仲道郁代は、高い技術と美しい音色、哲学的思考をもって楽曲に向かい、常に高みに向かって挑戦し続けるピアニストである。そんな彼女が自身の演奏活動40周年と、特に敬愛し情熱をもって取り組んできた作曲家であるベートーヴェンの没後200年が重なる2027年に向けて行っている「仲道郁代 The Road to 2027リサイタル・シリーズ」が6月2日(日)に開催される。「今回は、音の響きの中に“さめざめと泣き続けたくなるような夢”を聴いているようなプログラムです。タイトルにある“夢”というのは、理想かもしれませんし、どこか永遠の世界や焦がれてやまない故郷、あるいは永遠の世界かもしれません。“何処へ”とは、場所を指すかもしれませんし、探し求めるという行為とも言えます。二つの言葉を照らし合わせながら今回の楽曲をお聴きいただくことで、何か見えてくるものがあると思います」「The Road to 2027」には春と秋のシリーズがあり、春はベートーヴェンのピアノ・ソナタを核としたプログラム。今回は第27番に第13番「幻想曲風」、第14番「月光」を並べ、そこにシューベルトの第18番「幻想」を重ねることで、ベートーヴェンとシューベルトのソナタに込められた哲学的意味を探求していく。「ふたりの作曲家が生きた時代は重なっていますし、シューベルトはベートーヴェンを尊敬していました。しかし、彼らの夢の捉え方は異なるように思えます。ベートーヴェンは夢や理想に真っすぐに向かい、理想を追うこと自体が素晴らしいという考え方を持っていたと思います。対するシューベルトは、理想には到達しないとわかっていて、わかりつつもさすらい、巡ることが美しいと味わうという考え方のように思えます。今回の演奏曲を通して、ベートーヴェンがどのように夢や理想、遠く離れたものを描いたのか、シューベルトが見出したかったものは何だったのか、ということをぜひお聴き比べ頂きたいです」全てのプログラムが注目曲なのだが、特に今回は最有名曲「月光」の印象が大きく変わりそうである。発見されたベートーヴェン自身によるメモ書きから、彼が「月光」作曲に関連してエオリアンハープという古来の楽器に関心を持っていたことや、『エオリアンハープ』と題された書物に掲載されている詩に興味を抱いていたことがわかりました。その詩の一節には、こんな言葉が書かれています。『…甘い夢に抱かれて、人生からあまりに早く見放され、この世の目的を果たせなかった人々の魂…』第1楽章から第3楽章にかけて、ベートーヴェンがこの曲で何を見出したかったのか、ということを改めて考えながら演奏していきたいと思っています」取材・文:長井進之介The Road to 2027 仲道郁代 ピアノ・リサイタル 夢は何処へ■チケット情報()()()()5月11日(土)14:00開演アクトシティ浜松中ホール5月19日(日)14:00開演兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール5月25日(土)14:00開演宗次ホール6月2日(日) 14:00開演サントリーホールベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第27番 Op. 90ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第13番 Op. 27-1ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「⽉光 」Op. 27-2シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番「幻想 」D894 Op. 78
2024年04月26日緑豊かなゴールデンウィークの日比谷公園で、大巻伸嗣、永山祐子、細井美裕によるアートインスタレーションが繰り広げられる「Playground Becomes Dark Slowly」が4月27日(土) から5月12日(日) まで開催される。「Playground Becomes Dark Slowly」は、東京都が実施している四季を通じた花と光の演出によって公園の新しい楽しみ方を提案する「花と光のムーブメント」に、「アート」を掛け合わせる新しい試み。山峰潤也がキュレーターを務め、「公園という都市の隙間の中で変化していく日の光を感じながら、自然への想像力を駆り立てること」をコンセプトに大巻伸嗣、永山祐子、細井美裕が、それぞれインスタレーションを展開する。日中は永山祐子の「はなのハンモック」を中心としたプレイグラウンドが第一花壇に登場。夜の草地広場では大巻伸嗣の「Gravity and Grace」が幻想的な光を放ち、また園内各所には、細井美裕が日比谷公園の音を収集し、再構築したサウンドインスタレーション「余白史」が設置され、一日を通して公園での新たなアート体験を楽しむことができる。大巻伸嗣「Gravity and Grace」(“Art Fair Philippine 2019” “10 days of Art” Manila city, Philippine, 2019)大巻伸嗣による日比谷公園のためのスケッチ永山祐子建築設計「はなのハンモック」CG パース細井美裕「余白史」(サウンドインスタレーション)作品イメージ4月27日(土)、5月4日(土・祝)、5月11日(土) には、光の粒を携えた花一輪を来場者自らが心字池の水辺に浮かべ、「花と光の群像」を作り出す永山祐子によるワークショップイベント「はなの灯籠」も開催。会期中の土・日・祝には、キッチンカーの出店も予定されている。永山祐子建築設計「はなの灯籠」CG パース<開催概要>「Playground Becomes Dark Slowly」会期:2024年4月27日(土)~5月12日(日)会場:日比谷公園時間:9:00~22:00入場:無料・予約不要公式サイト:
2024年04月25日スターツおおたかの森ホール主催『仲道祐子の音楽物語〈ガリバー旅行記〉』が2023年7月8日(土)にスターツおおたかの森ホール(千葉県流山市)にて上演されます。チケットはカンフェティ(運営:ロングランプランニング株式会社、東京都新宿区、代表取締役:榑松 大剛)にて4月25日(火)より発売です。カンフェティにて4月25日(火)10:00よりチケット発売 公式ホームページ 冒険好きのガリバーが海を渡り、たどり着いたのは小人の国や巨人の国。さらに日本も訪れてしまった、ワクワクでいっぱいの旅行記。カラフルなイラストを映しながら、仲道祐子のピアノ演奏と、楽しいお話で物語りが進んでゆく、目と耳で楽しむ親子のためのコンサートです。自由に、思いきり想像をふくらませて、お楽しみください。公演概要『仲道祐子の音楽物語〈ガリバー旅行記〉』日時:2023年7月8日(土)15:00開演(14:30開場)会場:スターツおおたかの森ホール(千葉県流山市おおたかの森北1-2-1)【第一部】童話「ガリバー旅行記」仲道祐子(ピアノ)&桂幾子(語り)作曲 新田祥子イラスト オノマリコ【第二部】ピアノミニ・コンサート仲道祐子◆メンデルスゾーン: ロンド・カプリチオーソ◆田中カレン:「愛は風にのって」よりラム酒の樽・淋しい料理人・黒いタートルネック・笛吹きと縄文土器・愛は風にのって◆アーロン・コープランド:ユーモリスティック・スケルツォ - 猫とねずみ◆ショパン: スケルツォ 第2番 作品31(※曲目は変更になる場合があります)■出演童話「ガリバー旅行記」仲道祐子(ピアノ)桂幾子(語り)■主催スターツおおたかの森ホール指定管理者MORIHIBIKU共同企業体代表団体アクティオ株式会社■チケットカンフェティHP・TEL 4月25日(火)10:00発売開始前売・当日とも 一般2,800円3歳~小学生1,500円(全席指定、税込)※2歳以下の入場はできません。※お一人様6枚まで。※別途、各種手数料(発券手数料など)がかかります。※車いす席については、スターツおおたかの森ホールにお問合せください。■備考・新型コロナウイルス感染症対策の状況により、販売方法等を変更する場合があります。・お客様都合によるチケットの変更・返金はお受けできません。・最新情報は随時HPにてお知らせいたします。■ご来場のお客様へ・ご来場前に体調を確認し、発熱等のある方はご遠慮ください。■お問合せスターツおおたかの森ホールチケットセンター04-7186-7638(8:30~22:00)※受付時間は変更になる場合があります。 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年04月21日【前編】浪曲に魅せられ、空襲を生き延び…99歳の曲師・玉川祐子の半生から続くニコニコと「みかん持っていきな」と食べ物を渡してくれる玉川祐子さん。だが、舞台に上がれば表情もキリリと締まる。三味線を手にする小さな体からは、「イヨーーーッ!」と腹に響く掛け声が。浪曲ーー。「浪花節」とも呼ばれる日本の伝統話芸だ。同じ話芸でも、それぞれ1人で舞台を務める講談や落語と違って、こちらは「語り」を担う「浪曲師」と、それを盛り上げる三味線の「曲師」、2人で芸を作り上げる。今回の主人公は曲師の祐子さん。なんと99歳で、現役最高齢の曲師なのだ。戦前、一世を風靡した浪曲にあこがれた祐子さんは「1人死んだと思って」と父に頭を下げ、飛び込んだ東京で大人気に。2度の結婚、わが子の夭逝、空襲……あらゆる困難を、持ち前の行動力で乗り切った。私は幸せ、と人生を振り返ってそう言い切った祐子師匠に、戦後の活躍を振り返ってもらった。■1度目の結婚では、夫の暴力に耐え続けた同じ師匠に師事していた男性・理一郎さんと結婚し、戦後には4人の子宝に恵まれた祐子さんだが、悩みの種が。それは、嫉妬深く気性の荒い夫の暴力だ。「私も聞かないほうだから、口答えする。すると夫は棒で殴るんだ、自分の手が痛いもんだから。自分の女房をなんでこんなに殴るんだ、っていうぐらい、殴られたし、紐で首を絞められ殺されかけたことも。とてもじゃないけど、この人とはいられない、そう思った。でも、子どものために辛抱したね」さらに、50年代後半、浪曲人気に翳りが見え始めた。60年代も後半になると、人気衰退はますます顕著に。危機感を覚えた業界は70年、浅草に定席「浪曲木馬会(現在の木馬亭)」を設けた。すると、一時廃業していた多くの浪曲師たちが戻ってきた。だが、相変わらず、曲師が足りない。戦後、安定した収入のために一時は三味線を置いた祐子さんだったが、ふたたび声が掛かる。「一度手伝ったら『明日もお願い』『その次もお願い』って言われちゃって。私も三味線、好きですから。しまいには定期券を買って、通うようになったね」懐かしい人にも再会した。玉川派の浪曲師・玉川桃太郎さんだ。年齢は祐子さんより1つ下だが、浪曲界への入門はともに40年。いわば2人は同期だった。「20年ぶりぐらいだった。木馬亭で『姉さん、しばらく』って」このとき、桃太郎さんは続けて不思議なことを言ったという。「『いずれ姉さんに三味線、弾いてもらうことになるよ』って。あっちは何げなしに言ったんだろうけど。思えばそれが縁だったんだね」桃太郎さんの言葉どおり、しばらくすると祐子さんは彼の三味線を弾くようになった。■2人目の夫は穏やかそのもの。「桃太郎と一緒になって、本当に幸せだった」「三味線、続けるなら出ていけ!」祐子さんが曲師としてふたたび多忙になり始めると、嫉妬深い夫はこう怒鳴りつけたという。「『三味線やめて家にいろ』と言うんだ。でも、私は三味線も浪曲も好きだから。それに、曲師が本当に足りなかった。これはもう出ていくしかない、そう思った」祐子さんは家を出て、4畳半一間のアパートで別居生活を始めた。「桃太郎の三味線は弾いてたし、内職もやったけど。一人暮らしとなると家賃、生活費とぜんぜん足りない。だから、千住のやっちゃ場(市場)の喫茶店で働きました」朝4時から喫茶店勤務。正午に仕事を終え、バスに飛び乗り浅草へ向かう。そんなダブルワークをしばらく続けた。「やっぱり育ちがあんまりよくないんだね。借金取りが来たのを見て育ったから。貧乏性なんだ。いまも家でジッとはしていられない」祐子さんの部屋に、あろうことか桃太郎さんが転がり込んでくる。「三味線弾くようになると情が移っちゃうじゃん。ちょこちょこ、ちょこちょこ、部屋に来るようになって。でも、これは罪作りだな~と思った。だって、あっち(桃太郎さん)には女房がいて、私にもクソ親父だけど、娘たちの父親がいたから。だけど、我慢できなかったんだね~。そのうち『俺と一緒になってくれ』って言われて。これは悩んだ。青江三奈の歌じゃないけど、悩んで悩んで、だ」いま風に言えばダブル不倫。越えてはいけない一線を越えた、その理由は、桃太郎さんの穏やかさ、優しさに引かれたから。「やっぱりね、優しい。一緒に暮らすようになっても、私に手をあげるなんて一切、なかった。私が口答えするでしょ。そうすっと穏やか~に『出てけよ』って言うんだ。だけど私が『出ていくとこないよ』って答えると『だったら大人しくしておけ』って。それだけ、それでおしまい」75年、ついに祐子さんの離婚が成立。晴れて2人は夫婦に。このとき、祐子さん53歳、桃太郎さん52歳だった。「子どもたちにも相談したよ。娘は『お母さん、これまで苦労してきたんだから、自分の好きに生きたらいい』って言ってくれた」その後は舞台でも、家庭でも、寄り添うように2人は過ごした。公私ともに支え合い、気づけば桃太郎さんとの生活は、前の結婚生活よりも、うんと長くなっていた。好きな浪曲の三味線を弾いて暮らしたい、それも、好きな人とーー。祐子さんのささやかな願いは、こうしてかなえられたのだった。15年、桃太郎さんは慢性腎不全急性憎悪のため、帰らぬ人に。「入院して、幾日もなく亡くなりましたけど。最後も『元気になって帰ろうね』って声掛けて。そしたら、あの人、な~んも言わずにニッコリ笑って。穏やかな人だったね、最後まで。昔から言うだろ、『本木に勝る末木なし』って。最初の男がいちばんって意味だけど、私の場合は反対だね。桃太郎と一緒になって、本当に幸せだった」しんみりと語る祐子さん。いまも自宅には、桃太郎さんの写真が飾られている。定期的に舞台に立つ木馬亭にも、夫との思い出が詰まっているはずだ。そこで記者は聞いてみた。「いまも近くに、桃太郎さんを感じますか?」と。すると祐子さん、照れ隠しなのか、破顔一笑、こう即答した。「あ!?何もないよ、そんなもの」■芸能人のお気に入りは福山雅治と松陰寺。少女のように話す姿が印象的だった2度目の取材日。記者は祐子さんが一人暮らしを続ける東京都北区の団地にお邪魔した。前出の小そめさん、それに祐子さんの弟子の杉山照子さんが同席し、ガールズトークの花が咲く。小そめさんが聞いた。「師匠、芸能人は誰が好きなんでしたっけ?」すると、祐子さん、「いっつもそればっかし聞かれんだな」と言いながら、どこかうれしそうにほほ笑む。「まずはあれだ、福山、福山雅治。あの人はいいなぁ。あとは、最近だとほら、あれがいるじゃん、松陰寺(太勇)、ぺこぱの。私、ファンなの。あの人は面白いねぇ」祐子さん、気持ちも若いが、体だってまだまだ元気だ。「まずお勝手はぜんぶやるでしょ。お使いも行く。お総菜は決して買わない、ぜんぶ自分で作ります。掃除は……、このごろは、掃除機はかけずに、ひょいひょいっと箒で掃いてごまかしちゃうの(笑)」祐子さんの住まいは2階。屋外での撮影をお願いすると、サンダル履きで団地の階段を軽やかに上り下り。足腰の衰えも見えない。「あとはそうね、ボケ防止にこれ、してるの。両手一緒は誰でもできるけど、これはちょっと難しいよ」祐子さんは左右の手をこちらに突き出すと、互い違いにグー、チョキ、パーを猛スピードで繰り返した。「すごいですね」と、記者が感嘆の声を上げると、うれしそうに笑ってこう続けた。「頭使うのはいいこと、記憶力だっていいんだよ。山手線一周でしょ、それから京浜東北線、高崎線に常磐線……、ぜ~んぶの駅名、こん中に入ってっからね」そう言って、自分の頭を指さして胸を張った祐子さん。そこで記者は山手線の駅名を諳んじることをリクエスト。「よ~し、山手線だな。まず上野、次が御徒町、秋葉原、神田……」興が乗ってきた祐子さん。どことなく浪曲の節のように駅名を並べ続けている。「それから、東京、有楽町、浜松町、田町……」あれ?新橋が抜けた?記者が口を挟むと祐子さん、「あ!」と声を出し、顔を赤らめ頭を抱えた。「あーーー、ダメだ、ダメだ、あ~あ~、自慢になんねえね~(笑)」少女のように恥ずかしがる、アラ100の祐子さん。かわいらしいその姿に、団地の6畳間は、大きな笑い声に包まれていた。
2022年09月11日仲道郁代のライフワークであるベートーヴェン。その解釈と演奏はますます独自の深みを増している。作曲家没後200年の2027年に向けての横浜みなとみらいホールでの「ピアノ・ソナタ全曲演奏会」は、全32曲を4期(8回)に分けて弾き切るシリーズ。第II期の第3回[12月3日(土)]と第4回[2023年4月8日(土)]について聞いた。番号順に、つまりおおむね成立年代順に弾いていくのではなく、今回の全曲シリーズでは各回ごとにテーマを設け、さまざまな切り口でプログラムを組んだ。「ベートーヴェンの思考のかけらが、時を経て、さまざまな作品に現れる。その共通点をみなさまとともに感じることができればと思っています」全体のラインナップを見て気づくのは、何度か同じ曲を演奏すること。第II期で言えば、12月の第17番《テンペスト》や第23番《熱情》、4月の第8番《悲愴》は、他の回でも演奏する。「32曲のソナタの中にある、ベートーヴェンのいくつもの顔を浮き彫りにするためです。同じ曲でも切り取り方によって私の捉え方も変わると思いますし、お聴きになった印象も変わるのではないかと思います。ベートーヴェンの音楽はそれぐらい豊かな表情を内包している。一面だけの音楽ではないのですね」第3回は「テンペスト~飛翔する幻想」をテーマに、第6番、第17番《テンペスト》、第23番《熱情》、第22番、第28番を弾く。「第28番は、ロマン派の幻想曲の大もとになっている形式です。それだけではなくて、同時期の連作歌曲集《遥かなる恋人に》に込めた思い、ものすごくロマンティックな想念がこの中にもあるんですね。《テンペスト》のストーリー性、《熱情》の幻想的な情熱、第6番の演劇的なコメディのようなやりとりの気配。〝幻想〟がさまざまな形で飛翔しているというのがこのプログラムです」第4回「悲愴~はるかなる憧れ」は第3番、第18番、第8番《悲愴》、《エリーゼのために》、第31番。「悲愴と憧れという、相反する言葉ですが、《悲愴》の持つ、辛さ、悲しみの先に、前へと進もうとするエネルギーを捉えることができるプログラムです」第4回の公演前には、仲道が所有するベートーヴェン時代のピアノを弾きながらのプレトーク&コンサートも。(レプリカでなく)1816年製のオリジナルのブロードウッド。これは2公演セット券購入者限定の特典だ。見逃せない。(宮本明)
2022年08月21日ピアニストの仲道郁代が、5月29日(日)サントリーホールでのリサイタル「知の泉」に向けた記者懇親会を開き、自身の思いや意図を語った(4月7日)。リサイタルは彼女の企画である「The Road to 2027」の一環。ベートーヴェン没後200年と自身の演奏活動40周年が重なる2027年を見据えて、デビュー31年目の2018年から10年をかけて完遂する壮大なシリーズだ。毎年春と秋の2回、10年分・全20回のプログラムを最初に決めてスタートした深謀遠慮。「今回のテーマは『人間の“業”と再生への祈り』です。これらを弾いて、光の世界を見い出したい。そんなプログラムです」演奏するのはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番《テンペスト》、ショパンのバラード第1番、リストの《ダンテを読んで》、そして取り組むのは初めてというムソルグスキーの《展覧会の絵》。4曲とも、文学あるいは絵画作品に触発された、つまり「知の泉」から生まれた作品群だ。仲道は実演を交えながら、その源泉をひもといていく。ベートーヴェンの“赦し”。祖国を失ったショパンの悲しみと再生。リストが描いた神の愛の光の世界。ムソルグスキーが埋め込んだ苦しめられた者たちの暗喩。「叡智と示唆に溢れる文学や絵画から作曲家たちが何を読み取り、何に共鳴して音にしたのか。いま生きている私はそこに何を感じるのか。これはけっして昔の話でなく、生きたリアルな言葉です」いま私たちは、「音楽に何ができるのか」という問いにあらためて向き合っている。── 音楽に戦争をやめさせることができるか?たぶん無理ですね。でも聴く人に「戦争をやめさせなくちゃ」という気持を起こさせることは、きっと音楽にもできるはずです。──これは村上春樹の最近の言葉。仲道はそれを引いたあと、次のように言った。「人が心から共感するのは悲しみなのだと思います。人間の業、悲しみはすべての人が背負っている。そして正義は怒りや悲しみから生まれる。それを描いている作品は私たちの心を動かす。音楽はそれをちゃんと伝えることができる。演奏家にはそれを伝える責務があります」一人の記者が「共感しかない」と感想を口にした。まさに。ベテランのファンなら、少女時代の可憐な印象で彼女をイメージする人も少なくないかもしれない。しかし近年の彼女の表現の深さにはすごみすら感じる。いま最も聴くべきピアニストだと思う。(宮本明)
2022年04月19日ピアニスト仲道祐子が、デビュー25周年の記念リサイタルを開く[3月25日(金)Hakuju Hall]。桐朋高校音楽科卒業後ミュンヘン音大に留学。大学院修了後ドイツでの活動を経て、1996年に国内デビュー公演を行なった。25年の節目に掲げたテーマは「原点回帰」だ。「デビューよりも前、桐朋高校やドイツで学んだ頃、音楽をより深く勉強したいと考えるきっかけとなった頃が原点だと思っています。そこを見つめ直し、今後も頑張るエネルギーの素にするための〝原点回帰〟です」ベートーヴェン《ワルトシュタイン》をメインに、メンデルスゾーン、シューマン、リストというドイツ音楽を軸にしたプログラム。巨匠にして名教師でもあった恩師クラウス・シルデの思い出が特に濃厚に詰まっているのがメンデルスゾーンの《厳格な変奏曲》だという。「細かい指づかいなどはあまりおっしゃらない先生が、とても詳しくレッスンしてくださいました。今でも楽譜にそれが残っていて、懐かしく思い出します。先生は普段、書き込みはさせないんです。次に弾く時にそれを違う意味でとらえてしまうかもしれないから。でもこの曲だけは珍しくご自身の楽譜にも書き込みがいっぱいありました。何度も弾き込んだ、お好きな曲だったのだと思います」ドイツもの以外に、田中カレン作曲《愛は風にのって》も聴き逃せない。桐朋出身の作曲者が師の故三善晃の思い出を綴った子供のための曲集。仲道が弾いたCDが2020年にリリースされ、専門誌でも絶賛されている。今回は21曲中6曲を抜粋して演奏する。「私が高校生、カレンさんが大学生だった1980年代、桐朋の学長が三善先生でした。その頃の思い出やノスタルジーが色濃く反映されている曲集です。子供のための作品なので音の数がとても少ないのに、表現している内容はものすごく大人なんです」そのCDを聴いてみると、どこか懐かしい記憶を、彼女たちと違う時間を生きたはずの私たち聴き手も共有できるような気がする不思議な感覚。「作品が生まれ演奏される時、人と人の歴史が擦れ合う」ということを、かつて三善晃その人が書いていたのを思い出した。プログラム全体にはもうひとつメッセージを込めた。「明るく前向きな気持ちになれる曲を選びました。閉塞感が漂う毎日、とても素敵なHakuju Hallの空間で非日常を堪能して、また日常に戻って元気に明日に向かっていただきたいと思います」(取材・文:宮本明)
2022年01月24日仲道郁代が、2027年の演奏活動40周年とベートーヴェン没後200年に向けて、2018年から10年間にわたり行っている「Road to 2027」。春にはベートーヴェンのピアノソナタを軸としたリサイタルシリーズを継続しており、来たる5月の公演では「ワルトシュタイン」中心に組み立てたプログラムを届ける。【チケット情報はこちら】テーマは「音楽における十字架」。聴くことで何を受け取ることになるのか、考えずにはいられない題目だ。「ワルトシュタインの1楽章では、同音連打による横線と、上下する音階の縦線が重要な役割を果たし、この二つの線を重ねると十字架が浮かび上がります。粛々と同じ営みを続けるような同音連打と、それを貫く剣のような上下動で、運命的な出来事とそれに抗う様が表されているとも受け取れます。ベートーヴェンは作品を通じ、芸術家として背負わねばならぬものについて考えたのではないでしょうか」併せて演奏するのは、ショパンとシューマン。「ショパンの、祖国に戻れず、それでも生きていかねばならない運命への忸怩たる想い。シューマンが、のちに妻となるクララとの結婚を反対される中抱いた、溢れる想いと苦しみ。各作曲家が背負った人生を、どう音楽に昇華させたのか。苦しみ抜いたのか、または時に夢を見たのか。心模様に思いを馳せてお聴きいただけたらと思います」すでに幾度もベートーヴェンのソナタ全曲演奏に取り組む仲道だが、「共感だけでは弾けない。構造的なものを踏まえないと説得力のある演奏ができない」作曲家だけに、昔は苦手意識があった。「でも、一度全曲演奏会をした後、音楽評論家の故・諸井誠先生とのレクチャー付きの全曲演奏会を行ったことで、ピアニストとして私は大きく変わりました。ある音をなぜそう弾くのか考える基礎を、徹底的に刷り込んでいただいたのです」ベートーヴェンは32曲のソナタの中で、生きることとは何かを追求した。「彼が背負った十字架が何だったのか、正しい答えはありません。聴く人それぞれが経験に応じて別のことを作品から共感できるのが、クラシック音楽のすばらしさです」そして最後となる2027年の公演には、ベートーヴェン「ハンマークラヴィーア」とショパン「葬送ソナタ」が置かれている。「実は葬送ソナタは、亡き母の出棺の時に弾いた曲。以来、私は舞台で弾けませんでした。でも、音楽家としてこれを乗り越えなくてはならないとプログラムに入れました。シリーズを終え、その先に見える景色がどんなものなのか、まだわかりません。皆様には、同時代を生きる演奏家がどう変容していくのか、また音楽から何を思うのか、共に感じていただけたら幸せです」取材・文:高坂はる香
2020年02月28日『人気モデル五明祐子氏トークイベント』開催概要2019年11月3日(日)、千葉そごう店 2F キートゥースタイル内 集英社 FLAG SHOPにおいて、『人気モデル五明祐子氏トークイベント』が開催される。同イベントは、集英社 FLAG SHOP千葉そごう店のオープンを記念して開催されるもので、五明祐子氏が、こなれ感を出すテクニックや、購入して良かったアイテムなどを紹介する。集英社 FLAG SHOP千葉そごう店の営業時間は10:00から20:00まで。イベントの入場開始時間は12:45。開催時間は13:30から。参加費は無料。イベントへの応募は、集英社 FLAG SHOPにて、10月21日(月)23:59まで受け付ける。カジュアルファッションを得意とする五明祐子氏五明祐子(ごみょうゆうこ)氏は、ranchに所属し、モデルとして活動。『LEE』、『Marisol』、『GLOW』などの女性誌や、日本テレビ『ヒルナンデス!』、テレビCMなど幅広い分野で活躍している。オフィシャルInstagramのフォロワー数は77,000人以上。オフィシャルブログのフォロワー数は13,000人を超えている。著書には「永遠にカジュアル好きcoordinate200」がある。(画像は五明祐子オフィシャルブログ「オキラクDays」より)【参考】※集英社 FLAG SHOP※五明祐子オフィシャルブログ「オキラクDays」※五明祐子オフィシャルInstagram※ranch
2019年10月15日仲道郁代が芸術監督として主宰する、その名も「仲道郁代ピアノ・フェスティヴァル」(7月14日(日)・東京芸術劇場)は昨年に続く2回目の開催。今年も、仲道郁代、横山幸雄、菊池洋子、實川風、松田華音、藤田真央と、若手からベテランまで、6人の実力派ピアニストたちが、2台&5台ピアノで超絶技巧の妙技を繰り広げる。このメンバーが一堂に会して5台のピアノを鳴らす、その壮観な様子を想像するだけでもわくわくするではないか。「全員がぴたりと揃うキレと、それぞれが絡み合う時の凄みは、ピアニストでもめったに体験できない新しい感覚のサウンド。去年最初に5台で合わせた時は、鳥肌が立ちました」【チケットの詳細はこちら】普段お目にかかる機会がない5台ピアノの合奏。第一線で活躍するピアニストたちにとっても難物なのだそう。演奏するのは《美しく青きドナウ》や《トルコ行進曲》などおなじみの名曲ばかり。しかし、「せっかくこれだけのメンバーが集まるのだから、みんなが本気を出さないと弾けないような編曲を選びました。だから大変で、去年の出演者のひとりは、これは“参加”じゃなくて“参戦”だと言っていました(笑)。ピアニストが技を掛け合わせたとき、これほどまでにエキサイティングなサウンドが生まれるのか! と私たちも驚いています。この面白さをぜひ“体験”していただきたいです」コンサート前半は2台ピアノ。モーツァルトの《2台ピアノのためのソナタ》を、1楽章ずつふたり×3組が交代で弾いたり、《白鳥》(サン=サーンス)や《だったん人の踊り》などの名曲が並ぶが、こちらもまた、よく知った名曲でピアニストによる個性の違いを楽しめる、というだけではない。「2台ピアノならではの複雑な音の妙技。ピアノの音の華麗さ、色気、色彩を堪能してほしい」ピアノという楽器のポテンシャルは、洗練されたピアニズムを持ち寄って2台、5台で奏でると、いったいどこまで広がるのか。その極みに挑戦するのがこのピアノ・フェスティヴァルの意図だという。ピアニストたちの意地とプライドをかけた本気のエンターテインメントだ。開演前には「ピアニスト・クロストーク」があり、6人全員が舞台に出て、あらかじめ募集した同じ質問に答える。「来ていただいて、つまらなかったとは絶対に言わせない」と自信に満ちた意気込みを語る仲道。間違いなくスペシャルなコンサートになりそうだ。取材・文:宮本明
2019年06月21日建築家・永山祐子の展覧会「建築から始まる未来-豊島×横尾忠則、宇和島×束芋×ほしよりこ-」が、東京・表参道のジャイル(GYRE)内アートスペース、アイ・オブ・ジャイル(EYE OF GYRE)で開催されている。11月24日まで。入場無料。本展では、今夏永山が手掛けた瀬戸内海周辺での二つのアートプロジェクトを、映像や写真、建築模型を用いて紹介。建築やアートのエネルギーによる地域再生を目指し、新たなコミュニティーを創造する取り組みとして話題となったプロジェクトのビジョンを提示する。一つ目の「豊島横尾館」は、現代美術家の横尾忠則の絵画作品「原始宇宙」の平面作品11点と、円塔の中や庭園でのインスタレーション作品、建築と一体となった美術館。もう一つの「AT ART UWAJIMA 2013」からは、作家の司馬遼太郎らが滞在したことでも知られる1911年創業の宇和島の老舗の「木屋旅館」をリノベーションするというアートプロジェクトを紹介。畳の一部をアクリル板にし、欄間(らんま)や壁、天井などに漫画家・ほしよりこが書く小説に基づき現代美術家の束芋が制作した映像が映し出された。他にも、宇和島のアーケードにある文具店をリノベーションしたプロジェクトや、 理想の街をつくる観客参加型の展示も登場する。会期中の11月17日には、永山と束芋によるトークショー「建築×アートの可能性」も開催。司会は、アートダイナミクスの生駒芳子が担当する。また関連商品の販売も実施。「AT ART UWAJIMA 2013」のために書かれた、ほしよりこの小説「そういう事がずっと続く」(700円)、束芋デザインの「宇和島Tシャツ」(2,500円)、宝飾品にならない真珠を蘇らせた「リパール」で作った、ほしよりこ、束芋、永山祐子監修のオリジナル限定商品などがそろう。
2013年11月08日幸せご報告NHKの青山祐子アナウンサーが、2012年3月5日午後3時8分に、都内の病院で第1子の男児を出産したと、神田うのが自身のブログで本人に代わり報告した。青山アナの友人の神田うのは、「幸せご報告」というタイトルで3月6日にブログで発表した。生まれた新生児は3418gと少し大きめで元気だそうだ。結婚は昨年1月に。青山アナは医療福祉関連会社の役員と2011年1月に結婚を発表し、9月には妊娠5カ月であることが明らかになっていた。青山アナはトーク番組「スタジオパークからこんにちは」の1月20日放送の司会を最後に務めて産休に入った。元の記事を読む
2012年03月06日昨年『こだまでしょうか』がACジャパンのCMで取り上げられ、流行語大賞にもノミネートされるなど、大きな注目を集めた詩人・金子みすゞ。その作品とクラシックの名曲を組み合わせるコンサート「金子みすゞ 詩の世界」が、5月に東京で開催される。「金子みすゞ詩の世界」の公演情報明治36年生まれ・山口県出身の金子みすゞは、大正末期から昭和初期にかけて活躍した童謡詩人。26歳で亡くなるまでに書かれた詩は500編以上。自然とともに生き、小さないのちを慈しむような作風が特徴だ。そんな人の心に素直に呼びかる金子みすゞの詩に、ベートーヴェンやシューマン、ブラームスの音楽を組み合わせるコンサートが「金子みすゞ 詩の世界」。声に出して語ることで音楽として響く金子みすゞの詩と、クラシックの名曲が呼応するひととき。詩の朗読は中井美穂、演奏は長谷川陽子(チェロ)、仲道祐子(ピアノ)が担当する。「金子みすゞ 詩の世界」は、5月15日(火)に東京オペラシティで開催。チケットの一般発売は、1月21日(土)10時より。また一般発売に先駆け、チケットぴあではインターネット先行先着プリセールを1月20日(金)23時まで受付。●金子みすゞ詩の世界【日時】5月15日(火) 13:30開演【会場】東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアル(東京都)【出演】チェロ:長谷川陽子ピアノ:仲道祐子朗読:中井美穂
2012年01月16日