日(日)10時~17時※後日アーカイブ配信も予定しています。【参加費用】無料【形式】Zoomなどオンラインツールを用いた配信【参加方法】事前申込必須。2月中旬より参加申し込みを受け付けます。【内容】専門家講演、発達が気になるお子さんを応援する企業によるセミナーその他、イベントに参加すると応募できる抽選会なども企画しています!※予定のため、今後変更となる場合もございますイベントの詳細は下の記事からご確認ください。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月15日学校にフィギュアを持って行こうとする次男。事情を聞くと…Upload By スガカズある日の朝次男は学校にフィギュア(おもちゃ)を持っていこうとしていました。なぜ持っていくのか聞くと、友達と物々交換をすることになったのだとか。学校におもちゃを持っていってはいけないし、親同士が許可していないのに勝手におもちゃを交換してはダメだと指摘しました。しかし、次男はすでにお友達からキーホルダーをもらっている状態のようです。小3だと、お金や物に対しての価値がわからないので、交換させたくありません。これはお友達の保護者の方に連絡して返さなければいけないと思いました。放課後、お友達のママに事情を話して、もらったキーホルダーを返す旨伝えました。しかし、実際はこんな単純な話ではなかったのです…。※キーホルダーは持ち物の目印にもなるため、持っていくことは禁止されていません。もらったキーホルダーは、誰のもの?Upload By スガカズ私は当初、次男が持っていたキーホルダーはお友達(Aくん)のものだと思っていましたが、違っていました。Aくんの話によると、次男はAくんとBくんのキーホルダー2つ持っているようです。いま持っているのはAくんのものではなく、Bくんのものなのだそうです。ですが、Aくんのキーホルダーは見あたりませんし、本人から「Bくんと交換した」と聞かされていません。次男はワーキングメモリーが弱いので、前後の記憶が曖昧になりがちです。パパにも協力してもらい、A君のママからの情報を元に再び起こったことを整理。そしてその後学校に電話で報告。それぞれのお子さんの話を聞いてやっと話の辻褄が合い、誰が誰のキーホルダーを持っているのか判明しました。5人で行われた物々交換ストーリーUpload By スガカズUpload By スガカズ始めはBくんとCくんで交換し、続いてBくんとAくんで行われていた物々交換。それを見ていた次男は羨ましくなり、「自分も交換したい!」と思ったのですが、自分はキーホルダーを持っていないので、交換できないことが悔しくて泣いてしまったのだそうです。泣いている次男がかわいそうになったようで、優しいBくんとAくんはキーホルダーを一つずつくれました。おそらく次男にとって「友達と物を交換する」ということは、自分を認めてもらっていると把握できる手段の一つだったのだろうと思います。そのためAくんが合意したことで、承認欲求は満たされて少し冷静になったようです。手元に何も残らないBくんに申し訳なくなった次男は「Bくんのはいらないよ」と断ります。一度あげると言ってしまった手前、Bくんも後には引き下がれません。Bくんも「いらないよ」と断り、しばらく押し問答があったのだそうです。その後困った次男は、近くにいたDくんに、持っていたキーホルダーをあげてしまいました。これは、次男に順を追って説明してもらうのは難しいなと思いました。「誰と交換するの?」という質問に対して、Bくんとは、「交換する約束」がされていないのだから、最初に私にその情報を伝えなかったのも腑に落ちました。後日先生の前で5人が集まり物々交換はなかったことに。それぞれの持ち主の元へ無事にキーホルダーが戻っていきました。私は、ほっと胸をなでおろしました。「物を大切にしない人は人を大切にできない」と言うけれど…今回の話を知ったときに、周りのお友達が見せた次男への優しさはもちろんですが、一見「ワガママだ」と思われがちな次男が、Bくんに申し訳なくなったことや、次の日にAくんとの約束を守ろうとしたこと、今まで思い通りにいかなかったときは怒っていた方が多かったのに、泣くという行動に変化していることが分かりました。「物を大切にしない人は人を大切にできない」など、大人の間でよく聞きますが、小学生はまだ物事の分別をつけづらい時期でもありますし、起こったことの背景を知ると、お友達への優しさがあるようです。次男に関しても同じだと思い否定はできませんでした。ただ、繰り返してもよくないので、褒めもしませんでしたが。トラブルを減らす目的もありますが、これからも物を交換したり、物を貰ったりしてはいけないと言いました。この後交換自体は行われていないと思います。ですが一年後、また別の物をめぐったトラブルが起こりました。次回に続きます。発達ナビライターによる小学校生活での困りごとエピソードをあつめたまとめコラムはこちらです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月14日中3発達凸凹男子、英語の成績向上の秘密はゲームにあった!?出典 : こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』他、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。かつて、小学校時代は学習面で悔しい思いをし、親子で悪戦苦闘の末、自分に合った私立中高一貫校に進学したうちの長男も、今では高等部進学間近な中学3年生。そんな負けず嫌いで努力家な彼は、学校の勉強も地道にコツコツがんばっている様子です。ところが、”英語”に関しては、なぜか、さしたる努力もせずに学年上位の好成績を維持しているのです。正直、母から見れば、毎日ゲームで遊んでるだけのようにしか思えません。そんな、「大好き」を活かした長男独自の英語学習法の秘訣を本人にインタビューし、根掘り葉掘り聞いてみました。長男・〇太郎:15才(中3)。小1のときにASDの診断を受け、ADHDとLDの傾向もある。現在は、日常・学校生活上で大きな支障はなく、「ただの変わり者」「フツーの宇宙人」として、マイペースに生きる日々。※会話中、一部配慮の行き届かない表現があるかもしれませんが、現役中学生のリアルな言葉を尊重したいと思います。どうかご容赦ください。(文責・インタビュアー:母大場美鈴)大好きなMinecraftを英語版でプレイ!Upload By 楽々かあさん公式サイト | Minecraftかあちゃん(以下、母):じゃあ、よろしくお願いします。早速だけど、結構キミは英語の成績がいいよね。でも、かあちゃんから見ると、あんまり必死で勉強しているようには見えないんだけど、何かコツがあるの?長男・◯太郎(以下、長男):うーん、英語はねえ、Minecraft(通称「マイクラ」)とかのゲームで触れてて、知ってる単語も結構多いんだよね。母:確かに、パソコンのゲームで遊びながら、英語が得意になってるようだけど…。じゃあ、特にマイクラについて詳しく聞きたいと思います。始めたのは、いつぐらいのときだったけ?長男:PC版は小4からだけど、その前からiPadでPE版もやってた。だから、マイクラ歴は長いよ。母:そうだね。でも、最初は日本語版でプレイしてたよね。これを小6くらいで、英語版に切り替えた理由はなんで?長男:理由は2つあって、1つ目は日本語のときの英字のフォントが、あんまり好きじゃなかったっていうか、ローマ字表記が読みづらかった。英語表示のほうが大きくて、すごい読みやすかったし、キレイだし、かっこいい。母:へえ〜!フォント表示のこだわりからとは、意外な理由だったね。で、もう1つは?長男:2つ目は、単語が分かるから。アイテム名とか、画面の下に英語で表示されるんだよ。母:どうして、英単語知りたいと思ったの?長男:「マルチプレイ(複数ユーザーが同時にゲームに参加すること)」っていうのがあるんだけど、そのマルチプレイをしてると、アイテムの殆どが英語表示だから、英語版のほうがプレイしやすかった。母:それまで日本語版で十分慣れてたから、英語表示になったとしても、あんまり操作には困らなかっただろうしね。それで、毎日英語版でプレイしてたら、いろんな単語が分かるようになった、ってこと?長男:いつの間にか勝手に覚えてた、みたいな…「勉強」って感じじゃなくて。趣味のことって自然に覚えるじゃん?それと同じ感覚じゃないの。Upload By 楽々かあさん母:じゃあ、「英語が分かるようになりたい」と思ったのは、中学から本格的に英語学習が始まるから?長男:いや、海外ユーザーの人達と話したいから、英語ができるようになりたかった。「この人達なんて言ってるんだろう」ってねえ…。母:なるほど。話したい相手がいるから、興味が湧いたんだね。”話す”というのは、チャット?(※マイクラのマルチプレイで使う、チャット機能のこと)チャットの相手の言いたいことを英語で分かりたかったのかな?長男:うん。あとは、アイテム名も英語で知りたかった。よく出てくるのは鉱石の名前。Obsidian、黒曜石とか!(笑)マイクラ・オリジナルの名詞も出てくるけど、実在する単語との組み合わせがあるんだよね。例えば、マイクラにはネザーっていう裏世界があるんだけど、そこで取れる水晶(Quartz)にネザーをつけて、”Nether Quartz”とか。やっぱり、よく拾うアイテムの単語は頭に入りやすい。だけど、だんだんと、いろんなアイテムに触れてるうちに、それ以外のものも結構覚える。よく使うのだけじゃなくて、プレイしてると勝手に自然と広がってく感じ。母:なるほどね。学校の授業で、マイクラで知った単語が役に立ったことってある?長男:マイクラ・オリジナルな単語は「んー?」って感じなんだけど(笑)、結構役に立ってる。とにかく単語の数が増えるよね。授業でも「あ、これ知ってる」って。でも、やっぱり大きいのは海外のユーザーとのチャットかも。最初は簡単な言葉で会話することが多かったけどね。だんだん、マイクラ以外の場面でも「これ、マイクラで対戦した人が使ってたな」って思ったりして、今まで知らなかった英語表現とかも増えた。例えば、よく使う略語から、「GG = Good game(いい試合だった)」とか、「R.I.P. = rest in peace(安らかに眠れ)」とか、ちょっとした一言、みたいなのも結構覚えた。母:なるほどね。海外ユーザーとの異文化交流で鍛えた「気にしない力」出典 : 母:そのチャットでの交流について、もう少し詳しく聞かせて。いつも「海外ユーザー」っていうけど、具体的には、一体どんな人達?長男:あはは。ホントのこと言っちゃうけど、 9割はしょーもない人!母:9割しょーもないんか〜い!(汗)長男:ほんとに、しょーもないことばっかり言う。意味不明なウケ狙いとか、ユーザー同士の喧嘩とか、放送禁止用語とか…あとは、「こうすると強くなるよ」って、ウソのコマンドを教えてくる人とか(笑)残りの1割の人たちは、ルールを丁寧に教えてくれたり、「こういう風に立ち回りしてくれると嬉しい」とか、具体的に言ってくれたり。母:雑談はする?プレイと関係ない、例えば、「コロナでそっちの国はどうだ?」とか。長男:日本のことは結構話すね。「日本に行くときは、どこ行ったらいい?」とか。あと、ときどき日本語を教えることもある。頑張って日本語を話そうとしてくれてて、「ARIGATO」とか覚えた言葉を「これで正しい?」って聞かれたりね。母:へえ。「海外」って、どこの国の人か分かる?長男:チャットの内容で、おおまかには推測できるけど。英語が母国語の人達と、非ネイティブ・スピーカーの人達もかなりいるね。日本と時差が少ない地域のプレイヤーが多いから、大体はアジア系か、ロシア系かな。ネイティブ・非ネイティブ関係なく、スグにしょーもない喧嘩を始めるんだよ(笑)母:以前、キミは「英語で喧嘩できるようになった」って言ってて、「おお!すごいなあ」って思ったけど、それはどんな感じ?煽り合い?長男:ははは(笑)。まあ、めちゃめちゃ煽ってくる人もいて、前はオレも煽り返すこともあったけど、最近は、あえて相手をほめたり、「ごめんね、悪いプレーしちゃった」とか、煽られても、オレはすごい親切にしたりしてる(笑)。Upload By 楽々かあさん母:相手の言葉をあんまり本気に捉えないようになったのは、煽られ慣れたから?長男:それもあるけど、どういう感覚でそういう言葉を使うのか、想像できるようになったというか…もう、息をするように言ってることが分かったから。まあ、挨拶みたいなモンなんだよ、海外の人にはさ。日本の中高校生とか、友達同士の冗談で、「バカ」とか、「シネ」とか、フツーに言ってると思うけど、それって海外の人にしたら「ものすごい喧嘩だな」って思うんじゃないかな。それと同じような感じってこと。母:あー、それは海外の人達には、結構キツイ感じがするだろうね。長男:でも、最近「BAKA」は、海外にすでに輸出されてる。日本のアニメの会話でもよく使われてるから、その影響もあるかも?母:でも、最近キミは、学校生活の中でもトラブルが減ったよね。他人にちょっとイヤなことを言われても、あんまり怒らなくなってきた気がするけど、それはチャットと同じように、受け流せるようになったのかな?長男:悪口とか、挑発とか、しょーもなさすぎて、返すのがめんどくさいからね。それはその人の意見だから、別に否定もしないし、オレはオレのできることだけやればいいかな。受け流すとか、スルーするとかさえしておけば、「まあ、いいや」ってしてたら、あんまり言われなくなった。母:対人面で細かいことを気にしないようになれたよね。例えば、かあちゃんに小言言われても「OK」って、軽く流すじゃん(笑)あれもチャットの影響?長男:海外ユーザー同士は、どれだけしょーもない悪口を言われても、9割は「OK」で受け流してる。「OK」って、すごい便利な言葉じゃない?「Yes」だと賛成しちゃってることになるけど、「OK」だったら、あくまで「あなたの意見は、分かりました」ってだけの返事だからね。母:これはイラッとしないための工夫なのかもね。海外では、いろんな文化や言語の人とやっていかないといけない環境も多いから、そういう「異文化交流の処世術」も、ゲームからうまく学べたのかもね。伝えたい相手がいるから、学校の勉強も自然と予習復習できる出典 : 母:そうやって、毎日遊びながらしてることは、学校の英語の勉強に、どんな風に活かされてると思う?長男:海外の人達とチャットで話すうちに、「こういう表現するには、どうしたらいいんだろう」って、文法を調べていったら、結構学校でもできるようになった。母:あー!最初にすごく伝えたいことがあるから、単語とか、文法とか、調べてくってことだね。長男:そう。後は、相手の話の流れや状況から、言葉の意味を推測する。例えば、「過去形」を授業で習う前に、チャットで"I killed enemy."って味方が言ったら、「kill」っていう単語は分かるんだけど、「なんで”-ed"がついてるんだろう?」って思った。でも、その人は、たくさん敵を倒してるのが画面で分かるから、「敵を倒し”た”」みたいな意味かなって推測できた。だけど今度は、"I broke〜"とか出てきて、なんで「break-ed」じゃなくて、「broke」なのかな?って、なる。だけど、その人は敵の拠点を破壊してたから、「ああ、この単語の場合はそう書くのか〜」って、見て分かる。母:あー、視覚的な情報もセットだと分かりやすいね。長男:あとは、言われたこととか、伝えたいことがあって、気になって教科書をどんどん読んでた。出典 : 母:へえ!授業より、先取りしてたってこと?長男:うん。オレのオススメの英語学習法としては、テスト勉強以前に、先に文法を覚えてしまって、残りは単語に力を入れたほうがいいと思う。単語は、めちゃめちゃ簡単な言葉でもいいから、分かりやすく覚えた方がいい。文法さえできれば、あとは単語をひたすら増やすだけ。母:なるほど。文法覚えてたら、応用しやすいよね。ゲームで興味が持てたことを、教科書の内容にも広げられたってことかな。長男:あとは、授業で習った内容を早速海外の人とチャットで使ってみる!母:あー!それ、すごくいいと思う!長男:「can」が典型的な例だけど、授業で「can」の表現を習った次の日から、「Can you pass me〜?」とか、「Can you give me 〜?」とか、チャットでスグに使った。母:なるほど。即・実践で繰り返し使うと、定着して身につけやすいよね。授業で習ったこともすぐに使えば、生きた会話になるね。長男:でも、最近の英語の授業内容は高校の範囲に入ってきて、ハイレベル過ぎて、あんまり実践で使いドコロがないやつが多い(笑)。まあ、全く使えなくはないけど…非ネイティブの人には「アナタの英語は難しすぎる」って言われちゃう。母:確かに日常会話なら、中学英語で必要十分だろうね(笑)。最後に、キミの英語の学習法をまとめると、大好きなゲームで遊ぶ中で、すごく知りたいことや伝えたいことがあるから、単語も文法も自然と覚えるし、それが授業の予習復習にもなる。そして、実践で何度も繰り返し使うと、頭の中にも定着するってことだね。確かにコレなら、遊びながら英語ができるようになる気がする。成績UPの謎が解けたよ、ありがとう。長男:Thx(Thanks).「大好き」が、学びの原動力に…ゲームに限らず、子どもが遊びながら楽しく続けられる「大好き」を、親も気長に見守っていると、「勉強しなくては」と意識することなく、自然と意欲的に自ら進んで学べること、身につけられることはたくさんあるような気がします。そして現在、新型コロナウイルスの影響下で、おうちでお子さんがゲームをする時間が長くなって、心配になるご家庭も多いでしょう。もちろん、ゲームやIT機器との上手なつき合い方を、根気よく身につけていく必要はあると思いますが、工夫次第・考え方次第で、この時代だからこその「学びの機会」と捉えることもできるのではないでしょうか。何より、人との直接的な接触や会話が減っている状況下でも、オンラインでもいいから、子ども達が人との関わりの機会や興味関心を失わないよう、広い世界にも目を向けていけるよう、私は願っています。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!大場美鈴(著),『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』あさ出版, 2020.6.27
2021年02月13日息子のパニックに困り果てていた私の心に刺さった、主治医の言葉息子はもう成人していますが、幼児期、小学校低学年の一番状態が悪かったときの主治医の言葉です。「パニックを起こす理由が立石君にはあるのです。『こうしてほしい』というこだわりには応じ、小さいうちに安心できる生活環境をお母さんが与えてください。パニック起こして一番しんどいのは本人なんですから」「もし、お母さんが人の履いたスリッパがどうしても履けなかったとしましょう。『履け』と命令されたらどうですか?それを履いて落ち着いていられますか?こだわりは自分だけのスリッパと同じなんです」「人が食べたガムを食べることができますか?子どもにとって偏食は、芋虫や他人が食べたガムを食べろと言われているようなものなのです」「喘息発作も起こせば起こすほど、それを誘発させます。『普段から吸入して発作を起こさない予防をすることが肝心です。自閉症児のパニックもそれと似ています。起こさないように周りが配慮してやることです」「お母さんからすれば『なんでこんなことにこだわるんだ』と思うことも、本人にとってはとても耐えがたい嫌なことなのですから、こだわりには応じてあげてください。」Upload By 立石美津子親は安全基地になるまだ言葉を話せない赤ちゃんは不快な状態のSOSを泣いて訴えます。お腹が空いても「ミルクが欲しい」と言えない。オムツがうんちでベチョベチョになっても「不快だ、交換して」と言えない。暑くても自分では服を脱げない。かゆくてもかけない。寝ようとしてもなかなか寝つけない。だから泣いて必死に訴えます。母親はその泣き方から「なぜ泣いているんだろう?」と原因を探り、「おお、よしよし。今、おっぱいをあげるからね」、「オムツをとりかえてあげるからね」と助けてやります。そして、子どもは「この人は僕を保護してくれる人だ」と母親を認識し、親の愛情の元「この世は生きていても安全な場所なんだ」とだんだんとわかってきます。パニックが起きたときは自閉症のある子には同じ道順しか通れない、決まった服しか着られないなどさまざまなこだわりがあります。それを押し通すことを周りの大人が許してくれないとき、また感覚過敏により「この音は耐えらない」と感じるときは、“止めてくれ”とばかりに全身の力で訴えます。地面に頭を打ちつけたり、自分の腕を噛んだり、自傷(自分自身を傷つける)したりパニックを起こすこともあります。私も親として未熟だったころはパニックを起こされたときは「いい加減にして!」と私もパニック状態になりました。親に助けを求めているのに子どもの世界を理解してやらないで、押さえつけたり叱ったりする最悪の対応をしていました。Upload By 立石美津子どう対応すればいい?大人だって悲しいとき、泣きたいとき、怒りが込み上げてきたときその感情を抑え込んでしまったら八方塞がりになります。もし、パニックを起こしてしまった場合は嵐が過ぎ去るのを待つしかありません。時間が本人をクールダウンさせ解決してくれるような気がします。パニックに親が巻き込まれてしまっては、共倒れ、何もしないことが一番の解決法だと感じています。「ああ、悲しいんだね。あなたの負担になる原因はつくらないようにするからね」と安全地帯になることです。また、自傷するときは自分の身体がダメになるほど傷つけたりはしないと感じています。「これ以上やるとひどい怪我になる」のマックスギリギリのところをわかって本人はやっているように見えます。そのコントロールが難しい場合は専門医師の処方の元、抗精神病薬を使う場合もあります。できれば、パニックを起こさないように、子どもの望みを聞いてやることです。“同じ道順をいつも通ってやる”、“同じ服を着せてやる”など。「毎日同じ服を着たら汚くなってしまう」と思うのならば、同じ服を何着が買っておけば済むことです。親の忍耐が必要ですが、これを続けているうちに子どもも安定し、新しいことにチャンレンジできるようになってくるのだと思います。主治医の言葉が心に刺さってからは、息子が「これだけを着たい」と言えばそれを着せ、同じデザインの靴しか履かなければ、13センチ、14センチ、15センチと何足も買っておきました。自閉症児として生まれて数年しか経っていない幼児期に、「苦手なことを克服しなさい」と言われるのは本人にとっては酷なこと。母親として子どもが安心できるよう、まずは寄り添うことで、恐々でも新しいものに挑戦できるようになっていくのだと思います。こだわりには“それを何とか治そう”ではなく、“とことんつきあう覚悟”が親には求められているのではないでしょうか。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月12日前回までのあらすじ急な転校が決まり、転校先の小学校を母娘で見学。対応してくれた校長先生に「子どものことを一番に考えてくれる先生だ」と安心感を抱き、納得して迎えた転校初日でしたが...まさかの事態が発覚。見学時に対応してくれた校長先生は、異動していたのでした。校長先生の考え方や、キーパーソンとなる先生の存在の有無で、学校の雰囲気が変わってしまうことを痛感することに...転校先で、いじめや冷やかしが始まって転校した学校のクラス担任は、若くて優しい女性の先生でした。娘は先生のことは好きでしたが、クラスの雰囲気は転校前に見学したときと違って落ちつきがありませんでした。当初は「転校先で新しい友達をつくる!」とはりきっていた娘でしたが、自分からは友達に話しかけることができず、休み時間はもっぱらお絵描きをしていました。しばらくすると娘はいじめや冷やかしの対象になりました。こっそり足を踏まれ続けたり、上靴袋を隠されたり、ばい菌扱いされたりしました。また「前の学校でいじめられて転校してきた」「男子の着替えをのぞいてたらしい」など根も葉もないうわさもたてられました。娘は言い返すことができないので、いじめはどんどんエスカレートしていきました。進級後も続くいじめに、先生は5年生になると、校長先生に続いて、転校前の見学時に対応してくれた副校長先生や特別支援学級の先生も別の学校に異動になりました。クラス担任も別の学校からきた先生に代わりました。新しい担任の先生はベテランの先生でした。先生は娘をいじめた生徒を指導しましたが、いじめはより巧妙で陰湿なものになっていきました。娘は物事を順序立てて説明することが苦手です。いじめの目撃者(証人)がいないと、相手に注意ができない状態が続きました。ある日、娘は担任の先生から「もうすぐ6年生なんだから、あなたもしっかりしなさい」と言われました。娘はそれ以後、先生に相談することができなくなりました。家で暴れ始める娘に、どうしたらいいのか分からず...学校ではいじめられ、家では忘れ物や宿題のことを親に指摘される日々が続き、娘は家で暴れるようになりました。目覚まし時計を投げて壊したり、大好きな本を破いたり、足の爪が割れるほど壁を蹴ったり。怒りの矛先が弟に向けられることもありました。娘がクールダウンするまで、私は「散歩」と称して1才の息子と家の外に避難していました。その様子を見ていた近所の人からは「思春期だものね」と言われました。私はその言葉に違和感を覚えましたが、どうしたら良いのか分かりませんでした。Upload By 荒木まち子娘自身も悩んでいたこの時期、娘自身も自分が家で暴れてしまうことをとても悩んでいて、いろいろなところに相談していました。Upload By 荒木まち子しかしながらどの相談先も娘の悩みを解消することはできませんでした。やっと見つけた相談先は...当時は放課後等デイサービスがなかったので、私は民間の支援機関を探しました。インターネットやクチコミを頼りにいろいろ探した末、私達は「プロの支援者」に出会うことができました。娘はその方から「自分は悪くない」ということを学びました。私は娘の障害への理解を深めることができました。また学校へのアプローチ方法も知ることができました。支援を受け始めてしばらくすると、ソーシャルスキルトレーニングを受けている部屋から、娘の笑い声が聞こえるようになりました。久しぶりに聞いた娘の笑いに、私は心から安堵したことを覚えています。『娘がいま生きているのはその支援者に出会えたから』といっても過言ではありません。娘自身も「先生は私を救ってくれた命の恩人」と公言しています。発達障害に由来する問題の相談は、発達障害に対する理解と知識、経験がある支援者でなければ解決には導けないと私は実感しました。次回は次回は“学校への働きかけ”と“情報共有”について書いていきます。発達ナビライターによる小学校生活での困りごとエピソードをあつめたまとめコラムはこちらです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月11日まずはお子さまの特性や、あったらいいなと思う配慮を整理するお子さまが小学校入学への準備といっても、いったい何から考えるのがいいのでしょうか。例えば、「動き回ってばかりで、まったくじっとできない」「トイレがまだ一人でできない」「全体に向けて言葉で出された指示の理解が難しい」など、お子さまが学校生活を安心して送れるか、気になるところを考えてみましょう。もしそれらの理由や対策に心当たりがあれば、合わせて整理してみてください。それによって「椅子にクッションがあればバランスがとれて長く座ることができる」「絵や図を使いながらなら指示を理解できる」など、できるようになる手がかりがあるかもしれません。とはいえ、うまくいく・いかないには様々な状況や事情があります。まずは「あのときだけはすんなりできていたなぁ…」など、ヒントを整理してみるのも一つかもしれません。就学相談の際に、それらの情報が役に立つことがあります。就学相談って?Upload By LITALICOライフ小学校には一般的なクラスである「通常学級」や、支援のある「特別支援学級」など、いくつかの就学先があります。どの就学先がお子さまにとってよりよい環境になりそうか、保護者・児童、教育委員会で話し合って決めるのが就学相談です。お子さまに障害があったり発達に気になるところがあったりするときに申し込むことができます。時期は地域によって異なりますが、入学する1年前の春から始まる地域も多くあります。また、基本的には就学時健康診断のように通知が来ないため、保護者から申し込む必要があります。もし就学相談を受けたいと思った場合は、通っている幼稚園・保育園から申し込むケースもあるので、まずは幼稚園・保育園に確認していただくか、あるいはお住まいの市区町村の教育委員会に連絡してみてください。就学相談では、発達検査や知能検査、お子さまの行動観察をすることもあります。普段の様子を質問されることもあるため、事前に整理しておくとスムーズです。どんな学級・学校がある?小学校の就学先には4つの選択肢があります。どの学級が合うのかは、人それぞれです。・通常学級…一般的な集団のクラスです。・通級指導教室…ふだんは通常学級にいながら、一部特別な指導が必要なときに、週数回程度、移動するクラスです。・特別支援学級…一人ひとりがニーズに合った教育を受けることを目的とした、最大8人の小さなクラスです。・特別支援学校…障害のあるお子さまが通い、自立を促すために必要な教育を受ける学校です。通級指導教室や特別支援学級は、学校によって設置されているところとそうではないところがあります。また、設置されている場合も支援や授業の内容は異なりますので、実際に確認・見学をすることが大切です。情報が少なかったり、判断が難しいこともあるかもしれません。LITALICOライフの無料勉強会では、それぞれの学級の特徴や、卒業後の進路の違い、就学相談のコツまでご紹介していますので、ぜひのぞいてみてください。生活習慣・こころの準備のためにできることは?お子さまにとっても保護者さまにとっても、小学校入学は大きな変化です。勉強や授業、登下校など、小学校入学で生まれる変化に事前に少しずつ慣れる機会があると、お子さまにも保護者さまにも心の準備の助けになります。起床時間・毎朝の行動を整えていく特性によっては、生活習慣を簡単には変えられないお子さまもいます。小学校入学前から、小学校に登校するのに合わせた起床時間に起きるようにして、朝ごはん、顔を洗う…などの行動を習慣にできるとスムーズです。通学路や学校の建物に慣れる慣れない道や建物が苦手な子どももいます。通学路を散歩コースにしたり、学校の近くを通りかかったときに「4月からはここに通うんだよ」と伝えることで、不安がやわらぐことがあります。翌日の持ち物の確認・準備をする習慣をつける寝る前に翌日のスケジュールや持ち物リストを確認しながら準備する習慣ができると、忘れ物がなくなったり、朝にパニックとなってしまうことがなくなりやすくなります。机に向かってじっとする機会を設ける小学生になると、授業で45分間座ることを求められます。絵を描いたり本を読むなど、お勉強でなくともかまいません。一日5分程度でも机に向かい、慣れていきましょう。いずれも少しずつ始めて、少しずつ慣れていくことが大切です。【東京、神奈川、埼玉、愛知、大阪、兵庫、福岡、広島に特化した情報から全国版までお届け】就学相談のスケジュールや、就学先の選び方がわかるUpload By LITALICOライフLITALICOライフの保護者さま向け勉強会「幼児期からの就学準備」は、これから小学校入学について考え始める・準備を始めるご家庭に向けて、今知りたい情報から将来に繋がる情報まで、ギュっとまとめてご紹介しています。また、東京、神奈川、埼玉、愛知、大阪、兵庫、福岡、広島では地域に合わせた情報もお伝えしています。勉強会後、より詳しく相談したい方には無料の個別相談もありますので、ご活用ください。【小学校入学前の準備に向けて、こんな情報がわかります】・4つの就学先って、何がどう違うの?実際は?・就学先によって、中学や高校以降の進路に影響はあるの?・これからの進路をどう考えたらいい?・就学相談って、いつからどんな準備をすればいい?勉強会はオンライン開催で、チャットを使った質問にも、時間の許すかぎり講師がお答えしています。「○○と聞いたのですが本当?」など、気になることを投げかけてみてください。LITALICOライフは、誰もが「自分らしい人生」を歩んでいけるよう、さまざまな興味・課題に合わせた情報提供や個別相談を通じて、そのひとりに合わせたライフプランニング(人生設計)をサポートしています。無料勉強会では、就学準備、地域ごとの進路情報、通級、支援級、グレーゾーンの子、不登校の子、親なきあと、私立中学受験まで、幅広く家族のための情報提供をしています。
2021年02月10日本を読むことが苦手だった娘が、読書大好きに。広汎性発達障害の娘は、小学生になったばかりのころ、本を読むのがとても苦手でした。Upload By SAKURA音読の宿題には時間がかかり、最後までなかなか読めない状態でした。しかし、寝る前の読み聞かせを続けた結果、本を読むことが大好きになりました。本を読むことが楽しいと感じるようになった娘は、学校の図書室から本を頻繁に借りてくるようになり、1年生のときに、多読賞を取ることができました。小学4年生になった今では暇さえあれば本を読み、私たちも読まないような文字だらけの本も、ささっと読んでしまいます。Upload By SAKURA図書室に行くタイミングが合わない。娘にとって、大好きな本を借りられる図書室での時間は、癒しになっています。しかし、実は「図書室に通う」ということも、最初からスムーズだったわけではありませんでした。学校の図書館に行っていいのは、休み時間や放課後だけ。クラスのみんなは空き時間に、さっと行って、さっと戻ってくる・・・という借り方をしていました。しかし、いろいろな支度にみんなより時間がかかってしまう娘は、空き時間をみんなと同じ分だけ確保することができません。Upload By SAKURA前授業の片づけを終えて、「さあ、図書室へ行こう!」と思ったら、チャイムが鳴ってしまったり...Upload By SAKURA図書室に入った瞬間、同級生が出てきて、「もうチャイム鳴るから、戻った方がいいよ」と声をかけられたり...図書室に行く時間がせっかく確保できているときも、ボーっとして時間を過ごしてしまい、時間を無駄にしてしまったり...帰る前に唯一行けるチャンスの放課後も、ホームルームが長引いてしまうとスクールバスの発車時間が迫り、泣く泣く諦めないといけない...という状況もあったそうです。Upload By SAKURA帰宅した娘が凹んでいるときは、だいだい、図書室に行けなかったことが原因でした。担任の先生に、声かけをお願いしてみると・・・明日こそ...明日こそ...と思ってもなかなかタイミングが合わず、凹んでいく娘。私は、なんとか図書室に上手に行けるようにしてあげたいと思いました。Upload By SAKURAそこで私は担任の先生に事情を説明して、娘に図書室に行くタイミングを声かけしてもらえるように、お願いしてみることにしました。先生は快諾してくれ、図書室に行ける時間に娘がボーっとしているのを見かけたら、「今、図書室行けるよ」と声をかけてくれるようになりました。Upload By SAKURA先生が声かけしてくれるようになってから、娘は毎日図書室に行けるようになりました。そして、だんだんと自分で図書室に行けるタイミングがわかるようになり、先生からの「図書室行ってもいいよ」の声かけが、娘からの「図書室に行ってもいいですか?」という確認に変わっていきました。確認は、安心!娘が2年生に進級し、新しい担任の先生になってからも、娘の確認は続きました。Upload By SAKURA事情を知らない2年生の担任の先生に、私は、「娘にとっての確認は安心につながるので、聞かれたら『いいよ』と答えてやってください」とお願いしました。それから少しずつ娘の、確認回数は減って行き、3年生になるころには、完全に自分のタイミングを見つけられるようになりました。4年生になった今は、自分の判断で図書館へ行ったり、状況に応じて先生に確認したり、特別支援学級のご褒美タイムで「図書室に行きたい」と希望したりできるようになりました。Upload By SAKURA学校でのことは、フォローがしにくい。学校での図書館に行くタイミングは、さすがに家の中でフォローすることができません。その日によって状況も違うので、「〇時間目の後に行ったら?」といったアドバイスがしにくい...最初は、先生にも、手を煩わせてしまって、申し訳ないかなーと思っていましたが、ずっとそのままではありませんでした。声かけは、娘からの確認に変わり、今では自己判断ができるようになりました。最初は少し先生にお手伝いをしてもらい、一緒に成長の過程をつくってもらうのも大事なことだなと感じました。発達ナビライターによる小学校生活での困りごとエピソードをあつめたまとめコラムはこちらです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月10日「僕は何にもしてない」のに?Upload By 丸山さとこ予想外のところで何か困ったことが起きたりすると、「僕は何もしてないのに」「わざとじゃない」「そうしようと思ったわけじゃない」と言ってしまいがちなコウです。多かれ少なかれ誰もが心の中に抱える思いではあると思うのですが、コウの場合はそれを本気で信じていたり熱弁したりしてしまうので、周囲とトラブルを起こすことも多いようです。そんな彼に対して「何もしてないからですよ?」とツッコミが止まらない私は、一方で『コウにとってはそうなんだろうな…』と思う部分もあり、どうしたものかと長年頭を悩ませています。「何もしていない」ことに気づいてほしい親心例えば、「何にもしてないのに僕は嫌われてるんだ!皆、僕だけ手伝ってくれない!」と嘆いているときは、ひょっとしたら”僕だけが何も周りの手伝いをしていないから”そうなっているのかもしれません。Upload By 丸山さとこそういう可能性に気づけるようになればと思いますし、自分で気づくのが難しいのであれば、「何でだろう?僕何かしてないことあるのかな?」と周りに聞けるようになっていってくれたらいいなと思います。また、「〇〇だからお前はダメなんだ!」というダメ出しだけではなく、「〇〇が原因だと思う」「□□してみたら?」と話してくれる相手を見つけられるようになっていくといいな、と願っています。ですが、「この人のために指摘しよう」と誰かに思ってもらうためには”コウの素直さ”も必要なのだろうということを考えると、これは長い時間がかかりそうだな…と頭を抱えてしまいます。Upload By 丸山さとこ「僕悪くないもん!」と言っている人(思っている人)に教えてやろうという人は、よほど親切な人か”指摘せずにいられないほど、コウに対して困ったり怒ったりしている人”になってしまうわけです。「悪気があったわけじゃない」「わざとじゃない」が続けば、コウにとっても周りにとっても負担が大きい状態になるだろうことは目に見えています。そのことにできるだけ早くコウが気づけるようになるといいな…と思いながら、思わず胸にそっと手を当ててしまう私でした。Upload By 丸山さとこLITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月09日インフルエンザで学校を休む1週間、先生からまさかの連絡が...Upload By かなしろにゃんこ。「ここではこの式を代用して~」と賢そうに友達に勉強を教える姿に少し憧れてしまうことは、誰でも一度はあるのでは?わが家の万年勉強できない男子リュウ太は、そんな賢い姿とは一生無縁の天然おバカちゃんですが、小学校5年生のときにインフルエンザになり一週間学校を休むことになったときに変化が!Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。一週間も休むので、担任の先生から課題が出されました。「直径や半径、円周率の勉強に入るところだったので、お母さんから円周率の説明をして学習させてください」と任務が与えられたのです!こりゃー頑張らないとー!と張り切る母ですが...人の話を聞くことが苦手で、話すリズムが自分のリズムと合わないとキレるリュウ太に、円周率なんて教えられるかな?途中で怒り出す気がしてならない...母は少し不安混じりだったのですが、インフルエンザの峠を越えて元気になってきた息子との学習をスタートさせたのでした。「では、円の長さを測る勉強をしまーす、円の中心から~」不安混じりで始めた学習...あれ?なんだか順調!?Upload By かなしろにゃんこ。ADHDでいつもエネルギーいっぱいの子には、病み上がりの状態が勉強するのに丁度よかったのか⁉起き上がれる程度に元気だけれど動き回ることはまだできないリュウ太。落ち着いて話を聞いてもらうのに丁度いいテンション、よしよし。母はイケそうな手ごたえを感じていました。ちなみに、普段は絶えず思考も身体も何かしら忙しなく動いている族なので、少し長くなる説明をしようものなら「早く言って!早く終わらせて!その話まだ続くの?」と抵抗されてしまいます。事前に円の学習のおさらいをして理解してもらえるように、円の厚紙も用意して臨んだところ、意外に大人しくちゃんと勉強をしてくれて、円周率も覚えられました。ちゃんとやる様子が少し不気味で「アレ?まだ熱あるのかな?」って思ってしまいます(笑)次の日も次の日も、円周率についての勉強は続き、マスターしていったのでした。いつもは教えてもらう側のリュウ太、初めて人に教えてあげる喜びUpload By かなしろにゃんこ。晴れて完治して学校に行ったときにみんなよりも学習が進んでいたリュウ太は、「分からなーい」という女の子に教えてあげたと言います。そのことを本人は嬉しそうに「オレさー女子に教えてあげられた!すごくない!?」と自画自賛しました。これまで人から支援してもらうことばかりで、自分が誰かを助けたことがなかったからか?自分は勉強ができないと感じていたからか?とても嬉しそうでした。続けて家庭学習にチャレンジしたものの...Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。母も嬉しい!私は教えることに手ごたえを感じ、立方体の体積の学習にもチャレンジしたのですが...「体積なんかどうでもいいよー!なんで3回もかけなきゃいけねんだよ、だりー!わかんねーよ」と反発されて、私も「たかが3回かけるだけじゃないのよー」と言い返して炎上してダメでした(汗)3回はイヤなのかー???なんでだろう?全ては気分なのか…。やはり、一発毒を抜かれたようなインフルエンザの病み上がりのテンションでないと、スッと入っていかないようでした(笑)立方体の体積の公式を許してあげたのは(計算ルールに寛容になったのは)中学生だった気がします。遅っ!LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月08日人間関係でトラブルだらけだった私が、幸せな家庭生活を送れる?私は生まれ育った家庭では特性の理解をしてもらうことはできず、苦しい記憶ばかり残っています。学校生活でも友人関係はうまくいきませんでした。ですから、そんな私が結婚し、幸せな家庭生活を送れるようになるとは、想像もできませんでした。ですがいま、私は夫との穏やかでリラックスした生活を味わっています。 一緒に暮らすようになった当初のぶつかり合いを経て得た、私の夫との共同生活上の3つの秘訣をお伝えします。1.「私のトリセツ」を共有する私には発達障害に伴うさまざまな特性があり、ちょっとしたことで疲れやすかったり、日常に必要な作業の得手不得手が激しかったりするなどの傾向があります。これらの特性をうまく乗り切るために、私は夫との間で徐々に「私のトリセツ(取扱説明書)」のようなものを共有するようになりました。私はワーキングメモリが小さくてシングルタスク傾向なので、一度に複数のことを訊かれたり指示されたりすると、混乱してミスをしたりフリーズしたりしてしまうことがあります。なんでもパッパッと手際よく済ませることができる早口の夫とは最初ここの調整に苦労しました。最近は私たちの間で「一度に複数のことを訊かない/指示しない」は普通のこととして浸透しましたが、先日少し面白いことが起きました。私がヨガをしているときに夫が何かちょっとややこしい質問を私にしたのです。私がとっさにピタッと止まって「ごめん、いまメモリが足りない!」とだけ絞り出したら夫は「なるほど、わかった(笑)」と答え、すぐに意図が通じました。要するに私は、同時に複数のことをしたり考えたりすることが苦手なのです。私には聴覚過敏があるので、基本的にはテレビも必要なときにしかつけません。音楽も好きなのですが、どんなに好きな音楽でも小一時間聴いていると耳が疲れてきて、止めてしまうぐらいです。しかし、夫はテレビをつけたまま作業したり、さらにはテレビをつけたままPCで動画を流しながら作業したりするのが平気です。むしろ多少雑音があるぐらいのほうが落ち着くぐらいとのこと。私は複数の音楽や番組が耳に入ってくるのが短時間でも耐えられないので(頭がパンクしそうな感じがします)、夫がうっかりテレビとPCで動画を同時に流しているときは「ごめん、どっちか消して」と頼みます。彼はほとんどの場合、なんの気なしにテレビとPCで動画を同時に流しているだけなので、「ああ、すまんすまん」と快く応じてくれます。私は何かと疲れやすいので、外出や旅行はかなりゆるいスケジューリングにしてもらっています。「半日出かけたら半日休む、翌日は出かけない」「旅行では移動に疲れてしばらく動けなくなることを織り込み済みで予定を組む」といった感じです。一緒に暮らすようになった当初、夫は土日となると良かれと思って立て続けにあちこちに連れていってくれたのですが、毎度体調を崩す私を見ていて「もしかして体力的にきつい?」と訊いてくれました。夫の善意がありがたいだけに少し無理して出かけていた私も安心して「実はきついんだ」と話し、半年ぐらいのうちになんとなく大丈夫なペースが掴めるようになりました。夫は音楽や賑やかなイベントが好きで、やはり一緒に暮らし始めた当初、一生懸命一緒に連れていってくれました。でもやはり、聴覚過敏のある私には音の大きなイベントは長くて2時間が限界。2時間半や3時間となるとみるみる顔色が悪くなってぐったりし、帰り道でひどい片頭痛に襲われる私を見ていて、夫も私が本当に大きな音が苦手なのだと理解してくれたよう。半年ぐらいたつ頃には、いろいろと配慮してくれるようになりました。音の大きなイベントは2時間までにする。クラシックコンサートなどできるだけ音の静かなものにしたり、できるだけスピーカーから遠い席を選んだりする。私が耳栓をつけながら楽しむことを許してもらえる会場にする。上記の条件に当てはまらないイベントへは、夫は一人で行ったりほかの友人知人と行ったりするようになりました。どうも最初は、家に私を一人で残して出かけることを悪いと思っていたようなのですが、ぜんぜん構わないよと伝えたら安心してくれたようです。夫はフットワークが軽い人なので、突然「いまからどこどこに出かけるよ」と言われても平気なたち。でも私は違います。体調を崩しやすい私は、どういう行程でどういうところにどれくらい行くのかと照らし合わせていろいろと準備が必要だからです。「今日どこどこに行かないか」と言われるたびに「そんなに急に言われても…」と渋っているうちに、だんだん私たちの中でルールができていきました。外出はできるだけ当日には言い出さない。短い外出は前日まで、遠出は最低3日前までに伝える。どういった乗り物にどれぐらい乗るか、行き先の環境(音、光、人出、ニオイ、暑さ寒さなど)などの見通しがつくように説明する。私はそれを聞いて、持っていく薬や服飾品、体調の調整などをします。泊りがけの旅行ともなると1週間前から体調の調整に入ったりします。こうした工夫の結果、外出の最中や外出から帰ってきたあとに体調を崩すことがほとんどなくなりました。とはいっても泊りがけの旅行などすると疲れてしまって翌日は1日寝ているような状態にはなりますが…私は自分のこだわりが発揮できるため掃除と洗濯が得意ですが、料理はマルチタスクで体力を使うためにどちらかというと苦手です。夫は真逆で、掃除洗濯が苦手、料理が得意で特に人にふるまうのが大好き。というわけで、私たちは互いの得手不得手をふまえ、掃除洗濯は私、料理(と食材の買い出し)は夫、という形で家事を分担しています。多忙な夫に気を遣って無理して私が食事を作ろうとしていた時期もあったのですが、結局は私の負担がやたらと大きくなってしまう割には夫の助けにならないことがわかったのでやめました。私が部屋と衣服を清潔で快適に保ち、夫が温かくて美味しく栄養バランスのよい食事をつくる。わが家の家事はこんな形で回っています。2.屋内環境には妥協しない私は些細な環境の変化で体調を崩してしまいやすいので、屋内環境の快適さの優先順位はかなり高くしています。たとえば、遮光・遮熱カーテンをうまく使う。窓から入ってくる眩しすぎる光や西日、夏の暑さなどを、遮光・遮熱機能のあるカーテンで防ぎます。夫は「せっかく昼間なんだから開けていたらいいのに」と言いますが、そこは説明して妥協してもらっています。最近、部屋のシーリング照明にも、調光・調色機能つきのLED照明が出てきています。こうした機能つきのLED照明に変えてから片頭痛が少なくなったように思います。私が特に夕飯後は暗めの黄色っぽい光に調光するのを夫は暗くて不便だと思っているようですが、そこも妥協してもらっています。たまに夫の部屋に入るとまぶしくて目がチカチカします(笑)LED照明には人によって合う合わないがあるようですが、私には、高周波の音が聞こえるし熱も発生しやすい蛍光灯よりもLED照明のほうが合っていたようです。住む部屋自体も、できれば暑さ寒さが激しくないような物件を選ぶようにしています。出費はかさみがちですが、窓がペアガラスだったり建物の断熱がしっかりしていたりすると、季節や朝晩、部屋ごとの室内環境の差が小さく抑えられます。空調も、この気温がいいとかこの湿度がいいとか、エアコンの風はうるさいからだめだとかあるので、加湿器を置いたり自室の暖房はオイルヒーターにしたりするなど工夫しています。3.食事どきの団らんを大事にする夫は忙しい人ですが、できれば毎日、食卓でリラックスした会話の時間を持つように工夫してくれています。夫は食べるのが早く、皿洗いも食べ終わった食器からどんどんやってしまうタイプですが、ひととおり自分の分を洗ってしまうと再び食卓につき、私が食べ終わるまでいろいろおしゃべりしながら座っていてくれます。夫が遅くなったりして夕食が一緒にとれないときも、極端に遅くないかぎり私はなんとなく起きて待っていて、夫が晩酌しながら食べる食卓に私もつきます。最近そういう晩酌時間のつきあいもできていないな、というときには、なんとか週末の日中に二人でお茶を淹れて一緒にお菓子を食べながらおしゃべりしたりもします。お互い、実家ではこうした食卓でのリラックスした団らんの時間を持てずに寂しい思いをしてきたので、ここは二人ともとても大事にしているところです。一時期、夫が単身赴任していたときはこうした「食事どきの何気ない無駄話」が共有できず、何か用事があるとビデオ通話で用件だけ話して切るような生活を続けていたときは、なんとなく気持ちがすれ違ってとても寂しかったし喧嘩も多かったのを覚えています。発達障害があっても幸せな家庭生活を実現することはできる発達障害のある人はさまざまな特性を抱えているので、人と穏やかな共同生活が送れるのか心配な人は多いかもしれません。しかし、私は組み合わせや互いの努力によって、発達障害者が誰かと幸せな家庭生活を得ることは十分可能だと思っています。少なくともここに一例、発達障害があっても幸せな家庭生活を実現した例があるので、どうぞ希望を持って工夫していってほしいと思います。
2021年02月07日発達障害当事者の視点から描かれた夫婦のものがたりーー漫画『僕の妻は発達障害』2巻月刊コミックバンチにて連載中の『僕の妻は発達障害』は、「大人の発達障害」をテーマにあつかった作品です。漫画家のアシスタントとして働く夫と、発達障害のある妻の日常生活が描かれています。本作では、発達障害がある人の生きづらさを描くと同時に、支援者にもスポットを当てています。悪意がないとわかっていても、発達障害のある妻・知花の行動にストレスを感じてしまう、夫・悟の描写もあり、決して良いことばかりではない、リアルな2人の生活がわかります。2巻では、結婚生活を送る中で衝突や理解のズレが多くなり、少しずつ疲弊していく2人の様子や、妻・知花が発達検査をうけたエピソードなどが描かれています。ぜひ幅広い方に読んでいただきたい一冊です。保護者のサポートにフォーカスした『育てにくい子の家族支援 親が不安・自責・孤立しないために支援者ができること』保育園、幼稚園、小学校、学童保育の先生など、子育て支援に関わる方に向けて書かれた本、『育てにくい子の家族支援 親が不安・自責・孤立しないために支援者ができること』。著者は、NPO法人えじそんくらぶ代表で、臨床心理士をつとめる高山恵子さんです。長らくADHDを中心とした発達障害の子どもとその家族、支援者をサポートする活動を続けています。本書の前身は、2007年に出版された『育てにくい子に悩む保護者サポートブック』(学研)。今作では主に幼児期の支援者向けだった前著の内容を大幅に加筆修正し、小学生の保護者支援にも活用できる1冊にまとめています。本作では、多様な子ども、保護者がいることを前提に、それぞれにどういうサポートをしたら最適な支援になるのか具体的な事例とともに紹介しています。支援者はもちろん、「わが子の育てにくさ」に悩む保護者の方にもおすすめの1冊です。発達障害当事者の高校生が描く『発達障害の私の頭の中は忙しいけどなんだか楽しい』本書の著者のなずなさんは、2001年生まれ。5歳で高機能広汎性発達障害(ADHD傾向)と診断され、中学時代には不登校も経験。現在は、通信制高校を卒業し、体力の回復を目指しながら夢に向かって進んでいます。なずなさんが自身の世界を描いたこの本では、なずなさんが、自分の世界をマンガと文章で説明し、「フラッシュバック」などの困りごとについて、独自の対処法を紹介しています。そこに、なずなさんの主治医である精神科医の松本喜代隆先生が、キーワードごとに一般的な解説や対処法のヒントを挙げています。当事者による貴重な記録を読める本作。書いてあることはなずなさんの個人的な経験ですが、松本先生の解説・ヒントとともに、誰が読んでも参考になることがあふれています。子どもと大人の境目にある思春期の見守り方も教えてくれる1冊です。自閉症の娘と家族の愛と成長の記録ーー『ムーちゃんと手をつないで』4巻筆者のみなと鈴さんが自身の経験をもとに、自閉症子育ての経験を描いた漫画『ムーちゃんと手をつないで』。『ムーちゃん』ことむつみの成長と、家族の愛について描いています。「他害」がテーマとなった4巻。周りの人に噛み付くなど他害してしまうムーちゃんに悩む母の彩は、どうにか解決したいと療育施設の先生に相談します。しかし、そこで先生に言われたことは、「他害行動はそうそう簡単に消失しない」というものでした。4巻では、ムーちゃんの他害について何ができるのか葛藤する母・彩とそれを懸命にサポートする周囲の様子が描写されています。発達障害のある子どもを育てる親と子の成長を描いた本作。ぜひ子育てに関わる方に読んでいただきたい一冊となっています。お母さんが楽に、元気になれる本ーー『ママのピンチを救う本』本書は2005年に出版された『のび太・ジャイアン症候群5 家族のADHD・大人のADHD お母さんセラピー』の改訂版です。発達障害のある子どもの支援者にフォーカスした本書。なかでも保護者であり、家庭の調整役になることが多いお母さんに寄り添い、お母さんたちの毎日が楽に、幸せになるようなアドバイスを豊富に掲載しています。発達障害がある子どもがいる家庭では、お父さんやお母さんにも似た特徴が少しずつ見られることがあります。本書では、発達障害がある子どもや大人、診断がつくほどではないけれど発達障害の傾向がある人が、家庭でどのようにすれば過ごしやすくなるかについて考察しており、日々の暮らしを快適にするヒントがたくさん詰まっています。ぜひ参考にしてみてください。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月06日「母にはわからない...!」息子のがんばる理由Upload By ひらたともみUpload By ひらたともみUpload By ひらたともみUpload By ひらたともみ高次脳機能障害になってからのリクは、日々、体調が安定しないことに悩まされていました。頭痛やめまいで視界が狭くなり、吐き気で起き上がることも困難な日があったり、今食べた献立が思い出せなかったりしていました。そんな状態でも、「留年はしたくない!」という意地で、ギリギリの点数ではあるものの無事に3年生に進級することができたのです。もう、あとは卒業するだけ...あとは、バイトでもしながら、ゆっくり将来のことを考えてくれればそれでいいとさえ思っていたのです。Upload By ひらたともみUpload By ひらたともみUpload By ひらたともみはっ!としました…。私は知らず知らずのうちにリクの将来を、考えないようにしていたのです。なぜならそれは、「息子は障害があるからムリ」という本人のやりたいことを度外視した方法で、「それでいいんだ」「高校までがんばったんだし」というところに、親としての落としどころを勝手につけて満足していたんだと思います。Upload By ひらたともみ目標を決めたリクは、勉強することが多くなりました。ときどき吐き気や頭痛で学校を早退することもありましたが、それでも机にかじりついていました。そして、なんとか志望大学に推薦をもらえることになり、4月からは大学生になります。どうやら甘ったれた私と違うリク。「休めばいいのに」「やめちゃえばいいのに」と安易に思うことは、ややこしいこのご時世を生きる処世術だと思っていました。でもリクのように「がんばりたい」という強い意思を一度持つと、だれもブレーキをかけることなんてできない。今回は18歳の息子に教えられたようです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月05日ASD兄妹の小学校生活うちのASD兄妹は偶然にも二人とも、小学校3年生までは通常学級で、4年生から通常学級に在籍しながら、必要に応じて特別に補習などをうけるという体制(通級)をとっていただいていました。授業そのものは通常学級で受けることが多かったのですが、休み時間は図書館に行ったり、絵を描いたりとひとりで(忙しく)過ごすことが多く、在籍する教室では特に親しい友達はできなかったようです。Upload By 寺島ヒロ放課後も学校に残って遊んだり、誰か友達の家に寄って帰ってきたりということもなく、学校の終礼時間の10分後にはキッチリ家に戻ってくるような感じでした。元々性格も大人しく、あまり他人に関わりたがらない兄妹。親しい友達もいない代わりに、難しい人間関係に巻き込まれることも、喧嘩することもないという距離感を普通の状態と思って過ごしていたようです。いっちゃんの方は「班活動などでグループになるときに、いつも入れてくれる子がいる」とは言っていましたが…、それが誰なのか、顔も名前も覚えてはいませんでした。そんな人との距離がやや遠く、トラブルに無縁そうなASD兄妹にも、困った事態に陥ったことが何度かありました。タケルの場合...それは、タケルが4年生になったばかりの頃…教室での立ち歩きや、泣きだしたら止まらず1~2時間もワンワン泣きわめいてしまうことなどが度々学校で問題になっていたタケルですが、3年生の終わりぐらいに「アスペルガー症候群(当時の診断名・現在はASD(自閉症スペクトラム))」と診断され、4年生から通級による指導が始まっていました。通級による指導を受けている児童は200人いる学校では2人だけ。ちょっと目立つ存在だったということもあるのでしょうか、ほどなく上級生に目を付けられ、嫌がらせを受けるようになりました。Upload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロその次の日からは先生が対応してくれるようになり、タケルを学校まで私が連れて行ったら、校舎の入口のところで待っている先生に引き渡すようになりました。すると、次の日に先生から電話で「何か言われている現場は見られませんでしたが、タケル君の様子をうかがっているような6年生がいました!6年生の靴箱はこっちじゃないので、やっぱり不自然ですよね。気をつけておきます。」と連絡がありました。Upload By 寺島ヒロ…というわけで、事件の全容は分かりませんでしたが、タケルが嫌だったというだけで必ずしも悪意じゃなかったのかもしれませんし、親同士の喧嘩に発展しても面倒だなと思ったので、それ以上の追及はしませんでした。でも、次に何かまた起こったら嫌だなと思いましたし、油断はしないでおこうと心に誓いました。まあ、結局なにもなかったんですけど。さて、これはどちらかというと被害者側だった話ですが、加害者側になったこともあります。いっちゃんの場合...Upload By 寺島ヒロそれは、いっちゃんが3年生だったころのこと…授業中ですが、美術だったか家庭科だったかでみんなが席を離れてワイワイと作業をしていた時、不意にその事件は起こりました。Upload By 寺島ヒロUpload By 寺島ヒロ不幸中の幸いかこの事件は、担任の先生や多くの他の生徒の前で起きたため、相手の子が「刺せ」と挑発したことなどの経緯を把握している人が多く、被害側と加害側の証言が食い違うこともなかったので、あまりこじれることはありませんでした。相手の保護者の方への謝罪にも、先生がしっかり間に入ってくださり助かりました。押すなよ押すなよと言われたら押さないのがASDいっちゃんの「やれと言われたのでやりました」事件は、とてもASDらしい特徴が表れていると思います。ASDのある人はしばしば目の前の人が言ったことをうのみにします。通常はあり得ないようなことでも言われたら信じてしまう、いえ疑わないのです。そして、それが少しでもやってみたかったことであれば、ホイホイと実行してしまう危うさがあります。担任の先生にしても、知識としてASDのある子どもが「人の言葉の裏や気持ちを汲み取れない」ということは知っていたはずなのです。でも、その場にいても見逃してしまった。やはり普通はそんなことしないという「常識」があり、スルーしてしまったのだと思います。いつも通級の子どもたちを相手にしている通級の先生とは違い、通常学級の先生は「ふつう」の子どもの反応が脳に定着しているので、たまに違う反応の子がいると、その子向けの対応に切り替えるのはすごくパワーがいるんじゃないでしょうか。(もちろん通級で常時気の抜けないお仕事をされている先生方が楽というわけではないのですが)担任の先生は「私の責任です。」と恐縮した様子で言ってくれましたが、いやいや、これをとっさの判断で止めるのは無理というもの。むしろ、いっちゃんの「一見普通に見えるけれど明らかに強いASD傾向がある」という面に触れても、ビビることなく事態を収拾してくれたことを、本当にありがたいなと思いました。あれから、いっちゃんが他人に暴力をふるったことは一度もありませんが、注意が必要だなと思い知った出来事でした。発達ナビライターによる小学校生活での困りごとエピソードをあつめたまとめコラムはこちらです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月04日「いや!いや」と言葉で示すことができる2歳児、できなかった息子私はいま、ファミリーサポートの仕事で定型発達のお子さんを預かっています。そこで気づいた、0歳の定型発達児と自閉症のある赤ちゃんとの違いは以前コラムでも書きました。その中からいくつか抜粋すると…・親が迎えにくると嬉しそうな顔をする。・散歩のとき、よその子がいると関心を持つ。(喜んだり、怖がったりどちらかの反応)・私が手を広げると「抱っこしてほしい」のポーズをとり、手を広げる。これらは、預かっているお子さんが自然と行い、息子が幼いころはしなかったことです。先日のコラムでご紹介した以外にも、大きな違いを感じることがあります。そこで今回は、定型発達の2歳児と息子が2歳だったころの違いについて書きたいと思います。私が「靴下履こう」と言ったら「いや!」、「だったら裸足でいよう」と言うと「いや!」「公園に行こう」と言ったら「いや!」、「だったらおうちにいよう」と言うと「いや!」親にとっては自己主張が出てきた辛い嫌々期なのかもしれませんが、これも立派な会話で成長のあかしなのだと思います。息子には魔の嫌々期はなく、世の中すべてが嫌。言葉で「いや」と言う前に、自傷やパニックを起こす毎日で私は疲労困憊の日々を過ごしていました。自閉症の息子ができず、定型発達の2歳児が自然とできている5つのことを挙げたいと思います。Upload By 立石美津子1、大人の表情を読み取り気持ちを理解する発達障害がある人には、「検討しておきます」の字面だけとらえて、行動してしまうことがあります。言葉だけでなく、その場の空気、相手の声のトーンや顔つきを見て、断りなのか、歓迎なのか判断できないで、トラブルが起きがちです。Upload By 立石美津子成人した息子も、相手が嫌がっている素振りをしているのに、それが理解できずに、しつこくしてしまうことが今でもあります。それに比べて、目の前の2歳の子は生まれて2年足らずなのにも関わらず…机の上にのったときや、触ってはならないものを触ったとき、私が言葉ではなく「あれ?あららら?」といつもと違う低い声、いつもと違うゆっくりした話し方で示す、すると大人の表情と声のトーンを即座に読みとって、ばつが悪そうな顔をして、「やっちまったな…」という顔つきをします。言葉ではなく、相手の表情を読み取っている証拠、すごい能力です。2、ごっこ遊びができるままごとの道具を本物にみたてて、お皿に物を置き、食べる真似をしているのです。見立てて遊ぶことができるのは、想像力が発達している証拠です。絵本に載っている食べ物を、つまんで口元に持っていくと本物に見立てて食べる真似もできます。Upload By 立石美津子3、人の真似をする良いことも悪いことも、人の真似ばかりします。友達が石を投げていたら投げます。テレビの画面の子どもが踊っていたら歌や踊りの真似をします。真似ができるのは人に関心がある証拠です。言葉も人の真似をしてドンドン増えていっています。4、泣き真似をする公園で転んで痛くて泣いた子。1分以上たって、痛みは引いているのにも関わらず構ってほしいのか大人の気を引こうとして、泣き真似をし続けていました。(←涙が出ていないことで判断できます)5、質問に的確に答える「これ、だあれ?」と私自身を指さして聞くと、可愛い舌っ足らずの声で「たていしゃん」(←立石さんの意味)と答える2歳児。息子は小学生になっても「これ、だあれ?」と私が自分の顔を指して聞いても、「お母さん」ではなく「鼻」と答えていました。中学生になってタクシーに乗ったとき、運転手さんから「僕のお名前は?」と聞かれたときも自分の名前を言わず、「山田太郎」とタクシーの運転手のネームプレートを読み上げていました。相手の立場になって話を捉えることができないので、その場にあった答えがなかなかできないでいます。家を出るとき、「行ってきます」ではなく、いまだに「行ってらっしゃい」と言いながらドアを開けて出ていきます。とはいえ、息子も成長しています。もちろん定型発達の人とは違いますが…大きな成長の一つに、アンガーマネジメントがあります。パニックを起こした後の感情のコントロールができるようになりました。Upload By 立石美津子他にも、・トイレットペーパーがなくなったら、芯を捨てて次に使う人のことを考えて、新しいものに取り換えてくれます。相手の身になって考えることができているのか、「芯だけになったら取り替える」というルーティーンになっているのか、ともかく替えてくれます。・新聞を取りに行く、洗濯物を干す、カーテンを閉める、家の中のゴミ箱のゴミを集めるなど、決められた家事は文句ひとつ言わずに、やってくれます。成長しています。息子が成人してもまだ比べる病に侵されている私ですが、「いつまでも他の子と比べていないで、目の前の青い鳥に気が付かないとダメだな…」とシミジミ思います。Upload By 立石美津子
2021年02月04日4年生に進級。またしても、変化した教室の様子。娘が4年生に進級し、下級生も増えた特別支援学級の教室。担任の先生も替わり、たくさんの環境の変化がありました。3年生でも環境の変化はあったものの、娘は、私が予想していなかった成長を見せてくれたため、あまり心配はしていなかったのですが…4年生に進級してしばらくしたころ、娘が再び、家で特別支援学級内の不満を言うようになりました。Upload By SAKURA娘の思いと、学校の事情。話をよく聞いてみると、クラスの人数が増えたことで先生の対応が追いつかず、娘の授業が中断されることも多くあるそうです。さらに騒ぐ声も大きくなり、娘は不快に感じているようでした。Upload By SAKURA娘がストレスを感じていることはわかります。しかし、学校に対応をお願いしても、おそらく人員の関係などで対応はなかなか難しいでしょう。先生たちも、最大限やってくれているはず。Upload By SAKURA通常学級へ戻るとき?どうしたものかと考えましたが、まったくいいアイディアが浮かばなかった私は、夫に相談しました。Upload By SAKURA夫は、「今が通常学級に戻るタイミング」と言いました。確かに娘の学習は順調に進んでいます。私の目から見てもよく理解していると思うし、成績も悪くありません。しかし、大勢の中に入って先生の話を聞くことができるか…わからないときに自分から聞くことができるか…不安はいくつかありました。担任の先生に相談。通常学級でもいける?そこで特別支援学級の先生に、娘が通常学級で授業を受けられそうか、聞いてみることにしました。Upload By SAKURAパニックの回数は、徐々に減ってきているものの、涙を流してしまうことはまだまだあるようでした。「支援員さえつけば…」と私も思いますが、特別支援学級の事情は、私も理解しています。私たちが望んでも、学校の事情でどうしようもないこともあるのです。それから先生は、「そういう状況ではありますが、あーさんとお母さんが望めば、今すぐ通常学級で授業を受けることはできますよ」と言いました。Upload By SAKURAこのまま特別支援学級で、いいのだろうか…。しかし通常学級に移ると、学習が遅れたり、教室でパニックを起こしたりして、他の子に迷惑をかけるかもしれない…。進学や進級のときなど、選択に迷った経験はこれまでにもありましたが、もう一度その選択のときがやってきました。娘の気持ちと、私の考え。しかし今回違うのは、娘が4年生という学年になっているということ。もう自分の意見だって言えます。先生や夫と話し合った結果、娘の希望を聞いてみることにしました。Upload By SAKURA私は、このまま特別支援学級で受けるか、通常学級で受けてみるかを、それぞれのメリット・デメリットを話してから、娘に選ばせることにしました。Upload By SAKURA娘は少し考えてから、「特別支援学級がいい」と答えました。それから私は、いい機会だと思い、娘に今後の見通しとして私が考えていることを話しました。Upload By SAKURA気持ちは、頻繁に確認。1年生のとき、「2年生になったら通常学級にするか、特別支援学級にするか」の選択ですごく悩みました。それは、娘が本当はどうしたいか、わからなかったからでした。しかし今回は、娘がどうしたいか、不安や心配があるか、しっかりと聞くことができ、娘の大きな成長を感じました。娘に気持ちを聞いてからも、学校での様子は頻繁に聞くようにしています。今回、特別支援学級を選んだ娘ですが、いつ考えが変わるかわかりません。4月からは、5年生。特別支援学級、通常学級、それぞれの状況も今のままではなく、変わっていくでしょう。こまめに様子を確認し、そのタイミングは逃さないようにしていきたいと思います。発達ナビライターによる小学校生活での困りごとエピソードをあつめたまとめコラムはこちらです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月03日「ついにこの時が来てしまった…」次男がクラスメイトを傷つけた日の事Upload By スガカズ小3の1学期のある日、学校から電話がありました。電話に出ると担任の先生が申し訳なさそうな声で「次男くんが怒って机を倒してしまい、机がクラスメイトの女の子の足(膝)に当たってアザができてしまいました。」と話しました。私は「サーッ」と血の気が引いたのを覚えています。まず先生に謝罪し、その日の内に被害を受けたお子さんや保護者の方に面と向かって謝罪したい旨を伝えました。保護者の方は毎日仕事の後お子さんを学童に迎えに行くとのことだったので、その際に先生と話し合い、その後私と次男が合流して謝罪をすることになりました。次男なりの正義感があった様だけど…Upload By スガカズUpload By スガカズ事の発端は休憩時間(先生がいないとき)子ども同士の遊びで、「虫を触った手」を「ムシキン(菌)」と名付けて冗談でつけあっていたのだそう。それに対して次男は注意をしたのですが、遊びは続き、前の席に座っている女の子に回ってきたようです。女の子はとっさに他の子と同じように次男につけてしまったようでした。次男は「人が嫌がることをしちゃいけない」と言ったのに自分に回ってきて、さらに頭につけられたことが本当に嫌なことだったので、思わず机を蹴って倒してしまったのだそうです。小3のころはというと、物にあたる行動自体は、クールダウンする場所を確保する等でかなり減っていたのですが、急なことでクールダウンしに行くより先に怒りが湧いてきてしまったようです。確かに次男が嫌がる気持ちは分かります。だからと言って物を蹴ったりしてもいけませんし、人を傷つけるのはもってのほかです。被害を受けたお子さん(女の子)は自分の番が回ってきたのを、とっさに他の子と同じように次男に回しただけです。もちろん、〇〇菌と名付ける行為は心を傷つけるきっかけにもなるため、良くないことだとは思いますが、小3という時期を考えると、そうなるのは自然な流れだとも思いました。本人にはどう言えばいい?叱る?叱らない?私は発達凸凹の長男や次男が「他の子に迷惑をかけた」と判断した事案で把握しているものは、できる限り保護者の方を交えて謝罪していました。もちろん今回のことも、お子さんと保護者の方にはとにかく謝罪し続けようと思いました。ただ、次男に対してどう言えば一番良いだろうと悩みました。学校生活での許しがたい行動ですが、指示を出せる状況でありませんし、被害を受けたお子さんとまだ話ができていない状況です。また、次男は怒られたり否定されたりしたことに対して、事実より過剰に受け取るところがあります。そのため、本人の気持ちを否定して叱ることは、反省する場を奪う結果になるだろうと思いました。悩んだ結果、叱りはしないが低い声で、真剣な目をして話し合うことにしました。Upload By スガカズ私は、学校から帰って来た次男に目線を合わせ、肩に手を当てながら(こうすると落ち着いて話を聞いてくれやすいから)伝えました。・どんな理由があっても人を傷つけることはしてはいけない・怒りそうな時はすぐにその場から離れること・私と次男でもう一度謝る事が大事(すでに次男は学校で一度謝っている)私は「繰り返してほしくない」という一心だったため、おそらく怖い顔をしていたのかもしれません。この時期の次男は自分の気持ちや周りの状況を上手く伝えることが難しかったのですが、「(自分にとって)嫌なことをされた」「つい机を倒してしまった」「傷つけるつもりじゃなかった」と話し、「謝りに行こう」と話す私に対して「わかった」と答えました。夜、約束の時間になり次男と学校に向かいました。被害を受けたお子さんと保護者の方、先生に会いました。お子さんの足を見せてもらい「痛い思いをさせてごめんなさい」と言った後、再度全員に向けて謝罪しました。※謝罪した際の言葉は長いため、割愛しますUpload By スガカズUpload By スガカズ保護者の方は初めて直接お話した方なのですが、次男にADHDがあるということを知っており、気を遣っていただいていたのかもしれません。私からの謝罪の後「私は次男くんのことを知っていますし、娘からも次男くんとのやり取りを昔から聞いています。理由がないのに一方的にやる子じゃないのはわかってますよ」と思ってもいなかった言葉をいただきました。「相手のお母さまが謝る必要なんてない」(と私は思っている)のに…と思いつつ、その後は何故かお互い謝罪をしつづけるという状況に…。周囲の方の厚意に生かされているなと痛感しました。暫く気まずそうにしていた次男ですが、最後にお子さんと保護者の方に「ごめんなさい」と言うことができました。「お互いが事実を隠さない」ことが解決のカギUpload By スガカズその後先生から、子ども同士のトラブルは時々、「自分に都合の悪い事実は隠す」こともあるのだと聞かされました。そういったときには両者の言い分が違って起こったことの辻褄が合わなくなるため、今回のようにすんなりいかないこともあるのだとか…。加害者側としては、同じことがないようにしないといけませんが、今後の為に「自分(子ども)に都合の悪い事実を隠す」ことがないように、普段から「自分(子ども)の気持ちを否定された」と感じさせないことや、好ましい行動を見つけることが重要なのだと改めて思いました。Upload By スガカズ後日学校で女の子に会い、膝のアザが消えたことを確認しました。その後、何度かわが家に遊びに来てくれる程次男と仲良くしてくれるようになったので、彼女の存在は、本当にありがたかったです。お母様とは保護者会で再び会えたので、そのことを伝え、「いつも遊んでくれてありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えました。発達ナビライターによる小学校生活での困りごとエピソードをあつめたまとめコラムはこちらです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年02月02日自分の好きな時間に、好きな場所で学ぶことが実現できるN高とN中等部中学や高校は定められた時間に学校へ行き、決まった授業を受け、夕方までを学校で過ごす。これまではそんなスタイルが当たり前のように受け入れられていました。でももし、好きな時間に好きな場所で学ぶことができたら…。それぞれが持つ可能性はもっともっと広がるかもしれません。それを実現したのがN高等学校(以降N高)です。N高は、インターネットと通信制高校の制度を利用した新しい高校として2016年に開校しました。N中等部が開設したのが2019年のこと。通学コースからのスタートでした。その1年後、2020年にはインターネットを駆使して学ぶネットコースがスタート。現在は通学コースとネットコース合わせておよそ1,000人が学んでいます。N中等部は、社会で求められる総合力を身につけるための実践型学習を行うプログレッシブスクール。N中等部には、生徒たちが教養、思考力、実践力を身につけるためのさまざまなカリキュラムが用意されているのです。N中等部の特色のうち、代表的な4つを紹介します。1つめが「21世紀型スキル学習」。社会に対して生徒が創造力を発揮していくために、思考スキル、コミュニケーションスキル、情動スキルなどを身につけるためのカリキュラムです。2つめの「コーチング」は、生徒が目標を見つけ、それを達成することができるように自発性を養うためのもの。1対1の面談でコーチングを行っています。3つめが「一流のプロフェッショナル講師による映像授業で学ぶ国語、数学、英語の授業」です。生徒たちは、決められた時間や場所ではなく、好きな時間、好きな場所で学習を進めることができます。4つめが「プログラミング」。初心者から学べる実践的なカリキュラムでプログラミング思考や技術を学ぶことができるのです。多様なニーズに応えるカリキュラムで、社会のなかで生き抜く力を養う今回は、N中等部のネットコースのスタッフと生徒お二人にインタビュー。まず、N中等部設立の背景や、理念、そして生徒への思いなどをN中等部ネットコース運営部部長 熊谷桃子さんに伺いました。Upload By 発達ナビ編集部編集部(以下、――)まずは、N中等部の理念について教えていただけますか?熊谷さん:ITを駆使した未来の教育をつくるということをコンセプトに、社会で求められる総合力を備える生徒を育てたいという思いを持って生徒たちと接しています。既存のフリースクールなどは「居場所」という役割を大切にしているところが多いと思います。N中等部では、生徒にとっての「居場所」であることはもちろん、さらに生徒たちが社会に出てからきちんと生き抜ける力を育むための多様なコンテンツを用意しています。――N中等部の一番の特徴はどんなところでしょうか?熊谷さん:通学コースとネットコースの両方があり、ネットコースは日本全国、あるいは海外に在住であっても、どこにいても学ぶことができる体制をつくっています。N中等部は学校教育法第一条に定められた中学校ではないので、中学校に在籍したままN中等部で学ぶ形になります。中学校に籍を置いて全ての活動をN中等部で行っている生徒もいますし、中学校に通って、部活もやりながら夕方からN中等部で学ぶ生徒もいます。さまざまなニーズに応えることができるというのが一番の特徴です。――無学年制をとっていると伺いました。熊谷さん:はい。中学1年生から3年生まで学年に関係なくクラスが構成されています。中学1年生だけれどプログラミングのスキルが高い生徒もいます。その場合は上の学年のクラスメイトに教えたり、数学が苦手な1年生に3年生が教えたりしている様子も見られますね。年齢や学年にとらわれず自分の得意なことはシェアして、苦手なことは周りから助けてもらうというスタイルが確立されています。――授業のカリキュラムについて教えてください。熊谷さん:ネットコースでは週に二度、一斉学習時間というものを設けています。これはZoomを通じて行う授業のことで基礎学習やプログラミング学習、21世紀型スキル学習などをクラス全員で行うものです。担任のほかに、大学生のティーチングアシスタントが加わり、30人の生徒につき、最大6〜7人のスタッフが入ります。その他は自由選択の時間。それぞれが学びたいことを学ぶ時間としていますが、具体的に学びたいことがまだ決まっていないという生徒は、専用オリジナルアプリ「N予備校」での学習を進めています。Upload By 発達ナビ編集部――21世紀型スキル学習とはどのようなものですか?熊谷さん:自分を知り、思考力を高め、チームで協働する力を学ぶためのオリジナルカリキュラムです。自己認識を促したり、不安や落ち込みの対処、アンガーマネージメントなどを学んだり、傾聴や観察などのトレーニング、デザイン思考やアート思考、倫理思考のトレーニングなど、その内容は多岐に渡ります。またその学習方法もさまざまで、個人で学ぶこともありますが、オンライン上で複数名のワークショップやダイアローグ形式で進むことが多いです。担任や生徒同士がネット上で議論をするなど、ひとつのことにみんなで取り組みながらスキルを獲得していきます。――21世紀型スキル学習は生徒の皆さんにどのような影響を与えているのでしょうか?熊谷さん:たとえば、絵を描くことが大好きで一生それをやっていたいと思っていても、絵がうまいだけでは仕事にならないという側面があります。絵を描くということ以外の部分、たとえば他者とコミュニケーションをとったり、自分をうまくモチベートしていったりということが必要です。そういったスキルを養うことで、好きなことを一生好きでい続けられるのではないかと思っています。――発達に特性がある生徒へのサポートはありますか?熊谷さん: N中等部では自学自習を基本としながら、一人ひとりに合った学びを一緒に考えるというのをすべての生徒に対して行っています。たとえば学習をするうえでの困難があれば、それを解決できるように一緒に方法を探します。発達に特性があるなしに関わらず、すべての生徒たちに行っているので、特別なサポートは行っていません。でも、一人ひとりときちんと向き合うということがおのずと発達に特性がある生徒へのサポートにもなっていると思います。一人ひとり多様な夢や、やりたいことを持つ生徒たちをサポートしたいと語る熊谷さん。そんな熱いスタッフが揃っているところもN中等部の特長のひとつ。この後の生徒インタビューでも、スタッフとの関わりがN中等部の魅力だという話がありました。ネットを通じての関わりのなかで、生徒たちは熊谷さんをはじめとするスタッフや先生方との深い絆を築いているようです。目標を達成するためには、どうしたらいいのか。自分で考えて進められるように、コーチングでサポート続いて、ネットコースの担任をしている小杉 優茉 先生にもお話を伺いました。Upload By 発達ナビ編集部――どのような生徒が在籍されているのでしょうか?小杉先生:本当にさまざまな生徒がいます。 プログラミングに興味を持って入ってきた生徒もいますし、21世紀型スキル学習に興味を持っている生徒も多いですね。そもそもN高に進学したいから、というきっかけでN中等部を選んでいる生徒がほとんどだと思います。――生徒たちと接するうえで心がけていることはありますか?小杉先生:生徒たちとは一斉授業の時間のほか、1ヶ月に一度コーチング面談を行っています。面談では、生徒が悩んでいること、生活習慣や学習のことなどテーマを決めて話をするんです。コーチングのスタイルで話をするなかで、何が目標なのかを明確にして、それを達成するためには何をやればいいのか、どうやるのがいいのかなどを相談しながら、自分で考えて進められるようにサポートすることを心がけています。――どんなときに生徒の成長を実感しますか?小杉先生:多種多様な職業体験プログラムを用意していて、希望する生徒が参加できるようにしています。この職業体験を通して成長する生徒はとても多いですね。また、みんな自分に合ったツールを使ってしっかりと自己学習しているので、本当にすごいなと思っています。今までの学校ではなかなか学習に手が出なかったけれど、N中等部の動画学習だと自分に合っていてしっかり学習できるようになったなどという声を聞くととても嬉しいです。――保護者からの声で印象的なものはありますか?小杉先生:21世紀型スキル学習でコミュニケーション法や他者との関わり方を学んだことで、家庭での家族との関わり方も変わってきたという話を聞きました。また、N中等部には多様な考えの生徒や、さまざまなバックグラウンドを持ったスタッフもいます。そのなかで過ごすことで、これまで囚われていた「普通」から自由になったという話もありました。好きなものを好きだと言っていいんだ。絵を描くことが好きとか、アニメが好きとか自分のことを発信していいんだと生徒が話していたと聞いたのが印象的です。一般的な中学校とは違う、コーチングというスタイルで生徒たちと向き合う小杉先生。決して先生と生徒という画一的な関係ではなく、一人の人間として生徒を尊重している様子がとても印象的でした。同じ時間に同じ教室で、同じ学年のクラスメイトと学ぶ。当たり前を取り払った先に見える可能性最後にN中等部で学ぶ中学3年生の久保さんと中学2年生の鈴木さん(仮名)にお話を伺いました。――N中等部で学ぶことを選んだ理由を教えてください。久保さん:先にN高を知り、絶対にここで学びたいと思いました。そのときにN中等部が開設することを知ったんです。N高と同じ理念の元で中学生のうちから学べるならそうしたいと思って入学しました。鈴木さん(仮名):中学生でも何かお金を稼ぐ方法はないかなと考えていたときに親からプログラミングスキルがあると稼ぐことができそうだと教えてもらいました。それで興味を持ち、ぜひ深く学びたいと思ってN中等部を志望したんです。――N中等部の魅力はどんなところですか?久保さん:インターネットでさまざまなことに取り組むことができたり、無学年制なので学年を気にせずいろいろな人と関われるところです。私は北海道に住んでいるのですが、日本中に、そして海外にも友達ができました。生徒同士はもちろん、先生や大学生のティーチングアシスタントの皆さんなど誰でもフラットな立場で話をすることができます。鈴木さん(仮名):N中等部はインターネットで学習を進めたり、コミュニケーションをとるので、良い意味で人との距離感が取れるところがいいと感じています。 自分のなかにあるラインを踏み越されることがなく、とても過ごしやすいです。また先生や他のクラスメイトたちがフレンドリーで接しやすいところも魅力だと思います。これまでの学校では分からないところがあっても授業を止めて質問をするのは難しかったのですが、今はSlack(※)で簡単に聞けるのも嬉しいです。※ビジネスチャットツールのこと――この学校で成長したのはどんなところですか?久保さん:これまでは負の感情が出てきたときに自分を責めすぎていたと思います。でも21世紀型スキル学習で、たとえば怒りは人間の本能で危険を察知したときにそれを回避するために出てくる感情だと学び、すべての感情に理由があることを知りました。そのことで、負の感情が出てきても自分を責めすぎなくなりました。自分について深く知ることができたのが成長できた理由だと思います。鈴木さん(仮名):以前の学校では、つい人の顔色を伺ってしまい 自分の感情や考えを出すことができませんでした。でも今は自分の考えをまわりに伝えるなど、自分を出すことができていると思います。それは、21世紀型スキル学習で自分の心や感情について学んだからだと思います。――今後の目標を教えてください。久保さん:以前、職業体験をしたときにプレゼンがあまりうまくいかないという経験をしました。そこで、どうすれば人にきちんと伝えたいことが伝わるかなどを自分で学んでいます。N中等部で行われるLT(※)大会に出ることも決めたので、それに向けて頑張っています。私はこれからN高に進み、やれることはすべてやって、そのなかで自分がやりたいことを見つけられればと思っています。(N中等部の)ティーチングアシスタントもやってみたいので、N高を卒業した後は大学に進むつもりです。※LT:Lightning Talkの略で5分程度の短いプレゼンテーションのこと鈴木さん(仮名):N高に進学していろいろなことに挑戦したいです。 プログラミングを学ぼうと入ったN中等部ですが、実は時間を友達と過ごすことに使っていて、まだプログラミングで稼げるほどには学べていなくて…。仕事としては、翻訳に興味があるんです。外国の人の気持ちや感情を日本語で伝えることに憧れがあります。好きでよく見ているアメリカ人のYouTuberが発信していることをもっと理解したいので、英語の勉強にも力を入れたいと思っています。これまで当たり前だった、同じ時間に同じ教室で、同じ学年のクラスメイトと学ぶというスタイルを取り払ったN中等部。その取り組みから、「当たり前」のその先に大きな可能性があるということを感じました。運営部の熊谷さん、担任の小杉先生が生徒たちをリスペクトしている姿が印象的で、またしっかりと自分を持って、自分の言葉で考えを発信できる久保さんと鈴木さんにも驚かされました。N中等部の取り組みはまだ始まったばかり。これからもその挑戦に注目していきたいと感じました。
2021年02月01日小学校の給食給食と言えば、私が小学生だった25年前は完食指導があり、食べられない子が掃除や休憩中も一人残されている姿が思い出されます。むっくんはアレルギーもなく、偏食は強くないものの、食べようとすると吐いてしまう食材もあり、私は給食がどうなることか心配でした。そんなこともあり、むっくんは情緒障害児学級に所属しており、入学時に細やかな聞き取りをしてもらえる時間もあったことから、小学校に苦手な食材の情報を伝えて私なりに準備をしておきました。Upload By ウチノコところが学校生活が始まると、親の心配もなんのそので、給食楽しみ!と話すむっくん。特に困ることもなく日々給食の時間をエンジョイしている様子。だけどメニューには時々苦手な食材もちらほら記載されています。いったいどうしているんだろう?と不思議に思い、聞いてみたところ「苦手なものはお兄ちゃん(情緒障害児学級なので上級生とも同じクラスです)が食べてくれるんだよ」とニコニコ。いったいどういうこと?Upload By ウチノコ小学校の取り組みむっくんのクラスでは給食で苦手な食材が出ると、それを食べられる子が代わりに食べてくれるという、助け合いシステムが機能しているらしいのです。クラス皆で協力して完食することが目標!実際に給食の時間にはこういった流れで協力が行われています。①先生が今日のメニューと食材を皆に伝える②苦手な食材がある場合、食べられないものを皆に伝えるUpload By ウチノコ③食べられる子たちで協力して、クラスメイトの苦手食材を振り分ける④それぞれに食べられる量だけ配膳するUpload By ウチノコ⑤クラス皆で協力して完食Upload By ウチノコむっくんのきらいなきのこ類は、きのこ好きの上級生が食べてくれる。むっくんはその代わり、その子の苦手なピーマンや納豆は食べてあげているそうで「オレも役に立っているんだよ!」と嬉しそうに笑います。食べられなかったことよりも、人の役に立った楽しい思い出として、給食の時間が記憶に残っている様子でした。Upload By ウチノコむっくんの変化また、今までは見慣れない食材や初めて食べる食材、一度嫌な思いをした食材などに挑戦する姿が見られなかったむっくんですが、小1の夏ごろから今まで興味を示さなかった食材に、興味をもつ様子が出てきました。そして、思い立ったように今まで吐くほど苦手だった食材に挑戦したいと言い出したのです!Upload By ウチノコ少しかじってみる程度ですが、今までの姿からは考えられないような変化です。これは給食でみんなの苦手な食材や得意な食材を見聞きし、どんなものなんだろう?と、興味の幅が広がったからではないかと感じています。最近大好きになった食材は納豆。実は納豆はクラスの憧れの上級生の苦手食材。納豆を食べるたびに自分がお兄ちゃんを助けたのだと話してくれます。むっくんにとって、納豆は少し背伸びして、上級生に近づけたように感じられる食材のようです。Upload By ウチノコ給食を成長の場にこの小学校の取り組みを知ったとき、チームで完食ってなんて素敵なんだろう!と感動しました。少人数の情緒障害児学級だからこそ、できることなのかもしれませんが、配膳前に話し合うことで自分にできるかどうかを考える計画性を身に付ける場になるほか、自分の気持ちを皆の前で話す訓練にもなっています。高学年になると低学年の手前、苦手でも少し格好をつけて食べようとする様子が見られたり、低学年にとってはいつも助けてくれる上級生にお返しができる滅多にないチャンスになったり。助けてもらって、助けてあげて。それぞれが苦手を得意で補い合い、目標を達成する。とても素敵な経験をさせてもらっているのだなぁと感じました。Upload By ウチノコその経験があるから、むっくんも食べることへの嫌悪感が減り、新しい食材にも興味が出てきたように感じています。苦手をなくすのではなく、周りに助けてもらいながら苦手とうまく付き合っていく。何事も発想次第で成長のチャンスになるということを小学校から学ばせてもらいました。私ももっと頭を柔らかく物事を考えていきたいなと思います。本当に感謝です。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年01月29日神経発達症のある子どもとメラトベルメラトベルは、6歳から15歳までの神経発達症(主に自閉スペクトラム症)のある子どもに対して処方される薬です。6歳未満および16歳以上の患者への安全性は確立されておらず、それらの年齢の人には保険診療で処方できない薬です。また、新薬のため令和3年5月末までは2週間分しか処方できません。神経発達症のある子どもは、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めてしまうなどの睡眠障害で悩むことが少なくありません。睡眠障害に伴う睡眠不足は、神経発達症の多動や過活動、興奮状態、怒りっぽいといった症状を強めることもあり、日中は目覚めていても眠気が強く集中力を欠いてケガの元になることもあります。しかし、夜になると元気になり、興奮状態に陥り眠れず、近年では電子メディアを見ることで光(ブルーライト)が目に入り、余計眠れなくなるという悪循環に陥るケースも増えています。メラトベルの有効成分であるメラトニンそのものは、海外ではドラッグストアなどで購入可能ですが、これまで日本では神経発達症のある子どもの睡眠障害に対する医薬品は承認・販売されていませんでした。そこで、ノーベルファーマ株式会社が2013年から同剤の臨床試験を開始。2020年に販売が開始となりました。どのような仕組みで睡眠に効果があるの?メラトベルの成分は、身体のなかで分泌するメラトニンというホルモンです。メラトニンが作用することで眠くなるのです。そもそもメラトニンは、脳のなかの松果体でつくられるホルモンで、概日リズム(サーカディアンリズム)の調節をする働きをし、眠りを促す作用があります。メラトニンの分泌は、視覚で感じる明暗の周期によってコントロールされており、血液中の濃度は午後のおやつ時と夜間に高くなるといわれています。その時間帯は眠気が出るため居眠り運転等による交通事故が多いというデータもあります。メラトニンはパイロットやCAなど時差のある職種で時差ボケを防ぐ目的としても用いられています。人間は朝陽を浴びることで視交叉上核にある体内時計がリセットされ、そのおよそ15時間後にはメラトニンが分泌され眠くなる(睡魔)というリズムがあります。夜にメラトニンが分泌されて眠くなると子どもの手は熱くなり、体内から熱を放出することで体温を下げて眠りの準備に入るのです。メラトニンは光によって抑制されます。子どもが夜眠くなっても親と一緒にTVやゲームなどの電子メディアを見続けることによって脳が目覚めてしまい、その結果、入眠時刻の遅延が生じ、概日リズム(サーカディアンリズム)が乱れるというケースも増えています。リズムが乱れることで子どもは興奮しやすく、怒りっぽくなることもあります。6歳から15歳の自閉スペクトラム症に伴う睡眠障害のある子どもに対して行った臨床試験の結果、メラトベル投与2週間後の電子睡眠日誌による記録で、寝床に入ってから眠りにつくまでの時間(入眠潜時)が短縮し、統計学的に有意であるということが認められました。メラトニン | 厚生労働省 e-ヘルスネット使用方法・用量は?メラトベルの使用方法・用量は以下の通りです。・使用開始:0.5g(メラトニン1mg)・用法:1日1回就寝前・最高用量:2g(メラトニン4mg)※新薬のため令和3年5月末までは2週間分しか処方できません。メラトベルは、6歳から15歳までの子どもに処方される薬です。用量は0.5g(メラトニン1mg)から2g(メラトニン4mg)までです。最初の処方時には、0.5g(メラトニン1mg)から使うことが基本となっています。3ヶ月程度経過したら継続投与するかどうか再評価していきます。※SSRI(セロトニン再取り込み抑制剤)とは一緒に服用することができません。服用するタイミングは就寝前(寝たい時間の直前)です。食事と同時や食事直後の服用は、最高血中濃度が低下する事例が臨床試験において確認されているため、避けることが望ましいです。メラトベルの副作用や注意点国内での臨床試験で確認された主な副作用は、傾眠4.2%、頭痛2.6%、肝機能検査値の上昇が1.3%でした(308例中)。メラトベルは比較的副作用が少ない薬ですが、起床後も眠気が続いたり、めまいがしたりといった症状が副作用として出る場合があるので、保護者が子どもの活動内容などについて、十分に配慮する必要があります。メラトベルを服用しているあいだは、高いところに登るなどの遊びや行動、自転車などの運転にも注意を払った方が良いでしょう。また、小学校高学年以上の年齢の場合には、危険性の高い電動工具などの機械操作は避けるようにしてください。思わぬ事故につながる可能性があります。また、一度眠った後に起床して何かをする予定があるときは、服用をやめることが必要です。副作用として気になる症状が出た場合には、早めに医師に相談し、服薬量の調整や、場合によっては服薬の中断や薬の変更なども含めて、指示を仰ぎましょう。また、睡眠障害改善のためには、薬だけに頼らず、併せて生活習慣を見直していくことも大切です。小児の睡眠障害の治療では、睡眠習慣に関する指導が重視されています。前述のように、メラトニンは昼間の分泌は少なく、夜間に多く分泌されることで、眠りへと導いてくれるものです。昼間に太陽の光をたくさん浴びて活動しておくなど、基本的なことが安定した睡眠のためにとても重要です。心がけたい項目は以下のものです。・朝の日の光を浴びる・朝ごはんを食べる・昼間、体を動かす・夜は早く寝る、寝る際には部屋を暗くする(常夜灯も消す)メラトベルの臨床試験でも、服薬と合わせて睡眠習慣に関する指導が行われています。このように生活習慣を整えながら、そのうえで睡眠が改善されなければ治療方法を医師と検討していきましょう。他の睡眠導入剤との違いメラトベルは、前述した通りメラトニンを成分とした薬です。2010年から発売されていたロゼレムは、メラトニン受容体に作用する薬です。メラトベルは体の中でつくられる「メラトニン」そのものが有効成分なので、より自然に作用し、睡眠を促してくれるといえます。安全上、受容体作動薬は小児にはまず適応されません。また、ロゼレムは本来大人用の薬ですが、メラトベルは6〜15歳の子ども用の薬という特徴もあります。さらに、メラトベルは自閉スペクトラム症やADHDなどの神経発達症のある子どもにのみ認められている薬です。それ以外の子どもの睡眠導入剤としては処方されていません。神経発達症に関わらない子どもの不眠症に対してはわずかに入眠を改善するという報告のみで、処方対象になっていないのです。まとめ今回は2020年6月に発売された、6歳から15歳までの神経発達症のある子どもに対して処方される入眠改善薬『メラトベル』をご紹介しました。これまで、自閉スペクトラム症などの神経発達症のある子どもの睡眠障害については数多く報告されていたものの、その症状を改善する薬はこれまで日本では販売されていなかったのです。2019年には小児神経学会から「神経発達症に伴う睡眠障害に対するメラトニンの早期承認」についての要望書が厚生労働省に提出されるなど、メラトニンの有効性に対しては以前から大きな期待が持たれていました。メラトベルが発売されたことで、神経発達症のある子どもの睡眠障害が改善され、またその家族のQOLが向上することも期待されています。治療薬の選択は主治医と相談のうえ、主治医の指示に従ってください。また、睡眠障害には薬だけでなく、生活リズムを改善することも重要です。子どもの特性に合わせてできるだけ、家族がサポートをしつつ生活習慣を整えることも大切です。参照:メラトベル顆粒小児用 0.2% に関する資料 | ノーベルファーマ株式会社
2021年01月28日