岡田浩暉をはじめとする豪華キャストによるミュージカルコンサートシリーズの第5弾『I Love Musical』~GIFT あなたに贈る詩~』が5月5日(日)・6日(月・祝)に東京・第一生命ホールで上演される。第1弾から出演する岡田と、2度目の出演となる咲妃みゆに話を聞いた。【チケット情報はこちら】第1弾から全公演に出演し、シリーズの顔である岡田に『I Love Musical』の魅力を尋ねると「自由さ」という答えが返ってきた。「このコンサートは毎年出演者と演出家が変わり、違う色でミュージカルの魅力を伝えてきました。昨年は、さまざまな名作ミュージカルをダイジェストでお届けしたりもして。そういう自由さが魅力なので、今年もこのメンバー、板垣恭一さんの構成・演出でどんなコンサートになるのか楽しみにしています」。今回の出演者は岡田と咲妃に加え、戸井勝海、原田優一、藤岡正明、田村芽実、林愛夏、北翔海莉、松原凜子という本シリーズならではの面々。さらに日替わりゲストとして5日(日)は島田歌穗、6日(月・祝)は坂元健児が登場する。昨年から2度目の出演となる咲妃は「私自身がこのコンサートでミュージカルの楽曲の素晴らしさや皆さんの歌声に魅了されたひとり。今回の出演が楽しみで仕方ありません」と再びの出演への喜びを語る。「前回、岡田さんとミュージカル『ロミオ&ジュリエット』の『Aimer(エメ)』をデュエットさせていただいたのですが、岡田さんは歌える喜びを感じさせてくださる方でした。“歌を好きでよかった”と思いました」と咲妃が振り返ると、岡田も「あれが咲妃さんにとって初めての男性とのデュエットだったと聞いて光栄でした。咲妃さんってふんわりした印象の方ですが、歌うととんでもないんですよ。衝撃でした!」と絶賛。今回もさまざまな組み合わせの歌が聴けるのだという。「ミュージカル未体験の方にもぜひ来てほしい」と岡田。“このコンサートが劇場に足を運ぶきっかけになれば”という思いから、ミュージカルの名曲以外にも、例えば歌謡曲やポップスなども織り交ぜて、誰もが楽しめる構成を意識しているのだという。今回披露される楽曲は、サブタイトルにもなっている《GIFT》をキーワードに、出演者の《GIFT》にまつわる思い出の曲が反映されているのだそう。さらに今回はキャストが入れ替わりMCにチャレンジするという企画も。「ドキドキです。4回公演、同じ内容は絶対ないと思います。全公演観てほしいです!」(咲妃)というスペシャルなコンサート。ミュージカルファンも、ミュージカルが気になるという方も、ぜひ会場に足を運んで新鮮な魅力に触れてほしい。公演は5月5日(日)・6日(月・祝)に東京・第一生命ホールにて。チケットは一般発売中。取材・文:中川實穗
2019年04月05日今年誕生10周年を迎えた大人気乙女ゲームシリーズ「Starry☆Sky」が、7月に東京・品川クラブexにて舞台化されることが決定した。「Starry☆Sky」はhoneybeeが贈るドラマCD、乙女ゲームなどからなる女性向けメディアミックス作品シリーズ。天文に関する知識を教える『星月学園』(せいげつがくえん)を舞台に、唯一の女子生徒が主人公となり、十三星座の性格特徴を持つ男性キャラクター達との恋愛を描く作品。ドラマCDやシチュエーションCD、ゲーム、アニメなど様々な展開を見せ、人気を誇っている。「Starry☆Sky」の舞台化となる『Starry☆Sky on STAGE』の脚本は、様々なドラマCDやゲームシナリオも手掛け、劇作家でもあり脚本家でもある錦織伊代。演出は、『A3!』シリーズや『機動戦士ガンダム00-破壊による再生-』など、数多くの舞台を手掛ける松崎史也が務める。公演は7月10日(水)から15日(月)まで、東京・品川クラブexにて。チケットの発売は5月予定。
2019年04月02日直木賞作家・皆川博子の小説『二人阿国』(新潮社刊)を原作に、華やかな和風ミュージカルに仕立てた舞台『ふたり阿国』の初日が、3月29日に明治座で幕を開けた。歌舞伎の元となる「かぶき踊り」を創った“出雲の阿国”(北翔海莉)と、彼女にあこがれ、その芸を乗り越えようと必死にもがく少女“お丹”(峯岸みなみ)の人生を、対比させながら綴る物語。ポップス、ロック、ゴスペル、ワルツなど多彩な楽曲はもちろん、明治座らしい大掛かりなセットや殺陣に加え、皆川原作ならではの人間の業や哀切さもしっかりと描かれた快作に仕上がっている。【チケット情報はこちら】黒地に金色の雲型がたなびいている舞台美術を背景に、中央には大きな太鼓橋のセット。物語は慶長5年の京都・四条河原で、その太鼓橋の頂上に立つ阿国(北翔)を、地面からお丹(峯岸)が見上げている場面から始まる。次いで民衆が舞台を埋め尽くすと、「浮世で傷ついた心と体を、この阿国が慰めてさしあげましょう!」と再び阿国が登場。華やかな笑顔と豊かな歌声で、一気に客席を惹きつける。北翔は、興行を実現するため勧進元には“色”も使うが、さっぱりときっぷのいい阿国を表現。大津城で戦いに巻き込まれた際には、一座の女衆やお丹を守りながら避難させるなど、孤高のカリスマというより、人間らしさを感じさせる阿国像を演じている。その印象は後半、男装して踊る「かぶき踊り」を始め、放たれる光がさらに強くなってからも同様だ。お丹と、その一座のこふめ(雅原慶)を引き取るも、芸道のために残忍ともいえる行動を起こす阿国。だが自分が起こした結末に動揺する姿から、阿国自身もまたひとりの女性として、芸道と人生の模索中なのだと分かる。終盤では亡き夫を想い、弱った表情を見せる阿国が切ない。宝塚を退団して3年、元トップスターとして華やかな役柄が多かった北翔にとっても、女性の陰影を演じ切った本作は新境地となったに違いない。対するお丹役の峯岸は、かたくななほどに芸道にこだわり、阿国を「阿国ねぇ」と慕う初々しい前半から、ある出来事をきっかけに、自分の身が汚れてものし上がろうとする後半への変化を鮮やかに演じる。売れっ子の芸人になってからは、ポップス風のメロディに乗せて、さすがのアイドル性を見せつけるシーンもあり。だがその後、再会した阿国に“天に声を届けようとしていた、あの頃のお前はいなくなった”と言われたお丹は……。阿国とお丹がそろったラストシーンは、宝塚時代から芸道へのひたむきさと圧倒的な歌唱力で知られる北翔と、近年、舞台活動に誠実に向かい合い、結果を出している峯岸自身の姿とも重なって印象的だ。そのほか、お丹の父である笠屋犬太夫役・モト冬樹の味わい深さ、河原の興行を仕切る三郎左・コング桑田の清濁併せのむ潔さ、流浪の芸人・とっぱを演じる坂元健児の安定感ある歌声が舞台を引き締める。東京・明治座にて、4月15日(月)まで。チケット発売中。取材・文:佐藤さくら
2019年04月01日神と司祭に仕える5人の使徒が“福音”の歌とダンスで愛を説き観客たちの“魂を救う”オフ・ブロードウェイ発のミュージカル『ALTAR BOYZ(アルターボーイズ)2019』が、4月7日(日)まで東京・新宿FACE にて上演中だ。<Team GOLD>のプレビュー公演に潜入した。【チケット情報はこちら】『ALTAR BOYZ』は2004年にニューヨークで初演され好評を得たミュージカルで、日本での公演も6回目という人気作品。日本初演から10周年となる今回は、前回公演(2017年)と同キャスト・大山真志、法月康平、松浦司、常川藍里、石川新太による<Team GOLD>と、新チーム<Team SPARK>という2チーム制で上演。<Team SPARK>は初演から出演する良知真次を中心に、金井成大、川原一馬、勧修寺玲旺、北乃颯希、反橋宗一郎、山本隼也、米原幸佑、和田泰右が日替わり編成で出演する。演出は玉野和紀。神と司祭に仕える美しき男子5人のダンスボーカルグループ“アルターボーイズ”が、“福音”の歌とダンスで愛を説き観客たちの魂を救うワールドツアーのファイナル公演を上演する本作。彼らは会場内の“迷える魂”の数を表示する「ソウルセンサーDX12」が“0”になることを目標に、心を込めて歌い、踊り、ステージを盛り上げていく。キリスト教の聖書がベースにある作品なので、それぞれのキャラクターや歌詞、演出は、聖書を読んだことがある人はより楽しめるが、もちろん知らなくても楽しめる作品となっている。劇場は、開演前からまさに“ツアーファイナル”の空気になっていた。期待感で満ちるなか、登場するアルターボーイズの5人。盛り上がる客席。彼らは全身全霊で歌い、踊り、ときにはMCをしたり、観客と交流したり、ハプニングに慌てたりしながらも、パフォーマンスを続けていく――。もちろんこれは台本があるミュージカルなのだが、そこには強烈なほど“今起きていることだ”と思わせる生々しさがあった。それは本作の魅力そのものではあるが、「これでツアーをまわってきました」感を感じられるパフォーマンスのクオリティや、歌い踊って息も絶え絶えになった瞬間でも一切役は崩れないこと、さらに<Team GOLD>ならではの積み重ねたチームワークも相まってのこと。いつの間にか「アルターボーイズのツアーファイナルに来た客」としてライブを堪能していた。今回、2チーム制、しかも<Team SPARK>はさまざまな組み合わせで上演されるが、このライブ感だからこそキャストによって全く違うステージになるはず。ぜひ劇場でこの生々しさを味わってほしい。「ALTAR BOYZ 2019」は4月7日(日)まで東京・新宿FACEにて上演中。取材・文:中川實穗
2019年03月27日4月2日(火)に開幕を控えた美輪明宏の『毛皮のマリー』。寺山修司が美輪のために書き、美輪自身が演出、美術、主演を務めてきた作品だ。美輪がこの舞台に込めるものは何なのか。そして、今なおこの舞台が求められるのはなぜなのか。熱い稽古のあと、美輪が語った。【チケット情報はこちら】稽古も大詰めを迎えたこの日、まさにクライマックスのシーンが繰り広げられていた。男娼として生きる毛皮のマリー(美輪)とその息子・欣也(藤堂日向)の奇妙で哀しい因果関係が、長い長い台詞で、マリーの口から語られる。「長台詞にはやはり、大変なエネルギーと技術が必要で、音程、速度、強弱、リズムといったものを、言葉で表現しなければならないんです」と自身でも語るように、表現者としての凄みを、このシーンだけでも改めて感じさせてくれる美輪。その力に魅了されたからこそ、寺山修司も自身の思いのすべてを、美輪に仮託したに違いない。寺山が『毛皮のマリー』で描いたのは、自身の母子関係にも重なる、母の“無償の愛”である。「『愛の讃歌』でも歌われているように、愛とは与えっぱなしで見返りなど要求しないものなんです。それを『毛皮のマリー』では、いろんな人間を出して、母子ばかりか、男同士でも、無償の愛は尊いものだということを描いているのだと思います」。“醜女のマリー”と呼ばれるマリーの下男(麿赤兒)、美少女・紋白(深沢敦)をはじめ、見世物小屋かのように様々な人間が登場するのも、「そこには、“見世物の復権”というテーマを掲げていた寺山のメッセージがあるんです」と美輪は言う。「どんな人間であっても、下手物扱いしたり蔑視したり差別したりするのは間違っているということです。さらに、人前で話してはいけないとされている性的なことも、本来は命のもとなんだから、下品でいやらしい言葉だとするのはおかしいということを寺山は言っていました。ですから、この作品の魅力は、反社会的で背徳的とされていることを美しく描くところにあると思うんです。そして、そんな芸術性あふれる作品が少なくなりつつある今こそ、寺山修司という天才が作り出した作品が必要だと思っています」。そんな美輪の思いを受け止めてか、欣也役の藤堂、マドロス役の三宅克幸といったオーディションに合格して初参加している面々も、真摯な演技が光る。「芸術は人の心のお薬のようなものです」と言う美輪。今という時代に危機感を抱きながら懸命に、愛と美しさを伝えてくれる。公演は、4月2日(火)から東京・新国立劇場 中劇場にて上演後、福岡、愛知、大阪を巡演予定。チケット好評発売中。取材・文:大内弓子
2019年03月27日宝塚歌劇団月組のグランステージ『夢現無双 -吉川英治原作「宮本武蔵」より-』、レビュー・エキゾチカ『クルンテープ 天使の都』が3月15日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。宝塚歌劇月組 グランステージ『夢現無双 -吉川英治原作「宮本武蔵」より-』/レビュー・エキゾチカ『クルンテープ 天使の都』チケット情報『夢現無双』は吉川英治のベストセラー小説をもとに、天下無双を誇る剣豪・宮本武蔵の生き様を、彼を慕い続けるお通との恋を交えて描いた物語。関ヶ原の戦に勝利した徳川家による治世が始まった頃…。作州宮本村に生まれた新免武蔵は、“天下無双”の剣豪を目指す猛々しい若者であった。己の強さに奢り、殺める剣しか知らぬ武蔵の行く末を案じた僧侶の沢庵は、名を宮本武蔵と改め、心身を研鑽する旅に出るよう諭す。旅に出た武蔵が、さまざまな人と出会い、剣の腕はもちろん人間としても成長していく姿が描かれている。武蔵を演じるトップスター・珠城りょうの、どっしりとした存在感がぴったり。見た目も心も粗野で血気盛んな武蔵が徐々に洗練されていく様を、丁寧に作りこんでいる印象だ。美弥るりかが扮する佐々木小次郎も、匂い立つような美しさと繊細さがイメージ通り。キャラクターの対比が際立っているのも、珠城と美弥のふたりならでは。武蔵と小次郎が対峙するラストシーンも見ものだ。お通を演じる新トップ娘役・美園さくらも、武蔵を想い続ける一途で愛らしい女性を好演。互いに想い合いながらも近づけない様がもどかしい。さらに、月城かなとが演じる武蔵の幼なじみ・又八のダメっぷり、暁千星(あかつきちせい)が演じる武蔵と手合わせする吉岡道場の当主・吉岡清十郎の貫録ある佇まいなど、多彩なキャラクターを、月組生が個性を活かしながら演じている。第2幕の『クルンテープ』は、南の楽園・タイの首都バンコクを舞台にしたエキゾチックなレビュー。きらびやかで神秘的、オリエンタルなムードのシーンが次々と展開されていく。公演は4月15日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、東京公演は5月3日(金)から6月9日(日)まで東京宝塚劇場にて上演。東京公演のチケットは3月31日(日)発売開始。取材・文:黒石悦子
2019年03月22日創立97周年を迎えたOSK日本歌劇団「レビュー春のおどり」が3月28日(木)から東京・新橋演舞場、4月13日(土)から大阪・大阪松竹座で上演される。今回、トップスターとしてお披露目される桐生麻耶(きりゅう・あさや)に、合同取材会で意気込みを語ってもらった。【チケット情報はこちら】本公演は、第1部が“祭り”を主題に日本のさまざまな和の踊りを見せる『春爛漫桐生祝祭(はるらんまん きりゅうのまつり)』。大阪の天神祭の天神囃子、沖縄全島エイサーまつり、青森のねぶた祭をミックスするなど、熱気あふれる和物のレビューだ。第2部が『STORM of APPLAUSE』と題した洋物のレビューで、桐生のオリジナルソロ曲から始まり、ベートーベンの「運命」をモチーフにした激しいダンスが見ものになっている。振付のKAORIaliveが初参加するなど、また新しいOSKレビューが見られそうだ。新トップスターの桐生は、1997年にOSKに入団。劇団解散の危機を乗り越えて、舞台に立ち続けてきた。「毎回ありがたいと思うが、それと同時にどこか怖いと感じる自分もいる。来年はどうなるのだろうか、今年が最後にならないようにしっかり頑張らないといけない」と気を引き締める桐生。2022年に劇団創立100周年を迎えるが、「今まで繋いできてくださった先輩方のことを思うと、何という時期に私たちは存在できたのだろうと。1日1日、自分たちの芸事に真摯に向き合って、結論として100周年を迎えることができたら一番いいと思っている」と語り、謙虚な姿勢を崩さなかった。楊琳(やん・りん)、虹架路万(にじかけ・ろまん)、愛瀬光(まなせ・ひかる)らを中心に後輩たちにも支えられているといい、桐生は「お父さんのような気持ち」と笑う。「みんな舞台が好きでOSKに入団したと思う。その気持ちを失わないように、いつでも原点に戻ることができるように、自戒も込めて、そうであってほしい」と期待を込めていた。本公演の見所について、桐生は「群舞の力を楽しみにしていただきたい。シックな場面よりもエネルギッシュな場面が得意な劇団だと思うので、そこは惜しみなく楽しんでほしい」と語り、「年に1度しかない『春のおどり』。劇団員一同、本当に心を込めてお届けしたいと思っているので、ひとりでも多くの方に見ていただけたら。精一杯頑張りますので、ぜひ見にいらしてください」と締めくくった。東京公演は3月28日(木)から31日(日)まで、東京・新橋演舞場にて。大阪公演は4月13日(土)から21日(日)まで大阪・大阪松竹座にて。チケットは現在発売中。文・五月女菜穂
2019年03月22日39年目を迎えるブロードウェイミュージカル『ピーターパン』が、今年も7、8月に上演される。2017年に弱冠13歳で10代目ピーターパンとして初舞台を踏み、今回で3度目のピーターパン(以下、ピーター)を務める吉柳咲良に話を聞いた。【チケット情報はこちら】「長く上演され続けている『ピーターパン』の良さを私で途切れさせちゃいけない」と真っ直ぐに語る吉柳。「1年目よりも2年目、2年目よりも3年目だと思っています。技術面ももちろんですが、これまで以上に役を深め、座長として周りを引っ張っていける存在、安心感のある存在でいたい。だから自分自身も大人にならなきゃいけない」と意気込む。13歳だった座長は上演を重ねるごとに自覚が芽生え、この2年で「精神的に強くなった」と語る。ピーターという役柄も「歌も台詞の言い方も“これだ”という自分の中の正解を導き出せるようになってきた」と3年目ならではの言葉。ピーターの印象も変わってきており、「初めて演じたときは“無邪気な子供”だと思っていたのですが、2年目で、子供だけれども“ただの子供”ではないなと思い始めて。3年目の今回、ピーターのことをもっと理解できたらいいなと思っています」。物語の捉え方も変化した。「最初は“ピーターパンがいて、ネバーランドがあって、ウェンディーにお母さんになってほしくて連れてきたんだけど帰っちゃう、悲しい”って純粋に受け止めていたのですが、もっと深いお話なんだと思うようになりました。子供のまま成長し続けるピーターパンと、大人に成長していくウェンディーと、大人なんだけど成長しきれてないフック船長。その3人の違いってなんだろうと思ったりします」演出を手掛けるのは、今年も藤田俊太郎。「藤田さんとは役についてよくお話しします。“ピーターパンって子は本当にこうだろうか?”という疑問に対して、答えではなくヒントをくれるので、本番までに正解をみつけたいって思います」と、二人三脚で役を深めている。舞台で演じていて感じるのは「熱気」。「フック船長と戦うシーンで“がんばれ!”って声が聞こえてくるとすごく嬉しいし、力になります。飛んでいるときに下から見上げてくれる子供たちの憧れの目線も嬉しいです!」ピーターとしても女優としても3年目を迎え、「いろんな役ができる女優になりたいと思っていたけど、これは簡単なことじゃないぞと気付きました」と日々進化していく吉柳の新たなピーターを見られる公演は、7月21日(日)から28日(日)まで埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホール、8月2日(金)から5日(月)まで神奈川・カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化センター)ホールにて上演。名古屋・大阪・富山公演あり。ぴあでは3月24日(日)午前11時より、埼玉は1階10列目以内、神奈川公演は1階12列目以内の中央ブロックの指定席限定で、妖精の粉付の先行先着を実施。
2019年03月22日性転換手術を受けたものの股間に“アングリーインチ(怒りのインチ)”が残ってしまった、男でもあり女でもあり同時にそのどちらでもないロックシンガー・ヘドウィグが、愛を求め叫ぶ『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』。日本でも何度も上演されてきた人気のブロードウェイミュージカルが、浦井健治と女王蜂のボーカル・アヴちゃんによって届けられる。演出も福山桜子の手で新しくなる今回。今度はどんな熱狂を生み出すことになるのか。ふたりが意欲を語った。【チケット情報はこちら】日本では7年ぶりとなる公演で、これまで、三上博史、山本耕史、森山未來が演じてきたヘドウィグを担う浦井健治。「去年の『メタルマクベス』では黒だった爪が今度は赤くなるんです。“浦井、どこへ行こうとしてる!?”と思われるかもしれませんが(笑)、この孤高な役を演じられること、そして、人生を素敵なものにするためのバイブルのような作品に出演できることを、本当に光栄に思っています」と出演の喜びを語る。一方、自分を裏切ってトップスターに上り詰めた男のコンサートを追うように巡業しているヘドウィグのバンドメンバーであり、彼に寄り添うイツァークを演じるアヴちゃん。単独でのミュージカル出演はこれが初となる。「普段はもう命を燃やすように歌っているんですけど、この『ヘドウィグ』はそこまでやっていいもののひとつのような気がしています。浦井さんのヘドウィグに私が加わることで、鬼に金棒ならぬ、“王子にチェーンソー”くらいの(笑)、力になれたらなと思っています」浦井にとってもアヴちゃんの存在は心強いようで、「ヘドウィグの内面を浮き彫りにしてくれるのが、本当のヘドウィグのように切れ味のあるアヴちゃんっていうのが、今回のいちばんの武器」と言い切る。アヴちゃんもまた「ギャルパワーでやってきた自分が演じるからには(笑)、若い子たちにどんどん来てもらって、今の時代に私たちが演じる意味を感じてほしい」と意気込んだ。それに対して「アヴちゃんのパワーが、ミュージカルというカテゴリーも何もかも突破してくれると思うので、一緒に、作品の持つ力そのままを皆さまに届けられたらと思います」と応える浦井。作品の楽曲について、「全然武装してなくてセンシティブだから刺さる」とアヴちゃんは評したが、だからこそ、ふたりもまた剥き身になるしかないのだろう。その心の叫びは、まさしく“刺さる”ものになるはずだ。8月31日(土)から始まるEX THEATER ROPPONGIでの東京公演を皮切りに、福岡、名古屋、大阪と各地をめぐり、9月26日(木)からは東京に戻り、Zepp Tokyoにて公演を行う。チケットは各地ともに現在、チケットぴあにて抽選先行プレリザーブを実施中。3月18日(月)午前11時まで。取材・文:大内弓子
2019年03月15日劇団四季が上演しているミュージカル『キャッツ』が3月12日、日本公演通算1万回を達成し、特別カーテンコールを行った。チケットはこちら『キャッツ』は“都会のゴミ捨て場”を舞台に、24匹の猫たちの生き様を描いていくミュージカル。『メモリー』をはじめとする珠玉の楽曲と猫たちの超絶的なダンスで、幅広い世代から愛されている。日本では1983年東京・西新宿のテント式仮設劇場で初演、これは日本初のロングラン公演となり、日本演劇史にその名を刻んだ。その後各地で上演を重ね、これまでの観客動員数は995万人を数える、まさに国民的ミュージカルだ。この日は通常カーテンコール終了後、劇中歌『幸福の姿』『オールドデュトロノミー ――長老猫』を猫たちが歌い、さらにマンカストラップ役の加藤迪が「創立者である浅利慶太さんをはじめとする諸先輩方が、劇団の運命をかけて挑んだミュージカル『キャッツ』。1983年11月11日、東京・西新宿で産声を上げました。その舞台への祈りを絶やさず、熱い思いを受け継ぎながら本日、ついにここ東京・大井町で、日本上演通算1万回を達成いたしました」と報告。加藤は感極まり少し声を詰まらせながらも、客席の温かい拍手を受け、「こうして大きな節目を迎えられたのも、多くのお客さまが作品を愛し、育んでくださったからこそと、出演者・スタッフ一同、心より御礼申し上げます。これからもお客さまとともに『キャッツ』の歴史の1ページを作っていきたいと思います」と感謝の気持ちを伝えた。続いてふたたび劇中ナンバー『ジェリクル舞踏会』が流れる中、猫たちがダンスし、「10000」の数字オブジェが登場。その前で猫たちがポーズを決めると、客席からは熱い拍手と歓声があがる。その後もカーテンコールは何度も繰り返され、記念すべき日を『キャッツ』ファンが祝っていた。『キャッツ』公演チケットは2019年12月公演分まで販売中。チケットぴあではぴあ会員専用シート<ぴあシート>も販売中。なおこの日、本作の最新版CDの発売も発表に。今回の東京公演から一部楽曲の変更もあるため、ファンは要チェックだ。CD「劇団四季ミュージカル『キャッツ』<メモリアルエディション>」は4月24日(水)発売。
2019年03月13日音楽とダンスとアクティングが融合した、まさに最新&最強のパフォーマンス『ポリティカル・マザーザ・コレオグラファーズ・カット』が上演される。それも、総勢48名の来日海外カンパニーに、上田竜也(KAT-TUN)、ドラムの中村達也、そして、ベースのTOKIEという3名の日本人キャストが参加するスペシャルな公演だ。世界で絶賛される作品に挑む思いを、TOKIEが語った。【チケット情報はこちら】自身でもバンドを持ちながら、数多くのアーティストのレコーディングやライブにも参加して、華やかかつ確かな演奏を見せているベーシストTOKIE。数多くの経験を持つ彼女をもってしても、この作品への参加は、これまでにない胸の高鳴りを覚えるものであるようだ。「今はまだ想像でしかないんですけども、これは今までに体験したことのないものになるのではないかと思っています。もちろん普段のライブでも、アーティストやバンドによって演奏は変わっていきますが、それ以上に、自分が感じたものを音に出すということを求められるんじゃないかなと思うんです」。というのも、この作品の音楽は、ダンスのバックに流れるといった補佐的なものではなく、音楽そのものも重要なパフォーマンスとなるからだ。「映像資料をいただいて初めて観たときには、演奏とパフォーマンスがひとつの大きなかたまりになって迫ってきて、そのエネルギーに圧倒されました。これを自分がやるんだと思うと、本当に興奮しましたね」2016年トニー賞最優秀振付賞にもノミネートされた舞踊家ホフェッシュ・シェクターが率いるこのカンパニー。2010年の初演版からさらにダンサー、ミュージシャンの数を増やし、演出もパワーアップして世界各国で現地アーティストとコラボしながら上演を続けているが、主人公を開催国の人間が務めるのは日本が初めて。その主人公に抜擢された上田について、仕事の場をともにしたことのあるTOKIEは、「エネルギーのあるこの作品にハマるなと直感しましたし、KAT-TUNでは見られない上田さんがきっと見られると思います」。自身も「悔いが残らないようエネルギーを出して、来日するカンパニーに、日本にもこんな人たちがいるんだって思ってもらえる刺激を与えられるよう頑張りたいなと思っています」と意欲を見せ、「こんな異色のコラボレーションが見られる舞台はなかなかないので、ぜひたくさんの方に見ていただきたい」と強調する。音と人間が作り出すめくるめくエンターテインメントには、様々な刺激があるそうだ。公演は4月6日(土)から11日(木)まで、東京・オーチャードホールにて。取材・文:大内弓子
2019年03月13日安土桃山時代に歌舞伎の元となる「かぶき踊り」を創った“出雲の阿国”の人生と、彼女にあこがれと憎しみを抱きつつ、「二代目おくに」を名乗ることになる少女“お丹”の成長を描いた小説『二人阿国』(皆川博子作、新潮社刊)。厚みのある物語性はそのままに、歌、ダンス、舞踊、殺陣で華やかにミュージカル化したのが本作だ。明治座初出演にして初座長を務める阿国役・北翔海莉と、お丹と同じ一座のおあか役・桜一花、芸人であり遊女でもあるお菊役の鳳翔大という宝塚OGの3人に、本作への意気込みを聞いた。元宝塚歌劇団星組トップスターで、在団中より「明治座にあこがれて、しょっちゅう通っていた」という北翔。「出演が決まった時は、プレッシャーを感じつつも“あの舞台に立てるんだ”と本当に嬉しかったですね」と語る。宝塚では同じ組にいたこともある鳳翔は、これが退団後初のミュージカル。「あの明治座で、さらに北翔さんが座長と聞いて“出たいです!”と即答でした」と笑顔だ。北翔とは宝塚歌劇団のベルリン公演(2000年)以来の仲という桜も、「女優になった北翔さんと、また舞台でご一緒できるのが嬉しい」と、演技巧者の桜ならではの言葉が聞かれた。圧倒的なカリスマ性で、当時の日本を席巻してゆく阿国。芸道へのひたむきな姿勢は、北翔自身とも重なるが。「私などはまだまだ……。それでも舞台人として、究極のエンターテイナーの阿国のような考え方でありたいとは、いつも思っています」と北翔は語る。「常に勉強を欠かさない姿で、私も頑張らなきゃと思わせてくださる方」(桜)、「たくさんのことを優しく教えてくれる先輩」(鳳翔)と慕われている点も、阿国役にぴったりと言えそうだ。おあか役の桜は「峯岸みなみさんが演じるお丹の母親的な存在。芸人として生きるための手段をしっかり選んできた女性なので、夫役のモト冬樹さんと味わい深く演じられたら」と楽しみにしている様子。また、お菊役の鳳翔は「元男役なので最初は遊女役に戸惑いましたが、最近、日本舞踊のお稽古を始めたこともあって(名取名:花柳寿鳳華)、仕草などで活かせるかもと。お菊は武芸に秀でているキャラクターとも聞いて、だいぶ安心できました」とコメント。北翔、鳳翔ともに殺陣があるそうで、ダイナミックなステージが期待できそうだ。ミュージカル化については、「原作の深い言葉を残しつつ、ミュージカルにすることで、老若男女に分かりやすい舞台になっていると思います」と北翔。「本作の阿国は舞台人の側面に絞られているので、彼女が何を見て何を考え、どんな風に新しい舞台に取り組んでいったのかをしっかりと演じたい」と意気込む。一方で、「(阿国の)遊女的な面は、鳳翔さんに任せて……」とはにかむ北翔に、「ポスターの北翔さんは(色気が)充分出てますけど!?」と鳳翔が返し、笑いに包まれるひと幕も。チームワーク抜群のなごやかな雰囲気に、本番への期待が高まる取材となった。公演は3月29日(金)から4月15(月)まで、東京・明治座にて。チケットは現在発売中。取材・文:佐藤さくら
2019年03月12日ジャニーズJr.の林翔太が主役を務めるミュージカル『ソーホー・シンダーズ』が、3月9日、東京・よみうり大手町ホールで開幕した。その初日公演を前にマスコミ向けのフォトコールと囲み取材が行われ、林のほか共演者の松岡充、マルシア、大澄賢也と、演出の元吉庸泰が登壇。公演にかける想いを語った。【チケット情報はこちら】ロンドン・ソーホーで母の遺した洗濯屋を切り盛りしているロビー(林)は、ある日、店のオーナーである義姉妹によって家から追い出されてしまう。経済界の大物・ベリンガム卿(大澄)から金銭的な援助と求愛を受けるも、実は彼には本命の恋人の存在が。その恋人こそ、今をときめくロンドン市長選立候補者で、フィアンセもいるジェイムズ・プリンス(松岡)だ。そんな秘密のふたりの関係が、ある出来事から明るみになってしまい…。冒頭、スポットライトの中に浮かび上がるひとりの男性。“語り”の役どころでもある西川大貴が、圧巻のタップを披露し、一瞬で観客を『ソーホー・シンダーズ』の世界へと引き込む。続くM1『オールド・コンプトン・ストリート』は全キャストがそろう、明快でリズミカルなナンバー。本作の舞台であるソーホーを「ごたまぜのごっちゃ煮」と歌い上げ、社会的立場や愛のかたちなど、さまざまな人たちが交差する本作の象徴的なナンバーだ。またM4の『見知らぬ恋人』は、ロビーと多忙を極めるジェイムズが束の間の逢瀬を楽しむナンバー。立場は違えどもお互いを思う気持ちに変わりはなく、その恋するふたりのピュアな姿は何とも微笑ましい。そしてふたりの伸びやかで美しい歌声が、シーンをより一層盛り上げる。フォトコールを終え囲み取材に応じた5人は、終始にこやか。ここまでいかにいい時間を過ごしてきたカンパニーかが分かる。林は「ファンの皆さんも楽しみにしてくれていると思いますが、それ以上に僕らが楽しみにしていたと思います」と満面の笑み。さらに「ひとつ殻を破れた林翔太をお見せ出来るのではないか」と自信も覗かせる。そんな林について、「この子犬感はヤバい(笑)」とは松岡。林の純粋さ、さらに作品に対する真摯な姿勢に、ジェイムズさながらすっかり魅了されてしまったようだ。それは大先輩であるマルシア、大澄も同様。また演出の元吉は、それぞれの役どころについて「ぴったり過ぎて怖いくらい」と太鼓判。固いチームワークで結ばれたカンパニーだけが見せられる、極上のエンタテインメントがここにはある。東京公演は、3月21日(木・祝)まで。その後、大阪・愛知・石川・神奈川を巡演する。チケット発売中。取材・文:野上瑠美子
2019年03月11日日本初演から30余年を迎えたミュージカルの金字塔『レ・ミゼラブル』が全国5都市で上演される。「革命と正義」「誇りと尊厳」などさまざまなエッセンスに彩られた19世紀フランスが舞台の群像劇。罪人から真っ当な人間へと改心を試みるジャン・バルジャンを主軸にさまざまな人間ドラマが描かれる。本作で革命家の青年マリウスに恋する貧困層の娘エポニーヌをトリプルキャストで演じるのが昆夏美だ。新演出版となった2013年から今回で4度目の出演となる。ミュージカル「レ・ミゼラブル」チケット情報「この作品の魅力だと思うんですけど、やればやるほど新たな発見が毎回あって。決してゴールはないんだなと思っています」。例えば楽曲を前回とはまったく違う気持ちで歌ってみるなど、いろんな角度から作品を深めている。「演出家からの指示も、前回と同じようにとはならないので。私も役への固定概念を捨てて、お客様の中にも革命が起こるぐらい柔軟に演じられたらと思います」。前回の2017年公演では、『恵みの雨』でそれまでにない幸福感を感じたという。政府軍との銃撃戦の最中、マリウスの腕の中で歌うエポニーヌ最期の曲だ。「現実を分かっていながらもひとりでマリウスとの空想にふけるのが『オン・マイ・オウン』だと思いますし、自分が夢見ていたことが最後に手に入るなんて想像もしていなかった。切なくて深い場面だなと。エポニーヌにとって幸せの頂点にある歌だと思います」。演出家からは毎回「悲劇のヒロインにはならないで」との指示が飛ぶ。「特に『オン・マイ・オウン』は音楽も感傷的ですし、もしかしたらお客様はそういう部分を期待されているのかなとも思うのですが、絶対に自分を憐れんではいけない。エポニーヌを演じる上で一番重要なことです」。ミュージカル女優を夢見た中高生時代、「木の役でもいいからあれば出演したい」とこいねがった本作に、デビュー2年目で初出演を果たした。「当時は年齢的にもキャリア的にも一番下だったので、『妹みたいなエポニーヌが新鮮でした』というお手紙をいただいたときは嬉しかった」。時が経ち、今回6人いるエポニーヌとコゼットの中では最年長だ。「もう妹みたいには演じられない(笑)。自分で積み重ねてきたものや、新たなエポニーヌたちに気付かされることもたくさんあると思うのでワクワクしています」。改めて、本作の魅力とは?「ジャン・バルジャン、ジャベールなど誰の視点で観るかで感想も変わりますし、複数キャストによる個性の変化も感じられる。その中に愛や許し、いろんなメッセージがあるので。歴史あるミュージカルで明日への活力を養っていただければと思います」。公演は4月15日(月)よりプレビュー公演の後、4月19日(金)に東京・帝国劇場で開幕。6月に愛知・御園座、7月に大阪・梅田芸術劇場メインホール、7月末から8月に福岡・博多座、9月に北海道・札幌文化芸術劇場hitaruで上演される。大阪公演のチケットは3月23日(土)一般発売開始。3月6日(水)10:00より先行先着プリセール実施。取材・文:石橋法子
2019年03月06日ロンドンを舞台に、まっすぐな男性ふたりの恋の行方は!? 林翔太(ジャニーズJr.)と松岡充が“愛”をめぐるミュージカル『ソーホー・シンダーズ』が3月9日(土)から21日(木・祝)まで、東京・よみうり大手町ホールで上演される。その後大阪、金沢、愛知、神奈川をめぐる予定だ。【チケット情報はこちら】演出家の元吉庸泰は、松岡演じるジェイムズを「充さんらしいジェイムズがナチュラルにできあがってきてますね」と全肯定する。主人公ロビー役の林については、「すごくいいキャスティングです。29歳にもなってこんなに純粋だなんて」と、まっすぐにジェイムズを想うロビーにぴったりの配役だと太鼓判をおす。男性ふたりの恋物語。「この作品を上演するのに、LGBTについて、表現活動をしていく者が避けてしまうと、デコレーションケーキの表面だけを飾り付けているだけになってしまう」と松岡は誠実に作品に向き合う。「性別も年齢も国籍も階級も、全部を越えて、人が人を愛することはすごく尊く、純粋で。相手への思いやりが自分に返ってきて、元気になれたり。そんな相互関係が築けることが人間として素晴らしい事なのでは、というのもテーマなんじゃないかな」今作は、明るくハッピーだ。しかしそこにある社会問題はLGBTだけではない。演出の元吉は、主人公ロビーについてこう説明する。「ストリートに住んでいるロビーは、被差別地域の人達。それがわからないと、お客さんは“なぜロビーは欲しいものをハッキリと言うのか”が理解できなくなってしまう。シンプルな芯の上にたくさんのものがくっついている作品なので、かなりセンシティブに創っていかないと」と強い意志を、柔らかく語った。ロビーとジェイムズの愛。そして、性別と階級の溝。それらをきちんと描くには丁寧な役づくりが重要だ。稽古場では、俳優と相談しながら作っていく元吉は「充さんとの現場はすごく楽しい!」と言う。「「こういうのどう?」ってジャストアイデアを出してくださるんです。やっぱり見せる事に関して超一流ですよね。毎回ハッとさせられます。刺激的な稽古場です」。松岡も「(アイデアを出すと)元吉さんは「もしかしたらそこにカケラがあるかも」と考えてくれる」と信頼を寄せている。情熱的な楽曲に導かれ、登場人物たちがそれぞれの信念を胸にまっすぐ生きようとする。松岡の演じるジェイムズもまた『誠実であること』をなにより求めている。「誰の生き方も真理だし、答えがない。だからこそ、切ない。こんなに登場人物が少ないのに、かなりの確率で誰かに共感できる作品だと思います」チケットは現在発売中。取材・文河野桃子
2019年03月05日屋良朝幸主演のミュージカル『Red Hot and COLE』が3月1日(金)に開幕する。それに先がけてフォトコール(報道向け撮影会)と囲み取材が行われ、取材には屋良と彩吹真央、鈴木壮麻が応じた。【チケット情報はこちら】本作は、アメリカのポピュラー音楽史に名を遺すソングライターとその名曲を紹介する「ブロードウェイ・ショウケース」シリーズの第3弾。作詞作曲家コール・ポーター(1891~1964年)の人生を描く。屋良がコールを演じるほか、彩吹、鈴木をはじめ矢田悠祐や吉沢梨絵らが、コールが人生で出会うさまざまな人物をそれぞれ複数役演じる。演出は小林香。フォトコールでは、コールの伝記映画のタイトルにもなった楽曲『Night and Day』や、弾き語りでみせる『I’m a Gigolo』、本作のタイトルにも通じる『Ridin’High & Red, Hot and Blue(Medley)』を披露。屋良のソロ歌唱や、無音の中でのコンテンポラリーダンス、吉沢との美しいデュエット、矢田と木内との息の合ったダンスなど、さまざまな歌声、ダンス、表情を見せた。囲み取材で屋良は「コール・ポーターが作る音楽は、僕のなかではすごく難しいメロディで。稽古では、彼の内面が歌詞やメロディになっているんだということを自分の中で落として、掴んでいきました。悩んだりもしましたが、先ほど皆さんの前でお見せした時に開いたものが自分の中であって。初日が楽しみになりました」と明かす。そんな屋良を鈴木は「ともくん(屋良)のパフォーマンスを袖で見ていて、またすごいところにいったぞと。何かクリエイティブなところにシフトアップした」、彩吹も「屋良っちのダンスシーンで1段も2段も上がっていることを感じることができたので、初日、大丈夫だ!と思いました」と絶賛した。彩吹が「私はこの稽古中に“きっとコール・ポーターはこんな人だったんだ”と感じました。そのくらい屋良っちはコールとして生きてる。だから私たちも役作りをしやすかった」、鈴木が「コール・ポーターの半生と、屋良朝幸がこの世界に足を踏み込んで今までの時間にオーバーラップする瞬間がたくさんあるんですよ。これはコール・ポーターなの?屋良朝幸なの?どっちなの? というキワキワなところがあって、彼の赤裸々なところが見えてくる。そこがサスペンスで、見ていてドキドキします」と語るコールの姿をぜひ劇場で確かめてほしい。屋良が「ダンスがすごい!」とイチオシし、そこも楽しみにしたい公演は3月17日(日)まで東京・博品館劇場にて上演後、大阪、静岡、愛知を巡演。取材・文:中川實穗
2019年03月01日皆川博子作『二人阿国』を原作とした明治座『ミュージカル ふたり阿国』が3月29日(金)に開幕する。その製作発表が行われ、主演の北翔海莉、峯岸みなみ、玉城裕規、坂元健児、コング桑田、モト冬樹、細貝圭、雅原慶、伊藤裕一、市瀬秀和、中村誠治郎、演出の田尾下哲、脚本の中屋敷法仁が登壇した。【チケット情報はこちら】会見は、会場に集まった30人のオーディエンスからの質問コーナーからスタート。戦乱が絶えない時代に同じ芸の道を志しながら別々の生き方を歩む阿国(北翔)とお丹(峯岸)の生き様を描く本作だが、北翔は自身の役について「阿国は何に対してもブレない。そこは憧れでもあるので、この作品をやることで自分自身がしっかり学べたら」と語り、“究極のエンターテイナー”と言われる役どころについては「台詞が非常に少なくて、そのぶん一言一言に重みがある。天からのメッセンジャーとして時代と一座を動かしていかなければいけない、責任のある台詞が詰まっていることに大変さを感じました」と明かした。お丹という役について峯岸は「自分の気持ちに正直に真っ直ぐに進んでいく姿がカッコいい」と印象を語り、「一幕ではまだまだ幼いお丹ですが、二幕では月日が経ち芸も変わってくるので、その成長を体現するのは難しそうだなと思っています」と意気込んだ演出の見どころを問われた田尾下は「大きな階段が回って姿を変えていきます。巨大な橋が割れる大仕掛けもあります。人間の体の美しさと力強さを観ていただければ」と解説。原作の『二人阿国』というタイトルを今回『ふたり阿国』とひらがなにした理由を尋ねられた中屋敷は「田尾下さんもおっしゃったように、原作から感じられる“人間の力強さ”を表現したかった。そこにあるしなやかさ、あでやかさ、軽やかさのようなものを、ひらがな3文字の流れるような曲線に込めました」と話した。さらにこの日は、玉城・細貝・中村・市瀬による立ち回りや、北翔・峯岸・坂元・コング・モト冬樹・雅原による美しい歌唱披露も。迫力たっぷりの立ち回りは今回だけのものだといい、観客にとって特別な時間となった。最後に北翔は「出演者43名一丸となり、“平成最後”というよりも“次の時代に向けて”エネルギーを爆発させていけたらと思っております。私たちの仕事は生きる喜びを与えることです。生き生きとエネルギッシュに舞台を務めたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします!」と呼びかけ、開幕への期待が高まる会見となった。公演は3月29日(金)から4月15日(月)まで東京・明治座にて上演。取材・文:中川實穗
2019年03月01日1972年に鬼才ボブ・フォッシーの演出・振付により初演され、2013年にリバイバルされたダイアン・パウルス演出版がトニー賞4部門に輝いた名作ブロードウェイミュージカル、『ピピン』。フォッシー・スタイルを踏襲しながら、新たにサーカスアクロバットを取り入れた大胆な演出が高い評価を受けた本作の、待望の日本語版が今年ついにお目見えする。2月27日、主要キャスト4名が舞台衣裳姿で顔をそろえる製作発表が開催され、それぞれに“この役を日本でやれるのはこの人しかいない”と思わせるに十分なパフォーマンスと意気込みを見せた。【チケット情報はこちら】楽曲披露から始まった会見で、まず度肝を抜いたのがリーディング・プレイヤー(狂言廻し)役のクリスタル・ケイ。客席通路から悠然と姿を現し、劇中のオープニングナンバーでもある《Magic To Do》を、その唯一無二の存在感と歌声で堂々と歌い上げた。ニューヨーク留学中だった2014年にブロードウェイ公演を観ていると言い、「まさか5年後に自分がやることになるとは。本当にご縁を感じる作品」と感慨深げ。自身初となるミュージカル出演に、「20年のキャリアのなかで一番チャレンジング」と気を引き締めた。続いて披露された《No Time At All》は、悩める主人公ピピンに祖母のバーサが“短い人生楽しまないと損”と明るく教え諭す曲。Wキャストのふたりとも、「自分の気持ちそのままでとても歌いやすいです」(中尾ミエ)、「どうしたらいいか分からないくらいぴったり」(前田美波里)と既に大いに共感している様子だ。本番では空中ブランコでアクロバットをしながら(!)歌うことになるため、稽古開始までに懸垂を10回できるようになっておくようにとのお達しがあったそうで、両名とも筋トレを始めているとのこと。見事な二の腕にその成果が見て取れ、本番への期待が高まる。そして最後を飾ったのは、ピピン役の城田優による《Corner of the Sky》。日本語詞での披露はこの日が初だが、コンサートなどで度々歌ってきた思い入れのある楽曲とあって、熱のこもった歌唱となった。城田もまたブロードウェイ公演を観ており、「すごーい!と子どもみたいな気持ちになれた作品。日本の皆さんにもそう感じてもらいたい」とコメント。「日本のミュージカルシーンはブロードウェイに比べたらまだまだ下」と冷静に見極めた上で口にした、「でも臆していたら挑めない。日本のほうが良かったと思われるよう努力したい」という意気込みに静かな決意が宿っていた。公演は6月10日(月)より東京・東急シアターオーブにて。7月名古屋・大阪・静岡公演あり。取材・文:町田麻子
2019年03月01日日本初演から30余年を迎えたミュージカルの金字塔『レ・ミゼラブル』が全国5都市で上演される。動乱期の19世紀フランスを舞台に、19年間投獄されていたジャン・バルジャンが仮出獄となり、真っ当な人間になろうと再生する姿を軸に描かれる。歴代最年少の32歳で演じて以来、今回が5度目のジャン・バルジャン役となる吉原光夫。「またあの世界を見たくなる」と心底惚れ込む作品の魅力について取材会で語った。ミュージカル「レ・ミゼラブル」チケット情報2年ぶり5度目のバルジャン役に吉原は「不器用なので、本当にたくさんの時間を得ないと成長できない」と、これまでの足跡を振り返る。初挑戦した2011年は「レジェンドと呼ばれる方々と同じ楽屋で過ごし、毎日を生きることに必死過ぎて記憶にない」と笑う。続く2013年はジャベールとの二役を演じたが、休演者が出たため、プレビュー公演から約1ヵ月半の間、大半の公演にバルジャン役で出演。「自分が倒れたら公演がクローズするという状況で、ただ役を務めることに集中した」。次こそそれぞれの役を深めたいと挑んだ2015年。「二兎を追う者は一兎をも得ず状態になるぞ、どうすんだ光夫!と自問自答の末、追い詰められている間に終わっていました(笑)」。そして前回の2017年公演で「やっと地に足付き始めた気がします」。それまで聖人的な印象で描かれてきたバルジャンは2013年から「泥にまみれた“犬”が正しい人になろうとする」新演出に。「当時演出のジョン・ケアードに言われた、常に第六感で神を感じているという点と、(彼を追う警部)ジャベールに銃口を向ける時は『本気で殺そうと思ってください』と言われたことは今も心に残っている」と言う。人間は常にやるかやらないかの選択に迫られ、生きている。「自分は真っ当に生きようとしてきたけど、これまでの選択に間違いはなかったのか。神よ!と、彼は最後まで苦悩し迷っている」。完成形を見せたくないとの思いもあり、「何度演じてもバルジャンはこうだと定まらない。常に光と影がうねっているイメージです」。大きな物語のうねりの中でさまざまな表情を求められる役者たち。「音程ひとつにも役の光と影の心情が完璧に表現されている」シェーンベルクの音楽など魅力は尽きないが、最大の見どころはバルジャンの不完全さにあると見る。「誰もがバルジャンの人生を疑似体験しているんじゃないかな。彼の人生に自分の人生を照らし合わせることで、自分自身も正しくあろうとか、変わろうとする。自分もそこに惹かれるし、この作品が長く愛される理由だと思います」。公演は4月15日(月)よりプレビュー公演の後、4月19日(金)に東京・帝国劇場で開幕。6月に愛知・御園座、7月に大阪・梅田芸術劇場メインホール、7月末から8月に福岡・博多座、9月に北海道・札幌文化芸術劇場hitaruで上演される。大阪公演のチケットは3月23日(土)一般発売開始。2月24日(日)から3月4日(月)までプレリザーブ受付。取材・文:石橋法子
2019年02月22日5月11日(土)より東京・ヒューリックホール東京にて上演される舞台「DYNAMIC CHORD the STAGE」。同作のティザービジュアルと追加出演者が発表された。ビジュアルは、KYOHSO、Liar-S、[rêve parfait]、apple-polisherのヴォーカリストを集合させた、各バンドの個性が光るポップな1枚。また、発表された追加キャストは、4バンドが所属するダイナミックコード社社長・伊澄久臣役に塩川渉、マネージャー・加賀真実役に松村泰一郎、舞台オリジナルの登場人物として元バンドマン・聖矢役に笹翼の3名。「DYNAMIC CHORD the STAGE」はバンドをテーマにした女性向けゲームシリーズの初舞台化作品。音楽事務所兼レコード制作会社である「DYNAMIC CHORD」に所属している4つのバンドにスポットを当て、音楽の楽しさや、バンドマンとの甘く激しい恋物語を描く。公演は5月11日(土)から15日(水)まで、東京・ヒューリックホール東京にて上演。3月1日(金)より、チケットぴあにてチケット受付開始予定。■『DYNAMIC CHORD the STAGE』日程:5月11日(土)~15日(水)会場:ヒューリックホール東京(東京都)
2019年02月21日1974年、伝説の幕が開いた――。初演から今年で45周年を迎える宝塚歌劇団の代表作『ベルサイユのばら』。2月16日には、大阪で記念公演『ベルサイユのばら45~45年の軌跡、そして未来へ~』が開幕した。初代オスカル役の榛名由梨から伝統を受け継ぐ朝海ひかるら平成のオスカル役まで、歴代レジェンドが大集結。一部日替わりで配役を替えながら、歌やトーク、本番さながらの装置やコスチューム姿で名場面を披露する。宝塚ファンはもちろん初見の人も虜にさせる、夢のような全2幕、約2時間半のステージだ。「ベルサイユのばら45」チケット情報幕開けは『序曲~ごらんなさい、ごらんなさい』。まるで砂糖菓子でできたフランス人形みたいに甘くロマンチックな宮廷の小公子、小公女たちがシャンシャン片手に歌い踊る。会場を染めるピンク色の照明、電飾がきらめく華やかな装置やタイトルロゴ、さらにターンのたびに跳ねるフリフリのドレスが、会場に詰めかけた“乙女たち”の心をも弾ませる。続いて、専科より現役生の華形ひかるが、緒月遠麻らOGたちと『心の白薔薇』『愛あればこそ』の2曲を披露。愛は甘く苦しい。でも、愛あればこその人生なんだ!と歌詞を噛み締め、最後は全員で「愛、愛、愛」の大合唱。冒頭から溢れ出す愛の洪水に、盛り上がらずにはいられない。司会は専科の汝鳥伶。自身も初演の舞台に立った汝鳥が、作品の軌跡を語りながら場をつなぐ。映像資料も用意され、歴代の公演ポスターや当時の公演の様子がダイジェストで映し出される。初々しい麻実れいのアンドレ、魅惑的な鳳蘭のフェルゼン、美貌の涼風真世オスカル…。当時の熱狂が画面越しにもありありと伝わる。とりわけ、涙ながらに激情をほとばしらせる大浦みずきのフェルゼンには熱く胸打たれた。この日、70年代に活躍したレジェンドコーナーには初風諄、榛名由梨、汀夏子が登場。フィナーレではエトワールも務めた初風が初演の映像と寸分違わぬ高音を響かせると、榛名、汀も味のある佇まいで名曲を歌い継ぐ。ひとりセンターに立ち大劇場を埋めるオーラは健在だ。日向薫、紫苑ゆう、麻路さきの1989年星組トリオはトークコーナーも担当。今だから話せるマル秘稽古場エピソードや、爆笑ハプニング談の応酬が止まらない。また、稔幸、和央ようから平成組による名場面の再演は鳥肌の連続。号泣必至のバスティーユ陥落からマリー・アントワネットの処刑に至るまで、観たい場面、聞きたい名台詞を全14場、18曲に網羅する。フィナーレには『薔薇のタンゴ』『ボレロ』ほか多彩なショーナンバーも披露され、終演後は本公演を丸々一本観たような充足感に満たされる。「観て良かった」「当時の記憶が蘇った」など口々に感想を述べ合う観客たちの姿も微笑ましく、印象に残った。大阪公演は2月24日(日)まで梅田芸術劇場メインホールで上演中。20日(水)18時公演は、ぴあ半館貸切公演。チケット発売中。取材・文:石橋法子(2月17日観劇)
2019年02月18日宝塚歌劇団花組の祝祭喜歌劇『CASANOVA』が2月8日、兵庫・宝塚大劇場で幕を開けた。宝塚歌劇花組『CASANOVA』チケット情報18世紀ヴェネツィアに生まれた稀代のプレイボーイ・カサノヴァの愛と夢に彩られた冒険譚を、一本物のスペクタクル・ミュージカルとして、オリジナル・ストーリーで綴る本作。『太陽王』『1789 -バスティーユの恋人たち-』『アーサー王伝説』などを手掛けたフランスの作曲家、ドーヴ・アチアによるロックをベースにした現代的かつメロディアスな楽曲たちが作品を色鮮やかに彩っている。衣装や舞台美術も華やかで、幕開きと共に一気にその世界観に惹き込まれる。舞台はかのモーツァルトも生きた時代、ロココ文化華やかなりし18世紀。星の数ほど浮名を流してきたカサノヴァは、魔術で人をあざむき、女性をたぶらかしたとしてヴェネツィア共和国国事犯審問所に捕えられてしまう。しかし鉛屋根の監獄で同じく投獄されていたバルビ神父と手を組み、脱獄を果たす。カーニヴァルで賑わうヴェネツィアで祭の騒ぎに乗じて逃亡しようとする彼に、人生を変えるほどの恋と出会うとのお告げがあり…。カサノヴァを演じるのは、トップスター・明日海りお。幕開きこそ異端審問にかけられて不穏な空気が流れるが、脱獄してひとたび街に現れれば世の女性たちが群がり、追いかけられ…と、すさまじいモテっぷりだ。しかし本作では、カサノヴァはただの遊び人ではなく、「愛し合う自由が罪なら、生きていく意味がどこにある」と、ただ自分の愛に素直な男として描かれている。明日海はそんなカサノヴァを、時には男らしく、時には色気たっぷりにと、さまざまな表情で魅せる。カサノヴァの“運命の人”ベアトリーチェを演じるのは、トップ娘役・仙名彩世(せんなあやせ)。修道院で学び、正義感の強い彼女は、女性たちを惑わすカサノヴァに敵対心を抱いている。そんなベアトリーチェが、カサノヴァとは知らずにカサノヴァと出会い、惹かれていく…。本作が退団公演であり、この役が集大成となる仙名は、自分の意思を強く持った芯のある女性を、真っ直ぐに演じている。また、カサノヴァを捕えようと追い続ける審問官コンデュルメル役の柚香光(ゆずかれい)をはじめ、黒魔術に傾倒しているその妻役の鳳月杏(ほうづきあん)、カサノヴァと逃げ続けるバルビ神父役の水美舞斗(みなみまいと)、ベアトリーチェの婚約者で、コンデュルメルにうまく利用されるコンスタンティーノ役の瀬戸かずやと、それぞれに繊細に役を作り込み、個性豊かなキャラクターたちを表現している。華やかなビジュアル、ポップな楽曲、緩急つけたストーリー展開、そして、花組の総合力に魅せられる本公演は3月11日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、東京公演は3月29日(金)から4月28日(日)まで東京宝塚劇場にて上演。東京公演のチケットは2月24日(日)発売開始。取材・文:黒石悦子
2019年02月15日ミュージカル『最終陳述 それでも地球は回る』が本日、2月14日(木)に開幕する。ガリレオ・ガリレイの人生を軸に、男優ふたりのみで贈るミュージカル。韓国で初演され、日本にはこれが初上陸となる。チケット情報はこちら天動説が信じられている時代に地動説を唱えた偉大な科学者ガリレオ・ガリレイと、今なお生み出した作品が世界中で上演され続けている偉大な劇作家ウィリアム・シェイクスピア。この同じ1564年生まれの偉人ふたりが、もし天国で出会ったら……? ファンタジックな設定の中に、自分の信念を貫くこと、夢を追いかけることの難しさや尊さを描く物語。出演は、ガリレオ・ガリレイ役にLE VELVETSの佐賀龍彦、伊勢大貴、山田元(トリプルキャスト)、シェイクスピアをはじめとするその他の登場人物をすべて演じる“マルチマン”に野島直人、加藤潤一(ダブルキャスト)。個性豊かな俳優たちが100分間出ずっぱりで、ノンストップミュージカルを熱演する。天動説と地動説、宗教裁判……と、一見とっつきにくそうな題材をモチーフにしながらも、時代も場所も飛び越えたガリレオの“天国での旅路”というストーリーは、コミカルで笑いもたくさん。プトレマイオスやコペルニクスといったガリレオの理論に接点のある歴史上の人物から、フレディ・マーキュリーといった意外なキャラクターまで登場するにぎやかさ。奇想天外な物語にふさわしく、音楽もポップで楽しい。配役はトリプルキャスト、ダブルキャストのため、組み合わせの妙も楽しめそう。2月13日の舞台稽古の感触では、ガリレオ佐賀×マルチマン加藤の組み合わせは俳優個人の愛らしさが際立ち、ガリレオ伊勢×マルチマン加藤の組み合わせはコメディセンスが抜群で、ガリレオ山田×マルチマン野島の組み合わせではシリアスな面も捉えた物語の芯が伝わる……といったところか。他の組み合わせや、実際に観客が入ってどう変化するのかも、楽しみにしたい。公演は2月14日(木)から3月17日(日)まで、東京・浅草九劇にて。チケットは発売中。※写真は舞台稽古のものであり、ヘアメイクなど本番と一部異なります。
2019年02月14日スチュアート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)によるコーチ(COACH)が、2月12日(日本時間2月13日未明)にニューヨークでフォール 2019 コレクションショーを開催した。解体と再構築をテーマに掲げたコーチの今シーズン。メゾンを象徴するパターンや、職人の手仕事によって生み出されるアイコニックな要素は、サイケデリックなムードを含みながら、新しいものへと進化を遂げた。ショーにはゲストとして、女優でコーチ フレグランスの顔であるクロエ・グレース・モレッツ(Chloe Grace Moretz)や、俳優兼プロデューサーでコーチのメンズの顔であるマイケル・B・ ジョーダン(Michael B. Jordan)、日本からはモデルのKōki,が初のニューヨークファッションウィークに参加。また、AMIAYAなど多くのインフルエンサーも世界から駆けつけた。
2019年02月14日ミュージカル界のヒットメーカー小池修一郎が手掛ける作品群の中でも、若手の登竜門的印象の強いミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が新キャストを交え、2年ぶりに全国3都市で上演される。前回同様、古川雄大とのダブルキャストで主演を務めるのが大野拓朗だ。大野は2011年の日本オリジナル版初演に衝撃を受け、そのまま3回も観劇。以来8年間、公演CDを自発的に聴き込み、ボイストレーニングを続けてきた。「それまで全曲好きという作品に出会ったことがなかったので初演を観たときは衝撃でした。例えば人気の高い『世界の王』はロックテイスト、結婚式で歌う『エメ』はゴスペル調、他にもシャンソン風の曲もあります。8年間聴き続けていても飽きない、老若男女に染み入る曲ばかり。世界一好きな作品です」。ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」チケット情報念願の初出演を飾った前回は、ロミオが登場する場面で拍手が起こり、連日立ち見席が出るなど盛況を博した。ただ、5年ぶり2度目のミュージカル出演でもあったため「表現としてはまだまだ」との思いも残った。その後は歌稽古を継続し、NHK連続テレビ小説『わろてんか』、大河ドラマ『西郷どん』など数々の映像作品でも自力を養ってきた。「鈴木亮平さんをはじめ諸先輩方の芝居に間近で触れ、いろいろとお話させていただく中で人間としても成長できた実感がある。最近、色っぽいと言われることもあり、今まで自分の辞書になかった言葉が加筆されたかなと。前回より余裕を持って取り組めるので、ダイナミックかつ繊細なロミオをお見せできるはず」と自信を覗かせる。ジュリエット役には木下晴香、生田絵梨花とのトリプルキャストで『わろてんか』のヒロイン葵わかなが初舞台を飾る。「ドラマでの葵さんはお母ちゃん的存在だったので、今回恋人役というのは複雑です(笑)。でも、彼女もミュージカルが大好きですし、精神的にも強く器用な方なので、歌稽古も回を追うごとにめきめき上達されています。また先日木下さんと歌合わせをしたときには、互いにこの2年での変化を実感したので、生田さん共々、どんな仕上がりになるのか楽しみです」。現場に入ると「すごく幸せな感覚になる」のも本作ならでは。「なぜかカンパニーへの愛が溢れ出し、自分は天使なんじゃないかと思うほど(笑)。きっとロミオがそういう人だったんだと思う」。今回は溢れる愛を客席にまで届けるつもりだ。「じつは前回、怖くて客席が見られなかったんですが、今回は観客と視線を合わせてひとりひとりを虜にしていこうかなと計画中。でもこの作戦、先に言わない方が良かったかな(笑)」。公演は2月23日(土)から3月10日(日)まで東京国際フォーラム ホールC、3月22日(金)から24日(日)まで愛知・刈谷市総合文化センター、3月30日(土)から4月14日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。4月12日(金)追加公演のチケットが3月16日(土)一般発売。取材・文:石橋法子
2019年02月08日18世紀ヴェネツィアに生まれた稀代のプレイボーイ、ジャコモ・カサノヴァ。彼が辿った数奇な人生をもとに描いた冒険譚が、一本物のオリジナル・ミュージカル『CASANOVA』として、花組・明日海りお主演で上演される。宝塚歌劇花組『CASANOVA』チケット情報詩人、作家、聖職者、詐欺師、錬金術師、そしてスパイ…と、さまざまな貌を持つカサノヴァ。数々の女性と浮名を流し、ヴェネツィアの風紀を乱した罪で「鉛屋根の監獄」に投獄されるほどの“モテ男”だ。舞台上では「どの場面でも、たくさんの女の子たちが追いかけてくるんです(笑)」と笑顔を見せる明日海。男役冥利につきる役だと語る。「花組自慢の個性あふれる娘役たちが情熱的に歌い踊って、絡み付いてくるナンバーがあるんです。男役をやってきて本当に良かったなと思います(笑)。カサノヴァは、尋問される場面ではダーティヒーローのようで、女性に囲まれているときは遊び人、バルビ神父と逃げ回っているときは兄貴分と、いろんな見え方がする人。その中で、ぽろっと彼の本音が出る場面があるので、そこでお客様の心が掴めたらいいなと思います」。これまでにも映画などのさまざまな作品で題材にされてきたカサノヴァ。本作では『太陽王』『1789-バスティーユの恋人たち-』『アーサー王伝説』などの楽曲を手がけたドーヴ・アチアを迎え、“祝祭喜歌劇”として華やかで楽しく、ちょっぴりコミカルに描かれる。「この作品では、女性との関係が入り乱れるラブストーリーというよりも、牢獄に送られてしまっても“こんなところで人生を無駄に過ごしていられない!”と脱獄して、また懲りずに新しい恋に向かっていくような、とてもアグレッシブでどこかピュアさもある人物として描かれています。アチアさんの曲はロックでありながらちょっと懐かしくて粋で、お客様にもきっと覚えていただけるようなメロディ。特に前半はミュージカルナンバーが続くので、楽しんでいただけると思います」。本作で退団するトップ娘役・仙名彩世が演じるのは、修道院での行儀見習いを終えたばかりのヴェネツィア総督の姪、ベアトリーチェ。カサノヴァの運命を大きく揺り動かす女性だ。「(仙名は)最近は大人っぽい、しっとりとした芯のある女性の役が多かったように思いますが、今回は思ったことをすぐに口に出したりするような、ちょっと強気な女性。カサノヴァが初めて出会うタイプで、ベアトリーチェとの恋がどう展開していくかというのも見どころです」。作・演出を手がける生田大和の大劇場一本物デビュー作。明日海は「私たちが成功させたい」と力を込める。「組のみんなにとてもカラーの強い、個性のある役を当ててくださっています。本当に多彩なキャラクターが登場しますので、花組ファンの方にはもちろん、宝塚歌劇を楽しみに来てくださったお客様に満足していただける作品にしたいです」。公演は2月8日(金)から3月11日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、3月29日(金)から4月28日(日)まで東京宝塚劇場にて上演。東京公演のチケットは2月24日(日)発売開始。取材・文:黒石悦子
2019年02月04日アフリカのサバンナを舞台に、王の子として生まれたライオン・シンバの成長を通し、“生命の連環”という深遠なテーマを描き出すミュージカル『ライオンキング』。観客動員数1,195万人を突破。東京では1998年の初演以来20年以上の無期限ロングラン上演中という、まさに「ミュージカルの王者」と称するに相応しい名作が、約10年ぶりに福岡で上演される。久々の福岡公演を前に、シンバ役キャストのひとり・ 永田俊樹、メスライオンのナラ役キャストのひとり・町真理子が意気込みと作品の魅力を語った。【チケット情報はこちら】初めて本作を観劇した時、「シンバを演じたい!」と思ったと語るのは永田。「まだその時はミュージカルに出演もしたことなかったのに(笑)。シンバの生き方に共感したのかな。それから劇団四季に入団し、10年間ずっとシンバを目指して2年前にやっと。その間、筋トレも頑張ってました(笑)。とにかく元気さを重視して演じていますが、今もたまに“え?僕がシンバ?”と夢のような気持ちになりますね」と笑う。対して町はアンサンブルで出演が決定した後に初観劇。あまりにも凄い舞台に圧倒され、「これは無理、できない」という第1印象だったと苦笑する。しかしアンサンブルで出演するごとにナラへの憧れが強まり、オーディションに合格。「気品があって気高くて賢くて。本当に素敵ですよね。幼い頃から王妃になると約束されてきた女性ならではの、ロイヤルファミリーのような立ち居振る舞いは意識しています」とにかく見どころが多い本作だが、やはり見逃して欲しくないのは「一幕冒頭の『サークル・オブ・ライフ』の場面」だと口を揃えるふたり。劇場を瞬く間にサバンナへと変貌させるその手法は確かに一見の価値あり。他にも永田は「ティモン(ミーアキャット)とプンバァ(イボイノシシ)とシンバの友情が大好き。シンバにとっては命の恩人であり家族のようなもの。最後の戴冠式での彼らの嬉しそうな誇らしそうな佇まいもすごく好き」。そして町は「ラフィキ(ヒヒの呪術師)の“過去とは痛いものだ。だが、道はふたつしかない、過去から逃げるか、学ぶか”の台詞に毎回感動してます!」と、それぞれ細かい推しポイントも飛び出た。「新たな感動と驚きをお届けできるよう、日々稽古に励んでいます!観たことある方にも無い方にも楽しんで頂けると思いますので、ぜひ劇場に足をお運びください」(永田)「私たちの子ども時代を演じてくれるヤング シンバ、ヤング ナラはオーディションで選ばれた地元の子どもたちが出演します。子どもらしくキラキラ、ピュアに頑張ってくれるその子達からバトンを受け取り、私たちもさらに輝かなければ!と思ってます。劇場でお待ちしております」(町)と、それぞれ意気込みを語って締めくくった。『ライオンキング』福岡公演は3月24日(日)より福岡・キャナルシティ劇場で上演。チケットは1月26日(土)発売。そのほか、東京公演も発売中。
2019年01月25日ミュージカル『レ・ミゼラブル』の製作発表会見が1月23日に開催された。全世界での観客総数は7千万人を突破した、世界の演劇史を代表する作品のひとつ。日本でも30年以上の長きにわたって上演を重ねている。この日は出演者72名が登壇する華やかな会見となった。【チケット情報はこちら】ヴィクトル・ユゴーの同名小説を原作に、19世紀初頭のフランスの動乱期に生きる人々の姿を描く群像劇。パンを盗んだことから19年投獄されたのち、名を変えながらも新しい人生をまっとうに生きていこうとする主人公ジャン・バルジャン、彼を追う刑事ジャベールを中心に、様々な人々の人生が描かれていく。会見ではキャストが思い思いに、役への意気込みや作品への愛情を語った。22年間マダム・テナルディエ役として出演している森公美子は「この作品はオーディションですので、次は受かる自信がない。今年が最後じゃないかなと思いながら、舞台を務めさせていただきます」とコメント。また『レ・ミゼラブル』は同じ俳優が年を重ね、別の役で出演することも多い作品。これまで若き革命家・アンジョルラスを演じていた上原理生は今回、ジャベール役として登板。「まったく違う『レ・ミゼラブル』の世界が見れるのかなとワクワクしています」と話す。1987年の日本初演時はバルジャンの養女コゼットを、その後その母ファンテーヌを、そして前回からマダム・テナルディエを演じている鈴木ほのかは「今年は元号も変わります。昭和でコゼット、平成でファンテーヌ、新元号でマダム・テナルディエ、ますます頑張ってまいります!」と力強く意気込んだ。ジャン・バルジャン役は福井晶一、吉原光夫、佐藤隆紀のトリプルキャスト。初参加の佐藤が「この役をやるには、まだ自分は精神面も技術面も足りない部分がある。いいステージをお届けできるよう、日々精進していきたい」と気を引き締め、前回より続投の吉原と福井はそれぞれ「自分に向き合って精進して、楽しみながら自分を高めていく作品」(吉原)、「本当にバラエティに富んだ素晴らしいキャストが集まって、どんな化学反応が起こるのか僕も楽しみ」と話した。会見では劇中歌7曲の披露も。テナルディエ役として初出演するトレンディエンジェルの斎藤司は、マダム・テナルディエ役の朴路美とともに『宿屋の主人の歌』を軽快に歌った。斎藤は「今まで生きてきた中で一番というくらい、のどの調子が悪かった(笑)。本番はさらに素晴らしいものをお見せできると思う」とコメントし会場を沸かせた。ジャベール役に初挑戦する伊礼彼方は名曲『スターズ』を披露、「自分で望んでオーディションを受けたこの役ですが、いざ歌ってみるととても重たいものがあった。先輩たちが30年築き上げた歴史に、新たな息吹を吹かせたい」と話した。東京公演は4月15日(月)から5月28日(火)まで帝国劇場にて上演。その後6月に愛知・御園座、7月に大阪・梅田芸術劇場メインホール、7月末~8月に福岡・博多座、9月に北海道・札幌文化芸術劇場hitaruでも上演される。
2019年01月25日浜中文一主演、ウォーリー木下演出の舞台「スケリグ」が東京・DDD AOYAMA CROSS THEATERにて上演中だ。【チケット情報はこちら】脚本は、イギリスの作家デイヴィッド・アーモンドの児童書『スケリグ(Skellig)』(1998年/邦題『肩胛骨(けんこうこつ)は翼のなごり』)をディヴィッド自身が戯曲化したもの。本作では翻訳を浦辺千鶴、演出をウォーリー木下が手掛ける。出演は浜中、末澤誠也(関西ジャニーズJr.)、渡辺菜花、奥村佳恵、工藤広夢、金子昇、瀬戸カトリーヌ。古い家に引っ越してきた少年マイケル(末澤)は、崩れかけのガレージで“スケリグ”(浜中)と出会う。埃と虫の死骸まみれの服に捻じ曲がった身体…しかし彼の背中に奇妙なものがあることに気付く。両親が重い病気の赤ちゃんである妹にかかりきりのマイケルは、隣家の少女ミナ(渡辺)と一緒にスケリグを助けようとするが――。児童書ならではともいえる幻想的で温かなストーリー。そこに、役者たちが奏でる音や、美しいプロジェクションマッピング、照明の当たり方で見え方が変わるセット、昔ながらの影絵、そして民族楽器を使った吉田能による生演奏など、ウォーリー木下らしいアナログとハイテクが融合した演出で観客をやさしく引き込んでいく。スケリグを演じる浜中は、何者なのか…例えば老いているのか若いのかすらわからない、そんな不思議な存在を好演。マイケルやミナと出会ってからの変化が鮮やかな印象を残す。また、開幕前の囲み取材で「しっかりお芝居するのが初めて」と話した末澤と、ミュージカル作品で活躍し「ストレートプレイは初めて」という渡辺によるマイケルとミナも、のびのびとした芝居で観客を結末まで連れていく。奥村、工藤、金子、瀬戸は実にさまざまな役を演じるほか、役でないときの佇まいも温かだ。ウォーリーが「チームワークが大事な芝居」と話した通り、末澤以外は次々と違う役を演じ、それ以外にもさまざまな音を鳴らしたり、声を揃えて台詞を言ったり、アフレコのように話したり、動物を動かしたり、7人の役者がほぼ出ずっぱりでその瞬間、瞬間をつくりあげていく。ファンタジーでありながら、“今ここで物語が生まれている”リアルさも堪能できる作品。ぜひ劇場で体感してほしい。東京公演は2月11日(月・祝)まで上演中。その後、2月14日(木)に大阪・松下IMPホール、2月16日(土)に愛知・一宮市尾西市民会館、2月19日(火)に石川・北國新聞赤羽ホール、2月23(土)・24日(日)に兵庫のルナ・ホール 大ホールにて巡演。取材・文:中川實穗
2019年01月21日劇団四季の最新ミュージカル『パリのアメリカ人』が1月20日、東京・東急シアターオーブで開幕した。チケット情報はこちらジーン・ケリーが主演し1952年にアカデミー賞を受賞したミュージカル映画『巴里のアメリカ人』が原作。バレエ版も良く知られるところだが、今回劇団四季が上演するのは、映画の内容をさらにふくらませた物語と、イマジネーションをかきたてるダンスによって2014年にパリで舞台化されたバージョン。翌2015年にはブロードウェイにも進出し、同年のトニー賞4部門を獲得した作品だ。物語は第二次世界大戦直後のパリを舞台に、ひとりの女性に恋をした3人の男たちの愛と友情と夢を描いていくもの。バレエをはじめとするダンスが大きなウェイトを占める作品で、恋の喜びなど、若者たちのフレッシュな感情が、時にセリフや歌以上に雄弁に、伸びやかなダンスで表現される。洗練された舞台美術も素晴らしく(『アラジン』『メリー・ポピンズ』等も手掛けたボブ・クローリーが担当)、どの瞬間を切り取っても、アート作品のようにスタイリッシュ。音楽は映画同様、“アメリカ音楽の魂”と称されるガーシュウィン兄弟によるもので、「アイ・ガット・リズム」「ス・ワンダフル」など耳馴染みのよいナンバーが次々と登場する。ダンス、音楽、美術、すべてが洗練され、かつ見事に融合したミュージカルだ。日本で上演されるミュージカルは比較的、ダンスより歌が重要なタイプが多い中、ここまで見応えのあるダンス・ミュージカルを上演できるのは、やはり地力のある劇団四季だからこそだろう。キャスト陣はメインキャストのみならずアンサンブルキャストに至るまで皆、丁寧でハイレベルなダンスで魅せている。初日前日の公開舞台稽古で主人公のジェリーを演じた酒井大は「これまでバレエダンサーとしてバレエ作品に出演してきましたが、今回この舞台に挑戦する機会をいただき、大変光栄です。クリストファー・ウィールドンさんが手掛ける振付は、これまで経験したことがないほど斬新であり、非常に難しいもの。この美しいダンスを通してジェリーという役、そしてこの作品の魅力を余すことなくお客さまにお届けできるよう、精一杯演じたい」とコメントを発表した。公演は同劇場にて、3月8日(金)まで上演。その後3月19日(火)からKAAT 神奈川芸術劇場 ホールでも上演される。
2019年01月21日