現在第2子妊娠中、3歳の長女を育てています。生まれた長女の手の特徴から、ピアノ講師の義母が「この子は将来ピアニスト!」と大喜び。その後、連絡のたびに「ピアニスト」を押し付けてくる義母にストレスを感じた体験談です。 生まれたとき指が長かった長女長女が生まれたとき、直後の分娩室で話題になったのは「指の長さ」でした。分娩室にいたのは夫と実母と助産師さん。3人で「すごい指が長いね~」としきりに言っていたのを、産後ヘロヘロになっていた私もはっきりと覚えています。 実際自分の状態が落ち着いてからわが子をよく見ると、本当に指がすらりと長かったです。私にも夫にもない特徴なので「おもしろいね~」と微笑ましく夫と話していました。 ピアノ講師の義母が歓喜!産後4日ほどしてから、義父母が病院にお見舞いにきました。夫が新生児室から長女を連れてきて義父母に見せると、指の長さに気付いた義母が歓喜の声をあげました。「すごい! 指が長い子なのね! これは将来ピアニストになるしかないわね!!」とのこと。 義母はピアノ講師なので、孫のこの特徴が本当にうれしかったようです。このときは「そうですねー」と相槌程度で済ませましたが、その後も病院にいる間、義母は繰り返し長女の指の長さを話題にしていました。 し、しつこい! 連絡のたびに毎回里帰り出産で産後の体調の戻りも悪かったので、私は2カ月ほど実家で子育てをしていました。その間、数日おきに義母から連絡がきていたのですが、その文章のなかには必ず「将来はピアニストね」「指が長くてピアニストに向いてるわ」「指を長く産んでくれてありがとう」と言った言葉の数々が……。 大部分は長女の写真に対するコメントだったり、長女の近況を知りたいという内容だったりするのですが、必ず文章のどこかに脈略なくこうした言葉がつくので、毎回小さなストレスでした。 私はとにかく毎回コメントに対する返信はしないようにしていました。そして里帰りから戻ってからは、すぐに会える距離にいるため連絡の頻度も少なくなり、指に関する言葉も徐々に消えていきました。 成長と共に長女の特徴だった指の長さも目立たなくなっていき、3歳の今では「特別長い指」ということもありません。義母は時々「生まれたときは孫ちゃんは指が長かったのにね」と残念そうにしていますが、私はこっそり「言われ続けなくてよかった」と心の中で思っています。 著者:水田 真理アレルギー持ちな娘の母で元理科の塾講師。子育てはできるだけ家にあるもので、娘と楽しめるように日々創意工夫を実践。 イラスト制作者:マンガ家・イラストレーター うちここ年子男児を育てる2児の母。家族で過ごす日常や思い出をInstagram(@uchikoko20)やブログ「うちここ日記」で描いてます。
2022年04月19日アメリカのボストンを中心に活動する日本人ピアニスト/作曲家/オーケストレーターの西田 衣見が、世界的に著名なバークリー音楽大学で開かれるコンサート「Berklee Symphonic Winds: Winds of Change」に、メインピアニストとして出演します。西田 衣見_ピアノアメリカのボストンを中心に大活躍している、日本人ピアニスト/作曲家/オーケストレーターの西田 衣見。世界的に著名なバークリー音楽大学でついに開かれるコンサート「Berklee Symphonic Winds: Winds of Change」にて、メインピアニストとして出演することが決まりました。コンサートでは木管・金管・打楽器を中心に、女性やノンバイナリーの作曲家・編曲家の作品を演奏します。この模様は2022年5月3日午後8時(ボストン現地時間)から全世界に向けて配信されます。西田 衣見は、先日アカデミー賞作品賞を受賞した「CODA あいのうた」の作中で、主人公ルビーが進学を目指すバークリー音楽大学の声楽学科にて、唯一のミュージカル専門のピアニストとして何年も働いています。「CODA あいのうた」の題材となる以前から、バークリー音楽大学は1945年にボストンに創設されて以来、数々の世界的な名声を手にしてきました。コンテンポラリー音楽の最高峰として、また近年のボストン音楽院との合併も含め、バークリーの卒業生たちは300以上のグラミー賞を受賞しています。西田 衣見は神奈川県出身の現在28歳。演奏、作曲、アレンジに精通した日本人女性アーティストとして、数々の仕事をこなしながら、同大学のピアニストとして重宝されています。■エミー賞受賞歴のあるバークリー音楽大学教授 エリック・スターン氏 コメント約40年もの間、ブロードウェイの音楽監督、指揮者、そしてバークリーの教授として勤めてきたので、優れたピアニストを見分ける能力は養ってきたつもりです。彼女の演奏を初めて聞いた時、すぐにその稀に見る高い才能に気付きました。バークリーで伴奏者やミュージカルのソリストが必要な時、皆最初に出すのは彼女の名前です。アメリカで働く日本人ピアニスト・作曲家の中でトップクラスの技量を持つ彼女は、その卓越した初見能力とどんなジャンルでもすぐに転調して演奏できるスキルで、バークリーの生徒たちを毎日助けています。この大学のミュージカル専門のピアニストとしての彼女の働きが、比較的新しい我々のミュージカルのプログラムの更なる成長に貢献してくれており、それが生徒間でのプログラムの人気の高さにもつながっています。アカデミー賞をつい先日受賞した「CODA あいのうた」に特集されたバークリー音楽大学にとって、彼女の存在は大変貴重であり、彼女のいないこの大学は想像できません。西田 衣見_プロフィールバークリーの教授陣からの信頼も厚く、天才と絶賛される彼女は、演奏に加えて作曲にも力を入れており、実験的なクラシック作品の1台4手のためのピアノ曲「Ganymede, the Cupbearer」は、同じくアカデミー賞を受賞した坂本 龍一氏に称賛され、受賞歴のある吹奏楽曲の「At the night, we saw a shadow」はダートマス大学の吹奏楽を指導するブライアン・メッシアー氏による、「The Valley winds」に初演されることが決まっています。また、人気グループSixTONESの大盛況を収めた2021年の完売公演「onEST」用にインスト曲を書き下ろし、彼女ならではの珍しい楽器構成とコード進行を生かした音楽性が、横浜アリーナや大阪城ホールを始めとする日本の名だたる大きなアリーナ会場に、深く落ち着いた雰囲気を作り出しました。2019年にはサウンドクリエーター・オブ・ザ・イヤーにて奨励賞を、2021年には「The American Prize」の作曲部門にて奨励賞を受賞した彼女の創造性は留まる所を知らず、同年日本のミュージカル界で活躍する女優の鈴木 サアヤと女性JポップデュオStreepzを結成し、Emjのアーティスト名でポップス作品を発表しています。J ポップと他のジャンルとのフュージョンを目標としながら西田が作曲とアレンジを務めるStreepzは、今や世界中にファンがおり、業界に旋風を巻き起こしています。2021年にはユニバーサルミュージック賞を受賞。2人は現在、世界中が待望する初のアルバムリリースに向け制作中です。来年にはアメリカの首都ワシントンDCで毎年開かれる、在米日本屋外イベント「さくら祭り」(世界的に有名なアメリカの「全米桜祭り」の中の代表的なイベント)の出演も視野に入れています。■西田 衣見 コメントアメリカで、日本の文化と音楽を表現できることを光栄に思っています。音楽は言葉を超えて人と人とを繋げてくれます。<コンサート概要>名称 : Berklee Symphonic Winds: Winds of Change開催日時 : ボストン現地時間 2022年5月3日 8pm(日本時間 2022年5月4日 9am)会場 : バークリーパフォーマンスセンターチケット料金 : 無料販売サイト・イベントURL: <ストリーミング配信概要>配信日時: ボストン現地時間 2022年5月3日 8pm(日本時間 2022年5月4日 9am)配信URL : 視聴方法: 上記リンクより 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年04月18日『戦場のピアニスト』のロマン・ポランスキー監督最新作『An Officer and a Spy』(英題)が邦題『オフィサー・アンド・スパイ』として6月3日(金)より公開されることが決定し、特報とビジュアルが解禁となった。本作は、歴史的冤罪事件“ドレフュス事件”を基に、巨大権力と闘った男の不屈の信念と壮絶な逆転劇を描く歴史サスペンス。第76回ヴェネチア国際映画祭では銀獅子賞(審査員大賞)を受賞。様々な議論を巻き起こしたフランスでは、第45回セザール賞で3部門(監督、脚色、衣装)を受賞し、No.1大ヒットを記録した。反ユダヤ感情が高まる19世紀末のフランス。ドイツに機密を漏洩したスパイ容疑で終身刑となったユダヤ人大尉ドレフュス。彼の無実を示す衝撃の証拠を発見した対敵情報活動を率いるピカール中佐が、スキャンダルを恐れ証拠の捏造や文書の改竄などあらゆる手で隠蔽をもくろむ国家権力に抗いながら真実と正義を追い求める姿を描く。アカデミー賞監督賞受賞『戦場のピアニスト』ロマン・ポランスキーが監督を務め、出演は『アーティスト』のオスカー俳優ジャン・デュジャルダン、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のルイ・ガレルほか、フランスを代表するキャストが集結した。当時のフランスに国家の土台を揺るがす深刻な分断をもたらし、世界を震撼させたこの事件。監督は、いわれなき罪を着せられたドレフュスと、彼を救い世に真実を知らしめようとする主人公ピカールの壮絶な運命を描出し、心揺さぶるストーリーを作り上げた。圧倒的なまでにサスペンスフルな展開は、衣装や美術などのあらゆる細部を突きつめた重厚なビジュアルと相まって、ひとときも目が離せない。また、日本での公開にあたり、フランス現代史を専門とし、反ユダヤ主義関連の研究でも知られる思想家の内田樹氏が字幕監修を担当している。このたび解禁された特報では、スパイの罪を着せられたドレフュスと、組織の中で逆境に立たされながらも、真実と正義のために自らの信念を貫くピカールの熱い逆転劇を予感させる内容となっている。あわせて到着したビジュアルでは威圧的に整然と居並ぶ軍人たちの前で向き合うドレフュスとピカールの姿が。2人の間に添えられた「私は告発する」というコピーは、映画にも登場する世界的な作家エミール・ゾラがドレフュスの無実を訴え、当時の大統領に宛てた歴史的な公開告発状から取られており、フランスではこの言葉がタイトルとして採用されている。『オフィサー・アンド・スパイ』は6月3日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:オフィサー・アンド・スパイ 2022年6月3日よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開
2022年03月24日豪華客船の中で生まれ、生涯一度も船を降りることのなかった天才ピアニスト・ノヴェチェントの数奇な人生を描いたアレッサンドロ・バリッコの戯曲『海の上のピアニスト』が、全編に渡ってピアノの生演奏で綴る音楽劇として9月16日~20日東京芸術劇場シアターイーストで上演される(のち栃木、富山、石川、大阪でも上演)。主演ノヴェチェント役としてこの音楽劇に挑む内博貴は作品と役柄をどう感じているのだろうか。「映画版でご存知の方が多い作品だと思いますが、僕はたまたまこれまで観る機会がなかったんです。それでノヴェチェントを演じさせていただくと決まった時に観ようとしたのですが、演出の星田良子さんが『全く違うから観なくて良いよ』とおっしゃって(笑)。ですからあくまでも台本から、作品や彼の人生を感じていこうと思っています。僕自身台本に書かれている台詞、ト書きから人物を捉えていくのが好きなので、道を歩いたことも全くなく、船の中しか、ピアノしか知らない人物を、稽古を通してつかんでいきたいなと。元々ライブで歌う時にも正確に音を捉えてくれるピアノの音色って生命線で、ボーカルの僕としてはとても頼りにしている楽器ですし、弾けたらいいなとずっと思ってきたので、ピアニスト役が演じられるのも嬉しいです」藤本隆宏との二人芝居も内にとって新たな挑戦となる。「藤本さんとの芝居はすごく楽しみにしているのですが、意外と台詞の掛け合いが少ないんですよ!藤本さんがストーリーテラーとして状況説明をしてくださって、僕は自分の心情とか、外に出たとしたらの想像を詩のように語りながら歌に入っていくことが多いので、台詞がすごく覚えにくいです!(笑)それが一番の挑戦かなと思っていますが、二十歳位の頃にジャニーさんに『舞台に立てる人間が最後まで生き残れるんだ』と教えられて以来、舞台に対する気持ちが自分の中で固まったので、今回も真っ直ぐな気持ちで務めていきたいと思っています」インタビュー:橘涼香
2021年09月08日ビューティフルピープル(beautiful people)から、20世紀を代表する天才ピアニスト、グレン・グールドとのコラボレーションアイテムが、2021年8月25日(水)よりビューティフルピープル 青山店などで順次発売される。天才ピアニストの写真を配した“変形”白シャツグレン・グールドは、楽曲を独自解釈した自由な演奏など、クラシック界の常識に囚われない自由なスタイルで名声を博したピアニストだ。「ダブルエンド=両頭使い」をテーマにしたビューティフルピープル 2021年秋冬コレクションは、グレン・グールドもインスピレーションソースの一つ。ショーでは、アリアから始まりアリアで終わるという構成がシーズンテーマと共鳴する、グレン・グールドの代表曲「ゴールドベルク変奏曲 アリア」 が用いられていた。そんなビューティフルピープル 2021年秋冬コレクションから登場するコラボレーションアテムは2型。白シャツは、テーマである「ダブルエンド=両頭使い」を体現したユニークなパターンが特徴で、上下をひっくり返して着用が可能だ。一方はスタンダードカラーの腰丈シャツ、もう一方はボウタイをあしらったAラインのアスコットタイシャツとなっており、アレンジ次第で様々なスタイルを楽しむことができる。バックには、グレン・グールドのモノクロのフォトプリントが大胆にあしらわれている。レコードサイズのグラフィックをあしらったロングスリーブTシャツグレン・グールドのグラフィックをあしらったモックネックのロングスリーブTシャツも用意。グラフィックは、レコードジャケットのサイズで配置し、美術館のキャプションボードをイメージしたロゴが添えられている。また、フロントにあしらったビューティフルピープルのロゴは、裏側となる刺繍をあえて表面に施すなど、細かな部分にまでこだわりを詰め込んだ。カラーはホワイトとブラックの2種類。カラーによって異なるグラフィックが配されている。【詳細】ビューティフルピープル×グレン・グールド発売日:2021年8月25日(水)販売店舗:ビューティフルピープル(青山店、伊勢丹新宿店、渋谷パルコ、阪急うめだ店、ジェイアール名古屋タカシマヤ店)、オンラインショップ■アイテム詳細・アスコットシャツ 59,000円サイズ:34/36/38/40/42・Tシャツ 21,000円 ※2021年8月末発売サイズ:34/36/38/40/42
2021年08月28日“クラシック音楽の殿堂”東京文化会館音楽監督に、作曲家でピアニストの野平一郎氏のが就任が発表された。東京文化会館においては、指揮者やプロデュース活動、さらに音楽教育にも携わり、広く日本の音楽文化に多大な貢献をしてきた野平一郎とともに、鑑賞機会の提供や若手音楽家の輩出・育成に尽力し、社会的課題にも取り組みながら、「音楽・舞台芸術の殿堂」としてあらゆる人々が感動を分かち合える劇場を目指すという。詳細情報 ●野平一郎コメント東京文化会館は、私にとって音楽を志したときから幾度となく通い、いろいろな音楽を聴いてきたとても親近感のある場所であり、ここで得たものが私の成⻑に欠かせない肥やしになっています。東京文化会館は音楽家を育んできただけでな く、クラシック音楽の新しい聴衆をも生み出したホールだと思っています。 東京文化会館の音楽監督に就任するにあたって、いくつかヴィジョンがあります。 まずは、年代的にも音楽ジャンル的にも幅広いお客様にいらしていただけるようにしたいと考えています。若い人も音楽のすばらしさを体験できるよう、“世代循環”とでもいうような、われわれが伝えていかなければならないものがあると思います。また、最も東京らしいホールとして、東京の持つローカルなものをグローバルに発信していく。音楽世界を豊かにできる ような多様性と新しい価値観なども見出して、東京文化会館は常にアクチャルなものが動いている、と実感していただけるような場所にできればと考えています。 東京文化会館は音楽資料室やリハーサル室もある複合的総合的な施設ですので、この機能を充分に発揮できるようにしたいと考えています。演奏家としても作曲家としても自分が体験的に東京文化会館から得てきたものを、若い世代の聴衆をはじめ音楽文化に親しむすべての皆さまに受け渡していきたいと思います。●野平一郎プロフィールのだいら いちろう 1953年生まれ。東京藝術大学、同大学院修士課程作曲科を修了後、フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に学ぶ。作曲・ピアノ・指揮・プロデュース・教育など多方面にわたる活動をおこなう。ピアニストとしては内外のオーケストラにソリストとして出演する一方、多くの内外の名手たちと共演し、室内楽奏者としても活躍。古典から現代までそのレパートリーは幅広い。近年はコンチェルトの弾き振りや、自作自演を含めた指揮活も多い、140曲に及ぶ作品の中には、フランス文化庁、アンサンブル・アンテルコンタンポラン、IRCAM、国立劇場等国内外からの委嘱作品があり、いずれの作品も圧倒的な成功を収めた。また、100枚をこすCDをリリースしている。 第13回中島健蔵音楽賞(1995)、第44回、第61回尾高賞、芸術選奨文部大臣新人賞、第11回京都音楽賞実践部門賞(1996 )、第35回サントリー音楽賞(2004)、第55回芸術選奨文部科学大臣賞(2005)、日本芸術院賞(2018)を受賞。2012年 春、紫綬褒章を受章。 現在、静岡音楽館AOI芸術監督、東京藝術大学名誉教授、東京音楽大学作曲科教授。芥川也寸志メモリアル・オーケスト ラ・ニッポニカ ミュージカル・アドヴァイザー。日本フォーレ協会会⻑。日本ベートーヴェンクライス代表理事。2021 年より3年間、モナコ・ピエール皇太子財団音楽評議員を務める。2022年開催仙台国際音楽コンクールのピアノ部門審査委員長。
2021年08月24日長編アニメーション映画『ジュゼップ 戦場の画家』が、新宿武蔵野館ほかにて2021年8月13日(金)より順次全国公開される。“描くことで戦い続けた”実在の難民画家がモチーフ『ジュゼップ 戦場の画家』は、1939年スペイン内戦により、避難先のフランスの強制収容所で難民となった実在の画家ジュゼップ・バルトリをモチーフにした長編アニメーション映画。愛する人との再会を胸に、描くことで戦い続けた男の“感動の実話”を、スクリーンに映し出す。イラストレーター・オーレルの長編アニメ監督デビュー作メガホンをとったのは、フランスの全国紙「ル・モンド」などのイラストレーターとして活躍してきたオーレル。ジュゼップが収容所で記した鮮烈なスケッチに触発され、10年の歳月を費やして映画『ジュゼップ 戦場の画家』を完成させた。脚本は、ロベール・ゲディギャン監督の『マルセイユの恋』 、『キリマンジャロの雪』で知られるジャン=ルイ・ミレシ、製作は『戦場でワルツを』のセルジュ・ラルーらが務めている。ヨーロッパの映画賞を総なめ&東京アニメアワードフェスティバルグランプリ映画『ジュゼップ 戦場の画家』は、オーレルの長編アニメーション監督デビュー作品にして、2020年カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション作品に選出されたほか、2021年のセザール賞やリュミエール賞などヨーロッパの映画賞を総なめに。「東京アニメアワードフェスティバル2021」では、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の監督としても知られる審査員の片渕須直が絶賛し、コンペティション部門長編アニメーショングランプリを獲得した。映画『ジュゼップ 戦場の画家』あらすじ1939年2月。スペイン内戦の戦火から逃れた大勢の難民が南フランスに押し寄せる。フランス政府によって強制収容所に入れられた難民たちは、劣悪な環境のもとで飢えや病気に苦しみ、監視役のフランス人憲兵たちはことあるごとに虐待を加えていった。そんな中、粗末な小屋の壁や地面に黙々と絵を描いているジュゼップ・バルトリという画家がいた。新米の憲兵セルジュは先輩の憲兵たちの目を盗み、ジュゼップに紙と鉛筆を与え、ふたりの間にはいつしか有刺鉄線を越えた友情が芽生える。セルジュはジュゼップがスペイン脱出の際に離ればなれになった婚約者がいたことを知り、再会を夢見る切なる思いに触れ、彼女を探すのを手伝うが…。フリーダ・カーロが登場解禁された本編映像には、ジュゼップ・バルトリが愛した、メキシコを代表する画家のフリーダ・カーロが登場。浜辺に座り、広い海を眺めていたジュゼップと新米憲兵セルジュに向かって、海の中から突如現れたフリーダが歩いてくる。これは夢か現実か……、ロマンティックさに加え、語り手である老人の記憶の曖昧さも絶妙に描き出したシーンとなっている。【詳細】映画『ジュゼップ 戦場の画家』公開日:2021年8月13日(金)新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開監督:オーレル脚本:ジャン=ルイ・ミレシ配給:ロングライド2020年/フランス・スペイン・ベルギー/仏語・カタロニア語・スペイン語・英語/74分/シネマスコープ/カラー/5.1ch/原題:JOSEP/日本語字幕:橋本裕充
2021年08月07日2007年のサントリーホールを完売にして成功させた衝撃的なデビュー公演以来、精力的な活動を続けているピアニスト・外山啓介。このほど、ベートーヴェンのソナタをまとめたソロ・アルバムをリリースし、8月29日(日)にはサントリーホールで『オール・ベートーヴェン ピアノ・リサイタル』を開催する。ベートーヴェンに対する思い、そして、コロナ禍で感じたことをインタビューした。7月28日にリリースしたアルバムには、第21番『ワルトシュタイン』、第8番『悲愴』、第23番『熱情』を収録している。「ベートーヴェンはずっとコンスタントにピアノソナタを書いてきた。弦楽四重奏やシンフォニーなど素晴らしい作品がたくさんあるが、同じぐらいピアノソナタも大切だと思う。いろいろな挑戦が1番から32番まで詰まっている」と外山は話す。その中でもこの3曲を選んだのは「単純に好きだから」というが、「『ワルトシュタイン』は新しい時代の幕開けとなるような、ベートーヴェンにとって大きなソナタの一つだし、『熱情』は中期の一つのゴールになる曲。『悲愴』は、いろいろなことがあるけれど、それでも強く生きていくしかないという前向きなエネルギーを感じる」と魅力を語ってくれた。意外だったのが、アルバムの仕上がりを尋ねたときに「どんなときもそうだが、出来上がったものに対しての“恐怖”がある」と答えたこと。現在、37歳の外山は「もうすぐ40歳。もう若手ではなくて、中堅の域に差し掛かってくる」として、「今後の自分の仕事の展開や、理想を考えると、いい意味で周りからの評価が気になるというか、きちんと自分が登っていけているのか不安に思うようになった」という。しかし、その“恐怖”があるからこそ、「本番がより面白くなった」とも。「何を弾いても《外山啓介》というのは嫌だなと思う。自分がどう弾きたいかではなく、作曲家がどう弾いてほしかったのかを一生懸命考える。自分がピラミッドの頂点に立たないピアニストでありたい」。本来、アルバムも昨夏リリースされる予定で、リサイタルも昨年9月に開催されるはずだったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で敢えなく延期となった。この1年間は「一生忘れられない1年になった」と外山は言う。「当たり前のように、観客の皆さんの前で演奏をしてきたが、それが当たり前ではないということ。自分の仕事がどういうものなのか、これからどうしていきたいのか、今まで自分は何をしてきたのか。いろいろと冷静に振り返ることができた」1日も早くコロナ禍の終息を願う一方、一度立ち止まって、思考を深めることができた点においては、プラスだったようだ。「時間ができたので、自分で知っているつもりだったことをもう一度勉強し直したり、演奏に関してもより高みを目指すことができたり、ほかのピアニストの音楽を積極的に聴いたり。本当に忘れることのできない1年だった」本番まで1ヶ月を切った、サントリーホールでの演奏。観客へのメッセージを尋ねると、外山は「特別な時間になると思う。本番でお客様からいただくパワーは本当に大きい。ぜひ、ベートーヴェンのコンサートを作り上げるために、皆様の力を貸していただきたい」と話した。『《ワルトシュタイン》《悲愴》《熱情》〜ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集』エイベックス・クラシックスAVCL-841223300円(税込)発売中外山啓介 オール・ベートーヴェン ピアノ・リサイタル2021年8月29日(日)14:00開演会場:サントリーホール〈その他のスケジュールはこちら〉取材・文・撮影:五月女菜穂
2021年08月02日中国映画『エイト・ハンドレッドー戦場の英雄たちー』が2021年秋にTOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開される。中国興収No.1の映画『エイト・ハンドレッドー戦場の英雄たちー』『エイト・ハンドレッドー戦場の英雄たちー』は、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』と『TENET テネット』を超えて2020年中国興行収入No.1を記録した中国映画だ。日中戦争下の上海が舞台作品の舞台は、1937年、日中戦争下の上海。中国軍の守備隊が、迫り来る日本軍からの砲撃、銃撃、空爆などの総攻撃にさらされながらも命懸けで繰り広げた、「四行倉庫の戦い」として知られる5日間の戦闘の実話を描く。映画『X-MEN』のティム・クロスビーも参戦また、構想10年、総製作費80億円を投じて完成させた、リアリティ溢れる戦闘シーンも『エイト・ハンドレッドー戦場の英雄たちー』の見どころの一つだ。20万平米の広大な土地に上海の街をリアルスケールで再現したほか、VFXスーパーバイザーには、映画『X-MEN』『ロード・オブ・ザ・リング』に携わったティム・クロスビーを迎えた。キャストは、中国版「世界の中心で、愛をさけぶ」で主役を務めたオウ・ハオをはじめ、「The Crossing ザ・クロッシング」のワン・チェンユエン、「山河ノスタルジア」のチャン・イー、「罪の手ざわり」のジャン・ウーのほか、日本軍司令官として中泉英雄も参戦。監督は「ロクさん」「愛しの母国」のグアン・フーが担当する。作品詳細『エイト・ハンドレッドー戦場の英雄たちー』公開時期:2021年秋 TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開監督・脚本:グアン・フー撮影:ツァオ・ユー美術:リン・ムー音響:フー・カンプロデューサー:ワン・ジョンレイ、リャン・ジン、チュー・ウェンジュVFX:ティム・クロスビー出演:ジャン・ウー、チャン・イー、ワン・チェンユエン、ホアン・チーチョン、オウ・ハオ、ドゥ・チュン、リー・チェン、タン・イーシン、チャン・チュンイー、中泉英雄2020/149分/中国語・日本語・英語/中国/カラー/5.1ch/シネスコ/原題:八佰 英題:The Eight Hundred PG12日本語字幕:伊藤あゆみ配給:ハーク 配給協力:EACH TIME
2021年06月18日今をときめく人気ピアニスト反田恭平の新企画が発表された(2021年5月25日)。その趣旨は、「音楽家活躍の場の創出、奈良を新たな文化芸術の創造の地へ」というもの。その背景には、一般財団法人森記念製造技術研究財団による強力なバックアップが存在する。同財団は、工作機械に関連する技術の向上および革新を通じて、工作機械産業の発展および地球環境保全に貢献することと、情操豊かな人材育成に必要な美しく文化的な環境構築に貢献することを事業目的として、DMG 森精機株式会社の出捐により 2016 年に設立された組織だ。 今回の企画においては、DMG 森精機株式会社の創業地である奈良を、クラシック音楽を通じて新たな文化芸術創造の地とし、地域に貢献することを目的とするという。この活動がコロナ禍にあえぐクラシック界の救世主となることを期待しつつ、新たな展開に注目したい。記者会見の様子「Japan National Orchestra 株式会社」詳細: ●Japan National Orchestraのめざすこと1. 音楽家自らが株式会社設立し、活躍の場の創出し、持続的かつ発展的な活動を確実にする2. 志のある音楽家が安心して音楽を学び、音楽活動に専念できる環境の確保3. 奈良中心に地域社会に親しまれ、愛されるオーケストラを目指す4. 2030年にはアカデミー(音楽院)を創設●「Japan National Orchestra」の主な活動内容1. 奈良・東京の定期公演を中心に、メンバー個々人のリサイタルシリーズ・全国ツアー実施2. オーケストラ及び、各メンバーの音源制作及び配信3. 音楽サロン「Solistiade」の開設●反田 恭平(そりた きょうへい)/ピアニスト1994年生まれ。高校在学中に第81回日本音楽コンクール第1位入賞後モスクワ音楽院に留学。2015年「チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール」古典派部門で優勝。2016年のデビュー・リサイタルでは圧倒的な演奏で観客を魅了し話題となる。2020年に入りコンサートが延期や中止が続くコロナ禍の中、いち早く有料の配信を始めるなど率先して クラシック界のために動きはじめる。同時に海外の活動も増え、ウィーン楽友協会でデビューを果たす。現在、ショパン音楽大学(旧ワルシャワ音楽院)に席をおき、コンサート活動のみならず、メディアへの出演、レーベルの立ちあげ、JNOの新たな体制づくりなど、新たなクラシックの可能性にも挑戦している。
2021年05月27日現在第2子妊娠中、3歳の長女を育てています。生まれた長女の手の特徴から、ピアノ講師の義母が「この子は将来ピアニスト!」と大喜び。その後、連絡のたびに「ピアニスト」を押し付けてくる義母にストレスを感じた体験談です。 生まれたとき指が長かった長女長女が生まれたとき、直後の分娩室で話題になったのは「指の長さ」でした。分娩室にいたのは夫と実母と助産師さん。3人で「すごい指が長いね~」としきりに言っていたのを、産後ヘロヘロになっていた私もはっきりと覚えています。 実際自分の状態が落ち着いてからわが子をよく見ると、本当に指がすらりと長かったです。私にも夫にもない特徴なので「おもしろいね~」と微笑ましく夫と話していました。 ピアノ講師の義母が歓喜!産後4日ほどしてから、義父母が病院にお見舞いにきました。夫が新生児室から長女を連れてきて義父母に見せると、指の長さに気付いた義母が歓喜の声をあげました。「すごい! 指が長い子なのね! これは将来ピアニストになるしかないわね!!」とのこと。 義母はピアノ講師なので、孫のこの特徴が本当にうれしかったようです。このときは「そうですねー」と相槌程度で済ませましたが、その後も病院にいる間、義母は繰り返し長女の指の長さを話題にしていました。 し、しつこい! 連絡のたびに毎回里帰り出産で産後の体調の戻りも悪かったので、私は2カ月ほど実家で子育てをしていました。その間、数日おきに義母から連絡がきていたのですが、その文章のなかには必ず「将来はピアニストね」「指が長くてピアニストに向いてるわ」「指を長く産んでくれてありがとう」と言った言葉の数々が……。 大部分は長女の写真に対するコメントだったり、長女の近況を知りたいという内容だったりするのですが、必ず文章のどこかに脈略なくこうした言葉がつくので、毎回小さなストレスでした。 私はとにかく毎回コメントに対する返信はしないようにしていました。そして里帰りから戻ってからは、すぐに会える距離にいるため連絡の頻度も少なくなり、指に関する言葉も徐々に消えていきました。 成長と共に長女の特徴だった指の長さも目立たなくなっていき、3歳の今では「特別長い指」ということもありません。義母は時々「生まれたときは孫ちゃんは指が長かったのにね」と残念そうにしていますが、私はこっそり「言われ続けなくてよかった」と心の中で思っています。 作画/うちここ 著者:水田 真理アレルギー持ちな娘の母で元理科の塾講師。子育てはできるだけ家にあるもので、娘と楽しめるように日々創意工夫を実践。 イラスト制作者:マンガ家・イラストレーター うちここ年子男児を育てる2児の母。家族で過ごす日常や思い出をInstagram(@uchikoko20)やブログ「うちここ日記」で描いてます。
2021年03月30日ディズニーのアニメーションや実写映画で描かれ、日本でも多くの人に知られている古代中国の物語を、本国で製作した『ムーラン―戦場の花―』(原題:無双花木蘭)が12月23日(水)よりDVDレンタル・デジタル配信開始されることになった。愛する家族のため、本当の自分を隠したまま仲間とともに戦いに身を投じるムーラン。その勇敢で健気、本国で昔から愛されてきたキャラクターが、本作で凛と咲き誇る。中国、南北朝時代。勝気な女性、ホア・ムーランが暮らしている魏の国は、貪欲で残忍な柔然軍の侵攻に脅かされていた。将軍が下した徴兵令により、高齢で病弱なムーランの父が出征を余儀なくされる。父の身を案じたムーランは、家族には告げず夜中にこっそりと家を抜け出し、父のかわりに男装の戦士として従軍する。もしも女であることが分かれば、重い刑が科せられることも厭わず、鎧に身を包んだ勇敢な兵士として戦場を駆ける。やがて、何万もの敵国の兵による容赦ない攻撃に耐えきれず、一人、また一人と仲間を失い、壊滅的な状態に追い詰められていく。初めこそ父の代わりに出征を決意したムーランだったが、国で待つ民の平穏と国を守るという強い信念が芽生えていた。たとえ一人になっても、命を賭けて柔然軍と戦うことを決意し、食料も絶えた中で生き残った少数の仲間とともに柔然軍が迫る国境に留まるが…。ムーランをはじめとする魏の国vs柔然軍との壮絶を極める戦いは、手に汗握るシーンの連続。併せて解禁された予告編からも、馬上での剣さばきや果敢に敵陣に突入していく様子などハードなアクション要素満載、スペクタクルな演出とVFX描写により圧倒的な迫力が伝わるものとなっている。『ムーラン-戦場の花-』は12月23日(水)よりDVDレンタル・デジタル配信開始(text:cinemacafe.net)
2020年11月06日ピアノの音色が評判を呼び、テレビなどでも特集され注目を集めたピアニスト・野田あすかによる「野田あすかおうちでミュージック~あなたに届けたくて【オンラインコンサート】~」が9月19日(土)に開催される。【チケット情報はこちら】2020年3月21日(土)、28日(土)に予定していた「野田あすかピアノ・リサイタル2020」が新型コロナウイルス感染拡大に伴い延期、振替開催を目指して調整をしていたが、6月20日(土)東京公演は11月14日(土)へ再延期、6月27日(土)福岡公演は中止となった。今回のオンラインコンサートは、このコロナ禍でも応援してくださるファンの皆さんへ感謝の気持ちを伝えたいという本人の強い思いを受けての開催となる。以下は野田あすかコメント。ピアニストの野田あすかです。宮崎に住んでいます。心がホッとする音楽を届けるのを目標に、活動しています。新型コロナウイルスの影響で、私のソロリサイタルが中止や延期になってしまいました。本当は、みなさんにお会いして、みなさんの前で演奏することを楽しみにしていたのですが、いまはできないので、オンラインという形でリサイタルをすることになりました。初めてのことばかりで戸惑ってしまうことが多かったのですが、画面の向こうで、私の演奏を聞いてくださっているみなさんに向けて、心を込めて、演奏しました。新型コロナウイルスで悩んでいる方、ストレスを抱えている方、外出ができない方、新型コロナウイルスが出てくるよりもずっと前から自粛せざるを得えなかった方など、一人でも多くの方の心がホッとするといいなと思います。9月6日(日)までチケットぴあにて早割チケットを発売中。9月7日(月)以降も前売りチケットを発売。9月19日(土)12:00~22日(火)23:59までPIA LIVE STREAMにて配信。
2020年09月04日紀平凱成(かいる)くん、19歳。その指から紡ぎだされる若々しい旋律で、多くのファンを虜にしてきたピアニストだ。幼いころから作曲も行い、7歳で“ピアニスト宣言”。13歳で東京大学と日本財団が進める「異才発掘プロジェクト」第1期ホーム・スカラーとなり、16歳で英国トリニティ・カレッジ・ロンドン(国際的ピアノ検定)の上級認定試験に合格して奨励賞を受賞。18歳にして、ここ浜離宮朝日ホールでのデビューコンサートを成功させるなど、いま最も注目される若手ピアニストの一人でもある。同時に、2歳のころに自閉スペクトラム症(自閉症)の診断を受け、音楽家でありながら感覚過敏などと向き合ってきたという、まさしく「異才ピアニスト」。支えてきた母・由紀子さんが振り返る。「もう妊娠中から、クラシックだけでなく、ワールドワイドな音楽を聴きあさっていました。誕生後も、カイルのまわりには私のエレクトーンや主人のギターなどがあったので、自然とおもちゃのようにさわりだしたという感じです」カイルくんの母親の由起子さんは岐阜県高山市で生まれた。両親、つまりカイルくんの祖父母もかつてはバンドやフォークデュオを組んでいたりという、音楽一家に育った。由起子さん自身もまた大学卒業後に、メーカー勤務のかたわら、シンガー・ソングライターを目指していた時期がある。父親の延久さんは三重県伊賀市出身で、大学卒業後にサラリーマンをしながら音楽活動をしていたころ、由起子さんと出会い結婚。2人でアマチュアバンドを組んだこともあった。だから、延久さんの赴任先の福岡市で’01年4月2日にカイルくんが誕生したとき、家庭に音楽があふれていたのは、ごくごく自然なことだった。出産後は専業主婦となっていた由起子さんにとって、最初の不安は、わが子の言葉の遅れだった。「早期教育じゃないですが、英語のCDや単語カードを買いそろえていました。“ABC”は言うのに、“イヌ”や“バス”を言わないのに戸惑いもありましたが、『男の子は言葉が遅い』と言われて、そんなものかなと思っていました。あとは、緑に対して強いこだわりを示し、緑色のコップを手放さなかったり、遊ぶ積み木も緑色のものだけだったり。保健所の1歳半健診で『気になることがある』と言われましたが、2歳児健診では特別な指摘も受けなかったんです」03年夏、延久さんの転勤に伴い東京へ引っ越して早々に訪れた保険福祉センターで、2歳のカイルくんは、「自閉症の傾向があります」と指摘される。自閉症は、会話や人間関係が苦手だったり、強いこだわりを示すなどの症状をもつ発達障害の一つ。感覚刺激への敏感さや鈍感さで生活に苦労するが、それが芸術的才能につながるケースも指摘される。「初めて聞く『自閉症』という言葉でした。主人はショックを受けていましたが、私はずっと不安を抱えていたので、原因がわかって解決の糸口も示されるはずだと、光が差したようにも感じました。でも、その後、インターネットで自閉症について検索してみると、『脳機能の障害で治るものではない』という記述があって、床に座り込んでしまいました」そこへ、一つの気づきをくれる出会いが訪れる。2歳半ごろから通っていた国際教育を推進するPTC(パシフィックインターナショナルスクール)の高塚洋子園長は言った。「カイルくんを病気にしているのは、お母さんですよ」振り返って、由起子さんは言う。「それまではりんごという言葉を覚えさせるのに、りんごの絵のカードを見せていました。ミス・ヨーコから『本物のりんごを持たせて、においを嗅がせて、色を見せてが大事ですよ』と言われて、私、いままで何やってたんだろうと」そんなとき、至らない自分に落ち込んでいるママに、カイルくんがそっと好物のいちごを差し出す。「いちごもそうでしたが、うしろからギュッとハグしてくれたり。するとあの子の鼓動が聞こえて、ハッとして、改めていちばん大切なものを思い出したんです」やがてミス・ヨーコからも、「お母さん、変わりましたね」と言われるようになる。障害を押さえ込まず、わが子をあるがままに受け入れる生活を選んだのだ――。9月4日の、2度目の浜離宮朝日ホールでのリサイタルまで、いよいよカウントダウン。本番で使用する大ホールを視察に訪れたカイルくんに、将来の夢を尋ねた。ステージに立った彼は、無限の可能性を象徴するような広大なホール空間に向かって、ワクワクを抑えられない様子で叫んだ。「世界を奏でるピアニスト!」力強い声がこだまする。オーケストラやビッグバンドとの共演、新作CDなど、19歳の夢は、いま奏で始められたばかりだ。「女性自身」2020年9月8日号 掲載
2020年08月31日猛暑日となった8月8日の午後4時。東京・築地の浜離宮朝日ホールのピアノ庫に、ピアニストの紀平凱成(かいる)くん(19)と両親の姿があった。9月4日に行われる紀平凱成ピアノリサイタル「Miracle」まで、1カ月を切った。それに先立ち、今日は“ピアノ選定”が行われる。「ピアノは1台1台、音色や鍵盤のタッチが違うものです。本番で弾く曲目なども考慮しながら、4台のグランドピアノの中から、当日使用するピアノを選びます」父親の延久さん(55)が解説してくれる。当のカイルくんは、母親の由起子さん(49)が見守るなか、180cmの長身を少しかがめるようにしてツカツカと1台のピアノの前へ進んだ。やや緊張しているようにも見えたが、鍵盤と向き合った瞬間、とびきりの笑顔に。やがて聞こえてきたのは、なんとも若々しい力強い旋律だった。彼の代名詞ともいえるロシアの作曲家カプースチンや、オリジナル曲などが、ピアノを替えては次々と演奏される。40分ほどが過ぎたとき、カイルくんは1台のスタインウェイ製ピアノの前へ。続いて、元気な声がピアノ庫中に響きわたった。「こっちが弾きやすい。2号機にしました。ありがとうございました!」幼いころから作曲も行い、7歳で“ピアニスト宣言”。13歳で東京大学と日本財団が進める「異才発掘プロジェクト」第1期ホーム・スカラーとなり、16歳で英国トリニティ・カレッジ・ロンドン(国際的ピアノ検定)の上級認定試験に合格して奨励賞を受賞。18歳にして、ここ浜離宮朝日ホールでのデビューコンサートを成功させるなど、いま最も注目される若手ピアニストの一人である。同時に、2歳のころに自閉スペクトラム症(自閉症)の診断を受け、音楽家でありながら感覚過敏などと向き合ってきたという、まさしく「異才ピアニスト」。カイルくんの歩んだ道は、決して平坦なものではない。小5になったころから、聴覚過敏がカイルくんを苦しめる。以前から運動会のピストルなど苦手な音はあったが、うまく遠ざければ生活に支障のない範囲だった。しかし、今度は違った。「テレビやドライヤー、携帯電話の呼び出し音などがカイルの耳に入るとパニックに……。せっかくピアニストという明確な夢を持ちながら、音に対してこんなに過敏になってしまい、本人には言えませんでしたが、夢は断たれたと、どん底に突き落とされた思いでした」(由紀子さん)中3になるころ、悪化する聴覚過敏に加えて、視覚過敏の症状が現れる。「正面から人の顔を見られなくなったんです。外出時は、私や夫がカイルを抱きかかえて歩きました。親が壁にぶつかっていたのだと思います。カイル本人はずっとピアニスト、ピアニストと言いながら、やらせてあげたいのに、どうしてあげることもできないふがいなさ」(由紀子さん)そんな両親の絶望のなか、希望の光となったのは、やはり音楽だった。なぜか、カイルくん、カプースチンの曲だけは、聴いたり、弾き続けることができたのだ。それが突破口となり、「カプースチン祭り2015」に参加。観客の前でピアノを弾ききった経験は、カイルくんを大きく飛躍させる。ホールコンサートの話が舞い込むのはその4年後。19年、カイルくんは18歳で満員の聴衆に感動をもたらしたのだ。「音楽やピアノは、大切な宝物。作曲も大変と思ったことはありません」カイルくん本人は、音楽という存在について、そう語った。由起子さんは、「カイルは、何も学ぶことができない時期のほうが長かった。けれど、この子の根っこはやっぱりピアニストで、『音楽でみんなをハッピーにするんだから、もうだいじょうぶ』と、自ら変わり始めようとしています。私たちは、そんな彼をこれからも家族として応援していくだけです」9月4日の、2度目の浜離宮朝日ホールでのリサイタルまで、いよいよカウントダウン。冒頭のピアノ選定の日。選定後、本番で使用する大ホールを視察に訪れたカイルくんに、将来の夢を尋ねた。ステージに立った彼は、無限の可能性を象徴するような広大なホール空間に向かって、ワクワクを抑えられない様子で叫んだ。「世界を奏でるピアニスト!」力強い声がこだまする。オーケストラやビッグバンドとの共演、新作CDなど、19歳の夢は、いま奏で始められたばかりだ。「女性自身」2020年9月8日号 掲載
2020年08月31日日本劇場公開から20年の時を経て、色鮮やかな4Kデジタル修復版と、当時日本では公開されることのなかったイタリア完全版が公開される『海の上のピアニスト』。この度、イタリア完全版の本編映像がいち早くシネマカフェに到着した。本作は、『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督と、映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネがタッグを組んだ、海の上で生まれ、生涯一度も船を下りなかったピアニストの伝説を描く不朽の感動作。公開されるイタリア完全版(HDリマスター)では、インターナショナル版としてカットされた40分以上のシーンが復活、トルナトーレ監督が本当にやりたかった全てを描き切った170分にも及ぶ映像となっており、タイトルやクレジットロールもイタリア語で演出されている。またイタリア完全版では、主人公1900(ナインティーン・ハンドレッド)の幼少期のパートも長く、ピアニストとして成長していく音楽的なバックボーンが丁重に描かれており、その分演奏シーンも増えている。今回到着した映像はそんなシーンのひとつ、1900を探す親友マックスがヴァージニアン号の船内にいる場面からスタート。そして、当時の豪華絢爛な船内の回想シーンへと変わり、1900とマックスが所属していたアトランティック・ジャズ・バンドの演奏シーンが映し出される。フロントマンでバイオリンのフィルがそれぞれメンバーを陽気に紹介していき、そして最後に1900を紹介すると、それを待ってましたと言わんばかりに、1900が超絶テクニックで応える姿を確認することができる。『海の上のピアニスト』4Kデジタル修復版は8月21日(金)より、イタリア完全版は9月4日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、角川シネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開。※9月4日以降は両作品を併映する可能性あり(cinemacafe.net)
2020年08月17日これからの時代を牽引していく今の10代は、2000年以降に生まれたZ世代。早熟な才能と底知れぬ可能性。そんな次世代の注目株の一人、ジャズピアニストの甲田まひるさんにインタビュー!脚光を浴びるきっかけとなったエピソードとともにご紹介します。「好きなことをしている自分が、一番イキイキしてます」インスタをきっかけにファッショニスタとして脚光を浴び、現在はジャズピアニストとして活躍する甲田まひるさん。「最初は、コードのオシャレな響きや自由さに惹かれたんですけど、本格的に勉強するとコードを数字に置き換えたり、セッションでは、その場でストックしたものから引っ張り出さないといけなかったり、めっちゃ難しい!ゴールが見えないからこそ続けられていますね。2年前の初アルバム制作は、完全に苦でした。オリジナルの2曲は、約1年の制作期間中、作っては『これじゃない』とボツにする繰り返し。追い詰められてやっとレコーディング2日前にできたんです。やりたいことを実現するのって、眠れずおかしくなりそうなくらいツラい…。でも、やっただけ報われるんですよね。完成した作品には100%満足してます」制作中の新作ではボーカルにも挑戦!「これまでインストの曲ばかりやってきたので、自分の言葉が音にのる感覚が新鮮。私には常に“なりたい自分”が手ごわいライバルとして存在してるんです。その自分に辿り着けないのは悔しいから、やるしかない!新しいことを始める時に怖さはないです。できるかどうかなんて、やってみなきゃわからないじゃないですか。やらずに後悔したくはないし、ダサいと思ったことはやりたくない。どんな挑戦であっても、そこだけはブレません。やっぱり、好きなことをしてる自分が一番イキイキしてるから」【発掘秘話】小6からMappy名義でインスタをスタート。ファッションスナップサイトに掲載された初スナップが拡散され、一躍脚光を浴びる。ジャズピアニストとして17歳でメジャーデビュー。9歳からジャズを弾き始める。カフェでの演奏が関係者の目に留まりデビュー。「ジャズの魅力を同世代の子たちにも知ってほしい」演技にも挑戦!新たなフィールドへ。昨年公開された映画『台風家族』で女優初挑戦。「私は新しい刺激がないとダメ。お芝居は、自分と違う人になれるのが楽しいです」こうだ・まひる2001年5月24日生まれ東京都出身5歳でピアノを始める。2018年、ドラムスに石若駿、ベースにKing Gnuの新井和輝を迎えたアルバム『PLANKTON』を発表。翌年、第31回ミュージック・ペンクラブ音楽賞受賞。※『anan』2020年8月5日号より。写真・小笠原真紀取材、文・小泉咲子(by anan編集部)
2020年08月06日日本を代表するピアニストとして活躍の場を広げる金子三勇士の新企画『みゆじックアワー』がスタートする。その内容は、金子三勇士自身がMC&演奏を務め、毎回ゲストを招いてお届けするという素敵なイベントが予定される。全体は2部構成となり、第1部は60名限定で開催される会場でのライブコンサート。そして第2部からはオンライン配信も行うという新しいスタイルのイベントだ。8月1日(土)に開催される第1回目のゲストは、テレビでもお馴染みのヴァイオリニスト・大谷康子。演奏はもちろん、2人のトークによる曲目解説や、作曲家とその時代、さらには日常のこぼれ話などが聞けるのも楽しい限り。日時:2020年8月1日(土)16:00開場/17:00開演/19:00終演予定会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DININGライブチケット(60名様限定):4,000円(1ドリンク付)※第2部からのオンライン配信は1,000円でご視聴可能。購入はこちら: ●公演詳細は: ●金子三勇士からのメッセージ●Program<第1部>17:00~ 会場限定 30minutesスペシャルライブエルガー:愛の挨拶サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン 他***<第2部>18:00~『みゆじックアワー』※オンライン配信スタートブラームス:ハンガリー舞曲 第5番J.S.バッハ:G線上のアリアベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番「春」より第1楽章 他金子 三勇士 Miyuji Kaneko(司会(M.C.)/ピアノ,Piano)1989年日本人の父とハンガリー人の母のもとに生まれる。6歳で単身ハンガリーに渡りバルトーク音楽小学校に入学、2001年からは11歳でハンガリー国立リスト音楽院大学(特別才能育成コース)に入学。2006年に全課程取得とともに帰国、東京音楽大学付属高等学校に編入する。東京音楽大学を首席で卒業、同大学院修了。2008年、バルトーク国際ピアノコンクール優勝の他、数々の国際コンクールで優勝。第22回出光音楽賞他を受賞。これまでにゾルタン・コチシュ指揮/ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団、小林研一郎指揮/読売日本交響楽団、ジョナサン・ノット指揮/東京交響楽団等と共演。国外でも広く演奏活動を行っている。NHK-FM「リサイタル・パッシオ」に司会者としてレギュラー出演。近年はライフワークの一環としてアウトリーチ活動にも積極的に取り組んでいる。2019年5月には新譜CD「リスト・リサイタル」をリリース、また同年10月公開の映画『蜜蜂と遠雷』では、主人公の一人「マサル」のピアノ演奏を担当、9月にはサウンドトラック「金子三勇士plays マサル」もリリースされた。 キシュマロシュ名誉市民。スタインウェイ・アーティスト。オフィシャル・ホームページ
2020年07月28日“20世紀最高のバッハの演奏家”と称されるピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンス。若くして世界的な活躍をしていたジョアンを襲った不幸、その苦難を幾度も乗り越えていく彼の半生を描く映画『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』より、圧巻の演奏シーンを映し出す予告編が到着した。幼い頃から病弱だったジョアン・カルロスは、ピアノを習い始めるとその才能が大きく開花。そして彼は、20歳でクラシック音楽の殿堂として知られるカーネギーホールでの演奏デビューを飾り、“20世紀の最も偉大なバッハの奏者”として世界的に活躍するまでに。一流の演奏家として世界を飛び回っていたジョアンは、不慮の事故により右手の3本の指に障がいを抱えてしまうが、不屈の闘志でリハビリに励み再びピアニストして活動できるまでになる。しかし、復帰を果たし、自身の代名詞ともいえるバッハの全ピアノ曲収録という偉業に挑戦をしていた彼に、さらなる不幸がのしかかる…。リオパラリンピックの開会式で行われたジョアンの国歌演奏の模様は日本でも話題となり、ハンディキャップを持った両手で奏でられた美しい旋律は、世界中の人々を虜に。当初、クリント・イーストウッド監督が映像化を切望した彼の物語であったが、プロデューサーのブルーノ・レザビシャスの直談判による熱い思いがジョアン本人の心を動かし、映像化権を獲得した。今回到着した予告編では、ピアノと出会い、天才と呼ばれた幼少期から、鮮烈なデビューを飾った20歳、絶頂期の若きジョアンの姿が映し出され、そこから一変、突然の悲劇が彼を襲い、破滅へと向かい始める様子が描かれる。血の滲んだ鍵盤を叩き続けるジョアンの鬼気迫る姿に思わず息を飲む映像となっている。なお、予告編、そして映画全編で奏でられるバッハの名曲は、全てジョアン自身の演奏によるもので、迫力に満ちた仕上がりとなっている。『マイ・バッハ 不屈のピアニスト』は9月11日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)
2020年07月23日『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督と先日亡くなった映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネがタッグを組んだ『海の上のピアニスト』が日本劇場公開から20年の時を経て、8月21日(金)より色鮮やかな4Kデジタル修復版でスクリーンに蘇る。また、9月4日(金)からは当時日本では公開されなかった、170分にも及ぶイタリア完全版(HDリマスター)も待望の日本初公開に。現在、新型コロナウイルスの影響で、『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ゲド戦記』といったジブリ作品、ブルース・リーの『死亡遊戯』、そして『ニュー・シネマ・パラダイス』までも、通常なら劇場では観られない名作中の名作が続々とスクリーンに戻ってきている。その中から、この夏見逃せない名監督の3作品をピックアップした。愛くるしい少女のつぶらな瞳とさみしげな顔が目に浮かぶ『ポネット』誰もが味わう、大切な人を亡くすことの悲しみ。痛ましい出来事に向きあう4歳の少女の純粋な姿を通し、「死」という人間の本質的で普遍的なテーマに迫る本作は、初公開から20年以上の時が過ぎたいまも決して古びることはない。主演したヴィクトワール・ティヴィソルが、1996年のヴェネチア映画祭で女優賞を史上最年少で受賞。監督は名匠ジャック・ドワイヨン。日本での劇場初公開は23年前の1997年で、東京の公開館では33週間のロングランを記録する異例の大ヒットとなった。映画史に輝く美しき傑作が、4Kレストアの高精細デジタルリマスター版で蘇る。―――ユーロスペースにて公開中。実在の人物の半生を描くデヴィッド・リンチ監督作『エレファント・マン4K修復版』19世紀のイギリス・ロンドンを舞台に、特異な容姿から「エレファント・マン」として見世物小屋に立つジョゼフ・メリック(ジョン・ハート)の生涯と、彼を研究対象として病院で預かるトリーヴズ医師(アンソニー・ホプキンス)や彼を取り巻く人々の交流を、実話をもとにモノクロ映像で描いた作品。日本では1981年に公開され、同年の公開作品の中で1位の配給収入(当時)を記録し、第53回アカデミー賞にて作品賞を含む8部門にノミネート。いまなお、私たちの心に突き刺さるデヴィッド・リンチ流の詩的な問題作。―――新宿ピカデリーほか7月10日(金)より公開。海の上で生まれ、生涯一度も船を下りなかったピアニストの伝説『海の上のピアニスト』『ニュー・シネマ・パラダイス』のトルナトーレ監督とモリコーネがタッグを組んだ不朽の感動作。煌びやかな豪華客船の内部や、青く透き通るような海など、これまで表現しきれなかった細部まで4Kデジタル修復版で色彩豊かに蘇る。また、トルナトーレ監督が本当にやりたかった全てを描き切った170分にも及ぶイタリア完全版(HDリマスター)も待望の日本初公開。インターナショナル版としてカットされた40分以上のシーンが復活、タイトルやクレジットロールもイタリア語で演出されるなど、本作のファンが長く待ち望んでいた内容が盛り込まれている。―――8月21日(金)~4Kデジタル修復版はYEBISU GARDEN CINEMA、角川シネマ有楽町ほか、9月4日(金)~イタリア完全版順次公開。(text:cinemacafe.net)
2020年07月12日『ニュー・シネマ・パラダイス』、『海の上のピアニスト』などで知られる映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネ(91)がローマの病院で亡くなった。「Variety」誌などが伝えた。転倒が原因で股関節を骨折し、入院していたという。モリコーネは1960年代から50年以上に渡り、500作品以上の映画・テレビの音楽を手掛けてきた。キャリア初期にはセルジオ・レオーネ監督と組み、マカロニ・ウエスタン作品で活躍。レオーネ監督とモリコーネは8歳の頃小学校で出会い、その後20年以上を経て再会した。スタンリー・キューブリック監督作『時計じかけのオレンジ』の音楽制作をオファーされたこともあったが、レオーネ監督が「彼は私の作品の音楽制作で忙しい」と主張したことでチャンスを逃したという逸話が残っている。なお、その当時、実際は忙しくなかったため、後に大変後悔したようだ。『天国の日々』、『ミッション』、『アンタッチャブル』、『バグジー』、『マレーナ』でアカデミー賞の作曲賞にノミネート。2007年に開催された第79回アカデミー賞で長年の功績を認められ名誉賞を受賞し、2015年のクエンティン・タランティーノ監督作『ヘイトフル・エイト』でついに作曲賞を獲得した。ほかにもゴールデングローブ賞、グラミー賞など数々の賞を受賞している。タランティーノ監督はモリコーネの大ファンで、『キル・ビル』、『ジャンゴ 繋がれざる者』、『イングロリアス・バスターズ』でも楽曲を使用。モリコーネは『ヘイトフル・エイト』の音楽制作にあたり、「クエンティンは私が(『ヘイトフル・エイト』の)どんな音楽を作っているかを知ることもなく、プラハにやってきた。録音したものを渡したらすごく喜んでいたよ。彼とのコラボは信頼の上に成り立っていた。すごく自由にやらせてくれたんだ」と当時語っていた。(Hiromi Kaku)
2020年07月06日『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督と映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネがタッグを組んだ不朽の感動作『海の上のピアニスト』が、4Kデジタル修復版&イタリア完全版で公開。この度、イタリア完全版より場面写真がいち早くシネマカフェに到着した。大西洋を巡る豪華客船の中で、生後間もない赤ん坊が見つかった。彼の名は1900=ナインティーン・ハンドレッド。世紀の変わり目を告げる1900年に因んで名付けられた。彼は船内のダンスホールでピアノを演奏し、類稀な即興曲を次々と作り出していった。そんなある日、彼は船内で出会った美しい少女に心を奪われてしまう。彼女が船を去った後、断ち切れない彼女への想いから、人生で初めて船を下りることを決心する…。1999年に日本で公開された『海の上のピアニスト』が、約20年の時を経て、4Kデジタル修復版、イタリア完全版として再び劇場公開。4Kデジタル修復版では、トルナトーレ監督本人の監修のもと、『ライフ・イズ・ビューティフル』なども手掛けたカラースーパーバイザーのパスクアーレ・クズポリと共に、イタリア ルーチェ・ チネチッタ・ラボにおいて完全修復。オリジナル35mmネガを4Kスキャンし、これまで表現しきれなかった細部まで色彩豊かに蘇る。一方、イタリア完全版(HDリマスター)は日本初公開。インターナショナル版としてカットされた40分以上のシーンが復活し、タイトルやクレジットロールもイタリア語で演出されるなど、トルナトーレ監督が本当にやりたかった全てを描き切っている。この完全版では、主人公1900の幼少期のパートも長く、伝説のピアニストとして成長していく彼の音楽的なバックボーンが丁重に描かれている。到着した場面写真では、船医に生意気なことを言ってみたり、船長に盾突いたり、幼い1900の可愛い姿などが切り取られている。今回の公開を実現させた配給会社シンカは、本国イタリア版のディレクターズカットの存在を知ってから、イタリア版の権利の行方をずっと追いかけてきたそうで「ようやく20年の時を経て、トルナトーレ監督が描きたかった想いの全てが詰まったディレクターズカットとも言える170分のイタリア完全版を、日本でも配給できることになりました」と今回の上映は念願だったと明かす。また「本作のハイライトとなる有名な“ピアノ対決”のシーンでは、なぜ船を降りたことが無い1900がジャズを生み出したと称する有名ジャズピアニストに勝つことができたのか?インターナショナル版では知り得なかった1900のバックボーンが明らかになるイタリア完全版をご覧いただくと、その勝利の“謎”もわかるかもしれません」と語っている。『海の上のピアニスト』4Kデジタル修復版は8月21日(金)より、イタリア完全版は9月4日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、角川シネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開。※9月4日(金)以降は両作品を併映する可能性あり。(cinemacafe.net)
2020年06月28日映画『海の上のピアニスト』の4K デジタル修復版が、2020年8月21日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、角川シネマ有楽町、アップリンク吉祥寺にて上映。また9月4日(金)からは、170分に及ぶイタリア完全版が公開される。『ニュー・シネマ・パラダイス』の監督が贈る、“海の上”の感動作『海の上のピアニスト』は、『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督と映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネがタッグを組んだ不朽の感動作。豪華客船の上で生まれ、生涯一度も船を下りることなく“ピアニスト”としての運命を貫いた男の物語は、1999年日本公開された当時、多くの映画ファンを魅了した。4K デジタル修復版で、あの感動をもう一度あれから20年―。今回4K デジタル修復版として再上映されることになった『海の上のピアニスト』は、トルナトーレ監督本人の監修のもと、映画『ライフ・イズ・ビューティ フル』を手掛けたカラースーパーバイザーのパスクアーレ・クズポリと共に、完全修復作業が行われた。スクリーンに蘇るのは、当時の技術では表現しきれなかった、豪華客船の煌びやかな内部や、青く透き通るような海…。映画の醍醐味である美しいピアノの旋律に、うっとりとするような映像美が重なることで、これまでとは一味違う感動の映像体験を楽しむことができそうだ。“全て”詰め込んだイタリア完全版も一方「イタリア完全版」(HD リマスター)では、インターナショナル版としてカットされた40分以上のシーンが復活するほか、タイトルやクレジットロールもイタリア語で演出されるなど、ファン待望の内容が盛り沢山。映画ファンの人は是非双方の仕上がりを、シアターで楽しんでみてはいかがだろう。作品詳細映画『海の上のピアニスト』公開日:<4K デジタル修復版>2020年8月21日(金)YEBISU GARDEN CINEMA、角川シネマ有楽町、アップリンク吉祥寺<イタリア完全版>9月4日(金)※9/4以降は「4K デジタル修復版」と「イタリア完全版」との両作品を併映する可能性有り。詳細は各劇場のHPを確認。監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ音楽:エンニオ・モリコーネ原作:アレッサンドロ・バリッコ出演:ティム・ロス/プルイット・テイラー・ヴィンス/メラニー・ティエリー/ビル・ナン/ピーター・ ヴォーン/クラレンス・ウィリアムズ三世配給:シンカ■ムビチケ情報発売日:2020年7月3日(金)<ストーリー>一枚のレコードに秘められた、たった一度の恋。大西洋を巡る豪華客船の中で、生後間もない赤ん坊が見つかった。彼の名は1900=ナインティーン・ハンドレッド。世紀の変わり目を告げる1900年に因んで名付けられた。彼は船内のダンスホールでピアノを演奏し、類稀な即興曲を次々と作り出していった。そんなある日、彼は船内で出会った美しい少女に心を奪われてしまう。彼女が船を去った後、断ち切れない彼女への想いから人生で初めて船を下りることを決心する…。
2020年06月21日ピアニストの河村尚子が栄えある「第51回サントリー音楽賞(2019年度)」を受賞した。サントリー音楽賞は、日本における洋楽の発展にもっとも顕著な業績をあげた個人または団体に贈られるもので、1969年の第1回以来、今回が51回目となる。過去の受賞者には、第1回の小林道夫(チェンバロ)を筆頭に、内田光子(ピアノ)や武満徹(作曲)など、日本の音楽界を代表する顔ぶれがずらりと並ぶ。今回の受賞理由として、2019年の「ベートーヴェン・ピアノソナタ・プロジェクト」の完結及び、CD「ベートーヴェン・ ソナタ集1、2」のリリース。そして新しいレパートリー開拓ともなった山田和樹指揮NHK交響楽団との共演 による矢代秋雄「ピアノ協奏曲」においての演奏で作品の再評価に貢献したことなどをはじめ、近年の目覚ましく充実した演奏活動が評価されての受賞となった。今後の日本での活動は、10月にオーケストラとの共演や各地でのリサイタルを予定。東京では10月13日(火)に紀尾井ホールで1年ぶりのリサイタルを行うことが発表されている。プログラムには、モーツァルト、シューベルト&ショパンに加え、映画『蜜蜂と遠雷』で話題となった藤倉大作曲による『春と修羅』も予定される。●河村尚子(ピアノ)(c)Marco Borggreve兵庫県西宮市生まれ。1986年渡独後、ハノーファー国立音楽芸術大学在学中にヴィオッティ(ヴェルチェリ)、カサグランデ、ゲーザ・アンダなどヨーロッパの数々のコンクールで優勝・入賞を重ねる。2006年には権威ある難関ミュンヘン国際コンクール第2位受賞。翌年、多くの名ピアニストを輩出しているクララ・ハスキル国際コンクールにて優勝を飾り、大器を感じさせる新鋭として世界の注目を浴びる。ドイツを拠点に、ヨーロッパ、ロシア、日本などで積極的にリサイタルを行う傍ら、ウィーン交響楽団、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団、ロシア国立交響楽団、モスクワ・ヴィルトゥオーゾ、バーミンガム市交響楽団、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団などのソリストに迎えられている。また、「ルール・ピアノ祭」(ドイツ)、「オーヴェール・シュル・オアーズ音楽祭」(フランス)、「ドシュニキ国際ショパン・フェスティヴァル」(ポーランド)、日本では「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」や「東京・春・音楽祭」などの音楽祭に参加。2011年には、ドイツ・ワイマール近郊にあるエッタースブルク城での音楽祭でアーティスト・イン・レジデンスをつとめ、4夜にわたるソロ・リサイタルを開催し、絶賛を博す。室内楽では、ハーゲン・クァルテットの名チェリスト、クレメンス・ハーゲンとのデュオで好評を得ているほか、マキシミリアン・ホルヌング(チェロ)とロンドン・ウィグモアホール、ラモン・オルテガ・ケロ(オーボエ)とニューヨーク・カーネギーホールにデビューするなど、同世代の実力派アーティストとも積極的な活動を展開している。日本では、2004年小林研一郎指揮東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会でデビュー。以来、パーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団を含む日本国内の主要オーケストラと相次いで共演を重ねる一方、ウラディーミル・フェドセーエフ指揮モスクワ放送交響楽団、ファビオ・ルイージ指揮ウィーン交響楽団、ミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団、マレク・ヤノフスキ指揮べルリン放送交響楽団、イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、山田和樹指揮バーミンガム市交響楽団などの日本ツアーに参加。その他、サー・ロジャー・ノリントン、ユーリ・テミルカーノフ、アレクサンドル・ラザレフなど多くの指揮者から度々再演の指名を受けている。現在、2019年の日本デビュー15周年に向けて、2年にわたり「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト」に取り組み、自ら厳選した14のソナタを全4回のリサイタルで披露している。2009年、名門RCA Red Sealレーベルより「夜想 (ノットゥルノ)~ショパンの世界」てメジャー・CDデビュー。 2011年9月、セカンド・アルバム「ショパン:ピアノ・ソナタ第3番&シューマン:フモレスケ」をリリース、各誌で特選盤に選定される。2013年秋、サード・アルバム「ショパン:バラード」のリリースを経て、2014年秋には、プラハ・ルドルフィヌムでのチェコ・フィルとの定期演奏会、およびドイツ・エルマウ城でのクレメンス・ハーゲンとの演奏会をライヴ収録した「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番&チェロ・ソナタ」をリリースした。2018年には4年ぶりのソロ・アルバム「ショパン:24の前奏曲&幻想ポロネーズ」をリリースし、2019年4月、「月光」「悲愴」を含む待望のベートーヴェンCDをリリースする。その他のレコーディングとして、ソロでは仏ディスコヴェール(2002年/同レコーディン具はXRCD化され、日本伝統文化振興財団より2012年6月に再発売された)、独アウディーテ(2004年)、ルール・ピアノ音楽祭エディション(2008年/ライヴ録音)が、また日本コロムビアからシューマンのピアノ五重奏曲(2010年/トッパンホール)、京響レーべルからラフマニノフのパガニーニ狂詩曲(2009年/広上淳一指揮京響との共演)、独コヴィエロ・クラシックからモーツァルトのピアノ協奏曲第21番(2014年/ボストック指揮アルゴヴィア・フィルとの共演)がリリースされている。また、国際ピアノ・コンクールにおける若者たちの群像劇をリアルに描いた、作家・恩田陸の直木賞受賞小説を原作とした映画『蜜蜂と遠雷』(2019年10月公開)では主人公・栄伝亜夜のピアノ演奏を担当し話題をさらっている。文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞、新日鉄音楽賞 、出光音楽賞、日本ショパン協会賞、井植文化賞、ホテル・オークラ賞を受賞。これまで、ウラディーミル・クライネフ、澤野京子、マウゴルジャータ・バートル・シュライバーの各氏に師事。現在、 ドイツ・エッセンのフォルクヴァング芸術大学教授、東京音楽大学特任講師。
2020年04月04日「天才」と呼ばれるピアニストは数多くいるが、今第一線で活躍している日本人で真っ先に名前が挙がるひとりがこの人ではないだろうか。――上原彩子による「2020年デビュー20周年に向けて」と題するコンサートの第1弾が、2月と3月に大阪と東京で開かれる。プログラムは、上原が敬愛するふたりの天才作曲家モーツァルトとチャイコフスキーの作品を集めたもの。【チケット情報はこちら】「ふたりとも出発点にオペラ、歌というものがあります。モーツァルトの時代にはイタリア・オペラが主流でしたし、チャイコフスキーもロシアに入ってきたイタリア・オペラに影響を受けて、そこから独自の音楽を創り上げた人。今回のプログラムは、そんな同じところから出発したふたりの音楽の、それでもやはり際立つ違いを聴いていただけるような曲目を選びました」チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門で女性として、そして日本人として初めての第1位を獲得してから今年で18年。当初の「彗星のように登場した天才ピアニスト」のイメージはそのままに、近年はより豊かな表現を獲得してきているようにみえる。そのひとつが、今回取り上げるモーツァルトだ。「それまでロシアものを中心に演奏してきたので、初めてモーツァルトを勉強し始めた時には、そのシンプルさに戸惑いました。古楽器の先生に指導を受けてから、俄然面白くなってきたんです。古楽器は音色の変化がつけやすく、より細かい表現が可能です。ただそれをそのままモダン楽器でやっても上手くいかない。古楽器で学んだことをどうモダン楽器の演奏に活かせるのか。今回はその課題に取り組んだ成果を少しでもお聴かせできればと思っています」一方、チャイコフスキーは子どもの頃から親しんできた作曲家。「若い頃は交響曲『悲愴』に代表されるような暗さに惹かれていた」という上原だが、徐々に暗さだけでなく、明るさや切なさといった要素を見出すようになったという。「意外に思われるかもしれませんが、チャイコフスキーの魅力はシンプルで純粋なところだと思っています。特に小品にその魅力が溢れていますが、そんなチャイコフスキーを演奏する際にもっとも気をつけているのは、音色のコントロールです。これは(十代の頃から師事していた)ヴェラ・ゴルノスタエヴァ先生から教えられたことなのですが、ただ大きい音、迫力のある音を出すのではなく、音色の変化やバランスでスケール感を出す。それがロシア・ピアニスズムの真髄なんです」18年の間には、結婚・出産も経験した上原。子育て中はピアノどころではなかったそうだが、心の中にピアノ以外の場所ができたことで、逆に音楽にはふくよかな肉付きがついた。「天才」は次のステージに上がろうとしているのかもしれない。今回のコンサートでは、そんな上原彩子の「今」を存分に味わうことができるにちがいない。公演は2月1日(土)に大阪・いずみホール、3月25日(水)に東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアルにて開催。取材・文:室田尚子
2020年01月28日内戦続くシリアの真実を世界に伝えるため、そして戦火で生まれた小さな命のために、母となった監督がカメラを回し続けた緊迫のドキュメンタリー『娘は戦場で生まれた』の予告編とメインビジュアルが完成、公開日が2020年2月29日(土)に決定した。死亡者が数十万人にものぼるとされ、第二次大戦後、史上最悪の人道危機ともいわれるシリア内戦。本作は、デモ運動への参加をきっかけにスマホでの撮影を始めたワアド・アルカティーブ監督が、結婚、妊娠、出産をへてなお、激化の一途を辿る内戦の模様をカメラに収め続けたドキュメンタリー。「ママは撮り続けた」と娘サマに呼びかける彼女のカメラの映像を通して、2012年から2016年までの間の時間軸を絶えず往還しながら、アサド政権によって美しい景観を誇っていたアレッポの街が無残にも破壊され、朽ち果てた廃墟に変わり果ててしまった過酷な現実を、仮借ないまなざしで、人々に寄り添いながら描き出す。全ては娘のために…。すでに2019年・第72回カンヌ国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞ほか55(12月19日現在)を超える映画賞を受賞。マイケル・ムーア監督が「史上もっともパワフルで重要なドキュメンタリーの一つ」と絶賛を贈り、世界の映画人を衝撃と感動の渦に巻き込んでいる本作。本年度アカデミー賞ドキュメンタリー賞の呼び声も高い衝撃を、まずはここから見つめてみてほしい。『娘は戦場で生まれた』は2020年2月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2019年12月24日ドキュメンタリー映画『娘は戦場で生まれた』が、2020年2月29日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開される。シリア内戦を追う、緊迫のドキュメンタリーいまだ解決を見ない、未曾有の戦地シリア。常に死と隣り合わせのなかで、1人の母はカメラを回し続ける。自らの愛する人びとの生きた証拠を残すため、すべては娘のため──『娘は戦場で生まれた』は、ワアド・アル カティーブ、エドワード・ワッツ両監督による、シリア内戦をテーマにしたドキュメンタリー映画。2019年カンヌ国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞に加え、55を超える映画賞を受賞したほか、第92回アカデミー賞においては、⻑編ドキュメンタリー部⾨にノミネートされている。(受賞発表日は、日本時間の2月10日(月)。娘のために回し続けるカメラ今なお内戦の続くシリア。ジャーナリストを夢見る学生ワアドは、デモ運動への参加をきっかけにスマホでの撮影を始める。しかし平和への願いも虚しく、内戦は激しさを増すばかり。うららかな都市は、独裁政権に破壊されていく。ある時、ワアドは医師を目指す若者ハムザと出会う。廃墟のただなか、仲間とともに病院を作った彼は、延々と続く空爆の犠牲者の治療にあたっていたが、多くは甲斐なくこの世を去っていく。血も涙もない生活のうちにあっても2人は夫婦となり、娘を授かる。その名前はサマ、“空”を意味する言葉だ。しかし、その幸せすらたちどころに過ぎ去る。シリア政府側の攻撃は度を強め、とうとうハムザの病院は街で最後の医療機関となる。死と隣り合わせのワアドは、娘ソマに希望を託し、家族や愛する人びとの生きた証を映像に残すことを決意する......。詳細『娘は戦場で生まれた』公開日:2020年2月29日(土) シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開原題:FOR SAMA監督:ワアド・アル カティーブ、エドワード・ワッツ出演:ワアド・アル カティーブ、サマ・アル・カデブ、ハムザ・アル・カデブ配給:トランスフォーマー2019年 / イギリス・シリア映画 / アラビア語 / 100分
2019年12月09日海の上で生きたピアニスト──。映画にもなったイタリア文学『海の上のピアニスト』を、ピアノ・朗読・芝居による音楽ドラマにした舞台が熱望の声を受け再演する。天才ピアニスト・ノヴェチェントを演じる北翔海莉は「またあのピアノが聴ける。あの空間に行けると思うと嬉しい」と喜びを語った。【チケット情報はこちら】初演は3日間のみの公演だった。「前回は稽古と本番を合わせても短期間で、不思議なピアノの空間のなかで夢を見ているうちに終わっちゃった感覚でした。でも今回はしっかり稽古できるし、演出やキャストにも変化があり、また違った舞台になります」親友のトランぺッター役がいくつかの登場人物を演じ、ノヴェチェントの物語を語るという構成になる。北翔にとってはほぼ一人芝居だ。そのぶん、ノヴェチェント自身である北翔と、彼の音楽を奏でるピアノ・大井健の関係が濃くなり、表裏一体のような存在として際立つ。「大井さんと私はニコイチ。ふたりでひとりの人間を演じます」また、会場によって出演者や美術セットが異なる。トランぺッター役は、博多・京都公演では中村匡宏が、東京公演では喜多村緑郎が担う。「人が変わると同じ台本とは思えない。中村さんは大井さんと『鍵盤男子』というデュオを組んでいて、積み重ねてきた信頼関係があり、ピタッと合うんです。ひとりとふたりではアレンジも変わるので、ノヴェチェントの台詞にあるように“奏でられる音楽って無限なんだな”と実感します。喜多村さんは初演でもご一緒していて、なにより安心できる役者さん。信頼して懐に飛び込んでいます」。中村、喜多村、それぞれ台詞の端々まで違うというのも、キャストが変わる面白味だ。朗読と大井とのピアノの連打が見どころの音楽バージョン、喜多村の芝居部分がブラッシュアップされる芝居バージョンの違いが興味深い。当初、男性のノヴェチェントを演じることに疑問もあった北翔。「彼は陸に降りたことがない。男でも女でもないピュアな心の持ち主なので、性別が偏らないように演じることに意味があるんだと腑に落ちました」。音楽に乗せて、天才ピアニストの一生が語られていく。「ジャズ、子守唄……曲のジャンルが全部違っていて、歩んできた人生をちゃんと表現できる音楽なんです。作曲家の中村さんが天才!(笑)どの曲も好きなのですが、ノヴェチェントが8歳の時と大人になった時で、同じ曲を歌うんです。歳を重ねても、純粋でウブで無垢な目の奥の輝きが同じままで歌うことを大切にしたいです」公演は11月13日(水)・14日(木)・15日(金)東京・東京芸術センター天空劇場にて。取材・文:河野桃子
2019年11月08日『戦場のピアニスト』などで知られる巨匠ロマン・ポランスキーの、『ローズマリーの赤ちゃん』と並ぶ初期の代表作『吸血鬼』。1967年に公開されたこのホラー喜劇映画をもとにポランスキー自らが演出を手がけ、1997年にウィーンで舞台化されたのが、ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』だ。その日本版が初めて上演されたのは2006年のこと。初演時から吸血鬼・クロロック伯爵を演じて当り役となっている山口祐一郎が今回も続投し、11月5日、東京・帝国劇場で4年ぶり5度目となる日本版の幕が開いた。舞台はルーマニア中部の、山脈に囲まれたトランシルヴァニア。ヴァンパイア研究に没頭しているアブロンシウス教授(石川禅)と助手のアルフレート(相葉裕樹、東啓介のWキャスト)は、雪深い山に迷いこむ。たどり着いた宿屋で「ガーリック、ガーリック」と歌う村人たちの様子に、ヴァンパイアの存在を確信する教授。一方のアルフレートは、お風呂が大好きな宿屋の娘サラ(神田沙也加、桜井玲香のWキャスト)に恋をしてしまう。だが彼女は、お城に住むクロロック伯爵(山口)の舞踏会に憧れ、深夜に現れた伯爵と共に姿を消してしまい……。脚本・歌詞は『エリザベート』『モーツァルト!』で日本でもファンの多いミヒャエル・クンツェ、音楽は映画『ストリート・オブ・ファイヤー』のテーマ曲を手がけたジム・スタインマン、演出は山田和也が担当。ウィーン発のミュージカルらしい美しくドラマチックなメロディが印象的だが、本作はその旋律と共に繰り広げられる、あまりに人間くさい人間模様が大きな魅力。“理性”を第一義として、ありえない状況でも調査と研究に没頭するアブロンシウス教授、そんな教授の弟子を任じながらも、サラに夢中になってしまう若きアルフレート。そして、しがない村娘ながら非現実的な恋に憧れるサラ。ストーリーは当然、人間対ヴァンパイアの対立を軸に進むのだが、欲望に翻弄される人間たちを笑っているうちに、ふと自分の姿を見ているような気持ちになるのは本作ならでは。つい、人間たちの狂乱を見透かしているかのように端然とたたずむクロロック伯爵に、すべてを委ねたくなったりして……!?その先は、ぜひ劇場で。11月27日(水)まで帝国劇場、12月15日(日)から21(土)まで愛知・御園座、1月1日(水)から7日(火)まで福岡・博多座、1月13日(月・祝)から20日(月)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演。文:佐藤さくら
2019年11月06日12月に来日公演を予定しているピアニスト、ヴィキングル・オラフソンが、クラシック音楽界のオスカーとも呼ばれる英グラモフォン・アワードの「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。同賞は、世界中の音楽ファンによる一般投票によって選出され、毎年大きな注目を集めている。歴代の受賞者には、ピエール・ブーレーズ、マルタ・アルゲリッチ、リッカルド・シャイー、グスターボ・ドゥダメル、パーヴォ・ヤルヴィなどの錚々たるアーティストが名を連ねる。12月の来日公演がますます楽しみになるビッグニュースだ。●公演概要12月4日(水)紀尾井ホール12月6日(金)電気文化会館 ザ・コンサートホール12月7日(土)あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール詳細は、 ●ヴィキングル・オラフソン(ピアニスト)(C)Ari Magg1984年アイスランド生まれ。2008年にジュリアード音楽院でロバート・マクドナルドのクラスを卒業。ジュリアード・オーケストラ、アイスランド交響楽団などと共演。オックスフォード大学とレイキャヴィーク大学で音楽のマスタークラスの指導者として迎えられるだけでなく、クラシック音楽に新しい扉を開くことを目的とした学生のためのアウトリーチ・リサイタルも開いている。5つのピアノ協奏曲を初演。彼はまた、音楽を広めるためにメディアに出演し、アイスランド放送のための約10本のテレビシリーズ「音楽エピソード」の制作も行った。2012年にはレイキャヴィク・ミッドサマー音楽祭を創設して芸術監督を務める。また、2015年からはスウェーデンのヴィンターフェスト音楽祭の芸術監督に就任した。アイスランド音楽賞、アメリカン・スカンジナビア社会文化賞、ジュリアード・バルトーク・コンクール賞、ロータリー財団文化賞など、多くの賞を受賞。庄司紗矢香やビョークらとも共演し、アイスランドに新風を吹き込む若き音楽家。彼は伝統的なコンサート・ピアニストであると同時に、ビョークやオーラヴル・アルナルズ等コンテンポラリー・コンポーザーたちともコラボレーションを行い新たな世界を切り拓いている。CD『バッハ・ワークス&リワークス』UCCG-1865/6発売日:12月4日定価:¥3,500(税抜価格)+税
2019年10月28日