東京・赤坂ACTシアターにて今秋上演される『ふるあめりかに袖はぬらさじ』の製作発表が都内で行われ、出演者の坂東玉三郎、檀れい、松田悟志らが記者会見を行った。有吉佐和子が劇作を手がけ、杉村春子の主演で『ふるあめりか~』が初演されたのは、1972年のこと。杉村の当たり役となった芸者・お園役は、1988年に玉三郎に受け継がれた。今回が10度目の出演となる玉三郎は、「新しい顔ぶれならではの新しい舞台ができれば。赤坂ACTシアターという空間の使い方を意識して、この戯曲をできる限りお客様に身近に感じていただけるようにしたい」と意欲を見せる。物語は、開港まもない幕末の横浜を舞台に展開する。通辞・藤吉(松田)とのかなわぬ恋に身を焦がす遊女・亀遊(檀)。彼女が自害すると、やがて、“外国人から操を守るためだった”という説が流れるように。亀遊の最期に居合わせたお園は、事実は違うと知りながらも、攘夷派の思惑にのせられ、そのプロパガンダに加担させられてしまう。檀が「すばらしい女優さん(波乃久里子、宮沢りえ、寺島しのぶら)が演じてこられている役なので、私もそれに負けないように、一生懸命取り組んでいきたい」と緊張気味に語る一方で、松田は「お話をいただいたとき、まず“どうして僕なのか”と思った。それで玉三郎さんに“僕に出来ますか?”とお訊きしたら、“大丈夫です”とのことでしたので、それを鵜呑みにしてがんばることにしました」とどこまでも屈託がない。玉三郎はそんなふたりについて、「檀さんは、劇団(宝塚歌劇団)で十分に経験を積んでいらっしゃる。優しいイメージの奥にある芯の部分が本番では出てくると思う。松田くんは、この記者会見で皆さんが持った印象どおりの人。そこをあの時代(幕末)にうまく持っていくことが大事だと思う」と語った。すでに玉三郎と松田は、5月3日から6日まで愛知・御園座、5月12日から27日まで京都・南座にて同作品を演じており、檀のみが東京公演からの参加となる。公演は赤坂ACTシアターにて、9月28日(金)から10月21日(日)まで開催。チケットぴあでは、6月1日(金)23:59までインターネット先着先行プリセールを受付中。一般発売は6月2日(土)より。
2012年05月28日1967年に有吉佐和子が小説として発表、すぐに大反響となって舞台化されて以来、数々の名優が演じてきたことでも知られる『華岡青洲の妻』。世界初の全身麻酔手術を成し遂げた華岡青洲の苦難や、その実母と嫁の青洲を巡る闘いを、高い文学性と共に描きだした名作だ。6月から行われる新派公演に出演するのは、水谷八重子と波乃久里子、そして新派初参加となる三田村邦彦。これまで山田五十鈴、杉村春子、淡島千景の演じる姑・於継のもと嫁の加恵を演じてきた水谷が、今回初めて於継に挑戦するのも見どころだ。都内で開かれた記者会見では、三者三様の意気込みが語られた。『華岡青洲の妻』公演情報江戸時代中期の紀州。名門の家から隣町の貧乏医者・華岡青洲(三田村)に嫁いできた加恵(波乃)は、華岡家を取り仕切る美しい姑・於継(水谷)や、口は悪いが優しい義妹・於勝(甲斐京子)、おとなしい義妹・小陸(瀬戸摩純)に囲まれて幸せな毎日を送っていた。京都にいる青洲の遊学費用のため今日も4人で機を織っていると、研究にひと区切りがついたという青洲が急に帰宅する。大喜びの於継はあれこれと青洲の世話を焼くが、新郎不在のまま式を挙げ、そのまま暮らしてきた加恵は出る幕がない。その後も研究に没頭する青洲は加恵に優しく接するものの、姑と嫁との争いは次第に激しさを増してゆく。数年後に青洲の麻酔実験が人体に及ぶと、我れ先にと自らの身を差し出すふたりだったが……。記者会見では、「これまで素敵な於継ばかりを見てきましたので、大きなお役すぎて自分が演じるなんて考えたこともありませんでした」と、率直な心境を吐露した水谷。「でもこれから稽古を通して、加恵に青洲を渡したくないという気持ちをどう感じていけるか。その実感を経て、初日までにまた違った於継を表すことが出来れば」と決意を語った。その横で「(水谷は)於継と性格的に似ているから大丈夫」と笑わせたのは波乃。小陸と加恵で4度の出演経験があり、「杉村先生に厳しく教えていただいたり、父(先代勘三郎)が惚れこんで青洲を演じたりと思い出の詰まった作品。今回はお姉ちゃま(水谷)が於継ということで、加恵として嫁姑の火花を散らさなければと思っています」と語った。「憧れの新派の舞台に出られるとは」と緊張気味の三田村も、「脚本の完成度が素晴らしくて、さすがは有吉先生と感動しました。テレビドラマによくあるような嫁姑の戦いに終始しないのも面白いですね」と感慨深げ。その言葉通り、美しい女同士の闘いを通して、人間の本質が丹念に描かれており、観劇後には深い余韻を残す。そして、於継や加恵、於勝、小陸とそれぞれに女の業を見せる姿に、観る者はつい共鳴してしまう。そこに、本作が愛され続ける理由はあるのだろう。6月4日(月)から23日(土)まら東京・三越劇場にて上演。チケットは4月30日(月)に一般発売開始。その後、栃木、岐阜、京都、岩手、静岡、滋賀、愛知、石川で公演を行う。取材・文:佐藤さくら
2012年04月20日多部未華子が主演する舞台『サロメ』の製作発表が3月12日、新国立劇場で行われ、多部のほか共演の奥田瑛二、麻実れい、成河、演出の宮本亜門、翻訳を手がけた作家の平野啓一郎らが登壇した。本作は、新国立劇場の演劇シリーズ「JAPAN MEETS… ―現代劇の系譜をひもとく―」の第5弾。『サロメ』は言わずと知れたオスカー・ワイルドの名作戯曲で、演劇のみならずオペラでも知られる傑作だ。今回は新たに平野がフランス語からの翻訳を手がけ、現代の日本にマッチした瑞々しい台詞劇として生まれ変わらせた。そこに宮本の演出が加わることによって、これまでの官能的なサロメ像を廃し、新たに無邪気さゆえの残酷さをたたえた人物としてサロメ像を作り変える。サロメ役は多部、そしてサロメが対立する養父ヘロデ王に奥田、元夫の弟ヘロデと再婚した母ヘロディアスには麻実、ヘロデに幽閉されていた預言者ヨナカーンに成河を配する。演出の宮本は、この2月にNY凱旋公演を終えた自身演出の舞台『金閣寺』と今回の『サロメ』の世界観に近いものがあったと話す。「思春期の主役が社会的な犯罪行為に至る。ひとりは首を切り、ひとりは金閣を燃やす。その後彼らは成長し、発見をし、何かを知っていくとともに、大きな時代の変革が起きる。『サロメ』ではキリストが生まれる前の時代を治めていたヘロデ王が時代の不安感をどう感じ、サロメがそれをどう変えていくのか。それらが読み取れる象徴的な作品だと思う」。また、多部の起用については読売演劇大賞 杉村春子賞を受賞した初舞台作品『農業少女』を観たのがきっかけだそうで、「妖艶というより芯がある。僕にとってはオスカー・ワイルドの描きたかったものと多部さんの持っているものがピタっとくる」と期待を寄せる。一方、多部は作品へのプレッシャーからかかなり緊張気味。「こういう場で自信のあることを述べたいものなのですが、なにぶん舞台経験があまりに浅いもので皆さんについていきたいなと思う次第であり、今はネガティブな言葉しか出てこないのですが、本番初日には堂々と皆さまの前に立って演じられたら」とか細い声で決意表明。それが逆に場の笑いを誘い、皆の空気を和ませていた。公演は5月31日(木)から6月17日(日)まで、新国立劇場 中劇場にて。チケットは3月17日(土)より前売開始。なお、チケットぴあでは3月14日(水)11:00まで先行抽選販売「プレリザーブ」を受付中。
2012年03月13日