千葉ステーションビルは、生活雑貨・ファッション・カフェなど30店舗を取り揃えた「ペリエ稲毛コムスクエア」を4月25日(10時)に全面リニューアルオープンする。なお、同リニューアルにより、「フードスクエア」、「コムスクエア」の全館リニューアルが完了。「ペリエ稲毛」がグランドオープンするとのこと。今回のリニューアルでは、“Style Up Daily Life”をコンセプトに、新規店舗の13件と既存店舗17件をオープン。改装前の「コムスクエア」と「SLグルメ号」を含めたゾーンを「コムスクエア1」、新たに増床したゾーンを「コムスクエア2」とし、ユーザーにとって便利で使いやすい施設を目指して多機能トイレ設置やスロープ新設、営業時間延長などに取り組んでいく。また、ファッションを中心としたこれまでの店舗構成から「ローラ アシュレイ ギフト&アクセサリーズ」や「MUJI com」などの生活雑貨ブランドを加えた店舗構成に変更。そのほか、新店舗としてネイル・まつげエクステサロン「DASHING DIVA・MiiMee Eyelash」や菓子店「マンスリースイーツ」、コンビニエンスストア「ローソン」が登場する。なお、「ペリエ稲毛」のグランドオープンを記念して、「コムスクエア1・2」、「フードスクエア」合同のスタンプラリーを開催。4月25日~5月8日までの期間中、1会計につき「コムスクエア」で2,000円以上、「フードスクエア」で500円以上購入した人にスタンプを1個押印し、3個(コムスクエア2個・フードスクエア1個)集めた人に抽選で、ホテル宿泊券や高級家電などの商品をプレゼントする。そのほか、リニューアルオープン直前の3日間限定で、新規入会した人にもれなく100ポイントを進呈する「ペリエメンバーズカードポイントキャンペーン」や購入金額100円(税別)ごとに5ポイント進呈する「ポイントアップデー」も実施するとのこと。詳細は、同施設公式ホームページ(で見ることができる。
2014年04月04日2008年に初演され、名作揃いのナイロン100℃作品群の中でも“最高傑作”との呼び声高い『わが闇』が、6月より東京・本多劇場で再演される(その後、7月まで地方公演あり)。曇り空の3月某日、都内で行われたイメージビジュアル撮影現場に潜入した。ナイロン100℃『わが闇』チケット情報『わが闇』の舞台かつ作品において重要な役割を果たすのが、田舎の古い日本家屋。撮影場所はその空気感を最大限に再現できる、大正時代の日本家屋をそのまま生かしたスタジオで行われた。テーブル以外家具のない十畳間に、メインの三姉妹(犬山イヌコ、峯村リエ、坂井真紀)が揃う。幼い頃から作家として活躍するしっかり者の長女・立子(犬山)は手に本を持って立ち、不誠実な男に嫁いだ貞淑な妻の次女・艶子(峯村)はおぼんを手に居間に入ってきた風。そしてスキャンダルを起こして実家に舞い戻ってきた女優の三女・類子(坂井)は、無造作に足を伸ばして座っている。3人のキャラクターが分かりやすく表現されており、心の微妙な距離感までも伝わるような配置も絶妙。その状態で、リズミカルなシャッター音が響く。坂井が「舞台のチラシっぽいですね」と言うと、立ち会っていた作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が「永井愛さんの作品みたいだよね」と笑顔で返す。ちなみに、まだ台本がなくタイトルのイメージのみで撮影したという初演『わが闇』のビジュアルはコンクリート打ちっ放しの空間での、冷たく抽象的なイメージだった。同じ作品だが、全貌をつかんだ上での今回は、まるで異なるビジュアルとなる。再演は、キャスト14名全員が初演と同じメンバー。その理由をKERAは、「ひとりでも変わっちゃうと作品全体の雰囲気が変わる。だから再演はできれば、全く変えないか大きく変えるかのどちらかでやりたい」と話す。「『わが闇』は自分でも大好きな作品だから再演したいと思っていた。これや『百年の秘密』(2012年)のようにドラマ性の高いものは、ギャグもののように鮮度云々ではないので、じっくりと数を重ねていくのに向いている」。5年ぶりに再会した三姉妹の息も既にぴったりだ。「これはほんとに家族劇。お客さんも登場人物の誰かに自分を置き換えて、グッと入り込む感じで観てくれる人が多かった」(犬山)、「親戚が観に来てくれて、旦那さんの言いなりになってる私の役(の気持ち)を『わかるわ』って(笑)」(峯村)、「みんないろいろあるんですよね。それぞれの人にそれぞれのツボがあって、きっとそういうところが観る人をひきつけるんだと思います」(坂井)演劇界では先駆けとなったプロジェクションマッピングなどの効果も濃密なドラマを盛り立てる、KERA版『三人姉妹』だ。公演は、6月22日(土)から7月15日(月・祝)まで本多劇場にて。一般発売は4月21日(日) より。チケットぴあではプリセール(先行先着)を4月20日(土)23:30まで受付中。以降、地方公演もあり。取材・文武田吏都
2013年04月09日12月9日(日) 渋谷・Bunkamuraシアターコクーンにて、舞台『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~』KERAバージョンの初日が開幕した。『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~』公演情報“21世紀の演出バトル”と銘打ち、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)書き下ろしの新作脚本を、12月にKERA自身が、2013年1月には蜷川幸雄がそれぞれ演出し、Bunkamuraシアターコクーンで連続上演するという挑戦的な企画。KERAバージョンのキャスト総勢28名。出演者全員によるコロス(合唱隊)の歌や、美しい装置と照明、驚きの映像効果、音楽担当のパスカルズによる生演奏によって、物語世界が眼前に無限に広がっていく大作に仕上がった。架空の町・ウィルヴィル。海と火山に囲まれた小さな島のこの町は、ドン・ガラス・エイモス(生瀬勝久)に支配されている。ガラスは巨大な邸宅に、長女バララ(久世星佳)、次女テン(緒川たまき)、三女マチケ(安倍なつみ)、母ジャムジャムジャーラ(木野花)そして後妻のエレミヤ(峯村リエ)とともに住む。祖父の代から続くエイモス家の支配。その威光により、この町には”ヒヨリ”と呼ばれる差別を受ける人々が存在している。町の動物園で働く飼育員トビーアス(小出恵介)は、祖母ドンドンダーラ(木野花/二役)とふたりで暮らしている。祖母を思うトビーアスは、貧しい生活の足しにするため、幼なじみのパブロ(近藤公園)と毎夜、盗みを働く。パブロは宗教者の卵として司祭グンナル(西岡徳馬)のもと、教会で働いている。そんな町にあるとき、錬金術師ダンダブール(山西惇)とその助手・パキオテ(大倉孝二)や、密航者(丸山智己)らがやってくる。それぞれに複雑な事情を抱えた人々が絡み合い、やがて町を揺さぶる大事件に発展する……。冒頭、パスカルズの奏でる哀愁を帯びた弦の響きが、またたく間に観客を寓話的な世界に誘う。古い西洋の町並みを彷彿とさせる舞台セット。独特なマークを掲げそびえ建つ教会、権力者の彫像、町の広場、墓。理不尽な権力が横行し、教会は堕落し、差別と反発分子がひそむ。その中で生きる人々の、それぞれの想い、愛、友情、嫉妬、憎しみ、様々な感情が渦巻き、それがいつしか大きな物語のうねりとなっていく。物語は、エイモス家をとりまく一大群像劇であり、寓話的でありながらそれぞれのドラマは緻密さとリアリティをもって心に迫り、観客は気がつけば、登場人物の誰かに自分を投影している。壮大で見応えある、贅沢な大人のファンタジー。KERA vs 蜷川幸雄の演出対決としても注目される今作品。異なる演出家、異なるキャストによって、おそらく全く異なる作品が創り上げられることだろう。『祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~』KERAバージョンは、12月9日(日)~30日(日)東京・Bunkamuraシアターコクーン、2013年1月11日(金)~14日(月・祝)大阪・イオン化粧品 シアターBRAVA!にて上演。なお、蜷川バージョンは、2013年1月、Bunkamuraシアターコクーン他にて上演。
2012年12月10日劇団ナイロン100℃の第38回本公演『百年の秘密』が、東京・下北沢の本多劇場にて上演中だ。劇作家、演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)が自身の劇団に1年半ぶりに書き下ろした、ふたりの女性の半生を描いた物語である。『百年の秘密』チケット情報ティルダ(犬山イヌコ)とコナ(峯村リエ)。ふたりの12歳の出会いから物語は始まるが、その後、時間軸は縦横無尽に移り変わっていく。ふたりが生まれるはるか以前の、ティルダの屋敷の中央にそびえ立つ楡の木のエピソードから、ふたりの少女時代、結婚、出産、そして死後、ふたりの曾孫の登場までを描くなかで、ふたりと彼女らをとりまく人々の人生が慎ましく、時に不穏な空気を纏って展開する。時間がいっきに数十年先送りされたり、ある局面に巻き戻されたりする毎に、私たち観客は新たな事実に驚き、その発端を探りたくなる。次から次へと小さなドラマを目撃し続け、そこで生まれるひとつひとつの“秘密”の共有者になっていく。寓話的な楡の木の存在、KERA作品に欠かせない映像効果の巧妙さにオープニングから心を掴まれ、瞬時に劇世界へと没入させられた。登場人物の世代交代の度に俳優も入れ替わるので、頭の中で相関図を確かめながら観るのも楽しく、集中が途切れない。中心人物でいながらティルダとコナのたたずまい、そのやりとりは訥々として素朴。それが徐々に重みを増し、ふたりの関係性を観る者に強く印象づけるのは、犬山と峯村の呼吸の確かさゆえか。描かれているのは女同士の友情に違いないけれど、どうも友情というこそばゆい言葉が観ている間はしっくりこなく、もっと無骨でシニカルな味わいだ。萩原聖人、山西惇、近藤フク、田島ゆみかの客演陣がKERAワールドに浸透して、それぞれの魅力を遺憾なく発揮。ティルダの兄エースを演じる大倉孝二は今回は笑いを控えめに、シリアスな表情で観客を惹きつける。案内人の役割を担う女中メアリー役の長田奈麻の、落ち着いた声の響きが心地良い。また、みのすけ、村岡希美といった巧者が、ティルダとコナの人生ドラマの脇役でいながらも、色濃い印象を残す旨味を見せる。2013年に結成20周年を迎える劇団の底力を感じる布陣だ。観賞後に訪れるのは、人生の大きなうねり、深い追憶の旅に同伴したような充足感。ナイロン100℃の集大成とも感じ取れる秀作に痺れながら、こそばゆかった友情という言葉をあらためて反芻したくなった。公演は5月20日(日)まで本多劇場にて上演中。その後、5月26日(土)に大阪・イオン化粧品シアターBRAVA!、5月29日(火)にKAAT神奈川芸術劇場、6月2日(土)・3日(日)に福岡・北九州芸術劇場、6月9日(土)10日(日)に新潟市民芸術文化会館と各地を回る。チケットは発売中。取材・文:上野紀子
2012年04月27日文壇の鬼才・橋本治の幻の戯曲『騒音歌舞伎(ロックミュージカル)「ボクの四谷怪談」』を蜷川幸雄の演出により、東京・Bunkamuraシアターコクーンにて9月・10月に上演することが決定した。出演は佐藤隆太、小出恵介、勝地涼、栗山千明ら若手俳優から、麻実れい、勝村政信、瑳川哲朗らベテラン勢が顔を揃える。本作は、現代を生きる若者たち<七人の侍>の自分探しの青春群像劇で、作家・随筆家として多くの名作を輩出しながら、古典文学の現代訳や二次創作にも意欲的な橋本治が学生時代に書き下ろした幻の戯曲。それを蜷川が発掘、舞台化するもの。登場人物のねじれた青春が疾走する破天荒な物語は、橋本のダイナミックかつ繊細な手法で抽出された現代性と、『四谷怪談』の作者・鶴屋南北へのオマージュが見事に昇華されている。また多種多様な音楽が効果的に挿入されており、橋本の<四谷怪談>と<ミュージカル>への情熱がほとばしる超大作だ。音楽はロックの黄金時代といわれる1970年代に本格的な活動を開始した鈴木慶一が手掛ける。執筆されてから40年の間、活字にもされたことなく静かに眠り続けていた貴重な戯曲を、蜷川が若い俳優たちの体を通してどのように表現するのか期待したい。公演は9月17日(月・祝)から10月14日(日)まで同劇場にて上演。チケットは7月21日(土)より一般発売する。【キャスト】佐藤隆太小出恵介勝地涼栗山千明三浦涼介谷村美月尾上松也麻実れい勝村政信瑳川哲朗青山達三梅沢昌代市川夏江大石継太明星真由美峯村リエ新谷真弓清家栄一塚本幸男新川將人ほか
2012年03月12日2月16日、東京・渋谷の劇場「CBGKシブゲキ!!」にて、ナイロン100℃ side SESSION#11『持ち主、登場』の初日の幕が開いた。『持ち主、登場』チケット情報この公演は、大倉孝二が「ただ、ふざけた芝居をしたい」との思いから一念発起し、その声に応える形でキャストが集合。大倉が所属している、ナイロン100℃の劇団員が挑戦の場としている“ナイロン100℃ side SESSION”として実現した。大倉と劇作家のブルースカイが構想を練り、共演の峯村リエ、村岡希美や、振り付けも担当するKENTARO!!、そして音楽のThe Dublessが、稽古場で日々アイデアを出し合い、セッションを重ねながらひとつの作品に作り上げ、出演者全員が脚本・演出・出演を共同で担う形となった。舞台はガレージを彷彿とさせるセット。何か予測しないものが生まれてくるようなワクワク感がある。ストーリーは、ロードムービーのような様相を呈しながらも、破天荒で奇抜。KENTARO!!の振り付けによる出演者全員によるダンスや演奏シーンなども随所に盛り込まれ、ブルースカイが得意とする、ナンセンスコメディ炸裂の内容となっている。大倉を中心に、実力派パフォーマー達が本気で挑んだ、粋で壊れた“ふざけた芝居”を出演者、観客ともに楽しんでいる様子だった。公演は同所にて2月26日(日)まで上演。チケットは発売中。当日券は開演の1時間前より劇場受付にて販売する。
2012年02月17日演劇をベースに、音楽、映画などさまざまなフィールドにまたがり独自のセンスを発揮しているナイロン100℃のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)。今年は3本の演劇作品を手がけるが、福田恆存作『龍を撫でた男』の演出に続いては、自身の劇団ナイロン100℃で新作『百年の秘密』に取り組む。構想中の新作について話を聞いた。ナイロン100℃38thSESSION「百年の秘密」チケット情報昨年末に、「笑いからいったん離れたい」という気持ちが芽生えたというKERA。「笑いに飽きたわけではないんですけど、コメディという括りがあると、笑わせることが必須条件になって取りこぼすものもあるんじゃないかと」。その中で浮かんだ題材は、10年以上温めていた“ふたりの女性の半生”だ。「『あれから』(2008年)という作品で幼なじみのふたりの女性の話をやりましたけど、あれは過去を絡めながら、あくまでも現在を描いていた。今回はふたりの思春期、20代、中年期、老年期、死後を均等に描くつもりです。普通に時系列に進むのか逆行していくのか、もしくはバラバラにしてコラージュのようにするのか、構成はまだ決めていませんが、いろんな方法があると思います」。ふたりの女性に扮するのは、犬山イヌコと峯村リエ。「別に松永(玲子)や村岡(希美)でもできると思うんだけど、最初に浮かんだのはこのふたり。やっぱり劇団健康(ナイロン100℃の前身)時代から一緒っていうのが大きいのかな。このふたりのシーンを書くのが好きだし、凸凹なシルエットも面白いでしょ」。若手が加わりさらなる充実を見せるナイロン俳優陣に加え、ゲストの萩原聖人、山西惇らがふたりの人生に絡んでいく。ところでKERAは長年、“女性を描くのが上手い作家”と言われてきた。自身も「男ふたりの物語を書くことには全く興味がなかった」とキッパリ。「女性のことはわからないから想像で書いてるだけ。要は……不可解だってことなんですけどね。女性作家が書く女性ってどこか言い訳めいた感じがするでしょ?僕は『こう見えるよ』ってところから描いているから、その不可解さに説得力があるのかなとは思う」。そうしたKERA目線からすると、“女性の友情”も不可解なもの。「男に比べて女性は、環境などによってサバサバと生き方を変えていく印象がある。だから女性同士の友情ってピンと来ないんですよ。友情とはまた違う、もっと複雑でデリケートな関係を描ければ」。笑いにとらわれないKERAから生み出されるドラマは、どれほどの深さで観客を飲み込むのだろう。取材・文:武田吏都公演は東京・本多劇場にて4月22日(日)から5月20日(日)まで開催。チケットは2月25日(土)より一般発売する。チケットぴあでは2月16日(木)まで先行抽選を受付。
2012年02月15日11月6日、東京・シアタートラムにて新作舞台『往転-オウテン』が開幕した。静謐な中に闇をはらんだ人物描写を得意とするKAKUTAの桑原裕子が脚本を、決してたやすくはない人間関係を巧みに舞台にのせる青木豪が演出を担当。深夜バスの横転事故に乗り合わせた乗客たちの、微妙に絡み合った4つの物語が紡がれる。『往転-オウテン』公演情報オムニバス、とはどうやら違う。同じバスに乗り合わせた男女の、乗り込む前と後の人間模様が、順不同で顔を出す。たとえば、かつて愛人関係にあった中年カップル。女の母親の遺骨を異父姉弟のもとへ届けようと、旅に出る。たとえば、桃農園を営む青年。双子の兄が婚約者を連れて、東京から深夜バスで帰ってくるという。たとえば、故あって地方へ逃れようとする男。中年女性のおしゃべりにつかまって、眠るに眠れず辟易している。そして、とある病院の一室。飛び降り自殺をしくじって入院中の少女に、深夜、奇妙な友人ができる。硬軟あわせ持つ実力派揃いだ。高田聖子演じる宣子も、市川実和子演じる浅子も、ひと癖ある女性像である。幸せを前にすると尻込みしてしまう、複雑な心理をさらりと好演。峯村リエと柿丸美智恵は、コミカルな演技の中にも豊かな人間味をにじませて、穂のかと安藤聖は若さゆえの輝きと葛藤を四方八方にまき散らす。男性キャラも個性豊かだ。妻でない女への想いに揺れる、腰痛持ちの50男(大石継太)。兄の婚約者と元カノを前に、これまた揺れる、桃農園主(尾上寛之)。それぞれの事情と秘密を隠し持つ男たち(仗桐安、浅利陽介)もまた独特の吸引力。そして舞台上で回されるハンディカメラとその映像が、虚構とリアルの境界線をより際立たせる。誰もが、何らかの旅の途中である。そしてどの旅もひとりで進むしかなく、いずれは必ず終わりを迎える。むしろ人生は「旅が終わってから」の方がずっと長いのだ。……というようなことを、桑原は声高に示さず、ただ、匂わせる。それが青木の緻密な演出と相まって、通奏低音のように、観客の胸に苦く残る。右往左往、七転八倒しながら、それぞれの登場人物が踏み出す大小の一歩。哀しくも切実な大人向けのエールだ。公演は11月20日(日)まで。チケット発売中。取材・文:小川志津子
2011年11月07日