スポーツや仕事など、ハードワークでの疲労回復には、にんにく注射や栄養ドリンク、クエン酸が入ったレモンやグレープフルーツ、梅干しが効く、とよく耳にしますが、本当なのでしょうか。糖尿病専門医で大阪府内科医会会長の福田正博先生にお話を伺いました。■医学的に実証されているのは、鶏の胸肉大仕事の前や疲れたときに、にんにく注射や栄養ドリンクを飲むとパワーが出る、疲労回復に効果があると言います。この現象について福田先生は、次のように説明します。「にんにく注射や栄養ドリンク、にんにく、酢などを使った健康食品、サプリメント、覚せい作用のあるカフェインが入っているコーヒーなどでは、一時的に元気になったような気がします。しかし、そのあとに落ち込みがあり、本質的な疲労回復にはならないようです」そうでしたか……、栄養ドリンク好きの筆者としても、服用後の体調の変化については意識したことがありませんでした。福田先生は、疲労回復に効果がある食事について、こう話します。「疲労回復に働く抗疲労物質として期待されているものとして、渡り鳥の胸肉や、回遊魚(イワシ、サバ、サンマ、タラ、マグロ、カツオ、アジ、ブリ、さけなど)の尾の肉に多く含まれる『イミダペプチド(イミダゾールジペプチド)』という成分があることが分かっています。われわれも臨床試験をしましたが、一定の効果が認められました。渡り鳥が休みなく飛び続けられるのは、羽の付け根の部分に含まれるイミダペプチドが筋肉疲労を防ぐ働きがあるからと言われています。1日に鶏の胸肉・約100グラムを1週間とり続けると、疲労回復に効果があるとされています」また、運動後すぐに、レモンやグレープフルーツ、梅干しなどを食べるとよい、とよく耳にしますが、どのような効果があるのでしょうか。「細胞内でエネルギーを作りだすシステムの一部にクエン酸や酢酸があります。クエン酸を多く含むレモンなどのかんきつ類、梅干し、いちご、キウイや、酢酸を含む米酢などを補給することは疲労回復に役立つと言えるでしょう。筋肉の疲労時に、食べ物からクエン酸を補ってやると、エネルギーが効率よく作れるようになり、乳酸の処理も早めになると考えられます」疲れた、と思えば、クエン酸、酢酸を含む食べ物やドリンクを口にすればよいようですが、福田先生は、こうも付け加えます。「筋肉疲労でない場合の精神的ストレスに効果があるのは、『バランスの良い食事と睡眠』が基本です。私個人の一日の疲労回復メニューは、腹八分目の夕食のあと、ひとかけらのカカオリッチな美味しいチョコレートと一杯のエスプレッソ一、そして早めの就寝です」■疲労回復のための簡単自炊レシピここで、鶏の胸肉、 魚の尾、かんきつ類を使った簡単レシピを紹介していただきましょう。<鶏胸肉のマヨ焼き~ピザ風>鶏胸肉を1センチの厚みの薄切りにし、フライパンで焼きます。マヨネーズと練りからしと青ネギを混ぜたソースをかけて、チーズをのせて、カリッと焼くと出来上がり。1人分の目安:鶏胸肉3分の1枚、マヨネーズ大さじ2、練りからしチューブ1センチ程度、青ネギ少々、スライスチーズ1枚<ツナ缶詰でチャーハン>玉ねぎ、にんじんをみじん切りにし、フライパンでいためます。軟らかくなったらごはんとツナ缶を加え、切るように混ぜいためます。しょうゆで味を調えて出来上がり。卵を加えるとマイルドな味わいになります。1人分の目安:ごはん1膳(ぜん)、ツナ缶2分の1、玉ねぎ4分の1個、にんじん4分の1本、卵1個、しょうゆ小さじ1杯<生しぼりグレープフルーツジュース>小さめのグレープフルーツを、レモンしぼり器などでギュッとしぼってジュースにします。炭酸水を少し混ぜるとのどごしよく飲めます。甘味を足したいときは、はちみつを小さじ1杯程度加えるとよいでしょう。やみくもに栄養ドリンクに頼っても、根本的な疲労回復にはならない。日ごろの食事やドリンクが大事だ、ということが分かりました。これらの情報を頭に入れて、毎日早めの疲労回復を意識して過ごしたいと思います。監修:福田正博氏。糖尿病専門医、大阪府内科医会会長。医学博士。ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)院長。名医として数々のメディアで紹介され、著書に『糖尿病は「腹やせ」で治せ!』(アスキー新書780円)、『専門医が教える 糖尿病ウォーキング!』(扶桑社新書756円)、また、最新刊の『専門医が教える5つの法則「腹やせ」が糖尿病に効く!』(マガジンハウス 1,365円)は、糖尿病患者だけではなく、ヘルシーダイエットとして有効な、「食べ方」、「ウォーキング」、「腹やせ」の実践法が分かりやすく述べられていて話題になっている。(海野愛子/ユンブル)
2012年07月03日河本メンタルクリニック(東京都墨田区)では2009年12月、”婚活”を行っている過程で不調になった人のための「婚活疲労外来」を立ち上げた。この”婚活疲労”について同クリニック顧問の小野博行医師に話を聞いた。小野医師は河本メンタルクリニックで治療にあたるほか、院長を務めるおのクリニック(東京都東村山市)でインターネット電話サービスを活用した「婚活疲労スカイプ・カウンセリング」も行っている。「私自身は婚活というものについてよく知らなかったのですが、もともと鬱(うつ)の患者さんの中に婚活をしている方がいて、うまくいったかいかなかったかでそのときの病状に影響が出ていたんです」と小野医師。「ネットでも調べてみたところ、婚活をしているという人のブログの中には、こちらから見たら鬱(うつ)に足を踏み入れているような人も見受けられた。これはきびしいものなのだなと感じました」と振り返る。そこで婚活特有の精神疾患に対応するために、専門外来を立ち上げることになったという。婚活疲労外来を受診する人には当初男性が多かったそうだが、現在は男女半々くらいになった。年齢は30代~40代くらいが多いという。症状はうつ病、不安障害。「結婚相談所でマッチングされた相手からのメールが減った」などささいなことで疑心暗鬼になってしまう人もいるという。小野医師は、「婚活は、ほかにはないような特殊な場面。一回断られるだけでも大きなダメージを受けることになる」と語る。婚活においては、年齢、学歴、年収、性格、マナー、エスコートの仕方、家族、住むところなどあらゆるところから評価される。しかも、婚活ではどうして相手から断られたかがわからない。理由を伝えないのは相手のことを思ってのことなのだが、それが分からないだけに、あらゆる点、全人格を否定されたような気持ちになってしまうのだという。婚活疲労で不調におちいってしまうのは、きまじめな人や余裕がない人に多いそうだ。小野医師は「思い込みが激しい人にも多い。例えば、何歳までに結婚しなくては、と自分で年齢に制限を設けてしまうようなことです」と話した。「婚活は、疲労するにはする」と小野医師。「ただそれが疲労だけなのか病気なのかが、その人への道案内のポイントになる。ものごとをマイナス方向に考えがち、というと鬱(うつ)の可能性がある。不安障害だと頭痛や胸の痛み、過敏性腸症候群など体に出る場合も多い」と話す。こうした不調におちいらないためのアドバイスとしては、「婚活仲間をつくる」があるという。婚活をしていることを人に知られたくない、友人や親にも言っていない、という人も多いそうだが、「自分だけの考えの中に入り込んでしまわないように、人に相談することが大切」と小野医師。さらに「断られたときの大きなダメージは、体験していない人にはなかなかわからないもの。相談相手にするのは婚活を体験したことのある人のほうがよいと思います」と述べた。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年06月19日