『ろくでなし』を歌いながら鼻にグリーン豆を詰めて客席に飛ばす芸を得意とする、もっともコロナ禍に向かない芸人・梅垣義明(61)。そんな芸風の梅垣がコロナ禍に『梅ちゃんの新春シャンソンショー2021』を開催する。どんなネタを披露するのか?梅垣と今回ショーの構成・演出を手掛ける作家のすずまさ氏(60)に、インタビューマン山下が話を聞いた。ーーコロナ禍での開催となりますがどんなネタをやろうと考えているんですか?梅垣「いつものショーだったら客席に降りて鼻に詰めた豆を飛ばしたりするんですけど、飛沫感染の恐れがあるので今回はできないんですよ。だからネタを再構築しようと思って過去30年のネタのVTRを見直しました」ーー前回8月にもライブをやってますが、その時の対策はどうしたんですか?すずまさ「舞台と客席に透明のビニールシートで仕切りを作って完全に分けちゃいました。それを刑務所の面会という設定にしてやりました」ーー今回もビニールシートはあるんですか?梅垣「今回はないですが客席には降りません」すずまさ「後はお客さんに安心して見てもらうためにショーが始まる前にPCR検査を毎回やろうと思ってます。それで『今回検査して梅垣義明は陰性でしたので安心して見てください』とお客さんに伝えようかなと思っています」ーー今回『鼻から豆飛ばし』を見られないのは残念ですね。梅垣「豆飛ばしをやるとしても、違う見せ方をしないと……」ーー梅垣さんのネタで吹くと伸びるピロピロ笛を鼻に刺して吹くネタがありますが、あれは飛沫に関しては大丈夫じゃないですか?すずまさ「鼻笛は大丈夫でしょうね(笑)。お客さんに届かないので」梅垣「でもはっきり言って鼻笛はたいしたネタじゃないから、恥ずかしいから記事に書くのを止めてください(笑)」ーーいや面白いじゃないですか! 客席に降りるネタは今回できないですからね。すずまさ「そういうネタが80%から90%なんですよ」ーーほぼできないじゃないですか! 例えば物干し竿に掛けた布団を梅垣さんが背負って、布団たたきでたたくと布団から粉が舞うネタがあるじゃないですか。粉は問題ないと思うので粉もんのネタはやれるんじゃないですか?梅垣「粉もん? うどんじゃないんですから(笑)。あのネタは客席に降りるからできないんで違った形で粉もんは考えます」ーーお願いします。後はペニスケースを付けるネタはできますね。すずまさ「何、ネタを選別してるんですか(笑)。あれは飛沫はないので確かにできますけど」梅垣「とにかく客席に降りないでも自己完結できるネタを新しく作ったり、昔のネタを変えてみたりしようと考えてますね」ーーコロナ禍でもできるネタを選んだり、作ったりするのは大変ですね。梅垣「そうなんですよ。例えば『ラ・ヴィ・アン・ローズ』という曲を歌いながらお客さんの顔にサランラップを巻いて僕がお客さんにキスをするネタがあるんです。あれって飛沫は大丈夫なんですが、見ている方は『この時期にこんなことをするの?』っていうのが心理的にあると思うんですよ。『だったらやめよう』と。やっぱりお客さんがリラックスして楽しんでもらえる状況を作りたいので」ーーそもそも歌いながら豆を飛ばすネタはどうやってできたんですか?梅垣「最初は歌だけだったんですよ。でも誰も聞きやしませんから。それで演出家の喰始さんが『歌が歌えるし、シャンソンが好きだったらシャンソン歌いながら、なんかやってみたら』って。だから歌いながら何かネタをやるという形を作ったのはうち(ワハハ本舗)の喰始です。豆のネタも喰さんが『鼻に豆を詰めて飛ばすネタができるんじゃないの?』と言われたんですよ。最初、俺は『そんなに面白くないな』と思ったんだけど、やったらウケたもんだからやり始めたんです」ーー最初は梅垣さんはピンと来てなかったんですね(笑)。過去にネタで大変だったことはありますか?梅垣「『豆飛し』のネタは豆を左右の鼻の穴に4個ずつ入れて、それをいっぺんに飛ばすんですけど、豆が鼻の中に残ることもあるんです。鼻の中にも階段でいう踊り場みたいなところがあって、そこに豆が入っても呼吸はできるんですよ。1週間後ぐらいに出て来たこともあってネタじゃなくて、本当にグリーン豆が真っ白になってました。後は『徹子の部屋』(テレビ朝日)に出た時に徹子さんから『あなたは豆を飛ばす鼻のプロなんですから』ってよくわからないことを言われて。『小銭は鼻に何枚入りますか?』って。『そんなこと振ってくんのか』とびっくりしましたね(笑)」ーー豆と比べて小銭はかなり大きいので大変だったんじゃないですか。梅垣「最初に50円玉を入れて、次に10円玉と順番に入れると徹子さんが『素晴らしい。プロですね』って拍手してくれて。それで小銭を出してトークに入ろうと思ったら、1番奥の50円玉が入って取れないんですよ。だからしょうがないからそのままトークしてたんですけど、僕が笑うと50円は穴が開いてるからピーと音がするんですよ(笑)」ーー駄菓子のフエガムみたいなことですね。梅垣「その音に徹子さんが反応してくれなくて、何にも拾ってくれないんですよ。結局、最後まで鼻に50円が入ったままやって『今日はありがとうございました。ピー』ってなってました(笑)」ーー今後やりたいことなどありますか?梅垣「舞台は皆さん年をとるとやらなくなるじゃないですか。時間も労力もかかりますから。でも僕は舞台が好きなんで、ずっと続けて行きたいなと。後、豆も鼻から飛ばし続けます!」【INFORMATION】『梅ちゃんの新春シャンソンショー2021〜客席が恋しくて、冬〜』大阪:松下IMPホール1/9(土)開演18:00、1/10(日)開演14:00東京:シアターサンモール2/27(土)開演18:00、2/28(日)開演14:00詳細はWAHAHA本舗:03-3406-4472【PROFILE】取材・文:インタビューマン山下1968年、香川県生まれ。1992年、世界のナベアツ(現・桂三度)とジャリズム結成、2011年に解散。同年、オモロー山下に改名し、ピン活動するも2017年に芸人を引退。現在はインタビュアー・お笑いジャーナリスト
2020年12月31日ワハハ本舗の歌姫“梅ちゃん”こと梅垣義明が7月で60歳を迎えるのを記念して、『梅垣義明60還暦リサイタル!~本物のシャンソンが歌える年になりました~』を全国4都市で開催する。新作はもちろん過去のベスト版と、さらに劇場が敬遠する“禁断の秘蔵ネタ”を日替わりで解禁する。「みんな年齢を重ねるとバカなことをやらなくなるんだけど、やり続けた方がカッコいいんじゃないかなって」と梅ちゃん。過去発表した歌ネタは250曲以上。そこから今回は、越路吹雪の名曲『ろくでなし』を口ずさみながら、鼻の穴に詰めた豆を客席に飛ばす“殿堂ネタ”を筆頭に新旧10~12曲を厳選、2時間強のショーに仕立てる。「WAHAHA本舗PRESENTS 梅垣義明 60還暦記念リサイタル!~本物のシャンソンが歌える年になりました~」チケット情報「歌は上手いから心に響くかと言えば、そういう問題でもなくて。芝居と同じで技術だけじゃない、その人自身が問われるようなものだと思う。僕も60歳を迎えどんなものが滲み出せるのか。それは、お客さんたちに発見していただきたいんですけど(笑)」。舞台美術並みの質と量を誇る衣裳も見ものだが、過去にはそれが原因でお蔵入りしたネタも…。「加山雄三さんの曲『海 その愛』では、スルメイカの丸干しと昆布でできたドレスに、鰹節のストールを巻いて出たら、お客さんがドッと沸いて。自分も歌ってて楽しかったんだけど、劇場に臭いが残ってダメでした」。他にも『ケ・セラ・セラ』では、トレビの泉を模した噴水型の衣装で水を撒き散らし、観客も負けじと噴水にお賽銭を投げ入れ応戦(?)するなど、観客参加型の演出が持ち味。加えて、衣裳替えも舞台上で行い、出突っ張りでもてなすのが梅ちゃん流だ。「今は映像で場をつなぐ舞台もあるけど、僕はひとが一生懸命もがいて汗かいてる舞台の方が、観るのもやるのも面白いと思う。超アナログなことをやってます。ハイヒールで2階席まで駆け上がれるのも、お客さんの拍手や笑い声があるから。僕も乗せるし、お客さんにも乗せられる。そんな瞬間があると、いい舞台だなと思います」今回は喰始が監修に回り、新たにすずまさが構成・演出を務める。還暦を境に、梅ちゃんの新たな章の幕が開く。「子どもからお年寄りまでいろんな世代が一緒に笑えるのが、僕らの舞台のいいところ。僕自身、『これを見逃すともったいないな』と思いながら面白いことをやってるので(笑)。ぜひ初めての方にも、観に来てほしいなと思います」。公演は7月13日(土)から15日(月・祝)まで大阪・森ノ宮ピロティホール、7月19日(金)に東京・山野ホール、7月27日(土)、28日(日)に仙台・誰も知らない劇場、8月23日(金)に名古屋・ダイアモンドホールで上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年07月02日ワハハ本舗の“歌姫”こと梅垣義明が、昨年に引き続き単独公演を行う。その名も『梅垣義明60 還暦記念リサイタル!』。60歳を迎えた翌日から幕を開けるステージの詳細を掘り下げるべく、梅垣のもとに向かった。【チケット情報はこちら】シャンソン・ポップスといった定番曲の生歌に、過剰な“客席サービス”を盛り込むショーで知られる梅垣。越路吹雪がカバーした『ろくでなし』を歌いながら鼻から豆を飛ばすパフォーマンスが特に有名だ。しかし、今回のサブタイトルは『本物のシャンソンが歌える年になりました』。おなじみのネタを封印して美声のみを響かせるのか? そう尋ねると「年を重ねないとシャンソンは歌えない、みたいなステレオタイプへの皮肉」と笑う。そんな舞台を30年ほど務めてきた梅垣には、今や280近いネタが。この還暦記念リサイタルでは「昨年のベスト版で披露しなかったステージを届ける」と意気込み、「去年ご覧になった方も楽しめる内容」と予告。特に大阪では日ごとにネタを変え、東京では新宿コマ劇場でしかやったことのないネタを展開するという。還暦記念は演出家の変更にもおよび、今回は監修にまわった喰始に代わってワハハ本舗の設立メンバー・すずまさが登板。美空ひばり『悲しい酒』を歌いながらオムツに酒を注ぐ……といった“1曲あたりひとつのアイディア”とMCの繰り返しだった従来の構成を大胆に翻し、「後半戦はメドレーを投入してノンストップで歌う“波”を起こし、喋りなしで一気に突っ走る演出を模索しています」と構想を明かした。ピアニスト・田中大介とのセッションも予定されている。客席サービスに関しても、来場者全員に女性用パンティを配布して被らせた過去を引き合いに出しながら「開演の前後にも“非日常”の空間をつくることが僕の仕事」と語り、今回も同じような取り組みを行うことを匂わせた。どんなアイテムですか? と身を乗り出した筆者を制するように「言いませんよ!」と口を閉ざしながらも、梅垣は「ちゃんと剃ってありますから」と脇の下をチラ見せ。カメラの撮影を受け入れた。どのようなパフォーマンスが行われるのか、ぜひ会場で確認してほしい。公演は7月13日(土)から15日(月・祝)まで、大阪・森ノ宮ピロティホールにて。その後、19日(金)に東京・山野ホール、27日(土)と28日(日)に宮城・誰も知らない劇場、 8月23日(金)に愛知・ダイアモンドホールと巡演する。チケット発売中。取材・文:岡山朋代
2019年06月06日昨春の『ラスト』で全体公演に一旦終止符を打ち、充電期間に入ったワハハ本舗。実はその楽屋で、創立メンバー6名による新たなレーベル“完熟ワハハ”が始動していた。あえて客席数294のシアターサンモールを選んで5月末から上演される『太陽と恋とポッと出のベテラン』について、久本雅美と梅垣義明に話を訊いた。WAHAHA本舗PRESENTS 完熟ワハハ『太陽と恋とポッと出のベテラン』チケット情報柴田理恵の「年寄りだけでやってみない?」という提案に、久本、佐藤正宏、梅垣、すずまさ、なんきんが応じて誕生した“完熟ワハハ”。今回の公演のモチーフは、創立4年目の1986年に実際に起きたサンフランシスコ公演未遂事件だ。「生まれて初めてパスポート作って、お金も貯めていざ行こうってときになって、何だか怪しいぞって気が付いて止めたんです。それが案の定詐欺で。もし、あの時詐欺にひっかかっていたら……という設定はどうだろうか?とみんなで話しているところです。きっと劇団は解散になって、たとえば梅ちゃんは故郷でスナックやってたりとか、私はゆるキャラをやってるとか(笑)」と久本。主宰の喰始が「台本書きません。これからの役者は作家性がないと生き残れませんから」と宣言して以来、役者たちが話し合って作品を形づくるのがワハハスタイル。「あれが正解、これが不正解って自分たちで考えて、痛い目も見る。それが知らない間に自分の力になってたんだって、プロデュース公演をやってみて気付きました」と久本が話すと、梅垣も「外で仕事をするとワハハの良さがよく分かる。比べるものがあるから、30年ここにいられるんだと思う」と応じる。『太陽と~』のコンセプトを練るため、梅垣は1985年に下北沢ザ・スズナリで上演した第3回公演『底抜け』に目を通したという。「空気の密度が違うし、自分が桟敷席にいたらすごい緊張感だと思う。今でこそ僕ら、大きいホールでやらせていただいてますが、あんなにスマートでクールじゃないワハハもあるんですよ」。それを受けて「だから今回サンモールでやるんだもんね。ちょうどいいキャパだと思う」と久本。「せっかくだから、昔からのコアなワハハファンが“戻って来たね!”と思うようなことをやりたい、って私が言ったら、みんな乗ってくれました。50過ぎたおっちゃんとおばちゃんが(笑)、いよいよワハハの真髄をさらけ出しますんで、たっぷり味わっていただきたいです」公演は5月28日(水)から6月1日(日)まで新宿シアターサンモールにて。6月1日(日)16:00は追加公演。チケットは発売中。取材・文:山上裕子
2014年04月11日