新国立劇場2015/2016シーズンの主催公演ラインナップが発表された。演劇、バレエ、舞踊3部門の作品をお伝えする。新国立劇場バレエの公演情報まずは演劇8作品から。10月のシーズン開幕に中劇場で上演されるのは、スティーブン・ソンドハイム作曲の本邦初演ミュージカル「パッション」。新国立劇場は過去、「太平洋序曲」「INTO THE WOODS」と2本のソンドハイム作品を上演してきた。今回は芸術監督・宮田慶子の演出、井上芳雄、和音美桜、シルヴィア・グラブらの出演で、濃密な恋愛のドラマを舞台に刻む。続く11月の小劇場「桜の園」は、鵜山仁演出、田中裕子ほかの出演。王道のチェーホフ劇に期待しよう。12月の小劇場「バグダッド動物園のベンガルタイガー」は、気鋭・中津留章仁が演出する戦争テーマの硬質な米国ストレートプレイ。3月からの小劇場は鄭義信三部作の連続上演で、今回の目玉というべき企画だ。この作家が新国立劇場に書き下ろした「焼肉ドラゴン」「たとえば野に咲く花のように」「パーマ屋スミレ」の名作3つを改めて堪能したい。6月の中劇場「あわれ彼女は娼婦」はシェイクスピアと同時代の演劇で、兄妹の禁じられた愛の物語。こちらは栗山民也演出で。シーズンのラストは、7月の小劇場、別役実の新作書き下ろし、宮田慶子演出による「竹取物語~よみがえり篇~」(仮題)のタイトルが挙がっている。バレエは6作品はすべてオペラパレス。10月の新制作「ホフマン物語」は、芸術監督・大原永子の英国へのこだわりが香るピーター・ダレル振付の逸品。12月のおなじみ「くるみ割り人形」、1月の祭典「ニューイヤ・バレエ」を挟み、2月の新制作「ラ・シルフィード/Men Y Men」にも注目だ。前者はオーギュスト・ブルノンヴィルの古典的振付に大原永子が演出で参加し、この作品に関する深い知見を注入する。後者は昨年の「眠れる森の美女」に続く、ウエイン・イーグリングの振付が話題。5月は鉄板「ドン・キホーテ」。6月の「アラジン」では、前芸術監督デヴィッド・ビントレーの振付作品を再演する。ダンスは、10月小劇場の「近松DANCE弐題」で幕開け。以降は中劇場での公演が3つ並ぶ。3月の新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future 2016」、3月の平山素子「Hybrid―Rhythm & Dance」、6月の高谷史郎(ダムタイプ)「CHROMA」と計4公演を揃えた。
2015年01月23日人気ミュージカル『モーツァルト!』で2002年の初演以来、4回にわたり、主役のヴォルフガング・モーツァルト役を務めてきた井上芳雄。5度目の今回が主役として最後の出演となる井上に、現在の心境を聞いた。ミュージカル『モーツァルト!』チケット情報「最後といっても別に引退するわけではないですから(笑)。稽古では冗談で『芳雄先生、ここはどうでしたか?』と聞かれるぐらい僕にとっては居心地のいい作品。でも僕はひとつの場所に留まっているのはあまり良しとしない。15年間の役者人生の中ですべてを教えてくれた役ですが、新しいところに行くためには、何かを手放すことも必要だと思っています」。天才音楽家、モーツァルトの一生を青年ヴォルフガングと、彼の才能をつかさどる分身アマデのふたりで表現する。ヴォルフガングの父親との確執や、作曲家としての苦悩を力強い楽曲で描いた力作だ。「初演では、僕は経験も少ないし、ヴォルフガングみたいに激しい人生でもない、分からないことだらけで、なかなか彼に共感できなかった。でも今は、天才ではないけれど、表現者の苦しみは分かりますし、何か運命に導かれてここまでやってこられたと思う。それに、人生が思い通りにいかなかったり、良かれと思ってやったことが裏目に出たり、現状と戦うことは多い。前よりも、今はずっと彼に共感できますね」。井上も35歳で亡くなったモーツァルトと同じ年を迎えた。「モーツァルトは神に愛された人で幸福だけど、同じ分だけの不幸もあったはず。その振れ幅が激しいだけで、結局は凡人である僕たちの人生と変わらないかもと思うんです」初演からモーツァルトの父、レオポルトを演じ、病気で療養していた市村正親が本作で復帰するのも注目だ。「以前よりお元気です。市村さんのすごいところは心のありようと若さ、そのエネルギーですね。『モーツァルト!』でオファーがきたとき、父親役ではなく、ヴォルフガング役と思っていらっしゃったぐらいですから(笑)。今回で辞めると言った僕には、またリターンしろと言って下さっています(笑)」今やミュージカルは井上にとって「運命の相手と結婚しているようなもの」だという。「別れ話も出ていないですし、結婚生活は順調です(笑)。でも、子供ができて、親も年を取り役割が大きくなった。法事を取り仕切る長男の感じですね(笑)」。その結婚相手との幸福な時間をじっくりと見届けたい。ミュージカル 『モーツァルト!』は1月15日(木)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて上演中。チケットは発売中。取材・文:米満ゆうこ
2015年01月07日“ミュージカル界のプリンス”と称され、その歌声に定評のある俳優・井上芳雄が『アナと雪の女王』の「Let It Go」など、ディズニーの名曲をカバーしたアルバム『井上芳雄・ミーツ・ディズニー ~プラウド・オブ・ユア・ボーイ~』を発売した。それを記念し、2月18日(水)に一夜限りのコンサート「YOSHIO INOUE sings Disney ~One Night Dream!」を開催する。本公演にかける思いを井上が語った。「YOSHIO INOUE sings Disney ~One Night Dream!」の公演情報本アルバムは、井上が自身の好きな曲を中心に選曲。普通のカバー曲集ではなく「ひとつの物語が感じられるような内容にしようと思い、作った」という。2部構成となるコンサートの第1部では、それをいかしストーリー仕立てで贈る。「最初はCDだけの話でしたが、その物語を舞台上で、生のお客さまの前でやれるのは、さらに面白いと思いました。CDにはブックレットが付いていて、曲と曲の間にちょっとした台詞が挟み込まれています。その台詞を自分で声に出して読んで、お客さまに届けたい」。第2部では、スペシャルゲストとして坂本真綾を招く。「デュエットはもちろんありますが、真綾さんの声でこの曲を聞きたいと僕からリクエストしているものもあるんです」。さらに「ディズニーは、舞台のミュージカルもたくさん作っているので、その魅力もお届けできればと思っています。『美女と野獣』にしても『アラジン』にしても、アニメには入っていないけれど舞台版にはあるナンバーも結構多い。あとは『アイーダ』のようにアニメにはないミュージカルも存在するので、いわゆる映画のディズニーファンの方も知らないかもしれない曲も聞いていただけるんじゃないかな」と意欲を燃やす。もともと新譜が出るたびに「日本版が出る前に、輸入盤を買っちゃいます。どんな音楽で、どんな作曲家で、どんな人が歌ってるんだろうとすごい気になります」というディズニーミュージカルのファン。その魅力を「独特の高揚感、幸福感みたいなものがありますよね」と分析する。「夢と魔法の世界を作って、それを守っていくには本当に努力が必要なんだと思います。ここまで徹底して作るからお客さまが入り込んで、こんなにも熱狂するんだということがすごくよくわかって勉強になりました」「ディズニーの力を借りて、タイトルどおり、一夜限りの夢ではありますが、できるだけ極上の夢を見られるような時間にしたいなと思っています」と井上。壮大なファンタジーの世界を、歌を中心に舞台でどう表現していくのか、期待が膨らむ。公演は2月18日(水)に東京国際フォーラム ホールAで上演。
2015年01月05日現在、東京・帝国劇場にてミュージカル『モーツァルト!』が上演中だ。人気のウィーン産ミュージカルで、日本でも2002年の初演から5回目の上演となるヒット作品。今回は主人公ヴォルフガング・モーツァルトを日本初演から演じている井上芳雄のファイナル公演であることも話題。その、“ラスト・ヴォルフガング”に挑んでいる井上に現在の心境を聞いた。ミュージカル『モーツァルト!』]チケット情報作品は、天才音楽家・モーツァルトの波乱に満ちた生涯を綴った物語。2002年の初演時、23歳の井上にとっては初めてのタイトルロールだった。「自分のような若造が真ん中に立っちゃってすみません…という気持ちでした。ただ正直、主役のプレッシャーを感じるどころではなく、自分がこの役をやることで必死。力の抜き方もわからず、全力でやっていました。自分は技術も経験も役に付いていっていないけれど、せめてとにかく必死にやっていることだけは、自分がヴォルフガングをやる意味があるんじゃないかと思ってやっていたんです」と井上は当時を振り返る。また、短い生涯を周囲との軋轢の中激しく駆け抜けたこの天才の人生は、「そこまで幸せな人生を送ってきた」という井上には非常に遠いものに感じていたともいう。「ぜんぜん自分にはない要素ばかりの役だと思っていた。今も決して、僕が何もしないでもそれに見える役ではないと思うんです。でもやっぱり自分なりの積み重ねによって、今はものすごくヴォルフガングとの距離が近く感じているんです。ヴォルフガングになるぞ! 演じるぞ! という力みはほとんどない。僕も彼のことで理解できないこともあるんですよ。でもすべてわかってるフリをしてやるというより、台本に書いてあるそのままを、自分を通してやっている感覚です」。そう話す井上のヴォルフガングは、確かに自然体で舞台上に存在している。「今、すごく充実していますし、すがすがしい。宝塚の方の退団公演はこんなかんじだろうと思うくらいです(笑)」。彼の俳優生活に寄り添うようにあった本作は「俳優として色んなことを教えてくれた作品」という存在だが、モーツァルトが生涯を終えたのと同じ35歳になった今、井上はこの役を卒業する。「『モーツァルト!』だって最初はどうなるかわからないまま始めて、これだけ大きくなって愛されてきた。そういった、次の新しいスタンダード・ミュージカルを生み出す現場に関われたらいいですね」と俳優としての次の目標を語った井上。華も実力も、そして気力も蓄え、俳優として充実期に入っている彼のこと、おそらくその夢は遠からず叶えてしまうに違いない。だがまずは“井上ヴォルフガング”が伝説になってしまう前に観ておくことをおすすめする。なお、ヴォルフガング・モーツァルト役は山崎育三郎とのWキャスト。12月24日(水)まで帝国劇場にて上演中。その後1月3日(土)から15日(木)まで梅田芸術劇場 メインホールにて上演。チケットは発売中。
2014年12月11日現・六本木ブルーシアター(東京都港区六本木五丁目11番12号)が2015年1月1日より、Zeppライブなど8社による共同運営で新たに「Zeppブルーシアター六本木」としてオープンする。同事業に参画するのは、Zeppライブをはじめ、パルコ、トリックスターエンターテインメント、クリエイティブマンプロダクション、ディー・バイ・エル・クリエイション、エンタテインメントプラス、ローソンHMVエンタテイメント、ぴあの8社。8社は、それぞれの得意分野を活かしつつ連携、新しいライブ・エンタテインメントの創出を目指し、ロングラン公演を中心に8社のレパートリーを含めジャンルにとらわれないコンテンツの企画、制作、招聘等を行っていくという。現時点で決定しているのは以下の4公演。『LOVE LETTERS(ラヴ・レターズ)』公演期間:2015年1月10日(土)~12日(月)出演:久保田悠来×映美くらら他ミュージカル『薄桜鬼』藤堂平助 篇公演期間:2015年1月17日(土)~25日(日)出演:藤堂平助:池田純矢、雪村千鶴:田上真里奈/土方歳三:井澤勇貴、沖田総司:廣瀬大介、斎藤一:橋本祥平、原田左之助:五十嵐麻朝、永倉新八:宮崎秋人、近藤勇:井俣太良(少年社中)、山南敬助:味方良介、山崎烝:高崎翔太/天霧、九寿:郷本直也、不知火匡:柏木佑介、雪村綱道:江戸川萬時、千姫:柳田衣里佳/風間千景:鈴木勝吾、六本木康弘、横田遼、遠藤誠、菅原健志、岩崎大輔、吉田雄希『正しい教室』公演期間:2015年3月21日(土)・22日(日)作・演出:蓬莱竜太出演:井上芳雄他WRECKING CREW ORCHESTRA(レッキンクルー・オーケストラ)『DOOODLIN’』(ドゥードゥリン)公演期間:4月3日(金)~4月12日(日)出演:WRECKING CREW ORCHESTRA(レッキンクルー・オーケストラ)今後のラインナップにも期待が高まる。
2014年11月28日ミュージカル『モーツァルト!』が11月8日、東京・帝国劇場にて開幕した。ウィーン発、日本でも上演を重ねる人気作。主人公のヴォルフガング・モーツァルトは、ミュージカル界のプリンス、井上芳雄と山崎育三郎のWキャスト。同日、開幕を目前に控えた出演者が意気込みを語った。ミュージカル『モーツァルト!』チケット情報2002年の日本初演から主役を務める井上は、5回目のヴォルフガング。この役を演じるのは今回がラストと公言しているが、「今回で卒業させていただきますが、“このメンバー”で作品を作るというのはいつも同じく“最後”だと思い、毎回演じています。(この顔ぶれでやることの)毎日が特別で、奇跡が起きていることだと思って演じたい」と語る。一方で山崎は、2010年公演に続き、2度目のヴォルフガング。「前回は本当に緊張で終わってしまったような感覚。あれから4年経って、いろんな経験をさせていただいた今の自分が、すべてを出し切って出来るヴォルフガングを演じたい」と意気込みを語った。ヴォルフガングの父・レオポルトを演じる市村正親は、この作品が胃がんの手術後の復帰第1作となる。「もう一回舞台に立てるのかと思うと、なんとも言えない気持ち。非常に感動。今は新人のようにドキドキしています。自分にこういう気持ちがあるんだな、まだまだ私もウブだなぁ」と笑顔で挨拶をするも、共演者たち、さらに記者たちからも復帰を祝う拍手が起こり、目頭を押さえる一幕も。「劇場に来てくださる方、今までずっと応援してくださっていた方に、帰ってきたぞと、元気な姿を見せたい。もちろん今日の初日は妻(篠原涼子)と上の子も観に来ますが、静かに支えてくれたので、その期待にも応えたい」と感謝の気持ちを口にしていた。市村の復帰を共演者たちも喜ぶ。井上は「稽古場に市村さんがいてくださるというだけで、全然雰囲気も違います。この『モーツァルト!』では12年間ずっとお父さん役を演じられていますので、やっぱり市村さんがいてくださらないとこの作品は始まらない。さらに以前より元気にエネルギッシュになって帰っていらしたので嬉しい驚き。市村さんの中はどうなっているんだろう?と思うくらい」と話し、山崎も「演出家の小池(修一郎)先生に、本当の親子のように見えたと言われたのが本当に嬉しかった。市村さんに気持ちをガッツリぶつけて今回のステージを務めたい」と感無量の面持ちで語っていた。共演は花總まり、平野綾、ソニンほか。公演は12月24日(水)まで帝国劇場にて、その後2015年1月3日(土)から15(木)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて行われる。チケットは発売中。
2014年11月10日11月8日(土)より東京・帝国劇場にて上演されるウィーン生まれのミュージカル『モーツァルト!』。『エリザベート』『レディ・ベス』など人気作を次々と生み出している、ミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイの手による作品だ。日本では2002年の初演より上演を繰り返し、今回で5回目の上演となる。10月初旬、この稽古場を訪れた。『モーツァルト!』チケット情報はこちら台風一過の青空が晴れわたったこの日、稽古場にはキャスト全員が初めて顔を揃えた。花總まり、平野綾、ソニン、春野寿美礼といったニューフェイスもいるが、メインキャスト、アンサンブルとも初演から続けて出演している顔ぶれも多い。実力も安定感もあるキャスト陣に、演出の小池修一郎も「素晴らしいキャストでまたこの『モーツァルト!』をできることを本当に嬉しく思います。千秋楽までみんなで頑張っていきましょう」とひと言。その簡潔な挨拶に、演出家と出演者の間に確かな信頼が見える。その空気の中で行われたのは、「本読み」と呼ばれる、椅子に座って脚本を読み進めていく作業だ。だがその内容は言葉からイメージする以上に充実。セリフのみならず、流れに沿ってキャストは歌も歌えば、すべてではないものの音響も入る。そんな中、初演より主役のヴォルフガングを演じる井上芳雄は、自らの才能に自信を持ち奔放にふるまう反面、才能と自分自身の間で葛藤し苦しむひとりの青年をいきいきと演じる。ところどころアドリブも飛び出すのがさすが。何よりも、その身体から解き放たれる自在な歌声は、音楽の天才・モーツァルトを体現するかのよう。1幕ラストを飾るビッグナンバー『影を逃れて』は、まだ舞台本番まで1ヵ月あるとは思えない圧巻の熱唱だ。アンサンブルの熱量も素晴らしく、Wキャストでヴォルフガングを演じる山崎育三郎も作品に入り込んでしまったのか、一緒に口を動かす姿も見られた。そのほかにもおなじみのキャストが多いカンパニーだ。ヴォルフガングの父・レオポルトは初演から変わらず市村正親。市村は本作が病気療養からの復帰作となる。すでに稽古場でも豊かな歌声を響かせ、父親の厳しさと愛情を醸し出している。さらにやはり居るだけで場が引き締まるこの人の存在は、父と子の物語でもあるこの作品に欠かせないと改めて感じた。コロレド大司教を演じる山口祐一郎も時に憎らしく、時に愛らしい、彼ならではの役作りで作品を盛り上げる。一方で花總、ソニンといった初参加のキャストも、すでにキャラクター造形が出来ているようで、魅力的な横顔を見せていた。まだまだ稽古はこれからだが、この美しい楽曲揃いの作品、その命とも言える歌の魅力を存分に堪能できそうな充実のキャスト陣。2014年版の『モーツァルト!』も期待大だ。公演は11月8日(土)から12月24日(水)まで東京・帝国劇場、2015年1月3日(土)から15日(木)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて行われる。チケットは発売中。
2014年10月17日10月4日、金沢21世紀美術館 市民ギャラリーAにて「特別展 ガウディ×井上雄彦 -シンクロする創造の源泉-」がスタート。初日の開場式には井上雄彦も登場し、自らの手でテープカットを行った。「特別展 ガウディ×井上雄彦 -シンクロする創造の源泉-」は、7月から約2か月にわたり東京・森アーツセンターギャラリーで開催され、その斬新な内容が好評を博した展示会だ。19世紀末~20世紀初頭のスペインで活躍した建築家アントニ・ガウディと、現代日本を代表する漫画家である井上雄彦。時代も、国も、バックボーンも違うふたりを組み合わせる、いまだかつてないアイデアが大きな話題となった。金沢展は東京展に続いての2会場目。実物を含む資料約100件、井上による描きおろし作品約40点と、基本的な作品数は同じだが、ギャラリーの規模や環境に合わせ井上自身が若干のアレンジを加えている。展示レイアウトはもちろんのこと、作品と作品の間にある白壁に注訳やイラストを加筆。こちらは金沢展オリジナルの内容も含まれる。井上雄彦という稀代の漫画家を組み合わせることで、アントニ・ガウディの創作の原点にまで光を当てることに成功した本展。展示会の今後も感じる「特別展 ガウディ×井上雄彦 -シンクロする創造の源泉-」は、11月5日(水)まで金沢21世紀美術館 市民ギャラリーAにて開催される。ぴあ中部版WEBでは、井上雄彦へのインタビューを含めた初日レポートが掲載中なので、こちらもチェックしてみよう。■「特別展 ガウディ×井上雄彦 -シンクロする創造の源泉-」会期:開催中 ~ 11月5日(水)10:00~18:00会場:金沢21世紀美術館 市民ギャラリーA料金:前売券/大人-1,100円・中高生-800円・小学生-600円※入館は閉館の30分前まで。会期中無休。未就学児童無料。
2014年10月16日咽頭がん治療のため4月から演奏活動を休止していた指揮者の井上道義が、10月2日、活動復帰記者会見を東京芸術劇場で行った。「井上道義」の公演情報「今はまるで生まれ変わったような気持ち」と語る井上道義。闘病中は喉の痛みや咳、不眠などとても音楽を聴く心境ではなかったという。「本当に辛いときは音楽は全然助けにならない。それよりもどうしたら咳が止むか、眠れるのか必死だった」と過酷な闘病生活を打ち明けた。「この場に戻ってこられたのは、たくさんの人たちの温かい応援があったから」と、オーケストラやファン、友人から贈られた千羽鶴や寄せ書きを紹介。「どう生きていくか。改めて自分の使命について考えさせられた。これからはひとつひとつをもっと大切に考えたい」と真剣な面持ちで語った。治療の経過は順調で、7月の退院後はリハビリテーションに努めている井上道義。復帰後初の公演は、10月11日(土)に鎌倉芸術館でNHK交響楽団、ヴァイオリニストの前橋汀子と共演する。また、今後は「大きな生きがい」と語る新曲の創作活動に加え、演出家・野田秀樹と共に手がけるオペラ『フィガロの結婚』(2015年に10都市13公演を予定)の準備にも取り組むという。<井上道義 今後の公演スケジュール>■NHK交響楽団 井上道義×鎌倉芸術館「いざ、鎌倉への道」Vol.410月11日(土) 鎌倉芸術館 大ホール(神奈川県)■上田市交流文化芸術センター開館記念事業 NHK交響楽団上田公演10月12日(日) 上田市交流文化芸術センター 大ホール(長野県)■大阪フィルハーモニー交響楽団 第482回定期演奏会10月23日(木)・24日(金) フェスティバルホール(大阪府)■佐倉市民音楽ホール会館 30周年記念 東京交響楽団演奏会11月3日(月・祝) 佐倉市民音楽ホール■大阪フィルハーモニー交響楽団 マチネ・シンフォニーVol.1211月13日(木) ザ・シンフォニーホール(大阪府)■オーケストラ・アンサンブル金沢 ファンタスティック・クラシカルコンサート11月23日(日・祝) 石川県立音楽堂 コンサートホール(石川県)■新日本フィルハーモニー交響楽団 埼玉会館公演11月29日(土) 埼玉会館 大ホール(埼玉県)
2014年10月03日フランス映画の傑作を舞台化したミュージカル『シェルブールの雨傘』が、9月開幕した。2009年公演で主演を担った井上芳雄が、新たなヒロインに野々すみ花を迎えて挑む再演である。ミシェル・ルグランの音楽に乗せて歌声で全編を綴っていく名作について、井上が抱いた印象は「何度も繰り返し観たくなる、独特な色合い、湿度のようなものを持った作品」。ドラマチックな悲恋物語に5年ぶりに向き合う、今の心境を聞いた。ミュージカル『シェルブールの雨傘』チケット情報「前回はちょうど井上ひさしさんの音楽劇を経験した後で、芝居に関して多くのものを得たと感じていた時期でした。セリフも歌も、ただきれいな声を出せばいいだけじゃない。音楽ももっと自由でいいんだと気づいた後に、この『シェルブール~』に出会った。やっとセリフの面白さを感じ始めたのに、歌だけで物語を進めていくなんて…。自分が興奮して学んだことをどう生かせばいいんだ!という葛藤はありましたね。なので、叫ぶように歌ってみたり、語尾をセリフのようにしたり、いろいろ試しながら取り組んでいたと思います。全編が歌という特殊な形をしているぶん、“自分が音楽を導き出している”くらいの意識でやるのが理想かな。自分の感情の動きに合わせて音が出てくるような感覚で表現していければと思います」主人公の青年ギイは恋人のジュヌヴィエーヴと深く愛し合いながらも、戦地へと向かう。離ればなれになっていた2年の月日が、ふたりの運命を狂わせて……。幸せの絶頂にいるオープニングから、別れの悲しさ、その後の苦悩と決断など、ギイの感情の流れについて井上は「普通の男性の素直な反応として理解しやすかった」と振り返る。ただ一か所、ギイの選択に“自分ならどうするだろう…!?”と迷いが生じたのが、哀切ただようラストシーンだった。「一番最後こそがこの作品の核になっていて、観客の皆さんの心を震わせるシーンだと思いますね。でもどちらかが悪いのではなく、ふたりとも、一生懸命に生きた結果だと感じてもらえるように演じたい」前回公演からの5年の月日の中で、演技に対する意識が大きく変化し、今はそれが一巡してもとに戻ったところだそうだ。つまり、芝居をパートナーに例えると…。「最初はうまくいかなかったけど、そのうちうまくいき出して、やっぱり僕たち相思相愛だった、みたいな(笑)。でもちょっと待てよ、ホントにそう思っていいのか!?まだまだこの人のことを本当にわかってないぞ…と思い始めたのが今なんですよね。永遠にこの繰り返しかもしれないけど。だから今回の舞台も、もがき苦しむんじゃないかな」さらに井上は「もがきたい、と思う」と言葉を重ねた。前回以上に生々しい吐息をもらすギイの姿を期待せずにはいられない。「自分自身の思いが絶対にどこかに重なる、普遍的な物語です。ぜひ心を重ねに来ていただければと思います」東京公演はすでに終了。9月27日(土)から29日(月)まで大阪・サンケイホールブリーゼ、10月3日(金)から5日(日)まで愛知・中日劇場で公演。取材・文上野紀子
2014年09月26日(画像はニュースリリースより)「リポビタンファイン」の新しいテレビCMに、「井上真央」さんが登場!大正製薬株式会社は、テレビや映画でも活躍している「井上真央」さんを「リポビタンファイン」の新しいテレビCMに採用した。新しいテレビCM「ブランコ篇」は、全国で7月15日からオンエアされる。「リポビタンファイン」は2005年発売以来、たくさんの消費者から好評な「糖類ゼロ」のドリンク剤だ。井上真央さんは新CMポイントの「私の元気のつくり方」をもとに、日々積極的に元気よく生きる女性を表現している。また大正製薬が「井上真央」さんを採用したことについて、年齢に関係なく人気があることと、井上真央さん自身のキャラクターが新CMキャラクターにピッタリだったことが理由だという。井上真央さんはメイキングの映像の中で、「撮影はとても楽しくて、気持ちよかったです」(大正製薬株式会社 TVCMメイキングの映像より)とうれしそうに語っていた。新CMの内容は?空中でふしぎなブランコに乗りながら現実世界と抽象世界を行き来する、ピンク系の愛らしいドレスを身につけた井上真央さんが登場する。そして自由な気持ちで楽しそうにブランコをこぐ井上真央さんの姿を通して、「リポビタンファインを飲めば、無邪気な自分自身をオープンにできる」というメッセージが込められており、新しいCMを見ている視聴者が製品に興味を抱き、さわやかな気分で元気になれるようなCM内容に仕上げられている。【参考】・大正製薬株式会社 ニュースリリース
2014年07月23日スペインの建築家アントニ・ガウディ(Antoni Gaudi)と、「スラムダンク」「バガボンド」漫画家・井上雄彦のコラボレーション展「特別展 ガウディ×井上雄彦―シンクロする創造の源泉―」が、六本木・森アーツセンターギャラリーにて開催される。会期は7月12日から9月7日まで。ガウディは19世紀から20世紀に掛けてバルセロナを中心に活動。1882年に着工以来、今も作り続けられているサグラダ・ファミリアをはじめ、グエル公園、カサ・ミラなど、数々の独創的な作品を遺してきた。本展では、スペイン・カルターニャ工科大学の監修のもと、素描、設計図、模型、家具等、ガウディの偉業を振り返る貴重な資料約110点が展示される。また、ガウディに範を求めてバルセロナに赴き、「日本スペイン交流400周年事業」の親善大使にも任命されている井上雄彦が、鋭い観察力と創造力で“人間・ガウディ”像を描き下ろし表現する。2011年には『PEPITA 井上雄彦MEETSガウディ』(日経BP社)が出版されている。同展は今後1年を掛けて、金沢21世紀美術館、長崎県美術館、兵庫県立美術館、仙台(会場は後日発表)を巡回予定。【イベント情報】特別展 ガウディ×井上雄彦ーシンクロする創造の源泉ー会場:森アーツセンターギャラリー住所:東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー52階会期:7月12日から9月7日まで
2014年01月17日井上芳雄、浦井健治、山崎育三郎の3人によるユニットStarS。この結成は、間違いなく2013年演劇界のトピックスのひとつだろう。もともと、それぞれが現在の日本ミュージカル界を牽引する人気俳優だが、彼らがひとつに集まったパワーは凄かった。5月に行った1stコンサートは即日完売。デビューCDはオリコンウィークリーランキング7位にランクイン。ミュージカル界の枠を超えて注目を集めた。さらに11月には、ミュージカル俳優の単独公演としては史上初の日本武道館公演が控える。3人に現在の心境を訊いた。StarS武道館公演 チケット情報はこちら井上は5月のコンサートを「僕たちの予想を超える盛り上がりでした。アイドルみたいなことをやって、最初は「引かれたらどうしよう」とおっかなびっくりだったのですが(笑)。お客さんが楽しんでくれて、すごく幸せでした」と振り返る。そこで得た3人の絆もかけがえのないものになった。「舞台の共演では作れないような関係性が作れました。ふたりの姿を見て自分も頑張ろうと思えるし、常に“StarSの看板”も感じながらステージに立たなきゃと思います」(山崎)、「今まではなかなかミュージカル界で横の繋がりってなかったんですが、それをダイレクトに感じられました。それは今後の舞台にも生きてくると思います」(浦井)。もともとStarSは、3人が「ミュージカルの素晴らしさをもっと広めたい」という気持ちから始めたこと。その手応えは「僕は今『レ・ミゼラブル』の公演中なのですが、そこでも「StarSで知って、初めて舞台を観ました」という方もたくさんいらっしゃる」(山崎)と実感する一方で、「CDをリリースして、爆発的に売れて世間に広まったりしないかな、という期待もちょっとあったんですけど(笑)。そんなに簡単にはいかないですよね。でも逆に、ミュージカル、演劇のお客さんの力を感じました。気に入ったら何回も観に来てくれて、応援してくれる。そこが盛り上がっていれば、そこからまた、広がっていく」(井上)と、自分たちのホームグラウンドの温かさを改めて感じるきっかけにもなったようだ。武道館公演は、そんなファンへの感謝の気持ちでもあるという。「やっぱりこれだけ盛り上がったら一発大きなことやりたいね、だったら武道館しかない! と。でもそこには自分たちの力なんてほとんどなくて、応援してくださった皆さんと動いてくれているスタッフのおかげ。だから『ありがとう公演』というタイトルなんです」と井上。浦井は「僕らの経験がひとつのきっかけになって、今後ミュージカル界でも武道館でやる人が増えていったらいいですよね」とこちらも大局的な視線で意気込みを語った。どこまでもミュージカル愛に溢れるプリンスたちが新たな伝説を作る瞬間に、一緒に立ち会おう。『三大ミュージカルプリンスコンサート StarS ありがとう公演~みんなで行こう武道館~』は、11月11日(月)、日本武道館にて開催。チケットは9月7日(土)一般発売開始。チケットぴあでは8月26日(月)11:00まで先行抽選「プレリザーブ」を受付中。
2013年08月23日現在、東京・帝国劇場にて上演中のミュージカル『二都物語』で、7月26日、アフタートークショーが行われた。『二都物語』は、ともにミュージカル界のプリンスと呼ばれている井上芳雄、浦井健治という若手実力派スターふたりの共演も話題だが、このイベントには井上、浦井とともにユニット“StarS”を結成している山崎育三郎が司会としてゲスト出演。今年5月にはCDデビューを果たし、ミュージカル界の外からも注目を集めている“StarS”が集結ということで、この日のチケットは完売御礼。ファンの熱い視線が注がれる中、プリンスたちの爆笑のトークが繰り広げられた。トークショーでは、様々なエピソードを脱線気味に話す井上・浦井を、軌道修正しつつ話を進めていく山崎、という、コンサートなどでもお馴染みの3人の個性が炸裂。作品では井上と浦井は同じ女性を愛する役どころだが、井上が珍しくフラれる役だということで「でも、お客さまの共感がぎゅっと自分に集まってくるのを感じる。結ばれるふたりよりこっちの方がおいしい!」(井上)というような話から、稽古期間は毎日井上・浦井が一緒に帰っていたという仲良しエピソード、さらには「最後は(残される)僕たち家族はいたたまれないけれど、十字架を背負うんじゃなく希望を託されているんだ、と(演出の)鵜山さんからはアドバイスをもらいました」(浦井)という真面目な話まで、縦横無尽なトークが展開された。さらに、もちろんStarSの話題も。2011年の帝国劇場100周年を記念したテレビ番組で鼎談をしたことが、ユニット結成のきっかけになったというStarS。「今日ここで3人で立てたのは嬉しい!」(井上)という感慨深い発言も飛び出した。11月にはミュージカル俳優の単独公演としては史上初の日本武道館公演も控えている彼ら。「武道館ではミュージカルファンの皆さんも一緒に盛り上がっていただきたい。本当に感謝・感謝の公演にしたい」と山崎が話せば、井上が「“1日だけのお祭り”です。浦井君はお祭りを表現して、衣裳はふんどしですよね!」と笑いを取るなど、楽しそうに武道館公演の構想も話していた。「StarSを見て、『二都物語』に興味を持って観に来ましたという方も結構いらっしゃる。それは本当に嬉しいこと。相乗効果でお互い盛り上げあっていければ」と井上。『二都物語』は8月26日(月)まで、同劇場にて。チケットは発売中。また、“StarS”日本武道館公演は11月11日(月)に開催、こちらのチケットは9月7日(土)に一般発売を開始する。
2013年07月29日井上芳雄主演ミュージカル『ウェディング・シンガー』が3月1日、東京・シアタークリエで開幕した。同名のアメリカ映画をもとに2006年にブロードウェイで舞台化、日本では2008年に初演され、今回が再々演となる人気作。同日、最終舞台稽古が報道陣に披露され、井上ほか共演の高橋愛、大澄賢也、吉野圭吾、新納慎也が取材にも応じた。『ウェディング・シンガー』チケット情報物語は、結婚式を盛り上げるウェディング・バンドマンのロビー(井上)と、式場のウェイトレス・ジュリア(高橋)の恋を軸にしたもの。個性豊かで愛らしい登場人物が、それぞれ幸せな結婚を夢に見、悩んでいく。アメリカ産らしいコミカルな展開と、80年代の音楽やダンスへのオマージュに満ちたハッピー・コメディだ。3回目の主演を務める井上は「“結婚したくなるミュージカル”と銘打っていますが、とにかく観た人すべてが幸せになってくれるだろう、とてもハッピーなミュージカル」とアピール。また「初演の時から“結婚したくなるミュージカル”と言ってたんですが、初演の時は誰も結婚しなくて、『何の効果もないな』って話していたんですが、5年たってじわじわと…」という井上の言葉を受け、今年1月に結婚をした大澄が「(上演)3回目にして結婚しました! みなさんも結婚したくなってください。バッチグーだよ!」と報告。大澄はほかにも「イケイケ」「ナウい」など80年代らしい言葉を連発、「あの時代を一番知っているのは自分」と話し、取材陣を笑わせていた。またジュリア役として今回初参加する高橋は本格的なラブシーンは初とのことで、「最初にラブシーンを合わせた時に、恥ずかしい!って真っ赤になっちゃって」と井上に明かされるも、感想を訊かれ「女優さんとしては必要なことなんだろうなって思いました」とクールな返答で、共演者たちに「ビジネスライク!」と突っ込まれていた。今回の上演は「ファイナル・ステージ」と謳われているが、井上は「最後に相応しい決定版が出来たんじゃないかと、とても楽しみ」と自信のコメント。さらに「今回の結果によってはリターンズがあるかもしれないと望みながら頑張りたい」と意気込んだ。公演は3月20日(水・祝)まで同劇場にて。3月23日(土)・24日(日)に福岡・博多座、3月31日(日)に東京・日本青年館 大ホールにて。チケットは発売中。
2013年03月04日井上芳雄、高橋愛が主演するミュージカル『ウェディング・シンガー』の製作発表が12月17日、都内にて行われた。結婚をテーマにした作品ということで、実際の結婚式場で開催されたこの製作発表には1200名の応募の中から選ばれたファン60名も参加。笑いに溢れたハッピーな会見となった。ミュージカル『ウェディング・シンガー』チケット情報作品は、結婚式を盛り上げるウェディング・バンドマンのロビーと、式場のウェイトレス、ジュリアの恋を軸にしたミュージカル・コメディ。アダム・サンドラー主演の1998年のアメリカ映画を舞台化したもので、日本では2008年初演、2011年の再演を経て今回が3度目の上演となる。80年代アメリカの音楽やダンスのオマージュに溢れ、個性的な登場人物が巻き起こすドタバタに劇場が笑いに包まれるキュートな作品だ。初演よりロビーを演じている井上はそのままに、今回はジュリアに高橋愛、その従姉ホリーに彩吹真央、ロビーのバンド仲間サミーに吉野圭吾という新キャストが加わる。会見では、井上が「大好きな作品です。前回はちょうど震災の時期の公演で、3月11日当日も公演していたんですが、直後はやはり日本中が沈んでいました。そんな時にこんなバカバカしい楽しい話をやっていていいのかなと思ったのですが、結果的に舞台の力でお客さまと一緒になって笑いながら前に進んでいこうという気持ちになり、作品の力を改めて感じました。でも観たくても来られなかったお客さまも大勢いて、完全な形で公演ができたとはいえなかったので、再々演をやらせていただけるのはすごく嬉しい」と感無量のコメント。また初参加の高橋が「こんなに愛されている作品に出ることができて本当に幸せ。CDをずっと聴いているんですが、聴いているだけで元気になれるので、皆さんもこの作品を観て元気になっていただきたいなと思います」と話し、演出を務める山田和也が「舞台は1985年のニュージャージー。ここでは戦争も起こっていませんし、革命もありません。ドラマチックな要素はまったくない、日常の中でおこるミュージカル。でもそこにこそこの作品の価値や大切な事がこめられています」とその魅力を解説した。また、今回の公演は「ファイナル・ステージ」と銘打たれているのも気になるところ。これに関して山田は「この人たちが結婚適齢期に見えるのもそろそろ限界かな、と」と会場を笑わせ、井上は「僕は毎回、これがファイナルで当然だと思ってやっています。ある意味、再演がある作品というのは奇跡。ですからいつもと変わらず一生懸命やりたい。…これが大好評だったらリターンズがあるかもしれないし(笑)」と含みをもたせた。公演は3月1日(金)から20日(水・祝)まで東京・シアタークリエ、3月23日(土)・24日(日)に福岡・博多座、3月31日(日)に東京・日本青年館 大ホールにて。チケットは東京公演が12月22日(土)、福岡公演が1月19日(土)にそれぞれ一般発売を開始する。
2012年12月18日舞台『組曲虐殺』の公開稽古が12月6日、東京・天王洲 銀河劇場で行われ、出演する井上芳雄、石原さとみらが会見を行った。『組曲虐殺』公演情報2010年に死去した井上ひさし最後の作品で、官憲の拷問によって29歳の若さで命を落としたプロレタリア文学の旗手、小林多喜二を題材にしたもの。2009年に初演され、その年の演劇賞を総なめにした。今回の3年ぶりの再演には、初演時と同様、演出に栗山民也、キャストも同じ顔ぶれが揃った。多喜二を演じる井上は、初演の時は初日4日前に台本が完成したことを明かし「台本がギリギリだと言い訳がきくけど、今回そうはいかない。厳しさを感じます」と気を引き締めながら、「井上先生は(再演を)喜んでらっしゃいますかね。きっと舞台が始まったら、(天国から)毎日劇場に来てくださるんじゃないかな」と亡き劇作家に思いを寄せた。一方、多喜二の恋人役の石原は「先生がいらっしゃらないな、と寂しい思いもありますが、先生が命を削って書かれた言葉を大切に丁寧に伝えていきたい」と気合を入れた。公演は12月7日(金)から東京・天王洲 銀河劇場にて。その後、福岡、愛知、大阪ほか全国を巡演。
2012年12月07日今年、公開された映画の中で「ベスト親子賞」を選ぶなら井上真央と松坂慶子が『綱引いちゃった!』で演じた娘と母は有力候補となること間違いなしである。井上さんにとってはNHKの連続テレビ小説「おひさま」後に出演した最初の作品。「おひさま」では愛情あふれる家族の絆が描き出されたが、本作でも母と娘の2人ながらも「おひさま」に負けず劣らず温かい親子の姿が映し出される。かつてはオリンピックの正式種目だったという歴史を持つスポーツ“綱引き”を題材にした本作。「いつかご一緒させていただきたいと思っていたけれど、初共演でまさか一緒に綱を引くことになるとは…(笑)」とふり返る松坂さんとの共演を始め、大分で行われた撮影、本気で挑んだ綱引きなどについて井上さんが語ってくれた。井上さんが演じた千晶は大分市の広報課職員。市長の命令で市のPRを目的に女性だけの綱引きチームを結成する。「最初は綱引きと聞いて、スポ根映画をイメージして、綱引きをガムシャラにやる汗と涙の結晶という感じだろうと思いましたし、映画になるのかな?という思いもありました」と井上さんはふり返る。千晶という役柄については「私と結構、近かったかもしれない。だからこそ難しかったのかな?」とも。だが「役づくりは、綱引き!」と語る通り、役の内面については事前に作り込むことはせず、現場で方向性を決めていったという。「千晶を明るく演じるのか?それともしっかり者のキャリアウーマンとして演じるのか?すごく難しかったですが、ずっと大分にいて大分弁を話す中で段々と『こんな感じかな』という形が出来上がっていきました。何より、綱引きを一生懸命やって技術がアップしてチームも一つになっていく過程が、お芝居にリンクしていけばいいなと思っていましたので。だから現場では、いかに姿勢を保つかとか、どうやって綱を引っ張るかといった話し合いをみんなでしていましたね」。ちなみに綱引きのシーンに関しては「全てガチです!」。劇中のチーム「綱娘」さながら毎日トレーニングを積んで撮影に臨んだ。「最初にみんなで大会を見に行ったら、想像以上にパワフルで地面に着くんじゃないかってくらい低い姿勢なんですよ。松坂さんも最初、綱引き部分にはスタントがいると思っていらしたみたいです(笑)。『あの姿勢を?』と思いつつやってみたら、1人や2人で引くのと8人で引くのとでは全く違って、体力だけでなく全員で息を合わせる大変さがありました。やっていくうちに1日でも綱を引かないと落ち着かなくて(笑)、感覚を忘れないよう『早く引きたい!』って気持ちでした」。「相当、インパクトのある作品じゃないと『おひさま』の陽子役は抜けきらないと思った」という井上さんは、『舞妓 Haaaan!!!』や『なくもんか』といったコメディ映画を世に送り出してきた水田伸生監督の下で新たなスタートを切った。千晶はどちらかと言えば、周囲のボケにビシバシとツッコミを入れる役柄だが、水田監督が求める独特の笑いを存分に楽しんだようだ。「水田監督は結構、その場で思いついたことを提案して、たまたま見た人がクスっと笑ってしまうような小さな笑いを散りばめるので、笑いを堪えるのが大変でした。お芝居をしている本番の最中に監督の笑い声が響いて、音声さんが『シーっ!』って怒っているような現場でした(笑)。逆に感動的なシーンでフッと監督を見たら、号泣されているんです(笑)。監督が一番のお客さんでしたね」。しっかり者としてツッコミを入れるだけでなく今後、コメディエンヌとしてボケ倒す井上さんを見てみたい気もするが…。「どうでしょう…(笑)?笑いのツボはみんなそれぞれ違うので、難しくもありますがコメディは楽しいですね。面白いと思ってやっていても『あれ?』となることもあるから、脚本を読んで面白ければ面白いほどプレッシャーもあります。テンポがちょっと違うだけで面白くなくなったり、セリフ一つ削るだけで面白くなったり、本当に難しい。でも現場で笑いが起きるのはやっぱり楽しいです。私もどちらかというと思い切り笑わせるというよりも、地味に小さく笑えるようなものが好きなので、そういう作品もやれたらいいですね」。そして、ギャグシーンではないのに観ているだけで思わずクスっと笑ってしまうのが井上さんと松坂さんの母娘のやりとりだ。年の功でチーム「綱娘」をまとめる精神的な支柱であり、家ではまるで友達のように娘・千晶と何でも言い合える母・容子。井上さんは「小さい頃から映画館で観てきた作品に出ていた大好きな女優さん」という松坂さんとの共演をこうふり返る。「チームメイトであり親子でもあるという2人の距離が、緊張や遠慮もなく自然にできたと思います。松坂さんは誰に対しても壁を作られることが全くないので、一緒にいたら甘えたくなっちゃうような本当に優しいお母さん。家での2人のシーンのときは『こないだウチの娘がね』と娘さんやお母さまの話をしてくださったり。『おひさま』を見てくださっていたのでその話をしたりもしました」。特に家で松坂さんとマッサージをし合うシーンは、井上さんにとってもお気に入りになったようだ。「日常の親子の雰囲気が好きですね。台本には『マッサージをし合う』とは書いてなかったんですが、松坂さんが私の上に乗ってきたので、その場で思わず『重い~!』とアドリブで言ってしまいました。後で考えると、とても失礼なセリフなんですが、私自身が実際に母とそういうやり取りをしたことがあったので。完成した映画を観たら、ウチの母とのやり取りに近くて、自然にできた良いシーンになっていました」。多くの俳優が、朝ドラや大河ドラマへの出演をきっかけに成長や変化を感じると口にしている。井上さんは慎重に言葉を選びながら「確かに10か月も同じ役をやるというのは大きなことです」とうなずく。自らの変化を知覚するのはこれからかもしれないが、ハッキリと感じるのは周囲の反応の変化だ。「いままでは若い人に声を掛けられることが多かったのですが、最近は、おじいちゃんやおばあちゃん、お父さんの世代の方にも『見ていました』と言っていただけて嬉しいです。大分でも『陽子ちゃん、陽子ちゃん』と声を掛けていただきました(笑)」。そして、最後にこうつぶやいた。「何より震災があった年にあの作品に出られたというのが一番大きなことかもしれません」。年が明けて少し経てば26歳になる。20代の後半戦、女優・井上真央はどのような道を歩んでいくのか?楽しみに待ちたい。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:綱引いちゃった! 2012年11月23日より全国東宝系にて公開(C) 2012「綱引いちゃった!」製作委員会
2012年11月20日井上真央が主演で贈る、綱引きの女性チームの奮闘劇を描いた『綱引いちゃった!』の女性限定試写会が、11月7日(水)に都内で行われ、井上さんを始め、玉山鉄二、渡辺直美のキャスト陣と水田伸生監督が登壇した。『舞妓 Haaaan!!!』など宮藤官九郎とタッグを組み、笑いあり涙ありの心温まるコメディを手がけてきた水田監督の最新作となる本作。大分市役所広報課の千晶は、市長の命令で町おこしのために、かつては大分出身のチームが世界一に輝いたこともある女性だけの綱引きチームを結成。母・容子を始め閉鎖が予定されている給食センターのメンバーたちと大会に参加になるのだが…。この日は、女性限定試写会ということで登壇した井上さんは「見事に女性ばかりですね!この映画の撮影現場も雰囲気はずっと“女子会”みたいで、毎日楽しかったです」と挨拶。しかし、玉山さんは「非常に緊張しています」と女子たちの独特の雰囲気に圧倒された様子だったものの、渡辺さんが大女優風のコメントを連発すると「ムカつきますね(笑)」とツッコミを入れ会場の笑いを誘っていた。この日は、“女子会”をテーマにしているとあって、一般女性からのお悩みに対する相談会を開催。井上さんらゲストが事前に応募を募っていたお悩みに答えた。しかし、1問目の「朝が弱いんですがどうしたらいいですか?」という高校生からのお悩みに、「私も朝は弱いんです」と共感を寄せる井上さんだったが、「まだ17歳の高校生ですからね。社会に出れば、何が何でも起きないといけないこともあると思うので大丈夫ですよ」とザックリとした返答。これに渡辺さんから「適当だなぁ(笑)」とすかさずツッコミが入る一幕も。続いての質問では、「どんな年齢でも、どんな体型でも、自信を持って生きていくにはどうすれば?」と渡辺さんへのピンポイント質問が。「絶対、直美ちゃんをバカにしてますよね(笑)」と玉山さんが今度はフォローしたかと思いきや、「でも、(渡辺さんと)マンションが一緒なんですけど、この前エレベーターで偶然会ったときは、絶対お風呂に入ってないだろ…という感じの見た目でビックリしました」と裏切りの暴露!渡辺さんも「あのときはホントに酷いカッコをしていました…」と反省していた。最後の質問では、「どうしたら、真央ちゃんみたいに女子力がアップするの?」と今度は井上さんへのピンポイント質問が読み上げられたが、「いや~、特にないです」と照れつつも、「でも、毎日お風呂には入ってます(笑)」と渡辺さんをイジり、イタズラっぽい笑顔を浮かべていた。その後も、渡辺さんがおなじみのビヨンセのモノマネを披露するなど、最後まで大きな盛り上がりを見せたこの日の“女子会”。井上さんも「こんな時代だからこそ、女子の力を!」と語りかけ、客席の女子たちから大歓声を浴びていた。『綱引いちゃった!』は11月23日(土・祝)より全国東宝系にて公開。■関連作品:綱引いちゃった! 2012年11月23日より全国東宝系にて公開© 2012「綱引いちゃった!」製作委員会
2012年11月07日劇作家・井上ひさしの最後の作品『組曲虐殺』が今冬再演される。2009年に栗山民也演出で初演されたこの作品は、音楽を全編、小曽根真の書き下ろし楽曲でつづる“音楽評伝劇”だ。今回、初演と同じスタッフ・キャストで、井上作品を連続上演してきた“井上ひさし生誕77フェスティバル2012”の掉尾を飾る。主演の井上芳雄に本作への思いを訊いた。プロレタリア作家の小林多喜二が、29歳の若さで特高警察に虐殺されるまでの2年9か月を描いた本作。多喜二を演じる井上は、「自分にとって『組曲虐殺』は、井上ひさし先生の思い出と共に、忘れられない宝物。絶対に再演したいと願っていました。初演メンバーが揃ったのも、作品の力に拠るところが大きいのでは」と話す。壮絶な最期で知られる多喜二だけに「演じる前は漠然と、激しさや痛みのようなものをイメージしていた」という井上。「でも井上先生の台本には、朗らかで、芸術に造詣が深く、人々に愛される人物が描かれていて、新鮮でした」。劇中では、恋人の瀧子や姉チマ、 多喜二の活動を支援するふじ子はもちろん、多喜二をマークしている特高刑事ですら、気がつけば彼に温かい眼差しを向けてしまう。「実際、魅力的な人だったんでしょうね。周囲からたくさんの愛情を受けていたからこそ、自分もそれを、虐げられた人々に返すことができたんじゃないでしょうか。社会のシステムを憎んでも、人間そのものは決して憎まない人だった気がします」。『組曲虐殺』は、井上にとって、表現面でもひとつの転機となった作品だ。「栗山さんからは『生死の瀬戸際に身を置くプロレアタリア作家の覚悟に迫れ!』と叱咤激励され続けて。演じる上で感情をどこまでどう出すのか、新しい挑戦でした。小曽根さんには『これまでと違う歌い方を試してみようよ』と、即興的な歌唱を教えていただきましたね。その後、別の作品を演じても、『今の、多喜二だったよね』と言われてしまうほど(笑)。俳優として大きな体験でした」。今は、井上ひさしの遺した言葉を伝えることが、自身の使命だと感じているという。「先生が書いてくださった言葉は、自分のちょっとした工夫など歯が立たないほど、すごい力をもっている。再演でも、まっすぐに体ごと、ぶつかろうと思っています。『後に続く者を信じて走れ』という多喜二の歌詞があるのですが、僕も、若い世代を含め多くの人に、彼の思いや生き様を伝えるつもりで演じたいです」。公演は12月7日(金)から30日(日)まで東京・天王洲銀河劇場にて上演。チケットは9月29日(土)より一般発売開始。なお、チケットぴあでは9月13日(木)11時までインターネット先行抽選・プレリザーブを受付中。東京公演の後、来年1月に各地を巡演。取材・文:高橋彩子
2012年09月12日ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』が9月2日、東京・シアタークリエにて開幕した。出演は井上芳雄、坂本真綾。『レ・ミゼラブル』の演出家ジョン・ケアードが脚本・演出を担当し、2009年にアメリカで初演された“ふたり芝居のミュージカル”の、日本初上陸だ。『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』チケット情報はこちら孤児院に暮らす少女ジルーシャはある日、院の理事のひとりから、大学へ進学するための奨学金を援助しようという手紙を受け取る。条件は月に一度、彼に手紙を書くこと。一度だけシルエットで見た手紙の主はまるで足長蜘蛛のように足が長く、ジルーシャは彼を足長蜘蛛――ダディ・ロング・レッグズと呼び慕っていく……。日本では非常に良く知られている『足ながおじさん』の物語が、とても可愛らしく瑞々しいミュージカルになった。土や緑の匂いがしそうな素朴で優しい音楽、さらにセットも本に囲まれた書斎、木の温もりが伝わりそうな壁に床、大きなトランク…と、この物語を愛する少女たちが憧れそうな世界だ。登場人物はジルーシャと、ダディの正体であるジャーヴィスのふたりだけ。原作と同じく、ジルーシャがダディに宛てて書いた手紙の形をとって物語が進行していく。ゆえにジルーシャを演じる坂本真綾は出ずっぱりの大奮闘だ。孤児院育ちで、大学でも上流の教育を受けてきた少女たちと会話が通じなかったりと、コンプレックスはあるものの、それが卑屈な方向に表出されることはないジルーシャ。聡明で独創的、あふれ出る言葉にはユーモアがあり、彼女の目に映る世界はキラキラと輝いている。そんなジルーシャを坂本は伸び伸びと表情豊かに創り上げている。膨大なセリフも隅々までクリアで気持ちよく耳に届き、ジルーシャはこの人以外にはいないのではと思うほどにぴったりだ。一方でジャーヴィスは、上流階級に育った青年。ジルーシャの文学的才能を伸ばすために援助を申し出たものの、予想以上の才気を見せる彼女の手紙、そして彼女自身に惹かれていく。ただし「きっと年寄りに違いない」というジルーシャの思い込みで作り上げられた“ダディ”像と自身とのギャップに苦しみ、彼女に打ち明けることができない。ジャーヴィスを演じる井上芳雄は、その戸惑いや、嫉妬心から生まれるいじわるな顔なども丁寧に演じ、“大人の初恋”とでも呼べそうなフレッシュな恋心を見せていた。劇中の「チャリティー」というナンバーで、ジャーヴィスは“誰が誰を助けている?”と歌う。ジャーヴィスはジルーシャに援助をしたが、彼もまたジルーシャから大きなものを受け取った。ジルーシャも与えられたものに甘んじず、自らの手で道を切り開いていく。ロマンチックなラブストーリーでありながら、人生を輝かせるヒントが散りばめられたミュージカル。小説同様、長く愛されていくに違いない。東京公演は9月19日(水)まで。その後9月22日(土)に新潟、9月26日(水)に大分、9月28日(金)・29日(土)に大阪、10月3日(水)に福岡で上演される。
2012年09月03日9月2日(日)に東京・シアタークリエで開幕する舞台『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』の製作発表が8月13日に都内で行われ、脚本・演出のジョン・ケアード、キャストの井上芳雄と坂本真綾、あしなが育英会の玉井義臣会長が報道陣の前に登場した。2009年にアメリカのカリフォルニア州で初演されたミュージカルで、今回が日本初演となる。原作となったジーン・ウェブスターの小説『足ながおじさん』は日本ではあまりにも有名だが、「アメリカ人はあまり知らない」とケアードは言う。「私も、12年ぐらい前、妻(本作品の翻訳・訳詞を務める今井麻緒子)に手渡されて初めて知りました。最初にこの作品に触れた東京の地で公演できるのはうれしい」。孤児院で暮らす少女ジルーシャと、彼女に金銭的援助を続ける若き紳士ジャーヴィスの物語が、ふたり芝居仕立てで描かれる。ジャーヴィス役の井上は「この作品をやると発表したとき、特に女性からの反応が大きくて、“小さい頃からの愛読書だった”という声を多くいただいた。僕は今回初めて原作を読んだんですけど、これはジルーシャの成長の物語であると同時に、経済的にも社会的にも満たされていながら問題も抱えるジャーヴィスが、人間として救われていく、という話だと思いました」とコメント。一方、ジルーシャを演じる坂本は、「『足ながおじさん』はとても好きで、よく知っているつもりでいたんですけど、あらためて読み返して、児童文学というイメージより、これはラブストーリーでもあったんだなと再認識しました」と作品の魅力を話す。井上との初共演ついて訊かれた坂本が「いらっしゃるだけで、安心感というか心強さがあります。パートナーと一緒に作る作品だと思うので、もっと仲良くなりたくて、1日ひとつ質問するように心がけています」と語ると、井上は「それは知らなかった。さっき唐突に“風邪とかひかないんですか?”と訊かれましたけど、そういうことだったんですね!」と驚いた様子。坂本については「とても聡明。舞台を中心にやっている人とは違う熱の発し方というか。先日ジョンの発案でいきなり第1幕を通して演じたんですけど、すでに台本を手に持っていなかった。静かな闘志を感じます」とその印象を語った。ミュージカル・ロマンス『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』は、シアタークリエにて9月2日(日)から19日(水)まで上演。東京公演の後、新潟、大分、大阪、福岡の各地を巡演する。
2012年08月13日チャールズ・ディケンズの不朽の名作『二都物語』を基にしたミュージカルが、井上芳雄と浦井健治の出演で2013年夏に東京・帝国劇場にて上演される。『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』などでも有名なイギリスの文豪チャールズ・ディケンズ。彼の書いた小説『二都物語』は、18世紀後半のフランス革命動乱期、ロンドンとパリの“二都”を舞台に、ひとりの女性をめぐるふたりの男性の悲劇的な恋と運命を描いたもの。この長編小説を原作に、脚本・作詞・作曲をジル・サントリエロが手がけミュージカル化した。2007年に米・フロリダで上演後、2008年にブロードウェイで公演が行われ、来夏、日本での初演が決定。なお、日本では宝塚歌劇団が過去『二都物語』を舞台化しているが、これとは別の作品となる。井上はシドニー・カートン役を、浦井はチャールズ・ダーネー役を演じる。演出は鵜山仁が担当する。公演は2013年7月18日(木)から8月26日(月)まで東京・帝国劇場にて上演。チケットは2013年春に発売予定。
2012年07月30日2010年に永眠した劇作家、井上ひさし。存命ならば77歳の誕生日を祝うはずだった今年、『井上ひさし生誕77フェスティバル2012』と銘打ち、1月から12月まで8本の作品を上演している。このフェスティバルの特別企画として、8月16日(木)より東京・紀伊國屋画廊にて『井上ひさし「せりふ」展』(入場無料)が開催される。井上ひさし関連のチケット情報井上ひさしが綴りつづけた70作にもおよぶ戯曲。今回展示されるのは、戯曲の中から切り取られた77個の“せりふ”。額装された“せりふ”を目で見るだけではなく、スピーカーから聴こえる“せりふ”を「音」として耳で楽しむこともできるそうだ。『井上ひさし「せりふ」展』は8月16日(木)から28日(火)まで紀伊國屋画廊にて開催。なお、『井上ひさし生誕77フェスティバル2012』の今後のラインナップは、8月まで上演中の『しみじみ日本・乃木大将 』、8月末から9月に『芭蕉通夜舟』、11月から12月に『日の浦姫物語』が上演される。チケットは一部を除き発売中。
2012年07月25日井上ひさし作、蜷川幸雄演出による舞台『しみじみ日本・乃木大将』の開幕が、7月12日(木)に迫った。『井上ひさし生誕77フェスティバル2012』と銘打って今年8本上演される井上戯曲のうち、本作はその第5弾にあたる。稽古の様子を取材した。「うるさいチームだよ、まったく」と笑い混じりに蜷川がこぼすのは、キャスト陣のことだ。風間杜夫、根岸季衣、六平直政、山崎一、大石継太、朝海ひかる、香寿たつき、吉田鋼太郎。いずれも舞台が原点といっていい生粋の演劇人が揃う。特に目立ったのは、六平。演技を始める直前までギャグを飛ばし、出演者同士で段取りを確認した後には「みんな、わかったよな?」と仕切ってみせる。さらに、それに応える面々の切り返しもまた笑いを生み、稽古場の一体感が高まっていく。芝居が始まり、各人が役に扮しても、この空気は変わらない。むしろ、歌がふんだんに使われている分だけ、にぎやかさは増している。時は明治天皇大葬の日、殉死することを決意した陸軍大将・乃木希典の物語。設定だけ聞けば、重くシリアスな作風を想像しそうだが、実際には、驚くほどばかばかしい。“何を描くか”と“いかに描くか”。テーマとテイストの間に飛躍があるからこそ、ドラマがいっそう輝きを放つ。まさに井上作品の真骨頂がそこにはあった。日露戦争の英雄と称えられる一方で、愚将の烙印を押されることも少なくない乃木。彼は明治天皇にどんな思いを抱いて命を絶ったのか。周辺の人物によるコメントを通して主人公の人物像を浮き彫りにする物語は少なくないが、本作が珍しいのは、5頭の馬がその役割を務めるところ。しかもそれぞれ、前足と後足が別の意志を持つ。知的に考える前足たちと、生理にまかせて行動する後足たちと。10の人格ならぬ“馬格”による乃木の立場をめぐっての議論が、天皇制に対する賛否両論と重なって興味深い。また、「もしも○○が乃木大将の立場だったら、こんな態度に出るかも」と馬たちが何パターンも演じ分ける場面は、バラエティ番組さながらのおかしさだった。1979年に芸能座が初演した作品で、今回は、1991年のこまつ座公演以来21年ぶりの上演となる。蜷川は「俳優が演技を競い合うような戯曲。ト書きに細かく書かれているので、演出家はほとんどすることがない」と言いながら、「軽演劇風にみせたい」と明快に方向を示す。7月12日(木)から29日(日)まで彩の国さいたま芸術劇場 大ホールで上演。その後、大阪、新潟で公演を行う。
2012年07月06日ミュージカル『ルドルフザ・ラスト・キス』が7月5日、東京・帝国劇場で開幕した。本作は、『ジキル&ハイド』や『スカーレット・ピンパーネル』で知られる作曲家フランク・ワイルドホーンが音楽を手がけたミュージカルだ。日本では2008年に宮本亜門演出・井上芳雄主演で初演。今回はタイトルロールを井上が続投し、英国人演出家デヴィッド・ルヴォーが、2009年にウィーンで自身が演出したバージョンをもとに新たな舞台を生み出した。『ルドルフザ・ラスト・キス』チケット情報物語の舞台は19世紀末のオーストリア。自由と平等を希求する皇太子ルドルフは、父である皇帝フランツ・ヨーゼフ(村井国夫)との思想的対立を深め、妻ステファニー(吉沢梨絵)との家庭生活も冷えきっている。一方、男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ(和音美桜)は縁談に見向きもせず、新聞に体制批判の記事を書く謎の記者ユリウス・フェリックスを崇拝している。そんなルドルフとマリーは舞踏会で、ラリッシュ(一路真輝)の仲介により知り合う。やがて記者ユリウスの正体がルドルフだとわかり、ふたりは深く愛し合うようになるが、その仲は皇帝やステファニー、首相ターフェ(坂元健児)らの知るところとなる。7月4日に行われた通し稽古では、帝国の威信を守ろうとする皇帝、結婚制度を支えとするステファニー、女の武器を謳い上げるラリッシュ、保守派の政治を貫くターフェなど、立場の違う役柄が生き生きと魅力的に演じられ、それぞれに共感をおぼえた。しかし、ルドルフとマリーはこうした人々が信じる現実世界のルールと秩序に、敢然と闘いを挑む。ふたりはただの恋人同士ではなく、既成概念や価値観から自由になろうとする、同志のような間柄なのだ。闘いの果てに、ルドルフとマリーが死出の旅路へ向かう『世界を手にして』の場面は、文楽や歌舞伎の『曾根崎心中』を想起させる美しさで、その後の哀しくロマンティックなエンディングを際立たせた。初日直前の囲み会見では「ルヴォーさんの高い要求に応えて、みんなで高みを目指したい。究極の愛を確かめてほしい」と井上がひきしまった表情を見せれば、「スタッフさんと私たちの力にお客様の力が加わって、化学反応が起こせたら」と和音もうなずく。一路は「大人っぽい素敵なミュージカル。この場に身を置けることが嬉しいです」とにこやかに話し、村井は「タイトでスリリングな舞台。(みんなが)ひとつになった時、ものすごい力を発揮するはず」とかつてないほどハードな舞台への意欲を表した。実際、幾多の動き・転換を重ね、多層的な空間のうねりを作るルヴォー・マジックは、見事なスタッフ&キャストワークなくしては実現しない。ワイルドホーンのメロディーが甘く流麗だからこそ、キャストは生の声と肉体で、役をリアルに“生き”なければならない。この点、空間に突き刺さる井上の絶唱、獣が対峙するような和音と坂元の迫真のデュエットなど印象深い場面は多かった。赤が鮮烈に映える美術と共に、情熱、生と死、愛と官能のドラマが鼓動し躍動していた。公演は7月29日(日)まで。取材・文:高橋彩子
2012年07月06日『足ながおじさん』を原作にしたアメリカ発のミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』が、この秋、日本初演を果たす。ヒロインのジルーシャ役を演じる坂本真綾に抱負を訊いた。『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』公演情報声優、歌手、エッセイスト、作詞家、ラジオパーソナリティ、ナレーターなど幅広く活躍する坂本にとって、舞台という表現ジャンルは「自分の原点であると同時に、憧れの強い場所」だという。「父が舞台照明家なので、幼い頃からよく観劇していました。子役からこの世界に入ったのも、その影響です」。『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役を2003年から6年間にわたって演じた。その際に薫陶を受けた演出家ジョン・ケアードが脚本も手がけ、2009年にアメリカで発表したのが、『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』だ。「大きな挑戦になりそうだという緊張もありますけど、ジョンがいてくれるなら大丈夫だろうと。新しい一面を引き出してもらえるようないい経験になると思います」。物語の時代背景は、20世紀初頭。孤児院で暮らす18歳のジルーシャには、陰ながら自分を支援してくれる存在がいた。だが、「きっと年寄りのはず」と勝手にイメージしているせいで、彼女は目の前に現れた若き青年ジャーヴィスが当の支援者だと気づかない。一方、ジルーシャへの気持ちが慈しみから愛情へと変化していながら、ジャーヴィスは自らの正体を明かせずにいる。純粋であるがゆえに、遠回りしてしまう。そんな男女の心の機微を、“ふたり芝居のミュージカル”として描く趣向が新しい。ジャーヴィス役には、坂本とは初共演の井上芳雄が扮する。「ポスター撮影で初めてお会いしたんですけど、足が長いし、背が高くて、すごくかっこよかった。同い年で、“おじさん”呼ばわりするのが申し訳ないような。とても魅力的なジャーヴィスになると思います」と坂本。楽曲については、「歌うのが楽しいナンバーばかり。ポップスやカントリーのテイストが入っていて、作品の世界観にぴったりです」と印象を語った。「あらためて読み返してみると、こんなにもキュンとするラブストーリーだったのか、と気づかされました」との言葉に実感がこもる。原作小説は年代を問わずに親しまれているが、生身の男女が目の前で演じる舞台では、大人のためのラブ・ロマンスという側面がより際立つに違いない。ミュージカル・ロマンス『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』は、東京・シアタークリエにて9月2日(日)から19日(水)まで上演。チケットぴあでは、6月30日(土)の一般発売に先がけ、6月29日(金)18:00までインターネット先着先行プリセールを受付中。東京公演の後、新潟、大分、大阪、福岡の各地を巡演する。なお、東宝の公式サイトでは、坂本が歌うミュージカル・ナンバーを公開中。
2012年06月25日現在帝国劇場で上演されているミュージカル『エリザベート』、そして7月に上演されるミュージカル『ルドルフ』。ともに栄華を誇ったオーストリア・ハプスブルク家の晩期を舞台にした作品であり、『ルドルフ』の主役である皇太子ルドルフは、『エリザベート』では主人公エリザベートの息子として登場している。今年、この2作品が連続上演されるにあたり、6月20日、同所にて「“ルドルフ”集合スペシャルイベント」と題したイベントが行われた。登場したのは、『ルドルフ』からは主演の井上芳雄、『エリザベート』からはルドルフをトリプルキャストで演じている大野拓朗、平方元基、古川雄大。『ルドルフ』チケット情報イベントでは、まず井上が『ルドルフ』の魅力をアピール。2008年に日本で初演、その時も井上が主演しているが、今回は演出が一新されることから「再演ですが中身はまったくの新作。台本も変わりましたし、話がもっとわかりやすくなっている。(演出の)デヴィッド・ルヴォーが言うには今回のテーマはセクシャリティで、そこも前回と大きく違います。僕もそろそろ色気を出してもいいかなと思っていて(笑)、それが日々引き出されています」と話した。また劇中のアイススケートのシーンに苦労している話などを笑いを交えて話し、客席からも大きな笑い声が起こっていた。その後、『エリザベート』でルドルフを演じている3名が登場。井上も同役でデビューしていることから、オーディション時の思い出や、舞台での失敗談などに花が咲く。平方が自分は暑がりだと言い、稽古場でも大汗をかいていたら「芳雄さんよりは大丈夫だよ」と言われたという話などが飛び出し、和気藹々と充実したトークを展開した。最後に「毎日、観客の皆さまのパワーでここまで走ってこれた。1回1回確実に成長できるよう、一秒たりとも気を抜かず頑張りたい」(大野)、「帝国劇場でいっぱいパワーを蓄えて、博多・名古屋・大阪と走り抜けたい」(平方)、「もっと掘り下げて、どんどんルドルフに近づけていけたら」(古川)、と挨拶。そして井上が「3人がそれぞれ必死に『エリザベート』という作品のルドルフをやっているんだなと思って、僕も嬉しい。僕たちもルヴォーのもと、僕のミュージカル観が全部変わるような衝撃的な稽古をやっています。皆さんが今まで観たものとは全然違うミュージカルを来月、お見せできると思います。今は『エリザベート』を通して、来月は僕たちの『ルドルフ』で、彼について一緒に体験しに来ていただければ」と話した。『ルドルフ』は7月5日(木)から29日(日)まで、東京・帝国劇場にて上演。チケットは発売中。『エリザベート』は6月27日(水)まで同所にて東京公演を行ったのち、7月5日(木)から26日(木)に福岡・博多座、8月3日(金)から26日(日)に愛知・中日劇場、9月1日(土)から28日(金)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールで上演される。
2012年06月21日井上公造が松田聖子の3度の結婚を徹底分析!17日、読売TV「クギズケ!」に出演した芸能レポーター、井上公造が再々婚をした松田聖子の隠された驚きの結婚の法則をレポートした。井上は以前、松田聖子に関しての著書を出版したことがあるほど聖子ちゃん通の一人。結婚発表のタイミング結婚相手の河奈裕正氏は今年3月に准教授になったばかりで一つの発表タイミングになった。河奈氏は井上独自の取材によると、一昨年離婚をしているという。昨年の年賀状から、これまでの家族写真では無くなったという。大変腕の良い歯科医でTVの嘱託医としても勤めている。結婚発表は必ずコンサート前井上は「聖子ちゃんはマスコミが沢山集まるのが大好き」と話し、「結婚発表をコンサート前にするのは聖子ちゃん一流の計算がある。」とも...。聖子と郷ひろみの結婚、離婚は順番に郷ひろみとの別れの会見の時の名言「生まれ変わったら一緒になろう」も、名古屋で会見を見ていた当の本人の郷は、思わず「そんなことは一度も言っていない」と思ったという。二人の別れから、互いに結婚、離婚を繰り返すが、必ず順番に起きているという。その都度、ファンは聖子と郷が赤い糸で結ばれていると信じたがっている。そして50代に突入している二人は今も輝き続けている。井上は「聖子ちゃんは多くのスキャンダルがあっても一つも曇らない」とコメントを締めくくった。元の記事を読む
2012年06月18日異色のツーショットである。片や気弱そうで、でもどこか憎めない“いい人”のイメージが強い濱田岳。片や若手・中堅俳優陣の中でも“イヤな奴”を演じさせたら天下一品の新井浩文。タイプは正反対なれどともに個性派俳優として高い支持と評価を集める2人が映画『宇宙兄弟』で初共演を果たした。しかも単なる共演ではなく、小栗旬演じる主人公・ムッタや麻生久美子扮する才女・せりからと共に宇宙飛行士を目指すライバル同士の役柄であるから、これが面白くないわけがない!果たして現場の雰囲気は?…というか2人の仲は!?公開を前に、当代一の個性派2人の貴重なツーショットインタビューをお届け!本作の森義隆監督は、主要キャストの中でも最も若い濱田さんが「精神年齢はおれたちよりも高そう(笑)」と語っていた。この日もインタビュールームに入ってきた濱田さんを見るなり新井さんは「今日も貫禄あるね」とニヤリ。そのひと言に周囲のスタッフからも笑いが起きる。濱田さんと新井さんが演じたのは、ムッタ、せりか、ケンジ(井上芳雄)、福田(塩見三省)と共に宇宙飛行士選抜第3次試験に臨む候補生の古谷と溝口。新井さんが演じた溝口は飛行機パイロットで、冷静沈着な性格の持ち主だが、競争心が強くその言動で不協和音を響かせるところも。ムッタたちとは一線を画したクセの強いキャラクターであり、一見、これまで新井さんが数多く演じてきた“イヤな奴”の系統に属するタイプに見えるが…。「最初にムッタと話をするときから、観客が『こいつは…』と思うアクの強さはあるんだけど、一方で高学歴のパイロットで最終試験の6人に残る優秀な男ですからね。キレるにせよインテリなりのキレ方ってあると思うんですよ。普段から暴力に生きてない人がキレるとどうなるか?『落ち着いてますよ』って敬語のトーン強めて怒りを露わにしたりという部分は意識してましたね」。森監督とは同い年。「それも初めての経験だったので嬉しかった」とふり返る。「監督からは役柄についてそんなに細かい話はなかったんですよね。監督に『ウチ、イジったら伸びるよ』って言ったんだけど、そんなにイジってもらえず寂しかったです(笑)。逆に普段なら、監督をイジったり暴言吐いたりはしないですが、今回は『負けてられない!』という気持ちもあったのでガンガンいきました。監督は元々、ドキュメンタリー出身で『リアルに』ということを最初に言ってたんです。僕が本番で一度、ものすごくリアルな感じでセリフを噛んだことがあって、個人的に大好きな噛み方だったんですが(笑)、『これはリアルを追及する監督ならOKだろ』と思ったら『はい、噛んだからもう1回』ってあっさり言われたんです。マイク付けたまま『リアル志向じゃねーのかよ、おい』ってつぶやいたら『うるせーよ』って返ってきて、そういうやり取りが嬉しかったし刺激になりましたね」。一方の濱田さんは、“いい人”のイメージを180度転換。演じた古谷は霊長類の研究を専門とする青年だが、思ったことを全て吐き出してしまう強気な関西人。これまでとタイプの異なる役柄で小栗さんや新井さんにガンガンと言いたいことを言うのはさぞや楽しかったのでは?「いや、楽しむ余裕はなかったですよ。関西弁の演技はとにかく難しくて。あの閉じられた空間の6人の中で変な関西弁使ったら映画をシラケさせちゃいますからね。まずそういうプレッシャーがありました。いまふり返ると新鮮な経験だったなと思いますけどね。役についてはグイグイとモノを言うしキツイ方言でもあるので、チンピラみたいにならないように気を付けました。新井くんも言ったようにあの場にいるだけのクレバーさは持っている男なので。黙々と作業している姿を見てもらえれば、そこにいる理由を感じてもらえるかなと思います」。改めて、初めて同じ作品に参加してみての互いの印象や感想を聞いてみると「あの、やっぱり…新井さんのパブリックイメージってあるじゃないですか…(笑)」とおずおずと切り出したのは濱田さん。「怖かった?」という新井さんの問いかけに「怖いよ(笑)」と素直に頷く。「最初は本当に緊張しましたよ。『どうしよう?』って思ってた(笑)。でも、あの6人でセットの外に出たときに一番長く話してくれたのが新井くんなんですよ。人ってギャップに弱いでしょ?そこにやられたというか…(笑)。みんな先輩という状況の中で、おかげで楽しく過ごさせてもらいました」。6人の候補者が月面の基地を模した密室で10日間にわたって生活する選考試験の中で、古谷と溝口がそれぞれのキャラを全開にしてやり合うシーンもあるが、濱田さんは楽しそうにふり返る。「あのケンカのシーンでも僕は振り切って攻めていかなくちゃいけない。また新井くんがそれをどうクールにいなすかがポイントで。いつ肩透かしくらわされるのかってドキドキしつつも安心して挑めたし、ブチ切れられたと思います」。一方の新井さんにとって、濱田さんは以前から共演してみたい俳優だったという。「ウチは(濱田さん主演の)『アヒルと鴨のコインロッカー』が大好きで、そのときからずっと一緒にやってみたかった。実際に共演してみたら岳くんは、監督から入る修正に対する反応がすごく速かったです。キュッと切り替わるのはすごいなと思ってました」。さらに新井さんはいたずらっぽい笑みを浮かべながら、自身と濱田さんのこんな共通点を教えてくれた。「いつも周りをよく観察してるんですよ。誰かがミスったりしたときに、よく岳くんと目が合って、無言で『いまの見てた?』って(笑)。目をつけるとこが一緒なんですよ」。濱田さんも思い当たる節がいくつもあるようで「目が合うと吹き出しそうになるんですよ。おかげであの過酷な状況を楽しめたと思います」と語る。ムッタはもちろん、溝口も古谷も人生の半ばにして自らの夢のために新たな挑戦を決意し、実行に移した男たちである。現実には20代、30代と年齢を重ねる中で夢を諦める者が世の大半を占めるが、彼らはそんな世間の常識に左右されることなく夢を追いかける。新井さんや濱田さんも、歩んできた道は違えど夢を追い、走り続けている。己の道を選ぶことに迷いや不安はなかったのだろうか?新井さんはそんな問いに静かにかぶりを振る。「ウチはそういう考え方が理解できないですね。『仕事に繋がらない』『飯が食えない』と言って諦める人はいますが、ウチは『それなら死んでもいい』という思いでやって来た。どうせみんな死ぬんだから、自分の人生好きなことをやりたい、好きなことしかやりたくないって人間なので。そういう思いでやって来ていまがあるし、楽しくてしょうがないです」。濱田さんは子役としてキャリアを積んだのち、10代後半より再び俳優としての道を歩み始めいまに至る。「特殊な世界だから単純に比べられないけど」と前置きした上でこう語る。「僕は9歳で子役を始めたんですが、職人が集まってひとつの方向に行くという撮影の現場が本当に楽しかったんです。子供ながらにそこに混ぜてもらえるのも嬉しかったし。再びやり始めたとき、その楽しさが色褪せてなくて、9歳のときと同じ気持ちでできた。だからその気持ちが続く限りやりたいって思うし、もし僕がつまんない大人になっちゃって、その気持ちが薄れてきたらそれは引き際だと思ってます。努力が必ずしも報われるわけでもないし、ノルマも正解もない理不尽な世界だけど、それが楽しいし好きだからやれてるのかなと思ってます」。向き合い方やアプローチの仕方に違いはあれど、2人に共通するのは夢への温度とこの世界に生きる覚悟。今回、ようやく交錯した2人の個性派の歩む道が、願わくはまた時を置いて再び交わらんことを!(stylist:norihitokatsumi/photo&text:Naoki Kurozu)■関連作品:宇宙兄弟 2012年5月5日より全国東宝系にて公開© 2012「宇宙兄弟」製作委員会■関連記事:【シネマモード】日本の「家族」を感じる映画vol.2『宇宙兄弟』×兄弟の関係『宇宙兄弟』&『ガール』の監督が登壇! NCWクリエイティブセミナーに6名様ご招待岡田将生×小栗旬主演『宇宙兄弟』試写会に30組60名様をご招待小栗旬、結婚後初の公の場に!堤真一は「見習いたい」と結婚願望を告白!?『宇宙兄弟』主題歌をコールドプレイが担当!小栗旬「マジっすか!?」
2012年05月02日