『源氏物語』の終盤、光源氏が死んだ後を描く宇治十帖は、かねてより紫式部ではない人間の著作では、と噂されてきた。その真相について、『女たち三百人の裏切りの書』で“古川版源氏物語”を生み出した古川日出男さんに話を聞いた。「僕は宇治十帖は紫式部本人が書いたと思う。前半の宮廷の恋愛模様は技術がある人間だったら書ける内容だけど、この後半の部分には紫式部本人でないと書けないと感じる。ジェンダーや文化や宗教の問題で、きつい思いをして生きているという彼女の気持ちが滲み出ているから。式部の語る部分では、『源氏物語』を読んだことのない人にも細部の構図まで伝わるよう配慮しました。彼女が“あなたたちよ”と語りかけ断定口調で話を進めていく部分は自分で書いていても楽しかったですね」舞台はほかにもいくつかある。奥州の武士たち、瀬戸内海の海賊たち、山陰道の沖合の島にいる蝦夷たち…。「『源氏物語』には東北に赴任した人たちがなまっているとか九州の豪族は粗暴だという記述がある。でもそれ以上深くは書かれていないので、そこは自分の出番だということで、彼らの話を足していったんです。僕にできるのは物語を書くことと読むこと。それは無駄なことではなくて、物語が歴史を動かすこともできるんだと証明したかった」そもそも本書のきっかけのひとつは、東日本大震災だったという。「千年に一度の巨大地震があって復興がうまく進まずにいる時、いつからこんな社会は生まれたんだろうと思った。それで作家として千年前の小説にコミットしようと思ったわけです。書いてみたらやっぱり千年前から、社会の構造は変わらないと感じた。だったらやっぱり一人ひとりが自分の持ち場で、世の中が少しでもよくなるよう頑張るしかないと吹っ切れた。僕は僕で、物語で世界を変えられるようにしていきたい」◇ふるかわ・ひでお作家。1966年生まれ。‘98年『13』でデビュー。‘02年『アラビアの夜の種族』で日本推理作家協会賞と日本SF大賞、‘06年『LOVE』で三島由紀夫賞受賞。著書に『聖家族』等。◇女御が物憑きで床に臥せ、女房や愛人の男が見守り僧たちが読経する麗景殿。代理の少女に取り憑いた怨霊は、百年前にこの世を去った紫式部だった。彼女は宇治十帖を語りだす…。2500円新潮社。※『anan』2015年6月3日より。写真・岡本あゆみ(古川さん)加藤 淳(本)インタビュー、文・瀧井朝世
2015年06月02日タレントのテリー伊藤が、俳優の東出昌大が主演するバイオレンス・アクション映画『GONIN サーガ』(秋公開予定)に出演することが19日、明らかになった。前作『GONIN』から19年後の2014年を描いた本作では、男たちが遺した家族による血と宿命の争いが描かれる。五誠会で3代目・誠司(安藤政信)が力をつける中、前作で命を落とした組員、久松の息子・勇人(東出)、同じく大越の息子・大輔(桐谷健太)、五誠会に囲われる麻美(土屋アンナ)、19年前の事件を追うルポライター・森澤(柄本佑)ら五誠会に恨みを持つ4人が出会い、新たな物語が幕を開ける。テリーが演じるのは、前作で室田日出男が演じた五誠会初代会長の息子で、2代目会長の式根隆誠。数々の組織を傘下に従え、息子の誠司には3代目として自分の後を継がせようとしているが、その誠司が"恐怖の親父"として恐れるほどの静かな狂気をたたえる。麻美を愛人として囲う冷徹な男で、TVでは見ることのないテリーの演技を見ることができるという。二宮直彦プロデューサーは、テリーの起用について「『あおげば尊し』(2006年)で演じられていた静謐(せいひつ)な存在感にテレビで拝見する闊達(かったつ)な姿とは別の奥深い佇まいに何か底知れぬもの」を感じ、「他にはいない」と決意。そのオファーを受けたテリーは、「やっぱり映画の現場っていうのはいい」と再認識したようで、「監督もすごく気合が入っているし、役者さんもスタッフも、皆が本当にいいものを作ろうとしているのが伝わってきて…こういう仕事をさせてもらって本当にうれしいです」と喜びを語った。また、テリーは「石井(隆)監督は(1カットが)長回しなので、自分の前の各役者さんのせりふや演技がしっかりしていて、ここで自分がミスをするわけにはいかないと、気合が入りました」と撮影エピソードも披露。「この作品は世界的な話題になると思います。大変なことになると思います」と本作をアピールし、「私もいい組長ぶりを見せますので、期待していてください」と呼びかけた。(C)2015『GONIN サーガ』製作委員会
2015年03月19日バイオレンス・アクション大作『GONIN』の続編となる『GONIN サーガ』がクランクアップを迎え、劇中写真と主演を務めた東出昌大らキャスト陣のコメントが公開された。その他の写真1995年に公開された鬼才・石井隆監督の『GONIN』は、佐藤浩市、根津甚八、ビートたけし、木村一八、本木雅弘らが出演し、カルト的な人気を集めたアクション大作。バブル経済が崩壊し、指定暴力団五誠会系大越組から巨額の借金返済を迫られた男が、五人の男たちを集め、暴力団を襲撃したことを機に壮絶な殺し合いを繰り広げた。『GONIN サーガ』はそれから19年後の2014年を舞台に、男達が遺したそれぞれの家族たちの血と宿命に彩られた新たな物語が展開される。東出は、前作で五人に襲撃を受け、命を落とした大越組若頭・久松(鶴見辰吾)の息子・勇人を演じ、桐谷健太は、同じく前作で命を落とした久松の組長・大越(永島敏行)の息子・大輔を演じる。土屋アンナは、五誠会の2代目に秘密を握られ、今は3代目の愛人に成り下がっている元グラビアアイドル・麻美役。柄本佑は、19年前の事件の真相を追うルポライターの森澤役。そして安藤政信は、本作の五人の敵役で、前作の五誠会会長・式根(室田日出男)の孫であり、麻美を愛人として囲う、五誠会三代目・誠司を演じる。監督の意見で主演に抜擢されたという東出は、「石井組という素晴らしい組で約一カ月演じさせていただいたのは、今まで経験したことのないような現場で、貴重な経験になりました」と振り返り、「自分自身の反省点もありますがみんなで作った現場なので今は作品の完成が待ち遠しいです」とコメント。安藤は「誠司は人間の悪の部分を徹底して背負い、それを貫かなければいけない役だったので石井監督とも何度もディスカッションしながら撮影をしていきました」と話し、「僕も、自分のためでもあるけれど、何より監督が喜ぶような僕を選んでよかったと絶対思ってもらえるようにと考えながら最後までやり切りました」と語っている。本作の五人目のキャスティングはまだ発表されていないが、「ファンがあっと驚くキャスティングを予定しております」とアナウンスされている。『GONIN サーガ』2015年 秋 全国ロードショー
2014年10月22日