ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)の人気バッグシリーズ「アルマ」に新作バックパックが仲間入り。「アルマ・バックパック」が2024年春夏ウィメンズ・コレクションより登場する。人気バッグ「アルマ」に小ぶりなバックパックが仲間入り構築的なフォルムのタイムレスなアイコンバッグ「アルマ」。その新作として展開されるのは、デイリーユースにぴったりの上品なバックパックだ。ロール仕上げのトロンハンドル、ゴールドカラーのパドロック、キーベルといった「アルマ」ならではのディテールはそのままに、モノグラム・キャンバスやエピ・レザーによって使い勝手のいいバックパックへと仕上げた。取り外し可能なストラップを使えば、ハンドバッグのスタイルでも楽しめる。【詳細】「アルマ・バックパック」発売時期:2024年3月~取扱い店舗:ルイ・ヴィトン ストアおよび公式オンラインストア価格:モノグラム・キャンバス 369,600円エピ・レザー 386,100円サイズ:W15 x H20 x D10cm
2024年03月18日2017年に突然の監督引退宣言をし、世界中の映画ファンに衝撃を与えたフィンランドの巨匠アキ・カウリスマキ監督。それから6年が経った今年、何事もなかったかのように最新作『枯れ葉』とともにカムバックを果たして大きな話題となっています。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。アルマ・ポウスティさん【映画、ときどき私】 vol. 624カウリスマキ作品初出演にして初主演を務めたのは、『TOVE/トーベ』でムーミンの作者トーベ・ヤンソンを演じて高く評価されたアルマさん。本作では、職場での理不尽や恋人の悪癖に毅然とした態度で立ち向かう孤独なヒロインのアンサを好演しています。今回は、カウリスマキ監督ならではの現場で驚いたことや日本との関わり、そして愛の奥深さなどについて語っていただきました。―ananwebでは、カウリスマキ監督の前作『希望のかなた』で主演を務められたシェルワン・ハジさんにも取材をさせていただいたことがありますが、「カウリスマキ監督の作品で主演を務めることは至高のうれしさと同時に恐怖もある」とおっしゃっていました。出演が決まったとき、アルマさんのお気持ちはいかがでしたか?アルマさんアキがまた映画を作るということだけでもみんな驚いていましたが、“フィンランドの巨匠”とされる彼から電話が来て「映画に出てほしいから会いたい」と言われたときは、本当にびっくりしました。私はアキの作品をずっと観てきましたし、彼が経営しているバーにも映画館も行ったことがあるくらい。つねに自分の人生のなかにいるような存在でしたから。だからこそ、この作品に出られたことを誇りに思っています。ただ、一度もお会いしたことがなかったので、会うまでは信じられない気持ちでしたし、最初はとにかく緊張しましたね。話し合いで重要だったのは、アスパラガス論争―実際の監督は、どのような印象でしたか?アルマさんとてもハートフルで、素晴らしい人です。家族のようなチームのなかに、温かく受け入れてくださって、貴重な経験ができたと思っています。アキはとにかく何に対しても正確で細かいところがありますが、すべてがうまく行くように進めてくださるので、私もベストを尽くすことができました。―憧れの人とのお仕事でプレッシャーを感じる部分もあったと思いますが、ご自身で何か準備をされたのでしょうか。アルマさん実は、アキからは「事前に稽古をしちゃダメ」と言われていたんです。なので、とりあえず彼の作品をもう一度全部観ることにしました。というのも、過去作のどれかに何らかの繋がりがあるかもしれないと思ったからです。とはいえ、それらを真似するつもりはありませんでしたが、準備ができない代わりにそういった方法を考えて挑みました。―なるほど。制作過程ではグリーンかホワイトかを巡るアスパラガス論争もあったそうですが、監督との印象的なやりとりがあれば、教えてください。アルマさんアスパラガスの話はけっこう重要なので、最初にお話ししますね(笑)。あれは、初めてアキとプロデューサーと同じく主演を務めたユッシ(・ヴァタネン)の4人で会ったときのこと。映画の話をまったくせずに、フィンランドの森や犬のこと、それから政治の話をしていたのですが、そのなかでも一番重要だったのがアスパラガスの話題でした。最終的には、アスパラガスサラダが劇中に登場するところまで繋がっていますから!これまで経験した現場のなかでも一番静かだった―つまり、そこで話していたからアスパラガスが映画にも使われたと。アルマさんジョークの意味合いもありますが、おそらくそうだと思います。―劇中ではホワイトアスパラガスのサラダが出てきますが、ということはホワイト派が勝利したのでしょうか。アルマさん実はまだ結論が出ていなくて、いまだにその話をしているくらいなんですよ(笑)。でも、映画に出てくるサラダは、ホワイト派のプロデューサー自身が作ったからホワイトになっています。私はグリーンのほうが好きなんですけどね!―サラダひとつにそんな背景があるとは驚きです。現場でもカウリスマキ監督ならでは演出などもありましたか?アルマさん私の人生で経験した現場のなかでも、一番静かな現場だったと思います。というのも、アキのチームは何十年も一緒に仕事をしているスタッフばかりなので、もはや話さなくてもわかる関係性。たとえば、口笛で合図するだけで誰かが動いたり、ほかの人にはわからない“秘密の合言葉”でうなずき合っていたりするようなとても不思議な現場でした。あと、アキは絵画を描くように構図を決めてから照明や小道具など時間をかけて作り上げていくタイプの監督なので、集中力の高さや細かいこだわりがとにかくすごかったですね。孤独と愛というのは、表裏一体だと感じている―今回、カウリスマキ監督が復帰した理由については、「無意味でバカげた犯罪である戦争に嫌気がさして、愛や連帯、希望などをテーマにした物語を描くことにした」と話されていますが、アルマさんは不器用な2人によるラブストーリーをどう感じましたか?アルマさん「他人を気遣う思いや相手にシンパシーを抱く気持ちには強い力があるんだ」という印象を受けました。小さな映画ではありますが、そこにはとても大きなヒューマニズムがあると感じています。最近は、人と人がお互いのことを気にかける思いやりをなくしてしまっているところもあるかもしれません。でも、たとえいろんな失望を経験していたとしても、どんなにシャイな人たちだとしても、愛と勇気を持って進んで行けば、将来に希望が見えることをこの作品は伝えようとしてくれているのだと思っています。―その通りですね。以前、『TOVE/トーベ』で取材させていただいた際、「いい意味で自分を見失うことができる愛には圧倒されるし、それこそが生きる力を与えてくれるものと考えている」と話されていました。本作を経て、愛に対する考え方にも変化はありましたか?アルマさん愛にはいろんな形があり、映画の世界でもラブストーリーは語り尽くせないテーマなんだなと改めて感じました。そして、孤独と愛というのは表裏一体であり、人生にはそういった二面性が存在しているとも思っています。アキは作品を通して日本のみなさんに手を振っている―劇中では、ワンちゃんとの間に生まれる愛情も描かれていますが、撮影でハプニングなどはなかったですか?アルマさん本作がデビュー作ですが、とても才能があっていいリズム感を持っているので、すべて上手くいきました。実は、もともとポルトガルで野良犬だったところをアキが見つけて、育てているワンちゃんなんですよ。なんと名前が私と同じアルマなので、そういったこともあってすごく仲良くなりましたね。―見事なコンビネーションでしたが、名前が一緒とは運命的ですね!また、以前「日本に行ってみたい」とおっしゃっていましたが、実際に日本に来てみていかがですか?アルマさん長い間、日本を訪れることを夢見ていたので、やって来ることができて本当に幸せです。ただ、今回は滞在が短いので、近いうちにまた戻ってこれたらいいなと。日本で知られているフィンランドの代表といえばムーミンのトーベ・ヤンソンとアキ・カウリスマキ監督ですが、彼らに導かれるようにして日本に来ることができたのも不思議な縁を感じています。―本作についても、カウリスマキ監督が小津安二郎監督に敬意を払っていると明かしているように、日本への愛が随所に散りばめられています。アルマさんそうですね。それはアキ流のジョークでもありますが、彼は作品を通して日本のみなさんに手を振っているのだと思いました。映画でも最初に流れる曲は、日本の「竹田の子守唄」ですし、劇中のあちこちに小津監督が好んで使っていた赤も印象的に置かれているほど。それが彼なりの日本に対しての挨拶だと感じました。好奇心を持ちながら、自分の道を見極めてほしい―細かいところまで、ぜひ注目していただきたいですね。それでは最後に、ananweb読者に向けて、メッセージをお願いします。アルマさん若いときは「あれもこれもチェックしなきゃ」と新しいものを追いかけようとしてしまうことってありますよね?私自身もそうでしたが、ある程度年齢を重ねてくると、「先人たちはどんなことをして、何を思っていたんだろうか」と考えるようになり、そこに価値を感じるようになることがあります。そんなふうに、ときにはちょっと立ち止まって振り返ってみると、おもしろい発見があることは伝えたいですね。あと、私はシェイクスピアが好きな祖母から、「愛を受けたいと思ったら愛を与えるべき」とよく言われていましたが、そういうところも大切かなと。30歳前後というのは、ちょうど人生の方向性を選ぶ時期であり、物事が深まっていくときでもあるので、好奇心を持ちながら自分の気持ちがどちらに向かっているのかを見極めてほしいなと思います。インタビューを終えてみて…。前回のオンライン取材では画面越しでも伝わるほど笑顔が素敵な印象でしたが、実際はさらに魅力的なアルマさん。取材中もお茶目なリアクションと満面の笑みをたくさん見せてくださり、とても癒されました。「日本に来れて2年越しのリベンジが果たせた!」とおっしゃっていましたが、直接お会いできてうれしかったです。ぜひ、本作でもアルマさんの演技に魅了されてください。悲痛な現実をはねのけるカウリスマキ流ハッピーエンドカウリスマキ監督のノスタルジックでユーモア溢れる世界観にふたたび浸ることができる本作。孤独を抱えながらも日々を懸命に生きる男女がたどり着く愛と希望に、胸が熱くなるこの冬必見のラブストーリーです。写真・園山友基(アルマ・ポウスティ)取材、文・志村昌美ストーリー舞台は、ヘルシンキの街。ある夜、理不尽な理由から仕事を失ってしまったアンサは、酒に溺れながらも何とか工事現場で働いているホラッパとカラオケバーで出会う。そしてふたりはお互いの名前も知らないまま、惹かれ合うようになる。ところが、不運な偶然と現実の過酷さが、彼らをささやかな幸福から遠ざけてしまうのだった。果たしてふたりは、無事に再会を果たし、想いを通じ合わせることができるのか…。釘付けになる予告編はこちら!作品情報『枯れ葉』12月15日(金)よりユーロスペースほか全国ロードショー配給:ユーロスペース(C) SputnikPhoto: Malla Hukkanen(C) SPUTNIK OY 2023写真・園山友基(アルマ・ポウスティ)
2023年12月16日アキ・カウリスマキ監督の最新作『枯れ葉』で主演を務め、『TOVE/トーベ』などで知られるフィンランドの国民的女優アルマ・ポウスティが初来日。12月6日にアキ・カウリスマキ監督の大ファンである俳優・松重豊と先行上映のトークショーに登壇した。本作は、孤独を抱えながら生きる女と男が、人生で最初で最後のかけがえのないパートナーを見つけようとする心優しいラブストーリー。今年のカンヌ国際映画祭の審査員賞、2023年国際批評家連盟の年間グランプリに見事輝き、先ごろアカデミー賞国際長篇映画賞部門のフィンランド代表にも選出。本国フィンランドでは、動員20万人を超え(フィンランドの人口は約550万人)、カウリスマキ最大のヒット作『過去のない男』を超える動員数を記録、フィンランドのみならずフランスやドイツでも大ヒットするなど各国で快進撃を続けている。アルマは「こんにちはー!ありがとう!!」と日本語で満面の笑みを浮かべ、「実は今日はフィンランド106年目の独立記念日。そんな特別な日をカウリスマキ映画の雰囲気の中で皆さんとご一緒できて光栄です」と満席の会場に向けて挨拶。続いて、アキ・カウリスマキ監督の大ファンである松重さんが大きな花束を手に登壇。その髪型は、カウリスマキ監督の『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』にオマージュを捧げたリーゼントスタイルというこだわりぶり。「僕は自分が出ている映画の舞台挨拶にも行かない方ですが、アキ・カウリスマキ監督の作品ならば髪の毛をおっ立てても出たいと思った。とにかく大ファンで御座います」と熱弁すると、アルマはその髪型に「ファンタスティック!」と大笑い。松重さんは「アルマさんに笑ってもらえるなんて…幸せな気持ちです!」と語った。「短い中に物語が凝縮」松重豊が語るアキ・カウリスマキ監督の魅力約6年ぶりのアキ・カウリスマキ監督復帰作『枯れ葉』を先んじて鑑賞した松重さん。「引退すると言った人がもう一度作るというのは日本でもあることですが、よくぞ戻って来ていただいたと思った。そしてどんなテイストになるのかと思ったら、『パラダイスの夕暮れ』、『真夜中の虹』、『マッチ工場の少女』のいわゆる労働者三部作に連なるものだった」とコメント。「しかもアルマさんがカティ・オウティネンを上回る演技をされていて…魅了されました」と絶賛した。一方のアルマは「引退撤回を一番驚いているのはアキ監督自身だと思います。意欲的に盛り上がり、脚本も指が勝手に動いて書いた結果、労働者3部作に連なる4作目が生まれたそうです。そして監督業に戻ってきただけではなく、私たちのような新しい俳優を迎え入れて作ってくれたのも素晴らしいことだと思います」と述べた。松重さんは、アキ・カウリスマキ監督の作品の魅力について「世の中がわかりやすい作品を要求している中で、それとは逆行している作風ではあるけれど、81分という短い中に物語が凝縮されている。そこに置かれた役者の表現力は問われるものです。言葉で説明したり過剰な演技をしたりすることなく、一瞬一瞬の表現に満ち溢れている空間がアキ・カウリスマキ監督の作品。そこに触れることで僕らの信じる表現が世界のどこかにはまだあるぞと思わせてくれる」と熱弁した。“沈黙の巨匠”アキ・カウリスマキ監督の「ピュアで正直な脚本」そして松重さんは「今回の作品の脚本の分量はどのくらいですか?早口で喋れば日本だったら15分で終わるセリフ量ですよね?」とアルマに質問。これにアルマは「確かに、私の人生の中で出会った一番短いページ数の脚本でした」と笑わせつつ「でも珠玉の一冊であり、素晴らしい文学であり詩的で、慎重に選ばれた言葉が使われています。アキは沈黙の巨匠。一行のスーパースターだと思います。ちょっとした言葉にそのキャラクターの性格やヒントが散りばめられていて、足すことも引くこともできない。まさにピュアで正直な脚本」と明かす。「でもひとつだけ書かれていなかったのはウインクのシーン。あれは、撮影のときにアキが『やってくれ』と言ったんです」と笑顔で打ち明けると、松重さんは「これは貴重な話を聞けた」と大興奮。さらに、松重さんの興味は尽きず、俳優ならではの視点で「監督からは具体的にどんな演出や指示があるのですか?」と質問すると、「セリフは覚えるべきだが、読みすぎず練習や稽古はするなと言われました。そして撮影は基本的にワンテイクで終わります。俳優としてはとても怖いことですが、唯一のオンリーワンの瞬間がフィルムに焼き付けられます。それは二度と出来ないもの。すべてがワンチャンス」とアルマは明かす。「アキはカメラを覗いて、すべての配置を自分で動いて決めて、準備が揃うとカメラの横でアクション!と声をかける。モニターチェックも一切しません。なぜならば何が撮れているのかを把握しているからです」と巨匠の演出術に触れると、松重さんは「ワンチャンス…。その緊張感、僕も好きです!」と大喜び。今度はアルマが、松重さんに「日本でもワンテイクで撮影する監督はいますか?」と質問。これには「北野武さんなんかはそうです。テストというか、もう回していこうか…みたいな感じです」と答え、「テストを重ねて固まっていく芝居もあるけれど、一回しかできないものを切り取って映画が出来上がる方が僕はいい。究極的なことをいうと、ドキュメンタリーに近いものになればいいと思っている」と俳優としての理想像も告白した。最後に、松重さんはアキ・カウリスマキ監督作への出演も熱望。「もしそんなチャンスがあるならば、旅費から何から全部出してでも行きます。セリフなしだっていい!バーのウェイター役でも何でもいいから!」と前のめりになると、アルマも「松重さんはすでに髪型の準備も出来上がっているので、是非とも出演してほしいです」と太鼓判を押していた。また、来年6月には、『枯れ葉』の日本での公開を記念し、アキ・カウリスマキ監督が共同オーナーを務めている映画館「キノ・ライカ」への訪問やヘルシンキ近郊の撮影スポットめぐりなど、カウリスマキファンの心をくすぐる「キノ・ライカとアキ・カウリスマキの世界スペシャルツアー」が実施されると聞いた松重さんは、「スケジュール何とかならいかな」と本気で悩む様子も。まだまだ質問し足りないと漏らす松重さんに、アルマは「このような素敵な機会をありがとうございました。とても楽しかったです!」と感謝を伝え、大盛況のうちに舞台挨拶は幕を閉じた。『枯れ葉』は12月15日(金)よりユーロスペースほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:枯れ葉 2023年12月15日よりユーロスペースほか全国公開© Sputnik
2023年12月07日ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)のアイコンバッグ「アルマ」から、新作が登場。“マルタージュ・パターン”あしらった「アルマ」バッグ新作ルイ・ヴィトンの「アルマ」は、構築的なシルエットと高い耐久性が魅力のアイコンバッグ。そんな「アルマ」に、メゾンの伝統的なトランクから着想を得た、交差する格子柄“マルタージュ・パターン”を採用した新作バッグが仲間入りする。“マルタージュ・パターン”による立体的なひし形の表情は、上質なラムレザーのボディーに独自の存在感を演出。ゴールドカラーのパドロック、レザーのキーベル、滑らかなロール仕上げのレザーハンドルなどのディテールがシックなアクセントを加えている。サイズは普段使いにぴったりのスモールサイズから、旅行などでも活躍するラージサイズまで、3サイズを展開。スモールサイズの「アルマ BB」とミディアムサイズの「アルマ PM」には、スタイルに合わせてクロスボディバッグとしても使用できる取外し可能なストラップが付属する。詳細ルイ・ヴィトン「アルマ」新作販売店舗:ルイ・ヴィトン ストア、公式オンラインストアアイテム:・アルマ BB 583,000円サイズ:W23.5xH17.5xD11.5cm・アルマ PM 753,500円サイズ:W32xH25xD16cm・アルマ GM 918,500円サイズ:W39xH30xD19cm【問い合わせ先】ルイ・ヴィトン クライアントサービスTEL:0120-00-1854
2023年09月14日工学院大学(学長:伊藤 慎一郎、所在地:東京都新宿区/八王子市)の小麦 真也准教授(教育推進機構)を中心とする研究チームは、3C273と呼ばれる銀河をアルマ望遠鏡で観測し、特殊なデータ解析の結果、同銀河に何万光年にもわたって淡く広がる電波放射が存在することを世界で初めて発見しました。図1高エネルギージェットを持つ巨大銀河の想像図。Credit:ALMA(ESO/NAOJ/NRAO)■研究の詳細本研究で観測された3C273は地球から24億光年の距離にある銀河の中心核で、クェーサーと呼ばれる種族の天体です。その正体は巨大なブラックホールで、周囲の物質を飲み込むことで、強烈な光のエネルギーを生み出しています。世界で初めて発見されたクェーサーでもある3C273は、クェーサーでは最強の電波を放っています。そのような経緯から、何十年も研究されてきた「よく知られた」天体で、アルマ望遠鏡でも空の位置の基準としてしばしば観測されています。電波観測にとって、3C273は灯台のような天体と言えます。車のヘッドライトを直視すると目が眩んで周りの様子が見えにくくなりますが、実は同じことが望遠鏡でも起きます。明るい天体と暗い天体を同時に検出する能力はダイナミックレンジと呼ばれ、アルマ望遠鏡では明るさの差が数100倍程度のダイナミックレンジならば精密に電波を測定することができます。一般的なデジカメのダイナミックレンジは数1,000倍とされているため、電波望遠鏡は明暗の差が激しい天体を観測するのは苦手であると言えます。3C273はまさに、明るすぎて望遠鏡の目が眩んでしまうような天体です。全天随一のクェーサーとして長い間知られてきたにもかかわらず、中心の3C273自身が明るすぎるために、それより遥かに暗い銀河(母銀河)の姿についてはあまりわかっていませんでした。研究チームは観測データの解析にあたり、3C273自身の明るさを電波の強さの基準とする自己較正と呼ばれる方法を適用し、さらに電波の周波数や時間による変動を細かく補正することによって天体の電波が周囲に漏れ込んでノイズとなることを極力抑え込みました。その結果、85,000倍にも達するダイナミックレンジを達成し、暗い部分まで画像化することに成功しました。アルマ望遠鏡による銀河系外の観測で得られたダイナミックレンジとしてはこれまでの最高記録です。図2ハッブル宇宙望遠鏡で観測されたクェーサー3C273(左図)[1][2]。極めて明るいため、望遠鏡内で散乱した光が放射状に漏れています。右下部分には、中心核から放出されている高エネルギーのジェットが見えています。アルマ望遠鏡で観測された3C273の電波画像(右図)。ただし中心の明るい部分は差し引かれています。今回発見された3C273付近の淡く広がった電波放射は、右下に伸びているジェットに比べてもとても弱いです。Credit:Komugi et al., NASA/ESA Hubble Space Telescope高いダイナミックレンジを達成した結果、3C273の周囲にはこれまで知られていなかった、母銀河全体に何万光年にもわたって淡く広がる電波放射が存在することを発見しました(図)。通常はクェーサーの周辺に電波放射が見つかる場合は、クェーサーから放出される超高速のジェットや母銀河での大規模な星形成活動に起因する「シンクロトロン放射」が原因です。3C273にも、中心からある方向に強烈なジェットが放出されています。シンクロトロン放射は観測される周波数によって強度が変化するのが特徴ですが、本研究で発見された淡く広がった電波放射は周波数によって変化しませんでした。様々な可能性を検討した結果、この電波放射は3C273からの強烈な光が母銀河の星間物質を照らすことで発生する「熱制動放射」と呼ばれるものであることがわかりました。銀河中心核に照らされたガスからの熱制動放射が数万光年という広い範囲にわたって見つかるのは、世界で初めてのことです。「灯台もと暗し」ではなく「灯台もと明かるし」のため何十年も見過ごされていたことになります。■本件の意義について今回の発見はなぜ重要なのでしょうか。これまで、クェーサーのような活動的な銀河中心核の影響のために母銀河で星の形成が阻害されるか否かは、銀河天文学では大きな問題となっていました。星の形成には水素ガスが必要です。もしクェーサーの強い光のせいでガスが壊れてしまう(電離する)と、星の形成が妨げられてしまいます。このようなことが実際にクェーサーで起きているかどうかを調べるため、従来は可視光での観測を行い、電離したガスを直接観測するという手法が一般的でした。しかし電離したガスが可視光を放出する機構は複雑で、さらに星間空間に存在する塵によって光が吸収されてしまうため電離したガスの量を見積もるには困難を伴っていました。本研究で観測された熱制動放射は電波の放出機構がシンプルで、かつ塵によって減光されません。そのため、母銀河に存在する電離ガスの量を見積もることが容易になりました。本研究では、クェーサー3C273からの光の7%あるいはそれ以上が母銀河の水素ガスに吸収されていることがわかりました。それによって発生した電離ガスは太陽の100-1,000億倍の質量もあることがわかりましたが、その一方で、星形成直前の状態にある水素分子ガスも大量にあり、銀河全体として星の形成が阻害されているようには見えないということもわかりました。「本研究はこれまで可視光観測によって行われてきた研究テーマに対し、電波観測による新手法を提供するものです。今後同様の手法を他のクェーサーにも適用することで、銀河とその中心核がどう互いに影響しあって進化してゆくのか、理解が進むことが期待されます。」と小麦 真也准教授(工学院大学教育推進機構)は述べています。■論文詳細論文名Detection of extended millimeter emission in the host galaxy of 3C273 and its implications for QSO feedback via high dynamic range ALMA imaging掲載誌米国天文学誌『アストロフィジカルジャーナル』The Astrophysical Journal, 930巻 3号(2022年5月発行) 研究者小麦 真也(工学院大学)、鳥羽 儀樹(国立天文台、京都大学)、松岡 良樹(愛媛大学)、斉藤 俊貴(国立天文台、日本大学)、山下 拓時(国立天文台)この研究は、日本学術振興会科学研究費JP20K04015, JP21K13968, JP19K14759の助成を受けて行われました。アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array:ALMA)は、欧州南天天文台(ESO)、米国国立科学財団(NSF)、日本の自然科学研究機構(NINS)がチリ共和国と協力して運用する国際的な天文観測施設です。アルマ望遠鏡の建設・運用費は、ESOと、NSFおよびその協力機関であるカナダ国家研究会議(NRC)および台湾行政院科技部(MoST)、NINSおよびその協力機関である台湾中央研究院(AS)と韓国天文宙科学研究院(KASI)によって分担されます。アルマ望遠鏡の建設と運用は、ESOがその構成国を代表して、米国北東部大学連合(AUI)が管理する米国国立電波天文台が北米を代表して、日本の国立天文台が東アジアを代表して実施します。合同アルマ観測所(JAO)は、アルマ望遠鏡の建設、試験観測、運用の統一的な執行および管理を行なうことを目的とします。注釈[1] Based on observations made with the NASA/ESA Hubble Space Telescope, and obtained from the Hubble Legacy Archive, which is a collaboration between the Space Telescope Science Institute (STScI/NASA), the Space Telescope European Coordinating Facility (ST-ECF/ESA) and the Canadian Astronomy Data Centre (CADC/NRC/CSA).[2] これらの画像は、Lupton et al. (2004), "Preparing Red-Green-Blue Images from CCD Data", in the Publication of the Astronomical Society of the Pacific (DOI: 10.1086/382245)に記述されている方法を使用して作成した三色合成図です。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年05月31日日本でも人気の高い世界的キャラクターのひとつとして挙げられるのは、フィンランドで誕生したムーミン。かわいらしいキャラクターの数々と心温まる物語は、長年にわたって愛され続けています。そこで、生みの親である画家トーベ・ヤンソンの知られざる波乱に満ちた半生に迫る映画『TOVE/トーベ』をご紹介します。今回は、主演を務めたこちらの方にお話をうかがってきました。アルマ・ポウスティさん【映画、ときどき私】 vol. 415本作だけでなく、舞台でもトーベ役を演じたり、劇場版のムーミンでフローレン(スノークのおじょうさん)の声を担当したり、まさに適役とも言えるアルマさん。本国フィンランドではロングランとなる大ヒットを記録した本作の見どころやムーミンの魅力、そして自身の原動力について、語っていただきました。―トーベ・ヤンソンさんといえば、フィンランドでは大きな存在だと思います。演じるうえで、プレッシャーなども大きかったのではないでしょうか?アルマさんもちろん、それはありましたね。これだけ多くの人に愛され、重要な存在であるトーベの伝記映画を作るというのは、決して簡単なことではありませんから。私だけでなく、作品に関わるみんなのなかに、多少の怖さはあったと思います。―それをどう乗り越えましたか?アルマさん救いとなったのは、監督のある言葉。「私たちにとって、これは“ミッションインポッシブル”だから、どうせ失敗をするなら一番おもしろい形で失敗しましょう」と言ってくれたんです。そのおかげでみんなのマインドが解放され、私たちなりのトーベを自由に追求していけばいいのだと考えることができたと思います。そもそも、他人の人生における真実を知るのは難しいことですからね。そこで、私たちは彼女の作品のなかに没入し、彼女が残してくれた“ヒント”をもとに制作していくことにしたのです。トーベのご家族からも「みなさんの解釈で、できる限り美しくて強いものを作ってください」と言っていただいたので、そういった応援をいただけたことも非常に重要でした。あらゆる形で共感できなければ、演じられなかった―役作りをしていくなかで、意識していたことはありますか?アルマさんあらゆる形で彼女に共感できなければ、おそらくこの役は演じられなかったと思っています。トーベは、知的でユーモアがあり、生きる喜びや冒険心に満ちていましたが、同時に悲しみや自己批判といったダークな一面も持ち合わせていた複雑な人物。だからこそ、彼女は一体どんな人間なのか、彼女の人生とはどういったものなのかについて考えさせられました。そして気がついたのは、彼女を動かしているのはアートであること。芸術こそ、トーベがもっとも愛したものであり、彼女にとっては“聖なるもの”だったと思います。そしてもうひとつは、たくさんのステキな出会い。たとえ恋愛関係が終わっても友情を深めることができた彼らの姿に、私はインスピレーションをもらいました。―当時のフィンランドは同性愛が犯罪とされていたそうですが、そんななかでも恐れることなく女性舞台演出家のヴィヴィカをまっすぐに愛する姿が印象的でした。アルマさん私もいい意味で自分を見失うことができる愛には圧倒されますし、それこそが生きる力を与えてくれるものだと考えています。トーベは人に対しても、生きることに対しても好奇心を持っている女性ですが、それでもヴィヴィカとの恋愛は彼女にとっては驚きだったのではないかなと。でも、彼女にとっては“ハッピーなサプライズ”だったとは思います。戦後のフィンランドは非常に保守的だったので、同性愛は違法とされていましたが、トーベにとってはどの恋愛も自然に起きたこと。「私が好きになったのは人間であって、男性か女性かは関係ない」というのが彼女の哲学の礎でもあるのです。私は「サイレントレボリューション」と呼んでいますが、彼女のしたことは後世の人たちのために、静かにドアを開けていたのと同じだと思っています。ラブシーンでは興味深い体験をすることができた―まさにその通りですね。では、撮影中の忘れられない出来事などについても教えてください。アルマさん本当にステキなことがたくさんありましたが、そのなかでも素晴らしかったのは、ザイダ・バリルート監督と撮影監督であるリンダ・ワシュベリのコラボレーション。フィンランドでは、女性の撮影監督はあまり多くないので、どうしても“男性の眼差し”で撮られることが大半ですが、今回は監督も撮影監督も女性だったので、“女性の眼差し”を通して撮ることができました。そのおかげで、特にラブシーンでは興味深い体験をすることができたと思います。これはヴィヴィカ役のクリスタ・コソネンとも話していたことですが、2人の女性がベッドにいる様子を女性の目線で切り取ることで、そこにある情熱や理解に対する新しい解釈が加わったように感じることができたのです。それはいままでにない経験でしたね。恥ずかしさやぎこちなさも一切なく、自由に演じることができたので、私たち俳優にとっても、うれしい発見となりました。―そのあたりも注目ですね。いまや世界的なキャラクターとなった「ムーミン」についてもおうかがしますが、フィンランドの方々にとっては、どのような存在ですか?アルマさん私は本のなかにいるムーミンと一緒に育ちましたが、いまの子どもたちはテレビシリーズやゲームなど、本当にそれぞれのムーミンとともに冒険をしながら大きくなっています。そういう様子を見ていると、トーベは私たちがずっと持つことのできる“宝物”を作ってくれたんだなと感じますね。誕生してからこれだけ時間が経っていても愛されているのは、本当にすごいこと。おそらくそれは、トーベの価値観と私たちが大事にしているものが同じだからここまで響くんでしょうね。その価値観とは、他人との連帯や友情、冒険心、愛、つねにオープンであること、好奇心、そしてすべてのなかにあるユーモアのことだと私は思っています。ムーミンにとって、2番目のホームは日本―そういった普遍的なところが、日本でも多くの人を惹きつけてやまない理由かもしれません。アルマさんそうですね。フィンランドと日本は、地理的には非常に遠い国同士。にもかかわらず、日本のみなさんが心のなかにムーミンを持ち、これだけつながりを感じてくださっていることは興味深いことだと思います。おそらく日本はムーミンにとって2番目のホームと言えるのではないでしょうか。―うれしいです。ちなみに、アルマさんは日本のアニメやキャラクターでお好きなものがあれば、教えていただけますか?アルマさん私は子どものときに、あまり日本のアニメに触れる機会がありませんでした。なので、残念ながら挙げられるものがないのですが、実は俳優になってから日本には親しみを感じています。というのも、日本で生まれた俳優訓練法である「スズキ・トレーニング・メソッド」を学んだことがあるからです。私はまだすべてを習得できているわけではありませんが、身体的な感覚を意識したり、自分のなかにある“演技の源”をしっかりと根付かせたりする必要があるので、いまでも時折このメソッドに立ち返って訓練することはあります。日本で練習したことはありませんが、いつか日本に行ってみたいです。―ぜひ、お待ちしております!では、アルマさんにとってモチベーションの源となっているものとは?アルマさん私も彼女と同じように、好奇心に突き動かされるタイプだと思います。そして、何よりも芸術を愛しているので、演劇も私にとっては大きな存在です。言うならば、哲学的で身体的なアドベンチャーをしているような感覚なのかもしれません。この仕事は、「人間とは一体何なのか」ということを模索する終わりのない旅をしているようなものですが、これこそが私の人生において一番好きなもの。なので、いまは俳優でいられること、そして恵まれた環境にいることにとても感謝しています。感情は抑えるものではなく、出すべきもの―今回お会いするのは初めてですが、劇中のアルマさんとは違った溢れるような明るい笑顔に魅了されています。ステキな女性でいられる秘訣があれば、教えてください。アルマさん(日本語で)わあ、ありがとう!そうですね、私は自分の感情を抑えることをやめたので、幸せなときは笑っていいし、悲しいときには泣けばいいと思っています。感情というのは抑え込むものではなく、出すべきものですからね。私はそうしていないと落ち込んでしまうので、いまでは自分の心で感じているものは流れ出るままにしています。もしかしたら、それがつねに笑顔でいられる理由のひとつかもしれません。―ありがとうございます。それでは最後に、アルマさんから日本の観客へ向けてメッセージをお願いします。アルマさん何の理由がなかったとしても、私たちは自分に制限をかけてしまうことってありますよね?私はそういう部分に関しては、トーベの時代よりもいまのほうが保守的になってきているのではないか、とさえ感じることがあります。でも、人生で自分自身をしっかりと模索し、好奇心と冒険心を持ち、作られたルールに縛られることなく、つねに自由であるために戦い、そして愛を持って相手をリスペクトすることが大事なのです。ぜひ、トーベからそういったインスピレーションを感じていただけたらと思います。インタビューを終えてみて……。一問一問に対して丁寧に答えてくださるいっぽうで、劇中とは異なるチャーミングな表情をのぞかせるアルマさん。オンライン取材であったため、画面越しではありましたが、それでもこちらまで笑顔にさせてしまう魅力には、一瞬で虜となってしまいました。本作では、アルマさんの見事な熱演に、ぜひ釘付けになってください。自由に生きる美しさを教えてくれる!世界的なアーティストとなったトーベ・ヤンソンが成功の裏側で味わった葛藤や苦悩、そして激しい恋愛感情に触れることができる本作。どんな状況のなかでも、自分を信じ、自由と信念を貫いて生きる姿は、時を超えて現代の女性たちにも勇気を与えてくれるはずです。取材、文・志村昌美ストーリー第二次世界大戦下のフィンランド・ヘルシンキで、画家のトーベ・ヤンソンは自分を慰めるように、不思議な「ムーミントロール」の物語を描き始めていた。戦争が終わりを迎えると、彼女はほとんど廃墟と化したアトリエを借り、本業である絵画制作に打ち込んでいくことに。しかし、著名な彫刻家である厳格な父との軋轢、さらには保守的な美術界との葛藤のなかで満たされない日々を送っていた。そんなある日、トーベは舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラーと出会い、激しい恋に落ちる。それこそが、ムーミンの物語と彼女自身の運命の歯車を大きく動かすものとなるのだった……。情熱の詰まった予告編はこちら!作品情報『TOVE/トーベ』10月1日(金)より、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか 全国ロードショー配給:クロックワークス© 2020 Helsinki-filmi, all rights reservedCopyright Marica Rosengard
2021年09月30日国立天文台は2月26日、アルマ望遠鏡を用いた観測の結果、地球から4700万年光年の場所にある渦巻銀河M77の中心部に存在するブラックホールの周りに、有機分子が集中して存在することを明らかにしたと発表した。同成果は国立天文台の高野秀治氏と名古屋大学の中島拓氏を中心とする研究グループによるもので、天文学専門誌「日本天文学欧文研究報告」に掲載された。銀河における爆発的星形成領域(スターバースト)や銀河中心に存在する活動的なブラックホール(活動銀河核)は銀河の進化を考える上で重要な調査対象とされる。M77の中心には活動的なブラックホール(活動銀河核)があり、その周囲を爆発的星形成領域(スターバースト)が半径3500光年のリング状(スターバースト・リング)に取り囲んでいることが知られている。同研究チームはこれまで、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡を用いて、既にこの銀河で各種分子が放つ電波の観測を行っており、今回の研究は、アルマ望遠鏡を用いることでさらにそれを発展させたかたちだ。アルマ望遠鏡による観測では、活動銀河核とスターバースト・リングにおいて一酸化炭素やシアノアセチレン、アセトニトリルなど9種類の分子の分布が捉えられた。分子によって分布はさまざまで、特に原子の数が多いシアノアセチレンやアセトニトリルが活動銀河核の周囲に豊富に存在していたことは中島氏らを驚かせた。こうした分子はブラックホール周囲では強烈なエックス線や紫外線放射によって壊されると考えられていたからである。同研究グループは活動銀河核のまわりではガスが非常に濃くなっているため、中心部からエックス線や紫外線が遮られることで有機分子が壊されずに残ったのではと推測しており、「さらに広い周波数範囲での観測や、より高い解像度での観測によるデータが来る予定ですので、詳しく全貌を明らかにすることができ、驚きの結果もさらに出てくると期待しています」とコメントした。
2015年02月27日アルマ望遠鏡は11月6日、惑星誕生の現場を史上最高の解像度で撮影したと発表した。同望遠鏡のように、複数のパラボラアンテナを結合させて一つの望遠鏡とする「電波干渉計」では、アンテナの間隔を離せば離すほど解像度(視力)が向上する。2014年10月24日、アルマ望遠鏡は過去最大のアンテナ展開範囲15kmで試験観測を行い、観測対象には地球から約450光年の距離にある星で、比較的若い「おうし座HL」が選ばれた。この時の解像度は、史上最高の0.035秒角(角度の1度の約10万分の1)で、人間の視力に換算すると2000になるという。今回の観測で撮影された「おうし座HL」の画像には、星のまわりに同心円状の塵の円盤が幾重にも並んでいるようすがくっきりと写し出されていた。生まれたばかりの星のまわりには画像のような円盤があり、1千万年以上の時間をかけて円盤内の物質が衝突合体を繰り返して惑星が作られると考えられている。画像では、「おうし座HL」を取り囲む円盤に少なくとも3本のはっきりした隙間があることがわかる。こうした隙間は、円盤の物質を掃き集めながら大きな惑星が成長しつつある証拠だと推測されるが、100万歳に満たないほど若い星の周囲で大きな惑星が形成されつつあるというのは、これまでまったく想定されていなかった。惑星形成の研究者でもある林正彦 国立天文台長は「惑星系ができていくようすが手に取るように見てとれる画像が、こんなにも早くアルマ望遠鏡で観測できるとは思っていなかった。次はいよいよ宇宙における生命の兆候の発見に向かう」とコメントしている。
2014年11月07日アルマ望遠鏡は9月24日、アンテナを7kmの範囲に展開した干渉計試験に成功したと発表した。アルマ望遠鏡とは、国立天文台や米国国立電波天文台などによる国際共同プロジェクトとして、チリのアタカマ砂漠の高地に設置された、パラボラアンテナ66台を組み合わせた干渉計方式の巨大電波望遠鏡。すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡の約10倍の分解能をもつ。電波干渉計では、アンテナの間隔を離せば離すほど解像度が向上する。アルマ望遠鏡は2011年から観測を行っているが、その中で使われているアンテナの展開範囲は最大1.5kmにとどまっていた。今回の試験観測はより広い範囲に展開したアンテナがひとつの望遠鏡として機能するかどうかを確認するために行われた。同試験で天体画像は取得されていないが、同プロジェクトの一員であるキャサリン・ヴラハキス氏は「天体画像取得のための試験観測が始まれば、これまで以上に高い解像度を実現し、すばらしい観測成果を届けてくれるでしょう」とコメント。将来的には最大11km程度のアンテナ間隔での観測を目指すという。
2014年09月26日