意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「総力戦研究所の教訓」です。空気に流されず、科学的根拠に基づいた政策を。80年前の12月に太平洋戦争は始まりました。ところが開戦の年の4月に当時の帝国政府は「総力戦研究所」を立ち上げ、日米開戦となった場合にどのような戦況になるのか、様々な観点から検証するよう指示を出していました。研究所に集められたのは30代前半の精鋭たち。大蔵省や商工省など省庁のエリート官僚や、陸軍省の大尉、海軍省の少佐、日本製鐵、日本郵船、日銀、同盟通信社(のちの共同通信社)の記者ら30数名で、模擬内閣を作り、徹底検証されたのです。当時の証言や資料をもとに猪瀬直樹さんがまとめたルポルタージュが、1983年に出版された『昭和16年夏の敗戦』です。総力戦研究所が引き出した結果は、序盤は日本優位に進み、中盤は産業力、物量の差が明らかになり戦況は悪化、ソ連の参戦で開戦から3~4年で負けるというものでした。ところが、すでに世の中は開戦の機運が高まっており、メディアもそれを煽るようにしており、引くに引けない状況に陥っていました。天皇はこの空気を諌めようと、東條英機に託し、日米交渉の姿勢を見せたところ、「東條弱腰」と多数の批判の投書が寄せられた。結局、東條は「日露(戦争)がそうだったように、戦争はやってみないとわからない」とエリートたちの試算を反故にし、予想通りの敗戦になってしまったのです。実は昨年、この本が再びヒットしました。それは新型コロナウイルスの対策をめぐり、同じようなことが起きたからです。科学者や医療関係者が、人々の行動規制案を提出しましたが、専門家会議は解体され、ひとつの分科会に格下げとなり、データ活用のために立ち上げた接触確認アプリCOCOAは、数か月にわたり機能していなかった事態が明らかに。人々の行動の追跡も、PCR検査もままならない状況では何も判断できません。科学的根拠のないまま、Go Toや東京オリパラなど、まあなんとかなるだろうと正常性バイアスがかかり、精神論で乗り越えようとする節がある。80年前と変わっていない体質があることを認識しなければいけません。これは僕ら一人一人に刷り込まれた感性かもしれないと、自分を疑う目線を持っていたいですね。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2021年6月2日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年05月28日2夜連続放送のドラマスペシャル「二つの祖国」に、ビートたけしと笑福亭鶴瓶の出演が決定。それぞれ東條英機と大川周明を演じ、ドラマ後半の山場となる東京裁判に登場することが分かった。本作は、大戦前・中・後のアメリカと日本を舞台に、歴史に翻弄されながらも、激動の時代を生き抜いた若者たちの愛と奇跡の物語を、小栗旬、ムロツヨシ、多部未華子、仲里依紗、高良健吾、新田真剣佑ら豪華キャストで描くヒューマンドラマ。新たに出演が発表されたたけしさんと鶴瓶さんは、ドラマの同じシーンで共演するのは今回が初めて。陸軍軍人であり、戦後A級戦犯として起訴された元総理大臣の東條と、東京裁判では唯一民間人としてA級戦犯として起訴されたが、のちに釈放される思想家の大川と、法廷で審理に臨む2人。裁判中には大川が東條の頭を叩くという、衝撃のエピソードを忠実に再現したシーンも描かれ、見どころのひとつとなっている。以前も東條を演じたたけしさんは「東京裁判は何度も見てるシーンだから、ちょっとね、やりやすいんだかなんだか…あまりに現物を見てるから、『本当に似てるかな』とそっちのほうを考えちゃいました。あと『なに言ってるわかんない』と東條が怒るシーンも、きっと一般の人も印象に残ってるから、自分が似てないと言われるのはやだなと。似てるのも変だけど(笑)」と今回演じてみての心境を明かす。一方、鶴瓶さんは「大川周明やから叩けるんですよ!たけしさん は叩かれへん!でもお兄さん(たけしさん)喜んでましたよ、コントみたいって。一発パーン叩いて、えらい音がなったんですよ(笑)」と注目シーンの撮影の様子を語っている。さらに、同じくこの東京裁判のシーンに登場する広田弘毅役のリリー・フランキーは「たった1日(の撮影)でしたけど、同じ日にたけしさん、鶴瓶さんとご一緒できて、ちょっと二日酔いで来て体がだるかったんですけど、2人のヅラを見た瞬間に体が元気になりました」と笑いつつ、「実際にあった話なんですけど、あの2人でやると実話を越えちゃいますよね。でもみなさんすごくいいもの作られている、そういうエネルギーに満ちている現場だったので出来上がりが楽しみです」とコメントしている。テレビ東京開局55周年特別企画 ドラマスペシャル「二つの祖国」は3月23日(土)、24日(日)21時~テレビ東京系にて2夜連続放送。(cinemacafe.net)
2019年03月12日iTunes Storeでは、映画レンタルを100円で楽しめるお得な「今週の映画」を毎週提供中です。今レンタルすれば30日間好きな時に視聴できるので、すぐには見られないという人もチェックしておかなきゃソン! レンタルは初めてという方のお試し利用にもおススメですよ。○日本人が描かなかった日本の戦後数々の映画やドラマで日本の歴史を動かしてきた西田敏行が、今度は終戦後の日本でGHQを動かしますよ。今週の映画『終戦のエンペラー』は、昭和天皇が戦犯として裁かれることがいかにして回避されたのか、史実をもとに描いた作品です。天皇に戦争責任はあるのか、その調査を命じられたGHQの将校 ボナー・フェラーズ(マシュー・フォックス)を主人公に、様々な人物の証言を集めながら真実に迫るストーリー。西田敏行はフェラーズの恋人だった日本人女性の伯父で、陸軍大将という役どころです。戦前、日本の精神性について研究するフェラーズに数々の指南を与え、彼が日本を理解する鍵となります。この他、優秀すぎる通訳・高橋や、フェラーズを論破する近衛文麿など、日本人俳優演じるキャラクターも見所です。アクションどころか発砲のひとつもなく、近年のハリウッド映画としては異様に地味な作品ですが、日本ではタブー視されるようなテーマを堂々と描いてくれたおかげか、米国では奮わなかったものの日本ではそこそこのヒット作となりました。8日からは、同じく戦争終結を日本の視点で描いた『日本のいちばん長い日』が公開されます。両方を比べて見ても面白いかも!(作品紹介)>> 1945年8月30日、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)を引き連れたマッカーサー元帥が、第二次世界大戦で降伏した日本に降り立った。直ちにA級戦犯の拘束に乗り出した彼は、知日家であるフェラーズ准将に、ある極秘任務を命じる。それは「この戦争における天皇の役割と、戦争の真の意味での責任者を10日間で突き止めろ」という内容だった。日本人女性と恋に落ちた過去を持ち、日本文化をこよなく愛しているフェラーズは、この任務を通して崩壊寸前の日本を助けようと決意。さっそく東條英機元首相を始め、日本の元要人たちに次々と接触していく。だが連合国やマッカーサー、さらに日本側の思惑が複雑に絡み、調査は予想以上の困難を強いられていく……。果たして戦争を始めたのは誰なのか? 終わらせたのは誰なのか? そして、崩壊した日本の新たなる礎は、いかにして築かれたのか? 日本の運命を決定づけた知られざる物語が今、始まる。つながり作品主人公 ボナー・フェラーズを演じたマシュー・フォックスは、テレビドラマ『LOST』シリーズのジャック役でご存じの方も多いでしょう。映画の出演作を調べてみると、2012年の『終戦のエンペラー』に続き、2013年に『ワールド・ウォーZ』(トム・クルーズ主演)……って! 太平洋戦争後の日本で地味に歴史サスペンスを演じた後は、ゾンビ相手に世界大戦ですよ。次は米軍特殊部隊員としてのフォックスの派手な活躍を楽しんでください。
2015年08月05日