『僕の巡査』で主演を務めたハリー・スタイルズが、共演者のエマ・コリン、デヴィッド・ドーソン、ルパート・エヴェレットらと共に、トロント国際映画祭のトリビュート・アワード(功労賞)の一つ、演技賞を受賞した。2019年に創設された同賞はこれまで男女一人ずつに授与されてきたが、今年は初めて個人ではなくアンサンブルキャストに授与された。『ダンケルク』で俳優デビューし、『エターナルズ』『ドント・ウォーリー・ダーリン』で着実にキャリアアップしてきたハリーにとって、初の演技賞受賞となった。ハリーは「このような素晴らしい賞をいただき、みんなを代表して、ここにいるすべての方に本当にありがとうございますと言いたいです。ぼくたちはこの映画をすごく楽しみながら作りました。みなさんにも楽しんでいただけることを願っています」とスピーチ。『僕の巡査』は2012年に発売されたベサン・ロバーツの小説「マイ・ポリスマン」を基にした映画で、同性愛がタブーとされていた1950年代のイギリス・ブライトンを舞台に、ハリーは同性愛者の警察官トムを演じている。トムは教師のマリオン(エマ)と結婚するが、本当に愛しているのは博物館キュレーターのパトリックで、2人は密かに交際しており――。『僕の巡査』は11月4日からPrime Videoで独占配信開始。(賀来比呂美)
2022年09月13日第79回ヴェネチア国際映画祭が閉幕、現地時間9月10日夜(日本時間9月11日未明)にコンペティション部門の授賞式が行われ、最高賞の金獅子賞は米ローラ・ポイトラス監督の薬害抗議活動を行うカメラマンを追ったドキュメンタリー『All the Beauty and the Bloodshed』(原題)が受賞。金獅子賞は、2020年・第77回の『ノマドランド』クロエ・ジャオ監督、2021年・第78回の『あのこと』(12月2日公開)オードレイ・ディヴァン監督に続いて、3年連続で女性監督作品となった。トッド・フィールド監督『TÁR/タール』(原題)のケイト・ブランシェットが女優賞に輝き、マーティン・マクドナー監督『イニシェリン島の精霊』ではコリン・ファレルが同男優賞と脚本賞に。ティモシー・シャラメとテイラー・ラッセルが共演したルカ・グァダニーノ監督『Bones and All』(原題)が銀獅子賞(監督賞)に選ばれた。女性指揮者を演じたケイト・ブランシェットが2度目の快挙2度のアカデミー賞受賞経験を持つケイト・ブランシェット主演、『イン・ザ・ベッドルーム』『リトル・チルドレン』でアカデミー賞脚色賞に連続ノミネートされたトッド・フィールドの16年ぶり待望の新作となった新作『TÁR』。コンペティション部門で上映された本作は、上映後6分間のスタンディングオベーションを受け、現地で早くも「アカデミー賞有力!」と絶賛されていた。ケイトの同受賞はボブ・ディランに扮した『アイム・ノット・ゼア』(第64回)以来2度目の快挙となった。なお、本作の日本公開は2023年を予定しているという。音楽を『ジョーカー』(アカデミー賞作曲賞受賞)ヒドゥル・グドナドッティルが担当しており、今後の映画賞レースでも大きな注目を集めることになりそうだ。■STORYドイツの有名オーケストラで、女性としてはじめて首席指揮者に任命された指揮者リディア・ター(ケイト・ブランシェット)は、天才的能力と、たぐいまれなるプロデュース力で、自身を1つのブランドとして作り上げてきた。しかし、のしかかる重圧、過剰な自尊心、仕掛けられた陰謀により、彼女の心の闇は少しづつ広がっていくーー。コリン・ファレル、初の男優賞『イニシェリン島の精霊』2017年度の映画賞を席巻した『スリー・ビルボード』の最新作『イニシェリン島の精霊』は、父母の故郷を舞台に書かれたマクドナー監督の脚本による物語。主人公パードリックを演じるのは、ヨルゴス・ランティモス、スティーブン・スピルバーグ、テレンス・マリック、オリバー・ストーン、ティム・バートン、マット・リーヴスなど、数多くの天才監督たちにその個性を愛され続け、ハリウッドで独自の地位を築き上げるとともに、『ファンタスティック・ビースト』シリーズでもファン層を広げたコリン・ファレル。マクドナー監督とは『ヒットマンズ・レクイエム』『セブン・サイコパス』に続く3度目のタッグで、親友からの突然の絶縁に悩む主人公の悲喜劇を大胆かつ繊細に演じ、同男優賞を初受賞。マクドナー監督も脚本賞に選ばれた。なお、日本公開は2023年1月27日(金)に決定。10月24日(月)より開幕の第35回東京国際映画祭ガラ・セレクション部門にてジャパンプレミアとなる。第79回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門受賞結果金獅子賞(最高賞)ローラ・ポイトラス監督『All the Beauty and the Bloodshed』銀獅子賞(監督賞)ルカ・グァダニーノ監督『Bones and All』銀獅子賞(審査員大賞)アリス・ディオップ監督『Saint Omer』(原題)審査員特別賞ジャファル・パナヒ監督『No Bears』(英題)女優賞ケイト・ブランシェット『TÁR』男優賞コリン・ファレル『イニシェリン島の精霊』脚本賞マーティン・マクドナー『イニシェリン島の精霊』マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)テイラー・ラッセル『Bones and All』テイラー・ラッセル、ティモシー・シャラメと日本からコンペティション部門に出品されていた深田晃司監督『LOVE LIFE』、オリゾンティ・コンペティション部門に出品されていた石川慶監督『ある男』は惜しくも受賞を逃したが、名作の修復版を上映するクラシック部門にて鈴木清順監督『殺しの烙印』が最優秀修復作品賞を受賞している。(text:cinemacafe.net)■関連作品:イニシェリン島の精霊 2023年1月、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開©2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
2022年09月11日ポン・ジュノ監督が審査員長を務めた2021年・第78回ヴェネチア国際映画祭にて、審査員の満場一致で最高賞である金獅子賞を受賞したフランス映画『Happening』(英題)が邦題『あのこと』として12月2日(金)より公開決定。ポスターと予告編が解禁された。ヴェネチア金獅子賞を皮切りに、世界の映画賞を席巻した本年度最大の話題作の1つ。舞台は1960年代、法律で中絶が禁止され、処罰されていたフランス。望まぬ妊娠をした大学生のアンヌ(アナマリア・ヴァルトロメイ)が、自らが願う未来をつかむために、たった1人で戦う12週間が描かれる。全編アンヌの目線で描かれる本作は、アンヌと身も心も一体化、観る者が「恐怖と怒りと情熱」を体感するという没入感、臨場感が見どころ。監督を務めるのは、本作をきっかけに世界中から注目を集める女性監督オードレイ・ディヴァン。主演は子役時代に『ヴィオレッタ』で美しすぎる娘役を怪演し、本作でセザール賞を受賞したアナマリア・ヴァルトロメイ。原作は、ノーベル賞に最も近い作家とリスペクトされるアニー・エルノーが自身の実話を基に書き上げた「事件」。オドレイ・ディワン/第78回ヴェネチア国際映画祭 Photo by Marc Piasecki/Getty Images今回解禁された予告編は、前途有望なアンヌの妊娠が発覚し、うろたえるシーンから始まる。「違法行為になる」と医者から突き放される様子や、「妊娠したら、大学を辞め働くしかない」「刑務所に入りたいの?」と話す友人の会話が、1960年代当時のアンヌを取り巻く社会を物語る。しかし、アンヌの選択は1つ。未来のために命がけであらゆる方法を模索しながらも、タイムリミットは迫り、彼女が焦燥し、どんどん孤立し追い詰められていく様が映し出される。全編、彼女にぴったりと寄り添う映像からも、映画と観客の垣根がなくなるようなヒリヒリとした臨場感と、尋常ならざる没入感で「体験型」と言われる所以が垣間見える。ポスターは、主人公アンヌがこちらを見据える強いまなざしが印象的なビジュアル。その視線には、戸惑いと焦燥におびえながらも覚悟をつけた女性の鋭い光が宿り、訴えるようにも、拒絶するようにも見える瞳と、結ばれた口元がこの映画の力強さを伺わせている。『あのこと』は12月2日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:あのこと 2022年12月2日よりBunkamuraル・シネマほか全国にて公開© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINÉMA - WILD BUNCH - SRAB FILM
2022年09月09日NGP日本自動車リサイクル事業協同組合(本部:東京都港区、理事長:小林 信夫、以下 NGP)は、一般社団法人 サステナブル経営推進機構が主催する「第5回エコプロアワード」において、「自動車リユース部品でカーボンニュートラルに貢献~CO2削減効果の定量化と研究成果を活用した普及・啓発」のテーマで「経済産業大臣賞」受賞しました。12月8日(木)に、「エコプロ2022」の会場内(東京ビッグサイト)にて、表彰式が行われます。同様の内容では、2021年11月の「第22回グリーン購入大賞」における「大賞・経済産業大臣賞」受賞、「令和3年度気候変動アクション環境大臣表彰」受賞、同年2月の「第17回LCA日本フォーラム表彰」における「経済産業省 産業技術環境局長賞」受賞、同年3月の「第24回中小企業組織活動懸賞レポート」における「本賞」受賞に続き、5度目の受賞となり、大臣表彰の受賞は3度目となります。第5回エコプロアワードロゴ【受賞活動】「自動車リユース部品でカーボンニュートラルに貢献~CO2削減効果の定量化と研究成果を活用した普及・啓発」【選評】今回の受賞にあたり、以下のとおり選評をいただきました。・リユース部品の付加価値向上が図られ、産官学連携、教育効果も高く素晴らしいものであり、自動車部品の網羅的なLCAを実施し、リユース部品の環境貢献度合いを数値化し、伝える取り組みをしている点が環境面・経済面共に優れている。また、新品部品の50%の販売価格を実現することで、利用者側もリユース部品を選択しやすくなり、経済性及び社会全体への普及という観点でも優れている。・産学共同研究によるCO2の定量化を長年実施し、結果の公表や普及啓発を継続して実施していることで、安全や性能面を重視する自動車製品でリユース修理が普及していると思われる。これはユーザビリティの工夫を重ねている結果で、地道なサーキュラーへの取り組みが評価できる。<エコプロアワードホームページ>URL: 「エコプロアワード」は、優れた環境配慮が組み込まれた製品、サービス、ビジネスモデル等を表彰することによって、これらのさらなる開発・普及の促進を図り、持続可能な社会づくりに寄与することを目的とした表彰制度です。【受賞活動の概要(産学共同研究について)】NGPでは、「自動車リユース部品」が環境にやさしいことの根拠を定量的に示すことで、リユース部品の付加価値を高めて、利用するユーザーの環境貢献意識を向上させ、地球環境保護に貢献したいという思いから、富山県立大学工学部機械システム工学科 森 孝男名誉教授(富山県射水市)、明治大学理工学部機械情報工学科 井上 全人教授(生田キャンパス:神奈川県川崎市)と2013年5月より「自動車リサイクル部品産学共同研究会」(座長:富山県立大学名誉教授・NGP技術顧問 森 孝男)を立ち上げ、自動車リユース部品を活用した場合のCO2削減効果値算出についての産学共同研究を開始しました。LCA※1の計算ソフトを使用してCO2削減効果の定量化に成功し、2016年4月に記者会見を行ってそれまでの研究成果を公表しました。同時に専用のホームページ「NGPエコプロジェクト」を開設し、ホームページ上にて研究成果を公開しています。<NGPエコプロジェクトホームページ>URL: ただし、研究は一度CO2削減効果を算出して終わりではなく、2022年8月までに92回の勉強会と、19回の工場調査を実施し、現在も継続しています。研究成果は、NGPの2030年のSDGs達成に向けた目標設定や、廃車になった自動車の取扱説明書をアップサイクルした「環境教育ノート」に活用するとともに、環境展(エコプロ)や自動車リサイクル工場見学会を通じて、子どもたちや一般ユーザーに対しても、リユース部品の普及・啓発に取り組んでいます。NGPのリユース部品が使用(販売)されることで削減されたCO2の量については、毎月ホームページ及びNGPニュース(社外報)で公開するとともに、削減されたCO2の量に応じて、「瀬戸内オリーブ基金」(自動車リサイクル法制定の契機となった、不法投棄事件が起こった香川県豊島の環境保全・再生活動を行うNPO法人)に寄付を行い、NGPとしても豊島の環境保全・再生活動に取り組んでいます。【今後について】産学共同研究については、SDGsの目標達成とカーボンニュートラルの実現に寄与すべく、部品の調査対象をさらに増やし、NGPの販売する自動車リユース部品点全てのCO2削減効果が算出できるように継続していくとともに、自動車のライフサイクル全体のLCA評価方法の確立が不可欠であることから、部品だけでなく、製造から廃棄に至るまでのLCAの研究に拡大していきます。2022年12月7日(水)~9日(金)に開催予定の「エコプロ2022」においては、研究成果を活用した展示を行う予定です。今後もリユース部品の利用拡大に取り組んでカーボンニュートラルに大きく貢献するとともに、研究成果を活用した教育支援や豊島の環境保全・再生に取り組み、自動車リサイクルを通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。※1 LCA(ライフサイクルアセスメント)とは、部品を生産する時に発生するCO2だけではなく、部品を作るための資源採掘から、原料生産、部品生産、使用、処理までライフサイクル(生涯)、アセスメント(評価)する手法のことです。※2 NGPシステムとは、NGPが運営する、自動車リユース部品在庫共有システムのことで、NGP組合員162拠点のリユース部品を、登録、検索、閲覧、注文することが可能となっています。【組織概要】組織名 : NGP日本自動車リサイクル事業協同組合本部 : 〒108-0074 東京都港区高輪3-25-33 長田ビル2F創立 : 1985年4月理事長 : 小林 信夫組合員数 : 134組合員、162拠点主な事業内容: 健全な自動車リサイクル事業の構築を目指し、全国組合員企業の経営意識向上、意識改革までの「企業の社会責任」を遂行し、補修部品の消費者へ啓蒙と販売URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年09月07日近年、映画賞の演技部門において、「男優賞」「女優賞」と性別で分けることをやめ、「ジェンダー・ニュートラル」(性的に中立)な形を取る動きが加速している。すでにジェンダー・ニュートラル化を行ったベルリン国際映画祭、今年開催の授賞式から実施するゴッサム賞などに続き、インディペンデント・スピリット賞も演技部門の性別区分けの廃止を表明。主催者のフィルム・インディペンデントが公式ホームページにて発表した。同団体のトップのジョシュ・ウェルシュは、「私たちは、性別に関わらず素晴らしい演技を称えるため、すでに動き出している映画祭や映画賞に加わることに喜びを感じています。また、男性か女性かの選択を強制することなく、ノンバイナリーの俳優たちをスピリット賞に迎えられることもうれしく思います」とコメント。また、インディペンデント・スピリット賞はこれまで製作費が2250万ドルまでの作品を対象としていたが、昨今の物価・製作費高騰により、製作費3000万ドルまでに引き上げられた。「新しい上限を設けたことで、これまでと同じように幅広い作品を称えることができます」としている。インディペンデント・スピリット賞授賞式は2023年3月4日に開催される。(賀来比呂美)
2022年08月24日オスカー、英国アカデミー賞、日本アカデミー賞など、国内外で数えきれないほどの賞を受賞し高い評価を受けている濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が、2022年の国際映画批評家連盟賞グランプリを受賞した。『ドライブ・マイ・カー』は、国際映画批評家連盟(FIPRESCI)の会員による2022年の最優秀作品としてグランプリに輝いた。最終候補には同作のほか、『リコリス・ピザ』(ポール・トーマス・アンダーソン監督)、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(ジェーン・カンピオン監督)、『Triangle of Sadness』(リューベン・オストルンド監督)、『わたしは最悪。』(ヨアキム・トリアー監督)が挙がっていた。同賞は1999年に設立。これまでペドロ・アルモドバル監督(『オール・アバウト・マイ・マザー』)、ジャン=リュック・ゴダール監督(『アワーミュージック』)、ロマン・ポランスキー監督(『ゴーストライター』)、アルフォンソ・キュアロン監督(『ROMA/ローマ』)といった偉大な監督たちが受賞。今年の最終候補に挙がっていたポール・トーマス・アンダーソン監督は、『マグノリア』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『ファントム・スレッド』で3回受賞を果たしている常連である。昨年は、『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督が選ばれた。(賀来比呂美)■関連作品:ドライブ・マイ・カー 2021年8月20日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
2022年08月23日●「何も考えないように」草なぎ流の役作り映画『ミッドナイトスワン』(2020)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝き、NHK大河ドラマ『青天を衝け』(2021)での徳川慶喜役も高く評価され、ギャラクシー賞テレビ部門個人賞を受賞するなど、俳優としてさらなる進化を続けている草なぎ剛。映画『サバカン SABAKAN』(8月19日公開)で主人公の大人時代を演じた草なぎにインタビューし、経験を重ねてたどり着いた「何も考えない」役作りや、今の自分の中に息づいている子供時代の思い出、「最高の遊び」だという仕事への思い、そして今後について話を聞いた。本作は、1980年代の夏の長崎を舞台に、イルカを見るために冒険に出ることになった2人の少年、久田孝明(番家一路)と竹本健次(原田琥之佑)の友情や、それぞれの家族との日々を描いた物語。草なぎが演じたのは、大人になった久田であり、“ひと夏の冒険”を回想する作家。どのようなことを意識して演じたのか尋ねると、「あまり何も考えずに。意識することはなかったです」とサラリ。役との共通点も「なかったです」と話した。そして、「僕は、役を理解して演じることはほぼない。理解してないです」と告白。「本当に何も考えてなくて。こういう風にやらないとって決めて演じるとつまらなくなるので、何も考えないようにしています」と草なぎ流の役作りを明かした。頭で考えて役を理解して演じるのではなく、現場での感覚を何よりも大切に。この演じ方は、昔からそうだったわけではないという。「30歳頃は台本をしっかり読んで、キャラクターについてすごく考えていたけど、台本を何度も読むと疲れちゃって(笑)。それよりも、早く寝て元気出せよ! みたいな気持ちになってきて。最低限セリフを覚えていれば現場は進むし、元気があったほうがいい演技ができるんじゃないかなと思うようになりました」続けて、「しっかり台本を読んでいた時期もあったから今こうなっているのだと思います」と自己分析し、「もしかしたら50代になって、この役はちゃんと台本を読まないといけないって思うかもしれないけど、まあそれもないかな」と笑った。何かきっかけがあって変化したのか尋ねると「舞台が大きいと思います」と答え、「舞台経験を重ねていく中で、演技する上で一番大切なのは睡眠だと。一番の役作りは寝ることだという考えにたどり着きました」と説明した。●子供時代の思い出「今の僕に息づいている」本作への出演が発表されたときに、「僕にも忘れられない子供の頃の思い出があります。あの頃のおかげで踏ん張れる事ってあると思います」とコメントしていた草なぎ。その思い出とはどのようなものなのだろうか。「僕も80年代に幼少期を過ごしているので、久ちゃんと竹ちゃんと同じように、仲間と自転車をこいで、隣の町まで行ってカブトムシを捕まえたり、田んぼや畑で戯れて泥だらけになって毎日遊んでいたんです。あと、四国のおばあちゃんの家に行って海で遊んだり。その頃の思い出が今の僕に息づいていて、その記憶は今でも忘れられません」自身の子供時代とも重なる、『サバカン』で描かれる少年たちの“ひと夏の冒険”。完成した作品を見て癒やされたという。「大人になるといつしか田舎にも帰らなくなって、都会に染まってしまって。やさぐれた自分のささくれ立った心を『サバカン』が癒やしてくれました。この作品を機に子供返りというか、またリボーンしてやっていきたいと思います!」子供時代の思い出は疲れた心をリセットしてくれるものになっているようで、「幼少期に友達と遊んだ感覚や、子供のときに自転車に乗って風を切るだけでめちゃくちゃ気持ちいいという感覚、そういうものが僕にとってとても大切なことなんだなって、改めて感じました」としみじみ。「無条件で楽しいことって大人になると減ってきますが、朝起きたときから毎日夏休みだよっていうような気持ちを『サバカン』のおかげで取り戻しました! 子供心を忘れずに、いつまでも子供のままいきたい」と目を輝かせた。●「80%はふざけていて、20%はちゃんとやる」草なぎといえば、優しい人柄やユーモアも大きな魅力だ。『拾われた男』(NHK BSプレミアム/ディズニープラス)で共演した仲野太賀も「大スターでこんなに優しんだって感動しました」と話していたが、草なぎは人と接する際にどんなことを意識しているのか。「あまり無理しないことじゃないですかね。気をつかわないというか。気をつかうと逆にお互い疲れちゃうのかなと」。年齢を重ねて無理しなくなってきたそうで、「昔は気をつかって空気を読んだり、もうちょっと大人だったかもしれない。今は無理しなくなって、ちょっとわがままかもしれないけど、むしろそのほうが自分も周りも接しやすくなった気がします。気をつかっていたほうが接しにくいとか、不思議ですよね」と笑う。続けて、「でも自分の中でいつも議論してるんですよ。これでよかったのかな、取材であんなにふざけちゃったけど失礼だったかなとか。学ぶことは大事だから、やったらやったままでいいとは思っていなくて、寝る前にちょっと反省したりしています」と真面目な一面も明かし、「自分の中にA剛くんとB剛くんがいて、『こういうのはダメなんじゃないの?』『それがいいんじゃないの?』っていつも話し合っています」と話した。その上で「基本、ずっとふざけている。80%はふざけていて、20%はちゃんとやるという感じかな」とニヤリ。「この仕事は遊びだと思っているから。だからすごく幸せ」と満面の笑顔を見せる。「だって歌うことや演技することって、おままごととか、小さいときに遊んでいたことと変わらないじゃないですか。将軍になったり、現実ではないことを本気で演じる。最高の状態で最高の遊びをしているような感覚です」さらに、「この前も海外まで行かせてもらって」と『拾われた男』の撮影でアメリカに行ったことにも触れつつ、「楽しませてもらっているので頑張ります。頑張るというか楽しみます! 自分がまず楽しむことが大切だと思っているので」と話した。●「どの作品も、どの役も、生きる糧になる」先月9日に誕生日を迎えたばかり。「48歳になりました。 赤ちゃん返りしているんです。バブーバブー」とおちゃらけてから、40代後半になってからの変化について「体力的にも疲れやすくなりました。運動が好きで昔はバク転もできたけど、もうできないだろうし。そこをどう楽しんで抗っていくかという意識が高まってきました。簡単には朽ち果てていかないぞ! みたいな(笑)。最後の最後まで抵抗して元気でいたいという気持ちがあります」と語る。身体の変化も感じつつ、「今、人生で一番楽しいかもしれない。すごく楽しい!」と声を弾ませる。「趣味が増えて、フィルムカメラも始めちゃって。(『拾われた男』で共演した)仲野太賀くんの影響で「マキナ67」というフィルムカメラを買って、そのカメラがもうかわいくて。現像に出したり、失敗したりするのがすごく楽しい。ギターも好きだし、バイクに乗るのも、(愛犬の)クルミちゃんが大好きだったり、より趣味を楽しんでいて、時間が足りません!」そして、「仕事も楽しくて、すごく充実しています」と続ける草なぎ。「この『サバカン』に出会えて幸せですし。未来を感じる作品だと思っていて、若い少年たちが余すことなくいい演技を見せてくれて、金沢知樹監督もメガホンとったのが初めてですが、すごい才能を持っている方だと思っていて、いろんな意味でみんながここから出発できると思っています」と述べ、「『サバカン2』はホタテ缶でも、カレーライスでもいいのかなと。監督カレーライスが好きなので。監督は食べ物の名前でどんどん映画を撮っていったらいいと思います」と提案した。さらに、「すごい可能性と未来を秘めている作品。演技をしたことがない2人をずっと画面に登場させるって大挑戦だと思いますが、それをやっているというのが映画っぽくて大好き。和製の『スタンド・バイ・ミー』ですよ!」と熱く語り、「ギターを始めた頃、『スタンド・バイ・ミー』で練習したなって思い出しました。いつか(共演の)竹原ピストルさんと『スタンド・バイ・ミー』の弾き語りをやりたい!」と話した。そして、「この間はアメリカに行きましたが、いつも僕にスペシャルな思い出を作ってくれて、どの作品も、どの役も、生きる糧になる」としみじみ。これからもオファーを受けた作品と役に全力で向き合っていくつもりだ。「役が自分のところに舞い降りてくること自体が奇跡で、スペシャルなことが起きるというのは必然なんです。でもそれは自分が望んでも起きるわけではないので、そういう役や作品が自分のところに舞い降りてきてくれたときに、100%、120%の力を注ぐことができるように、健康つよぽんで! 毎日をちゃんとしっかりしたいと思います」さらに、少年時代の自分にどんな言葉をかけたいか尋ねると、「『人生最高だから、友達とか大事にしろよ。父ちゃん母ちゃんも大事にしろよ』って言いたい」と回答。また、新しい地図の活動をともにしている香取慎吾と稲垣吾郎について「慎吾ちゃんも吾郎ちゃんも新しい映画を撮っていたみたいで、いい感じに3人とも映画が控えているというのがうれしいですね」とにっこり。「これからもよろしくね! これからもいろんなところを冒険しようね!」と2人にメッセージを送った。なお、香取主演の映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』は9月23日公開、稲垣主演の映画『窓辺にて』は11月公開予定。また、10月には草なぎと香取の二人芝居公演『burst!~危険なふたり~』が控えている。さらに草なぎは、2023年1月期のカンテレ・フジテレビ系ドラマで6年ぶりに連ドラ主演を務めることも発表されており、どのような演技を見せてくれるのか今後の作品も楽しみでならない。■草なぎ剛1974年7月9日生まれ。91年にCDデビュー以来、数々の名曲を世に送り出し、『NHK紅白歌合戦』に23回出場。17年9月に稲垣吾郎、香取慎吾と「新しい地図」を立ち上げた。俳優、歌手、タレント、YouTuberなど幅広く活躍。近年の主な出演作は、映画『台風家族』(2019)、「第44回日本アカデミー賞」最優秀主演男優賞を受賞した『ミッドナイトスワン』(2020)、大河ドラマ『青天を衝け』(2021)など。NHK Eテレ『ワルイコあつまれ』、読売テレビ『草なぎやすともの うさぎとかめ』、NHK『ブラタモリ』(ナレーション)、bayfm『ShinTsuyo POWER SPLASH』、ABEMA『7.2新しい別の窓』にレギュラー出演中。
2022年08月17日●歴史上の人物に憧れ「世界に影響していることを体感したい」数多くの話題作に出演し、その活躍が認められ「エランドール賞新人賞」を受賞、今年も勢いが止まらない俳優・山田裕貴。元プロ野球選手・山田和利氏を父に持ち、プロ野球選手を目指していた山田が、俳優の道を目指したきっかけとは。山田にインタビューし、人生の転機や俳優業への思いを聞いた。俳優になりたいという思いは、プロ野球選手になる夢を諦めていろいろなことを考えている中で芽生えたのだという。「プロ野球選手になるのは無理だと諦めたときに、いろんなことを考えたんです。自分のことを考えていく中で、なんで人間ってこの時こういう風に思うのだろうと、人間の感情や思考に興味が出てきて、俳優さんっていろんな人の人生を生きる仕事だから、いろんな人間の感情や心を学べるかもしれないと思い、俳優を目指すようになりました」高校卒業後、「ワタナベエンターテイメントカレッジ」で演技のレッスンなどを受けつつ、エキストラや裏方の仕事を手伝っていた山田。そして2010年、「D-BOYSスペシャルユニットオーディション」のD-BOYS部門でグランプリを受賞し、ワタナベエンターテインメントに所属、同年D-BOYSの弟分ユニット・D2に加入し、2011年に『海賊戦隊ゴーカイジャー』ジョー・ギブケン/ゴーカイブルー役で俳優デビューした。「ワタナベエンターテイメントカレッジに通って、エキストラやスタッフさんの仕事をしていたら、ちょうどオーディションが開催され応募しました。とにかくお芝居ができる場に行かなければということだけを考えて受け、喜ぶということよりやっとスタートラインに立てたという思いでした」人間の感情や思考を学びたいと思って俳優を目指したと話していたが、実際にさまざまな役を演じることでいろんな感情や思考に触れることができているようで、「こんな感情になるんだって感じます」といろんな気づきがあるという。そして、「このシーンはこうなるだろうなと思っていた想像を超えていく瞬間があって、台本にない言葉が出てきたり、泣こうと思ってないのに涙が出たり。そういう瞬間に出会えるときがあるので面白いです」と俳優業のやりがいを語った。芸能界に入った当初、どんな俳優になりたいと考えていたか尋ねると、「小さい頃から教科書に載っているような人になりたいと思っていて、いいなぁ織田信長とか思っていました」と歴史上の人物への憧れを告白。「ただ楽しく過ごせればいいというのではなく、いろんな人の心を動かしたり、世界に影響していることを体感して生きていたいんです」と述べ、「どれだけ影響を及ぼすことができたかは死ぬときにわかることだと思いますが、ポジティブなエネルギーを与え続けられたらうれしい」と話した。すでに多くの人たちの心を動かし、影響を与えていると思うが、「今、世界配信とかで簡単に世界に出られますが、僕はまだ日本だけなので弱いです」と目指すところはまだまだ遠い。かといって「世界に行きたいというわけでもないんです」と言い、「まずは目の前にいる人たちを、という感覚でいつも生きているので、ただ一生懸命生きていたらそれが大きくなっていたというのが理想です」と語った。●役と心が通った初めての経験「あの現場は一生忘れない」参加したすべての作品が自分にとっては欠かせないものだという山田。その上で、ターニングポイントになった作品について話してくれた。「皆さんがターニングポイントだと思っている作品と、僕の思うターニングポイントになった作品はもしかしたら違う」と前置きした上で、「満足のいく演技ができたという意味で自分にとってターニングポイントになった作品は、『ここは今から倫理です。』や『HiGH&LOW』、『ホームルーム』、『東京リベンジャーズ』、『ストロボ・エッジ』、これから公開される『夜、鳥たちが啼く』など。朝ドラ『なつぞら』も、こういう風に見せられたらいいなというお芝居ができたなと思います」と作品を挙げていく。自分が納得できた作品は「役と心が通いすぎた」という感覚になれたもので、役と心が通うと「思考がいらなくなる」という。「すべて感覚で動いているという感じ。セリフだけ覚えて、あとはその場で動いているみたいな。いつも役とのシンクロ率を上げようとしていますが、僕と役の人間性が近いからシンクロできたのか、それとも近くはないけど寄せることができたのか、そこは冷静に突き詰めるようにしています」役と心が通じ合えたと感じた最初の作品は、廣木隆一監督の映画『ストロボ・エッジ』(2015)だったという。「廣木監督によって強制的に絞り出されたみたいな感覚でした。同じシーンを20回くらいやって、何度も何度も『違う、もう1回』って。廣木監督と出会って、初めて役と通じ合うことができました」引き出してくれた廣木監督にはとても感謝しているそうで、「あの現場は一生忘れないですね」と振り返る。「例えば教室のシーンだったら、僕の演技に対して『そこ椅子座り直す?』『カバンいつ持っていくの?』とか指摘されるんですけど、僕に自由を与えてくれているわけじゃないですか。(作品によっては)このセリフのときに立ってくださいというところまで決まっていることもありますが、廣木監督は全部自由に考えさせてくれて、『違う』って言われながらですけど、『それいいじゃん』と言ってくれることもあって。だから考え続けることって大事だなってすごく思います」また、俳優業のやりがいについて「多くの人に何かを届けることができるのはすごいなと感じます。SNSをフォローしてもらったこともわかりますし、コメントを見ればどのように思ってくれているのかわかります」とも話した。やりがいが増していく一方で苦悩も。「追求していけばいくほど悩むし、苦しむ」と吐露するが、「自分の表現が間違っていないか疑い続けることが大事」だと考えている。「お芝居だなと思うお芝居と、本当の顔をしているお芝居とがある。その違いはなんだろうって研究したときに、『あ、音か!』と思ったんです。本心で話している人の音がある。今、僕が話しているのは本当の音。これがセリフでできたら完璧なんですけど、どうしてもお芝居しようとすると声を作ってしまったりする。そういうのを日々考えています」●辞めたいと思ったことも「自分の感覚が削がれていく感覚があって」自分をとことん追い詰めて役とのシンクロを目指しているからこそ、「辞めたいと思ったこともあります」と明かす。「心をものすごく使う仕事だから、自分の感覚が削がれていく感覚があって。家に帰ると何もしたくなくなるんです。僕、何がしたいんだっけ、何が楽しいんだっけって。心が動いたほうがいいはずなのに、オフになるとそっちまでオフになるから、ヤバい! 自分がいなくなるぞ! という感覚になるときがあります」さらに、「皆さんが思っている山田裕貴と、本当の山田裕貴は、イメージ通りのところもありますが、全然違ったりもする。そうすると、皆さんのイメージに合わせて生きなきゃって思い、普段の僕じゃないってなるんです」と、世間のイメージとのギャップに悩むことも。「明るくてふざける人だって思われているから、バラエティで面白くしなきゃって頑張りすぎたりしてしまうこともある」と打ち明けた。心の疲れがたまると「僕のことを誰も知らない場所に逃げたい」という気持ちに。その思いは、昨年爆発しそうになったという。「全部辞めて世界中を回ろうかなと思いました。そんなお金があるかどうかは別として、絵とかやったことないのに世界中を回って絵を描きたいと。知らないことが多すぎると感じ、文化の違いや人間の違いをもっと知りたいと思って」と振り返り、「一番注目していただいた頃ですね。ものすごくありがたいことですけど、一気に僕を見る目が増えて逃げたくなってしまったのかもしれません」と分析する。結局、休むことはせず踏みとどまった山田。「僕が1年間休んだらいろんな人に多大なご迷惑をかけることになるから、そんなことはできない。自分のためではなく人のために生きています。応援してくださっている皆さんのためにも」と述べ、「原動力というか、使命です」と表現した。そして、「こうなりたい」と思い描いてきた想像を超えた状況になっているからこそ、この先は「わからない」という。「僕の意思じゃないところで動いていることばかり。『今年の顔』になったのも、『え! 俺が!?』みたいな。そういうことばかりなので、もう手に負えないんです(笑)。これからどうなっていくかわからない。まだまだですけど、いつもマネージャーさんに『とんでもないことになってきたね』って話しています」心がすり減る大変さや、人気者ゆえの苦悩も抱えつつ、山田は「僕はエキストラからやってきているので、めちゃくちゃうれしい! 夢だった『ONE PIECE』の声優が叶ったり、朝ドラや大河ドラマに出演させていただいたり、本当にありがたいなと思っています」と喜びをかみしめる。ワタナベエンターテインメントでは現在、次世代を担う新人俳優を発掘する「WE ACTオーディション」とダンス&ボーカルグループ候補生を募集する「D-BOYS SINGオーディション」を同時開催中。山田は「やりたいことをやったほうがいいと思うので、本気でやりたいと思う方はぜひ受けてみてほしいです」と呼びかけた。■山田裕貴1990年9月18日生まれ、愛知県出身。2010年、「D-BOYSスペシャルユニットオーディション」のD-BOYS部門でグランプリを受賞し、ワタナベエンターテインメントに所属、同年D-BOYSの弟分ユニット・D2に加入した。2011年に『海賊戦隊ゴーカイジャー』ジョー・ギブケン/ゴーカイブルー役で俳優デビュー。以降、『特捜9』シリーズ、連続テレビ小説『なつぞら』、『ここは今から倫理です。』『志村けんとドリフの大爆笑物語』などのドラマに出演。映画では『HiGH&LOW』シリーズ、『東京リベンジャーズ』『テン・ゴーカイジャー』『燃えよ剣』『余命10年』などに出演。現在は、連続テレビ小説『ちむどんどん』に出演中。『オールナイトニッポン X(クロス)』月曜パーソナリティも担当。2023年大河ドラマ『どうする家康』への出演も決まっている。■ワタナベエンターテインメント「D-BOYS SING」「WE ACT」Wオーディションダンス&ボーカルグループ候補生を募集する「D-BOYS SINGオーディション」と、次世代を担う新人俳優を発掘する「WE ACTオーディション」を同時開催。両部門とも合格者には無料でレッスンできる環境を用意。1次面接は、全国4都市(東京・愛知・大阪・福岡)で開催するほか、オンラインでの参加も可能。
2022年08月15日英国映画協会(以下、BFI)が、ファッションブランドの「シャネル(CHANEL)」と共同で新たなフィルムメーカー賞「BFI&Chanel Filmmaker Awards」を創設したことを明らかにした。対象は「独創的なアイディアを持ち、リスクを取って新しい切り口を見出そうとしているイギリスの新進映画クリエイター」。候補者は最大7人が選ばれ、その後選出された3人にそれぞれ2万ポンドずつが贈られる。3人のうち、少なくとも1人は女性、あるいは自身をノンバイナリーと認識している人物が選ばれる。2020年にBFIから栄誉ある「BFIフェローシップ」を授与され、シャネルのアンバサダーでもあるティルダ・スウィントンが、BFIのCEOベン・ロバーツやイギリス版「VOGUE」誌の編集長らと審査員長を務めるという。ロバーツは「シャネルをBFIの新しいパートナーに迎えることができてとてもうれしいです」「この賞のために時間を作ってくれたティルダたちに感謝します」「この賞は、英国の映画クリエイターにとって重要なプラットフォームです」とコメント。ティルダは9月29日に開催されるBFIのガラ「ルミナス」のステージで受賞者を発表する。「ルミナス」は、BFIの活動資金を集めるために行われる華々しい映画の祭典で、イギリスのスターや業界の著名人が多数参加する。(賀来比呂美)
2022年08月05日今年の「ゴールデン・トレーラー賞」のノミネーションが発表された。この賞は、「ハリウッドの映画やテレビのマーケティングにおける縁の下の力持ち」を称えるために、1999年の創設以来、ほぼ毎年開催されているセレモニー。映画、ドラマ、ゲームの予告編、ティザー動画、ポスターなどが、計108部門にカテゴリー分けされて表彰される。今年の対象は、2021年4月から2022年5月31日までに上映された作品。授賞式は10月6日に行われる。主なノミネーションは以下の通り。■アクション賞『ブレット・トレイン』『レッド・ノーティス』“Teamwork”『THE BATMAN -ザ・バットマン-』『マトリックス レザレクションズ』“Free”『トップガン マーヴェリック』“Back”■アニメーション/ファミリー賞『コーダあいのうた』“Sometimes”『DC がんばれ!スーパーペット』“Krypto Hero”『Marcel the Shell with Shoes On』“Remember”『ミニオンズ フィーバー』“Ready”『SING/シング:ネクストステージ』“Still Haven’t Found”『ジェイコブと海の怪物』“Maps”■コメディ賞『Dog』“On The Road”『ドント・ルック・アップ』“Trajectory”『Father of the Bride』“Biggest Event”『ザ・ロストシティ』“Real Adventure”『The Unbearable Weight of Massive Talent』“Cage Cutdown”■ドラマ賞『きみに伝えたいこと』『ベルファスト』“Everlasting『ハウス・オブ・グッチ』“Legacy”『ドリームプラン』“Greatness”『The Many Saints of Newark』■ファンタジー・アドベンチャー賞『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』“The Beginning”『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』“Nightmare”『シャン・チー/テン・リングスの伝説』“Birthright”『アダム&アダム』“Future”『アンチャーテッド』“Fifty Fifty”■外国語作品賞『Tausend Zeilen』(ドイツ)『Eiffel』(フランス、ベルギー、ドイツ)『ドライブ・マイ・カー』(日本)『秘密の森の、その向こう』“Magical”(フランス)『Letchik』(ロシア)(賀来比呂美)■関連作品:ドライブ・マイ・カー 2021年8月20日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
2022年08月03日池松壮亮と伊藤沙莉が共演したラブストーリー映画『ちょっと思い出しただけ』が、「第25回ファンタジア国際映画祭」カメラ・ルシダ部門の最高賞であるCamera Lucida AQCC Prizeを受賞したことが分かった。本作は、「クリープハイプ」のヴォーカル/ギター・尾崎世界観の楽曲に、監督・松居大悟がインスパイアを受け、製作されたオリジナルラブストーリー。「ファンタジア国際映画祭」は、カナダ・モントリオールで1996年から開催されている北米最大のジャンル映画祭で、約400作品が上映され、今年は8月3日まで開催中だ。今回本作が受賞したカメラ・ルシダ部門(Camera Lucida)とは、最も個性的で革新的な作品を紹介する部門となっており、AQCC Prizeはケベック批評家協会が評価した作品に贈られる賞。審査員たちからは「“完璧に計算された構成”と“日常的なものに意味を与えたその素晴らしさ”を評価し満場一致で受賞が決定した」と述べられた。同部門での最高賞は、日本映画として初となり、松居監督作としては初の海外映画祭での受賞となった。松居監督は「このような形をいただけて嬉しいです」と今回の受賞を喜び、「コロナ禍で奪われたものばかりを見るのではなく、暗くなるからこそ光を見つけやすくなる、と、当たり前の感情を抱きしめられるように作った映画です。今作はこれからも、早稲田、阿佐ヶ谷、京都、などでも出会えます。なにより映画館がんばってほしいです。今作じゃなくとも、ぜひ劇場へお越しください!」とコメントを寄せた。また、先日都内で行われた本作のBlu-ray&DVDリリースの上映イベントでは、吉報をいち早く聞いた主演の池松さんから「ファンタジアおめでとうございます」と祝福のメッセージが届けられていた。なお本作は、8月13日(土)より開催される「北京国際映画祭」内でも上映されることが決定している。『ちょっと思い出しただけ』Blu-ray&DVDは9月2日(金)リリース。(cinemacafe.net)■関連作品:ちょっと思い出しただけ 2022年2月11日より全国にて公開(C)2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会
2022年07月29日永野芽郁主演『マイ・ブロークン・マリコ』がカナダ・モントリオールで行われたファンタジア国際映画祭にて最優秀脚本賞を受賞し、脚本の向井康介、タナダユキ監督よりコメントが到着した。平庫ワカの同名コミックを映画化した本作。映画では、タナダ監督の力強さと繊細さを兼ね備えた演出、永野芽郁のこれまでのイメージを大胆に覆す役柄と演技、そして原作の持つ物語の力がひとつになり、人間の儚さと逞しさが、優しく熱をもって描かれる。この度、本作が最優秀脚本賞を受賞したファンタジア国際映画祭は、1996年に始まったカナダ・モントリオールで行われる北米最大のジャンル系映画祭。アジアやヨーロッパ、北米の作品を中心に約400作品を上映、会期中の来場者数は10万人にのぼる。今年は7月14日~から8月3日まで開催予定。過去には中田秀夫監督の『リング』や三池崇史監督の『極道戦国志 不動』、今敏監督の『パーフェクトブルー』などをプレミア上映しており、日本映画に所縁の深い映画祭でもある。今回本作が受賞した最優秀脚本賞は2015年の山下敦弘監督作『味園ユニバース』以来の快挙となった。◆向井康介 コメント正式な公開前から嬉しい驚きをありがとうございます。脚本というものは映画が完成されて初めて“作品”として存在を許されます。企画成立に尽力くださった監督以下スタッフ・キャストの皆様と喜びを分かち合いたいです。そして何よりも原作者の平庫ワカさんに深く感謝いたします。作家の命である原作を預けてくださったこと、心より御礼を申し上げます。◆タナダユキ監督 コメント個人的には初めて脚本での賞をいただけたことは素直に嬉しいですが、これは素晴らしい原作と、共同脚本の向井さんはじめ最高のスタッフとキャストのおかげであり、間違いなく関わった全員でいただいた賞です。海外でもこの作品の持つさまざまなエネルギーがスクリーンを通して伝わったのだと感じ、映画はやはり世界共通なのだなと噛み締めています。たとえ文化や言語が違っても、想いが伝わることは希望でしかありません。その希望に気づかせてもらえたこの賞に感謝しつつ、シイノやマリコの見た絶望やその中から見出した希望が、多くの人に届くことを願ってやみません。『マイ・ブロークン・マリコ』は9月30日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:マイ・ブロークン・マリコ 2022年9月30日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開©2022映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会
2022年07月27日全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)の理事会が先週末にビデオ会議を行い、インティマシー・コーディネーターに同組合への加入資格を開放することを全会一致で決議したと明かした。会長のフラン・ドレシャーは、「インティマシー・コーディネーターの役割は、セットや親密なシーンが求められる制作現場において安全性と健全な環境を大きく向上させるものです。その価値は計り知れず、理事会は彼らをSAG-AFTRAのファミリーに迎え入れ、他の会員がすでに享受している福利厚生や保障を受けられるよう、手段を講じています」とコメント。インティマシー・コーディネーターとは、映画、ドラマ、舞台の制作において、キスシーンやベッドシーンなどのintimate(性的なつながりのある)なシーンに参加する俳優の安全・健康を確保する専門的なスタッフ。SAG-AFTRAは今年6月にインティマシー・コーディネーターの登録簿を発表した。この登録簿には、SAG-AFTRAが制定したインティマシー・コーディネーターの資格、訓練、審査の推奨基準を満たし、認定されたアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアの40人のインティマシー・コーディネーターが掲載されている。資格と経験のあるインティマシー・コーディネーターを探すための資料として、プロデューサーたちに提供されているという。(賀来比呂美)
2022年07月26日放送映画批評家協会(以下、CCA)が、第28回放送映画批評家協会賞授賞式を2023年1月15日に開催することを公式サイトにて発表した。場所はロサンゼルスのフェアモント・センチュリー・プラザ・ホテル、米CW局で生放送される。同授賞式は例年1月に開催されてきたが、2021年、2022年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月に開催されたため、CCAのCEOジョーイ・バーリンは「放送映画批評家協会賞授賞式をCW局で従来通り1月に開催できること、そしてこれまで以上に注目を集めていることに大変うれしく思っています」とコメントしている。放送映画批評家協会賞は、「歴史的にアカデミー賞のノミネーションを最も正確に予測する賞」と公式サイトで明言するほど、アカデミー賞の行方を占う重要な賞の一つ。CCAは放送映画批評家協会賞のほか、4つの賞の開催日についても発表。第7回ドキュメンタリー賞は2022年11月13日、第5回ブラックシネマ&テレビジョン賞は2022年12月5日、第2回ラテンシネマ&テレビジョン賞は2022年10月7日、そして初開催となるアジアンパシフィックシネマ&テレビジョン賞を2022年11月4日に行う。アジアンパシフィックシネマ&テレビジョン賞の立ち上げは、ミシェル・ヨーの主演作『Everything Everywhere All at Once』や「イカゲーム」「パチンコ―Pachinko」といったアジアの作品が大ヒットし、「これ以上ないタイミングとなった」という。(賀来比呂美)
2022年07月20日第78回ゴールデン・グローブ賞コメディ/ミュージカル部門で作品賞、主演男優賞にノミネートされた映画『パーム・スプリングス』(20)が、映像配信サービス・dTVで配信開始した。昨年1月のサンダンス映画祭で上映され、注目を集めた同作。米カリフォルニア州のリゾート地パーム・スプリングスを舞台に、タイムループに巻き込まれた男女が恋に落ち、真実の愛に目覚めていくという一風変わったラブコメディだ。コメディ・グループ“ザ・ロンリー・アイランド”の中心人物で、テレビシリーズ『ブルックリン・ナイン–ナイン』で主役と製作を兼任しているアンディ・サムバーグが、主人公のナイルズを演じ、ヒロイン・サラをクリスティン・ミリオティ、謎の老人をJ・K・シモンズが演じている。
2022年07月11日俳優のソン・ガンホが映画『ベイビー・ブローカー』の演技で、先ごろ開催されたカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を受賞した。これまでに数々の名作に出演し、世界的な映画作家たちと繰り返しコラボレーションしている彼は、本作でも、是枝監督の創作手法や視点を丁寧に見つめながら演技にあたったようだ。来日時に話を聞いた。ソン・ガンホは韓国映画界を代表するスター俳優のひとりだが、彼の出演作は興行的な成功だけでなく、高い評価を集めることが多い。ソン・ガンホは優れた脚本や監督、プロジェクトを選びだす才能も持ち合わせているのだ。そんな彼が選んだ新プロジェクトが、是枝裕和監督が韓国で撮影する『ベイビー・ブローカー』だ。「是枝監督の作品は初期のものから最新作までほぼすべて観ています。是枝監督の作品は劇的なものではありません。暗い現実からスタートして、最後はハッピーエンドで終わるというようなドラマティックさはなく、平凡な日常を描いています。しかし、そんな平凡な日常の中から、我々が置かれている現実のどうすることもできない”もどかしさ”や、日常に潜む恐ろしさが的確に描かれています。是枝監督の作品では、我々の姿が客観的な視点から描き出され、淡々と我々に突きつけられますから、それに触れた私たちは、人間本来の姿について考えさせられたり、人間の“あるべき姿”について考えることになるのではないかと思います」彼が演じたサンヒョンは、児童養護施設で育ったドンスと、何かしらの理由で赤ん坊を育てることができない親が子を預ける“赤ちゃんポスト”に届いた子どもを売る“ベイビー・ブローカー”をしている。ある日、ふたりは赤ん坊を手に入れ、売りに出そうとするが、思い直して戻ってきた赤ん坊の母ソヨンに見つかってしまい、サンヒョンは「赤ちゃんを育ててくれる家族を見つけようとしている」と嘘をつき、彼らは赤ん坊の“新しい親”を探す旅に出る。本作は、ブローカーのふたりと赤ん坊、その母、児童養護施設の少年がひとつの車に乗り込んで旅をする展開が描かれており、サンヒョンは集団を時に率い、時に振り回される役割を担う。「確かに、いわゆる“ワントップの主人公”という役ではないですよね。今回のような役は、俳優としては単独の主人公よりは容易な部分もあるのですが、俳優たちのレベルの高いアンサンブルをつくりだす難しさもあるかと思います。ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』も同じような役回りだと思うのですが、私はあの作品の出演を引き受けた瞬間、とても喜んだのです。なぜなら、出番があまり多くないから(笑)。ポン監督にも『今回の脚本はとても良いですね。僕は現場では楽できるかなぁ』なんて言ってたんですよ! でも、実際に演じてみると……まったく楽ではありませんでした(笑)。落とし穴のようなものだったんですね。その点は本作でも同じでした。このような役は、“見えている”のだけれど見えていないように、スクリーンでは“見えていない”のだけれど、観客が見えているように演じることが求められるわけです」広い意味での“社会”がこの映画で描かれている『ベイビー・ブローカー』彼が語る通り、劇中のサンヒョンは派手に動いたり、大きく立場が変化するわけではない。しかし、ソン・ガンホはどのシーンでもそこにいる俳優の動きや感情を的確にキャッチし、絶妙なタイミングとトーンでリアクションしている。本人は「私がリアクションすることで、相手の演技の邪魔にならないように演じています」と控えめだが、彼は自分の役やセリフだけでなく、相手の俳優がどういう状態で、何をしゃべるのか、そのシーンが映画全体の中でどのような役割を果たしているのかを精緻に把握している。「ときに映画は“監督の芸術”と呼ばれます。私が大事にしているのは、“映画は、俳優の肉体と言語で形成されている芸術でもある”という考えです。ですから私は俳優のクリエイティビティが映画にとって重要な位置を占めると考えています。パク・チャヌク監督やキム・ジウン監督など、自身のスタイルをしっかりと確立した監督は、一見すると自身のスタイルを重視しているように見えるかもしれません。しかし、撮影現場で彼らは俳優たちのクリエイティビティ、表現を誰よりも待ち望んでいるのです。監督たちのそんな姿を直近で見てきましたから、私も映画監督というのは俳優の表現力を必要としているのだと感じるようになりましたし、多くの優れた映画監督の共通点だと思うようになりました」だからこそ彼は本作でも、単に役を演じるだけでなく、是枝監督の視点や想いを丁寧に探っていった。中でも彼は本作が“社会の視点”を持っていること、ここで描かれている物語が絵空事ではなく、我々の社会につながる部分があることを重視したようだ。「それはとても重要なことだと思います。私は、是枝監督がこの映画で単に“赤ん坊を横流しをしている人の話”を描いているとは考えていません。このような人たちが現実に存在しているのか私にはわからないですし、それは重要なことではありません。私はこの映画では、社会にいる“見えない存在”や、現代の社会構造の中で疎外されてしまっている人たちが描かれ、さらには“人生において正しい道とは何か?”を問いかけている。つまり、広い意味での社会がこの映画で描かれていると考えています。是枝監督のこれまでの作品でもずっとそうであったように、非常に冷静沈着な眼差しをこの映画からも感じることができました。ですから、私も演技をする際にはそういう視点、そういう気持ちで臨みたいと思っていました」『ベイビー・ブローカー』公開中(C)2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
2022年07月01日7月8日(金)公開の若き登山家に密着したドキュメンタリー映画『アルピニスト』が、第43回スポーツ・エミー賞最優秀長編スポーツドキュメンタリー賞を受賞した。世界的アルピニストのレジェンドたちからも一目置かれている命知らずの若きアルピニストがいた。彼の名はマーク・アンドレ・ルクレール。命綱無し、たった独り前人未到の挑戦ーー。世界でも有数の岩壁や氷壁、数々の断崖絶壁を、命綱もつけず、たった独りで登る無謀なフリーソロという登山スタイルを貫いた彼は、SNS社会に背を向けながらも、不可能とされていた数々の世界の山脈の難所に挑み、次々と新たな記録を打ち立てていく。だが、そんな偉業を成し遂げながらも、名声を求めない彼の性格から世間的な知名度はほぼ皆無だった。これまで数多くの登山にまつわるドキュメンタリー映画を製作してきたアウトドア・ドキュメンタリーの第一人者、ピーター・モーティマー監督が、自らの登山経験を駆使して映し出した驚異的な映像は、多くの人の感動と興奮を呼び起こし、放送映画批評家協会ドキュメンタリー賞で最優秀スポーツドキュメンタリー映画賞を獲得。さらに今回、第43回スポーツ・エミー賞の長編ドキュメンタリー部門、撮影賞にノミネートされ、見事、長編ドキュメンタリー部門に輝くことになった。授賞式に参加した本作プロデューサーのベン・ブライアンは「2年間にわたり、この作品に向き合ってくれた制作チームに感謝したい」と語ると、「そして何より、マーク・アンドレ・ルクレール、彼の家族、そして彼の友人たちに感謝したい。皆さんの協力がなければこの映画は実現しなかった。マーク・アンドレ、この賞は君が勝ち取った賞だ!」と喜びのコメントを寄せた。『アルピニスト』7月8日(金)公開
2022年06月01日アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされた映画『リコリス・ピザ』で、ショーン・ペンとトム・ウェイツが演じた実在の人物が明らかになった。舞台は、1970年代のハリウッド近郊、サンフェルナンド・バレー。実在の俳優やプロデューサー、実際の出来事を背景にアラナ(アラナ・ハイム)とゲイリー(クーパー・ホフマン)が偶然に出会い、すれ違い、歩み寄っていく恋模様を描き出す。三姉妹バンド「ハイム」の三女であるアラナ・ハイムと、ポール・トーマス・アンダーソン監督の盟友フィリップ・シーモア・ホフマンの息子であるクーパー・ホフマンがともに本作で鮮烈な映画デビューを飾り、主演女優賞やブレイクスルー賞を総なめにして話題を呼んでいる。そのフレッシュな主演の2人とは対称的に、本作では誰もが知るエンタメ界のレジェンドたちが、実在の人物をモデルにした役どころで出演し、物語にアクセントと深みを与えているのも見どころだ。アラナが受けたオーディションで出会い、意気投合する俳優ジャック・ホールデンを演じたショーン・ペン。彼のモデルは、ロマンティックな『麗しのサブリナ』(54/ビリー・ワイルダー監督)から西部劇『ワイルドバンチ』(69/サム・ペキンパー監督)まで幅広く活躍した、ハリウッドを代表する超有名俳優のウィリアム・ホールデン。髪をオールバックにぴっちりと撫でつけ、低い声で囁く伝説の二枚目スターを嬉々として演じているショーン・ペンは必見だ。また、レックス・ブラウという映画監督を演じ、観客を驚かせるのは、ミュージシャンとしてロックの殿堂入りを果たし俳優としても活躍するトム・ウェイツ。モデルはウィリアム・ホールデン主演の『トコリの橋』を監督したマーク・ロブソン監督が有力だが、その破天荒ぶりはサム・ペキンパー、ジョン・ヒューストンもモデルにしているよう。なかなか出演依頼を受けないといわれるトムをどのような経緯でキャスティングしたかについて、アンダーソン監督は「ショーン・ペンをジャック・ホールデン役にキャスティングしてから、レックス・ブラウを誰が演じるべきか、2人で考えたんです。その時、ショーンがトムを提案したんだです。彼らはとても親しいからね。それなら受けてくれるかもしれないという気持ちもあって良いアイデアだと思ったんです」と明かす。トムが快く役を引き受け、撮影が始まると「僕は監督として、必要がないカットにも関わらず、ただ彼がすることを見ていたいがためにカメラを回していました」と、トムの人間としての引力の大きさを語った。夜のレストランで、名監督とウィリアム・ホールデンというレジェンドが顔を合わせて盛り上がるシーンでは、多くの映画ファンがかつて憧れた70年代のハリウッドに入り込んだような錯覚に陥り、心を揺さぶること間違いなしの屈指のシーンとなっている。『リコリス・ピザ』は7月1日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:リコリス・ピザ 2022年7月1日よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開© 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.
2022年05月28日今年、『The Long Goodbye』でアカデミー短編映画賞を受賞したリズ・アーメッドとアニール・カリアが、現代版「ハムレット」で再びタッグを組むという。「Deadline」が報じた。『The Long Goodbye』では、2人は脚本を執筆し、リズは主演、カリアは監督も務めた。今回2人が挑むのは、シェークスピアの悲劇「ハムレット」。舞台は現代のロンドンで、リズはハムレットを演じる。監督はカリア、脚本はマイケル・レスリー(『マクベス』)。ほかのキャストには、オフィーリア役にモーフィッド・クラーク(『セイント・モード/狂信』)、レアティーズ役にジョー・アルウィン(『女王陛下のお気に入り』)が決定しているとのこと。リズとカリアは「私たちのハムレットは、裕福なイギリス系インド人の家庭のアウトサイダー」と語っており、「人種、メンタルヘルス、不平等を描く『ハムレット』で、物事を正すことは古い秩序に火を放つことなのかと問いかける」という。「多様なキャスト、現代のロンドンという舞台、それに私たちが長年取り組んできたジャンルのラップのエネルギーを古典に注ぎ込むことによって、より多くの人のためにこの不朽の物語を切り開いていきたい」と意気込んでいる。(Hiromi Kaku)
2022年05月12日栃木県内の漁業協同組合で構成される栃木県漁業協同組合連合会(所在地:栃木県下野市、代表理事会長:螺良 昭人)は、アユ放流資金の新たな調達をクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」にて4月11日に開始しました。クラウドファンディングにより釣り人以外から放流資金を募るのは全国でも珍しい試みです。清流の女王 アユ1. 取り組み内容について水害による河川環境の悪化、カワウや外来魚による食害、アユ冷水病の発生に加え、昨今のコロナ禍の影響や、関係者の高齢化等、河川環境の悪化が続いております。アユは綺麗な川の象徴とも言われ、近年は水質浄化機能や景観維持機能も注目されています。「アユを守る人」が居なくなることは河川環境や河川生態系の破壊のみならず、アユがいることで守られてきた内水面漁業、養殖業と言った地域経済の衰退にも繋がります。河川のことをもっと知ってほしい!アユの住む美しい河川を後世に伝えたい!美味しいアユを食べてほしい!そんな思いからこの度、当会ではアユが住める河川環境を守るためにクラウドファンディングを実施いたします。また、今回のクラウドファンディングを皮切りに県漁連、会員漁協が中心となり、今後もアユが住める河川環境を守る取組を行って参りたいと思います。2. クラウドファンディング詳細掲載会社 : CAMPFIREプロジェクト: 県産アユの放流対象河川 : 箒川(那須塩原市中塩原地内)目標金額 : 100万円(内訳:放流費60%、掲載手数料15%、リターン費用25%)募集方法 : All-in方式(目標額に届かない場合もプロジェクト実施、リターン実施)返礼品 : サンクスメール、冷凍アユ、共通遊漁券、つかみ取り体験、プレミアムヤシオマス、オリジナルエコバック、オリジナルステッカー等募集期間 : 現在掲載中~5月25日 なお、プロジェクト実行は6月上旬掲載ページ : 下記URL、QRコードよりご確認ください。URL : クラウドファンディングサイト QRコード3. 栃木県漁連の概要河川湖沼の漁場管理、淡水魚養殖を行う21の漁業協同組合を会員とする連合会です。当会では従来からアユ種苗生産や会員漁協等へアユの放流用種苗の供給を行っております。独自のアユ種苗生産施設を有し、毎年1,000万尾のアユ種苗を生産。県内外へ良質なアユ種苗を供給して参りました。会員漁協とともに河川環境の保全、水産資源の維持、川魚文化を絶やさないための普及活動、幼児や小学生を対象とした稚魚放流会や河川の生き物観察等の体験活動を行い、川を守る活動を継続しています。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年04月20日映画『PLAN 75』が、2022年6月17日(金)よりロードショー。主演は倍賞千恵子、脚本・監督は早川千絵が務める。75歳から“生死を選択できる制度”と翻弄される人々を描く映画『PLAN 75』は、是枝裕和が初めて総合監修を務めたオムニバス映画『十年 Ten YearsJapan』の一篇『PLAN75』を新たに構築、キャストを一新した作品。早川千絵監督のオリジナル脚本による、自身初の長編映画だ。物語の舞台となるのは、超高齢化社会に対応すべく、75歳以上が自ら生死を選択できる制度<プラン 75>が施行された日本。年齢による命の線引きというセンセーショナルなモチーフを打ち出しつつも、懸命に生きる人々の姿を、繊細かつ丁寧に描いた。『PLAN 75』の主人公は、夫と死別し、長年一人で暮らしてきたが、高齢を理由に、余儀なく失職に追い込まれてしまう女性・角谷ミチ。あっという間に社会での居場所を失いかけるミチを中心に、架空の社会制度<プラン75>、そして様々な立場にいる人々を通して、「生きる」という究極のテーマを全世代に問いかける作品となっている。早川千絵監督によると、『PLAN 75』の発想のきっかけは、「ここ数年の間に”自己責任”という言葉を多く耳にするようになり、社会的に立場の弱い人への風当たりが強くなっていることへの憤り」だったという。また、「ここ最近は年をとることに対する不安ばかりがメディアで煽られるようになっている。高齢化社会の問題が解決に向かわないことの憤りが、高齢者自身に向けられているように感じる。誰もがこの先体験するという意味で想像しやすいであろう高齢者を主人公にした物語を描こうと思った」と語っている。主演は倍賞千恵子主人公・角谷ミチ...倍賞千恵子夫と死別してひとりで暮らす78歳の女性。高齢を理由に清掃の仕事を解雇され、住む場所をも失いそうになり、<プラン 75>の申請を検討し始める。主演を務める倍賞千恵子は、脚本を読み「最初は“酷い話”だと思ったのですが、物語の終盤でミチがある選択をする姿が描かれており、そこにものすごく心打たれ、惹かれて…それだけで出演を即決しました」と振り返る。岡部ヒロム...磯村勇斗市役所の<プラン 75>の申請窓口で働く職員。映画『ヤクザと家族 The Family』、『東京リベンジャーズ』、『劇場版 きのう何食べた?』やドラマ「サ道」などに出演し、2022年の日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した磯村勇斗が演じる。成宮瑶子...河合優実死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフ。<プラン 75>に強い疑問を抱いていく。映画『サマーフィルムにのって』、『由宇子の天秤』で多くの新人賞を獲得している新鋭・河合優実が担当。岡部幸夫…たかお鷹制度の申請に赴いた役所で偶然、疎遠だった甥であるヒロムと再会する孤独な男性。『燃えよ剣』やNHK 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」などに出演するたかお鷹が演じる。マリア...ステファニー・アリアンフィリピンから単身来日した介護職員。幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給な<プラン 75>関連施設に転職するも、利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて毎日の作業に臨む。『メランコリック』のステファニー・アリアンが務める。出演者にはその他にも、ドラマ「あなたの番です」の大方斐紗子、俳優・演出家として活躍する串田和美らが名を連ねる。牧稲子…大方斐紗子ミチの同僚。勤務中に倒れてしまう。藤丸釜足…串田和美カンヌ国際映画祭でカメラドール スペシャル・メンション(特別賞)に映画『PLAN 75』は、第75回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ある視点」部門へ正式出品。カメラドール スペシャル・メンション(特別賞)に輝いた。日本人監督作品が「ある視点」部門に出品されるのは、2017年の黒沢清監督『散歩する侵略者』以来5年ぶり、カメラドール スペシャル・メンション(特別賞)の授与は日本人監督初の快挙となる。また、第75回カンヌ国際映画祭では、是枝裕和監督初の韓国映画『ベイビー・ブローカー』が「コンペティション部門」に正式出品され「最優秀男優賞」など2冠を果たしているが、日本製作の映画は『PLAN 75』のみだ。アカデミー賞 国際長編映画賞部門の日本代表に『PLAN 75』は、第95回米国アカデミー賞 国際長編映画賞部門の日本代表にも選出。2023年3月の発表に向けて、今後のショーレースでの動向にも注目が集まる。<映画『PLAN 75』あらすじ>少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン 75>が国会で可決・施行された。様々な物議を醸していたが、超高齢化問題の解決策として、世間はすっかり受け入れムードとなる。夫と死別してひとりで慎ましく暮らす、角谷ミチは78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は<プラン 75>の申請を検討し始める。一方、市役所の<プラン 75>の申請窓口で働くヒロム、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子は、相手の顔を見て交流することで、このシステムの存在に強い疑問を抱いていく。また、フィリピンから単身来日した介護職のマリアは幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の<プラン 75>関連施設に転職。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に臨む日々を送る。果たして、<プラン 75>に翻弄される人々が行く着く先で見出した答えとは―――。【詳細】映画『PLAN 75』公開日:2022年6月17日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開監督・脚本:早川千絵出演:倍賞千恵子、磯村勇斗、たかお鷹、河合優実、ステファニー・アリアン、大方斐紗子、串田和美配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
2022年04月18日女優の清原果耶が15日、Asian Film Festival コンペティション部門にて最優秀女優賞を受賞した。イタリア・ローマにて開催中のAsian Film Festivalにて、映画『護られなかった者たちへ』でコンペティション部門 最優秀女優賞を受賞した清原。同作では福祉保健事務所の職員・円山幹子役を演じ、山路ふみ子新人女優賞を皮切りに、第34回日刊スポーツ映画賞で初の10代かつ史上最年少で助演女優賞、第76回毎日映画コンクールで女優助演賞、3月11日に行われた第45回日本アカデミー賞授賞式で最優秀助演女優賞を受賞してきた。今回はそれに次ぐ快挙として、自身初の海外映画祭での最優秀女優賞受賞となった。○清原果耶 受賞コメントAsian Film Festivalの皆様、有難うございました。この度は名誉ある賞をいただき、驚きながらも光栄に思います。『護られなかった者たちへ』がイタリアの皆さんにご覧頂けたことをほんとうに嬉しく思います。これからも映画を愛する人間として、俳優として成長できるように努力して参ります。
2022年04月15日先日発表された「第94回アカデミー賞」で作品賞、助演男優賞、脚色賞の3冠に輝いた映画『コーダ あいのうた』。これを記念し、4月11日に映画コメンテーターのLiLiCoと、映画プレゼンターの赤ペン瀧川が登壇する「『コーダ あいのうた』コーダは最高だ!トークショー」が都内劇場にて開催された。劇中のクライマックスを飾る涙腺崩壊曲「青春の光と影」をBGMに、巨大赤ペンを担ぐように息ピッタリで登場したLiLiCoと赤ペン瀧川。アカデミー賞受賞式を思わせる真っ赤なドレス姿のLiLiCoは、すでに本作を3回鑑賞し、各所で本作をPRしていることから「あれ!?自分出ていたっけ!?」と自らを出演者の一人だと妄想し、早くも場内を爆笑させた。本作を鑑賞した際には「自分の涙の量にビックリ!でも悲しい涙ではなくて優しい涙だからいいの!」と大号泣報告のLiLiCo。アカデミー賞作品賞を受賞したことについては「いらないシーンもなければ、足りないシーンもない。上映時間もちょうどいい。これで2時間半くらいあったら涙腺がもたない!」と太鼓判。赤ペン瀧川も「ノミネート作品の中で『コーダ あいのうた』が万人に勧められる映画でした。アカデミー賞はいい作品に賞を与えることもそうだけれど、アカデミー会員が世界に何を求めているのかということもわかる。その意味では明るくて希望を持てる作品を世界に広げたいと思っていた人が多かったということかも」と分析した。実は、2014年に公開されたフランス映画『エール!』のリメイク版でもある本作。LiLiCoは「リメイク版は上手く行かない場合が多いけれど、観終わった瞬間に『超えちゃったよ…』と言葉を失いモゴモゴした。フランス版もいいけれど、ヨーロッパとアメリカの違いを上手に打ち出していた」と脚色賞受賞も納得。赤ペン瀧川も「フランス版と見比べると、今回の監督・脚本のシアン・ヘダーの凄さがわかる!しかも長編はこれで2本目。もう天才か!」と類まれなるセンスに脱帽していた。本作はサンダンス映画祭で4冠を受賞し、史上最高額の26億円でアップル・スタジオが落札された。LiLiCoは「映画館でみんなで笑ってみんなで泣くのがいい。閉めては漏れ、閉めては漏れる、涙腺崩壊。涙活にもいいし、気持ちも優しくなるので、すべてにいい!」と猛プッシし、合わせて「サントラもいい!」と音楽面もおススメするLiLiCoは劇中歌をワンフレーズを生熱唱。「やっぱり私、この映画の端っこの方に出てたかも!」と再び出演を妄想し、「笑えるし、感動できるし、すべてが素晴らしい!まだ観ていない人がいたら『え?どうしました?』と言いたい。是非とも映画館で楽しんでほしいです!『コーダ』はサイコーダー!」と、改めて必見作であること強調して締め括った。■映画『コーダ あいのうた』予告『コーダ あいのうた』公開中
2022年04月12日アニメ界のアカデミー賞とも言うべきアニー賞で、ディズニーやピクサーなど競合ひしめく中、今年最多8部門に輝いたNetflixオリジナル映画『ミッチェル家とマシンの反乱』。他のアニメにはない本作のユニークさとはーー。コロナ禍の影響も受け、劇場公開ではなくNetflixオリジナルとして配信となった『ミッチェル家とマシンの反乱』は、あの大ヒット作『スパイダーマン:スパイダーバース』のフィル・ロード&クリス・ミラー製作。監督マイケル・リアンダ自身の体験をエッセンスに、親子関係の再生をロボットたちの反乱に立ち向かう姿を通して描くコメディアニメーションだ。主人公ケイティの視点で描かれるポップな世界『スパイダーマン:スパイダーバース』もコミックとアニメの融合が印象的だったが、本作でも冒頭SONYのロゴからすでにコミックから飛び出して来たような、随所に散りばめられた手書きアニメのような効果が何といっても印象的。虹やハート、恐竜など、3Dアニメでありながら敢えて「手書き感」を追求しているのが本作の特徴だ。VFX部門のマイケル・ラスターによれば、キャラクターや背景も、細部に筆で描いたような影等の効果を付けることで温かみのある質感を演出し、できるだけ手書きの原案に近づけたそうだ。また、映画製作者を目指す主人公ケイティの感情が動くシーンでは、ケイティから見える世界を視聴者も感じられるような創りになっているのも面白い。楽しいことや悲しいことがあれば、ケイティ視点のポップな世界にぐんぐん色付けされていくのも観ていて楽しいポイントだ。変わった家族が世界を救う!?ストーリーとしては変な家族が、ひょんなことからマシンの反乱に立ち向かうというというのは一見「クレヨンしんちゃん」シリーズのような展開だが、「クレヨンしんちゃん」の野原家とは違うのは家族間の関係、特に父親と主人公ケイティの仲があまり良くないこと。父親はいつまでもケイティの事を子ども扱いしがちで、ケイティは自分のやっている映画製作を父親にも認めてほしいがそれが叶わずできるだけ早く家から出たいと思っている。母親と弟もそれぞれコンプレックスを抱えており、機能不全家族とまでは言わないものの、どうにも歯車がかみ合わないバラバラな家族…。何か華々しい取り柄があるわけでもない、そんな家族が、人類最後の砦としてマシンの反乱に挑むのだが、闘い方も破天荒!後半のブサカワな愛犬マンチの思いがけない活躍にも注目だ。オリヴィア・コールマン演じるヴィランに共感この作品が単なる「家族だからこそやっぱりいいよね」と言うだけに留まらないのは、オリヴィア・コールマン演じるヴィランことAIの「パル」の存在が大きいとも言える。新型マシンに挿げ替えられ、これまで長らく愛されてきたと思っていたパルはお役御免に…。そんなことをするなら、AIとマシンたちで人間をお役御免にしてやる!と反乱を起こすのだが、この行動論理そのものが何とも人間的。家族であろうとなかろうと、親しき仲にも礼儀あり。相手の尊厳を守ることの意義も間接的に伝えてくれる。そして、テクノロジー=悪という二項対立ではなく、その価値も充分描く奥深さも面白さの一つだ。スマホに夢中で家族のだんらんが台無しだと嘆く父親、Wi-Fiが無ければ暴動レベルで混乱する人類など、テクノロジーに依存する姿を皮肉たっぷりに描きつつも、ストーリーが進むに連れテクノロジーのポジティブな可能性にちゃんと触れる点も見どころだ。単なるドタバタアニメではなく、幾重にも工夫されたディテールに唸る。片時も視聴者を飽きさせない工夫が随所に散りばめられており、気づけば約2時間夢中で観てしまうこと間違いなしだ。(キャサリン/Catherine)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2022年04月08日2022年3月27日、アメリカのロサンゼルスで世界最高峰の映画の祭典『第94回アカデミー賞』の授賞式が開催されました。アカデミー賞の授賞式では、過去1年間に他界した俳優や映画関係者を追悼するコーナーがあります。その追悼コーナーで、注目を集めた1匹の子犬がいます。動物を愛した故ベティ・ホワイトを偲んでこの1年で亡くなった人たちの名前と顔写真がステージに映し出される中、ひときわ大きな拍手が上がったのは、女優のベティ・ホワイトが紹介された瞬間でした。そこに、女優のジェイミー・リー・カーティスが子犬を抱いてステージに登場します。生前のベティは女優として大きな成功を収めただけでなく、動物愛護精神にあふれた人としても有名でした。動物保護活動に熱心だったベティを称え、彼女の遺志を引き継ぐため、ジェイミーは『マック&チーズ』という名前の保護犬を紹介。「このマック&チーズのような保護犬をぜひ、あなたの家に迎えてください」と呼びかけました。 View this post on Instagram A post shared by Jamie Lee Curtis (@curtisleejamie) ※画像は複数あります。左右にスライドしてご確認ください。 View this post on Instagram A post shared by Jamie Lee Curtis (@curtisleejamie) アカデミー授賞式の日、マック&チーズは里親を募集中でしたが、この後すぐに里親が決まったのです。里親になったのは…俳優のジョン・トラボルタ!実はジョンはジェイミーと友達で、授賞式にも出席していました。舞台裏でマック&チーズを見たジョンと彼の息子のベンくんは、このかわいい子犬に一目ぼれしたのだそう。そしてその場で里親になることを決め、マック&チーズはトラボルタ家の一員になったのです! View this post on Instagram A post shared by Jamie Lee Curtis (@curtisleejamie) View this post on Instagram A post shared by John Travolta (@johntravolta) この報告に、マック&チーズを保護していた団体『Paw Works』も「昨夜の授賞式での最大の勝者はマック&チーズです!」とコメント。ジョンの投稿にも、喜びの声が寄せられています。・ラッキーな少年と、ラッキーな子犬ね!・『マック&チーズ・トラボルタ』って、最高じゃないか!・このかわいい子犬の家族になってくれて、ありがとう。世界には、家族を必要としているたくさんの動物がいます。誰か1人が1匹の命を救うことができたら、家族の愛情を受けて生きられる動物はうんと増えるはずです。保護犬からハリウッドスターの愛犬へ。一夜にして運命が変わったマック&チーズ。自分の遺志を早速引き継いでくれたジョンとベンくんを見て、天国のベティ・ホワイトもきっと喜んでいることでしょう。[文・構成/grape編集部]
2022年04月06日今年で3年目を迎えるPFF(ぴあフィルムフェスティバル)による映画賞「大島渚賞」の授賞式が4月4日、東京・丸ビルホールで行われ、受賞を果たした藤元明緒(ふじもと・あきお / 33歳)監督が出席。自身にとって所縁が深いミャンマーの情勢や、ウクライナ侵攻に触れながら「映画は無力じゃない。そう信じて作っていかないと強く思いながら、優しい世界につながるような映画を仲間たちと届けていきたい」と決意を語った。2019年に創設され、映画の未来を拓き、世界へ羽ばたこうとする、若き才能に授与される同賞。「日本で活躍する映画監督(劇場公開作3本程度)」、「原則として前年に発表された作品がある」監督を対象に、高い志を持って世界に挑戦した大島渚監督に続く次世代の才能を期待と称賛を込めて顕彰してきた。坂本龍一氏が審査員長を務める。第1回は『鉱 ARAGANE』や『セノーテ』が世界各国で高い評価を受ける小田香監督が受賞。昨年の第2回は「該当者なし」という結果を経て、今回、ベトナム人女性労働者たちを描く長編第2作『海辺の彼女たち』が昨年公開され、話題を集めた藤元監督の受賞となった。4月16日からは、インドとミャンマーの国境地帯で日本兵の遺骨発掘作業に携わる少数民族ゾミ族を描いた短編連作『白骨街道 ACT1』(監督/脚本/編集)が公開される。壇上で挨拶に立った藤元監督は「映画を志して上京した10年前には想像もつかないこと。まだ実感が湧いていないが、大先輩の名前を冠した賞をいただき、うれしいですし、お客様の映画に対する思いやりに背中を押される」と喜びの言葉。ミャンマーに暮らす映画製作の仲間が逮捕されたり、行方不明になったりしていると明かし「映画って本当に何ができるんだろうと考えた1年でした。立ち向かうものが強大すぎて、精神的にもきついものがあった。映画を作る、映画を観るという行為は、平和な環境と人びとの健康があって成立するもの」と涙ながらに訴える場面もあった。表彰式には審査員の黒沢清(映画監督)、荒木啓子(PFFディレクター)が出席。黒沢監督は『海辺の彼女たち』について「観た瞬間、胸がざわざわとかきむしられる感覚で、随所にハッと凝視してしまう、映画に吸い込まれるような瞬間があった。堂々と世界に『こういう日本映画がある』と胸を張って推薦できる、大島渚賞にふさわしい作品」と絶賛。一方、選考過程で坂本が「これはドキュメンタリーでも良かった。フィクションである理由が今ひとつ理解できない」と語ったことも明かした。その坂本からはメッセージが届き、荒木氏が代読。坂本は「やっと大島渚賞の意味が明確になりつつあります」と意義を再確認する一方で、「毎回、候補に挙がる作品の質が低いことに、忸怩たる思いを抱えている。最近の日本映画の大きな傾向として、他者を傷つけることを極度に恐れている」と厳しい言葉も。「これこそ、大島渚賞にふさわしいと言える作品に出合えることに大いに期待しています」と今後の展望を見据えていた。取材・文・写真=内田涼
2022年04月04日様々な波乱があった第94回アカデミー賞。中でも主演女優賞はまれにみる混戦といわれ、ノミネートされている俳優たちの出演作が、いずれも作品賞にはノミネートされていないという異例の事態となった。その混戦を制したのが、初受賞となったジェシカ・チャステインだ。出演作は軒並み高評価を受け、いまや何作もの待機作を抱えるプロデューサーにして、女性の地位向上の活動家としても知られるジェシカ。各国の女性スパイたちが大活躍するアクション映画『355』の記憶も新しい中、社会的マイノリティへの愛と純粋な信仰心や献身をある意味利用された『タミー・フェイの瞳』で大変身を見せて、ついにオスカー像を手にした。そんなジェシカの軌跡をふり返った。『タミー・フェイの瞳』で訴えたかったメッセージとは?主演女優賞プレゼンターのアンソニー・ホプキンスも語ったように、今年はそれぞれが圧倒的な演技でキャリアを築いてきた「最強の存在」で「屈指の顔ぶれ」ばかり。ニコール・キッドマン、オリヴィア・コールマン、ペネロペ・クルスと5人中3人が過去の受賞者で、クリステン・スチュワートはダイアナ元妃の苦悩を演じて初ノミネート。ニコール、クリステン、そしてジェシカと5人中3人が(受賞しやすいといわれる)実在の人物を演じ、その中でもジェシカはメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したチームの尽力もあり、パッと見では彼女と気づかないほどの迫力でタミー・フェイになり切った。『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』(2011)で助演、『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)で主演と2度のノミネート経験があったジェシカは、3度目のノミネートで初受賞を果たした。『タミー・フェイの瞳』は、1970年代から80年代にかけて、キリスト教福音派のテレビ伝道師として全米で最も成功を収めたタミー・フェイとジム・ベイカー夫妻がスキャンダルにより失墜していく様を描いた、実話に基づく物語。"PTLクラブ”(PeopleThatLove)という彼らのテレビ番組では信仰心に基づく愛にあふれたメッセージが反響を呼び、彼らの番組中は視聴者からの“献金”を受け付ける電話が鳴りっぱなし!タミーお手製のマペット“スージー”は子どもたちの心を掴み、彼女の特徴的な口調や歌声も人気となった。しかし、その栄光は長くは続かない。献金の不正流用や、彼らの人気を妬む他の団体の陰謀、ジムの性的スキャンダルなどにより、夫婦が築いた帝国はやがて崩壊していく…。極めて単純に言えば、タミーは博愛主義で、自身が信仰によって救われたように誰もが救われてほしいと願っていた。神が作られた人間を等しく愛す、という彼女のあつい信仰心によるメッセージや寛容さは、80年代に社会問題化したHIV/エイズ患者やゲイ・コミュニティにもとりわけ響くこととなった。そして、テレビ伝道師として人気を博したことや数々の賛辞と、誰かに認められ必要とされることの喜びが、慎ましく生きてきた彼女の平常心や金銭感覚を鈍らせてしまったのだろう。タミー・フェイについて10年間リサーチを重ね、「彼女と彼女の物語にはぶっ飛ばされた」というように強い思い入れがあったジェシカは、プロデューサーとして映画化を実現させ、受賞スピーチでは「おかげで役に入り込めた」とメイクアップチームやマイケル・ショウォルター監督らにも感謝を語った。何より、授賞式ではその直前、主演男優賞を受賞したウィル・スミスが、妻に侮蔑的な発言をしたクリス・ロックに平手打ちした件について自らを戒めるようなスピーチをしたばかり(後に公式に謝罪したが、彼の暴力は世界中が知ることとなり余波は広がっている)。“言葉の暴力”に続いて、“有害な男らしさ”にも繋がるような実際の暴行を世界が目の当たりにしただけに、差別や偏見、暴力、ヘイトクライムが蔓延し、さまざまなトラウマや孤立、絶望感に苛まれやすい現在こそ、「私たちに必要なのはタミーの思いやりの心です」と語ったジェシカのスピーチが余計に胸に迫るものとなった。「みながありのまま受け入れられ、自由に人を愛せて、暴力に怯えることのない世界を築くために、実際にいま、絶望や孤独を感じている人がいたら知ってほしい。あなたは唯一無二であり、無条件に愛されている」。そう語るジェシカの姿は、まさしく尊敬に値するものだった。ちなみに、ジェシカとクリス・ロック、ウィルの妻ジェイダ・ピンケット・スミスは『マダガスカル3』(2012)で声優として共演したことがある。ホラーから社会派、アメコミ、スパイアクションまで縦横無尽ジェシカは1977年、カリフォルニア・サクラメント生まれ。ニューヨークの名門ジュリアード学院に学び、舞台で活躍しながら「ER緊急救命室」「ヴェロニカ・マーズ」などの人気TVシリーズにゲスト出演し、2008年の『Jolene』(原題)でスクリーン・デビュー。TV映画の「名探偵ポワロオリエント急行の殺人」ではメアリー・デベナム役を演じ、ドイツ語やイスラエルの格闘技クラヴ・マガにも挑んだ『ペイド・バック』(2010)では冷戦下の工作員としてヘレン・ミレンと2人1役を演じた。キャリアが大きく花開いたのは2011年。『Salome』(原題)で共演したアル・パチーノがテレンス・マリック監督に彼女を推薦したという『ツリー・オブ・ライフ』は第64回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝き、レイフ・ファインズ主演・初監督作『英雄の証明』(11)、マイケル・シャノン主演によるサイコスリラー『テイク・シェルター』(11)、マイケル・マンの娘アミ・カナーン・マン監督のもとで強気な女性刑事を演じた『キリング・フィールズ失踪地帯』(11)が相次いで公開され、大きく注目を集めることに。そして『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』で無邪気な陽気さと柔和な美しさ、その影にある悲しみを見事に表現したシーリア役でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされる。続き、キャスリン・ビグロー監督がアカデミー賞監督賞を受賞した『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)ではCIAの女性分析官マヤを演じ、第18回放送映画批評家協会賞で主演女優賞を受賞、第85回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。『欲望のバージニア』(2013)以来、クリストファー・ノーラン監督『インターステラー』(14)からギレルモ・デル・トロ監督『クリムゾン・ピーク』(15)、リドリー・スコット監督『オデッセイ』(15)、アンディ・ムスキエティ監督『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』(19)、サイモン・キンバーグ監督『X-MEN:ダーク・フェニックス』(19)など、ジャンルも様々な作品に出演。崖っぷちのギリギリに立ちながらも凛として踏みとどまり、決して諦めない、たとえ奈落の底に突き落とされたとしても自力で這い上がる、そんな女性の強さも、そして弱さも体現し続けてきた。『スノーホワイト/氷の王国』(2016)LAプレミアまた、主演作『ラブストーリーズ エリナーの愛情』『ラブストーリーズ コナーの涙』(14)ではプロデューサーも務め、性的人身売買の温床になっていたオンライン広告サイトに切り込み、被害者の少女たちを追うドキュメンタリー『私はジェーン・ドウ:立ち上がる母と娘』(17)では製作総指揮とナレーターを担当。その後、自身の製作会社フレックル・フィルムズ(FreckleFilms)を立ち上げている。『ツリー・オブ・ライフ』(2011)1950年代のアメリカ、ブラッド・ピット演じる父親は元軍人で挫折した音楽家。信心深く、成功のためには“力”が必要だと息子たちを厳しく育てる。ジェシカが演じたのは、その“有害さ”を少しでも中和するべく、萎縮する息子たちを包み込むような慈愛満ちた母親。ときに観念的な生命観による映像が挟み込まれ、マリック監督は家族であることの苦悶も描いた。クローズアップされるジェシカがその都度美しい。『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』(2011)黒人メイドに育てられた裕福な白人女性が黒人メイドたちを救うかのような描き方は批判の的ともなったが、今作に出演した俳優たちがいずれも素晴らしいのは事実。保守的なコミュニティの“新参者”シーリアの繊細な一面を好演したジェシカは、ヴィオラ・デイヴィス、オクタヴィア・スペンサーとともに助演女優賞にノミネートされ、結果オクタヴィアが受賞。その後、ヴィオラが『フェンス』で、エマ・ストーンが『ラ・ラ・ランド』で、アリソン・ジャネイが『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』でオスカーを手にし、さらに黒人俳優のパイオニア、故シシリー・タイソンも2018年にアカデミー名誉賞を受賞、そして今回のジェシカと、『ヘルプ』はオスカーを呼び込む作品なのかとちょっとした話題となった。なお、『ドリームプラン』で助演女優賞にノミネートされたアーンジャニュー・エリスもキャストの1人。『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)9.11後、情報収集と分析に秀でた20代半ばのCIA女性分析官マヤが、オサマ・ビン=ラディンの追跡チームに参加する。「若い」「まだ子どもだ」と“現場”から懸念を示す声があがり、問題視された拷問による取り調べも彼女の想像をはるかに超えるもの。しかし、テロ行為は相次ぎ、ついには同僚や自身の命も危険にさらされたことでマヤの執念は加速していく。ラストシーンの涙をどうとらえるかがポイント。『MAMA』(2013)「ゲーム・オブ・スローンズ」ニコライ・コスター=ワルドーと共演、森の中の小屋で“人ならざるもの”に育てられた幼い姉妹を引き取ることになる、売れないバンドのベーシストを演じた。次第に育まれていく母性と怨念のような母性の対決が見どころ。後に製作総指揮のギレルモ・デル・トロとは『クリムゾン・ピーク』、監督・原案のアンディ・ムスキエティとは『IT/イット THE END』で組むことに。今作が縁で、監督の姉でプロデューサーのバルバラ・ムスキエティとも親しくなったジェシカは『IT/イット』の“少女ベバリー”ソフィア・リリスの要望もあり、大人になったベバリーを演じた。『ラブストーリーズ コナーの涙 | エリナーの愛情』(2013)ジェシカは役に対する献身さや誠実な人柄ゆえか、俳優や監督との再タッグに大変恵まれている。男女それぞれの視点から壊れゆく関係性を追った今作では、『IT/イット THE END』や『X-MEN:ダーク・フェニックス』でも共演するジェームズ・マカヴォイと夫婦役を演じ、ヴィオラ・デイヴィスも出演している。悲しみの共有は人間関係において最も困難なことの1つだ。N.Y.の街並やジェシカのファッション、音楽などにも注目。『アメリカン・ドリーマー理想の代償』(2014)今作で夫役を演じるのは、ジュリアード学院の同窓生でともに演劇を学び、マーベルの「ムーンナイト」も話題のオスカー・アイザック。『オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~』のJ・C・チャンダー監督のファンだったジェシカが脚本を読み、出演を快諾。コーエン兄弟監督作『インサイド・ルーウィン・ディヴィス 名もなき男の歌』で世界的に名が知られる直前のオスカーを、移民から成り上がった夫役に推薦したという。80年代初めが舞台だが、いまも起こり続ける銃による暴力、その連鎖は何も変わらない。なお、ジェシカとオスカーは、スウェーデンの名匠イングマール・ベルイマンによる同名ドラマをリメイクしたHBOのリミテッドシリーズ「ある結婚の風景」(5時間余りの映画のよう)でも共演、ある夫婦関係の破綻と再生を演じている。今度はTV界の栄誉、エミー賞も期待されているところだ。「ある結婚の風景」(2021)『オデッセイ』(2015)火星有人探査の最中に嵐に巻き込まれたマーク・ワトニー(マット・デイモン)を1人残し、地球に帰還することを決めた宇宙船ヘルメス号の女性船長メリッサ・ルイスを演じたジェシカ。頭脳明晰なリーダーで、規律を重んじ、自制心が強く、苦渋の決断でほかの乗組員の生命やミッションの安全な遂行を優先する勇気はただ者ではない(ただし、ワトニーによれば「音楽の趣味は最悪」)。ジェシカ自身は「“私も火星に行きたい”と女の子が思えるような役を演じたかった」と明かしている。『女神の見えざる手』(2016)ジェシカを見出した1人、『ペイド・バック』のジョン・マッデン監督のポリティカル・サスペンス。「銃規制法案」という生々しいトピックを題材に、政権の決断に影響を与え世論も左右するプロ集団“ロビイスト”の知られざる実態を描いた。休まず眠らず、常に頭脳をフル回転させて先の先を読む花形ロビイスト、エリザベス・スローンは目的のためには手段を選ばず、ときには非情に味方さえも欺く。ジェシカにしかできない人間の強さも、弱さも合わせ持つ主人公だ。『ユダヤ人を救った動物園アントニーナが愛した命』(2016)母親がヴィーガンのシェフであり、自身もヴィーガンとして知られるジェシカ。『ヘルプ』のフライドチキンも実は中身が大豆の加工品だったという。そんな彼女が製作総指揮にも名を連ね、第2次世界大戦下、ユダヤ人をワルシャワ動物園に匿った実在の人物を演じた。今作のPRのため、2017年11月には初来日。「政治家やセレブリティじゃなくても、誰かの人生をより良きものにできる。自分にも何かができるはずと気づいてほしい」と訴えるとともに、当時の#MeTooの盛り上がりについても触れ「いまはSNSで、性別も人種も宗教も性的指向も問わず、誰もが情報発信できる時代。こうした問題がうやむやにならず、公にされることは重要なこと」と語る姿が印象的だった。『モリーズ・ゲーム』(2017)今作も実在の人物で、オリンピック候補のトップアスリートからセレブが集う高額ポーカールームの経営者へと転身を遂げたモリー・ブルームを好演。ハリウッドの都市伝説的なポーカールームにはスター俳優や大物プロデューサー、大企業の経営者らが集まってくる。モリーの回顧録を脚色し、初監督に挑んだのは『ソーシャル・ネットワーク』のアーロン・ソーキン。自身で運命を切り拓く、強い意志を持った肝の据わった女性はジェシカにハマる。『AVA/エヴァ』(2020)フレックル・フィルムズ製作作品。ジェシカが演じた暗殺者エヴァは、揺れ動いている。かつては優等生だったがアルコールの依存症となり、やがて闇の組織に雇われる。命じられるまま完璧に任務をこなしながらも、「なぜ標的たちは殺されるのだろうか」と自問自答し、つい標的に尋ねてしまうことも…。そんな彼女は危険分子と見なされ、最強の殺し屋(コリン・ファレル)が彼女を追う。彼女の人生に何が起こったのか、家族との関わりなどにも迫った暗殺者ものとしては異色作。監督を務めるはずだったマシュー・ニュートンが暴行・DVの告発により降板、『ヘルプ』のテイト・テイラー監督が代わりに起用された。ジェシカも裏切りにあったような気持ちだったのではないだろうか。『355』(2022)第94回アカデミー賞授賞式では批判もあったエイミー・シューマーら3人の女性司会陣。ただ、冒頭の「私たち3人のほうが男性1人を雇うより安い」というジョークは的を得ていた。ハリウッドの男女のギャラ不均衡をいち早く問題視したのもジェシカだ。「もう、共演俳優の4分の1しかギャラがもらえないような仕事は受けない」と、米「Variety」に語ったこともある。フレックル・フィルムズ製作の今作では、これまで男性俳優たちが演じてきたスパイアクションを自身とペネロペ・クルス、ルピタ・ニョンゴ、ダイアン・クルーガー、ファン・ビンビンで実現。ギャラは5人同額で均等に支払われたという。今後は、マイケル・シャノンと再タッグ、カントリー・ミュージック殿堂入りを果たした女性シンガー、タミー・ワイネットを演じるTVシリーズ「George&Tammy」(原題)、レイフ・ファインズと再共演となる『TheForgiven』(原題)、エディ・レッドメインと共演するNetflix映画『TheGoodNurse』(原題)ほか、ジェイク・ギレンホールとSF作品『TheDivision』(原題)に挑むなど、休む暇もない。ジェシカの“やりたいこと”は、まだまだ道半ばに過ぎないのだ。(text:Reiko Uehara)■関連作品:ツリー・オブ・ライフ 2011年8月12日より丸の内ルーブルほか全国にて公開© 2010 Cottonwood Pictures, LLC. All Rights Reservedヘルプ〜心がつなぐストーリー〜 2012年3月31日よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開© 2011 DreamWorks II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.ゼロ・ダ−ク・サーティ 2013年2月15日より全国にて公開Jonathan Olley © 2012 CTMG. All rights reservedユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命 2017年12月15日よりTOHOシネマズみゆき座ほか全国にて公開© 2017 ZOOKEEPER’S WIFE LP. ALL RIGHTS RESERVED.AVA/エヴァ 2021年4月16日より新宿バルト9ほか全国にて公開©2020 Eve Nevada, LLC.355 2022年2月4日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開©2020 UNIVERSAL STUDIOS. ©355 Film Rights, LLC 2021 All rights reserved.
2022年04月03日アクション映画『ダイ・ハード』シリーズなどで知られる、俳優のブルース・ウィリスが、俳優業を引退するとを発表しました。引退については、親族が、ブルースのInstagramアカウント上で公表しています。ブルースは2022年3月31日現在、67歳。失語症を発症したことが、引退の大きな理由のようです。ブルースの素晴らしいサポーターのみなさまへ私たちの最愛のブルースは健康上の問題を抱えており、また、失語症と診断されたことをご報告します。熟慮の末、ブルースは、彼にとって非常に大きな意味のあるキャリアから離れることにしました。brucewillisbwーより引用(和訳) この投稿をInstagramで見る Bruce Willis(@brucewillisbw)がシェアした投稿 引退について公表した家族は、「ブルースはいつも『大いに楽しめ』といっています。私たちも、そうするつもりです」と続け、ファンへの感謝をつづっています。ブルースの引退について、ネットからは悲しみの声が上がりました。・これまで、素晴らしい演技をありがとう。もう見られないのはさびしいけれど、健康第一で過ごしてほしい。・僕の中でブルースといえば、映画『アルマゲドン』だわ。また見直そうと思います。・残念だけど、長生きしてほしい。個人的には『シックスセンス』が一番好きです!・悲しいな。でも、数々の名作をありがとう。過去の作品を見返して、素晴らしい演技に浸りたいと思います。さまざまな作品で、世界中の人々を魅了した、ブルース。彼の名演技は、作品の中で輝き続けることでしょう。[文・構成/grape編集部]
2022年03月31日第94回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』。作品の大部分でロケ地となった広島は 、2つの世界遺産を有し、旅行先としてもオススメ。広島出身のライターがロケ地を中心に広島の魅力をお伝えします。ドライブ・マイ・カーのロケ地巡り映画『ドライブ・マイ・カー』は、西島秀俊さん演じる舞台俳優兼演出家の家福悠介が、広島で三浦透子さん演じる寡黙な専属ドライバー渡利みさきと出会い、彼女との静かな会話の中で、これまで目を向けることのなかったことに気づかされていく、というストーリー。要となるシーンで、広島の美しい光景が多く登場します。その中から、特にオススメのスポットを3か所を厳選。また、広島の定番の観光スポットを3か所、ニュースポットを1か所紹介します。絶対に行くべき『ドライブ・マイ・カー』ロケスポット3選ロケ地巡りにオススメのスポットを紹介します。中工場(広島市環境局中工場)スタイリッシュで近未来的なこちら、一体何の工場だと思いますか?答えは、ごみ処理場。建築家の谷口吉生さんによる設計で、2004年に竣工されました。2階部分は吹き抜けがある設計になっています。筆者は、映画内でその理由を初めて知り、胸がアツくなりました。広島平和記念公園広島にある2つの世界遺産のうちのひとつ、原爆ドームがある公園。建築家の丹下健三さん設計です。敷地内には、広島平和記念資料館や、映画内で演劇祭の練習場となった広島国際会議場があります。映画の出演者全員が登場するこちらも、広島平和記念公園内にあります。新天地公園物語が大きく動く出来事の発端となる場所。公園周辺エリアは、古くから飲み屋街として知られています。何度でも行きたい広島の定番観光スポットロケ地以外の、広島の定番観光スポットを紹介します。宮島広島の観光スポット第1位といえば、やはり宮島ではないでしょうか。修学旅行で行ったことがある、というかたも多いかもしれません。世界遺産である厳島神社をはじめ、千畳閣、水族館、もみじ饅頭屋、眺めの良いカフェ、工芸品の店など、魅力的な観光スポットが多数あります。オーソドックスなアクセス方法は、JR山陽本線宮島口駅または、広島電鉄広電宮島口駅から宮島行きのフェリーに乗車し、島に上陸というもの。フェリーから宮島のシンボルである大鳥居(2022年12月末まで工事の予定)が見えると、いよいよ宮島だ!と広島に住んでいても胸が高鳴ります。この経路ももちろん良いのですが、一度宮島へ行ったことがある人は「世界遺産航路」がオススメ。その名の通り、広島にある2つの世界遺産を結ぶ航路。広島のもうひとつの世界遺産である原爆ドームすぐ横を流れる元安川から出航しています。乗船時間は約45分。原爆ドームから公共交通機関を乗り継いで宮島へ行くには、何度か乗り換えが必要なので、とてもアクセスが楽なルートです。ちなみに、この世界遺産航路では、先に紹介した中工場を船から眺めることができます。尾道市大林宣彦監督による尾道三部作の舞台で、近年はサイクリストの聖地として有名です。尾道市と愛媛県今治市を結ぶ全長約60kmの道「瀬戸内しまなみ海道」は、日本で初めて海峡を横断できるようになった自転車道。瀬戸内海の島々を眺めながらサイクリングが楽しめます。海沿いにある、ホテル、飲食店、自転車店、雑貨店の複合施設が人気です。坂道が多い町で、山あいにある千光寺からは、尾道の町が一望できます。優しく輝き、穏やかな瀬戸内海は、非常に心が癒されます。また、町猫が多く、尾道市立美術館の警備員さんと猫さまとのやり取りはSNS上でしばしば話題になっています。呉市かつて軍港として栄えた町。大人気アニメ映画『この世界の片隅に』の舞台としても有名です。大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)が人気観光スポットになっています。ちなみに、呉市で一番高い山、灰が峰の標高と呉市の郵便番号は、どちらも「737」です。広島市内の新たな観光スポットここ数年で、広島市内には新しい観光スポットがいくつか誕生しています。おりづるタワー2016年にオープンした、広島の新たな観光スポット。原爆ドームからほど近く、展望台、物産館等ある複合施設。屋上の展望台からは、川の多い広島の街を一望できます。展望台から1階までは、エレベーターだけでなく、ゆっくりとスロープで行き来することも可能。なんと、スロープの中央にはすべり台が設置され、すべりながら降りられるようになっています。また、広島駅西側の飲み屋さん街(通称エキニシ)、広島東洋カープの本拠地であるMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島もオススメ。食に関しては、ソウルフードの「お好み焼き」はもちろんのこと(広島において「広島風お好み焼き」はNGワード)、夏限定で毎年6月10日に漁が解禁される小イワシの刺身は、ぜひ一度食べていただきたい名物です!見どころ満載の広島ここ数年で、広島の観光スポットはかなりパワーアップしています。『ドライブ・マイ・カー』のロケ地や、定番のスポットを巡りにぜひ広島へ行ってみんちゃい!文・小田原みみ文・小田原みみ
2022年03月28日第94回アカデミー賞授賞式が3月28日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され『コーダ あいのうた』が作品賞をはじめ3冠に輝き、幕を閉じた。同作は劇場公開とApple TV+での配信が同時に行われており、配信サービスの映画が初めて作品賞を受賞する快挙となった一方、同じ配信サービスが提供する作品として、注目を集めていたNetflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は11部門12ノミネートにも関わらず、ふたを開ければジェーン・カンピオンが監督賞を受賞するのみに留まる結果に。ノミネートされた3部門(作品賞、脚色賞、助演男優賞)すべてを受賞した『コーダ あいのうた』とは対照的な結末となり、両者の映画製作に対する戦略の違いが浮き彫りになった。授賞式の主役はウィル・スミス第94回アカデミー賞授賞式の主役は、ウィル・スミスだったと断言したい。過去2回にわたり、主演男優賞候補となっていたスミスが、渾身の主演作『ドリームプラン』で“3度目の正直”となる悲願の初受賞を果たしたのだ。オスカー像を手にしたスミスは、自身が演じたリチャード・ウィリアムズについて「本当に強く家族を守った男だった」と涙ながらにコメント。「悪口を言われても、軽蔑されても、笑顔を絶やしてはいけない。自分は愛情を引きつける船のような存在でありたい。これは受賞の涙ではなく、人々に光を射すことができる喜びから来ているのです」と感無量の面持ちだった。しかし、受賞コメントの中に“謝罪”の言葉も含まれていたことは、残念なことだった。生中継ゆえ、世界中の視聴者が目撃することとなったが、自身の妻であるジェイダ・ピンケット・スミスを侮辱したクリス・ロックに対し、スミスが強烈なビンタをお見舞い。席に戻ると“Keep my wife’s name out of your fxxking mouth(妻の名前を二度と口にするな)”と抗議の声をあげたのだ。スミスの行動には、放送直後からSNSなどでさまざまな反応が見られ、おおむね勇気ある行動として賛同する声が多いようだ。何より、ことの発端はロックの侮辱的発言にあるのだが、結果的にアカデミー賞の歴史に良くも悪くも名を残す事件となってしまったのは事実。それも含めて、今宵の主役がウィル・スミスだったことは間違いない。ジェシカ・チャステインが投げかけた感動のメッセージ『タミー・フェイの瞳』で主演女優賞を初受賞したジェシカ・チャステインのスピーチは、ひと際感動的だった。喜びと感謝を伝えると同時に、国内外で絶えることのない暴力や分断、それに伴う差別と偏見、さらに高い自殺率に言及し、「(役柄を通して)前進することができると信じています。絶望や孤独を味わっているすべての人へ、誰もがユニークであり、無条件に愛される存在と知ってほしい」とメッセージを送ると、会場は大きな拍手に包まれた。チャステインのスピーチが示した社会的少数者への誠実な姿勢は、今年の受賞結果にも少なからず反映されることになった。『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァーが助演男優賞に輝き、男性のろう者の俳優として、初めてアカデミー賞の俳優賞を受賞。また、『ウエスト・サイド・ストーリー』で助演女優賞を受賞したアリアナ・デボーズは、オープンリークィアの有色人種として、初めて俳優部門のオスカー像を手にした。「アイデンティティを疑問に思ったり、闇の存在を感じたりしたとしても、私たちの場所は必ずどこかにあるはず」という力強い受賞スピーチが印象的だった。ウクライナ侵攻に対する静かなる抗議ウクライナ出身の俳優ミラ・クニスは、主題歌賞にノミネートされた「Somehow You Do」を紹介の際、ステージに登場。具体的に祖国の名をあげる代わりに、「今、世界で起きている出来事には、失望させられます。しかし、荒廃と向き合う人々の強さと尊厳を目の当たりにすると、心を動かされずにはいられません」とメッセージを発信。楽曲のパフォーマンスが終わると、「#standwithukraine」というハッシュタグとともに、犠牲者への黙とうと現地への支援を訴える声明が画面に映し出された。また、レッドカーペットや授賞式では、青いリボンを身に着けた出席者の姿もちらほら。これは難民支援を訴える意味合いがあり、やはり現在のウクライナ情勢を鑑みたスターたちの意思表明だった。セレモニーを通して、声高な反戦メッセージが発信されることはなかったが、こうした静かなる抗議によって、視聴者の関心を喚起させる姿勢はやはり重要だ。結局、司会は必要なの?時短効果は思ったほどでは…『コーダ あいのうた』のおかげで、基本的には“愛にあふれた”ハートウォーミングな授賞式となった第94回アカデミー賞。ただし、あえて言わせてもらうと、全体的に間延びし、散漫な内容だった。クリス・ロックの侮辱発言を例に挙げるまでもなく、プレゼンターのおしゃべりに時間を使いすぎで、肝心の受賞者スピーチが短くカットされそうになることも(濱口竜介監督の受賞スピーチが、オーケストラに寸断されそうになった場面は、その一例)。そもそも今年はアカデミー賞会員の反発を買ってまで、放送時間の短縮を目的に、美術賞、音響賞、作曲賞、編集賞、メイクアップ&スタイリング賞、短編アニメ賞、短編映画賞、短編ドキュメンタリー賞を事前収録にしたにも関わらず、その効果は思ったほどではなかった。何より、司会者って必要なの?画期的な受賞結果で歴史的一夜となった第94回アカデミー賞授賞式だが、“テレビ番組”としての限界も垣間見え、課題は山積だ。(text : Ryo Uchida)
2022年03月28日