就学相談で特別支援教室へ通うことになった未診断の次男ふー次男ふーは現在5歳。就学相談の結果、次の4月に入学する小学校では、通常学級に在籍しながら特別支援教室(※)に通うことが決まりました。それまで私は、ふーが特別支援教室に通う必要があるとは思っていませんでした。ASD(自閉スペクトラム症)の小4の長男・ミミと比べて、困っていることが少なかったからです。ですが、ふーが通う保育園と児童発達支援で「必要性の理由」となる現場をいくつか目撃するようになり、ふーには特別支援教室が必要なんだと納得した私。兄のミミのときは診断書を書いてもらい、それを学校へ提出しましたが、ふーは現時点で一年前と同じく診断はされていません。そこで、保育園と児童発達支援、民間の療育で「就学支援シート」を作ってもらい、それを学校へ提出する予定です。それもあり、小学校入学が迫ってくる中、私はふーがどんなことに困っているのかよく観察しています。※特別支援教室とは、東京都などで導入されている発達障害のある子どもたちをはじめとした個別の教育的ニーズに対応し、より適切で効果的な指導を行うための一つの指導の形態です。通常学級に在籍しながら、一部の時間、別の教室で指導を受けることができます。東京都では特別支援教室と呼ばれていますが、地域によって名称が異なります。「教えて」が言えず、せっかく編んだマフラーを全部ほどいてしまったふーふーが通う保育園では、年長さんになると毛糸のマフラーを作るのが恒例。ふーも楽しく編んでいたのですが、先生から「ふーくん、途中で全部ほどいてしまったんですよ」と教えてもらいました。本人に聞くと、下のほうに編み忘れた目があって、それが穴になっているのに気がつきやり直したかったのだそう。翌日いちから編みなおすというので、「頑張ってね」と応援しました。ですが翌日、ふーが一からマフラーを編んでいたところ、途中でやり方が分からなくなってしまったそうです。そこで先生に「教えて」と言えればいいのですが、困っていることを伝えられなかったふー……。Upload By taekoその日は自治体の療育へ行く日だったので、早くお迎えに行ったのですが、教室から出てきたふーはぐずぐず……。このままでは療育まで引きずるだろうと思ったので、その前にアイスを買って食べました。これでふーの気分も持ち直しました!Upload By taekoそしてふーが大好きな踏み切りを通りながら療育へ向かい、十分余裕を持って到着!したのですが……。療育では指しゃぶりに足もじもじ、そして鉛筆を強く握って……療育についたふーは、いつも遊ぶおもちゃを「あれ......」と指さし、先生に使いたいことをアピールしました。そこで先生は優しく「何て言うんだっけ?」と促してくれたのですが、ふーは困った顔をして親指を口に入れお気に入りのタオルのようにしゃぶり、足をもじもじ。そしてシクシクしだして……最後は抱っこ。「使っていい?」と聞けなかったようです。Upload By taekoその後、先生が丁寧に声かけしてくれ、次の活動であるパズルを2種類見せてくれました。これに少し興味を持った様子のふー。「ママに手伝ってもらう?」と先生の提案に応じ、私もパズルを半分手伝うことになりました。ここで少しずつ復活し、2種類のパズルを結局1人で完成させたふーはにっこり。自信に繋がったようです。いつも通りのふーになり、お気に入りのブランコ遊びを再開しました。思いっきり楽しみ、笑顔でニコニコ!満足したところで、机でのプリントをやることに。1枚目はすぐクリア。2枚目は数字の順番どおりに鉛筆で点を繋いでいくと絵になるプリントです。ここでふーはゴキゲンな気持ちが行き過ぎたのか、ついアレンジしてこのプリントに踏み切りの絵を書きだしました。ここで先生は「ちょっと待ってね、あとで好きな絵を書き足して良いから、先に数字を繋げようか」と声かけ。Upload By taekoこれがショックだったようです。気分が乗っていただけに、止められてがっくりしてしまったふーは、口に親指を入れて指しゃぶり、そして鉛筆を持つ手に強く力が入り、プリントを机から落としました。Upload By taeko先生は丁寧な声かけをしてくれたけれど、今日はここまで……。ふーのお気に入りのタオルを渡して心を落ち着かせ、帰宅しました。ふーの困りごとは「言葉で伝えられないこと」が発端かも?そして不安感をおさえるため、指しゃぶりなどの行動につながっているようです学校ではマフラーの編み方を「もう一度教えて」と言えなかったこと、療育では、「使っていい?」が聞けなかったこと、そして先生や私から「“あれ”って何って言うんだっけ?」という声かけに追い詰められたのかな……と思いました。プリントでは、「楽しいことを思いついたから、描いて私や先生に見てもらいたかったのに止められた!せっかく見てもらおうと思ったのに……」と考えていたならショックを受けてしまったのでしょう。学校に提出する「就学支援シート」にこれらのことを書いてもらい、また、自治体が用意してくれる給食を無理に勧めないことをお願いする「偏食の子どもへの配慮のプリント」をこの「就学支援シート」とプリントを合わせて小学校へ提出する予定です。Upload By taekoこの就学支援シートがふーの楽しい学校生活の助けになることを願って……。そして、就学して1ヶ月経った頃、様子を報告するため改めて児童精神科を受診する予定です。執筆/taeko(監修:室伏先生より)taekoさんが、ふーくんの置かれた状況、表情や仕草から、ふーくんのお気持ちを理解しようととても丁寧に関わっていらっしゃるご様子が伝わってきました。いつも一緒にいらっしゃるtaekoさんなら、こう伝えたらふーくんがどう感じるか、理解ができたり、想像がつく場面もあるかと思いますが、第三者に理解してもらうことは難しいこともありますよね。すぐには伝わらなかったとしても、こんな時にはこう感じる子なんだなという具体的な事前情報があるだけで、先生もさまざまな視点でお子さんの言動を想像できるようになったり、関わり方を工夫することができるようになると思います。就学支援シートの助けも借りながら、ふーくんが先生をはじめとする周りの方々と信頼関係を築き、楽しく小学校生活を送れることをお祈りしています。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月06日小学校入学と同時に始まった行き渋り現在小学6年生のわが家の長女『姉子』は、赤ちゃんの頃から繊細なところはあったものの、幼稚園の時は楽しく園生活を送っていました。しかし、小学校へ入学するとすぐに、登校前に泣き出したり、腹痛や頭痛を訴えたりして、行き渋りをするように。また、ある日突然チックの症状が出るようになりました。そして、1年生の時の個人懇談で担任の先生から発達検査を受けることをすすめられ、すぐに発達支援センターへ相談に行き、2年生になってすぐWISCを受けました。結果はかなり凸凹があり、これまで相当しんどい思いをしてきたことが分かりました。行き渋りやチックは姉子が出していたSOSだったのです。私は姉子に申し訳ない気持ちでいっぱいで、今まで気づかなかった自分をすごく責めました。でも、発達検査を受けたことで姉子の特性や困り事を知ることができたので、「上手にサポートできれば学校生活も楽しめるかもしれない」と、私は前向きにとらえるようにしました。しかし、転勤族のわが家は突然引っ越しが始まります。発達検査を受けた年と同じ2年生の夏、姉子は都心部の小学校に転校することになりました。突然の転校でさらに行き渋るように環境の変化でストレスを受けやすい姉子はますます学校を行き渋るようになりました。さらにコロナ禍で、何とか登校できても、誰とも会話できず、転校したばかりなのに友達をつくることもできません。Upload By スパ山この頃の姉子は本当につらそうで、外出すらできなくなり……。私も「こんな状態になってまで学校に行かなくてもいいのではないか」と思うようになっていました。と同時に、ここで「休んでいいよ」と言ってしまったら、「この先も何かあったらすぐあきらめるようになるのではないか」という底知れぬ不安や、「ほかの子は学校に行っているのに……うちも頑張って行けるようにならなくては」、という気持ちのはざまで揺れて本当に悩みました。Upload By スパ山母子分離不安と自閉スペクトラム症だと診断を受ける行き渋りについて、担任の先生とスクールカウンセラーさん、そして私たち母子で何度か相談していく中で、ある日姉子がポツリと「学校に行っている間、お母さんと離れるのがさみしい」とこぼしました。発達の凸凹があるから登校に不安があるのだと思っていた(もちろんそれもあるのでしょうが)私は驚きました。もう小学生だし、まさか母親と離れるとさみしいなんてことあるはずがないと思い込んでいました。そして、通院していた児童精神科で「母子分離不安」の診断を受けたのです(自閉スペクトラム症もこの時に診断されました)。Upload By スパ山スモールステップを繰り返し、約1年かけて母子登校できるようになんでだろう?どうしたらいいんだろう?と、深い霧の中にいた状態だった私たちにとって、少しだけ進む道が見えてきた瞬間でした。姉子は医師の指導のもと投薬治療を始めました。そして、私と一緒に家で授業の時間割を合わせて用意をする、一緒に学校までまで行って校門にタッチして帰る、登校して先生にプリントをわたす、といったスモールステップを地道に続け、約1年かけてやっと別室に母子登校できるようになりました。(「母子登校」とは、保護者が付き添い、子どもと一緒に登校することです。学校に行くことに不安を感じたり、不登校になってしまった場合に、通常登校へ戻るための支援策として姉子が通っていた学校では取り入れてありました)。Upload By スパ山2年間の母子登校で娘に笑顔が私は、毎朝姉子と一緒に登校し、教室の隣の部屋で課題のプリントなどをしながら一緒に過ごし、給食を食べているのを見守り(コロナ禍だったので、関係者以外の飲食は禁止でした)一緒に下校していました。最初は数十年ぶりに小学生になったような気持ちでいた私でしたが、学校なので家にいるように横になったりスマートフォンを見たり、のんびり休憩できる時間もなく……。ずっと姉子のそばにいなければならないので、常に緊張状態で、しんどくなった時もありました。それに、お昼ごはんは帰宅するまで食べられなかったので、朝ごはんを食べ忘れるともう大変!お腹の音が鳴りっぱなしで……食いしん坊の私にとって、これはかなりつらい経験でした(だからといって痩せたりはしませんでした。不思議だなあ?(笑))。Upload By スパ山そんな中で、クラスメイトや先生方にもとても温かく接していただきました。そして、姉子にもだんだん笑顔が見えるようになってきた時には「母子登校をやってきてよかったな」と、涙が出そうでした。こんな日々が結局約2年続きましたが、またその話は別の機会に書きたいと思います。執筆/スパ山(監修:新美先生より)分離不安症(母子分離不安症)は、愛着の対象(=安全基地、主には母親)から離れることを年齢に不相応に極端に怖がるような状態です。もともと繊細で不安を抱きやすい性質のお子さんに起きやすく、大きな環境の変化や、その環境(園・学校など)が合わずお子さんが不安を抱きやすい状況が続くと分離不安の症状が出やすくなります。学校に行くと分離不安となり、保護者から離れられない場合、対処法としては大きく分けて3つあります。(1)お母さんなどが一緒に登校する(母子登校、付き添い登校と言われることもあります)。(2)学校が大きい不安の対象になっているなら、学校の環境を本人が不安に感じないように工夫する(3)学校以外に本人が大きな不安を抱かなくても行ける場所を探す(例えばフリースクール、ホームスクーリングなど)といったことが考えられます。正直、母子登校は記事にもあったように保護者の方の負担もとても大きいと感じています。それでもスパ山さん親子は、かなり長い期間をかけて、また別室登校と言った形式で(2)の学校自体がお子さんに負担のないやり方の工夫などもしながら、だんだんと姉子さんに学校でも笑顔が見られるようになってきたという、母子登校をやってよかったと思えるところまで行きついたということですね。簡単には語れない2年間だったのではないかと思いますが、本当にお疲れ様でした。スパ山さんも姉子さんも本当によく頑張られましたね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月05日「もしかして、息子は発語がゆっくりかも?」と思ったきっかけわが家の4歳になる息子たーちゃんは、3歳半の時に知的障害(知的発達症)のないASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。たーちゃんが1歳半の頃、数日違いの誕生日のお子さんと児童館で出会ってびっくりしました。そのお子さんが、保護者の方とおしゃべりしていたのです。保護者の方や私の言っていることも大体分かっているようで、お返事もしてくれました。一方のたーちゃんは、意味のある発語は「ワンワン」のみ。話しかけても無視ばかりで、人の言葉を理解している様子もあまりありませんでした。Upload By みかみかんそんな、同月齢のお子さんが「ママ、パパ」と呼んでくれる姿が羨ましくなって、「なんでたーちゃんはしゃべってくれないのだろう」と思ってしまいました。今思えば、その時に出会ったお子さんが、たまたま言葉の発達が早いタイプだっただけなのですが、当時の私はたーちゃんとの差を感じて少なからずショックを受けました。自宅に帰って早速インターネットで調べてみました。1歳半で言える単語がひとつのみ、指差しなし、理解している様子もないのは、やはり発達が遅いようで、調べれば調べるほど不安でいっぱいになりました。それでも検索する指を止められず、「発達障害」「知的障害」「自閉スペクトラム症」という言葉がずっと私の頭の中でぐるぐるしていました。Upload By みかみかんその後たーちゃんは、1歳9ヶ月までママ、パパと言うことはありませんでした。発語が少ない息子がとった行動に、ドキリ……。2歳前、自分の意思を言葉で伝えられないたーちゃんに質問しても、オウム返しばかりでした。「おやつ食べる?」と聞いても、「たべる?」と聞き返してきます。そして、何かやりたいことや欲しいものがあると、手を引っ張って私や夫をそこへ連れていくのです。エコラリア、クレーン現象、というインターネットで何度も調べた言葉が頭をよぎりました。「やっぱり障害があるのかな」と不安になって、たーちゃんのそんな行動を穏やかな心で見守ることはできませんでした。ある日、いつものように「おせんべいとクッキー、どっちがいい?」と、たーちゃんが答えやすいような質問をしました。たーちゃんに食べたい気持ちがあることも、たーちゃんがその質問にまだ答えられないことも分かっていました。そして、たーちゃんの返事は「どっちがいい?」でした。Upload By みかみかん普段ならなんでもないそのやり取りでしたが、発達に悩み精神的に参っていた当時の私は、その場でポロポロと涙を流してしまいました。「もうすぐ2歳なのに、こんなに簡単な質問にも答えられない。どうしてなの?たーちゃんはこれからもずっとおしゃべりできないの?」と悲観的になっていました。その後、「おせんべい?クッキー?どっち?」と声を震わせながらたーちゃんに聞いても、たーちゃんは笑って「どっち?」と言うだけでした。2歳のクリスマス。息子の成長を感じたひとこと発語や発達についてはずっと悶々と悩んでいましたが、たーちゃんの言葉は少しずつ増えていきました。それでも、自分から何かを要求したり気持ちを表す言葉はほとんどなく、木を見て「き」と言う、葉っぱをみて「はっぱ」と言うくらいでした。さらに、公園で会う、たーちゃんより下の月齢のお子さんのほうがたくさんおしゃべりしている姿を見たりして、複雑な気持ちを抱くことも少なくありませんでした。どうしても、ほかのお子さんとたーちゃんとを比べてしまっていました。そんな中、たーちゃんが2歳になり迎えたクリスマス。たーちゃんが、うれしいサプライズプレゼントをくれたのです。クリスマスの朝、サンタさんからプレゼントをもらったたーちゃんは、一刻も早くそのおもちゃで遊びたかったようでした。おもちゃの箱を見て、私と夫に「あけて」とはっきり言ったのです。それまでのたーちゃんなら、無言で私や夫の手を掴んで箱に触れさせていたのに。Upload By みかみかんその言葉を聞いて、少しずつでも確実にたーちゃんは成長しているんだと実感してうれしかったです。「たーちゃんは、本当は伝えたいことがいっぱいあるんだ」と気づくことができました。その後のたーちゃんの成長については、また別の機会に書かせていただきます。執筆/みかみかん(監修:森先生より)「言葉の発達」というと、どうしても発語……「しゃべるかどうか」に目がいきがちです。でも、しゃべるかどうかには本当に個人差があります。大人だっておしゃべりな人もいれば静かにしているのが好きな人もいますよね。言葉そのものは理解しているけれど、あまりおしゃべりに興味が向かない、というケースもあります。そういった場合、ある日突然、これまで言葉を溜め込んできたかのように一気に発語が伸びていくこともめずらしくありません。どうしても心配や焦りは出てくるかもしれませんが、みかみかんさんのように、声かけをいっぱいして成長を見守ることが大切ですね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月04日自閉スペクトラム症(ASD)とは?ASD(自閉スペクトラム症)は、社会的コミュニケーションや対人関係の構築が難しい、また常同的・反復的行動が多くみられる、乳幼児期に出現する精神発達の障害です。普段と違うことを嫌がる、大きな音や光などへの感覚の過敏さがあるなど、「強いこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」という特性もあり、知的障害(知的発達症)を伴うこともあります。症状の程度はそれぞれの人によって差があるため、スペクトラム(spectrum:範囲や連続体など幅を持った分布の意味)として診断されるようになりました。参考:傳田 健三著「自閉スペクトラム症 (ASD) の特性理解」『心身医学』57 巻 (2017) 1 号 P.19-26ASD(自閉スペクトラム症)は生まれつきの脳障害で、脳内の情報処理の仕方に障害があるといわれていますが、その原因はまだ分かっていません。この時期の成長や発達には大きな個人差がありますが、1歳でASD(自閉スペクトラム症)であると診断される指標として、・共同注意場面において「指さし」や「(他者の)指さし方向に顔を向ける」行動が出にくい・「他者の顔を見てほほえむ」などの社会的行動が出にくい・定型発達の1歳児にみられる「関心の共有」に興味を持ちにくいなどがあげられます。次章以降で詳しく紹介します。参考:横山佳奈、吉田翔子、永田雅子著「自閉スペクトラム症児への早期介入における現状と展望」『名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要 心理発達科学(Web) 』66巻 (2020) P.7-16参考:自閉症Q&A|厚生労働省1歳児の発達の目安って?定型発達児における、1歳頃の発達の目安としては、・歩き始め、手を使い、言葉を話すようになる・身近な人や身の回りの物に自発的に働きかけていく・歩く、押す、つまむ、めくるなど、さまざまな運動機能の発達や新しい行動の獲得により、環境に働きかける意欲を一層高める・物をやり取りしたり、取り合ったりする・おもちゃ等を実物に見立てるなどの象徴機能が発達し、人や物との関わりが強まる・大人の言葉を理解するようになり、自分の意思を親しい大人に伝えたいという欲求が高まる・指さし、身振り、片言などを盛んに使うようになり、二語文を話し始めるなどがあげられます。参考:保育所保育指針解説書 |厚生労働省ASD(自閉スペクトラム症)の特性は1歳児でも表れる?--違和感や発達の遅れ、気になるサイン1歳児は言葉の表出がまだまだ乏しいため、日常の中で気になる行動を見逃さないことが大切です。1歳頃に表れる、気になる発達の遅れやサインとは、どのようなものがあるのでしょうか。1歳児の気になる発達の遅れ、1歳児に表れやすいASD(自閉スペクトラム症)の特性として、・目が合いにくい、呼ばれても反応しない・社会性、言葉の発達(喋るのが遅い)などが表れやすい傾向・睡眠の問題(寝つきが悪い、途中で目が覚める、夜泣き)・人見知りがなさすぎる、あるいは人見知りが強すぎる、場所見知りが強いなどがあげられます。子どもにASD(自閉スペクトラム症)があるかどうかの診断において、厚生労働省は1歳6ヶ月児健診でM-CHATという質問紙を使用した「スクリーニング検査」を推奨しています。対人(対象物)関係や行動面(こだわりや常同行動など)、日常生活における反応や行動を、保護者から聞き取ります。・ほかの子どもに興味がありますか?・何かに興味を持った時、指をさして伝えようとしますか?・あなたのすることをまねしますか?(バイバイや拍手など)・名前を呼ぶと、反応しますか?など、実に20項目にわたり、将来において社会性の重要な基盤となる「非言語の対人コミュニケーション行動」を確認します。成長は個人差が大きいこともあり、M-CHATでASD(自閉スペクトラム症)の可能性が高いとされた1歳児のすべてがASD(自閉スペクトラム症)と診断されるわけではありません。また、基本的にM-CHATは保健師などがチェックするものであり、保護者自身がチェックするものではありません。参考:「改訂乳幼児期自閉症チェックリスト修正版」M-CHAT-R_F_Japanese.pdf(mchatscreen.com)1歳児に表れることの多いASD(自閉スペクトラム症)の特性による症状Upload By 発達障害のキホン※成長の個人差は大きいので、すべてに当てはまる、あるいは当てはまる項目が多いからといって「ASD(自閉スペクトラム症)である」というわけではありません。どこに相談や受診をすればいい?保護者ができることとは?1歳児は成長の個人差がとても大きく、発達の振れ幅が多い時期ですが、育てづらさがあったり、「この子に合ったよりよい関わり方を知りたい」と思ったら、まずは自治体の保健師さん・保健センターに相談しましょう。それ以外にも保健所や療育センターなどでも相談できます。参考:「1歳を迎えるお子さんをもつ保護者の方へ」|国立障害者リハビリテーションセンター子どもの発達について不安に思った場合は日常の様子をメモするなど、記録に残しておくことも大切です。保護者が見たこと、感じたことは何より重要な資料であり、それが早期発見、早期療育にもつながります。ただし、1歳児は成長・発達の個人差が一番大きい時期ともいえます。過度に心配したり気にしすぎたりせず、様子を見ながらおおらかな気持ちで接することも大切です。(監修:新美先生より)1歳頃のお子さんを育てるうえで、「1歳の子どもはこうであるべき」「1歳の子どものしつけはこうするべき」ということにとらわれ過ぎる必要はありません。うちの子はこういうことに興味があるんだな、こういうことをしていると楽しそうだな、こういう場面で困っているな、こういうシチュエーションは不安になるんだな・不快なんだなというお子さんの興味や苦手を探して、好きなこと興味ある活動を増やして、不快を減らして安心を増やすという方向性で関わっていけば間違いはないかなと思います。その中で、睡眠がとれない、癇癪が強すぎるなど、親子が生活しづらい困りごとがある場合は、相談機関に早めに相談するのもよいと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年02月02日中学校からの着信ASD(自閉スペクトラム症)の太郎は、現在中学2年生。特別支援学級に在籍しているが、基本的に授業は交流学級で行われている(※)。一学期の終わり、私の仕事がちょうど終わった頃に携帯に着信が入った。(※)授業の受け方や支援方法などは地域によって異なりますUpload By まゆん「〇〇中学校」太郎が通っている中学校からの着信だった。学校からの着信は珍しくはない。しかし何度かかってきても胸がざわつくもの。「今回は何があったのだろう」と、毎回不安になりながら電話に出ている。「もしもし。いつもお世話になっております。太郎の母です」私は冷静な声で電話に出るよう努めた。「こんにちは」聞き慣れた声は、太郎の担任の先生だった。太郎の担任の先生は、いつもであれば落ち着いてゆっくりと話す方である。しかしこの時は少し様子が違った。「えーっとですね」言葉に詰まっている様子から、何かあったのだと想像ができた。先生は続けて話を始めた。「今日の音楽はリコーダーのテストだったんですが……。それがみんなの前で吹くというテストで、太郎くんはそこで固まってしまって……」話は続き、リコーダーのテストは前もって生徒たちに伝えていたらしいが、太郎は「知らなかった」と言い「急な出来事」になってしまったようだということだった。Upload By まゆんみんなの注目を浴びた太郎は固まって動かなくなり、特別支援学級の先生に誘導されて少人数のクラスへ移動したとのことだった。音楽の授業は午前中に行われたが、特別支援学級に移動したあとも緘黙状態は続いたという。そしてようやく放課後になると表情は和らぎ、そのまま迎えに来た放課後等デイサービスのスタッフと学校を出たということだった。次に、今後のテストの受け方についての方針の相談があった。リコーダーのテストは受けなければ評価をできないため、必ず受けてほしいということだった。どうしたら受けることができるかと先生と話をした。本来はみんなと同じ条件でクラスメイトの前でテストを受ける形であるが、注目を浴びることで緘黙状態になるのであれば個人的にテストを受けることも可能ということだった。そして、最終的には本人の意見を聞いて、どういう形でテストを受けるか決めることになった。先生もここまで緘黙状態が続くとは思っていなかったようで、2人で教室にいて話をしようとしても太郎の口からは言葉がほとんど出てこなかったとのことだった。先生の声から、衝撃が伝わってくるようだった。すぐに私が電話したのは電話を切ったあと、すぐに放課後等デイサービスに連絡した。太郎がどんな様子だったかを知りたいというのが1番で、学校での出来事も情報共有したかった。タイミングよく太郎の担当の先生が対応してくださった。放課後等デイサービスでは、太郎自らリコーダーのテストについて話を少ししたらしいが、その後は何もなかったかのようにいつも通り過ごしていたということだった。Upload By まゆんそして次は、家にいるばあば(私の母)に電話をした。太郎に何かあって事情を話している時、ばあばはいつも冷静に「ほう。ほう。ふむふむ」と聞いてくれる。そしてばあばはこう言った。「さっきデイサービスから帰ってくるなり、リコーダーのテストができんかったって言ってたけど、自分から言えてるけん大丈夫やろー」私はこの言葉にまた安心した。その後、太郎と私は家でリコーダーの練習を一緒に行い、無事にテストを受けることができた。結局テストは、先生が太郎と話し合ってくださり、特別支援学級まで音楽の先生が来てくれて一対一で実施したという。テスト終了後の太郎は、特にその出来事を口にする訳でもなく、いつものように穏やかに過ごしていた。Upload By まゆん多方面からの支え問題が発生した時、こうして多方面からの支えがあることで私と太郎は生活ができているのだと思います。また、日頃から周りには感謝しているのですが、こういう問題発生時により強く周りの方の力というものを感じることができています。今回も学校の先生方、放課後等デイサービスのスタッフの方、私の母、そして太郎に力をもらい乗り越えることができました。太郎の特性については情報共有シートに記載して学校の先生に渡してあるのですが、どのような時にどのような場面緘黙になるのか、実際目の当たりにしないとよく分からないものだと思います。今回の件は、太郎を知ってもらうという意味では良い機会になったのではと考えています。今後も同じような場面が学校に限らず出てくると思いますが、その時その時で対処の仕方も変化していくと予想しています。引き続き、周りの人と連携をとりつつ今後も過ごしていきたいです。執筆/まゆん(監修:初川先生より)太郎くんのリコーダーテストをめぐる出来事から、情報共有について、また太郎くん・まゆんさんを支えるネットワークに関するエピソードをありがとうございます。特性についてあらかじめ情報共有していてもすべてをフォローできるわけではなく、学校はさまざまなイベントがあり、また子どもたちも日々変化・成長があるものです。こうして、何かあった際に、担任の先生と保護者の方との間ですぐに共有し、対応を検討できるのはいいですね。また、太郎くんの緘黙度合いがなかなか長時間にわたったことから、関係する方々ともその後の様子を聞き取りされたのもいいことだと感じました。保護者がお子さんの様子を常に見ているわけにもいかず、また、場や人によってお子さんも出し方を変えるかもしれない。リコーダーのテストにうまく対応できなかったという、いつもとは違う展開があったことを関係者が知っておくだけでも大事ですし、中心にいる太郎くんの様子を確認できたのは安心につながります。お子さんは自分の身に起きたこと、自分の気持ちをすべて説明できるわけでもないので、それぞれで様子をよく見てもらう意味でも、そして今後似たような出来事への予習としても情報共有は大事であると感じるお話でした。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月31日小中5年間不登校だった娘わが家の娘、いっちゃん(ASD(自閉スペクトラム症)・現在16歳)は、小学校5年生から中学時代まで不登校でした。発達障害と睡眠障害(非24時間睡眠覚醒症候群)があり、朝決まった時間に登校することが難しかったのです。全く行かないというわけではなく、午前中に目を覚ましたときは登校します。とはいえ、泊まりの学校行事には不参加でしたし、年間の出席日数でいえば、欠席していた日のほうがはるかに多かったと思います。欠席した日の勉強はどうしていたかというと……学校には月に7日程度は行っているわけなので、登校した際に、休んでいた間の授業プリントや小テストなどをもらってきて(大体教室の机の中に入ってる)、自宅で教科書を見ながら授業プリントで自習するということはやっていました。Upload By 寺島ヒロ小テストは、親か6歳年上のお兄ちゃんが付き添って、そのプリント自習の後にやらせていました。そのテストの正答率は8割ほどでしたが、担任の先生によると、ほかの児童生徒さんともさほど差はないということだったので、そのまま提出していました。ちなみに、定期テストの結果は真ん中くらい。都市や国の名前や、技術や家庭科のテストで「けがき線」や「まつり縫い」のような用語を問われると正答率が悪いという特徴は見えてきていました。親目線では「あんまり勉強してないな……」という思いはありつつ、しかし、家では絵を描いたり音楽をつくったりとほかの興味のあることで忙しくしていたので、本人も家族も「特別遅れてないならまあいいか」という感じでした。高校は通信制の学校に進学しました。通信制の高校に進学して通信制の高校に進学すると、当然ですが出席日数などは問われません。もともと自習が苦にならないタイプの娘、繰り返して見ることのできるビデオ授業がメインになったのは大変ありがたかったようです。担当の先生のテレビ通話でのフォローアップも受け、着々と単位を取得することができました。【いっちゃんが通信の高校に進学した顛末はこちら】↓しかし、希望の大学を目指そうとすると少々、いえかなり厳しい状態です。小中学校を通して学校の制度や教育システムがどうにも理解できなかったいっちゃんでしたが、高校でキャリアガイダンスや進学指導を受け……発達的にも良いタイミングだったのでしょう、やっと理解し「わたしは大学に行きたい!」と言いだしました。思いも新たに、しかし高校1年生の終わりに受けた初めての模試の結果は撃沈! それでもあきらめるにはまだ早いですし、受験がなくても勉強はしておくに越したことはありません。「数Bが全然分からん!」「忘れていることが多すぎるみたい」という娘にも、はっきりとした課題感が生まれてきたよう。今が学び直しのチャンスかも!?というわけで、娘と話し合って、高校2年生の夏休みは小学校4年生の内容から勉強のやり直しをすることに決めました。紙の本のドリルで学び直し!やり直しの方法は、市販のドリルを本屋で買って、一緒にやることにしました。Webには、高校が用意してくれたものも含めて、インターネットでできる便利な問題集などもありますが、紙の本のほうが親がついて見てやりやすいですし、手で紙に文字を書き入れる「面倒くささ」も、娘には良い経験になるだろうと思いました。さあ、これで夏休みの間にみっちりやるぞ!と思った矢先……なんと、わが家にコロナが襲来。ばたばたと家族が倒れる事態になってしまいました。危うし、学び直し!しかし、「決めたことはやる!」ASDのこだわりか、家族の中でいち早く復活した娘、家族が寝ている中、一人もくもくとドリルを進め、夏休みの終了日までに、ついに中学3年生までの分を終わらせてしまいました!Upload By 寺島ヒロただ「勉強しなきゃ」「いい点とらなきゃ」と思うだけでは難しいけど、4年生の分のドリルを終わらせる、その次は5年生の分のドリルを終わらせる……みたいに具体的にクリアする目標が見えていたので、手が付けやすかったのかもしれません。大学受験にはまだまだ遠いけど……今(高校2年生の冬)も、高校1年生の分のドリルで復習しながら、学校の勉強を進めています。「ドリルまた買ってきて」とか「英検の参考書が欲しい」と言ってくるようになり、小中の頃に比べると、はっきりと自主的に学んでいる感じがしています。執筆/寺島ヒロ(監修:新美先生より)不登校中と通信制高校進学後の学習について、詳しく聞かせていただきありがとうございます。学校にあまり通えていなくて睡眠障害で生活リズムが不安定だった時でさえも、学校のプリントを自習で着々とやりこなし、テストで正答率8割、真ん中ぐらいの成績をとれていたということは、いっちゃんは自習学習に向いている、学習が基本的に苦じゃないタイプの方なのでしょう。思春期の不登校期間に、コツコツ学習をこなしている人は多くない印象なので、とてもすごいです。そして通信制高校の学習スタイルは、そんないっちゃんにはとても合っていたのでしょう。さらに、高校でのキャリアガイダンスや進路指導がヒットして、明確な目標ができてしまえば、強いですね。苦手なところもしっかり分からないところまで戻って学び直しをして、分かる、できるようになる手ごたえをつかめてきたのでしょう。こうなってくると、学習が楽しくなってきて、目標までまっしぐらですね。楽しみです。正直、ここまでコツコツ自主的に学習できるお子さんばかりではありません。これはお子さんのタイプにもよるので、どんなに周りが仕向けようとしても動かないこともあるでしょう。学習に限らなくても、明確な目標やモチベーションがあって、本人のやり方にフィットすると、見違えるように何かに打ち込めることもありますが、その出合いがいつ来るのかは誰にも分からず、気長に見守るしかないこともありますね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月30日大きな不安を抱え始まった幼稚園生活。順調に見えたけれど……わが家の長男あーにはASD(自閉スペクトラム症)があります。まだそうとは知らなかった頃に迎えた幼稚園の入園式で、一人だけ走り回り、夫の眼鏡も私のコサージュ(借り物!)も破壊する暴れっぷり……。大きな不安を抱えた状態で迎えた幼稚園生活ですが、いざ始まってみると一見そこまで大きな問題があるわけではありませんでした。登園不安が強いわけでもなく、泣いたり暴れたりが頻発するわけでもない。トイレにも行ける。身辺自立や集団参加には難があるけれど、年少さんでは珍しいことでもない。それでも私は、3歳半健診で発達について相談しようと決めていました。私が発達相談をしようと決めた2つの理由3歳半健診であーの発達について相談すると固く決意していたのはなぜか……母親の勘、というとあまりにもふわっとし過ぎているので、当時をよくよく思い返して言語化を試みようとするのならば、やはり「わが子とコミュニケーションが取れないことによるストレス」の一文に尽きると言えるでしょう。3歳なりのコミュニケーション。いや、年相応でなくてもいい、それが叶わないフラストレーション……。おしゃべりはするんだけど、会話のキャッチボールができないんですよね。例えば、「パパはどこに行ったの?」と聞いたら「パパはお菓子が好きなんだよ」と返ってくる。「パパ」という単語は分かる。それについての話をする。おしゃべりはできている……だけど、それってコミュニケーションではないんだよなああああ(ここで頭を抱える)。会話の……ストラックアウトなんだよなああああ!(うまいこと言えた?)Upload By よいこ一事が万事これなんです、ちなみに12歳の今もその傾向が非常に強いです。そして謎遊び。幼稚園で、小高い山の上に立って葉っぱや砂をひたすら落とす。人とは遊ばないし、いったい何が彼をそんなに魅了しているのか分からない……。それがダメってわけじゃないけれど、おままごとやごっこ遊び、お友達との交流などにだんだんと興味を持ち始める年齢において、意味のない(ように見える)ことを2時間とか平気でできる。Upload By よいここの2点から導き出される結論……。わたしにとって、あーは「よく分からない」存在でした。わが子なのに「よく分からない」存在?募る不安自分で産んだ、自分の子どもなのに、何を考えているのか、よく分からない。いや、生まれた時からべったりで育てているので何が好きか、何が嫌か、は分かります。何が欲しいかも。でもそうじゃなくて、こちらの言うことを理解してくれない、してくれようともしないあーは、私にとってまるで「未知の生き物」のようでした。そして理解できないことで、なんだか不安になるのです。Upload By よいこしかし相手は自分の子ども。「可愛さ」と「分からない」が拮抗する毎日。よく分からない、を分かりたい。愛しているから、可愛いからこそ理解したい。そしてこの不安から脱して安心したかったんだと思います。発達相談を決めた一方で……「気のせいだよ」という言葉も期待していた自分というわけで、発達の相談をすることになんの迷いもありませんでした。でも一方で心の奥底で、「気のせいだよ」「そんなことないよ」「普通に生きていけるよ」って言われることを望んでいた気もします……。Upload By よいこ母の気持ちは常にアンビバレンス。だってそうじゃないー!?できれば普通がいいじゃん、みんなと一緒がいいじゃん!そんな物分かりよくいられるわけなくない??と、思い返せば雑念だらけの診断前。いいじゃんいいじゃん人間だもの!そんなこんなで、運命の(?)3歳半健診の日を迎えたのでした。執筆/よいこ(監修:初川先生より)3歳の時に発達相談を受けると決断された理由のシェアをありがとうございます。自分の子どもなのに分からない。可愛いと分からないが拮抗する。よいこさんが言葉にしてくださった当時の心境に共感なさる読者の方も多いのではないでしょうか。よいこさんが理由として挙げられた、会話のキャッチボールならぬ「会話のストラックアウト」(お伝えされたいニュアンスがよく伝わる表現ですね)。そして、「謎遊び」。このくらいの年の子どもはこのくらい育っているはず、こうして遊ぶはずという知識や経験との違和感。体感としておぼえる違和感。そうした違和感はとても大切だと相談業務にあたりながら日々思います。そうした違和感をきっかけに相談やお子さんへの理解、支援などへつながることができます。場合によっては、「心配しなくて大丈夫ですよ」の場合もあるかもしれませんし、支援者の方としばらく一緒にお子さんの成長を見守る伴走体制に入ることもあると思います。どんなお子さんであっても、子育ての中で悩ましく思うときはあると思いますが、そこに何らかの診断が後からつく場合にはその悩みや違和感、葛藤の度合いがかなりのものだと思います。保護者が日々悩みながら、アンビバレントな心境になりながらも、子どもは育ち、子育ては続いていきます。お子さんはもとより、保護者を支える意味でも相談や支援につながってくださることを支援者としては願うところです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月26日1歳半で言葉が出ていなかったわが家の長男けんとは3歳の時に自閉スペクトラム症と診断を受けました。けんとが周りの子たちに比べて発達がのんびりだと、私がハッキリ気が付いたのは1歳半健診の日でした。けんとが初めての子どもだった私はどれくらいの月齢の子が、どういう行動をするのか……という知識がありませんでした。母子手帳などに書いてある「生後〇ヶ月で〇〇をする」というのは「あくまで平均的な目安で、人それぞれ発達のスピードは違うだろうから、気にしなくてもいいのかな」と、のんびり考えていたのです。けんとは1歳半で言葉が全く出ていませんでしたが、私はそれほど気にしていませんでした。Upload By ゆきみ1歳半健診の通知が届き、指定された日程に保健センターへ。会場には、けんとと同じ1歳半とは思えないような子どもたちで溢れていました。けんとは言葉が全く出ていなかったことに加え、歩き方も、ほかの子に比べると不安定でヨチヨチ。落ち着きがなく、常に興味のあるものを見つけては歩きまわっていました。ほかの子が保護者とやりとりをしながら、椅子に座って順番を待っている姿に私は愕然。順番を待っている間だけで、けんとは「何かがみんなと違う」と私は感じました。そして、名前が呼ばれ、いざ1歳半健診がスタート……とはならなかったのです。やりとりが上手な周りの子たちに驚愕案内された大きな部屋では、数組の親子が椅子に座っていました。けんとは、自分の席につくまでの間に気になるものを発見したのか、そこへ行きたくて全然座ろうとしません。そして大声で泣き出してしまいました。落ち着かせている間、私はほかの子の様子をチラチラと見てみました。周り子が保護者と一緒に、大人しく椅子に座っているだけで「すごい!」と驚きました。さらに、保護者とコミュニケーションを取りながら、保健師さんとも指さしや言葉をつかったやりとりが上手にできている姿を見てさらに驚愕。Upload By ゆきみ当時のけんとは言葉も出ていないうえに、指差しも全くしていませんでした。大号泣するけんとをあやしながら見渡した、周りの子の1歳半健診の模様は、とにかく衝撃的で驚きの連続でした。ほぼ何もしないまま1歳半健診が終了けんとの様子が少し落ち着いたので1歳半健診がスタートしました。保健師さんがけんとに挨拶をしたり、話しかけたりしても反応は薄く、保健師さんの顔を見ることもしませんでした。保健師さんからの問いかけに、ほぼ何もしないまま1歳半健診が終了。周りの子たちとの違いに不安になりすぎて、私は放心してしまいました。その様子を見たからなのか、保健師さんが「希望者は臨床心理士さんによる発達相談が受けられますが、どうなさいますか?」と声をかけてくださいました。待ち時間はかなりあるようでしたが、発達相談を受けて帰ることに。Upload By ゆきみ発達相談から繋がっていった支援別室で臨床心理士さんによる発達相談を受けました。私と臨床心理士さんが、けんとが産まれてから今までの発達について話をしている間も、けんとは落ち着きがない様子。けんとは落ち着きがない様子。臨床心理士さんは、けんとの行動を観察したあと、けんとに話しかけ、いくつか質問を出しました。しかし、けんとは心理士さんの話を聞こうともしませんでした。当時、私は次男を妊娠中。あと数ヶ月で里帰り出産を予定していたので、次男の出産を終えたあと、またけんとの様子をみていただくということでその日は終わりました。Upload By ゆきみ次男を出産し1ヶ月月が過ぎた頃、けんとは2歳になりました。しかし、相変わらず言葉は出ておらず、指差しもしません。改めて発達相談をして、けんとの様子を見てもらいました。その発達相談にて、市で行っている親子教室を紹介してもらいました。そして年少の歳から、地域の幼稚園に通うのではなく、少人数で手厚く療育を受けられる市立の発達支援施設に通うことを親子教室の先生、臨床心理士さんなどに薦められ、通うことを決断。親子教室や発達支援施設では発達に関する勉強会があったので参加し、けんとの特性について理解を少しずつ深めていくことができました。今、思い返してみても、周りの子たちとの違いに驚愕しすぎた1歳半健診。あの日、発達に関する悩みがスタートした、私にとっては思い出深い1日となりました。執筆/ゆきみ(監修:室伏先生より)1歳半健診でのけんとくんのご様子、ゆきみさんのお気持ちを具体的に共有していただき、ありがとうございました。想定外の状況に、ゆきみさんのご不安や戸惑いもとても大きかったのではないかと思います。自閉スペクトラム症のお子さんの中には、普段と違う状況が苦手で、目新しいものに注意を惹かれやすかったり、不安感からそわそわしたりパニックになってしまうという子も多いものです。健診などの普段と違う環境では、なおのこと力を発揮するのが難しいかもしれません。早い段階で療育に繋がることができたこと、勉強会への参加などを通して家族の方がご理解を深めることができたこと、本当によかったですね。またけんとくんに関する記事を楽しみにしております。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月24日いじめを避けて私立中高に入学した私ASD(自閉スペクトラム症)がある私は、公立小学校でひどいいじめを受けていました。兄が心配して両親に「義子は中学以降は私立に行かせてやってくれ、公立に進むともっとひどいいじめに遭うと思う」と頭を下げてくれたことから、中学受験をして中高一貫の私立の進学校に通うことになりました。進学校では好成績によってスクールカースト上位におっとりしたお嬢様の集まる女子校だったその学校では、スクールカーストはスポーツの得意さや言動のそつなさではなく、成績の良さで決まるところがありました。私はピタッといじめられなくなりました。「あの常に学年で3位以内の宇樹は私の友達なんだよ!」とほかの子に自慢する子や、いつも成績のいい◯組の宇樹ってどの子? と見にくる、他クラスの子もいるぐらいでした。コミュニケーションの面ではやはり浮いていたので、うっすら敬遠されて、同じグループの子たちが気づいたら休みの日にこっそり私抜きで遊びに行っていたとかはありましたが、それ以上のことはありませんでした。親や先生の期待×完璧主義・白黒志向で無理が加速仕方ないことなのですが、世間や周囲の大人の誰にも発達障害の知識がなかった30年前当時、両親には「学校の成績がいい = 有名大学に行って有名企業に入るか士業などに就いてエリートになる」といったイメージしかなかったようです。口でははっきり言わないものの、両親が私に「エリートになるに違いない」という期待を寄せているのはひしひしと伝わってきていました。また、父は幼稚園ぐらいの私に「世の中は戦場で、お前たちはそこで戦い抜いて生きていくんだ」と言って聞かせたり、小学校時代に学校に行きたくないと言ったら「いま学校に行かなくなったらお前の学歴は途絶えてしまう。そうするとお前は将来路頭に迷う。だから頑張って学校に行きつづけろ」と諭したりしました。ASD傾向のある幼い子どもだった私が、父の言ったこのようなことを鵜呑みにして恐怖し、「全力で努力しつづけて勝つ(良い大学に行くなどしてエリートになる)のでなければ生きていけない」と思い込んだのは自然なことです。私は本来の特性にもある完璧主義・白黒思考を加速させ、強迫的なまでに勉強に打ち込むようになりました。食べる寝る以外ほとんど勉強に捧げた青春と弊害中高時代は慢性的に過労状態でした。耳鳴りや口内炎、風邪がいつまでも治らないなどは日常茶飯事。いつも歩きながら眠り込んでしまいそうなほど眠くて、「思う存分眠れるなら思い残すことはない」と思うくらいでした。いま思えば学校まで片道で2時間近くかかる通学で毎日午前5時起きというだけでも体力的に無理がかかっていただろうに、高3になれば、午後4時ぐらいに学校が終わると予備校の始業に間に合わせるために文字通りダッシュして電車に飛び乗り、帰宅は午後11時近く。その後、午前0時過ぎまで復習をして、寝るのは午前1時半……。睡眠時間は慢性的に4時間前後でした。そして定期テストのときには徹夜に近いことをし、カフェイン飲料で心身に鞭を打っていました。自室を片づける気力体力が枯渇していて、部屋はいつも足の踏み場もないような状態。休日は夕方まで寝っぱなし、ニキビは顔じゅうに広がり、頭がクラクラしてくるほどの冷えのぼせに苦しめられ、毎度の生理痛はあまりの強さに時にはトイレで昏倒するほどになりました。部活を楽しむ余裕などもちろんなく、アルバイトや遊びで人間関係を楽しんだり学んだりする余裕もありませんでした(余裕もなかったし、「学生の本分は勉強だ」として父から禁止されていました)。幅広い経験を積んでたくさん勉強以外のことを学ぶべき時期に、あまりにも勉強、それも詰め込みの受験勉強ばかりに費やしてしまったこと、また、大事なこの時期にあまりに自分の身体を痛めつけてしまったことを、今深く悔いています。大学に入っての挫折、バーンアウトからのひきこもり傾向勉強も大学選びも自分の意志から出たものではなく、親の勧めや期待に盲目的に従うような形で300%ぐらいの無理を何年も続けていた私。親の言っていたとおりの有名私大に受かった時点で、すべてのモチベーションが吹き飛んでしまいました。バーンアウトです。入ったのは、有名作家を多数輩出している文学部でしたが、授業が始まってすぐに、「私はどうやら文学に興味がないらしい」と気づいてしまいました。ショックが大きすぎて、しばらくの間、頭が真っ白に……。高校までのように、「学校側が決めた時間割があって、何時から何時まできっちり授業に出なければいけない」といったような縛りがなくて自由なこと、どんな学生生活にするかを自分で選んで自発的に進めていかなければいけないことも、私の混乱に拍車をかけました。私はロクに大学の授業に出なくなりました。当時勃興期だったインターネットでチャットに没頭するなどして、だんだんに生活は昼夜逆転。昼間に出かけられなくなっていきました。この頃、悪いことに母の調子も悪くなります。私が出かけようとすると何かと妨害してきたり、私が日常の世話をしてやらねばならなくなったりしたことで、私はここから今の夫に出会って実家を出るまで10年間ほど、暗黒の準ひきこもり生活が始まることになってしまいました。ASDの私が今思うこと ーーまずは自立訓練、そして手に職が必要だった最近、ある自立訓練施設が「働き続けられる人間になるためには、スキルを身につける前に、心身の健康管理をして上手に日常生活を継続できるようにする『自立訓練』が必要」ということを発信しているのを見て、本当になるほどと思いました。誰もこのこと(世の中には生活の仕方について訓練が必要なタイプの人がいて、私がそのタイプだということ)を知らなかったのだから仕方ないのですが、私は子どもの頃から最近に至るまで、「私も当然、スキルを身につければ働けるようになるはずだ」と思って必死に勉強したり資格勉強したりしてきたのです。でも言われてみれば確かに、私に必要なのは、無理しすぎず適度に努力しつづけて結果的にものごとをやりとげることだったり、その前提としての無理しすぎないマインドセットだったり、そういうことだったのですね。また、やはり仕方がないことではありますが、「学校の成績がよい = 有名四年制大学に入るのがベスト」という、私の親世代の価値観も、結果的に私を苦しめてしまったなと思います。今となっては、私のようなタイプは、何か専門学校に通って「手に職」となるようなスキルや資格(特に、資格がなければその仕事に就けない「業務独占資格」)を身につけて早めに社会に出たほうがよかったのではとも思います。20代から30代は、定型発達の若者にとっても社会生活を送る上で大事な人生経験を積む時期。発達障害のある若者は人生経験から何か学んで自分のものにするのに時間がかかるので、この時期に何かしらの社会活動が継続できるようコンディションを保っておく(=ティーンのうちに本人にそぐわない無理をさせない)のが何より大事だと思います。私は自分に合う進路選択ができなかったため、この時期をひきこもってしまって学習機会を損失したり、立ち直るための治療に精一杯で過ごしてしまって充分なキャリアも積めなかったりしたので、次の世代の子どもたちにはもっと違った生き方をしてほしいと願っています。文/宇樹義子(監修・鈴木先生より)父親にもこだわりがあり、同じようなASD特性のある方だったのではないでしょうか。また、自分のやってきたことや、やってこれなかったことを、過剰に娘に押し付けて巻き込んだケースとお見受けしました。バイトや部活をして社会性を高めることも重要ですが、中には人間関係などでやめていく人も見られます。大学に入って自由が逆に混乱を招いたように、ASDの受け身型タイプの方は、人からやることを示されてその通りに行っていく方が楽なことも一方ではあるものなのです。中学高校の進学校で学んだことは決して無駄ではなく、将来に必ず役立つものと思います。プラス思考でやっていきましょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年01月19日「見た目」が変わっていると見失う?わが家の長男、タケル(ASD/自閉スペクトラム症・現在23歳)はASDの特性からか、物を見つけることがとても苦手です。タケルが机の上に置いていったものを、私がどこかに移動させたりすると、どんなに近くてももう見つけきれません。横向きに置いてあった財布を、自分でうっかり縦向きにしていただけで見失ったこともあります。Upload By 寺島ヒロタケルの記憶の中の「カタチ」が少しでも変わっていると、「違うモノ」と思い込んでしまうようです。だから、目の前にあるものでも、見つからないなんてことがしょっちゅうあります。帰省のついでに読まない本を持って帰ろうと……さて、昨年のお正月のことです。久しぶりに大分県の自宅に帰れることになったので(私たち家族は息子の通学のために大阪府に家を借りて普段はそちらで暮らしています)、大阪の家のリビングの本棚にあった、もう読まない私の本を持ち帰ることにしました。2段の棚に入っていた本は、中くらいの段ボール箱ちょうど1個分になりました。大分の自宅まではおよそ500キロ。車で8時間半の道のりです。私と夫で交代しながら、丸一日かけて帰省しました。大分の家では、長らく放っておいた部屋の掃除、そして近所の方へのご挨拶、地元でしか買えない調味料などを買いに行くなどして忙しく働きました。その間、子どもたちはそれぞれの部屋を掃除し、大阪に持って行きたいものを物色したりなどしていました。イリュージョン? ないはずの本が本棚に!?翌日また一日かけて大阪に帰宅しました。タケルといっちゃんは、2人とも重そうな紙袋を持っています。大分の家で見つけたもう一度やりたいゲームや本などを持って帰ったとのこと。大阪の家は借りている家ですから、あまり荷物を増やしたくないんだがなあ……とは思いましたが、気持ちは分かります。「仕方ないなあ、自分で置き場所を決めて片付けるのよ」と言い渡して、その日は寝てしまいました。翌朝、目を覚ますと……なんと! リビングの本棚に、私が大分の家に持って帰ったはずの本が詰まっているではありませんか!そう、タケルが大分の家で見つけて「めっちゃいい本があった!」と思い、大阪の家に持って帰ってしまったのです!タケル「ちょうど良い感じに棚が空いてた」って! 違うヨ!その本、以前からここにあったんだヨゥ……。Upload By 寺島ヒロ意識するかどうかの差?ほかにも持って帰ったり、持って行ったりしたいものがあったのに……。この本たちが往復1000キロも無駄に旅したのかと思うと、膝が抜けるくらいガックリしました。一度ちらっと見ただけの漢字やテレビCMを完璧に記憶していたりすることもあるのに、ずっと目の前にあった本の背表紙は覚えてないタケル。これもASD特有の感覚や、認知特性によるものなんでしょうか。発達障害、まだまだ謎なことが多いです。執筆/寺島ヒロ(監修:鈴木先生より)もしかしたら、ASDだけではなく不注意優勢に存在するADHDの要素もあるのかもしれませんね。物をなくしたり、見つけにくかったりする人はいつも同じ場所にしまう習慣をつけるか、透明のケースに入れておくような工夫が必要です。色で分けたりファイル化したりすることで見つけやすくなるかもしれません。これを逆に考えると、例えばテレビを過度に見すぎているお子さんの場合、テレビを大きな布で覆っておくのもよいかもしれません。布で覆うことで視界に入らなくなるため、テレビの存在に気付かず見ようとしなくなる可能性もあるからです。このように、ASDの特性を踏まえた発想ができるとよいかもしれませんね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2024年01月18日2歳目前、保健所へ発達相談の電話をした娘が2歳になる目前、発達に何かあると確信した私は、保健所へ発達相談の電話をかけました。数日後、家に保健師さんが来て、娘の様子を詳しく確認してくれました(もともと1歳半健診で要観察になっていたのでそこまでの流れはスムーズでした)。保健師さんに娘の今までのことや発達で不安なことを伝えたところ、市でやっている「親子教室」をすすめられました。ですが話をよく聞いてみると、親子教室へ半年通ったあと、さらに支援が必要なお子さんに対しては、発達支援センターでの約3ヶ月間の療育プログラムをすすめるということでした。わが家は転勤族で5ヶ月後に引っ越しすることが決まっていました。そのため、私は親子教室を飛ばして、発達支援センターへすぐに通えないか聞いてみました。娘の様子を見ていた保健師さんは、少し考えたあとに「お母さんにならお伝えしても大丈夫そうなので……」と前置きしてから「しぇーちゃんは、発達支援センターに通うことをおすすめします」と言って、発達支援センターのパンフレットをくれました。これ以上モヤモヤする期間を過ごしたくなかったので、保健師さんが柔軟に対応してくれたことには感謝しかありません。いよいよ発達支援センターへUpload By マミヤ私は翌日、保健師さんに教えていただいたとおり、さっそく発達支援センターに電話をかけました。発達支援センターでは、未就園児を対象にした親子通所の発達支援プログラムを提供しているとのことでした。週に1回2時間、全12回で構成されていて、最後の12回目は発達検査を受けた上で、医師が診察をするとのことでした。緊張と期待を込めて参加した初回は、娘の多動が大爆発し、とにかく室内を追いかけ回した日でした。親子で一緒に運動をするのですが、娘はたくさんの刺激に興奮して声を上げ、私のことは全く視界に入りません。ほかのお子さんが遊ぶおもちゃすべてに興味を示し、おやつの時間も少ししか座らず(偏食で食べない)、終わった時には親子で汗だくでした。ほかのお子さんもそれぞれ発達に不安な部分があるからこそ、ここに通っているのだと理解してはいましたが、正直なところ、娘はその中でもとんでもなく突出していると思いました。唯一の救いは、ここでは娘の大変さを誰もが分かってくれているということでした。先生方もフォローをしてくれるし、ほかのお母さん方も見守ってくれている気がしました。私は誰よりも激しく動き回る娘を追いかけながらも「ここで療育を受けたら、娘に何かいい変化があるかもしれない」という希望を捨てず通い続けました。発達支援センターでの娘の成長Upload By マミヤそれからも、発達支援センターではいろんな経験をさせてもらいました。初めは興奮して走り回っているだけだった娘ですが、だんだんと先生の指示が聞こえるようになり、ダンスなどにも参加するようになりました。そして、そんな娘の変化を先生方やほかの保護者の方が一緒に喜んでくれ、今まで孤独だった育児が変わりました。その日その日をなんとか過ごすのではなく、今日は家で娘と絵カードをやってみようとか、療育でやった体遊びをしてみようとか、娘との時間を意識した生活に変わったと思います。そして、発達支援センターの最後の療育の日、絵本の活動の時間に椅子に座ったことがない娘がしっかりと座って聞いていました。発達検査を受けた娘。医師から結果の説明を受けるUpload By マミヤそしてプログラムの最終日、娘は発達検査を受けました。検査が終わると医師から結果の説明と合わせて診察がありました。先生は療育中の娘の多動や目の合いづらさなどが気になるとのことでしたが、まだ2歳なので、現時点で診断するかどうかはあくまで保護者の希望を優先しますと言われました。引っ越し先で療育に通うためには受給者証が必要だったため(引っ越し先の自治体では、受給者証発行には医師の診断書が必要でした)、そのことを伝えると、その場でASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。結果的に、2歳目前で自ら発達相談の電話をかけたことで、その後の早期療育や発達検査、診断へとつなげることができました。今回はわが家の娘が2歳4ヶ月という比較的早い段階で診断を受けた経緯を書きましたが、お子さんの発達に悩んでいらっしゃる方の参考になれば幸いです。執筆/マミヤ(監修:新美先生より)2歳前に発達に何かあると感じ、積極的に動いて早期療育・診断に結びついたエピソードを聞かせていただきありがとうございます。発達障害の概念自体、ここ10数年で急速に広まってきたため、保護者の方の認識は非常に幅広くまちまちです。地域のシステムとしては、あまりそういうことを感じていない保護者の方が戸惑わないように、ゆっくり、段階的に、マイルドに療育などにつなげていくような仕組みになっているところが多いかもしれません。なのでマミヤさんのように、すでに自ら発達に関する情報を求められて、お子さんに必要なことはなんでも早めに受けたい知りたいという場合は、記事にあったように積極的にこちら側の思いを伝えていくのは良かったと思いました。発達支援センターのように、お子さんのさまざまな特性に対応してもらえる場があると、余計な気をつかわず親も子も安心して、さまざまな経験を積むことができますよね。また発達検査や診断を受けることで、よりお子さんに適した情報や支援にたどり着くメリットも大きいと思います。そのあたりが詳しく伝わるエピソードを聞かせていただき、ありがとうございました。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月16日まずは利用可能な放課後等デイサービスの情報を集める!住んでいる地域によって放課後等デイサービスの数も種類もさまざまだと思いますが、私の住む地域には、近所に特別支援学校があるので、放課後等デイサービスの数は比較的多いほうだと思います。でも多いからこそ、どの施設を選べば良いのか分からず悩むことになりました。そもそも、どこにどのような施設があるのか?まずは情報を集める必要がありました。児童発達支援センターや、市役所の子ども課などで近辺の放課後等デイサービスのパンフレットや資料を集め、何十軒とある施設の中から行きたい場所を選ぼうとしたのですが、全ての施設を見学する時間も余裕もありませんし、どの施設がわが子に合うのか?どのような雰囲気なのか?は紙面上の情報だけでは全く分かりませんでした。Upload By みん数ある放課後等デイサービスの中からわが子に合う施設を選ぶポイントは?そこで、私はインターネットやSNSなどで気になる施設の情報を調べてみることにしました。写真やブログなどを見ることで、少しですがどんな施設なのかを知ることができました。また、すでに放課後等デイサービスへ子どもを通わせているママ友たちに話を聞いて情報を共有し、Pを通所させたいと思う施設をある程度ピックアップしていきました。それから、施設に直接電話をかけ見学の予約を入れようとしたのですが、施設によっては見学できたとしてもすぐには空きがなく、利用できるのは半年~1年は待たないといけないところや、希望する日数や曜日は定員がいっぱいで利用ができないところもありました。そうやって地道に電話をかけ続け吟味した結果、私はPが利用できそうな施設を4ヶ所見学することにしました。見学の時は学校と家からの距離、送迎の有無、安全面を重点的に確認しました。Pは施設で起こったことなどを私に話すことができないので、防犯カメラはついているか?ワンフロアでたくさんの人の目がある場所で過ごせるか?またP本人や利用者の誰かがパニックになった時にクールダウンができるような場所があるか?脱走できてしまいそうな窓やドアはないか?などを確認しました。見学の時は、同時に利用者の様子も見ることができたので、全体的な年齢層や障害の程度、どのようなことをして過ごしているのかも分かり、イメージしやすかったです。そしてPの障害の程度や特性などを施設側へ説明し、Pがどのような子か、ある程度理解していただいたうえで、契約する放課後等デイサービスを決めました。Upload By みん受給者証のひと月の上限日数をどのように利用するのかを考えるわが家の場合は受給者証のひと月の利用上限が23日なので、週に4〜5日放課後等デイサービスを利用することができます。23日全てを同じ施設で過ごすのではなく、預かり型の施設と療育特化型の施設の2ヶ所と契約をすることにしました。なぜなら1ヶ所だけだと、もしもその施設がPに合わなかった時や何かのトラブルがあって辞めないといけなくなった時、また施設自体が突然移転や閉鎖になった時に困るかもしれないので、2ヶ所に分けて通わせたほうが良いと思ったのと、違う施設を利用することで、療育もレスパイトもどちらも取り入れることができると思ったからです。Upload By みん現在Pは、この曜日はどちらの放課後等デイサービスへ行くのかも理解していて、両方の施設で楽しく過ごすことができています。私もスタッフの皆さんと連絡帳や面談、送迎時にPの支援に関することを話し、それらの情報を特別支援学校とも共有していただいているので、安心して預けることができています。預かり型、療育特化型、どちらにもたくさんのメリットがあるので、その話はまた次回詳しく書けたらと思います。執筆/みん(監修:初川先生より)Pくんが利用する放課後等デイサービスの選び方、実際利用してみての感想などのシェアをありがとうございます。就学後の生活を組み立てるにあたって、放課後等デイサービスについて情報を知りたい、何から検討を始めたらよいか悩ましいと考えている方にとってはとても参考になるお話でした。地域によって放課後等デイサービスの数や種類はだいぶ異なります。またどのような障害をお持ちのお子さんが利用する事業所かということもさまざまなので、まずはお住まいのエリアで情報収集をと思います。Pくんが利用しているところは、スタッフの方との連絡がスムーズで学校とも情報共有していただいているとのこと、そしてPくんが楽しく過ごせていること、何よりです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月15日そもそもチックって……?それまでの私のチック症に対する認識子育てをしている方なら、一度は耳にしたことがあるんじゃないかと思うチック症。私は恥ずかしながら息子が発達障害と診断されるまで、「あー、聞いたことある。ストレスとかが原因やっけ?」くらいの認識でした。2~3歳頃から息子が目をぎゅっと目をギュッとまばたきするようになった時も、私はただただ「独特な癖だな~」くらいにしか思っておらず、それが“チック症”とは全く結びついていませんでした(この時が一番私の心が平和だったかもしれない……)。Upload By 海乃けだま息子が2歳半の時ASDと診断されたことをきっかけに検索魔になっていた私ですが、発達障害について調べれば調べるほど怖くもなっていました。"発達障害に合併しやすい疾患"とか"発達障害の二次障害"とか……インターネットって良くも悪くもいろんな情報が溢れてるじゃないですか……。もう見れば見るほど、読めば読むほど、「こうしちゃいけない、ああしちゃいけない」ばっかりに目がいって、そのうち「こうしたら二次障害になっちゃうかも!」と、"理想の母像"と"完璧な育児"を自分に課していたように思います(ま、思うだけで全くできてなかったんですけどね……笑)。もしかして……チック症?風邪をきっかけに出てきた症状で気づいた息子のチック。息子が療育に単独で通園するようになった夏(4歳9ヶ月頃)のある日、鼻水と咳がよく出るタイプの風邪をひきました。普段の息子は風邪をひいてもあまり鼻水や咳が出ないタイプだったので、その時の風邪は「珍しく鼻水も咳も長引いてるなぁ」と思っていました。痰が絡んだような"ゴホゴホ"の咳が、徐々に"コンコン"になり、治ってきたかなぁと思っていた矢先、"コンコン"の咳の後に"エ゛ーーーッヘン"という妙な咳払いがつくようになりました。治りかけで喉が痒いのかな~なんて最初は思っていたのですが、そのうち"コンコン"の咳もなくなりいよいよ全快しても"エ゛ーーーーッヘン"は治りません。『…………え?これ、もしかして……チックなんじゃ?』そう考え出したら最後、もうその"エ゛ーーーッヘン"が気になって気になって仕方がありません。息子がその咳払いをするたびに「またやってる……あ、また……え?10分おきくらいにやってないか??」と頭の中は咳払いでいっぱいになっていきました。Upload By 海乃けだま小児精神科の定期受診で相談してみると……一日中咳払いをする息子にいよいよ「やめてくれぇー‼︎」と爆発しそうになっていた頃、ちょうど小児精神科の定期受診がやってきました。診察室でも相変わらず"エ゛ーーーッヘン"を連発する息子。しかし先生は何も言いません。発達の状況、最近の困り事などを一通り聞かれた後、最後に「ほかに何か気になることある?」と聞かれ、思い切って先生に「この咳払いって、やっぱりチックですか?」と聞いてみました。先生からは「あーー、そやね。チックやねー。でも指摘せずに、気にしないのが一番よ。そのうち消えてくからね」と大事な感じはなくサラッと返答されました。『やっぱりチックやったんか……』と落ち込む一方で、先生のこのあっけらかんとした返答に少し気持ちが楽にもなったのを覚えています。息子のチック症のそれからと今……息子のチックに初めて気づいたのは4歳の頃の風邪がきっかけですが、思い返せば、2~3歳頃に「独特な癖だな~」としか思っていなかった目をギュッとまばたきする行動も、おそらくチック症状だったのだろうと思います。そのまばたきもいつのまにかしなくなっていました。"エ゛ーーーーッヘン"という咳払いのチックの行方はといいますと、夏の終わり頃にはいつのまにかしなくなり……新たに首をすくめるというチックが現れました(笑)。それまた首をすくめるチックも、冬ごろにはいつのまにかなくなり……代わりにしゃっくりのようなチックが現れ……というように、わが家の息子のチックはさまざまな症状へと変貌しながらも繰り返し出現しています。現在はというと、先月インフルエンザにかかり、またもや"エ゛ーーーーッヘン"の咳払いのチックが出ています(いや、戻ってくんのかーい!笑)。病院の先生に言われた、『気にしない』『注意しない』の姿勢で今も見守り続けています。Upload By 海乃けだま執筆/海乃けだま(監修:室伏先生より)息子さんのチック症に関して、ご共有ありがとうございました。チックは比較的よく見られる症状で、お子さんでは10人に1~2人ほどと言われています。けだまさんが共有してくださったように、チックは、少ない時期があったかと思えば、また増えてということを繰り返すことも多いですので、一喜一憂せずに長い目で見守っていただくのがよいと思います。特に学年の切り替わりやイベントの多い時期などに増えて、ひと段落すると落ち着くというお子さんも多いようです。症状は緊張している時に出やすいお子さんもいらっしゃれば、自宅のようなリラックスできる環境で増えるというお子さんもいます。発症は幼児期~小児期が多く、成人期までに軽快、消失してしまう方が多いとされています。一過性で1年以内に症状が消失してしまうこともよく見られるので、軽い症状であれば、指摘したり叱ったりせず、見守っていただくのがよいと思います。日常生活に影響が出るような場合(大きな声で叫んでしまったり汚言があり周囲への影響がある、チックによる体の動きが大きく苦痛がある、本人がとても気にしていたりチックのせいで自己肯定感が低下しているなど)や長期化する場合には、薬剤による対症療法や認知行動療法などが行われることもあります。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略
2024年01月15日自閉症娘、中学入学で部活デビュー!広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、中学1年生。中学生になってから、自分の意志で部活を始めました。Upload By SAKURAいろいろと苦手が多い娘。初めは娘が入部することで、何かトラブルが起きないか、迷惑をかけるのではないか、心配していましたが、顧問の先生から話を聞いたり、娘の楽しそうな様子を見て、部活動を通じていろんな経験をしてくれるだろうと、私たちも嬉しく思っていました。Upload By SAKURAある日、ふとした疑問が……そして、入部してしばらく経った頃……Upload By SAKURA中学の2、3年生に「先輩」をつけて話す娘を見て、「あーさんも先輩後輩の関係に入ったんだな~」と感慨深いものを感じていたのですが……ふと思いました。Upload By SAKURA「先輩」はつけているけど……敬語は?使ってる?気になった私は、娘に確認してみることにしました。娘、先輩に対してタメ口なことが発覚!?Upload By SAKURA娘は察することが苦手。暗黙の了解で理解することはできないのです。周りを見ることも苦手なため……Upload By SAKURA同級生と先輩の会話を聞いて、合わせるということもできていませんでした。私たちは娘に話をしました。Upload By SAKURAUpload By SAKURAUpload By SAKURA中学生になり、「これはこう」という決まりきったことだけを教えるより、いろんな背景や事情も教えた方がいいと思っていましたが、娘にとっては混乱するようでした。様子を見て、教えていきたいと思います(笑)執筆/SAKURA(監修:初川先生より)中学生になったあーさん、部活に入ったのですね。中学生になると突然上級生の敬称として「先輩」がつき、敬語で話すことになりますね。小学校の時は「さん」「くん」づけで敬語もなく遊んでいたのに、途端に文化が変わる感じがありますが、よくよく考えると戸惑ってしまうのも無理はないなと感じます。そうした、昨日まではこれでよかったのに、今日から(中学生になったら)こうなるという変化も、誰もはっきりとは教えてくれないもの。多くの子たちはなんとなく状況を見ながら、中学生としてうまくなじむ流儀を身につけてゆくのでしょうが、暗黙の了解や空気を読むことが苦手なASD特性のあるお子さんにはそもそもそこに気づかずにいるかもしれません。そうした独特の文化、そして関係性のように深まったら砕けた言葉でも構わないといった“ルールに幅や変化の余白があるもの”の教え方の難しさがこちらのエピソードでよく伝ってきますね。まずはシンプルなルールから教えて、アドバンスなルールはその都度あるいは慣れてから教えていく。それで良いと思います。敬語を使わないことで不利益や誤解が生じる可能性が(残念ながら)あるので、まずは年上の人には敬語を使うのだと伝える。中学校生活のみならず、それ以降でも汎用性の高いスキルとして使えますね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月10日弟ふーが発熱。解熱後兄弟同じ寝室に寝かせたら、長男も発熱して急に寒くなった秋の日、弟のふーが鼻水を出し始めました。やがて発熱したふーは、1週間保育園を欠席しました。幸いにもインフルエンザではありませんでした。ふーの熱も下がり明日から保育園に行こうという日、それまで隔離していたふーを、いつものようにミミの隣で寝かせました。翌日のことです。ミミが体調不良を訴え、高熱が出てしまいました!私は(ふーからうつっちゃったのかな……?もう少し隔離しておけばよかった……?でもミミのクラスでもインフルエンザが大流行してるし、どこからうつったかは分からないな……)と思いつつも、二人連続の発熱にガックリ。落ち込みつつも、子どもがいるとこれもよくあることですので、すぐ切り替えてミミを看病をしていました。「弟のせいだ」と高熱で苦しみながらブツブツ言い続ける長男のミミUpload By taekoミミの熱は高く、とてもつらかったと思います。苦しそうに寝込みながらミミは「ふーちゃんのせいだ」とブツブツ。つらい原因を弟のせいにしていました。私は、「ふーからうつったとしたら仕方ないよね。でもミミは学校に行ってるから、学校でうつったかもしれないし、私からかもしれない。これは分からないよね」と言いました。それでも納得がいかないミミは「ふーちゃんのせいだ!」。つらいのは分かるので多少は仕方がないことかもしれませんが、ただただ弟を責め続けるミミの様子を私は悲しく感じていました。インフルエンザ検査を嫌がり「弟なんていなければ良かった」とまたマイナス発言。その言葉を聞いた先生は?ミミの熱が高いので、かかりつけの小児科でインフルエンザの検査をすることになりました。Upload By taeko先生は手袋をはめ「お母さん、押さえてて!」とただならぬ雰囲気。女性の職員さんも一緒にミミを押さえてくれました。一方、過去にやったインフルエンザ検査の痛みを思い出したようで、本気でもがくミミ……。4年生になったミミは力強く、私と職員さんでは押さえきれず、ミミは床にずり落ちたりと、もうすったもんだでした。そんなドタバタを越えて、ようやく検査できました。ミミは検査が痛いことや羽交締めにされたことなどが悲しくて、ここでも「ふーちゃんのせいだ、弟なんていなければ良かった」とマイナス発言……。私はどうしたものかと溜息です。するとそんな私に気づいた先生が、私に(いつもこうなの?)と言うように目くばせしてくれました。こちらの先生は、ミミが赤ちゃんの頃から診てくれているので、ミミのASDの特性をよく分かってくれています。私が「つらいことがあるとマイナス発言するんです」と伝えると、先生はなるほどと納得したようで、ミミにこう言ってくれました。「弟がいて良かったんだよ、1人より楽しいことが増えたと思うよ。あと、弟くんはインフルエンザじゃないから、もしインフルエンザだったら、きっと学校でもらってきたね」さらに「よく考えてごらん?まだ弟くんが赤ちゃんだった頃、まだ免疫も弱くて風邪の経験もない赤ちゃんは、きみからいっぱい風邪をもらっていたと思うよ。病気は上の子から下の子へうつるほうが多いんだ。むしろ、下の子から免疫がある上の子にはうつりづらい。つまり、きみの方が弟くんにうつした回数のほうがよっぽど多いはずだよ」と冷静に伝えてくれました。Upload By taekoミミはこの先生の発言に納得したようでした。反論することもなく、検査結果が出るまで大人しく待っていてくれました。私は個室でミミを抱きしめて待ちました。ミミの検査の結果は?ミミの検査の結果はズバリ、インフルエンザでした!ふーからうつったのではなく、おそらく学校でもらってきたのでしょう。そして、その後はふーへマイナス発言することはありませんでした。きっとミミは熱を出したとき「ふーからうつったに違いない」と思い込み(無理はない状況ではありましたが)、熱でつらい状況を自分だけで抱えられず、自分以外を責めることでなんとか堪えていたのかなと思いました。そして、先生から理路整然と説明された内容に納得し、それで弟へのマイナス発言が消えていったのでしょう。自分で違うと納得できれば、むやみに相手を責めたりしないようです。やがてミミも熱が下がり、食欲も戻りました。朝ごはんにベーコンを出したところ、ベーコン大好きなふーはミミにスリスリ頬ずりをして、ミミにおねだり。ミミはふーに自分のベーコンをひとつあげていました。優しいミミに戻って良かったです。今後もマイナス発言をすることがあると思いますが、悲しい気持ちを聞いた上で、お互いの良いところを伝え続けようと思いました。Upload By taeko執筆/taeko(監修:鈴木先生より)困ったことがあると他人のせいにしてしまうなど、自己中心的であったり、マイペースさといったものは、ASDのあるお子さんに見られることが多い傾向にあります。このような発言は、学校など今後ほかの場面でも見受けられるかもしれません。マイナスではなくプラス思考になるように見方を変えていく必要があります。それには当院でもやっていますが、感情(アンガー)コントロールプログラムの受講をお勧めしています。怒りを他人にぶつけるのではなく、自分の中で消火していく方法を学ぶのです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月09日小学校入学直後から始まった「行き渋り」現在小学6年生のわが家の長女『姉子』は、赤ちゃんの頃から繊細なところはあったものの、幼稚園の時は楽しく園生活を送っていました。そして、いざ小学校に入学!「さあ、きっとこのまま楽しく小学校に通うはずだし、私も幼稚園の送り迎えから解放されるぞー!」と思っていました。最初の頃は、保護者や先生に見守られて集団で登下校して楽しそうにしていた姉子。しかし、入学から1週間ほど経つと、朝泣き出すようになり、登校前に腹痛や頭痛を訴えるようになりました。Upload By スパ山けれども、一旦登校してしまえば、そのまま学校で過ごして帰ってくるので、朝の登校は私がつき添い、校門まで先生に迎えに来てもらうという形になりました。当時はほぼワンオペ育児だったので、下のきょうだいたちの送迎もあり、姉子を送ったらすぐに家に戻らなければならず、校門で泣いている姉子を先生に半ば強引にお願いして帰ることもありました。第一子だし、まだ1年生だから「最初はこんなもんだろう」と、私は楽観的に思っていました。それが2学期になり、3学期になり……、もう他の同級生は一人で登下校するのがへっちゃらになっているというのに、姉子の行き渋りはずっと変わりませんでした。親としては放っておくわけにもいかないので、なだめたりすかしたり、あの手この手で登校させようと必死でした。ある日突然始まった「チックの症状」Upload By スパ山ある日突然、姉子が目をキョロキョロ動かすようになりました。さらに、まるで何かに引っ張られるように首を振るようになりました。それを見た私は、学生の頃に児童発達関係の専攻をしていた経験から、「あ、チックだ」と思いました。チックは癖のようなもので、幼児期から青年期にかけて現れる子がわりと多い症状だそう。原因など解明されていないことも多くありますが、決して育て方が悪いとか、愛情不足などではないと言われています。姉子本人も、出したくて出しているわけでもないので、止めることもできません。指摘すると悪化することもあるらしいので、「やめなさい」「またやってるよ」など言わず、そっと『あたたかい無視』をすることでほとんどの場合、自然におさまっていくと習いました。でも、いくら知識があったとしても、わが子にチックが出たとなるとやはり不安だったので、念のため、かかりつけ医に診てもらおうと思い、姉子に気づかれないように気をつけつつ、チックの様子を動画に撮っておきました。そして予防接種のついでに動画を見てもらうと、「チックが出やすい年齢だし、そのうちおさまるので指摘せず見守っていい」と、お医者さんからもアドバイスをいただき、待つことにしました。学校の先生方にも姉子のチックの症状について伝え、配慮していただきました。低学年だったからなのか、クラスメイトから指摘されることもなく、症状は良くなったり悪くなったりを繰り返したものの、姉子のチック症状は1年ほどで完全に出なくなりました。小学生になって初めての個人懇談で「発達検査」を薦められるUpload By スパ山姉子にチックの症状が出始めた頃とほぼ同じ時期に、小学生になって初めての個人懇談会がありました。その時に初めて担任の先生から姉子の学校での様子を聞いた私。それは、「本当に姉子のことなのか?」と、耳を疑いたくなるようなことばかりでした。例えば、「名前を呼ばれた人からプリントを取りに行く」のような全体指示が伝わりにくく、呼ばれていないのに取りに行ってしまい、別に叱られていないのに、嗚咽が止まらないほど大泣きしたり、ほとんどのテストが白紙だったり、授業中に教室から飛び出して校舎の外で泣いていたなど……。行き渋りはあったものの、登校さえしてしまえば、一日学校で過ごして下校できていたので、何も問題なく学校生活を送っているものだと私は思っていました。そして担任の先生から「発達検査(WISC)を受けてみてはどうでしょうか」と言われ、そこで初めて姉子にも発達障害があるのかもしれないと思いました(2歳下の弟のハジュがすでに発達障害の診断を受けていた)。まさに寝耳に水。いや、寝耳に氷水くらいの衝撃でした。正直なところ「あ、この子もか」と目の前が真っ暗になりました。発達検査で凸凹が分かった!Upload By スパ山すぐに発達支援センターへ相談に行き、2年生になってすぐWISCを受けました。発達支援センターはすでに弟が通っている所で、姉子も何度か付き添って行ったことがあるので、心理士さんも弟の担当をしてくれている顔見知りの方にお願いしました。姉子が私と離れることを激しく嫌がったので、発達検査に同席させてもらいました。姉子は緊張がとても強く、一つの質問に3分~4分ほど黙って考えこんでしまうので、だいたい90分程度だと言われていた検査に2時間半もかかってしまい、終わったときにはぐったりしていました(それに根気よく付き合ってくれた心理士さんには感謝しかありません……)。結果はかなり凸凹があり、知的能力についてはボーダーかどうかギリギリのところ。しかし、検査中の緊張の強さから正確に判断できないとのことで、しばらく様子を見ることになりました。検査の結果や検査中の姉子を見て、今まで本人は相当しんどい思いをしてきたことが分かりました。私は姉子に申し訳ない気持ちでいっぱいで、今まで気づかなかった自分をすごく責めました。行き渋りやチックは姉子から出ていたSOSだったことにやっと気づくことができたのです。そして、発達検査を受けたことで姉子の特性や困り事を知ることができたので、「上手にサポートできれば学校生活も楽しめるかもしれない」と、淡い期待を抱いていた頃、コロナ禍が始まってしまったのです……。コロナの影響でさらに大変な事態になってしまったわが家。そのお話は別の機会に書きたいと思います。執筆/スパ山(監修:初川先生より)姉子ちゃんの小学校入学した後のエピソードをありがとうございます。幼稚園保育園から小学校という場に変わり、朝校門や児童玄関で泣いてしまうお子さんは結構いらっしゃいます。保護者が玄関などまで送っても泣いてしまい保護者と別れがたいお子さんに対して、保護者が笑顔で去りながら先生方にお子さんを託すという方法はよく取られる方法です。それで朝の会や1時間目頃までに気持ちが切り替わり教室へ入れる、活動に参加できるのであればよいかなと思います。それ以降まで涙が止まらない場合などは別のやり方も検討してみるのもよいでしょう。そうして学校というものに慣れていくことが新入生の時期には通過するプロセスではあります。チックに関しては、どういう時にチックが出やすいか観察してみるのは有効です。家でも学校でも出るのか、緊張したときだけなのか、逆にリラックスしたときにでるのかなどです。いずれにせよ、何らかストレスが過度にかかっているのではないかなと気を配りながら、チック自体はスパ山さんがされたように本人には指摘せず、見守るのみにしていく。そうした対応が一般的です。頑張りすぎているサインかもしれないと思って生活を見直してみたり、先生に学校での様子を聞いてみたりするのもよいでしょう。個人懇談会にて、学校での姉子ちゃんの苦戦する様子を知ったとのこと。だいぶ驚かれたことと思います。学校、集団生活、一斉での指示理解、決められた活動に取り組むという設定……そうしたものの何かにつまずきが見られた、あるいはとても苦手としているということでしょう。帰宅するとほっとして、学校でのいろいろを良くも悪くも周囲に感じさせないという面もあったのでしょう。気になることがある場合(行き渋りもそうですし、そもそも幼少期の様子から学校や集団生活の中での苦戦が想定される場合など)は、連絡帳や電話などで、お子さんの学校での様子を(懇談会を待たずして)聞いてみてもいいですし、先生のほうで気になることがあったら教えてほしいと頼んでおくのも一つです。発達検査によって分かること・分からないことありますが、まずはざっくりとした知的レベルや得意不得意に関して客観的に掴むには有効です。検査受検にあたっても、姉子ちゃんの抵抗はなかなかのものだったのですね。新奇場面(新しく、珍しい場面)への苦手さ、見通しのつかなさなどが強いとなかなか検査者と二人きりで検査室に入れないことがあります。それでも検査の公平性を保つためにも基本的には保護者とは分離して実施できるよう、最大限工夫するのですが、なかなか難しかったからか保護者が同席した形での実施になったということですね。こうした場合は少数で、基本的にはお子さん一人で受検するものになります。そうした緊張の強さ、そしてなかなかに熟考・長考したというところで、分かっているのに答えられなかった可能性などが浮上するため、全体として参考値扱いになったのではと想像します。ただ、指示を聞いて、期待される回答や言動を取るということや初めての環境で良く知らない人と、というところの掛け合わせでかなり困難が生じやすいことがよく分かり、ということは学校生活もなかなかにしんどい思いをしながら過ごしている可能性が想定されたということですね。家庭での生活が姉子ちゃんにとって安心安全で、そこまでの不適応を家庭の中では出さずにやってこられたからこそ、学校のような集団の場では苦手さが重なっていたけれど家庭からは見えにくかったのでしょう。気づいてあげられなかったという後悔の思いも語られていますが、ただ、「家庭では楽しそうに過ごしていたんだよね」というところは姉子ちゃんにとって過ごしやすい環境を提供できていたからこそでもあります。行き渋りやチックがSOSであったのはそうかもしれませんが、気づくのに遅すぎることはありません。気づいてからの対応が大事です。検査の結果や検査時の様子もふまえて、学校での支援や家庭でのサポートが姉子ちゃんに合ったもので充実してゆくといいなと思いました。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月08日順調だった小学校時代、しかし中学入学後トラブルが増えた自閉症息子。勉強に部活と複雑に……10歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けた息子の話です。小学校では通常学級に通っていましたが、そこでは解決できないような目立ったトラブルはありませんでした。しかし中学に入ってからは、勉強、部活にとトラブルが増えていき、対応に苦慮しました。小学校まではなかった学習トラブルが!アルファベットは鏡文字だらけ!小学生の頃からバランスの取れた字は書けませんでしたが、それでも文字を書くこと自体に困っておらず、特に対策もしていませんでした。しかし、中学1年生になると、教科書のルビが見えていないことが発覚。さらに画数の多い漢字についても、読めるけれど形がよく分からないので上手く書けず、本人は困っていたそうで……。そこで中学2年生になってからは通級指導教室に通い、授業やテストではルーペを使わせてもらっています。また、教科によっては拡大教科書を使ったり、授業で使うプリントを拡大コピーしてもらうこともあります。拡大したものを使うことで、ずいぶん楽になったようです。中学から本格的に始まった英語にはとても苦労しています。ローマ字のように、音をそのまま書けばいいわけではないので、スペルの綴りミスが頻発。さらに、アルファベットは、『b』と『d』、『p』と『q』、『a』と『u』をよく間違えます。『J』『N』『S』は鏡文字です。文法も、助動詞の使い方で混乱するなど、日本語とは違うため大変なようです。Upload By ユーザー体験談ただ、音読は得意なため、英語のスピーキングは流暢。ここでも得意不得意の凸凹を感じています。勝利至上主義の厳しい運動部へ入部。先生に配慮をお願いすると「任せてください!」と返事をしてくれたけれど……また、中学に入ると息子はソフトテニス部に入りました。顧問は若い女性の先生で、試合に勝つために厳しく、熱心に指導していました。息子がそんな厳しい練習をしている部活に入ると思っていなかった私。心配はありましたが息子の希望だったので、見守ることにしました。幸いにも部員は先輩を含めみんな優しかったようです。顧問の先生へは、最初に2つ配慮のお願いをしました。曖昧な表現がわからない場合があるので、できるだけ具体的に指導してほしいこと、疲れていることに気づかないので、一定の時間ごとに休憩を入れさせて欲しいことです。先生は「分かりました!大丈夫です、任せて下さい!」「ほかにもそういう子がいるので大丈夫です」、大会前には「少しでも息子君が活躍できるようにしたいと思います!」と言ってくれ、理解をしてくださっている感じでした。Upload By ユーザー体験談ただ、定期的にお便りを出してくれるのですが、「ミスが多くて気持ちが悪いプレーがある」、「このままでは、いつまでたってもあの学校には勝てない」、「気持ちで負けている」というような内容が多く、とにかく勝ちにこだわっている様子。もし部活でもこんな感じだとしたら、息子に合っているとは思えないし、つらい思いをしている子もいるんじゃないかと心配でした。指導されないまま半年以上放置されていた?顧問の先生に不信感が爆発入部して半年ほどたった10月のことです。たまたま部活の様子を見ていたほかの保護者の方から、「息子君、もしかして打ち方を知らないんじゃないの?」と心配そうに声をかけられました。まさかと思い私も様子を見て見ると、本当に息子が打ち方を知らないままテニスをしていたことが分かりました。入部して半年以上、もうすぐにシーズンオフなのになぜ打ち方を知らないの?大会や練習試合も打ち方を知らないまま出ていたの?誰も打ち方が違うって教えてくれなかったの?疑問が頭に浮かびました。私はあくまでも冷静に、責めるような言い方はせず先生に聞いてみました。すると、「打ち方のおかしい子が何人かいます。シーズンオフにきちんと指導するので、それまで待ってください」とのこと。息子以外にも打ち方を知らない子がいるかもしれないということにびっくりしました。下手な子どもの指導は後回しだったのかと、先生に対してかなり不信感を覚えてしまいました。息子は、誰にも打ち方が違うと言われたことがなかったそうで、事実を知ってショックを受けていました。その影響か、ようやく学校に慣れて落ち着いてきたのに、また学校を休むことが増えました。部活も出られずに帰ってきて、うつむきながら「打ち方が違うって教えてもらえなかったのは、やっぱ違うと思う……」と呟いていました。その後、副顧問の先生が打ち方を知らなかった子どもたちを集めて指導してくれ、何とか部活に出られていたのですが、ある日、お便りをもらってきました。「努力の仕方を間違えると、どんなに頑張っても上達しません。正しい努力ができるよう、自分で考える力をつけて下さい」というような内容でした。先生にそんなつもりはなかっただろうとは思いますが、なんだか「打ち方を知らないのは、考える力がない本人が悪い」と言われているように感じました。息子はお便りを読んで、「部活では『努力が足りない』って言われるし、どうしたらいいか分かからない……」と悩んでしまい、とうとう「部活がつらい」と言い出しました。私もこれ以上は無理だと思い、しばらく部活を休ませることにしました。Upload By ユーザー体験談休部から自分の意志で復帰した息子の成長に感動息子には「3月いっぱいくらいまで休んでみる?先のことはまた考えよう」と伝え、息子もしばらくのんびりしていましたが、2月頃、突然「部活出てきた」と復帰しました。私や事情を知っているスクールカウンセラーの先生などは驚いて、部活に復帰したことをかなり心配しましたが、本人は戻れたことが嬉しかったようです。復帰したいということを顧問の先生に伝えたら、先生は息子に謝罪してくれて、息子も「やっと顧問の先生にちゃんと教えてもらえるようになった」と嬉しそうでした。部活で配られていたお便りは、復帰した頃にはなくなっていました。Upload By ユーザー体験談数ヶ月休んでいたので、復帰するには勇気が必要だったと思いますが、自分の意志で復帰して本当に偉かったと思います。以前の息子なら、そのまま辞めていたかもしれません。どうやら「辞めてもいい」と思っていた私より息子のほうがしっかりしていたようです。その後、異動のために顧問の先生が変わりました。息子は今、楽しく部活に参加しています。中学校に入ると今までなかったようなトラブルがあり、問題も複雑になり対応に苦労しましたが、その分息子も大きく成長したように感じます。これからも、困ったことがあったらSOSを出せ、みんなと気持ち良く助け合える関係をつくれるような力を、身につけていってほしいと思います。イラスト/星河ばよエピソード参考/こぺはは(監修:鈴木先生より)本人は努力していても「努力が足りない」と言われると自尊心が下がります。少しでも努力した分を褒めてあげればよかったのです。できないことよりもできることを褒めてスモールステップでできたことを伸ばしてあげるということは、学習面でも同じです。たとえテストで30点だったとしても「よく30点取れたね、次回は40点を目指そうね」でいいのです。またASDには発達性協調運動症という不器用さが併存していることも多々あり、球技が苦手なお子さんも多くいます。無理せず少しずつ伸ばしていけばいいのです。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2024年01月07日1歳半の息子、発達に気になるところが……。1歳半健診で相談しよう!前回の記事で書いたように、赤ちゃんの頃から発達に気になるところがあった息子のたーちゃん。1歳半の頃にはさらに、癇癪、パニック、こだわり、偏食、異食などもでてきており、自宅保育をしていた私はノイローゼ気味でした。Upload By みかみかん1歳半健診ではたーちゃんの様子を専門の方に見てもらって、たくさん質問して不安を解消しようと意気込んでいました。聞きたいことや話したいことをメモにまとめたり、健診当日に向けてしっかり準備をしていました。万全な対策をして、いざ1歳半健診へ!たーちゃんはこの頃から不安感が強めで、人見知りと場所見知りがひどく、パニックや癇癪になることもありました。なので無理をさせないように外出は慣れた場所ばかりでした。1歳半健診が市の児童館で実施されると知ってからは、少しでもたーちゃんが場所と雰囲気に慣れてくれたらと思い、週に何度かその児童館に遊びに行きました。健診当日、いつも通り機嫌よくたーちゃんは児童館へと入っていきました。場所に慣らしておいた努力が報われたかもしれない……と安堵しながらホールの扉を開けると、そこではたくさんのお子さんと保護者が健診を受けていました。場所見知りとパニックが起きてしまう……その様子を見たたーちゃんは、いつもと違う雰囲気に気圧されたのか、激しく泣き始めてしまいました。Upload By みかみかん裸足で外に出ていってしまう勢いでパニックになり、なんとか抱っこして抑えている私は「まさか」「やはり」「なんで」が混ざった感情でぐちゃぐちゃでした。他に泣いている子どもはおらず、楽しそうにお友達とおもちゃで遊んだりしており、保護者の方も談笑しながら順番を待っていました。その中でひときわ大きい声で泣いて暴れるたーちゃんにチラチラと向けられる視線がつらかったです。大人2人がかりでの身体測定……なんで他の子と同じようにできないの?その後も私や職員の方がいくらなだめてもたーちゃんが泣き止むことはありませんでした。大人2人がかりで泣いて暴れるたーちゃんの身体計測をしている様子を見るのもつらく、もう帰ってしまおうかとも考えました。しかし、たーちゃんにはつらい思いをさせてしまうけれど、ずっと悩んでいた発達についてしっかりと相談したいと心に決めていました。私も頑張るから最後の問診まで頑張ろうと、暴れるたーちゃんを抱きしめていました。待望の問診。たくさん聞きたいことや話したいことがある!しかし……問診に呼ばれた時にも、まだたーちゃんは泣いて暴れており、私は疲れきっていました。心理士さんが質問をし、私が答えますが、ずっと大声で泣いているたーちゃんを抱えたままではまともに聞き取ることすら難しかったです。Upload By みかみかん他のお子さんは、積み木ができるか、指差しができるかなどもその場で観察されていましたが、パニック状態のたーちゃんができるはずもなく。1歳半の時点で「ワンワン」しか発語がなかったので、言葉の遅れも心配しましたが、心理士さんからは「様子見しましょう」としか言われませんでした。そして、「発達が気になったら電話して」と電話番号が書かれた紙を渡され、1歳半健診は終わりました。まともに健診を受けられなかったことにショックを受ける児童館を出て夫と会うと、たーちゃんはやっと泣き止みました。他のお子さんがみんなできている健診もまともに受けられなかったことや、他のお子さんとの違いを目の当たりにしたショックで、夫の運転する車内で私は泣きそうでした。発達について不安に思っていた気持ちが、確信へと変わっていきつつありました。療育に繋がった現在のたーちゃんと私そして2歳になる前に、やはり療育につながりたいと思い、案内された電話番号にかけて発達についての相談をしました。それから親子教室や民間の療育につなげていただき、少しずつ私のメンタルも回復していきました。1歳半健診では「ワンワン」しか言えなかった息子も、今ではうるさいくらいおしゃべりです。Upload By みかみかん初めての場所を不安がる時もありますが、パニックを起こすことはほとんどなくなりました。発達について他のお子さんと違うなと思うこともありますが、個性だと思えるようになってきました。1歳半健診の時にはショックで受け入れられなかったけれど、時間をかけて私も受容できたのだと思います。1歳半健診を終えて落ち込んでいる保護者の方へ……1歳半健診で「様子見」「要観察」と言われた保護者の方、たーちゃんのようにお子さんが泣きっぱなしだった方、今は気落ちされているかもしれません。少し動けるような気持ちになって、やはり発達が気になると思ったら、ぜひ誰かに相談してください。一人で抱え込まず、助けを求めた方が良いと私は思います。差し伸べた手は、誰かがきっと握ってくれます。執筆/みかみかん(監修:新美先生より)1歳半健診の時のエピソードを聞かせてくださりありがとうございます。乳幼児健診は、身体的な不調・疾患を見つけると共に、いわゆる発達の遅れや偏りの見られるお子さんについて養育不安のある保護者の相談を受け、専門機関につなぐといった役割があります。大人数で決められた形式で行われるので、いつもと違う環境で落ち着かないお子さん、多動のあるお子さん、人見知りの強いお子さんにとっては、正直なところとても侵襲的な環境であることは事実です。発達障害特性のお子さんを見つけることが重要視されるずっと以前から同じようにやってきており、わざとそういう環境をつくって特性が目立ちやすくしているというわけではないのですが、これを工夫して構造化して、人数を少なくして、嫌な思いをさせないようにという方向にはなかなか話が進んでいません。実際、健診で嫌な思いをしたという話は本当によく聞き、申し訳ない気持ちになります。ただ健診をきっかけに地域の保健師とつながり、お子さんに必要な情報にたどり着いてもらえるよう、実施主体の市町村担当者も苦心されていることとは思います。みかみかんさんのように、健診でショックを受けたけれども、それをきっかけにして相談や専門機関につながってよかったと思えるのであれば幸いです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年01月04日自閉症息子、分かりづらい気持ちを、表情マークで表現現在、小学2年生の長男けんとは、自閉スペクトラム症と3歳の時に診断を受けました。けんとには構音障害もあり、言葉が不明瞭なことに加え、思っていることを言葉に出して伝えるのが苦手です。楽しそうな時は笑顔でピョンピョン飛び跳ねたり、イヤそうな時は、その場から逃げ出したりするので、その様子を見て親が気持ちを察知。「うれしかったね」とか「怖かったのかな?」と予想した気持ちをけんとに質問していましたが、うれしいのか、悲しいのか、何が怖くて、イヤだったのか、どんな感情を持っているのかというのは、小さな頃からとても分かりづらい子でした。Upload By ゆきみ小学校2年生から通い始めた放課後等デイサービスでは、その日の終わりに「今日の感想、気分」を提出する課題があります。感想を書けるようになっている記入欄と、その下にニコニコ笑顔のマーク、プンプン怒り顔のマーク、悲しそうな泣き顔のマーク、困っている顔のマークが書いてあり、その日の気分に自分で丸をつけます。けんとは、放課後等デイサービスでの活動を楽しんでいることが多く、感想のところには「かくれんぼが楽しかった」などと書き、その下はほぼ毎回、ニコニコ笑顔マークに丸がついています。ニコニコしていたのに、怒っていた?Upload By ゆきみ通っている放課後等デイサービスでは、迎えに行った時、今日の子どもの様子を聞けるフィードバックがあります。ある日「今日の感想、気分」を書く課題で、けんとが珍しくプンプン怒り顔のマークに丸をつけていました。その課題を見た先生がけんとに、なぜプンプンマークに丸をつけたのか事情を聞き、フィードバックの時に私に教えてくださいました。どうやらお友達に押されてしまったらしく、それが嫌だったようです。しかし、その日の放課後等デイサービスでのけんとは、とてもニコニコ楽しそうに過ごしていたらしく、「怒っている素振りがあったり、嫌な気持ちを抱えていたり」という様子は一切感じられなかったとのこと。言葉で上手く表現できないだけでなく、態度でも分かりづらい感情が隠れているのだと知りました。それ以来「けんとの他にも隠れている感情が見つかるかもしれない……。そして、この表情マークで気持ちを伝え合うことで、人の気持ちに気づくきっかけになるかもしれない…」と思い、不定期ですが、家族でどこかへ遊びに行ったあとなどに、けんとに感想を聞いて、本人が気分マークに丸をつけるというやり取りを始めてみることにしました。『自分の気持ち』『人の気持ち』伝えて分かることUpload By ゆきみ休日、家族でアスレチックへ行った時のことです。身体をいっぱい動かして帰宅し、家族でテーブルに集まり、さっそく今日の感想や気分をみんなで伝え合うことをしてみました。まずは私の番。その日、アスレチックの途中でヘビに遭遇したので、その出来事に触れながら「ママは、今日はとっても楽しかったのでニコニコ笑顔マークに丸!だけど、途中でヘビがいてビックリもしたし、怖かったし……、たくさんの気分があったよ」と、私の気持ちを伝えました。そして、けんとの気持ちを聞いてみると、「ビックリしたけど、ヘビに会えてうれしかった」と言いながら、なんとニコニコ笑顔のマークに丸をつけたのです。私は怖くて必死でしたが、けんとの言葉を聞きながらその様子を思い返してみると、ヘビを見つけた時、確かにけんとは笑っていました。「怖くなかったの?」と聞いてみると「怖くなかった」と。けんとにとっては、初めてヘビが見られてうれしかったのだと知ることができました。私は、自分がヘビが怖いからといって、「けんとも怖かっただろう」と勝手に決めつけていたのです。でも、それは、私の感想。人の思いはそれぞれなのだと、私自身も改めて気づかされた出来事になりました。人に気持ちを伝えようとしている?「イヤだよ、やめて」が言えるようにけんとは小学2年生になりました。最近、本人が以前よりも「人に伝えよう」という気持ちを持つようになったと感じます。学校や放課後等デイサービスなどで、人との関わりを通してさまざまなことを学び、その成果がでてきているのか、つたないながらも自分の気持ちを伝えてくれることが増えてきました。Upload By ゆきみ1年生の頃は学校でギュっとお友達に後ろから抱えられた時、されるがままだったのですが、最近ではお友達に「イヤだよ。やめて」と言えるようになってきたようです。気持ちを伝えられることが増えてきたことで、新たな友達とのトラブルも出てきたりしているようですが、成長したからこそだと思っています。とは言え、まだまだ気持ちを言葉や態度で伝えることが苦手そうな、けんと。その時の感情を伝えたり、隠れた想いを態度で表現したりする方法などを、これからも少しずつ学んでいってくれたらと祈りながら、長い目で成長を見守りたいです。私もこれから起こる出来事を通して、子どもたちと一緒に、その時に感じた想いを伝え合ったりしながら、十人十色な人の感じ方を話し合っていけたらいいなと思っています。執筆/ゆきみ(監修:藤井先生より)自閉スペクトラム症の特徴の一つに自分の気持ちを表現するのが苦手ということがあります。言葉の有無に関係なく、表情の理解や、自分の気持ちを理解するのが難しいお子さんもいます。今回のコラムのように、ゆきみさんとけんとさんが感情を表現する絵カードなどで表現を促すのも良い方法ですね。構音障害があるとのことなので、音声で表現するのが難しい場合には絵カードを用いたコミュニケーション(PECS)なども有効かもしれませんね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月26日2回の予防接種、鼻ぐりぐりの検査……インフルエンザには大変要素が多すぎる!?Upload By よいこASD(自閉スペクトラム症)のある長男あーは病院が大の苦手です。まだ幼かった頃は、椅子に座るのもイヤ、静かにしていることもできない、聴診器コワイ、薬も飲めない……。インフルエンザが流行するこの季節は、私もあーも毎年戦々恐々としています。まず予防接種が鬼門。注射嫌いなのに、流行期の直近で2回打たねばならないインフルエンザの予防接種は大変オブザイヤー……!まだ小さかった頃は、あーが暴れないように私が抱え込んでどうにかなったけれど、幼稚園も年長あたりになってくると、病院の診察室に入ることすらできなくて、大泣きしながら走り回って逃げて、受付のすみっこでようやく注射を打ってもらったこともありましたね……(遠い目)。そんな苦労をして予防接種を受けても、かかってしまうのがインフルエンザです。というか、冬は高熱が出て病院を受診すると、とりあえずインフルエンザの検査をしますよね。あーは鼻に棒を突っ込んでぐりぐりするあの検査がとにかく苦手で……。いや分かるよ、お母さんも苦手だよ。痛くて怖いよね。でもなあ……。いつかの高熱で受けた検査が激しくトラウマ化したあー、熱が出た時点で絶望してしまいます。「あの検査する?あれイヤだ。あの検査したくない」と高熱でうつろな目と意識の中、エンドレス怖がり&確認……。お母さんも目がうつろに……。Upload By よいこパニック回避のため母が見つけ出した秘策!ということで……わたし、秘策を用意しました!いつかのネット検索で知ったやり方……なんと、かんだ鼻水で検査してもらうやつ!!!※医療機関によって対応可能なところとそうでないところがあるようです。幼稚園の頃のあーは鼻をかむことができずいつも拭き取っていたのですが(そして小6の今もあんまりうまくない)、鼻かみをこなせばあの検査をしなくて済むと理解すると、めっちゃ頑張って鼻をかんでくれました!えらい!えらいぞー!!(できて当たり前と思われがちな鼻をかむこと……あーにとっては一大事なのです。)まあ、先生が出た鼻水に例の棒をつけて検査するんですが、その棒が出た途端に大パニックになって診察室を駆け出していきましたがね(苦笑)。鼻がかめても立ちはだかるお薬問題。Upload By よいこそしてお薬問題です。インフルエンザにかかるとよく処方される「タミフル」は、子どもの場合、体重の関係で錠剤ではなく散剤(粉のタイプ)が多いかと思いますが、これがまたすごく苦い!!!チョコのアイスやいちごヨーグルトなんかに混ぜてみるんですけど、全てあーはNG……。我慢して飲む、はどうしてもできないあーなのです。ということでインフルエンザにかかったら最後、薬なしで治すしかないあーです……当然お薬を服用するより治るまでに時間がかかる……。こんな調子で、子どもが病気になると親もしんどくなりがちなんですが、最近のあーは病気の時の対処法を身につけたんです!親もしんどい子どもの病気。だけど最近は対処法を編み出して……!?Upload By よいここれまでの経験でお風呂に入れないことも分かっているので、身体は蒸しタオルでよく拭いて、あったかいお茶飲んで、嘔吐用の洗面器持って自分の部屋にこもって静かに一人で寝てくれて、しんどくて体動かない時はスマートスピーカーで音楽を聞いたりして(声だけで指示できるから)!……よくぞここまで成長した……!多分、ASD(自閉スペクトラム症)の特性ゆえの「病気の時」ルーティンが発動してるんだろうな……(病気の時はお風呂に入らない、お腹が緩い時は大好きな牛乳は控える、無理して食べない、吐くかもしれないから準備する、など)。こだわりで大変なことのほうが多いけれど、決まりが守れるっていうのは悪いことばかりでもないなあと思ったり。それでも!健康にこしたことはありません!みなさん、手洗いうがいで充分予防して、冬を乗り切りましょうー!!執筆/よいこ(監修:藤井先生より)よいこさんのコラムを通じて、各ご家庭のご苦労を想像しました。予防接種も、インフルエンザの検査もなるべく負担なく行えるようになると良いのですが、クリニックでもいろいろ工夫していますが、嫌がられることもしばしばあります。インフルエンザの検査については、鼻をかむことができるお子さんの場合は、ティッシュにラップをつけて、鼻をかむことで、ラップについている鼻水から検査することもあります(主治医の先生に確認してみましょう)。診察や検査など嫌だなと感じながらも、お子さんがクリニックに来てくれたこと頑張りを認め、ねぎらうしかできませんが、少しずつクリニックに慣れてくれて、成長する姿を拝見できることは、小児科医として冥利に尽きます。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月26日3回の発達アセスメントの結果中学2年生の太郎は、ASD(自閉スペクトラム症)と協調性運動症の診断があり、学習障害がある可能性についても医師から説明を受けています。太郎は過去に3回、発達アセスメントを受けています。3歳・11歳・13歳の時です。この3回とも検査結果には大きなずれはなく、知的発達は平均的な範囲にあるという結果でした。Upload By まゆんしかし、ここで私がいつもひっかかっているのが社会的年齢の低さです。知的発達は平均的な範囲ではあるけれど、生活を一人で行えるかというと、とても厳しいように感じるからです。Upload By まゆんなぜ知的発達は平均的な範囲にあるのに社会的年齢が低いのか。療育センターなどでも説明を受けたのですが、それは言語理解の弱さと関係があるようです。言語理解についての検査の結果では、年齢の半分程度のレベル。これがコミュニケーション能力の弱さともつながっているため、日常生活全般に支障をきたしているという見解になるようです。コミュニケーションだけではなく、読み解く力も強くはないため文章問題や案内の文字などの理解も困難となっています。一方で太郎には得意なことがあります。視覚的な推理(目で見て情報を捉えること)です。幼少期からブロック遊びを得意として写真を見ただけで同じように組み立てることができますし、動画に釘づけになる傾向もあります。こういう得意不得意、凸凹を総合的にみて、知的発達は平均的な範囲にあるという結果がいつも出ているようです。Upload By まゆん母としては、何とも言えない気持ちになります。この社会的年齢はこのままなのか、それとも伸びていくのか。医師からは、言語理解については今後大きく伸びる可能性は低いのではと説明がありました。ということは……社会的年齢もこのままではないのか?そう考えることもあります。Upload By まゆん中学卒業後の進路はどうする?今考えている高校進学の選択肢は二つ。発達障害に対しての理解がある普通科高校と、通信制高校です。Upload By まゆん発達障害に対して理解のある普通科高校は少ないというのが現状です。主治医の先生からすすめられた普通科高校は、自宅から電車で50分ほどかかる所にあります。乗り物酔いやイレギュラーな出来事に対応が難しい太郎にとっては一人での電車通学がどのように影響するかと心配もあります。一方の通信制高校は、幸いにも私たちが住んでいる地域に複数あり、発達障害に対して理解があるところが多いようです。私は、通学日数を選べたり個人授業を受けられたりする学校であれば、太郎に合っているのでは……という印象です。ただ、中学校の個人面談で相談したところ、担任の先生は通信制高校ならではの難しさも感じているようでした。別の機会に詳しく聞いてみようと思ってます。太郎は「高校は行きたい」と意欲をみせてくれます。しかしどのような高校に行きたいかなど具体的な目標はありません。来年4月から、太郎は中学3年生になります。まずは一緒に自分たちの足で高校を見に行って少しでも具体的なイメージ持ち、二人で未来を築いていけたらと思っています。十人十色だから知的発達は平均的な範囲にあるけれど、学校生活を送ることが難しい。そのような場合、どのような高校を選択して、将来の就労など決めていっているのかが気になり、放課後等デイサービスで話を聞いたりもします。そしてやっぱり、発達障害といっても個人の特性があるため太郎には当てはならないなあと思うことが多いです。十人十色。太郎に合った環境を二人で考えて、あとは太郎と私の持っている力で周りを変えていけたら……。心配事は尽きないけれど、そう思っています。執筆/まゆん(監修:新美先生より)知能検査で測れる知的な能力と、生活を自立して行えるかという社会的年齢(適応行動尺度ということもあります)は必ずしもリンクしません。むしろ発達障害がある方は、一般的に知的能力に比して、社会的年齢(適応行動尺度)が低いことは多いようです。知的な能力は経時的に大きく変化することは少ないですが、適応尺度は、ある時を境に変化するということもあります。生活の環境が変わったり、本人が自覚して工夫をし始めたといったきっかけで自分でできることが増えると数値は上がります。逆に不適応を起こして抑うつ状態になったなど、以前にできていたことができなくなることもないとは言えません。一方で、工夫しても環境を整えても難しく大きくは変わらない分野が個人ごとにはあるという面もあります。高校の進路に関しては、知的能力や学習の成績だけでなく、学習スタイル、提出物の量や質、校風(教員の生徒に対する態度や、学生同士)、行事の量や質、通学手段・時間、自由な時間の多少など、さまざまな観点から見ていくことが必要ですね。候補になるところを見学して、ご本人に合うところが見つけていけるといいですね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月25日息子の困った行動と、ある日の夕方の出来事Upload By べっこうあめアマミある日の夕方のことです。その日は子どもたちが持ち帰った汚れ物が大量で、私は大量の汚れ物の予洗いをしていました。すると、居間から娘が私を呼ぶ声がしたので急いで見に行くと、居間は大惨事となっていたのです。息子には感覚刺激を求めて遊ぶくせがあり、私が居間に駆けつけた時も、ちょうど夢中になって遊んでいるところでした。この行動自体は息子の自己刺激の一種で、日頃からよくあることではありました。しかし、その日は帰ってから息子がなかなか玄関から動かないなど、いろいろと続いており、さらに、疲労に加え体調不良もあって頭が全く回らない状態だった私。思わずカッとなって、息子にひどい叱り方をしてしまったのです。自分の育児に自信がなくなって……あふれる涙息子を激しく叱って泣かせてしまうと、過去のいろんな出来事や今の自分の状況が頭を巡り、私も涙がとめどなくこぼれました。自分がこれまでしてきたことは正しかったのか……何も現状が変わっていないように思えて、虚しく思えたのです。そして同時に、自分があまりにいっぱいいっぱいであることにも気がつきました。夫の帰りはいつも深夜が当たり前で、私の実家は遠方です。ワンオペ育児の疲労からか、頻繁に吐き気や頭痛に襲われる状態で、さらに自分自身の持病の不安も加わり、精神的にも不安定でした。相談しようと思えばできる人がいたと思うのですが、自分の弱さをさらけ出す勇気が出ず、誰にも言えない悩みやつらさだらけで、 追い詰められていました。次の日の朝、息子の反応はUpload By べっこうあめアマミ次の日の朝、ひどい頭痛で起きられずにいると、夫が息子の支度をすべて完了してくれていました。私は昨夜のことが気まずくて、息子にどう接していいか分からずにいました。すると息子は、家を出る時に私にぺこっと頭を下げ、手を挙げて「いってきます」のポーズをしてくれたのです。その姿に、激しい罪悪感に苛まれていた私は、勝手ながら少し救われた気がしました。息子は話すことができず、本心を知ることはできませんが、いつも通りの一日を始めることができました。ただ、また夕方が近づいてくると、息子にどう接していいのか不安になると共に、また昨日のようなことが起きないかと不安がどんどんふくれあがっていきました。息子の担任の先生に電話、先生の言葉に救われてUpload By べっこうあめアマミ夕方、私は散々迷ったあげく、昨日の出来事を誰かに話さなくてはならないような気がして、息子の学校の担任の先生に電話をしました。その日の息子の様子が気になって、このまま息子と顔を合わせるのが怖かったからというのもあります。電話口に先生が出ると、何から話していいか分からなくなりましたが、最近あったことをポツポツと話し始めました。先生はその話に一緒に驚き、共感してくれました。孤独感を強く抱いていた私でしたが、先生とは一番近い感覚で、息子の現状を共有し合えている気がしました。先生こそが、息子に対して私と一番近い認識を持ってくれている相手だと確信したのです。そして、話の流れから昨日の出来事を話しました。先生は私の話を聞いて、まず、「話してくれてうれしい」と言ってくれました。「お母さんが話してくれたから、助けようとすることができる、だから話してくれる存在になれたことがうれしいんです」と。続けて「親だってそうなってしまうことはある」と、気持ちに寄り添ってくれました。私のことを一切責めず、否定せず、共感し、労わってくれたのです。「すでにお母さんはこの電話をするまで、いっぱい反省したと思う。この電話をかけることもすごく勇気がいったと思う。だから、もう昨日起きてしまったことは、難しいかもしれないけど一旦考えないようにしましょう。もう自分を責めないで。」先生の言葉に、私は涙が止まらなくなりました。特別支援学校は、特別な支援を必要とする子どもだけを支援する場ではないUpload By べっこうあめアマミ先生は、息子の気持ちについても言及してくれました。今朝の出かける時の反応がすべてだと思うと。「気にしてないよ、大丈夫だよ」ということだと思うと。たぶん、何を言ってもやってもヘラヘラしているように見えるのは、息子本人もなんで怒られているのか分かっていないからで、まだ理解が難しいんだと思うとも話してくれました。そしてその上で、学校でどんな対策をしているかなども教えてくれました。先生は、こうも言ってくれました。「特別支援学校は、特別な支援を必要とする子どものためだけに支援をする場ではないと思っています。そうしたお子さんのご家族の支援もしていきたいから、これからも、何かあったらどんどん電話してほしいし、連絡帳にも書いてほしい。夜も寝られず悩むことがあったら、長文の手紙にして連絡帳に挟んでくれてもいい。学校に話しに来てくれてもいい。だから、いっぱい話しましょう。」そして、「お母さんって本当にすごいと思います、だって朝から夜寝るまで、ずっとですもんね」と言ってくれました。先生は、家で障害児をみる親の大変さを理解してくれていたのです。その上で、息子だけでなく、私や家族も支援したいと言ってくれました。学校は子どものためのもの、担任の先生は息子の担任であって、あまりご迷惑をかけてはいけないと思っていましたが、このときの先生の言葉に、私は心底救われたのです。私が欲しかった言葉をくれた先生、息子だけでなく、私にとっても頼れる存在娘のお迎えの時間がせまっていて、さらに泣きすぎてうまく受け答えができずにグズグズな情けない姿をさらしてしまいましたが、先生と話したことで、私の気持ちは落ち着きました。先生は、私が欲しい言葉を全てくれた気がしました。こうして私は、先生と話したおかげで、ずっと落ち込んでいた気持ちがすっきりし、「いつもの自分」で子どもたちのお迎えに出発することができたのです。次の日、なんとまた先生が電話をくれました。私の様子を心配しての電話でした。「何かあったら積み重なる前に、どんどん相談してください」と、また心強い言葉を言ってくれたのです。先生との電話を終えて連絡帳を見ると、そこにも心遣いのメッセージがありました。「迷うこと、不安になること、ママにしか分からないことがあっても、絶対に一緒に戦います。味方はいっぱいいます、頼ってください。」先生からの一つひとつの言葉に支えられて、今の私がいます。息子だけでなく、親である私のケアまでしてくれて、明日への力をくれる、そんな特別支援学校って最強だなと感じた思い出です。執筆/べっこうあめアマミ(監修:初川先生より)担任の先生の言葉に救われたエピソードのシェアをありがとうございます。特別支援学校だからこそ障害についての理解や障害のあるお子さんを育てる大変さをよくご存知で、少人数で支援が行き届きやすいといった側面はありますが、おそらく読者の方の中には、特別支援学級や通級指導教室、通常学級であっても担任の先生の言葉に救われたことに思い当たる節のある方もいらっしゃるかもしれませんね。家庭と学校はお子さんが長く過ごす場です。お子さんの難しさやずっと一緒にいることでそばにいる大人にかかる負担など、先生方と保護者の方とでは共有できるものがたくさんあります。アマミさんはずっとこれまで親だから自分で頑張らなければ、担任の先生は子にとっての先生であって自分が頼る相手ではないとかなりご自身を律してこられたのだな、とこのエピソードを読んで思いました。ただ、どんな人にも気持ちやコンディションはあって、いつもいつも頑張れるわけではないです。そして、お子さんに障害などの難しさがあったらなおのこと、負荷がかかっている面があるのも当然だろうと感じます。保護者の方がいっぱいいっぱいになられた際に、弱音を吐いたり、つらいと言えたりする相手や場があるといいなと心から思います。アマミさんのように担任の先生がそのお相手となることもありますし、場合によっては養護の先生や特別支援コーディネーターの先生であることもあるかもしれません。スクールカウンセラーや地域の子育て相談窓口がそこを担うこともあると思います。「何かあったら積み重なる前に」「相談してほしい」と思っている支援者は探してみると近くにいるのではと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月23日自閉スペクトラム症の5歳娘、急に乱れ始めた睡眠。真夜中に起きては大はしゃぎ!今年の夏から秋にかけ、5歳の長女まゆみの睡眠リズムが乱れに乱れ、親子ともども睡眠不足の日々を送っていました。何がきっかけだったのかは分かりません。ここ2年ほどは睡眠も安定していて、それなりに寝てくれる子でした。それがいきなり、真夜中の2時や3時に大笑いしながら起き出して何時間も騒いだり、暗いうちに目覚めたまま眠らないようになったのです。ひどい時には起床が夜中の1時だったこともありました。Upload By にれまゆみは目覚めるとまず、寝ている私の上に乗ってきて頬を寄せ、アゴでゴンゴンして起こそうとしてきます。本人はニコニコして悪気はないのですが、まゆみの繰り出す強烈なアゴ落としで私が悶絶しながら起きるのがルーティンになっていました。走り回って騒がない限りは夫や次女が起こされることはあまりないのですが、まゆみが起きると私は必ず起こされてしまうのです。「起きて起きて」と言わんばかりに愛情表現してくれるのは有難い反面、真夜中に起こされるのには参りました。まゆみは20時半頃眠りに就くことが多いのですが、私はふだん夜中の1時頃まで仕事をしているため、これではほとんど眠れません。そんな日が1ヶ月ほど続くと私の体調もみるみる悪化……。体重もメンタルもガタ落ちし、口内炎と謎の蕁麻疹に悩まされ、仕事にも生活にも差し支えるように。そんな時、ちょうどまゆみの発達外来の受診日があったので主治医に相談してみました。Upload By にれ実は、主治医には以前から服薬を薦められていました。それを固辞していた理由は、対象年齢になったばかりであることと、診察室での姿と普段のまゆみの姿にギャップがあったからです。広い診察室ではテンションが上がって走り回ってしまうまゆみですが、家庭内や療育先になると、落ち着きのなさはあるものの座って学習にも取り組めているのです。そのため日常生活で「多動のせいで学習機会が減っている」と感じることは少なく、思い出したようにクルクル跳ね回るまゆみのうれしそうな表情を見ていると、「今のこの子の脳と体には必要な動きなんじゃないか」とも思えていました。服薬に関しては何が正解というのはなく、当事者が納得することが重要なのだと考えています。しかし、まゆみ本人が決めることは難しいためにメリットとデメリットをよくよく考えて慎重になっていました。しかし……眠れないとなると話は変わってきます。私もしんどいですし、何より睡眠不足がまゆみの心身に与えるダメージが心配でした。「持ち帰って夫と相談の上で決めたい」と答えた私に、医師は「睡眠だけに効くメラトベルという薬もあります。リスパダールに抵抗があるようならこちらでも」と提案してくれました。主治医の薦めるように投薬を始めてみるか、飲まずに様子を見るか。夫に相談すると、「薬? う~ん、本当に必要? 飲ますしかないなら仕方ないけど……」という返事。夫婦だけでは答えが出せず、療育先にも相談してみることにしました。漢方外来に行ってみることにUpload By にれ療育先の経営母体の病院が隣町にあるのは知っていましたが、そこに漢方外来があるのだそうです。漢方は効き目もゆるやかで体への負担も少なく、合えば体質改善に繋がるのではないか……私の中での方針が固まりました。まずは漢方を試してみて、効果がなければ主治医の薦めるように投薬を試そう。そう決めて、漢方を処方してもらうことにしました。漢方ってどんなものだろう?煎じ薬のようなものを貰うんだろうか……。そんな想像とは違い、きちんと個包装された「抑肝散」という顆粒の薬を処方してもらえました。睡眠だけでなく、神経のたかぶりを全般的にゆるめてくれることが期待できるそうです。中身を確認してみると、ザ・漢方という色と香り……。偏食でジュースもほとんど飲まないまゆみが飲めるか心配になりましたが、お湯に溶いて飲ませてみました。最初こそ飲ませるのにとてもとても苦労しましたが、4日目からはまゆみ自ら口をつけるようになりました。そして飲み始めて2週間ほど過ぎると、睡眠が徐々に安定するように……!睡眠障害が始まってからは日中もハイテンションで昼寝すらしないことが多かったのですが、保育園でも療育でも「落ち着きを取り戻してきた」と報告を受けました。Upload By にれ抑肝散はまゆみに合っていたんだ!やった!と大喜びで追加の抑肝散を処方してもらいに行きました。しかし……「あ、漢方飲める子なんだね。じゃあこっちも試してみて。飲ませやすいと思うよ」処方されたのは「抑肝散」ではなく「甘麦大棗湯」という漢方薬。一般的には、こちらのほうが癖もなく甘い味で飲みやすいと言われているそうなのですが、持ち帰って一口与えてみると……まゆみが断固拒否!!薬を見るや布団を頭からかぶって出てこなくなってしまいました。それでもどうにか頑張って少しずつ飲ませていたのですが、抑肝散をやめたら睡眠障害も再発してしまい、また振り出しに戻ってしまいました。でも漢方は効くまでに時間がかかるし……と2週間ほど頑張ってみましたが、改善の見込みなく心が折れそうだったので、もうムリ‼ と隣町の病院へ車を走らせました。「すみません、抑肝散に戻したいです!」今度はすんなりと抑肝散を処方してもらえ、そこから3ヶ月飲み続けて現在に至ります。わが家に穏やかな夜が帰ってきました波はあるものの、わが家に穏やかな夜が帰ってきました。漢方は合う薬を見つけるのが難しいといわれる中で、たまたま最初の薬が合っていたまゆみはとてもラッキーだったのかもしれません。甘麦大棗湯も、まゆみには合いませんでしたが合う人も多いそうです。私は療育先に相談してみるまで漢方外来という選択肢があることも知りませんでした。もちろん西洋医学の薬が悪いものとは思っていませんし、効果の高い薬で気持ちや行動が落ち着けば、できることが増えて本人の人生も豊かになるだろうと思います。ただ、現時点で私と夫の考えは「未就学児のうちは、強く作用する薬は最後の手段にしたい」という意見で一致していました。子どもの服薬については悩まれる方も多いと思います。繰り返しになりますが、一概に正解を示せるものではないので、ご家庭それぞれ、お子さんそれぞれの答えになるのだろうと思います。わが家もこのままずっと抑肝散に頼っていけるかは分かりませんが、ひとまず漢方のおかげで落ち着いたので、こんな例もあったよとお伝えできていれば幸いです。執筆/にれ(監修:藤井先生より)自閉スペクトラム症と睡眠障害の合併は40〜80%と高く、お子さんの睡眠障害に伴ってご家族も疲弊されることもよくあります。お薬に抵抗があったかもしれませんが、にれさんが主治医と療育先に相談され、まゆみさんにあう漢方薬が見つかってよかったです。漢方薬でも、西洋薬でも、副作用と効果のバランスをみながら、主治医と相談しながら、使用の可否についても相談できると良いですね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月22日気圧の少しの変化に弱いASD息子わが家の凸凹きょうだいの兄タケル(自閉スペクトラム症(ASD)・22歳)は特に「こまめに」体調が悪くなるタイプ。大きな病気をしたことはないのですが、暑いと言っては目を回し、寒いと言っては硬直し、気圧が下がれば頭痛が起こり、上がれば吐き気を催します。Upload By 寺島ヒロさらに聴覚過敏もあるので、大きな音がすると頭が真っ白になって、今自分が何をしようとしていたのか、どういう状況なのか分からなくなり強い不安に襲われてしまうようなこともありました。外であれば、ブルブル震えてその場から動けなくなってしまうようなこともあったのです。自分の体が思うように動かずパニックに……!タケルが幼く、また、本人も発達障害についてよく知らなかった頃は、その都度「全てが曖昧で体が動かない!」「なんだか黒いものが足元にあるようだ! 見てもないけどあるような気がする!!」とパニックを起こしていました。親のほうも、本当になぜこんなにしょっちゅう具合が悪くなるのか分からず、タケルが出かける予定先に連絡をしたり、自分がスケジュールのやりくりをしたりすることが大変で、ほとほと困り果てていました。パターンを覚えて、便利なデジタル機器で先読み!今でも、その「変化に弱い体質」が治ったわけではありませんが、タケル本人や周りにいる人たちが、タケルの不調が起こるパターンを考慮して予定を入れることで、ある程度不調が起こる頻度を抑えられるようになりました。Upload By 寺島ヒロまた、ノイズキャンセラー(ノイズキャンセリングイヤホン)を使うことで、大きな音からのストレスを軽減したり、低気圧が近づくと教えてくれるスマートフォンのアプリを使って、気圧の変化が大きくなりそうなときは早めに帰宅するようにしたりしています。ASDの「特性」がなくなるわけではないけれど……タケル本人も20歳を過ぎた頃から、一人の時に具合が悪くなってもパニックを起こさず、「自分で連絡して予定を変える」「しばらく安全なところで休む」「病院に行ったほうがいいか周囲の人に聞く」などの対処ができるようになりました。発達障害があっても、ちゃんと成長してるんだなあと思ったものです。執筆/寺島ヒロ(監修:室伏先生より)タケルさんの体調不良と、それに対するヒロさん・タケルさんの工夫について共有くださり、ありがとうございます。予測できない体調不良、タケルさんもヒロさんもおつらかったですね。まだうまく言語化できない年齢、発達段階のお子さんも、周囲には理解しにくいさまざまな不調や不快と戦っているのだろうな、と考えさせられました。タケルさん、そしてご家族が不調を予測して予定を上手に組まれているご様子、素晴らしいですね!不調と上手に付き合ったり、対処ができるようになっていることは、タケルさんにとって大きな自信につながっていることと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月20日3人家族のわが家。夫婦で性格は正反対現在19歳の娘は3歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。娘は明るく穏やかですが、思う通りにいかないと多少パニックになるところがあります。小さな頃から絵画教室に通っていることもあり、絵を描くことが大好きです。夫は現在59歳です。冷静沈着で客観的、物事を俯瞰して見ることができるのですが、一方で、冷たい人といった淡白な印象を受けるかもしれません。私は夫とは全く真逆で、どちらかというとすぐに頭に血がのぼりがち。このようにお互いが全く違う性格だったため、結婚して最初の数年は些細なことでよくけんかをしていました。ですが、娘が生まれてから少しずつ、歩み寄れるようになりました。Upload By ユーザー体験談ワンオペ育児から、子ども関係のものは夫婦一緒に行動するに変わるまで結婚から数年後、待望の赤ちゃんを授かりました。ですが当時から夫は仕事が忙しく、子どもが生まれてからも毎晩の帰宅は23時過ぎ。育児は私のワンオペでした。初めての育児に一人で向き合うのはとても孤独でした。そして成長するにつれ、パニックや不安の強い娘を見て「他の子と違う?」と感じることが増えてきた私。一人で抱えることができず、夫にその不安を伝えるようになりました。夫も仕事で疲れていたはずですが、家族二人きりだけだった時とは違い激しいけんかになることはありませんでした。かけがえのない娘のことです、真剣に話を聞いて、冷静に状況をまとめてくれました。Upload By ユーザー体験談発達相談へ行くことから始まり、娘は3歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断されることになります。当時は発達相談など娘に関わることは、できるかぎり夫にも一緒についてきてもらうようにしました。忙しい夫にすべて同行してもらうのはなかなか難しかったのですが、ともかく一緒に行こうと努力してくれたことは、夫婦の繋がりを強くしたと思います。また一緒に行けると娘の発達に関する認識を共有しやすく、夫婦で意見が違っても、お互いに歩み寄るのがスムーズで良い事だらけでした。その後、娘は特別支援学校へ入学。入学式や授業参観、運動会、学校祭、卒業式など、娘が参加する学校関連のイベントもできるだけ、夫と私で一緒に行きました。夫とイベントに参加して、「娘はこんなことをしてたね」「こんなことに気付いたよ」といったことを話すことで、「娘は、こんな特性がある子どもなんだ」と娘への理解も深まったと思います。Upload By ユーザー体験談夫に似た娘は片付けができなくて…このように二人で娘を見守ってきましたが、夫と娘それぞれを見ていて「親子って面白いな」と思ったのは『片付け』です。夫は片付けが大の苦手です。書斎の机の上は、いつも物が山のように積まれています。夫は家で持ち帰った仕事などをするのですが、物の中のわずかなスペースにパソコンを押し入れて作業しています。よく文字が打てるなあといつも感心しています。娘も夫に似て、片付けが苦手です。特性もあって物事に夢中になると、周りの事が見えなくなるためか、より物を散らかします。Upload By ユーザー体験談私はとにかく散らかっているのが嫌な性分なので、嫌がるのは分かっていても夫の書斎や娘のものを 時々勝手に片付けてしまいます。すると、あれがないこれがないと文句を言われてしまいますが……。そんな二人ですが、19歳になった娘はだんだんと片付けることができるようになってきたのです。今の娘は自分が使う机まわりや、引き出しを取り出しやすいよう綺麗に整理しています。なぜできるようになったかというと、現在就いている職業が関係しているのです。娘は食品を扱う仕事をしているのですが、使用したものはきちんと所定の位置にしまう、一つを出したらいくつも同じものを出さないなど、職場で徹底されています。それもあって片付けを意識できるようになったのでしょう。「習うより慣れろ」だったのですね。一方夫はまだ片づけられません。これは直らないかな?と思いつつも、娘が克服したように日頃から「出したらしまう」を徹底すれば治るのかもしれないと、ちょっと思っています。人生の折り返し地点を越え、これからも夫婦として歩んでいきたい娘も大きくなり、いままで夫婦二人三脚で乗り越えてきた子育てもだいぶ落ち着いてきました。娘には目標である一人暮らしに向けて、お金の管理や食事作りなど一歩一歩本人のペースで積み重ねていってもらえたらと思っています。夫も私も50代後半で、人生も折り返し地点。もう30代の頃のように激しくやりあうような大げんかをすることはないでしょう。心地よい距離を保ちながら、親しい夫婦としてこれからも歩んでいければと思います。イラスト/マミヤエピソード参考/アダチ ハルエ(監修:鈴木先生より)思い通りいかないとパニックになるのはASDの易刺激性からくるものです。ひどい場合はアリピプラゾールという抗精神病薬で抑えることが可能です。片づけが苦手なのはADHDの特性や遺伝的な要素があるのかもしれません。親御さんにも発達特性があるのかもしれませんね。性格は正反対でも、二人三脚ができるのは幸せなご夫婦だと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月19日保育所等訪問支援って?Upload By まる知的障害を伴う自閉スペクトラム症のある4歳の息子・リュウが新しく個別療育に通い出して4ヶ月ほど経った頃、保育園の担任の先生から「療育ではどのようなことをしてますか?私たちも発達障害について詳しくないからリュウちゃんに対してどのように向き合えばいいかもっと詳しく知りたい」と言ってくれたことがあった。そのことがきっかけで、同じ療育に通うお友達のママが「保育園に療育の先生が来て園での様子を見てくれたり、先生にアドバイスをしてくれたりと園と療育で連携を取れる支援があるよ」と言っていたことを思い出した。さっそく療育で聞いてみると「保育所等訪問支援」という支援があることを教えてくれた。そういえば以前通っていた療育先でも「困り事があったら保育園へ伺って様子を見るので言ってくださいね」と言われていたことを思い出した。当時は息子もまだ小さくなにを見てもらえばいいのかよく分からず利用しなかったのだが、最近は周りのお友達関係や行事の練習参加などどうしているのかな……と心配なところが多々出てきたので、この機会に利用してみることにした。保育園での息子の様子Upload By まる息子はある程度の発語は出てきたが、今日保育園でなにしたの?と問いかけたところで「ホイクエン、タノシカッター」と言ってくれるくらいだ(それだけでも今まで返答することなんてなかったので、答えてくれた時は泣いて喜んだ)。なので保育園でなにをやっているのかあまり分からない。一応連絡ノートを書いてもらっていてそこから少しだけ情報はくるが、職場と家との行き帰りでバタバタしている送迎時だけでは先生とゆっくり話すこともできない。保育所等訪問支援で情報共有してもらえることで、私(保護者)、保育園、療育の三者間で息子の困り事やこれからの取り組み方についてすりあわせることができるので、よりよい支援に繋がるのではないかと思う。実際、夏頃に療育の先生が保育園に来て息子の様子を見てくれた。毎日やっているお支度などのルーティンはちゃんとできていることや、リトミックなどの活動にもある程度参加できていることが分かった。ただ息子自身が困った時、人に助けを求められない問題も知ることができた。息子の席に別のお友達が座っていて(悪気はなく)、息子は自分の席に座りたそうだったけどなにも言えずにその周りをふらふらしていた、など。ほかにも、どのような遊びを取り入れたほうがいいかなどのアドバイスも園にしていただけた。今後の利用Upload By まる初めて保育園等訪問支援を受けてから4ヶ月経った11月に、保育園で個人面談をした。療育の先生にアドバイスをもらえたことで、リュウ君のことをもっと理解できてよかった、前回の訪問から数ヶ月経って、リュウ君が成長した部分もあるからまた来てもらいたい、という話になり、もうすぐ2回目の保育所等訪問支援を受けることになっている。最近は工作などの活動に参加はできているけれど、少し時間が経つと疲れてしまうようで、途中で席を立ちゴロゴロしに行ったり、決まった椅子じゃないと座らないなどこだわりが出てきているらしい。成長に合わせて困り事も変わってくるから定期的に情報共有の支援として使わせていただこうと思っている。執筆/まる(監修:初川先生より)保育所等訪問支援の利用についてのエピソードをありがとうございます。お子さん本人がまだ園での生活をうまく言葉にできない段階だったり、言葉にできるにしてもうまく説明するのが苦手なお子さんだったりするとお子さん経由での園での生活実態を知るのは難しいですね。連絡帳で知ることができますがもちろんすべてを網羅できるわけでもなく、そして送迎時は保護者が忙しいことが多いです。まるさんのエピソードの中にもあったように、園や学校の先生が療育ではどんなことをどのようにしているのか知りたいというニーズは結構あります。実際に療育の先生が園や学校に来ていただける場合、療育の先生は療育の専門家としての視点からお子さんの様子を観察してくださるので、今まであまり気づかずにいたことに気づけたり、また、できていることに対しても細やかな目盛りで観察してお伝えくださったりします。園と療育、家庭とが有機的に連携できるのはお子さんの支援を考えるうえでとても良いですね。ご興味ある方はまずは療育の先生に聞いてみていただければと思います。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月18日1歳半健診で要観察になり、真っ先にしたことわが家の自閉スペクトラム症(ASD)のある娘、しぇーちゃん(現在9歳)が1歳半健診で要観察になった後、私が真っ先にしたのは「ネットで発達障害に関する記事やブログを読み漁る」ことでした。それまでもいくつかは見ていましたが、「1歳半健診ひっかかる発達障害」とか「子ども自閉症度チェック」などのキーワードで検索して出てきたウェブサイトを、ひたすら読んでいたのです。いろいろな情報に触れるうちに、娘にはADHDの要素も自閉スペクトラム症(ASD)の要素もある気がしました。また発語もほぼなく喃語ばかりだったので「知的障害の可能性もあるかも」と考えていました。どんどん増える娘の「気になる行動」。純粋に育児を楽しめなくなり……1歳半を過ぎた頃から、娘には逆さバイバイやクレーン現象が見られるようになりました。はじめは、私の手を使って物を取ろうとしたりするのは、「娘の意思表示の方法」としか思っていませんでした。ところがある日、「クレーン現象は発達障害の子に見られることがある」ということを知り、こちらを全然気にかけず、手元だけ見てリモコンに私の指をひっぱる娘の様子を見て「そういえば、これってネットで見たクレーン現象だ!」と気づいた時は衝撃でした……。気になれば気になるほど、娘のやることなすこと「これは発達特性によるものなの?」という考えが頭を占め、だんだんと娘へ向ける笑顔も減っていきました。夫も育児ノイローゼ気味に。しかし「発達障害かも」と伝えると……Upload By マミヤちょうどその頃、育児に協力的だった夫が育児ノイローゼのようになっていました。娘は毎晩何度も泣き、日中は私と少しでも離れると泣き、出かければ多動と「帰りたくない」という癇癪で大変だったからです。夫は娘と2人で行くお出かけは断固拒否でした。私はそんな夫に、娘が1歳半健診で要観察になったこと、もしかしたら発達障害があるかもしれないことを伝えました。不思議だったのは夫が「娘は普通なんじゃないか」と言ったことです。あんなに「育てづらい、可愛くない、2人で出かけられない」と言っているのに……。”親はすぐ子どもに障害があると認められない”とは聞きますが、まさに私たち親がその状態なんだなと客観視した瞬間でした。発達相談する決定打となったある出来事と、書籍との出合いUpload By マミヤそれからしばらく経ったある日、私はたまたま予約していた赤ちゃんの読み聞かせ会に参加するため、近所の図書館に行きました。「もし、ここでほかの子どもと娘に明らかな違いがあったら……娘の発達の違和感を認めて、きちんと向き合おう」そう心に誓って参加しましたが、結果は「認めよう。うちの子はなにかあるわ。びっくりするぐらい多動がひどい」でした。読み聞かせ中はあちこちに行こうとする娘を抑え、しまいには本棚の周りをぐるぐる回る娘を追いかけ、終わった頃には大変過ぎて汗びっしょりでした……。司書の方は「元気な子だね」と苦笑い。娘と同年代と思われるお子さんは、お母さんのお膝に座っているか、少し離れていたとしてもお母さんの側にいました。娘のように読み聞かせスペースを離れて本棚をぐるぐる回っている子どもは1人もいませんでした。その日の夜、夫に昼間の娘の様子を伝え、改めて”娘はなにかの発達障害があると思う”と伝えました。娘は普通ではないかと言っていた夫は少し考えた後「ママが一番しぇーちゃんと一緒にいてよく見ているから、ママがそう思うならそうなんだと思う」と言いました。今思うと全て私に任せた回答ではありました。ですが私は、娘に発達障害があるかもしれないという考えを、夫が断固拒否しなかったことに安堵しました。またその頃、少しでも娘の成長のためになにかできないかと育児書を買ってみました。確か「子どもの言葉を引き出す」や「赤ちゃんとコミュニケーションをとる方法」のような内容だったと思います。『子どもが花を指差して「はな」と言ったら「お花きれいだね」と声かけしましょう』と書いてあったのですが、娘はまず指差しをしません。何かを見つけた時にこちらに知らせようともしません。この時「自然に任せて娘の成長を待っていてはいけないのでは……!?」と驚きました。Upload By マミヤそこで、今度は発達障害児に関する専門書籍を購入しました。すると、その本にはまさに私が知りたかった娘への対応方法が書いてあったのです。図書館での出来事、そしてこの本との出合いで”娘はやはり発達になにかあるんだ”と実感しました。こうして、私は早く療育へ通いたい、もっと娘への正しい対応を知りたいと思うようになり、あと10日で2歳になるにもかかわらず、保健所からの連絡を待てず自ら電話をかけたのでした。執筆/マミヤ(監修:初川先生より)1歳半健診で「要観察」となってからの半年間の発達障害かも、という不安と実際の様子との逡巡に関するエピソードをありがとうございます。「要観察」もそうですし、保護者の方の「育てづらい」と感じるようなお子さんの様子、同年齢のほかの子たちとの違い。ますます「これは発達障害なのでは……」と感じるようなことが多々あったのですね。発達障害なのか、いや、違ってほしい、しかし育てづらい、さまざま項目があてはまる……という逡巡を経験されている読者の方も多いと思いますが、お子さんの特性や子育てにおけるうまくいかなさ・育てづらさがなんなのか、というところで不安と淡い期待とでとても心が忙しい時期であったことでしょう。マミヤさんは発達障害に関する本を購入してみたら知りたいことが書いてあったとのことですが、本が参考になることもありますね。発達障害に関する本を買うのはなかなかハードルが高いという方は、まずは立ち読みなどで手に取っていただくとよいかと思いますが、ご自身のニーズに合うものであれば障害かどうかにこだわりすぎることなく、ぜひ参考にしていただければと思います。発達障害の診断をどうするかはまた別途考えるとしても、発達障害かもしれないと捉えることによって、マミヤさんのように療育に通いたい、対応方法を知りたいといったようにお子さんの理解が進み、つまずきへ対応していけるようになることにつなげたいという姿勢が生まれる。そのことがとても大切ですし、なによりです。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略
2023年12月16日療育手帳を取得、更新するために受ける発達検査!息子を連れて行くだけでも大変だったわが家の次男Pは知的障害を伴う自閉スペクトラム症です。初めて療育手帳を取得したのは3歳の時で、当初は「軽度」と判定されました。その2年後、Pが5歳の時に手帳の更新があり、その時には「中度」と判定されました。そしてさらに3年後の今年、Pは8歳になり2回目の更新の時期がやってきました。私は、市役所で手続きをし、発達検査を受けるためにPを連れて児童相談所へ行きました。思えば初めて療育手帳の検査を受けに行った時は、Pを児童相談所へ連れて行くというだけでも大変でした。知らない場所で、知らない心理検査員さんと発達検査を受けるのはかなり難しく、大人しく座れないし、検査もやりたいことしかしないし、分離不安もあったので、私はPの側から離れることができませんでした。5歳の更新の時も同じように大変で、Pは療育園を休んだことでルーティンが崩れ、いつもと違う雰囲気に戸惑い、ずっと泣きながら検査を受けていました。Upload By みん8歳になってから受けた発達検査は、想像以上にスムーズで……しかし今回、8歳の更新の時は前回までと違い、児童相談所へ行く前に建物の写真を見せて、ここへ行くから学校はお休みするということを伝えると、すんなりと向かうことができました。到着してからも「この先生と一緒にお勉強するんだよ。その間お母さんとはバイバイします」と伝えると、心理検査員さんと2人だけで発達検査を受けることができました。私は別室で検査が終わるのを待ちながら、Pの成長を実感していました。無事に検査が終わり心理検査員さんからも「最初から最後までずっと座って集中していて、こちらの指示通りに検査を行なってくれました」と言ってもらえて本当にうれしかったです。Upload By みん障害の等級により支援内容が変わる福祉サービス。療育手帳を取得、更新するメリットは?その後、保護者である私へのヒアリングがあり、生育歴や日常生活についての質問を受け、これらを総合的に判定した結果、A(重度)判定となりました。今回の更新で等級は下がりましたが、Pは確実に成長していてスムーズに検査を受けられたことのほうがうれしかったし、中度と重度では受けられるサービスも変わってくるので、やっと正確に判定されたことにも安心しました。重度になると税金控除の減税額も変わり、旅客運賃の減額、施設の割引など、さまざまなサービスがありますが、高速道路の割引も受けられるようになったので、車で旅行やお出かけをするのが大好きなPのために、ありがたく利用させていただきたいと思っています。支援内容やサービスは自治体によって異なりますが、療育手帳を持つことでさまざまな支援を受けやすくなります。療育手帳の取得は必ずしないといけないものではないし、取るか?取らないか?は本人や家族の考え方にもよりますが、わが家の場合は取得するメリットの方が大きいと感じています。このような制度があることに感謝しながら、これからも有効活用させていただきたいと思っています。Upload By みん執筆/みん(監修:森先生より)療育手帳の判定というのは、あくまでも「支援のために総合的に判断されるもの」であって、決して「お子さんの能力そのもの」を示すものではありません。お子さんの健全な成長のために必要なサポートをしっかりと考えて、適切な支援を受けられていて素晴らしいです。保護者の方だけでなく、自治体などの専門家の方もお子さんの成長を見守ってくれていると思うと頼もしいですね。療育手帳の取得に関して、ご家庭によってさまざまな考え方がありますが、自治体がお子さんの成長のために設けているサポート制度ですので、ぜひ有効活用してみてくださいね。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月14日幼少期から不器用さがあった息子現在6歳の息子は、4歳でADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。息子は手先の不器用さがあり、できないと癇癪を起こしますが、できるように練習することも嫌がります。どうすればいいのか……長く頭を悩ませてきました。3歳頃、ボタンやファスナーをとめるのが難しく、園から自分でできるようにと言われたため、家で何度も練習させていました。また、折り紙や塗り絵、絵を描くことは自分からすることはほぼありませんでした。興味がないだけかと思っていましたが、手先を使う事が苦手だと自覚があったのかもしれません。おはしも上手く使えません。練習も嫌がり、いまだに習得できずにいます。年少時、初めての運動会のかけっこで2位だった時に大号泣。先生に抱っこされながら退場しました。そこから勝敗のこだわりが強くなりました。体にも不器用さがあるのか運動は苦手なのですが、1番にこだわりがある息子。体操教室に通っているのですが毎月のテストが一度でクリアできないと癇癪を起こします。でも練習するのは嫌みたいで、なんとも解決のしようがありません……。Upload By ユーザー体験談授業参観で寝そべって抵抗する姿に他の保護者がドン引き……小学校に入学すると勉強や集団行動が増え、息子は荒れることが多くなりました。小1の授業参観の時のことです。それぞれが育てた朝顔を観察し、花の絵と文章を書くのが課題でした。ですが息子の朝顔は花がすべて閉じてしまっており、咲いている花が1つもなかったのです。「咲いてる花を(私たちに)見せたかった!」「咲いてないから描けない!」と息子はずっと泣いていました。先生や私が「閉じてる花や葉っぱでもいいと思うよ」と伝えますが、本人の中では咲いている花を描きたかった(描くべきだ)と思っていたようで、考えは変わりませんでした。担任の先生は「こうやって書くよ」と葉っぱを少し描いてくれたものの、息子の気持ちは変わりません。そして、ついに校庭に寝そべって癇癪を起こしました。ああ、こうなってしまったか……と思いました。仕方ないと割り切ってはいますが、他の保護者のみなさんが、荒れる息子を見ないように気を遣ってくれているようで気になりました。家ではここまで騒ぐことはなかったので、対策が必要だと痛感しました。Upload By ユーザー体験談先生がすすめてくれた対策「暗号問題」でひらがなを攻略息子は手先の不器用さがあるので、ひらがなを書くことなどに苦手意識が強くありました。また、興味がないことはやりたくないという気持ちが強かったので、療育の先生や支援教室の先生と話し、興味のある「数字」と組み合わせたクイズ形式で学んでもらおうということになりました。クイズを解き、回答をひらがなで書いていくようにしたら、クイズに数字が入っていることや、解いていく快感があったのでしょうか。効果てきめんで嫌がらず、ひらがなを書いてくれるようになりました。また、絵は自由課題になると難しいので、何を描くか、どう描くか具体的に伝えてもらうことで、描けるようになりました。それでも嫌がるときは、見本を見て「この見本みたいに描いてみるといいよ」と伝えると、迷わず描けたようです。これで絵を描くことへのハードルが下がったようです。Upload By ユーザー体験談できなくても「まぁいいか」を目指して……!家でやった工夫運動は苦手だけどできないことは許せない、でも練習も嫌という息子。「まぁいいか」と思えるようになるか、練習してできるように頑張るか、どちらか一つでもできれば……と思いながらも、どうアプローチするのがよいのか難しく、頭を悩ませていました。まずは「まぁいいか」と思う場面がどのようなものか、見せる機会を増やす取り組みをしました。例えば、私と子どもでゲームをしたとき、「負けちゃったけどまぁいいか。もっとできるように練習しよう~」と口に出して言うようにしました。また、「ママが勝つと息子くんは泣くから、ママは負けるね」と宣言してみると、息子は「本気でやっていいよ。そうしないとつまらないから」と言うようになり、『ゲームは本気でやることが楽しいんだ』という視点を持てるようになったようです。ただ、実際負けたら泣きましたが……。声がけを意識するようになっても長く効果を感じることはなかったのですが、ここ最近は少しずつですが妥協して切り替えられることが増えてきたように思えます。先日は弟に負けても怒らず「弟くんの勝ちだね」と拍手してあげられ、成長を感じました。Upload By ユーザー体験談できなかったことができたときは「頑張って練習したからだね」「この前より上手になってるね」など言葉にして伝えるようにしていますが、苦手なことに向き合い、練習するという気持ちにはまだなれないようです。でもくじけずこのまま声がけを続けたいと思っています。「自分はそれでいい」と納得できるようによく息子は「自分はできない」とか「他の人より全然できない」と言いますが、自分は自分、それでいいんだと思えるようになったら、こんなに心強いことはありません。自分に必要なことは努力できる力、どうしても難しいことは、他の方法がないかさまざまな選択肢から選び取れる力がつけば、きっと人生を楽しく歩んでいってくれるのではないかと思います。私も息子にどのように伝えたらいいのか、試行錯誤していきたいと思っています。イラスト/海乃けだま※エピソード参考者のお名前はご希望により非公開とさせていただきます。(監修:森先生より)こだわりが強いと、「正しいパターン」がたった一つしかないかのように感じてしまっていることがあります。現実には「正しいパターン」が無数にあるということを、まだ知らないのです。確かに図鑑や絵本でよく見る朝顔は「咲いている朝顔」です。でも、種も、芽も、葉っぱも、つぼみも、どれも「正しい朝顔の姿」です。勝負も同じ、物語なんかでは「主人公が勝つ」パターンが多いので、それが絶対の正解のように思ってしまいますが、実際は「弟が勝つ」のも楽しいゲームの遊び方としては「正解」です。「まぁいいか、これからもっと頑張ろう」というプラスな考え方も正解の一つだよ、と伝える今の教育方針は、とてもあたたかくて柔軟で素晴らしいですね。「これもみんなが喜ぶ結果につながるんだ、じゃあこれも正解なんだな」というように、これからも、お子さんの中での「正解」のパターンを増やしていけるといいのではないでしょうか。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年12月13日丈夫で我慢強いASD娘現在16歳のいっちゃんは、生まれた時こそ2450gとやや小さめで心配させられたものの、16年間大きな病気もせず、スクスクと育ちました。風邪をひくこともほとんどなく、内臓の病気にかかったこともありません。記憶に残るのは、3歳の頃にかかった突発性発疹、小学生の時のインフルエンザ、そして高校生になってかかったコロナぐらいです。しかし、この「たった」3回、全て発見が遅く、大変心配をさせられる事態となりました。「なんかおかしい」と本人が言いだした時はすでに重症!いっちゃんは、自分の体調のモニタリングが難しいため、悪くなるサインもいきなりやってきます。Upload By 寺島ヒロインフルエンザにかかった時は、本人が「なんかおかしい」と言うので熱を測ったらドカンと39.8度! 昼間は機嫌よく学校に行って、さっきまですごい勢いでピアノを弾いていたのに……!?慌てて夜間診療に連れて行ったのですが、呼吸が十分にできておらずパルスオキシメーターの値も95を下回っていました。90%を下回ると速やかに病院へ受診しなければいけないほどの危険領域だとか!さすがにあの時は私もスッ……と血の気が引きました。参照:「よくわかるパキシオルメータ」P5 | 一般社団法人日本呼吸器学会親が子どもの具合が悪くなるサインを見つけなければ……とはいえ……いっちゃんには睡眠障害もあるため、親から見て「ちょっと調子が悪そうだな」と見て取れても、病気ではなく、まず「眠れてないのかな?」と考えてしまうことも。これが、私たち家族がいっちゃんの病気を見逃す原因となっていると思います。今年(2023年)になってかかったコロナの時は全くそのパターンでした。30時間以上寝ないで絵を描いていた娘が「なんだか気分が悪い。足が寒くてしびれる」と言ってきました。一応コロナを警戒して熱は測ったのですが、その時は平熱。なので、「寝なさい! 寝ればきっと治るよ」と言って、詳しく様子を聞かず「早く早く」と寝せてしまったのです。ところが、3時間ほど経って夜中に再び起きてきた娘。「頭痛くて眠れないんだけど……」と言うではないですか。熱を測るとすでに38.5度! 展開早っ!?Upload By 寺島ヒロ痛みに強いということと関係あるのか、いっちゃんはずっと意識を保っていたため、その夜は救急車も救急病院も断られてしまいました……(ちょうど受け入れが厳しい時期だったのです……)。結局自力で持ち直し、翌日「発熱外来」で診断と診察を受けることができましたが、その時は本当に心配でしたし、「昨日のうちに何か兆候が出ていたのでは?病院に連れて行っておけば良かったのでは?」と思うことを止められませんでした。今になって考えるともちろん反省はしていますが、いっちゃんのような子どもの場合、早期発見しようと頑張っても、いかんともしがたい壁のようなものがあるよなと思います……。感覚鈍麻の娘に、親としてできることは……実際のところ、私は娘の体調についてはいつも緊張感を抱え、どんな小さな変化にも注意を払っています。いっちゃんが自分から不調を訴えなくても、顔色や匂い、ピアノを弾く時の指の動きを観察し、「そろそろ休んだら?」とか、「お風呂に入りなさい」「薬を飲んでおきなさい」などと(同世代の高校生には言わないようなことも)言って干渉しています。それで防げている不調もあると思いますが、それらは顕在化しないので、結局役に立っているかは分かりません。余計なことかもしれないと思いつつ、しかし手を離すのも怖いという、その狭間で揺れているというのが正直なところです。執筆/寺島ヒロ(監修:初川先生より)感覚の鈍麻があるお子さんの場合、自身の体調の変化になかなか気づけないという面があります。いっちゃんの場合のように、不調を訴えた時にはすでに重症なお子さん、さっきまで元気だったのにまるで電池が切れたようにダウンしてしまうお子さん、そんなありように心当たりのある保護者の方も多いと思います。ヒロさんのように、これまでの親子の歴史の中でいっちゃんの変化が表れやすいと捉えている匂いや顔色、指の動きなど、そうした細やかな面への注意を配り、なんとか変化を気づきやすくしようとされている方もいらっしゃいますね。そうした「傾向と対策」は本当に大切な視点で、お子さんが成長するにつれ、自身の体調の変化はそうした面に表れやすいのだと認識していってもらいたいところでもあります。よく体調が悪いとまぶたの二重が一重になったり、その逆の方もいると思いますが、顔つきが変わるお子さんも多いと思います。そうした本人でも気づきやすそうな面についてフィードバックしてあげたいですね。お子さんが相談機関などにかかっている場合、そうした体調のモニタリングの苦手さをターゲットにした関わりをすることもあります。毎回、相談のはじめに1週間の体調などに評価(5点満点で点をつける、表情マークに○をつけるなど)してもらうことがあります。宿題として、毎日の検温や食欲の度合い(意欲あるいは食べ残しがあったかどうかなど)、睡眠時間あるいは眠りの満足度などをチェックシートに記入してきてもらうこともあります。自分自身の身体の変化に気が向ける練習として、また、自分の体調の「傾向と対策」を身につけてゆくためにそうした確認や取り組みをすることがあります。こうしたことはなかなかに地味で、続けるのが大変な場合もありますが、体調に気を向けるタイミングをルーティン化したり、相談場面のような家庭外で扱ったりすることで取り組みやすくなるかもしれません。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年12月12日