2020年8月31日 11:00
生活音でパニックに…“感覚過敏”乗り越えた19歳ピアニスト
猛暑日となった8月8日の午後4時。東京・築地の浜離宮朝日ホールのピアノ庫に、ピアニストの紀平凱成(かいる)くん(19)と両親の姿があった。9月4日に行われる紀平凱成ピアノリサイタル「Miracle」まで、1カ月を切った。それに先立ち、今日は“ピアノ選定”が行われる。
「ピアノは1台1台、音色や鍵盤のタッチが違うものです。本番で弾く曲目なども考慮しながら、4台のグランドピアノの中から、当日使用するピアノを選びます」
父親の延久さん(55)が解説してくれる。当のカイルくんは、母親の由起子さん(49)が見守るなか、180cmの長身を少しかがめるようにしてツカツカと1台のピアノの前へ進んだ。やや緊張しているようにも見えたが、鍵盤と向き合った瞬間、とびきりの笑顔に。
やがて聞こえてきたのは、なんとも若々しい力強い旋律だった。彼の代名詞ともいえるロシアの作曲家カプースチンや、オリジナル曲などが、ピアノを替えては次々と演奏される。40分ほどが過ぎたとき、カイルくんは1台のスタインウェイ製ピアノの前へ。続いて、元気な声がピアノ庫中に響きわたった。
「こっちが弾きやすい。2号機にしました。ありがとうございました!」