「ふるさと納税」という言葉を耳にしたことはありませんか?このふるさと納税は、上手に利用すればサラリーマンでも節税対策をすることができる魅力的な制度と言えます。ただし、より効果的にふるさと納税を利用するためには、「ワンストップ特例制度」についても理解を深めておく必要があるでしょう。そこで今回は、ふるさと納税とワンストップ特例制度について解説していきます。■ふるさと納税はどんな制度?「ふるさと納税」と聞くと故郷に税金を納めるように聞こえますが、正しくは「ふるさと納税=自治体への寄付金」のことです。では、そんなふるさと納税はどのような目的があって整えられた制度なのでしょうか?現代では地方で生まれ育った子どもが、進学や就職を機に都会へ引っ越すケースが多く見られます。そのまま都会での生活に慣れて、都会で結婚をして長期間住み続けることも珍しくはありません。そうなると、その人は都会に対して地方税などを納めることになります。サービスに関しても都会のものを利用することになるでしょう。そのような方でも子どもの頃は、生まれ育った故郷のサービスを受けていたはずです。しかし、大人になってから都会へ移り住むことになると、故郷に対して税金を納めたりサービスの対価を支払ったりすることができません。これは自治体にとってはマイナス要因であり、本人にとっても「地元に貢献できない」といったデメリットが発生します。そこで整えられた制度がふるさと納税です。ふるさと納税では自分が選んだ地方自治体へ寄付をすることで、寄付をした金額の一部が税金控除の対象となります。所得税と住民税が安くなるので、この制度が整えられたことで積極的に寄付をしやすくなりました。寄付の対象となる自治体は自由に選べるので、生まれ育った自治体以外にも学生時代に過ごした街、自分の子どもが住んでいる街などに寄付をしても控除を受けることは可能です。ふるさと納税はこのような制度なので、「地方創生」という大きな役割も担っています。控除の対象となるのは自己負担額(2,000円)を除く寄付金の全額なので、人によっては節税対策としても活用できるでしょう。その上、自治体によってはふるさと納税をすることで、趣向を凝らした返礼品を受け取ることもできます。【寄付先は情報収集をしてから選んでみよう!】日本全国の自治体は、ふるさと納税に関する目的や寄付金の使い道などをホームページ上で公表しています。そのため、「寄付金が何に使われるか分からないから…」と悩む必要はありません。また、中にはふるさと納税を行う本人が、寄付金の使い道を選択できる自治体も見られます。そのような自治体を選べば、納得できる形で寄付をすることができるでしょう。ふるさと納税の寄付先は、情報収集をしてから選んでも遅くはありません。きちんと情報収集をしてから自治体を選べば、不本意な形で寄付をしてしまうことは防げるでしょう。■寄付金額の上限は?全額控除になるふるさと納税額の目安上記ではふるさと納税の概要をご紹介しましたが、必ずしも全額控除を受けられるわけではありません。例えば年間で50,000円の税金を納めている場合、それ以上の控除を受けることは難しいでしょう。納めた税額以上の控除を受けることは基本的にできないので、その点には注意が必要です。では、全額控除になる寄付金額は具体的にどれぐらいなのでしょうか?納税者の年収や家族構成により目安は異なりますが、以下ではいくつかのモデルケースをご紹介いたします。【その1】ふるさと納税を行うサラリーマンの給与収入が300万円の場合・独身または共働き夫婦では28,000円・共働きで高校生の子供が1人では19,000円・共働きで大学生の子供が1人では15,000円・共働きで大学生と高校生の子供2人では7,000円・配偶者に収入がなく高校生の子供が1人では19,000円・配偶者に収入がなく大学生の子供が1人では11,000円【その2】ふるさと納税を行うサラリーマンの給与収入が500万円の場合・独身または共働き夫婦では61,000円・共働きで高校生の子供が1人では49,000円・共働きで大学生の子供が1人では44,000円・共働きで大学生と高校生の子供2人では36,000円・配偶者に収入がなく高校生の子供が1人では49,000円・配偶者に収入がなく大学生の子供が1人では40,000円・配偶者に収入がなく大学生と高校生の子供2人では28,000円【その3】ふるさと納税を行うサラリーマンの給与収入が700万円の場合・独身または共働き夫婦では108,000円・共働きで高校生の子供が1人では86,000円・共働きで大学生の子供が1人では83,000円・共働きで大学生と高校生の子供2人では75,000円・配偶者に収入がなく高校生の子供が1人では86,000円・配偶者に収入がなく大学生の子供が1人では78,000円・配偶者に収入がなく大学生と高校生の子供2人では66,000円【その4】ふるさと納税を行うサラリーマンの給与収入が1,000万円の場合・独身または共働き夫婦では176,000円・共働きで高校生の子供が1人では166,000円・共働きで大学生の子供が1人では163,000円・共働きで大学生と高校生の子供2人では153,000円・配偶者に収入がなく高校生の子供が1人では166,000円・配偶者に収入がなく大学生の子供が1人では157,000円・配偶者に収入がなく大学生と高校生の子供2人では144,000円上記で紹介したモデルケースは、住宅ローン控除などほかの控除を受けていないサラリーマンの例です。年金収入だけの人や事業所得者、その他の控除を受けているサラリーマンの人などは上限額が異なる場合があるため注意してください。あくまでも目安としての年間上限額のため、実際の金額はお住まいの自治体に問い合わせることが大切です。■ふるさと納税の寄付金控除を受けるための手続きふるさと納税の寄付金控除は、原則として確定申告をしなければ受けられません。では、具体的にどのような手順で確定申告をすれば良いのでしょうか?以下で詳しく解説していきます。【STEP1】寄附金受領証明書を受け取るふるさと納税で寄付をすると、寄付先の自治体から「寄附金受領証明書」と呼ばれる書類が届きます。この書類は確定申告時に必要になるので、必ず無くさないように保管しておきましょう。自治体によっては、専用振込用紙の払込控が受領証になる場合もあります。【STEP2】受領証明書を添付して確定申告をする受領証明書を受け取ったら、確定申告書の指定された箇所にその証明書を貼り付けましょう。その後、確定申告書に必要事項を記入して提出をすれば手続きは完了です。この手続きにおいて注意するべきポイントは、確定申告の「期日」です。控除を受けたい場合には、寄付をした翌年の3月15日までに確定申告を行う必要があるので必ず忘れないようにしましょう。上記の手続きが完了すると、所得税と住民税が以下のように控除されます。・所得税…寄付をした年の所得税から還付される・住民税…寄付をした翌年6月以降分の税額が減額されるなお、国税庁が提供している「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の案内に従って各項目を入力していくだけで簡単に確定申告書を作成できます。「確定申告書の作り方が分からない…」と悩んでいる方は、このようなサービスを積極的に活用してみましょう。確定申告書の提出については、お住まいの地域を管轄する税務署に郵送または持参するか、e-Tax(電子申告)を利用して申告する方法があります。ただし、e-Taxでの申告には事前の手続きが必要になるので注意してください。■ワンストップ特例制度によりサラリーマンは確定申告が不要になる場合も!上記ではふるさと納税による控除を受けるために、確定申告が必要になるとご紹介しました。しかし、実は一定の条件を満たすことで確定申告が不要になるケースがあります。それが「ワンストップ特例制度」と呼ばれる制度です。この制度が平成27年に新設されたことにより、多くの方がふるさと納税を利用しやすくなりました。平成27年から納税枠が約2倍に拡大されて、控除の範囲が広がった点も私たちにとっては嬉しいポイントです。例えば、元々確定申告をする必要がない方にとっては、確定申告の手間が増えることは負担です。「控除が少額なら行っても仕方ない…」と感じていた方も、中にはいるかもしれません。しかし、以下の条件を満たすサラリーマンの方であれば、ふるさと納税により寄付をしても確定申告なしで控除を受けられるようになりました。・ふるさと納税をした自治体が1年間に5つ以内の方・年収が2,000万円未満、副収入を得ていないなど、元々確定申告をする必要がない方上記の条件を満たしている方は、所定の手続きを済ませることでワンストップ特例制度が適用され、確定申告をしなくても控除対象になります。では、この制度の適用を受けるにはどのような手続きが必要になるのでしょうか?【ワンストップ特例制度で必要な手続き】ワンストップ特例制度の手続きでは、以下の書類が必要になります。・ワンストップ特例申請書(寄附金税額控除に係る申告特例申請書)・本人確認書類のコピーなど寄付をした自治体に対して、上記2つの書類を郵送することで手続きができます。なお、2017年3月現在ではマイナンバーの記載も必要になったので、マイナンバーが分かる書類もきちんと用意しておきましょう。この手続きを済ませると、自治体同士で納税者の情報が共有されて自動的に税金が減額されることになります。確定申告の手間を一気に省けるので、ふるさと納税を検討している方はワンストップ特例制度の利用も考えてみましょう。ただし、上記の申請を行った後に住所などが変更になった場合は、さらに手続きが必要になるので注意しておきましょう。このようなケースでは、寄付をした翌年の1月10日までに「申告特例申請事項変更届出書」を寄付先の自治体に提出をする必要があります。■ワンストップ特例制度の申し込み期限ふるさと納税のワンストップ特例制度は、1月~12月までいつでも申し込むことが可能です。ただし、所得税などの控除は1年単位で適用されるので、年をまたぐと前年分の申請ができなくなる可能性があります。寄付をする場合には、早めにワンストップ特例制度も申請しておきましょう。なお、年末に申請をする場合には特に注意が必要となります。申請から受領まではある程度の日数がかかりますし、自治体によっては12月の早い段階で受付を締め切ることもあります。各自治体で締め切りは異なるので、必ず寄付先の自治体に関する情報は事前に調べておきましょう。また、ふるさと納税の期限に関しても注意が必要です。受領証明書に記載されている受領日が12月31日を過ぎると、その年の控除申請ができなくなる恐れがあります。その場合は翌年分として扱われますが、節税対策としてふるさと納税の利用を検討している方は注意するべきポイントでしょう。なお、受領日の扱いは以下のように送金方法によって異なります。・クレジットカードの場合…決済が完了した日・銀行振り込みや払込取扱票による支払い…指定口座に支払いした日・現金書留…自治体が受領した日上記の送金方法による違いも意識しながら、ふるさと納税やワンストップ特例制度を上手に使いこなすようにしましょう。これらの制度を上手に活用すれば、節税対策をしながら社会貢献もできるはずです。■まとめ今回は確定申告不要でサラリーマンでも簡単に利用できる、ふるさと納税のワンストップ特例制度についてご紹介してきました。いかがでしたでしょうか?ふるさと納税のワンストップ特例制度を上手に利用すれば、サラリーマンでも節税対策をすることができます。また、ふるさと納税を通して故郷やお世話になった地域に貢献することもできます。今回ご紹介した内容を参考にして、みなさんもふるさと納税を利用してみてはいかがでしょうか?
2017年04月13日*画像はイメージです:など性的少数者のカップルを公的に認める「同性パートナーシップ制度」が6月から札幌市でも導入されることになりました。4月に導入される予定を2カ月延期しての導入となります。延期の理由は市民への周知期間を設けるためだそうですが、たしかに当事者ではない人にとっては、この制度がどのようなものなのか、イメージしづらいかもしれません。制度が持つ法的効力など、桜丘法律事務所の大窪和久弁護士に伺いました。 ■法的効力はない!?結婚とは別物札幌市の同性パートナーシップ制度と同様の制度は、2015年に東京都渋谷区が全国で初めて導入したのを皮切りに、世田谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市で実施されています。このように導入自治体が増えつつある同性パートナーシップ制度ですが、これは結婚とはどのように違うのでしょうか?「結婚をすることにより、民法に基づき夫婦間において様々な効力が生じます。夫婦間において親族関係が生じますし、同居の義務および扶養の義務も負うことになります。他方、同性パートナーシップは自治体の条例に基づいて同性のパートナーについてその関係を認める書面を自治体が発行するというものですが、民法上の効力が生じるものではありません」(大窪弁護士)憲法や民法によってその条件や権利などが定められている結婚とは違い、同性パートナーシップ制度には、法的な効力はないのです。結婚と同じ制度だと勘違いする方も多そうですが、法的には別物の制度と考えてよいでしょう。 ■制度による民間企業への影響それでは、法的効力がない同性パートナーシップ制度には何の意味もないのでしょうか?税制、保険、医療現場、相続などの面で夫婦が持つ権利と同じような権利を持つことは許されないのでしょうか?「前述の通り、婚姻と異なり民法上の効力が生じるものではありませんので、夫婦と同等の権利があるわけではありません。親族関係も生じず財産の相続をするということにもなりません。また税制上控除が認められるということもありません。もっとも、同性のパートナーであるという証明はなされるので、これを受けて民間の事業者がパートナー向けのサービスを行うということはありうると思います」(大窪弁護士)現段階では、同性パートナーとして認められても法的な保障は期待できません。しかし、制度施行をきっかけに民間や自治体のサービスが拡大する事例はすでにいくつもあります。例えば、ドコモでは渋谷区での制度施行をきっかけに、家族割サービスを同性パートナーにも認めるようになりました。また、同性パートナーを保険金の受取人として認める生命保険会社も増えてきました。 ■導入自治体は今後も増える?なぜこのような制度が必要とされ、導入自治体が増えているのでしょうか?「同性の法律婚は現在認められておりませんが、現実には同性でパートナーとなっている人は沢山いらっしゃいます。しかし、パートナーであることについて社会的に認められてきていないことから、住宅で同居することを断られてしまうであるとか、病院の面会を断られてしまうという弊害があります。法律婚という形は現在とることはできなくても、パートナーとして行政が認めることでそうした弊害を解消するということは必要です。現在導入自治体は一部ですが、同性パートナーシップ制度があるからその自治体に転入するという人も増えておりますので、今後導入自治体は増えていくのではないかと思います」(大窪弁護士)千葉市では、結婚や事実婚をしている職員に認めている休暇制度を同性パートナーを持つ職員にも認めるよう就業規則が改正されました。同様の制度を持つ企業も増えています。自治体による同性パートナーシップ制度導入に加え、民間企業のサービス範囲の拡大、雇用者の権利拡大など、性的少数者を取り巻く環境は少しずつ不便や実質的な不平等を減らす向かう方向に変化しているのです。 *取材対応弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。)*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)【画像】イメージです*Syda Productions / Shutterstock
2017年03月31日特別支援教室とは?出典 : 特別支援教室は、発達障害のある子どもたちをはじめとした個別のニーズに対応し、より適切で効果的な教育を行うために、小・中学校への導入が予定されている設備・制度です。文部科学省は、特別支援教室構想を掲げ、それに伴い全国各地でモデル事業が行なわれてきました。とりわけ、2016年4月からは、東京都内の小学校で本格的な導入が始まりました。具体的な導入計画については、後に詳しく説明します。2005年以降、文部科学省は「インクルーシブ教育」の推進に力を入れてきました。インクルーシブ教育(または単にインクルージョン)とは、障害の有無にかかわりなく子どもたちに教育をするという理念・制度・実践をいいます。インクルーシブ教育では、障害のある子どもたちが、単に障害のない子どもたちと同じ学校に通うだけでなく、本当の意味で他の子どもたちと同じ教育を受けるということが目指されています。こうした教育を実現するためには、障害のある子どもだけが「特別なニーズ」を持っているという考えを見直し、「すべての子どもに等しく教育をし、その中でニーズのある子どもには適切に対応する」ことが重要です。たとえ障害のある子どもたちが通常校に通っているとしても、障害のない子どもたちから区別され、普段から別の教室で勉強しているなら、それは同じ教育を受けているとは言えない、これがインクルーシブ教育の基本的な考え方です。文部科学省の特別支援教室構想も、その一環として位置づけられています。文部科学省は、発達障害の診断を受けていない子どもたちの中にも、実際には「特別なニーズ」とされてきた個別のニーズを持つ子どもたちが少なくないのではないかと考えています。そして、そうしたニーズに気づき適切な教育をするために、また、その他の子どもたちが発達障害をよりよく理解できる環境を作るために、特別支援教室の導入を進めています。参考: 中央教育審議会「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」(2005年12月)特別支援教室という制度では、「障害のある子ども」と「障害のない子ども」を分けて支援するのではなく、必要に応じて誰にでも支援やサポートを提供します。これは、「障害のある子どもが障害に応じて支援を受ける」という、特別支援学級や「通級による指導」のスタンスとは大きく違うものです。参考:Frank Bowe, Making Inclusion Work (Upper Saddle River, NJ: Pearson, 2005).参考:Gary Thomas and Andrew Loxley, Deconstructing Special Education and Constructing Inclusion, 2nd ed. (Open University Press, 2007).参考:高橋純一、松﨑博文「障害児教育におけるインクルーシブ教育への変遷と課題」『人間発達文化学類論集』19号(2014年)13–26ページ特別支援教室って、どんな制度?出典 : 全国に先駆けて東京都の小学校で特別支援教室が2016年4月から順次導入されています。ここでは東京都の小学校におけるモデル事業をもとに、特別支援教室が実際にはどのような制度なのかを説明します。特別支援教室とは、情緒障害や発達障害のある子どもたちを中心に、教育の場でサポートを必要とする子どもたちにサポートを提供しようとする制度です。基本的には、現在の「情緒障害等通級指導学級」(以下「通級」とする)を置き換えるものだとされています。ただし、「通級」には、情緒障害や発達障害以外の障害(吃音や難聴など)に関連したサポートを行うものもあります。ここで紹介する特別支援教室は、主に情緒障害や発達障害に関連した制度ですので、それ以外の「通級」までまとめて特別支援教室に置き換わるわけではないことに注意が必要です。特別支援教室の最大の特徴は、子どもたちが普段通っている学校でそのまま支援を受けられるということです。これまでは、障害のある子どもたちが特別な支援・サポートを受ける際に、普段通っている学校とは別の学校の「通級」に通ったり、特別支援学級や特別支援学校に籍を置く必要がある場合も少なくありませんでした。しかし、特別支援教室は各小学校にそれぞれ導入されます。2つの学校に通う必要がなくなることで、特別支援教育を受ける子どもたちの負担が軽くなることが期待されています。また、特別支援学級や特別支援学校でのサポートまでは必要としない通常学級に在籍する子どもが、個別のニーズに合わせて弾力的な支援が受けやすくなると考えられます。特別支援教室で教える内容は、基本的には情緒障害等通級指導学級(通級)と同じです。つまり、子どもの障害に応じて、障害の状態に応じて「自立活動」や「教科の補充指導」などが、それぞれに合った方法で指導されます。特別支援教室で指導を受けられるのは、情緒障害や発達障害のあるお子さんです。東京都は、対象として通常学級での学習におおむね参加できる「高機能自閉症・アスペルガー症候群」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」を挙げています。例えば高機能自閉症・アスペルガー症候群の子どもがコミュニケーションを取るのが苦手な場合、ロールプレイなどで適切な会話を学んだり、相手の気持ちを考えるなどの指導が行われます。また、学習障害がある場合、自分に合った学習方法を習得するための指導なども行われます。現在のところ、それ以外の障害(吃音や難聴など)に関連して「通級」に通っているお子さんについては、特別支援教室での指導は想定されていません。出典 : 特別支援教室に携わる人として、「巡回指導教員」「特別支援教室専門員」「臨床発達心理士等」という役割が新たに定められました。「通級」の担当教員は、役割の名前が「巡回指導教員」に変わります。巡回指導教員は、「通級」と同じように特別支援教室で子どもに指導をするほか、在籍する通常教室の担任と密に連携し、特別支援教育を受ける子どもだけでなく子どもが在籍するクラスでも連携して支援を行い、担任に助言をします。「特別支援教室専門員」は、特別支援教室の導入によって新しく配置されます。非常勤の職員で、特別支援教育で必要になる教材を作ったり、対象となる子どもの行動を記録したりします。新たに「臨床発達心理士等」も巡回することになります。「臨床発達心理士」「特別支援教育士」「学校心理士」の資格を持っている人が子どもの行動観察を行い、障害の状態を把握し、巡回指導教員や担任教員に専門的な指導を行います。東京都教育委員会「東京都公立学校特別支援教室専門員について」特別支援教室のメリットとデメリットは?「通級」と比べると?出典 : 保護者にとって最も気になるのが、既存の「通級」から何が変わるのか、また何が変わらないのかということではないでしょうか。ここでは、メリット・デメリットとともに説明します。「通級」が地域の拠点校にのみ設置されたのに対し、特別支援教室は各学校にそれぞれ設置されることが予定されています。つまり、これまでであれば、通級による指導を受けるために定期的に別の学校に出向く必要があったのに対し、これからは普段通っている学校で同じような指導を受けることができるようになります。Upload By 発達障害のキホンUpload By 発達障害のキホン2つの制度の違いは、基本的にはこの点に尽きます。たったこれだけの違いですが、「通級」から特別支援教室に変わることのメリットやデメリットは、必ずしも小さなものではありません。以下ではそれをいくつか紹介します。特別支援教室は、そもそもインクルーシブ教育を推進するための構想です。そのため、特別支援教室のメリットは、何といっても日本の教育をインクルーシブなものに変えるという点にあります。つまり、障害のある子どもたちと障害のない子どもたちが、それぞれに必要なサポートを受けつつ、基本的に分け隔てなく教育を受けることができる、そのような社会の実現に向けた第一歩が、この特別支援教室なのです。しかし、障害のある子どもたちや、その親御さんにも、直接的なメリットがあります。それは、これまでの「通級」とは違い、普段通っている学校でそのままサポートを受けられるということです。子どもにとっては別の学校に通う負担が減り、また障害に関連したサポートをする先生と、クラスの担任の先生との連携が、「通級」の場合よりも一層密になることが期待されます。しかし、特別支援教室にはデメリットや課題も指摘されています。まず、これまでの「通級指導学級」と同じ水準のサポートが特別支援教室で提供されるのかどうか、必ずしも明らかではありません。というのも、各学校に特別支援教室を導入するためには、これまでよりも明らかに多くのスタッフが必要です。加えて、特別支援教室では、将来的には「障害」の有無にかかわらず子どもたちの支援・サポートを行うことを目標としています。裏を返せば、これまでと同様に限られた資源の中で、これまでよりも多くの子どもたちにサポートをしようとしています。つまり、もしスタッフが十分に増えないまま特別支援教室を導入すれば、少ないスタッフでより多くの子どもを支援することになり、サポートの質が低下するおそれがあります。このことから「障害のある子ども」としてこれまで特別に支援を受けてきた子どもたちに対して、従来の特別支援教育が提供してきたサポートの質が保たれなくなるのではないか、と懸念する声もあります。もう一つ、重要な点があります。特に変化が苦手な自閉傾向がある子どもたちにとって、サポート環境が変わるということそのものが重大な出来事となりえます。この観点から見ると、特別支援教室という制度の良し悪しとは別に、制度の移行にスムーズに適応できるような仕組みについて考えていくことが求められます。特別支援教室とその他の制度との違いは?出典 : 障害のある子どもの学びの場は、今までご紹介してきた特別支援教室や「通級」だけではありません。日本の制度では、代表的なものに「特別支援学校」や「特別支援学級」があります。これらの制度は、それぞれどのように違うのでしょうか?特別支援学校とは、かつて「盲学校」「聾学校」「養護学校」と呼ばれていた学校で、現在でも学校名にこうした言葉がついている場合があります。一部の例外を除いて、基本的には障害のある子どもたちだけが学ぶ学校です(一部に、障害のない子どもたちが学ぶ学級を併置した「併置校」も存在します)。また、学校数自体が少ないので、寄宿舎がある特別支援学校もあります。特別支援学校では、特別支援学校学習指導要領に従い、その他の学校で教えられる教科に加えて、それとは異なる特有の教科が教えられます。こうした教科の多くは、学校を卒業した後に就く職業に関連した、職業訓練的な性格の強いものです。また、教える先生の資格という面から見ても、特別支援学校で教える先生は「特別支援学校教諭」という、一般の学校の先生とは異なる免許を持っています。特別支援教室と特別支援学校の最大の違いは、そもそも通う学校が違うという点です。これは比較的わかりやすい違いでしょう。ところで、自閉症・発達障害・学習障害などがある子どもたちを対象とする特別支援学校はあるのでしょうか。基本的には、現在のところありません。ただし、お子さんに別の障害がある場合には、その障害に応じて特別支援学校に通うことができるでしょう。たとえば、視覚障害と発達障害があるお子さんや、知的障害が合併した発達障害のあるお子さんのような場合です。特別支援学級は、かつては「特殊学級」と呼ばれていました。現在でも、関連条文から「81条学級」と呼ばれることがあります。(以下では「特別支援学級」に統一します。)特別支援学級は、一般の小中学校に置かれます(制度上は高校にも設置できますが、実例は多くありません)。多くの場合、障害の種類ごとに分かれ、学校ごとに「あすなろ学級」「なかよし学級」など様々な名前がついています。お子さんが特別支援学級で教育を受ける場合、その学校の通常学級ではなく特別支援学級に在籍することになります。そして、特別活動などを除き、通常学級の子どもたちとは違う教室で授業を受けることになります。制度上は、特別支援学級での教育は一般の小中学校と同じ学習指導要領に則った教育ですが、子どもの実態に応じて特別支援学校を参考にしたカリキュラムが組まれることもあります。先生の資格という面から見ると、特別支援学級で教える先生に求められる資格は、「特別支援学校教諭」ではなく「小学校教諭」や「中学校教諭」です。特別支援教室と特別支援学級の最大の違いは、お子さんがどの教室に所属するかです。特別支援教室の場合は、お子さんは通常学級に在籍し普段は他の子どもたちと同じ授業を受けつつ、必要に応じて別の教室で別の教育を受けることになります。これに対して特別支援学級の場合は、お子さんは特別支援学級に在籍し、別の教室で別の授業を受けることが基本となります。出典 : 最も違いがわかりにくいのが、特別支援教室と「情緒障害等通級指導教室」の違いではないでしょうか。情緒障害等通級指導教室は、「通級指導教室(情緒障害等)」「通級教室」「通級学級」などと書かれる場合が見られますが、どれも制度上は同じものです。以下ではまとめて「通級」と呼ぶことにします。先に説明したように、「通級」には、吃音や難聴のある子どもたちへのサポートを行うものもあります。通級と特別支援教室は、どちらの制度も、お子さんが障害のない子どもたちと同じ学校の同じ教室で学びつつ、必要に応じて別の教育を受けるという点で共通しています。どちらの制度も、特別支援学校(障害のない子どもたちとは別の学校に通う)とも、特別支援学級(障害のない子どもたちと同じ学校に通うけれども、普段から別教室で学ぶ)とも、大きく違う制度です。その上で、「通級」と特別支援教室の最大の違いは、その「別の教育を受ける」教室がどこにあるかです。「通級」の場合には、お子さんは別の教育を受けるために普段とは違う学校に出向く必要がありました。これに対し、特別支援教室は各学校に設置されますので、「通級」とは異なり別の学校に行く必要がありません。現在、特別支援教室は導入に向けたモデル事業が行われている段階で、その形態や指導内容についてはまだ研究や検討が行われています。そのため、自治体や学校によって、今回ご紹介した東京都の特別支援教室とは違う方法で導入されていたり、今後導入される可能性もあります。また、横浜市は、2004年に「横浜市障害児教育プラン」を定め、独自に先駆的な特別支援教育を進めてきました。その中で「特別支援教室」という言葉を使っています。しかし、この「特別支援教室」は、名称は同じでも文部科学省が推進する「特別支援教室」(この記事で説明しているもの)と必ずしも同じではありません。具体的な説明は省きますが、横浜市の「特別支援教室」は文部科学省の「特別支援教室」よりも少し狭い概念だと考えていただければよいでしょう。どのように特別支援教室が導入されているか、また今後導入されるかはそれぞれお住まいの地域によって異なるので注意が必要です。横浜市特別支援教育推進会議「「特別支援教室」の展開方策などについて 」(2006年8月)特別支援教室を利用するために必要なことは?出典 : 一例として、東京都中央区の事例を紹介します。ただし、実際に必要な手続きは自治体ごとに異なりますので、詳しくは学校や各自治体の担当者にお問い合わせください。まず、すでに「通級」を利用されていて新年度も継続して指導を受けたい場合です。この場合は、原則そのまま移行しますので、特別な手続きは必要ありません。新年度も継続して指導を受けたいという旨を、在籍校の担任教員や通級指導教員にご相談ください。次に、まだ「通級」を利用されていない場合についてです。新年度に新たに入学する子どもについては、就学相談でご相談ください。それ以外の子ども(すでに学校に通っており、新たに特別支援教育を受けようと考えの場合)については、在籍校の担任教員にご相談ください。このように、特別支援教室で指導を受けるためにまずすべきことは、新入生の場合は就学相談、それ以外の場合は担任教員への相談だといえます。繰り返しになりますが、具体的な手続きにつきましては学校や各自治体にお問い合わせください。特別支援教室|東京都中央区特別支援教室の今後は?出典 : 最後に、特別支援教室構想の展望について簡単にご紹介します。東京都の小学校では、モデル事業として特別支援教室の導入が既に始まっています。都の計画では、平成28年度以降、準備の整った市区町村から順次導入され、平成30年度までには全ての市区町村に特別支援教室が設置されることとなっています。これに対して、中学校への特別支援教室の導入は、まだ始まっていません。都の計画では、平成30年度以降、準備の整った市区町村から順次導入され、平成33年度までには全ての市区町村に特別支援教室が設置されることとなっています。東京都以外に目を向けると、いくつかの自治体では特別支援教室の導入に向けた動きが見られます。しかし、それらの動きは、基本的にはまだ本格化していません。東京都のモデル事業にならった特別支援教室が全国的な制度となるかどうかは、まだ未知数だといえます。東京都教育委員会「東京都特別支援教育推進計画(第二期)・第一次実施計画――共生社会の実現に向けた特別支援教育の推進」(2017年2月)まとめ出典 : 特別支援教室は、インクルーシブ教育を実現するための制度として、長年の構想を経てようやく実現に向かいつつある制度です。今後の展望にはまだ不確定な面が多くありますが、これから少しずつ、障害のある子どもたちが少ない負担で適切な教育を受けられる制度として確立していくことでしょう。既に「通級」で指導を受けられている場合はもちろん、そうでない場合でも、また「障害」という診断の有無にかかわらず、少しでもお子さんにとってメリットがあるとお考えであれば、一度担任の先生や各自治体に相談されることをおすすめします。
2017年03月30日エムティーアイ運営の健康情報サービス「ルナルナ」はこのほど、シンクパールと共同で実施した「職場での婦人科検診制度について」の調査結果を発表した。同調査は2月18・19日、20~50代以上の女性1万1,676名を対象にインターネットで実施したもの。初めて婦人科検診を受けたきっかけについて聞くと、「自治体からのお知らせ・クーポン」(34.7%)が最も多く、次いで「自分の職場の健康診断」(24.1%)となった。最近では著名人の乳がんや子宮頸がんなどの婦人科疾患発症が話題になっているが、そういった報道によって自身の意識や行動に変化はあったか尋ねたところ、41.2%が「自分の健康について考えるようになった」と回答した。33.5%は「実際に検診に行った」と答えている。次に、20~50代以上の働く女性を対象に、自身の職場に婦人科検診を受けられる制度はあるか聞くと、「ない」が45.4%で、「自分の職場にある」(39.7%)を上回った。職業別でみると、「自分の職場にある」が半数を超えたのは正社員(51.4%)のみで、その他は検診制度がない人が多いことがわかった。「自分の職場」もしくは「家族の職場」に婦人科検診を受診できる制度があると回答した人に、実際に受けている検診の種類について尋ねたところ、乳がん検診は自己負担あり・なしに関わらず約30%が受けていることがわかった。子宮頸がん検診も、自己負担なし35.8%・自己負担あり30.2%で受診率は3割を超えている。職場に婦人科検診を受けられる制度がないと回答した人に、もし職場に受けられる制度があった場合に活用したいか尋ねると、58.2%が「自己負担がないなら受けたい」、33.1%が「自己負担があっても受けたい」と答えた。合わせると、9割以上の人が受診したいと回答している。
2017年03月02日新築・中古住宅の購入やリフォームで利用できる減税制度では、所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税などが減税できます。所得税の減税制度には、ローンを組んだ場合に利用できるローン型と、自己資金で購入・リフォームを行った場合に利用できる投資型がある点がポイントです。補助金と違い併用できる制度が多いため、もれなく申請しておきましょう。■新築住宅購入で利用できる減税制度新築受託を購入した際に利用できる減税制度には、以下の種類があります。【所得税の減税】住宅ローンを利用して新築住宅を購入した場合は、「住宅借入金等特別控除」、通称住宅ローン減税が利用できます。おもな要件としては、以下が挙げられます。■10年以上のローンを組んだ場合■その年の合計所得金額が30,000,000円以下■新築または新築住宅取得の日から6カ月以内に入居したこと控除額は、入居した年が平成26年4月1日~平成31年6月30日までの場合、「各年末のローン残高×1%」の計算式で算出します。控除期間は10年で、上限は400,000円です。さらに低炭素住宅、長期優良住宅の場合は、上限が500,000円になります。手続き方法は、1年目と2年目以降で異なります。■1年目確定定申告書に「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」などの書類を添付して、納税地の所轄税務署長に提出します。■2年目以降提出書類が減るほか、給与取得者(自営業以外)は年末調整による適用が可能です。住宅ローンではなく自己資金で新築住宅を購入した場合は、「認定住宅新築等特別税額控除」を受けられます。対象は低炭素住宅および長期優良住宅(以下、認定住宅)です。おもな要件としては、以下が挙げられます。■住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上が居住用に使われていること■その年の合計所得金額が30,000,000円以下■新築または新築住宅取得の日から6カ月以内に入居したこと控除額は、認定住宅の認定基準に適合するために必要となる標準的なかかり増し費用の10%です。「認定住宅の標準的なかかり増し費用」とは、1平方メートル当たり43,800円に、その認定住宅の床面積をかけて計算します。標準的なかかり増し費用の限度額は6,500,000円で、控除期間は最初の1年間のみです。手続き方法は、確定申告書に「認定住宅新築等特別税額控除額の計算明細書」などを添付して所轄の税務署に提出します。【登録免許税の減税】正式には「住宅に係る登録免許税の軽減措置」といい、新築住宅を購入した場合は以下それぞれの登録免許税が軽減されます。■所有権の保存登記にかかる税率本則の0.4%から0.15%に軽減されます。要件は住宅の床面積50平方メートル以上であることです。■所有権の移転登記にかかる税率本則の2.0%から0.3%に軽減されます。要件は、個人が居住に使っている部分の床面積が50平方メートル以上であることです。■抵当権の設定登記にかかる税率本則の0.4%から0.1%に軽減されます。新築住宅であれば床面積などの条件はありません。なお長期優良住宅および認定低炭素住宅の新築にかかる登録免許税の税率は、平成30年3月31日までは一律0.1%(戸建ての長期優良住宅の移転登記については0.2%)に軽減されます。手続きは特に必要ありません。【不動産取得税の減税】不動産取得税とは、住宅を建築するなどして不動産を取得した際に課税される制度です。都道府県に納税します。新築住宅を購入した場合は、この不動産取得税も軽減されます。新築住宅を取得した場合における不動産取得税軽減のおもな要件は、床面積が50平方メートル~240平方メートルであることです。控除額は、上限12,000,000円(価格が12,000,000円未満である場合はその額)で、認定長期優良住宅の新築の場合については、さらに上限が13,000,000円まで引き上げられます。また、住宅を新築したときの土地についても不動産取得税が軽減されます。要件としては、住宅について上記の床面積条件を満たしているとともに、土地を取得したタイミングによってそれぞれ条件を満たしている必要があります。住宅の新築より先に土地を取得した場合は、以下の条件を満たしていることが必要です。■土地を取得後3年以内にその土地の上に住宅が新築されていること住宅の新築よりあとに土地を取得した場合は、以下の条件を満たす必要があります。■住宅を新築した人が、新築後1年以内にその敷地を取得していること■新築未使用の住宅とその敷地を、新築後1年以内に同じ人が取得していること控除額は、以下のいずれか高い方の金額となります。■45,000円(税額が45,000円未満である場合はその額)■土地1平方メートル当たりの価格×住宅の床面積の2倍(一戸当たり200平方メートルが限度)×税率(3%)手続き方法は、住宅や住宅用土地を取得した日から60日以内に、不動産取得税申告書に売買契約書や登記事項証明書などの書類を添えて、所管する都税事務所に申告します。新築住宅を購入した場合は、市町村に支払う住宅用家屋の固定資産税が軽減されます。おもな要件としては、以下が挙げられます。■居住部分の床面積が1戸当たり50平方メートル~280平方メートル■平成29年3月31日までのあいだに新築された住宅控除額以下のとおりです。■床面積が120平方メートル以下の場合…2分の1■120平方メートルを超え280平方メートル以下の場合…120平方メートル分について2分の1控除期間は一般の住宅は3年間、長期優良住宅は5年間です。さらに二世帯住宅を新築した場合は、「各世帯が壁やドアによって遮断され、他方の世帯と構造上独立していること」などの条件を満たしていれば、2戸それぞれに固定資産税の減額措置を受けられます。また、住宅を新築した場合の土地(住宅用地)の固定資産税も、課税標準額の減額という形で減税されます。要件は特にありません。減額後の課税標準額は以下の通りです。■200平方メートル以下の小規模住宅用地その土地の価格の6分の1(200平方メートルを超える場合は住宅一戸当たり200平方メートルまでの部分)■上記以外の一般住宅用地その土地の価格の3分の1手続きは市町村によって異なるため、お住まいの市町村で確認をするようにしましょう。■中古住宅購入で利用できる減税制度中古住宅の購入で利用できる減税制度には、以下のものがあります。【所得税の減税】中古住宅を購入した場合も住宅ローン減税が利用可能です。おもな要件としては、以下のものが挙げられます。■家屋が建築された日から購入した日までの期間が20年以下■一定の耐震基準を満たしていること■耐震改修が必要な住宅の場合は、改修の結果耐震基準を満たすと証明されていること■その年の合計所得額が30,000,000円以下■住宅の床面積が50平方メートル以上■10年以上のローンを組んでいること計算方法や控除期間は新築住宅の場合と同様です。なお低炭素住宅、長期優良住宅の適用はありません。【登録免許税の減税】中古住宅を購入した際も、登録免許税が軽減されます。おもな要件は以下となります。■床面積50平方メートル以上■耐震性の基準を満たしていること■購入時において、新築された日から10年以上経っていること■リフォーム工事が行われ、建物価格に占めるリフォーム工事の総額の割合が20%以上税率に関しては、本則2%から0.1%に軽減されます。手続き方法は、登記申請のタイミングで、登記事項証明書に住宅用家屋証明申請書を添えて市町村に提出します。【不動産取得税の減税】中古住宅の購入についても不動産取得税の減税措置があります。おもな要件は、耐震基準を満たしている点などです。控除額はその中古住宅の新築した日によって決定され、1,000,000円~12,000,000円となります。また、耐震基準に満たない中古住宅に対しても、取得後6カ月以内に耐震工事が行われるなどすれば、不動産取得税が減税されます。その場合の控除額は、その中古住宅が新築された日によって決まり、30,000円~126,000円です。さらに、耐震基準を満たしている中古住宅であれば、土地の取得についても不動産取得税が軽減されます。ただし、以下の要件を満たす必要があるので注意しておきましょう。■住宅より先に土地を取得した場合土地を取得して1年以内にその土地の上に建っている住宅を取得していること■住宅よりあとに土地を取得した場合住宅の取得後1年以内にその敷地を取得していること控除額や手続き方法は、新築住宅購入で土地を取得した場合と同様です。■住宅リフォームで利用できる減税制度住宅のリフォームを行った際に利用できる減税制度としては、以下のものが挙げられます。【所得税】所得税の減税制度には、耐震改修をした場合、バリアフリー改修を行った場合、省エネ改修を行った場合、同居対応を行った場合それぞれについて減税制度があります。このうち、耐震改修をした場合の所得税減税は、自己資金でリフォームを行った場合の投資型減税制度のみが利用できる点に注意しましょう。その他の改修については、投資型と住宅ローンを組んだ場合のローン型から減税制度を選択できます。〇耐震改修をした場合耐震改修をした場合の所得税減税における要件としては、以下が挙げられます。■昭和56年5月31日以前に着工されたものであること■現行の耐震基準に適合しないものであること控除額は、平成26年4月1日以降に耐震改修を行った場合、標準的な工事費用相当額の10%となります。標準的な工事費用相当額の上限は2,500,000円です。〇バリアフリー改修をした場合バリアフリー改修をした場合には、以下の4つのうちいずれかに該当する必要があります。■50歳以上■要介護または要支援の認定を受けている■障害者■要介護または要支援の認定を受けている家族、障害者、65歳以上の家族のいずれかと同居している対象となる工事のおもな条件は、バリアフリー改修工事費用から補助金などを控除した額が500,000円超であることなどです。控除額に関しては投資型の場合、平成26年4月1日以降に入居したケースでは、工事にかかる標準的な工事費用相当額の10%となります。標準的な工事費用相当額の上限は2,000,000円です。また、ローン型の控除額は以下の計算式で算出します。(対象となるバリアフリー改修工事費用-補助金など)×2%+該当部分の年末ローン残高×1%」このうち、「対象となるバリアフリー改修工事費用-補助金など」部分の上限は2,500,000円で、控除額全体の限度額は10,000,000円です。控除期間は5年となっています。〇省エネ改修をした場合省エネ改修をした場合には、以下の要件を満たす必要があります。■住宅の引き渡しまたは工事完了から6カ月以内に入居■床面積が50平方メートル以上対象となる工事のおもな条件は、すべての居室における窓全部の断熱工事を含む省エネ改修工事であることです。投資型の控除額は、平成26年4月1日以降に耐震改修を行った場合、標準的な工事費用相当額の10%となります。標準的な工事費用相当額の上限は2,500,000円です。また、ローン型の控除額以下の計算式で算出します。(対象となる省エネ改修工事費用-補助金など)×2%+該当部分の年末ローン残高×1%このうち、「対象となる省エネ改修工事費用-補助金など」部分の上限は2,500,000円で、控除額全体の限度額は10,000,000円です。控除期間は5年とされています。〇同居対応改修をした場合同居対応改修をした場合における所得税減税のおもな要件には、以下の項目があります。■住宅の引き渡しまたは工事完了から6カ月以内に入居■床面積が50平方メートル以上対象となる工事のおもな条件は、「調理室や浴室、便所、玄関いずれかの増設」などです。投資型の控除額は、工事にかかる標準的な工事費用相当額(上限:2,500,000円)の10%です。なお、耐震改修工事や省エネ改修工事、およびバリアフリー改修工事を併せて行った場合、標準的な工事費相当額の上限は9,500,000円となります。ローン型の控除額は、以下の計算式で算出します。(対象となる同居対応改修工事費用-補助金など)×2%+該当部分の年末ローン残高×1%このうち、「対象となる同居対応改修工事費用-補助金など」部分の上限は2,500,000円で、控除額全体の限度額は10,000,000円です。控除期間は5年となっています。これらの所得税減税の手続きをする際は、確定申告の際、増改築等工事証明書などの書類を所轄の税務署に提出しましょう。また、住宅ローンを利用してリフォームを行った場合は、住宅ローン減税制度を利用することも可能です。模様替え、耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修など、さまざまな工事が対象となります。ただし建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人により「増改築等工事証明書」が発行されていることが条件です。控除額は「リフォームローンの年末残高-補助金など×1%」の計算式で算出します。上限は、入居した日が平成26年4月~平成31年6月の場合、4,000,000円です。控除期間は居住を開始した日から10年です。手続きについては、新築住宅購入を行った場合の住宅ローン減税申請方法と同様です。【固定資産税】固定資産税についても、耐震改修、バリアフリー改修、省エネ改修をした場合に減額されます。〇耐震改修をした場合耐震改修の場合の要件としては、昭和57年1月1日以前から存在する住宅であることが必要です。工事の対象は以下の通りです。■現行の耐震基準に適合させるための耐震改修であること■改修工事費用から補助金などを控除した額が500,000円超であること控除額は、居住する家屋にかかる固定資産税額の2分の1です。ただし、1戸当たり家屋面積120平方メートル相当分が上限となります。控除期間は1年間です。〇バリアフリー改修をした場合バリアフリー改修のおもな要件としては、以下が挙げられます。■要介護もしくは要支援の認定を受けている者、障害者、65歳以上の者のいずれかが居住する住居であることまた、工事の対象は以下となります。■指定のバリアフリー改修工事であること■改修工事費用から補助金などを控除した額が500,000円超であること控除額は居住する家屋にかかる固定資産税額の3分の1です。ただし1戸当たり家屋面積100平方メートル相当分が上限となります。控除期間は1年間です。〇省エネ改修をした場合省エネ改修の場合の要件は以下のとおりです。■平成20年1月1日前から存在する住宅であること■床面積50平方メートル以上対象となる工事のおもな条件としては、「窓の断熱工事を含む省エネ改修工事であること」などがあります。控除額は居住する家屋にかかる固定資産税額の3分の1です。ただし1戸当たり家屋面積120平方メートル相当分が上限となります。控除期間は1年間です。手続き方法は、改修工事完了後3カ月以内に「固定資産税減額申告書」および必要書類を市区町村に提出します。■まとめいかがでしたか?購入する住宅の条件やリフォームの内容によって、さまざまな減税制度が適用されることがわかったのではないでしょうか。減税制度は補助金制度と違い、併用できる点がポイントです。今回ご紹介した内容を参考に、もれなく申請しておくようにしましょう。
2017年03月01日*画像はイメージです:■世界の裁判制度はいろいろ中国に限らず、日本と外国の国内法が全く同じ内容ということはあり得ませんから、法律の内容は世界の国の数だけ異なります。また、裁判制度も、国が違えば、大きく事情が異なります。日本で当たり前のことでも、外国では違って当然です。本稿では中国の裁判制度について触れてみます。 ■審級制度があるのは同じ日本では、地裁、高裁、最高裁の三審制が原則ですが、中国における裁判所である「法院」も、最高人民法院、高級人民法院、中級人民法院、基層人民法院の4階層あり、審級制度があります。この他、中国では軍事事項を扱う軍事法院がありますが、日本では戦前にあった軍法会議のような特別裁判所は憲法で設置が禁止されていますので、当然ありません。日本では、いったん確定した判決は強力な効力があり、確定判決を覆すための再審事由は極めて限定されており、再審が認められることは滅多にありませんが、中国では比較的再審が利用されているようです。 ■裁判官の質日本では、裁判官への任官は、司法試験に合格した上、司法修習中に起案で抜群の成績をとることが必要であり、事務書類能力や事実認定の証拠評価能力が優秀な人しかなれません。他方、中国では少し前まで、司法試験に合格しない人でも、軍人や役人などが裁判官として任官されており、法的素養がない裁判官も多くいました。コネによる判決や、地元優先の不当な判断を示す裁判官も多く、公平性についての信頼もありませんでしたので、裁判を回避して仲裁を利用することも多いです。 ■刑事事件の特徴刑事事件では、政治犯、社会秩序に対する罪、違法薬物に対する罪の法定刑が重く、死刑判決が下されることが日本よりも相当多いです。また、日本では、3年以下の懲役を言い渡す場合などにしか執行猶予を付すことができず、言渡し刑が無期懲役や死刑などの場合は、執行猶予はありませんが、中国では、死刑判決であっても執行猶予付きにすることができます。死刑執行になるかもしれない執行猶予は、大変恐ろしいです。 旅行も含めて外国滞在中は、当然、滞在国の国内刑法が適用されますから、日本の常識は通用しません。少し前には軍事施設であると知らずに写真を撮影して身柄拘束される事案が続発したこともありました。東南アジア各国でも、薬物事件や売春が死刑などの重い刑罰で禁止されていることがあります。外国では外国の国内法令が適用されますから、渡航前に禁止事項をよく確認の上、旅行中にも羽目をはずしすぎないように注意しましょう。 *著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*Zerbor / Shutterstock
2017年02月13日企業の中には独自の社内制度を設けているところがたくさんあります。たとえば女性特有の不調を理由にした休暇取得、ランダムに選んだ社内メンバーとの飲み会代金を負担、生産性を高めるための30分のお昼寝タイムなどなど…。働く社員のことを考えたユニークな制度も多く、子育て支援を目的にしたものも増えてきています。でも子育て以上に大切なのが、良好な夫婦関係…! そこで今回は夫婦にうれしい制度を設けている企業を紹介していきましょう。■夫婦ゲンカの早期解決を会社が手助け!徳島で育児雑誌を発行する出版社、全国ワイヤーママグループは「夫婦ゲンカ特別休暇」を導入しています。読んで字のごとく、夫婦ゲンカが起こったときの仲直りのための休暇です。なんと年5日まで取得可能ということで、ケンカっ早い(笑)ご夫婦も安心。こんな休暇制度があれば「制度のお世話になってばかりじゃあ…」と、ケンカの抑制につながるかも…?こちらの会社は生後2年の間、社員の赤ちゃん用おむつが無料提供される制度もあります。夫婦にも子どもにもうれしい会社ですね。参考サイト ワイヤーオレンジ ■パートナーの誕生日は仕事をしなくてOK!婚活支援サービスを展開する株式会社パートナーエージェントが導入しているのは、恋人や配偶者の誕生月に休暇を申請できる「パートナーバースデー休暇」。福利厚生の一環ということですが、制度があっても「誰も取得していない」状態ではないも同然。こちらの会社は驚くなかれ、約6割の社員が取得しているといいます!夫婦で休みが異なる場合も「誕生日は一緒に過ごせる」という安心感を得ることができそうですね。大切な人と大切な日を過ごせるよう、会社が後押ししてくれるなんてステキです。参考サイト・ 社員の約6割が取得するパートナーバースデー休暇制度 ・ パートナーエージェント ■お小遣い支給で記念日を豪華に過ごそう!人材総合サービスを提供するエン・ジャパンが導入しているのは「結婚記念日お祝金制度」。これは既婚社員の結婚記念日に20,000円のお祝金が支給されるものです。社員やその家族をねぎらい充実した記念日を過ごしてもらうことで、仕事へのモチベーションアップを狙っているそう。何に使うかは個人にゆだねられますが、ディナーやギフト、旅行資金の一部にする人も多いようです。お金という現実的なものだからこそ、普段お祝いをしない人も「記念日費用」として楽しめるのかもしれませんね。参考サイト エン・ジャパン 社内制度の充実は、働く側にとってはうれしいことですよね。仕事に子育てに夫婦関係…。どれにも大切なのは誰かを思う、思いやりの気持ち。今回ご紹介した社内制度はそんな思いやりのひとつなのかもしれませんね。
2017年02月12日働かなくても毎月国からお金がもらえたら…?そんな一見夢のような制度、「ベーシックインカム」が西ヨーロッパで注目されている。
2017年01月10日昨日12月6日、年金制度の新ルール化を盛り込んだ「年金制度改革関連法案」が参議院厚生労働委員会で審議入りしました。11月末、衆議院の本会議で賛成多数によって可決となっており、いよいよ大詰め段階に入っています。この法案は「現役世代の負担減・年金制度そのものの安定化に繋がる」という声もある一方、「現在もしくはこれから年金を受給する高齢者の年金減額に繋がる『年金カット法案』だ」という批判の声もあります。とはいえ、そもそも年金の金額というのはどのような仕組みで決まっているのでしょうか?また、どうしてこの法案は「年金カット法案」だとして批判を浴びているのでしょうか?Q.「年金カット法案」と言われている理由は?*画像はイメージです:.物価が上昇しても、賃金が下落すれば年金額が下がってしまうため現在の制度でも年金額は「賃金・物価」の影響を受けるため、実はこれらの増減によって年金額は毎年微妙に変動しています。ただ、今の制度では「特例措置」として、物価が上昇していても賃金が下がっている場合は、年金額は「減らさない」というものが採用されています。しかし、今回の改革法案ではこの特例措置を無くすようになっているため、物価上昇時に賃金が下がる場合、年金額も下がることになってしまうのです。その場合、当然年金生活者にとっては生活が厳しくなることが想定され、この部分が「年金カット法案だ」と言われる理由なのですね。一方、賃金の情勢はいわば年金制度の「財源(収入)」にあたるため、この部分を優先させることは、年金制度の継続性を重視した改正案だと見ることもできるのです。 *取材・文:ライター松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。【画像】イメージです*和尚 / PIXTA(ピクスタ)
2016年12月07日成年後見制度とは?出典 : 成年後見制度とは2000年4月より開始した制度で、知的障害や精神障害、認知症などにより判断能力が十分でない人の法律行為を支援する制度のことをいいます。例えば、銀行の手続きや遺産分割、不動産の売却などが挙げられます。成年後見制度には、家庭裁判所が成年後見人等を選任し既に判断能力が低下している人に対して支援する法定後見制度と、あらかじめ本人が任意後見人を選び近い将来に備え支援者と支援内容を決めておく任意後見制度の2つがあります。申立てには一般的に1~2ヶ月かかるといわれています。児島 明日美、村山 澄江/著 『今日から成年後見人になりました』2013年 自由国社/刊成年後見制度の活用例をご紹介します。精神障害のあるご家族をお持ちの方のケースです。精神障がいの場合~法定後見~Q 私の妹(21歳)は精神障がいで、日常会話は何とか分かりますが、時間の経過がわからず、また、お金を使って買い物をしたりすることもできません。最近、携帯電話を勝手に契約してきましたが、通話料が必要であることは理解できません。今後、勝手にクレジットカードを作って他人に使われたりしないか心配です。良いアドバイスをお願いします。A 精神上の障がいにより判断能力が不十分である方のために、家庭裁判所が適切な保護者を選び、本人を保護するための制度が成年後見(法定後見)制度です。本人の判断能力に応じて、家庭裁判所が適切な保護者(成年後見人・保佐人・補助人)を選びます。選ばれた保護者(成年後見人・保佐人・補助人)は、本人の希望を尊重しながら、財産管理や身の回りのお手伝いをします。妹さんの場合も、成年後見(法定後見)制度を利用することで、妹さんが勝手にしてしまった契約を取り消したり、契約の無効を主張することができるなど、妹さんを法的に保護することができるようになります。(成年後見Q&A | 公益財団法人成年後見センター・リーガルサポート大阪支部)本人の判断能力は人によりさまざまですので、成年後見制度では、一人ひとりにあったサポートを利用することができます。成年後見制度の目的出典 : 成年後見制度は判断能力が不十分な方々の権利を守り、法的に保護・支援することを目的とした制度です。近年は精神疾患のある人や1人暮らしの高齢者といった判断能力の乏しい方が、悪質な訪問販売員に騙されるような悪徳商法が後を絶ちません。 このような場合は成年後見制度を利用することによって契約を取り消し、被害を未然に防ぐことができます。認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり,遺産分割の協議をしたりする必要があっても,自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また,自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい,悪徳商法の被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度です。(「成年後見制度~成年後見登記制度~」 | 内務省)成年後見制度の背景出典 : 成年後見制度の成立には、「ノーマライゼーション」の考えと、「自己決定権の尊重・残存能力の活用」という考えが背景にあります。一体どのような考え方なのか、それぞれ見ていきましょう。■ノーマライゼーションノーマライゼーションとは、日常生活に必要な範囲の行為は本人が自由にするという考え方です。障害のある人も家庭や地域で通常の生活をすることができるような社会を作るという考えが広がりを見せています。■自己決定権の尊重・残存能力の活用自己決定権の尊重・残存能力の活用とは、判断能力が乏しいとはいえ本人の意思を尊重し、その能力を最大限生かして生活を送ることができるよう支援する考え方のことをいいます。どのようなときに成年後見制度を使えるの?出典 : どういった場合に成年後見制度を利用することができるのでしょうか。成年後見制度を利用することに決めた、きっかけの上位5位をご紹介します。【きっかけベスト5】第1位預貯金等の管理・解約第2位施設入所等のための介護保険契約第3位身上監護第4位不動産の処分第5位相続手続き圧倒的に多いのが、本人の預貯金等の管理のためです。この他にも、保険金の受取や訴訟手続等のために成年後見制度を利用するケースが増えています。(成年後見関係事件の概況 -平成26年1月~12月- | 最高裁判所事務総局家庭局)成年後見制度は、金銭的なやりとりや契約の取り決めをきっかけに利用を検討する方が多いようです。成年後見制度には家庭裁判所が成年後見人などを選任し、すでに判断能力が低下している人に対して支援する法定後見制度と、あらかじめ本人が任意後見人を選び近い将来に備え支援者と支援内容を決めておく任意後見制度の2種類があります。違いとしては、後見人の選出方法、サポート内容、報酬、サポートの内容があります。両者には具体的にどのような違いがあるのか、どのような方を対象にしているのか、なにができるのかを詳しくご説明していきます。法定後見制度とは?出典 : 法定後見制度とは、現時点ですでに判断能力が低下している方を支援する制度です。認知症や精神疾患のある方といった現時点で判断能力が低下している方は生活を送る上で、色々な困難さがあります。お金を自分で管理することが難しい場合や悪徳商法に巻き込まれてしまうことが少なくありません。そういった支援を必要とする人を本人(それぞれを成年被後見人・被保佐人・被補助人という)、支援する人をそれぞれ成年後見人・保佐人・補助人と呼びます。本人の判断能力の度合いに応じて、後見、保佐、補助の3類型に分かれています。■後見: 自分ではほとんど物事を判断できない場合・家庭裁判所は本人のために成年後見人を選任します・成年後見人は本人の財産に関するすべての法律行為を本人に代わって行うことができます・成年後見人または本人は、自ら行った法律行為に関しては日常行為に関するものを除いて取り消すことができます■保佐: 判断力が著しく不十分な場合(簡単なことは自分でできますが、法律行為は全く判断できません)・家庭裁判所は本人のために保佐人を選任します・保佐人に対して当事者が申し立てた特定の法律行為について代理権を与えることができます・保佐人または本人は本人が自ら行った重要な法律行為に関しては取り消すことがができます■補助: 判断力が不十分な場合(大体のことは自分で判断できますが、難しい事項については手伝いが必要です)・家庭裁判所は本人のために補助人を選任します・補助人には当事者が申し立てた特定の法律行為について代理権または同意権(取消権)を与えることができます支援を必要とする人(本人)を、それぞれ成年被後見人・被保佐人・被補助人といい、支援する人を成年後見人・保佐人・補助人と呼びます。成年後見人、保佐人、補助人とは家庭裁判所に選ばれ、本人に代わって法律行為など定められた行為を行う人をいいます。成年後見人は本人にどのような保護・支援が必要かといった事情に基づき、家庭裁判所が最も適任と判断する人物を選任します。ただし、希望通りになるとは限りません。そのような場合でも、申請を取り下げることはできないので、注意が必要です。成年後見人には、本人の子どもをはじめとする親族や、法律・社会福祉士の専門家、福祉関係の公益法人が選ばれる可能性があります。また、成年後見人は1人だけ選ばれるとは限りません。専門職の後見人を置きつつ、身の回りの法律行為については親族と役割分担する場合もあります。成年後見人、保佐人、補助人のすべてに共通する役割には、大きく分けて財産管理、身上監護、報告の3つがあります。■財産管理財産管理とは、証明書・契約書などの保管や法務手続きを行い、生活費を管理することです。一般的には多額の現金や預貯金は成年後見人が管理し、必要な分のみ本人が持つという形をとります。定期的に家庭裁判所にお金の動きを表す収支予定表を提出し、指示指導を受ける必要があります。これを後見監督といいます。このために領収書を常時管理し、金銭出納帳に記録することが求められます。■身上監護(しんじょうかんご)身上監護とは、本人の体調や環境を考慮の上で、適切な医療・看護を受けられるよう手配を行うことです。例えば住居・生活環境の確保や整備、介護や入院の手続きなどが挙げられます。ただし、成年後見人自身が本人を介護することは意味しません。専門職の方が後見人に選ばれた場合は親族が協力することがあります。■報告報告とは家庭裁判所から要請がある場合に、後見事務に関する報告書を家庭裁判所に提出することをいいます。これは義務付けられており、一般的に1年に1度行います。法定後見制度を利用するにはどのような手続きをしたらよいのか、ご説明します。1. 申し立ての予約をしましょう家庭裁判所に対して申し立ての予約をします。電話もしくは郵送で行うところがありますので、事前に確認しましょう。2. 申し立てをしましょうお住まいの地域の家庭裁判所にて申し立てを行います。申し立ては本人のほかに配偶者、四親等内の親族などができます。3. 面接を受けましょう家庭裁判所が関係者に事情を聴きます。面接に必要な書類は事前用意しておきましょう。また面接には本人、申し立て人、後見人候補などが出席する必要があります。医師による精神鑑定などの鑑定をする場合があります。その場合は別途、鑑定料がかかります。4. 家庭裁判所による審判が行われます主に後見人が必要かどうか、誰を後見人にするのかの2点を中心に協議されます。5. 審判の告知と通知裁判所から審判書が送られます。申立書に記載した成年後見人候補者がそのまま選任されることが多くあります。しかし家庭裁判所の判断により弁護士・司法書士などが選任される場合もあります。不服の場合は2週間以内に不服申し立てを行います。ご本人、配偶者、四親等内の親族のみが可能です。承認の場合は後見開始の審判が確定し、正式に後見人となります。手続きは自治体により異なる場合があります。詳しくは自治体のホームページをご確認ください。成年後見制度~成年後見登記制度~ | 法務省成年後見制度完全マニュアル | いなげ司法書士事務所法定後見制度の手続きには、いくつかの資料を準備する必要があります。東京家庭裁判所を一例にご紹介します。・申立書類・戸籍謄本・住民票(世帯全部、省略のないもの)・登記されていないことの証明書・診断書(成年後見用)、診断書付票・知的障害の場合、療育手帳(愛の手帳・みどりの手帳・愛護手帳)のコピー・総合判定の記載のあるページのコピーも必ず添付してください。上記の資料を提出する際には個人番号(マイナンバー)の記載がない書類を提出することが求められます。法定後見制度の申請には費用がかかります。なお,手続費用については,申立人が負担することが原則ですが,この手続を 行うことが本人の保護となりその利益になると考えられることから,東京家庭裁 判所では,申立手数料,後見登記手数料,送達・送付費用及び鑑定費用について, 本人負担とする裁判をする運用です。審判確定後,選任された後見人等に対し, 本人の財産の中から本人負担とされた手続費用の償還を求めることができます。【手続費用】・ 申立手数料(後見・保佐・補助共通) 800円 (代理権又は同意権の付与) 各800円・ 登記手数料 2,600円・ 送達・送付費用 3,200円又は4,100円・ 鑑定費用 実費(通常は裁判所に予納した金額(平成28年7月(電子版)成年後見申立ての手引 ~東京家庭裁判所に申立てをする方のために東京家庭裁判所東京家庭裁判所立川支部)鑑定を要する場合は別途、鑑定費用が5~10万円かかります。また申立てを弁護士や司法書士に依頼する場合、費用は自己負担となり別途お金がかかります。依頼する専門家により報酬は異なるので確認しましょう。成年後見制度の手続きの流れ | 成年後見制度完全マニュアル本人の財産や事情などに基づき、適当な額を家庭裁判所が決定し、本人の財産の中から報酬を受け取ることができます。申し立てがある場合は審判で決定されます。任意後見制度とは?出典 : 任意後見制度とは、本人十分な判断能力があるうちに、判断能力が不十分な状態になったときに備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人、公証人または任意後見人に代理権を譲渡し、契約を定める制度をいいます。これにより本人の意思に基づいて財産管理や支援を行うことができます。公証人の作成する公正証書によって契約を結びます。本人の判断能力が低下したら家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで初めて効力が発生します。任意後見監督人のもと、任意後見人は本人を代理して契約などを行います。任意後見人とは、本人に判断能力があるうちに、契約内容をあらかじめ取り決めてお願いする人物をいいます。近い将来に判断能力が低下した時のことが不安な方におすすめです。任意後見監督人とは、任意後見人を監督する人物をいいます。任意後見人は大きな権限を与えられるため、成年後見制を悪用してしまう可能性が少なからずあります。そのため、任意後見人をチェックするという意味で任意後見監督人がいます。任意後見人には特に法律的な資格は要求されず、誰でもなることができます。家族、友人、弁護士、司法書士等の専門家など信頼できる人を選びましょう。ただし、任意後見人には大きな権限が与えられるので慎重に選びましょう。それに対し、任意後見監督人は家庭裁判所が選任します。一般的に、第3者である弁護士や司法書士、社会福祉士、税理士や法律、福祉に関わる法人などが選ばれることが多くなっています。任意後見制度の利用は本人の判断能力の状況により、3つのかたちにわけることができます。判断能力の増減に応じて支援内容を変更することができます。■将来型現在は元気で判断能力があることから、将来判断能力が不十分になったときに効力を発生させます■即効型現在、体力・判断能力ともに衰えがあることから、任意後見契約の直後に契約の効力を発生させます■移行型現在は体力の衰えがあるが判断能力はあることから、できる範囲は自分で管理を行います。しかし自己の判断能力の低下後は、任意後見監督人の監督の下で任意後見人に事務処理を行ってもらいます。任意後見制度の手続きをご紹介します。お住まいの自治体により手続きが異なることがあります。詳しくは自治体のホームページをご確認ください。1. 公正証書での任意後見契約の締結をします本人の判断能力が十分にあるうちに任意後見人と具体的な支援内容を話し合い、公正証書という文書の形で契約を締結します。2. 任意後見契約内容の登記契約内容は法務局で登記されます。その内容は法務局にて後見登記記事証明書で確認できます。3. 家庭裁判所への任意後見監督の選任申し立て本人の判断能力が低下したら、本人は家庭裁判所に申し立てを行います。申し立ては本人(任意後見契約の本人)もしくは配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者ができます。これにより、家庭裁判所が任意後見監督人の選任を行います。そして任意後見制度の効力が発生し、あらかじめ決められた契約内容に基づき任意後見監督人の監督のもと支援が開始されます。任意後見制度の手続きには、いくつかの資料を準備する必要があります。東京家庭裁判所を一例にご紹介します。・申立書類・戸籍謄本・住民票(世帯全部,省略のないもの)・後見登記事項証明書(任意後見)・後見登記されていないことの証明書・任意後見契約公正証書の写し・診断書(成年後見用)■任意後見制度の申請任意後見制度の申請には主に次のような費用がかかります。・公証役場の手数料・法務局に収める印紙代・法務局への登記委託料・郵送費・正本、謄本の作成手数料など■効力が発生するとき及び効力が発生したあと効力が発生したとき及び効力が発生したあとには主に次のような費用がかかります。・任意後見監督人の選任申立て費用・任意後見契約で定めた、任意後見人に対する報酬・任意後見監督人の報酬任意後見制度は必ず公証人役場で公正証書を作成する必要があります。公正証書を作成する費用は以下のとおりです。(1)公正証書作成の基本手数料⇒1万1,000円(2)登記嘱託手数料⇒1,400円(3)登記所に納付する印紙代⇒2,600円この他にも当事者に交付する正本等の証書代や登記嘱託書郵送代がかかりますが、詳しくは公証人役場に聞いてみるのがよいでしょう。(成年後見制度の手続きの流れ | 成年後見制度完全マニュアル)任意後見人に対する報酬は本人との話し合いで自由に報酬を決められます。請求があった場合、家庭裁判所の判断に基づき本人の財産から支払われます。任意後見監督人に対する報酬は家庭裁判所が決定します。弁護士もしくは司法書士などに依頼することができます出典 : 成年後見制度は大変複雑で、必要な書類を集めるだけでも一苦労です。そこで弁護士もしくは司法書士に成年後見制度の手続きを依頼することにより、提出書類の作成にかかる時間と手間を大幅に節約することができます。また専門家に相談することができ、本人の状況にあった支援内容を決めることができます。弁護士は本人に代わって申請を進めることができます。他方、司法書士は制度や申立手続きの相談などをおこなうことができます。目的に応じてどちらにお願いするか判断するとよいでしょう。依頼先により報酬は異なりますので、事前によく確認することが求められます。成年後見制度のメリット・デメリット出典 : これまで成年後見制度を法定後見制度と任意後見制度の2つにわけ、それぞれの制度の内容や手続きの流れをご紹介しました。では、成年後見制度を使うと、本人には具体的にどんなメリットやデメリットがあるのかご紹介します。■悪徳商法の被害を防止判断力不足により結んでしまった不利・不当な契約を、一方的に取り消すことができます。これにより悪質商法などの被害を防ぐことができます。■財産管理家庭裁判所が財産管理に関与する、親族や第三者などが本人の意思に反して本人の財産を使っている場合、それらを防ぐことができます。■財産管理の自由度の限定後見人が本人の代わりに財産管理をするため、本人が管理する自由度が減ります。■資格・役職の制限成年後見制度を利用すると判断能力がないと判断されることから、本人は会社の社長・役員や弁護士、医者など一部の資格を必要とする仕事に就くことができません(法定後見人の補助を除く)。また選挙権・被選挙権、会社の役員などに就くことができず、また印鑑登録ができなくなります。■財産の移転や相続に関わる行為の制限成年後見制度を利用すると、生前贈与や生命保険契約、養子縁組といった行為に制限がかかります。・生前贈与成年後見制度を利用すると、財産の移転は本人の財産を減らすことを意味するため、認められていません。財産の移動は家庭裁判所に定期的に報告し、そこで家庭裁判所の監督を受けます。・生命保険契約遺産相続が発生すると、場合によっては多額の相続税を納める必要があります。しかし、いきなり多額のお金を準備するのはたやすいことではありません。そうしたとき、亡くなった直後すぐに死亡保険金を現金で受け取ることのできる権利が生じる生命保険契約を活用することでスムーズに対応することができます。ただ成年後見制度を利用すると、生前贈与と同様に財産の移転は本人の財産を減らすことに当たり、生命保険契約は認められない可能性が高いです。・養子縁組養子縁組により相続税の基礎控除額の基礎控除枠を増やすことができます。しかし成年後見制度を利用すると、本人の意思を尊重することや家庭裁判所の監督がある点から、養子縁組での相続税対策はすることができません。■投資・貸し付けの禁止投資や親族に貸し付けるのは禁止されます。援助や冠婚葬祭費の利用を行う場合は家庭裁判所に相談しましょう。また住宅用不動産を処分する場合も同様です。後見人になったら気をつけたいポイント出典 : 成年後見人になるとき、いくつか気をつけたいことがあります。「財産の不正利用」と「成年後見制度が続く期間」、「成年後見人の解除方法」の3点をご説明します。■財産の不正利用万が一不正に財産を利用した場合は、民事上の責任として解任されます。さらに刑事上の責任として損害賠償請求・業務上の横領の罪に問われます。■成年後見制度が続く期間成年後見制度は原則的に判断能力が回復するもしくは、亡くなるまで続きます。なので後見人の業務が場合により長期間に及ぶことがあるので、後見人の仕事を長い間続けることができるか確認することが必要です。■成年後見人の解除方法不正な行為がある場合や後見人としての品位に欠けると判断される場合などは、本人の親族、検察官の申立てまたは職権により後見人を解除することができます。しかし後見人が気に入らないからといって簡単に解除できるわけではありません。解任後は家庭裁判所が新たな後見人を選任することになります。■後見人が遺産の相続をする場合後見人自身も遺産相続人である場合は、家庭裁判所で特別代理人を選定する必要があります。成年後見制度がよく分かる、おすすめ書籍出典 : これまで成年後見制度の目的や支援内容などを紹介してきましたが、さらに詳しい情報が必要な方は次のような書籍をおすすめします。出典 : 児島 明日美・ 村山 澄江/編著『今日から成年後見人になりました 』自由国民社 (2013)出典 : のん/編著『マンガでわかる 私は父の成年後見人です』(自由国民社, 2014年)まとめ出典 : 障害者や高齢者といった判断能力の乏しい人の法律行為や契約をサポートするのが成年後見制度です。悪質商法から本人を守ったり、不利益になる契約を締結してしまうリスクがなくなります。その一方サポートが長期間に及ぶことや定期的に家庭裁判所に報告することを考えると、後見人への負担は少なくありません。本人と相談し、必要性の有無を話し合いのうえ申請しましょう。”何かあったとき”のために、成年後見制度の利用を考えてはいかがでしょうか。児島 明日美、村山 澄江/著 『今日から成年後見人になりました』2013年 自由国社/刊成年後見制度~成年後見登記制度~ | 法務省成年後見制度詳しく知っていただくために | 家庭裁判所成年後見申立ての手引 ~東京家庭裁判所に申立てをする方のために~ | 東京家庭裁判 所東京家庭裁判所立川支部成年後見制度の手続きの流れ | 成年後見制度完全マニュアル成年後見制度の問題点&できないこと&解任方法 2016年度版 | 遺産相続 弁護士相談Cafeここが知りたい日常生活自立支援事業なるほど質問箱 | 社会福祉法人全国社会福祉協議会福祉サービス利用援助事業について | 厚生労働省社会・援護局 地域福祉課社会福祉リカレント講座「自立支援における権利擁護と成年後見制度」講演録 | 明治大学 法学部教授 星野 茂いざという時のために知って安心成年後見制度成年後見登記 | 法務省民事局
2016年09月18日障害年金とは?出典 : 「障害年金」とは、障害によって生活の安定が損なわれないように、働く上で、あるいは日常生活を送る上で困難がある人に支払われる公的年金の総称です。業務時や通勤時による障害を補償する労災保険の障害年金もありますが、今回は、国民年金法、厚生年金保険法等に基づき日本年金機構が運営業務を行っている障害年金について紹介します。障害年金の種類出典 : 日本年金機構の障害年金には2つの種類があります。1.障害基礎年金障害基礎年金とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(初診日)に、すでに国民年金に加入していた人が受給することができる障害年金です。また、国民年金に加入前、20歳未満で障害を受け、その状態が続いている人にも給付されます。2.障害厚生年金障害厚生年金とは、初診日にすでに厚生年金に加入していた人に支給され、障害基礎年金に上乗せするものとして給付される報酬比例の年金です。障害年金を受けるための条件出典 : 障害年金を受給するためには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことをいいます。病気やけがにおいての初診日であり、その病院での初診日ということではないので注意してください。障害年金の受給希望となったきっかけである病気やけがの初診日が、いつ、どこの病院だったかを特定する必要があります。その際、診断書などの裏付けができるものも必要です。ただし、知的障害に関しては先天的な障害とされているので、初診日の証明は必要はありません。アスペルガー症候群や自閉症にもこの例外は広がりつつありますが、まだ発達障害全般には保障されていません。初診日に国民年金や厚生年金保険などの年金制度に加入している必要があります。しかし、初診日に住所が日本国内にあったならば、初診日に20歳未満、あるいは60歳以上65歳未満でも国民年金に加入していたのと同じ扱いになります。20歳未満は国民年金に加入できないことから、20歳に達した時に障害等級に該当していれば加入要件は必要ありません。つまり、20歳未満で障害を受け、その状態が続いている人にも年金制度の対象となります。以下の2つのどちらかに当てはまっている必要があります。1.初診日の前々月までの年金加入月数の3分の2以上が保険料納付済みか免除されている月であるとき2.初診日の前々月までの年金加入月数の12カ月すべて保険料納付済みか免除を受けた月であるとき障害等級に該当している必要があります。障害等級とは、障害の状態を分けたもので、重いものから1級、2級、3級とされています。1~2級は国民年金法施行令で、3級および3級より軽度の障害状態は厚生年金保険法施行令で定められています。この場合の障害等級は労災保険の障害年金のものとは違うものです。厚生年金に加入している場合は1級~3級のいずれかに該当しているならば障害厚生年金を受給することができます。また、障害等級が3級に達していなくても条件に該当しているならば、障害手当金という一時金が支払われます。国民年金に加入している場合は、1級と2級に該当しているならば障害基礎年金を受給することができます。しかし、障害基礎年金には障害手当金はありません。障害年金を受けるための障害認定基準出典 : 障害年金に関わる(年金額の)等級も、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳などの障害者手帳も「1級、2級」と、等級の表し方は同じのため混同しやすいのですが、障害年金の障害認定基準は障害者手帳の障害認定基準と異なります。そのため障害者手帳で1級でも、障害年金では異なる場合があります。精神障害における障害認定基準は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて認定されていました。しかし、精神障害と知的障害の認定において、地域でその基準に違いがあるという状況が明らかになってきました。こうした、認定における地域差を改善するため、厚生労働省は新しいガイドライン(『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』)を作成し、2016年9月1日より実施しています。精神障害と知的障害においての等級は、「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」の評価の平均をもとに認定されるようになりました。等級目安などの詳細は下記のリンク先にあります。ただし、てんかんにおいては、発作の重症度や頻度などを踏まえて等級判定を行うことを障害認定基準で規定しています。そのため、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に基づいて、等級認定を行います。『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』|日本年金機構身体障害の障害認定基準についても下記のリンク先でも紹介しています。平成28年6月1日に、障害基礎年金、障害厚生年金の障害認定基準の一部が改正されているので確認してみてください。国民年金・厚生年金保険|日本年金機構障害認定基準|横浜障害年金申請サポート不安なことやわからないことがあったら、お近くの年金事務所に問い合わせてみましょう。全国の相談・手続き窓口|日本年金機構障害年金はいくら支給されるの?出典 : 日本年金機構によると、障害年金は以下のように計算され毎月支給されますが、支給額はその年度の経済状況で変動があります。また、子どもの数による加算額は児童手当との兼ね合いで支給額が調整されます。下記は2016年度の金額です。現段階でいくら支給されるのか、目安として参考にしてください。1級の場合の年額:780,100円(老齢年金の満額)×1.25+子の加算2級の場合の年額:780,100円(老齢年金の満額)+子の加算※子の加算…第1子・2子は一人につき224,500円。第3子以降は一人につき74,800円。この時の子どもは下記の要件を満たしている必要があります。・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子・20歳未満で障害者1級または2級の障害がある子Upload By 発達障害のキホン障害基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構1級の場合:(自分の老齢年金) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕2級の場合:(自分の老齢年金) + 〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕3級の場合:自分の老齢年金額または最低保障額 585,100円※1級・2級の場合障害基礎年金も加わるUpload By 発達障害のキホン障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法|日本年金機構障害基礎年金と障害厚生年金を比較した図が以下のものになります。Upload By 発達障害のキホン障害年金の支給が停止する場合出典 : 障害年金は支給が停止する場合があります。たとえば、1年ごとや3年ごとなどに提出する診断書をもとに障害の状態が要件に当てはまらないとされたときなどがあります。一方、複数回診断を受けても障害の状態変化があまりなく、固定状態が証明されている身体障害においては、診断書の提出の必要がない場合もあります。障害厚生年金においては、業務上の病気やけがでも障害年金を請求することはできますが、労働基準法の規定による障害給付を受け取る権利があるときは、6年間障害厚生年金を受け取ることができません。また、労働者災害補償保険法の規定による障害給付を受け取るときは、労働者災害補償保険法の給付の一部が減額されます。1世帯(扶養親族なし)の所得額が360万4千円を超える場合には年金支給額の2分の1が支給停止となり、462万1千円を超えると年金支給額の全額が支給停止になることがあります。障害年金の申し込み方法出典 : 障害年金請求方法として主に以下の2つがあります。障害認定日とは障害の程度を認定する日で、初診日から1年6カ月経過した日、あるいはその病気やけがが治った場合は病状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を指します。何らかの理由で請求が遅れてしまっても、障害認定日の時点から3カ月以内の診断書の添付ができます。その際に症状が障害等級に該当するものだとしたら、さかのぼって過去の分の年金を請求することもできます。基本的に、障害年金受給の権利は条件を満たしてればいつでも得ることができますが、実際にさかのぼって請求できるのは過去5年分のみです。障害認定日時点の診断書の取得や当時の症状を証明できるものが必要なため、複雑に感じる人もいます。しかし、申請が受理されると、障害認定日の翌月分から障害年金を受給することができることは大きな利点であると言えます。Upload By 発達障害のキホン事後重症請求は、障害認定日の障害の程度が障害等級に該当していなくても、その後症状が悪化し、その症状が1級~3級に該当した場合に適用します。しかし、65歳までに障害認定基準に該当している必要があり、請求書は65歳前に提出しなければなりません。請求が受理されると、認定日の翌月分から受給できますが、障害認定日請求とは違い、さかのぼって過去の分を請求することはできないものになっています。Upload By 発達障害のキホン一人の人に複数の障害があった場合ですが、日本年金機構によると、特別、複数の障害があった場合の請求方法はないそうです。ただし、請求する際にはすべての障害に関する診断書が必要なため、手続き過程において複数の障害があることは確認されます。その人の障害の状態や重なりによって、その後の対応は変わるため、まずは窓口で相談するか、診断書を提出して審査をしてもらいましょう。障害年金の申請に必要な書類出典 : まずは、初診日や障害の状態を証明できる診断書や障害者手帳を持って年金事務所や市役所の国民年金窓口へ行くことをおすすめします。そこで必要な書類などの相談ができます。下記は参考として見てみてください。・年金請求書(居住地の市区町村役場、または近くの年金事務所または街角の年金総合センター窓口に備え付けられています)・年金手帳・戸籍抄本・医師の診断書・受診状況等診断書・病歴・就労状況等申立書・受取先の金融機関の通帳等・印鑑※18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障害のある子どもを含む)がいる場合・戸籍謄本・世帯全員の住民票・子の収入が確認できる書類・医師、または歯科医師の診断書障害基礎年金を受けられるとき|日本年金機構・年金請求書・年金手帳・戸籍抄本・医師の診断書・受診状況等診断書・病歴、就労状況等申立書・受取先金融機関の通帳等・印鑑※18歳到達年度末までの子ども(20歳未満で障害のある子どもを含む)がいる場合・戸籍謄本・世帯全員の住民票・配偶者の収入が確認できる書類(これは障害厚生年金のみです)・子の収入が確認できる書類・医師、または歯科医師の診断書障害厚生年金を受けられるとき|日本年金機構困ったら社労士に相談を出典 : 障害年金を利用したくても、申請などの手続きが大変なことから申請を諦めてしまう人もいます。その複雑さを軽減してくれる人が、社会保険労務士(通称、社労士)です。社労士とは、労働・社会保険に関する法律や人事・労務管理の専門家として、私たちの採用から退職までの労働・社会保険に関する諸問題、さらに年金の相談に応じる人のことです。障害年金についての無料相談や申請書作成の代行も行っています。まずは各地域の社労士会に無料相談をしてみましょう。社労士会リスト|全国社会保険労務士会連合会まとめ出典 : 以上、障害年金について制度の概要を解説しました。障害年金を受け取るためには、年金を納めていることが必要である点に注意してください。また、納めていても申請が複雑で面倒ということから申請を諦めてしまう方もいます。もし手続きに不安を抱えていたら社労士に早めに相談し、申請のサポートを受けることをおすすめします。
2016年09月08日こんにちは。教育ライターのyossyです。近年、奨学金制度に関する報道を新聞・ニュース等で見かけることが増えました。学生時代に学費が払えずに貸与型の奨学金を利用したけれど、卒業後も返済ができずに苦しむケースが増えているというのです。では、どうして困る若者が増えているのでしょうか。その背景や、検討中の新しい奨学金制度に関してご紹介します。●奨学金問題が起こっている背景に子どもの貧困&雇用の不安定日本の学費は世界的にみても比較的高い水準にあると言われています。しかし、平均給与は下がっており、子どもの貧困が問題になっている状態。「大学まで行って学びたい」と思うと、重い負担を強いられることになるのです。教育費に困ったときに、まず思い浮かべるのが「奨学金制度」ですよね。特に、日本学生支援機構の奨学金が有名です。文部科学省によれば、実に学生等の約4割が利用している とのこと。奨学金には一部に給付型(返済の必要がないもの)もありますが、多くの人は貸与型(返済する必要があるもの)を利用しています。しかし、近年非正規雇用者が増加していることも問題になり、雇用が不安定。誰もが「卒業して働き出せば返せる」という時代ではなくなってしまいました。日本学生支援機構によれば、平成26年度末時点で、1日以上返済を延滞している人は全体の約9%。延滞のきっかけが家計の収入低下や支出増加である場合が多く、継続して延滞している理由として“本人の低所得”を挙げる人が半数以上います。少しでも状況を打開するため、日本学生支援機構は大学別に未返済率を公表することも発表(2017年度より)。奨学金返済に関して物議を醸しているのです。●所得に連動して返済額が変わる? 新たに導入が検討される奨学金制度のポイントこういった状況をふまえて、国は新たな奨学金制度の創設を検討しています。マイナンバー制度が導入されたことも手伝って、いわゆる『新所得連動返還型奨学金制度 』に関する議論を重ねているのです。いったんは、平成29年度の無利子奨学金新規貸与者から導入することを目指しています。しかし、現在でも一定の条件を満たせば、・家計が厳しい世帯の無利子奨学金を受けている学生が、卒業後に一定収入を得るまでは返済期限を猶予する制度(所得連動返還型無利子奨学金制度)・返済額を減額して返済期間を延長する制度(減額返還制度)などの救済措置があります。これでは不十分なのでしょうか?『所得連動返還型無利子奨学金制度』と『新所得連動返還型奨学金制度』は名前が似ていますね。何が違うのか、ポイントをみていきましょう。●(1)『所得連動返還型無利子奨学金制度』(現行制度)・年収300万円を超えると、収入に関わらず一定額で返還開始(一部控除あり)・学生時代の世帯(主に父母)が低所得の場合のみ適用される●(2)『新所得連動返還型奨学金制度』(平成29年度より導入が検討されている制度)・学生時代の世帯の所得状況は関係しない・所得が一定額を超えるまでは最低返還月額の2,000円を返還・一定額を超えると、所得に応じた返還額とするこれまでは、世帯の収入(主に両親の経済状況)によってそもそも適用にならないという人もいました。新制度が開始すれば、本人の経済状況のみで返済額が決定される ようになります。また、年収300万円というラインを少し超えただけで、「家計が苦しいのに定額返済しなければいけない」という状況が改善されるというわけですね。----------新制度はまだ検討中で、解決しなければいけない問題も多くありますが、困っている学生や卒業後の若者たちが、少しでも楽になってほしいものです。【参考リンク】・新たな所得連動返還型奨学金制度の創設について(第一次まとめ) | 文部科学省()・平成26年度奨学金の返還者に関する属性調査結果 | 日本学生支援機構()●ライター/yossy(フリーライター)
2016年04月30日何かとお金がかかる子育て世帯には、自治体によるさまざまな支援制度が存在することをご存じでしょうか。児童手当や出産育児一時金だけではなく、不妊治療や資金贈与、独自の助成制度を設けている自治体もあります。けれども、あまり積極的なPRをしておらず、申請も必要なため「知っていれば利用したのに」と悔しい思いをすることも…。そうならないために今回は、知っておくと役に立つ「子育てお助け制度」についてご紹介しましょう。地域関係なし! 国が定める助成制度<特定不妊治療助成金>厚生労働省は不妊に悩んでいる人のため、「体外受精」「顕微授精」といった高度不妊治療の治療費助成制度を設けています。国がすすめている事業なので、日本に住んでいる人なら、全国どこでも対象です。ただし、所得や年齢制限、申請期限などがあるために事前確認が必要。自治体によっては国の制度で上限額を上回った分をさらに補助する制度のあるところも。住んでいる自治体の不妊治療制度についても事前にチェックをいれておくといいですね。・ 不妊に悩む夫婦への支援について|厚生労働省 <教育資金贈与の非課税制度>おじいちゃんやおばあちゃんが孫のために教育資金を提供したい…。そんなときに助かる制度が教育資金の非課税贈与です。通常お金を贈与すると贈与税という税金がかかってしまいますが、この制度を利用すれば教育費に限り、1,500万円まで非課税にすることができます。平成31年3月までと制度が期間限定であることや、贈与された子どもや孫は30歳になるまでに教育資金として使いきらなければいけないなどの点に注意が必要ですが、ムダな税金を抱えないという意味では検討の余地がありそうです。・ 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置 : 財務省 あなたの住んでいる地域にもあるかも? 地方自治体独自の助成制度<引っ越し費用の助成金(東京都新宿区)>新宿区の「子育てファミリー世帯居住支援」では新宿区の内外から区内への引っ越し(ただし、民間賃貸住宅の利用に限る)で「契約時の礼金、仲介手数料の合計を最大36万円助成」「引っ越し代の実費最大20万円助成」などの制度を設けています。意外とかさんでしまう引っ越し費用を助成してくれるのはうれしいですね。・ 子育てファミリー世帯居住支援(転入転居助成):新宿区 <三世代同居の支援(千葉県千葉市)>千葉市の「三世代同居等支援事業」では「親と子と孫」を基本とする三世代家族の同居に必要な費用の一部を助成しています。貸家の場合は賃貸借契約に、持家の場合は新築・改築・購入に必要となる費用が対象です。・ 千葉市:千葉市三世代同居等支援事業 <子どもの通学費援助(東京都八王子市)>八王子市では通学区域内の学校を対象に、徒歩での通学が困難なケースや、身体的理由などでバスや電車などの交通機関を利用している小・中学生の保護者に対し、交通費を補助しています。通学定期運賃の3分の2までが補助され、対象者には学校から申請書が配付されます。学校配布の場合は申請忘れの心配がなくていいですね。・ 交通機関等利用児童・生徒通学費補助金|東京都八王子市Webサイト こうした制度の利用は申請のタイミングが事前・事後のどちらなのか、所得や家族状況が条件に見合っているかどうかなどをしっかりとチェックする必要があります。そのうえで条件を満たしていることを確認し、上手に制度を利用しましょう。
2016年03月19日こんにちは。医療カウンセラーのyoshiです。介護保険制度というのは社会的にも定着してきている現代ですが、「そもそも介護保険制度って何なのか」ということがよくわからない人もいると思います。高齢者が増えてきている日本においては、 非常に重要な制度であることは理解しておくといいでしょう。介護保険制度を理解していく上で重要になるのが、“保険者 ”“被保険者 ”“制度を利用したサービス ”になります。保険者は、主に国や市町村と考えておいて問題はありません。被保険者は、第1号保険者(65歳以上の人)、第2号保険者(40歳以上65歳未満の医療保険加入者)になります。制度を利用したサービスというのは、特定の介護施設や介護サービスなどになります。被保険者と保険者の関係は、被保険者から保険者に向けての保険料の支払いや介護保険の申請になり、保険者から被保険者に向けて保険証の交付や申請に対する認定ということになります。被保険者と制度を利用したサービスの関係は、サービスの提供と利用料の支払いになります。そして保険者と制度を利用したサービスの関係性は、保険者から介護報酬の支払いを受けるという関係になります。この3つの関係が成り立つことで、介護保険制度は社会的に機能していることになります。●介護保険制度の複雑な面は“制度によるサービス”が影響介護保険制度を利用していく場合、被保険者と保険者の関係というのはわかりやすいことが多いのですが、“制度によるサービス”に対して理解が難しくなってしまうことがあります。それは、“制度によるサービス”に関する施設やサービスが多種多様にあり、似たような名前になってしまっていることが多いからです。これを理解していくためには、ある程度、専門的な知識が必要になります。“制度によるサービス”で迷ってしまった場合、頼りになるのがケアマネージャーであり、このケアマネージャーを探したいと思った場合、市区町村の窓口 に相談をするか、地域包括支援センター という場所に相談をすることになります。【参考リンク】・介護保険制度の概要 | 厚生労働省()●ライター/yoshi
2016年03月08日東京商工リサーチは2月26日、「社会保障・税番号(通称:マイナンバー)制度に関するアンケート調査」の結果を発表した。これによると、マイナンバー制度に対する認知は高まったが、利活用が進んでいない実態が明らかになった。同調査は、2016年1月19日から1月29日にかけてインターネットによるアンケートを実施し、有効回答を得た7887社の回答を集計・分析したもの。マイナンバー法の内容についてどの程度知っているかを聞いたところ、「概ね知っている、よく知っている」が5046社(構成比64.0%)で約6割を占めた。これに「少し知っている」(2513社。同31.9%)を合わせると、「知っている」と回答したのは7559社(同95.8%)あり、9割以上に認知されていることがわかった。続けて、自社にとってマイナンバー制度の一番のメリットは何かを聞いたところ、「メリットはない」が最多の5881社(構成比74.6%)で約7割を占めた。これに、「情報管理の利便性向上」が637社(同8.1%)、「公平性が徹底される」が552社(同7.0%)と続いた。「メリットなし」は前回調査(同65.9%)より8.7ポイント増加しており、マイナンバー制度の導入とともに、メリットなしと判断した企業の比率が高まっているという。一方、「その他」の中には「まだ(社内で運用されていないから)わからない」「始まったばかりで、わからない」といった回答が145社あり、一部ではまだ把握できていないことも垣間見えるようだ。逆に、マイナンバー制度の最大のデメリットを聞いたところ、「情報漏洩のリスク」が最多の3194社(構成比40.5%)で約4割を占めた。これに、「業務の煩雑化」が1809社(同22.9%)、「業務の増加」が1802社(同22.8%)、「コスト増加」が548社(同6.9%)、「デメリットはない」が344社(同4.4%)、「その他」が156社(同2.0%)、「公平性が解消できない」が34社(同0.4%)と続いた。前回調査でもデメリットは「情報漏洩のリスク」(同53.3%)が最多だったが、構成比は12.8ポイント下がった。この結果について、同社は企業がセキュリティ強化に努めたことや、行政による広報活動で安全性への認識が広がっていることがうかがえるとしている。
2016年02月29日ストレスチェックやマイナンバーなど、人事業務に大きく関わる制度の義務化が進められている。2016年上半期において人事担当者はどういった準備をし、どういった対応をしておくべきなのだろうか? 特定社会保険労務士の小岩和男氏に話を伺った。――昨年の12月から、ストレスチェック制度の実施が義務付けられるようになりました。従業員のメンタル不調を未然に防ぐための制度ですが、いま導入しようとしている企業からはどのような悩みが聞かれますか?この制度ができる前から先進的にストレス対策を講じていた企業に、混乱があるようです。例えば「これまでやっていた対策をストレスチェックに変更しなければならないのか?」といった質問をよく聞きます。ストレスチェック制度では、本人の同意を得なければ会社は結果を知ることはできません。また、ストレスチェックは従業員にとっては任意であり、強制はできません。こうしたことが、踏み込んだ対策をしたい会社にとっては悩みのタネになっているようです。ですが、ストレスチェック制度とは別の労働安全衛生法第69条第1項による任意の取り組み(トータルヘルスプロモーションプラン)であることを明確にすれば、従来実施していたメンタル調査などもストレスチェックとは別に実施することが可能です。――ストレスチェック制度では、医師などによる面接指導の実施が求められるようになります。こちらの準備については、どのような相談が寄せられていますか?「自社の産業医がメンタルの専門ではないのでどうしたらいいのか?」という相談を受けることがありますが、必ずしも産業医と面談しなければいけないわけではありません。別の専門医からも面接指導を受けることができます。ただし、その場合は自社の事業場の状況を把握していない場合も考えられますので、産業医からも就業上の配慮に関する意見聴取をしておきましょう。――これからストレスチェック制度の実施に向けて準備をしていく企業に、アドバイスをいただけないでしょうかストレスチェックをいつ・どのように実施していくか、具体的な導入手順については、企業の衛生委員会等で審議する必要があります。衛生委員会等は、従業員50人以上の事業場に設置が義務付けられているものです。今回のストレスチェック制度義務化を契機に、委員会をきちんと運用して労働環境改善に役立てていきましょう。――今年の1月からは、マイナンバー制度の運用もスタートしました。こちらはどのような状況でしょうか?マイナンバーは社会保障・税・災害対策の行政事務で必要となります。企業実務で一番早く運用されているのは雇用保険で、1月1日入社からマイナンバーが必要です。安全管理措置体制を整え適切に取得しましょう。――人事担当者以外の一般社員にも、マイナンバー制度の理解は浸透しているのでしょうか?全国民に必要になる重要な制度なのですが、まだまだ理解は薄いと思います。ですから、人事担当者のみなさんには説明会の実施をお勧めしています。内閣官房が運営しているマイナンバーのWebサイトに20分ほどの紹介動画がありますから、部内ミーティングなどのタイミングで見てもらうとよいでしょう。――マイナンバーの管理については、セキュリティが非常に重要だと思いますが、情報の取り扱いについてはどのようにしていくべきでしょうか?マイナンバーガイドラインに記載されている事業規模に応じた管理体制を取りましょう。いかに漏洩しない体制づくりをしていくかがポイントです。アナログ的ですが、従業員から番号を収集する際は、100人程度の規模でしたら書面を用いることを提案しています。従業員は所定書式に自身と扶養家族の番号を記載し封入して直接人事担当部門に持参。人事担当部門は書式を鍵のかかる書庫等へ収納。マイナンバー事務処理ごとに取り出し、終了後は定位置に戻す。またその事務処理ごとの記録をきちんと取っておく。これが最も漏洩リスクが少ないやり方でしょう。また、提出されたマイナンバーが正しいかどうかを確認するために「通知カードのコピーをとっていいのか」という質問が多いのですが、これは国がOKを出しています。ただし、コピーも厳重に管理することが必要です。会社によっては、人事担当部門で確認したのちに、コピーを当人に返却しているところもあります。また、書面で回収できないような大規模企業であれば、ITシステム会社へアウトソーシングという手もあります。マイナンバー法には委託する側に監督責任があると明記されていますので、安全管理措置が適切に記載されている契約書を交わしておきましょう。――2016年の上半期において、人事担当者はどのような点に注意して業務を進めるべきでしょうか?当面はストレスチェックとマイナンバーが主な取り組み課題になりますので、この二つを粛々と進めていきましょう。また、労働基準法や雇用保険法など、大きな制度改正の動きもありますから、こちらについても情報のアンテナを立てておくことが重要です。
2016年02月15日IoT検定制度準備委員会は2月5日、IoTの普及と知識スキルを可視化する策として検定制度を開始することを発表した。同検定は技術的な視点だけでなく、マーケティング担当、サービス提供者、ユーザーなどの視点から必要となるカテゴリー、スキル要件を網羅し、それぞれの立場でIoTのシステムを企画・開発するために必要な知識があることを証明できるものとなっている。主な受験対象者は、IoTを取り入れる組織の経営者および管理者、IoT化を推進するプロジェクトの企画担当者、IoTを活用しデータ分析などを行う利用者、IoTシステムの構築・保守運用に携わるエンジニア。検定分野は、企画推進・戦略立案のための基礎知識やプロジェクトマネジメントに関する知識を問う「戦略とマネジメント」、産業システム・スマート製品に関する知識やIoT関連の標準化に関する知識を問う「産業システムと標準化」、通信関連の法律に関する知識を問う「法律」、データ送信プロトコルやWAN、LANなどに関する知識を問う「ネットワーク」、電子工学やセンサ技術に関する知識を問う「IoTデバイス」、クラウド環境や分散処理システム利用に関する知識を問う「プラットフォーム」、データベースや機械学習に関する知識を問う「データ分析」、暗号化や攻撃対策に関する知識を問う「セキュリティ」を予定している。3月より希望者および有識者に対してベータ試験が実施される予定で、詳細については後日発表される。
2016年02月05日メルカリは2月1日、新人事制度「merci box(メルシーボックス)」の導入を発表した。2月1日に創業3周年を迎えた同社は、これまでも副業の推奨やフレックス制度の導入など、各種支援を行ってきたが、今後さらなるメンバーの採用や、出産・育児をはじめとしたライフイベントを迎えるメンバーへの支援をより拡充するため、同制度の導入を決定したという。新人事制度「merci box」の概要は以下の通り。社員の家族を含めた環境の支援産休・育休支援の拡充産休・育休期間中の給与を会社が100%保障する制度。女性は産前10週+産後約6カ月間の給与を100%保障、男性は産後8週の給与を100%保障。育児・介護休暇の有償化子どもの看護および家族の介護で休暇を取得する場合は、5日間を特別有給休暇とし最大で10日間まで休暇取得が可能(1年あたり)。万が一の時のセーフティライン病気やけがの時のサポート病気やけがにより仕事ができない期間、経済面も安心して入院や治療に専念できるよう支援。全社員の死亡保険加入メルカリで働く全社員に対して死亡保険に加入することで、万が一の時に社員の家族を最大限(数千万円~)支援する。ライフイベントのサポート結婚休暇&お祝い金結婚にあわせて、特別有給休暇(5日間)とお祝い金(5万円)を支給。出産休暇&お祝い金子どもの出産にあわせて、立会いに十分な特別有給休暇(3日間)とお祝い金(10万円)を支給。慶弔時の支援万が一の不幸があった場合には、特別有給休暇(3日~7日)や弔慰金(5~10万円)でサポート。
2016年02月02日MM総研は1月21日、企業のマイナンバー制度に対応にしたシステム・サービスの導入実態に関する調査結果を発表した。同調査は同社が2015年12月4日~7日にかけて、全業種の企業においてシステムやサービスの導入にあたり決裁権があるか選定に関与する立場にある担当者を対象に、Webアンケートで実施したもの。有効回答数は729人。マイナンバー制度対応に向けた社内の進捗状況を尋ねると、「既に取り組んでいる(社内のみ)」が45.5%、「既に取り組んでいる(外部組織に委託)」が24.4%であり、既に何らかの取り組みを行っている企業が計69.9%を占めた。このほか、「どのように対応するか計画中」が26.1%あり、マイナンバー制度に向けて取り組みは着実に進んでいる。業務ごとの対応状況を見ると、最も対応が多かった業務は「人事・給与」に関するもので49.1%だった。この業務は従業員への給与・報酬の支払いや保険料の徴収においてマイナンバーの対応が急がれるため、多くの割合を占めていると同社は推察する。続いて「マイナンバーの保管・管理」が43.0%、「マイナンバーにアクセスする権限の管理」が38.9%だった。それぞれの業務において、「検討している」と回答した企業はいずれも3~4割だった。マイナンバー制度対応に向けたシステムやサービスについて不安に感じていることを質問したところ、「情報漏洩リスク」が66.5%と最多であり、以下「業務量の増加」(42.8%)、「コストの増加」(38.8%)と続いた。マイナンバー情報を漏洩すると最高で4年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金といった罰則が科せられる上、企業名を公表されるなど社会的なイメージダウンにつながってしまうため、懸念が高まっていると同社は分析している。今後、重視・期待する機能について複数回答で尋ねると、「セキュリティへの対応力の高さ」が44.7%と最も多く、「操作性の良さ」が34.7%、「導入コストの安さ」が32.7%、「既存システムとの連携のしやすさ」が31.7%だった。誤操作や管理ミスなど、人的ミスによる情報漏洩を防ぐ機能が求められていると同社は指摘する。
2016年01月22日●ストレスチェック制度にどう対応していくか?いよいよ今月からストレスチェック制度が施行となった。とはいえ、すでにストレスチェックを実施したという企業は少ないだろう。むしろ、これから準備を進めていくという企業がほとんどかと思われる。従業員50人以上の事業場では、2015年12月1日から2016年11月30日までの間に、1回目のストレスチェックを実施するよう義務付けられたが、「まだ時間はある」と悠長に構えているほどの時間はない。もし、まだストレスチェック制度に対する対応方針や実施時期が決まっていないようであれば、すぐに取りかかった方がよいだろう。というのも、同制度は実施体制や運用フローが非常に複雑化しており、マイナンバー制度への対応よりも大変なように感じられる。まだ準備を進めていない企業は、これからどのように進めていけばよいのか? 11月にキーポート・ソリューションズ(KPS)は同制度に関するセミナーを開催。セミナーでは、ストレスチェック対策をより効果的にサポートする同社のソリューションと、産業医である三宅琢医師が「本音で教えるストレスチェック活用法」が紹介された。○ストレスチェック制度とは?まず、そもそも「ストレスチェック」とは何か? 厚生労働省によると、「ストレスチェック」とは、ストレスに関する質問票(選択回答)に従業員が記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる検査であるとしている。「労働安全衛生法」という法律が改正されて、従業員が50人以上いる事業場では、2015年12月から毎年1回、この検査を全ての従業員に対して実施することが義務付けられた。「企業としてやらなければいけないことは実施義務。従業員にアンケートに回答してもらうよう案内することが義務ということ。その結果、アンケートに回答してもらえなかったとしても、それは企業の義務ではない。そこが健康診断との違い。実施していない企業は罰則の対象となる」(三宅医師)ストレスチェック制度は従業員が自分のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスが高い状態の場合は医師の面接を受けて助言をもらったり、会社側に仕事の軽減などの措置を実施してもらったり、職場の改善につなげたりすることで、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するための仕組みである。三宅先生は同制度を「会社の元気度を測るもの」と述べた。同制度への実施手順として、厚生労働省からは以下の流れで進めていくように示されている。○どう運用すればよいのか?実施方法など社内ルールの策定から、ストレスチェックの実施、必要がある場合の医師による面接指導、集団分析など、やらなければいけないことはたくさんある。まず、ストレスチェック制度の導入前には事業所の衛生委員会で、ストレスチェック制度の実施方法などを決める必要がある。話し合う必要のある主な事項として、厚生労働省では下記の8点をあげている。ストレスチェックは誰に実施させるのかストレスチェックはいつ実施するのかどんな質問票を使ってストレスチェックを実施するのかどんな方法でストレスの高い人を選ぶのか面接指導の申し出は誰にすれば良いのか面接指導はどの医師に依頼して実施するのか集団分析はどんな方法で行うのかストレスチェックの結果は誰が、どこに保存するのかまた、実施体制や役割分担を決めることも必要だ。厚生労働省では実施体制の例として、下記をあげている。制度全体の担当者事業所において、ストレスチェック制度の計画づくりや進捗状況を把握・管理する者ストレスチェックの実施者ストレスチェックを実施する者。医師、保健師、厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師・精神保健福祉士の中から選ぶ必要がある。外部委託も可能。ストレスチェックの実施事務従事者実施者の補助をする者。質問票の回収、データ入力、結果送付など、個人情報を取り扱う業務を担当。外部委託も可能。面接指導を担当する医師質問票に関しては、厚生労働省から57項目からなる職業性ストレス簡易調査票が公表されているが、「ストレッサー(ストレスの原因に関する質問項目)」「サポート(労働者の周囲のサポートに関する質問項目)」「ストレス反応(ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目)」の3つの要素があれば、この質問票以外のものを使用することが認められている。「簡単に説明すると、『ストレッサー』は過去、『ストレス反応』は現在、『サポート』は未来の評価に分けられている。この中で、国が一番重要視するように言っているのが、ストレス反応である。今、頭痛がしたり、食欲がないなど、現在の状態をハイスコアとして扱うように言われている」(三宅医師)高ストレス者の選出方法については、「何点以上の人は面接する」という基準を、企業が考えなければいけない。記入が終わった質問票は、医師などの実施者(またはその補助をする実施事務従事者)が回収する必要がある。ここで注意すべき点は、実施事務従事者は、人事権を持つ職員が携わってはいけないということ。また、結果(ストレスの程度の評価結果、高ストレスか否か、医師の面接指導が必要か否か)は、実施者から直接本人に通知される。つまり、結果は企業には返ってこない。さらに、この結果は医師などの実施者(またはその補助をする実施事務従事者)が第三者に閲覧されないように保存することになっている。「実施事務従事者は事業所の中から選ぶこともできるが、作業や管理などが多岐にわたり、さらに守秘義務を負うことになるため、実際にはなかなか難しいだろう。事務の担当が倒れることがないよう、外注を利用していくことがポイント」(三宅医師)また、実施事務従事者だけでなく、ストレスチェックの実施者を誰に依頼するかといった問題もある。通常であれば、自社の産業医に依頼するところであろうが、医師によっては断られるケースも想定される。これに対し三宅医師は、「いい産業医か、使えない産業医か、判断する機会になった」と言う。今回の法改正によって、産業医の職務は「労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査の実施ならびに面接指導の実施およびその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること」が定められた。「ストレスチェックの実施をしぶるような医師は、職務を理解していないということ」と三宅医師は指摘した。これらのフローをふまえて、ストレスチェック結果で「医師による面接指導が必要」とされた従業員から面接の申し出があった場合は、企業は医師に依頼して面接指導を実施する流れとなる。では、そもそもストレスチェックは何のために実施されるのだろうか? その解について、三宅医師は次のように回答した。「従業員にとっては、自分の健康状態を知るため。しかし一番は、企業が組織診断を行って、職場改善を行うためだ」(三宅医師)ストレスチェック制度は年に1回以上実施することが求められているが、年1回だけの実施なのであれば、職場分析が非常に重要になってくるという。この職場分析は努力義務となっており、ストレスチェックの実施者に、ストレスチェック結果を一定規模の集団(部、課、グループなど原則10人以上の集団)ごとに集計・分析してもらい、その結果から職場環境の改善を行うことが推奨されている。職場分析の重要性について、三宅医師は次のように述べた。「欝病は移る。なぜかというと、一人の従業員が休むことによって周囲にそのしわ寄せが生じる。だから組織分析が重要」(三宅医師)●産業医が教える、ストレスチェック活用法三宅医師は「風邪と一緒で年に1回測っても、ストレスチェックの意味がない。いつ実施するのかで、値が変わってくるからだ」とストレスチェック制度の問題を指摘する。○今からできる、ストレスチェック対策「組織全体が沈んでいる部門は何かが起こっているということ。早くレスキューしないと一人の問題ではなく、全体に広がっていく」(三宅医師)また、企業はこれまで以上に安全配慮義務が必要になってくるという。「労災の対象となった従業員が訴訟の対象とするのは、社長と上司。この2本立てが法曹界では当たり前のパッケージ商品となっている。つまり、自分の部下の健康状態を把握していないと、民事裁判に巻き込まれるケースがあるということ。上司が部下にしなければいけない義務が安全配慮義務である。この義務は、予見義務・結果回避義務と言われていて、『そのまま働かせていたら倒れるのはわかりますよね?』という義務。こういう義務がある以上、企業は労働者の健康状態に配慮することが必要となってくる」(三宅医師)ところが、忙しいと部下のパフォーマンスを把握することはなかなか難しい。三宅医師は「今後メンタリティやモチベーションの見える化が必要。そうでないと、安全配慮義務を守れない」と言うが、では一体、どうすればよいのだろうか? 三宅医師は今からできる予見法として、次のようにアドバイスした。「ストレス不調を起こす人は必ず、当日の遅刻・欠勤の連絡が続く。また、個人スペースがすごく汚れていたり、逆にいつも汚れているのに急にきれいになったりする。そのほかにも気分の浮き沈みなどもチェックするポイントとしてあげられるが、これらを毎日チェックしていくことは難しい。そこで、今日から始められるストレスケアの一番簡単な方法は、あいさつ。毎日あいさつをすることによって、その人の変化に気付くことができる」(三宅医師)また三宅医師は、まわりを助けるよりも、まずは「自分が元気であることが大切」と話した。「私が産業面談で社員をケアする時に聞くポイントは、『食う』『寝る』『遊ぶ』の3つ。この3つの変化しか聞かない。この3つをチェックしていれば、ほとんどの人のメンタルケアができる。自分のストレスをケアする上で大事なことは、食事や睡眠に変化がないか、また趣味を持ってもらうこと。趣味はストレス発散にもなり、また趣味をしていても楽しいと感じない時は、ストレス値が高くなっているサインになる。年に1回ではなく、日頃から自分に問いていかないと、ストレスのレベルはわからない。自分が元気でいることが、一人でもストレス値の高い社員を出さないために一番大事なこと」(三宅医師)○メンタリティを可視化するには?三宅医師が推奨する「メンタリティやモチベーションの見える化」について、KPSでは8月に、個人と組織の「気持ち」を可視化・数値化する「Willysm(ウィリズム)」の提供を開始した。同ソリューションで従業員がすることは大きく分けて3つ。まず、毎日決められた時間に自分の気持ちを「Excellent」「Well Done」「Not So Good」の3つから選択し、その日にあった幸運・幸福な出来事を3つ記入、さらに同僚に感謝の気持ちを伝えるメッセージ・プレゼントをあげる、といった3つの行動から、従業員のモチベーションを可視化するだけでなく、気持ちを前向きにする仕組みとなっている。これにより、例えば「Not So Good」が続いている従業員がいれば、年1回のタイミングでなく、適宜ストレスチェックを促し、早期改善を図ることが可能となる。12月1日からは、同ソリューションにストレスチェック制度へ準拠した「ストレスチェックサービス」機能が追加された。KPS ビジネスイニシアティブユニットのシニアコンサルタントである稲田勇祐氏は、同ソリューションについて次のように説明した。「Willysmは前向きな改善の機会、健康経営による企業価値向上につなげる一つの有効な施策と位置付けている。健康で前向きな個人を増やしていくことによって、重大疾病予備軍を減らし、休業者も減らしていくことができると考えている」(稲田氏)***組織分析から職場改善まで実施するとなると、2016年11月まで時間の余裕がないことは感じてもらえただろう。今回のストレスチェック制度を、「義務だからやる」だけではなく、ぜひ前向きに経営戦略の一つとして、しっかり考えて取り組んでもらいたい。
2015年12月21日保健同人社とヒューマネージは12月5日、12月1日に施行した「ストレスチェック制度」(労働安全衛生法の一部を改正する法律)について、企業のメンタルヘルス担当者に実施したアンケート調査の結果を発表した。同調査は両社が10月22日と27日に企業のメンタルヘルス担当者を対象に実施したもので、有効回答者数は366人。調査によると、施行1カ月前の時点においても企業の準備は進んでおらず、3割強が具体的な実施時期を決めていという結果となった。ストレスチェック義務化が施行される1カ月前となる10月末の時点において、準備状況について「ほぼ完了している」と回答した担当者は2%未満だった一方、7割以上が「検討中/情報収集中」と回答している。ストレス・チェック義務化施行の直前でも、企業の準備はなかなか進んでいない実態が明らかになった。準備状況を従業員規模別に見ると、「検討中/情報収集中」の割合は、従業員1,001人以上の企業では60.2%、従業員301人以上1,000人以下の企業では73.8%、従業員300人以下の企業では81.6%であり、規模が小さくなるほど準備が進んでいないことが分かった。ストレスチェック義務化への対応で懸念している点については、ストレスチェック実施後のフォロー体制が42.3%で最多であり、以下、規程の整備(35.8%)、高ストレス者への対応(34.4%)、担当者の業務負荷増大(30.9%)、医師面談の実施(28.1%)と続く。法律が定める「やらなければならないこと」にどう対応するかという点とともに、義務化対応を担うメンタルヘルス担当者のマンパワーについても不安を抱いていることがうかがえると両社は見る。ストレスチェックを既に導入・実施しているまたは導入を検討中の企業の担当者に対して、実際にストレスチェックを実施する時期を尋ねると、具体的な時期では「2016年4月~6月」と「2016年7月~9月」が多かった。ただし、最多は33.5%の「未定/無回答」であり、スケジュールなどの実施に関する具体的な事項はまだ検討中の企業が多いようだと両社は推測する。ストレスチェック義務化対応で外部委託先を選ぶ際に重視する点を複数回答で尋ねたところ、費用が56.8%と最多であり、以下、運用サポートの充実(45.9%)、ストレス・チェックの信頼性(43.7%)、セキュリティ体制(38.5%)、システムの使い勝手(36.9%)の順だった。委託先を選ぶ際に費用を重視することに加えて、「実施する際のサポートがどれだけ充実しているか」「ストレスチェックは科学的に信頼できるものか」「セキュリティは万全か」「スムーズに実施できるシステムかどうか」など、多岐にわたるポイントでパートナーを選定していることが分かる結果となった。これらの結果を受けて、両社が提供する企業向けEAP(従業員支援プログラム)サービスである「TEAMS」のEAPコンサルタントは「マイナンバーや新卒採用スケジュールの変更などさまざまな対応が重なるなか、ストレスチェック義務化の制度を理解し、運用体制を整えるにあたって、企業のメンタルヘルス担当者が非常に苦労していることがうかがえる」とコメントとした。外部委託先を選ぶポイントとして「『ただストレスチェックを実施するだけ』の対応では、情報漏洩など、取り返しのつかない経営リスクに直結する。堅牢なセキュリティ、科学的に根拠のあるストレスチェックを提供できることに加え、コンサルティングから業務プロセスの企画・設計・遂行までトータルにサポートできる外部パートナーを戦略的に使いながら、ぜひ、今回のストレスチェック義務化対応を組織の生産性向上へつなげてもらいたい」としている。
2015年12月15日Beat Communicationは11月24日、社内表彰制度システム「BEAT AWARD」の提供を開始した。従来の社内表彰制度は、Eメールやポータルサイトを利用したものが多く、現場からアイデアがうまく集まらなかったり、制度自体を活用する社員に偏りがあったりすることから、うまく機能しないという問題点があったという。このような課題を解決するために開発された「BEAT AWARD」は、全社員からアイデアを募集して成功している企業の、カスタマイズ要望から生まれた社内表彰用のパッケージサービスとなっている。本サービスは、「金銭」よりも従業員への「感謝」や「認知」というモチベーションをアップさせる仕組みを「見える化」することで、個人の潜在能力を引き出し、会社の全体的な底力を増し、強い企業作りの役に立つことを目的としたものだとしている。また、同社のコンサルティングのノウハウと、社内向けに実施してきた表彰制度実施プログラムを体系化し、これまで社内システム上で数多くの表彰制度を実施してきた実績や知見をプログラム化した、システムとリアルが一体となったサービスだという。同社は、システム提供だけを主眼に置くのではなく、企業風土を育成していくために、ソフト面からの支援も行い、さらに、経営層に対するコンサルティングサービスもオプションとして提供することで、システム以外でのサービスも実施していくとしている。
2015年11月25日FiNCは11月20日、ストレスチェック制度に対応した法人向け新ウェルネス経営サービスを提供開始した。同社では、医師による面接指導など同制度に対応したサービスを幅広く提供できるよう、全国37都道府県に1,000人以上の産業医/医師のネットワークもあわせて構築したとしている。同社のストレスチェックでは、厚生労働省準拠の57項目もしくは同社によって充実させた110項目の質問により、従業員のメンタルの状況を計測し、従業員にフィードバックする。また、高ストレス者への医師面談の勧奨から、医師面談の設定、意見書の取得などすべて同社のシステム上で完結させることができるほか、集団分析についても各社の要望に合致したものが提供されるという。スマートフォンや紙による受検にも対応しており、改善ソリューションとしてスマートフォンなどを通じたセルフケアや相談センターなどのサポートも提供される。さらに、産業医/医師のネットワーク構築により、産業医の選任支援や医師面談が必要な高ストレス従業員に対する産業医のスポット紹介なども提供される。
2015年11月24日ビデオ会議システムや音声会議システムなど、世界中で40万以上のユーザーがソリューションを利用しているポリコム。その日本法人であるポリコムジャパンでは、制度改革やオフィスの効率化などをふまえて自社製品を活用したテレワークを実践している。テレワークを支援するソリューションの提供を本業とする同社の取り組みについて取材した。○震災後、テレワークを全社員対象に自社の製品自体がテレワークを可能とするものだけに、ポリコムジャパンでは以前から海外とのやり取りや、営業スタッフ、地方にいるスタッフなどとはテレビ会議をはじめとする自社のユニファイド・コミュニケーション製品を用いてテレワークを行っていた。しかし同社が全社員規模にまでテレワークを拡大したきっかけは、2011年3月11日に発生した東日本大震災だった。震災の直後、社員全員が自宅に待機することとなったが、そうした状況下で各社員は自主的に自分のパソコンに入っているビデオ会議アプリケーションや内線を受けられるIPフォンなどを駆使して業務を継続させていった。一週間、一人も出社することなく事業を継続できたことで、テレワークの意義を改めて認識した同社では、翌4月には全社的にテレワークが行える環境を整えたのである。ポリコムジャパン ビジネスオペレーションズのシニアマネージャー、藤井浩美氏は「震災以前からテレワークを拡大したいという意向はあったのですが、オフィスにいない社員との連絡のとり方や人事面での評価をどうするのかなど課題もあってなかなか全社員を対象にするまでには踏み込めませんでした。それが震災後にいざ実践してみると、業務の滞りもなく、またオフィスにいなくても社員のプレゼンスやステータスが確認できるため、全員が“見えている”状態にできることが実感できたことから、全社展開が決まりました」と言う。社員のスケジュールはOutlookのカレンダーで社内に公開されているため、お互いに確認しながら動きを同期させることも容易に行えたという。○テレワークのための制度改革を実施ポリコムジャパンでは、全社員がテレワークを行うための制度改革として、テレワーク・フレックス制度や育児サポート関連、介護サポート関連といった3つの制度を新たに整えた。このうちテレワーク・フレックス制度は、以前から実施していたフレックス制度にテレワークに必要な要素を盛り込んだもの。全社員を対象にテレワークを許可し、上長の許可を得ることで誰でも利用が可能(総務・特定技術職は状況に応じて)としている。またコアタイム(11時~15時)以外の時間は、開始時間と終了時間について8時間の間で自由に設定可能とした。育児サポート関連の制度としては、最長1年間、育児休業を取得可能とするとともに、産前・産後の休暇や子どもの看護のための休暇も実施。このうち育児休暇と子どもの看護のための休暇は男性でも取得することが可能だ。こうした整備の拡充により、現在、育児休業からの復帰率は100%となっている。そして介護サポート関連の制度では、まず最大93日まで介護休業の期間を設け、配偶者や父母、子ども、配偶者の父母、その他会社が認めた人への介護に対して申請可能とした。これと合わせて別途時短勤務制度も整えている。○オフィススペースも50%削減ポリコムジャパンにおける、こうしたテレワークを軸とした多様な働き方の実践は、同社の「ダイバーシティ推進戦略」に基づいたものだ。「生産性の向上と業務の効率化、事業継続・リスクマネジメント、経費の削減をきっかけに、テレワーク活用を中心戦略とした柔軟な職場環境の構築を目指すのがダイバーシティ推進戦略です」と藤井氏は説明する。また同戦略に基づきテレワークを推進するための3つの柱として、先に挙げた制度改革と合わせて、インフラ・運用ルールの整備、オフィスの最適化を掲げている。このうち運用ルールとしては、Microsoft Lyncによる労働時間中のプレゼンス表示、Outlook利用でのスケジュール開示、セキュリティに関する社員の意識向上など6項目が必須として定められている。そしてオフィス最適化を象徴するのが、2014年6月9日に移転した東京・東新宿の新オフィスである。新オフィスでは、必要時のみオフィスに出勤する「テレワーク特化型」の仕事環境へとシフトするべく、フリーアドレス型のオフィスとして個々の固定デスクを廃止(技術職などの専門職を除く)。また資料など私物保管用のロッカーを設け、社員のニーズに対応しながら、仕切りのある席やオープンスペースなど用途に合わせて利用できる設計とした。「さまざまなライフステージにいる社員の自由な働き方を支援するために、これまで当社で培われてきたノウハウをベースにしながら新たなオフィス環境を構築しました」(藤井氏)社長室についても、社長が不在の際は会議室として利用可能とするなど、徹底的なオフィススペースの最適化を図った結果、前オフィス比で約50%ものスペースを削減することができた。そうして、顧客やパートナーへのサポートを強化するための「東京カスタマーエクスペリエンスセンター(TCEC)」を同オフィス内に新設することができたという。○テレワークが自然と可能になる技術の提供をポリコムジャパンの代表執行役社長、三ッ森隆司氏は、自社でのテレワークの取り組みについて次のような見解を示す。「われわれ自身が離れた場所にあるPCやモバイルからでもコミュニケーションを行うための技術手段を提供しているわけですが、それがあることで自然とテレワークやモバイルワークが実践可能なのだといった効果や意義を実感することができました。それとともに、テレワークを活用する社員自身のプロフェッショナルな業務遂行と高い意識も、テレワークを成功させるポイントであることも再認識しました」「お客さまを見渡すと、出張旅費の削減など、最初は目に見える効果を動機として当社の製品を導入いただき、その後、効果を実感しながらワークスタイル変革へと広げていくケースが多いようです。自社でテレワークを実践することで、ワークスタイルの部分に拡大していく際のサポートも充実できればと思っています」(藤井氏)今後ポリコムジャパンでは、さまざまな場所で働くことができるワークスタイルを普及していくというミッションのもと、自ら製品を活用し実践しつつ、自然とそうした働き方が浸透していくような展開を目指していくという。
2015年11月05日●日本が抱える課題世間ではマイナンバー制度に関するニュースが多数報道されているが、今年の12月から施行される重要な法律があることも忘れてはいけない。改正労働安全衛生法に基づく、ストレスチェック制度である。従業員50人以上の事業場では、今後年に1回全従業員へストレスチェックを実施し、従業員のストレスの状況について検査を行わなければならない。マイナンバー制度への対応に向けて、業務も費用も企業にとって負担が生じるなか、この法律も重荷に感じている企業も少なくないだろう。しかし、この法律の背景には、日本の経済力を高めることを目的とした政府の考えがある。10月13日、メンタルヘルス関連サービスを展開するアドバンテッジ リスク マネジメントは、ストレスチェック制度に関するセミナーを開催した。当日は同社の代表取締役社長である鳥越慎二氏が講演。当日の講演内容についてお届けしよう。○職場におけるメンタルヘルスの状況警察庁による自殺者数の調査では、総数は減少傾向にあるものの、「被雇用者・勤め人」にあたる労働者の自殺者数は横ばいで推移している。平成26年度では、総数が25,427人に対し、労働者の自殺者数は7,164人で、全体のおよそ28.2%を占める高い割合となっている。自殺の理由はさまざまであるが、「その多くが鬱状態ではないか」と鳥越氏は推測する。ちなみに、交通事故による死亡者数は平成26年度で4,113人となっている。比較すると、労働者の自殺者数は交通事故死者数の1.7倍となっていることがわかる。また、厚生労働省による精神障害などの労災補償の調査では、平成26年度の労災請求件数は1,456件、認定件数は497件、うち自殺件数は99件となっており、いずれの件数も過去最多となっている。従業員がメンタル不調などで休職・退職することによって、実は大きなコストがかかっている。休職前後の周囲の従業員が手伝う残業代や、休職中の本人への手当、周囲の業務調整、事務対応など、さまざまな場面で人件費が発生し、内閣府によると一人の従業員(年収約600万円想定)が6カ月間休職した場合に発生するコストは、422万円にのぼるという。さらに、その従業員が退職し、新たな人材を採用するためのコストは、約180万円(年収×30%で試算)だと言われている。これらの状況を受けて、政府は企業の健康経営の推奨やブラック企業の是正など、さまざまな施策を実施・検討している。●ストレスチェック制度のポイント○ストレスチェック制度の目的は?鳥越氏は、ストレスチェック制度のポイントとして次の3点を挙げた。50名以上の事業場について、医師・保健師などによる全従業員へストレスチェックを実施し、実施した医師・保健師より従業員へ直接チェック結果を返却高ストレス状態かつ申し出を行った従業員への医師による面接指導の実施面接指導の結果に基づき、医師の意見をふまえて必要に応じた就業上の措置これは、法律で定められている基本的なポイントとなる。しかし、鳥越氏も参加していたという法案公布後の審議会では、法律で触れられていない点に対して付け加えを行ったという。鳥越氏は「ストレスチェックを実施するだけでなく、ストレス問題を改善することが重要」とし、さらに3つのポイントについて説明した。まず、「企業の集団分析」である。ストレスチェックの結果を部署ごとに分析し、企業は職場環境改善のために活用するよう求められている。集団分析は努力義務とされているが、鳥越氏は「"努力義務"とは、"努力することが義務"なので、これはほぼ義務ということ。ストレスチェックを行っただけでは、改善されない。改善するためにはストレスチェックの結果を利用し、企業が努力することが必要」と説明した。2つめは、「相談窓口の案内」である。ストレスチェックを行った結果、高ストレス判定を受けた従業員は、その後会社に対して医師による面接指導の申し出を行う必要がある。「高ストレス状態の人が、果たして自分で申し出をするものか?」と鳥越氏は疑問を投じる。そこで、医師面談とは別にカウンセリングなどが受けられるような環境の整備をすることが、推奨されている。3つめは、「労働基準監督署への報告」である。企業はストレスチェックの実施日・チェックを受けた人数・フォロー状況を、労働基準監督署に報告することが義務付けされている。「この報告内容によって規制や取り締まりは行わないとされているが、十分に注意した方がよい。政府はこの報告内容をブラック企業対策の参考にすると考えられる」と鳥越氏は促す。「ストレスチェック義務化の目的は、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止が主な目的であって、ストレスチェックをすることが目的ではない。この目的のために、ストレスの原因となる職場環境の改善を行うことが、企業が求められている対応である」(鳥越氏)●ストレスチェック制度で求められる対策○企業と従業員、双方に求められる対策ストレスチェック制度の実施にあたり、企業が行わなければならないこととして、まず、衛生委員会などで調査審議を行い、社内規定を定め、従業員に周知する必要がある。また、実施する医師は誰にするのか、帳票の回収やデータ入力など、ストレスチェック結果を出力するまでの情報を扱う実施事務従事者を誰にするのかなど、体制を決めていく必要もある。鳥越氏は「事業者はストレスチェック制度に対する基本方針を決める必要がある。それによって、対応の仕方が変わってくるからだ」と話す。今回の法令に遵守するレベルで考えるのであれば、ストレスチェックの実施と医師面接の実施を行えばよい。しかし、メンタル不調者の未然予防も考えるのであれば、前出の外部相談窓口の設置についても検討する必要が出てくる。さらに、メンタルヘルス対策にとどまらず、組織改善や活性化をはかり、企業の生産性を向上させようと考えるのであれば、しっかりとした組織分析・改善施策の実行が必要となってくる。また「企業だけでなく、従業員も意識を変える必要がある」と鳥越氏は話す。「政府が推奨するストレスチェックに関する57の質問項目はNIOSH職業性ストレスモデルを参考にしてつくられている。しかし、このモデルにあって、ストレスチェック推奨項目に欠けているのが、『個人的要因』に関するチェックだ。個人の性格などを抜きにしてストレス対策を進めても、効果が出ないケースがある。ストレスは客観的には存在しないもの。個人の受け止め方によってストレスに変わる。従業員も刺激に強くなるために努力する必要がある」(鳥越氏)鳥越氏は、ストレスチェック制度の実施にあたって「自分の会社がどういった対応をするのか、従業員は会社を判断するきっかけになる」と言う。きちんと運用できる体制で、従業員の期待に応える制度運用を行うことが、望まれる。
2015年10月21日いよいよマイナンバーの通知カードの送付が始まります。また、マイナンバー制度のもうひとつの番号、法人番号の通知、公表も始まり、ここからマイナンバー制度がスタートします。その一方で、内閣府が9月に公表した世論調査では、マイナンバー制度について「内容まで知っていた」と答えた人の割合が43.5%と5割にも満たない現状が明らかになっています。そのほか民間企業などの調査結果では、マイナンバーの取り扱いが必須となる中小企業の取り組みの遅れも明らかになってきており、平成28年1月から利用が開始されるマイナンバー制度がスムーズにスタートできるのか懸念の声もあがっています。今回は、最新の情報を整理、確認してみましょう。○通知カードの送付および個人番号カードの交付申請最新情報整理総務省のお知らせ「個人番号の通知に係るスケジュールについて」によると、マイナンバー通知カードの「お届けの時期」について「概ね10月中旬~11月中を予定」としています。住民票を有するすべての個人(約1億2,800万人)にマイナンバーを付番した後、世帯単位(約5,600万世帯)に簡易書留で送付するわけですが、これだけの数の簡易書留が送付されること自体、前代未聞のことですので、さすがに一時期に集中して送付することは難しく、1カ月以上の時間をかけての送付となってしまいます。また、簡易書留での送付ですので、届け時本人不在の場合は再配達が必要となったり、土日に地区の郵便本局へ引き取りにくる人が殺到したり、受取人不在のまま市区町村まで返送されるものも多数でることが想定されています。返送されたマイナンバーの通知カードは再送付が行われることになっているようですが、住民票を有するすべての個人がマイナンバーを受け取るまでには相当の混乱が起きてしまうことが予想されます。送られてくる通知カードですが、図1のように、マイナンバーの通知カードと個人番号カードの交付申請書が一体となった様式で送られてきます。通知カードは氏名、住所、生年月日、性別の個人4情報とともにマイナンバーが記載されています。顔写真が掲載されていないため身元確認には使用できませんが、番号確認が必要なシーンでは個人番号カードを取得するまで、この通知カードを使用することになりますので、大事に保管しておく必要があります。また、個人番号カードを申請する場合は、この交付申請書書に顔写真を添付して書面で申請するのが基本ですが、パソコンから指定のWebサイトに進み、申請書に記載されている「申請書ID」を入力して申請する方法や、申請書下部のQRコードをスマートフォンで読み取ってWebサイトへ進み申請する方法なども用意されています。○法人番号の通知・公開法人番号の通知・公開のスケジュールも法人番号の付番機関である国税庁より、図2のとおり公表されています。こちらも10月下旬から11月中くらいの期間に通知書が発送されるとともに、国税庁の法人番号公表サイトに法人名称・所在地・法人番号の基本3情報が公表される予定です。法人番号は公表される番号ですから、いつでも入手可能ではありますが、取引先などの法人番号を記載しなければならない書類の提出時期までには、確実に入手できるように段取りだけはつけておく必要があります。○今年中にマイナンバーを収集するために考慮しておくことこの連載では、中小企業のマイナンバー取り扱いの入り口となる従業員などからのマイナンバーの収集を、マイナンバーが送付される10月から11月にかけての期間で行うことを提案してきました。それは、来年の年末調整時期以前にもマイナンバーの利用が必要となるケースもあること、また来年のこの時期に収集しようとすると必ず通知カードを失くした従業員や扶養親族が出てくることが想定されることを考慮した提案でした。先に見たとおり、市区町村によっては送付時期が11月下旬までかかってしまうことや、最初の送付で受け取れず再送付を待たなければならない従業員も出てくることを想定すると、従業員などからの収集に12月までかかることは想定の上で、収集スケジュールを組み直す必要があります。すでに、従業員へのマイナンバー提供依頼の案内や収集したマイナンバーの安全管理措置など必要な準備を整えている場合は、通知カードが手元に届いた従業員から順次収集していくほうが、一斉に収集することにくらべると非効率のようでも実際的な対応方法といえます。また、現時点でマイナンバー制度への対応準備が充分にできていない中小企業の場合は、あわてて従業員などからのマイナンバーの収集を始めるのではなく、マイナンバーの利用分野である税や社会保障の専門家である税理士や社会保険労務士に相談して、まず制度への理解を深めるとともに、自らの企業規模に応じた方法として、これら外部の専門家にマイナンバーの取り扱いも委託する方向で相談していくことが、対応準備の近道となります。そのうえで、信頼できる税理士などにマイナンバーが必要となる源泉徴収票作成業務とあわせてマイナンバーの取り扱いを委託する場合は、税理士事務所と企業との役割分担を決め、企業がうけもつ役割に応じて安全管理措置を講じてから、従業員などからのマイナンバーの収集を開始しても、遅くはないのではないでしょうか。著者略歴中尾健一(なかおけんいち)アカウンティング・サース・ジャパン株式会社取締役1982年、日本デジタル研究所 (JDL) 入社。30年以上にわたって日本の会計事務所のコンピュータ化をソフトウェアの観点から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS(エーサース)」を企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。マイナンバーエバンジェリストとして、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。
2015年10月13日オービックビジネスコンサルタント(OBC)は9月18日、企業が行う初めてのストレスチェック制度の準備に対応したオールインワンサービス「OMSS+ストレスチェックサービス」を同月24日から同社の販売パートナーを通じて発売すると発表した。同サービスはOBCの業務サービスとして年間利用型で提供し、価格は税別でProfessionalタイプ(実施者・相談センターIT受検/分析)は9万5000円(社員数100名まで、人事奉行所有のOMSSユーザーの場合)~。同サービスは厚生労働省のガイドラインに則ったサービス設計をしており、法令完全準拠。専用導入運用ガイドでは企業に必要な体制構築の手順や準備書式を提供し、IT受検サービスでは「職業性ストレス診断簡易票」をベースに、57問・23問・80問の設定が可能。努力義務となっているストレス状況の組織分析は厚生労働省が提唱する「仕事のストレス判定図」に沿って、企業全体、組織のストレス状態を把握でき、努力義務となっている職場環境改善の指標として利用できる。また、メンタルヘルスに精通した専門医を実施者として提供し、実施者はITによって収集された診断結果を総合的に判断し、高ストレス対象者と面接勧奨などを適切に判定。実施結果に対して、実施者は企業の状況を適切に分析し、改善ポイントやアドバイスをレポート。さらに、利用企業の総合的なサポートするために相談センターを設置し、対応するスタッフは産業保健に精通した事務スタッフ・産業カウンセラー・社会保険労務士などのプロ集団が総合的に対応。相談は体制構築・書面作成・ストレス実施・分析など多岐に渡る内容に対応し、初めての制度対応・ストレスという未経験な内容に対し相談することが可能で従業員からのストレス診断結果に関する直接のお問い合わせに対応する。
2015年09月18日NECは9月16日、社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の開始に伴い、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)から、全国の地方公共団体(7月時点で1743団体)の個人番号カード(ICカード)交付窓口で、本人確認に利用される「個人番号カード交付窓口用顔認証システム」を受注したことを発表した。同社によると、顔認証システムが全国の地方公共団体において統一的に導入されるのは、今回が初めての事例となるという。本システムは、地方公共団体の窓口において個人番号カードの交付を希望する住民に対し、来庁者と個人番号カードの顔写真を照合、もしくは、来庁者と個人番号カード交付申請書の顔写真を照合するもの。これにより、地方公共団体における個人番号カード交付時のなりすまし対策などに対して有効だとしている。同社によると、採用されたシステムには、同社の顔認証エンジン「NeoFace」を活用しているという。
2015年09月16日NECは9月14日、山梨県甲州市から、社会保障・税番号制度(以下、マイナンバー制度)を扱うすべての住民基本台帳システム端末約160台のセキュリティ強化に向け、顔認証セキュリティソフトウェア「NeoFace Monitor V2」を受注したと発表した。甲州市は2016年1月のマイナンバー制度運用開始に合わせ、同ソフトウェアの利用を開始する予定。「NeoFace Monitor V2」は、顔認証エンジンをベースに、顔認証によるPCログオン、ログオン中の利用者の常時監視を可能とするソフトウェア。端末を複数の職員で共有する場合でも、利用者を個人単位で認証し、いつ誰がアクセスしたという利用履歴が確実に残るため、職員の不正利用への心理的な抑止効果も期待できる。常時監視機能により、端末利用者の離席をすぐに検知して自動で画面をロックするとともに、ログオン中に未登録ユーザーが着席した場合も検知して画面をロックする。これにより、未登録ユーザによる不正利用を確実に防ぐ。
2015年09月15日株価が乱高下する中、上場各社が長期株主確保のために充実させているのが「株主優待制度」だ。だが、これまで株式を保有したことのない人にとっては、株の購入はハードルが高いかもしれない。そこで今回は、投資情報会社のフィスコ 情報配信部 株式アナリストの小林大純氏に、株主優待を受けるための株式購入の方法など、「株主優待制度」の基本についてインタビューした。○「株主優待制度」、利用できる条件とは?――株主優待の基本について、株を持てば受けられるというのはわかるのですが、何株持てばいいのかなど、その辺りから教えていただけますでしょうか。株主優待というのは、上場企業が株主に長期的に株を保有してもらいたいとか、そういった目的のために、自社の商品をプレゼントしたり、あるいはサービスを提供したりといった、文字通り贈呈する仕組みです。受けるためには幾つかの条件があります。1つ目が、1年の決まった時に株式を保有している必要があることです。おおむね、企業には1年のうちで決算期があり、大抵の場合は3月ですが、2月、1月というところもあります。決算の期末であるとか、3月期末の決算企業であれば9月など中間期ですね。多いのは年に1回期末のとき、あるいは期末と中間の年に2回、その時時点の株主さんに株主優待をするというケースです。ですので、株主優待を受けるには、その企業が、いつ時点の株主さんに株主優待するかを確認する必要があります。――なるほど。企業ごとに決まった時点でその企業の株を持っているかどうかが株主優待を受ける第一の条件なんですね。それはどうやって調べればいいのですか?企業のホームページを見ますと、IRサイト、つまり株主向けページに、株主優待のコーナーを設けている企業が多く、「基準日」といいますが、いつ時点で株主である必要があるかということが記載されています。――たとえば、3月期末の会社は、3月31日に持っていればいいということですか。そこが注意点です。初めて株をする人は間違いやすいことなので、ぜひ注意してほしいのですが、3月期末の会社は3月31日時点で株主であることが必要であることが多いのですが、証券会社さんで株を買いますと、発注して即日それが自分のものになるわけではないのです。たとえば31日の3営業日前までに買う必要があると、決済が終了して自分の名義になるのが3営業日後になります。3営業日前が「権利付の最終売買日」となります。権利を取得するためにその日までに買っておく必要があるのです。――最終売買日は、3月31日の3営業日前になるということですね。そうです。その時点で買っておく必要があります。3月末が株主優待の「権利確定日」である場合は、その3営業日前が「権利付の最終売買日」です。具体的にいいますと、今年の3月は、31日が火曜日、この時点で証券会社さんで株を買いますと言ってもだめです。3月27日までに買っておく必要がありました。この3月27日が「権利付の最終売買日」です。企業のホームページを見ると、「権利確定日」は3月末時点の株主様と書いてあったりしますが、これを3月末に買えばいいという誤解をしてしまうと、31日に買っても優待は受けられないのです。――なるほど。「権利付の最終売買日」が重要なんですね。もう一つ注意してほしいのは、保有株数の条件が設定されています。大抵の場合は、売買するための最小単位、「単元」といいますが、100株、1000株の企業が多いです。今は大抵100株ですね。最低の売買単位が100株の企業ですと、100株持っている株主から優待を提供しますよという企業が多くありますが、たまに300株以上の株主とか、500株以上の株主いう条件がある場合もあるので、何株以上からの株主が対象かということを確認する必要があります。また、100株以上が対象の企業でも、500株以上の株主さんになると贈呈品が倍になるとか、段階的に優待のボリュームがアップするケースが多くあるので、これも確認しておきたい点です。――よく条件を確認しておく必要がありますね。株主優待を受けるためには1単元以上という企業が多いのでしょうか。そうですね。そもそも、株式投資は1単元以上から可能ですので、最低投資金額以上であれば優待対象という企業さんが多いです。まれに、「1単元」が100株でも、500株以上でないと株主優待の対象にならないというような企業もあるので気をつけたほうがいいですね。○企業は何のために株主優待をやっている?――最初の話に戻るかもしれませんが、企業は何のために株主優待をやっているのでしょう?自社の商品を提供してファンになっていただいて、直接株を保有してもらう。BtoCの企業ですと、優良顧客にもなり得るわけです。そういった意味で、長期株主を定着させたり、消費者としてのターゲットとして自社の商品のファンになってもらう、そういう狙いで株主優待を提供している企業が多いですね。また、最近出てきた動きですが、保有している期間によって優待内容に差をつける企業が出てきています。たとえば、100株以上を3年以上保有していると、今までの優待が1000円分だったのが2000円分になります、など。長く持っている株主さんに手厚くする傾向が最近徐々に出てきていまして、これも注目すべき動きです。――それはどういった理由からですか。ファンになってもらうことや、株価の安定でしょうか。そうですね。株価の安定や、安定株主をつくるということですね。企業同士の株の持合いの解消ということもあり、個人投資家に安定株主になってもらおうと。――なぜ持合いの解消が必要なのでしょう。「コーポレートガバナンス・コード」で、極力持ち合いはやめましょう、やる場合は説明しましょう、という制限がついてきました。○株主優待のリスクはある?――中国の問題で株が下がったりしています。個人の投資家にとっての株主優待のメリットは、商品・サービスが受けられるということだと思いますが、リスクはどうでしょうか。当然、株式ですので、投資した原資が100%返ってくるというわけではなく、場合によっては100万円投資したものが50万円になってしまうとか、ほとんどないですが、倒産してゼロ円になってしまうとか、そういうケースもあります。ですので、優待の商品の中身も大切ですが、その企業がどういったビジョンで経営していて、どういった成長戦略を持っているのかとか、そういった見極めも大事になってくるのです。――企業がどうなるか予測するのは個人投資家にとって、経済の勉強にもなると思いますが、どのあたりを見ればいいですか。ファンドマネージャーでもなく、アナリストでもなくという場合に、企業の株を買う買わないという、どの辺に判断の基準はありますか。1つは業績のトレンドです。決算短信、東証の適時開示システム(TDnet)など、企業の業績を開示する資料はたくさんありますので、そういったところをごらんになっていただいたらいいと思います。赤字か黒字かだけではなく、直近2期、3期ぐらいの利益の増勢、トレンドが出ているかとか、そういったところは簡単に見ることができると思います。また、財務情報を見るのは一般の投資家には難しいと思いますが、企業の決算を監査する監査法人が、企業が継続していくことに対して注意すべきところがあるのかどうか意見を付している、継続疑義の注記というのがあります。これは、企業が継続していく際に、たとえば何期赤字になっているので、このまま赤字が続くと資本を食いつぶして危ないとか、負債が増えていて危ないとか、注意点があれば投資家さんに知らしめるための注記を付しています。継続疑義の注記がついている、ついていないとかを見るだけでも参考になります。短信自体に継続疑義の注記が付されているのですが、たとえばネット証券会社のWebサイトでは、継続疑義の注記がついている企業の一覧が載っているケースが多いです。投資情報の一環としてそういうリストがあったりします。投資したいと思っている企業がそこに該当するかどうかのチェックは簡単にできます。○「配当」も考慮すべき?――株式を持っていると配当もあるかと思うのですが、株主優待目的で株を購入する場合でも、配当は気にするべきですか。配当も株主への還元という意味で、個人投資家にメリットがあります。配当は機関投資家も含めてメリットがありますが、株主優待は機関投資家にはあまり人気がありません。機関投資家は大量のロットで株を持っていても、優待が要らない人たちですので。個人の投資家さんにしてみれば、投資していることで得られるリターン・メリットの考え方として、優待と配当を合わせた総還元利回りというものがあります。たとえば100万円投資したら3万円の配当がもらえて、同時に優待が1万円分もらえるとします。100万円の投資に対して1年間で4万円、4%のリターンが得られるわけです。両方合わせてどのくらいのリターンが得られるのかという、総還元利回りという考え方で投資先を検討している投資家も増えています。――配当額はどうやってわかるのですか。企業さんの決算短信に記載されています。1株あたりで記載されています。100株持っていたら×100すればいいのです。自分がいくら投資したかによって、何%のリターンかというのがわかります。――優待もそうですが、配当もうれしいですね。個人投資家がひかれるのはワクワク感ですので、配当も考慮することで、その企業がどんなことをやっているのか理解する助けになると思います。○おすすめの銘柄は?――小林さんから見ておすすめの銘柄はありますか。外食系だと、食事券、割引券がもらえることが多いですが、注目して見ているのは、アスラポートダイニングです。牛角など多業態でレストランを経営しています。ダイヤモンドダイニングも多業態で展開しています。最近、多業態で展開している企業も多いので、優待の使い道がいろいろあるので注目しています。――なるほど。外食産業にそういう傾向があるのですね。注意点の1つになってくると思うのですが、外食企業などサービス系の企業全般にいえると思うのですが、近くに使える店舗があるかどうか確認していただきたいですね。首都圏で展開している企業で、大阪在住の投資家は店舗利用券をもらっても使えないということになりますので、実際に使える店舗が近くにあるかどうかが大事になってきます。一方、そういう株主に配慮しようということで、最近、サービス系とか外食系含めて、自社店舗での利用券または商品を発送しますという企業も増えてきている。そうすると、使える店舗が近くになくても、その企業の商品を取り寄せて楽しむことができます。――外食系以外におすすめの企業はありますか。皆さんのご趣味だとか、それぞれ違ってくると思うのですが、会社のサービスなどが目に見えるというのが株主優待を受ける楽しみでもありますので、サービス系がいいと思います。たとえば、カラオケをよくされるのであればシダックスですと利用券がもらえます。また、ネットカフェをよく利用する人にとっては、「自遊空間」を展開しているランシステムもいいかもしれません。身近でこういうサービスがいいなと気づいたときに、そこが上場されている企業であれば優待がないかと調べてみるのも楽しみの一つだと思います。自分の普段の生活から探してみるということです。――あらためて自分の生活を振返ってみるのもいいかもしれませんね。最近検索エンジンも進化していまして、FISCOウェブでもキーワード検索といって、「自遊空間」と入れるとランシステムが出てきます。弊社の投資情報アプリである「FISCOアプリ」は、投資家向けに提供させていただいているのですが、こちらでもキーワード検索ができますので、たとえば店名と会社名が違うというケースはあるのですが、店名検索していただければ、運営されている会社にたどり着くということはできます。○手元にいくらあれば、株主優待目的の投資を行える?――手元にいくらぐらいあれば、株主優待目的の投資を行えますか?最近は東証の指導がありまして、投資のために必要な最小単元を広く投資家に持ってもらうために引き下げましょうという動きがありまして、最小限の投資単位で持とうとすると安くてすむようになってきています。単元の株数が少ない会社ですと数万円から投資できますし、多いところでも数十万円、50万円未満にしましょうという指導されています。この範囲内に収まる企業さんが大抵です。――50万円未満でできるということですね。ボーナス1回分ぐらいでしょうか。10万円未満で買える株特集なども雑誌で組まれていますので、あきらめずに探せば、余裕資金が10万未満しかないという人でも投資できます。弊社でも特集をやっています。――フィスコさんで特集を組むというのはホームページ上でということですか。先ほどのFISCOアプリや、アプリがPCのWeb画面でも利用できる「FISCOウェブ」でも見ることができます。――「株主優待制度」を利用するだけで、いろいろな知識が身につきそうですね。本日はありがとうございました。
2015年09月15日