歌舞伎俳優の中村福助が、9月1日に開幕した東京・新橋演舞場の『秀山祭九月大歌舞伎』夜の部で、女方の舞踊の中でも屈指の大曲『京鹿子娘道成寺』の白拍子花子を勤めている。昨年9月の秀山祭が最後の舞台となった亡き父、七世中村芝翫を偲んでの上演だ。福助に公演への思いを訊いた。『秀山祭九月大歌舞伎』チケット情報『京鹿子娘道成寺』は、恋に狂った清姫が蛇となって若僧・安珍を鐘ごと焼き殺したという、紀州道成寺に伝わる安珍清姫伝説の後日譚とされている。ただし歌舞伎においては娘の執念よりも、若い娘の恋心を様々な形態で描き出す華やかな舞踊として、多くの人に愛されてきた。2年ぶりに舞う福助は、公演を前に息子・児太郎と共に道成寺を訪れ「歌舞伎役者だけでなく、本当にたくさんの方がなさっている、憧れの踊り」であることを再確認したという。「踊りが得意だった父が2000年に“一世一代”と銘打って踊り納めたのが、この『道成寺』でした。“父を偲ぶ”という気持ちで勤めさせていただけることは、本当に有り難く感謝しております。『道成寺』は父から手ほどきを受けて、福助襲名の際には六世中村歌右衛門のおじに教えていただきました。ふたりに共通しているのは、品格を大事にすること、根底に“娘”というものが流れていることです。その教えを大切にしています」。今回後見を勤めるのは長男の児太郎だ。「受け継いできたものを、次の世代にバトンタッチしていきたい」という思いがある。昼の部では『寺子屋』の千代を演じている。夫・松王丸の義理ある人のために幼い息子の命を差し出す、悲しくも気丈な女性だ。今回は我が子を身替わりにするため寺子屋へ連れていく「寺入り」から始まる。「切ないシーンですね。子どもを置いてきたという辛い気持ちを、楽屋に戻ってからも維持するように心掛けております」。松王丸は市川染五郎が演じる予定だったが、8月末の大けがを受けて休演に。「稽古で吉右衛門のお兄さんがとても詳しく教えていたので、私も楽しみでした。もちろん一番悔しい思いをしているのは染五郎さんですが、その思いを背負った吉右衛門のお兄さんが、精魂込めて松王丸を演じていらっしゃいます」。9月15日(土)は夜の部開幕前にトークショーを行う。「今回はビフォートークなので、ちょっとしたポイントを聞いてから観ると分かりやすかったり、歌舞伎に親しみがわいてくだされば嬉しいです。歌舞伎は敷居が高いという印象が強いので、こういう機会をどんどん設けていきたいですね」。『秀山祭九月大歌舞伎』は9月25日(火)まで、東京・新橋演舞場にて上演。チケットは発売中。中村福助のトークショー観覧にはトークショー付きチケットが必要。なおチケットぴあでは、トークショーとお弁当がセットになった観劇チケットを発売中。取材・文:山上裕子
2012年09月07日中村福助、市川海老蔵、片岡愛之助らが出演する新橋演舞場『八月花形歌舞伎』が8月4日初日を迎えた。『八月花形歌舞伎』チケット情報昼の部は、運命に翻弄される女と男の因果を描く鶴屋南北の人気作『桜姫東文章』を上演。海老蔵が扮する悪党が福助演じる桜姫を犯す大胆な濡れ場が見どころ。夜の部『伊達の十役』は2010年1月に海老蔵が演じ、40数回におよぶ早替り、迫力の宙乗りにダイナミックな大道具の仕掛けで大評判となった舞台の再演。福助と海老蔵は初日に向けて以下のコメントを発表した。■中村福助のコメント「桜姫を演じるのは、今回で2度目になります。登場人物たちが、ちょっとした歯車の食い違いから、運命の糸にたぐられるように動いていき、みんなが磁石のように吸いつけられていく。そして、全員が最終的には自分の本能で生きてしまう。人間の性(さが)を感じさせる作品で、現代にも通じるところがあると思います。ストーカー、衝動殺人、ドメスティック・バイオレンスなど。一歩間違えば、人間はこうなってしまうというあやうさが面白く描かれています。オリンピックでは、アスリート達が毎日熱い戦いを繰り広げ、多くの感動、勇気、パワーを頂いております。私たちも彼らに負けぬよう、皆で力を合わせ、熱い舞台をお見せして、お客様に感動と興奮をお届けします!」■市川海老蔵のコメント「『桜姫東文章』の権助は、父(團十郎)に習いましたが、父の権助は非常に色気があり、できるだけ吸収して父のやったようにできたらと思います。権助という役は、僕のもっている一部分と通じるところがあるので、役作りは特に必要ないです(笑)。2年半前に初役で取り組んだ作品ですが、再演させていただけることになり、死ぬ気でかかることのできる作品がまたひとつ増えた喜びでいっぱいです。(猿翁と)初共演させていただいた7月に続き、猿翁のおじさまの演出で『伊達の十役』に取り組むというのも、非常に感慨深いです。どんどん早替りしていく場面もあり、その一方で、じっくり古典として見ることのできる作品でもあります。お客様に楽しんで観ていただけるよう務めます」。公演は8月23日(木)まで、東京・新橋演舞場にて上演。チケットは発売中。なお、チケットぴあでは桟敷席と新橋演舞場の数量限定人気メニュー「うな重」がセットになった桟敷席(食事付)も発売中。
2012年08月06日義理や人情を超えた熱い男の友情。俳優の津川雅彦が映画監督名のマキノ雅彦として演出を手がける舞台が『男の花道』だ。日本一の女方歌舞伎役者・加賀屋歌右衛門(中村福助)と天才医師の土生玄碩(中村梅雀)が、それぞれプロフェッショナルとしての誇りと、自らの命をかけて、お互いを信じ合って行動する友情の物語が描かれる。7月の開幕に先立ち、都内の稽古場を訪ねた。『男の花道』公演情報この日の稽古は、満員御礼の舞台にあがる歌右衛門のもとへ、玄碩の切腹の危機を知らせる手紙が届き、自分の眼病を治した恩人である玄碩を助けようと、歌右衛門が舞台を抜けることを決意するクライマックスのシーン。マキノ監督は各役者について、こういう気持ちでといった抽象的な言葉ではなく、「このセリフで声のトーンを上げて」など、具体的な言葉で演出をつけていく。福助と梅雀に対しては、細かく演出を指示することはないが、稽古に区切りがくると、逆に福助がすぐにマキノのところへ行ってアドバイスを求め、その姿からはお互いの強い信頼関係が感じられた。劇中劇である歌舞伎『櫓のお七』を披露するシーンは歌舞伎俳優・中村福助の本領発揮だ。背後にいる人形遣い役に操られるように、役者が人形の動きをまねて、人形浄瑠璃のように動く“人形振り”という手法で踊り、歌舞伎では見せ場にもなっている。福助は2009年の歌舞伎座さよなら公演などで『櫓のお七』を演じており、人形振りのシーンはまさに独壇場。マキノ監督もここでは静かに見守り、福助が足音を強調するツケ打ちのタイミングなどをスタッフに細かく指示。このシーンでは本格的な歌舞伎の踊りを楽しめそうだ。人形になりきる歌右衛門だが、その途中で玄碩からの手紙を受け取ると、ことの事態を理解して、みるみる人間らしさをとりもどしていく。その後、舞台を抜けるために、歌右衛門が役者生命をかけて客に許しを請う場面では、福助が顔を真っ赤にさせて、なりふりかまわずに演じる姿が印象的だった。この日は音楽を担当した宇崎竜童も稽古場を訪問。自身が制作した音楽がどのように芝居と絡み合うかを確認していた。歌舞伎のような独特の節がついたセリフ回しではなく、初めてでも聞き取りやすい言葉で進行し、予備知識を必要としないシンプルなストーリーの本作。歌舞伎世界を色濃く反映させつつも、歌舞伎を知らない人でも、演技や演出を十分に堪能することができそうだ。7月1日(日)から5日(木)まで大阪・新歌舞伎座、7月7日(土)・8日(日)は岐阜・羽鳥市文化センター、7月12日(木)から26日(木)まで東京・ル テアトル銀座 by PARCOにて上演される。取材・文:大林計隆
2012年06月29日俳優の津川雅彦が、映画監督としてのマキノ雅彦の名で、舞台『男の花道』の演出を手がける。『男の花道』は、講談や映画、歌舞伎、舞台の題材にも幾度となく取り上げられ、友情物語の代名詞とも言える名作。7月からの上演に先立ち、6月11日、都内稽古場にて中村福助、中村梅雀ら出演者とマキノ雅彦が会見を行った。『男の花道』チケット情報物語は歌舞伎俳優と蘭学者の男の友情を軸に展開する。江戸時代、大坂で人気の女方役者・加賀屋歌右衛門(福助)は、ひそかに失明の危機を抱えていたが、蘭学者・土生玄碩(梅雀)による大手術によって、役者生命の危機を救われる。これをきっかけに、ふたりは強い友情を結ぶことになる。だがある日、玄碩に災難が降りかかり、刻限までに歌右衛門が駆けつけなければ切腹させられるという窮地に陥る。友を助けるため、歌右衛門は満員の舞台を抜け出すことを決断する。会見で梅雀が「今回はただならぬ縁」と話す。マキノは「叔父であるマキノ雅弘監督による1941年の映画版をもとにしているという縁で、今回ご指名いただいたと思っています」と挨拶。福助も「この物語は、私と梅雀さんの先祖である3代目・歌右衛門と土生玄碩の友情を描いた作品。私にとって歌右衛門という名は、大叔父でもあり師匠でもあった6代目・歌右衛門のイメージが一番強い。役者としても人間としても目標にしている名前です」と語った。この日は初めての台本の読み合わせを終えたばかり。マキノは「なんといっても福助ちゃんと梅雀ちゃんのキャラクターが素晴らしくて素敵。“平成の男の友情”を作りたいということで、脚本には新しい試みが加わっており、古さを感じない、おもしろい友情関係が成立している」と自信をのぞかせた。梅雀も「頂点を目指す人間が陥りがちな部分でお互いが追い詰められ、でもお互いの友情によって救いあうというところが感動的。普遍的なテーマを感じます。(セリフも)私たちにぴったりに書かれていて、やっていて自然にのっていける」と話していた。歌舞伎以外の舞台に初出演となる福助は「最高のスタッフと出演者に恵まれて幸せ。日ごろからかわいがっていただいているマキノ雅彦監督とご一緒できるので楽しみです。梅雀さんと本当に友情を結び合えたらと思っています。普段からの仲は……良いですよね?」と梅雀の顔をうかがって話し、会場をなごませていた。また、満員の舞台を抜け出す決断について質問されると「(実際には)やっぱり行けないですよね」とコメント。役者として歌右衛門と玄碩の友情の篤さをたたえていた。なお、今回の公演は、歌右衛門が大坂から江戸に移った東下りにちなんで、7月1日(日)からの大阪公演を皮切りに岐阜、東京の順で上演される。共演は尾上松也、風間俊介、一色采子、風花舞、真由子、森本健介、春田純一ほか。音楽は宇崎竜童が担当。取材・文:大林計隆
2012年06月12日俳優として長年活躍している津川雅彦には、もうひとつの顔がある。マキノ雅彦の名前での映画監督、演出家としての顔だ。日本映画界の名匠・マキノ雅弘を叔父に持つ。そのマキノ雅弘が監督した『男の花道』が、中村福助、中村梅雀の共演で舞台になる。演出を引き受けたマキノ雅彦に話を訊いた。『男の花道』チケット情報「男の友情をこれだけ上手く描いた作品はないのではと思う」とマキノ雅彦は言う。『男の花道』は、歌舞伎役者と医師の友情と信義を描いた名作だ。女方として人気を集める歌右衛門は、江戸・中村座への出演を控えていたが、実は失明の危機にあった。それを見抜いた医師・玄碩(げんせき)は難しい手術を成功させ、ふたりの間に深い友情が結ばれる。ところが玄碩に災難がふりかかり、その窮地を救うために歌右衛門は大切な中村座の舞台を抜け出すことを決断する。「友情と何かを天秤にかける場合、“何か”が軽いと友情も軽くなってしまうでしょ、この話では役者生命を賭けるのだから、大変な重さです。今回、ひとつ掘り下げたいのは、歌右衛門が金をかき集めたり、苦労して苦労して、やっと中村座の出演を勝ちえたこと。その中村座にもう戻れないかもしれないのに、友を助ける。歌右衛門は、ここで芸を取ったら、人間としてだめになるということがわかっているんですね。そういう美しい心を伝えたいと思います」。役者として生き残るよりも、人として誠実でありたい、その心には時代を越えて共感できるものがあるに違いない。一方で、事件の元を作ってしまう玄碩にも心惹かれるチャーミングな人間性がある。「玄碩先生は、天才医師なんだけれども、天才にありがちなように、ちょっと性格的な欠点がある(笑)。でも、それが憎たらしくなく、愛嬌として映るようにしたいですね」。歌右衛門役には、実際に六代目歌右衛門を大叔父に持つ中村福助、玄碩役には中村梅雀。「福助さんは、この人のために書かれた役かと思うくらい、ぴったりだし、梅雀さんは愛嬌のあるキャラクターがとても上手い人。このふたりで『男の花道』ができるなら絶対に面白くなると思って、演出を引き受けたんですよ」。演出家としてマキノが敬意を払っているのが、実は歌舞伎。長い歴史の中で磨き上げられた様々な技術の集積は、他に比べようがないと言う。「歌舞伎の音とか、黒子の存在とかを使わないのはもったいないよ。だから、今回、歌舞伎の手法を活かしたい。もちろん、劇中劇として歌舞伎のシーンもあります。『櫓のお七』の人形振り(俳優が人形の動きをまねて演じる)が大切なキーになるので、楽しみにしていただきたいですね。今、女性のパワーがすごいけど、男だけの芝居でこんなに感動的なものがあるんだよと示したい、僕の男の意地です(笑)」。恋愛ものでもなく、家族ものでもなく、男の友情を正面から取り上げた貴重な作品に期待したい。公演は7月12日(木)から26日(木)まで東京・ルテアトル銀座by PARCOにて上演。5月26日(土)より一般発売開始。なお、大阪、岐阜でも上演される。
2012年05月15日3月30日、新橋演舞場で開催される『四月花形歌舞伎』で、『仮名手本忠臣蔵』の通し上演を行うにあたり、出演俳優らが忠臣蔵にゆかりの深い東京・泉岳寺を訪れ、舞台の成功祈願を行った。『四月花形歌舞伎』チケット情報歌舞伎俳優の中村福助、市川染五郎、尾上松緑、市川亀治郎、尾上菊之助、中村獅童は、泉岳寺境内にある浅野内匠頭の墓前での成功祈願の後、四十七士の墓所にもお参りし、公演への思いを新たにしたようだ。参詣後行われた会見では、それぞれ役や公演への思いを語った。「若手の皆さんと忠臣蔵ができて幸せ。良いメンバーで良いチームが出来そうです。忠臣蔵という大きな芝居にみんなでぶつかっていきたい」(福助)。「(自分が演じる)由良之助は忠臣蔵の物語の要となる人物なので、大人の芝居をしたいです」(染五郎)。「目の前に与えられた課題を、自分の中で消化していきたいと思っています」(松緑)。「忠臣蔵は役者にとって基本となる芝居。先輩方の教えを忠実に守って、大切に演じていきたい」(亀治郎)。「日本人の心をとらえて離さない大切な演目なので、大事に務めたいです」(菊之助)。「大先輩が演じてきた大きな役で、それだけの歳になったのかと思う。先輩にご指導いただきたいです」(獅童)。『仮名手本忠臣蔵』は元禄14年(1701年)、江戸城松の廊下で、播州赤穂藩主の浅野内匠頭が吉良上野介に刃傷に及び、浅野家は領地没収の上、お家断絶となった。しかし、国家老の大石内蔵助を含む47人の浪士たちが吉良邸に討ち入りし、主君の仇を討った赤穂事件を題材にした人気狂言のひとつ。歌舞伎での上演回数も多く、赤穂事件の47年後に上演されて以来、歴代の名優たちが父から子、子から孫へと伝承してきた本作。歌舞伎界の次代を担う若手花形俳優たちがどのような芸と技を見せるのか、注目したい。公演は4月1日(日)から25日(水)まで東京・新橋演舞場にて上演。チケットは発売中。尚、チケットぴあではおトクな特典付きチケットも販売している。【配役】中村福助:おかる市川染五郎:大星由良之(大石内蔵助)尾上松緑:高師直(吉良上野介)、寺岡平右衛門(寺坂吉右衛門)市川亀治郎:早野勘平(萱野三平)尾上菊之助:塩冶判官(浅野内匠頭)中村獅童:桃井若挟之助、斧定九郎※()は歴史上の人物で、それぞれの役のモデル
2012年03月30日2月より六代目中村勘九郎襲名披露興行を行う中村勘太郎が都内で取材会を行い、現在の心境を語った。襲名興行は2月に東京・新橋演舞場にて、3月に東京・浅草の平成中村座で上演後、主要都市を回る。新橋演舞場二月大歌舞伎<中村勘太郎改め六代目中村勘九郎襲名披露>チケット情報「演舞場と中村座で襲名興行ができるのは、なんだか勘九郎らしいですね。父が19歳の時から夢見て建てた中村座で初の襲名ができる。うれしいですね」と勘太郎。父・勘三郎が勘九郎時代に築いてきた功績は数限りない。1994年よりほぼ毎年、若者の街渋谷で『コクーン歌舞伎』を上演。また、現代の作家に新作歌舞伎を創って欲しいという思いから、串田和美、野田秀樹、渡辺えり、宮藤官九郎などに演出や執筆を依頼し新たなファンを掘り起こした。2000年には中村座にゆかりある浅草に仮設劇場を建て、“平成中村座”として公演を行った。その後この一座は日本国内のみならず、世界各地で上演を行っている。そんな勘九郎の名を継ぐ重責については「とりあえず怖い」と話す。「やっぱり戦ってきた名前ですから。(中村座やコクーンでの上演は)歌舞伎を愛してもらいたい、色々な人に知ってもらいたいって。危機感をずっと持っていたんでしょうね。お客様が入ってくれなきゃ話にならないですし。ただ、新しいことをするとよく思わない人もいますよ。いいものをすることによって戦うというか。熱い魂を持って戦ってきた名前ですね」12月の中村座は勘太郎として最後の舞台出演になる。「今月はいい最後を迎える事ができるんじゃないかな。『積恋雪関扉』の関兵衛は今までの役者人生の中で一番苦心した役ですね。演じた者にしかわからない苦しみや疲れがあります。勘太郎という名前で関兵衛をやらせてもらい、偉大なる先輩方が愛した役で、同じ疲れを自分自身で体感でき、歌舞伎ってこういう楽しさもあるんだなと思いました」今年は震災はもちろん、長男の誕生、父の病気、祖父(七代目中村芝翫)の逝去と勘太郎にとっても大きな出来事が続いた。「すごい年になっちゃいましたね。(父の代役を務めた際)命を削ってでもやりますと言ってたら、本当にそれぐらい大変でした(笑)」2月興行では『土蜘』の僧智籌と、『河内山』松江出雲守、『春興鏡獅子』の弥生での出演が決定している。「『土蜘』は、今まで中村屋にあまり縁のなかった役ですが楽しいです。弥生は、祖父(七代目中村芝翫)と1対1でずっと稽古をやってました。父も祖父もすごく大事にしています。おじいちゃま(十七代目中村勘三郎)も。全員の血が入っているから大切にしなければと思いますね。3人とは体型が違うので、当時振り付けられた踊りをどうこの身長で踊るかですね」襲名興行まであと僅か。「今月の“勘太郎”最後をまずは楽しみたいです。襲名はお祭りですからね。お客様にも楽しんで頂いて、一緒に祝って欲しいです」。公演は2月2日(木)から26日(日)まで新橋演舞場で上演。その後、3月平成中村座、9月に大阪・松竹座、10月に名古屋・御園座、12月に京都・南座、2013年2月に博多・博多座で上演される。
2011年12月22日歌舞伎俳優の中村勘太郎が、来年2月に六代目中村勘九郎襲名披露の成功を祈願して11月27日、東京・浅草寺でお練りを行った。父、中村勘三郎と弟の中村七之助らとともに雷門前を出発し、ゆっくりと本堂までお練りを開始。晴天となったこの日、人気役者を一目見ようと2万5千人が集まり、「中村屋!」と声がかかると笑顔で応えていた。新橋演舞場二月大歌舞伎<中村勘太郎改め六代目中村勘九郎襲名披露>チケット情報勘太郎は「勘九郎という、父が46年間名乗っていた名前を継ぐプレッシャーはあります。みなさまからの笑顔とご声援を胸に、1年間しっかり務めたいと思います」と挨拶。また勘三郎は「勘九郎っていい名前ですけど大した事ありません。(自分が)勘三郎を継いだ時のほうがプレッシャーがありました。気楽にいい勘九郎にしてもらいたい」とエールを送った。勘九郎を名乗る実感がまだ湧かないという勘太郎だが、「謙虚な気持ちと向上心と、ハングリー精神を忘れないように務めたい」と話し、気持ちを引き締めていた。なお、勘太郎としての出演は今年12月の『平成中村座』(東京・浅草)が最後となる。襲名披露は、来年2月2日(木)から26日(日)まで東京・新橋演舞場にて興行を行い、その後、3月に平成中村座、9月に大阪・松竹座、10月に名古屋・御園座、12月に京都・南座、2013年2月に福岡・博多座と各地を回る。新橋演舞場のチケットは12月23日(金)より発売。
2011年11月28日今年9月、東京・新橋演舞場『秀山祭九月大歌舞伎』興行で、三代目中村又五郎、四代目中村歌昇をそれぞれ襲名する歌舞伎俳優の中村歌昇と長男の中村種太郎が、中村吉右衛門、中村歌六らとともに8月22日、東京・浅草寺で「お練り」を行った。チケット情報鳴物の山車と木遣り(きやり)に先導され、雷門を盛大に出発。1万人の人で賑わう仲見世を経て、「播磨屋!」、「又播磨!」などの掛け声が飛び交う中、本堂に向かい成功を祈願した。朝から激しく降っていた雨も「お練り」が始まるとすっかり止み、天さえも味方につけているかのよう。なお、浅草寺での「お練り」は2005年1月の中村勘三郎以来6年7か月ぶり。三代目又五郎を襲名する中村歌昇は、「本日は本当にありがとうございます。お天気の悪い中、木遣りの方々、お囃子のあやめ連の方々、浅草の芸子の皆様、ありがとうございます。皆様のご声援に応えるべく、この道一層の精進をいたし、ひとかどの役者になることが、皆様へのご恩返しだと思っております」とコメント。また、四代目歌昇を襲名する中村種太郎は「このようにお練りをさせていただくことは、色々な方々のお力があってのことだと思っております。感謝の気持ちを持って、一所懸命舞台を勤めることが一番の恩返しだと思ってております」と抱負を語った。播磨屋一門の長である中村吉右衛門は「本日はお足元の悪いなか、かくも賑々しくお運びいただき誠にありがとうございます。皆様方のお力によって、舞台で力を発揮できることと思います。ぜひとも又五郎、歌昇をどうぞ宜しくお願いいたします」と締めた。公演は同劇場にて9月1日(木)から25日(日)まで上演。チケットは発売中。
2011年08月23日7月31日、東京・新橋演舞場で行われる『八月花形歌舞伎』の第二部で上演される、新作歌舞伎『東雲烏恋真似琴(あけがらすこいのまねごと)』の舞台成功祈願のため、歌舞伎俳優の中村福助、中村橋之助、中村獅童、中村勘太郎ら人気俳優と、劇作家・演出家のG2が亀戸天神社を訪れた。チケット情報G2は、橋之助主演舞台『魔界転生』(2006年)と『憑神』(2007年)で脚本と演出を手掛けた縁から、今回初めて歌舞伎を作・演出することになった。『東雲烏恋真似琴』は、橋之助演じる堅物の御家人・新左衛門が、ひょんなことから花魁の小夜と結婚することになるが、彼女は別れた元恋人に殺されてしまう。その死を認めたくない新左衛門はある日小夜そっくりの人形を手に入れると、人形を本物の小夜と思い込み一緒に暮らし始める。そのうち小夜が生きているという噂が広まり……というストーリー。祈願後、会見に応じた橋之助は「G2さんとは前に歌舞伎以外で2作やらせていただきましたが、淡い気持ちでいつか歌舞伎を一緒にと思っていました。気心知れたみんなと良い作品を作っていきたい」と意気込みを語った。小夜を演じる福助は「橋之助さんの妄想で人形が動くという話を聞いてホラー映画を勉強していたら、G2さんがホラーは嫌いだそうで、非常に淡い作品になってます。観終わった後キュンという気持ちになると思います」と作品の見どころをアピール。また、獅童は「人形職人の役をやらせていただいています。毎日とってもキュンとしてます」、勘太郎は「(出演陣を見て)悪人顔が揃ってますが、悪人は一切出てきません」とそれぞれの思いを語った。なお、第一部では女郎と役者のはかない愛を描く『花魁草』を福助と獅童で、『櫓のお七』では七之助が八百屋お七を演じる。勘太郎が4役早替わりを勤める第三部『怪談乳房榎(かいだんちぶさのえのき)』なども話題。公演は8月6日(土)より27日(土)まで。チケットは発売中。
2011年08月01日