連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○次世代の子供達の生涯収支と住まいの関係ここのところ少し景気も上向きつつあるかもしれませんが、まだまだ若い世代の閉塞感は払拭されないようです。生涯収支、特に年金に関して不安を感じているのでしょう。本当は歴史を振り返ってみても先々が明るく見通せた時代はほとんどないのですが、それはまた別の機会にお話することとして、一つだけこれからの世代の生涯収支を考える上で、住まいに関して重要なポイントがあります。今や企業の採用も日本人にこだわらず世界の若者へと広がりを見せています。日本企業のトップも外国人が担うことも珍しくなくなりました。今後はその傾向がますます加速すると思われます。そうした状況下において、資産としての住まいの位置付けは、これからの若い世代にとって今まで以上に重要なものになっていくでしょう。ヨーロッパの石積み建築を考えれば建物の耐用年数は数百年です。つまりヨーロッパの若者は、生涯を通じて住まいに対して投資する必要はさほどないと言えます。いずれ親が所有していたアパートなどの一室等を引き継ぐ事ができます。一方、住まいの耐用年数が低いままであれば、日本の若者は生涯の中で必ず住まいを手に入れる費用を捻出しなければなりません。住まいの耐用年数が低いということは、賃貸価格も高いことにつながります。特に首都の東京は土地価格が高いこともあり、賃料負担はバカになりません。年金生活者にとって家賃負担は相当なものになるでしょう。従って定年までにローンを完済すれば持ち家のメリットは大きいのですが、一生の中で必ず住まいを手に入れる必要があるということは、世界の若者との競争において、最初のスタートラインからハンディを負うことになります。単に金銭的負担だけでなく、心理的負担感も少なくないと思います。日本の住まいも何代にも渡って使い続けられるだけの耐用年数を有しないと、世界的には負けていくことになります。○中古住宅はなぜ安いか - 管理の悪さが中古市場の質を低下させた戦後の高度成長期以前の住宅は、資材も満足になく、住宅を入手する資金力もあまりない中で、さほど質の高くない住まいが量産されました。建売住宅も平屋が珍しくありませんでした。私が中学と大学時代を過ごした住まいも社宅でしたが平屋でした。東京の世田谷区にあり、新宿や渋谷のターミナル駅へも電車やバスを利用して、15分程度で行くことができた便利なところでも、そんな状況でした。とにかく住むところが必要だったのです。その後急速に経済が発展する中でも手に入れたその家を代々住み続けるとはあまり考えてなく、そのためにさほど住まいの手入れに熱心でなかったと思われます。生活が豊かになるにつれて、住まいへの要望もエスカレートし、住宅産業が活性化していきました。高度成長期には資産形成も比較的容易で、ローン負担も給与の上昇が見込めるので、今ほどの負担感はなかったと思います。結局住まいを資産として大切にする意識が育たないままに、住宅の質は向上したものの、住まいの使い捨て文化が育ってしまったと言えます。住宅展示場で住まいの建築を考えている来場者と接客していると、必ず「手入れをしなくてもよい家が欲しい」という意見を耳にしました。そうしたニーズに応じて「手入れが簡単」である材料をアピールしているメーカーもありました。しかし、数千万円の住まいを手入れせずに早々と劣化させるのは、住まいという高価な資産を溝に捨てるようなものです。手入れの悪い住宅が世の中に溢れていくと共に、健全な中古住宅市場は育たず、建築時の質の高さや維持管理の質の高さは全く評価されずに、築年数のみで建物の価値が決められ、築10年もすれば、建物の価値はゼロに近づいてしまう現在の日本の中古住宅市場が形成されてしまいました。○住まいの耐用年数は何年くらい? - 法隆寺はなぜ1300年も建ち続けていられるのか?親や祖父母の住まい、近所の戸建住宅などを見ていると、到底何世代にもわたって使い続けられるようには思えないかもしれません。しかし木造住宅でも築数百年の古民家は存在します。法隆寺にいたっては築1300年にもなります。寺社建築と一般の住宅は比較にはならないかもしれませんが、「確かな技術」、「良質の材料」、「どこまでも使い続けることを前提としている」、「周囲の環境」、「徹底した維持管理」が、長く使い続けられる理由でしょう。それらは寺社建築でも一般住宅でもなんらかわりません。寺社建築ほどの技術はなくても、それを補う工法が開発されています。太い樹木1本を丸々柱にすることはできませんが、耐力壁などでカバーする方法もあります。広い境内はなく密集地に建っていても防火性能の高い材料もあります。少なくとも、長く使う意思としっかりした維持管理があれば、100年程度は優に使い続けられるでしょう。使い続ける意思と維持管理を行う意思が何よりも大切なのです。長く使い続ける前提として、子供から孫へとうけつぐのが理想的ですが、これからの時代は海外勤務や地方への転勤、移転も少なくないでしょう。子供や孫が使わなくなっても、貸し出したり売却したり、新たに購入したりする時に、資産として正当に評価してもらうためには、健全な中古住宅市場が不可欠なのです。○中古市場の健全化 - 住まいを資産とする自覚が健全な市場を育成する何よりも長持ちさせることを前提に良質の住まいを手に入れて、維持管理を行うことの積み重ねが良質の中古住宅市場を形成する最初の一歩だと思います。日本の戸建住宅の耐用年数の低さは、環境保全の観点から世界の国々から批判の対象でした。私もカナダの製材工場に視察に行った時、工場の責任者から、似たような批判を受けました。当初はカナダも日本に近い西海岸の木材を中心に日本に輸出していたのですが、次第に資源が枯渇し、内陸部へと移行して行っているそうです。また、日本人は木材の質に異常なこだわりがあり、木材のいいところだけを持っていくという批判もありました。アメリカやカナダの建売住宅の現場も見て歩きましたが、節あり木材は当たり前、DIYショップで売られている木材の質も日本のそれとは大違いでした。これだけ他国の良質な資源を大量に使って、耐用年数が20年程度では批判がきて当然です。政府は、その状況を打破するために、優良な住宅には様々な優遇措置を講じてきましたが、日本人の意識が変わらなければ、さほど効果がないのが実情です。(※画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年06月18日オートデスクは5月25日、建築業界向けパッケージ「Autodesk Revit Collaboration Suite 2016」を6月1日に発売すると発表した。「Autodesk Revit Collaboration Suite 2016」は建設業界におけるBIMワークフローに対応した設計業務をプロジェクトチームで効率的に運用するためのパッケージとなっており、BIMアプリケーション「Autodesk Revit 2016」、汎用2D/3Dアプリケーション「Autodesk AutoCAD 2016」、クラウドベースのコラボレーションサービス「Autodesk A360 Team」が同梱されている。また、ライセンス体系は使用期間を選択できる「Desktop Subscriptin」で提供される。価格(税別)は1カ月で4万8000円(同社オンラインストアのみの販売)、3カ月で14万3000円、1年で38万2000円、2年で76万4000円、3年で114万6000円となっている。
2015年05月25日斬新すぎる建築の数々を設計してきた建築家・藤本壮介さんの展示「未来の未来」がTOTOギャラリー・間で開催されている。 *** 藤本さんは、393もの応募案が出た青森県立美術館の設計コンペに無名の個人ながら応募。2位を獲得し異例のデビューを飾った。以後、住宅からタワーまでジャンルを問わず制作。今や日本を代表する建築家の一人に。 本展では、数々のプロジェクトから100以上の模型を展示。パッと見て面白いのはもちろん、藤本さんが「未来の種」と呼ぶ、革新的な建築の姿が見えてくるはず。 ◇information TOTOギャラリー・間東京都港区南青山1-24-3TOTO乃木坂ビル3F公開中~6月13日(土)11:00~18:00月曜休TEL:03・3402・1010入場無料 (C)SFA+NLA+OXO+RSI (C)Iwan Baan ※『anan』2015年5月20日号より
2015年05月19日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○マンションか戸建か - 再び書き出して探る本音のありか土地がある場合は別として、土地から購入して戸建住宅を手に入れるのは一般の勤労者にはなかなか難しいものです。従って選択の余地はなくマンション住まいとなります。価値観の違いによりマンション派、戸建派もありますが、一般的に資産価値の面からは戸建に軍配があがりそうです。ただし立地の良いマンションにはそれなりの資産価値がありますので、自分達の価値観を整理するために書き出してみましょう。マンションのメリット都心や立地のよいところに住める鍵一つで外出可能一時的に住まなくなっても賃貸が容易土地から購入するのと比較して価格が安い自ら維持管理する必要がない火災等の類焼の被害が少ない戸建のメリット建替えが自由・建替えないのも自由土地が財産として残る管理費が不要間取りが自由、自己表現ができるリバースモーゲージ(※)が容易(※リバースモーゲージとは:住まいを担保にして老後の資金を借り入れる制度で、死亡後に住まいを売却して精算するものです。1981年に武蔵野市でスタートしました。現在は厚生省の生活福祉資金貸付制度(窓口は各都道府県の社会福祉協議会)や地方自治体の独自の制度のほか、都市銀行でも扱っています。土地が担保対象であり、多くは戸建住宅のみが対象です)○間取りの配慮 - 自分のこだわりは永遠か?戸建住宅の場合、過剰に方位を重視したり、自分なりのこだわりに執着したりするケースがあります。一般に言われている方位は古(いにしえ)の時代に中国から導入されたもので、当時の中国の自然環境や社会環境に基づいています。そのままでは日本の自然環境に合うはずもなく、もちろん社会環境は別物です。最適な配置は地域の環境の違いや敷地の状況のほうが大きく影響するにもかかわらず、昔の中国に合わせる意味はどこにあるでしょう。また、昔と現代では住まいの性能や設備は天と地ほどの違いがあります。日本でも共通に使えた方位の考え方も現代では建物性能の向上により意味を成さなくなっています。昔ながらの方位に固執した間取りは使いにくいことが多く、住まいの資産価値にも影響します。方位をすべて満足させるとこうなるという間取りを顧客から見せてもらったことがありますが、動物園のバックヤードのような間取りで、当然建築を請負うことを断りました。本人達以外に誰も住みたいと思わないような間取りで、本人達もさぞ日々生活しにくいと思います。極端な事例ですが、方位に限らず、あまり自分達のこだわりを押し出すと、資産としての価値が低減しかねません。また自分達の価値観が永遠とは限りませんし、家族構成は子供の成長と共にあっという間に変化するでしょう。自分たちも将来使い勝手が悪くなる可能性も孕んでいます。住まいはある程度汎用性を持たせて設計しておくほうが、将来にわたって快適に使えるだけでなく、資産価値も維持できると思います。○中古マンション購入+リノベーション - 工藤夕貴さんのハリウッドリフォーム必ずしも望ましい傾向とは言えませんが、現在の日本の中古物件は実際の実力と比べて極端な低評価となっています。つまりお買い得なのです。最近安い中古物件を購入すると同時に、自分達の価値観に合わせたリノベーションを行うケースが増えています。出費を抑えつつ、戸建のメリットである間取りをある程度自由にアレンジし、自己表現できることが人気の理由です。そのための専用のローンも用意されていて、購入費用とリノベーションの費用を合わせて借り入れることが可能です。「住まいが資産である」ということと、「住まいに対する心構え」について説明するのに、工藤夕貴さんのケースを紹介することが良くあります。工藤夕貴さんがハリウッドで活躍している時代に、最初に2000万円程度の大型2DKの築27年のアパートを購入し、徹底的にリフォームしたそうです。壁を自分で塗り、マントルピースまで自作したために、かかった費用は60万円ほどだったそうです。2年後に倍の価格で売却し、プール付の戸建住宅を3700万円で購入し、3年間で400万円ほどかけてリフォームしました。当然アパートの時と同様に徹底的に自分の労力をフルに使って手直ししたそうです。日本に帰国する時に8000万円で売却できたそうで、まさに資産としては倍々ゲームです。彼女は本格的な電動工具も使いこなし、日本に帰国した現在はトラクターも運転するようです。日本人はあまり日曜大工や住まいの維持管理に積極的ではありません。特に女性は電動工具を使えない方も少なくないのではないかと思います。住まいはしっかりしたものを購入しまたは建築し、自らの労力を惜しまず使ってしっかりと維持管理すれば、高い資産価値を発揮します。またそうした住まいの価値が正当に評価される仕組みが今後の社会には必要です。次回のその点に焦点を合わせて考えてみたいと思います。「ハリウッド・リフォーム」については、工藤夕貴さんのオフィシャルウェブで詳しく説明されていますので、是非参考にしてください。「工藤夕貴のハリウッド・リフォーム」(※参考 : 過去のコラムでも「資産としての住まい」を取り上げています。是非ご参照ください)『マイホームのための街選び(3)--"資産としての住まい"を考えての街選びが重要』(※画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年05月15日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○あらためて「資産」とは何? - 資産の意味を考えれば住まいが分かる!機会あるたびに「住宅を資産としてもしっかり捉える必要がある」ことを唱えてきました。もちろん住まいを金銭だけで捉えることもまた問題ではあります。住まいは家族の夢を実現する場であり、家族の生命と財産を守る器であり、自己を表現する場であり、かつ資産でもある…なのです。それでは資産とはそもそもどういうものなのでしょうか。会計上の正式な用語の使い方は別として、資産とはいつか使う予定のための、あるいは活用するための、あるいは収益を上げるための預貯金や動産・不動産などです。換金できないものや活用できないものは資産とは言えないでしょう。家電製品や家具はどうでしょうか。10年程度で耐用年数が来る家電などは消耗品の部類かも知れません。何代にもわたって使い続けられるしっかりした家具などは、換金できるかどうか分かりませんが、絶対に必要なものであれば、買えば相当な金額となるので「資産」の部類に入れられるかもしれません。では住まいはどうでしょうか。消耗品でしょうか。今までの日本では住まいの耐用年数は20数年と短く、消耗品的な扱いを受けてきた面は否めません。高度成長期においては住宅ローンで家計が破綻するケースは少なく、住まいを活用する必要性は、さほど認識していなかったかもしれません。しかし数千万円の費用を費やし、ローン総返済額はさらにそれよりも多くなる住まいが「資産」でなく消耗品であるとすれば大浪費でしょう。今の住まいは維持管理さえしっかり行えば、100年は優に使えます。住まなくなれば売却して換金も可能です。住まいは最大の資産で、長持ちさせなければならず、そのための労力を惜しんではならないのです。○生涯住居費は持ち家・賃貸どちらが有利?住まい関係の雑誌等で、この話題は数10年にもわたって、その折々に話題に登場してきました。そもそも価値観の異なるものを同じ土俵に上げること自体、意味のないことなのですが、何度も話題になるのにはそれなりの理由があるはずです。日本の持ち家率は年代が進むにつれて高くなり、70代では80%以上となっています。つまり持ち家が日本人の基本路線であり、生涯賃貸で過ごすという意思を持つには、確固たる理念があるはずです。実際は、堅実な人生設計や貯蓄がなされなかったり、やむを得ない諸事情で、持ち家を断念せざるを得なかったりするケースということではないでしょうか。持ち家を購入する能力がありながらの"積極的賃貸派"は独自のしっかりした人生設計が必要で、そのようなケースは日本人の中にはさほど多くはないと思います。それにもかかわらず、度々話題に取り上げられるのは、バブルで持ち家を断念せざるを得なかった時期、低成長時代に突入して、若者世代に漠とした不安が広がっている時期などに、マスメディアが迎合している結果のように思います。実際比較検討した場合の生涯収支は、どの時代も共通してほぼ同じという結果となっています。しかし仮定の理論とは別に、実際は住む地域、戸建かマンションか、立地条件や市場性、建物の耐用年数などで大きく変化すると思われます。政府が推奨する長期優良住宅の場合は、単世代で採算の是非を論じること自体に意味がありません。住まいの選択は生涯収支の有利不利よりも、自分達の価値観や万一の時にどう活用できるかのリスク回避の面で考えるべきでしょう。○持ち家と賃貸、メリット・デメリット下記に持ち家と賃貸のそれぞれのメリットを挙げてみました。そのほかにも個々にリストアップしたい項目があると思います。一度家族でリストアップしてみて、どのメリットが重要か、反対にデメリットに対する対策は何があるかなどを考えてみると、自分たちにとってどちらが良いかが浮かび上がります。書き出してみる手法は、ファイナンシャルプランニングの手法の一つで、本格的に行ってみると、思わぬ結果に驚くことも少なくありません。持ち家のメリット資産が残る家賃を払わなくても済む自由に自分を表現できる子供にとって思い出の家が存在する幸福感が得られる賃貸のメリットローン負担がない身軽に好きな町や地域に転居できる災害で家という資産を失うリスクがない転勤や転職で家の対策を考える必要がない○リスク対応力はどちらが強い?生涯住居費が地域性などの条件によっては大きく異なるとは言え、人生の岐路に立った時に、持ち家と賃貸でどちらが安全か、どちらが有利か、が問題となります。ローンで破綻する、あるいは災害等で住まいを失うが持ち家の最大のリスクだと思います。失業・病気・死亡などによってローンの返済が困難になる場合を考えてみましょう。これからの時代、一生同じ会社にいられる確率は少なくなりつつあります。従ってローンを組む時はその対策をたてて組む必要があります。しかしその気になれば失業してもまったく職がないということはありません。配偶者が働くこともできますし、最低収入はある程度確保はできるでしょう。生活をある程度は絞ることも可能でしょう。重要なのは、ローンが支払えなくなった時に、それまでの意識を変えられるかどうかなのです。ローンの借り入れ時にはほとんど団体信用生命保険に加入しますので、死亡の場合や一定の障害を負った場合はその後の返済は免除されます。また、ローンの残債よりもその時々の売却価格が高いような資産として目減りのしない物件であることも重要です。つまり、人生設計をしっかり立てて、リスクに対応する措置をとれば、万一の場合でも家賃を払っていかなければならない賃貸のリスクの方が大きいと思います。ただし、災害リスクの高い地域やエリアに住まいを所有するリスクは大きいので、地域を選ぶか建物の構造や保険などの対策が重要となります。日本は地震国ですので、持ち家、賃貸にかかわらず、リスクの大きい地域やエリアに住むこと、地震に弱い建物に住むことには最大のリスクです。<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年05月11日オートデスクは5月7日、建築・土木インフラ業界向けBIM/CIMアプリケーションパッケージの新バージョン「Autodesk Building Design Suite 2016」と「Autodesk Infrastructure Design Suite 2016」を5月15日より発売すると発表した。これら2種類のパッケージは、建築・土木業界の幅広い業務ワークフローにBIM/CIMを適用しながら、企画、設計、施工、維持管理を効率的に行えるよう支援するパッケージとなっているという。また、同社のクラウドサービス「Autodesk A360」を必要に応じて組み合わることで、チームコラボレーションやシミュレーションなどの機能を利用でき、時間や場所、端末の種類を気にせずにプロジェクトに参加することができるようになる。
2015年05月08日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○不要品の整理で家具転倒リスクを軽減 - リフォーム時がチャンス!阪神淡路大震災では多くの方が家具の下敷きになって亡くなられました。日本の住まいはモノにあふれすぎています。私の子供の頃は、茶の間には茶箪笥と座卓くらいしかありませんでした。寝室にはほとんど何もなく、あったとしても鏡台や整理ダンスくらいでした。建物さえ倒壊を免れれば、家具の転倒の下敷きになって命を失うリスクは比較的少なかったと思います。しかし、現代の住環境はどうでしょうか。リビングダイニングを考えれば、ダイニングテーブルと椅子・ソファー・サイドボード・食器棚・テレビ・オーディオ機器などがあるのではないでしょうか。背が低いものでも安全というわけではありません。モノが室内にあふれていればいるほど、地震による被害のリスクは高まります。耐震リフォームの際は、不要品を徹底的に処分し、既存の押入やクローゼットの中に空き空間を確保し、できるだけ室内にモノを出さないように収納の中に納めるように考えてください。徹底的に不要品を処分しても収納が不足するのであれば、新たな収納を増設するか、そのスペース的余裕がなければ、貸し倉庫やコンテナの利用も考慮に入れてモノの管理を徹底してください。家具の固定などはその先の問題です。○収納の見直し - 工夫次第で既存収納の収納力倍増!リフォームや建替えを決心した理由として最も多いのが収納の不満だそうです。しかし元々さほど広くはない日本の住まいに新たに収納スペースを確保するのはかなり困難な問題です。そこで押入やクローゼットの中をより効率的に改造して、室内にあったモノをできるだけ多く取り込んで、すっきりと生活することも立派な耐震リフォームです。特に押入の天袋やクローゼットの枕棚は使いやすいとは言えません。マンションの収納などは、工場で効率的に生産するための規格化と、輸送面、施工面を考えて高さ2m以下の箱タイプがほとんどで、上部に枕棚があってその下にハンガーパイプのスタイルが大半ではないでしょうか。わが家も同様でした。わが家ではリフォームに際して、この枕棚を撤去し、天井に直接ハンガーパイプを取り付け上下二段にしました。奥行も85cmと深かったので、前後二列にして、合計3本のハンガーレールとしました。デッドスペースがなくなり、これだけで収納量は3倍です。季節の入れ替えからも開放され、住まい全体の既存の収納は満杯どころか空きスペースもできたくらいです。○家具のレイアウト - 明暗を分ける家具のレイアウト地震がどのように揺れて家具がどのように動くかは、起きてみないと分かりません。地震の威力は想像以上で、大きな箪笥も宙を飛んでくると思わなくてはなりません。それでも被害を最小限にするためには家具の配置は大切です。耐震リフォームの際は、家具は納戸やウォーキングクローゼットの中に仕舞うようなリフォームを心がける事が一番ですが、室内空間に配置する場合は箪笥がそのまま寝ている位置に倒れ込まないように、特に頭を直撃しないように配置してください。簡易的な転倒防止金物は万全とは言えません。先ずはレイアウトで極力被害を少なくする工夫を考えてください。○家具の固定 - 転倒防止金具だけではない、家具の固定方法阪神淡路大震災に続き、東日本大震災を通じて防災意識も高まり、家具の転倒防止の必要性も認識されていると思います。転倒防止金物も広く認知されていると思いますが、皆様のご家庭ではいかがでしょうか。狭い日本の間取りでは、家具は倒れたら必ず家族を直撃することは避けられません。しかし、転倒防止金物の多くは見栄えも悪く、また本格的に固定しようと思えば大切な家具にビスなどの穴を開けることになります。高価な桐ダンスや婚礼家具セットなどは、人命第一とは思っても少々残念な気持ちにはなるでしょう。そこで、そうした金具を使わずにスマートに耐震リフォームする方法を考えて見ましょう。下記の写真はわが家のダイニングとキッチンを分ける食器棚です。もともとリビングダイニングとキッチンがワンルーム形式の間取りで、キッチンとリビングダイニングを分けるために両面使いの食器棚をおいていました。当初は食器棚の上部の壁はなく、食器棚は自立していて、天井面との間に突っ張り形式の転倒防止金物を設置していました。側面は日曜大工で作った天井までのL型の壁で冷蔵庫を隠していました。東日本大震災の時は、そのためか幸いにも家具は転倒せず、中にあった食器も不安定なワイングラスを中心に一部の食器が転落して割れた程度でした。わが家も昨年リフォームしたのですが、本格的に耐震性を確保するために、天井から食器棚の上面までの壁を設置しました。壁の裏側(キッチン側)は棚になっていて、モノを収納する事ができます。食器棚を棚の面で固定しますので、壁が破壊されない限り食器棚は倒れる事がありません。食器棚をセットする都合、食器棚と棚にはわずかな隙間が必要ですが、念のためにゴムのピースを差し込んであります。リビングダイニングからの見栄えもよくなり、耐震性能も向上し、収納も増設されました。また図のように家具の上面に色調や雰囲気を合わせた材質で丈夫な棚や新たな収納を新設して、家具を固定する方法もあります。耐震性を高めるとともに収納量のアップも期待できます。家具の転倒防止金具やグッズは様々なものがあります。適材適所、使用注意書きをよく読んで使用してください。組み合わせによっては、互いに力が反対に作用し、逆効果の場合もあります。<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年04月23日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○支援制度活用のポイント - 耐震診断は信頼できるところに!高齢者世帯などの被害が多い悪徳リフォームの事例として、補強金具の類が意味のない位置に、意味のない形で取り付けられているケースがよく報道されていました。耐震補強金具は取り付ければよいというわけではなく、有効に働くように建物全体のバランスを見て、正しい位置に、正しい方法で取り付けなければ意味がありません。取り付け位置や方法によっては、意味がないどころか、全体のバランスが悪ければ、建物にいびつな力が働き、地震への対応力を弱めて結果になりかねません。無駄なお金を使わないためにも、いきなり耐震工事をするのではなく、しっかりとした耐震診断を依頼してください。できれば工事会社と診断会社は別の方が公平を期待でき、安心です。耐震リフォームの支援制度は、情報・補助金・融資・税制などがあります。どうすれば安心できる耐震改修リフォームとなるのか、先ずは情報収集から利用しましょう。大半の都道府県は耐震診断・改修設計・改修工事すべてに支援制度を設けていますが、改修設計や改修工事については支援を行っていない都道府県もあります。詳細は管轄の地方自治体へ問い合わせください。また、住まいが幹線道路等に面している場合は、耐震診断が義務付けられている場合があり、支援も別途設定されています。○耐震改修補助金制度 - 耐震改修事例を多く入手しよう管轄の市区町村で、耐震診断や工事の依頼先がリストアップされています。診断方法や耐震設計、耐震改修工事の実績などを担当者に相談してください。建物の設計図などを持参すると相談しやすいと思います。最初の診断の相談の時に設計や工事までの流れと仕組み等を一気に把握することをお薦めします。どのような診断をして、どのような工事を行うのか。おおよその費用はどの程度かなどを把握し、補助金制度の有無と併せて、支出しなければならない費用を算出します。補助金の割合は下記の表となっています。詳細は地方自治体にお問合せください。○融資の支援制度 - リフォーム融資の制度は耐震リフォームが要住宅金融支援機構の業務は、一般の住宅ローンについては「フラット35」のように民間住宅ローンを証券化する役割となっていて、支援機構自体は直接の融資を行っていません。しかしリフォーム等については独自の融資制度があります。一般的な改修工事も融資の対象とはなりますが、必ず耐震改修工事を併せて行う必要があります。(※参考:その他に、返済が利子相当分だけで済む高齢者向け返済特例制度もあります。詳しくは住宅金融支援機構にお問い合わせください。『住宅ローンとの賢い付き合い方(3) - リフォームローンにもある減税制度』でも解説していますので参照ください)○税制上の優遇制度 - リフォーム減税制度のメインは耐震改修政府が設けている制度は、当然ながらその目的や狙いがあります。住宅の分野の政策は、住まいが衣食住のひとつで生活上必要なものであること、金額が大きく関連産業の裾野も広いことなどから、経済の活性化の目玉として位置づけられてきています。それに加えて耐震リフォームは、生命と財産を守るという役割の大切さや、一旦地震が発生したならば、二次災害を含めて被害は膨大になり、国の支出も膨大に膨らむことから一般のリフォームやバリアフリー、省エネリフォームよりも重要な位置付けにあり、優遇制度の要となっています。(※参考:リフォームに関する減税制度については、『住宅ローンとの賢い付き合い方(3) - リフォームローンにもある減税制度』を参照ください)<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年04月16日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○地震に対処する3つの方法 ~電車のつり革の役割は免震? 制震? 耐震?~免震・制震・耐震構造の違いを説明する時は、いつも電車の車内の状況を使って説明しています。電車に乗っていて急発進や急停車した時に、つり革につかまっていた状態はどうなっているのでしょうか。体は大きく揺れますが、つり革につかまっている腕の力でそれ以上は倒れません。腕をグィッと引いて体を元に戻すでしょう。もしつり革が強力なバネでできていたら、体はバネの力で元の状態に揺れ戻されます。この腕が引き戻す力やバネの動きの仕組みが「制震」構造と言われるものです。一方、今回のテーマの「耐震」構造は自らの耐力を向上させて揺れに対応するもので、電車の車内であれば、座席や手摺に体を固定して、電車の揺れに備える場面をイメージしてみてください。ただ単に立っているより、遥かに電車の揺れに対して安全です。「免震」構造を説明するのは少し難しいですが、ローラースケート靴を履いた状態で電車に乗っていることをイメージしてみてください。揺れに対して体は滑っていきますが、ローラースケート靴と体が一体であれば倒れることはありません。しかし車内をどこまでも滑っていってしまっては問題ですので、元の位置に戻す制震構造と組み合わせるのがベストです。住宅の地震に対応するリフォームは「耐震」が中心ですが、制震金具を取り付ける方法や、まれではありますが免震的な対処方法もあります。しかし地震に強くするためには、ただ単に金具で固定すればよいというものではなく、バランスが重要です。また組み合わせ方によっては逆効果になりうる場合もあり、どの方法を採用するかは個々のケースで判断する必要があります。○地震に対処する4つのポイント ~砂上の楼閣とならないためには~建物は地面に支えられています。地面が軟弱であれば、地上の建物がどれほど強くても意味がありません。地震の揺れで起きる液状化現象により、建物が傾いた事例は東日本大震災でも多く報告されています。また地盤だけでなく、地震が原因の火災や津波、堤防の決壊などによる洪水なども視野に入れておく必要があります。東日本大震災では、地震そのものでは無傷の建物が津波で流されている映像を目の辺りにしました。阪神淡路大震災でも多くの建物が二次災害の火災で延焼しました。ポイント1:派生する二次災害への対処今回のテーマではありませんが、実際は直接的な建物の倒壊より、より多くの人命が失われるのが二次災害です。この点も頭に入れて地震対策を考えてください。ただし、移転したり耐火構造にしたりと、簡単に解決できるものではないケースがほとんどでしょう。何度も繰り返しますが、リスクはゼロにはできません。どれだけ少なくできるかだけです。考えすぎて対処が遅くなるよりは、当面建物だけの範囲の耐震化に特化することもリスクを少なくする上では大切です。ポイント2:地盤は地震の際に建物を支えられるか地震がなくても、埋立地は地盤の沈下が置きやすい場所です。特に元の地形が斜面である場合は、斜面の低い部分の沈下の度合いが大きく、不同沈下を起こし、建物が傾く要因です。新築時に地盤の状況に見合った対策(杭・地盤改良・基礎の巾の拡大)を行っていない場合は、基礎や地業(※)の補強が重要課題です。(※ 地業とは、基礎を支える地盤面以下の部分のことを指します。地業工事とは基礎底の下に設置する割栗石、杭、地盤改良等の工事で、基礎を支える地盤面を強化したり、基礎をしっかり支えたりする役割を持ちます)ポイント3:建物を堅固にするには前回紹介した『誰でもできるわが家の耐震診断』(国土交通省監修)の後半に、木造住宅の主な補強方法が解説されています。下記に基本的な考え方をまとめておきます。ポイント4:家具や屋外の塀等の転倒防止対策阪神淡路大震災では建物だけでなく、家具の下敷きで多くの方が亡くなりました。家具や屋外工作物の対処方法は後日「耐震リフォーム(4)」で詳しくまとめてみる予定です。○地盤の強化 ~後からの工事では限られる耐震補強方法~地盤を強化する地業工事は本来建物が建つ前に行うものであり、様々な方法がありますが、建物が建っている状態での地盤の強化はかなり難しくなります。住宅に使用される地盤補強方法は次のようなものがあります。目的が耐震補強なのか、液状化対策なかで、適した工法が異なります。また軟弱地盤の深さ、地下水位や周囲の地形なども考慮に入れる必要があり、かなり難しい判断を必要とします。杭…固い地盤面まで杭を到達させて、その上に基礎を載せる方法です。価格は高めですが、確実な方法です。建物が建った後ではほぼ不可能です。地盤改良(1)…表層の軟弱地盤を強化する方法と、基礎の下をいくつも円筒状に掘削してセメントミルクなどを混ぜて、柱状に固める柱状改良があります。いずれも建物がある場合は難しくなります。地盤改良(2)…土に石灰や膨張性樹脂などを注入し、土の中で膨らませて建物の下の土の密度を高める方法です。建物が存在しても比較的容易に工事ができるのが特徴です。各社独自の方法があり、実績等を充分にチェックして判断ください。擁壁等の強化…道路や隣地と高低差がある場合は、土止めの擁壁があります。擁壁には鉄筋コンクリート造や加工された石材=間知石積みのものなどがあります。しかし違法なコンクリートブロック積みのものも少なくありません。擁壁の構造は建築基準法で定められていて、例えば鉄筋コンクリート造の場合、一定間隔で水抜き穴等が必要です。この水抜き穴のない違法のものも多く見られます。またコンクリート面が膨らんでいたら、中の鉄筋が錆びている可能性があり、擁壁としての性能が低下している可能性があります。○建物を強化する ~使い方を間違うと逆効果の耐震補強~阪神淡路大震災では多くの建物が倒壊しましたが、中には本来地震に強くするための筋交いが梁を押し上げて梁が柱から外れて破壊されたケースも見られました。筋交いの取り付け方、金物の取り付け方などで、逆効果の場合もあるのです。構造材の固定…基本は基礎・土台・柱・梁・屋根のそれぞれの連結部分を金具等で固定強化していきます。基礎と土台はアンカーボルトで固定されていますが、柱が土台から抜けてしまって倒壊につながった事例が多くありました。そのために最近は土台と柱を固定する金具を取り付けたり、直接基礎と柱を連結するホールダウン金物で柱を固定したりします。本来新築時に取り付けるものですが、耐震補強用の後付タイプもあります。壁の補強…耐力壁とは、通常の壁とは違って、所定の太さの筋交いが入っていたり、構造用合板で固められていたりする壁のことです。壁をそのような構造に補強するほか、壁そのものがなければ、壁を追加して補強します。どうしても外部への視界を維持したい場合は、強化ガラスなどで耐力壁を作った例も報告されています。屋根の軽量化…屋根が瓦葺きの場合は、屋根材を軽い素材のものに葺き替えると耐震性が向上します。公共の建物などは上層階を解体減築して耐震性を高めた事例もあります。(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年03月24日ファッションウィーク東京2015の一環として、3月19日から22日まで「アドレッシング(AD- DRESSING):ファッションと建築における対話」が開催される。会場はライト ボックス スタジオ青山。同イベントはオーストリアの新鋭ファッションブランドを広くアピールすることを目的としたもの。会場では彼らの15SSコレクションや、15-16AWコレクションが展示される。更に、“形と機能とのアンビバレントな関係は、形そのものが機能となる方向へと変化したのか?”“現在のデザインでは、機能に添った形を創りだすのではなく、形そのものが機能によって決定されると言えるか?”などをテーマでディスカッションを行い、応用美術領域でのファッションと建築について言及していく。イベントに参加するのは全部で10ブランド。ウィメンズからは女性ファッションとアクセサリーを中心に、文化的多様性やステレオタイプを含んだハイブリッドな作品を展開する「ブラダリッチ・オーマエ(BRADARIC OHMAE)」や、“ガールス”と“レディース”の融合を打ち出す「メシット(MESHIT)」などが登場。「ディーエムエムジェイケイ(DMMJK)」は、繊細な材質とサブカルチャー、カモフラージュを融合させたカッティングが特徴のアイテムを展開。「ネイチャース オブ コンフリクト(NATURES OF CONFLICT)」は、デザインの全体と部分の構成を新たに定義することで、変則的なデザインを生み出している。その他、アクセサリーやバッグのブランドからは、「エヴァ ブルート(EVA BLUT)」や、デザイナー自らがハンドメイドしたアクセサリーをメインに扱う「ウェルクプルンク(WERKPRUNK)」、「モト・ジャリー(MOTO DJALI)」、「ゴン(GON)」、「ハウス オブ ザ ヴェリー アイランズ…(HOUSE OF THE VERY ISLAND‘S...)」、「サイト・ライン(SIGHT LINE)」などのブランドからも、最新のアイテムが展開される。20日には特別ゲストとしてファッションデザイナーのエドヴィナ・ヘアル(EDWINA HORL)とまとふ(matohu)のデザイナー等を招き、トークイベント「ファッションにおける対談」を開催。一方、21日には個人家屋をはじめ、コミュニティープロジェクトやディスプレイ、家具デザインも手掛ける安部良などによる「建築における対談」が行われる。【イベント情報】アドレッシング:ファッションと建築における対話会場:ライト ボックス スタジオ青山住所:東京都港区南青山5-16-7会期:3月19日から22日まで時間:12:00から19:00(19日は16:00から)
2015年03月18日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。○考えよう! 住まいの役割とはなにかを! ~住まいは生命と財産を守る器~家族の生命と財産以上に大切なものはありません。「住まい」は、それを守る器です。明日にも起きるかも知れない大地震に対して、親として子供を守らなければなりません。住まいの耐震性能が問題ありと思うのであれば、直ちに詳細を把握して対処しなければならないはずです。『住まいと防災』シリーズの第1回に、災害の種類を表にしてあります。皆様の住まいが受けるかも知れないと想定される災害はどれとどれでしょうか。自然環境だけでなく、社会環境の項目にも地震と関係するものが多くあります。この災害リスクに対する住まいの性能が充分でなれければ、改修が必要となります。改修には費用がかかりますが、生命ほど重要なものはないはずですので、住まいの性能に対する状況把握とともに、徹底的に節約してでも費用の捻出をしなければなりません。補助金の有無等も確認ください。(※参照:住まいと安全とお金 第1回『住まいと防災(1)--考えなければならない防災とは?』)○国や自治体がネット上で提供している情報は貴重~情報はできるだけ生のものを~ネット上には政府や自治体、外郭団体等による防災データがいろいろ掲載されています。防災の心構えから詳細のデータまで様々ですが、このコラムを通じて最終的には是非、直接生のデータに触れてください。このコラムはそのための水先案内人だと思っています。現代はいろいろな情報があふれています。雑多な情報が飛び交う中、とかく末端の情報に左右されがちです。大切な事柄に関しては、できるだけ直接的なデータに触れる事を習慣付けてください。新聞で気になる情報を見つけたら、図書館等で数紙を比較してみてください。さらにデータ元のHPを検索して、より詳細の情報をチェックしてみてください。命にかかわる情報が最も重要な情報なはずで、一生の中で、そのような重要な情報はそれほど多くはありませんので、その時くらいは徹底的に情報収集ができるはずです。○住まいの性能は何で決まる? ~住まいの性能は最も弱い部分で決まる!~国の性能表示制度では、性能評価は10項目あります。耐震性能に直接大きくかかわるのは以下の築年数、地盤、構造体、管理の4つの項目です。弱い地盤に適切な事業や基礎が施されていなければ、その他の性能が高くても意味を成しません。過去にリフォームが行われている場合、壁や柱を撤去していることが少なくありません。阪神淡路大震災では、隣り合わせに建っていた全く同じ間取りの分譲住宅が、その後のリフォームの違いにより、倒壊と補修で済む状態の明暗を分けた事例が報告されています。建物の性能のチェック項目○ネットで簡単チェック! 我が家の耐震性能~簡単な事から動き始めよう!~我が家がどの程度の耐震性能があるかの判断は、なかなか難しいものです。地方自治体では診断の補助や診断機関の斡旋を行っているところもありますが、ますは自分で診断してみましょう。国土交通省監修の『だれでもできるわが家の耐震診断』は、文字どおり誰でも簡単に自分の家の耐震性能をチェックできます。リーフレットになっているものと、ネット上で診断するタイプの二通りあります。診断項目は10項目で、どのような部分が耐震性能に影響するのかがわかりますし、簡単なチェックでおおよそ自宅の耐震性能がどのレベルかが分かります。専門家に依頼する前に自己診断しておくと、建築士の説明も理解しやすいと思います。あまりに結果が悪ければ、耐震リフォームが待ったなし! と言うことも理解できます。また余談ですが、中古住宅などを購入する時に、図面などから耐震性能を診断するのにも利用できます。誰でもできるわが家の耐震診断国土交通省監修誰でもできるわが家の耐震診断(国土交通省インターネット版)<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年03月16日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。今回は趣向を変えて、あまり知られていないローン形態や住宅ローンの背景にある社会経済なども交えて雑学的に綴ってみたいと思います。日本人の多くが利用する住宅ローンですが、誰もが利用しているものだからと安易に事を運んでは、取り返しのつかない局面に陥らないとは言えません。ほんの少し、取り巻く社会体制や契約の仕組みなどを知っておくだけで、危険を回避できる場合もあります。年収の数倍の借金であることを忘れてはいけません。○住宅ローンの金利と社会経済 ~風が吹けば桶屋が儲かる~消費金額が大きいことと、関連産業の裾野が広いがために、住宅政策は長年政府の景気テコ入れの目玉として扱われてきました。「住宅ローンとの賢い付き合い方(2)」の文末で、住宅ローンの適正金利は6%程度と言われていると述べました。ローンを借り入れる時には少しでも金利が低い方が助かります。しかし本当に金利は低いままが理想的なのでしょうか。適正金利の意味合いは、金利が6%程度であれば、社会経済が活性化し、健全な成長が生まれ、所得も増え、資産価値も増し、相対的に返済の負担が減っていき、その事が消費を促し、さらに経済が安定していく循環を生み出すと言うことです。今は低金利であっても不安がいっぱいかもしれませんが、高度成長期の高金利時代の方が、気持ち的な余裕があったと思います。まさに「お金は天下のまわりもの」なのです。サブプライムローン(※)の破綻が世界の経済を大きく左右したことは記憶に新しいところです。「低所得者でも家が持てる」というメリットだけに目を向けて、そのリスクに目を向けなければ、大きな問題となります。個人として身を守るためには、現在の低金利に安穏とせずに、お金がまわらない社会のリスクにも目を向けて、ローン管理する事が肝要です。※ サブプライムローン…米国で低所得者に高めの金利と住宅を担保にして提供される住宅ローンです。ローンを借りた債務者は、万一破綻すれば住宅を放棄すれば債務は残りません。好景気で不動産価格が上昇していれば、ローン残高を上回った価格で取引され、投資家の損失はありませんが、景気が低迷するとリスクは大きくなります。米国のサブプライム問題は経済破綻の要因として取り上げられていますが、お金がまわらなくなった要因は、「適正」でない金利や仕組みであり、「適正」であることは経済の安定に非常に重要なのです。プライム(=優れた)にサブがつくと信用度が低いとなります。信用度が低いために証券化して投資家にリスクを転化させているのですが、証券化された証券を繰り込んだファンドをさらに組込んだ商品を開発し、そのまた商品を組込んだ…と細分化されていき、リスクの高い証券が拡散していきました。○出来高払いの住宅ローン ~工事中の建物は誰のもの?~町の工務店に工事を依頼するときに心配なのが、規模が小さいが故の工務店の倒産です。よほど信頼できる会社でないかぎり、手抜き工事の不安もあります。本来は長年その地域信頼を勝ち得てきた工務店は、建てた後も住まいの主治医として何かと面倒を見てもらえる存在です。しかし昨今、大会社も社会の変化に対応できずに倒産するケースは少なくありません。工事途中に倒産した場合、工事中の建物は誰のものでしょうか。着工金や中間金の支払いを済ませているので、当然施主は自分のものだと思いがちです。しかし、工事中の建物は等しく債権者の物です。もちろん施主も債権者ですので、工事中の建物の権利の一部は有しています。以前は他の債権者が工事中の建物から金目のモノを持ち去ってしますことが少なくありませんでした。それを防ぐには24時間見張っている必要がありますが、ほぼ不可能でしょう。「出来高払いの住宅ローン」は、建築工事着工前に住宅ローンが実行され(一般のローンは完成後の登記後に実行される)、つなぎローンが必要ありません。工事中は工事の進捗に応じて融資が実行されますので、基本的に建物のできたところまでは自分のものとして引渡しを受けたと同様に認識でき、工事会社が倒産しても建物の完成した部分を自分のものとして主張しやすくなります。住宅完成保証(※)とセットになっていれば、より安心です。※ 住宅完成保証制度…日本の法律では、新築住宅の請負人または売主は引渡しから10年間、瑕疵担保責任を負い(「新築住宅の請負契約または売買契約における瑕疵担保責任の特例」)、かつ円滑に履行されるための法律(「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保に関する法律」)により保険の加入等が義務付けられていますが、引渡し前の工事中の建物を守る法律はありません。個人として対処するには住宅完成保証制度に加入する方法があります。※ 建築中の災害(地震や津波)で建物が損失した場合の責任は?…地震国の日本では普通に起こりうるリスクで、実際に阪神淡路大震災や東日本大震災でも、こうした事態が発生していると思います。通常、建築会社は工事中の建物に火災保険を掛けます。しかし、地震が原因の火災には対応していないケースがほとんどです。地震保険もあるようですが、現実的には保険会社が引き受けるとは限りません。請負契約は本来完成品を引き渡すことを目的としています。従って引き渡し前の損失は工事店が責任を負うのが本来ですが、一般的に使われている旧四会連合協定の工事請負約款には、自然災害の地震や津波などの不可抗力による重大な損失は施主がその責任を負うと記されています。○預金連動型住宅ローンとは ~金利が0%? 預金連動型住宅ローン~預金連動型住宅ローンは、普通預金額に相当する分の利子が軽減されるタイプの住宅ローンです。住宅ローンの借り入れ金額と同等の普通預金があれば、金利はほぼ0%に近づける事が可能です。長期の固定金利商品がなく、当初の金利も高めですが、「住宅ローンとの賢い付き合い方(2)」で頭金の額について述べたように、万一の場合に使える現金を残しておく必要がある場合は便利です。変動金利のリスクもあるので、預貯金は温存したいけど短期で繰上げ返済可能な共働き夫婦などは検討しても良いでしょう。東京スター銀行が開発した商品で、扱っている銀行は少ないので、事前に確認ください。○上限金利付変動金利型ローン ~固定金利期間選択型のローンとどう違う?~キャップ付き住宅ローンとも言われ、扱っている金融機関は多くはありませんが、労働金庫で商品化されています。キャップ期間といわれる特約期間(5年、10年)は、上限金利を上回りません。上限金利内で変動するだけです。特約期間が過ぎれば、金融機関によって異なりますが、変動金利や固定金利、上限金利付変動金利などを選択できるのが一般的です。<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年02月23日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。住まいを新規に取得する時の住宅ローン減税等については様々な情報が提供されていて、各種優遇措置や減税などについても広く周知されています。ところが意外に知られていないのがリフォームローンに対する優遇措置や減税制度です。政府は環境保全の観点から住まいをできるだけ長持ちさせるための耐震性能と長く住み続けられるためのバリアフリー仕様にリフォームする場合などには優遇措置を強化しています。住まいは安全であることはもちろんですが、長く暮らし続けられることが、生涯収支を向上させます。またメンテナンスは早い段階で対応する方が少ない費用で済みます。必要に応じてリフォームローンを賢く利用する方法を考えてみましょう。○リフォームローンにもある減税制度 - 耐震・バリアフリー・省エネがポイント冒頭にも述べた通り、政府は安全な住まいを長く使ってもらうことをめざしています。従って、リフォームの優遇措置は、「耐震」、「省エネ」、「バリアフリー」が主軸となります。一般に認知されている住宅ローン減税は増改築(リフォーム含む)工事も対象となりますが、リフォーム専用の「ローン型減税」と「住宅ローン減税」の違いに注目ください。どちらを利用すれば有利かは個々に異なります。また、耐震リフォームの投資型減税に限り、住宅ローン、バリアフリーリフォーム・省エネリフォームのローン型減税も併用できます。リフォームに対する減税制度の概要該当するケースや組み合わせ等が煩雑なために、下記URLの組み合わせ表を参照ください。公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター○投資型減税とは - ローンを使わなくても利用できる! 所得税額の控除「投資型減税」は耳慣れない言葉かも知れません。住宅ローンを借りないで住まいを取得したり、リフォームしたりする時は、通常住宅ローン控除は使えません。自己資金でまかなうと言っても資金に余裕があるケースばかりとは限りません。高齢者の場合はローンを組みにくいですし、老後の生活ために貯蓄した資金を取り崩す不安もあると思います。政府はこうした状況下で、積極的に住まいの質を改善し、健康的に長く住み続けてもらうと共に、高齢者の貯蓄をリフォーム工事に拠出することにより、経済の活性化を図るために、ローンを組まずに住まいを取得したリフォームしたりした場合の減税措置を設けています。投資型減税の主な要件(平成26年4月25日作成 佐藤章子)○高齢者向け返済特例制度 - 年金生活者でも大丈夫! 利子分だけ返済の優遇制度住み慣れた我が家で高齢期を迎え、同時に住まいも老朽化しつつあるケースが多いと思います。現役時代にリフォームを済ませておくのがベストですが、まだ子供が独立していなかったり、バリアフリーの必要性をまだ感じていなかったりで、気がついたら日々の生活が不便という状態ということも少なくないでしょう。ようやくリフォームしようと思っても、ローンを借りる年齢ではないし、貯蓄を拠出するのも今後のことを考えれば不安という状態になっていることが少なくありません。こんな時に便利なのが住宅金融支援機構の高齢者向け返済特例制度です。返済は利子分だけで済み、元金返済は借入者全員が死亡した時ですので、リフォームの資金があったとしても、手持ち資金を温存できるメリットもあります。相続人が現金又は住まいを売却して返済します。高齢者向け返済特例制度<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年02月13日●建築家としての板坂氏が考える「残るデザイン」とは?UX(ユーザーエクスペリエンス)やUI(ユーザーインタフェース)のデザインやソフトウェアの企画・開発などを事業とするZEPPELIN(ツェッペリン)は、毎回迎えるゲストの専門分野やデザイン/UXとの関わりなどを、同社代表の鳥越康平氏と語るトークセッション「ZEP NIGHT」を不定期で開催している。ここでは、去る1月30日に開催された、建築家・プロダクトデザイナー板坂諭氏(the design labo代表取締役)をゲストに迎え、「残るデザイン」をテーマに語った「ZEP NIGHT vol.4」の模様をレポートする。○「魂に響く体験」をデザインする「ZEP NIGHT vol.4」は、ZEPPELIN代表取締役社長・鳥越康平氏の挨拶で幕を開けた。同社は、NTTドコモの「しゃべってコンシェル」をはじめとする、数々の美しいUIやUXのデザインを世に送り出してきた企業だ。冒頭に鳥越氏は「便利さや豊かさは確かに重要」だとしながらも、「われわれZEPPELINのテーマは、"美しさ"を追い求めること」と説明。高速道路を例に「日本中を張り巡らせている高速道路は確かに早くて便利だが、今後もわれわれはそんな豊かさや便利さを追い求めていくのか。それでわれわれの今後の幸せは来るのか」といった疑問を投げかけた上で、「"美しさ"を追求することで世界を変えたい」と強調した。同社が考える"美しさ"とは、見た目がキレイというものではなく、「魂に響く体験をデザインする」ことだという。一般道を走っているときに鳥越氏が出くわした、見渡す限りに広がる美しい小麦畑の写真をスクリーンに映し出し、小麦が風に揺れるシーンに感動した様子を伝え、「まさに魂に響く体験だった」と振り返りながら、「こんな体験をデザインしていきたい」と同社の方向性を伝えた。○「建築」も「UX/UI」もデザインの考え方は共通続いて、今回のゲストである板坂諭氏と鳥越氏との対話形式によるトークセッションへと移行した。板坂氏は、サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)のパーマネントコレクションとして収蔵されている、核兵器撤廃を願うメッセージの込められたランプ「Mushroom Lamp(マッシュルームランプ)」を手がけるなど、建築や家具などを題材としてそのものに込めたメッセージをもとに生まれる二次的なコミュニケーションをデザインすることを得意とする建築家であり、プロダクトデザイナーだ。最初に鳥越氏は、今回の「ZEP NIGHT」に板坂氏をゲストとして招いた理由として「"建築"と"UX/UI"は全く異なるものであると思われがちだが、"デザイン"という軸で考えれば、手法や技術の違いはあれどデザインの考え方においては共通項が多い」と説明し、「建築家の方と話をするとデザインの勉強になるし、とても参考になる」と語った。●"千年残る建築"とは?○建築家として板坂氏が考える「残るデザイン」続いて、板坂氏がこれまでに手がけてきた仕事などを簡単に紹介したのち、今回のトークセッションのテーマである「残るデザイン」についての話となった。同氏は「聖路加には古くて良い住宅が残っているが、先日お気に入りの古民家が解体されてしまった。材料もぜいたくだが、銀座から徒歩圏内にそんな住宅が残っていることがとてもぜいたくだ」としながらも、建築知識が浸透していない人たちによってそれが壊されてしまうことに衝撃を受け、「できればリノベーションして、海外のゲストを迎えたりしたかった」と惜しんだ。小学生の頃から建築に興味を抱いていたという板坂氏が「残るデザイン」に興味を抱いたのは、スペインの"サグラダファミリア教会"が、専任建築家であるアントニ・ガウディが死去して100年経つにも関わらず、なお建築が続いていることをテレビ番組で観たことがきっかけだという。その時に「残ること」の大切さを感じるとともに「建築ならそれを実現できる」と感じたという。続いて、「進化」と「残る」とではどちらが大切かというテーマでは、「コレクションは残るものとして好きだが、進化して残る方が好き」だとし、「建築は進化するもので、完成したら終わりというものではなく、夏は鉄が延びるし冬はガラスが割れたりするように、建築も"新陳代謝"させていくことが必要だ」と述べた。また、これまで手がけてきたプロダクトに関しては、「使ってくれる人とコミュニケーションをするために作っている」とし、それぞれの作品にメッセージが込められていることを明かした。鳥越氏は板坂氏が手がけた「マッシュルームランプ」について、「この作品が作られたのは震災前であり、民衆の意識の中に原発というものが今ほどなかった時期でありながらも、板坂さんはそこに意識を向けた」と説明。さらに、「ブランドは、精神が込められているとその価値があがる」と述べ、「デザインには精神を注入するのが重要で、形状や生産性ばかりを主目的にすると間違った方向に進んでしまう。建築であろうと机であろうと椅子であろうと"精神を注入する"ことが必要だ」と強調した。ここで言う「精神」とは、具体的には「おもてなし」を指しているとし、「使う人の気持ちになって考えることであり、UI/UXはまさにそれかもしれません」と語った。○百年残る建築は「ザハ」、千年残るのは「伊勢神宮」続いて、一般参加者からの質問コーナーにシフトした。「"千年残る建築"と"百年残る建築"の違いは何か?」という質問に対し板坂氏は「私が思う美しいデザインとは"自然"と"思いやり"のふたつ」だと前置きした上で、"百年残る建築"は「人間が頑張ってまねた自然のデザインで建築で言えば"ザハ・ハディド"」と回答した。一方の"千年残る建築"については「神様に対する思いが形となった"伊勢神宮"」とし、「ザハの建築は千年は残らないと思う」と述べた。ふたつ目の質問として「"進化"と"残る"はどちらが幸せか?」を取り上げ、「"進化"に興味がある」と即答。「"進化"も残っているから進化するのであって"残る"に含まれるが、どちらかを選ぶのなら"進化"です。人の体も変わっているのは進化が影響しているし、進化しつつ残るほうに興味があります」と答えた。ただし、これは建築における考えで、プロダクトに関しては「残る」ほうに重きを置いているという。また、「気になっている建築スポット」についての質問には、「建築家のフランク・ゲーリーが作ったフランスの新しい美術館」だという。ここはルイ・ヴィトンファウンデーションがコレクションしているアイテムが展示される美術館とのことだが、板坂氏が惹かれた理由として挙げたのが、「パッと見て理解できない」、「図面化できない」、「見る角度で全然違う」、「色んな線が重なって絵にできない」ことだという。航空機の設計技術やCADが建築にも取り入れられたことで線が自由になったとし、これを活用してるのがフランク・ゲーリーだという。さらに、「自分から手をあげても作ってみたいもの」については「多くの建築家が終着点と目指している"美術館"」と回答するなど、いくつかの質問に対し建築家ならではの視点で答え、トークセッションの幕を閉じた。なお、板坂氏は1978年生まれ。大学卒業後、設計事務所にて建築の作り方を徹底的に学ぶ。2010年にデザインユニット「h220430」を立ち上げ、社会へのメッセージを込めたデザイン活動を開始し、2012年に「the design labo(ザ デザインラボ)」を設立。2011年に中国メディア主催のMedia Awardで「Annual Original Products Design Award」、2012年に「Mushroom Lamp」が米国サンフランシスコMOMAのパーマネントコレクションとして収蔵。2013年にはイタリアの「A’Design Award」において「Baby,Kids and Children’s Products Design Category銀賞」を受賞するなど、日本のみならず海外でも高い評価を獲得。2014年には、4月に開催されたミラノサローネでは新作プロダクト「Balloon Chair」を出展したほか、同年8月にはこれまで手掛けてきたプロダクトデザインの作品集「New Made In Japan The works of h220430」を出版するなど、海外を中心に幅広く活動している。
2015年02月02日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。ローンの借り方は家族のライフスタイルに見合った方法を選ぶことが大切ですが、ローンは借り方だけでなく、借り入れたことによる将来起きるかも知れない様々なリスクを回避又は少なくするために、借りた後の管理も重要です。特に変動金利で借入れた場合は借り入れ後の管理は必須です。○ローンの組み方 ~生涯収支表が適正なローンの組み方を教えてくれる~生涯収支表とは、現在から目的の年まで(定年まで、ローン完済年齢まで、平均余命まで等)の収入と支出と貯蓄高の推移を示したものです。住まいを取得すると、当然ながら頭金拠出による一時支出が突出します。その分貯蓄残高が大幅に少なくなり、家計経済が脆弱になります。そのことが将来の子供の教育や老後の生活、万一の場合の治療費や生活などに、どのように影響するかも生涯収支表で見極めることができます。貯蓄がマイナスになった段階で、家計の破綻、企業であれば倒産となります。そうならないように、ローンを借り入れる際には、生涯収支表の作成が不可欠です。家族のライフスタイル別の標準的生涯収支を想定した返済パターンを下記の表にまとめてみました。返済期間の設定…返済期間が長いと月々の返済額は少なくなりますが、総返済額は多くなります。しかし、途中で自由に返済期間を変えられる場合は別ですが、当初の設定は長く設定して月々の返済額を抑えて、一時的に収入等が低下した場合のリスクに備えるのも手です。返済期間を短くすると、何らかの事情で家計が苦しくなった時に、ローン破綻するリスクが高まります。総返済額は高くなりますが、やや長めの返済期間に設定し、月々の返済に余裕が生じた差額分はまとめて繰り上げ返済すれば、期間を短くしたり、月々の返済額をさらに下げたりすることができます。頭金の額…一般的には頭金は20%が適性と言われています。実際に住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が、返済が苦しくなり、返済方法等の相談に応じたケースは、20%の頭金が実質確保されていなかったケースが多かったそうです。以前は、融資額は購入費(又は建築費)の80%が限度であることが多かったのですが、現在はそのガイドラインは緩やかになっています。頭金の額だけでなく、貯蓄をいくら残すかも重要なポイントです。万一の時の病気や怪我での入院費が全くないと言うのは問題です。しかしこれもその家族の状況によって違ってきます。私は住まいを購入する時は、100万くらい残しましたが、入居までの内装や家具でほぼ使い切ったように思います。ただし、まだ若く病気のリスクも少なく、資格があったので仕事先の心配もそれほど必要がありませんでした。万一ローンが支払えなくなっても、月々の返済額の倍以上の金額で100%貸すことができる駅前物件であること、親も現役で仕事をしていで最後の砦とすることができる…など一通り考えて、貯金をすべて拠出することに踏み切りました。借り入れ後は大急ぎで節約して貯蓄に励んだのは言うまでもありません。○借入れ後のローン管理 ~ローン管理ができないなら固定金利の選択を~繰上げ返済の是非…頭金の拠出と預貯金の残高だけでなく、繰上げ返済を優先するか貯蓄残高の増加を優先するかは、大切なポイントです。繰上げ返済すれば、将来の金利の上昇リスクを少なくできますし、総返済額を押さえられます。しかし繰上げ返済はローン負担減という一点だけのリスクにしか対応できません。反面、貯蓄はなんにでも対応可能だという点で大きく違いがあります。期間短縮か毎月の返済額削減か…繰上げ返済には借り入れ期間を短縮する場合と返済期間は変更せずに毎月の返済額を少なくする場合があります。当然返済期間短縮の方が総返済額は少なくなります。しかし万一返済が厳しくなった場合を考えると、月々の返済額を減らしておいたほうが対応しやすくなります。月々の返済が減った差額分は別途貯蓄して、再び繰上げ返済の原資などに活用するようにすれば、リスクはさらに少なくすることができます。変動金利の場合のローン管理…変動金利で借り入れる場合の返済計画は、最低限その時期の固定金利の利率以上で返済するものと想定して計画してください。現在の低金利の変動金利でしか返済できない計画は、破綻の危険があります。固定金利での返済額との差額は定期的に繰上げ返済の原資等にプールしておきます。下記の表は、3,500万円を30年返済、変動金利で借り入れた場合のローン管理の一例です。金利は上昇していきますが、5年ごとに固定金利との返済金額の差額を繰上げ返済して、10年後に固定金利に変更しています。その時の固定金利が当初の固定金利の利率を超えても、総返済額は30万程度しか違いません。変動金利で借入れた場合はエクセル等で下記のような表を作って管理してみてください。繰上げ返済の程度によっては、金利が上昇するリスクをさらに減らすことも可能でしょう。反対に何もしなければ、負担増は大幅なものになるでしょう。簡易計算ですので誤差は生じますが、誰でも簡単にエクセルで管理できるのがメリットです。シートを替えて、いろいろな繰上げ返済方法などをシュミレーションしてみれば、ベストの返済方法が見えてくると思います。世界的に考えると、安定した経済の成長のためには、住宅ローンの適正金利は6%程度だそうです。わが国でも住宅金融公庫の金利は長く5.5%で、民間銀行の住宅ローンは7~8%でした。現在の低金利状態が正常な状態だとは考えずに、自分にあった返済方法で余裕を持って計画し、借り入れた後の管理をしっかり行えば、リスクを少なくできます。<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年01月26日トッズ(TOD’S)が15SSメンズコレクションの広告キャンペーンを公開した。ロケ場所は建築家であるフィリップ・ジョンソン(Philip C. Johnson)の代表作「ガラスの家」。「ガラスの家」は49年にフィリップ・ジョンソンにより建てられた、世界的にも有名な建築物。そのコンセプトは建築における実体験を概念化することで、“見られている”“見えている”という事象を、“見られていない”“見えない”という関係へと転換。ガラスと鉄を用いた建築物は、建築における可能性という概念そのものを問う作品となっている。トッズは今回の広告撮影を記念して、ミラノのヴィラ・ネッキの庭園に「ガラスの家」を再現。その際にフィーチャーしたのが、トッズのアイコンシューズ「ゴンミーニ」の進化型である「シティスパイダー」だ。象徴的なペブルのパターンに幾何学的要素が盛り込まれたソリッドなソールには、職人のクラフツマンシップとイタリアブランドの伝統が凝縮されている。1月18日にはこの場所で15-16AWコレクションの発表も行われた。なお、今回の広告撮影を第1章として、“イタリアンスタイルが世界を旅する”というコンセプトの新プロジェクト「イタリアントラベルダイアリー」がローンチされる。キャンペーンに先駆けて、フィリップ・ジョンソンが出演するティーザー動画も公開されている。
2015年01月22日連載『住まいと安全とお金』では、一級建築士とファイナンシャルプランナーの資格を持つ佐藤章子氏が、これまでの豊富な経験を生かして、住宅とお金や、住宅と災害対策などをテーマに、さまざまな解説・アドバイスを行なっていきます。住まいづくりの相談の中で、必ず聞かれるのが「変動金利と固定金利、どちらを選ぶべき?」という質問です。「迷うなら、固定金利を」を原則にアドバイスしていますが、どちらが良いかは、その家族のライフスタイルによります。住まいを取得するほとんどの人がお世話になる住宅ローンですが、借金には違いありません。住宅ローンの正確な仕組みを理解して、借金のリスクをできるだけ少なく、上手に返済できる方法を考えてみましょう。○変動金利と固定金利 ~知らないと怖い未収利息の仕組み~変動金利…現在の低金利状態の恩恵を受けられますが、金利上昇のリスクはあります。金利は半年に一度見直されますが、多くは「金利が上昇しても返済額が5年間変わらない」などと約款で定められています。変動金利ですので、金利が上昇すれば毎月の返済額が上昇するはずですが、5年間の差額分はどうなるのでしょうか。銀行が負担してくれると思ったら大間違いです。本来の返済額との差額は元金に再度組み入れられ(又は未収利息として、以前は返済終了後に一括徴収される場合もありました)、借入金が増えることになります。金利が大幅に上昇すると借入金が減るどころか増え続けるといった事態になりかねません。特に元利均等返済の場合は、最初の間は、元本はほとんど減りませんので、金利上昇には常に注意が必要です。固定金利…返済額が一定なので将来の生活設計を立てやすいですが、低金利が長く続くと利率は割高感があります。選択型…一定期間固定金利で、その後変動金利に移行するものや、一定ルールで選択できるものなど、銀行によって様々なタイプがあります。しかし金利が上昇しかけた時に、あわてて固定金利に切り替えようとしても、実際の決裁がおりて切り替わるのに相当な日数がかかります。金利の上昇は下降時に比べて変化が急激なことが一般的で、手続きの間に金利はどんどん上昇してしまう可能性があるので注意が必要です。○元利均等返済と元金均等返済 ~検討してみたい元金均等返済のメリット~元利均等返済…一般的な返済方法は元利均等返済で、金利に変動がない限り、月々の返済額は返済期間を通じて一定です。しかし左図の通り、当初は毎月の支払額の大半は利子分が占めて、なかなか元金は減少しません。元金均等返済…右図のように元金を均等に返済しますので、当初の返済額は多くなりますが、次第に月々の返済額は減少していきます。元金が早く減る分、総返済額も元利均等返済よりは抑えられます。扱っている銀行は限られますが、将来の返済を抑えたい場合は、有利な返済方法です。○証券化ローン(フラット35等)の仕組みとは ~融資の前提となる建物の性能基準や現場検査は最低限の安心~証券化ローンの代表的なものは住宅金融支援機構が行っている「フラット35」です。住宅金融支援機構は長く住宅金融公庫として長期固定金利を融資して来ました。当時は住宅金融公庫の融資と厚生年金や国民年金からの公的融資で住宅ローンはほとんどまかなえた状況でした。民間の金融機関の業務範囲を圧迫していることから、民間金融機関でも長期の固定金利の販売を可能にした仕組みです。銀行が長期固定金利の商品を販売したくても、経済全体の金利が上昇したときのリスクは銀行が負わなくてはなりません。証券化ローンとは金融機関が顧客に住宅ローンを販売し、その債権を住宅金融支援機構が買取り、証券化して投資家に販売します。金利上昇のリスクは投資家が負うことにより、民間金融機関でも長期固定金利の住宅ローンを商品化することができるようになりました。以前の住宅金融公庫時代の融資技術基準等も引き継いでいて、特徴は下記の通りです。○ローン比較のポイント ~見かけの利率だけでは判断でしてはいけない! 金利組込み諸費用の有無~利率のほかに下記の諸費用の有無と実際の金額、利率に組み込まれているのか別立てで徴収されるのかのチェックが必要です。一見、利率が高くても、いろいろな費用が含まれている場合もあります。融資手数料…一律か融資金額に対するパーセントか団体信用生命保険料…金利組み込みか別立てか保証料…有無と金額繰上げ返済手数料…一回の金額・その他条件返済方法…変動金利と固定金利・及びその組み合わせとそれに伴う手数料や条件 元利均等支払いと元金均等支払い各種優遇措置等(※写真画像は本文とは関係ありません)<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年01月22日○建築で対象となる3D点群の規模とその目的建築分野ではこうした建築物の3D点群データ化において、「設計」「工事中(施工)」「完成後の保守(補修工事)」「リフォーム」などの各作業段階において、それぞれ個別のメリットが存在します。撮影対象の規模としては、大きく複雑な建築物(所謂ゼネコンが請け負うような、高層ビルやプラント、橋やトンネルなど)に対して、3D点群スキャンの活用が行われることが多いです。その理由ですが、高精度で広範囲を3DスキャンできるLIDAR式スキャナーは、ゼネコンや重工業会社に土木系の測量会社など、この目的に沿った大企業でないとすぐには購入できないような高額な製品であることが普通だからです。そもそも、高精度な計測器とは、使用する人も少ないので、高額であるのが普通ですが(ちなみに筆者の前職の東陽テクニカは計測器の会社でした)。また、広範囲の3Dスキャンが活きるのは大きく複雑な建築物です。複雑な建築物ほど、設計通りのものを現場で作れているかを施工中になるべく小さなコストで確認していきたいので、3D点群データ取得して、デジタルに自動化していくことや、建築中の各途中段階で(例えば鉄骨のみの状態で)データとしてアーカイブしてゆくことが活きてきます。もちろん戸建てを建てる程度の施工でも、デジタル化して3D形状を保存することは当然メリットがありますが、戸建てを建てる程度の工事規模では、配管や、寸法のチェックなどは、人数さえかければ直接できますので、高価格のスキャナーが活きる規模ではないと言えます(注:今後、高精度もしくは中くらいの精度の広範囲3Dスキャンが低価格化してくると、規模が少ない(予算が多くない)工事でも、3D点群化の応用が伸びる可能性はあります。本連載の"第66回"で紹介したMatterportも、この低価格化を狙うものと言えます)。こうしたスキャナーで3D計測すれば、建築物の構造や寸法(各点のカラーも取れるので色合いも)をデジタルに保存することができるますので、設計図が3D CADで作成してある建築物であるものであれば、その設計図の3D CADデータとの(形状同士の)比較がそのままできます。画像での処理とは違い、点群は実スケールそのものでデータを取得できるので、なおさらこういった設計図と実際の建築物の比較が容易です。当然ながら部分的な寸法を測りたい場合も、その場で実物の長さや幅などの寸法を測るわけではなく、複雑な形をした対象でも、その形のままの形状をデジタル的にとらえていくことが可能です(この話はKinectなどの安価なデプスセンサーでも同様の話です)。点群データは対象のボリュームや形そのものを撮影できているので、丸いものでもそのままの形をデータ化して、その体積を計算することも可能です。また、撮影した3D点群をメッシュデータ化できるソフトウェアを活用すれば、スキャンしたデータから綺麗な3D CADデータを(半自動的もしくは自動的に)作成し、その3D化された街並みや環境の中を仮想的に探索することができますし、一方で、メッシュ化したデータを3Dプリンタで出力して模型の代わりに使用することもできます (注:綺麗な欠けの無いメッシュデータを点群から自動で作ることがいつもできるとは限りません。複雑な形状の場合は特にですが、3Dプリントするためにはメッシュ化して以降も手作業でプリントできる形状にまで編集する必要も発生します)。これらのソフトウェア的な処理による活用については、3Dスキャン技術の導入紹介が一通り済んで以降紹介していきます。林 昌希(はやし まさき)慶應義塾大学大学院 理工学研究科、博士課程。チームスポーツ映像解析プロジェクトにおいて、動画からの選手の姿勢の推定、およびその姿勢情報を用いた選手の行動認識の研究に取り組み中。(所属研究室が得意とする)コンピュータビジョン技術によって、人間の振る舞いや属性を機械学習・パターン認識により計算機で理解する「ヒューマンセンシング技術」全般に明るい。技術商社でエンジニアをしていたこともあり、海外のIT事情にも詳しい一方、デプスセンサ等で撮影した実世界の3D点群データの活用を推進するための「Point Cloud コンソーシアム」での活動など、3Dコンピュータビジョンのビジネスでの普及にも力を入れている。また、有料メルマガ「DERiVE メルマガ 別館」では、コンピュータビジョン・機械学習の初~中級者のエンジニア向けの、他人と大きな差がつく情報やアイデアを発信中(メルマガでは、わかりやすい理論や使いどころの解説込みの、OpenCVの初心者向け連載なども展開中)。翻訳書に「コンピュータビジョン アルゴリズムと応用 (3章前半担当)」。
2015年01月20日富士通システムズ・ウエストと四電工は12月18日、建築設備CAD「CADEWAシリーズ」の新バージョンとして「FUJITSU 製造業ソリューション 建築設備CAD CADEWA Real 2015 (建築設備CAD CADEWA Real 2015)」を2015年2月12日から販売開始すると発表した。新バージョンでは、鋼材の種類や機能を追加するとともに、吊りや支持が正しくできているか確認するチェック機能などが追加された。さらに、3次元CGの表現力を強化したことで、より立体感のある分かりやすいイメージを共有でき、円滑な意思疎通に貢献する。また、ユニコード化による多言語入出力を可能とし、データ連携やマスタ編集などの基本機能も強化された。なお、「建築設備CAD CADEWA Real 2015」には電気、空調・衛星、総合、LT電気、LT空調・衛星、LT総合の6種類あり、全種類オープン価格での販売となる。
2014年12月18日「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」が、日本のモダニズム建築の傑作であり、建て替えが迫るホテルオークラ東京と共に、SNSを使った新プロジェクト「#MyMomentAtOkura」をスタートした。現在の姿のホテルオークラ東京で過ごすひとときを、ソーシャルメディアを通じて広く共有するという内容。参加方法は至ってシンプルで、ホテルオークラ東京の本館を訪ね、思い思いに写真を撮影し、投稿と写真にハッシュタグ「#MyMomentAtOkura」を追加して自身のインスタグラムのアカウントでシェアすることで完了する。写真は以前に訪問した際に撮影したものでも可能。1962年に開業したホテルオークラ東京は、日本のモダニズム建築を代表する建造物として高く評価されてきた。しかし現在、来年予定される建て替えのために、その文化遺産としての継承が危ぶまれている。ボッテガ・ヴェネタは、次の世代に文化遺産を託し、伝統に由来する技術と創造性を守るというブランド哲学に従い、消滅の危機に瀕する日本のモダニズム建築への関心を高めるための活動を行ってきた。クリエーティブディレクターのトーマス・マイヤー(Tomas Maier)の、日本のモダニズム建築とホテルオークラ東京の長年のファンであり、本プロジェクトを通じてその文化的価値を再考するよう呼びかけたいとしている。
2014年12月15日金沢21世紀美術館は開館10周年を記念し、“建築”をテーマとした二つの展覧会「ジャパン・アーキテクツ 1945-2010」「3.11以後の建築」を開催する。「ジャパン・アーキテクツ 1945-2010」は、日本建築について戦後から現在までにおける一連の流れを追ったもの。復興期に始まり、高度経済成長に伴うメタボリズム運動を経て、バブル崩壊と阪神淡路大震災以降には社会や自然との関係性に迫るようになった日本建築。その中で重要な役割を果たしてきた約80人の建築家にスポットを当てて、図面や模型など250点を超える資料が出展される。なお、今回の展示はポンピドゥー・センター パリ国立近代美術館との共同主催となっており、副館長のフレデリック・ミゲルーの下で会場を六つのセクションに区分。それぞれ「絶えざる破壊と再生、陰翳あるいは闇」「都市と国土のヴィジョン」「新しい日本建築」「メタボリズム、万博、新たなヴィジョン」「消去の建築」「消失から物語へ」についての展示が行われ、各コンセプトに対応した色のコードを用いて戦後建築史を刺激的に読み解いている。11月1日にはミゲルーによる講演会も開催予定だ。一方、「3.11以後の建築」は東日本大震災によって激変した社会の意識やシステムに対応し、新たな取り組みを始めた30人の建築家を紹介するもの。「みんなの家」「災害後に活動する」「エネルギーを考える」「使い手とつくる」「地域資源を見直す」「住まいをひらく」「建築家の役割を広げる」の七つのテーマで展示を行う。同展ではゲストキュレーターとして、建築批評家の五十嵐太郎、コミュニティーデザイナーの山崎亮を招聘。2日には両者の対談が行われる。なお、展示会に先駆けて、金沢市内では様々なプロジェクトが催された。日建設計ボランティア部では、金沢市沿岸部の大野地区で津波時の避難経路を示す“逃げ道地図”を作成。さらに、高度経済成長期に金沢に建てられたビルの魅力を探る「金沢まちビル調査」も開催されており、これらの結果は展示会にて発表される予定。他にも、市民ギャラリーの利用団体と建築家のコラボレーションにより、展示空間のデザインも行われた。【イベント情報】ジャパン・アーキテクツ 1945-20103.11以後の建築会場:金沢21世紀美術館住所:石川県金沢市広坂1-2-1会期:ジャパン・アーキテクツ 1945-2010/11月1日から3月15日3.11以後の建築/11月1日から5月10日時間:10:00から18:00(金・土曜日は20:00まで)入場料:一般1,000円大学生800円小中高生400円65歳以上800円(共通観覧券は一般1,700円大学生1,400円小中高生700円65歳以上1,400円)休館日:月曜日(11月3日、11月24日、1月12日は開館翌日閉館)、12月29日から1月1日
2014年10月28日東京都・初台の東京オペラシティ アートギャラリーでは、現代の建築界を牽引する巨匠であり、世界的に注目を集める建築家、ザハ・ハディドの個展を開催する。開催期間は10月18日~12月23日、開場時間は11:00~19:00(金・土は20:00まで)。入場料は一般1,200円、大・高生1,000円、中学生以下は無料。同展は、ザハ・ハディドのこれまでの作品から現在の仕事までを紹介するもので、日本では初の大規模個展となる。前衛的すぎる設計によって計画が途中で中止となり、なかなか実作に恵まれなかった"アンビルトの時代"に精力的に描いたペインティングやドローイング、世界各地で建てられるようになった実作の設計、スケールを横断するプロダクトデザインなどを、展示空間全体を使ったダイナミックなインスタレーションとして展開する。これまで、「新国立競技場」の建築計画をめぐってさまざまな議論が沸き起こりつつも、設計者であるザハに関する情報は限られていた。今回の個展は、鑑賞者それぞれの視点でザハの建築を体験し、その思想に触れる機会となる。なお、ザハ・ハディドは1950年バグダッド生まれ、ロンドン在住の建築家。1980年に自身の事務所を設立。1983年、「ザ・ピーク」の国際コンペティションで勝利し、そのコンセプトとともにザハの名は一躍世界に知られることになるも、このプロジェクトをはじめ、ザハの設計は当時の施工技術や建築思考に収まらない前衛的な内容だったため、独立後10年以上にわたって実際に建てられることはなく、長らく「アンビルトの女王」(アンビルト=建設されない)の異名を与えられていた。1993年、「ヴィトラ社消防所」が初めての実現プロジェクトとなって以降は大規模なコンペティションで次々に勝利を重ね、かつ実際に建てられるようになった。そして、「新国立競技場」国際デザインコンクール最優秀賞に選出され、日本でもザハ作品の建設が実現する。
2014年09月19日「日本らしい建築物」と聞いて、皆さんなら何を思い浮かべますか? 日本人と、外国人ではイメージするものが違ってくるのでしょうか。今回は、日本在住の外国人20名に「"日本らしい建築物"と聞いてまっさきに思い浮かぶもの」を聞いてみました。■神社やお寺(イタリア人/36歳/女性)■temples and shrines!(イギリス人/36歳/女性)最も多かったのは「お寺」「神社」という回答でした。宗教的な建築物には、その国の思想や美意識、建築様式が最も特徴的に現れます。海外向けの観光ガイドブックでもお寺や神社の写真が表紙になることが多いので、その影響もあるかもしれませんね。■京都の五重塔(ブラジル人/54歳/女性)■金閣寺(シリア人/30歳/男性)神社仏閣の中でも、金閣寺や五重塔といった、特定の歴史的建造物の名前をあげる人もいました。数多くあるお寺の中でも、京都の金閣寺の印象は強いようです。■舗装されていない小道などにある、小さな神社は日本らしいと思います。(ブラジル人/54歳/女性)こちらは同じ神社でも、田舎道にぽつんと佇んでいるような趣のもの。観光地化されていない場所にこそ、本当の日本らしさを感じさせる建物がありますよね。■大阪城が日本らしいと思います。(ブラジル人/54歳/女性)■大阪城(韓国人/46歳/男性)かの豊臣秀吉により、建設が開始された大阪城。空に高くそびえる天守閣は、今も堂々とした姿で戦国時代のドラマを伝えています。日本といえば「サムライ」、という海外からのイメージにも呼応する建築物かもしれません。■合掌造り(スリランカ人/58歳/男性)「合掌造り」という単語を知っていることに驚きです!世界遺産に登録された白川郷などには、海外から観光に訪れる人も増えているようです。山あいに合掌造りの集落が点在している風景は、昔ばなしの世界のような美しさです。■京都にある長屋(ベトナム人/30歳/女性)■古民家。雰囲気が大好きです。(スウェーデン人/45歳/女性)宿泊施設やカフェとしてお洒落にリノベーションされるケースも増え、その魅力に改めて注目が集まっている古民家。ツヤのある木の縁側や、畳敷きの部屋、囲炉裏、ふすまや障子など、昔ながらの木造建築はまさに「日本らしい建築物」と呼べるものです。■茶室(ポーランド人/26歳/女性)「侘び・寂び」を軸とした日本ならではの美的感覚。その精神が凝縮された茶室を選ぶ人もいました。■浅草寺(スペイン人/36歳/男性)■東京タワー(インドネシア人/33歳/女性)東京に来た外国人が必ず訪れるといっていい「浅草」、そして東京のランドマークである「東京タワー」。このように、日本を象徴するシンボリックな場所を思い浮かべた人も。いかがでしょうか。外国人といっても日本に数年以上住んでいる方たちがアンケートの対象者ということもあり、「合掌造り」「長屋」「古民家」といった具体的なワード出てきたのが印象的でした。戦後の住生活の欧風化によって、現在では昔ながらの日本家屋は減少し、畳のある家も少なくなってきています。耐震性・耐火性といった点から普段の住まいを木造建築にすることは難しいという面もありますが、古くからの建物を修復・保存することで、その魅力が後世や海外の人たちにも伝わっていくといいですね。
2014年03月03日建築家・永山祐子の展覧会「建築から始まる未来-豊島×横尾忠則、宇和島×束芋×ほしよりこ-」が、東京・表参道のジャイル(GYRE)内アートスペース、アイ・オブ・ジャイル(EYE OF GYRE)で開催されている。11月24日まで。入場無料。本展では、今夏永山が手掛けた瀬戸内海周辺での二つのアートプロジェクトを、映像や写真、建築模型を用いて紹介。建築やアートのエネルギーによる地域再生を目指し、新たなコミュニティーを創造する取り組みとして話題となったプロジェクトのビジョンを提示する。一つ目の「豊島横尾館」は、現代美術家の横尾忠則の絵画作品「原始宇宙」の平面作品11点と、円塔の中や庭園でのインスタレーション作品、建築と一体となった美術館。もう一つの「AT ART UWAJIMA 2013」からは、作家の司馬遼太郎らが滞在したことでも知られる1911年創業の宇和島の老舗の「木屋旅館」をリノベーションするというアートプロジェクトを紹介。畳の一部をアクリル板にし、欄間(らんま)や壁、天井などに漫画家・ほしよりこが書く小説に基づき現代美術家の束芋が制作した映像が映し出された。他にも、宇和島のアーケードにある文具店をリノベーションしたプロジェクトや、 理想の街をつくる観客参加型の展示も登場する。会期中の11月17日には、永山と束芋によるトークショー「建築×アートの可能性」も開催。司会は、アートダイナミクスの生駒芳子が担当する。また関連商品の販売も実施。「AT ART UWAJIMA 2013」のために書かれた、ほしよりこの小説「そういう事がずっと続く」(700円)、束芋デザインの「宇和島Tシャツ」(2,500円)、宝飾品にならない真珠を蘇らせた「リパール」で作った、ほしよりこ、束芋、永山祐子監修のオリジナル限定商品などがそろう。
2013年11月08日ドイツのジュエリーブランド「ニーシング(NIESSING)」と建築家・中山英之がコラボレーションした企画展「“Graffiti” Rings by Hideyuki Nakayama」がニーシング東京(東京都港区南青山5-9-10サンク青山1階)にて11月10日まで開催されている。今企画において中山は、絵や文字をリングの表面に施すことのできるニーシングのジュエリー「グラフィティ(Graffiti)」のために、「メタルの木」と「リングのリング」の2種類を描き下ろした。また会場では、中山がコンペの際に実際に製作した建築模型「小さすぎるビル」「草原の大きな扉」「K湖のN荘」の3点と共にニーシングのジュエリーを展示するインスタレーションを設置。ディレクションを岡田栄造(S&O DESIGN)が手掛けている。今回、初めてジュエリーをデザインした中山氏は「設計する際、まずニ次元でスケッチを描いてから立体化していく。ジュエリーをデザインする時も同じ。ニーシングのジュエリーは構造力学的に無駄のないデザインが中心なので、円と線のみを使用しシンプルに世界観を表現した。リングを指の上で回すと、線と円の密度が変化して違った表情を見せるので、そこを楽しんでほしい」と話す。ニーシングは、1873年ドイツで創業。ゴールド、プラチナ、ダイヤモンドからスチールや高品質なシンセティック素材を用いたジュエリーを発表。素材そのものの美しさを引き出したデザインが特徴で、バウハウス(Bauhaus)の理念を体現したジュエリーとも評されている。過去、レッドドット・デザインアワードやiFデザイン賞を受賞した。1979年、ウォルター・ウィテックによる「ザ・ニーシングリング」を発表。宝石を留める爪がなく、まるでダイヤモンドが浮遊しているかのようなデザインは特許を取得。国立工芸美術館(ノルウェー・オスロ)や美術工芸博物館(ハンブルグ)にコレクション展示されている。
2013年11月05日水戸芸術館は3月2日~5月12日、個展「坂 茂建築の考え方と作り方」を開催する。同展は、建築家・坂茂(ばん・しげる)の創作と活動を包括的に紹介する日本で初めての大規模個展。紙管をはじめとするさまざまな材料や構法を用いることで、住宅から公共施設、そして災害支援に至るまで、多くのプロジェクトを世界各地で進行させる建築家・坂茂の活動の全貌を紹介する。同氏の作品の特徴は、私たちが普段、気にもかけずに見過ごしがちなものの中に建築の材料として特性を見いだし、それを建築作品として実用化するところにあるとされる。氏はそのキャリアの早い段階から、これらの材料を用いつつ優れたデザインで解決する建築家として、独自の建築手法を展開してきた。同展では、初期作品から代表作「ポンピドゥーセンター・メス」、および進行中のプロジェクトに至るまで、氏の仕事を写真、映像、模型、立体展示でたどる。日本初の試みとなった3階建てのコンテナ仮設住宅の実物大モックアップ(一世帯)を屋外に展示し、活動の全貌を俯瞰できる構成を予定しているという。今回、作品の一部が、会期途中の3月10日から1週間程度、地元の学生たちの手によって設営、展示される予定となっており、設営期間に来場すれば設営風景を観覧できる。希望者は設営にも参加可能となっている。また同展に限り、展示作品を写真撮影でき、撮影された写真はSNS上でシェアすることが可能という。会期は、3月2日~5月12日。開館時間は、9時30分~18時(入場時間は17時30分まで)。会場は、水戸芸術館現代美術ギャラリー+水戸芸術館敷地内(茨城県水戸市五軒町1-6-8)。休館日は月曜日。ただし4月29日、5月6日は開館、翌4月30日、5月7日は休館。入場料は一般800円。中学生以下、65歳以上、障害者手帳所持者と付き添い1名は無料。その他、詳細は同館Webページで確認できる。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2013年02月15日北は北極海から南は地中海まで広がるヨーロッパ。古都のロマンチックな街並み、世界に名だたる芸術や建築など、たくさんの見どころがあります。今回、外国人にお聞きしたのは「お勧めしたい母国の観光地」。華やかな景色が目に浮かぶようです。■スペイン:グラナダ15世紀まで及んだアラブ帝国時代のアルハンブラ宮殿などまだ残っているし、ビーチも近いので人気がある(スペイン/男性/20代後半)グラナダは古くはアラブ人が占領していたため、現在もイスラム文化が残る街。アルハンブラ宮殿の離宮である「ヘネラリーフェ」は王族の避暑地だったとか。アルハンブラ宮殿は入場制限があるため、事前予約がお勧めです。■フランス:コート・ダジュール特にニースやカンヌ、ビーチサイド、もしくはパリに近いところであれば、ブルターニュ地方も人気。海でくつろぎ、焼けて仕事に戻るのが、休んだ気分にさせてくれるというので評判です。海がきれいで癒やされるターコイズグリーンカラーをしている上に、街並みがとても歴史の深い場所だから、面白さがあります(フランス/女性/20代後半)コート・ダジュールとは、南仏・地中海に面する海岸一帯をいいます。別名、「紺ぺき海岸」。その名前から海や岸壁の色まで想像できそうです。そんなリゾート地でくつろぐのは気持ちがいいでしょうね。それにしても西洋人は日焼けが好きですね。休暇が終わってもその思い出を肌に残せるのが理由のひとつでしょうか。■イタリア:アラッシオ、リッチョーネどちらも海の街です。冬はアルプス山脈もいいですが、私は海の方が好きです。もともと海がきれいで、街にもいろいろあり、自然も美しいです(イタリア/男性/30代前半)アラッシオはイタリアの西側、リッチョーネは東側のビーチリゾート。それぞれ近隣には多くの歴史的建築物があり、世界遺産も巡ることができます。北に行けば標高5,000メートルのアルプス山脈。どこへ行っても楽しみが尽きませんね。■ハンガリー:バラトン湖「ハンガリーの海」と呼ばれている長さ79キロメートルの湖です(ハンガリー/女性/30代前半)内陸国のハンガリーでは海のような存在なのですね。そしてここは、時間によって色が変わるという、ただものでない湖です。近隣のヘーヴィーズ湖は世界で唯一の温泉の湖。ハンガリーの湖には不思議がいっぱい!■ロシア:ソチ市をはじめ、黒海のリゾート地ほとんどのロシア人は海のないところに住んでいるため、旅行先として海岸を選ぶ人が多いです。黒海の海岸はこれといった特徴のない海のリゾート地ですが、ロシア人にとっては珍しいです(ロシア/女性/20代後半)こちらは広大な土地であるがゆえのお話。黒海周辺は温暖な気候なため、ロシア帝国時代からリゾート地として栄えていました。2014年に冬季オリンピックが行われるソチがそれで、雄大な自然は世界遺産にもなっています。特徴ありありですよ!■フィンランド:ラップランド特に冬はスキーができるから(フィンランド/女性/50代前半)ラップランドは北極圏に位置する極寒の地。もはや、スキーができて楽しい♪というレベルではないような気がしますが、フィンランド人は強いですね!ここでは夜空に舞うオーロラやトナカイの姿も見られるそうです。■スウェーデン:ゴットランド海があって楽しい場所です。スウェーデンの島でビーチがあって、夏に訪れる方が多い(スウェーデン/女性/40代前半)ゴットランドはスタジオジブリ「魔女の宅急便」で登場する街のモデルとなった島。お城などの遺跡に囲まれ、バラの花が咲き乱れているといいます。風力発電やゴミを出さないエコな生き方にも注力しているとか。スローな旅にちょうどよさそうです。一口にヨーロッパといっても、その特徴は様々。さて、次の旅はどこにしましょうか?【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年11月26日こんにちは。旅好きライターの赤木真弓です。先日、3度目のスウェーデン滞在をした私が、北欧・スウェーデンの女子旅をご案内! 前回はショッピング編をご紹介しましたが、今回はストックホルムの美術館やすてきな建築をご紹介します。■スウェーデン女子旅 ~美術館、建築編今回はストックホルム郊外へ。地下鉄Slussen(スルッセン)のバスターミナルから市バスに乗り、約30分。陶磁器の街として知られるグスタフスベリへちょっぴり足を延ばしてみましょうここには、街の名前と同じ陶器メーカー「グスタフスベリ」の工房やミュージアム、直売所、アウトレットショップ、カフェなどがあります。まず訪れたのは、「PORSLINSMUSEUM(グスタフスベリ陶器美術館)」。グスタフスベリ社の旧工場跡に作られ、スティグ・リンドベリやリサ・ラーソンをはじめとする歴代デザイナーの作品を一挙に見ることができ、その歴史を知ることができます。それから、イッタラ・アウトレットの裏手にある、リンドベリによる陶板もお見逃しなく!工房の直売所では、グスタフスベリの陶器や関連商品(キッチングッズ、書籍など)を販売。B級品は30〜50%で揃うなど、まさに宝の山! 敷地内の奥にある、イッタラやロールストランド、アラビアなどがお得な、イッタラ・アウトレットとともに、ショッピングを堪能できます。またミュージアムの隣には、 リサ・ラーソン のプロダクトを製作し続ける工房「ケラミーク ストゥディオン」があります。どのように絵付けされているか見られる貴重な場所なので、静かに見学しましょう。ここでもリサのプロダクトを購入できますが、クレジットカードが使えないので要注意。この工房の入り口には、アンティークショップ「Antikhuset I Gustavsberg(アンティークヒューセット・イ・グスタフスベリ)」も。訪れたときには残念ながらお休みでしたが、品揃えの良さには定評があります。ぜひ営業日に合わせて訪れてみて。 またバスに乗ってスルッセンまで戻り、駅前広場にある人気屋台で腹ごしらえを。「NYSTEKT STROMMING」は、地元で人気のにしんサンドで有名です。にしんのフライとたっぷりの野菜、ソースをパンに挟んだものでひとつ45sek。真冬でも行列ができるほどのおいしさです。このスルッセン駅周辺は、セーデルマルムという若者に人気のショッピングエリア。日本でも人気の「10-gruppen(ティオ・グルッペン)」など、北欧らしいデザインやインテリアショップ、カフェなどが並び、歩いているだけでも楽しいエリアです。そこからひと駅のMedborgerplatsen(メッドポリアルプラッツェン)駅からすぐの場所には、100年近い歴史を持つ大衆的なレストラン「Kvarnen(クヴァルネン)」もあります。ニシンの酢漬けやミートボールなど、スウェーデンの伝統料理を食べるのにおすすめです。最後に、スウェーデンを代表する建築家、グンナール・アスプルンドによる有名な建築を2つご紹介。「Stadsbiblioteket(ストックホルム市立図書館)」は、1928年に建てられた円形の図書館で、中に入ると巨大な書棚にぐるりと囲まれ、圧巻です。もうひとつはアスプルンドによる最後の作品で、自身も眠る共同墓地「Skogskytkogarden(森の火葬場)」。世界遺産にも指定され、広大な敷地に建つ大きな十字架のモニュメントは、一見の価値があります。以上駆け足でご紹介したストックホルム。このほかにも北欧の伝統文化を知ることができる「Nordiska Museet(北方民族博物館)」や現代アートを堪能できる「Moderna Museet(近代美術館)」などのミュージアムも。スーパー「Hemkop(ヘムショップ)」や「ICA(イーカ)」でのショッピングなど、まだまだ見所が盛りだくさん!スーパーで売っているスウェーデンの平たいパンは、日本では食べられない味。パッケージもかわいいので、お土産にも。スウェーデンを旅する際、ぜひ参考にしてみてくださいね。取材/赤木真弓ウーマンエキサイト編集部からスウェーデンお土産をプレゼント! グスタフスベリのアウトレットショップで購入したかわいいお皿2枚を1名さまにプレゼント! Twitterでつぶやくと当選率アップ! 応募はこちらから≫
2012年11月02日レッドフォックスは一級建築士学科試験が7月22日に実施されるのを受け、暗記学習のためのスマホアプリ「i暗記」と「建築士試験対策カードデッキ(単語帳)」をリリースしている。「i暗記(アイアンキ)」は手軽で効率のいい暗記学習のための、iPhone・Android対応スマートフォンアプリ。東京大学准教授 池谷裕二氏の監修のもと、脳科学に基づいた記憶のアルゴリズムに沿って設計されているため、使用者は「覚えよう」と意識することなく暗記することができるという。操作は指一本で暗記カードを「覚えた」「覚えていない」に仕分けするだけと簡単。暗記カードはアプリとパソコン双方から簡単に作成できるほか、i暗記マーケットに公開されている3,000種類近いカードデッキの中から必要なものを購入することが可能(アプリは有料版・無料版両方あり)。i暗記マーケットには、来る7月22日に実施される一級建築士試験に向けたカードデッキも公開されている。建築史や法規、人名・建築名など、科目ごとのカードデッキもそろっており、覚えたいカードの枚数や内容などに応じてダウンロードすれば、通勤、昼休みのスキマ時間を有効に使って、苦手分野をカバーすることができる。そのほか、i暗記マーケットでは、公務員試験、日商簿記、司法試験など、各種ビジネス試験のカードデッキを多数公開している。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年07月10日パナソニックエコソリューションズ社は19日、建築化照明器具「Smart Archi(スマートアーキ)シリーズ」の品ぞろえを強化し、「建築に自由を与える。」を新コンセプトとして、2012年度上期中に、22アイテム252品番を順次発売すると発表した。新製品の光源はすべてLED。希望小売価格は2万6,250円~57万2,250円。同シリーズは、「光」「デザイン」「素材・品質」「空間」にこだわった製品(ハード)と、同社ならではの光の指標(ソフト)を組み合わせた「輝度で考える照明設計」によって、より正確で質の高い照明設計を実現した。屋内用は、人が感じる明るさ感指標の「Feu(フー)」をアップすることで設置台数を減らし、省エネが可能となったベースライトを追加。屋外用では、さまざまな空間と調和するシンプルなデザインのスポットライトなどが追加された。屋内のような明るい空間では、「lx(ルクス)」とFeuを組み合わせることで、省エネと快適な光環境を両立した照明設計が可能とのこと。しかし一方で、屋外のような暗い空間では、明るさ感が同じでも、光のメリハリによって人が感じる空間の印象は大きく異なるという。そこで同社は、Feuに加え、「光のメリハリ度」を数値化した「V(ヴィー)」を開発。これらを組み合わせることで、「落ち着きのある空間」と「にぎわいのある空間」といった、2つの雰囲気の定量化を可能にした。同じFeu値でも、メリハリ度が弱い(V値が低い)と落ち着き感のある空間に、メリハリ度が強い(V値が高い)とにぎわいのある空間になるという。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年06月21日