○世界遺産データ『マチュ・ピチュ』(複合遺産)。ペルー。1983年登録。一生に一度は行ってみたい世界遺産のトップ3には間違いなく入るマチュ・ピチュ。インカ帝国が築いた天空都市、というのは言わずもがな。実は複合遺産なんですよ!マチュ・ピチュに至るには、麓の温泉街から急峻な坂道をバスで上っていくのですが、その道中はジャングルとなっています。今でこそ遺跡の周辺は切り開かれて見通しもいいのですが、1911年にアメリカ人探検家のハイラム・ビンガムが発見するまでは、ジャングルの中に埋もれていたのです。遺跡の周辺では、アンデスイワドリなどの絶滅危惧種が生息し、手つかずの自然が残されていることから自然遺産としての価値も評価されました。国外からマチュ・ピチュを訪れる際には、やはり世界遺産であるクスコという都市が起点となりますが、この間を結ぶ列車の名は「ハイラム・ビンガム号」となっています。○筆者プロフィール: 本田 陽子(ほんだ ようこ)「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。○世界遺産検定とは?世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。主催:世界遺産アカデミー開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)開催地:全国主要都市受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込みその他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて
2015年06月29日ハ・ロン湾photo:ひさほ ゆう4年間世界遺産巡りの旅をした世界遺産イェーイ!が、お届けする連載第4弾はベトナム北部の世界遺産でございます!!ベトナムには、8つの世界遺産があるのですが、今回ご紹介するのは、ベトナム北部にある以下4つの世界遺産です。・ハ・ロン湾 (自然遺産)・ハノイ-昇龍(タン・ロン)皇城遺跡の中心地 (文化遺産)・胡朝の要塞 (文化遺産)・チャン・アンの景観美関連遺産群 (複合遺産)この4つの世界遺産はベトナムの首都ハノイ近郊を拠点として観光することができます。文化遺産2件、自然遺産1件、複合遺産(文化と自然両方の基準を満たす)1件とバラエティ豊富なのがすごい!世界遺産には、文化遺産と自然遺産と複合遺産の3種類があり、東南アジアでは全世界遺産36件中、文化遺産22件、自然遺産13件、複合遺産1件!となっています。(2015年5月現在)件数の少ない自然遺産、そして東南アジア唯一の複合遺産まで観光できるとはすごいことなのです!そんなわけで日本からの直行便もあるハノイにビューンと飛んで4つの世界遺産を観光しちゃいましょう!記事の最後にセカイェが行くならこんな日程とルートで行きますってのも勝手に書いちゃいまーす!イェーイ!1. ハ・ロン湾(自然遺産)登録基準: 「自然の景観美」、「地球の歴史」photo:ひさほ ゆうハ・ロン湾の「ハ」は「降りる」、「ロン」は「龍」を意味しています。昔、天から龍が降りてきて侵略者たちを撃退した際に、辺りの山が砕け、深い谷ができ、そこに海水が流れ込んでハ・ロン湾の景観ができたという伝説を持っている世界遺産です。大小様々な形をした島が無数にあり、その景観は中国の桂林にも例えられ「海の桂林」とも言われてます。ハ・ロン湾は、ハノイからの日帰りクルーズツアーが人気!ハノイからクルーズの船乗り場までバスで4時間弱かけて行き、昼頃に乗船し、船から奇岩を見学したり、ランチを食べたり、洞窟の中を歩いたりして夕方頃に下船し、再びハノイに戻ります。色鮮やかにライトアップされたティエンクン洞窟photo:ひさほ ゆうカルスト地形特有の鍾乳石が美しい!ライトアップがカラフルなのに少々驚くかもしれません。洞窟って涼しいイメージですが、中は意外と蒸し暑いのにもびっくり!ゴリラ岩photo:ひさほ ゆう横から見るとゴリラっぽいので、そのように呼ばれています。ハ・ロン湾にはこのように不思議な形をした岩や島が多く、それぞれに面白い名前がつけられています。こんな感じでボートから絶景奇岩を堪能できます!実はハ・ロン湾ツアーには船の上で1泊するツアーもあるので、夕陽のハ・ロン湾とか月夜のハ・ロン湾を見てみたいですね!・アクセス羽田からハノイまで直行便で約5時間半。ハノイからの日帰りもしくは1泊2日のクルーズツアーに参加するのが一般的。ハノイから船乗り場があるバイチャイまではバスで約4時間弱。・必要日数ハノイからの1日ツアーに参加する場合早朝から夜まで丸一日必要なので、ハノイに2泊3日はしたいところ。2. ハノイ-昇龍(タン・ロン)皇城遺跡の中心地(文化遺産)登録基準: 「文化交流」、「文明の証拠」、「出来事や宗教、芸術」こちらは、ハノイ中心部旧市街の西側、ホーチミン廟から歩いて約15分のところにある、アクセス良好な世界遺産!かつて栄えたベトナム王朝の美しい皇城や発掘の現場を見ることができます。ハノイはその昔タン・ロン(昇龍)と呼ばれ、長い間政治の中心地であり続けました。そのため中国などから影響を受けた各時代の遺跡が残されているのが特徴です。端門photo:ひさほ ゆう第一城壁にある正門。登ることができるので、ぜひ登って上からの眺めを楽しんで下さい!よーく見ると屋根の上には龍がいますよ!ハ・ロン湾も龍に由来していますし、ベトナムでは龍は特別なものとされています。敬天殿photo:ひさほ ゆうこちらの龍の手すりの石階段の上に皇帝の宮殿があったそうです。この龍の階段を境にして上段が皇帝の政庁、下段が役人の政庁と分けられていました。その他2002年に国会議事堂を移転するために土地の調査をした時に発見されたホアンディウ考古遺跡などもあり、8世紀以降の柱の土台や井戸を見ることができます。・アクセスハノイ市内。ホーチミン廟から徒歩約15分。・必要日数ハノイ滞在数時間でも観光できます!!3. チャン・アンの景観美関連遺産群(複合遺産)登録基準: 「伝統的集落」、「自然の景観美」、「地球の歴史」photo:ひさほ ゆうベトナム北部世界遺産めぐりのハイライト!東南アジア唯一の複合遺産チャンアンでございます! チャンアン一帯は、石灰岩で構成された大地が水に浸食されてできたカルスト地形です。ハ・ロン湾のように海に沈んでいた時代もありましたが、現在は隆起によって地上に出ていることから「陸のハ・ロン湾」とも呼ばれています!こういった自然の景観美などだけではなく、渓谷内の洞窟から約3万年前の人類の生活の跡が発見されたことなどにより文化遺産としても認められ、2014年に複合遺産として登録されました。そんな複合遺産チャンアンは、ハノイからバスで1時間半のところにあるニンビンから手漕ぎのボートに乗って観光するのが一般的。ハノイから車で4時間弱のところから船に乗るハ・ロン湾よりも、実はアクセス良好なんです!ニンビンからは同じく複合遺産チャンアンの一部として登録されている古都ホアルーにも立ち寄ることができます。お寺の見学もできます!photo:ひさほ ゆう船を下船しての寺院見学などもあり、参拝もできます。船にずっと乗りっぱなしではないので小さな子供でも飽きずに楽しめそうですね。このような感じでボートツアーは大体3時間くらいで終了します。古都ホアルーphoto:ひさほ ゆうニンビンの市内から約6kmのところにある古都ホアルー。11世紀、ハノイに遷都されるまでは、ホアルーに都があったのです。こちらの写真は当時の皇帝ディン・ティエン・ホアンの祠の門です。古都ホアルーも世界遺産として登録されているので、ぜひ足を延ばして観光したいところです。チャンアン観光の拠点となるニンビンの郊外には「エメラルダ・ニンビン・リゾート&スパ」というリゾートホテルもありますよ!・アクセスハノイからニンビンまでバスで約1時間半。ニンビンからボートツアー。ハノイからの日帰りツアーも便利。丸一日でハノイからニンビンに移動しボートツアー、ホアルー観光をして夕方にハノイに戻ります。・必要日数ニンビン拠点であれば1泊。ハノイ拠点の場合は丸一日必要なので、ハノイに2泊したいところ。4. 胡(ホー)朝の要塞(文化遺産)登録基準: 「文化交流」、「建築技術」ハノイから南へ車で約3時間、ベトナムのタインホア州に胡朝の要塞が残されています。この地には1400年から1407年という短い間ですが、胡朝という王朝の首都が置かれていました。ハノイが都であった時代が長いのですが、実はその間に色々あったのです!そんなわけで、短命で中国(明)に滅されてしまった胡朝ですが、その建築技術は大変高く、要塞の四方に作られた堅牢な石造りの門や城壁などが残されています。南門photo:ひさほ ゆう城壁も残されています!photo:ひさほ ゆう近くには博物館もあり瓦などが展示されています。世界遺産に登録されていますが、この門は普通に近くに住んでいる方々が利用しています。門の上に登ることもできるのですが、見渡す限り田んぼが続いていたりのどかな風景が広がっています。ハノイからのんびり足を延ばしてみたいですね!・アクセスハノイから車で3時間。車のチャーターが便利。チャンアンも観光するのであれば、チャンアン観光の拠点となる街、ニンビンに泊まって日帰りで胡朝の要塞に行くのがおススメ。ニンビンからタインホアという街までバスで約1時間半。タインホアから胡朝の要塞までバスで約1時間。・必要日数ハノイ、ニンビンどちらを拠点としても、移動と観光合わせて丸一日かかるので、1泊2日必要。最後にセカイェだったらこんな風にベトナム北部の世界遺産をまわりたい!という日程表です!セカイェツアー日程表 6泊7日ベトナム北部4つの世界遺産を巡る旅1日目:東京→ハノイ ハノイからニンビンにバスで移動 ニンビン泊2日目:胡朝の要塞とホアルー観光 ニンビン泊3日目:チャンアンクルーズ ニンビン泊4日目:ニンビン→ハノイ バスで移動 タンロン遺跡観光 ハノイ泊5日目:ハ・ロン湾クルーズ1日目 クルーズ泊6日目:ハ・ロン湾クルーズ2日目 ハノイ市内観光 ハノイ泊7日目:ハノイ→東京初日は頑張ってニンビンまで移動してニンビンで少しのんびり。チャンアンクルーズは天気の良い日に行きたいので、3日目の天気が悪かった場合はもう一泊ニンビンに泊まって回復を待ち、その後のハ・ロン湾ツアーを日帰りのツアーに変更します!チャンアンとハ・ロン湾はツアーを利用しますが、それ以外の宿や移動は自分で手配するので少し余裕のある日程となっています。(text : 世界遺産イェーイ!鈴木かの子)※記事中の情報は、全て2015年5月現在のものです。※参考文献:『すべてがわかる 世界遺産大事典 <上・下> 世界遺産検定公式テキスト』、『きほんを知る世界遺産44 世界遺産検定4級公式テキスト』、『地球の歩き方』、『るるぶ』4年間世界遺産巡りの旅をした夫婦「世界遺産イェーイ!」のコラム>バックナンバーはこちら
2015年06月02日○世界遺産データ『タリンの歴史地区』(文化遺産)。エストニア。1997年登録。世界遺産を紹介する仕事をしていてつらいのが、「どの世界遺産が一番好きですか? 」という質問です。好きなところがたくさんあるので、とてもひとつに絞りきれません。ですから、「自然遺産では○、遺跡であれば○」とジャンル別にご紹介するようにしています。ただ、強いて好きな世界遺産を3つあげるとするならば、ひとつにはこの『タリンの歴史地区』を挙げたいと思います。なんといっても、中世から続く街並みがそのまま残っているのですから! この街を訪れた時には、大切にしたい宝箱を発見したような気になりました。てくてくとお散歩をするのに最適の大きさですし、ちょっと脇道にそれるとかわいらしいカフェや雑貨屋に出合えます。フィンランドの首都ヘルシンキからは日帰りの船旅も可能です。ぜひタリンにも足をのばしてみてください。○筆者プロフィール: 本田 陽子(ほんだ ようこ)「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。○世界遺産検定とは?世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。主催:世界遺産アカデミー開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)開催地:全国主要都市受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込みその他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて
2015年05月25日世界に数ある世界遺産の中でも、誰でも自由に入浴できる"世界遺産の公衆浴場"はひとつしかない。トルコ? タイ?? いえいえ、実は和歌山県にあるのだ。それも、約1,800年前に発見されたという日本最古の温泉なんだとか。どんな温泉なのか、車を走らせて行ってみた。○熊野本宮大社の湯垢離場その温泉は和歌山県田辺市にある「湯の峰温泉」。湯の峰温泉へは熊野本宮大社から車で15分程度で、公共交通機関を利用するならJR紀勢本線新宮駅からバスで約1時間というアクセスになる。細い山道の先に開けた温泉街は、旅館が14軒、飲食店・土産屋がともに3軒と、こぢんまりとした素朴な味わいがある。街の中心には湯の谷川が流れており、川からはもくもくと湯気が立ち上っている。湯の峰温泉には2種類の公衆浴場があるが、世界遺産に登録されているのは「つぼ湯」の方。湯の峰温泉は熊野本宮大社の南西約2kmの山間にある湯垢離場(ゆごりば)で、薬師信仰の地でもあるという。参詣者の記録によると、12世紀初期には湯屋が置かれていたことが確認されている。このつぼ湯は、湯の谷川の河原に建つかやぶき屋根の中にある。2~3人入るといっぱいになってしまうため、入浴は30分交代の予約制だ。つぼ湯の営業時間は6:00~21:30だが、筆者は観光客の多いゴールデンウィーク中だったこともあり、午後の予約は16:00ですでに予約がいっぱいに。「朝一で入浴を! 」と考えたところ、「5:00から並んでいる人もいますよ」ということだったので、その夜は早めに就寝することにした。○1日で7変化するにごり湯翌朝、同じように5:00から並ぶ人もいるかと思い、それより10分程度早く起きて受付前に行くと、すでに並んでいる人が。タッチの差で一番風呂を明け渡してしまったが、6:00までの間にすでに10組程度並んでいたことを考えれば、早く起きたことはいい判断だったように思われる。特に混みあっていたこともあってか、この時は30分よりも早めの交代をお願いされた。番台で番号札を受け取り、いよいよ世界遺産の湯である。天然岩をくりぬいて作られた湯船はつるつるで、さわり心地も気持ちがいい。ほのかに硫黄が香る湯は、1日で7色に変化するという。筆者が訪れた時はうっすらと青みがさしたにごり湯だったが、これがどんな風に変わるのか想像するのも楽しい。湯は熱いため入るのには少々気合が必要だが、そばには加水用の蛇口があり、自由に温度を調整できる。「薄めすぎたな」と思っても足元からどんどん湯が湧いてくるので、しばらくするとじわりと熱い湯へ。つぼ湯そのものの風情と相まって、「日本最古の温泉」「世界遺産」というスペシャルな温泉はより一層神秘を感じられた。なお、 つぼ湯の入湯料(770円)を払うと、隣接された「一般公衆浴場」(250円)か「くすり湯」(390円)のどちらか好きな方に無料で入ることができる。つぼ湯で風情と湯を楽しみ、くすり湯で身体を伸ばしてじっくり湯を楽しむ、という2度おいしい楽しみ方ができるのも魅力のひとつ。また、温泉水を購入することもできるので、ポリタンクの持参もオススメだ(10L=100円)。○手作り温泉玉子に熊野古道散策も街の中心部には手すりで囲われた源泉自噴口があり、そこでは温泉玉子やゆで野菜を作る光景も。周辺の飲食店や土産屋で玉子などが売られているのはそのためだ。温泉玉子の目安は11~13分程度。源泉自噴口には常時、温泉玉子が出来上がるのを待っている人たちがいるので、「どちらからいらしたんですか? 」などと会話を楽しんでみるのもいいだろう。また、この湯の峰温泉は全て未舗装路となった熊野古道「赤木越」の起点でもある。赤木越は船玉神社辺りに続く「赤木越分岐」までの5.9kmで、通常、熊野本宮大社を出発して赤木越を歩く、または、湯の峰温泉を出発して「中辺路」に合流し、小広峠に抜けるルートとなる。赤木越を5分程度歩いてみるだけでも、熊野の自然は十分感じられるはず。一歩ずつ踏みしめて、古の旅人たちの想いに馳せてみるのも楽しいひとときだ。※記事中の情報・価格は2015年5月取材時のもの。価格は税込
2015年05月21日「明治日本の産業革命遺産」に対して、世界遺産への登録可否を調査する国際的な諮問機関「イコモス」が5月4日、日本政府に対して登録勧告を行った。2014年に登録された「富岡製糸場と絹産業遺産群」に続き、今年も産業遺産の推薦となる。8県にまたがる23資産からなる遺産だが、全体で見た時には具体的にどのような魅力があり、世界遺産になることでどう変わるのだろうか。世界遺産に詳しい世界遺産アカデミー/世界遺産検定事務局の研究員・本田陽子さんにうかがってみることにした。―2014年は「富岡製糸場と絹産業遺産群」が登録されましたが、2015年も日本から、新たな遺産の登録の動きがすすんでいますね。「『明治日本の産業革命遺産』ですね。日本が幕末から明治にかけて近代化を進めていく上で特に大きな役割を果たした、製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業に関連する遺産です。2014年に登録された『富岡製糸場と絹産業遺産群』に続いて、2015年も産業遺産の推薦となりました。異なるのは、富岡が軽工業だったことに対して、今回は重工業である点です。ヨーロッパ以外の地域では一番早く、しかも短期間で近代化したことが評価されています」。―5月4日に行われた勧告では、名称の変更が求められたようですが、これはどんな理由からなんでしょうか?「もともと遺産名は『明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域』だったのですが、遺産価値をより明確にするために『明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業』とすることをイコモスから求められています。このような遺産名の変更は、2013年に富士山が登録勧告されたときにもありました。そして『富士山─信仰の対象と芸術の源泉』になっています。ただし、いま提示されている遺産名だと、長崎県の『旧グラバー住宅』や山口県の『萩城下町』『松下村塾』あたりは、立ち位置が少し分かりにくいかもしれません。日本の主要産業の近代化に貢献しているという意味では、これらも工場などの施設と同様に価値があるとみなされているんですよ」。―この遺産ならでは、という特徴はなにかあるのでしょうか?「実は、これまでの日本の世界遺産とは異なる点がいくつかあるのが注目ポイントです。ひとつは8県にまたがっている点です。これまで、『白川郷・五箇山の合掌造り集落』や『紀伊山地の霊場と参詣道』のように、隣り合っている複数の県から登録されたというケースはあったのですが、今回は九州の5県と山口県に加えて岩手県、静岡県にまたがります。共通した価値をもっていれば、必ずしも地理的に隣り合っていなくても世界遺産になるケースがあるのですが、登録されれば日本では初のケースとなります。これを専門用語で『シリアル・ノミネーション』と呼んでいます」。―そのほかの、これまでに登録されている日本の遺産と違うところとは何でしょう?「日本で初めてのケースなのですが、構成資産の中に現役で稼働している工場が含まれている点です。北九州市の八幡製鐵所や三菱長崎造船所が該当します。稼働中ですから、管理する企業は大半の公開を制限しているわけです。一方で世界遺産には、教育や広報の側面も求められます。自分たちの社会の中で生きている地域の資産として学び伝えることも大切な役割とされているのです。生産現場に見学者を入場させることは現実的に考えられないので、どこまで開放公開して遺産の価値を伝えていくか、ということに現在試行錯誤しているところですね」。―稼働中ということは、保存の面でもいろいろ難しそうですね。「その通りです。施設を使用していけば当然どんどん劣化していきます。そもそも、通常日本の文化遺産は文化財保護法で保護されることが求められるのですが、稼働中の施設はその法律の対象外となるのです。そのため文化財保護法ではなく、港湾法や景観法を適用しています。ただこれらの法律は、施設の保護を目的としているわけではないので、実際に世界遺産登録されるとなると、どう運用していくのかは正直なところ未知数ですね。そのあたりは大きな課題と言えます」。―海外には、稼働中の産業遺産が世界遺産となっているケースはあるのでしょうか?「数は少ないのですがあるにはあります。スイスとイタリアにまたがる『アルブラとベルニナの景観とレーティッシュ鉄道』や『インドの山岳鉄道群』などは現在運行しています。また、イタリアの『クレスピ・ダッダの企業都市』は、登録時には紡績工場が稼動していました」。―2015年に「明治日本」が世界遺産に登録される勝算はどのくらいあるのでしょうか?「私の個人的な見解にはなりますが、登録の可能性はかなり高いと思います。これまでに諮問機関から登録勧告をされて、それが世界遺産委員会の審議でひっくり返ったということはほとんど前例がないんですね。ただ過去には、イスラエルの『ダンの三連アーチ門』が、登録勧告をされつつも国境問題などを理由に審議を先送りされたケースがあります。今回、『明治日本』に対して、韓国人が強制徴用された施設があることから韓国政府が反発しています。イスラエルのケースと単純に比較することはできませんが、これからそのあたりがうまく調整されればと思います」。―登録されればどんなメリットがありますか?「2015年に続きまた産業遺産の登録ということで、まさに日本の『ものづくり大国』のルーツを知ることができるいい機会になると思います。また、施設が日本各地に点在していることから、遺産価値を点ではなくて面でみたり、関連性をつなげてゆくという楽しみがある遺産だと思います。登録勧告が出た直後からすでに各地の施設は観光客が急増しているようですが、それぞれの地域が活性化することにもつながりますし、岩手県の釜石が含まれていることから(『橋野鉄鉱山・高炉跡』)、震災後の復興にも貢献することが期待されています。私もこれまでに23の構成資産のうち3分の1ほどは訪問しているのですが、時間をかけて少しずつ訪問していって、各地の魅力を発見したいと思っています」。○筆者プロフィール: 本田 陽子(ほんだ ようこ)「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。
2015年05月18日○世界遺産データ『アンコールの遺跡群』(文化遺産)。カンボジア。1992年登録。東京23区ほどもある敷地の中に点在する、カンボジアのクメール朝遺跡群。その中でも特に有名なのが『アンコールの遺跡群』のひとつ、アンコール・ワットでしょう。観光拠点となるシェムリアップからトゥクトゥク(三輪タクシー)で30分、はるかかなたからも、この5つの祠堂(しどう)が見え隠れするではありませんか! 後にも先にも、筆者が遺跡を見て興奮の叫び声をあげてしまったのはココだけです。○筆者プロフィール: 本田 陽子(ほんだ ようこ)「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。○世界遺産検定とは?世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。主催:世界遺産アカデミー開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)開催地:全国主要都市受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込みその他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて
2015年04月09日photo:世界遺産イェーイ! ジョージタウンにある「カピタン・クリン・モスク」4年間世界遺産巡りの旅をした世界遺産イェーイ!が、お届けする連載第2弾はマレーシアでございます!!世界遺産も食も楽しいマレーシアはまた行きたい国の一つです。マレーシアの国土は「マレー半島南部」と「ボルネオ島の北部」で構成されております。マレー半島南部の先端にはシンガポール、ボルネオ島の北部にはブルネイが位置しています!そんなマレーシアには、4つの世界遺産があります。◯マレー半島---------------------1)メラカ(マラッカ)と、ペナン島のジョージタウンを合わせた「メラカとジョージ・タウン:マラッカ海峡の歴史都市」2)200万年前の遺跡を見ることができる「レンゴン渓谷の考古遺跡」※どちらも文化遺産◯ボルネオ島---------------------1)キナバル自然公園2)グヌン・ムル国立公園※どちらも自然遺産今回の記事では、マレー半島にある2つの文化遺産ついてご紹介していきたいと思います。最後に同じくマレー半島に位置するシンガポールの世界遺産についてもちょっとだけ触れちゃいまーす!イェーイ!■メラカとジョージ・タウン:マラッカ海峡の歴史都市(文化遺産)登録基準: 「文化交流」、「文明の証拠」、「建築技術」まずちょっとだけマレーシアの歴史について触れてみます。マレーシアはまずアラブ、インドからのイスラム教徒の影響を受けイスラム化し、その後ポルトガル、オランダ、イギリスに統治されます。そしてイギリス東インド会社の東南アジア進出の拠点となると、働き手として中国やインドから多くの人がやってきて、イスラム文化、西洋文化、中国文化、ヒンドゥー文化が共存する独特の雰囲気を持つ街並みが形成されたわけです。世界中の船が行き交うマラッカ海峡沿いにあるマラッカとジョージタウンの2つの都市は、この多様な宗教、文化の共存を良く語っている(証言している)ということで世界遺産として登録されました!マレーシアで一番行きやすい世界遺産「マラッカ」マラッカはクアラルンプールからバスで2時間とアクセス良好!そんな古都マラッカには、15世紀にイスラム教国家マラッカ王国、そして16世紀にポルトガル、オランダ、イギリスに支配された時の建物が残されています。●オランダ広場photo:ひさほゆうマラッカで一番のメインとなるのは、オランダ広場でございます!このオランダ広場を中心としたエリアが世界遺産として登録されているのです。こちらの写真で、真ん中の教会が、オランダ建築の代表例とされるムラカ・キリスト教会で、右側の建物がオランダの旧総督邸であるスタダイスです!●サンチャゴ砦photo:ひさほゆうこちらは、1511年にポルトガルの総督によって建てられた砦。当時は高い塀で囲まれていましたが、現在は門と大砲が残されています。オランダ広場から歩いて行けますよ!他にもマラッカ王国時代のスルタン(王)の王宮を再現した建物「マラッカ・スルタン・パレス」、日本に初めてキリスト教を伝えたことで有名なフランシスコ・ザビエルの像が立つ「セント・ポール教会」なども近くにありまーす!マルチに楽しめる街ジョージタウン世界遺産、食、リゾートと全部楽しめちゃって、イェーイ!な街、それがジョージタウン!そんなジョージタウンはマレー半島の西部マラッカ海峡に浮かぶペナン島の東部にあります。ここには18世紀後半からのイギリス植民地時代の建物と、様々な文化が混じり合った街並みが残されています。●コーンウォリス要塞photo:世界遺産イェーイ!こちらは、1786年にイギリス東インド会社の総督フランシス・ライトが上陸したところに設けられた要塞にある大砲です。彼の上陸以後、ペナン島は東インド会社に譲渡され自由港として発展していったのです!●マハ・マリアマン寺院photo:世界遺産イェーイ!1883年に建てられたジョージタウンで最古のヒンドゥー寺院です。この寺院は「マスジット・カピタン・クリン通り」にあります。ここの通りはヒンドゥー教寺院あり、イスラム教のモスクあり、中国寺院ありと、ジョージタウン世界遺産観光のハイライトなんです。中国寺院、「ヤップ・コンシ」、「クー・コンシ」、マレーイスラムの「アチェ・モスク」、「カピタン・クリン・モスク(写真一番上)」などもこの通りにありまーす!暑い中の観光は体力を使うので、ちょこちょこ休憩して屋台で美味しい麺を食べたり、絶品カレーを食べたり、甘いコーヒー飲んだりしちゃいましょう!何を食べてもめっちゃ美味しいんですよ!ジョージタウンは、クアラルンプールから飛行機で1時間、バスや鉄道だと5時間~8時間程。photo:世界遺産イェーイ!■レンゴン渓谷の考古遺跡登録基準: 「文明の証拠」、「建築技術」マレー半島の緑あふれるレンゴン渓谷からは、200万年近くに及ぶ初期人類の生活の跡が発見されました。こちらは、アフリカ大陸以外では最も古い初期人類遺跡であり、その生活を現代に伝える貴重な世界遺産なんです!そんな貴重な先史時代の洞窟の壁画や、石器をレンゴン考古学博物館で見ることができます!●レンゴン考古学博物館入口photo:ひさほゆうクアラルンプールから車で約3時間、イポーからも車で約2時間かかります。車をチャーターするか、ツアーに参加するか、公共のバスを利用するかとなります。公共のバスの場合は、最寄りのバス停からかなり歩くことになるので、車かツアーが便利そうです。●人骨「ペラ・マン」photo:ひさほゆう博物館で最も有名なのは、東南アジアで最古の完全な人骨(ペラ・マン/約100万年前)です。その他にも岩絵や石器などが展示されております!■シンガポールの世界遺産本当はシンガポールの世界遺産をご紹介したいところだったのですが、実はシンガポールには世界遺産はありません!しかし2012年に世界遺産条約を締約し、「シンガポールの植物園(ボタニック・ガーデン)」が暫定リスト(世界遺産への候補案件)に入ったので、シンガポール初の世界遺産誕生も近いかもしれません!また先ほどご紹介したマレーシアのマラッカには頑張れば(車で片道約4時間)日帰りできるので、シンガポール拠点で世界遺産へ行くこともできますよ!(参考文献:『すべてがわかる 世界遺産大事典 <上・下> 世界遺産検定公式テキスト』、『きほんを知る世界遺産44 世界遺産検定4級公式テキスト』、『地球の歩き方』、マレーシア政府観光局)4年間世界遺産巡りの旅をした夫婦「世界遺産イェーイ!」のコラム>バックナンバーはこちら
2015年04月01日photo:世界遺産イェーイ!4年間世界遺産を巡る旅をした私達、世界遺産イェーイ!ことセカイェ夫婦が、1週間の休暇がとれた時に真っ先に旅行先の候補にあげる国、それがラオス!ゆったりとした雰囲気の中で、世界遺産を堪能しつつ、メコン川を眺めつつ、ラオスの国民的ビール、ビア・ラオを飲みたいイェイ!そんなラオスには、2つの世界遺産があります。北部にある煌びやかなワット(寺院)が美しい街の世界遺産「古都ルアン・パバン」と、南部のヒンドゥー教寺院の遺跡「チャムパーサックの文化的景観にあるワット・プーと関連古代遺跡群」です。この2つの世界遺産は、北部と南部と離れていますが、両方とも東南アジアを悠々と流れるメコン川のすぐ側にあるんです!そこで、今回は、街歩きも遺跡巡りも楽しめちゃうラオスの世界遺産の紹介をしていきたいと思います。イェーイ!■古都ルアン・パバン (文化遺産)登録基準: 「文化交流」、「建築技術」、「伝統的集落」ラオス北部の街ルアン・パバンは、ラオス最初の統一国家で上座部仏教を国教としたランサン王国の都として繁栄しました。多くの寺院が残るこの街は、街自体が世界遺産として登録されています。私達は、このルアン・パバンやベトナムのホイアンのように、街そのものが世界遺産の場所が大好きなんです。宿を一歩出たらそこは世界遺産!朝食を探しに行くついでに世界遺産が堪能できちゃうなんて世界遺産好きにはたまりません!そんなルアン・パバンで一番のメインとなるのが14世紀に創建された寺院「ワット・シェントーン」!photo:世界遺産イェーイ!ワット・シェントーンには、いくつか建物があるのですが、こちらは本堂!ラオスにあるお寺の屋根は、こんな感じで2段3段と重なっているのが特徴です。本堂の背面の壁には「マイ・トーン(黄金の木)」のモザイク画があるので必見です!(写真一番上)ちなみに、日差しが強くてめっちゃ暑かったので帽子を忘れずに!その他にも黄金のレリーフが素晴らしい寺院、ワット・マイや、ルアン・パバン市内を一望できる高さ150mの小高い丘プーシー、フランス植民地時代を思い起こさせるモダンなコロニアル建築など見どころ満載です。photo:世界遺産イェーイ!かつての宗主国フランスとラオス、両方の雰囲気が感じられるのがいいんです!photo:世界遺産イェーイ!市内中心地のサッカリン通りでは、早朝に僧侶達の托鉢を見ることができます。夜はナイトマーケットも出ているので、1日中楽しめるルアン・パバン。暑い観光を終えた後は、ビア・ラオで乾杯!ルアン・パバンはラオスの首都ビエンチャンから飛行機で1時間、バスですと10時間くらいです。タイ、ベトナムなどから直行便もあるので、他の国とセットで訪れるのもいいですね。■チャムパーサックの文化的景観にあるワット・プーと関連古代遺跡群(文化遺産)登録基準:「文明の証拠」、「建築技術」、「出来事や宗教、芸術」かつてラオス南部チャムパーサック平原に住んでいたクメール人達は、カオ山を神の宿る地として信仰していました。そのカオ山のふもとに建てられたヒンドゥー教寺院、ワット・プーを中心とした遺跡群と、カオ山やメコン川を含む広い範囲が文化的景観の広がる地域として、世界遺産に登録されています。何と言ってもメインは、ヒンドゥー教寺院「ワット・プー」。ワット・プーは、参道、聖池から成る山麓部、大回廊十字型テラスなどがある中間部、そして本殿を擁する山腹部に分かれています。photo:Kimiharu Sato参道からはカオ山を望むことができます。photo:Kimiharu Sato上からの眺めもいい感じ!ワット・プーへは、ラオス南部の中心都市パークセーから日帰りすることができます。パークセーからワット・プーまでは、車をチャーターして約2時間。帰りのことを考えるとチャーターがオススメです。ツアーに参加するのも良さそうです。汗をかいて観光した後は、車でパークセーに戻りメコン川に落ちる夕日を見ながらやっぱりビア・ラオで乾杯!ワット・プーから一番近い街(10キロ程度)チャンパーサックに泊まることも可能で、泊まると早朝の托鉢も観光できます。パークセーまでは、北部の世界遺産ルアン・パバンから飛行機で約90分。短期の旅行でも2つの世界遺産を楽しめますよ!ラオスの世界遺産を全制覇だぜ、イェーイ!(参考文献:『すべてがわかる 世界遺産大事典 <上・下> 世界遺産検定公式テキスト』、『きほんを知る世界遺産44 世界遺産検定4級公式テキスト』、『地球の歩き方』)
2015年03月14日「前編」「中編」そしてこの「後編」で、デリー・ジャイプール・アーグラの3都市を1日1都市ずつ巡るインド弾丸ツアーを、世界遺産に寄せてレポートしています。2日目午前中にジャイプールの観光を終え、ツアー客を乗せたミニバンはいよいよ最後の地・アーグラを目指します。その途中、アーグラから1時間くらい手前のところで世界遺産『ファテープル・シークリー』に立ち寄りました。○コロコロ変わるムガル帝国ここはムガル帝国3代目の皇帝が遷都した都市です。そもそもムガル帝国ってなんなんでしょう。世界史の授業で聞いたかも? というぼんやりした記憶をお持ちの方がほとんどだと思います。長らくヒンドゥー教が信仰されてきたインドの地に、16世紀前半に乗り込んできたイスラム王朝です。ここでひとつ、とっておきの情報を披露しましょう。ムガル帝国が成立したのは1526年。「アイ(1)・ゴー(5)・ツー(2)・ム(6)ガール」、ほら一発で覚えられたでしょう?……痛い視線を感じつつ話を進めますと、ムガル帝国はその後300年近く続くのですが、人民はみんなヒンドゥー教徒なのでとってもアウェーなわけです。皇帝によっては人民との融和政策を図ったり、別の皇帝はイスラム教を強要したり、コロコロ対応が変わります。そして都もコロコロ変わっています。そのうちのいくつかが世界遺産になっている、という次第です。○占い師への感謝のために建てられた都『ファテープル・シークリー』は3代皇帝アクバルが築きました。ムガル帝国を代表する偉大な皇帝と言われています。領土も拡大し、人民からも人気があり、全てを手に入れたと思いきや、唯一の悩みは世継ぎに恵まれないことでした。ところが、シークリーという地に住む占い師が、子宝を授かると予言してその通りになったんです! アクバルはそれを記念して、占い師の住む小さな村に遷都しました。たった14年しか使われなかったんですけどね。偉大な皇帝たるもの、決断は素早く(気まぐれ? )というのがポイントなのでしょうか。廃虚となった後も打ち壊されることがなかったので、遺跡の保存状態が非常にいいです。アクバルがヒンドゥー教徒と融和を図ろうとしたことは建築からも見て取れます。この遺産に着いたのは閉館間際の夕暮れ時でした。そしてアーグラに到着して向かったのはホテル、ではなくお土産屋さんだったんですね~。そこで希望者はサリーなどの民族衣装をオーダーし、翌朝訪れる『タージ・マハル』に着ていきましょう、という流れになっていました。はい、筆者ももう空気を読んでオーダーいたしました! 「日本に帰ってからいつ着るんだ」などとカタイことを考えるのはやめて、布地を選び出すとはまってしまい、1時間近く悩んでしまいました。○タージ・マハルへいざ出陣!翌朝、例のお土産屋さんにまず立ち寄り、女性陣は仕立てあがった民族衣装に身を包みました。お互いを「似合うよー」とほめあいながらついに『タージ・マハル』へ。ここは5代皇帝シャー・ジャハーンが愛するお妃を失った悲しみから、20年という膨大な時間と途方もないお金をかけて造った霊廟です(詳しくは「世界で最も愛にあふれた世界遺産って? ただし、その後が……」を参照)。ガイドさんいわく、持ち物に制限があり厳格にチェックされるとのことで、ペンも本(紙類)も持ち込めませんでした。ツアー中は始終ガイドさんのトークをメモしていたので、これには参りましたが仕方ないです。遺産保護の方法としてこういう考え方もあるのだな、と思いました。正門をくぐると『タージ・マハル』が目の前に姿を現します。思わずため息が漏れたのですが、この感覚、「アンコール・ワット」を目にした時にもありました。実物はあまりにも圧倒的で、地上にひらりと舞い降りた楽園のようでした。強制ではありませんが、カメラマンが5枚1,000円で撮影してくれるということで、はい、空気を読んで撮ってもらいました。「せっかく民族衣装を着てるんだし」と、自分なりに頑張ってポーズを作っては見たものの、受け取った写真はことごとく顔が能面のようでした……。写真一枚撮るのにもキャッキャキャッキャ盛り上がれる女子大生がうらやましい!○皇帝が8年間幽閉された悲しみの城今回のツアーの最後を締めくくる世界遺産は『アーグラ城』です(筆者はさすがに恥ずかしいので事前に服を着替えました)。ここはアクバルが築いた城で、『ファテープル・シークリー』に遷都する前に居城としていたところです。『タージ・マハル』から2kmほど離れているのですが、それぞれの位置からはお互いの姿を確認することができます。『アーグラ城』には、『タージ・マハル』を建てたシャー・ジャハーンが晩年に息子に幽閉され、日々『タージ・マハル』を遠くに眺めながら思いにふけった、という有名な「囚われの塔」があります。それから城の中には、『タージ・マハル』から離れれば離れるほどなぜか大きく見える、という摩訶不思議な場所がありますので、現地を訪れる人は必ずガイドさんに教えてもらってくださいね!その後はデリーへと戻り、あっという間に旅は終わりました。それぞれの世界遺産のイスラム様式やヒンドゥー様式の装飾が非常にすばらしく、ひたすら感動した3日間でした。しかしインドってどんなところ? という問いには何も答えることができません。今筆者に言えることは、インドの世界遺産はスゴイ、そしてガイドがイケメンだった、ということだけです。だからまた、アイ・ゴー・ツー・ムガール!世界遺産データ: ファテープル・シークリー(文化遺産)インド。1986年登録。「勝利の都」という意味をもつ。イスラム建築とインドの伝統様式を融合させた建造物群が評価された。この都市は水不足が深刻となり、1574年に遷都されて以降わずか14年で放棄された。世界遺産データ: タージ・マハル(文化遺産)インド。1983年登録。インド・イスラム建築の最高傑作と称される。世界各地から集められた職人が建設に関わり、中にはフランスの金細工師やイタリアの宝石工もいた。石材は1,000頭のゾウに運ばせたという。1632年に着工し、1653年に完成した。世界遺産データ: アーグラ城(文化遺産)インド。1983年登録。3代皇帝アクバルが16世紀半ばに首都アーグラに建設した城塞。赤砂岩の城壁に囲まれている。堅固な外部と対照的に内部は豪華で、シャー・ジャハーンが改築した白大理石の宮殿などがある。○筆者プロフィール: 本田 陽子(ほんだ ようこ)「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。○世界遺産検定とは?世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。主催:世界遺産アカデミー開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)開催地:全国主要都市受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込みその他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて
2015年03月09日インド。そこそこ海外渡航歴がある筆者にとって、そこは未踏の地でした。ですが行ってきましたよ! 効率よく世界遺産を回るために、5日間のツアーを利用して。インドの文化遺産を大ざっぱに分けると、仏教がらみとそれ以外、ということになります。前回は「それ以外」にあたるデリーを含む3都市をめぐる「ゴールデン・トライアングル」を紹介しました。今回もその続きです。○街全体がピンクに染まった「ピンク・シティ」デリーの『レッド・フォート』から引きはがされるようにして、次に向かったのはジャイプールという都市です。デリーから車で6時間です。午前中に世界遺産観光、昼にカレーを食べて午後は6時間移動というスケジュールは、3日間連続で続きました……。ジャイプールは「ピンク・シティ」と呼ばれます。その名の通り、旧市街の建造物がピンク一色だからです。ピンクといってもショッキングピンクではなく、スモーキーな落ち着いたピンクです。そして、ジャイプールが面白いのは外観だけではありません。イギリスがインドを植民地化した際にこの地は自治が保たれたこともあり、伝統工芸の技術が継承されました。特にブロックプリントと言われる版画のような工法で染められたテキスタイルが有名です。柄もとってもかわいいし、他にも宝石の集積地なのですてきなジュエリーショップがあったり、ラクダの革でつくったカラフルなサンダルが売られていたり、女子は目移りすること間違いなし!○マハラジャのお城にクラクラする「マハラジャ」という言葉はみなさん聞いたことがあると思います。あ、ディスコじゃないですよ(古!)。"インドの王様"というイメージかと思いますが、皇帝のように全域を統率しているのではなく、各領土を支配している藩主を意味します。日本でいうところの戦国時代の大名のようなもの、といってもいいかもしれません。ジャイプールで早朝から目指したのは、そのマハラジャの城だった「アンベール城」です。ラージプート族によって築かれたインド北西部に点在する城砦は『ラジャスタンの丘陵砦群』として世界遺産に登録されており、そのひとつがアンベール城となります。ここの名物は「象タクシー」です。マハラジャも象に揺られたかどうかは分かりませんが、象に乗ってえっちらおっちらと麓から坂道を上がって丘陵上部にある城へと向かうのはテンションが上がります。標高があがるにつれ、周囲の山に築かれた城壁が目に入るのですが、『万里の長城』をほうふつとさせました。そして城に到着するのですが、まあ装飾のすばらしいことといったら! ラージプート族はヒンドゥー教を信仰していたので、建築様式はヒンドゥー様式をベースとしつつ、イスラム様式も融合した感じです。美しい城から下界を見下ろすのもとっても爽快です。マハラジャ気分を味わいたい方、ジャイプールへゴー!!○へんてこな公園……ではなく天文台が世界遺産に次に向かったのはジャイプールの街の中心部にある「ジャンタル・マンタル」。呪文みたいでしょう? サンスクリット語で"魔法の仕掛け"という意味だそうです。ここは18世紀にジャイプールに遷都したマハラジャが築いた天文台です。当時国家の未来を占う上で占星術は欠かせないものであり、そこで天文台が必要とされたということなのです。施設内はまるで児童が遊ぶ公園のような感じです。ジャングルジムや滑り台の代わりに様々な器具が置かれていると思ってください。他の名だたる世界遺産と比べてしまうと小物感は否めませんが(そもそも世界遺産は、観光地であるかメジャーであるかということは全く問いません)、世界でも当時最先端の天文観測装置であり最もよい保存状態であることを思うと、じわじわとスゴさが伝わってくるかもしれません。200年以上前に、マハラジャがこの地で太陽の位置を観測したり、様々な星の動きを観察して国の将来を思い描いていた、秘密基地のようなところだったのかもしれませんね。次なる地はアーグラ。なんといっても『タージ・マハル』です! その前にまた6時間移動しないと。トホホ……。世界遺産データ: ラジャスタンの丘陵砦群(文化遺産)インド。2013年登録。広大な砂漠地帯が広がるインド北西部に点在する、ラージプート族が築いた城塞のうち6カ所が登録されている。アンベール城は16世紀に築かれ、ジャイプールに遷都するまで都として繁栄した。世界で最も美しいと門と言われるガネーシャ門や「鏡の間」の美しい装飾は特に有名。世界遺産データ: ジャイプールのジャンタル・マンタル-マハラジャの天文台(文化遺産)インド。2010年登録。18世紀初頭にこの地を治めていたマハラジャ、ジャイ・シン2世によって建造された、20以上の建造物からなる天体観測施設群。レンズを通してではなく裸眼で星の動きを観察することが目的であり、建築や部材においても当時の最新技術が導入された。○筆者プロフィール: 本田 陽子(ほんだ ようこ)「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。○世界遺産検定とは?世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。主催:世界遺産アカデミー開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)開催地:全国主要都市受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込みその他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて
2015年02月23日旅の目的のひとつに、「世界遺産を見に行こう!」と考える人は多いのではないでしょうか。東南アジアにも特徴的な世界遺産の数々があります。せっかく旅に出るなら正しい「世界遺産の見方」も知っておきたいもの。NPO法人世界遺産アカデミー主任研究員の目黒氏は世界遺産の「個性」に注目してほしいと言います。©ASEAN-Japan Centre古都ホイアン(ベトナム)大切なのはそれぞれの世界遺産が持つ「個性」「世界遺産には『ナンバーワン』ではなく『オンリーワン』の価値が必要です。オンリーワンの価値はその世界遺産の『個性』になります。『個性』を知るには、世界遺産の『登録基準』を見るとわかりやすいでしょう。」photo:yoko hondaアユタヤ遺跡(タイ)世界遺産は10項目の登録基準によって定められていて、例えば自然遺産の登録基準は「地球の歴史」「自然の景観美」「固有の生態系」などの項目があります。©ASEAN-Japan Centreコモド国立公園のコモド大トカゲ(インドネシア)「気になる世界遺産がどんな基準によって登録されたのかを前もって知っていれば『綺麗な景色を観に来たのに想像していたのと違った…』なんていうこともなくなりますよね。また『個性』がわかれば、現地に行った際に世界遺産を壊すようなこともなくなるでしょう。是非これからは、『登録基準』で世界遺産を見てほしいですね」「危機遺産」と私たちがやるべきこと世界遺産に登録されたものの、なんらかの理由で「個性」が壊れてしまった遺産があるのも現状です。そんな世界遺産を「危機遺産」と言います。©ASEAN-Japan Centreコルディリェーラ山脈の棚田(フィリピン)危機遺産の原因のほとんどは「人間の行い」。内戦や観光開発、都市開発、密漁などがその原因です。人間の勝手な行動が、せっかく登録された世界遺産を危機遺産に変えてしまっているのです。「日本でも富士山や富岡製紙場が世界遺産登録され盛り上がっていますが、その一方で『これから世界遺産を保全するための大きな責任と義務が、日本国民に生じた“スタート”』であるということを忘れてはいけません。世界遺産の本来の意味、向き合い方を知り、みんなで世界遺産を守っていかなければなりません」※東南アジアの危機遺産はコルディリェーラ山脈の棚田(フィリピン)とスマトラの熱帯雨林遺跡(インドネシア)の2つ(2014年12月現在)(text:Tomomi Kimura)PROFILE目黒正武MEGUROMasatakeNPO法人 世界遺産アカデミー主任研究員。明治大学商学部卒。旅行会社に就職後、国内外多数の世界遺産で現地経験を積む。2005年より現職。青山学院大学・文化学園大学・八洲学園大学非常勤講師。メディア出演:TBS『みのもんたの朝ズバッ!』、テレビ朝日『そうだったのか!学べるニュース』、フジテレビ『知りたがり!』、フジテレビ『アゲるテレビ』等で世界遺産について解説。
2014年12月24日ボロブドゥールの仏教寺院郡 photo:yoko honda前回は「私たちが知らない。世界遺産の本当の目的」をNPO法人世界遺産アカデミー主任研究員の目黒正武氏にお伺いしました。今回はTRIPPINNG!的「東南アジアの“世界遺産の特徴”」についてお届けします。東南アジアの世界遺産からは「寛容性」「融合性」が見えてくるバリ州の文化的景観 photo:yoko honda東南アジア文化遺産の他の地域とは異なる特徴とは国、地域によって建物の特徴の違いが顕著な文化遺産。「東南アジアの文化遺産」は、特に「歴史的視点」で見てみると、他の地域とは異なる「東南アジアらしさ」が見えておもしろい、と目黒氏は言います。「インドシナ半島の、東南アジア諸国は、インドと中国に挟まれていることから両国の文化の影響を受け、ヒンドゥー教と仏教に関連する文化遺産が多いのが特徴です。中でも、ヒンドゥー教は多神教の面があることからも、他の宗教の建物を壊さずに並立させていたり、壊しにくいという理由で使いまわしていたりします。」ボロブドゥールの仏教寺院郡 photo:yoko honda東南アジアの「今、見に行くべき」世界遺産“今、見に行くべき世界遺産”として、カンボジアの「アンコールワット」をあげた目黒さん。photo:sumio koizumi「アンコールワットはもともとヒンドゥー教の寺院でしたが今は仏教寺院です。隣接するアンコールトムは、逆に仏教寺院でしたが今はヒンドゥー教寺院です。これは建設時の国王の信仰心と、後世の国王の信仰心の違いが大きな要因ですが、そこにはインド、中国という強国の影響も見逃せません。ですが、同時に「様々な宗教や価値観を受け入れようとする「寛容性の強さ」や「融合」しようとする「柔軟性」があった」ということを表しているとも言えますよね。世界遺産を見ながらそんなことに思いを馳せてみるのも面白いですね」東南アジアの自然遺産グヌン・ムル国立公園 photo:yoko honda「東南アジアは、「カルスト地形」(石灰岩などの水に溶解しやすい岩石で構成された大地が雨水、地下水などによって侵食されてできた地形)のため、石灰質に関係する自然遺産、特に「鍾乳洞」が多いことが特徴ともいえます。マレーシアのグヌン・ムル国立公園には世界最大の鍾乳洞靴がありますし、ベトナムのフォンニャーケバン国立公園は、アジア最古最大と言われるカルスト地帯です。ちなみに、個人的には、東南アジアの自然遺産の中では、マレーシアの「キナバル自然公園」にある世界一大きな花「ラフレシア」はおすすめです。©ASEAN-Japan Centre人類700万年の歩みを伝える物件が「文化遺産」、地球46億年の歴史を表す物件が「自然遺産」です。世界遺産を知ることは、人類と自然の関係から、世界の成り立ちを理解することに繋がります。(text:Tomomi Kimura)PROFILE目黒正武MEGUROMasatakeNPO法人 世界遺産アカデミー主任研究員。明治大学商学部卒。旅行会社に就職後、国内外多数の世界遺産で現地経験を積む。2005年より現職。青山学院大学・文化学園大学・八洲学園大学非常勤講師。メディア出演:TBS『みのもんたの朝ズバッ!』、テレビ朝日『そうだったのか!学べるニュース』、フジテレビ『知りたがり!』、フジテレビ『アゲるテレビ』等で世界遺産について解説。
2014年12月14日©ASEAN-Japan Centre世界遺産を深く知るなら「登録基準」で見よう世界遺産を訪れるということは、ときに旅をドラマチックなものにしてくれます。到着するまでのドキドキ感、いざ目の当たりにした時の充実感、そしてそこに流れる空気を肌で感じてしみじみとその遺産に思い巡らす・・・しかし、そんな感動も束の間、気がついたら写真を撮ることに必死になって、写真を撮ることがメインになっている・・・そんな経験はありませんか?思い出を写真に残すことも大切ですが、せっかく訪れたなら時空を超えて遺産を旅してみませんか。そのために、その土地や歴史、建物のことを事前に学んでおくのも旅の重要なウォーミングアップ。今回は、そのスターターとも言うべく世界遺産の基本情報をお届けします。世界遺産には、3つの分類がある一口に世界遺産と言っても、その種類は3つに分かれます。1)文化遺産人類が生み出した素晴らしい建造物や遺跡、また自然環境に順応しながら人類がつくり上げた文化的景観など。ジョージタウン(マレーシア・ペナン島)上段のグエン朝の王宮(ベトナム、フエの歴史的建造物群)もそれに当たります。2)自然遺産地球の歴史や動植物の進化を伝える自然環境や景観などを指します。©yoko hondaハ・ロン湾(ベトナム北東部)3)複合遺産文化遺産と自然遺産、両方の価値を有しているものになります。※2014年12月現在、東南アジアにはありません。世界遺産を証明する10項目の登録基準誰が見ても同じように素晴らしいと感じる価値である「顕著な普遍的価値」を有している世界遺産ですが、これを証明するものとして「10項目の登録基準」が定められています。世界遺産に登録されるには、最低でもこの基準の1つ以上にあてはまることが条件となります。訪れる世界遺産が、どの分類に属していて、登録基準は10項目の内、どの項目に当てはまっているものなのか?を事前に知っておくことが、あなたを旅通にさせてくれるでしょう。「顕著な普遍的価値」を証明する10の登録基準登録基準① : 「人間がつくった傑作」人間がつくり上げた素晴らしい傑作である遺産に認められる。登録基準② : 「文化交流」さまざまな国や地域の間で文化交流が行われてきたことを示す遺産に認められる。交易路や文化・文明の接する場所などにある遺産など登録基準③ : 「文明の証拠」文明や特徴的な時代が存在していたことを証明する遺産に認められる。登録基準④ : 「建築技術」建築技術や科学技術の発展を伝える遺産に認められる。登録基準⑤ : 「伝統的集落」それぞれの文化や気候風土に合った伝統的集落が残っている遺産に認められる。登録基準⑥ : 「出来事や宗教、芸術」歴史上の重要な出来事や宗教、芸術などと関係する遺産に認められる。登録基準⑦ : 「自然の景観美」美しい自然景観や独特な自然現象が見られる遺産に認められる。登録基準⑧ : 「地球の歴史」地球の歴史を伝える遺産に認められる。登録基準⑨ : 「固有の生態系」それぞれの環境に合った動植物の進化の過程や固有の生態系を示す遺産に認められる。ガラパゴス諸島など。登録基準⑩ : 「絶滅危惧種」絶滅危惧種が生息する地域や生物多様性を示す遺産に認められる。(参考文献:『きほんを知る世界遺産44 世界遺産検定4級公式テキスト』より)「世界遺産を決める」世界遺産委員会世界遺産リストに記載する遺産は、一年に一度開催される「世界遺産委員会」で審議され、決定します。21ヵ国からなる世界遺産委員会は、専門機関の事前審査をもとに、各国から推薦された遺産について話し合い、「1)登録」「2)情報照会」「3)登録延期」「4)不登録」の4つのいずれかの決定をします。1)の場合、無事に世界遺産登録となります。2)と3)の場合、翌年以降に再挑戦となりますが、4)の場合は、世界遺産になることはできません。
2014年12月13日11月27日、「和紙(正しくは「和紙: 日本の手漉和紙技術」)が無形文化遺産に登録されたというニュースが飛び込んで来ました。すでに島根県の「石州半紙」は無形文化遺産に登録されていましたが、新たに岐阜県の「本美濃紙」、埼玉県の「細川紙」を加えてそれら3つを改めて「和紙」の技術として登録し直すことになりました。いずれもこうぞだけを原料に伝統的な手すきで作られています。その前には、日本の最先端技術として青色LEDの開発がノーベル物理学賞の対象となりましたが、一方でこうした伝統的技術も評価されるというのは大変喜ばしいことです。ところで、「世界遺産と無形文化遺産はどう違うのか」、この質問はときおり講義でも聞かれます。「知っている世界遺産は?」と尋ねると「和食」という答えが返ってくることもあります。いまさら恥ずかしくて聞けない! という人も、今回のコラムを読んでもらえればもう大丈夫です。○「無形文化」とは人間が伝える形のない文化これらはいずれもユネスコの事業です。まず、今回登録された「無形文化遺産」なのですが、伝統芸能のような人づてに伝えられる形のない文化を「無形文化」と呼んでいます。「無形文化遺産保護条約」に基づき、芸能、伝承、儀式、祭礼、文化空間などを一覧表に記載して保護・継承していくことを目的としています。対する世界遺産は、建造物や景観、自然の地形などを対象としています。「世界遺産条約」に基づき世界遺産リストに記載、登録し、それらの物件を人類全体のための遺産として損傷または破壊等の脅威から保護することが目的です。無形文化は人間が伝えるものですから、価値に大小はないと考え、他の遺産との優劣はつけません。例えば昨年登録された「和食」ですが、和食がほかの国の食文化と比べて優れているということではありませんし、比較のしようがありませんよね。ですから、審査も世界遺産ほど詳細なものではありません。ただ、各国からユネスコの事務局に推薦が殺到しており、事務局がさばききれずに審議が持ち越されてしまっています。保護について考えてみると、世界遺産は不動産ですから、原則的には「ありのままの」状態で保護されることが望まれます。文化財であれば創建当時のままに、自然であれば手つかずの自然のままに保っていくことが良しとされるのです。それに対し、無形文化遺産は文化の担い手や環境の変化の影響を大きく受けやすく、また、時代の流れのなかで文化そのものが変容していくこともあるでしょうから、どのように保護して継承していくのかということは、ケースバイケースだと思います。そうすると、無形文化遺産の定義はとてもあいまいなものに思えてきます。○世界遺産や無形文化遺産が身近なものにところで、日常的に和紙を使ってますか? 多くの人は使う機会はないかと思います。実家の和室に障子がはってあるなあ、とか、今度の年賀状は少し気合をいれて和紙をセレクトしてみるか、という感じではないでしょうか。そのように日常的ではない和紙がこれだけ話題になるのは、昨年6月の「富士山」の世界遺産登録と無関係ではないと思います。日本人の象徴ともいえる富士山は、直接的に遺産価値と関わりのない箱根など周辺の観光地もまきこんで、一大ブームとなりました。その波が収まらないうちに、今度は12月に「和食」が無形文化遺産に登録されたのです。「和食」という、国民一人ひとりにとってきってもきれない食文化が登録されたことで、文化事業に関する話題がぐっと身近に感じられるようになったのだと思います。ところで、いいのか悪いのか、「富岡製糸場」の登録は「富岡ショック」とでもいうものを多くの人にもたらしたのではないでしょうか。「あんなに地味なものが世界遺産になるなら、うちの施設の方がもっとスゴイ、だったらうちも手を挙げればいけるんじゃないか」という感覚です。そんな話を実際に古い工場を使っている方から聞いたことがあります。話がずれてしまいました。なんだか定義があいまいな無形文化遺産ですが、和紙を含めた伝統文化に光があたり、身近に感じる機会ができたのはいいことだと思います。この登録をきっかけに担い手の育成も進むかもしれませんし、利用者も増えるかもしれません。そうだなあ、筆者も来年のカレンダーは和テイストなものにしてみようかな。○筆者プロフィール : 本田 陽子(ほんだ ようこ)「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。○世界遺産検定とは?世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。主催:世界遺産アカデミー開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)開催地:全国主要都市受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込みその他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて
2014年12月01日旅の目的のひとつに、「世界遺産を見に行こう!」と考える人は多いのではないでしょうか。日本でも2013年に富士山が、2014年には富岡製糸場と、2年連続で2つの物件が世界遺産に登録され、今「世界遺産」に注目が集まっています。東南アジアに目を向けてみると、現在登録されている世界遺産は31件。定番の観光スポットから、まだまだこれから人気がでそうな場所まで、各国に点在しています。しかし、「そもそも世界遺産って何だろう」 「何を基準に世界遺産って決まるのか」…ということを、私達はどれだけ知っているでしょうか?そこで、旅に出る前に知っておきたい「世界遺産って何?」を学ぶべく、世界遺産への理解や保全活動の一環として、「世界遺産検定」(文部科学省後援)を主催するNPO法人世界遺産アカデミー主任研究員の目黒正武氏にお話しを伺いました。「世界遺産」を学ぶことは「戦争のない平和な世界の実現」につながる2005年にNPO法人世界遺産アカデミーが設立され、2006年から「世界遺産検定」がスタート。2014年現在、受検者は年々増え続け、その年齢層も多岐にわたると言います。そして「世界遺産」の位置づけは、単なる「観光」「旅行」といった枠を超えている、と目黒氏は言います。「設立当初は年1回の検定だったのが、今は年4回、年間2万人規模にまでなり、世界遺産への興味、注目はますます高まってきています。受検者は小学生から90代の方までと幅広く、男女比は4:6で女性が多め、10~30代が8割をしめています。」なぜ、こんなにも多くの人々が世界遺産に興味を持ち、世界遺産を通して教養や倫理観を学ぼうとするのか。それは、「世界遺産が何のためにあるのか」に通じています。ユネスコで採択された世界遺産条約には「どの国や地域の人でも、いつの時代のどの世代の人でも、どんな価値観をもつ人でも、同じように素晴らしいと感じる価値を人類共通の財産として大切に守り、受け継いでゆく」とあります。これが本来の世界遺産の意義なのです。「ユネスコの目的は国際平和の構築なんですね。世界遺産を通して相手の文化に興味を持てば、知らなかった人達との会話が始まり、相互理解が高まれば戦争はなくなるだろうという考え方。旅行客が世界遺産を傷つけた、というニュースもありましたが、遺産価値を知り、その国や人を理解すれば、遺産を壊すことはしないだろうと思うんです。また、英語を勉強したくないという子供が多いとも聞きますが、それは「海外に興味がないから」なのではないでしょうか。世界遺産を学び、先に海外の興味を誘ってあげれば、コミュニケーションの手段として「英語もやっておこう」という形になるでしょう。実際、小学生達の所に講演へ行くとみんな目をキラキラさせて話を聞いています。世界の平和を目指すための手段としてこんなにも考え抜かれた「世界遺産」というものがあるのだから、これからもみんなで共有すべきじゃないのだろうかと思っています。だからこそ、より多くの方にも世界遺産について知ってほしいと思いますね」次回は、「東南アジア特有の世界遺産について」と「世界遺産を深く知るなら「登録基準」で見よう」について目黒氏にお話を伺います!!© all photos to Sumio Koizumi(text:Tomomi Kimura)PROFILE目黒正武MEGUROMasatakeNPO法人 世界遺産アカデミー主任研究員。明治大学商学部卒。旅行会社に就職後、国内外多数の世界遺産で現地経験を積む。2005年より現職。青山学院大学・文化学園大学・八洲学園大学非常勤講師。メディア出演:TBS『みのもんたの朝ズバッ!』、テレビ朝日『そうだったのか!学べるニュース』、フジテレビ『知りたがり!』、フジテレビ『アゲるテレビ』等で世界遺産について解説。
2014年11月30日ワールドカップ、終わりましたね! 朝4時や5時に起きてテレビ観戦し、寝不足の日々を過ごした方も多かったのではないでしょうか。一方、世界遺産業界にとって年に一度の最大のイベントだった世界遺産委員会も、6月25日に終了しました。『富岡製糸場と絹産業遺産群』の世界遺産登録も、ワールドカップのニュースに押され気味であまり扱いが大きくなかったのが残念でしたが、実は今回の会議では様々な出来事がありました。そこで今回と次回の2回に分けて、あまり報道されていない、世界遺産委員会について解説します!○世界遺産を決める会議は年に1度のみ今年、世界遺産はついに1,000件の大台を突破して、1,007件となりました。こんなにたくさんの世界遺産が、これまでにどうやって誕生したのかというと、1978年に世界遺産第一号の12件が決まって以降、毎年少しずつ増えていったのです。増える、といっても日々少しずつ増えているのではなく、1年に1度開催される世界遺産委員会のみで審議が行われるのであり、この会議以外で世界遺産が誕生することはありません。毎年決まった数が増えるのではなく、多少のばらつきはありますが、例年約20件前後が誕生します。なお、現在の保有国トップ3は、1位イタリア(50件)、2位中国(47件)、3位スペイン(44件)となっています。各国は事前に世界遺産登録を目指す物件を推薦しており、年間で合計約50件の推薦があります。この推薦は各国政府による自薦なのですが、それでは客観的に見て本当に世界遺産にふさわしい価値があるのかどうか分かりません。そこで、文化財や自然保護の専門家による審査が行われます。その審査結果を参考にして、世界遺産委員会の場で最終的に決議を行っています。そもそも世界遺産とは、世界遺産条約を締約している191カ国の中から登録されるのですが、さすがに全締約国が一堂に会して審議を行うわけには行きません。そこで、21カ国の委員国を選出し、合議制で決めているのです。○来年はドイツ開催会議が開催されるのは、世界遺産を保有している国で持ち回りとなっています。今年は第38回世界遺産委員会が、6月15日~25日にかけてカタールのドーハで開催されました。会場は、磯崎新氏が設計したカタール国立コンベンションセンターです。時期は固定ではないのですが、ここ最近は6~7月にかけて2週間弱の日程で開催されることが多いです。開催地は、昨年はカンボジアの首都プノンペン、一昨年はロシアのサンクトペテルブルクでした。来年はドイツのボンが決定しています。開催国イコール議長国ということで、今年はカタールのマヤサ王女が議長を務めました。「富岡」登録を告げる、木づちをたたいていた女性です。カタールといえば、会議の初日に、紛争・災害によって崩壊の恐れがある世界遺産を守るための新たな基金として、1,000万ドル(約10億円)の寄付をすると表明しました! 10億円……。さすが世界有数の成長国です。カタールはFIFAワールドカップ2022の開催も決まっていますし、国際社会で果たす役割がどんどん大きくなっていきそうですね。ところで委員国以外にも、会議にはオブザーバーという形での参加(傍聴)が可能です。例えば、将来的に世界遺産登録を目指す物件を保有する自治体の担当者の方や、報道関係者、世界遺産に関する情報を扱っている関係者・研究者などです。筆者もいずれ、ぜひ委員会を見に行きたいと思っています。次回は、今年新しく誕生した世界遺産の中での注目物件や、世界遺産委員会で問題視されている課題などについて詳しくお話していきたいと思います。○筆者プロフィール : 本田 陽子(ほんだ ようこ)「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。○世界遺産検定とは?世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。主催:世界遺産アカデミー開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)開催地:全国主要都市受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込みその他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて
2014年07月14日「富岡製糸場」を含む「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産に登録されたことを記念し、このほど東京・銀座にある群馬県のアンテナショップ『ぐんまちゃん家』にて特別イベントが開催された。○限定100部の貴重な絹新聞を配布!同イベントでは、「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録を記念し、群馬県に本社を置く上毛新聞社が発行した、本物の絹で作られた「絹新聞特別号」(限定100枚)を賞品としたクイズ大会が行われた。クイズ大会では、配布された資料に答えが書かれてあるような簡単な問題から、「富岡市にあるゴルフ場の数」といった難問も出され、参加者たちを大いに悩ませた。ぐんまちゃんもクイズ大会に参加したが、まさかの1問目不正解。どうやらクイズは苦手のようだった(笑)。○次のチャレンジは織るだけで新聞になる絹織物?「絹新聞特別号」を発行した上毛新聞社の齋藤紀雄さんに話を聞いた。――今回、なぜ絹製の新聞を発行しようと思ったのでしょうか?上毛新聞社では、今回の世界遺産登録にあたり7月に記念号の発行を予定しています。それに合わせて何か面白いことができないかと考えていました。そのなかで、技術的に絹で新聞を作ることが可能と分かり、絹製の新聞の号外を発行いたしました。――「富岡製糸場」ですから、やはり絹なんですね。そうです。使用されている絹は100%国産で、ほぼ群馬県産のものですよ。――これほどハイクオリティの絹新聞特別号を作るにあたり、どんな点で苦労しましたか?やはり印刷ですね。紙と違い表面がデコボコしているので、印刷するのはかなり難度の高いものでした。――今回は、絹への印刷という難しいことにチャレンジされたわけですが、今後はどのようなことを企画されていますか?次は絹に印刷するのではなく「新聞を織る」ということにチャレンジしたいと考えています。――なるほど!じゅうたんのように色付きの絹を織り込んで、新聞の文字や写真を浮き上がらせるのですね!そうなります。技術的に難しいので少し時間はかかりそうですが、秋口くらいにはお見せできるようにしたいと思います。――楽しみにしています!日本の製糸技術の向上に大きく貢献した富岡製糸場。今回の「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録によって、さらに多くの人に注目されることだろう。この夏は、ぜひ世界遺産見学に出掛けてみてはいかがだろうか?(貫井康徳@dcp)
2014年06月23日いよいよワールドカップの開幕が迫ってきました! 実は、世界遺産ギョーカイ人(というものがあるのかどうか分かりませんが)にとっても、とても大事なイベントが迫っています。それは「世界遺産委員会」という、世界遺産の新規登録物件などを決定する会議です。1年に1回行われるのですが、今年は『富岡製糸場と絹産業遺産群』が登録決定を待ち構えていることはみなさんご存知のとおりです。こちらは6月15日~25日にかけて、カタールのドーハで行われます。……ドーハといえば!! このコラムをご覧になっている方は、1993年の「ドーハの悲劇」をリアルタイムで見ていた方も多いかと思いますが、そのドーハです。今回の会議では、絶対にそんな悲劇は起こらないと思いますが。○リオ・デ・ジャネイロも世界遺産!世界遺産委員会の話はこれくらいにして、ワールドカップですよ! ブラジルの世界遺産に目を向けてみると、ポルトガルの植民地であった歴史的経緯から、ポルトガルによって開発された都市や鉱山などが数多く登録されていることが分かります。南米においては、宗主国であったポルトガルやスペインの文化が色濃く残っており、世界遺産にもそれが反映されているのはブラジルに限らず他の国でも言えることです。決勝が行われるリオ・デ・ジャネイロは、実は2012年に世界遺産に登録されています。ブラジル第2の都市として知名度は十分メジャーですが、世界遺産のタイトルまで持っているというのは少し意外かもしれません。2016年のオリンピックの開催も決定していますし、いま世界が大注目している旬の都市といえるでしょう。ところで、「リオ・デ・ジャネイロ」の名前の由来はご存知ですか? この地は1501年1月1日に、この近くの湾を発見したポルトガル人探険家によって"発見"されました。南米にはもちろん先住民がいるわけで、発見というのは完全にヨーロッパの征服者による発想です。ただここではその議論はおいておいて、ひとまず"発見"としましょう。探検家はその湾を川と間違えてしまったことから、ポルトガル語で「1月の川」を意味する「リオ・デ・ジャネイロ」と名づけました。お正月というめでたい時に発見したんですから、もう少し気のきいた名称にしてほしかった気もしますが、南米にはこうした単純な由来の名称が多い気がします。モアイ像で有名なイースター島も、発見されたのはイースターの日でした。○リオは「世界三大美港」ってご存知?リオは、なぜ世界遺産に登録されたのでしょうか。この地は発見された当初は小さな港町にすぎなかったのですが、リオから内陸に入った地域で金鉱が発見されたことから、大きく運命が変わっていくのです。リオは金の積出港として繁栄していきます。そして18世紀後半には、ポルトガル・ブラジル連合王国の首都となったのです。リオは、急峻(きゅうしゅん)な山とコパカバーナに代表される海岸に挟まれた独特の地形をもっていますが、この繁栄下で独特の都市景観が築かれていくことになります。世界三大美港に数えられ、奇岩が連なる紺碧の海、そして白砂の海岸線が織り成す大都市へと成長していきました。1950年代にはイパネマなどの海岸地区に住む中産階級の学生やミュージシャンたちによって、ボサノヴァという新しいスタイルの音楽が登場します。独特の景観が音楽家や芸術家たちにインスピレーションを与え、様々な都市文化を生み出したのです。こうしたと人と自然の営みが共存・融合した景観が評価されて、ついに2012年、世界遺産に登録されました。日本は1次リーグではリオでの試合はありませんが、C組1位通過となれば日本時間で29日にリオでの試合となります。各試合の日本でのテレビ放送時間から深夜から早朝にかけてとなり、当分寝不足の日々が続くことになりそうです。筆者の場合、世界遺産委員会の審議結果も当然押さえなければならないので(それが仕事ですから)、開催国・カタールと日本の時差を調べたところ、日本の方が6時間進んでいることが分かりました。……ということは、日本時間では夕方から深夜になるのかな? いったいいつ寝たらいいんでしょう。なんだかよく分からなくなってきましたが、ともかく、どちらもいい結果が出ることを祈りましょう!世界遺産データ:リオ・デ・ジャネイロ:山と海に囲まれたカリオカの景観(文化遺産)ブラジル連邦共和国2012年登録。ポルトガル・ブラジル連合王国以降、1960年にブラジリアに遷都されるまで首都であった。リオを代表するキリスト像は、ブラジル独立100周年を記念して建設されたもので、コルコバードの丘の上にたつ。○筆者プロフィール : 本田 陽子(ほんだ ようこ)「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。○世界遺産検定とは?世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。主催:世界遺産アカデミー開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)開催地:全国主要都市受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込みその他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて
2014年06月09日静岡県菊川市は、石川県七尾市で開催されている世界農業遺産(GIAHS)国際会議において、「静岡の茶草場(ちゃぐさば)農法」が世界農業遺産に認定されたことを発表した。「茶草場農法」とは、秋冬期に茶園周辺のススキやササなどの草を刈り取り茶畑に有機物として敷く、昔から続けられてきた伝統農法。同市では昨年、この「茶草場」の存在が確認された掛川市、島田市、牧之原市、川根本町と協力し「静岡の茶草場(ちゃぐさば)農法」世界農業遺産推進協議会を設立し、国際連合食糧農業機関(FAO)が行っている「世界農業遺産」への登録をめざして活動してきた。また、9月27日には世界農業遺産「静岡の茶草場農法」実践者認定委員会を掛川市役所で開催。4市1町(菊川・掛川・島田・牧之原市、川根本町)に在住する生産者9団体から提出された申請書により審査が行われ、9つの団体、個人が実践者に認定された。同市からは、倉沢の山本哲さんと堀延弘さんの2人が、認定区分の最高位(三つ葉)として認定され、認定証書を受け取ったとのこと。なお、「世界農業遺産」はこれまで世界で19の地域が登録済み。日本では「能登の里山里海」と「トキと共生する佐渡の里山」が認定されている。詳細は同市公式ホームページ(を参照のこと。
2013年12月11日トリップアドバイザーでは同サイト上において、「第49回トリップグラフィックス・数字で見る世界遺産」を公開している。「トリップグラフィックス」は、旅行に関する様々な情報をインフォグラフィックにして毎週公開しているもの。今までも「世界一のミュージアムは?」「世界一高い展望台」などを公開してきた。今回公開したのは「数字で見る世界遺産」。世界各国にある世界遺産を「数字」に着目して分析している。ユネスコに登録されている世界遺産は962件(2012年11月現在)で、その内訳は文化遺産77%、自然遺産20%、複合遺産3%。地域別では、ヨーロッパと北アメリカで48%と、実に半数近くの世界遺産が欧米に集中していることが分かる。その他にも、芸能や伝承、儀礼など232件が登録されている「無形文化遺産」や、書物や映像などの記録物245件が登録されている「世界記憶遺産」なども紹介している。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年11月26日ホイットニー・ヒューストンの遺産相続を巡って、娘のボビー・クリスティーナ・ブラウンと家族側が合意に至ったようだ。ゴシップサイト「TMZ.com」の報道によれば、ホイットニーの母シシー・ヒューストンや義妹でマネージャーのパット・ヒューストンらホイットニーの遺産を管理する財団側は当初、娘のボビー・クリスティーナが受け取る遺産相続分が多すぎるとして裁判に訴える構えを見せていたものの、全関係者は今回、当初の相続プラン通りで合意に至ったという。今回の合意により、現在19歳のボビー・クリスティーナは、21歳になった際に遺産の10%を、25歳時に20%を、さらに30歳になると残り全ての金額を受け取ることになり、母・ホイットニーの遺産を将来的に全額受け取ることになった。ボビー・クリスティーナは先日、一度は婚約を解消した義理の兄にあたるニック・ゴードンと再び婚約を果たしている。
2012年10月30日2011年6月、世界遺産委員会において日本から2件の物件が世界遺産に新規登録された。これは1996年の「厳島神社」「原爆ドーム」の2件同時登録から、実に15年ぶりの快挙であった。そのうちの1件である平泉は、2008年に「記載延期」の勧告を受けていたため、見事リベンジを果たしたことになる。「平泉 -仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-」という登録名にある仏国土とは、阿弥陀如来が創り上げた国のこと。浄土思想とは仏教における「天国思想」といっても過言ではない。世界遺産は”有形”、つまり形のあるもの。有形の世界遺産保全のためには、無形の伝統や精神文化の継承が必要である。浄土庭園に込めた藤原一族の平和思想は日本人が受け継いでいくべき大切な精神文化といえる。なお、現在の金色堂はコンクリートの覆堂で覆われているが、藤原一族滅亡後、金色堂に最初の覆堂を建設したのは誰かご存知であろうか。答えは記事下部に記しておく。第12回開催実施日: 2012年12月9日(日)申込み開始: 9月3日(月)申込締切: web11月7日(水)18時・郵便10月31日(水)実施級: マイスター・1級・2級・3級開催都市: 札幌・仙台・さいたま・千葉・柏・東京(23区)・東京(多摩地区)・横浜・金沢・松本・名古屋・京都・大阪・広島・高松・福岡・熊本申し込みは世界遺産検定公式WEBサイトにて答え: 「源頼朝」【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年08月31日世界遺産の「小笠原諸島」。「知床」「白神山地」「屋久島」に続く日本で4つ目の自然遺産である。小笠原諸島は「地球生成の歴史」と「独自の進化を遂げた生態系」「生物多様性」の3つの登録基準で世界遺産登録を目指していたが、認められたのは独自の生態系のみで、日本で最初の「地球生成の歴史の価値が認められた自然遺産」になることはできなかった。また、外来種が諸島の生態系を崩してきた歴史を踏まえ、「外来種対策」や「観光管理」を続けることが世界遺産委員会から求められている。ちなみに、小笠原の英語名「BONIN」(ボニン)の語源となっているのは「無人島」である。2012秋の特別開催実施日: 2012年9月23日受付期間: 7月11日~8月24日18時実施級: 2級・3級開催都市: 東京・名古屋・大阪申し込みは世界遺産検定公式WEBサイトにて【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年07月27日富士急行はこのほど、富士山の世界遺産文化登録への応援活動の内容を発表した。同グループで保有するバス・タクシーの全車両(約1,000台)に、「富士山を世界遺産に」と記載したオリジナルステッカーを掲出するほか、富士急行線車内および各駅へのポスター掲出、富士急ハイランドおよびぐりんぱへの看板設置など、グループ全体で啓蒙活動を行う。世界遺産登録をめざす富士山については、今年1月に、登録推薦書の正式版が世界遺産委員会へ提出された。国際記念物遺跡会議による現地調査と審議を経て、来年夏の世界遺産一覧表への登録をめざすという。富士急行では、こうした動きが「富士を世界に拓く」の同社の創業精神と合致することから、各種啓蒙活動の実施を決めた。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年07月05日小学生のための世界自然遺産プロジェクト「ユネスコキッズ」は、ユネスコ世界遺産条約採択40周年の特別企画として、無料公式サイトを刷新。「親子で楽しみながら世界自然遺産について学べる」をテーマにコンテンツも一新した。同サイトでは、絵や写真を中心とした、まるで「百科図鑑」のようなサイトにリニューアルした。学習意欲を刺激するために、子どもたちの興味の湧く切り口をコンテンツとしてラインアップ。「自分で調べる」ことで知識の深堀へとつなげていくことが狙いである。そのコンテンツ一例として、世界自然遺産事典ではすべての世界自然遺産を完全網羅。183カ所の世界自然遺産の情報がわかる。また、なぜ世界自然遺産に選ばれたのか、世界自然遺産としての見どころなど、百科事典といえるほど豊富な情報を取りそろえている。「世界自然遺産ハカセへの道」や「ユネスコキッズふしぎ図鑑」のコンテンツも、子どもの探求心や好奇心を喚起する内容にリニューアル。「自然に興味を持ち、深く学び、好きになってもらう」というコンセプトにマッチングしたサイトに改良された。同サイトはこれまで、モバイルサイトをメインに展開してきたが、4月26日より、スマートフォン、PCにも対応する。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年04月27日4月5日(木)に世界遺産文化登録の京都・上賀茂神社(賀茂別雷神社)細殿にて、『第四十二回 賀茂別雷神社式年遷宮奉賛 「世界遺産で舞い唄う」~祈り~』が行われる。本作は、能楽観世流シテ・梅若玄祥らによる演能とソプラノ歌手・尾崎比佐子による独唱、さらに梅若玄祥、尾崎の2名によるコラボレーション舞台を奉納するもの。3月6日、公演に先駆け梅若玄祥による製作記者会見が行われた。『第四十二回 賀茂別雷神社式年遷宮奉賛 「世界遺産で舞い唄う」~祈り~』チケット情報上賀茂神社で行われる玄祥舞台は、2008年3月30日に上演された世界的なバレエダンサーのマイヤ・プリセツカヤとの『ボレロ』の共演以来、4年ぶりのこと。今回は、200回近く上演しているという定番演目『土蜘』と、尾崎とコラボレーションする能舞『祈り-アヴェ・マリア』、さらに尾崎による『ラルゴ』、『私のお父さん』(オペラ「ジャンニ・スキッキ」より)、『あたりは沈黙に閉ざされ』(オペラ「ランメルモールのルチア」より)の独唱という3部構成で展開する。玄祥は「『土蜘』は、簾をまくところが注目されがちですが、今回は能としてきっちり成り立つものを上演できたら。細殿の空間を生かした、視覚的な面白さでも見せたい」と意気込む。一方、かつては9.11の犠牲者追悼のためにニューヨークでも演じたという『祈り』については、「本公演では東日本大震災で亡くなられた方々の思いを代弁する気持ちで舞います。尾崎さんの歌う『アヴェ・マリア』では、即興で舞おうと考えています」と語った。公演は4月5日(木)に京都・上賀茂神社(賀茂別雷神社)細殿にて開催。チケットは発売中。
2012年03月08日この夏、世界遺産・宮島に、宮島水族館がグランドオープンした。愛称は、みやじマリン。瀬戸内海にいる生き物を中心に、約350種、13,000点以上が見られる。入館すると、まず2階の展示室へ。2階では、宮島の干潟や里山、そして瀬戸内海の地上から海水面近くに生息する生き物を見て、1階へと降りていく。今度は、同じ水槽を、海中や海底にいて見上げているような造りになっている。逆L字に配された2階の水面近くを泳ぐ魚やウミガメ、1階では回遊する魚や岩陰に潜む魚、海底の砂上で生活する魚の姿を見て、海中の住み分けにも気づく。身近だけれど、希少な生き物・スナメリ。のんびりとした姿に、しばし癒される。眺めていると、逆に、こちらが見られているように思えてくるのが不思議だ。瀬戸内海の食物連鎖の頂点でもある。カキを養殖する、カキいかだを再現。広島特産のカキを、実際に養殖するのと同じように、いかだからつるした展示は珍しい。タチウオの水槽は、幻想的で、大人だからこそ楽しめる空間。暗い海底で直立するタチウオは、ちょっとしたショックにも弱い、デリケートな魚。長期飼育に取り組んでいる水族館は、全国でも珍しい存在だ。ペンギンが空を飛んでいるように下から見ることができる造りの、ペンギンプール。水族館とは思えない、瓦葺きの二階建て。島の雰囲気に合わせ、和風に造られた。宮島桟橋より、徒歩約25分。世界遺産の厳島神社を通り、さらに5分ほど歩くと見えてくる。宮島に、またひとつ、大人が楽しめるスポットが登場した。お問い合わせ:宮島水族館 tel.0829-44-2010広島県廿日市市宮島町10-3open.9:00~17:00(最終入館~16:00、休12月26日~30日) 公式サイト 取材/はまだふくこ
2011年09月07日偉大な遺跡や歴史的建造物、美しい景観……。生きているうちに一つでも多くの世界遺産を、自分の目で見ておきたいと思いませんか?男性に、行ってみたい世界遺産についてアンケートを実施しました。また、行ったことがあるものについて、どんなところが素晴らしかったかも、あわせて聞いてみました。>>女性編も見るQ.行ってみたい、もしくは行ってみてよかった海外の世界遺産は?1位マチュピチュ(ペルー) 18.5%2位ナスカ地上絵(ペルー) 10.1%3位ピラミッド(エジプト) 9.2%4位グランド・キャニオン国立公園(アメリカ) 8.8%5位万里の長城(中国) 6.7%●マチュピチュ派・『天空の城ラピュタ』を思わせる古代遺跡であり、人生で一度は行ってみたいから(29歳/電気/営業)・なぜあんな高い場所に都市が栄えたのかという不思議さがあるから(23歳/電気/設計)・天空都市を見てみたいから(23歳/マスコミ/営業)・あんな山の上に文明を築いたなんて、とても神秘的(24才/IT/SE)●ナスカ地上絵派・世界最大の地上絵だから(25歳/官公庁/公安職)・一度でいいから、上空から見てみたい(26歳/小売/総務)・古代のインカ帝国の民がどういうメッセージを遺したのか興味があるから(26歳/鉄鋼/マーケティング)・世界の七不思議に遭遇したい(27歳/通信/法務)●ピラミッド派・古代の力を感じられそうだから(27歳/IT/SE)・巨大な建造物を自分の目で見てすごさを実感したい(24歳/建築/建築)・ロマンを感じる(28歳/自動車関連/研究開発)・子どものころから知っているが、いまだに全容が解明されていないピラミッドをぜひ自分の目で見てみたい(31歳以上/その他/営業)●グランド・キャニオン国立公園派・広大なスケールを生で感じてみたい。きっと何も言葉が出てこないほど、感動すると思う(29歳/通信/管理)・アースパワーを思う存分に感じてみたい(26歳/印刷/財務)・自然の力で形成された広大な遺跡に魅力を感じる(28歳/自動車関連/営業)・壮大そうだから(27歳/人材派遣/営業)●万里の長城派・あの長城を歩いてみたいから(26歳/IT/SE)・「小さい自分とおさらば」って、なるかも(25歳/IT/SE)・中国四千年の歴史を感じたから(25歳/運輸/サービス)完全版(画像などあり)を見る
2009年10月15日