日韓で大ヒットした映画『サニー』がミュージカル『SUNNY』として生まれ変わる。「SWEET MEMORIES」、「ダンシング・ヒーロー」、「センチメンタルジャーニー」など、80年代のJ-POPが彩るこのミュージカルに出演する花總まりと瀬奈じゅんに話を聞いた。「いろんな分野の方が集まっているので、新しいミュージカル作品が生まれそうな予感がふつふつと湧いています。そんな作品に参加できること、作品ができあがっていく過程を体感できることがすごく楽しみ。変に気負うことなく、楽しく稽古して、本番もお客様の前に毎日楽しく立ちたいです」(花總)「今回は特に最初からこうしようと決めすぎてしまわず、周りの方たちと共鳴しながら作って、そこで生まれてくるものを大切にしたいと思います。それと、最初にこの作品に出演が決まって、花總さんとお電話で話したときに『私を楽しませてね』と言われたので、花總さんを楽しませるためにがんばります(笑)」(瀬奈)『SUNNY』は、高校の同級生が大人になって再会するというストーリー。花總と瀬奈はともに宝塚音楽学校で青春時代を過ごした仲でもある。「私がトップになって最初の公演である『Ernest in Love』という作品のお稽古中、隣でお稽古していた花總さんが満面の笑みで『おめでとう!』と言ってくれたのを覚えています。トップが気をつけたほうがいいこととか、心構えみたいなことを教えてくださいました」(瀬奈)「音楽学校時代は本科生と予科生という間柄だったけれど、宝塚に入ってからはやっぱり男役スターさんだなって印象でした。ついさっきも、前を歩いている姿をみて頼もしいなと思いました(笑)」(花總)花總が演じるのは専業主婦の奈美。瀬奈は独身で仕事に打ち込んでいたものの、病気になってしまう千夏役。「毎日を送るなかでふと、いまの自分の生活を客観的に見てしまう、自分を見つめ直してしまうという奈美のような方は、少なからずいらっしゃると思います。共感していただけるような演技ができたら」(花總)「余命宣告を受けてから悔いなく生きるってどんな感じだろう、と想像しますね。千夏は結婚もせず、子供もいない。その気持ちの持っていく場所が高校時代のグループ「SUNNY」なんだろうなと。そこを丁寧に演じていきたいと思います」(瀬奈)実際に10代をともに過ごした二人が演じる『SUNNY』。二人がデュエットするという『待つわ』をはじめとした懐かしい楽曲も、二人の現実に重なる女性同士の友情物語も楽しみだ。取材・文:釣木文恵
2023年04月03日個性豊かな七人のカリスマたちの共同生活を描いた舞台『カリスマ de ステージ』~ようこそ!カリスマハウスへ~が2023年3月30日(木)からMixalive TOKYO 6F Theater Mixaで開幕した。2021年10月から本格始動した『カリスマ』は『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』の開発・運営を手がけるEVIL LINE RECORDSと株式会社Dazedによる二次元キャラクタープロジェクト。「カリスマハウス」というシェアハウスを舞台に、個性豊かな七人のカリスマたちの共同生活を描いた音声ドラマを中心に展開している。本作は、その舞台版で、川尻恵太が脚本・演出を務め、舞台を中心に活躍中の若手俳優が出演している。初日を前に行われたゲネプロ(総通し舞台稽古)を観た。登場するのは「服従のカリスマ 本橋依央利」(持田悠生)、「自愛のカリスマ テラ」(丸山和志)、「秩序のカリスマ 草薙理解」(岩田知樹)、「反発のカリスマ 猿川慧」(寶珠山 駿)、「内罰のカリスマ 湊大瀬」(露口祐斗)、「性のカリスマ 天堂天彦」(田中涼星)、「正邪のカリスマ 伊藤ふみや」(坂下陽春)という七人のカリスマ。本作では、キャラクター紹介を兼ねた各々のショートストーリーが一通り展開された後、殺人事件が巻き起こって、シェアハウス崩壊の危機に陥る――という明快なあらすじになっているので、音声ドラマを未履修の方でも安心して観劇できる。そもそもカリスマとは「超人間的・非日常的な資質や能力」をいうが、七人のカリスマたちはその名の通り、一癖も二癖もあるキャラクターばかり。ついつい「隣人にこんなキャラクターがいたらちょっと大変だなぁ......」と思ってしまうのだが、皆がみな別のベクトルで極端なので、物語の中では不思議と均衡がとれているのだ。そして、それぞれのカリスマに“共感”するような場面も出てきて「私にもこのカリスマの要素があるかも......」と思ったり、カリスマたちの“決め台詞”に興奮したりと、見入っている自分がいた。ネタバレになるので詳細は書かないが、最後のライブパートも含め、凡人では予測不能な、シュールでカリスマあふれる物語を楽しんでほしい。上演時間は1時間45分(途中休憩なし)。公演は4月9日(日)まで。取材・文:五月女菜穂
2023年03月31日世界的ファッションデザイナーであるジャンポール・ゴルチエ氏は、70歳を迎えた今も、新たにエンターテインメントの世界へと挑戦し続けている。ファッション界の"異端児"として注目されたゴルチエ氏は、モードなファッションショーをエンターテイメントに昇華した第一人者である。「ファッションショーを作るとき、洋服だけではなく、音楽、照明、モデル、そしてモデルの立ち振る舞いも全てプロデュースをしてきた。それを観客がみて、素晴らしかったら『ブラボー!』とスタンディング・オベーションで迎えてくれる。それは、ファッションショーでも、演劇でも同じ。僕にとってファッションショーと舞台の境界線は曖昧だ。」と語る。ジャンポール・ゴルチエ『ファッション・フリーク・ショー』チケット情報これまで、ファッションショーモデルに「人々は、違うからこそ美しい。愛の形はひとつではなく、いろいろあるから面白い」という考えから、トランスジェンダーやドラァグクイーンをいち早く起用し、フェミニズムやジェンダーフリーを芸術性をもって謳い続けた。『ファッション・フリーク・ショー』でも、国籍や体系など様々なパフォーマーが出演する。この作品を通して「全ての人、誰もが美しいということ、フリークはシック、変わっていることは素敵なこと、そして自分らしくいることが大切だということを伝えたいと思っています。」と、メッセージを寄せている。ジャンポール・ゴルチエ『ファッション・フリーク・ショー』は、5月19日(金)から6月4日(日)まで東京・東急シアターオーブ、6月7日(水)から11日(日)まで大阪・フェスティバルホールにて開催。チケットは発売中。
2023年03月30日2011年に韓国で製作され大ヒットした映画『SUNNY』が、バブル経済絶頂期の1980年代と現代の日本を舞台にしたミュージカルとして舞台化される。そんなミュージカル『SUNNY』に出演することが決まった、日向坂46の元メンバー・渡邉美穂に話を聞いた。2022年に日向坂46を卒業し、アイドルから俳優へと一歩を踏み出した渡邉。演技の世界に興味を持ったのは映画『ヒミズ』における二階堂ふみの演技に憧れたからだといい、今年に入ってからは音楽劇『逃げろ!〜モーツァルトの台本作者ロレンツォ・ダ・ポンテ〜』に出演している。本作への出演にあたっては「舞台の経験はあるものの、ミュージカルは完全に初挑戦。どうなるのか楽しみです。一方で他の共演者はミュージカルに慣れていらっしゃる方々ばかり。ついていけるように、必死に頑張りたいと思います」。稽古場では特に花總まりや瀬奈じゅんといった共演する“大先輩”の姿を間近で見たいといい、「見て学べるものは盗めるだけ盗んで、実際に困ったときはいろいろとアドバイスをいただけるように頑張りたい。間違いなく自分にとっていい経験になると思うので」と貪欲な姿勢を見せる。今回の舞台では、バブル経済絶頂期の1980年代と現代とがシンクロしながら展開する。奈美という女子高生を演じる渡邉は「女子高生たちが青春している感じが楽しく描かれていていいなと思いました。それに同じ時間を共にした仲間たちが、時を経て全く違う道に進むのがすごくリアル......。笑えて、感動できて、泣けて、ほっこりする作品です」と脚本の印象を語る。ちなみに2000年生まれの渡邉は、80年代を実際に体験していない世代だが「女子高生たちも自由奔放に生きているイメージがあって、80年代には憧れがあります。それから音楽もいいですよね。特に小沢健二さんの音楽を聞くようになりました」。そもそも「SUNNY」というのは、登場人物たちの仲良しグループの名称なのだが、渡邉自身、高校3年生のときに同じクラスだった仲良し6人組がいるという。「友達はそんなに多い方ではないのですが、高校時代はその6人でずっと一緒にいましたし、いまだに定期的に会っています。何でも話せる仲で、本当に居心地がいい」。その仲間との絆が本作での役作りにも活かせるのではと尋ねると「間違いないですね」と笑顔だった。観客へのメッセージを尋ねると「観る方によっては『懐かしいな』という気持ちになる方もいるでしょうし、私と同じように『こういう時代があったんだな』と新鮮に捉える方もいると思います。でもきっと観ていて楽しい気持ちになるはず。友情や、人との繋がりの大切さを改めて感じることができる内容だと思いますし、『明日からまた頑張ろう!』と前向きになれるようなものにできたら」と語っていた。取材・文:五月女菜穂
2023年03月20日マリー・キュリーという、放射性元素の研究で大きな功績を残した科学者の姿を描いたミュージカル。アカデミックな内容がかかわるだけに、とっつきにくそうなイメージがないとは言えない。だが実際に公演(ゲネプロ)を通して感じたのは、知的探求心に富んだマリーのまっすぐな生きざま。彼女の研究への情熱が、夫・ピエールへの愛と信頼が、そして友・アンヌとの交流や研究をとりまくさまざまな物事への思いが、ドラマティックなメロディーで紡がれていく。キャストも各々の役割をきっちりと見せている。ゲネプロ前の囲み取材でマリー役・愛希れいかは「ミュージカルだけれどもとても演劇的な作品」、演出・鈴木裕美は「一人ずつの人間が浮き上がってくるように」と語っていた。それが見事に表現され、見ごたえがある。本作は「Fact(歴史的事実)×Fiction(虚構)=ファクション・ミュージカル」と銘打たれている。Factがマリーの研究に没頭する姿やピエールとのパートナーシップ、そして彼女が発見したラジウムを巡る葛藤であるならば、Fictionの多くはルーベンとアンヌについての造形だろうか。ルーベンはマリーの研究の後援者でラジウム工場のオーナーだが、時には狂言回しであり、メフィストフェレス的な、いわばマリーの“影”だ。演じる屋良朝幸も「遠い世界へ」など自身の振付によるダンスナンバーを含め、多面的な存在感を放つ。一方アンヌはマリーの親友として彼女に寄り添い、“光”の部分を担っているかのよう。パリに向かう列車での出会いでマリーの志を示す「すべてのものの地図」、追い詰められた状況下で心を通わせる「あなたは私の星」と、印象的なデュエットも多い。清水くるみの明るさと健気さ、時には凛々しさもある佇まいが魅力的だ。ピエール役の上山竜治も好演。自身もこれまで演じてきたなかで「一番優しい役どころ」だと語る、懐の深い夫で研究者としてもかけがえのないパートナーだ。マリーとピエールの「予測不能で未知なるもの」は、清水が「稽古場でも泣いちゃうぐらい好き」と語ったのも納得がいく、素敵なナンバー。そして何より、愛希の輝きが素晴らしい。安定した歌唱はもちろん、時には悩み苦しみながらもひたむきに生きるマリーとして、観る者を惹きつける。まさに“はまり役”で、ぜひ公演を重ねてマリーをさらに深化させていってほしいと願わずにはいられない。取材・文:金井まゆみ
2023年03月17日『滝沢歌舞伎ZERO FINAL』の製作発表記者会見が2月8日(水)に東京・帝国ホテルで行われ、主演と演出を手がけるSnow Manの9人が勢揃いした。2006年に『滝沢演舞城』として誕生し、主演の滝沢秀明が演出に専念した19年に『滝沢歌舞伎ZERO』の名でSnow Manに受け継がれた本作。映画化された『滝沢歌舞伎ZERO 2020 The Movie』が大ヒットし、21年・22年の公演を経て、今回でシリーズのファイナルを迎える“和のスーパーエンターテインメント”だ。「滝沢歌舞伎は、僕がジャニーズ事務所に入所した年に始まった作品。自分たちの主演で幕を下ろし、卒業式を行えるのが本当にありがたい」と会見の口火を切ったのは、リーダーの岩本照。“初演出”の重責も後輩に対する振付の延長線上にあると考えており「出演していたからこそ魅了できる演目を」と意気込み、シリーズの名物と言える「腹筋太鼓」は「やります」と言及した。深澤辰哉は「滝沢歌舞伎があったからこそ、精神的に鍛えられた」とこれまでの道のりを懐かしみ、滝沢に泣くほど怒られた日々を振り返って耳を真っ赤にする。パリコレに出演し、モデルとしても活躍中のラウールは「新橋演舞場にはキレイな花道があるのでランウェイしちゃいます!」と笑顔。渡辺翔太は「ファイナルに引っ張られすぎず、誰も置いていかない作品づくりをしたい」と述べたあと、ムービーカメラに向かって「タッキー(滝沢)見てる? がんばります!」とアピールした。続く向井康二も「初心を思い出させてくれる舞台。お母さん見てる?」とタイの母親に呼びかける。阿部亮平は「Snow Manの歴史を語るうえで欠かせない作品。使命をしっかり果たせたら」、目黒蓮は「青春の時間が詰まった作品。ファイナルでも、ご覧になった皆さんの心の中に生き続けるのだと思います」、佐久間大介も「ステージに立つ心構えを学んだ」とそれぞれコメント。宮舘涼太は「桜って美しいですよね……」と切り出して会見場の空気を一変し、「桜は散るのではなく“舞う”というモットーでやってきました。今後はSnow Manとしてもっと枝を伸ばし大きな花を咲かせたい」と述べ、1月に出演し市川團十郎のもとで切磋琢磨した『初春歌舞伎公演 SANEMORI』仕込みの見得を切って報道陣を湧かせた。集大成となる本作には、ジャニーズJr.からSpeciaL(林蓮音、松尾龍、和田優希、中村浩大)と、少年忍者(ヴァサイェガ渉、内村颯太、豊田陸人、長瀬結星)が出演することも発表された。公演は東京・新橋演舞場にて。一部公演回は全国の映画館でライブビューイングが上映される。なお新橋演舞場では、ジャニーズJr.の井上瑞稀(HiHi Jets)が主演を務め、本高克樹(7 MEN 侍)が共演するミュージカル『ルーザーヴィル』が3月22日(水)まで上演中。活躍する先輩・Snow Manの背中を目指して奮闘する姿もチェックしてみては。取材・文:岡山朋代
2023年03月15日3年半前に多くの反響を得た、日米クリエイターによるオリジナルミュージカル『FACTORY GIRLS ~私が描く物語~』が2023年6月に再演される。19世紀半ばのアメリカで、女性の権利を求めて戦った実在の女性サラとハリエットをモデルに、工場(ファクトリー)で働く女性たちの姿を描く今作は、性別にかかわらず多くの人の心を動かした。2019年読売演劇大賞優秀作品賞受賞作である。サラ役の柚希礼音は「女性だけに突き刺さる作品かなと思いきや、男性の方々にもとても刺さったと聞いて、ものすごく嬉しかった。中学校や高校の友達など同世代の人もこの作品が好きだと再演を喜んでくれ、3年半経っても待ち望んでくださる方がこんなにいるんだとウキウキしています」と声を弾ませる。初演の稽古時より「素晴らしい作品になるんじゃないかと手応えを感じていた」という柚希。恋愛ものが多い日本のミュージカルの中で、女性の労働と自立がメインとなる作品がどこまで受け入れるだろうという不安はすぐに無くなった。「皆が白熱してきて、稽古場の熱気がすごかった。宝塚の稽古場のようでした。こんなに自主稽古をするのかというほど、皆で何度も何度も稽古をして意見を出し合って、とても団結していました。再演ではまた新たなメンバーが加わるので、どうなるのか楽しみです」。サラは「たくさん、みんなに支えられて、立ち上がっていく。とても人間的で大好きなキャラクターだった」と柚希の思い入れは強い。脚本・歌詞・演出の板垣恭一からは「あなたは周りに汗をかかせて真ん中にいるリーダーじゃなくて、自分の心と体も汗だくになって表現するリーダーだから、それに感動した」と公演期間中に言われ、とても喜んだという。本作は、楽曲の力強さも大きな魅力だ。柚希は「譜面はすごく難しい。どうなってるの?このリズムとなってしまうほど。でもそのリズムをしっかり取ることによって表現されるものがある。初演時は振り付け、衣裳、歌、全てを必死にやりましたが、今思えば「あの工場のダンスはもうちょっとこうに踊れたんじゃないか」とか「登場のシーンはもっとこうできたんじゃないか」と客観的に見ることができているので、3年半の間に変化した自分でまた新たに臨めるのが楽しみです。あの時とは時代も変わったので、多くの方により届くようにまた0から作り上げていきたい。そして、初演よりも断然良くなっていることを目指したい」と再演に挑む。文・取材河野桃子
2023年03月13日世界的ファッション・デザイナー、ジャンポール・ゴルチエの半生を描いたランウェイミュージカル『ファッション・フリーク・ショー』の日本公演スペシャルゲスト第2弾が発表され、城田優の出演が決定した。城田は、5月19日(金) から6月4日(日) にかけて東京・東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階)で開催される東京公演の5公演にファッショニスタとして、招聘来日カンパニーキャストと共にジャンポール・ゴルチエの衣装を身に纏いウォーキングを披露する。ジャンポール・ゴルチエ『ファッション・フリーク・ショー』より『ファッション・フリーク・ショー』 では、演出・衣装をゴルチエ自身が手掛け、マドンナ、デヴィッド・ボウイや、ナイル・ロジャース「Le Freak」をフィーチャーした音楽にのせて、実際にパリコレを飾った200着を超えるオートクチュールが登場。振付はマドンナやクリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズのダンスを手掛けた振付師、マリオン・モーティンが手掛け、コンテンポラリーからストリート、ジャズなど多岐にわたるダンスによって魅了するランウェイミュージカルとなっている。チケットは現在オフィシャルHP先行を受付中。3月12日(日) 10時より東京公演の一般発売がスタートする。■城田優 コメントまず、唯一無二の独創性とカリスマ性を備えた素晴らしいデザイナーであるゴルチエさんの作品に出演させていただけることを心から光栄に思います。この作品は映像で拝見したのですが、こんな型破りなミュージカル観たことありません(笑)ゴルチエファンはもちろんのこと、彼のことを全く知らない方々も楽しめること間違いなしの、ユニークなエンタメが随所に散りばめられた、正にゴルチエさんのような独創性の高い作品となっています。僕も数回の出演ではありますが、全力で楽しませていただきます。ジャンポール・ゴルチエ『ファッション・フリーク・ショー』<公演情報>ジャンポール・ゴルチエ『ファッション・フリーク・ショー』ジャンポール・ゴルチエ『ファッション・フリーク・ショー』ビジュアル■東京公演2023年5月19日(金)〜6月4日(日) 全21回会場:東急シアターオーブ■大阪公演2023年6月7日(水)〜11日(日) 全7回会場:フェスティバルホール作・演出・衣裳:ジャンポール・ゴルチエキャスト:招聘来日カンパニーキャスト日本公演スペシャルゲスト:水原希子、城田優 ※そのほか日本公演スペシャルゲストは後日発表。【チケット料金】■東京公演VIP席:30,000円(特典付)S席:13,500円A席:9,000円■大阪公演VIP席:28,000円(特典付)S席:12,000円A席:7,000円※VIP特典については、オフィシャルHPにてご確認ください。【問合せ】■東京公演キョードー東京 0570-550-799(オペレータ受付 平日11:00〜18:00 / 土日祝10:00〜18:00)■大阪公演キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00〜18:00 ※日曜・祝日休業)公式HP:
2023年03月11日ミュージカル『RENT』が2023年3月8日(水)から日比谷シアタークリエで開幕した。1996年の初演以来ブロードウェイで12年4ヶ月のロングランを果たし、2005年には映画化もされた本作。日本では1998年に初演された後も、繰り返し再演されている。今回はおよそ2年ぶりの再演で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で開幕後に公演中止を余儀なくされた前回(2020年)公演のメンバーの多くが出演している。初日を前にした7日(火)、初日前会見とゲネプロが行われた。マーク役(Wキャスト)の花村想太は「この作品では、 自分たち自身のしんどい部分や辛い部分を曝け出してステージに臨んでいる。そんな僕たちから出るパワーを劇場で感じていただき、みなさんが生きていく中での糧になれたら嬉しいなという思いを込めて、ステージにあがりたい」と意気込んだ。同じくマーク役の平間壮一は、前回(2020年)公演からバージョンアップした点を問われると、日本版リステージのアンディ・セニョールJr.ら海外スタッフが来日できたことを挙げて「『RENT』の面白いところは、役者自身の人生観や役者同士の空気感がにじみ出ることだが、アンディたちがそれらを1つにまとめてくれて。やっと『RENT』ができるなという感じで、僕も楽しみ」と話した。ミミ役(Wキャスト)の八木アリサも「(前回は)リモートでの稽古だったが、生での指導になった。こんなにも掴める空気や感覚が違うんだと思った」と話し、同じくミミ役の遥海は「前回一緒だったけれど、今回出演しない方々は(公演中止になって)本当に悔しかったと思う。まさに“NO DAY BUT TODAY”で、1回ずつの公演を命がけで突き進んでいきたい」とリベンジを誓っていた。ロジャー役(Wキャスト)の甲斐翔真は「ロジャー役は僕がミュージカル人生で初めて勝ち取った役で、2年前は体当たりで演じた記憶がある。僕は再演自体が初めてで、1回やったことをもう一度料理する難しさを感じたが、アンディに『その悩んでいる感じを活かせばいい』と言われて。自分の感情に正直に生きられたら」と話し、同じくロジャー役で、今回が初参加となる古屋敬多は「リアルを求められる作品なので、少しでも嘘臭さが出てしまうと浮いてしまうが、みんながもうすでにそのリアルを体現していたので、僕はそこに入るだけだった。再演組のメンバーに助けられた」と述べた。上演時間は約2時間45分(休憩あり)。初演以来、変わらず勇気と愛を伝え続けてきた『RENT』。コロナ禍や分断された社会の状況から鑑みても、本作がもつパワーを改めて思い知る。「過去もない、未来もない。今日という日を精一杯生きる(NO DAY BUT TODAY)」という言葉を噛みしめながら、名曲揃いの本作を堪能してほしい。東京公演は4月2日(日)まで。取材・文:五月女菜穂
2023年03月10日イザベル マラン(ISABEL MARANT)は、2023年秋冬コレクション ショーを開催しました。会場内では、DJのGabber EleganzaとLulu Van Trappがショーのサウンドトラックを生演奏し、今シーズンのマントラである欲望と無秩序をテーマに構成された、ユニークなクリエーションとなっています。2023年秋冬コレクションは、柔らかく心地よいニットウエアに包まれたいという欲求、そして型にはまらないセクシーで無秩序な態度を表現します。レザーをメインとしたコレクションに対し、メタリックのジッパーが”パーフェクトスピリット”を吹き込みます。ジャケットやポケットに施されたジッパーは、ネックラインを露わにしたり、分断されたドレスの貴重なディテールとしてピースに溶け込みます。流れるようなグラフィックのカットアウトが胸元に新しいデザインを作り出しながら、体のパーツを絶妙に露出させます。これらのしなやかでフェミニンな生地とは対照的な厚手のケーブルニット、染色されたデニム、ウールや暖かいシアリングも登場します。カラーパレットは、ナチュラルでミニマルな色から始まり、イエローとマゼンタの地平線を探りながら黒を基調とした後半へ進みます。混ぜ合わさった素材(刺繍やベルベットのルレックス)そしてボリューム(オーバーサイズ、フィット、クロップド)がきらめく夜を演出します。
2023年03月05日暴走族風のファッションをまとった子猫のキャラクターで80年代に一大ブームを巻き起こした「なめ猫」を舞台化した「なめ猫 on STAGE」が“猫の日”の2月22日(水)に新宿FACEにて開幕した。脚本を「しずる」の村上純が執筆し、演出を村井雄(KPR/開幕ペナントレース)、さらに音楽を手島いさむ(UNICORN)が担当するという豪華布陣による本作。令和の現代を舞台に、昭和のロックをこよなく愛するバンド「not men not 4」、ヒップホップチームの「ゲルマウス」が学園祭でのステージに立つ1枠を争うという物語が展開する。登場人物たちは、それぞれのファッションに身を包みつつ、全員が猫耳と尻尾を装着したなめ猫スタイル。舞台は現代だが、昭和のカルチャーに傾倒する「not men not 4」の面々の口からは昭和から平成にかけて流行した言葉やスタイルが次々と飛び出す。「シャばい」「竹の子族」、さらには宮沢りえの主演ドラマのセリフなどなど、リアルタイムで80~90年代に青春を過ごした人にしかわからないような言葉が頻出! 一方で、学園祭のステージに立つバンドを決める方法がTwitterのリツイート数を競うというやり方であったり、練習に使っていたスタジオがオンライン予約を始めたために、ガラケーしか持っておらず、これまで当日に電話で予約をしていた「not men not 4」が全く予約が取れなくなってしまう、そしてネット用語の「草」など、令和の現代ならではのアイテムや言葉も数多く登場し「令和vs昭和」といった様相を呈す。とはいえ、本作はいわゆる“ヤンキー”ものではない。「not men not 4」のメンバーたちも不良やツッパリでもなく、ただ昭和のロックを愛し、当時のスタイルをまねているだけで暴力的なケンカのシーンなどはなく、彼らが対峙するヒップホップグループ「ゲルマウス」も同様。原作のなめ猫は暴走族のイメージが強いが、令和の時代に合わせて今回のステージはアップデートされており、戦いはあくまでもバンド対決。終盤のあるシーンで、観客に対して「撮影OK!」と提示するというのも、SNS全盛の現代らしい仕掛けと言える。そして、なんと言っても魅力的なのがライブシーン。冒頭の「not men not 4」のライブに始まり、中盤、そしてラストまで音楽シーンが満載だが、手島いさむが音楽を担当しているだけあって、楽曲のクオリティは一舞台作品の中にとどめておくにはもったいないほど。昭和の懐かしさを感じつつ、ライブを堪能できる盛りだくさんな作品となっている。「なめ猫 on STAGE」は3月1日(水)まで新宿FACEにて上演中。取材・文:黒豆直樹
2023年02月27日2019年に上演され、好評を博した舞台『BACKBEAT』。再演の幕開けを飾る製作発表は、「Rock And Roll Music」のラウドなバンドアンサンブルから始まった。主人公であるスチュアートを演じる戸塚祥太(A.B.C-Z)、ジョン・加藤和樹、ジョージ・辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、ポール・JUON(FUZZY CONTROL)、ピート・上口耕平が、続けて「Love Me Tender」「Long Tall Sally」とビートルズナンバーを演奏。既に初演を通じて共に演奏してきただけに、チームワークの確かさを感じさせる。そして、スチュアートと恋に落ちる写真家アストリッド・キルヒヘルを演じる愛加あゆ、実際のビートルズ来日公演で前座を務めた経験もある尾藤イサオも加わり、キャスト7名による質疑応答が行われた。演奏を終えたばかりの戸塚らは、まだ興奮が冷めやらぬよう。「4年という歳月を一気にタイムスリップした感覚で、『これを求めてたんだ』って(いう思いが)体の中に沸き起こってきました」と笑みを浮かべた。さらに初演では、ほとんどギターを弾けなかったのに出演を志願したという辰巳が、最初は演出・石丸さち子らを「あんなに人って口が開くんだってくらい」(辰巳)呆然とさせたところから、1日8時間以上の猛練習を経て本番では立派に演奏をこなしたエピソードを紹介。再演でさらに練習を重ね、ついにギターソロまでこなすように。「彼のギターが大好き。ソロを弾いてくれたりするとぶっちゃけ上がります!」(JUON)と、メンバーにとっても大きな刺激であるらしい。初演後もグループメールで繋がっていたという5人。「JUONくんが僕らのために曲を書き下ろしてくれたので、いつかみんなで演奏したい!CDデビューもライブツアーもしたい!」と辰巳が語れば、ラーメン二郎に心酔する「ジロリアン」として知る人ぞ知る加藤が自前で仕込んだラーメンでメンバーをもてなすなど、「小さい時から一緒に育ってきたような、安心感があって飾らない自分でいられる仲間」(加藤)の絆は揺るぎないようだ。そんな彼らだからこその、芝居と演奏との融合。それを上口は「心の流れと一緒に演奏も変わっていく」と表現。再演ではさらにシンクロ度を上げていきたいと意欲を見せた。そして最後は戸塚が「再演とはいえ過去の自分たちをなぞらずに進化した自分たちで皆さんの前に立ちたい。『BACKBEAT』はここでしか体験できません。劇場で会いましょう!」と力強く締めくくった。取材・文:金井まゆみ
2023年02月27日役者の台詞・音楽・歌などの音声のみで表現されるオーディオミュージカル『星月夜』のオンライン配信が3月30日(木)より開始する。本作は、画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホと、弟テオの物語。数々の名画を創造しながらも、苛烈な人生を走り抜いた『炎の画家』兄 ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。孤高の画家の唯一の理解者であり、その才能を愛し支え続けた弟 テオドルス・ヴァン・ゴッホ。650通以上に渡る書簡を基に、兄弟の絆を描く。キャストには、ヴィンセント役として声優の白井悠介氏、テオ役に同じく声優の伊東健人氏を迎えた。『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』『アイドルマスターSideM』など数々の話題作で活躍し、演技力と歌唱力に定評のある両氏。「声」ひとつで作品世界を鮮やかに現出させてきた彼らが、ともに初となるミュージカル作品に挑戦する。全10曲の多彩なミュージカルナンバーで送る、兄弟の愛・才能・命の物語。本作でしか聴く事の出来ない美しい歌唱とその物語に期待が高まる。特典付きチケットを購入すると、キャスト二人の歌唱映像(4曲)・メイキング映像の視聴ができるほか、鑑賞の思い出としてキャストサイン付きデジタルパンフレット、複製譜面のダウンロードが可能。チケット発売は、2月27日(月) 12:00から4月13日(木) 20:00まで。配信期間は、3月30日(木) 20:00から4月13日(木) 23:59までの2週間限定配信(チケット購入後は、配信期間内で何度でも視聴可能)。視聴料金は、本編のみ(約60分)2,300円(税込) / 本編(約60分)+特典付5,500円(税込)。
2023年02月27日ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで創り上げるエンターテインメント集団「梅棒」による16th showdown『曇天ガエシ』が2023年3月10日(金)から東京・なかのZERO大ホール、16日(木)から新国立劇場中劇場ほかで上演される。物語の舞台は、“オウゴン”の採掘により発展した「ジパングリ」。王の妻によるクーデターが勃発し、跡継ぎだったメツ王子は物心つかないうちに王宮を追われ、行方不明になる。それから十数年。女王の圧政に苦しむ人々の救いは、国からオウゴンを盗み出して民に分け与える義賊集団「マサゴ」だった。その中に、成長し街を飛び回るメツの姿が......。一方、武力で圧政を覆そうとするテロ組織「クニクズシ」も怪しい動きを見せていた。ある日、メツは女王の息子であるヌューダ王子と偶然街で出会い、運命の歯車が回りだす――。本作は梅棒史上最大規模で、「サイバーパンクと和が融合するファンタジー超大作」という。初日まで1ヶ月を切った2月中旬、適切な感染予防対策を講じた上で、都内で行われている稽古を見学した。よりスペクタクルな作品にするために欠かせない舞台装置。可動式の舞台セットを安全に動かすため、場面転換の確認から稽古が始まった。梅棒の舞台を観たことがある人は想像がつくと思うが、梅棒作品はとにかく役者の移動が多く、いろいろな小道具が登場する。しかもすべてが曲あわせなので、一人一人の動きを細かく調整しないと、タイミングがズレたり、大変な事故につながったりしてしまう。それゆえ場面転換の確認はとても大事になってくるわけだ。「1,2,3,4……」とカウントを数えながら何度か動きを確認した後、実際の曲を流して再確認。何か不都合があった場合はどうしたら解決できるのか、メンバーが一丸となって意見を出し合っていた。その後は、通し稽古。まだ初日まで1ヶ月ほど時間があるが、ここからブラッシュアップをするとはいえ、ほぼ全てのストーリーと振付が“完成”していたので驚いた。詳細な見どころや選曲は本番のお楽しみとしておきたいが、ゲスト出演するw-inds.の千葉涼平、元宝塚歌劇団の音くり寿、鳥越裕貴らがダンスだけでなく「芝居力」でストーリーを盛り上げていたし、IGのポールダンス、上西隆史のエアダンスなども相まって、振付もいつも以上に高難度なものばかり。梅棒作品の中でもここまでギャグ要素が少ない作品は珍しい気がするが、果たして本番ではどんな世界観を見せてくれるのか、ますます楽しみになった。東京公演は3月10日(金)~12日(日)、なかのZERO大ホール。16日(木)~22日(水)、新国立劇場中劇場。大阪公演は3月31日(金)~4月2日(日)、森ノ宮ピロティホール。愛知公演は4月8日(土)、9日(日)、日本特殊陶業市民会館ビレッジホール。取材・文:五月女菜穂
2023年02月22日俳優や声優として活躍するほか、アーティストとしての音楽活動も精力的に行っている加藤和樹。その加藤が“マスター”を務める番組「加藤和樹のミュージックバー『エンタス』」の生ライブイベントが3月19日(日)、LINE CUBE SHIBUYAで開催される。番組初の生ライブイベント。加藤は「J-POPやアーティストの方々を呼んで、そのゲストがミュージカルの楽曲を歌う番組。せっかくの生ライブですから、ここでしか成し得ないコラボレーションができたらいいなと」と構想を語る。「通常の番組では僕はマスターとしておもてなしをして、その後ゲストの方に歌っていただく流れ。今回はマスターもちょっとしゃしゃり出て、コラボやデュエットができたらいいですよね」とも。第1部は高橋真麻、東啓介、飛龍つかさ、松浦航大、第2部は荒木宏文、豊永利行、濱田めぐみ、松下優也と、実に彩り豊かなゲスト。披露する楽曲はまさに今練っている段階だというが、加藤は「2部はミュージカル『テニスの王子様』で一緒だった荒木さんと豊永さんがいるので、テニミュ関連のことができたらいいなと。新規のミュージカルファンだけではなく、古参の皆さんにも喜んでもらえたら」と明かし、「1部と2部では全然違う構成になると思うので、むしろ通しで観ていただきたいぐらいです」。第1部に出演する東は「僕は『エンタス』の番組に出演したことはないんですが、イベントのゲストに呼んでいただいて、すごく嬉しいです」と笑顔で話し、「自分が出演していない作品や、今ブロードウェイで流行っている作品、普通に自分が歌いたい曲など、いろいろやってみたいですね」と語った。加藤と東はミュージカル『マタ・ハリ』で共演を果たし、以来プライベートでも交流がある。加藤は「多分一番僕の家に遊びに来ているミュージカル俳優。いろいろとんちゃん(※東の愛称)には相談できて......飼い犬のようです(笑)」と話す一方、東は「お兄ちゃん的存在で、ずっと前を走ってくれているんです。そこにいるだけで安心できるし、場の空気も良くなる。憧れの存在です」と語り、絆の深さが窺い知れた。観客へのメッセージを尋ねると。加藤は「番組タイトルはエンターテイメントがクロスする、そして縁が足されていくという意味。僕自身、人との縁や作品との縁をすごく大切にしていて。その繋がりが新たなエンターテイメントや新しいものを作ることへ繋がっていくと思うんです」と話した上で、「今回のイベントがミュージカルへの架け橋となれれば嬉しいですし、何より僕自身楽しみたい」。東は「いろいろなジャンルの方が出演されるので、あまりミュージカルに馴染みがない方、シンプルに歌が好きな方、もちろんミュージカルが好きな方......いろいろな方に気楽に楽しんでいただけたら」と話した。チケットは、2月25日(土)12:00より一般発売スタート。取材・文:五月女菜穂
2023年02月13日生田絵梨花が2018年にブロードウェイで開幕したミュージカル『MEAN GIRLS』に主演する。日本版初演となる本作は、2004年に公開された同名ハイスクールコメディ映画のミュージカル版で、トニー賞最多12部門にノミネートされた人気作。主人公はアフリカで生まれ育ったケイディ。16歳で初めてアメリカの高校に通うことになり、そこで出会った女の子たちと過ごす中で、彼女たちの笑顔の裏に隠された世界に触れ、大切なことは何かを学んでいく物語だ。2019年の舞台に続く演出の小林香に助けられつつ、共演の田村芽実や石田ニコルらと仲良く稽古が進む中、生田が作品の魅力や意気込みを語った。ブロードウェイミュージカル「MEAN GIRLS」チケット情報ミュージカルの舞台を何度も経験しているが「緊張するタイプなのでなかなか慣れなくて。ケイディをやるにあたっては自分もオープンにしていかないといけないし、普段の自分よりも思い切りがないとやれない役だなと思います」と話す生田。だが「ケイディは、個性が強くてパンチ力がすごい。みんなの中に何も知らない状態で飛び込んでいくので、役としても自分自身としても楽しませてもらっています」と笑顔を見せる。ケイディは「ダサイところからスタートしてどんどん女の子の世界に染まっていく役柄。私にもその要素があるのでシンパシーを感じます。彼女のたどる変化は私自身とも重ねながらできるのではないかな。ケイディと一緒に成長していけたらいいなと思っています」。演じるうえで大事にしているのはその変化の様子。「一人ひとりと出会って1歩ずつ階段をあがっていく役だから、丁寧にちゃんと踏んで進んでいかないと」。さらに大切なことについてこう語る。「ケイディは間違った方向に進んでしまうんですね。それも、気付いたらこんなところに来てしまっていたという。それって誰しもに起こり得ることなのかもしれないということを、お客様にも感じ取っていただけたらうれしいです。学校生活だけでなく会社やママ友とか、そんな社会を生きていく中で、みんなが直面する問題がこの作品の中にもあると思うので、年齢関係なく楽しんでいただけると思います」。もちろん歌も注目ポイントだ。「16年間野生児として育ってきたケイディの伸びやかさや力強さが歌にも反映できたら。でも自然とノレる曲ばかりなので、お客様にも楽しんでもらえるんじゃないかなって、今からワクワクしています。観た後に、皆さんの中にあるモヤモヤした気持ちが爽快に弾け飛ぶような作品にみんなでしていけたらと思っていますので、ぜひ劇場へ楽しみに来てください。頑張ります!」。公演は、2月12日(日)まで東京・東京建物ブリリアホールにて上演中、2月17日(金)から19日(日)まで福岡・キャナルシティ劇場、2月23日(木・祝)から27日(月)まで大阪・森之宮ピロティホールにて。チケット発売中。取材・文:高橋晴代
2023年02月09日2018年のトニー賞10部門を制したミュージカル『バンズ・ヴィジット』の日本版初演が2023年2月7日(火)から日生劇場で開幕。初日を前にした6日(月)、プレスコールと会見が行われた。ミュージカルエジプトのアレクサンドリア警察音楽隊がイスラエルの空港に到着するところから物語は始まる。彼らはペタハ・ティクヴァのアラブ文化センターで演奏するようにと招かれたのだが、いくら待っても迎えが来ない。楽隊長のトゥフィーク(風間杜夫)は自力で目的地に行こうとするが、若い楽隊員のカーレド(新納慎也)が間違えたのか、彼らの乗ったバスは、目的地と一字違いのベイト・ハティクヴァという辺境の町に到着してしまう。一行は街の食堂を訪れるが、もうその日はバスがない。演奏会は翌日の夕方。食堂の女主人・ディナ(濱田めぐみ)は、どこよりも退屈なこの街にはホテルもないので、自分の家と常連客イツィク(矢崎広)の家、従業員パピ(永田崇人)と店に分散して泊まるように勧めて──。国も宗教も文化も違う、遠い隣の国であるエジプトとイスラエル。たった一晩、二つの民族が日常の中で交わり、溶け合っていく。ストーリー上、何も大きな出来事はない。それでも場面場面で感情が動かされ、旅先で出会った見知らぬ人と通じ合った日々を懐かしく思ったし、観劇後は長い旅を終えたような高揚感と切なさを感じた。本作の最大の魅力はやはり音楽。警察音楽隊が芝居をしながら舞台上で生演奏を繰り広げるのだが、いわゆる歌唱曲以外にも、場面転換の際に流れる音楽もしっかり聴かせる演出。民族音楽やジャズ、即興演奏を得意とするヴァイオリニストの太田惠資、サックス・クラリネット奏者としてフリー ジャズを中心に幅広い分野の第一線で活躍する梅津和時ら、錚々たるミュージシャンが奏でる音楽にぜひ酔いしれてほしい。トゥフィークを演じる風間杜夫は「いっときも早くお客様の前で演じたい。緊張感もありますけど、初日の幕が開くことを楽しみにしております」と挨拶。ディナ役の濱田めぐみは、本作の楽曲の見どころを問われた際、「稽古場で初めて楽隊の音色を聞いたとき、みんなから拍手が沸き起こった」と生バンドの魅力を伝えつつ、「楽曲は素晴らしいのですが、歌い手側はものすごく難易度が高い。今までやった演目の中でトップクラスで稽古を重ねたぐらいメロディが難しかった」。カーレドを演じる新納慎也。実際にブロードウェイで本作を観た経験がある新納は「あまりミュージカルでは聞いたことない中東の音楽にすっかり心奪われて、すごく癒された」と当時を振り返りつつ、「(日本版の)この真っ赤なセットには驚きました。衝撃的なセットの中で、とても繊細な人々の日常の物語が繰り広げられます。日本人の琴線に触れる演出なのでは」などと話していた。東京公演は2月23日(木・祝)まで。その後、大阪・愛知にて上演。取材・文・撮影:五月女菜穂
2023年02月07日トニー賞6部門とグラミー賞2部門を受賞、2006年にはビヨンセ主演で映画化され大ヒットと、ミュージカル史に輝かしい足跡を残す『ドリームガールズ』。初の「日本オリジナルキャスト版」が2月5日(日)、東京国際フォーラムで幕を開けた。主演は、圧倒的な歌唱力で宝塚歌劇団退団後も話題作に出演が続く望海風斗。さらに福原みほと村川絵梨(Wキャスト)、sara、spi、岡田浩暉、駒田一、内海啓貴、なかねかなら、歌声の豊かさ・表現力共に最強のキャストがそろった。本ニュースでは村川エフィ版のゲネプロの様子をお届けする。1960年代のアメリカ。ディーナ(望海)とエフィ(村川)、ローレル(sara)は、スターになることを夢見てNYにやってくる。コンテストでは優勝できなかったものの、才能を見抜いたカーティス(spi)の手腕で、人気シンガーのジェームズ・“サンダー”・アーリー(岡田)のバックコーラスになった3人。カーティスの強引なやり方にジェームズのマネージャー・マーティが困惑する中、エフィの弟で作曲家のC.C.(内海)と共にヒット曲を連発するディーナたち。だがカーティスがソロデビューの条件として告げたのは、「リードシンガーをエフィではなく美しいディーナに替えること」だった……。望海は都会に出て来たばかりの初々しい様子から、次第にスターの階段を上ってゆくディーナの成長を繊細に表現。真面目な性格だが、いったんステージに立てばまばゆいばかりの存在感を放つディーナ役は、まさにハマり役だ。エフィ役の村川も、歌・芝居共にディーナに一歩も引かない構え。名ナンバー「One Night Only」のシーンをはじめ、陰影ある演技で魅せた。ローレルを演じるsaraもミュージカル界のホープだけに、歌唱力はお墨付き。一番年下の設定ということもあり、弾けるような可愛らしさに目を奪われた。野心のためには汚い手も使うカーティスを魅力たっぷりに演じたspiや、スターの悲哀を鮮やかに浮き彫りにした岡田、プライドに揺れるマネージャーを味わい深く演じた駒田など、男たちの厚みのある佇まいも印象的。作曲家ながらエフィの家族として葛藤するC.C.役の内海、追加メンバーとなるミシェル役のなかねかなまで、全員が圧巻の歌唱力で最後まで駆け抜ける。ショーシーンはもちろん、エフィとカーティスたちが口論するナンバーなども思わず引き込まれて息つく暇もないほどだ。演出は、劇団俳優座の演出家で、外部作品でも丁寧な人物造型が高い評価を得ている眞鍋卓嗣。本作では舞台上に一段高くなった「盆」(回り舞台)を設置し、時には「ステージ」に見立てて、「Dreamgirls」など名曲のショーシーンをたたみかけるように見せてゆく。次々と着替える(舞台上での早替りも!)ディーナたちの華やかなドレス(衣裳:有村淳)にも注目だ。回る「盆」は、きらめく音楽が現れては消えてゆくターンテーブルのよう。エンタメ界の光と影を映し出す『ドリームガールズ』ならではの演出と感じた。取材・文/藤野さくら
2023年02月07日丸美屋食品ミュージカル『アニー』の製作発表会見が2月1日(水)、東京都内で行われた。コロナ禍では公演が中止になったり、1幕に短縮した形で上演したりと厳しい選択を強いられてきた『アニー』が、今回は困難を乗り越え、4年ぶりのフルバージョン上演となる。タイトルロールのアニー役(Wキャスト)を演じるのは、深町ようこ(12)と西光里咲(10)。この日の会見で、オーディションを勝ち抜き見事アニー役に決まったときの心境について、深町は「最初はすごくびっくりして、やるぞと気合が入った。そのあと、楽しみな気持ちと嬉しい気持ちがこみ上げてきて仕方がありませんでした」と笑顔で話す。2人はミュージカル『メリー・ポピンズ』(2022)で同じ役を演じていた経験があり、西光は「ようこちゃんが呼ばれたときは、自分はもうダメだったなと思った」と素直な心境を明かしつつ、「そのあとに自分が呼ばれて信じられなくて。こうして今アニーの衣装を着て、ここにいられることがとても幸せで、感謝の気持ちでいっぱいです」と語った。これからどんなアニーを目指したいか問われると、深町は「初めて観にきてくださったお客様も、今まで観にきてくださったことがあるお客様も最後は笑顔で帰っていただけるような、素敵なアニーになりたい」と話し、西光は「そこにいるだけで空気がパッと明るくなるような、向日葵のようなアニーになりたい」と意気込んだ。ウォーバックス役は、2017年度から21年度までの4年間同役を務め、2年ぶりに戻ってきた藤本隆宏。藤本は「2年ぶりということで改めて『アニー』という作品を見つめ直す機会ができた」と話す。昨年客席から『アニー』を観たことを振り返り、「とにかくキャストのみんなも素晴らしかったし、いかに素晴らしい作品であるかを改めて教えてもらった。客席では感動して泣いている方や笑っている方がいて、カーテンコールで涙を流して拍手をする姿も見た。初心にかえって、しっかり演じていかなくてはいけないと思う。その気持ちを大切に、精一杯2023年版アニーを作り上げていきたい」と熱弁した。この日はそのほか、マルシア、笠松はる、財木琢磨、島ゆいかも登壇し、作品への思いを語った。東京公演は4月22日(土)〜5月8日(月)、新国立劇場 中劇場にて。チケットの一般発売は2月4日(土)10時スタート。松本、大阪、名古屋、新潟でも公演が予定されている。取材・文・:五月女菜穂
2023年02月03日1960年代アメリカの煌びやかなショービジネスの世界を舞台に、女性ヴォーカルグループの栄光と挫折、そして再生を描く『ドリームガールズ』。トニー賞6部門・グラミー賞2部門を受賞し、2006年にはビヨンセ主演で映画化された大ヒット・ミュージカルが、読売演劇大賞で優秀演出家賞を2年連続受賞した演出家・眞鍋卓嗣のもと、初の日本オリジナルキャスト版として上演される。上演を前に、主演・ディーナを務める望海風斗が本作の魅力と舞台にかける意気込みを語ってくれた。2021年4月に宝塚歌劇団を退団した元雪組トップスター。退団後開催したコンサートツアー『SPERO』では5万人を動員。その後、『INTO THE WOODS』『next to normal』『ガイズ&ドールズ』などの舞台に出演し、圧倒的な歌唱力で観客を魅了し続けている彼女だが、宝塚トップスター経験者ならではの葛藤もやはりあるそうで…。「男役でも女役でも“人間をつくりあげていく”過程は同じ。ひとりで劇場の空気感をいかに変えていくかという点でも、宝塚時代の大舞台での経験が役に立っています。ただ、男役として18年間稽古を重ねてきたため、女性役を演じること自体がまだ不自然というか…。自然にやると、つい風を切って歩いたり(笑)、そのあたりは未だに難しいですね」。作品ごとにカンパニーが変わるのも、宝塚時代との違いのひとつと語り、「『next to normal』でチームが違った岡田浩暉さんと今回一緒に舞台に立てるのも楽しみ。明るくエネルギッシュな方なので、熱いカンパニーになりそうです。ゴスペルやソウルミュージックを歌われている福原みほさんのグルーヴも凄いし、皆様にいろいろ刺激を受けてますね」と共演者にも期待を寄せる。制作発表では、エフィ役のWキャスト・福原みほ、村川絵梨、ローレル役saraの4人でテーマ曲『Dreamgirls』を披露。「とにかく音楽が素晴らしく、華やかなステージを観ながら音楽を聴いているだけでも充分に楽しめます。そして本作はヒロインたちが現状を変え、前に進んでいく成長物語。演出の眞鍋さんが『現状を変えたいと思っている人の背中を押せるような作品にしたい』とおっしゃっていたように、観た方にパワーを与えられるような作品にしたいと思っています」。長く愛されている名曲の数々が本作の大きな魅力。「今一番好きなのは『Dreamgirls』ですが、これから歌い込んでいくうちに好きな曲も変わっていきそう」と笑う。子どものときから歌を通して心を通わせるのが好きで、今また改めて「歌には無限の力がある」と感じているそう。その歌声でどんなドラマを語ってくれるのか。2月5日(日)~14日(火)東京・東京国際フォーラム ホールC、2月20日(月)~3月5日(日)大阪・梅田芸術劇場メインホール、3月11日(土)~15日(水)福岡・博多座、3月22日(水)~26日(日)愛知・御園座。
2023年02月02日ブロードウェイミュージカル『MEAN GIRLS』の日本版初演が2023年1月30日から東京建物Brillia HALLほかで開幕する。2004年に米国で制作された映画『MEAN GIRLS』をミュージカル化した本作。18年にブロードウェイで開幕し、同年のトニー賞では作品賞など最多の12部門でノミネートされた。日本版初演となる今回は、数々の海外ミュージカルの演出を手掛けた小林香が演出を担い、生田絵梨花が主演する。アフリカ育ちで16歳のケイディ(生田絵梨花)は、生まれて初めてアメリカに引越し、高校に通うことに。周囲に馴染めずにいたケイディに話しかけたのは、アートフリークのジャニス(田村芽実)とゲイのダミアン(内藤大希)。そして2人から「プラスティックス」という学園の女王様レジーナ(石田ニコル)、カレン(松田るか)、グレッチェン(松原凜子)のスクールカーストTOPの三人組に気をつけるよう告げられて――というリアルな女の子の学園生活を描いたストーリー。初日を前にした29日、ゲネプロ(総通し舞台稽古)と囲み取材が行われた。主演の生田は「作品が始まる前は『ポップでキュートなガールズパワーをお届けしたい』と言っていたのですが、稽古を重ねて、それに留まらない作品のメッセージ性をビシビシ感じています」と話す。「ドロドロしていたり、ブラックだったり、尖っていたり、歪だったり。枠にはまらないいろいろな形を見て『いいな』『自分も自分らしくいたいな』と思っていただけるように、そしてきらきらした気持ちを持って帰っていただけるように、みんなで一丸となって頑張っていきたいと思います」。ジャニス役の田村芽実は「コロナ対策も含めてここまで頑張ってきました。この状況下で幕が開けられることを本当に幸せに光栄に思っています。一生懸命頑張ります」と意気込み、レジーナ役の石田ニコルも「みなさんを引き込んで、楽しませて、あっという間に時間が過ぎるように、私たちも楽しみながら演じたいと思います」と語った。スラングや若者文化がふんだんに織り込まれている作品。上演台本と訳詞も担当した小林は「カルチャーや時事問題の認識がだいぶ違うので、日本のお客様に(脚本の)ティナさんの意図が明快に伝わるように心がけつつ、日本バージョンの翻訳をしました。キャストの皆さんともディスカッションしながら、より分かりやすく伝わるように、改稿に改稿を重ねました」といい、「笑いありノリあり、可愛らしさあり下ネタあり、そして感動あり。ミュージカルの楽しさがいっぱい詰め込まれた作品になっております。ぜひ全身で(作品のイメージカラーである)ピンクを浴びに劇場に遊びに来ていただきたい」。東京公演は2月12日(日)まで。福岡公演は2月17日(金)~19日(日)、キャナルシティ劇場。大阪公演は2月23日(木・祝)~27日(月)、森ノ宮ピロティホール。取材・文:五月女菜穂
2023年01月30日“降り止まない雨”をテーマに描かれたソングサイクル・ミュージカル「雨が止まない世界なら」in Concert。1月6日(金)に行われた昼公演・夜公演の模様を収めた配信アーカイブが2月17日(金)まで視聴可能だ。ある日降り始めた奇妙な雨がずっと降り止まなかったら、人は何を歌うだろう…。ソングサイクル・ミュージカル「雨が止まない世界なら」は、"雨が降り続ける世界"で、様々な場所から同じ雨を見ている人々のストーリーを描いていく。2021年、コロナ禍に誕生した本作は、ポエトリーリーディング、ワークショップ、コンセプトアルバムを経て、2023年1月に大手町三井ホールでコンサートの開催が実現した。出演は、小此木麻里、昆夏美、咲妃みゆ、清水彩花、清水美依紗、鈴木壮麻、染谷洸太、塚本直、西川大貴、畠中洋、山野靖博、吉沢梨絵、そして雨が止まない合唱団(内海湧真河本雪華小林謙真佐藤孔明二宮伶寧平賀晴)。豪華なミュージカル・スターが集結した本コンサート。『雨に唄えば』を彷彿とさせる晴れやかな楽曲「We’re Singin’ in the Rain」を昆夏美が軽やかに歌い上げたかと思えば、鈴木壮麻が「知ろうとしない」で会場を怪しげな雰囲気で包み込む。西川大貴が歌う「舟を漕ごう」は、雨が止まない世界に新たに出来た職業・水上タクシーの運転手が主人公。ソングサイクル・ミュージカルということで、同じ"雨が降り続ける世界"の中で生きる様々な主人公が登場するのが本作の特徴だ。病室の窓から変わっていく世界に希望を見出す少女の歌「海に潜ったクジラ」では、コンサートながら清水美依紗が演技力溢れる歌声で圧倒。一方、“もう進みたくも変わりたくもないの本音は変わってしまう事が多すぎて”と、急速な周囲の変化に追いつけない気持ちを吐露する楽曲「東京漂流」は、咲妃みゆが涙ながらに力強く歌唱した。コロナ禍での社会の変化はもちろんのこと、世界情勢の変化、SNS等で他人の変化を感じることも多い現代の私たちにとって、本作には他人事とは思えない歌詞が詰まっている。多様な楽曲の中から、自己投影できる一曲が見つかるはずだ。作詞・構成は、ミュージカル『ミス・サイゴン』トゥイ役など俳優としても活躍する西川大貴。作曲・音楽監督はジャズ・ピアニストの桑原あいが務める。また、夜公演では大手町三井ホールのガラス張りのステージを活かし、東京・大手町の夜景をバックに歌唱。景色という自然の演出が加わることで、新たな楽曲の印象が加わることも、本コンサートの興味深い点である。「雨が止まない世界なら」in Concert、配信アーカイブのチケットは2月17日(金)まで販売中。文:齋藤優里花(演劇メディアAudience)
2023年01月24日トニー賞10冠のミュージカルの日本版公演となる「バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊」の稽古場の模様が報道陣に公開され、濱田めぐみが歌う「オマーシャリフ」をはじめ、合計3曲が披露された。カンヌをはじめ、各国の映画祭で話題を呼んだ映画『迷子の警察音楽隊』を原作にミュージカル化し、2018年のトニー賞では作品賞を含む10部門を受賞。イスラエルへの演奏旅行に招かれるも、別の街に到着してしまったエジプトの警察音楽隊が、街の人々と交流するさまを描いており、森新太郎が演出を担当。風間杜夫、新納慎也、濱田めぐみらが出演する。この日、最初に公開されたのは、第1場から第2場にかけてのシーン。空港からバスで目的地に向かうも、一字違いのベト・ハティクヴァという街に到着する楽団。街の住人たちが歌うのが「待ってる/Waiting」である。舞台中央の円形の舞台装置を回転させて、辺境の街で暮らす人々の姿を映し出し、変わらぬ日常を過ごしつつ、新しい何かが起こるのを待ち続けている人々の心情が歌い上げられる。そこへ、変化をもたらす存在として到着するのが楽隊長・トゥフィーク(風間)率いるアレクサンドリア警察音楽隊である。目的地の“アラブ文化センター”はどこかと尋ねるトゥフィークに対し、食堂の女主人ディナ(濱田)は「ここには文化なんてない」と答え、従業員のパピ(永田崇人)、常連客のイツィク(矢崎広)と共に「何もない町/Welcome to Nowhere」を歌う。歴史的な因縁を抱える異国の地での遭難に困惑する楽団員たち。そんな彼らにディナらは手を差し伸べるが…。続いて、披露されたのは、第7場の「オマーシャリフ」。街で一晩を過ごすことになり、トゥフィークはディナに連れられレストランを訪れる。彼女が好きだったエジプトの映画や音楽を介し、打ち解けていく2人。同曲は映画『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバゴ』などの名作で知られるエジプト出身のハリウッド俳優の名を冠し、ディナの西の隣国(エジプト)の文化への憧憬を歌った楽曲。濱田がどこか切なく異国情緒を感じさせるようなしっとりとした歌声を響かせる。その後、警察音楽隊による「Haj-Butrus」の生演奏が始まるが、バイオリンやチェロといった馴染みの楽器に加え、ウードやダルブッカといったアラブ音楽で使われる楽器による生演奏も本公演の大きな見どころである。また、この日は披露されなかったが、風間が濱田と歌うシーンもあるとのこと。“戦乱”がいまなお現実の世界を覆う中で、エジプトの楽団とイスラエルの辺境の街の人々の一夜の物語は我々にどんな希望を見せてくれるのか?完成を楽しみに待ちたい。「バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊」は日生劇場にて2月7日より開幕。取材・文:黒豆 直樹
2023年01月19日オフ・ブロードウェイミュージカル『Ordinary Days』が2023年2月8日(水)から東京・俳優座劇場、2月18日(土)に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演される。登場人物は、眠らない街・ニューヨークに住む男女4人。30代のカップルであるジェイソン(相葉裕樹)とクレア(夢咲ねね)は、互いを想いながらも、ここ最近衝突ばかりでお互いの心が掴めないでいる。一方、アーティストを目指す青年ウォーレン(小池竜暉/中本大賀)は、手書きのチラシを配布する活動をしているが、誰からも見向きもされない。ある日、大学の論文に追われるデイブ(斎藤瑠希/浜崎香帆)のパソコンを偶然拾ったことで2人は知り合い、少しずつ世界が色を変えていく。日々を懸命に生きる4人の人生が思わぬ形でつながっていくーー。今回、ジェイソン役を主演する相葉裕樹は「出演者4人とピアニスト1人で紡ぐミュージカルということで、かなり濃密な作品になると思います。人肌が恋しくなる2月に、恋の悩みやすれ違いといった男女の仲を描いた作品を上演するということで、自分自身もお客さまも“エモい”気持ちになって、きっと共感できる部分がたくさんあるのではないでしょうか」と作品について語る。ウォーレン役を演じる小池竜暉(GENIC)は、今回が初舞台。更には映像作品も含めて、初めて演技に挑戦するといい、「もともと演じることに興味を持っていたので、このお話をいただいたときはすごく嬉しかったです」と素直に出演を喜ぶ。そして「『Ordinary Days』というタイトルにもある通り、日常的な部分を飾ることなく表現している作品。観ているお客さんも『こんなことがあったな』などと自分の姿を投影させられる部分もあると思います」。「自身のかけがえのない大切な時間とは?」という公演のコピーにちなんで、それぞれの「かけがえのない時間」を尋ねると、相葉は「友人と過ごす時間ですね。特別何かをするわけではなくて、ごはんを一緒に食べに行ったり、銭湯に行ったりするだけなのですが、癒されるし、いろいろとリセットできるんです」と話す。一方の小池は「一番は実家に帰ったときです。玄関先で家族が出迎えてくれたり、飼い犬が尻尾をフリフリしている姿を見たりすると、帰ってきたなと思って」と話しつつ、「そのほかは、コーヒーを淹れたり、抹茶を点てたりする時間も。おいしいパスタができたときも」と次々と回答が浮かんだようで、多趣味な一面を覗かせた。東京公演は2月12日(日)まで。脚色・演出は田中麻衣子。音楽監督・ピアノ演奏は落合崇史。翻訳は藤倉梓。チケット発売中。取材・文:五月女菜穂
2023年01月19日岩井秀人が脚本・演出を手がける、PARCO劇場開場50周年記念シリーズ ミュージカル『おとこたち』。すでに歌稽古を始めている岩井とキャストのユースケ・サンタマリアが、現在進行形の想いを語った。岩井が主宰するハイバイによって2014年に初演、2016年に再演された本作が、今回は前野健太による音楽でミュージカルとして立ち上がる。岩井と前野は『世界は一人』(2019年)でタッグを組み、オリジナル音楽劇を創作した経緯が記憶に新しい。劇中で描かれる“おとこたち”4人のおかしくも壮絶な人生は、初演時にNHK総合『クローズアップ現代』で取り上げられ、求められる理想像と現実のギャップに苦しむ男性の生きづらさや幸せについて議論されるきっかけになった。ミュージカル化の経緯を問われた岩井は「音楽があると、観客に届くドラマの感動や衝撃のMAX値や飛距離みたいなものが圧倒的に思えて」とコメント。さらに「これまで『ミス・サイゴン』や『レ・ミゼラブル』のように社会的なテーマのある作品でないとミュージカルは成立しないと思っていましたが、今回のキャストでもある吉原(光夫)さんや(大原)櫻子ちゃんが出演していた『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』(2018年)を観て、話のスケールが小さければ小さいほどミュージカルにする必然性があると感じたんです」と続く。2011年に岩井が作・演出を手がけた「その族の名は『家族』」に出演しているユースケは「岩井くんの演出方法や舞台に込める熱、作品内容……すべて好印象で、またあの感じを味わいたいと思ってオファーを受けました」と信頼を寄せる。そのユースケに岩井が託したのは、人生との距離感がうまく取れない「山田」。共演の藤井隆、吉原、橋本さとしの演じる山田の友人たちが起伏に富んだ人生を送るのに比べて、ドラマ要素の少ないキャラクターだ。「傍観者に徹するしかない山田って、実はいちばん哀しい存在。マエケン(前野の愛称)のつくる楽曲にもメロディが無くてさ」と心なしか淋しそうなユースケ。すると岩井が「山田を除く登場人物には、大きな葛藤を抱え裏切りにも遭うような人生のドラマが盛りだくさん。だからおのずと旋律も豊かになるんです。一方でユースケさん扮する山田の“漂うしかない切実さ”はラップに込めようと思っていて」と構想を語る。これを受け、ユースケは「もうこうなったら“ラップのようなもの”を新しく創作するつもりでやります。僕に求められているのは歌のうまさではなく、きっと“僕にしか歌えない歌”でしょうから」と意気込んでみせた。公演は2023年3月12日(日)~4月2日(日)、東京・PARCO劇場にて。その後、大阪や福岡にも巡演する。ぴあでは東京公演のチケット購入時に座席指定できる。取材・文:岡山朋代
2023年01月16日「ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs氷帝」が、1月7日(土)に東京・TACHIKAWA STAGE GARDENで開幕した。2021年5月のお披露目会に始まり、これまで地区予選・都大会と2回の本公演を行ってきたテニミュ4thシーズン。関東大会緒戦の様子が描かれる今回は、青春学園中等部テニス部の主人公・越前リョーマ(今牧輝琉)や部長・手塚国光(山田健登)らの前に、「敗北した者は即レギュラー落ち」という徹底した実力主義の氷帝学園中等部が立ちはだかる。一幕は氷帝による華々しいプロローグで幕を開けた。テニスにすべてを捧げる決意を歌い上げる青学(せいがく)のナンバーで校内ランキング戦が繰り広げられる中で、前回リョーマに敗北して控えとなった乾による得意のデータテニスや、部活に来なくなってしまう桃城の葛藤などが綴られる。テニミュ4thシーズン初参加の氷帝キャストも個性を存分に発揮し、第1試合のダブルスでは向日(小辻 庵)が青学(せいがく)・菊丸(富本惣昭)と華やかなアクロバット対決を披露。宍戸(広井雄士)と鳳(明石 陸)による氷帝“最強”ペア、唯一無二のパワープレイヤー・樺地(栗原 樹)も、都大会を経てさらに力を高めた青学(せいがく)を迎え撃つ。二幕の見どころは、何と言っても両校の部長が激突する第4試合のシングルス1だろう。氷帝・跡部役の高橋は、安定した歌声と名ゼリフ「俺の美技に酔いな」を繰り出し、客席を魅了した。青学(せいがく)・手塚役の山田も魅惑の低音を轟かせる一方で、調子を崩してしまう様子を緩急のある息遣いで表現する。テニスでの死闘はボーカルで表現され、二人の熱い掛け合いが胸に迫った。出場の機会をうかがう控え選手のリョーマ、氷帝の次期部長候補・日吉(酒寄楓太)の動向も見逃せない。ラストのカーテンコールではキャストが客席を降りる演出もあり、駆け回る足音が劇場中に響いた。開幕に際して、青学(せいがく)・越前リョーマ役の今牧は「劇場内は“熱い冬”なので外との寒暖差で風邪をひかないで(笑)」とコメント。青学(せいがく)・手塚役の山田が「普段仲のよい跡部役の(高橋)怜也くんと真正面からぶつかり合う姿を背中で青学(せいがく)部員に見せていけたら」と意気込むと、名指しされた氷帝・跡部役の高橋も「僕たちがいちばん熱い試合を届けるつもりで稽古をしてきたので、その想いを初日にぶつけたい」と受けて立つ。氷帝・日吉役の酒寄は「リョーマに勝つ!という気持ちはもちろん、跡部さんに下剋上する!という気持ちも最後まで持ち続けたいです」と抱負を述べた。東京公演は1月15日(日)まで。大阪・福岡・岐阜と巡演したあと、2月25日(土)〜3月5日(日)に東京・TOKYO DOME CITY HALLで凱旋公演を行う。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2023年01月13日あの日、もし違う選択をしていたら……。もう少し勇気を出していたら……。青春時代の初恋と、あったかもしれない未来を、懐かしさとほろ苦さの中に描いていくミュージカル『once upon a time in海雲台』が1月10日(火)に東京・浅草九劇で開幕した。演出は渡邉さつき、出演は山田元、MARIA-E、中村翼、入絵加奈子。物語の舞台は今よりちょっと昔、1992年。東海で日の出の写真を撮ろうと清涼里駅を出発したラ・チョンは、電車に乗り間違え、まったく方向違いの釜山・海雲台へ行ってしまう。戻るにも終電はすでに出ており、電車でチョンと親しくなった女の子、ユン・ヨンドクは始発まで彼に付き合ってあげることに。次第に距離を縮めていく二人だったが、そんな彼らを遠巻きに見ているおばあちゃんと青年がいた。実は彼らは2050年の未来人で、おばあちゃんはこの時間を守る“タイムトレイン旅行ガイド”。青年はタイムトレインの旅行者だが、どうやら何か目的があるようで……。SF的設定と、ちょっぴりレトロな世界観が融合し、誰にでもある「戻りたいあの日」の記憶を揺り起こしていく。キャストはわずか4名ながら、見ごたえ充分。ラ・チョンを演じる山田は若さゆえの真っ直ぐさ、熱さを全面に出し爽やか。対するヨンドクは大人っぽい少女で、溌溂とした少女を演じることの多いMARIA-Eとしては珍しい役どころになったが、自分の夢や将来に悩む少女の繊細さをてらいなく表現していて魅力的だ。この二人が等身大の恋模様を描き出すところに、ファンタジー視点と波乱を持ち込んでくるのが中村演じる青年ビン。思いのままに突っ走り入絵扮するガイドをも振り回すが、そのピュアさが伝わってきて憎めない愛らしさ。そして入絵はコミカルに客席を沸かせながら、決して“お笑い要員”にならない存在感が絶妙だ。彼女の歌声が物語の深みを体現したと言っても過言ではない。作・音楽は、『SMOKE』『BLUE RAIN』『ルードヴィヒ』などで知られる韓国のヒットメイカー、チュ・ジョンファ(脚本)とホ・スヒョン(作曲)のコンビ。歴史上の偉人を題材にとることが多い彼らだが、今作はとても身近で日常的な情景を描いていて新鮮だ。音楽も90年代ポップスを想起させるような軽やかなナンバーが印象的。ゴールデンコンビの、いつもとはひと味違う魅力が堪能できる。過ぎ去った日を振り返り、想像する“あり得たかもしれない未来”は美しく、少し苦しい。しかし胸に残るのは悔恨の思いではない。思い出は切なさとともに心の小箱に大切にしまい、皆、それぞれの人生を生きる。ロマンチックな初恋を甘酸っぱく描きながら、どんな選択をも肯定しているかのような前向きなメッセージも伝わってくる、珠玉のミュージカルだ。公演は1月16日(月)まで同劇場にて。チケットは発売中。取材・文:平野祥恵
2023年01月11日懐かしく切ない初恋を、ファンタジー要素をまぶして優しく描くミュージカル『once upon a time in海雲台』が、1月10日(火)に東京・浅草九劇で開幕する。『SMOKE』『BLUE RAIN』『ルードヴィヒ』などで知られる韓国のヒットメイカー、脚本家チュ・ジョンファと作曲家ホ・スヒョンによる小品で、日本ではこれが初演。12月末、その稽古場を取材した。物語の舞台は1992年。東海で日の出の写真を撮ろうと清涼里駅発の電車に乗ったラ・チョンだったが、着いたのは釜山・海雲台。電車を乗り間違えてしまったのだ。終電もすでに出ていて、戻るには始発まで待つしかない。電車でチョンと親しくなった女の子、ユン・ヨンドクは始発まで彼に付き合ってあげることに。電話ボックスで雨宿りをしてドキドキ胸を高鳴らせたりと、距離を縮めていく二人だったが、そんな彼らを遠巻きに見ている謎のおばあちゃんと孫のコンビがいた。実は彼らは2050年の未来人で、おばあちゃんはこの時間を守る“タイムトレイン旅行ガイド”、孫と思われた青年は旅行者で……!?初めて全編を通すというこの日の稽古は「楽しいお話だから、楽しくいきましょう!」という、演出の渡邉さつきの言葉からスタート。キャストはわずか4人。集中しつつも、少人数編成らしいアットホームさも伝わってくる。冒頭は列車を舞台にしたドタバタ道中という様相。これまでの作品群ではドラマティックなイメージが強いホ・スヒョンの音楽だが、今作では軽快さも魅力。ここでは旅に出るワクワク感がダイレクトに伝わってきて、楽しい。そしてキャストの歌声が心地よいほど伸びやかだ。チョン役は山田元。甘いマスクに高身長、プリンス的役柄も似合う人だが、今回はちょっとおっちょこちょいの可愛らしい青年。これがズルいほどハマっていて、チョンの恋心に、観客はキュンキュンすること間違いなし。歌手志望ながら引っ込み思案、とある失敗を引きずってしまっているヨンドクを演じるのはMARIA-E。持ち前のパワフルボイスを存分に発揮しつつ、これまた観る者が共感してしまうだろう繊細な女の子を丁寧に作っている。軍人と謎の青年ビンの二役を演じる中村翼も確かな歌唱力とチャーミングさで作品の世界を彩り、おばあちゃん役の入絵加奈子はコミカルに笑わせたかと思いきや、物語の芯のテーマをしっとりと染みわたらせる。実力ある4人が力を合わせ、優しい世界を作り上げているのが心地よい。作品を彩るアイテムも重要なポイントだ。ポケベル、公衆電話、カメラ、ギター、始発を待つ時間、海、日の出……。ノスタルジーを誘うアイテムが、“あの日の初恋”を甘く運んでくる。切なさと少しの痛みと、あたたかい思いが胸の中に広がるロマンチックなミュージカル。開幕はまもなくだ。(取材・文:平野祥恵)
2023年01月05日最高のクリスマス気分を味わえるショー『ブロードウェイ クリスマス・ワンダーランド2022』が2022年12月17日(土)に開幕し、25日(日)まで東京・渋谷の東急シアターオーブで上演されている。2016年に日本初演された本作は、“劇場で楽しむクリスマス”として毎年上演を重ねてきたが、コロナ禍で中断を余儀なくされ、今回は3年ぶりの来日公演となる。これまでの『ブロードウェイ クリスマス・ワンダーランド』日本公演にすべて出演してきたシンガーのサム・ハーヴィーは「3年ぶりに日本に戻ってこられてとても嬉しいです。劇場の方、クルーの皆さん、そして何よりお客様。お会いできるのを楽しみにしています」と話す。開幕を前に行われたゲネプロ(総通し舞台稽古)を見た。幕が開くと、そこはまるで銀世界。舞台上は白を基調とした衣装を身に纏ったキャストがそろい、銀色のテープカーテンや雪の結晶を模したパネルで彩られていて、一気にクリスマスの気分に引き込まれる。「Jingle Bells(ジングル・ベル)」や「All I Want for Christmas Is You(恋人たちのクリスマス)」など、1幕・2幕あわせて40曲以上のクリスマスソングが息つく間もなく披露されるのだが、ゴスペルからポップスまで実にバラエティ豊かなラインナップとなっている。6人のシンガーたちが歌を聴かせる場面もあれば、ジャズダンスやタップダンス、ペアダンスとさまざまなダンスで魅せる場面、そして舞台上に現れたスケートリンクでのスケートショーのシーンもあって、「次は何が起こるのだろう」とプレゼントを待つ子どものようにワクワクした。赤い服に白い髭のサンタクロース、巨大なクリスマスツリーやステンドグラスが輝く街並み、クリスマスカラーのキラキラとした衣装など、見た目の華やかさもあいまって、最高のクリスマス気分を味わえると思う。今回が初来日となるシンガーのサラ・バマーは「この美しい東京、そしてシアターオーブという劇場で歌えることにとってもワクワクしています。ショーを見て笑顔になって帰っていただけたら嬉しいです」とコメントしている。公演は25日(日)まで。取材・文:五月女菜穂
2022年12月19日永瀬正敏主演の映画として人気を博した「私立探偵 濱マイク」シリーズの第1弾を舞台化した「私立探偵 濱マイク-我が人生最悪の時-」が12月15日(木)に開幕した。横浜・黄金町の映画館の2階に事務所を構える探偵・濱マイク。行きつけの麻雀屋でのケンカをきっかけに知り合った台湾人・楊海平から、2年前に来日した兄・徳健を探してほしいと依頼される。捜索を進めていくうちに徳健の失踪の裏には、帰化したアジア系外国人が組織した黒狗会と台湾マフィアの抗争があることがわかり…。舞台上には、マイクの事務所がある映画館の「CINEMASCOPE NICHIGEKI」というやや古ぼけたネオンサインが見える。ちなみにこのネオンのデザイン、マイクの事務所があるという設定の、かつて黄金町に実在した「横浜日劇」のネオンを忠実に再現している。そして、物語は古い映写機が回り出す懐かしい音と共に、さながら一本の名画のようにスタートする。2年前に、本作の朗読劇が行われているが、その朗読劇に続いてマイクを演じるのが佐藤流司。ハードボイルドだが人情家でお茶目、その反面、刑事から“野良犬”と称されるような狂気を心の奥底に秘めた主人公を魅力的に演じており、「困ったことがあったら、いつでも来なよ」という決めゼリフも様になっている。約2時間の舞台の中で、十数分に一度は激しいアクションか歌唱&ダンスシーンが入ってくるのだが、佐藤はここでもしっかりと存在感を発揮しており、華麗な身のこなしで素手のケンカからナイフ、銃を使ったファイトまでをこなし、さらにマイクスタンドを握っては自らの身の上や心情をフルコーラスで熱唱し、美声を響かせる。マイクの周囲の人々、そして今回の事件に関わってくる面々もひとりひとりが個性的。マイクの妹で物語の語り部でもある茜を演じるのは小泉萌香。彼女を大学まで出すというのがマイクの“夢”であり、彼女の存在そのものが、今回の事件に対するマイクのスタンス、ひいては彼の生き方を表している。マイクとは鑑別所時代に知り合ったという“相棒”星野をダンスロックユニット「DISH//」の矢部昌暉が演じるが(※宮本弘佑とWキャスト)、チャラさ全開で、頼りになるのかならないのか……どこか憎めない星野を好演しており、アクションでもポテンシャルの高さを見せている。寺西拓人が演じる依頼人・楊海平と、椎名鯛造演じる兄・楊徳健の関係性も切なく、哀しく、終盤に2人が背中を合わせて座り込むシーンは胸に迫る!王道のハードボイルド探偵アクションであり、バディものであり、きょうだい(兄弟/兄妹)の愛と絆の物語であり、歌あり、ダンスあり。目が離せない2時間の活劇となっている。舞台「私立探偵 濱マイク-我が人生最悪の時-」は12月18日(日)までサンシャイン劇場にて、12月29日(木)、30日(金)は森ノ宮ピロティホールにて上演。文:黒豆直樹
2022年12月16日