こんにちは、ママライターの馬場じむこです。小学校までに発達障害と診断された子どもが中学校に進学する際、中学校側にどう伝えていくか悩む保護者の方は多いのではないでしょうか。積極的に話すことで、学校側に変に先入観を持たれてしまったらどうしようと心配する方もいらっしゃるでしょう。今回は、兵庫県尼崎市南武庫之荘で発達障害の6歳から18歳までのお子さんに学習支援を行う、放課後等デイサービス『みらい教室』を運営している平林景さんに“発達障害の子どもの保護者が中学校と連携をとっていく方法”についてお話を伺いました。●怠けているだらしない子と思われるのがいちばんNG『進学時、学校側に最初からレッテルを貼られたくないという気持ちになるのは分かります。専門家である臨床心理士や医師でも、最初から大げさに学校に言わないほうがいいとアドバイスする人もいるぐらいです。しかし、私は診断内容や困っていることを隠すことで、お子さんが悪意を持って怠けている、だらしない子と思われて、自己肯定感が傷つくような指導をされる方がデメリットが大きいと感じるので、診断内容や心配していることがあれば最初から学校側に伝えておいたほうが良い と思います。最近は、学校でも発達障害への理解が進んでいます。ちょっとした学校側の配慮で過ごしやすくなることも大きいですし、何よりもお子さんの理解者になる大人を一人でも増やすということで、お子さんや保護者の心の安定にもつながります』(平林さん)平林さんがおっしゃるとおり、発達障害について書かれている本でも、保護者が学校側に積極的に伝えるかどうかについては、意見は分かれていました。しかし、お子さんが苦手なことに対してツラい思いをしているのに、怠けや悪意を持った行動と誤解されて、人との信頼関係が損なわれることを考えると、最初から特性を知ってもらうほうが良いのではないかと感じます。●新学期になってすぐに校長先生も含めて話をする場を作る『では、いつ学校側に話をするかというと、できれば新学期に校長先生と担任の先生と一緒に話をする機会をもらえないか連絡しましょう。保護者から「校長先生も同席の上で」と申し出た場合、学校側は拒否できません。個人面談の季節を待つより、先に行動した方がよいです。この場合、校長先生にも同席してもらうことがとても重要 になります。なぜなら、学校での配慮の場合には校長先生の許可が必要なことがほとんどです。校長先生にわが子のことを早い段階から知ってもらっていると、配慮が必要な事態が生じたときに話が早いですし、もし、今後、学校になじめないといったことが生じて、日中にフリースクールといった外部機関を利用する場合も、出席扱いとする、内申になるべく不利にならないよう一筆書いてもらうのも、校長先生の判断によるところになるからです』(平林さん)新学期の学校が忙しそうなときに校長先生まで同席を申し出て面談となると、気が引ける保護者も多いと思います。しかし、校長先生に最初から直接話をすることでスムーズに決まることも多く、学校生活や今後の進学についての疑問があったら、その場ですぐ明確な回答をもらえるでしょう。ぜひ、多くの人にお子さんを知って、応援してもらおうという気持ちで臨んでください。----------早い段階から親が中学校と深く関わることで、先生方に理解を深めてもらって、子どもにとって充実した学校生活が送れるといいですね。【取材協力/平林景氏】『株式会社とっとリンク』代表取締役。兵庫県尼崎市南武庫之荘にて、発達障害の就学児童の学習支援を行う放課後等デイサービス『みらい教室』を運営。『学校法人三幸学園』に専門学校の教員として勤務し、その後、『東京未来大学こどもみらい園』副園長、『東京未来大学みらいフリースクール』副スクール長を兼務し、2017年1月に創業。・株式会社とっとリンク●ライター/馬場じむこ(書評ブロガー)●モデル/貴子(優くん、綾ちゃん)
2017年04月20日生まれた時から、「障害」は私の特徴のひとつだったUpload By 和田 恵利菜「障害者」という言葉に私はこれまで親しみを感じながら生きてきました。他ならぬ自分自身が障害者と呼ばれる立場にあるからです。私は先天性の障害で、3歳の時から電動車いすを使用しています。歩くことはできませんし、握力も弱く、自分の腕を持ち上げることも出来ません。できないことは多くありますが、現在、私は障害を自分の特徴の一つだと思っています。私は小中高と地元の学校に通い、現在は大学で心理学を専攻しています。大学では比較的バリアフリーが進んでおり、友人や先生、ヘルパーの方の手を借りながらも、快適に生活ができています。しかし、小中学校、高校での生活は、物理的にも制度的にも困難に感じることが多くありました。9年間ずーっと1階の教室で過ごした、私の同級生電動車いすを使用する私にとって、最も大きな問題はやはり「移動」です。学校には多くの段差が存在し、当然、階段も使用しなければ学校生活を満足に送ることはできません。小学校、中学校では、小さな段差や階段に対しては、スロープをつけるなどの工事を行い、問題を解消してもらえました。しかし、私の地元にはエレベーターの設置がある公立学校は少なかったため、私の通っていた小中学校でもエレベーターを設置してもらうことはできませんでした。そこで対策として、私の学年の教室は常に1階に設置してもらうこととなりました。小学生から中学生までの9年間、私はずっと1階の教室で勉強をし、日々の学校生活を楽しんでいました。Upload By 和田 恵利菜私の在籍していた学校は小中一貫校で、周囲の友人も9年間ほとんど変わることがありませんでしたので、当然、私の同級生も9年間、1階の教室で過ごすことになったのです。そんな中、ある日私は「僕だって1階じゃなくて上の階の教室がよかった」という同級生の声を耳にしました。自分のために周りの人たちに我慢を強いているのではないか。はじめてそう気が付いた私は悲しく思い、同時にどうしたらよいのか分からなくなりました。そんなとき、私を救ってくれたのは「私は1階の教室も好きだし、気にならないよ」という友人の言葉でした。彼女にとっては何気ない言葉だったのだろうと思いますが、当時の私にとっては「私に合わせて変えた環境を、受け入れてくれる人もいるんだ」と感じることができた大切な言葉でした。私は、環境を工夫すれば「障害者は障害者でなくなる」と思っています。それは私のような身体障害だけではなく、全ての障害に当てはまることだと思います。Upload By 和田 恵利菜できないことは環境の工夫次第で、できるようになります。幼少期、児童期の私にとって、歩けないこと、腕がうまく動かないことは、劣等感を感じさせるものでした。自分が思うように行動できないもどかしさにイライラしたり、周囲の人に迷惑をかけてしまっていると罪悪感を感じたりすることもありました。しかし、小中学校、高校、大学と進学し、その都度、環境を工夫し、支援をしてもらう中で、私が学校で「できないこと」は減らせることを知りました。つまり、それぞれに適した工夫によって、身の回りの「障害」がなくなった瞬間に、障害者は障害者でなくなるのです。特にそれが顕著なのは、発達障害なのではないかと思います。「環境を整える」−かつて私が受けた支援は、発達障害の子どもたちにも必要なものだったUpload By 和田 恵利菜私は現在、放課後等デイサービスでアルバイトをしています。そこでは発達障害やその傾向のある小学生の勉強を見たり、一緒に遊んだりしています。子どもたちの中には、周囲に人がたくさんいる状況で集中して勉強することが難しかったり、自分の思いや考えを言葉で表現することが難しかったりする子もいます。どうやったら子どもたちが快適に過ごせるようになるのか、どうするのが子どもたちにとって最も良いのか、私も試行錯誤の毎日です。ですが、そんな中で気が付いたのは、環境を整えることができれば、彼らの可能性はぐんと広がるということです。集中が続かない子どもに対して、時間を細かく区切って活動する、仕切りを立てるなど一人で落ち着いて勉強に取り組める環境を作る、一度にすべての指示をせずにひとつずつ図示して伝える。全て本に載っていたり、講義で学習したりした、発達障害のある子どもたちに対する対応策の一例です。Upload By 和田 恵利菜これら全てを実践してみることはまだできていませんが、一部を実際に試してみると、一見できないと思っていたことが、簡単にできるようになる子どもたちがいました。特に指示をひとつずつ伝えるということは意識を持つだけで簡単に実践できるので、私は常に気を付けるようにしています。これらの対応策は、多くが「環境を整える」というものです。そして、私が学校で受けた支援も同じ「環境を整える」というものなのです。合理的配慮の広がりに向けて、当事者として声をあげたい困難の内容は、障害によってそれぞれだと思いますが、案外、解決方法は似ているのではないか。私はそう思います。個人の特性に合わせて環境を変えていくのに、個人の力だけでは限界があります。そこで私が注目したいのは「合理的配慮」です。合理的配慮とは、2016年4月に施行された障害者差別解消法において、障害の有無にかかわらず、全ての国民が互いを尊重し合いながら共生する社会の実現を目指して定められたもので、私は障害者一人ひとりの特性を踏まえた支援を行える可能性が広がったのではないかと考えています。Upload By 和田 恵利菜行政機関と民間事業者との義務の違いがあったり、配慮を実施する側の負担が大きすぎる場合など、全ての要望が実現するわけではありませんが、法律で障害者への配慮について定められたのは、大きな一歩だと思います。実際に、私は現在通っている大学に配慮の提供を申し出て、何度も話し合いを重ねてきました。また、自分が高校で受けた支援内容を行政機関に紹介したこともあります。私は、合理的配慮による可能性の広がりに期待を持っていますが、多くの人が快適に過ごせるようになるには、まだまだたくさんの課題があるようにも感じています。Upload By 和田 恵利菜例えば、要望通りの配慮が行われない場合や、配慮を申請し、実施するまでの手続きに長い時間がかかってしまう場合などは課題として挙げられるかもしれません。これら全ての課題を解決するには長い時間がかかるとは思いますが、私たち当事者ができることは、まず声をあげる、そして伝えることだと私は考えます。配慮を提供してくれる側に、何か伝える前から「私たちのことを分かって」「こちらの要望を察して」というのには無理があります。こちらの要望や状況を理解してもらうには、自分はどういう状況にあって、どういう配慮をしてほしいのか、適切に伝える必要があるのではないかと思います。目に見えない、言葉にならない障害に、周りの人たちはどんな”通訳”ができるだろう出典 : ここで、私がもうひとつの課題だと考えるのは、当事者本人が言葉を介して、自分の現状や意見を伝えることが難しい場合もあるということです。私の場合は、電動車いすを使用していて、段差や階段などの物理的障壁を解消する、トイレや移動の介助をするなど、要望は比較的目に見えやすく、想像のしやすい配慮だと思います。しかし、私はアルバイトで発達障害を持つ子どもたちを見ていて、言葉で適切にコミュニケーションをとるのが難しいと思える場合を目にし、代わりにそれを伝える役割の存在が必要なのではないかと感じました。それは保護者や友人、先生や同僚など、様々な可能性が考えられます。一人でも本人のことを理解し、それを周囲に伝えることができる人がいれば、当事者の生活はぐっと快適になり、社会に出ていくことができるようになるのではないでしょうか。障害者を取り巻く課題は、まだまだたくさんあります。環境の工夫だけではなくて、心のバリアフリーも進めていくことももちろん大切です。人はみんなそれぞれ異なった特徴を持っています。その特徴を生かして社会で暮らしていったり、反対にその特徴によって社会で生きにくくなったりします。それは障害を持っている人も持っていない人も同じです。それぞれの特徴や個性を、みんなが認め合い、障害者もそうでない人も互いに支え合いながら、共生できる。そんな社会になってほしいと私は願っています。私も自分の身近なところから、行動を起こしていきたいと思います。Upload By 和田 恵利菜
2017年04月07日「できること」を増やしたい!発達障害のある子どもを持つ親心出典 : 自分の子どもが発達障害だと診断を受けたならば…。「発達障害児でもできること」「発達障害児の発達を促すこと」を血眼になって探すのが、親心なのかもしれません。私もその1人でした。発達障害児を育てていると、どうしても出来ない部分ばかりが目についてしまいます。「協調運動ができない」「手先が不器用」「跳び箱やマット運動ができない」「字をマスの中におさまるように書けない」「きちんとした姿勢を維持できない」…他の子どもと並べては、「うちの子だけこんなこともできない…」と落ち込む日々が続いていました。「出来ることを褒めてあげて」と育児本には当たり前のように書いてあります。けれども、保育参観やちょっとした行事で「できない息子」を目の当たりにするたびに、「一体どこを褒めればいいんだろう…」という気持ちにすらなります。そんなとき、インターネットには心ひかれる文言が出典 : そんなどん底の気分になりながらも、「なんとか息子のできることを増やしたい」と思いネットを検索してみます。すると、キラキラときらめく言葉たちが並んでいるのです。「発達障害児向け○○!」「○○は発達障害児の発達を促してくれます!」「○○をすれば、発達障害は治る!!」こんな煌めくような魅力的な言葉たちが、私の親心をがっちり掴んでしまいました。「発達障害向け」の文言をみると居ても立っても居られなくなり、私はすぐに申し込みのメールを書き始めていました。それがどんな内容の習い事や塾であっても、息子に意思を確認することはありませんでした。これが原因で、私がしてしまった失敗を2つ、ご紹介します。出典 : ネットでの検索に取りつかれていたころ…私が一番に心惹かれてしまったのは、「発達障害を治す能力開発塾」でした。この「発達障害を治す」という触れ込みに惹かれてしまうのは私だけではなかったようで、中には新幹線や飛行機に乗って相談に訪れる人も後を絶たないそうです。ところが相談に伺ってみると、その塾の目標は「子どもを支援級に入れないこと」でした。私は当時、まだ小学校就学後のことまで考えてはいませんでした。その目標が果たして本当に適切かどうか、まだ分かっていなかったのです。その塾が何を目指しているのか、発達障害児がどう育っていくことを望んでいるのかという点について意見が合致しない場合は、私は入塾はやめたほうがいいと思いました。結果的に、入塾はお断りしました。「発達障害児向け」「発達障害が治る」という文言だけに飛びついてしまい、実態をきちんと把握していなかった失敗例です。出典 : 他にも、「これは発達障害児の発達に良い」「前頭前野の発達を促す」という言葉に、私は飛びついてしまいました。そんな私を突き動かしたのが、「乗馬は発達障害の発達に良い」「カヌーは発達障害児の発達に良い」という情報でした。私は息子を連れて、発達障害児を対象とした乗馬教室とカヌー教室に出かけました。その教室では他に参加する子どもたちもみんな同じように特性がある子どもたちだったため、息子だけが浮いてしまうこともないだろう…という期待もありました。ところが…。感覚が過敏な息子は、馬の臭いと大きさと肌触りにパニックです。泣いて泣いて暴れて暴れて、止まらなくなってしまいました。そんな息子を横目に、他のお子さんたちは悠々と馬に乗っています。カヌーはカヌーで、救命胴衣の感触にパニックになり大泣き。さらに、前日雨が降って川岸がぬかるんでいたのが嫌だったようで、足に泥がつくたびに大泣き。ここまで来て、こんなに息子を泣かせて、自分はいったい何がやりたかったんだろう…。私は帰りの車でため息しか出ませんでした。この教室以後、息子は馬が怖くなってしまい、今でも馬に近づけません。大切なのは、「発達障害児向け」ではなく「息子向け」だった出典 : 数え切れないほどの失敗を繰り返して、私が学んだのは、大切なのは「発達障害児向け」ではなく「息子向け」のものを選ぶことだということでした。いくら「発達障害児向け」と銘打ってあっても、息子に合った環境整備がされているとは限りません。いくらそのアクティビティ自体が発達障害児の発達に良いとしても、息子は盛大なパニックを起こし、それが失敗体験になってしまいました。逆に、発達障害児対象のアクティビティでなかったとしても、息子に合った環境整備がきちんとできていれば、息子は楽しくこなすことができます。成功体験につながることもあるでしょう。「発達障害児向け」「発達障害児の発達に良い」というのは、あくまでも理論的な話です。脳回路の話などが出てくると、どうしても飛びついてしまうのが親心。でも、理論と実践は違うのです。適切な環境整備と子どもに「やりたい」という気持ちが少しでもあれば、それが一番「その子の発達に良い」ことなのだということを忘れてはいけないのだと思います。
2017年03月30日構音障害とは?出典 : 人は、下顎(したあご)・舌・唇・軟口蓋(なんこうがい)などを動かし、声の通る道の形を変えることで話しことばを生み出します。この、話しことばを生み出す過程を「構音」と言います。「構音」は、一般的には「発音」と呼ばれています。ことばの発達は、一定の決まった順序でおおむね進んでいきます。同様に、構音の発達にも順序性があり、年齢に応じた発達段階があります。以下、発音を獲得する年齢のおおまかな目安です。2~3歳代:ア・イ・ウ・エ・オ、タ・テ・ト、パ行、マ行、ヤ行、ン3~4歳代:カ行、ガ行、ナ行、チ、チャ行、ダ・デ・ド、ハ行、ワ4~6歳代:サ行、ザ行、ツ、バ行、ラ行出典 : 「構音障害」とは、同じ発達年齢の人が正しく発音できる音を習慣的に誤って発音している状態を指します。もちろん、幼い子どもたちはうまく発音できないことばがあります。周囲のお子さんと比べて多少不明瞭な発音があっても、身近な人とであればコミュニケーションを図ることができている場合「問題はない」と思われることもあるでしょう。ですが、その発音がうまくいかない背景に、発音に関わる器官や発達を支えるものに何らかの課題が隠れている可能性があります。また、成長するとともに、発音がうまくいかないことで地域や集団におけるコミュニケーションや学習に支障をきたしてしまったり、自信を無くしてしまったりすることがあります。発音の誤りや不明瞭さの原因は一人ひとり異なるため、背景を丁寧に探る必要があります。そして、適切なアドバイスや治療、指導を受けることで改善する可能性が広がります。そのため、早期に専門機関に相談し、専門家のサポートを受けることが大切になってくるのです。「構音障害」は発達障害や知的発達の遅れなどを合併している場合もありますが、本記事では合併の場合を除いた純粋な構音障害について述べていきます。構音障害の原因による分類出典 : 構音障害には、原因が特定できる場合と、そうでない場合があります。特に子どもの構音障害の場合、様々な要因が重なり合っていることが多くあります。◇器質性構音障害生まれつき、あるいは事故や病気など後天的な理由により、唇・舌・口蓋(こうがい)・顔面などの形に問題があり、うまく発音ができない場合をいいます。・口蓋裂・口唇裂・口唇口蓋裂先天性異常のひとつで、日本では500人~600人に1人の頻度で発現します。口蓋とは口腔内の上の部分、口唇とはくちびるをさします。乳幼児から就学時までの期間中に何度か手術を施し、同時にことばの指導を行うことで、現在では80%以上が正常構音を獲得できると言われています。・舌小帯(ぜっしょうたい)短縮症先天性異常のひとつで、口腔底から舌の下面へ走っている小帯(舌の裏側のスジ)が舌の先に近く付着していて、舌の動かしづらさがある状態です。保険適応で手術や訓練をすることができ、多くの場合、正常構音を確立できると言われています。出典:「口蓋裂・構音障害」日本聴能言語士協会講習会実行委員会(共同医書出版社)・その他の器質性構音障害器質性構音障害には、鼻咽腔閉鎖不全症や口腔腫瘍等による発語器官の切除後に生じるものなどもあります。◇運動性構音障害脳卒中や頭部外傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ジストニアなど、神経や筋に病変が生じることにより、話すことに必要な運動機能が障害される場合をいいます。構音障害だけではなく、声やリズム・速さ・アクセント・イントネーションの異常を併発することもあります。◇聴覚性構音障害聴覚の障害により、正しい構音を獲得することが難しい場合を、聴覚性構音障害という場合があります。器質性構音障害には、鼻咽腔閉鎖不全症や口腔腫瘍等による発語器官の切除後に生じるものなどもあります。参考:「口蓋裂・構音障害」日本聴能言語士協会講習会実行委員会(共同医書出版社)◇機能性構音障害構音にかかわる器官の形態、神経や筋、聴力に問題が見出されない、また、その他の疾患や障害が無いにもかかわらず構音に問題がある場合、機能性構音障害に分類されます。主に幼児期にみられます。自然治癒が望めない場合も、早期に指導・訓練を受けることで改善する可能性が広がります構音障害なのかな?と思ったら専門家に相談を出典 : 構音障害は、成長とともに自然に治る場合もありますが、気になる場合は園や学校の先生、子育て支援センターや児童発達支援センターなどの専門機関に相談してみましょう。言語聴覚士(ST)などの専門家に相談できる場合があります。また、言語聴覚士協会のホームページから言語聴覚士のいる施設を検索することができるので参考にしてください。参考:こども発達支援センター杉並区参考:(社)日本言語聴覚士協会ホームページ全国の施設検索医師などに、ことばの問題を相談することもできます。受診できる病院の科は以下の通りです。・小児科・耳鼻咽喉科・脳神経外科・神経内科・形成外科・リハビリテーション科・言語外来を設置している各科構音障害の原因は様々であり、医師や言語療法士などが相談や検査などを行い一人ひとりの背景を探り、それに応じた対処法がみつかることもあります。参考:国立特別支援教育総合研究所「子どものことばについて相談すると、一体どんなことを聞かれるんだろう」と不安に思う親御さんが多いと思います。気がかりなことやお子さんの様子をメモに書いておくなど、事前に準備しておくと良いかもしれません。ここでは例として、耳鼻科の言語外来で言語聴覚士が行う聞き取りや検査項目をあげます。1.生育歴などの聞き取りこれまでの育ちや現在の様子についてお聞きします。大きな病気やけがなどの有無、身体やことば・発音の発達はどのようであったか、現在のお喋りやコミュニケーションの様子、本人の自覚などと合わせて、親御さんが心配していること・気がかりなこともお聞きします。2.構音検査お子さんの構音の状態を捉えるために、検査を行います。3.その他の検査・聴力検査:聴力に問題はないか・構音にかかわる器官の形態や運動をみる検査:鼻・唇・舌・歯・顎・喉などの形や動きをみる・言語発達の検査:ことば・コミュニケーション発達の検査、発達検査や知能検査の言語性課題など上記のような、構音検査以外の検査も行われます。4.鑑別診断構音障害といえるのかどうか、また、他の疾患や障害(知的障害・ことばの遅れ・聴覚障害など)の有無を判断します。以上のような聞き取りや検査を行うことで背景や原因を探り、その後の対応を見極めます。参考:「新版構音検査」参考:「子どもの発音とことばのハンドブック」山崎祥子/著(芽ばえ社)構音障害かなと思ったら、アドバイスはどこでもらえるの?言語聴覚士とは?出典 : ことばや構音については、診断の有無にかかわらず、言語聴覚士(ST)と呼ばれる専門家からアドバイスや指導を受けることができます。言語聴覚士は、一人ひとりに合わせたやり方で、ことばや構音の育ちをサポートしてくれます。家庭での接し方や、本人の気持ちを尊重しながら楽しくできる練習方法へのアドバイスも期待できます。発達ナビの以下のリンクを参考になさってください。言語聴覚士がいる施設出典 : ◇公的機関のサービス・教育・療育施設子どもの場合、「ことばの教室」などと呼ばれる小学校などの通級指導教室や特別支援学級、特別支援学校、児童発達支援などの療育機関などで言語療法を受けられる場合もあります。園や学校に相談するか、自治体に問い合わせましょう。健診や就学前健診で個別に相談できる場合もあるようです。その後、面談や審査など、所定の手続きに従います。地域によっても制度が異なりますので、お住まいの自治体に問い合わせましょう。・医療機関主治医の指示により言語聴覚士のアドバイスや指導を受ける際、健康保険が適用される場合があります。医療機関に問い合わせてみましょう。・福祉施設施設・地域によって異なりますので、各施設や自治体の定める手続きをとります。大人の構音障害の場合、訪問リハビリテーションなど介護保険の適用になる場合もありますので、福祉窓口、ケースワーカーや民生委員に相談してもよいでしょう。◇民間の教室などことばに関する指導を行う民間の教室です。利用する場合は、施設に直接申し込みを行います。発音を育てるために家庭でできること出典 : 家庭での生活や遊びのなかで、お子さんの様子を観察し、楽しく練習する機会を作りましょう。◇構音器官をどのように使っているか構音に関わる器官は、ことばを話す以外にも使われています。例えば・息を吸う、吐く・息を吹きかける・口を開ける、閉じる・噛む・なめる・のみこむなどがあげられます。これらの様子を観察してみましょう。周囲のお子さんと比べてうまくいかない、力が入らない、あるいはどこかに力が入りすぎる場合は、その様子を記録しておくと良いでしょう。口を閉じる練習・いろいろなものを噛む練習・息を長く吹く練習などが有効な場合と、余計な力を取り除くためまずはリラクゼーションの練習が必要な場合とがあります。お子さんによって取り組むと良い動作が違うため、これまでの記録とともに専門家に相談し、アドバイスをもらいましょう。◇音への意識を高める、聴く力を育てる遊びを通じて、音に注目する力、音に耳を傾ける力を育てましょう。・しりとりしりとりは効果的なあそびです。ルールの理解が難しい場合は、絵や写真、ひらがなやマス目などを手がかりとして見せながら、無理ない範囲で一緒にやってみましょう。「さかな」「なす」「すいか」「からす」などの絵カードや文字カードを用意します。カードを指しながら「さかな」と言った後、「な・な・な…」と言いながら次に続くカードを探すのも良い方法です。・かるたかるたも、音への意識を高める遊びです。正しい札を選んだあとに、1文字ずつ指をさしながら一緒にゆっくりと文章を読んでみるのも良いかもしれません。・じゃんけんすごろくサイコロの代わりにじゃんけんを使ってすごろくをします。グーで勝ったなら「ぐ・り・こ」、チョキなら「ち・よ・こ・れ・い・と」、パーなら「ぱ・い・な・つ・ぷ・る」と言いながら1文字ずつ進みます。大きな紙にスタートとゴールを描き、その間をマス目でつないだすごろくを親子でするのも良いでしょう。階段を使って、勝った人が出した手に応じて1段ずつ進むゲームもあります。◇コミュニケーション手段の確保構音の獲得や改善に効果的な方法を探る一方で、「自分の思いを伝える」という機会を確保することも大切です。話しことばに限らず、表情や視線、ジェスチャーや指さし、写真や絵、文字や記号などあらゆる手段を使って伝えたい思いを相手に伝える経験を積み重ねることは、コミュニケーションの力を育むうえで不可欠です。まとめ出典 : 構音を獲得するまでには、様々なステップがあります。お子さんの構音の育ちにつまずきがあると感じられる場合、言語聴覚士など専門家にアドバイスや支援を得ることが近道といえます。周囲よりも構音の育ちが遅いと、親御さんもお子さんも焦りや苛立ちを感じるかもしれません。「それは違うでしょ!○○って言いなさい」と指摘し言い直させてしまうこともあるかもしれませんが、それだけでは喋ることそのものを嫌いにさせてしまう可能性があります。上手に発音することだけではなく、様々な人と関わりコミュニケーションすることが楽しいと感じられるような工夫も取り入れながら、成長を応援する姿勢も大切かもしれません。専門家と相談しながら、実践できる方法を探り、取り組んでみましょう。参考:「子どもの発音とことばのハンドブック」山崎祥子/著(芽ばえ社)参考:井出歯科医院
2017年03月24日障害福祉サービスとは出典 : 障害福祉サービスは、障害者総合支援法に基づき支給されるサービスです。身体障害、知的障害、発達障害、精神疾患、難病などにより日常生活に制限が生じ、介護や就労支援を必要とする方々を主な支援対象としています。また、市区町村審査会による審査の結果必要性が認められれば、障害者手帳を持たない人でも利用することができます。(ただし身体障害者の場合は障害者手帳が必要)障害者総合支援法における障害福祉サービスの利用料金は、世帯ごとの前年度所得に応じて負担額の上限が定められており、所得の少ない利用者にも優しい仕組みになっています。障害福祉サービスの厳密な定義は、厚生労働省の説明に沿えば、障害者総合支援法に基づくサービスのうち、個々の障害のある人々の障害程度や勘案すべき事項(社会活動や介護者、居住等の状況)をふまえ、個別に支給決定が行われるサービスの総称と表すことができます。その他、障害者総合支援法に基づくサービスとしては、障害福祉サービスには含まれませんが、「自立支援医療」というサービスも存在します。これは、精神疾患で通院による精神医療を続ける必要のある人を対象に、通院のための医療費の自己負担を軽減するというものです。自立支援医療の詳細については以下のページを参照してみてください。自立支援医療の概要障害福祉サービスの具体的な内容は?出典 : By 発達障害のキホン上の表からわかるように、障害福祉サービスは介護給付と訓練等給付の2種類に分かれています。介護給付では、文字通り日常生活に困難を抱える方や介護を必要としている方に対して介護サービスを、訓練等給付では自立した生活もしくは就労を目指す方に対して職業訓練などの支援を行います。以下では、両者それぞれについて具体的なサービス内容を紹介していきます。・居住介護(ホームヘルプ): 入浴や食事などのお手伝いをします。・重度訪問介護: 重度の肢体不自由者である、または重度の知的障害もしくは精神障害があるために介護を必要とする方に、総合的な支援を行います。・同行援護: 視覚障害により移動するのが難しい方のために、ガイドヘルパーが移動をサポートするサービスです。ガイドヘルパーは視覚障害の移動や介助に特化した研修を受けており、移動を行う際の情報保障の役割を果たします。・行動援護: 行動上著しい困難のある場合に、本人の危険を回避するための援助や移動の介護を行うサービスです。単なる移動の補助にとどまらず、利用者の方の要望に合わせて、新しい施設や活動を行うまでの移動の手伝いも行います。・重度障害者等包括支援: 介護を大変必要としている方に対して、居宅介護など複数の介護サービスを行います。・短期入所(ショートステイ): 普段介護している方に変わって短期間、介護をします。・療養介護: 医療行為と介護を常に必要とする方に対して、医療機関で訓練や介護などを通して生活支援を行います。・生活介護: 介護を常に必要としている方に対して、介護を行うことに加え創作的活動又は生産活動の機会を与えます。・障害者支援施設での夜間ケア等(施設入所支援): 施設に入所している方に対して、介護を行います。・自立訓練: 自立した生活を送ることができるよう、身体機能と生活能力の向上を目指して訓練を行います。機能訓練と生活訓練の2種類があります。・就労移行支援: 一般企業などで働くことを希望する方に対して、就労に必要な知識・能力の向上を目指して訓練を行います。・就労継続支援: 一般企業などで働くことが難しい方に対して、働く場所を提供し知識・能力の向上の向上を目指して訓練を行います。雇用契約を結ぶA型と、雇用契約を結ばないB型の2種類があります。・共同生活援助(グループホーム): 共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を行います。また介護などの必要性が認められた場合には介護サービスを提供します。さらにグループホームを退居し、一般住宅等への移行を目指す人のためにサテライト型住居があります。障害福祉サービスはどんな人が利用できるの?出典 : これまで述べてきたとおり、障害福祉サービスは身体障害、知的・発達障害、精神疾患、難病などにより日常生活に制限が生じ、介護や就労の支援を必要とする人のためのサービスです。身体障害者は、「身体障害者手帳の交付を受けている人」が条件に定められていますが、ほかは障害福祉サービスを申請をするうえで障害者手帳の有無は問われません。障害者手帳がなかったとしても、審査の結果支援の必要性が認められ「受給者証」の交付を受けることができればサービスを利用できます。障害者総合支援法に基づく支援の対象は、具体的には以下のように定められています。・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人・知的障害者・・・知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病室などの精神疾患を持つ人(知的障害は除く)・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童参考文献:遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介/著『これならわかるすっきり図解障害者総合支援法』2014年 日経印刷/刊ここには障害児も含まれていますが、障害福祉サービスを利用する障害児の数は利用者全体の2.4%(平成26年3月現在)に過ぎません。障害児は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスではなく、児童福祉法に基づく支援を受けることが圧倒的に多いようです。出典:「障害福祉サービス、障害児給付費等の利用状況について」厚生労働省 p.1児童福祉法に基づく支援に関心のある方は以下の記事をご覧になってみてください。利用できる障害福祉サービスを左右する「障害支援区分」とは?出典 : 「障害支援区分」とは、障害福祉サービスの必要性を明確にする目的で、障害の多様な特性やその他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示す区分のことを指します。市区町村は、介護給付の申請があった際にはこの区分に関する審査をし、その審査結果に基づいて認定を行います。障害支援区分は「区分1」から「区分6」まで全6区分(数が大きい方が必要とされる支援の度合いが高い)が定められており、区分により受給できるサービス内容やサービスの量に差があります。具体的な調査項目は、1)移動や動作等に関連する項目(12項目)2)身の回りの世話や日常生活等に関連する項目(16項目)3)意思疎通等に関連する項目(6項目)4)行動障害に関連する項目(34項目)5)特別な医療に関連する項目(12項目)の計80項目となっています。より詳細に、全80項目を確認したいという方は、下記のリンクをご参照ください。障害者総合支援法における「障害支援区分」の概要厚生労働省参考:「障害福祉サービスの利用について」全国社会福祉協議会障害福祉サービスの申請から受給までに必要な手続き出典 : 障害福祉サービスは介護給付と訓練等給付のそれぞれで申請の流れが異なります。介護給付を希望する場合は「障害支援区分認定」を受けることが必要になるからです。また訓練等給付を希望する場合でも、共同生活援助(グループホーム)を利用するにあたり、障害支援区分認定が必要になることがあります。申請してからサービスの利用開始まで、一般的には1ヶ月前後の日数を要するようです。ただし、市区町村によって異なる可能性もあるので、急を要する場合などはお住まいの市区村長に問い合わせてみるとよいでしょう。「よく問い合わせていただく質問」川口市以下が申請からサービス利用までの流れです。Upload By 発達障害のキホン1. 市区町村の障害福祉担当窓口へ申請申請の際には、状況に応じて障害者基礎年金1級の受給の有無や介護保険申請の状況などを聞かれる場合があります。2. 障害者支援区分認定調査市区町村の認定調査員による面接が行われ、全国共通の質問票から心身の状況に関する80項目と状況の調査が行われます。3.一次判定認定調査及び医師意見書の一部の結果に基づき、コンピューター判定が行われます。医師意見書とはかかりつけ医に申請者の心身の状態、特別な医療などの意見を求めるものです。(市区町村が依頼します。)4.二次判定一次判定の結果と状況調査、医師意見書などを踏まえ、市区町村審査会で二次判定が行われます。5.障害区分認定二次判定の結果に基づき、非該当、区分1~6の認定が行われます。各サービスの区分ごとのサービス量は上記のリンクを参考にしてみてください。6.サービス利用意向の聴取・サービス等利用計画案の提出市区町村から計画案の提出が求められている場合は提出をします。サービス利用計画案は指定特定相談支援事業者が作成しますが、申請者自身による作成も可能です。7.支給決定障害区分や本人・家族の状況、利用意向、サービス等利用計画案などを踏まえてサービスの支給量などが決まり、支給決定が申請者に通知されます。8.サービス担当者会議申請者が利用する全てのサービスの各担当者が出席し、利用者に合ったサービスを提案、サービス等利用計画の作成案が出し合われます。9.支給決定時のサービス等利用計画の作成サービス担当者会議での案をもとに、指定特定相談支援事業者がサービス等利用計画を作成します。利用計画は申請者自身による作成も可能です。10.サービスの利用開始申請者はサービス提供事業所と契約を結び、サービスの利用を開始します。サービスの量や内容については、利用開始後も一定期間ごとに確認が行われ、必要に応じて見直されます。障害福祉サービスの介護給付を利用する人の中には、身体障害や難病により入浴や移動で介護を必要とする方、発達障害により料理や掃除といった家事に困難を感じており助言や手助けを必要とする方などがいます。以下の記事では、40歳台でアスペルガー症候群と診断された女性が障害福祉サービスの利用手続きをした経験談を、各段階での感情とともに紹介しているので、興味のある方はご覧になってみてください。障害福祉サービスの利用費は?出典 : 障害福祉サービスを利用した人は、原則としてサービスの提供に要した費用の1割を負担することになります。また、施設入所や日中活動サービスに伴う光熱水費等の実費や食費については、在宅で生活する人との公平を図るため、自己負担となります。ただし、定率負担、実費負担ともに所得の少ない人の負担が大きくならないよう、さまざまな軽減措置が設けられています。詳しくは市区町村のホームページなどから確認してみるとよいでしょう。生活保護受給世帯・・・0円市区町村民税非課税世帯・・・0円前年度所得約300万円以上~約600万円以下の方・・・9,300円前年度所得約600万円以上の方・・・37,200円障害者総合支援法における障害福祉サービスの利用料金は、世帯ごとの前年度所得に応じて負担額の上限が定められています。そのため、ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じないことになっています。「障害者の利用者負担」厚生労働省障害福祉サービスと介護保険の関係は?Upload By 発達障害のキホン「介護保険サービスと障害福祉サービスの違い」松山市障害福祉サービスと介護保険の違いは、上の図の通りです。介護の必要度を測る指標、サービスの支給限度の決定方法、サービス利用計画の作成者、利用者負担額の決まりなどにそれぞれ違いがあり、制度として別個のサービスであると理解してください。支援の内容や機能を比較して、障害福祉サービスと同様の介護保険のサービスがある場合は、原則、介護保険のサービスを優先して受けることになっています。ただし、一部併給が可能なサービスも存在します。ただし、介護保険のサービスに相当するものがない障害福祉サービス固有の支援については、障害者総合支援法に基づく支援をうけることができます。また、その他の支援についても、状況次第では介護保険ではなく障害者福祉サービスの適用範囲内として認められるケースが存在するため、詳しくはお住まいの市区町村に相談するとよいでしょう。まとめ出典 : 障害福祉サービスについて規定している障害者総合支援法は、以下のような基本理念を掲げています。・全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現・社会参加の機会の確保・どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないことさまざまなニーズに対応した支援内容、月額利用料の上限設定、障害者手帳の保有は必須条件ではない、といった障害福祉サービスの特徴は、これらの理念が反映されたものであるといえるでしょう。障害や難病の方々一人ひとりが自分にあったサービスを受けることで、本人や家族がよりよい生活を送れるようになるのではないかと思います。障害者総合支援法について
2017年02月28日知的障害者向けの療育手帳、発達障害の私は取得できないの?出典 : 現在、発達障害者のためだけの独自の手帳制度はありません。発達障害者のための法律は、2005年にやっと「発達障害者支援法」が施行されました。ですが手帳制度は定められていません。そのため、知的障害者に発行される療育手帳か、精神障害者保健福祉手帳がその代わりになっているというのが実情です。少し、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の制度について調べてみました。療育手帳は、1960年に施行された「知的障害者福祉法」には記述がなかったのです。1973年9月に当時の厚生省が出した通知「療育手帳制度について」に基づいて、各都道府県知事(政令指定都市の長)が知的障害と判定した人に発行するようになりました。それ以前にも独自に療育手帳を発行していた自治体もあったそうですが、1973年までは国の法律に基づいた制度ではなかったのですね。精神障害者保健福祉手帳は、1995年(平成7年)に改正された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)に基づいて、各都道府県知事(政令指定都市の長)が発行しています。私は、「発達障害で、実際にかなり生活や仕事で困難を感じているのになぜ療育手帳を取ることができないのか?」という疑問を抱いていました。療育手帳では受けられても、精神障害者保健福祉手帳では受けられないサービスもありますし(特に交通関係のサービスは療育手帳の方が手厚いです)。そして「それなら実際に取得のチャレンジをしてみよう」と決心したのです。大人になってから療育手帳を取るには、どんな手続きが必要?出典 : 大人になってから療育手帳を取るためには、まず市役所等の障害福祉課に申し込む必要があります。申し込んでからしばらくして日時を指定されて、市役所の職員から成育歴や現在の生活の状況などの聞き取りが 約1時間ありました。そして、「取れてB2(一番軽度)ですね。また都道府県の指定機関で検査を受けてもらうので、日時が決まったら連絡します」と言われました。役所での聞き取りから約1カ月後、都道府県の指定機関から連絡がありました。そのときに「子どもの頃のことを聞かせてほしいのでご両親に同行してもらってください」と言われました。父はもう亡くなっているので母にお願いしました。けっこうな歳なので申し訳なかったですが。しかも「そんな昔のこと覚えてない」って言われますし。けっこう不安な気持ちになりました。ちなみに親が高齢で足を運べない場合は、電話での聞き取りになるそうです。親がいない場合はどうなるんでしょうね…?検査を受けた結果は、手帳の取得は…出典 : 検査の流れは、午前中に2時間かけて私はWAIS-Ⅲを受け、その間に母は別の部屋でチェックシートに回答し、それを心理士さんが見ながら追加で質問をいろいろと受けるというものでした。WAIS-Ⅲは途中で休憩をはさみながらも2時間少々で終わりました。心理士さんはとても手慣れていて、検査のベテランという印象でしたね。お昼過ぎに母と合流し、20分間待って母と私を担当した心理士さんたちによる結果の見通しと所見の説明がありました。結果から言うと、「療育手帳の支給はできません」でした。理由はわたしのIQが100を超えていたこと、成育歴に特に問題もなく、大学に進学したことがトドメになったようです。療育手帳の審査ではふたつのことを見るそうです。1.検査でIQを計る2.成育歴で、18歳までに知的障害の状態であったかどうかどちらでもダメだったわけですね。心理士さんにズバリと聞いてみました。「私みたいな知的に問題のない発達障害の人が検査に来ることってよくあるんですか?」すると「はい、けっこう多いケースです。やはり手帳を取っていただくことはできませんが」と答えてくれました。この日も何組もの親子が検査を受けに来ていました。検査を受けに来る人はとても多く、忙しい状態が続いているそうです。WAIS-Ⅲの所見も簡単ではありましたが、説明してくれました。もう少し詳しい所見がきけるのかと思っていましたが、分析する時間もほとんどなかったでしょうし仕方がないのかなと感じました。最後に、精神障害者保健福祉手帳で受けられるサービスについての案内がありました。発達障害に関する啓発パンフレットも、親子に1セットずつくれました。WAIS-Ⅲの結果レポートは、頼めば切手代だけで自宅まで郵送してもらえました。私は医師に提出するためにお願いしました。判定基準は都道府県によって異なります出典 : 療育手帳の判定基準は都道府県によってかなり異なります。甥が発達障がいのため、療育手帳の交付申請をしたが、知能指数が基準の75より1高い76であるという理由で却下された。社会生活に適応できないのに、手帳が交付されないことに納得できない。知能指数が高い発達障がい者も療育手帳の交付を受けられるようにしてほしい。私が住む県では、知能指数が高い自閉症などの発達障がい者には、交付基準に該当しないとして交付されないが、他の県や政令市では交付されている例があると聞いた。療育手帳の交付に当たっては、全国の発達障がい者が平等に手帳の交付が受けられるよう、交付基準を統一してほしい。どこに住んでいるのかによって、判定基準が大きく異なるというのは制度として大きな問題があると思いました。必要な人が手帳を取れる世の中に出典 : 今回の経験で感じたのは、「発達障害の生きづらさはIQで測れるものではないのに、どうして『実生活でどれだけ困難を感じているか』ということを考慮してくれないのだろう」というむなしさでした。そして、療育手帳の基準の地域差が公的文書で問題になっているのに、事務的に振り分けられることの理不尽さを感じました。大人の発達障害は今までほとんど理解されることはありませんでした。少しずつ社会も変わろうとはしていますが、現実としては「努力してもできない」「なまけているのではない」ということも理解されず、SOSを出したくてもうまく福祉につながれない人が多いと思うのです。発達障害が社会的に認知されるためにも、そして発達障害のために生きづらい人が顔をあげてイキイキと生きていくためにも、手帳を必要とする人には公正にスムーズに手帳が手に入る世の中になってほしいと思います。そして、発達障害者のための手帳ができることを心より願っています。
2017年02月24日発達障害があると「生きづらい」?出典 : 歳の発達障害の息子を育てていると、ごく当たり前のように「この子が生きづらくないように」と考えている自分がいます。「生きづらさ」という言葉は、発達障害児を育てていると頻繁に見聞きするものではないでしょうか。大人になっても「生きづらさ」を感じている人は沢山います。発達障害でなくても「生きづらさ」を感じている人は沢山います。でもやはり、発達障害の息子を見ていると、私はいつも「この子は生きづらいだろう」と感じてしまうのです。そして、「どうやったらこの子の生きづらさが取り除けるだろう」とそればかり考えています。では一体、発達障害児の「生きづらさ」って何なのでしょうか。発達障害特有の困難さは、支援で克服できることも増えてきた出典 : 息子には発達障害児特有の様々な困難があります。言葉の使い方が変わっているのでお友達に不思議がられたり、お友達の輪に入るのが好きではなかったり、聴覚や触覚が過敏だったり、運動が苦手だったり、手が不器用だったり…。これらの困難のために、息子は集団の中で様々な苦労をしているようですが、それは息子が自己肯定感を落とす直接的な原因になっていないようなのです。今は、支援方法がかなり確立されています。運動が苦手だったり、手先が不器用だったりしても、先生方や私たち親の工夫次第で結構頑張れてしまうようです。例えば息子は運動会で足が遅いことをずっと気に病んでいましたが、今は発達障害児専門のスポーツ支援の本などが結構出ています。先生方はそれに基づいて、息子に走り方の指導をしてくださいました。おかげで、運動が苦手なことで息子がひどく落ち込むようなことはありません。また、気にして見ていると、発達障害児向けの学習支援グッズなども沢山発売されています。私はそのようなグッズを探して購入したり、自分で作ってみたりしました。ですから、息子が手先の不器用さでひどく生きづらさを感じているようなことはありませんでした。また、私も幼稚園の先生も決して息子に友達の輪に入ることを強制しませんでした。周りが「この子はこういう子だ」と淡々としていれば、本人はそれほど気に病まないのです。運動や手先の不器用さなどについては支援で克服できることは結構多く、それが即息子の「生きづらさ」に繋がるわけではないように思いました。では何が「生きづらさ」につながっているのだろう。私が息子を見ていて気付いたこと出典 : けれども、どんなに支援をして息子の困難を取り除いても、私はやっぱり「この子は生きづらいだろうなあ」と感じてしまう瞬間があるのです。それは何かといえば、息子の「認知のズレ」です。例えば、息子とのやり取りで以下のようなことが毎日のように起こります。・誰かが息子の言ったことが可愛くて笑った。→「僕のことをバカにして笑っただろう」と激怒orパニック。・何かについて「ダメだよ」と注意された。→ 「この人は僕を嫌っている」と激怒。・何かの問題が難しくて解くことができなかった。→「僕はどうしようもないバカなんだ」と落ち込んで立ち直れない。・先生に「これはいけないよ」と注意される→「僕はいつも先生に叱られているダメな奴だ」と思う。・誰かが息子をからかう。→「みんなが自分を嫌っている」と落ち込む。このように、息子には認知のズレがあり、物事を過度に一般化したり、そうかと思えば突然自責の念にかられたりするところがあります。また、物事を白黒極端に捉える傾向もあり、「え?どうしてそんな風に考えちゃうの??」ということが頻繁にあります。その思考を助長するのが、相手に否定語で何か言われたり、ちょっと笑われたりということなのです。「認知のズレ」は支援することが難しい。私が息子に接するときに心がけていること出典 : 息子の生きづらさの根本的な原因について考えたとき、この「認知のズレ」が大きいのではないかと思うのです。そして、こういった認知のズレは、支援することがとても難しいです。手の不器用さや学習上の困難などは、支援グッズを使いながらなんとか解決の糸口を見つけ出すことができました。けれども、「認知のズレ」だけは、長い時間かけて手探りで修正していくしかないのです。支援グッズを使うでもなく、支援方法が確立しているでもない。私たち親ができることは、ただただ失敗したり落ち込んだりしている子どもに辛抱強く語りかけていくことだけです。だからこそ、認知のズレは親にとっても子ども本人にとっても「生きづらさ」へとつながっていくのかもしれません。けれども、だからこそ、発達障害の子には、なるべく大きな失敗をしないように環境調整をすることに意味があるのだと思います。私は息子の生きづらさを知ったうえで、人間関係や学習などで大きな失敗をさせない、挫折をさせない、本人が乗り越えられるハードルをうまく設定しながら成功体験を増やすことに集中しています。なかには、それは過保護だという人もいます。けれども、認知にズレがあるからこそ、ひとたび大きな挫折でボッキリと折れてしまうと、それを立て直すのに大変な労力がいるのです。また息子の場合、大きな失敗をすることで、他者への不要な憎しみや恨みが長いこと心に残ります。大きな失敗や挫折の体験は、発達障害の子どもの生きる糧にはなりづらいと私は思います。私は失敗を乗り越えさせることに力を振り絞ることよりも、成功体験を積ませることに力を使っていきたいです。発達障害の子どもにとって、小さな成功体験の積み重ねが心の体力になっていきます。心の体力があれば、多少の認知のズレがあっても、自分で態勢を立て直すことができるはずです。認知のズレそのものを修正するために躍起になるよりも、小さな成功体験を増やしていくことに重点を置いていくほうが、親も前向きに取り組むことができるのではないでしょうか。生きづらさは、心の体力で克服できるものだと私は信じています。
2017年02月23日・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと ・ 【第3回】発達障害の子育てを「辛い、苦しい」と感じたら のつづきです。「発達障害」をもっと理解するために必要なことを、『療育なんかいらない!』の著者であり、独自の理論で放課後デイサービスを展開する「アイム」の佐藤典雅さんにインタビュー。今回は、「発達障害の子育てを楽しむコツ」についてお話を伺った。佐藤典雅(さとう・のりまさ)さん川崎市で発達障害の子どもをサポートする放課後デイサービス「アインシュタイン放課後」「エジソン放課後」を運営している、(株)アイムの代表。自身の自閉症の息子さんの療育のために、息子さんが4歳の時に渡米して、ロサンゼルスで9年間過ごす。前職は、ヤフー・ジャパンのマーケティング、東京ガールズコレクションとキットソンのプロデューサーという異色の経歴の持ち主。福祉という範囲を超えた目線で、自身の息子さんの成長を見守りながら、発達障害児が社会で幸せに生きるための道を広げる挑戦をしている。著書: 『療育なんかいらない!』 (佐藤典雅・著/小学館 ¥1,296 税込)※放課後デイサービス(= 放課後デイ):6~18歳までの障害のある子どもが放課後や学校休業日に利用できる、就学時向けの福祉サービスのこと。■子どもの障害は親のせいではありません―― この連載もいよいよ最終回。いろいろ伺ってきましたが、ずばり、佐藤さんが思う発達障害の子育てを楽しむコツって何でしょうか?佐藤典雅さん(以下、佐藤さん): まず、親自身がハッピーであること、充実した楽しい人生を送ることです。人が他人を幸せにするのは無理。幸せって自分が作り出す状態だから。状態である以上、自分で作り出すしかないんですよ。―― 子どもの障害に対して、親は自分の人生すべてを捧げるべきという風潮がありますよね。そういう中、親は自分のことを優先しにくいのかもしれませんね。佐藤さん: でも、親が療育に必死になって、「子どもには充実した人生を送ってほしい」ってボロボロな状態になっていたら、それを見た子どもがうれしいわけがないよね? こんなの、子どもにとっては重荷でしかない。―― 自分を犠牲にしてまでがんばってしまうのは、もしかしたらお母さんは「自分に責任があったのでは?」と感じてしまうからかもしれません。「妊娠中に無理したのが良くなかったのかな?」とか「早くから預けて働いたのがいけなかったのかな?」とか、いろいろ考えて自分を責めてしまうのかもしれません(※)。※もちろん発達障害の原因にそんな根拠はありません。佐藤さん: 子どもの障害は親のせいではありませんよ。僕は、それぞれの人にはそれぞれの生まれ持った宿命と人生があるのだと思っています。そして、その子どもが自分の人生の使命をまっとうできるようにサポートするのが親の役割。後は、親自身が自分の人生を楽しむのが、親の仕事だと思っています。―― 障害者の親って他の保護者より制限があるように思えるのですが、人生を楽しむことってできるのでしょうか?佐藤さん: 大切なのは、子どもに障害があろうがなかろうが、いかに、自分が今の状態を楽しめるか? なんですよ。お母さんが自分の人生を謳歌していれば、子どももその姿を見ていて楽しくなるでしょう。もちろん、普通の子育てより大変なことは多いですよ。でも、地獄で幸せになれない人は、天国にいっても絶対幸せになれませんから!―― どういう意味でしょうか?佐藤さん: 地獄で「暑い、暑い」って言ってる人は、天国に行けったら、絶対「暇だ~、なんかつまんない~」とか言い出すから。―― おもしろい考えですね(笑)。また、お母さんが生き生きとするためには、お父さんの存在も欠かせませんよね?佐藤さん: もちろんです。でも、残念ながら、うちの放課後デイに親子が面談にやってくる時、夫婦そろって来られるのは一割以下。平日の昼間、お父さんは仕事だから仕方がないにしても、お母さんの話からお父さんの存在が見えない家庭が多いのです。―― 療育センターなんかでも、付き添いはお母さんばっかりですものね。佐藤さん: 父親がちゃんと関わってくれないと、母親のストレスは2倍になります。日々の小さいことまでフォローする必要はないのかもしれないけど、重要なことには決断を下し、時々、お母さんの頭の中を整理してあげてほしいと思います。それに、話を聞いていると、お父さんの意見は結構合理的で的を得ているんですよ。なので、お母さんたちも、もう少し素直にお父さんの意見を聞いてあげてほしいと思います。■先輩お母さんとつながろう。人脈をどんどん広げよう―― 旦那が一緒になって考えてくれる、それだけでお母さんは十分心強いと思います。あと、私が心強かったのは、同じ悩みを持つお母さん仲間とのつながりです。佐藤さん: ただ、療育センターでは同じ年頃の子どもを持つ親同士でしか接点がないよね? 特に、就学前は一番不安な時期だし、子どもの先の姿が想像できない。だから、同世代だけで集まると不安を交換しあって、不安だけが増幅してしまうという難点もあります。―― 確かに。いつも同じメンバーで、ぐるぐると同じ話になってしまいがちなところもありましたね。佐藤さん: 一番有効なのは、発達障害をもつ未就学児のお母さんは、同じ発達障害を持つ中学生の親から話を聞くこと。すでにいろいろ経験してきたお母さんたちは、いろいろな情報を持っているので役立つアドバイスをくれます。わが子の将来のイメージもつかみやすいので、お母さんもあんまりパニックにならないですむ。違う世代とつながりを持つことをおすすめします。―― でも、なかなか違う世代とつながる機会がないのですが……。佐藤さん: うちの放課後デイに遊びにいらっしゃい! いろんな先輩お母さんがいるから。みんな仲が良くて、よくバーベキューやクリスマスパーティーしたり、頻繁に交流会をしていますよ!ただ、おもしろいんだけど、うちのお母さんたちが集まっても、みんな誰も子どもの話をしないんですよ。子どもそっちのけで、爆笑トークで盛り上がってるの(笑)。でも、これこそが健全な姿だと思うわけ。―― みなさん、佐藤さん同様、笑い飛ばす力を持っているんですね!佐藤さん: 発達障害の子育てをする親は、特に、開かれた視点で物事をみつめなおす必要があります。療育に通うのに夢中になっていると、気づいたら、接するのは療育センターの先生か学校の先生かママ友だけになってしまいますよ。意識的に努力して、開かれたマインドをもっておかないと。―― 人脈もどんどん広げるべきなんですね。佐藤さん: 例えば、子どもが興味のある業種に人脈を作って、その企業にインターンできるようにするとか、どうでしょう? うちの長女は将来ゲームクリエイターになりたいと言っているので、僕はプロが使うAdobeのフォトショップを覚えさせたり、夏休みは友達の会社でインターンさせたりしています。もちろん、中学生だからたいしたことはできないんだけど、興味ある業界で普段接することのない大人と過ごすことができるのは刺激的でしょう。それができたのは、僕に人脈があったから。―― なるほど! 子どもの興味があることにつながる人脈力か……。佐藤さん: 世の中にはいろんな人います。いろんな人と会って話して、どんどん外の世界に出て行ってほしい。自分の親とか同じ学校とか、同じマンションとか、同じ世帯年収とか、そういう狭い世界だけでみて、こうあるべきだと決めつけないでほしい。臨機応変に考えられるように、いろいろな情報収集をしてほしいと思います。 ■運命を受け入れることも、大切―― ところで、ここの子どもたちはとても自由に寛いでいますね(取材中の様子を見ながら)。図鑑に没頭している子もいれば、ボール遊びをしている子もいるし、寝ている子もいれば、カラオケで熱唱している子もいる(笑)。佐藤さん: 僕は、自分の放課後デイを「川崎のNASA」と呼んでいます。なぜなら、発達障害の子は宇宙人みたいなものだから。僕の役割は地球側の外交官みたいなもので、彼らの地球滞在が充実したものとなるように努めること。そして、いつか彼らが宇宙船に乗って地上に降りてきた時に、「あの時はありがとう」と言ってくれればいいな、と妄想しています(笑)。―― その妄想、素敵です(笑)。佐藤さん: 発達障害はガンダムのニュータイプみたいなもんで、既成概念の外にいる子どもたちなのだから、親の方も子どもに常識を求めるのはナンセンス。期待すればするほどドツボにはまるだけ。そしてもっというと、親自身も「こうあるべき」「こう育つべき」っていう規制概念の呪縛から出る必要があります。―― そう考えると、発達障害の子どもたちは、親に、子育てで忘れがちな、とても大切なことを教えてくれているのかもしれませんね……。佐藤さん: ちょっと話それるけど、みんなよく「結婚して幸せになりたい」とか言うじゃない? でも、結婚したって離婚する人もいるし、結婚は幸せを保証するものじゃない。「結婚すれば老後がさみしくない」っていう人もいるけど、うちのお祖母ちゃんはお祖父ちゃんが早く死んじゃったから、30年間ひとりだったわけ。結婚はさみしくない老後も保証しない。つまり、人生は何が起こるかわからない。だから、一生懸命人生の方程式を作ったって無駄なんですよ。―― では、どこを目指したらいいのでしょうか?佐藤さん: 死ぬときに本人が充実した人生だったと納得して死ねるか、そこしかないと思うんです。だから、子どもに障害があっても、お母さんは自分の人生を思いっきり生きるべきなんですよ! ―― 「やりたいことがあったなら、とりあえずやっておけ!」と?佐藤さん:そう。そして、運命というのか宿命というのかわからないけど、ある程度、受け入れることも重要だと思っています。自分にそういうカードがまわってきたということは、巡り合わせだと。―― 佐藤さんがまったくの異業種から福祉の世界に入ったのも、運命なのですね。佐藤さん: 福祉が大嫌いだった僕が、今福祉の世界で仕事をしているのも、きっと何か理由があるから(笑)。だとしたら、グダグダ文句言ってないでしっかりやりきろう、と。今目の前のことをやりきらないと、次のステージは見えてきません。それに、僕は一生福祉の世界で生きていくつもりはないので、せめて「他の福祉施設よりも結果を出してから辞めてやる!」と思っています(笑)。長時間にわたり、自身の熱い思いをしゃべり倒してくれた、佐藤さん。時に、厳しい指摘もあったが、ユーモアたっぷりの話しぶりで、発達障害の子育ての凝り固まった偏見や閉塞感を気持ちよくブチ壊し、勇気を与えてくれた。そして、著者は何より、佐藤さんのポジティブな姿勢と、常に息子さんの幸せな人生を考え、全力で取り組んでいる行動力に深い感銘を受けた。「この子なりの楽しい生き方ってなんだろう?」「この子が充実した人生を送るために、親として何ができるだろうか?」発達障害の子育てで、本当に親が悩むべきところは、そこにあるはずだ(もちろん、普通の子育てだって変わらない)。そして、大切なことは「子育てを楽しむ」ということを、常に忘れないでいたい。取材・文・撮影/まちとこ出版社 【大変だけど、不幸じゃない。発達障害の豊かな世界】 全4回・ 【第1回】発達障害の子育てに「療育」よりも大切なこと ・ 【第2回】発達障害の子どもが、充実した人生を送るために必要なこと ・ 【第3回】発達障害の子育てを「辛い、苦しい」と感じたら ・ 【第4回】発達障害の子育てを楽しむコツ
2017年02月18日「発達障害ってなあに?」もし子どもに聞かれたら、どう答える?出典 : わが家には「自閉症スペクトラム+ADHD」と診断された娘と息子がいます。病院で医師からWISC検査の結果と診断についての説明を聞いていた時、娘は私の隣にいました。当時、娘はまだ小学校低学年でしたが、言語IQが異常に高くアスペルガーの要素が強い娘は、私の本棚に並べてあった発達障害に関する本を既に何冊か読んでいたため、医師の話すキーワードを理解してしまったのです。思わぬ形で「自分は発達障害である」ことを知り、娘はショックを受けていましたが、今は自分の特性とどう向き合えば楽に生きられるかということを一緒に考えながら歩んでいる最中です。一方、就学前の息子はまだ自分が発達障害であることも、人とは違う部分があることも知りません。いつか、誰かから指摘されたり言葉を耳にしたりして、「発達障害ってなに?」「ぼくはみんなと違うの?」と聞かれる瞬間が突然やってくるかも知れません。その時に備えて、慌てずにきちんとした説明ができるように、発達障害とは何かということをよく考えておかなければと思うようになりました。「発達障害は個性かどうか」という議論をあちこちで見かけるたびに、その思いは強くなる一方です。なんとか「発達障害とは何か」という問いに対する「わが家なりの答え」を導き出せないものでしょうか。その答えを導き出すカギは、日常生活の中にありました。ヒントは「たわし頭」にあった!?娘とのある会話出典 : 話は変わりますが、皆さんは、毎日髪をセットするのにどれぐらいの時間をかけていますか?わが家では、娘の髪をセットするのに10~15分、私の髪も同じぐらいの時間がかかります。つまり、毎日30分近くを髪をセットするためだけに鏡の前に立ち続けている計算になります。決して特別な髪型やオシャレをしているのではなく、たわしのような髪についてしまった寝癖を直すため、いったん髪の毛を根本から濡らしてドライヤーをあてて伸ばさなくてはならないのです。そうしなければ、瞬く間に髪は広がってぼさぼさになり、不潔に見えてしまいます。2日で1時間、1週間で3時間、1ヶ月でなんと10時間越え!「一度も髪を梳いたことがない」という美しい髪の持ち主である姪っ子を見るたびに、毎朝たわし髪と格闘している私たち親子は一体なんだんだろう?とがっくりきてしまいます。ある日、娘とこんな会話をしました。出典 : 娘「ママ、せっかくこうやって髪型を整えても、姪っ子ちゃんの方がきれいに見えるね…」私「そうだねぇ。頑張ってるんだけど仕方ないよね。こういう髪を持って生まれたんだもんね。」娘「他の髪に変えてもらうわけには…いかないよね。」私「そうだよね。この髪で生きて行くしかないんだから、嘆くよりも、どうやったらこの爆発的な頭を清潔に見せられるか、テクニックを磨くしかないよね。」娘「そのかわり、私にも誰かから『うらやましい』と思ってもらえるところがあるのかなぁ?」私「きっと持ってるよ。生まれ持ったスペックってみんな全然違っていて、良いのも悪いのもごちゃ混ぜになってるからね。あなたが当たり前だと思っていることが、誰かにとっては羨ましくて仕方のないところだったりするんだよ、きっと。」娘「そっか。自分では当たり前だと思ってることが、他の人にとっては手に入れられないものだったりするんだね。髪のキレイな人が私の苦労を知らないのと同じだね!」そんな話をしてから、娘は毎朝、自分で髪を整えるようになりました。もちろんブラシでとくだけでは清潔に見えないので、また一から私が濡らしてセットをするのですが、「なんとかしてみよう!」という気持ちが嬉しくて、頭をなでながら「きれいにできたね」と声をかけるようにしています。そうしているうちに、発達障害の特性もこれと同じじゃないかな?と思うようになりました。発達障害は、人が生まれながらに持った「スペック」のひとつ出典 : 発達障害の人が抱えるさまざまな特性は、生まれ持ったスペック(=仕様)であって、誰かと取り替えることもできなければ、努力したからといって仕様自体を根本から変更することもできません。たまたま大勢の人が装備しているスペックとは異なるものを持ち合わせてしまったので、同じ世界では生きづらく感じることもあるでしょう。けれども、それは決して卑屈になるようなことではなく、自分のスペックを最大限に生かすことができれば、とても個性的で魅力的な人間になれるのではないかと思うのです。ただ、その他大勢の方が手にする「マニュアル」は通用しません。自分なりのマニュアルを作る作業が必要です。まずはしっかりと自分の装備を確認することで、どんな環境でなら自分が穏やかに暮らせるかを知り、どんなコミュニケーションの取り方なら相手も自分も楽しい時間を過ごせるかを模索する。それが特性を抱えて生きていくということなのではないでしょうか。100人いれば、100通りの答えがある出典 : 「発達障害ってなに?」「僕はみんなとは違うの?」そんな問いに対するわが家なりの答えが出たような気がします。思うに、「発達障害」という言葉は「こういうグループに属する」という記号のようなものです。そのグループの中には「個性」では済まされないほど深刻に悩んでいる方もいれば、悩みながらもなんとか社会生活を送ることができているという方もいらっしゃると思います。また、他人から見れば「個性」といえるような特性であっても、当人は非常に苦しんでいるというケースもあるでしょう。100人いれば100通りの「発達障害って何?」に対する答えがあるのです。それを単純に「発達障害は個性だ」「いや個性ではない」と議論するのは、あまり意味がないような気もします。いろんな答えがあっていいんです。それが当たり前なんです。いつかお子さまから「発達障害ってなに?」と聞かれた時、あなたならどう答えますか?お子さまが劣等感を抱かず、その答えを胸に前向きに生きていける。そんな答えが見つかるといいですね。
2017年02月07日発達障害と診断を受けてから就労するとき、便利なツールがあります出典 : 発達障害の診断を受けている成人の方が、障害をオープンにして働く・もしくは一般就労でも上司や親しい人に打ち明けるときに必要となるのが、自分の取扱説明書(ナビゲーションブック)です。障害や特性については、口頭だけで説明するよりも資料にまとめた方が、相手も理解しやすく情報共有もしやすくなります。今回の記事では、私の失敗例と障害者職業センターで学んだナビゲーションブックの作り方を紹介したいと思います。作成の過程では、自分の得意・不得意、向いていること・向いていないことも分かってきますので、これから転職・就職する人にもおすすめです。これでは何も伝わらない…ナビゲーションブックを作成しなかった、私の失敗例からご紹介出典 : まずは、私が一般就労でカミングアウトしたときに会社に渡した資料をご紹介します。結果として、その時のカミングアウトは大失敗に終わってしまいました。以下が私が実際に作成した資料内容です。******私は平成25年にアスペルガー症候群〈広汎性発達障害〉と病院の検査結果より診断されています。アスペルガー症候群とは何かについて解説したサイトから説明を引用します。--------(引用ここから)----------------------------------------------------◆アスペルガー症候群とは(略)◆アスペルガー症候群の原因(略)◆アスペルガー症候群の特徴(略)--------(引用ここまで)---------------------------------------------------検査の結果から分かったこと・言語力は優れている・処理する速度は遅めで、マイペースである・言語のやり取りや扱いは得意であるが、イメージするのは苦手・耳で聞くだけでは理解しづらい(意味が分からない)ので、メモをとる方がよい(中略)・人付き合いは苦手・視覚的短期記憶が弱く、視覚的探索が弱い******これでは説明する上司も困ったでしょうし、聞かされた方も何が何だかわからなかっただろうな…と、今では思います。サイトから引用した一般的なアスペルガー症候群の説明に加え、自分が医師から言われた特性をそのまま箇条書きしただけの資料です。これでは、いったい私が何に困っているのか、どういう手助けが欲しいのかさっぱりわかりませんよね。障害者職業センターで作ることになった「ナビゲーションブック」とは出典 : カミングアウトで失敗した会社を辞めてから通うことになったのが、障害者職業センターでした。センターでは、訓練の最終目的として全員がナビゲーションブック作りに取り組みます。ナビゲーションブックとは、●障害特性や考え方●行動の特徴●それに対して自分はどう対処するのか●そして企業側に配慮を求めたいこと…を、まとめたものです。ナビゲーションブックの作成とは、自己像と利用者像の部分が重なったところが本当の自分であり、その部分を本人自身が理解し、自分でまとめる作業を支援することと言えます。(厚生労働省就労移行支援事業所のための発達障害のある人の就労支援マニュアル より)発達障害はまだ社会では理解されにくい「新しい障害」であり、外から見ても分かりづらい障害なので、周囲の人に理解を求めるには言葉で説明するほか、資料としてまとめておくのが有効です。そのためには、「自己理解を深める」ことが大切です。障害特性や仕事をしていく上での課題、対処方法を把握して整理することは、自己理解を深めることにつながり、周りの人や企業に自分のことを分かりやすく伝えるスキルとなります。企業などに自分の障害や対処方法、配慮してほしいこと、自分のセールスポイントを説明するときに利用します。出典 : どんな内容をまとめればいいの?まず、作業上の特徴、対人面の特徴、思考や行動の特徴の3つに分けて作っていきます。●作業上の特徴例・指示はどうすれば理解できるのか・作業にどれくらい耐えられるか、オーバーワークになりがちではないか・集中力、持続力、安定性・得意な作業内容・苦手な作業内容・報告ができるか・質問ができるか●対人面の特徴例・休憩時間はどう過ごしたいか・言葉遣いはちゃんとできているか・相手の話を聞けるか・自分が話すときはどうか・相手の気持ちを理解できるか●思考や行動の特徴例・ストレスや疲労が溜まるとどうなるか・特徴的な考え方はあるか・趣味は何かこの3つのカテゴリごとに、自分の特徴、それに対して自分はどう対処するか、他者に配慮を求めたいことをまとめていきます。1人で作るのは大変!カウンセラーと共に作成したその手順はUpload By ヨーコナビゲーションシートは、・最初に受ける職業評価(適性テストや心理テスト)から分かった、自分の障害特性や考え方の癖・訓練中に自分で気づいたり、担当カウンセラーと担当コーチから指摘されたことをまとめ上げていき、カウンセラーと二人三脚で時間をかけ作成します。これは自分の出来ないことや欠点と徹底的に向き合う作業になるので、精神的に辛さを感じる人が多いようです。ですが、最後に出来上がったときは就職へ向けての心強いアイテムとなるのです。私はナビゲーションシートを作るため、10回ほど担当カウンセラーと面談しました。最初は特性の羅列にとどまっていたのですが、カウンセラーやスタッフとの意見交換や実習での経験を通して、自分の対処法や配慮事項についてまとめ上げることができたのです。その作業は以下のような手順で進んでいきました。①とにかく、作業上の特徴、対人面の特徴、思考や行動の特徴別に特性を書けるだけ書く(主治医や周囲に言われたことも参考に)②重複するもの、まとめられるものはまとめてしまう③その中で「会社に伝えたいもの」をピックアップする④まとめられるものは一つのセンテンスにまとめる⑤自分でその特性にどんな対処ができるのか書く⑥会社にはどんな配慮をして欲しいのか書く⑦得意なこと、いいところも盛り込むその結果、初稿はA4用紙3枚にびっしり特性だけを書き込んだものが、最終稿では2枚にスッキリとまとまり、読みやすくわかりやすいものが出来上がりました。「ナビゲーションブックの作り方」自分も周囲も、より幸せに働くために出典 : これは障害者職業センターに行かなければできないものではありません。ただ、1人で全て仕上げようとするのは大変だと思います。家族や身近な友人にチェックをお願いするのもいいかと思います。支援者がいる方はぜひその方と一緒に作りましょう。私がお勧めなのは、ハローワークや就労支援機関に協力してもらうことです。ハローワークや就労支援機関は企業の側に立った視点でサポートしてくれるので、より客観的なナビゲーションシートを作成することができます。またシートは一度作って終わりではなく、仕事について困ったことが起きたりするたびに更新し、活用できるとよいでしょう。企業に障害や特性を理解してもらえるかどうかで、幸せに働けるかどうかが左右されると私は思います。そのために、ぜひこういった自己理解のツールを活用していきたいですね。
2017年02月03日発達障害の専門的医療機関が不足している!?出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。これまでの記事では、①早期発見について、②発達障害発見後の支援と引継ぎについて、それぞれ総務省による調査の結果と勧告内容についてお伝えしてきました。今回の記事では、発達障害の専門的医療機関の確保に関する調査・勧告内容についてご紹介します。調査対象の18.5%で発達障害の専門的医療機関が確保出来ておらず出典 : 各都道府県において、専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療所を確保しなければいけないことは、発達障害者支援法に定められています。「都道府県は、専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療所を確保しなければならない。 」発達障害者支援法第19条(専門的な医療機関の確保等)では実態はどうでしょうか。今回総務省が19都道府県及び8指定都市の計27団体に関して調査したところ、専門的医療機関を確保していたものは22団体(81.5%)で、残る5団体(18.5%)は確保できていなかったことが明らかになりました。また、専門的医療機関を確保済みの22団体の管内に所在する専門的医療機関から、27機関を抽出し、発達障害に係る初診待機者数及び初診待機日数も調査しました。その結果、約4割の医療機関で初診待機者数が50人以上となっており、その中には最大316人が待機している例も存在しました。加えてその初診待機日数は、半数以上の医療機関で3か月以上となっており、その中には最長で約10か月の例もみられるなど、専門的医療機関の更なる確保が必要な状況がみられたとのことです。なぜ発達障害を診ることができる医者は少ないのか?出典 : 総務省の調査した医療機関の中からは、以下のような意見があがったとのことです。①小児科医が発達障害を診断する場合、風邪等の診察と違って、幼児期の状況や成育歴などを聴き取る必要があり、手間と時間を要するため、診療報酬上のメリットを与えてほしい。②発達障害児に対する精神科医による診察は、その特性上、1 人に対し1 時間から 2 時間費やすことが多く、30 分を大幅に超えるため、現行の「通院・在宅精神療法」の時間区分(30 分未満の場合は 3,300円、30分以上の場合は 4,000 円の 2区分のみ)のうち30分以上を細分化し、その時間区分に見合った診療報酬にしてほしい。③発達障害児に対する小児科医の診察による診療報酬では、「小児特定疾患カウンセリング料」(月の1回目は5,000円、月の2回目は 4,000円)が算定可能であるが、発達障害という特性上、長期にわたり通院が必要であるにもかかわらず、2年を限度にしか算定できないことから、2年という期限を設けないようにしてほしい。太字は引用者注発達障害の専門医となるのは難しい上に、診療の旨味も少ないため、医師にとっても魅力を感じにくい領域なのかもしれません。市町村によっては不安解消のため独自の取り組みを行っています出典 : この度総務省が調査した都道府県及び指定都市の中には、初診待機者の不安解消を図るための取り組みを実施しているところもあったとのことです。ひとつは市町村が医療機関と連携して小児科の診察優先枠を毎月1日設定し、保護者の了解のもと県職員も医療機関の診察に同席、医師、保護者及び県の三者で情報の共有を図っている事例です。そしてもうひとつは、医療機関の受診前や療育前に、市町村の主催で臨床心理士等による親子小集団活動、保護者同士のグループワーク等を「にこにこ教室」として実施している事例です。医療機関の受診などを待っている保護者の不安感の解消が図られていることがメリットとして挙げられています。総務省は専門的医療機関の確保を勧告こういった現状に対し、総務省は厚生労働省に対し、発達障害が疑われる児童生徒が専門的医療機関を早期に受診できるよう、専門的医療機関の確保のための一層の取組を行うことを勧告しました。また専門的医療機関の受診までの間、保護者の不安解消を図る取り組みを都道府県等に示し推進するようにも勧告しています。以上、いかがだったでしょうか。発達障害者支援者法は施行されてからまだ10年と少し。発達ナビではこれからも国の取り組みと状況についてお伝えしていく予定です。
2017年02月02日総務省による、発達障害者の支援に関する実態調査。その結果は?出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。前回の記事では、早期発見に関する実態の調査報告と総務省の勧告内容についてお伝えしました。今回の記事では、発達障害がある子どもへの支援状況と情報の引継ぎに関する調査・勧告内容についてご紹介します。発達障害児に対する支援「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」とは出典 : 発達障害を含む障害のある児童生徒の指導について、学校等では、児童生徒それぞれに「個別の教育支援計画」(以下「支援計画」)と「個別の指導計画」(以下「指導計画」)を「必要に応じ」作成し、指導と支援を行っていくこととされています。(4) 関係機関との連携を図った「個別の教育支援計画」の策定と活用特別支援学校においては、長期的な視点に立ち、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援を行うため、医療、福祉、労働等の様々な側面からの取組を含めた「個別の教育支援計画」を活用した効果的な支援を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の教育支援計画」を策定するなど、関係機関と連携を図った効果的な支援を進めること。(5) 「個別の指導計画」の作成特別支援学校においては、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等に対応した教育を一層進めるため、「個別の指導計画」を活用した一層の指導の充実を進めること。また、小・中学校等においても、必要に応じて、「個別の指導計画」を作成するなど、一人一人に応じた教育を進めること。特別支援教育の推進について(通知)なお、2016年の改正発達障害者支援法においても、発達障害児が年齢及び能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするために必要な措置として、これらの支援計画及び指導計画の作成を推進することが具体的に明示されています。法律第六十四号(平二八・六・三) ◎発達障害者支援法の一部を改正する法律支援計画や指導計画、実際にどれくらい作成されているの?その効果は?出典 : しかし支援計画に関していうと、必ずしも発達障害のある児童全員に作成されていないのが現状のようです。この度の総務省の調査で調査対象となった111の保育園および幼小中高校において、発達障害児(発達障害が疑われる児童生徒を含む)は計2,431人でした。そのうち支援計画作成が「必要」と判断された児童生徒は829人であり、さらにそのうち支援計画を作成済みの児童生徒は690人でした。支援計画作成が「必要」と判断されたものの、未作成の生徒が139人いることが明らかになりました。未作成の理由としては、教員の業務が多忙で作成する時間の確保が困難であるため、保護者の同意が得られないため、などとされています。また、支援計画作成が「必要」と判断する範囲に関して、111の調査対象のうち19の保育園および幼小中高校では、医師の診断がある児童生徒のみなど、計画の作成対象をかなり限定した範囲にとどめている例がみられました。そしてこうした計画作成対象が限定されていたことの結果として、支援計画や指導計画が作成されていなかった生徒の中には、不登校等の二次障害が生じている例がみられたとのことです。問題行動の度合いが高くない生徒には支援計画及び指導計画を作成することとしていないため、発達障害の診断を受けているにもかかわらず、両計画とも作成されず、結果として、学習障害等で授業についていけずに、平成22年度から26年度までの間に、不登校4人、休学1人、退学1人が発生した。一方、調査した保育所及び学校において、支援計画又は指導計画を作成したことにより、特別支援学校など関係機関による助言や保護者との連携等が図られ状態が改善するなど効果的な支援が行われている例が30事例みられました。総務省は文部科学省と厚生労働省に対し、保育所及び学校において、一律の基準によって支援計画及び指導計画の作成対象を限定するのではなく、個々の児童生徒の特性や状態を踏まえ、支援が必要な児童生徒に対して着実に作成されるよう、作成対象とすべき児童生徒についての考え方を示すことを勧告しました。継続的な支援のために欠かせない、進学先等への情報の引き継ぎ。しかし現状は…出典 : 支援計画や指導計画の作成だけでなく、支援の前提となる子どもに関する情報の引き継ぎ共有も重要です。こうした情報共有の実態についても調査がなされました。具体的には、・乳幼児健診の結果として発達障害の疑いがあるとする情報を保育所へ渡す取り組み・保育所や幼稚園で作成された支援計画等に適宜資料の追加等を行った上で、障害のある児童生徒等に関する情報を一元化し、支援計画や相談支援ファイル等として小・中学校等に引き継ぐ取り組みなど、関係機関同士の情報の引き継ぎ・共有が十分ではないという勧告がなされています。しかし、情報共有が十分に進まない背景には、個人情報保護の観点からの障壁もあるようです。そのことが明らかになったのは、調査対象となった31市町村が実施した乳幼児健診結果の引き継ぎ状況の調査からです。平成26年度に実施した乳幼児健診の結果の、進学先(保育所、幼稚園等)への引き継ぎ状況をみると、30市町村で「引継ぎを行うこと」という方針を立てているものの、個人情報保護の観点から、保護者の同意が得られた場合であって、保育所等から情報提供の依頼があった児童のみ引き継ぐとしている自治体が14市町村にのぼりました。つまり、半数近くの市町村では、保育所等からの働きかけがなければ引継ぎが行われない状況であるということです。調査した市町村の中には、乳幼児健診の結果の進学先への引継ぎ時における保護者の同意取得については、次のような取組を行っている例がみられたとのことです。乳幼児健診の問診票の中に、健診結果等について、保育所等の関係機関と連絡を取り合う場合がある旨をあらかじめ記載し、これに同意するか同意しないかを選択させることとしている。児童が幼稚園に入園する前に、心配事のある保護者に「保護者との連携シート」の記載を依頼しており、同シートにより、幼稚園が保健師等の関係機関等から情報を入手する旨の同意を得ている。また、乳幼児健診の結果が引き継がれなかったことにより、対応が困難になった例もみられたとのことです。市外からの転入により入所した児童について、転出元の市町村での乳幼児健診結果(発達障害の疑いあり)を把握できなかったため、支援計画の作成、個別の配慮、小学校への引継ぎ等を行わなかったところ、小学校で集団行動になじめない状況となり、急遽支援が必要となった歳児健診及び3歳児健診で紹介された親子教室において、軽度な知的障害を伴う発達障害の疑いを指摘されたが、それらの結果が、入園先の幼稚園に伝わらず、児童の知的障害の把握が遅れた。その結果、児童は、特別支援学級へ入級したが、知的学級ではなく、自閉・情緒学級へ入級することとなり、児童に対する教育的配慮や課題設定を行うのに数箇月要した同様に、進学の際や転校の際における引き継ぎの不備も指摘されており、総務省は厚生労働省に対して、市町村に乳幼児健診の結果等の進学先への引継ぎの重要性を周知し、積極的な引継ぎを促進することを勧告しました。他にも総務省は、厚生労働省と文部科学省に対して、保育所・幼稚園から大学・就労先までの各段階において、発達障害児に対する必要な支援内容等が文書により適切に引き継がれるような呼びかけを行なっています。都道府県、市町村、都道府県教育委員会及び市町村教育委員会に対しては、・具体例を挙げて支援内容の引き継ぎを周知すること・支援計画及び指導計画については、引継ぎまでの適切な保存・管理を求めるとともに、具体的な引継方法を提示し、確実に引き継がれるよう徹底を図ることを勧告しました。「切れ目のない支援」を実現するための課題は出典 : 情報の引き継ぎは、切れ目のない支援を推進する上で不可欠だと言われています。そして文部科学省でも障害のある子どもに対して小学校から高校まで一貫した支援ができるよう、進学先の学校へも引き継げる「個別カルテ(仮称)」の作成を学校に義務付ける方針を固め、推進しています。また逆に保育所から専門機関に相談するようすすめられる場合もあるようです。現在、4歳の男の子を持っていますが、引越しして、2ヶ月前ほどから、転園した先の、保育園の先生から、落ち着きがなく、みんなと一緒のことができない、話す単語が少ない、との指摘を受けて、療育センターに問い合わせをするように、言われました。保育園で発達障害を疑われました。3歳1ヶ月の男児です。保育センターの心理相談の結果、問題はなさそうでした。しかしモヤモヤと心配が晴れず、何か息子のためにできることはないかなと焦っています。親や支援者が発達障害をどう理解するか、そして個人情報保護や当事者、家族の不安に配慮する仕組みの構築が、実際に切れ目のない支援を実現するためには必要なのではないでしょうか。
2017年01月30日総務省による初の発達障害者支援実態調査出典 : 年1月20日、総務省は、文部科学省と厚生労働省に対し、発達障害者支援に関する行政評価と監視の結果に基づく勧告を行いました。この調査は、保育所・学校現場を含む、都道府県・市町村における発達障害者支援の実態を初めて調査したものとなります。約12年前となる2005年4月、「発達障害者支援法」が施行され、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などの「発達障害」のある児童生徒が乳幼児期から切れ目なく適切な支援が受けられるよう、国、都道府県及び市町村の責務や求められる取組が定められました。この発達障害者支援法が制定されるまで、発達障害は、身体、知的及び精神の各障害者制度の谷間に置かれ、必要な支援が届きにくい状態となっていました。しかし同法の施行により、発達障害の早期発見、発達支援(医療的、福祉的及び教育的援助)サービスの提供、学校教育における支援、就労の支援、発達障害者支援センターの設置などが進められてきました。法の施行後、発達障害に対する理解や支援の取組が進展したとの一定の評価がなされています。一方、今回の総務省勧告では、・発達障害の早期発見の不十分さや市町村による発見状況の差・障害児に対する「個別の指導計画」「個別の教育支援計画」の未作成・進学過程での支援の途切れ・専門的医療機関の不足などの課題が残っていることが指摘されました。発達ナビでは、この総務省による発達障害者支援に関する行政評価・監視の結果に基づく勧告について、「早期発見に関すること」「発見後の支援と引継ぎに関すること」「専門的医療機関の確保に関すること」の全3回に分けて詳しくお伝えします。発達障害早期発見の重要性と早期発見の場としての健診出典 : 現在、適応困難、不登校や引きこもり、反社会的行動等といった二次障害を未然に防止するという観点から、発達障害の早期発見と適切な支援の実施はとても重要だと考えられています。発達障害者に対する適切な支援がなされない場合、その特性により生じる問題に周囲が気づかずに、無理強い、叱責などを繰り返すことで失敗やつまずきの経験が積み重なり自尊感情の低下等を招き、更なる適応困難、不登校や引きこもり、反社会的行動等、二次的な問題としての問題行動(以下「二次障害」という。)が生じることがあるとされている。(生徒指導提要」(平成22年3月文部科学省)こうした二次障害を未然に防止する上で、発達障害者を早期に発見し、早期に適切な発達支援につなげていくことが特に重要であることから、国及び地方公共団体は、発達障害の早期発見のため必要な措置を講ずるものとされている。(発達障害者支援法第3条第1項)また、早期発見の機会としては、1歳6か月児健診、3歳児健診、5歳児健診などの乳幼児健診や、就学時健診が該当します。市町村は、母子保健法(昭和40年法律第141号)第12条及び第13条に規定する健康診査(以下「乳幼児健診」という。)を、市町村教育委員会は学校保健安全法(昭和33年法律第56号)第11条に規定する就学時の健康診断(以下「就学時健診」という。)を行うに当たり、発達障害の早期発見に十分留意しなければならないものとされている。(発達障害者支援法第5条第1項及び第2項)調査で分かった早期発見の取り組みにおける課題点出典 : 厚生労働省は乳幼児健診において、広汎性発達障害を早期に発見するためのツールとして、2歳前後の幼児に対して自閉症スペクトラムのスクリーニング目的で使われる、親記入式の質問紙であるM-CHATや、広汎性発達障害の支援ニーズを評価するための評定尺度であるPARSの活用・普及を図っています。そして就学時健診を行うにおいて、市町村教育委員会に対し発達障害の早期発見に十分留意するよう求めてはいますが、具体的な方法は特に示してはいません。今回の調査の結果、健診時に発達障害が疑われる児童を見逃しているおそれが指摘されています。というのも調査対象となった31市町村で、市町村ごとの発達障害が疑われる児童の発見割合をみると、1歳6か月児検診では0.2%から48.0%まで、3歳児検診では0.5%から36.7%までと、市町村ごとで発達障害が疑われる児童の発見割合にかなりのばらつきがある検診で発達障害が疑われる児童の発見割合が1.6%を下回る市町村については、発見に漏れがある可能性が高いのではと考えられます。また、厚生労働省が早期発見ツールとして普及を図っているM-CHAT及びPARSの活用がされている市町村は、31市町村のうち5市町村にとどまりました。総務省は厚生労働省に対し、乳幼児健診における発達障害が疑われる児童の発見のための市町村の取組実態を把握するとともに、発達障害が疑われる児童を早期発見する有効な措置を講ずることを勧告しています。文部科学省に対しては、就学時健診時における発達障害の発見の重要性を改めて周知徹底するとともに、就学時健診における具体的な取組方法を示すことを勧告しています。発達障害早期発見のための保育所・学校の取り組み出典 : 保育所や学校も発達障害の早期発見の場としてとらえられています。文部科学省は、都道府県教育委員会及び市町村教育委員会に対し、各学校において発達障害等の障害は、早期発見・早期支援が重要であることに留意し、実態把握や必要な支援を着実に行うことなどを求めています。今回の調査の結果、調査した23保育所では、保育士等による日々の行動観察を通じて発達障害が疑われる児童の発見に努めていました。このうち、4保育所では、行動観察に当たって、着眼点や項目を共通化し、できるだけ客観的に判断できるよう、所内共通のチェックリストを用いてました。また、調査した23幼稚園、23小学校、23中学校及び24高等学校の計93校のうち、91校においては、教諭・教員による日々の行動観察を通じて発達障害が疑われる児童生徒の発見に努めていました。このうち、35校(4幼稚園、14小学校、11中学校、6高等学校)では、行動観察に当たって、校内共通のチェックリストを用いていました。チェックリストの活用をしている学校では、「教諭・教員が行う行動観察の習熟度が向上する」「発達障害児の特性が把握でき、その後の支援方法の検討に参考となる」「客観的な尺度であるため、保護者の理解が得られやすい」などの意見がみられたとのことです。教育委員会の学校に対する支援状況出典 : また、教育委員会の学校に対する支援の実施状況の調査も行われました。調査した50教育委員会(19都道府県教育委員会、31市町村教育委員会)のうち、36教育委員会(19都道府県教育委員会、17市町村教育委員会)において、文部科学省の「小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」や「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」(平成24年12月)における質問項目を活用するなどし、学校に対し、チェックリストを示していました。しかしながら、上記ガイドライン(試案)は、小学校及び中学校を対象としたものであり、また、上記調査の質問項目は、学習面に関しては小学校3、4年生までに表面化する困難や障害を意識して作成されたものとされ、元々の調査対象も小学校及び中学校となっていることから、幼児や高校生に関しては、そのまま用いることは必ずしも効果的とは言えません。総務省は、厚生労働省と文部科学省に対し、発達段階における日々の行動観察に当たっての着眼点や項目を共通化した標準的なチェックリストを、活用方法と併せて示すことを勧告しています。発達障害の早期発見はなぜ重要なのか、そしてその難しさ出典 : このように現在、発達障害の早期発見と適切な支援の実施は、適応困難、不登校や引きこもり、反社会的行動等といった二次障害を未然に防止するという観点から重要とされ、国として取り組みが行われています。しかし市町村によって取り組み具合にばらつきがあることも今回の調査で明らかになりました。発達ナビとしては今後の国の取り組みを注視しつつ、情報発信を続けていく予定です。
2017年01月26日成人後に、障害者として生きるということ出典 : 私は娘の診断をきっかけに、42歳のときにアスペルガー症候群と診断を受けました。その後、45歳の時に仕事先で障害をカミングアウトしたところ、大失敗。失意の中で退職するにあたって、「もう、一般就労でこれ以上傷つくのは無理。これからは障害者就労を目指して障害者として生きよう」と決意しました(このときのエピソードは、以下関連記事をご参照下さい)。しかし、アスペルガー症候群と診断されてからまだ3年目です。まさか自分に障害があるなんて思ってもみなかった私が、障害者として生きていくことは、想像以上に苦しみを伴うものでした。大人になってから発達障害と診断された方の中には、私のような体験をする方もいらっしゃるかもしれません。「こんな気持ちになることもあるんだ…」と、心の片隅に置いていただければ幸いです。障害福祉サービスを申請するステップ、それは自分自身と向き合うことだった出典 : 診断後、障害者向けのサービスにはどんなものがあるのか?調べてみることにしました。障害福祉サービスを受けるためには、いろいろな機関とつながる必要があります。まず私が頼ったのは、障害者自立生活センターでした。このセンターを知ったのは、娘の不登校でお世話になっていた親の会がきっかけでした。親の会で出会ったのが、障害者自立生活センターの相談員さんだったのです。もしこのご縁がなければ、まずどこに相談したらいいのかわからなかったかもしれません。後で知ったのですが、各市町村には相談支援事業所があり、そこが最初の窓口になることが多いようです。障害のある人に対する相談支援について出典 : 障害者自立生活センターの相談員に付き添われ、ハローワークに障害者として登録し、地域の障害者就業・生活支援センターに相談に行きました。そして、障害者就業・生活支援センターの相談員と一緒に障害者職業センターに行き、ジョブスキルトレーニングを受けつつ、合間にカウンセラーと一緒に自分の障害特性をまとめました。障害特性の中でも、仕事に就く上で困難さにつながるものについては、自分でどう対処するのか?企業にはどのような配慮を求めるのかを、まとめるのですが、この作業は心理的にとても苦しかったです。それはまるで、「自分はこんなにもできない人間だったのか」と突き付けられている感覚で、今までの人生を否定されたような気持ちになったこともありました。訪問調査では、自分の家事能力まで明るみにされ…出典 : あちこちに足を運ぶ生活をしながら、障害福祉サービスを受けるために訪問調査も受けました。訪問調査では、何度も相談に乗ってもらっていた障害者自立生活センターの相談員が担当だったので、安心していました。しかし、ホッとしたのも束の間。長時間の面談の中、自分の弱点を見つめざるを得なかったことは、精神的にかなり堪えました。ぐちゃぐちゃの冷蔵庫や押入れには、目をつぶって生きてきた私。働く主婦として、なんとか子どもも育ててきたけれど、自分の家事能力の無さに今更ながら愕然とし、落ち込みました。医師にも「今まで、よく頑張ってこられましたね」と言われましたが、まさにそういう気分だったのです。あきらめる人が多いと聞く、「障害年金」。その理由に納得Upload By ヨーコそんな日々の中、相談員さんと「え、障害年金もらってないんですか?」「え、もらえるんですか?」というやり取りがあり、障害年金の手続きをすることになったのですが…その手続きも、私にとっては地獄の苦しみでした。障害年金の手続きには初診証明が必要なのですが、私のように40歳を過ぎて発達障害と診断された場合、精神科に初めてかかったのが20年前というケースもザラにあります。病院が廃業している・カルテも無い、ということも多く、 初診証明を取るのが大変なのです。また、成人の発達障害についてきちんと理解している医師も少ないので、適切な診断書を書いてもらうのにも一苦労。こうした現実に、諦めてしまう人が多いのも納得です。私は最初に社会保険事務所に行ったときに「これはダメだ…」と思い、手続きを社労士さんに依頼したので、まだ苦労はしていないのかもしれませんが、昨年の5月に依頼し、度重なる打ち合わせを繰り返したものの、未だ受給の目途はついていません。ちょっと心が折れそうです。7ヶ月続いた、"障害者になる"ための手続き。その結果…出典 : こうして、障害者として生きていくための手続きに奔走した生活が、7ヶ月程続いたあたりから、日常的に微熱が出るようになり体が動かず、寝てばかりの日々が続くようになりました。頭痛・吐き気といった、私がストレスを受けると現れる症状も頻繁に出てきました。今振り返ると、あのときの状態は鬱そのものだったような気がします。薦められた発達障害専門の就労移行事業所も、「行かなくては」とは思うのですが、「本当は行きたくない」「もうイヤ」という気持ちがあり、結局体調不良ということで1度も正式には通うことはありませんでした。「就労移行の話は白紙に戻したので、ゆっくりしてください」と支援者に言われてから、だんだんと体調も気持も立ち直っていったような気がします。初めて自分の発達障害と向き合ってみて、わかったこと出典 : 支援を受けるようになってから、私は自分の発達障害特性が強くなったような気がしていました。だけどそれは、初めて「発達障害である自分」としっかり向き合ったからではないかと思います。先にご紹介した障害福祉サービスを受けるための聞き取り調査や、障害者職業センターでカウンセラーと振り返った自分の特性のまとめ、そして自分への理解を深めるために発達障害について学習したこと、そうしたことが重なって「これも自分の発達特性だったんだ」と意識するようになったのだと思います。診断がつく前は、無意識に「人並みに頑張ろう」と無理を重ねて頑張り、結局空回りしていたような気がするのです。そして、「どうして私はいつも上手くいかないのだろう…」と悩み続けていたのですね。"障害者になる"ための作業を進めるにあたって、辛いこともいっぱいありましたが、自分はどれくらいのことなら無理なくできるのか、休んだ方がいいという心や体のサインにも気づくことができました。それはまるで、等身大の自分と出会い直している気分です。娘のために、幸せになることをあきらめない出典 : 現在、本格的に福祉の支援を受けるようになりましたが、まだ就労の問題は全く進んでいませんし、年金の行く末も不安です。だけど、私は幸せに生きる権利がある。そして、娘のためにも幸せに笑っていたい。いつか同じ障害を持つ娘も歩むだろう道を、照らせる存在でありたい。だから私は、あきらめません。
2017年01月20日愛着障害(アタッチメント障害)とは?出典 : 一般的に愛着障害とは、養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子どもの情緒や対人関係に問題が生じる状態のことを言います。主に虐待や養育者との離別が原因で、母親を代表とする養育者と子どもとの間に愛着がうまく芽生えないことによって愛着障害は起こります。愛着とは、主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのことです。専門用語でアタッチメントともいいます。子どもはお腹が空いたとき、オムツが汚れたとき、恐怖や驚きを感じたときなどに泣くことで自分の気持ちや欲求を表現しますよね。そのとき通常は決まった養育者がくりかえし子どもに駆け寄り、不快にさせる要因を取り除きます。ここでいう養育者とは、母親や父親など、身近で世話をして育ててくれる人を意味します。養育者は頻繁に子どもと抱っこなどで触れ合ったり、声かけなどでコミュニケーションをとったりもします。子どもは生後3ヶ月ころまでは誰に対しても微笑んだり見つめたりします。しかし、こういった日常的なお世話と愛情あふれるスキンシップ、コミュニケーションを受けとる中で、子どもは「この人は自分の要求を敏感に感じ取り、正しく対応してくれる」「この人は自分によく声をかけてくれるし、抱っこしてくれる」などと特定の養育者を認識するようになります。このような認識のもと、生後3ヶ月を過ぎてくると、子どもはいつも自分をお世話してくれる養育者とそうでない人を識別できるようになってきます。これが愛着形成の第一歩です。子どもは養育者と生活していく中で養育者との愛着をどんどん深めていきます。この愛着を土台に、子どもは成長していくため、養育者と子どもが愛着を形成するということは、子どもの発達に欠かせないことなのです。では、愛着を形成することは子どもの成長においてどんな意味があるのでしょうか。子どもの成長における愛着の重要性は大きく分けて3点あります。◇人への基本的信頼感の芽生え子どもは特定の養育者との間に愛着を築くと、その養育者に甘え、依存するようになります。養育者に甘え、受け入れられる。このようなやりとりを通じて、人とかかわる楽しさや喜びを体験することができます。◇自己表現力、コミュニケーション能力を高める愛着を形成した相手に対して、自分の要求を伝える、また時には相手の要求を受け入れるということを通して、子どもは自分が求めていることを表現することの楽しさや難しさを知ります。これにより表現力やコミュニケーション能力の向上が期待できます。◇自己の生存と安全を確保する子どもは不安や危機を感じた時に、愛着の対象者を「安全基地」と見なして、自分の身を守ろうとします。安全基地とは、自分の見知らぬ世界に対して好奇心を抱き、それらを探索しようとする時に、子どもが拠り所とする存在を指します。つまり、子どもが母親との愛着を形成した場合、母親を安全基地と見なすのです。自らの好奇心のもと、見知らぬ世界を探索したときには、不安や恐怖、心理的・身体的苦痛を感じることがあります。そんなときに安全基地である母親のもとに戻って、安心感を得るのです。子どもはこのような探索と避難をくりかえすことよって好奇心や積極性、ストレスに耐える力を身につけていきます。愛着障害の医療的な定義と診断基準とは?出典 : ここまで一般的に知られている愛着障害についてご紹介しました。医療の面から愛着障害を見てみると、愛着障害は「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」と「脱抑制型愛着障害」に診断が分けられます。「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」も「脱抑制型愛着障害」も、5歳以前に発症するとされています。この2つの愛着障害の何が違うのか簡単に説明すると、人に対して過度に警戒するのが「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」、過度になれなれしいのが「脱抑制型愛着障害」です。世界保健機関(WHO)が定める『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)という診断分類ではこのように定義づけられています。「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」5歳までに発症し、小児の対人関係のパターンが持続的に異常を示すことが特徴であり、その異常は、情動障害を伴い、周囲の変化に反応したものである(例:恐れや過度の警戒、同年代の子どもとの対人交流の乏しさ、自分自身や他人への攻撃性、みじめさ、ある例では成長不全)。この症候群は、両親によるひどい無視、虐待、または深刻な養育過誤の直接的な結果として起こるとみなされている。「脱抑制型愛着障害」5歳までに発症し、周囲の環境が著しく変化しても持続する傾向を示す、異常な社会的機能の特殊なパターンである。たとえば、誰にでも無差別に愛着行動を示したり、注意を引こうとして見境なく親しげな振舞いをするが、仲間と強調した対人交流は乏しく、環境によっては情動障害や行動障害を伴ったりする。引用文献:中根 允文、岡崎祐士/著ICD-10「精神・行動の障害」マニュアル (医学書院,1994年刊)同様に、『ICD-10』では反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)と脱抑制型愛着障害について、以下のような診断基準を示しています。「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」A.5歳以前の発症B.いろいろな対人関係場面で、ひどく矛盾した、両価的な反応を相手に示す(しかし間柄しだいで反応は多様である)C.情緒障害は、情緒的な反応の欠如や人を避ける反応、自分自身や他人の悩みに対する攻撃的な反応、および/またはびくびくした過度の警戒などにあらわれるD.正常な成人とのやりとりで、社会的相互関係の能力と反応する能力があるのは確かであること「脱抑制型愛着障害」A.広範囲な愛着が、5歳以前の(小児期中期にまで持続していなくてもよい)持続的な特徴としてみられること。診断には、選択的な社会的愛着を十分に示せないことが必要であり、次の項目に明らかとなる。(1)苦しいときに、他人から慰めてもらおうとするところは正常であり、(2)慰めてもらう相手を選ばない(比較的に)というところは異常である。B.なじみのない人に対する社会的相互関係がうまく調節できないこと。C.次のうち1項目以上があること(1)幼児期では、誰にでもしがみつく行動(2)小児期の初期または中期には、注意を引こうとしたり無差別に親しげに振る舞う行動D.上記の特徴については、状況特異性のないことが明らかでなければならない。診断には、上記のA,Bの特徴が、その小児の経験する社会的な接触の全範囲に及んでいる必要がある。引用文献:中根 允文ら/訳ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準 新訂版子どもが愛着障害である場合の具体的な傾向とは?出典 : 子どもが愛着障害の場合、どういった態度・素振りを見せるのでしょうか。具体例を見てみましょう。◇反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」の場合、相手が養育者であっても極端に距離をとろうとするために以下のような様子が見られることがあります。・養育者へ安心や慰めを求めるために抱きついたり、泣きついたりすることがほとんどない・笑顔が見られず、無表情なことが多い・他の子どもに興味を示さない、交流しようとしないなど◇脱抑制型愛着障害「脱抑制型愛着障害」の場合、養育者に限らず誰に対してもべったりくっついてしまったり、自分に目を向けてほしいがために不注意や乱暴な行為に走るなど、困りごとが生じることがあります。・ほとんど知らない人に対してもなんのためらいもなく近づく・知らない大人に抱きつき、慰めを求める・落ち着きがなく、乱暴など◇どちらにも見られる態度・素振りまたどちらの愛着障害にも見られることとして、強情・意地っ張り・わがまま、といった態度が挙げられます。「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」も「脱抑制型愛着障害」も子どもと養育者との愛着形成が不安定であることによって起こるので、愛着障害の子どもは養育者を頼りにし、甘えることが上手にできません。そのため意地っ張りになってしまったり、極度にわがままになってしまったりすることがあります。・強情、意地っ張り・度が過ぎるわがままなどまた、子どもが特定の養育者を安全基地と見なしていないために、子どもの視線や行動に違和感を感じることもあります。・養育者との別離・再会のときに、養育者に対して視線をそらしながら近づく・抱っこされている間、全然関係ない方向を見つめている・見知らぬ場面において、特定の養育者を頼りに(安全基地に)する素振りが見られないなど愛着障害の原因は?出典 : 愛着障害の原因は、子どもと養育者との間に愛着がうまく形作られないことが大きく関係しています。具体的には、以下のような原因が挙げられます。・養育者との死別・離別などで愛着対象がいなくなってしまう・養育者から虐待やネグレクトを受けるなど、不適切な養育環境で育てられた・養育者が子どもに対して最低限の世話はするものの、無関心であったり放任したりしていた・養育者のような立場の大人が複数いて、世話を焼いてくれる人が頻繁に変わってしまっていた・兄弟差別など、他の子どもと明らかに差別されて育てられたこのように、本来愛着を形成する対象に危害を加えられたり、それによって自分が育った環境が安全でなかったりすると愛着の形成が阻害されてしまいます。特に、愛着を形成する大事な時期である生後6ヶ月から1歳半ころの間に上で紹介したような愛着形成が阻害されるようなことが起こると、子どもの成長に大きな影響が及びます。子どもは養育者との愛着を形成できないだけでなく、人に対する基本的な信頼感がうまく芽生えなくなってしまいます。そしてこうなると後から愛着形成を取り戻そう、修正しようとしても難しいことが多いのです。これによって先に述べたような困った態度・素振りが表れることにつながります。愛着関係をはぐくむには?出典 : 子どもの健やかな成長に必要不可欠な愛着。では、パパ・ママなど子どもの養育者が子どもとしっかり愛着を築くためにはどのように子どもに接すればよいのでしょうか。・だっこなど、親子でのスキンシップをこまめにとる・授乳、オムツかえなど、子どもの欲求に敏感に反応してあげる・親子での細やかなコミュニケーション(まだ話せないような年齢の子どもに対しても、子どもと会話をしているように声掛けをしてあげましょう)以上に示したように、愛着を築くために特別難しい技術は必要ありません。大切なのは、実際に肌と肌で感じあうことができるようなふれあいの機会を多く設ける、顔を見合わせてコミュニケーションをとる、子どもを常に見守り、細やかにお世話するというような、基本的な子育てに対して丁寧に優しい気持ちで取り組むことです。一見単純なことのように思われがちですが、基本的な子育ての姿勢を忘れずに、真摯に子どもに向き合うことが、子どもとの愛着をしっかりと構築するために重要なことなのです。愛着障害には治療法があるの?出典 : 愛着障害は、発達障害などと違って、子どもの育つ環境や養育者の子育て方法に原因がある、後天的なものです。それゆえ、投薬などを利用した治療は基本的には行いません。子どもが愛着障害と認められた場合にまず行うことは、安全基地の形成です。子どもとの間で愛着がしっかりと築かれることで、子どもは養育者のことを安全基地、すなわち困った時・不安や恐怖を感じた時に守ってもらえる拠り所として認識するようになります。愛着障害の子どもは養育者を安全基地と見なせていない場合がほとんどです。ですので、子どもに「養育者=安全基地」と認識してもらえるように、親族やかかりつけの医者など、まわりの人々が親子を支援していくことが必要です。安全基地の形成が足がかりとなって、子どもの人と接することへの安心感や信頼感を生み、他の人との接し方・距離感も改善することができます。また、子どもが愛着障害を発症するということは、養育者や家族も何らかの支援を必要としていたり、問題を抱えている場合も少なくありません。その場合、子どもだけに治療の焦点を当てるのではなく、養育者や家族を含めて幅広くアプローチすることがあります。例えば、虐待が原因の場合は子どもと養育者の距離を一回遠ざけてみたり、親へのカウンセリングや心理療法的・家族療法的アプローチを取り入れたりすることで、子どもの愛着障害の改善につながることがあります。また、養育者の抱えるさまざまな悩みや状況により、子どもを十分に育てられず、子どもに愛着障害の症状が表れた、ということもあります。その場合は生活保護や、行政や民間で提供されている育児・家事サービスの利用を視野に入れるなど、愛着障害を取り巻くすべての要因から解決策を探しだすことが必要となってきます。「子どもが愛着障害かも・・・」「子どもとの愛着形成に不安がある」と思ったときは、精神科のある病院やクリニック、カウンセリングセンター、地域の子育て支援センター、児童相談所で一度相談してみるのも良いでしょう。大人の愛着障害出典 : これまで子どもが愛着障害を発症した場合を見てきましたが、愛着障害は子ども時代を過ぎれば関係なくなるものではありません。子どものころに発症した愛着障害が治療されないと大人になっても愛着障害の症状が続くことがあります。子どもの時に養育者と愛着を築くことができなかった、ただそれだけのことのように思われることもあるかもしれません。ですが、愛着が形成されない、またそれをそのままにしておくということは、子どもが大人へと成長していくうえでの人格形成や心の持ちようなどにおいても影響を与える大きな要因になることがあるのです。実際のところ、大人で愛着障害があるということは珍しいことではありません。ただ、大人になってからも情緒や人との関係づくりで苦労することがあってもその原因が愛着障害であるという自覚が少ないケースもあります。まず大人が愛着障害を発症している場合どのような特徴があるのかご紹介します。◇情緒面・傷つきやすい・怒りを感じると建設的な話し合いができない・過去にとらわれがち、過剰反応・0か100かで捉えてしまう・意地っ張りなど情緒面では主にこのような症状が表れます。他人の何気ない発言に対して過剰に反応してしまい、傷ついてしまったり、過去の失敗や恐怖を極度に引きずってしまったりすることがあります。また、一度頭に血が上ってしまうと何に怒っているのか整理することができず、当たり散らしてしまう。「ある・ない、好き・嫌い」など物事や人を極端に捉えることしかできず、「この人は苦手な部分もあるけど、良いところもある」というように柔軟で折り合いをつけた考え方ができないということが挙げられます。◇対人関係・親などの養育者に対して敵意や恨みを持つ、または過度に従順になったり、親の顔をうかがう・親の期待に応えられない自分をひどく責める・人とほどよい距離がとれない・恋人や配偶者、また自身の子どもをどう愛すればいいかわからないなど対人関係の面では、第一に愛着障害の原因をもたらした養育者に対しての態度に症状が見られることがあります。養育者に激しい敵意・恨みをもつことでいつまでも反抗的な態度を取り続ける。反対に親に従順すぎるほどの態度を取り、大人になっても親に言いなりになってしまっているというような症状が表れます。また、子どもの場合と同じように、人とほどよい距離を保つことができない、恋人や配偶者、そして自分の子どもに対してどのように愛情を注げばいいかわからず、関係づくりに苦労することがあります。◇アイデンティティが確立できない・キャリア選択がうまくできず時間をかけた割にわずかな見聞や情報で決めてしまう・自分の選択に対する満足度が低い大人になると、仕事やプライベート、さまざまな場面で自分自身で選択することが求められます。愛着は他人との基本的な信頼感の基礎であるだけでなく、好奇心や積極性、自己肯定感の基礎ともなるものです。その愛着が子どもの時に十分に形成されず、大人になっても愛着障害が続くと、アイデンティティを獲得・確立する青年期や成人期で決断を求められる場面において苦労してしまうことがあります。大人の愛着障害が他の疾患を発症の原因になってしまうことがあります。・うつ病・心身症・不安障害・境界性パーソナリティ障害などこのように、愛着障害がある大人は生活を送るうえでさまざまな困りごとが起こるだけではなく、二次的に他の疾患を引き起こすこともあります。ですが、大人になってからでも工夫次第では症状をやわらげることができたり、困りごとを克服できたりすることもあります。最も大切なこととして、幼少期に満足に得られなかった、愛着形成のための愛情深いスキンシップやコミュニケーションを補ってあげることが挙げられます。大人になってしまうと実の親と子どものころのように密にやりとりをする、ということが難しいかもしれません。その場合は、恋人やパートナー、教師や友人などとのやり取りが愛着障害の克服の第一歩となることがあります。また、職場など対等な人間関係をつくることができ、自分の存在価値が認められるような環境に身を置くことや、自分が「理想の親」のような存在となって後輩を指導するということもアイデンティティの確立や自信をもつことにつながり、結果的に愛着障害が改善していく可能性があります。愛着障害と発達障害の関連はあるの?出典 : 発達段階の年齢にある子どもの愛着障害の症状は、発達障害の症状に似ているため、しばしば混同されることがあります。しかし、発達障害は先天性のもの、愛着障害は後天性のものである、という決定的な違いがあります。そのため愛着障害は適切な環境(愛着がきちんと形成される環境)で子どもを育てれば、症状が改善するケースが多いのです。以下、愛着障害を「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」と「脱抑制型愛着障害」をわけて、それぞれ間違えられやすい発達障害との違いをご紹介します。◇自閉症スペクトラム自閉症スペクトラムと愛着障害は、養育者と目が合いにくい、嬉しい・楽しいといった情動表現をあまり見せない、認知と行動に遅れが見られる、対人関係を円滑に築くのが苦手といった共通点があります。しかし、自閉症に見られるこだわりや反復行動は、多くの場合愛着障害には見られません。また、自閉症児の場合、知的機能は高くてもコミュニケーションに苦手意識があったり、相手の気持ちを察したりすることができないということもあります。それに対して愛着障害は、知的機能に見合った社会的コミュニケーションが見られます。つまり、愛着障害は愛着の不足によって子どもの発達が遅れているということなので、養育環境を改善すれば知的、社会面の両面を含む発達の遅れを取り戻すことができます。◇注意欠如・多動性障害(ADHD)脱抑制型愛着障害のある子どもにも、不注意や多動といったADHDのような症状が現れることがあります。ですがADHDのように、子ども自身とりわけ意識していないにもかかわらず常に不注意や多動が続く、という状態とは少し違います。脱抑制型愛着障害の場合、大人の気を引きたいがためにわざとそういった行動・態度を示すという点で、ADHDとは区別することができます。まとめ出典 : 愛着障害は乳児期に母親をはじめとする養育者ときちんと愛着を形成できていないことにより発症します。愛着がきちんと形成できないことは、子どもの知的・社会的発達に大きな影響を与えることとなります。愛着障害の治療は早期であればあるほど効果がありますが、何もせず放置してしまうと大人になっても愛着障害をずっと抱え続ける可能性があります。養育者の抱えるさまざまな悩みや困難な状況がある場合には、愛着障害を取り巻くすべての要因から解決策を探しだすことが必要となってきます。パパ・ママは子どもが生まれた直後から、声掛けやスキンシップなどの子どもへのコミュニケーションを積極的にとるようにしましょう。また、子どもに常に目をかけ、あたたかく寄り添ってあげることが、子どもとの強くしっかりとした愛着を築くために大切なことなのです。参考文献岡崎尊司/著『愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる』岡崎尊司/著『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』
2017年01月19日眠いのに眠れないという皆さん、入眠障害という言葉を知っていますか?日本人の約3割は入眠障害だと言われています。入眠障害を抱えている方は他の睡眠障害を併発している場合が多く、病院へ行くときにはかなり入眠障害が酷くなってしまう場合が多いのが特徴です。入眠障害について、原因と対処方法、試してみてほしい方法などを紹介します。目次■ 入眠障害とは■ 入眠障害の症状■ 入眠障害の原因■ 入眠障害の対策とアドバイス(診断前)■ 入眠障害の対策とアドバイス(診断後)■入眠障害とは悩みや考え事などないのに自然な眠りに入れない状態(消灯から2時間以上)が週に3回以上あり、それが3か月以上連続で続いている場合を入眠障害といいます。入眠障害は中々自分自身で自覚するのが難しいこともあり多くの人が人知れず悩んでいる状況です。病院で治療が必要なのは、寝入りが悪いために以下のような事が続く場合です。睡眠不足が連続で2週間以上続く睡眠が足りていないため、仕事や生活に支障をきたす昼間の生活に睡眠不足が支障をきたす他の人から見て昼間の生活が支障をきたしていると指摘される入眠障害など睡眠に関する悩みで多いのが、「自分は本当に入眠障害なのだろうか?このくらいで病院に行ったらおかしいと思われるのではないか」ということです。■入眠障害の症状入眠障害の症状は外の睡眠障害の症状と違うのが特徴的です。しかし、入眠障害+他の睡眠障害という方もいらっしゃいますので、以下の症状に少しでも当てはまる方は最寄りの内科か精神科・心療内科へ行くことをおすすめします。消灯から2時間経っても寝付けない(注意:ただし、通常は既に1時間以上経てば入眠が困難であると不快感を感じ始めます。)ある時期から寝入りがかなり悪くなった悩みなどを消灯まで引きずっていないコーヒーや飲酒などの刺激物などを取っていないのに眠れない体は疲れているのに眠れそうで眠れない何かで寝入り際に起きてしまうとまた眠るのが難しくなってくる仕事やスポーツなど体を動かしたり頭を使うようなことがあり疲れていても眠りに入れないちなみに私はこれらの症状すべてが当てはまります。また、些細な隣の部屋からの話し声や外を走っている車のエンジン音なども寝入り際に気になると次に寝入るのが難しくなってしまいます。>>眠れないときの病院選び・治療ガイド■入眠障害の原因では一体、入眠障害の原因は何なのでしょうか?大きな原因は次の8つが考えられます。1.頭が興奮しすぎている私たちの体は自律神経(交感神経・副交感神経)と呼ばれる2つの神経のグループが交互にリーダーになり、私たちの行動がコントロールされています。◎交感神経:活発に活動したり興奮状態の時はこの神経のグループがリーダーとなり私たちを動かしてくれます。(例:興奮する、目が覚める、やる気の状態)◎副交感神経:睡眠や消化活動などに体が落ち着いた場合にリーダーになるグループです。(例:トイレに行きたくなる、お腹が空く、眠くなる、やる気がなくなる、落ち着く)入眠障害の原因は、「体が疲れているのに頭が興奮しているため眠りを呼び起こさない」というのが第一の原因だと言われています。2.性格や遺伝気質交感神経の働きとも関係が出てきますが、性格的に交感神経がリーダーになりやすい人や、遺伝気質的に(親戚にそのような人が多い)興奮しやすい気質などを持っている場合は、他の人よりも興奮が収まりにくく中々眠りにはいれません。3.寝入る前の体温が高すぎる/低すぎる寝入る直前は体温が少し下がっています。しかし熱帯夜などを思い浮かべてくださると分かりやすいと思いますが、体温が眠る前にも関わらず高いと眠りに入りにくい傾向があります。ちなみに以下のような状態の時に起こりやすくなります。高温のお風呂が好き寝る部屋が暑い体を寝る直前に温めすぎる(*注意:適度に温めるのは寝入るために良いことですが、やりすぎて温めすぎるのは却って入眠を困難にしてしまいます。)厚着や布団などを多くかけすぎる反対に寒すぎるこのように極端な環境だと寝入りに入るタイミングを逃してしまう場合が多いです。4.寝入るのに適切な環境でないお子さんが小さい場合や、眠る時間帯が違う人が一緒に暮らしていると起こりやすい原因です。また、いびきや歯ぎしり、寝言なども気になってしまう人には原因になりやすいです。その他にも、以下のようなことがあると眠りにくいです。眠っている時にPCやベッドサイドのライトが目に入ってくる夜中に帰ってくる人が近所にいる大学生など人が多く集まる場所が近くにある5.昼間あまり活発に動いていない/動きすぎている昼間一人で家に居る人や、事務の仕事の人などは体を動かさずにPCのモニターなどだけを見ている作業が多くなります。そうすると、体があまり疲れずに夜になっても寝入りが難しくなります。反対に、一日中走り回ったり立ち仕事で絶えず体を動かす人も体が疲れすぎて眠りにすんなり入れないことがあります。6.昼間の刺激物(カフェイン飲料やカカオなど)の過剰摂取昼間にカフェインが多く含まれたコーヒーやお茶などを飲むと中々交感神経と副交感神経が交代してくれず、眠りに入れなくなります。また、チョコレートや辛い香辛料などが好きな人も夜までそれらで興奮された脳の状態が残ってしまい、寝入りが難しくなってしまいます。7.ショックな映像やショックな出来事が身近に起こったショックを受けることを聞いたり、人から直接批判されたりすると精神面で軽く落ち込み(へこむ状態)それが寝入りを悪くさせている可能性もあります。自分では気にしていないようでも、無意識に心の奥底で傷ついている場合があります。また、身近でなくてもショッキングな出来事や映像などを見てしまうと、代理トラウマといって自分が直に受けていないのにそのショックを受けた状態(トラウマ状態)になってしまいます。8.持病の薬やサプリメント以下の薬やサプリメントは交感神経に働きかけるため入眠困難になる場合もあります。(個人差あり)気分を高揚させるような薬(抗うつ剤、抗パーキンソン病の薬)カフェイン栄養ドリンク高血圧の薬気管支拡張剤など呼吸器系の薬ステロイド抗生物質咳止めの薬など★可能性のある病気上記の8つ以外の原因に、病気によって入眠困難になる場合も考えられます。そのような場合には、必ず以下のポイントに注視してみてください。例1.心臓や肺が悪い場合入眠困難+息苦しい、咳が出る、むくみがでるなど例2.鬱などの精神的な場合入眠困難+外に出る気がしない、気分が落ち込む、やる気が出ないなど(ベッドから出れない)例3.腎臓病や肝臓病の場合入眠困難+肌の色(指で押すと黄色くなる)や肌の痒み・赤み、尿の色の変化(茶色や黒色など)、急にお腹だけ膨れてきた、生活できないほどの疲労感や倦怠感などこの他にも、糖尿病や慢性的な病気、または自己免疫性症候群やアトピー性皮膚炎などの持病がある人は入眠困難になりやすいです。■入眠障害の対策とアドバイス(診断前)重要なのは以下の3つのことです。1.内科か心療内科・精神科の専門機関にかかる一番重要なことは、まずは内科や心療内科など専門機関にかかり、適切な診断を受けることだと思います。もし、入眠困難だけでしたら入眠困難を治すように努力すればいいですし、他の病気が原因で2次的に入眠困難が起こっているようでしたら、その元になっている病気を先に治すという風に、早めに診断されれば早めに対処でき短時間で解決する場合も多いからです。>>眠れないときの病院選び・治療ガイド2.持病を治す持病があればそれをしっかりと治してみて、それでも入眠困難があるかどうか確かめてください。3.自己判断をしない自己判断で安易に市販の睡眠薬などを飲むのは根本的な解決になっていません。■入眠障害の対策とアドバイス(診断後)入眠困難などの睡眠障害と診断されたら、まずは医師の治療内容に従ってみましょう。医師は治療マニュアルに沿って治療を行います。日本睡眠学会が定める治療マニュアルは、日本人の体質に一番適した治療法です。何ができるのか分からない時は、まずは身近な物から目を向けてみて下さい。例えば、以下のようなものもおすすめです。寝る前には少し頭を冷やして足元を温める:副交感神経に変わり安いです消灯の1時間前には全てのITツールを遮断する(PC,スマホ、タブレットなど):脳を興奮させないようにしますストレッチなどで体をほぐす:血行が良くなり筋肉がほぐれるので寝入りが楽になりますノンカフェインの暖かいお茶を飲む:体温が上がり血糖値も少し上がるので(正常の範囲内です)空腹感がまぎれます呼吸を少し意識して遅くする:副交感神経に変わりやすくなります肌に触れる素材はコットンなど柔らかい素材にかえる寝る前の儀式(羊を数えたり、白湯を飲んだり)など習慣をつける参考文献URL:日本睡眠学会治療マニュアル <筆者プロフィール>ニックネーム:benichanカリブ海で内科医師をしています。最新機器がない島で最低限の技術で工夫して患者さんを診察しています。自分自身も入眠障害型の不眠症なので、皆さんと一緒に問題を解決していきたいと思っています。日本の医療技術は先進国の中でも高い技術を誇っていますので、その技術の恩恵を利用しない手はありません!不眠を改善し、朝までぐっすり眠りましょう!
2016年12月30日素行障害・行為障害(CD)とは?出典 : 素行障害・行為障害(Conduct Disorder)とは別名「素行症」と呼ばれる精神疾患であり、社会で決められたルールを守らず反抗的な行動を起こし続けてしまうという特徴があります。具体的な症状には人や物への暴力的な攻撃、窃盗や長期・複数回の家出などが挙げられます。素行症/素行障害はアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において用いられている診断名です。一方、行為障害は世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)で用いられている名称ですが、ここでは「素行障害」という疾患名に統一して説明します。素行障害の主な症状出典 : 素行障害の主な症状として年齢相応の社会のルールを守ることができない、もしくは明らかに他者の人権を侵害していると考えられる行為を繰り返し、持続して行うことが挙げられます。素行障害の症状は下記の4パターンに分けられます。素行障害と診断されるには、加えて12ヶ月の間にいくつかの症状が継続していることや、6ヶ月の間に少なくとも1つの症状が発症していることなど様々な条件が定められています。1. 人または動物に対して攻撃的:いじめや取っ組み合いのけんか、凶器の使用、強盗、一方的な性行為を通して人や動物に対して残酷な行動を起こします。2. 所有物の破壊:わざと放火したり、自分の所有物ではないものを破壊したりすることで、相手に重大な損害を与えようとします。3. 人に嘘をつく・物を盗む:建物や車など無断で入ってはいけないところに侵入したり、自分の利益のためにとっさに嘘をついたり、万引きなどをして価値のある物を盗んだりします。4. 決められたルールの違反:門限が決められているにも関わらず夜に外出したり、学校をさぼったり、家出をしたりします。参考:素行障害l ハートクリニック参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)年代別の素行障害出典 : では素行障害には3種類あり、発症した年齢によって種類が分けられるとしています。小児期発症型の素行障害は10歳になるまでに素行障害の症状が発症することが特徴です。通常男の子に多く発症する傾向があり、発症すると暴力的になり、同世代集団の対人関係に障害を抱えることがあります。また小児期発症型の素行障害を抱えている人は、小児期早期に反抗挑戦性障害(ODD)に診断されている場合が多く、ADHD(注意欠如・多動症)や他の神経発達上の困難を抱えている傾向があります。この小児期発症型の素行障害は青年期に発症するよりも長引く傾向があります。参考:素行障害l ハートクリニック青年期発症型の素行障害は、10歳になるまでに素行障害の症状を発症していないことが条件です。小児期発症型の素行障害に比べて症状は軽く、成人になる前に症状が治りやすい傾向にあります。青年期発症型の素行障害を抱えている人はあまり攻撃的な行動は示さず、同世代集団のなかでも大きな対人関係の障害を抱えない傾向があります。素行障害の基準は満たしているが発症年齢が10歳より前か後か分からない場合には、特定不能の発症年齢と診断されます。素行障害を発症しやすい人出典 : 素行障害の発症率は小児期から青年期にかけて上昇し、女性よりも男性のほうが高いという研究結果が報告されています。素行障害を発症しやすい性格としてはネガティブであることと、自己制御を苦手とすることが挙げられ、具体的には下記のような行動を起こす傾向にある人を指します。・怒りっぽい・かんしゃくを起こしやすい・あまり人を信用できず、疑い深い・悪いことに対して罪悪感をあまり感じない・スリルを追い求める・先のことを考えずに強引に行動する素行障害の主な原因出典 : 素行障害は研究の結果、生物学的要因と環境の両方に原因があるとされており、これらが複雑に作用し合うことで発症すると言われています。素行障害の生物学的要因に関してはまだ研究途中であるため、決まった原因があるとは限りません。しかし、素行障害がある人はドパミンβヒドロキシラーゼ濃度が低かったり、セロトニン濃度が通常よりも異なる数値で見られる傾向があると言われています。また副腎でつくられる男性ホルモンの一種、デハイドロエピアンドロステロン(DHEA)が攻撃性と関連しており、素行障害をかかえている人はこのDHEAの数値が高い可能性があるという研究結果もあります。その他にも中枢神経の機能障害や損傷が原因となり、性格が変化してしまったり、情緒不安定な行動を起こしている場合は素行障害を併存している可能性があります。参考:素行障害l ハートクリニック環境要因としては家庭関係や周りの友人からの影響が大きいと言われています。家族や仲間から拒絶されているなどの孤独感を感じてしまうことで、反抗心が生まれ最終的に反社会的な行動を起こしてしまうことがあります。具体的に下記のような環境は素行障害を発症するきっかけになる恐れがあります。・親の子どもに対する拒絶や無視・厳しすぎるしつけ・身体的虐待・周囲の友人からの拒絶や暴力・夫婦が別居しているなどの不仲・家庭内の経済状況の悪化参考書籍:日本精神神経学会/監修『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)素行障害の診断基準出典 : 以下はアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害の診断・統計のマニュアル』第5版)での診断基準です。以下のうちどの程度基準が当てはまっていたか、その症状がどのくらい重症かによって軽度・中等度・重度と判定されます。A.他者の基本的人権または年齢相応の主要な社会的規範または帰省を侵害することが反復し持続する行動様式で、以下の15の基準のうち、どの基準群からでも少なくとも3つが過去12カ月の間に存在し、基準の少なくとも1つは過去6カ月の間に存在している。人および動物に対する攻撃性1.しばしば他人をいじめ、脅迫し、または威嚇する。2.しばしば取っ組み合いの喧嘩を始める。3.他人に重大な身体的危害を与えるような凶器を使用したことがある。4.人に対して身体的に残酷であった。5.運動に対して身体的に残酷であった。6.被害者の面前での盗みをしたことがある。7.性行為を強いたことがある。所有物の破壊8.重大な損害を与えるために故意に放火したことがある。9.故意に他人の所有物を破壊したことがある。虚偽性や窃盗10.他人の居住、建造物、または車に侵入したことがある。11.物または好意を得たり、または義務を逃れるためしばしば嘘をつく。12.被害者の面前ではなく、多少価値のある物品を盗んだことがある(例:万引き、ただし破壊や侵入のないもの、文書偽造)。重大な規則違反13.親の禁止にもかかわらずしばしば夜間に外出する行為が13歳未満から始まる。14.親または親代わりの人の家に住んでいる間に、一晩中、家を空けたことが少なくとも2回、または長期にわたって家に帰らないことが1回あった。15.しばしば学校をなまける行為が13歳未満から始まる。B.その行動の障害は、臨床的に意味のある社会的、学業的、または職業的機能の障害を引き起こしている。C.その人が18歳以上の場合、反社会性パーソナリティ障害の基準を満たさない。出典:日本精神神経学会/監修『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)反社会的パーソナリティ障害(ASPD)とは、法や倫理にかなった行動に従わなかったり、自己中心的で冷淡な他者への配慮が欠如していたり虚偽性、無責任さ、操作性や無謀さが特徴にある疾患です。18歳以上である場合、その診断基準を満たさないことが素行障害の診断条件となります。これに加え重度な素行障害がある人は「向社会的な情動が限られている」ことがあります。向社会的な情動が限られているとは、以下のような症状を指し、これらの症状のうち2つ以上を過去12ヶ月の中で発症していることが必要です。・後悔または罪責感の欠如:何か間違ったことをしたときに悪かったまたは罪責感を感じない(逮捕されたり、または刑罰に直面した場合だけ後悔することを除く)。自分の行為の否定的な結果に関する心配を全般的に欠いている。例えば誰かを傷つけた後で後悔しないし、規則を破った結果を気にしない。・冷淡-共感の欠如:他者の感情を無視し配慮することがない。その人は冷淡で無関心な人とされる。自分の行為が他者に相当な害を与えるような時でも、その人は他者に対してよりも自分自身に与える効果をより心配しているようである。・自分の振る舞いを気にしない:学校、仕事、その他の重要な活動でまずい、問題のある振る舞いを心配しない。期待されていることが明らかなときでもうまくやるのに必要な努力をすることがなく、典型的には自分のまずい振る舞いについて他者を非難する。・感情の浅薄さまたは欠如:浅薄で不誠実な表面的な方法(例:示される情動とは相反する行為、情動をすばやく入れたり、切ったり切り替えることができる)以外では、他者に気持ちを表現したり情動を示さないか、情動の表現は利益のために用いられる(例:他者を操ったり威嚇するために情動が表現される)。出典:日本精神神経学会/監修『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)これらの向社会的な情動が限られているかどうか診断する場合には、本人と長期間関わりがある親・教師・友人などからの報告も必要になります。「素行障害」とはDSM-5で主に用いられる疾患名です。(本コラムはこれに照らし合わせ記述しています。)これに対し、ICD-10では主に「行為障害」という疾患名が用いられていますが、診断基準や原因などに大きな差はありません。しかしICD-10は反抗挑戦性障害を含める4つの疾患を行為障害の下位分類として定めている点が、DSM-5とは大きく異なっていると言えます。以下がICD-10の行為障害に含まれる下位分類の疾患です。1. 家庭限局性行為障害:家庭限局性行為障害とは家族が精神的にまいってしまうほどの、激しい家庭内暴力をおこしてしまう疾患です。この暴力的な行動は家庭内だけでみられ、学校生活や友人間では問題なくうまくやっていくことができることも特徴です。しかし、これらの家庭内暴力は統合失調症や強迫性障害、家庭関係がよくないことでおこる場合もあるため、見きわめることが重要です。2. 個人行動型行為障害:個人行動型行為障害とは、行為障害の症状を一人で行うことで診断される疾患です。つまり親しい友人がおらず、グループに所属しないことが条件であるといえます。3. 集団行動型行為障害:集団行動型行為障害は行為障害の症状を満たしているにもかかわらず、人間関係に問題を抱えておらず、友人がいることが特徴の疾患です。4. 反抗挑戦性障害:反抗挑戦性障害とは、親や教師など目上の人に対して拒絶的・反抗的な態度をとり、口論をしかけるなどの挑戦的な行動をおこしてしまう疾患です。反抗挑戦性障害は『DSM-5』では独立した疾患として扱われていますが、『ICD-10』では行為障害に含まれます。素行障害の合併症出典 : 素行障害の代表的な合併症として反抗挑戦性障害が挙げられますが、これは小児期発症型の素行障害をもつ子どもによくみられます。反抗挑戦性障害が重度になるにつれて素行障害の症状もあらわれてきてしまうのです。反抗挑戦性障害とは、親や教師など目上の人に対して拒絶的・反抗的な態度をとり、口論をしかけるなどの挑戦的な行動をおこしてしまう疾患です。合併してしまう主な原因は、自分より偉い人との間に挑戦的な感情をもってトラブルを起こしてしまうという、共通の症状があることと言われています。しかし素行障害は反抗挑戦性障害に比べて、人や動物に向けた殴るなどの攻撃的な行動や、物の破壊、または盗みや詐欺など違反行為がみられるため、両者をしっかりと区別することが重要です。また、そのほかの代表的な合併症としてADHD(注意欠陥・多動性障害)があげられ、ADHDをかかえている人が”人間不信的行動”という二次障害として素行障害を発症することがあります。大阪市立大学の児童精神科外来を受診した7歳から14歳のADHD41例を対象にした研究では、37%に反抗挑戦性障害が、22%に素行障害が認められました(Takahashi et al.,2007)。とは、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状がみられる発達障害のことです。 年齢や発達に不釣り合いな行動が、社会的な活動や学業に支障をきたすことがあります。人間不信的行動とは、自尊心・自己肯定感が低下して「自分はダメな人間かも知れない」と思い、「そんな自分のことを誰も理解してくれない」という気持ちから、周囲の人を信じれなくなったときに起こしてしまう行動のことを指します。ADHDを発症している人は、自分自身がADHDであることを認識していないケースも多く、周りから理解が得られていない場合も多いです。そのため知らない間に人間不信になり、素行障害を発症しているということも少なくないのです。その他にも素行障害は・うつ病や双極性障害などが含まれる気分障害・いきなり攻撃性が爆発したように発症する間欠爆発症・ストレスに適応できないためにさまざまな心身症状が表れる適応障害の合併のリスクも高いと言われています。その理由は怒りっぽい、気分の波が激しいなどの症状が一致している傾向にあるからです。ADHDから始まり、”人間不信的行動”という二次障害として反抗挑戦性障害、素行障害、反社会的パーソナリティ障害へと展開していくことがあります。この一連の流れは破壊性行動障害(DBD)マーチと呼ばれ齋藤万比古らによって発表された概念です。しかしDBDマーチに対しては様々な考えがあり、まだ確立していない概念であると言えます。参考:青少年の心の障害と自立支援l 国立国際医療センター国府台病院齊藤万比古素行障害が気になった時の相談先出典 : 素行障害は反抗挑戦性障害やADHD、うつ病などの、様々な合併症と関わりあっている場合が多く、年をとるにつれて症状が複雑化しやすい傾向があります。それに加えて年齢が上がってからの治療は、素行障害がある子どもが治療に対して抵抗することがあるため早期に診察・治療することが推奨されています。年齢相応の社会のルールを守ることができない、もしくは明らかに他者の人権を侵害していると考えられる行為を繰り返ってしまう場合は以下の相談先に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:児童相談所は、すべての都道府県と政令指定都市に最低1つ以上設置されている児童福祉の専門機関です。主に、「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている、保健・精神保健に関する公的な窓口です。精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されています。相談については、予約制、健康保険の適応があるところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センター一覧l 厚生労働省■精神科:心の症状、心の病気を扱う科です。心の症状とは具体的に不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などのことです。心の症状に対して治療を行います。■心療内科:心と体、それだけでなく、その人をとりまく環境等も考慮して扱う科です。上記の心の症状だけでなく、ほてり、動悸などの身体的症状とその人の社会的背景、家庭環境なども考慮して治療を行います。精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、素行障害の場合は精神科を受診しても、心療内科を受診してもどちらでも大丈夫です。素行障害の治療法出典 : 素行障害の治療法として主に薬物療法、ペアレント・トレーニング、認知行動療法など様々な方法が挙げられます。なぜなら素行障害を発症する原因は一人ひとり異なる場合が多く、その原因に応じた治療法が選ばれるからです。そのため素行障害では一人ひとりに合った原因をしっかりと特定し、根本的な治療をすることが大切になっていきます。■薬物療法:薬物療法に関しては素行障害の原因に直接的な効果を発揮する薬はまだ開発されていないため、興奮や衝動性などの症状を抑える薬が処方されます。■ペアレントトレーニング:ペアレントレーニングとは、保護者の方々が子どもと良好な関わり方ができるように学ぶ保護者向けプログラムです。親は子どもの反抗的な行動の動機、行動のパターンを理解・分析する訓練をすることによって、問題行動に対して上手く対応できることを目指します。具体的には以下のような基本的な考え方を導入することがあります。・子どもの良い行動をほめる・望ましくない行動をした場合定めたルールに沿って一貫した対応をする・達成しやすい指示をし、積極的にほめる機会を作る・指示をできるだけスモールステップで目標を定める■ソーシャルスキルトレーニング(SST):素行障害のある年少者本人に対する支援策として実施されることが多いトレーニングです。ソーシャルスキルトレーニングとは、人が社会でほかの人と関わりながら生きていくために欠かせないスキルを身につける訓練のことを指します。具体的には遊び、勉強、スポーツなどを通してゆっくりと社会性を身につけていきます。しかし根本的な原因の解消が難しい場合、例えば子どもがおかれている環境の改善が困難な場合などは、上記の治療法だけではなく自宅を離れて治療にあたることも考えられます。まとめ出典 : 素行障害は成長に見合った社会のルールを守ることができず、他者の人権を侵害する行為を繰り返し、持続して行ってしまう疾患です。症状が悪化することによって最終的には退学や職場適応の問題、性感染症、身体的負傷など様々な問題を引き起こしてしまう恐れもあります。一方で、素行障害は原因を早期に解明し適切に対処することができれば治療・改善していくことができる疾患です。素行障害の症状が当てはまる場合は身近にいる専門家に相談することをおすすめします。
2016年12月27日発達障害を自覚していなかった私が、障害者雇用で働くことを決意する出典 : 私は幼少期に学習障害の診断を受けていましたが、その事実を自分が知ることはありませんでした。大人になって就職すると、作業の指示をうまく理解できない、上司の指示を誤解してしまうなどさまざまな壁にぶつかり、自分に発達障害があることがわかりました。しかし当時の私は医師の診断を受け入れず、「健常者」として生きることを選びました。その後、仕事はうまくいかず、私は解雇されてしまいます。私は旅を通して自分自身を見つめなおし、ようやく「障害者」として生きる決意を固めたのです。今回は、障害者雇用で働き始めた私が、過去を振り返りながら今思うことをお話したいと思います。自分自身が障害を受け入れた決意を話すと、両親の反応は…出典 : 私が両親に「障害者として生きる」という決意を伝えたとき、両親はやんわりと反対しました。無理もない話だとは思います。解雇されたとはいえ、今まで健常者だと思っていた自分の子どもが障害者になるのです。あまり表面に出していませんでしたが、混乱や嫌だと思う気持ちは少なからずあったようです。もちろん、障害特性を理解し、健常者枠で就職するという選択肢もありました。しかし私の場合は「4年近く健常者として働いたが、どう頑張っても成果を出せなかった」という紛れもない事実がありました。この事実の前に、議論の余地はありませんでした。また、発達障害についても改めて調べ直したところ、「単純作業が苦にならない」という、働く上で強みになる特性が私にもあることを知りました。そこで「発達障害を個性として受け入れ、その個性を最大限活かして働く」という方針を決めました。前職の仕事では作業中に細かな仕様変更が度々発生し混乱していたため、作業内容の変更が頻繁に起きないであろう事務職の仕事を希望する事にしました。障害者雇用での再出発、しかし現実は厳しく…出典 : 発達障害を受け入れて生きることを決めてからは、通院を再開し、ウイングル(2016年8月1日に「LITALICOワークス」に改名)の就労支援事業所や、あではで会という発達障害の当事者達が助け合う集まりへ通い、発達障害に対する理解を深めつつ再就職の活動に取り組み始めました。私がウイングルを選んだのは、模擬就労という実際の職場に似せた環境で職業訓練を受けることが出来たためです。実際、習うより慣れる方が向いていた私は順調にスキルアップをしていきました。私は訓練での評価も良かったので、4ヶ月もすれば就職先は決まるだろうと思っていました。しかし実際には、面接どころか書類選考すら通過せず4ヶ月が過ぎてしまいました。上手く行かないのはなぜだろうかと思っていたとき、新聞である記事を読みました。その記事には大手転職斡旋会社へ寄せられる障害者求人の内、9割以上が身体に障害のある方を対象にしたものだということが書かれていました。つまり多くの企業は、障害の種類を理由に私の雇用を断っている可能性があったのです。とても残念で悲しいことでしたが、憤ってどうにかなるわけではないので、焦らずに就労訓練で自分を鍛えつつチャンスを待ちました。その甲斐もあって、無事、一般企業の事務職へ再就職することが出来ました。ちなみに現在では、身体障害者以外を対象にした求人も増えてきているそうです。障害者雇用で働きはじめ、今は生き生きと暮らせている出典 : 再就職してから約3年が経過した今、前職とは違って楽しみながら働いています。入社当初は非正規雇用での採用でしたが、順調に成果を出して行き、やがて作業の1つを担当として任されました。さらに作業担当になってから数ヶ月後、私の担当作業は重要な作業として注目されるようになりました。一般社員・役職者を問わず数十名の方を率いて、作業の人頭指揮を執るという経験もしました。前職の頃では到底成し得なかったでしょう。しかし、自分の発達障害を知り、受け入れた後は、その特性を最大限活かせるように準備を整えて挑みました。その結果、十分な成果を出すことができました。今では正社員に昇格し、メンバーに作業指示を出す立場になりました。しかし、仕事上のコミュニケーションに関するトラブルは、前職のときほど問題にはならないものの、常に付きまとっています。その際は外部の支援者を頼っています。自身の障害を受け入れて約3年。いま、振り返って思うこと出典 : 私が障害者雇用で安定して働くことができている理由としては、●自分の障害特性を含めて自己分析を納得するまで行い、自分の強みを最大限発揮できる職種を選んだ●入社時に、障害特性上配慮が必要なことと、得意なことを上司に伝えた●出来ないと思ったことでも、「配慮や手助けがあれば自分で出来ないか」を考えたことが挙げられると思います。特に、ただ「出来ない」とだけ伝えてしまうと印象が良くないため、代わりに強みになることや、出来るようになる方法を考え伝えるようにしていました。ここで1つお断りしておきたいのは、”私の場合は”障害者枠で就職したほうが、良い結果が出せただけということです。障害のある人全員が、障害者枠で入社するのが最善とは限らないと思います。残念ながら障害者を受け入れる職場環境などが整っていない職場も依然として多くあります。そのため、障害を隠して就職するのも選択の1つなのかもしれません。ただ、障害の特性のためにどうしても苦手になってしまう仕事や不利になる部分について、会社から理解を得られるとは限りません。障害を隠すにしろ明かすにしろ、自身の障害特性を十分に把握して対策を考えておくことが必要でしょう。また、就職してから職場に馴染めるまでは、障害者の就労移行支援を行っている事業者など、外部の支援者が必要だと思います。少なくとも会社と重要な交渉をするとき、1人ではどうしても不利になるということを覚えておいて下さい。「発達障害」という障害の困難さ。だからこそ、「自分を知る」努力を続けたい出典 : 一般的に「障害」というと、ハンデとなる部分が目に見えたり、症状をある程度明確に言葉で表現出来るものが多いと思います。しかし、発達障害はパッと見で分かることは無く、症状も多種多様な組合せがあり、診断名と明確に紐付けることはできません。私はこのことが、「発達障害」という障害の最大のハンデだと思っています。例えば、私の場合「できない」と思っていたことでも、条件がそろえば出来ることもあれば、その逆もあります。それを見た上司は、私に何ができて何ができないのか、その判断を誤解してしまうことがあるのです。いったん納得出来るまで自己分析を行った私ですが、自分を知ることに終わりは無いと感じています。何故なら生活環境や人間関係が変化することで、今までは無かった問題が表れるためです。また、自分を知ることで事前に周囲とのトラブルを避けられるだけでなく、自分の強みが見つかることもあります。後から来る人たちを思うことで、先へと進んでいける出典 : 近年ようやく発達障害は世間に認知されつつありますが、私達が歩む道は未だに困難なものです。例えば2016年7月26日に発生した相模原の殺傷事件。この事件に対する一部の人々の反応から「障害への偏見」という氷山の一角を改めて感じました。ですが研究者やLITALICOを始めとした民間の支援者、そして発達障害の当事者、先を行く皆さんは道を少しずつ踏み固めて整備し、後から来る者の手助けをしてくれています。正直、私は書くことが大の苦手です。しかし、私が伝えることで少しでも誰かの助けになり、少しずつ社会が良い方向へ変わっていく事を願って、今後も書き続けて行きたいと思います。障害特性とも相まって遅筆な私ですが、これからもまた困難を乗り越えたらここで発信したいと思います。これで今回のお話は終わりです。最後までお付き合い下さりありがとうございます。みなさんの先行きが明るいことを願っております。
2016年12月22日軽度知的障害とは?出典 : 軽度知的障害とは、発達期までに生じた知的機能の障害により、知的発達が実年齢よりも低い知能指数(IQ)50~69の水準にとどまり、適応能力は正常またはやや遅れがある状態を指します。ことばや抽象的な内容の理解に遅れがみられることがありますが、身の回りのことはほとんど一人で行うことができます。学業面では遅れを感じることもありますが、年齢を重ねながら考える力を身につけられます。よって幼少期には気づかれにくく、小学校高学年~中学生までの間に軽度知的障害と分かる場合もあります。またストレスなどによる二次障害や自閉症スペクトラム障害などの合併症を伴っていることもあり、二次障害や合併症の方が目立って表出しているケースもあります。なお発達期とはおおむね18歳までを指し、それ以降に事故や病気などで知的機能の低下が発症しても、知的障害および軽度知的障害とは言いません。現在の精神医学書で使われている知的障害の定義は、アメリカ精神遅滞協会が提唱した定義を参考にしていることが多くなっています。以下はアメリカ精神遅滞協会が定めた定義です。知的障害は、知的機能および適応行動(概念的、社会的および実用的な定期追うスキルで表される)の双方の明らかな制約によって特徴づけられる能力障害である。この能力障害は、18歳までに生じる (AAMR,2002)知的障害は、染色体異常を原因とするダウン症のように出生後にすぐ診断できる疾病に合併する場合もあれば、自閉症のように生後すぐには診断できない障害に合併することもあります。出典:ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準 新訂版 (2008)|中根 允文知能指数とは人の知能の基準を数値化したものです。ここでいう知能(IQ)とは、いわゆる学力ではなく、目的に沿って合理的に考え、効率的に環境を処理する総合的な能力のことをいいます。IQ90~109が平均の知能指数であり、そこからどのくらい高いか・低いかと考えます。軽度知的障害のある人は、概ね知能指数(IQ)が50~69にとどまると考えられています。適応能力とは身辺の自立(食事・着替え・排泄など)や家事、社会的な対人関係の構築、読み書き・コミュニケーションなど日常生活や社会生活上における全般的な能力のことを指します。能力の測定は、自分の強み・弱みを理解するために行います。出典:主な心理・発達検査の種類と特徴・WISC-Ⅲの概要出典:ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準 新訂版 (2008)|中根 允文Upload By 発達障害のキホンこの図は知的障害の程度・区分を示した図です。横軸に「日常生活能力水準」、縦軸に「知能指数(IQ)」の程度を表しています。日常生活能力水準がaに近づくほど自立した生活が難しく、dに近づくほど自立した生活ができることを表します。同様にⅠに近づくほどIQが低く、IVに近づくほどIQが高くなります。知的機能が低かったとしても日常生活への適応能力が高ければ、ひとつ軽度の程度で判断されることがあります。IQ36~50の方でも生活能力が高ければ軽度知的障害に含まれます。一方で、IQ51~70の方でも日常生活への適応能力が低い場合は、中度知的障害に含まれる場合もあるということです。このように、知的障害は知的機能検査だけで判断されるわけではなく、知的機能と適応機能の2つが評価された上で診断が下されます。またこの程度を分類する方式は、療育手帳を取得する際にも用いられています。療育手帳については8章で詳しく説明していきます。軽度知的障害の原因って?出典 : 知的障害の原因は一つではなく、原因不明の知的障害の人も多いとされています。原因解明の研究が進んでいますが、現段階では内的原因と外的原因に分類することができるといわれています。内的原因とは遺伝子や染色体の異常など、子どもが先天的にもつ原因のことをいいます。病気や外傷など脳障害をきたす疾患で、これらの合併症として知的障害が一緒に起きることを病理的要因と呼びます。この中にはてんかんや脳性まひなどのほか、ダウン症などの染色体異常による疾病も含まれます。軽度知的障害および知的障害の原因の約8割が出生前に発生していることが分かっており、以下のような疾病があげられます。・ダウン症・多因子性疾患・てんかん・脳性まひなどまた、中には特に疾病名などがなくても内的原因によって知能水準が知的障害の範囲内にあるといった場合もあり、生理的要因と呼んで区別されます。外的原因とは出生前後に起こった事故や養育環境などによる外的な要因が、原因となることをいいます。具体的には出生前に母体を通じて感染症や薬物・アルコールなどの大量摂取などにより、子どもに影響を及ぼす場合があります。中には軽度知的障害だけでなく、発育の遅れや中枢神経に何らかの異常をきたす恐れもあります。また出産時のトラブルでの頭蓋内出血、出生後の感染症への感染、交通事故などによって意識を失うほどの頭部外傷が原因になることもあります。このことを環境要因と呼びます。・感染症・出産時、出産後に起こった頭部の外傷・出産時のトラブルなど出典:知的障害のことがよくわかる本軽度知的障害の特徴の現れ方出典 : 軽度知的障害は知的機能と適応能力にやや遅れがあるものの、身の回りのこと(食事・洗面・着衣・排泄など)は自分で行うことができます。空間・時間・数量の認識に特徴はありますが、自ら学び取る力もあり、経験を重ねることで得られる知識や学びは広がります。軽度知的障害の方は空間・時間・数量の認識にどのような特徴があるのでしょうか。順番に説明していきます。◆空間の認識:「今いる場所」「何度か行った場所」「行ったことがない場所」と、自分と空間の関係を分類した場合、軽度知的障害の方は、自分が行ったことのない場所でも、その場所が存在していることを理解することできます。知的障害があると、目に見えないものや、抽象的な概念を理解することは苦手と言われていますが、軽度知的障害の場合はある程度はその概念を理解することもできるといえるでしょう。◆時間の認識:時計を見て「ご飯を食べる時間」「寝る時間」「学校へ行く時間」などと、時間帯とやるべきことを関連づけて理解できます。また過去や未来という概念も理解できます。一方で、時間の長さを計ったり、何時間後は何時になるという計算などになると、とまどうことがあります。しかし、トレーニングを積むことである程度は解消できるようになります。◆数量の認識:「100円玉2枚で飲み物を買うことができる」というように、自分の経験と結びつけて理解することができます。おつりがいくらになるかなど、細かい計算を瞬時に行うことは難しいですが、足し算や引き算などのトレーニングを積むことによってある程度のスピードでできるようになります。軽度知的障害がある子どもは、自分が経験してきたことを元に物事を理解していきます。認識できる世界を広げていくためには、さまざまな経験をすることが重要です。知的障害がある子どもは言葉の遅れ、物事を記憶することが苦手といわれています。言葉の遅れに関しては、「言葉」という概念を認識するまでに時間がかかるために生じます。言葉を認識するためには、経験の一つ一つを「言葉」として理解できるように工夫するとよいといわれています。例えば料理を一緒にしていたら「料理をする」「キャベツをとる」「野菜を切る」「煮込む」など、実際に経験しながら、具体的な物や行動の名前を覚えていきます。また物事を記憶しておくことも苦手です。記憶には「短期記憶」と「長期記憶」が存在しますが、短気記憶を繰り返し思い出すことにより、長期記憶として蓄えられていくと言われています。軽度知的障害があっても、身のまわりのことは年齢を追うごとに問題なく発達します。しかし、上に述べたような空間や時間の認識に特徴があるため、周りからは学習面やコミュニケーション面で遅れがあると感じられるようになります。よって経験の範囲を超えた知的な要求が増える小学校高学年~中学生の頃に障害があることに気づくことが多い傾向があります。出典:知的障害のことがよくわかる本軽度知的障害の診断基準と検査方法出典 : 軽度知的障害の確定診断は臨床診断と各種検査の結果によって総合的に診断されます。医療機関を受診した際の臨床的な診断として、生育歴と行動観察について聞き取りを行います。■生育歴産まれてから今までの社会性や対人コミュニケーション、言葉の発達、幼稚園・保育園での様子や1歳半健診・3歳児健診での様子などをヒアリングします。発達面で知的障害の疑いがありそうか、発達にどんな特性がありそうかなどを見立てていきます。■行動観察遊びの空間で子どもを遊ばせ、それを注意深く観察することと保護者の方へのインタビューに基づいて行われます。知能検査では主に田中ビネー知能検査とウェクスラー式知能検査によってIQを計測します。また2歳未満の子どもの場合や医師から必要と認められた場合は新版K式発達検査などの発達検査を受けることもあります。適応能力の検査ではvineland-II(ヴァインランド)がよく使われています。■田中ビネー知能検査 V(ファイブ)2歳から成人まで受けることができます。就学する5~6歳の年齢にフォーカスをあて、特別な配慮が必要かどうかを判断するための「就学児版田中ビネー知能検査V(ファイブ)」という検査もあります。子どもが興味を持てるように、検査に使われる道具が工夫されています。日常生活において必要な知能と、学習する上において必要な知能の2つを測定します。■ウェクスラー式知能検査ウェクスラー式知能検査は、年齢ごとに3つのテストに分類されます。・幼児(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月)→WPPSI・学生児(5歳から16歳11ヶ月)→WISC・成人(16歳〜)→WAISIQが求められるだけでなく、脳の発達具合を下位検査を用いて導出し、総合的に判断することができます。■新版K式発達検査年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。検査者は検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。■vineland-II(全年齢)0歳から92歳の幅広い年齢帯で、同年齢の一般の人の適応行動をもとに、発達障害や知的障害、あるいは精神障害の人たちの適応行動の水準を客観的に数値化する検査です。対象者にどんな特性があるのかを評価してくれます。また教育や福祉分野の個別支援計画の立案はVinelandの評価に基づいて行われることがあります。その他にも適応能力の検査として、以下の検査がよく使われています。・ASA旭出式社会適応スキル(幼児〜高)・S-M社会生活能力検査(乳幼児〜中学生)軽度知的障害の疑いを感じたら?出典 : 自分の子どもには軽度知的障害があるかもしれない、と疑問を持った場合、いきなり専門医を自分で探すのは難しいですよね。まずはお住まいの地域にある身近な相談機関や窓口に行ってみましょう。子どもか大人かによって、相談先が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業生活支援センター・相談支援事業所など先に挙げたような知能検査は、児童相談所などで無料で受けられる場合もありますし、相談機関では、知的障害のことだけでなく子どもの発達全般について相談することも可能です。自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談にものってくれることがあります。軽度知的障害ならではの戸惑いや合併症などの悩みって?出典 : ここでは、軽度知的障害ならではの戸惑いや合併症などについて考えていきます。軽度知的障害は幼少期に気づかれにくく、概ね小学校高学年~中学生の時期に気づかれることが多いとされています。また障害の症状が基となって様々なトラブルを誘発し、ストレスによる二次障害や合併症を起こすことがあります。■軽度知的障害を受け入れることへの本人・保護者の戸惑い思春期に発覚することが多い障害であるがゆえに、本人や保護者が障害を受け入れることに戸惑いを感じることがあります。勉強についていけなかったり、対人関係が上手くいかなかったりなど、本人が「どうしてだろう?」と悩み、場合によっては相談もできずに自尊感情が低下することがあります。また、保護者も子どもに対しての接し方や周囲の理解や環境のつくり方、また子どもの将来のことなどの不安要素によって戸惑いを感じることがあります。息子の経歴を簡単に記載します。小学校、中学校、高校ではただただ勉強が出来ない程度の子供と思っていましたが高校卒業時に就職活動、卒業試験、普通免許の取得等の活動をしていましたが思うようにいかずに精神的におかしくなり、引きこもるようになりました。また、持病にてんかんをもっており、発作の回数が増えて主治医に相談したところ、専門の病院を紹介され、診察を受けたところ、18才で初めて知的障害であることがわかりました。■周囲への理解をどうやって得ていく?思春期に障害が明らかになるケースでは、以前から症状がありながらも診断を受けていなかったケースと、はじめて症状が明らかになってきたケースがあります。前者の場合は、症状がある程度みられていたため家族・親戚や学校なども、それぞれで既に本人に合わせた対応をしていることもあります。改めて話し合い、接し方や合理的配慮を考えていく必要があります。一方で後者のケースの場合は、一から周囲への理解を仰がなければならないため、「何からどうすればいいのか分からない」など、戸惑うことがあります。■二次障害や合併症が原因で問題行動が起きているとき軽度知的障害は、その特性が基となって周囲とのコミュニケーションが上手くいかないことや、不適合な環境やストレスなどが原因となって問題行動を起こしたり、行動障害や反抗挑戦性障害などの二次障害が引き起こされる可能性があります。問題行動とは周りの人を困惑させる行為のことをいいます。例えば自傷行為、徘徊、他人への攻撃、喧嘩を仕掛ける、あるいは不登校やひきこもりなどがあります。場合によっては軽度知的障害の症状よりも二次障害の症状が目立って表出する場合もあるため、問題行動の根幹原因を見極め、調整や変更などを行うことが求められます。軽度知的障害との向き合い方・学校等での配慮のポイント出典 : ■軽度知的障害との向き合い方保護者をはじめ本人にとっても、軽度知的障害を受け入れるには時間が必要です。無理に急いで受け入れようと焦っても心理的な負担になりかねません。一般的にゆっくり段階を追って障害を受容していくと言われています。最初のうちはショックや葛藤が生じることがありますが、本人や周囲の人が、それぞれのペースで身体的・社会的・心理的に障害を受け入れていくまで、焦らず時間をかけて関わり合うことが大切です。困った時は発達障害者支援センターや専門医など、専門家に頼りながら落ち着いた対応を心がけましょう。■合理的配慮という観点合理的配慮とは障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことです。2016年4月1日に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(通称、「障害者差別解消法」)により、行政機関や事業者には、障害のある人に対する合理的配慮を可能な限り提供することが求められるようになりました。本人を取り巻く周辺の人が合理的配慮を考える上での重要なポイントは、「その人が具体的にいつ、どんな場面で困っているのか」「その困りごとを解消するための適切な配慮は何か」の2点です。これらを踏まえながら学校や職場などの合理的配慮を検討・実施することが大切です。合理的配慮に関しては次のリンクを参考にしてみてください。■問題行動の背後にある原因の探り、解決を目指していく問題行動をとる子どもを「困った子だ」といって疎んじたり叱ったりするのではなく、その子ども自身が何に「困っている子」なのか、その子が問題行動をとらざるを得ない原因は何なのかを理解しようとすることが大切です。問題行動をとる子ども自身、その行動がよくない行動だということ理解している場合も少なくありません。それでもなお、数少ない自己主張の方法のひとつとしてその行動をとっていたり、心理的・身体的なストレスからその行動に移ってしまう場合があるのです。カウンセリングを通して子どもをケアしたり、学校・家庭の環境をもう一度見直すことなど、解決に向けた方法を探っていきましょう。軽度知的障害でも療育手帳は取得できるの?申請方法もご紹介します出典 : 療育手帳とは知的障害者に発行される障害者手帳で、知的障害のある方が一貫した療育・援護を受けられるよう、さまざまな制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。・おおむね18歳以前に知的機能障害が発症し、それが持続している。・標準化された知的検査によって測定された知能指数(IQ)が75以下。(70以下に規定している自治体もある)・日常生活に支障が生じているため、医療、福祉、教育、職業面で特別の援助を必要とする。上記の目安に従い、18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所において知的障害と判定された方に対して交付されます。療育手帳制度の概要(厚生労働省)障害の程度などによって、交付される療育手帳の区分がわかれ、受けられるサービスの適用範囲が違ってきます。各自治体が判定基準に基づいて、知能検査による知能指数(IQ)と日常生活能力などから、知的障害の程度を総合的に判断し、療育手帳の区分を決定しています。軽度・中度・重度・最重度といったように知的障害でも4つの程度に分けられます。その分け方に関しては1章で図を用いながら紹介しました。療育手帳の区分は基本的に重度「A」と重度以外の中・軽度「B」の2つの区分にわけられますが、自治体によって区分の分け方もより細かく区分している場合などがあり、さまざまです。より細かい区分は自治体によって、また本人の年齢によって変わりますが、おおよそ以下の基準を目安に判定されています。ただし、これらは判定基準の一部分について例示したものであり、最終的には自治体の独自の基準によって区分が決められます。■重度(A)・最重度・重度■軽度(B)・中度・軽度(B/B2/4度など)療育手帳の区分について(自治体別一覧)/東京大学大学院経済学研究科READ療育手帳を申請に関する細かい点はお住まいの自治体によって異なりますので、申請される際には福祉担当窓口にお問い合わせください。■申請に必要な書類・療育手帳交付申請書:自治体の福祉事務所・福祉担当窓口、またはPDFのダウンロードや郵送での取り寄せができる場合もあります。・写真:サイズなど規定が決まっている場合があるので確認しましょう。その場で撮影してくれる自治体もあるようです。・印鑑・その他添付書類:通知表、成績証明書、医師による診断書などが必要な自治体もあります。詳しい申請の流れは以下の記事をご参照ください。まとめ出典 : 軽度知的障害がある方は日常生活を送る上では支障はなく、学校での授業など知的能力を問われる場合にならないと分からないことがあります。ですので、多くの方は小学校高学年~中学生の時に症状が明らかになります。学校の勉強に追いつけない、友達とのコミュニケーションが上手くいかない、友達関係も上手くいかないなど、年齢を追うごとに自然と困難な場面に出会うことが多くなるのも一種の特徴です。学校で受けた、そういったストレスが家庭で爆発してしまうケースもあります。また、その逆のケースもありえることです。軽度知的障害があっても、本人の認知特性に合った学習機会をつくれば、言葉や計算の力を伸ばしていくことができます。具体的な経験を積める機会を増やしたり、時間や空間などの概念は本人の経験に結びつけて説明をするなど、自信を持って理解や行動ができるような支援を行なっていきましょう。
2016年12月15日発達障害で働いている人はどのくらいいる?出典 : 発達障害とは、先天的な脳機能障害によって、発達に何らかの遅れや偏りなどの症状が、通常低年齢において発現する障害です。日本における発達障害の定義は平成16年に制定された発達障害者支援法によって定められており、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の基準に準拠しています。発達障害者支援法における発達障害の定義は以下になります。この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。そもそも発達障害のある大人が日本にどのくらいいるか、はっきりした統計的なデータはありません。文部科学省の2012年の調査によると、通常学級に在籍する児童・生徒の中で発達障害の特徴を示す子どもは全体の約6.5%、つまり約15人に1人の割合でという結果になりました。これは、診断を受けている人の数ではありませんが、障害の傾向のある人まで含めると、社会の中にもかなりの数の発達障害のある人がいることを示唆しています。発達障害がある人の中には成人して特性を生かした職業に就いたり、能力にあう職業を選び、雇用されている人もたくさんいます。2011年の障害者職業総合センターの調査によると、- 障害者を積極的に雇用している特例子会社105社のを対象にしたアンケートで、特例子会社で働く療育手帳(知的障害のある方が取得する手帳)所有者が1798人、精神障害者保健福祉手帳を所有している人が198人いて、両者の中で発達障害があると把握されている人は203人という報告があります。ですが、発達障害のある人の中には療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を取得していない人や、障害を開示しないで働いている発達障害の人が多いと考えられます。そのため、実際にはより多くの発達障害のある方が、様々な仕事に携わり、様々な職場で働いていると言えるでしょう。出典:「 発達障害者の企業における就労・定着支援の現状と課題に関する調査研究」(2011年)|障害者職業総合センターHP大人の発達障害、いつ診断された?きっかけは?Upload By 発達障害のキホン発達障害は発達期(~18歳)に発症するとされていますが、障害に気づくタイミングはそれぞれです。子どものころから診断結果が出ている人や、大人になってから何かをきっかけに診察を受け、気づいたという人もいます。母は私が小さい時から「おかしい」と思っていました。小学1年生の時、担任に「学習障害」を相談しましたが「違う」と言われ、中学でも担任に相談しましたが違うと言われました。私自身も、小学生の時点で自分の「変さ」には気づいていました。辛かったです。でも、「発達障害」という言葉自体なく診断されませんでした。近年、発達障害が広く知られるようになってきましたが、かつてはあまり理解を得られず、見過ごされていた人も多いようです。大人になって発達障害に気づくきっかけになるのは、例えば仕事上のミスや、社会人として生活する上で人間関係がうまく築けないなどの悩みなどです。これらのストレスからうつ病などの二次障害を発症し、精神科などを受診して発達障害に気づく人も少なくありません。ですが、大人になってからでも専門家の支援を受けることで自分の特性に気づけたり、対処法を学ぶことは十分にできます。もちろん、日常で問題や障害を感じずに社会に適応している発達障害の人もいますし、現在発達障害の根本的な治療法もないため、必ずしも診断を受けなければいけないわけではありません。私は13年前にうつ病と診断され、6年後に双極性障害と再診断されました。現在は双極性障害2型とパーソナリティー障害が病名になっています。解離性障害で入院していた時期もあり、過去10人以上の医師に診てもらいましたが誰1人私の「発達障害の可能性」を指摘しませんでした。今までのどの診断名も自分にしっくり合わず間にあわせ的な違和感を感じていた私が自ら調べた結果、「根底にあるのは発達障害で双極性障害その他はその二次障害である」という結論にたどり着き、医師にそれを相談したところ診断に「発達障害疑いあり」が加わりました。このように大人になってから新たに発達障害だと医師から診断されることもあります。大人になってからでも、なんらかの困りごとに直面したり、疑いを持った場合はまず専門機関に相談しましょう。発達障害者支援センター・一覧検診で子供の発達障害の疑いを指摘されたことをきっかけに、自分もWISC検査と診察を受け、自閉症スペクトラムグレーゾーンと診断されました。お子さんの発達障害をきっかけに、自分の障害に気付いた方もいるようです。大人の発達障害、特性に合った仕事・難しい仕事は?出典 : 注意欠陥/多動性障害(ADHD) の人の特徴は、集中力が長時間保てなかったり、落ち着きがない、物忘れをしがちといった行動が目立つため、周囲からやる気がないというような誤解を受けがちです。仕事上では、不注意から同じミスを何度もしてしまうこともあります。また「臨機応変に対応を」と言われ、本人は工夫したつもりが、やりすぎてしまい相手の意図とそぐわないことをしてしまうこともあるかもしれません。しかし、一方ではアイデア力、行動力や独特の感性を発揮し、営業職や企画・開発などで評価され活躍している人もいます。ADHDの人全員に当てはまるわけではありませんが、一般的にミスが絶対に許されないような作業などは不向きともいえます。一方で、ADHDのある人は以下のような強みがある人も多いのです。・興味のあることに対して情熱を持ち、高い集中力を発揮する・アイデアが豊富で、固定概念にとらわれず自由に考えられる・行動力がある・素晴らしいひらめきをすることができる・独特の感性をもち、考えることができるなどどちらかというと、芸術家・音楽家やデザイナー、CGアニメーター、ゲームソフトやコンピューターソフトの製作者、研究・開発者などクリエイティブな仕事が向いています。また行動力を活かしセールスマン・営業職や起業家・企業家として活躍する人もいます。自分の特性に合った職業に就くことができれば、注意欠陥/多動性障害(ADHD) の人も強みを活かして活躍しやすくなります。時間や仕事のリズムにも自由度が高く、うっかりミスも取り返しがつくような、新しいアイデアや変化を問う仕事が向いています。自閉症やアスペルガー症候群などを含む、広汎性発達障害(PDD)・自閉症スペクトラム(ASD)の人は、相手の気持ちや場の空気を読んだり、コミニュケーションをとるのが苦手ということが多いです。また、イレギュラーなことやはじめての経験にスムーズに対応するのが難しいこともあります。これらはあくまで傾向にしかすぎず、全ての広汎性発達障害の人がこの特徴に当てはまるわけではありません。併存する知的障害の重さや一人一人の特性にもよりますが、対人関係が苦手な人は接客業はストレスが多いでしょう。現場で臨機応変な対応が求められる職業は向いていないかもしれません。広汎性発達障害の人の中には、こだわりを持ち、パターン化されたものを好む人が傾向としては多いそうです。そのため、同じ作業を繰り返すルーティンワークで強みを発揮する場合があります。一度仕事のやり方を覚えると効率よくこなす人も多く、職場で高評価を受ける人も多いのです。また、自分にしかわからないような強いこだわりを持っているので、研究や創作などでは群を抜いた能力を発揮することも多いのです。具体的にはデザイン関係の仕事やプログラマー、コンピュータ関連の仕事で力が発揮できると思われます。集中力があり、普通の人では集中力をきらしてしまうような細かい仕事もコツコツと続けることができ、物事を深く追求したりルールに基づいて整理・分析したりするエンジニアや研究者といった仕事、校正者や職人などの特殊技能を必要とする仕事などに向いています。学習障害は、能力の凸凹や特性の偏りが多く、苦手なことにかなり個人差がある障害です。そのため、向いている仕事、向いていない仕事も人によって様々であると言えます。本人の特性を理解し、得意な分野を活かせる仕事につけることが理想ですね。向いていない仕事は一概には言えませんが、苦手な業務が多い仕事内容だと、困難な場面も増え、ストレスを感じることも多くなるかもしれません。一方、別の手段で代替できたり、職場の理解や協力があれば乗り越えられる可能性も大いにあります。たとえば、算数障害(ディスカリキュリア)のある人の場合、日々、多くの計算が業務に必要な仕事は苦手かもしれません。ですが、計算機で解決できる場合もあります。同じ小売業でも、暗算が苦手な場合、お釣りを計算しなければいけないお店の会計業務は向いていないと言えますが、バーコードを読み取るだけのレジであれば、問題ないこともあるでしょう。また、書字障害のある人は、文字を書く業務が苦手かもしれませんが、パソコンでタイプしてプリントすればよいこともあります。読字障害のある人も、音声読み上げソフトを使用したり、録音することで困難が解消できることもあります。苦手な分野を避けることは働き続ける上で大切ですが、テクノロジーや手段を替え工夫することでうまくいくこともあるので、「この仕事は無理」と決めつけてしまう前に検討するのがよいでしょう。実際に、様々な障害特性を乗り越えて作家、映画監督、発明家、俳優など様々な職業で活躍している人もいます。障害特性と向き合いつつも、自分が希望する仕事に目を向ける、という進路も選択肢の一つかもしれません。人のストーリー|発達ナビ大人の発達障害、仕事の探し方は?Upload By 発達障害のキホン発達障害に関する就労支援は、現在、よりよい対応体制を整えている状態です。特別支援学校などでは、卒業後に就職できる企業の紹介もあります。通常学級でも高校、大学ともに進路指導の先生に相談することも可能です。まず、最寄りのハローワークでの相談をおすすめします。障害者雇用の窓口もあるので、そこでご自身の発達障害の特性について伝え、仕事を探していること、仕事をする上で不安に感じていることなどの相談をすることができます。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。障害者向けの支援を希望しない場合でも、ハローワークできめ細やかな相談・支援を実施してくれます。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べてもらえるところも紹介してもらえます。就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職をすることもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で、就労移行支援事業所が各都道府県や政令都市の認可を受けて民間が運営しています。この就労移行支援は手帳を取得していなくても医師の診断書や意見書など、支援の必要性を示す情報があれば利用することができます。まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。ハローワークでは、発達障害のある人が就職された場合、その事業主に対して助成を行う「発達障害者雇用開発助成金」という制度を設けています。他にも「障害者トライアル雇用奨励金」という短期間の施行雇用を行い、仕事に慣れることで実際の雇用につなげる制度もあります。詳しい情報は以下のリンクを確認してください。実際に働いてみると仕事が想像していた仕事内容と大きく異なった、と離職を希望される場合も少なくありません。仕事を探す際には、似たような職種で職務経験を積んでいく方法や、希望の会社でまず一定期間働くことが可能なのか、聞いてみる方法もいいでしょう。より自分の得意・不得意を理解し、どの仕事ならこなせるか、やりがいを持てるかどうかを把握するヒントになるかもしれません。発達障害者支援センターでも「就労支援」を行っています。本人や家族からのあらゆる相談ができ、必要に応じた施設や医療機関の紹介もしてくれます。就労に関しては特性や障害の状況に適正な就労先を紹介してくれたり、雇用後にも個人の必要に応じて支援を行ってくれます。発達障害者支援法第3章第14条に基づき、都道府県・指定都市に設置されています。就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム発達障害者支援センター・一覧参考:障害者就業・生活支援センター療育手帳や精神障害者福祉手帳を取得している場合はいわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる・障害者職場適応訓練を受けられるなど、就職への支援が受けられます。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからといって必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。障害者雇用対策|厚生労働省障害者雇用対策|厚生労働省大人の発達障害、会社や同僚へ開示・報告はした方がいいの?自身に発達障害があることを職場に伝えた方が良いかどうか、迷う方が多いのではないでしょうか?会社へ障害があるということを報告するかどうかは、一人ひとりの状況によるので一概には決められません。診断のみでは雇用上「障害」としては認められない現状があることも考慮したほうがよいでしょう。そのため診断とともに障害者手帳を取得しているかどうかでその意味合いが変わってくる場合もあります。一般就労をしている場合、会社に報告するか否かは、障害に理解のある会社であるかどうか、報告することで仕事をしやすくなるかなどを考慮して決めた方が良いと言われています。会社に報告する人が多くなってきていることは事実ですが、周りや会社には報告しないことを選択している人も少なくありません。一方、報告することによって周りからの理解が得られ、離職率が低下するということも考えられます。報告した際のメリットとしては、サポートを受けやすくなったり、フォローしてもらえるようになるということがまず挙げられます。また業務の相談もしやすくなると思いますし、以前より職場環境を快適に感じることにつながるかもしれません。2016年4月に障害者差別解消法が施行され、不当な差別的取扱いを行ってはいけないこと、企業や行政はできる範囲で合理的配慮を行う努力義務があることが定められました。このため、職場でも合理的配慮をお願いしやすくなりました。しかし中には偏見を持ったり、あまり障害に対して理解をしてくれない人がいないとは限りません。発達障害について詳しい知識のある人は少ないので、仕事上での困難や起こりうる問題と、要望などを伝えるようにしましょう。また、障害があるという報告をする場合は人を選んで報告し、仕事のどういうところで具体的にフォローが必要かを伝えるのが良いと思います。デリケートな問題ですので、迷ったら自分だけで決めずに、発達障害者支援センターなどの専門機関に相談することをおすすめします。一方で、発達障害を開示・報告した場合でも、職場や周囲に偏見が無理解があれば、職場で差別・虐待を受けてしまう可能性もゼロではありません。こうした深刻なケースでは、本人から周りに助けを求めるのが難しい場合もあるので、周囲の人が虐待に気づいた場合、各市町村の障害者虐待防止センターなどの専門機関に虐待の存在を知らせましょう。本人からの申告も可能性です。またこの虐待は就業場に限らず家庭内の虐待も含みます。障害者虐待防止センターに虐待を相談すると、支援・指導を受けることができ、問題の糸口を探す手伝いをしてくれます。強制的に仕事や家族から隔離されたりすることはありませんので、安心して相談することができます。発達障害の仕事での困りごと・よくあるミスと対処法出典 : 発達障害のある人の中には、社会的な「暗黙のルール」というものに気づきにくいという特性も持っている方も多く、周りの人が忙しくしている時や、助けを必要としている状況に気づかず、手伝うことができない場合があります。また決められたこと以外のイレギュラーなことが苦手な特性のある場合、指示をされないと動かない・自分の仕事が終わったら他のことは何もしようとしない、などと周りから見られてしまうことがあります。【対処方法】具体的な指示があると動きやすいという特性を伝え、「具体的に今時点で何を手伝ってほしいのか」指示してもらうようにします。その仕事を終えたら、次の仕事をまた具体的に指示してもらうようにします。複数の仕事を同時に並行して行うことや、脳と体の複数部を同時に動かすことが苦手なこともあります。一つの業務の間には、わずかな時間でも休憩を挟み、終わった仕事に対して評価をしてから、次の仕事をするといった工夫をするとよいでしょう。時間の管理が苦手で、遅刻しがだったり、仕事の手順が就労時間で計画できない場合があります。スケジュールの調節、優先順位だけでなく、仕事に対して熱心に取り組んではいても、こだわりが強すぎて自分の納得いくまで作業を終わらせることができずに、納期が守れないといったこともあります。【対処方法】仕事の完成度が高いことも重要だが、納期を守ることも大切だということを理解しましょう。「納期」とはなにか、具体的にして再確認し、作業のスケジュールを「見える化」すると良いでしょう。またスケジュールは自分だけでなく、複数の人に管理してもらうなどがあります。具体的には以下のような工夫をするとよいでしょう。・作業内容を細分化して書き出し、それを見えるように張り、作業終了目標時間の5分前にアラームをセットする。・終わった作業にはチェックをし、終わった作業への充実感を感じられるようにする。・仕事の計画や優先順位を決めることが苦手な場合、スケジュールをほかの人に管理してもらい、ひとつの仕事を終えたら、次の仕事を具体的に指示してもらうようにする。周りが気になってしまって、やるべき仕事に対しても集中力が続かない場合があります。また、興味がない仕事の場合、会議中などの大事な席でも居眠りしてしまうことも。頼まれていたことを忘れてしまったり、集中力が続かないことが原因で、仕事がスムーズに終わらなかったり、やる気のないような印象を与えてしまい、接客などで様々なトラブルを起こしてしまうことも少なくありません。【対処方法】怠けているという訳でもなく、集中力が続かないという特性を持っている場合は、周りの人に自分の特性を説明し、理解してもらえるようにつとめます。何か別の考えごとをしているな、と感じたら、声をかけてもらえるようお願いしてみましょう。他のことを考えはじめたことに気付いてもらい、今やるべきことがあるのに他のことを考えてミスしてしまうのを防ぐためです。指示を忘れないようにメモの習慣をつけましょう。集中力低下時の居眠り防止には、睡眠不足にならないように心がけることも大切です。またデスクワークなどで気が散ってしまうときは、集中できるよう環境調整をすることも効果的です。デスク周りを片づけて集中できるようにしたり、聴覚過敏がある場合は相談してイヤーマフなどの使用許可をお願いするのもよいでしょう。「想像力の障害」や「コミュニケーション能力の障害」により、敬語の使い方が困難な場合もあります。本人が正しいと思って使っていた言葉使いが、仕事の上では失礼にあたったということに気づけないことがあります。また距離感をうまくつかめないという特性もあり、近くにいるのに声のボリュームが大きすぎて相手を驚かせてしまうこともあります。【対処方法】自分中心の話ばかりでなく、相手が話しているときは意識的に相づちをうつようにするとよいでしょう。場所やその場の雰囲気、相手に合った会話の内容や態度、表情などを意識するということを、ひとつずつクリアしていくようにします。相手のお世辞を正直に受け止め過ぎてしまうことがあるので、注意しましょう。まとめ出典 : 参考:『発達障害者と働く』(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)発達障害のある人が就業する場合、多少の困難はもちろんつきものです。職場の方から偏見を受けたり誤解されてしまうこともあります。発達障害は、一見して外からは見えにくいため、他人には障害があることが理解されにくい場合があります。自分でも自覚が少なく、仕事ができないと他人と比べて落ち込むこともあるかもしれません。しかし、自分の障害特性を理解することで適切な支援も受けられますし、必要な配慮を周囲の人に伝えやすくなります。発達障害だということを職場に告白し理解してもらうのは勇気のいることですが、仕事の円滑さやストレス軽減のための手段のひとつであるとも言えます。仕事がスムーズにいかないのは、本人の能力不足や怠け心があるというのではありません。今勤務している職場環境を改善したり、適職を見つけることのできる相談機関が全国にありますし。それによってサポートを受けながら、働きやすい仕事の環境で継続的に働いていくことも可能なのです。深呼吸し、ひとつずつ課題をクリアしていくように、業務の手順や対人関係の工夫を身につけていきましょう。自信をもって働ける職場環境をつくったり、より適切な職場を見つけたりすることで、仕事や生活全体の充実が得られるようになるでしょう。頑張り過ぎず、自分のペースでいられる時間を持つことで、バランスをとっていきましょう。参考:法令データ提供システム「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」2012年
2016年12月15日「障害児と健常児を比べるのはナンセンス」そう言っていた私自身が…こんにちは。『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。私の息子は知的障害を伴う自閉症です。2歳で診断を受けてから月日はあっという間に経ち、もう16歳になりました。診断された直後の私は、「息子が自閉症である」という事実を受け止めきれず、必死に治療法や教育法を探したり、周りと比べて落ち込んだり焦ったりしていましたが、その後は障害を受け容れ、「息子は息子のペースで育っていくのだ」と考えられるようになりました。そんな私は、障害のある子どもを持って悩む保護者たちに向けて、「障害のあるわが子と他の子と比べるのは、百害あって一利なし」などと、子育て本やコラムで「比べる病」に対する警鐘を鳴らすようになりました。けれども、そうやって偉そうに書いている私自身の「比べる病」が未だに完治していなかった……そんな事実を痛感させられた出来事がありました。子連れのハロウィーンパーティ、ちびっ子たちに混ざって16歳のわが子が出典 : <span><a class="linkclass" href="">先日、地域のハロウィンパーティに出かけた日のことです。パーティーは「子連れOK」だと聞いていたので、息子を連れて行きました。でも、16歳なんて年齢の大きい子は我が家だけ。周りはみーんな未就学のちびっこ達でした。そりゃそうです。健常の高校生なら、部活をやったり、恋人がいたり、友達同士で集まって遊んだりする年齢です。“親と一緒にハロウィンパーティーに行く”なんてことはないでしょう。でも、うちの子の精神年齢は、実年齢とは大きくかけ離れていて、巷の高校生と同じように青春を謳歌することができません。親しい友達もいません。だから、今でもこういう場に連れていくようにしていました。当日早めに会場に着いたので、待ち時間の間、私のスマホを渡して遊ばせたところ(※息子は携帯を持っていません)いつものように大好きな“トイレの動画”を見始めました。Upload By 立石美津子自閉症の子は限定された物事に対して強い執着を示すことが多いですが、息子の場合は、そのこだわりが「トイレ」に対して出ています。水を流す音を聞いただけでトイレのメーカーや種類が分かるほどですが、一度動画を見出すとのめり込んで止められなくなります。Upload By 立石美津子ハロウィンパーティーがスタートしましたが、相変わらず息子はトイレの動画を見続けていました。「このままスマホを見ることを許してしまうと、場の雰囲気を壊してしまう」そう考えた私は息子からスマホを取り上げました。しかし!ここでスイッチが入ってしまったのです。息子は涙を流してパニックを起こし、それがどんどん酷くなっていきました。「みんなが楽しんでいるのにまずいぞ」と思った私は、外の空気を吸いに連れ出したり、説得したりしましたが、息子のパニックは一向に収まりませんでした。完治したと思っていたのに…「比べる病」が再発出典 : <span><a class="linkclass" href="">ハロウィンパーティーに参加している3~5歳の子ども達は、席に座って楽しそうに食事を食べ、食べ終わると初対面の子ども同士で仲良く交流しています。それに比べて息子は……泣いて怒って、しまいには「死んでやる!」「電車に飛びこむ!」なんて叫びだす始末。息子は不安定になったとき、自分の身体を傷つける自傷行為も出るのですが、それだけでなく、「学校辞めてやる」「放課後ディを退会する」「ご飯をもう二度と食べない」「癌になる」「入院する」などと自分に向けて暴言を吐き、言葉でも自傷に走ってしまいます。息子をなだめながら、叫び声が周りに聞こえやしないかとヒヤヒヤしていた私の中に、黒い気持ちが広がってゆきました。「周りの小さい子でもお行儀よく座っていられるのに、どうしてうちの子は…」「比べる病」の再発です。16歳の自閉症の息子と、うんと歳の離れた小さい子を比べるなんて、ナンセンスだと頭ではわかってはいるのですが、凄く情けなく、悲しい気持ちになりました。この病はいつまで続く?息子を「情けない子だ」と思った私の心思い返せば私の「比べる病」が最も重症だったのは、息子が2歳で自閉症だと診断された直後の時期。健常児の姿を見ることが、私の最大のストレスでした。息子を保育園に迎えに行くと、他の親は保育士から「今日も一日楽しく過ごしていました」と言われているのに、私は担任から「今日も一日、保育室に入れず朝からずっと玄関にいます」と報告を受けます。「私が仕事であちらこちら訪問し、昼にはランチし、変化のある充実した時間を過ごしているのに、息子は朝からずっとこの状態なんだ」と思うと胸が締め付けられました。いつしか健常児とその家族に対する「羨ましい」という気持ちは、「妬ましい」→「憎らしい」と加速していき、異常な心理状態に陥っていきました。ついに私は鬱になり、外出するのも嫌になって家に引きこもるように。出典 : <span><a class="linkclass" href="">でも、そんな私もだんだんとわが子の特性を受け入れ、周りと比較することはなくなっていきました。だから「卒業できた」と思っていたのです。それなのに、息子が16歳になってもなお、“比べる病”は消えてはいませんでした。息子と周りの子を比べることは、ミスユニバースに選ばれる人と自分の体型を比べるようなもの。大富豪と自分の生活を比べるようなもの。バカげたことなのに、そんなことわかっているのですが……いつもは偉そうに子育てコラムなど書いている私ですが、この日は自己嫌悪に陥り、悲しい気持ちでいっぱいになりました。最後に主催者の方が息子に「今日は来てくれて本当にありがとう」と言ってくださいました。これに少し救われて帰路につきました。息子はすっかり疲れてしまいその夜はすぐに寝てしまいました。ハロウィンパーティーで、あなたのことを「情けない子だ」と思ったお母さんを、どうか許してほしいです。でも、でも……一体、いつ治るのかな?この病……皆さんの比べる病は完治していますか?出典 :
2016年12月03日小児期崩壊性障害とは?出典 : 小児期崩壊性障害とは、それまで問題なく発達していた子どもが、突然、成長の過程で覚えた能力を喪失していき、知的障害を伴った自閉症のような状態になる障害です。ヘラー症候群、幼児性認知症、崩壊性精神病、共生精神病とも呼ばれるこの障害は、小児の0.005%に発症するまれな障害であり、男性に多いとされています。参考ページ:小児期崩壊性障害|ハートクリニックHPこの障害は、広汎性発達障害が含む5つの障害のうちの一つとして位置づけられます。(下図参照)広汎性発達障害が含む5つの障害とは、自閉性障害(自閉症)、アスペルガー症候群、レット障害、小児期崩壊性障害、PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)を指します。Upload By 発達障害のキホン小児期崩壊性障害はアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)という診断基準により分類された障害です。しかし、2013年に出された、この診断基準の改訂版である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において、小児期崩壊性障害は自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに包括されました。そのため、現在は小児期崩壊性障害という診断名が下されることは少なくなりつつあります。とはいえ、すでにこの名称で診断を受けた人も多いこと、行政などで小児期崩壊性障害の名称を使用している場合も多いことから、本記事では『DSM-Ⅳ-TR』において定義されている小児期崩壊性障害についてご説明します。アメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)による小児期崩壊性障害の定義は以下の通りです。小児期崩壊性障害の基本的特徴は,少なくとも2年の見かけ上正常な発達の期間に引き続く,多くの領域の機能における著名な退行である(基準A).見かけ上正常な発達は,年齢に相応した言語的および非言語的コミュニケーション,対人関係,遊び,適応行動に示される.生後2年以降(しかし10歳以前に),子供は,以下の各領域の少なくとも2つにわたり,以前に獲得した技能の臨床的に明らかな喪失を示す:表出性または受容性言語,対人的技能または適応行動,排便または排尿のコントロール,遊び,または運動技能(基準B).最も典型的には獲得された技能はほとんどすべての領域で失われる.この障害をもつ者は,自閉性障害をもつ者に広く観察される,対人的およびコミュニケーションの欠陥と行動的特徴を示す(82頁参照).対人的相互反応(C1)およびコミュニケーションにおける質的障害(C2),限定的,反復的,常同的な行動,興味,活動の様式(基準C3)がある.障害は他の特定の広汎性発達障害または統合失調症ではうまく説明されない(基準D).この状態は,ヘラー症候群,幼児痴呆,または崩壊性精神病とも呼ばれてきた.参考文献:高橋三郎ら/訳『DSM‐IV‐TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』2003年医学書院/刊小児期崩壊性障害という診断区分を定めている『DSM-Ⅳ-TR』は最新の診断基準ではありません。そのため現在、この障害に相当する症状がある場合は、別の診断名が下されることが多くなってきています。ここでは、小児期崩壊性障害に相当する症状が、別の診断基準ではどう診断されるのか紹介します。・『DSM-5』における小児期崩壊性障害『DSM-Ⅳ-TR』の改訂版であり、2013年に発行された『DSM-5』において、小児期崩壊性障害は自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。Upload By 発達障害のキホン参考文献:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院,2014)・『ICD-10』における小児期崩壊性障害世界保健機関(WHO)が定める『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(以下、本文中の表記は『ICD-10』とする)という診断基準では、『DSM-Ⅳ-TR』における小児期崩壊性障害は「他の小児期崩壊性障害」というカテゴリーに相当するとされています。『ICD-10』で言われる「他の小児期崩壊性障害」の概念・診断基準と『DSM-Ⅳ-TR』における「小児期崩壊性障害」の概念・診断基準はほとんど同じとされています。参考文献:融道男 /著『ICD-10 精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン―』2015年医学書院/刊小児期崩壊性障害の3つの特徴出典 : 小児期崩壊性障害は、1. 発症時期は2歳から10歳までの間で、それまでは明らかに正常に発達する2. 発症後、それまでの成長で覚えたことを喪失していく3. 発症後は自閉症と似たような症状を示すという3つの特徴があります。以下において、小児期崩壊性障害の3つの特徴についてそれぞれ説明します。1. 発症時期は2歳から10歳までの間で、それまでは明らかに正常に発達する小児期崩壊性障害は、2歳から10歳までの間に発症します。発症までは、言語的および非言語的コミュニケーション、対人関係、遊び、社会適応における年齢に相応した正常な発達が続きます。つまり、定型発達の子どもと同じように順調に成長していくのです。2. 発症後、それまでの成長で覚えたことを喪失していく発症後、成長の過程で覚えた能力を失います。以下の能力のうちの2つ以上を失うとされています。・言葉の使用と理解・対人的技能または適応行動・排便または排尿の機能・遊び・運動能力発症の前兆として、よく動いたり、イライラしたり、不安になったりすることがあります。また、言語やその他の能力の喪失の兆しや、周りの環境に対する興味、関心が薄くなることもあります。これらの能力が失われていく期間は、多くの場合数ヶ月で止まります。その後は、能力が失われた状態が一生にわたり続きます。しかし、脳や神経の病気もある場合には、これらの能力は失われ続けるとされています。3. 発症後は自閉症と似た症状を示す小児期崩壊性障害は発症後に、以下に説明する自閉症(『DSM-Ⅳ-TR』では「自閉性障害」)にみられる3つの特徴のうち少なくとも2つの特徴が当てはまるとされています。(1)対人的相互反応における障害・目と目で見つめ合う、顔の表情、体の姿勢、身振りなどの非言語的な行動ができない・他人と満足のいく関係を築けない・対人的ないし情緒的な気持ちのやりとりの困難・他人の気持ちの共感・理解の困難(2)コミュニケーションの障害・話し言葉の発達の遅れ、または完全な欠如(身振りや物まねのような代わりのコミュニケーションの仕方により補おうという努力を伴わない)・会話の頻度が高い場合、他人と会話を開始し、継続する能力の明らかな障害がある・常同的で反復的な言語の使用または、独特な言語・発達の水準に相応した、変化に富んだ自発的なごっこ遊びや、社会性をもったものまね遊びの欠如(3)運動性の常同症や衒奇症(げんきしょう)を含む限定的、反復的、常同的な行動、興味、活動の型・特定の習慣や儀式にかたくなな興味をもつこと・特定の対象に持続的に熱中すること・芝居じみた挨拶や身振りを繰り返すこと・複雑な全身の動きを続けるなど、型にはまった同じ運動を不自然に繰り返すこと小児期崩壊性障害の原因出典 : 小児期崩壊性障害の原因は現段階では解明されていません。現状では、脂質代謝異常や結節性硬化症など、さまざまな疾患と関連があるのではないかと考えられています。小児期崩壊性障害と似ている障害出典 : 小児期崩壊性障害と似ている障害として、小児統合失調症や認知症、この障害と同じ広汎性発達障害のひとつである自閉症が挙げられます。・小児統合失調症統合失調症は妄想や幻覚などの症状が続く疾患です。ほとんどが思春期以降の発症ですが、まれに幼いころに発症することがあります。小児統合失調症の症状にも感情的な反応の欠如が見られるなど、小児期崩壊性障害と似ている症状が見られることがあります。・認知症小児期崩壊性障害と似ている障害として、成人期における認知症があげられます。しかし、小児期崩壊性障害は、頭部外傷などの身体的な要因が原因ではないこと、技能喪失の後ある程度の回復がみられること、自閉症に典型的にみられる特徴がみられることなどの点において認知症とは異なっています。・自閉症小児期崩壊性障害にも自閉症のような症状がみられます。しかし、自閉症も発達の遅れがみられるとはいえ、一度獲得した技能を失う退行は見られない点において異なっています。小児期崩壊性障害かな?と思ったら…出典 : 上記で述べた症状が見受けられる場合、医療機関や専門家に判断してもらうことをおすすめします。いきなり専門医に行くことが難しい場合は、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するとよいでしょう。・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センター・児童相談所など児童相談所などでは無料で知能検査や発達検査を受けられることも多いので、児童相談所で相談するパパ・ママも多くいます。まず身近な相談センターに行って、診断をすすめられたら、そこから専門医を紹介してもらいましょう。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にのってくれることもあります。以下のリンクにおいて全国の発達障害者支援センターを検索できます。相談窓口の情報|発達障害情報・支援センターHP発達ナビ「地域情報」: 全国の発達障害者支援センターの一覧・どの診療科にいけばいいの?小児期崩壊性障害の診療が可能な診療科は、小児科、精神科、児童精神科、小児神経科、心身医療科、心療内科、発達障害外来など、病院により様々な名前となっています。どの病院に行けばいいか少しでも迷った場合は、まずは市町村の窓口や都道府県等の発達障害者支援センター等の相談窓口に電話で相談することをおすすめします。発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの施行によって年々増加はしています。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」・ 診断・検査の流れ本人や保護者に対する問診(面接)や行動観察、家族・学校の先生による提供情報の精査などを行う他、専門機関によっては筆記や口頭質問などを通した知能検査や発達検査などを実施する場合もあります。こうした様々な情報を総合的に評価して、診断がくだされます。検査は複数回に分けて行なわれたり、慎重に経過を見ながら行われるため、一度の受診ですぐに診断されることはあまりありません。知能検査は、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)やウェクスラー式知能検査(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」)などの検査を受けることによって検査結果がでます。特性の現れ方や発達段階などを評価するため「CARS」や「新版K式発達検査2001」、「PEP-R」などを行う場合もあります。・診断に必要な準備や持ち物初診時に必要な物として保険証、子どもであれば母子手帳などがあります。服用中の薬などがあれば、お薬手帳なども持っていくとよいでしょう。また、生育や発達歴についての問診がありますので、言葉を話し始めた時期や日常生活での困りごとなどをメモして持っていくと質問に答えやすいかもしれません。発達外来などの専門機関によっては保育園や幼稚園の連絡帳、小学校の通信簿やホームビデオなどを参考にする場合もあります。事前に問診票をプリントアウトして持参する機関もありますので、専門機関の公式ホームページをチェックしたり、予約時に電話にて必要な持ち物を問い合わせてみてください。小児期崩壊性障害は治療できるの?出典 : 広汎性発達障害のひとつである小児期崩壊性障害の根本治療はできませんが、症状を緩和するためには療育的アプローチと薬物療法の2つが効果的です。障害のある子どもが、社会的に自立できるように取り組む治療と教育のことです。自分の問題を自分で解決できるようになるには、療育によりコミュニケーションスキル等の能力を身につける必要があります。療育は何歳からでも始めることができ、なるべく早くから通うことが推奨されます。療育とは、以下のように定義されています。療育とは医療、訓練、教育、福祉などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。出典:療育と教育の接点を考える|障害保健福祉システムHP参考ページ: 療育とは何か|LITALICOジュニアHP小児期崩壊性障害そのものを根本的に治す薬はありませんが、特定の症状を緩和するために使用することがあります。薬によって開始できる年齢や症状が決まっており、人によって副作用がある場合もあるので、主治医とよく相談し、用法用量を守って服薬していくことが大切です。薬物療法は、症状を一時的に抑えるためのものであり、症状が軽減している間に、教育や支援をあわせて行うと効果的であるともいわれています。小児期崩壊性障害の場合、障害者手帳は取得できるの?小児期崩壊性障害を含む広汎性発達障害と診断された場合、2種類の障害者手帳を取得できる可能性があります。・療育手帳小児期崩壊性障害と診断されただけでは療育手帳付与の対象とはなりません。しかし、療育手帳を申請し、知的障害があると認められた場合は療育手帳が取得できます。・精神障害者保健福祉手帳小児期崩壊性障害は発達障害者支援法第二条において発達障害に指定されていて、さらに発達障害は精神障害に含まれます。そのため、小児期崩壊性障害により長期にわたり日常生活又は社会生活への制約があると認められた場合は精神障害者保健福祉手帳を受けることができます。もし、知的障害と精神障害のどちらもあると判断された場合は、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳を両方取得することは可能です。まとめ出典 : 小児期崩壊性障害は、発症前までは子どもが問題なく元気に成長する障害であるため、発症時にはご家族の驚きも大きいかもしれません。しかし、小児期崩壊性障害は他の広汎性発達障害と同じく、早期発見と早期療育、通院治療等を通した支援が可能です。お住まいの地域の発達障害者支援センターなどの相談窓口や医療機関では、お子さんのことだけでなく、ご家族の方のためのアドバイスも専門家からもらうことができますので、お子さんの発達の仕方に何か違和感を覚えた段階で連絡をとることをおすすめいたします。悩みや疑問を解消し、お子さんの特性を理解することで、適切な支援方法を探していきましょう。
2016年12月01日発達障害とは出典 : 発達障害とは、先天的な脳機能の障害で、想定される時期に年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルが獲得できないことで起きる障害を指します。その症状は、通常低年齢の発達期において発現します。2005年4月に制定された発達障害者支援法では発達障害は以下のように定義されました。この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。発達障害はいくつかのカテゴリーに分類され、診断基準によって多少異なりますが、大きく分けて「広汎性発達障害(PDD)」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」の3つに分類されます。広汎性発達障害には自閉症やアスペルガー症候群などのコミュニケーションの障害が含まれますが、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)という障害名に統合されています。また『DSM-5』ではADHDは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害、学習障害は限局性学習症/限局性学習障害という診断名となります。これらの発達障害の中には知的障害が併存する場合もあります。Upload By 発達障害のキホン発達障害の原因は?出典 : 発達障害の症状は、先天的な脳機能障害が原因となって生じます。ですが、その詳細なメカニズムや、なぜその脳機能障害が引き起こされるのかははっきりとは解明されてはいません。研究が進み、発達障害の一部について証明された事実であったり、関連が指摘された要因については少しずつわかってきました。ですが発達障害の症状は様々であり、原因も多様であると考えられ、全ての人に当てはまる原因はないのではないかとも言われています。一方で、かつて言われていた「親のしつけ方・育て方が悪い」「親の愛情不足」といった心因論は現在では医学的に否定されています。以下に、現在考えられている発達障害の原因とそのメカニズムをご紹介します。発達障害の原因はまだはっきりとは解明されていないものの、発達障害を引き起こす脳機能障害には遺伝的要因が関連している可能性が指摘されています。例えば、広汎性発達障害に関しては、1970年代から盛んに双生児研究が行われ、一卵性双生児間では発現率が5~7割ほどという研究結果が多くあります。この数値は二卵性双生児の場合より高いと言われています。一卵性双生児は遺伝子情報が同じです。その一卵性双生児で一人が広汎性発達障害だと二人とも広汎性発達障害になる可能性が高いという結果が出たことは、何らかの遺伝子要因が広汎性発達障害と関連があることを示唆しています。また現在では、遺伝子研究が進み、染色体の一部分の重複により生じる発達障害があることや、それに関連する遺伝子がいくつか発見されています。ですが、一卵性双生児間での一致率が100パーセントではないことなどから、発達障害が単純な遺伝的要因だけで発現するわけではなく、現在では関連する遺伝子が複数あることもわかってきました。また、「親の育て方」という説や、MMRワクチンの接種が原因とする説など、研究の結果否定された環境要因もありますが、子どもの心身は、胎児期から発達期にとる睡眠や栄養、周りの人との関わりといった様々な要因によって支えられ、発達していきます。そのため、環境要因が全く関わりがないと考えることはできません。これらのことから、現在、発達障害にはなんらかの遺伝的要因が関わっているが、その他のさまざまな環境要因と複雑かつ相互に影響し合って発現するという考えが主流になっています。つまりある特定の遺伝子があれば必ず発症するというわけではなく、また遺伝的な要因と言っても親から子へ単純に遺伝するという意味ではないのです。さらに発達障害は、1つの原因による1つの道筋ではなく一人ひとり違った道筋を経て発症すると考えられ、全ての人にあてはまる要因を解明するのは難しいのではないかとも言われています。発達障害はどうやって発症するの?出典 : 発達障害が発症し、それが明らかになるまでには以下のようなステップがあります。1. 発達障害のもととなる脳機能障害が生じる発達障害はなんらかの遺伝的要因をもつ、つまり発達障害になりやすい体質が先天的にある人が、胎児期や出生後に脳や心身が発達する中で様々な要因の影響を受け、脳機能障害を生じることで起こると言えます。2. 脳機能障害により認知や感覚の偏りを引き起こされるそうした脳機能の障害や偏りによって、認知の方法や感じ方に違いが生まれ、それが様々な行動特性を引き起こすのではないかと言われています。例えば、情動を認知したりコントロールをする前頭葉や扁桃体などの機能に障害があり、そのために気持ちのコントロールやコミュニケーションをとるのが難しいのではないかという説もあります。また、発達障害のある人は記憶の仕方に特性があるといわれています。そのために非常に記憶力が高かったり、ワーキングメモリと呼ばれる情報の処理や記憶の仕組みにトラブルがあったりする人がいます。刺激を認識する機能になんらかのアンバランスが生じる人もいます。たとえば刺激を感じやすい感覚過敏や、逆に刺激を感じにくい感覚鈍磨がある場合もあります。3. 発達の遅れなどの症状が現れ、問題や困りごとが明らかになる発達障害の症状の発現時期は人によって異なります。最近では早期にそのリスクを発見するため、特に自閉症スペクトラムや広汎性発達障害などではアイ・トラッキング・システムなどを使い、初期症状を見つけるための研究も進められていますが、一般的には症状が顕著に発現するのは幼児期頃からと言われています。乳児期には周りの子どもとコミュニケーションをとったりすることもあまりなく、また個人差も大きい時期なので、はっきりとはわからないことも多いのですが、集団参加や社会的な機能が要求される時期になると、行動面や対人関係・社会性の側面でなんらかの症状が目立ち始めると言われています。きっかけとしては以下のような場合に、発達障害がある可能性に気づき、なんらかの支援を受けることが多いようです。・1歳半や3歳健診などの乳幼児健康診査や小児科などで発達の遅れを指摘される・園や学校に進んで集団生活がはじまり、コミュニケーションなどで困りごとが起きる・子育ての悩みを相談するまた、学習障害の症状の発現時期については、目立った症状が見られるようになるのは読み書きを覚え始める就学前の年齢になり、学習を開始してからだと言えます。また、幼少期の特性の偏りは単にその子どもの苦手や不得意に分類される可能性があり、区別が難しいため診断が遅れる傾向があります。障害が軽度の場合や特に困りごとが起きなかった場合など、見過ごされてそのまま成長することもあります。中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して発達障害に気づく人もいます。発達障害の理解とl対応広汎性発達障害/自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害、それぞれの原因は?出典 : 自閉症スペクトラム(ASD)や広汎性発達障害に含まれるグループについては、現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、様々な環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。最も中心的な関連遺伝子と考えられているのが、シナプスの形成とシナプスの機能にかかわるタンパク質をつくるために必要な情報にかかわる遺伝子です。たとえば、シナプスの形成に関与する遺伝子であるNLGN3やNLGN4、これらと機能的にかかわりの深いSHANK3などが自閉症スペクトラムとの関連が指摘されています。つまり、シナプスにおける神経伝達の軽微な異常によって、自閉症スペクトラムに見られる精神発達に障害が引き起こされると考えられています。(飯田順三/編・著『アスペルガー症候群の子どもたち』合同出版,2014年/刊p.95~96より引用)上記を含め、自閉症スペクトラムの関連遺伝子が数多く報告されています。ですが、さまざまな遺伝子が複雑に関連しているため、現時点では、原因となる遺伝子を完全に特定することはできてはいません。かつて広汎性発達障害に含まれていたレット障害(レット症候群)についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因だということが発見されました。1999年にMECP2という遺伝子が主な原因遺伝子であることが発見され、その後2004年にCDKL5、2008年にFOXG1という原因遺伝子も発見されています。そのため自閉症スペクトラム障害の概念から除外されました。また、広汎性発達障害や自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の症状を引き起こすと考えられる脳機能の偏りとしては以下のような説があります。1. 脳領域間の機能的連結低下脳内のネットワークの連結機能がうまくいかず、定型発達の人の場合と比べて機能が低下していることから自閉症スペクトラム障害になるのではないかという説があります。2. 社会的な活動をするための脳の部位の機能異常人の脳には部位ごとに役割があります。その中に社会的な活動をするために使う部位もあり、以下のような部位に異常が起きたり働きが弱かったりするため、うまく人の表情や感情が理解できないのではないかと言われています。・扁桃体(へんとうたい)…人の表情を認識し感情を読み取る部位です・紡錘状回(ぼうすいじょうかい)…紡錘状回は人の顔を認識する部位です・上側頭溝…人の目や口などの部位の動きを認識する部位です・前頭葉…前頭葉にはミラーニューロンと呼ばれる神経が存在しており、人に対する「共感」の感情に関わっています3. 小脳の異常小脳は、平衡感覚や強調運動などに関わっていると言われています。そのため小脳に異常が起きると、バランス感覚をあまり持てなくなると言われています。ほかにも、小脳に異常が起きると感情や認知にも影響があるのではないかと報告されていますし、自閉症スペクトラム障害の中には実際に小脳への異常が見られた人もいます。4. 脳内物質の異常自閉症スペクトラム障害では、脳内物質に異常があるという報告があります。普通の人と比べて、血中オキシトシンが低い、セロトニンが高い、血中グルタミン酸が高いという違いが見られたという研究があります。ADHDの症状が起こる確かな原因はまだ解明されていませんが、ADHDには複数の関連遺伝子が素因としてあり、それらが様々な道筋をたどって、このような特有の脳機能の偏りを引き起こし、ADHDの症状につながるのではないかと言われています。現在有力だとされている素因は脳の前頭野部分の機能異常です。近年の研究から、ADHDの人は行動等をコントロールしている神経系に機能異常があるのではないかと考えられています。前頭葉は脳の前部分にあり、物事を整理整頓したり論理的に考えたりする働きをします。この部位は注意を持続させたり行動などをコントロールさせたりします。ADHDの人は、この部分の働きに何らかのかたよりや異常があり、前頭葉がうまく働いていないのではないかと考えられています。前頭葉が働くためには、神経伝達物質のドーパミンがニューロンによって運ばれなくてはいけません。しかしADHDの人の場合ニューロンによってドーパミンがうまく運べず前頭葉の働きが弱くなってしまい、それが原因で「多動」「衝動」「不注意」の3つの特徴が現れると考えられています。ADHDの人は五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまう傾向がありますが、それも前頭葉の働きが弱いからだと言われています。思考よりも五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまい感覚を過剰に感じてしまうので、論理的に考えたり集中するのが苦手となると考えられています。出典 : 学習障害の症状を引き起こす具体的な脳機能障害としては、中枢神経のトラブルが仮説の中でも最も有力と言われています。脳は無意識に感覚器官から入ってきた情報を処理し、整理して記憶します。そして必要に応じてその情報を取り出します。文字を読んだり書いたり、計算をしたりといった学習にはこれらの働きが必要です。中枢神経は脳や脊髄、体の様々な部分の働きを指令する部分であり、これらの情報処理を担っています。そのため、この機能のトラブルが学習障害の困難を引き起こすのではないかと考えられています。この説の検証が難しい理由は、医学的に検査を行っても分からないほどの小さな異常が原因とされているからです。発達障害を検査する方法はあるの?出典 : 現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断で判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査では診断できません。これは、発達障害の原因が完全には解明されておらず、またその原因も複雑で単一ではないと考えられるためです。今後も生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいとも言われています。発達障害の人の多くが幼児の頃から12歳ぐらいの間に何らかの困りごとや症状をきっかけに専門機関を相談・受診し、医師によって発達障害だと診断されます。診断は問診と心理検査・知能検査などの様々な検査を総合的に判断して行われます。その他MRIを使い脳の器質的な疾病がないかを確認する場合もあります。検査や診察は一度ではなく、何度か行われたうえで慎重に診断が下されることが多いのです。発達障害は治療できるの?出典 : 発達障害を完全に治療する薬や手術などの医学的な方法は現在ありません。しかし、障害の特徴を緩和させたり、本人の困りごとを改善する方法はいくつかあります。例えば環境調整を含めた心理・社会的アプローチや症状を和らげるための薬の使用などです。早期からの療育は症状改善に大きな効果があるとされています。各都道府県に設置された「保健福祉センター」などで相談すると、適切な医療機関や児童発達支援なども紹介してもらえます。療育的支援では、苦手な部分をサポートしたり得意なことを伸ばすような訓練を受けることができます。適切なコミュニケーションの取り方や自己コントロールを学び、苦手な部分に対する対処法を身に付け自信をつけることで、困りごとを減らし二次障害の予防に繋がります。二次障害とは、適切な治療やサポートを受けられない場合に、うつや不安障害、不登校やひきこもりなど障害の主症状とは異なる症状や状態を引き起こしてしまうことを指します。ペアレントトレーニングと言って、発達障害の子どもを持つ親のためのトレーニングを実施している機関もあります。親が適切に接することで、子どもが日々感じている困難を軽減し、症状の改善に繋げます。また、特別支援教育や通常の教育のなかでも環境調整や合理的配慮を行いながら、一人ひとりに合わせた支援が行われます。発達障害の人の中には、こだわりや集中力を活かして高い専門性を身につけたり、優れた才能を持っている人もいます。才能・いいところを伸ばせるような教育が求められます。多動性や衝動性が強い子どもの場合、服薬を取り入れることもあります。脳内の神経伝達物質の不足を改善する働きがあり、症状がやわらぎます。症状が緩和することで、衝動的な行動で周りの友達と関係が築けず、孤立してしまう悩みなどが要因ともなる二次障害も予防できます。薬の服用で困難さが軽減されることで、本来の能力を発揮できるようになり、自分に自信が持てるようになるケースもあります。薬を服用している間は落ち着いて話を聞くことができるので、その間にスキルトレーニングを行い、本人の能力を高められるように親は努めましょう。しかしながら薬には合う合わないもあり、副作用が働いてしまう場合もあります。薬の利用は主治医とよく相談し、納得した上で用法・用量を守って進めるようにしましょう。また薬を利用したとしても、行動面や学習面での親や教育者からのサポートは引き続き必要です。まとめ出典 : 発達障害の原因を探ることは、治療法の開発・研究のためにはとても大切であり、世界中の研究者が日々、研究を進めています。その成果が少しずつ明らかになってはいるものの、いまだにわからないことが多いのが現状です。また、発達障害が発症する道筋は一つではなく、複雑な要因が絡み合っていると考えられるため、すべての人に当てはまるたった一つの原因は今後もわからないのではないかという考え方が主流となっています。ただ、ひとつ確かなことは、発達障害は、親や本人のせいで起きるものではないということです。目の前の子どもにとって大切なことは、どうしたら本人の困りごとがなくなるか、特性を生かしていけるかという対応方法を考えてみることです。一人ひとりの子どもの発達障害の特性は様々なバリエーションがあります。保護者や支援者が一人で悩み考えるのではなく、地域の相談機関や専門家と繋がりながら解決していきましょう。地域情報|発達ナビ日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」参考文献:鷲見聡/著『発達障害の謎を解く』日本評論社/刊参考文献:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 』医学書院/刊参考書籍:宮本 信也 , 竹田 一則 /編著『障害理解のための医学・生理学』明石書店/刊参考書籍:服部 陵子/著『Q&A家族のための自閉症ガイドブック―専門医による診断・特性理解・支援の相談室』明石書店,2011年/刊飯田順三/編・著『アスペルガー症候群の子どもたち』合同出版,2014年/刊せせらぎメンタルクリニック 「アスペルガー症候群の原因。アスペルガー症候群はなぜ生じるのか」松浦こどもメンタルクリニック 「ADHD」参考書籍:中山和彦・小野和哉/著『図解よくわかる大人の発達障害』ナツメ社,2011年/刊
2016年11月25日就職して3ヶ月後、自分が「発達障害かもしれない」と初めて知る出典 : 私は小学生のときに学習障害の診断を受けていました。しかし母は障害のことを私に伝えていませんでした。勉強するうえでの困難や友達関係は次第に改善されていったので、母をはじめとする周りの大人たちは、私の障害は「完治した」と思っていたようです。しかし私は会社で働き始めてから「自分が発達障害かもしれない」と気付くことになりました。学生時代、様々な困難はあったものの無事大学へ進学した私は、システム開発業の技術者を目指して勉強し、卒業後は望み通りシステムエンジニアとして就職しました。しかし、働き始めて2~3ヶ月後、早くも壁にぶつかりました。それまでの研修では特に問題無かったのですが、実際にシステムの開発作業を行い始めると、ほかの社員と関わることが多くなったためか、トラブルが多発しました。トラブルの内容は、・作業指示を他の人よりも詳細に話さないと理解できない・私の話の要点が分かりづらい・話の行間や雰囲気を察せず、上司の意図を誤解してしまうといった、コミュニケーションに関することでした。自分でもどうしたらいいのか分からず困っていると、上司から「発達障害ではないか?」と指摘されました。「発達障害」という障害の存在を知ったのは、この時が初めてでした。さらに母からも、私が過去に学習障害の診断を受けた経緯を聞き、自分のことについてもっと知る必要があると考えた私は、精神科医の元で発達障害の検査を受けることにしました。受け入れられなかった診断結果。「健常者」として生きることを選ぶ出典 : 発達障害の検査を受けることを、私はあまり深刻に考えていませんでした。なぜなら、母から「障害は完治している」と聞かされていたため、ちょっとした対処法で解決できると思っていたからです。しかし検査の結果を見て主治医が行った提案は、「今の仕事を辞めて障害者雇用で再就職する」というもの。私は大いに困惑しました。私は、「確かに仕事は上手く行ってないけれど、辞めるほどのことではないだろう」「上手く行っていないことを障害のせいにするのは、自分の苦手なことから逃げることだ」と考え、主治医の提案を受け入れられませんでした。また、家族に相談すると、「私に障害があるわけがない」と全員の見解が一致しました。こうした周囲の声もあり、私は主治医の診断を受け入れず「健常者」として生きることを選びました。そして、働いているうちに「自分が発達障害である」ことはすっかり忘れたのでした。解雇、そして再就職活動出典 : 自分が発達障害であることを忘れて仕事に励んだ日々の中では、成果を出せたときもありました。しかし、それよりも多くの失敗が続きました。会社は努力している私を見て、様子をみてくれていましたが、4年近く経っても問題である「仕事上のコミュニケーション」はうまくできないままでした。そしてついに、私の解雇が決定しました。解雇を宣告された時は、とても悲しかったのを覚えています。しかし、私はこれ以上頑張って挽回出来る見込みを自分でも感じられませんでした。また、解雇に無理やり抵抗して、会社にしがみ付いているだけの人生も嫌だと思い、解雇を受け入れました。再就職に向けた活動は難航しました。ハローワークで求人票などをチェックしましたが、「コミュニケーションに関する能力不足」が理由で解雇された私を雇ってくれる所なんてあるのかと途方に暮れ、全くと言っていいほど再就職活動は進みませんでした。私は次第に家にこもるようになりました。「このままだと精神を病む事になるだろうな」とぼんやり考えていました。人生に、絶望していました。迫りくる自分の無気力に対する不安。一か八か、わずかな希望に賭けるUpload By 穹峰蒼志引きこもり気味の日々を過ごしていたあるとき、私は1つの新聞記事を目にしました。それは、不登校で引きこもりだった少女が地球一周の船旅に出て前向きになるという内容でした。この記事を読んだ私は、家族の声が届かず、インターネットもつながらないような海の上で自分の人生を考えたいという思いと、私も長い旅を経て何かが変わるかもしれないという希望を持ちました。その船旅に出ることは私にとってやはり大博打でした。一応地球一周の船旅を企画しているツアーの中では格安ですが、それでも130万円以上の費用がかかります。貯金で払うことは可能でしたが、当時無職で再就職のあても全く無い私は、この旅で何かを得られなければただ散財するだけになってしまいます。しかし、「このままだと確実に気力を失って、死が待っている」と感じた私は一か八か賭けてみることにしたのです。世界中の人々との出会い、広がりゆく視野Upload By 穹峰蒼志Upload By 穹峰蒼志私はわずかな希望に賭けて、地球一周の船旅に出かけました。さて、地球一周の船旅と聞くと、リッチで高級、ゴージャスといったイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか?残念ながら私が参加した船旅は、それとはかなり程遠いものです。しかし、この船旅は私も含めてほとんどの方が退屈していませんでした。というのも、乗船者自身が船内でイベントを企画する「手作り感満載」な船旅だったからです。ゴージャスでこそないものの、娯楽を自分達で作り出す過程はとても楽しいものでした。私はこの旅で、幅広い世代と交流し、世界各国を巡り様々な人々と出逢いました。「失業中」という事実に、家族や友人達との間では私は気まずさや負い目を感じていましたが、船には似たような境遇の人もいます。社会とうまく関われない人間は私だけではないのだと知り、どこか安心できました。旅を通して、国や人種や宗教の違いを目の当たりにして、私は”人間には多様な生き方がある”ということを肌で感じました。私の視野は、確かに広がり始めていたのです。同性愛者の友達のカミングアウトを聞いて、人生が変わった出典 : 船旅の中で、ついに私の人生を180度変える出来事が起こりました。ある日、同性愛者や性同一性障害の方々が自分達の事をカミングアウトする船内イベントがありました。カミングアウトをした人たちの中には、私がよくお世話になっている方もいて、私は衝撃を受けたのです。「どうして同性愛者である事を告白したのですか?隠しておけば良さそうなのに、告白するのは怖くはなかったのですか?」と私はその人に聞いてみました。それに対する答えは、「同性愛者である自分を知って離れていく人がいても仕方がない」というものでした。その人は、同性愛も含めてありのままの自分を受け入れていたのです。この出来事がきっかけで、「私は私の全てを受け入れていただろうか?」と考え始めました。そして、過去に受けた発達障害の診断についてもう一度考え直しました。今までの私は、都合の良い自分しか見ようとせず、不都合な自分のことを無視していたと気付いたのです。発達障害の診断を受けた当初、診断を認めれば出来ない事や失敗した事を障害と紐付けて、逃げることになると思っていました。しかし、本当は自分の障害と向き合わないことこそが逃げることだったのです。こうしてようやく私は、自分の発達障害に目を逸らさずに向き合う決意をしたのです。障害があることを理由に、将来の可能性を狭めないで出典 : 以前、発達障害のお子様を持つ保護者の方から、以下の相談を受けたことがあります。「子どもが将来やりたいことを、親としては応援してあげたいと思いますが、やはり難しいのでしょうか?」私は障害の有無が問題では無いと思います。障害の無い人でも、やりたいことを実現できていない人もいます。重要なのはやりたいという気持ちと、何ができるかの把握だと思います。私は以前システムエンジニアになりたくて、休日も惜しんで勉強をしました。でも仕事で十分な成果を出すことはできませんでした。もし得意・不得意分野を把握し、それらが障害の特性からくるものだと分かっていれば、不得意なことへ必要以上に時間を割かず、成長しやすい得意分野を伸ばすなど、何かしらの対応ができたかもしれません。どうか障害がある事だけを理由に、将来の可能性を狭めないで下さい。できない理由や失敗した原因を安易に障害のせいにしていると、いずれ何もできなくなってしまうと思います。でも、自分の障害上の特性を理解すれば、活路を見出せるかもしれません。障害者雇用で働くことを決意した私ですが、その道のりにも様々な困難が伴いました。しかし、発達障害を受け入れた私にとってその困難は乗り越えられないものではなく、無事に再就職してから3年半が経ちました。次回は、発達障害を受け入れながら働くとはどういうことなのかを振り返ってみたいと思います。
2016年11月24日発達障害のある5歳の娘。だんだん周りの子との違いが目立ってきた広汎性発達障害がある5歳の娘は、言葉の発達に少し遅れがあります。3歳ぐらいまでは周りのお友達との差も少なく、少し接したぐらいでは娘に障害があることはわからなかったと思います。でも4歳を過ぎると、初対面の人でも娘のしゃべり方や雰囲気に違和感を感じたり、「あれ…?」と思われることが増えてきました。Upload By SAKURA誰に、どこまで、どんなふうに話せばいいのだろう?Upload By SAKURA相手が娘に対して「あれ…?」と思った時、私も外から見ていてそれに気づきます。その相手が初対面の人や、それほど親しくない人の場合…娘の障害について話すべきなのかとても迷います。いきなり「娘には障害がある」と話したら、どうリアクションしていいか困ってしまうのではないか。そして困ったリアクションをされたら、私もなんと言っていいかわからなくなってしまう。実際娘の障害のことを話してみて、「あ、言わなきゃよかった」と思うことがよくあります。Upload By SAKURA試行錯誤の結果、私が実践しているやり方は…Upload By SAKURAいろいろ試した結果、今は…「あ、うちの子、言葉に遅れがあってね~聞き取り辛かったらごめんね!」とさらっと明るく話し、そしてすぐに話を変え、相手にリアクションする隙を与えないようにしています。それ以上聞きたくない人は、そのまま話を流してくれますし、「え?どういうこと?」と思った人は、聞き返してくれます。そういう人にだけ、障害のことや詳しい話をするようにしています。娘のことを、いろんな人にわかってほしいから私は娘の障害のことは、恥ずかしいと思っていませんし、障害について話すことは苦ではないです。むしろ娘のことを理解してもらえるためなら、いくらでも詳しく話したいと思っています。ただ、それを聞いた相手を困らせたくないという想いがあります。今は幼稚園の3年間でできたお友達や、ママ友にはうまく伝わり、娘のことを理解してもらっています。しかし来年は娘も小学生…。新しい出会いもあり、娘の障害について話す機会がどんどん増えていくでしょう。娘のことを理解してもらえるよう、私自身努めていきたいと思います。Upload By SAKURA
2016年11月23日聴覚障害とは?出典 : 聴覚障害とは、音の情報を脳に送るための部位のいずれかに障害があるために、音が全く聞こえない、あるいは聞こえにくい状態のことです。全く音が聞こえない状態を全聾(ぜんろう)、音が聞こえにくい状態を難聴といいます。また、聴覚障害には、後天性のものと生まれつきの先天性のものがあります。先天的に難聴のある子どもは、毎年1000人に1人の割合で生まれています。聞こえの障害は、生まれつきの障害の中で、もっともよく見られるもののひとつです。そのために新生児の段階で聴覚に問題がないかどうか調べるためのスクリーニング検査を受けることがすすめられています。子どもの難聴が中軽度の場合には、重度の場合に比べてその発見が遅れる傾向にあります。というのも、中軽度の場合には、自分が難聴であると自覚することが難しく、日常生活の中で不自由が生じても、保護者に伝えることが稀であるためです。耳から情報を適切に取り入れることができない聴覚障害の子どもは、コミュニケーションや言語発達の面に遅れが生じる傾向にあります。そのために、聴覚に問題が見つかったときには、できるだけ早く治療を行うことが大切です。聴覚障害のある子どもに対しては、聞こえを改善する訓練や治療、視覚的な手段を使ったコミュニケーションの方法を取り入れることにより言葉の獲得を目指します。耳鼻科疾患分野 先天性難聴|難病情報センター聴覚障害の原因出典 : 父親と母親の遺伝子の組み合わせや、遺伝子の突然変異などにより引き起こされる難聴です。遺伝的な要因の場合には、外耳やその他の器官の奇形など難聴以外の障害が同時に出現することがあります。遺伝以外の要因には、妊娠中にかかった以下の疾患があげられます。●風疹●サイトメガロウイルス感染●トキソプラズマ●ヘルペス感染●梅毒そのほか、●早産(妊娠37週未満での出産)●出生後の頭部外傷や、幼小児期の感染症(髄膜炎、麻疹、水痘)●ある種類の薬(ストレプトマイシンという抗生物質など)が難聴の原因となることもあります。また、耳の感染(中耳炎)によっても一時的に難聴となることがあります。耳の感染を繰り返していて、きちんと治療されていないような場合、難聴となってしまう可能性があるので注意して下さい。ここで紹介したものは、聴覚障害全体の原因の約6割であり、その他の原因についてはまだ調査が行われている途中です。幼少児難聴とは?|独立行政法人国立病院機構 東京医療センター聴覚障害のタイプ出典 : 聴覚障害は、聞こえを阻害する部位によってタイプが異なり、伝音性難聴、感音性難聴、混合性難聴という3つの種類があります。タイプごとに治りやすさや治療、改善の方法も変わってきます。外耳から中耳の間で、異物などが音の通り道をさえぎることで起こるのが伝音性難聴です。具体的な原因は、以下のような場合です。・腫瘍や耳垢などにより外耳道が塞がっている・鼓膜に傷がついている・中耳に水が溜まっている・中耳が菌などに感染し、膿(うみ)が溜まっているこれらが原因の難聴は一時的なものであり、ほとんどの場合は薬を飲んだり、溜まった水や膿(うみ)を抜く治療を行うと、聞こえは改善されます。感音性難聴とは、耳の奥の内耳と呼ばれる部位に障害がある状態を指します。遺伝的な要因や、妊娠中の感染が原因のときには、このタイプの難聴が起こることが多いです。音を感知する部分、その音を信号に変換する部分に障害が起こっているために、治療や手術によって聞こえを改善することができないことがあります。そのような場合には、補聴器や人工内耳の装着により、聞こえを補うことが必要です。上記のふたつの難聴が同時に引き起こされる場合が混合性難聴です。聴覚障害はどうやってわかるの?診断は?出典 : 聴覚の障害が重い場合には、生後間もなく聞こえの問題が発見されますが、中軽度の場合にはその発見が遅れる傾向にあります。子どもの聴覚障害の場合には、コミュニケーションや言葉の発達の面に遅れが生じることがあり、それらの遅れが聴覚障害を見つけるきっかけとなることが多いようです。聴覚障害のサインとしては以下のようなものがあります。・乳児のとき、一時期は出ていた「あー」「あうあう」などの声が出なくなった・大きな音がしたときに反応を示さない・生後6ヶ月を過ぎても、相手の声の真似をしようとしない・3歳までに単語をしゃべらない・言葉の代わりにジェスチャーを使うより年長のお子さんでは、難聴のサインとして以下のようなサインがあります。・周りの子どもより言葉の数が少ない・理解しにくい言葉でしゃべったり、非常に大きい(またはか細い)声を出したりする・何度も聞き返す・授業中ぼんやりしていたり、読み書きや計算が苦手だったりするこれらの項目に当てはまる場合にも、一概に聴覚障害であると判断することはできませんが、子どもの様子を見て、心当たりのある場合には一度聴覚検査を受けてみるとよいでしょう。聴覚検査は、病院の耳鼻咽頭科で受けることができます。聴覚検査で調べることができるのは主に2つです。聞こえの程度と、どこの部位に異常があるかどうかについてです。聴覚を調べる際には、月齢、年齢に応じた検査が行われます。6ヶ月未満の子どもによく行われているのは、脳波を測定する検査です。この検査では、小さなイヤフォンで音を聞かせます。子どもの頭の上に、コンピューターに接続されている電極をつけることにより、音に反応して脳波に動きがあるかどうか確かめます。年齢が上がってきたときには、スピーカーから音を流して何らかの反応があるか調べる検査や、音が聞こえたらおはじきを取ったり、ボタンを押したりする検査を行います。耳の聞こえのチェックは、1歳半、3歳の乳幼児健診のときに行われますが、聴覚障害のある場合には、治療を施す時期が早いほど、聴力が回復しやすく、言葉の学習をスムーズに行うことができます。ですので、定期検診が来るのを待つのではなく、なるべく早い段階で検査を受けるようにしましょう。聴覚障害の等級出典 : 聴覚障害の等級分類は、聴力のレベルと、言葉がどれくらいはっきりと聞こえるかを示す語音明瞭度により決まります。聴力のレベルは音の大きさを示すデシベル(db)という単位により表されます。デシベルの数値の示す音の大きさの目安は以下をご覧ください。どの程度大きい音からなら聴き取ることができるかという測り方をするため、聴力の場合は、デシベルの値が大きくなればなるほど、耳が聞こえにくいということになります。正常聴力の場合は、0デシベル近辺であり、難聴の程度が強くなるほどこの値が大きくなります。Upload By 発達障害のキホン厚生労働省により定められている聴覚障害の等級の基準は以下の通りです。◇2級:両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上、全聾(ぜんろう)の場合◇3級:両耳の聴力レベルが90デシベル以上の場合◇4級:両耳の聴力レベルが80デシベル以上の場合、または両耳による通常の話し声の語音明瞭度が50パーセント以下の場合◇6級:両耳の聴力レベルが70デシベル以上の場合、または片方の聴力レベルが90デシベル以上、もう片方の聴力レベルが50デシベル以上の場合上記のいずれかに該当する場合には、身体障害者手帳の交付を受けることができます。身体障害者障害程度等級表|厚生労働省身体障害者手帳とは、難聴を含め、障害のある人が取得することができる手帳です。平成23年の時点で聴覚に障害があり、身体障害者手帳を所持している人数は14万2000人です。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じて様々な福祉サービスを受けることができます。交付を受けるためには、指定された医師による診断書と意見書が必要となります。用紙は市区町村の窓口にある用紙に記入をして申請を行います。申請から約1ヶ月程度で身体障害者手帳が発行されます。手帳の申請については、以下のページに詳しく手順が載っているので参考にしてください。身体障害者手帳の所持者数|内閣府聴覚障害の治療・改善方法先天性の聴覚障害には、治療により治すことができるものと、治療によっては治すことができないものがあります。治すことができない聴覚障害の場合には、聴力を補うために何らかの改善方法がとられます。子どもが聴覚障害の場合には、早い段階で治療を開始するのが理想的といわれています。聴覚障害の改善には、難聴の種類や聞こえの程度により、その内容が変わってきます。ここでは、聞こえの改善のための方法についてお知らせします。出典 : 補聴器は、普通の大きさでの会話が聞こえにくくなったときに、はっきりと聞くための医療機器です。補聴器が有効となるのは、音を伝える部分の障害である伝音性難聴に対してのみとなります。音を脳に伝える機能の障害である伝音性の難聴には別の改善方法がとられます。補聴器にはたくさんの種類があり、また価格によってついている機能もさまざまです。最適な補聴器を選ぶために、補聴器の相談医から販売店の紹介を受けるようにしましょう。補聴器の購入の際には、保険は適応されません。しかし、身体障害者手帳をお持ちの場合には、補装具交付申請書を市区町村の福祉関係の窓口に提出することで1割負担で購入することが可能となります。人工内耳は、機能しなくなった内耳の部分に電極を挿しこみ、音を電気信号に変えて神経に送る方法です。人工内耳をつける場合には、以下の条件を満たした上で、手術が必要となります。・内耳が原因の感音声難聴である・年齢が1歳以上である・体重が8kg以上である・6ヶ月以上の補聴器装用によっても十分に聞くことができない人工内耳の手術には、健康保険が適用されるほか、自立支援医療(更生医療)、高額医療費支給などの各種医療費の助成を受けることにより、負担額の軽減ができます。詳しくは、お住まいの市区町村のHPをご確認ください。補装具費支給制度の概要|厚生労働省自立支援医療(更生医療)の概要|厚生労働省高額療養費制度|全国健康保険協会小児人工内耳適応基準|一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会難聴の原因部位によっては、手術が行われることがあります。手術が必要なものの例としては、音の聞こえを阻害している異物の除去や、新たな鼓膜の形成、中耳の骨を人工のものに置き換える必要がある場合などがあります。耳の手術は、耳の後ろを開いて行うものと、耳の穴から原因となっている部位に治療を施す方法があります。耳の手術について | 耳鼻咽喉科専門 医療法人財団 神尾記念病院内耳の循環や血行を良くするために、血管拡張薬、向神経ビタミン製剤(ビタミンB12)の服薬が処方されることがあります。薬物による治療法の効果や必要な量・期間には個人差があるため、服薬の際には、専門家の指導を受けながら用量・用法を守りながら行いましょう。難聴、耳鳴り|慶應義塾大学病院 KOMPAS聴覚障害のある子どもの学び場出典 : 聴覚障害があるときには、どのような場所で学ぶことができるのでしょうか。子どもの状況に応じて、必要な環境を柔軟に選択していくことが大切です。この章では、それぞれの学び場の概要や特徴をご説明します。聞こえやコミュニケーションの程度と照らし合わせ比較しながら、お子さんに合う学びの場はどこか検討してみましょう。Upload By 発達障害のキホン強度の難聴のある子どもや、まったく耳の聞こえない聾(ろう)の子どもが入学することができます。入学の際には、学校教育基本法の就学基準を満たしていることが条件です。就学できるかどうかは、保護者の意向を尊重しながら、市町村の教育委員会が総合的な視点から判断して、本人の聴力レベルと、コミュニケーション能力、学力から総合的に判断されます。学校教育法施行令第22条の3による、特別支援学校の就学基準は以下の通りです。・両耳の聴力レベルがおおむね60デシベル以上のもの・補聴器等 の使用によっても通常の話声を解することが不可能、または著しく困難な程度のもの特別支援学校の授業には、国語や算数などの一般的な学習のほか、自立活動が時間割に取り入れられます。例えば、補聴器の取り扱いや音の聞き取り、語句・文・文章の意味理解やコミュニケーションの改善についてが自立活動の内容になります。1クラス当たりの人数は平均で3人であり、少人数での教育が行われています。特別支援学校への就学(入学・転校等)をご検討されているお子さん、保護者に対して、見学や教育相談に対応している学校もあります。◇聾(ろう)学校また、特別支援学校という区分の中に「聾(ろう)学校」という学校があります。ですが、厳密には、学校教育法が2007年に改正された影響を受けて、聾(ろう)学校という個別の区分はなくなりました。現在、校名の変更や休校・統廃合が進められたりすることにより、全国的に聾(ろう)学校の数は年々少なくなってきています。聾(ろう)学校という名前がついていても、その受け入れは聴覚障害のある子どものみではない学校もあります。学校名は「聾(ろう)学校」 のままですが、他の障害種別の学校と統合されたり、知的障害教育部門が設置されたりするなど、様々な形態が見られるようになっています。詳しくは直接学校へお問い合わせください。Upload By 発達障害のキホン聴覚障害が比較的軽度の場合には、難聴の特別支援学級に通うことができます。就学ができる条件は、主として聞くこと・話すことにかかわる特別な指導をすれば、通常の教育課程や指導方法によって学習が進められるような場合です。難聴特別支援学級では、原則として小学校や中学校と同様の学習指導が行われます。それに加えて、必要に応じて、音の聞き取りや補聴器の扱いなどに関する自立活動が行われます。聴覚の活用のためにオージオメータや集団補聴器、発音・発語指導のための音声直視装置などの機器が用意されていることがあります。聴覚障害の程度が軽度な場合や、その学校・学級で適切な配慮・支援を実施できる場合には、通常の学級で指導することが適当なことがあります。難聴のある子どもが通常学級で学習する場合には、教室内の音の環境や、座席の配置などに配慮をしてもらう必要があります。Upload By 発達障害のキホン「通級による指導」は、学校の通常学級に在籍している軽度の障害のある子どもに対して、決められた時間のみ、在籍する学級の授業の代わりに受けられる特別な指導のことです。通称「きこえの教室」といわれています。平均的には、週1~2回ほどで、1回あたり90分ほどの個別指導を行います。必要に応じて、グループでの指導も取り入れられます。通級指導の先生は、子どもがよりよく通常学級に適応できるよう、連絡帳や連絡会を用いて、学級担任の先生方と密に連絡を取りあいます。聴覚に障害がある人のコミュニケーション手段出典 : 聴覚に障害のある人のコミュニケーション方法には、手話、指文字、読話、補聴器、筆談などの方法があります。コミュニケーション手段をいろいろな場面や相手に応じて使い分けたり、併用したりすることによってコミュニケーションを行っています。手や指の形、動きによって、お互いの意思を伝え合う方法です。手話は、話し言葉とは異なる文法や語彙をもつ、ひとつの言語として捉えられています。手話にもさまざまなバリエーションがあり、障害の生じた時期や手話を覚えた時期によって、使用される手話も異なります。50音をすべて指の動きで表現する方法です。指文字だけを用いる場合もありますが、手話と一緒に補助的に使われることがほとんどです。母音を口の形で表しながら、子音を手の形で表すコミュニケーションの方法です。キュードスピーチは、母音を口の形で表すために、発音の勉強にも使われます。発音を1文字ずつ丁寧に表すときに使用します。習得すると、会話と同じかそれ以上のスピードでコミュニケーションをとることができるようになります。紙やボードへの読み書きによって、意思を伝え合う方法です。特別な技術を習得することなく取り入れられるコミュニケーションの手段です。ただ、文字による情報だけでは細かいニュアンスや感情が伝わらない場合があります。口話は、話し手の口の動きや表情などを見て相手が発する言葉を捉え、話し言葉を用いて意思を伝える方法のことをいいます。口話は、耳の聞こえる人とのコミュニケーションにおいては便利なものではありますが、伝わりにくい場合もあります。例えば、「たばこ」「たまご」「なまこ」など口の動きが似ていることばや、「協力」と「強力」など同じ発音の言葉などです。また、暗い場所や、相手との距離が離れている場合には、相手の口の動きがわかりくいために、ジェスチャーや筆談と併用されて使われます。聴覚障害のある子どもが周りにいる方へ出典 : 聴覚障害のある子どもは、耳から情報を取り入れることができない、もしくは取り入れにくいために、生活の中でさまざまな困りごとに出くわします。聴覚障害のある子どもに対して、どのような配慮をすればより過ごしやすくなるのかご紹介します。補聴器や人工内耳をつけていても、騒音に囲まれた場所では、相手の声が聞こえないこともあります。ですので、補聴器や人工内耳をつけていたとしても、聞こえの困難を抱えていることを理解して対応する必要があります。例えば、静かな部屋では言葉のやりとりができるのに、にぎやかな場所に行くと、相手の声が聞き取れず、急に無口になるということが生じます。音声での会話に加えて、視覚的に情報を示すことで、周囲と円滑にコミュニケーションをとることができます。そのほかには以下のような配慮が考えられます。・向かい合った状態でアイコンタクトをとり、相手が自分の顔を見ているか確認してから話し始める・文節で区切りながら、ひとつひとつの単語をはっきりと話す・複数の人数で話すときには、手をあげるなどして話し手が誰かわかりやすくする・明るい場所で話す耳の聞こえない子どものコミュニケーションの方法は、手話に限らず、さまざまです。どの手段が確実にコミュニケーションできるのか把握しておくことが重要で す。確実にコミュニケーションできているかどうかを確認するには、大人が話したことをもう一度言わせたり、質問に答えさせたりします。そのときには、指文字を使ったり、文字で書かせたりします。そのほか、子どもの実態に合わせて、具体物や絵カードなどの視覚的な情報を使い確認をしてみましょう。子どもがどのような方法を用いてコミュニケーションをとるのか知っておくことで、円滑なやりとりを行うことができます。聴覚に障害があると、音の情報がはっきりと聞こえないために、周りの状況がつかめず、場にそぐわないことをしたりすることがあります。周りが騒がしかったり、話し手の声が小さい場合には、その場の状況をもう一度伝えてあげるなどして、大人が援助してあげるとよいでしょう。その他には、クラクションや、近づいてくる車の音が聞こえないことがあります。一緒に外出する際には、あらかじめ危険な場所などを伝えておくとともに、大人が道路側を歩くなどの配慮をしてあげましょう。まとめ出典 : ここでは、子供の聴覚障害の原因、種類や障害の等級の判定、改善方法や、周りの人が気をつけておきたいことについてご紹介しました。聴覚に障害が見つかった場合には、できるだけ早くに治療、改善を行うことが大切です。生まれてくる子どものうち、1000人に1人は聞こえに障害があるというデータが示すように、子どもの聴覚障害は決して珍しいことではありません。現在は、子どもが新生児期のときにスクリーニング検査の受診が進められており、早期発見が進んできてはいます。ですが、子どもの聞こえに何か不安があるときには一度検査に行くことをおすすめします。聞こえの障害の程度が中軽度の場合には、周囲から気づかれにくいことが多く、耳の聞こえがよくない状態で長い間過ごしてきています。必要な情報を聞き取ることができないために、言葉やコミュニケーションの面に遅れが生じる傾向にあります。聴覚障害のある子どもは、耳の聞こえる子どもに比べると、言葉を覚えるのに長い時間がかかります。言葉を覚えさせようと急かすのではなく、子どもの成長の可能性を信じて待つことが、子どもの育ちを支えます。子どもに対して積極的に関わっていこうとする大人の姿勢が、子どものコミュニケーションをより豊かなものにしていくでしょう。
2016年11月21日精神障害者保健福祉手帳とは?出典 : 精神障害者保健福祉手帳とは、所持している人が一定程度の精神障害がある状態であることを認定するものです。精神障害のある方が自立し、社会参加を積極的に行えるよう、様々な制度やサービスの利用をしやすくすることを目的にしています。精神障害者保健福祉手帳は1995年10月に制定されました。療育手帳、身体障害者手帳より比較的新しくつくられた制度です。各都道府県と政令指定都市によって発行され、平成24年度末の統計で69.5万人を超える人が交付を受けています。精神保健及び精神障害者福祉に関する法律精神障害者保健福祉手帳の交付者数l 内閣府精神障害者保健福祉手帳は、療育手帳や身体障害者手帳と比べて受けられる制度の条件が厳しかったり、サービス自体が限られている場合があったりすることで、取得するべきかどうか悩んでいる方も少なくはないようです。しかし、精神障害者保健福祉手帳制度は、取得することで様々なサービスや割引・給付が受けられるようになるほか、教育を受けたり就労するにあたり配慮や支援を受けやすくもなる、とても便利な制度です。高機能自閉症などの発達障害である場合、知能指数が判定基準を上回るために療育手帳の交付が認められない場合があります。その際にも、自閉症の症状による日常生活の困難度合いが大きかったり、二次障害としての精神障害が現れていたりするときは、精神障害者保健福祉手帳を取得できる可能性があります。精神障害者保健福祉手帳交付の対象となる疾患出典 : 精神障害者保健福祉手帳は、何らかの精神疾患により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方を交付対象としています。対象となる精神疾患には、次のようなものが含まれます。・統合失調症・非定型精神病・そううつ病・てんかん・中毒精神病・精神遅滞を除く器質精神病・高次脳機能障害・精神神経症状をともなう発達障害発達障害に関しては、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)において精神疾患のカテゴリーに含まれていることもあり、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となっています。しかし、二次障害による精神症状の有無など、交付判定に細かい基準が設けられているため、詳しいことはお住まいの市区町村に相談することをおすすめします。また精神障害者保健福祉手帳を受けるためには、精神疾患があると診断された日から6ヶ月以上経過していることが必要になります。『ICD-10精神科診断ガイドブック』 2013年 中山書店/刊精神障害者保健福祉手帳の区分と判定基準は?出典 : 精神障害者保健福祉手帳の区分は3つに分けられており、1等級から3等級まであります。・1級....精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの(概ね障害年金1級に相当)・2級....精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの(概ね障害年金1級に相当)・3級....精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの(概ね障害年金3級に相当)みんなのメンタルヘルスl厚生労働省実際に日常生活などにおいてどのような問題を抱えている場合に、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となるのか、詳しい判定基準を紹介します。◇1級:精神障害によって、常に誰かの援助がなければ生活を送ることが難しいと感じられる状態です。例えば外出や食事の用意、入浴などの身の回りのことを一人では行うことができません。◇2級:誰かの助けがなくても一人で外出したり、障害者自立支援法に基づく就労支援、小規模作業所などに参加して単純な仕事をしたりすることはできます。しかし、予想外の出来事の発生など、少なからず本人がストレスを感じる状況に直面した場合には対処しきれない傾向があります。日常生活では食事をバランス良く用意するなどの家事をこなすために、誰かのアドバイスや助けを必要とし、部屋の片づけや身の回りをきれいに保つことを一人で行うことを難しいと感じる傾向があります。◇3級:一人で外出したり、障害者自立支援法に基づく就労支援や、小規模作業所などに参加したりすることができます。それに加えて一定の配慮がある職場では、一般就労ができる場合もあります。しかし、本人が過大なストレスを感じる状況に直面してしまった場合に一人で問題を解決することが難しい傾向があります。これらの判定基準はあくまで目安です。申し込みをしてから各都道府県・政令指定都市と市の精神保健センターでの審査があり、そこで何級に当てはまるかが初めて決まります。例えば判定基準が2級に当てはまっている上に、医師から2級相当の症状があると診断された場合でも、2級の精神障害者保健福祉手帳を取得できるとは限りません。その後の精神保健センターでの審査で3級と認定されてしまう場合も少なからず発生してしまう場合があります。不安な場合はかかりつけの医師や自治体に相談しましょう。精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について精神障害者保健福祉手帳のメリット①保育・教育・就労面の援助出典 : 精神障害者保健福祉手帳を所持していることにより、様々なサービスへの申請や利用のやりとりを円滑にすることできます。保育、教育、就労面での援助を受ける上で、精神障害者保健福祉手帳はいわゆる“パスポート”のようなものだと言えるでしょう。◇保育園への入園自治体によっては、子ども本人や保護者が精神障害者保健福祉手帳を持っている場合や、精神障害者保健福祉手帳を持っていて介護が必要な家族がいる場合に、入園の優先順位が高くなり、入園しやすくなることがあります。◇特別支援学校への入学特別支援学校への入学を希望する場合、出願の際に子どもの障害の程度を証明するものとして、精神障害者保健福祉手帳の写しの提出が必要になる場合があります。精神障害者保健福祉手帳の所持者は、特定求職者雇用開発助成金や障害者トライアル奨励金、障害者雇用奨励金などの支給対象となる場合があります。加えて、就労移行支援を利用したい場合に、障害があることを示す資料として提示することができます。就労移行支援を利用することができれば、スタッフによる支援を受けながら、精神障害による症状や困難も踏まえて自分に合った仕事をさがすことができます。また、精神障害者保健福祉手帳の所持者は、一般枠での雇用枠だけでなく、障害者雇用枠への求人応募ができるなど、就労の可能性が広がります。精神障害者保健福祉手帳のメリット②各種サービス・割引を受けられる出典 : 精神障害者保健福祉手帳の提示で様々なサービスが受けられます。以下に代表的な割引やサービスをご紹介します。精神障害があり、日常生活を送る上で支障がある方への支援を行っている事業です。市区町村が地元の事業所と協力して提供しているサービスとして、ホームヘルプサービスなどがあります。ホームヘルプサービスとは精神障害があり支援を希望している家庭にホームヘルパーが伺い、掃除、洗濯、調理などの家事援助をしたり、買い物の付き添いなどの身体介護および通院などの付き添いの外出介護などを行ったりするサービスです。これらのサービスを受けるために必ず精神障害者保健福祉手帳を持っている必要はありませんが、所持していることで、申請を比較的スムーズに行えるようになる傾向があります。しかし、申請方法やサービスは市区町村によって異なる場合があるため、お住まいの自治体に問い合わせることをおすすめします。精神障害者居宅生活支援事業の実施についてl 厚生労働省居宅生活支援やその他のサービスについてl 大阪府松原市精神障害者保健福祉手帳の所持に加え、ある一定の条件を満たしている場合は、以下の各種サービスで利用料の割引・減免が受けられる場合があります。◇NHK放送....受信料の全額又は半額が免除されます。◇公共交通機関の運賃割引・減免....バス、電車、タクシーなどの公共交通機関は精神障害者保健福祉手帳を提示することにより割引、減免になる場合があります。しかしJRや航空運賃の割引の適用を受けることはできなかったり、自治体によって制度が異なるため注意が必要です。◇携帯電話の割引....docomo、au、softbankなど携帯会社による料金の割引制度があります。ハートフレンド割引l Softbankスマイルハート割引l au KDDIハーティ割引l docomo◇公共料金の割引・減免....水道代などの公共料金の基本料金が減免される場合があります。条件や割引金額は自治体によって異なる場合があるため、確認することをおすすめします。水道料金等の減免l 横浜市健康福祉局精神障害者保健福祉手帳の区分によっては、医療機関等で診療を受けた際の医療費の一部が助成対象となる場合があります。現在、主に該当する人は1級の精神障害者保健福祉手帳を所持している方です。災害発生時に1人で避難することが難しい障害のある方に対して、身の安全を確保するための「災害時要援護者支援制度」を実施している自治体が数多くあります。精神障害者保健福祉手帳の区分などの条件を満たせば、この制度の対象者となることができます。遊園地やプール、映画館などのレジャー施設には、精神障害者福祉保健手帳を持っていると無料になったり割引が受けられる施設があります。また、利用がスムーズになるよう配慮やサービスを受けられる場合があります。上記のサービス以外にも自治体によって様々な支援策があるため調べてみるのもよいでしょう。障害者手帳で行こう!l 一般社団法人シンシン精神障害者保健福祉手帳のメリット③税の減免・控除や給付に役立つ出典 : 精神障害者保健福祉手帳は、金銭面でのサポートを受けるためにも有効です。精神障害者保健福祉手帳を持っている人が対象になりうる主な制度をご紹介します。精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人で障害の程度が1級と表示されている人は特別障害者、2級または3級と表示されている人はそれ以外の障害者として障害者控除の適用を受けることができます。年末調整や確定申告時に忘れずに申告しましょう。◇所得税の控除納税者本人が障害者であるときは、障害者控除として27万円(特別障害者のときは40万円)が所得金額から差し引かれます。控除対象配偶者又は扶養親族が障害者のときは、1人当たり27万円(特別障害者のときは1人当たり40万円)の障害者控除等を受けられます。控除対象配偶者又は扶養親族が特別障害者で、納税者またはその配偶者もしくは納税者と生計をともにする親族のいずれかと常に同居しているときは、障害者控除として1人当たり75万円が所得金額から差し引かれます。◇住民税の控除住民税の場合、障害者控除は26万円(特別障害者に該当する場合は30万円)を控除することができます。◇相続税の障害者控除相続人が障害者である場合は、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者のときは20万円)が障害者控除として相続税額から差し引かれます。◇自動車税・軽自動車税の減免、自動車取得税の減免精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方が使用する車について、本人が1級の手帳を持っているなどの一定の条件を満たす場合は、申請により自動車税・自動車取得税の減免を受けることができます。◇預貯金が非課税の対象となる(マル優、特別マル優)精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人が銀行などの350万円までの預貯金、貸付信託、公社債、公社債投資信託などで受け取る利子などについては、一定の手続を要件に非課税の適用を受けることができます。これをマル優、特別マル優と呼び、預け入れ等の際に金融機関の窓口などに確認書類として手帳を提示して確認を受ける必要があります。◇特別障害者手当精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活において常時特別の介護を必要とする特別障害者に対して手当が給付されます。主に特別障害者の負担の軽減や、福祉の向上を図ることを目的にしています。重度の精神障害者保健福祉手帳を持っている人については、特別障害者手当受給申請時の診断書の提出を省略できる場合があります。特別障害者手当は、精神または身体に著しく重度の障害がある在宅の20歳以上の方に支給されます。目安としてはおおむね身体障害者手帳1、2級程度及び重度の精神障害が重複している方、もしくはそれと同等の疾病・精神障害のある方です。支給額は月額26,830円ですが、病院又は診療所に継続して3ヶ月を超えて入院されている方、施設等に入所されている方は支給されません。また、所得制限があり、申請者の所得が所得限度額を超える場合や、受給者の配偶者・扶養義務者の所得が所得限度額以上であるときは、手当は支給されません。特別障害者手当l 厚生労働省精神障害者保健福祉手帳の交付によるデメリットはあるの?出典 : 精神障害者保健福祉手帳は、療育手帳、身体障害者手帳より受けられるサービスや支援策が少なく限られている場合があります。また、周囲の理解が得られないかもしれないという不安から、精神障害者保健福祉手帳を所持していることを知られたくないと考える人や、取得することをためらう人も少なくないようです。ですが、精神障害者保健福祉手帳を所持していることを職場や身近な人に伝えなくても、受けられるサービスはたくさんあります。精神障害者保健福祉手帳は2年おきに更新し続けることにより、一生を通して様々な割引やサービスを受けることができますが、手帳を取得してから特にこれらのメリットを感じないと判断する場合、更新時に返還することもできます。手帳の返還手続きを行ったのちは、登録されている生年月日や交付番号は削除されるなどの多くの配慮がなされています。そのため、精神障害者保健福祉手帳を取得するデメリットは、実際のサービス利用等に関しては比較的小さく、周囲の理解が得られないなどの心理的・社会的な懸念によるものが中心となると言えます。不安な人は、手帳を所持していることをどこまで周囲に伝えるかを、身近な人やカウンセラーなどに相談してみると良いでしょう。精神障害者保健福祉手帳の申請方法は?出典 : 精神障害者保健福祉手帳は、病院で精神疾患があると診断された日から6ヶ月以上経過して、初めて申請することができます。病名変更や転院がある場合には医師にご相談ください。提出された書類を審査し、2ヶ月程度で発行されます。診断書記述料は病院によってそれぞれですが、一定の金額を助成してくれる制度がある自治体もあるため確認してみるとよいでしょう。障害者手帳交付診断料支給要綱l 秋田県横手市Upload By 発達障害のキホンステップ1:区市町村の障害福祉担当窓口の方に申請したい旨を伝え、説明を受けて必要書類の様式をもらいます。Upload By 発達障害のキホンステップ2:申請に必要な書類を揃えて役所の窓口に行き、申請します。必要書類の一つ、障害者手帳用診断書には2つの条件があるため注意してください。・医療機関での初診日から6ヶ月以降に作成されていること・作成日が申請日から3ヶ月以内のもの年金証書の写しの提出が必要になるのは、精神障害による障害年金もしくは特別障害給付金を受給している場合に限ります本人の写真は縦4cm×横3cm、脱帽・上半身で撮影します。申請した日から1年以内に撮影したものに限ります。裏面には氏名・生年月日を記入する必要があります。平成28年1月よりマイナンバー制度が開始したため、個人番号(マイナンバー)や身元確認のできる書類が必要となりました。身体障害者手帳には個人番号(マイナンバー)は表示されません。精神障害者保健福祉手帳l 東京都福祉保健局精神障害者保健福祉手帳制度の注意点出典 : 精神障害者保健福祉手帳は取得後も定期的に更新が必要です。更新は2年ごとにあり、有効期限の3ヶ月前から申請できます。その際には新規申請のときと同様の必要書類と、現在交付されている手帳の写しが必要となります。また有効期限内に精神障害の状態が悪化したり、障害年金の等級が変更となったりした場合には、障害等級の変更を申請することができます。精神障害者保健福祉手帳l 山口県岩国市まとめ出典 : 精神障害者保健福祉手帳は所持している人が、一定程度の精神障害がある状態にあることを認定するものです。精神障害を抱えている人が自立し、社会活動に積極的に参加できる暮らしやすい社会を実現するために、手帳を持っている方々には様々な支援策がもうけられています。精神障害者保健福祉手帳は1級から3級まで区分が分かれており、受けられる支援は区分や自治体によっても異なります。療育手帳や身体障害者手帳と比べて支援がまだ不十分な面もありますが、早期に精神障害者保健福祉手帳の交付を受けることで、いち早く適切な支援が受けやすくなります。外出がしやすくなったり、生活がしやすくなったり、金銭面での割引や給付などの社会の援助やサービスが受けられることも魅力です。記事を読んで興味や必要を感じたら、お住まいの福祉事業窓口に相談しに行ってみてください。
2016年11月20日初めまして、この記事に目を留めて下さりありがとうございます。これを読まれている皆様は発達障害との縁が多少なりともある方だと思います。お子様への接し方が分からない。学校などの集団生活になじめない。他人と考え方・感じ方が異なるため誤解されやすい。抱えていらっしゃる悩みごとは様々だと思います。そこで発達障害当事者である私が、自分の障害とどのようにして付き合い、受け入れ、いまの仕事をしているかについて書かせていただきました。今回は、私の幼少期の学校生活についてです。「障害」を周りの大人たちが認識したのは小学生のとき出典 : 小学生のころ、私は自分自身に障害があることを認識しておりませんでした。私の異常を最初に気づいたのは周囲の大人達で、小学1年生のときでした。この時期になっても未だに私だけ読み書きができなかったためです。私は文字の形を認識することができず、平仮名が書けませんでした。ようやく書けるようになっても、文章を書くことはとても難しかったです。作文の宿題が出ると、机に向かって書こうとするのですが、2~3時間頑張ってやっと2~3行書けたぐらいでした。読解については、文字を1文字ずつしか読めず、意味も理解できませんでした。例えば「がっこう へ あるいて いく」なら「が、つ、こ、う、へ、あ、る、い、て、い、く」か「が、つこう、へある、いていく」としか読めず、単語の認識ができなかったようです。さらに算数も、数字の意味や計算の仕組みを理解する事ができませんでした。1+1すらできなかったそうです。自分の努力と適切な支援のおかげで、勉強ができるようになった出典 : 私の様子を担任の先生から指摘され、手を尽くして原因を調べた母は、「発達障害」の存在を知りました。当時はまだあまり知られていない障害でしたが、運よく発達障害を研究している機関を見つける事ができました。そこで私に下された診断は学習障害(LD)。でもこのとき私はまだ、自分に障害があるということをきちんと認識できていませんでした。研究機関に通って母と医師が何やら話しているものの、私は内容が自分に関することだとは思いもせず、退屈だったので同じ部屋内で遊んでいました。しかしこの診断があったことで、母は「根気よく繰り返し、できなくてもイライラせずに、できた事があれば必ず褒める」という教育方針のもとで私を勉強させてくれました。最初なかなか進歩は見られませんでしたが、学校の授業で漢字が出てきてから変化が見られました。例えば「つき」という平仮名だけだとその意味がわからなかったのですが、漢字の「月」は三日月の絵が崩れて漢字になったという成り立ちを見ながら教えてもらうことで、漢字の形と意味を理解できました。漢字を覚えたことがきっかけで、「文字を組み合わせて単語をつくる」ということもだんだんと理解できるようになり、これをきっかけに文章も徐々に読めるようになりました。作文はやはりかなり苦手で、宿題はいつも母が隣で手助けをする必要がありました。しかし、私が強く「書きたい」と思ったことについては、周囲が驚くほど筆が進んだそうです。算数については、数を数字以外のもので視覚化する事で分かるようになりました。例えば先ほどの1+1は、りんごを用意して実際に数える事で理解できました。ただし、文章問題は問題を読み解く必要があるため、できるようになるまでかなり時間がかかりました。このように私は、苦手なことを他の子どもたちとは違う方法で勉強することで、学習の遅れを補うことができました。いじめもあった。でも得意なことをがんばることで、周りに認めてもらえた出典 : 同級生達を始めとした人間関係ですが、小・中・高のどこでも入学してから数ヶ月の間よくいじめられていました。幸い私の周りには助けてくれる大人たちがたくさんおり、大事には至りませんでした。ただ、担任の先生は私の扱いに困っていたようで、よく怒られていたのを覚えています。でも私自身は何が問題で怒られているのかさっぱりわかりませんでした。何が原因だったのか、はっきりとした事は不明ですが、私は授業中に逃げ出して行方不明事件になる一歩手前まで大騒ぎになった事がありました。このように、後先考えず衝動的に行動するところが、恐らく周りから見て異質に見えたのではと思います。このように書くと「発達障害のある子どもは学校になじめないんだ」と思われるかもしれませんが、そんな事はありません。そして、私自身の得意分野が周りに認められたことも、同級生たちとの関係が良くなった一因でした。小学校3~4年生のころ、クラスメイトの誕生日カードを作る宿題がありました。私はこの宿題に夢中になり、夜中の12時頃まで絵を描き続けて、本来は作る必要のない表紙の絵まで描いたそうです。そのとき母は「学校の成績ではあまり重要ではないことに時間を割いて…」と思ったそうですが、夢中になって完成させたカードはクラスメイトの間で好評になり、同級生たちと仲良くなるきっかけになりました(ちなみに誕生カードを贈ったクラスメイトとは、特に親しい間柄ではありませんでした)。何かを作りだすと夢中になり、図工や美術の科目で良い評価を受けることは、その後もたくさんありました。こういった経緯で、周りから見た私は「変わり者だが、すごいやつ」という認識になっていき、次第に同級生たちから認められるようになっていきました。周囲には「障害は完治した」と思われた。でも自分の心の中には違和感があった出典 : 多くの支援と私自身の努力により、学校の成績や友達関係などの問題は解決していきました。これにより、先生も母も「学習障害は完治した」と思ったそうです。特に母は、障害に対する忌避感も重なって、私に「障害がある」とハッキリと伝えることはしませんでした。これでめでたしめでたし…のように見えて、実はそうではありませんでした。確かに目に見えて明らかな問題は解決しましたが、私は他人と打ち解けることが苦手で、周りとは何とも言えない壁を感じ続けていました。例えるなら私と他人の間には常にガラスの壁があり、わかり合えず、私の声は向こう側に届いていないようでした。この壁に、長い間私は1人で悩まされていました。「障害は完治した」という周囲の認識は、成人してからの私の生活にも大きな影響を与えることになります。障害を受け入れた今、保護者や学校に思うこと出典 : 障害があっても、今後も社会で生きていく以上、学校など何かしらの社会的な集団に所属しておく必要はあると思います。でも自我が確立していない幼少期に、所属している集団で自分の存在を認めてくれる人がいないと、本人が自分を認められず、社会で生きていくことは困難になってしまうかもしれません。ありのまま生きる姿を、「障害」としてではなく「個性」として接してくれる人がいれば、その子にしかない才能を発揮して力強く生きてくれるでしょう。私はいじめも経験しましたが、個性の一部として周囲の人に受け入れられていたため、自分を異常だなどと追い込んだり、できないことや失敗したことを障害のせいにすることはありませんでした。そこで、発達障害のお子さんを持つ親御さんへ、発達障害の当事者としてお願いがあります。どうか皆さんには、お子さんの最大の理解者になって欲しいと思います。良くいわれている事だとは思いますが、発達障害=悪いことではありません。だから、悔やむことも、恥じ入ることも、責められることも何一つありません。悪い方向に傾くのか良い方向に傾くのか、それはこれからの行動次第です。いじめや学習障害を乗り越えた私ですが、自分自身に障害があるとは認識しておらず、障害と向き合うことをしていませんでした。このことが将来に影響を及ぼすこととなります。次回は私が大人になってから仕事をするにあたり、ぶつかった困難についてお話します。
2016年11月02日気分障害とは出典 : 気分障害とは常に気分が落ち込んだり、逆に高まることで日常生活に様々な支障をきたしてしまう心の病気です。この障害名は世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)により定められています。気分障害とは気分に関する障害がある病状・疾患を一群としてまとめたものをさしますが、主に以下が含まれます。・うつ病エピソード・躁(そう)病エピソード・双極性障害(躁うつ病)・反復性うつ病性障害・持続性気分障害「エピソード」とは、症状が現れている状態であるということを表す用語です。上記の分類に当てはまらない場合は、その他の気分障害や特定不能の気分障害と診断されます。人は生活を送っていると少なからず嬉しいことや悲しい出来事に直面しますが、その際に気分が上がったり、気分が落ち込んだりしてしまうことは当たり前のことです。しかしこのように発生した感情を、自分でコントロールできなくなることがあります。こうした状態が一定期間以上続いて仕事や私生活など普段の生活に支障がでている場合は、気分障害の可能性があります。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊気分障害の種類と症状出典 : 『ICD-10』によると気分障害は大きく分けて5つに分類することができます。うつ病エピソードは気分の持続的な落ち込みを主体とした症状が現れている状態のことです。医師によってうつ病エピソードが確認されると、いわゆるうつ病と診断されます。うつ病エピソードが当てはまると診断された場合は、他の細かい基準が用いられ障害の程度が判断されます。厚生労働省のデータによると、日本においては「一生のうちにうつ病になる頻度は約15人に1人と考えられている」とされるとてもメジャーな疾患ですが、その中の4分の3の人は治療を受けたことがないと言われています。症状としては、・通常なら快楽を感じる活動に対して興味または喜びを感じなくなる・喜怒哀楽などの感情の変化が顕著に無くなってしまう・通常より2時間以上早く起床する・重度の抑うつ気分が午前中に現れる・食欲が激しく低下する・体重の減少・様々な欲求への著しい減退が挙げられます。現れる症状は人それぞれですが、『ICD-10』によるとこれらの症状のうち4つ以上の症状が2週間以上つづくとうつ病の基準を満たしていると診断されます。また、うつ病が重症になると妄想の症状が出ます。代表的なものは体の過度な不調があると妄想する心気妄想、自分はまずしいと思い込んでしまう貧困妄想、自分は犯罪など悪いことを行ってしまったと確信してしまう罪業妄想です。1990年のWHOの研究では「健康な生活を障害する疾患」の4位として発表されていましたが、2020年には虚血性心疾患に次いで2位に上昇すると言われています。その理由として社会のストレス要因が増えてきていることがあると言われています。また慢性疾患を抱えているとうつ病が合併しやすいといわれていることも挙げられます。例えばがんを発症している人のうちの20~38パーセント、糖尿病は25パーセントの人がうつ病を合併していると言われています。こころの耳l 厚生労働省気分障害l 慶応義塾大学病院躁病エピソードは爽快感、身体の快調感、幸福感があり、自信に満ち溢れ楽観的な考えに支配される症状が現れている状態のことです。医師によって躁病エピソードが確認されると、いわゆる躁病と診断されます。躁病エピソードが当てはまると診断された場合は、他の細かい基準が用いられ障害の程度が判断されます。躁病の症状としては、・活動的になる・口数が多くなる・注意不足、集中力低下によるミスが増える・睡眠欲求の低下・性的欲求が高まる・リスクを考えない浪費や無謀な運転などの常識をはずれた行動を起こす・社交的になる、または過度に馴れ馴れしくなるが挙げられます。『ICD-10』によると躁病の診断には上記の症状のうち3つの症状が4日以上持続していること、日常生活に本人が感じる程度のトラブルを起こしてしまっていることが条件となります。多くの場合、躁病の症状は徐々に始まり、何となく元気がみなぎってきたり、仕事の能率が上がったりすることで調子がいいと感じていきます。症状が重くなっていくと活動性が増加し、多くのアイデアを実行しようと一日中活動し続けます。この場合に睡眠時間が短くなってしまったとしてもあまり疲れたと感じません。当初は意識的に活動量を調整するように気をつけることができます。しかし、次第に調子が出すぎているという認識がなくなり周囲の人を考えない言動をするようになります。最終的には口数が多く、自己主張が強くなり、しきりに他人の世話を焼こうとし、対人関係トラブルを起こしてしまう傾向にあります。生涯にわたって躁病の症状しか発症しない単極性躁病はとても珍しく、躁病エピソードを発症している人のほとんどは双極性障害を発症しているといわれています。うつ病エピソードのみを2週間以上継続し、2回以上繰り返すと反復性うつ病性障害と診断されます。反復していると診断される基準として、先述したうつ病を発症した後2ヶ月以上同じような症状が現れない期間が存在することがあげられます。反復性うつ病性障害の一例として季節性感情障害が挙げられます。季節性感情障害とは主に秋から冬にかけて抑うつ状態となり、春には症状が改善するなど、抑うつ症状になる期間と回復する期間の転換が1年のうちの特定の時期に起こる疾患です。双極性障害とは一般的に躁うつ病と呼ばれる疾患です。双極性障害はうつ病エピソードと躁病エピソード両方を反復する場合、基準に当てはまると診断されます。初めのエピソードを発症してから次のエピソード発症するまで平均5年程度かかるといわれますが、エピソードを繰り返すごとに再発までの期間は短くなり、一つ一つのエピソードの継続期間はながくなるといわれています。躁病エピソードは急に発症することが多く、2週間から5か月程度持続します。一方うつ病エピソードは徐々に発症し、躁病エピソードに比べて発症期間が長い傾向にあります。双極性障害によって気分が高揚し、いらいらしたり、注意散漫になったり、誇大的になったりするなど対人関係などにも様々な障害を引き起こすことがあります。双極性障害は再発率が高いと同時に、自殺をしてしまう確率が精神障害の中で最も高い精神疾患の一つといわれています。双極性障害(躁うつ病)l 前田クリニック主に気分循環症・気分変調症をまとめて指す疾患です。躁病やうつ病の症状は当てはまらないけれど、明らかに気分が変わっていることが分かる状態をさします。■気分循環症通常は成人早期までに発症する双極性障害の軽症型です。うつ病エピソードと双極性障害の症状すべての条件を満たさない程度で、数日単位で落ち込んでいる状態と気分が良い状態が不規則に反復する期間が2年間以上続きます。気分循環症の症状としては、うつ病期間と気分高揚期間にそれぞれ3つ以上の症状が当てはまることが条件となります。うつ病期間:・エネルギーあるいは活動性の低下・自信が急に無くなるなどの自己評価の激しい変化・不眠・集中ができなくなる・引っ込み思案になり、社会からひきこもる・欲求の低下、喜びの感情の喪失・口数が少なくなる気分高揚期間:・エネルギーがありあまり、活動性が高くなる・睡眠欲求がなくなる・自己評価が過大になる・頭の働きがとてもよくなる・社交的になり、人付き合いがとてもよくなる・口数が多くなる・欲求を追い求めるようになる・過剰に楽観的になったり、過去に成し遂げたことに対して過大評価をしてしまう軽うつエピソードが優位の抑うつ型、軽うつエピソードと軽躁(そう)エピソードが同じ頻度で出現する定型的な気分循環症、軽躁(そう)エピソード優位の軽躁型の3つのパターンがあります。抑うつ型を発症している人が一番多く、割合としては気分循環症を発症している人の50パーセントを占めていると言われています。■気分変調症うつ病の診断基準を満たさない程度の軽度の抑うつ状態が2年以上持続する疾患です。うつ病と違い比較的短期間であれば気分が落ち込まない正常な期間が存在しても診断内容に影響がないと言われています。気分変調症の症状としては、気分循環症のうつ病期間に発症する症状に加えて、・涙もろい・物事に対して絶望感を感じる・日常生活でこなさなければいけない課題を対処しきれないという考えに陥る・将来や過去の出来事に対して考え込んでしまうなどの症状を発症します。これらの症状のうち3つ以上が当てはまると気分変調症を発症していると診断されます。持続性気分障害を発症している人自身は無気力感や気分の大きな落ち込みを感じていますが、社会的・職業的にはトラブルが発生していない場合が多いです。そのため本人も周囲の人も疾患を発症していると認識できず、本人は不調をそのままにしてしまう傾向があります。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊気分障害を発症しやすい年齢出典 : うつ病はいかなる年齢においても発症しますが、発症率は思春期以降に大きく増加します。平均発症年齢は20歳代ですが、高齢者になって初めて発症する人も少なくはありません。厚生労働省研究班のデータによると、日本においては「一生のうちにうつ病になる頻度は約15人に1人と考えられている」とされています。女性のほうがかかりやすく、有病率は男性の1.5倍~3倍であると言われています。これは女性ホルモンの増加、妊娠、出産など女性に特有のトラブルが多いことが原因の一つであると考えられています。うつ病をしっていますか?l 厚生労働省双極性障害の発症年齢をみてみますと、15~19歳が最も多く、20~24歳がそれについで多く、それ以上では50歳以上も稀にあると言われます。発症平均年齢は30歳と言われています。5、6歳くらいの子どもについても双極性障害の発症が認められていますが、ADHD(注意欠陥・多動性障害)との識別が難しく、まだ研究が進められている段階です。双極性障害l 前田クリニック気分循環性障害は通常青年期または成人期早期に始まる疾患です。性別関係なく発症すると言われており、子どもの気分循環性障害では症状発症の平均年齢は6.5歳です。気分循環性障害がある人が双極性障害を発症する可能性は15~50パーセントです。気分変調症は小児期、青年期、あるいは成人期早期に発症し、慢性化する場合が多いです。『DSM-5 』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)2014年医学書院/刊気分障害の原因出典 : 気分障害が発症してしまう理由として遺伝子、ストレス、環境、性格などの様々な要因が複雑にかかわりあっていることが挙げられます。主な要因は抑うつ症状の強いうつ病・気分変調症、もしくは躁うつ症状がでる双極性障害・気分循環性障害のどちらかによって異なります。しかしまだはっきりとした原因は解明されておらず、今後更なる研究が必要とされています。うつ病・気分変調症は主に性格、ストレス、生物学的要因が大きく関与しているといわれています。かつてはうつ病や気分変調症は性格や遺伝の問題であるとされていましたが、近年患者数が急増するとともに研究が進み、性格や遺伝の問題だけではないことが徐々にわかってきました。近年ではストレスや生物学的要因がうつ病に深く関与していると多く言われています。■性格:主にきまじめな性格や社交的な反面気が弱い性格の人がうつ病になりやすいと言われています。熱心に仕事に打ち込み、責任感が強くすべてのことに対して正直に取り組む人や、親しみやすくいい人として周囲からは見られるが、実は気が弱いために他者を優先させてしまう一面を持つ人が例として挙げられます。■ストレス:近親者の死亡、病気、家庭内のトラブル、出産、結婚・離婚、会社の人事異動や転勤、仕事上のトラブル、過労などさまざまなストレスがうつ病の発症の大きな誘因となっているという研究結果が出ています。■生物学的要因:上記の性格やストレス要因が当てはまる人のなかで、うつ病を発症する人としない人の違いは主に生物学的要因にある傾向があります。脳の中で重要な情報伝達の働きをしているセロトニンやドーパミンなどの異常が、うつ病の発症と深く関わっているのではないかという有力な説もあります。しかし、この生物学的要因もまだ解明されたわけではなく、研究が進められている過程にあります。双極性障害・気分循環性障害の発症要因と考えられるものは遺伝子、ストレス、性格、生物学的要因で、もっとも深く関与していると言われているのが遺伝子です。■遺伝子:双極性障害は同じ家系に発症する確率が高いことから、何らかの遺伝子が発症にかかわっているのではないかと指摘されています。しかし、ある特定の遺伝子ではなく、いくつかの遺伝子の組み合わせによって発症するのではないかと推測されています。■ストレス:身の周りで起こることを本人がストレスに感じてしまうことも大きな原因の一つであると言われています。例として結婚や引っ越し、出産などのライフイベントに対する受け止め方や重なり具合、職場の人間関係などが挙げられます。このような生活環境の変化がストレスとなり、こころの安定の成分をつかさどるセロトニンに影響がでてしまったり、様々な支障が発生します。■性格:うつ病・気分変調症を発症する人と違い、双極性障害・気分循環性障害を発症する人は社交的で明るい、ユーモアのある性格という傾向があります。このような性格を一般的に循環気質と表現します。気配りも上手で、常に周囲の人の中心的役割を果たしていますが、気分が高揚しているときと沈み込んでいるときが周期的に訪れるため、状況に応じながら気分や思考がポジティブになったり、ネガティブになったり変化します。しかし、現在では循環気質の性格だけではなく様々な気質の人も発症することが分かっており、執着気質がその一つです。執着気質とは一つのことにたいして徹底的に自分を追い込む頑張り屋さんのような人です。「疲れてなんかいない」といって自分自身を鼓舞し、さらに頑張り過ぎることを継続することで双極性障害を知らない間に発症している場合があります。■生物学的要因:近年双極性障害には生物学的要因もあることが明らかになってきています。それは、脳細胞内にあるミトコンドリアの機能異常です。ミトコンドリアはエネルギー物質を生産する働きの他に、情報伝達にかかわるカルシウムの濃度を調整する機能をもつ物質です。ミトコンドリアの異常によってカルシウム濃度の調整がうまく行われなくなると細胞内の情報がうまく伝わらず、双極性障害の発症を誘因するものと考えらます。しかし双極性障害は発症する確率も低くはっきりとした原因はまだ解明されていません。研究が今後進んでいくことが期待されます。気分障害l 前田クリニック気分障害の相談先と治療先出典 : 気分障害に区分される疾患はストレスが多い現代社会ではいつ、誰が発症してもおかしくない疾患です。気分が上がらず憂鬱な気分のまま数週間が経ってしまったり、逆にテンションの上がり下がりにムラがあり不安を感じる場合は以下の行政機関に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:児童相談所は、すべての都道府県と政令指定都市に最低1つ以上設置されている児童福祉の専門機関です。主に、「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている、保健・精神保健に関する公的な窓口です。精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されています。相談については、施設によって予約が必要な場合や健康保険の適用が可能なところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センターを探すl 厚生労働省■精神科:精神疾患をはじめ、精神障害や睡眠障害、依存症を診療する科です。具体的には不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などの症状を扱います。■心療内科:心と体、それだけでなく、その人をとりまく環境等も考慮して扱う科です。前述の精神症状だけでなく、ほてりや動悸などの身体症状、また社会的背景及び家庭環境なども考慮して治療を行います。精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、気分障害の場合は精神科を受診しても、心療内科を受診してもどちらでも大丈夫です。気分障害の治療出典 : 気分障害の治療法として現在主に効果的であると考えられ、用いられているのは薬物療法、精神療法、そして電気けいれん療法です。発症している疾患により細かい治療法は異なるので詳しい情報は専門家に相談することをおすすめします。薬物療法の場合、うつ病に対してはうつ症状を改善する「抗うつ薬」が用いられます。一方、双極性障害に対しては激しい移り変わりがある感情を安定させる「気分安定薬」が中心的に用いられます。いずれの場合も、不安を抑える「抗不安薬」が同時に処方されることがあります。代表的な抗うつ薬として三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが挙げられ、適切な量と期間で服用することが重要であるとされています。抗うつ薬は主にうつ病・気分変調症に処方されています。双極性障害・気分循環障害を発症している人が抗うつ薬を服用するとかえって気分が不安定になったり、躁状態になってしまったりすることがあるため、躁うつの症状に対しては抗うつ薬は基本的に使用されせん。気分安定薬には気分が上がりすぎる躁状態を抑える効果、沈みすぎてしまう抑うつ状態を改善させる効果、いったん安定した気分を維持させる効果があります。現在、双極性障害・気分循環障害の薬物療法は気分安定薬が中心となっていますが、飲み始めてからしばらくは重い副作用を防ぐために血液検査が数回必要です。また検査後も一定期間ごとに採血をすることで効果と安全性が確かめられるため、継続して受診することが大切です。うつ病は再び症状が出現することの多い病気です。回復後1年の間に約20%の患者さんに再び症状が出現する上に、その後の再発も含めると、その割合は約40~50%に上がります。また、途中で治ったと感じて治療することをやめてしまうと半年後に再び症状が出現する危険性が2倍になるという研究結果もでています。しかし、いずれの場合も治療法の効果や必要な量・期間には個人差があるため、自分だけで判断することは危険です。治療の際には、専門家の指導を受けながら用量・用法を守って行うことが大切です。気分障害l 慶應大学病院気分変調症l前田クリニック現在様々な精神療法が開発されていますが、気分障害に有効であると考えられているのは認知行動療法と対人関係療法です。一般的には医師やカウンセラーとの対話を通して、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのか、物事をどのように捉えているのか自身の思考のクセを把握します。そして、不安を感じる状況をどのように捉え、対処していけばいいかを考え、自身の感情をコントロールできるようにしていく治療法です。また対人関係療法は気分障害を抱えている人だけではなく、その人の家族や恋人などの重要な他者との関係に焦点を当てて、他者との関わり方を考えていく精神療法です。最終的には身近な他者との関係だけではなく、より広い範囲の人々に対してもよりよい関係を築けるようになることを目的とします。頭皮から電流を流すことで意図的にてんかん発作を発生させ、抑うつ症状を改善します。うつ病、双極性障害に有効といわれています。この治療法が用いられるのは薬物療法をはじめ、認知行動療法、その他の治療では効果が認められない場合、あるいは妄想をしてしまうなど症状が非常に重く治療の緊急性が高い場合です。軽、中度のうつ病の場合、あるいは他の治療法によって効果が認められている場合には原則使用されません。電気けいれん療法がなぜうつ病や、双極性障害の症状に効果があるのかについては未だ解明されていません。しかし、多くの医療機関においてその有効性が確認されており、日本においても保険の適応となっています。以前は治療の過程で生じる全身のけいれんが骨折などの怪我につながるリスクがありました。しかし、1980年代頃から施行されるようになった「修正型電気けいれん療法(m-ECT)」では麻酔科医の同伴のもと麻酔薬及び筋弛緩剤を投与し、けいれんを防ぐことができます。治療を受けることができる医療機関は必要な薬剤や人員の確保ができる病院に限られるようです。気分障害l 慶應義塾大学病院まとめ出典 : 気分障害がある人は少なくとも世界に3億5000万人以上もいると言われており、世界的に増加傾向にあります。日本も例外ではなく厚生労働省によると、平成26年度時点で約112万人の人が発症していると言われています。気分障害の症状により日常生活に悪い影響をきたしてしまうと、何かとうまくいかないことがストレスにつながり悪循環に陥ってしまう場合も少なくはありません。そのため気分障害は悪循環に陥る前の初期治療、そして症状が治まった後の再発予防がとても大切になっています。近年研究が進んでいることにより治療法の種類も増えてきています。そのため疾患や症状の程度を考慮した上での一人ひとりに合わせた治療法が選択できるようになっています。最近気分が晴れずずっと暗いままであったり、気分の上がり下がりが激しく自分をコントロールできない時があるなど、不安を抱えている場合はこころの風邪である気分障害を抱えている可能性があります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。平成26年度患者調査の概要l 厚生労働省
2016年10月26日情緒障害とは出典 : 「情緒障害」とは、子どもが何らかの要因により感情面に問題が生じ、社会に適応できない状態にあることを指す言葉です。広義に解釈すると上記の意味ですが、実は「情緒障害」は、厳密かつ普遍的な定義がなく、その意味や内容は時代や社会的な背景とともに大きく変遷してきました。そのため現在実際に使われている「情緒障害」という言葉も、文部科学省、厚生労働省、医学のそれぞれにおいて定義や概念にばらつきがあります。情緒障害に含まれる具体的な障害もそれぞれの定義によって異なるため混乱を招くこともままあり、必要に応じて関係機関の定義を参照し、確認する必要があります。以下でそれぞれの定義を見ていきましょう。教育、福祉、医学、それぞれ違う「情緒障害」の定義出典 : ・情緒障害の教育的定義主に特別支援教育の場面で使われる、文部科学省による「情緒障害」の定義は以下の通りです。状況に合わない感情・気分が持続し、不適切な行動が引き起こされ、それらを自分の意思ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に適応できなくなる状態をいう。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP・情緒障害の教育的定義に当てはまる症状教育の場で用いられる情緒障害にあてはまる症状の具体例としては、主に選択性緘黙(かんもく)を指し、その他、集団行動・社会的行動をしない、引きこもり、不登校、指しゃぶりや爪かみなどの癖、常同行動、離席、反社会的行動、性的逸脱行動、自傷行為をあげています。・教育的定義における情緒障害と発達障害の関係文部科学省では、情緒障害は心理的な要因から生じる後天的な問題であり、先天的な問題から生じる発達障害とは違うものと定義しています。・「情緒障害」の教育的定義の成り立ち教育の場で言われる「情緒障害」は、教育上の概念・分類であり、医学用語の「情緒障害」の定義とは必ずしも一致しません。現在、このようなわかりにくさを生んでいるのは、情緒障害という障害の概念が時代によって変遷していることと、特殊支援教育の歴史的背景に由来しています。公立学校に現在の特別支援学級の前身である情緒障害特殊学級が成立した1969年当時、自閉症などの先天性由来の障害も含めおおまかに「情緒障害」と定義していました。のちに、先天的な障害である自閉症は「情緒障害」から除外されたため、「情緒障害」は後天的な心理的問題により社会に適合していない子どもを分類するための概念と修正されました。平成18年には「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」が発令され、平成21年には「情緒教育特別支援学級」の名称も「自閉症・情緒障害特別支援学級」と変更され、特別支援教育の場でも自閉症が情緒障害から分けられるようになりました。・情緒障害の福祉的定義厚生労働省管轄の情緒障害児短期治療施設などの福祉の場面で用いられる「情緒障害」は、厚生労働省が定義したものに沿っています。厚生労働省の情緒障害児の定義は以下の通りです。情緒障害児とは,家庭,学校,近隣等での人間関係のゆがみによって,感情生活に支障をきたし,社会適応が困難になった児童をいう。厚生白書(昭和53年版)・情緒障害の福祉的定義に当てはまる行動や状態不登校、引きこもり、かん黙、軽度の非行、チック、発達障害による二次障害、虐待により心理的に傷ついた状態など参考ページ:厚生白書(昭和43年版)第3章社会福祉|厚生労働省HP・福祉的定義における情緒障害と発達障害の関係厚生労働省が定義する「情緒障害」(情緒障害の福祉的定義)は、同省が定義する発達障害に含まれる、としています。参考ページ:発達障害者支援法の施行について|厚生労働省HP医学的な用語としての「情緒障害」は、主として、心理的な反応として起きる、情動が著しく不安定で激しい現れ方をする状態であり、病名ではないとするのが主流です。国立特別支援教育総合研究所によると、医学的な用語としての「情緒障害」は次のようにまとめられます。1)厳密で普遍性のある定義はない。2)病名ではなく症状もしくは状態像を指して用いられることが一般的。3)現在では、心理的要因が原因と想定されるものに主に用いられるが、例外もある。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)においては、「情緒の障害」と表記されているものが、医学的な用語としての情緒障害とほぼ同義とされ、病名に相当する診断カテゴリーとされています。参考:発達障害と情緒障害の関連と教育的支援に関する研究・医学的見地における情緒障害と発達障害の関係基本的に、医学的には情緒障害と発達障害は別の区分とされています。就学相談などで使われる「情緒障害」のさす意味とは?出典 : 教育の場で「情緒障害」とされる状態は、具体的には2種類の問題行動があります。一つは、周囲から介入しない限り周囲に迷惑や支障を生じない、内向性の問題行動、もう一つは、周囲からの介入がなければその行動自体が周囲の人に迷惑や支障を生じる外向性の問題行動です。専門用語で「内向性行動問題」と呼ばれるもので、周囲が介入しない限り迷惑や支障を生じないものをさします。具体的な例として、・選択性緘黙(かんもく)・不登校、集団行動・社会的行動をしない・ひきこもり、指しゃぶりや爪かみなどの癖・身体を前後に揺らし続けるなどの同じパターンの行動を反復すること(常同行動)・自分の髪の毛を抜くことなどです。一般的にはただの「癖」と考えられているものでも、この行動が長期間頻繁に続き、学校での学習や集団行動に支障をきたすほどの場合には情緒障害としてとらえられます。専門用語で「外向性行動問題」と呼ばれるもので、周囲からの介入がなければその行動自体が周囲の人に迷惑や支障を生じる場合をさします。具体的な例は、・離席、教室からの抜け出し・集団逸脱行動・犯行、暴言、暴力、反社会的行動・非行、性的逸脱行動などです。これらの行動から、学校での学習や集団生活に支障をきたしてしまいます。攻撃性を示す場合が多く、その攻撃性が自分に向った場合である自傷行為も情緒障害としてとらえられます。教育の場で「情緒障害」としてあがることの多い、選択性緘黙と不登校について紹介します。・選択性緘黙文部科学省が定義する選択性緘黙は、以下の通りです。選択性かん黙とは,一般に,発声器官等に明らかな器質的・機能的な障害はないが,心理的な要因により,特定の状況(例えば,家族や慣れた人以外の人に対して,あるいは家庭の外など)で音声や言葉を出せず,学業等に支障がある状態である。(平成25年文部科学省教育支援資料)・不登校文部科学省の教育支援資料において、不登校は、以下のように定義されています。不登校の要因は様々であるが,情緒障害教育の対象としての不登校は,心理的,情緒的理由により,登校できず家に閉じこもっていたり,家を出ても登校できなかったりする状態である。そして,本人は登校しなければならないことを意識しており,登校しようとするができないという社会的不適応になっている状態である。したがって,一般的には,怠学や学校の意義を否定するなどの考えから,意図的に登校を渋る場合は,学校に登校しないという状態は類似しているが,ここでいう情緒障害の範囲には含まない。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP「情緒障害」の子どもには、どのような支援があるの?出典 : 自閉症・情緒障害通級指導教室通級指導教室とは、通常学級の学校に籍を置いて、通級指導の時間のみ通級指導教室に通って支援を受けるという制度です。子どもが在籍する学校に通級指導教室が無い場合は、通級指導教室がある他の学校に通って通級指導を受ける場合もあります。障害の種別に分かれ、その子に合った指導が受けられますが、情緒障害のある子どもは「自閉症・情緒障害通級指導教室」に通うことになります。・対象者通常の学級におおむね参加でき、一部特別な指導(社会的適応のための特別な指導や強化の補充指導など)を必要とする程度のものであるとされています。・どのような指導がされるか基本的には、特別支援学校などにおける、障害がある生徒の自立を目指した教育的な活動を参考とした指導が中心で、社会的適応性の向上が目的とされています。通級指導を受ける場合、大半の時間を通常学級で過ごし、通級指導を受ける時間は限られています。そのため、必要に応じて各教科などの補充的な指導は行っていますが、個別の指導内容を設定することはできません。自閉症・情緒障害特別支援学級特別支援学級とは、通常学級ではなく特別支援学級に籍を置き、よりきめ細かな指導を受ける少人数の学級です。もし、子どもに手厚い指導が必要な場合は、上記の通級指導教室ではなく特別支援学級に通う場合が多いです。情緒障害のある子どもは「自閉症・情緒障害特別支援学級」で指導を受けることになります。・対象者文部科学省は、自閉症・情緒障害教育の対象を以下のように定めています。一 自閉症又はそれに類するもので,他人との意思疎通及び対人関係の形成 が困難である程度のもの二 主として心理的な要因による選択性かん黙などがあるもので,社会生活へ の適応が困難である程度のもの平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP選択性かん黙や不登校などの感情面での問題のために、通常の学級では学習を行うことが難しく、社会的適応のための特別な指導を行う必要がある子どもが対象者であるとされています。・どのような指導が受けられるか情緒障害や自閉症のある子どもなどが、人とのかかわりを円滑にし生活する力を育てることを目標に指導を受けることができます。 特別の教育課程を編成することができることが特徴です。基本的に主な授業は特別支援学級で受けますが、体育や図画工作、給食の時間は通常学級の子どもたちと過ごすこともあります。特別支援学校基本的には、情緒障害であるというだけで特別支援学校の支援対象となることはありませんが、情緒障害とされている子どもが、知的障害や病弱・身体虚弱を伴う場合は、知的障害、病弱などの区分での支援対象となることもあります。特別支援学校と特別支援学級・通級指導教室の違いについては、以下のコラムに詳しく解説されています。・放課後等デイサービス幼稚園・大学を除いた学校に就学中で、かつ障害のある子どもが、学校の授業終了後や長期休暇中などに通い、生活能力向上のための訓練および、社会との交流促進を行う施設です。施設利用にあたって療育手帳や障害者手帳は必須ではなく、障害児通所支援受給者証を申請し、認可が下りれば利用することができます。施設のタイプは、習い事型、学童保育型、療育型の大きく分けて3つのタイプに分けられます。詳しくは以下の記事をご覧ください。・情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)情緒障害短期治療施設とは、学校教育との緊密な連携をとりつつ、医学的な心理治療を行う総合的な治療・支援施設です。情緒障害児短期治療施設の対象児童は、心理的困難や苦しみを抱え日常生活に生きづらさを感じている子どもたちであり、心理治療が必要とされる子どもたちであるとされています。知的障害児や重度の精神障害児は基本的に対象ではありません。利用方法は、宿泊入所、通所、外来相談の3つがありますが、施設によっては外来相談が設置されていない場合もあるため、一度お近くの情緒障害児短期治療施設に電話などで相談してみることをおすすめいたします。・児童相談所児童相談所とは、家庭や学校などから18歳未満の子どもに関するあらゆる相談に応じ、また、子どもおよび家庭に対して医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定や調査、調整を行う場所のことです。各相談所には精神科医師、児童心理士、児童福祉司などの専門職員が配置されています。・児童家庭支援センター児童家庭支援センターは、児童心理療育施設、児童養護施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設、乳児院に設置されているもので、18歳未満の子どもに関する様々な相談を、子ども、家庭、地域住民から受け付けます。また、児童福祉施設などの関係する機関との連絡調整も行います。学校で子どもが直面する「情緒障害」の原因は?出典 : 教育的定義における「情緒障害」とされる状態を引き起こす原因としては、対人関係のストレス状況、学業・部活動の負担、親子関係の問題などが考えられるとされています。友人同士や教師との関係において、対等な人間関係が崩れた場合大きなストレスが生じます。いじめがその最たるものとされています。一方的、威圧的に教師や友人に接されることによりストレスが生じ、情緒障害とされる状態に陥る原因になります。学業、部活などにおいて、本人の能力に見合わない要求をされ、かつその環境から抜け出すことができない雰囲気がある場合、それがストレスとなり情緒障害の原因となると言われています。親子関係において信頼関係が築けていない場合に、教育的定義における「情緒障害」の原因となる可能性があります。親子の信頼関係が築かれていないパターンで、児童虐待なども含まれます。子どもと過ごす時間を十分にとることが信頼関係の構築において大切です。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP子どもが情緒障害の疑いがあるとき、どう対応すべきなの?出典 : 生活上の問題が生じたときは、できる限り早い段階でなんらかの対応をとることが必要です。・毎日の基本的な生活環境を整える子どもの成育には、障害の有無、障害の種類にかかわらず、安心して過ごせる環境作りが必須です。毎日の生活のなかで、家族関係の安定を意識し、なるべくお子さんをほめてあげること、そして、できるだけ一緒に過ごしてあげること。このような安心して過ごせる基本的な環境作りを心がけることこそが、お子さんの症状の回復のための基礎づくりとなります。・いじめはすぐ対処もし、お子さんがいじめを受けているように感じたら、本人に対処させるのではなく、いじめが起きている環境から保護することが最優先です。まず、教師に相談し、お子さんのいる環境を変えるなどの対応をし、それに加え児童精神科などで専門的な治療を受けることで、心の傷がこれ以上深まらないようにする必要があります。・医療機関を受診する身体症状が強い場合は小児科、情緒面の問題が強い場合は児童精神科を受診することをおすすめします。専門家の指示を仰ぎ、適切な指示を受ければ、ご家族もお子さんも、無為に苦しむことなく解決の糸口を見つけることができます。どうしても、医療機関の受診への敷居が高い場合には、スクールカウンセラーや各相談機関を利用するのも一つの手です。もし、近くに児童精神科がない場合は、大学病院や総合病院の精神科でも診療してもらえます。少しでもお子さんが何らかの問題を抱えているように感じたら、どうか一人で抱え込まずに、専門家の助けを求めてください。参考文献:杉山登志郎 /著『子どもの発達障害と情緒障害』2009年講談社/刊まとめ出典 : 「情緒障害」の定義はさまざまですが、一般に情緒障害とされる状態は、主に対人関係などの後天的なストレス要因から生じるとされています。先述の通り、お子さんの成育の基本となるのは安心して生活できる環境づくりであり、それには家族からの理解が不可欠です。お子さんをあたたかい目で見守ってあげることこそが、問題解決のための近道となります。とはいえ、保護者の方が、何のストレスも感じずお子さんに接し続けるのは難しいこともあります。専門家からアドバイスしてもらうことで、今までずっと悩んでいた問題から抜け出す解決の糸口が見つかることもありますので、少しでも悩み事がある場合は一人で抱え込まず、医療機関や相談窓口に連絡を取ることをおすすめします。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HPあなたのそばの相談機関|情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)ネットワークHP発達障害者支援施策について|厚生労働省HP厚生白書(昭和53年版)|厚生労働省HP情緒障害児短期治療施設運営指針|厚生労働省HP特別支援教育について|文部科学省HP 自閉症・情緒障害とは|国立特別支援教育総合研究所HP
2016年10月24日