フランス菓子の名店「ルコント」から、5月1日の「すずらんの日」にちなんだお菓子「ガトーミュゲ」が新登場。4月10日(金)~5月1日(金)まで、広尾本店、銀座店、日本橋三越店にて期間限定販売となる。5月1日が「すずらんの日」だと初耳の人もいるかもしれない。フランスの風習で、5月1日にお世話になった人や家族など、身近な大切な人にすずらんの花を贈る風習があるという小さな白い花をつける可憐なすずらんは、「幸せの再来」という花言葉を持ち、「すずらんの日」は、すずらんを贈られた人は幸せが訪れる日と言われている。ルコントの「ガトーミュゲ」は、プラリネを使ったバタークリームとヘーゼルナッツのダクワーズ生地を合わせ、チョコレートでコーティング。表面に白い花をつけた上品なすずらんの花をあしらった。ナッツとチョコレートの風味が楽しめる一品。価格は1個、540円。ぜひこの機会に、すずらんの花と「ガトーミュゲ」を手土産に大切な方へ会いにでかけてみてはいかが?(text:Miwa Ogata)
2015年03月27日12月5日(金)にオープンしたばかりのフランス菓子の名店「ルコント 銀座店」では、クリスマスに向けて、同店限定の新商品「クグロフ」が発売される。フランスのアルザス地方に伝わる伝統的なお菓子のクグロフは、ヨーロッパではクリスマスに欠かせないケーキのひとつ。山型の生地には干しブドウが練りこまれ、アーモンドをトッピングして焼き上げる。最後に粉糖をふりかければ、まるで雪化粧したかのようなケーキの完成。今回、「ルコント 銀座店」限定で発売される特別な「クグロフ」は、フランボワーズ風味の生地をベースに、アクセントとしてドライクランベリーが入っており、口にするたびにフリュイリュージュ(フランス語で赤い果実の意味)の風味が楽しめる一品。ローズとフランボワーズのグラスアローをまとわせた見た目にも華やかでロマンティックなクグロフに仕上がった。価格は、2,916円。クリスマスの幸せな気分をさらに盛り上げてくれるルコントからの贈り物だ。クグロフを買いに、ぜひ新しい銀座店に立ち寄ってみてはいかが?(text:Miwa Ogata)
2014年12月18日『髪結いの亭主』『仕立て屋の恋』などで知られる恋愛映画の名手、パトリス・ルコント監督。前作『スーサイド・ショップ』ではアニメに挑んだ彼だが、新作『暮れ逢い』では大人の恋愛映画に回帰した。その他の写真今回の物語は『マリー・アントワネット』などの歴史小説で知られるオーストリアの作家、シュテファン・ツヴァイクの短編小説がベース。鉄鋼業で成功を収めた実業家ホフマイスターの若き妻シャーロットと、そのホフマイスターに見初められ個人秘書に抜擢された若き青年フリドリックという許されぬ恋に落ちたふたりの純愛が描かれる。再び“愛”を主題にしたことをルコント監督はこう明かす。「今の時代、メイク・ラブの扱いがとても軽い気がしてならない。その風潮に対して、一石投じたい気持ちがどこかにありました」作品はルコント監督の過去の恋愛映画にも通じる、秘めたる恋の物語。互いの立場や気持ちを想うふたりは最後の一歩に踏み出せないながら、それゆえ愛は高まる。その心の葛藤を、『アイアンマン3』などハリウッド大作への出演が続いているレベッカ・ホールと、ディズニーの新作、実写版『シンデレラ』で王子役に抜擢されたリチャード・マッデンが見事に体現している。「僕の演出はシンプル。カメラの後にたって、役者を見つめるだけ。すると役者は自然とすべてを僕に差し出してくれるんだ。今回のレベッカとリチャードも作品にすべてを捧げてくれたよ」一方、結果的にふたりの愛の大きな障害となるシャーロットの夫ホフマイスターを演じたアラン・リックマンも忘れがたい印象を残す。「気難しい役者という噂があるけど、なぜそう言われるのかわからない。役に全身全霊を注いでくれ、こちらの要望を聞くと瞬時にそれを表現してた。彼の演技が今回の作品に重みを与えてくれたことは間違いない」監督デビューして40年がたった今も創作意欲は衰えていない。今後も我々の胸を焦がすような恋愛映画を作り続けていってくれそうだ。「恋している男女の姿を描くことこそ僕は映画的と思うんだ。また、『髪結いの亭主』が完成したとき、ある著名な監督を試写会に招待した。すると試写後に彼が涙を流していてね。理由を聞くと“この映画を見て、僕の妻への愛がまだまだ足りないことに気づいた”とのこと。この言葉は今でも僕の心の大きな支えで、今も恋愛映画を作り続ける自信になっている。今後もいろいろな愛の形を描きたいと思っているよ」『暮れ逢い』12月20日よりシネスイッチ銀座にて公開取材・文・写真:水上賢治
2014年12月17日フランスの名匠パトリス・ルコントが新作『暮れ逢い』の公開を前に来日。12月3日(水)、監督の作品の大ファンで、今年7月に「春の庭」で第151回芥川賞に輝いた作家の柴崎友香とのトークイベントが都内で開催された。池田理代子の「ベルサイユのばら」に多大な影響を与えたといわれる歴史小説を手掛け、『グランド・ブダペスト・ホテル』のウェス・アンダーソン監督も同作において影響を受けたと公言するオーストリアの作家ツヴァイクの短編を映画化。大富豪の秘書を務める青年と大富豪の若き妻の道ならぬ恋、第一次世界大戦に翻弄されていく彼らの運命を描き出す。幾度となく新作を携えて来日しているルコント監督だが「なかなか僕の日本語は上達しなくて…。電話に『もしもし』と答えるのは知ってるけど、使う機会がない」と語り、冒頭から笑いを誘う。柴崎さんは「高校生のときから監督の映画を観てました」と語り、ヴァネッサ・パラディ主演の『橋の上の娘』や「男性同士の友情が好き!」という『列車に乗った男』などお気に入りの作品を伝え「ここにいるのがまだ信じられないです…(笑)」と緊張した面持ちで語る。柴崎さんはこの『暮れ逢い』における、登場人物たちの眼差しが印象的だったそうだが、監督は自身の撮影スタイルとして「ファインダーを自分でのぞき、自分でカメラを回します。映画の中の人物になった気持ちで撮っているのです。実はそういう監督はフランスでもまれらしいですが、僕はこのスタイルが好きだし、役者もまた自分の演技を監督に見られるのを好むもので、そこで“共犯関係”が出来るのです」と説明。柴崎さんは「監督の作品はいつも人物に見つめられているような気持ちになるんですが、(カメラを通じて)監督と視線が通じ合っていたんですね」と納得したようだった。柴崎さんはまた、ほんのわずかしか出てこない登場人物も含め、本作のいずれの俳優も素晴らしいと称賛を送る。特にこれまでフランスを舞台にフランス人俳優を起用することが圧倒的に多かったが、今回の英国人俳優陣との出会いは監督も「目を瞠らされた」という。特に大富豪を演じたアラン・リックマンについて「実は、アランのことは知りませんでした。『ハリー・ポッター』を観てないので…。だから英国人のキャスティング・ディレクターに『次はアラン・リックマンと会ってください』と言われて、知らないのに『それはいいね』と言ってたんです(笑)。さすがに会う前にiPhoneで調べて『あぁ、彼なら知ってる!』と気づいたんですが、そこからの出会いはもちろん、人間としても非常に素晴らしかったです。ここからは、僕のうぬぼれ話として聞いてほしいのですが、最初、彼はここ2年ほど大作に出続けていて疲れていたのですが、脚本を読んで気に入ってくれて『あなたの作品は好きだし出るよ』と言ってくれたんです。撮影後の打ち上げでは、僕を強く抱きしめ『忘れかけていた映画への情熱をあなたが思い起こさせてくれた』と言ってくれました。以上でうぬぼれの時間はおしまいですが(笑)、僕にとってはどんな勲章よりも嬉しい言葉でした」と落ち着いた口調の中に喜びをにじませる。柴崎さんの「女優を選ぶときや撮影するときにどこに注目しているのか?」という問いには「ひと目ぼれです」と語り「自分が(登場人物に)恋していなくては感動する映画は撮れません。自分が撮っている女優と恋に落ちるというのは最低限の義務なのです」と言い切った。長編映画デビューかちょうど40周年を迎えるが、最初の現場のことを覚えているかと尋ねられると「全くうまくいかなかったので、よく覚えています(苦笑)。『キツすぎてこの仕事はやっていけないかも…』と思いました」と述懐。それでも続けられたのはなぜか?という柴崎さんの問いに「映画を撮ることは昔からの夢であり、あきらめられず、夢を見続けたかったんです。2作目が幸運なことに大ヒットし、そこからは羽が生えたように好調でいまに至ります」と笑う。観客からは、以前、監督がインタビューで「あと3本で引退する」と語ったことについての質問が飛んだが「まだ撮り続けますよ」と語り、ファンを安心させる。その上で「でも、いいタイミングでやめようとは思ってます。映画が僕の前から立ち去る前に、僕の方が映画から去ろうと考えています」と語った。最後にファンに向けて「あなたの人生において、一瞬たりとも恋に落ちることをためらわないでください」と呼びかけ、会場は温かい拍手に包まれた。『暮れ逢い』は12月20日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2014年12月04日フランス菓子の名店として名高い「ルコント」が、待望の3店舗目となる「ルコント 銀座店」を2年間の期間限定で12月5日(金)から開店する。広尾本店、日本橋三越店に続く「ルコント 銀座店」は、銀座の中央通りに面しているルコントブルーを基調とした店内では、ルコントのスペシャリテで秘伝の蜜に漬けたドライフルーツをたっぷり使った「フルーツケーキ」やネズミの形をしたシュークリーム「スウリー」など、ファンから長年愛され続けている銘菓子が並ぶ。そして来るクリスマスに向けた新作商品ももちろん登場する。フランス伝統のクリスマスケーキ「ブッシュ・ド・ノエル」は、チェリー酒の香りとフランボワーズジャムがアクセントになったショコラとグランマニエ入りのバタークリームで仕上げたグランマニエの2種を用意。(各 5,940円)。苺を乗せたタルト生地に木苺のジャムをたっぷりとかけたクリスマス限定デコレーションの「タルトフレーズ」(4,644円)やレアチーズとフランボワーズの爽やかな酸味とホワイトショコラのほどよい甘みが絶妙な「ムースフロマージュブラン」(4,968円)も登場。ほか、クリスマスならではの「シュトーレン」や「クリスマスプディング」なども販売される。クリスマス商品の販売期間は、12月19日(金)~25日(木)(シュトーレンとクリスマスプディングは、12月5日(金)~25日(木)販売)となっている。「懐かしくて、あたらしい」というコンセプトを守り続けるルコントならではの本格フランス菓子の味わいを、ぜひ今年はクリスマスケーキで味わってみてはいかが?(text:Miwa Ogata)
2014年12月03日先日、婚約を発表したベネディクト・カンバーバッチを始め、ベン・ウィショーやトム・ヒドルストン、さらに「ダウントン・アビー」『ザ・ゲスト』のダン・スティーブンス、『アバウト・タイム愛おしい時間たち』のドーナル・グリーソンといった“新顔”も登場している、今年も大人気の“英国男子”。話題の新作映画、ドラマに続々と出演し、その勢いは留まるところを知らない彼らは、整ったルックスや紳士的な雰囲気、そして舞台で培った抜群の演技力で、日本中の女子を魅了している。だが実は、現在のブームは“第2次”の英国男子ブーム。かつて“第1次”のブームを盛り上げてきたのは、『ブリジット・ジョーンズの日記』『ラブ・アクチュアリー』などで活躍したヒュー・グラントやコリン・ファースなどだ。そんな彼らも、現在は50歳を超え、名実共に“紳士”と呼ぶにふさわしい風格をまとい、若手に負けず劣らず活躍中!日本でも注目を集めている“渋メン”好き、“枯れ専”女子にもおすすめの“大人の英国男子”も改めてチェックしてみた。まずは、『シンドラーのリスト』でのアカデミー賞「主演男優賞」ノミネートのほか、数々の受賞歴をもつ実力派俳優でありながら、近年はバリバリのアクションもこなしているリーアム・ニーソン。190cmの長身と、優しいつぶらな瞳が魅力的なリーアムは現在62歳。還暦を越えながらも衰えを感じさせない彼が、アクションスターとして新たなポジションを築くきっかけとなったのが、愛する娘や妻を体を張って救出してきた『96時間』シリーズ。その最新作にして、最終章となる『96時間/レクイエム』が2015年1月に公開を控えている。愛する家族を守るためなら、どこまでも冷酷非情に悪党をなぎ倒していく“無敵の父親”の最強っぷりが魅力の本シリーズ。最終章でも、その長身を活かしたダイナミックかつクールなアクションと、娘を溺愛する“親ばかパパ”ぶりで、多面性のあるキャラクターを魅力的に表現しており、日本の観客を再び熱狂させてくれるに違いない。また、12月20日(土)公開のパトリス・ルコント監督最新作『暮れ逢い』に出演しているアラン・リックマンも英国を代表する紳士の一人。『ダイ・ハード』の悪役でデビュー後、『ハリー・ポッター』シリーズのスネイプ先生としてすっかりお馴染みになったが、実際はその素顔は、非常に親切で優しく、チャーミングなことで有名。『暮れ逢い』では、レベッカ・ホール演じるチャーミングな若妻の心優しい夫を演じているアラン。ベテラン俳優ならではの“いぶし銀”の演技を披露。妻と若い男との関係を怪しみながらも、ひたすら彼女を見守る夫の悲哀を、ユーモアも交えつつ、貫禄たっぷりに見せている。さらに、『ハリー・ポッター』にも出演していた英国随一の個性派ゲーリー・オールドマンは、17年ぶりにハリソン・フォードと共演した『パワー・ゲーム』が公開中。IT企業の経営者としてリアム・ヘムズワースやアンバー・ハードら若手を牽引する。そしてオスカー俳優となったコリン・ファースも、『Mud-マッド-』のリース・ウィザースプーンや『アメイジング・スパイダーマン2』のデイン・デハーンらと実在の事件を描いた群像スリラー『デビルズ・ノット』に出演、さらなる新境地を見せている。キャリアと年齢を重ねたからこそ、にじみ出る“渋さ”と“安心感”。これからも、大人の英国紳士たちに目が離せない。『96時間/レクイエム』は2015年1月9日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2014年11月20日実話を基に家族の愛を知らずにいた女性と、まもなく命が尽きようとしている母親を取り巻く一家との出会いと別れを描いたメキシコ映画『マルタのことづけ』が、10月18日(土)よりシネスイッチ銀座ほかにて公開となる。メキシコといえば、昨今、国境を越えて活躍するメキシコ出身の監督は数多い。『アモーレス・ペロス』でカンヌ国際映画祭・批評家週間部門「グランプリ」を受賞し衝撃の長編デビューを果たした、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは、ブラッド・ピットや役所広司、菊地凛子などの日本人俳優も出演した『バベル』、ハビエル・バルデムが第63回カンヌ国際映画祭「主演男優賞」を受賞した『BIUTIFULビューティフル』でも知られている。また、『パシフィック・リム』で世界的に活躍する、日本のマンガ・アニメ・特撮が大好きなギレルモ・デル・トロ。さらに、メキシコ出身の俳優ガエル・ガルシア・ベルナルを主演に迎えた『天国の口、終りの楽園。』や、ヴェネチア国際映画祭のオープニング作品であった『ゼロ・グラビティ』で、第86回アカデミー賞最多7部門を受賞したアルフォンソ・キュアロンなど、いまやワールドワイドに活躍する名監督ばかり。そして、メキシコの新星女性監督クラウディア・サント=リュスが手がけた本作『マルタのことづけ』もまた、『髪結いの亭主』や『ぼくの大切なともだち』で知られるパトリス・ルコントが審査員長をつとめたヒホン国際映画祭で「審査員特別賞」を受賞するなど、各国の映画祭で高い評価を受け、注目を集めている。ひとり暮らしで友だちも彼氏もいないクラウディアは、ある日、虫垂炎で緊急入院。偶然、隣同士のベッドになったことから知り合った、4人の子どもを持つシングルマザーのマルタから、退院後、自宅に招かれる。しっかり者の長女・アレハンドラ、フリーターの二女・ウェンディ、思春期真っ直中の三女・マリアナ、末っ子の男の子・アルマンド、それぞれが強烈な個性を持つ子どもたちと、自分を娘のように扱うマルタに戸惑いながらも、クラウディアは初めて家族の温もりと母の愛を知る。一方、死期の迫るマルタは、日々を生きることに全力を注いでいた…。本作は、メキシコ第2の都市・グアダナハラを舞台に、クラウディア監督が自らの実体験をもとに、“遺していく母”と“遺される子どもたち”を描いた感動作。「メキシコ映画あまり観たことない…」という人も多いかもしれないが、実はメキシコ映画の歴史はとても深く、20世紀初頭から今日まで、映画界をけん引してきた監督や俳優を多く輩出。日本でも、メキシコなどラテンアメリカの映画をいち早く紹介してきた「ラテンビート映画祭」は今年で開催11年目を迎え、年々盛況となっている。■映画界に大きな影響を与えたメキシコが育んだ巨匠たち先に挙げた監督たち以外にも、メキシコには世界の映画界に影響を与えた巨匠が多く存在する。特に、サルバドール・ダリとの共同監督作『アンダルシアの犬』(’28)や、第28回ヴェネツィア国際映画祭「金獅子賞」受賞し、あの人気ドラマの基にもなった『昼顔』(’67)のルイス・ブニュエル監督は、スペイン出身でありながらメキシコに帰化し、世界各国をまたにかけて映画を撮り続けた。また、ケティ・フラドは、メキシコ出身の女優として、メキシコやハリウッドで活躍。『真昼の決闘』(’52)でゴールデングローブ賞「助演女優賞」受賞。そして『折れた槍』(’54)でメキシコ人俳優として初めてアカデミー賞「助演女優賞」にノミネートされ、晩年まで両国の作品に意欲的に出演していたことでも知られている。『エル・トポ』(’69)、『ホーリーマウンテン』(’73)などの代表作で知られるカルト映画の鬼才アレハンドロ・ホドロフスキー監督は、チリ出身だが20年以上、メキシコシティに在住。最新作『リアリティのダンス』(’13)は日本でも公開され、さらに、志半ばで企画が頓挫したSF大河小説「デューン」の映画化の裏側を、ホドロフスキー本人を始めとする関係者の証言と貴重な資料で描いたドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』(’13)も各界から大絶賛を受けている。本作で長編デビューを飾ったクラウディア監督も、メキシコで映画を学んできたひとり。デビュー作にして、ルコント監督にも太鼓判を押され、トロント国際映画祭など数々の映画祭で受賞を重ねているのも、メキシコ映画界の歴史ある土台が影響しているといえるだろう。隠れた“映画大国”メキシコが育んだ新しい才能による本作を、ぜひあなたもその目で確かめてみて。『マルタのことづけ』は10月18日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:マルタのことづけ 2014年10月、シネスイッチ銀座ほか全国にて公開
2014年10月01日働くなでしこのリアルな本音にあらゆる視点でスポットを当て、多くの支持を集めた映画『ガール』。待望のDVDリリースを記念して、女優・玄里が監督・深川栄洋に直撃!弱冠36歳にして『白夜行』、『洋菓子店コアンドル』、『神様のカルテ』、そして本作と引く手数多の売れっ子監督が“映画”にたどり着いたルーツとは?その素顔に迫る!——『ガール』に織り込んだヨーロッパ映画愛玄里:映画を観る前に、本作が日本版「セックス・アンド・ザ・シティ」(「SATC」)と聞いてたのですが、思っていたよりも楽しいだけじゃない部分にも焦点が当てられている気がしました。それは深川監督が意図したものなのでしょうか?深川:この映画のお話をいただいたときに原作(奥田英朗作)を読んだのですが、原作は女の子たちの素朴な心の動きに焦点を合わせていてすごく面白くて、女の子ってこういう考えや悩みを持ってるんだと興味を持ちました。でも今回、日本版「SATC」のような、大人が観れるロマンティック・コメディにしたいという要望があって。僕のやりたい世界でやるのは、難しいさじ加減だなと思いながらも、新しい挑戦が好きだし、やったことのないものをやる前から否定しても面白くないので、僕に期待してくださるならと信じて引き受けました。物語は日本の女の子の話で、「SATC」の主人公たちとは金銭感覚も価値観も違うので、ヨーローッパ映画のようなロマンティック・コメディ寄りにシフトしていったんです。それがプロデューサーの思いを貫徹できてるかは聞いてませんが…(笑)、僕が目指したところには船はたどり着いたかなと。玄里:監督自身は、ハリウッド映画よりヨーロッパ映画が好きなんですか?深川:断然そうですね!特に若いときはそうでした。玄里:具体的に影響を受けた監督はいらっしゃるんですか?深川:若いときに観てドキドキしたのは、アルノー・デプレシャン監督の『そして僕は恋をする』(’97)やケン・ローチ監督の『ケス』(’96)、パトリス・ルコント監督の『髪結いの亭主』(’91)、『百貨店大百科』(セドリック・クラピッシュ監督/’92年)など、90年代のフランス映画が好きでしたね。『最強のふたり』(現在公開中)も90年代のフランス映画の良き匂いみたいなのを感じました。玄里:おいくつぐらいから映画を観始めたんですか?深川:きっかけは高校3年生のときに付き合ってた女の子が映画が好きで、彼女に付き合って観たり話を合わせたいから、彼女が観たいと言ってた映画を先回りして観て「あの作品観たよ」みたいな形で映画の良さに気づき始めたので、本当に遅いんですよ。ちゃんと映画に向き合ったのは専門学校に入った18歳の頃からで、それまでに観てきた映画以外にもいろんな映画があるんだというのを知って、25歳くらいまでにいろんな映画を観ましたね。いまも新しい匂いがする映画を自分の嗅覚で嗅ぎ分けて、休みがあると観に行きますよ。玄里:監督は専門学校で元々、録音を勉強されていたんですよね?深川:同じクラスだった吉田恵輔監督は照明系をやっていて、僕は録音技師になれたらいいなとぼんやりと考えてたやる気のない学生でした(苦笑)。玄里:なんで録音だったんですか?深川:僕は本当に不勉強で、女の子が好きだから入ってしまった不純な男でお恥ずかしいんですけど、勉強もできないし、監督は無理だろうなと思ってたんです。そのときに観たヴィム・ヴェンダース監督の『リスボン物語』(’95)という映画の主人公が録音技師で、劇中で映画の声をつけたり近所の子供たちと足音や風の音などをつけているのを見て、声や音を吹き込むことで映画が命をもつということを教わったような気がしたんです。こんな仕事は素晴らしいと思って録音のコースに入ったんです。——映画監督の仕事の95%は「我慢」!?玄里:そうだったんですね!監督はその後、かなり早いペースで映画を撮られてますよね。中でも印象が強かったのが『白夜行』、特に劇中の子供たちのシーンに惹かれました。でも、その次の『神様のカルテ』で作風ががらっと変わったので、私の中ですごく意外だったんです。監督自身のジャンルへのこだわりはあるんですか?深川:僕は映画館で映画を観て9割は「面白いな~」って思って出てくるんですけど、それは多岐のジャンルに渡るんです、ホラーは苦手なのですが。いつもこんな映画が観たいなと思う映画にチャレンジしているので、いただいた企画に関しては「映画が生まれてくる意味があるなら」、「僕でお役に立てるなら」という感覚でやってるんです。だからジャンルは特にこだわらない。だから『ガール』も、この映画を観て次の日にこういう風に女性に接してみようという男の子が現れたり、“悩んでるのは私だけじゃないんだ”と思ってくれる女性がいたり。お光さん(檀れい)のような、彼女は周りから若作りしてると言われるけどとても幸せに見えるし、彼女みたいな生き方ができれば女性が幸せになれるんじゃないかなと思ったり。玄里:私も『ガール』の中でお光さんが一番好きです!檀さんのコメディのお芝居も意外でしたし、全体的にいままでの役のイメージと異なるような役をみなさんやってると思いました。キャスティングはかなりこだわったのですか?深川:この作品でパブリックイメージ通りの人を選んでいっても、パンフレットだけで消化できてしまうものになる気がして。そうじゃなくて、映画館の扉を開けて暗闇に包まれたら見たことのない女優さんの表情や苦悩が見れたり、そういうものが映画だと思うんです。俳優さんを苦しめてしまうことは多いんですが…、俳優さんの新しい引き出しを作ってあげることになったり、新しい扉を見せていただくことになったりとか、特別な映画になったよねって響き合いながら作っていきたいので、それをお客さんに観てもらって新しい映画だなと思ってもらえたらいいなと思うんです。玄里:俳優側からすると、すごくありがたい監督だと思います!深川:いや、そう思っていただける方は少ないかもしれません(苦笑)。玄里:じゃあ、監督のお仕事の中で演出が楽しいですか?キャスティングや編集など、色々ありますが。深川:どれも楽しくないですね…どれも苦しい。監督をやってみて思うのは、監督は仕事じゃなくて“状態”だと。監督の“状態”にいるときには楽しいことなんて1個もなくて、一番僕が楽しいと思うのは映画館で映画を観ているときなんです。監督の状態の9割5分は苦しみを耐える我慢。あと5%くらいは響き合えていい芝居撮れたな、ここは絶妙だなと奇跡的な瞬間に幸せを感じるんですけど、それ以外は我慢の連続。すごく孤独だし、それを打ち明ける人もいないし、現場はチームワークで作っていきますが、そのチームワークの頂点にいなきゃいけないときもあれば、いま現場ではこういう流れになってるけど本当に大事なのはこれなんだよね、でも言うのは止めておこう、とかひとりで考えたり…。もう一回人生をやり直すならこの仕事は選びたくないと思いますね(笑)。玄里:それでも深川監督が監督を続けている原動力は何ですか?深川:人に期待されるとそれを返してしまうというか、こういう映画が観たいと思われるうちはやってたいと思っていて。いまはたぶん、お客さんが求めているものと割と近い価値観をもっていると思うんですけど、それは生ものであって、これまでいろんな監督が時代に合った瞬間があったと思うんですけど、それも一瞬。いまは僕がバトンを持って走ってる感覚なんですよね。その役割が果たせなくなったら、今度は自分の感覚から生み出す作品を作っていこうかなと思っています。元々は自主映画で、誰も期待していないところに無理矢理映画を作って、映画館に行って「僕の映画を作ったんです。最高に面白いので公開してください!」と言って回ってた人間なので、またそこに戻っていこうかなと思ってます。玄里:では、一生映画監督は続けられるってことですね?深川:健康なうちは…。『ガール』の撮影前に肺気胸になってしまって、これでだいぶ人に迷惑をかけたので、肺に穴を開けない状況にしなきゃなって。いま10本以上の企画が同時進行していて頭も体もずっと使っているので、倒れないようにいまは体力づくりをし始めているんです。玄里:さっき仰ったバトンをもらってからずっと走り続けている感覚ですね。深川:次の監督が来るまでは頑張って走り続けようと思ってます。玄里:これからも監督の作品を楽しみにしています!(text:cinemacafe.net)
2012年11月26日