「ここ10年で葬儀の仕方にも大きな変化が表れてきましたね。身内だけで葬儀をするなど、簡略化が進み、かつ多様化してきています。これは、正社員が減って、企業が参列に参加しなくなり、香典の額が下がり、費用的に厳しくなったことも一因です」 そう話すのは、日本における地域の葬儀の違いを考察した『葬式格差』(幻冬舎新書)の著者・島田裕巳さん。葬儀に関するサービスを行っている「鎌倉新書」の’17年の調査によると、葬儀費用は全国平均で約178万2,000円だったという。葬儀に200万円近くかかってしまうというわけだ。とはいえ、同調査では、’15年は約183万9,000円、’13年は約202万9,000円だった。葬儀にかかる費用は低くなっているようだ。さらにお墓についても……。 「すでに持っている人はいいですが、これから買うには高いし、維持費も大変、おまけに場所も足りない。持つことが厳しい時代になってきています。後継者がいなかったり、地方にお墓だけ残ってしまい、『墓じまい』する人も増えています」(島田さん) 確かに、島田さんが指摘するように、葬儀やお墓にかける余裕がなくなってきたのかもしれない。それならばいっそ、できる限り安く故人を送る方法はないものか。本誌編集部で調べてみた。 最近、問い合わせが増え、注目されているのが「東京斎場ねっと」(埼玉県富士見市)による、通夜や告別式を省いた葬儀プラン「直葬」10万5,000円(税別)だ。病院など、亡くなった場所からそのまま火葬場へ運び、炉前で5~10分ほどお別れし、火葬する(火葬料金は別途)。半日程度で終了する。 同社では、告別式のみ用意した「一日葬」21万円(税別)、通常の通夜と告別式を入れた「二日葬」31万5,000円(税別)などもあるが、同社の代表・菱沼輝幸さんはこう語る。 「東京だけでいうと、利用率は直葬タイプが7割、1日タイプが2割、2日タイプが1割と、圧倒的に直葬が多いですね。ただ、あまりにあっけなく、終わった後に戸惑われる方もいるので、昨年、お別れする時間を別室にて1~2時間もうけ、お焼香できる「お別れ葬プラン」も作りました。こちらは、お別れする部屋代など、別途かかりまして、15万8,000円(税別)です」 直葬には通常、読経がない。それは少し寂しいと感じる人もいるだろう。そんな人には、お坊さんの読経をネットで頼める「みんれび」(東京都品川区)の「お坊さん便」を使うという方法もある。’15年にAmazonで法事・法要時に僧侶を手配するサービスを始め、葬儀関連のあり方に一石を投じた会社だ。葬儀の読経サービスは自社のネットで、’13年よりスタートしている。 申し込み方法はネットを見て電話で申し込むだけ。価格は(戒名の授与も含む)5万5,000円(税別)だ。 「お付き合いのあるお寺がない方や、お値段がわからず不安という声が多くなって始めましたが、好評いただいています」(広報・高田綾佳さん)
2018年06月01日「職場では動揺が広がっています。私も就職のときは手厚い福利厚生を考えて選びましたから、今回の『住宅手当』の廃止は正直ショックです。たしかに正社員と非正規社員の格差があることはわかっていました。でも、まさか正社員の福利厚生が減らされることになるとは……」 呆然とした様子でそう語るのは日本郵政グループの会社に勤める30代の一般職の男性社員だ。 日本郵便やゆうちょ銀行、かんぽ生命などを傘下に持つ日本郵政グループ(以下、日本郵政)は、福利厚生制度として正社員に支給している「住宅手当」を10月から一部廃止することを決定した--。 これまで日本郵政の社員がアパートやマンションなどの賃貸住宅に住んでいた場合、「住宅手当」として月に最大2万7,000円が支給されていた。しかし「住宅手当」が段階的に撤廃されることで、将来的に、年間約32万円もの手当が消えることに! さらに正社員だけに支給されてきた「寒冷地手当」や「遠隔地手当」なども削減される。一方的に“手当”の廃止を言い渡された前出の男性社員の怒りはおさまらない。 「そもそも日本郵政は、オーストラリアの物流会社の買収に失敗して4,000億円の損失を出しています。経営陣の過失を社員に押しつけたように思えてなりません。とくに『住宅手当』の廃止は一般職が対象。正社員のなかでも、総合職よりも立場の弱い一般職に負担を押しつけたとしか思えない。長年にわたって手当をもらってきた会社の上層部から言われても、到底納得できません」 日本郵政の方針変更について、全国紙の経済部記者は次のように分析する。 「今年1月に『非正規という言葉を、この国から一掃していく』と演説した安倍首相が推し進める『働き方改革関連法案』は、’19年度から大企業での施行を目指しています。その前に、早々に非正規社員の待遇改善を打ち出したのは日本郵政による“忖度”のようなものです。また、日本郵政の非正規社員が待遇是正を東京地裁と大阪地裁に訴えていました。両裁判所が、住宅手当や家族手当などの処遇も含め、正社員との格差は違法との判決を下したことも背景にあります」 日本郵政の一部手当の廃止は一企業のことだと安心するのは早計だ。正社員と非正規社員合わせて約40万人もいる日本郵政の“決断”が、どのような形でほかの企業に波及するのか――。今後に注目したい。
2018年05月09日こんにちは、海外在住プロママライターのさとうあきこです。職場には、正社員という太い中心柱が存在し、アルバイトやパートはそれを支える補助的役割を担ってきました。ところが、近年のアルバイトは、正社員並みの重責を押し付けられる傾向が強くなり、学生であればその本分である学業に大きな影響が出るほど過酷な労働条件下で働く例が増えています。それこそが『ブラックバイト』です。万一あなたのアルバイト先がブラックだったとき、どう対処すればいいのか、味方になってくれる法律と一緒にご紹介 します。●1.ブラックバイトの問題点って何?ブラックバイトは、そこで働くアルバイターたちに過剰な責任を押し付けるだけでなく、契約書でしばりつけ、アルバイトを辞めることさえ難しい泥沼へと追い込んでいくこともあります。まず、多くのアルバイターたちはアルバイトの契約書を熟読せずにサインしがちです。ブラックバイトはそれを見越して、労働法に触れる内容をも盛り込んでいることがあります。そして、その契約内容に見合わないアルバイターの行動に対して、損害賠償を求めてくることさえあります 。労働時間を変更したり減らしたりすること、労働内容の見直しを求めること、辞めることさえも、損害賠償の対象とされる場合があるのです。さらには、世の中にこのようなブラックバイトがあまりに多く横行しているため、アルバイターたちは自分のバイト先が”ブラック”であることに気づかず 、一つのブラックバイトを辞めても、またブラックバイトにハマるという悪循環に陥ってしまいがちなのです。●2.要チェック!アルバイトを決めるその前に確認しよう①~③そのアルバイトがブラックかどうかは、アルバイター本人に見極める目を持つ必要があります。そして、不当な扱いを受けたなら、それを証明する必要も あります。①口先や広告内容に騙されず、募集内容、労働条件は契約前にきっちりと確認して、そのコピーを必ず保管しておくことが大切。契約において、口約束は一切通用しません 。必要な条件や内容は、アルバイター側から申し出て契約書に記載してもらいましょう。②自分がどれだけの時間・どれだけの労働を行ったのか記録を残しましょう。タイムカードや勤務表などを自分のためにコピーしておく、毎日自分の労働内容を時間経過とともに細かくメモしておく、給料と明細と労働内容の照合を欠かさない などが大切です。小さな相違であっても、見つけたら報告して訂正を求めます。③その他にも、契約内容外の労働やアルバイターとしての労働範囲を超えた強い勧誘や自腹営業などを求められた時には、その場ではっきりと断ります。一方で、セクハラやパワハラを受けた時には、職場内の仲間と結束したり、証拠を集めたりして、相手に認めさせる材料を用意してから交渉する のが得策でしょう。●3.アルバイトに労働法は適用されない?そんなことはありません。アルバイターも法律上労働者であることに変わりがなく、条件さえ満たせば、労働法によって得られる権利がたくさんあります。例えば、時間給は分刻みで計算され、実働時間だけでなく、その準備としての清掃や片付け、仕込みなどの時間も労働時間として認められます。深夜などの割増手当、有給休暇を取得する権利もあります。もちろん、最初の契約内容と異なるシフトや仕事内容を求められた場合には、それを拒否し、それによって発生する収入減少分の一部を休業手当として請求することも可能 なことがあります。ブラックバイトが言う、「アルバイトにそんな権利はない!」という言葉を信じないよう、注意しましょう。●4.まとめとして~アルバイターにも権利はある!正社員とアルバイトの違いは、正規雇用か非正規雇用かにあります。従来両者は、労働量や労働内容が異なるから、給与や待遇も異なるという前提で共存してきました。ところが、近年のアルバイトは、正規雇用の正社員と変わらない労働を要求されながらも、相変わらず低い賃金や保障しか受けられず、ブラック化しています。では、解決策として、労働力を必要としている企業側が正社員を増やせばいいのかというと、人件費削減の必要性から簡単ではなく、アルバイターも仕事とそこからの収入を必要としています。だからこそ、アルバイターの労働条件の底上げのため、多くの労働法がアルバイターにも適用されるようになってきている のです。アルバイトとはいっても、立派な労働力であることを認識して、契約内容や労働内容に注意を払いましょう。そして、現場で「どうせ、アルバイトだし…」と泣き寝入りする前に、弁護士や「ブラックバイトユニオン」などの組合に相談しましょう。●参考図書ブラックバイトに騙されるな!大内裕和 著ブラックバイト大内裕和・今野晴貴 著●ライター/さとうあきこ●モデル/杉村智子
2017年12月07日仕事をするも辞めるも、今までは自分の思いひとつで自由に選択できていたはず。けれど、子どもを持つと環境を替えたいと感じていても、いろいろな絡み合う事情により、一歩を踏み出せる人は多くはないようです。今、ママにとって大きなハードルとなっている「転職」。さまざまなケースのママたちの転職ストーリーを連載で紹介していきます。■信田裕美さんの「転職するとき」信田裕美さん プロフィール大学の海洋生物学部を卒業後、非臨床試験を行う会社に勤務し、前職であるCROに転職。CRAとなった後、出産、復帰、異動を経験し退職。2016年8月からクインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン株式会社で働く4歳の女の子、2歳の男の子のママ。 【信田裕美さんの出産後の転職歴】▼1社目製薬会社が新しい薬を開発するために行う治験(臨床試験)を支援する企業(CRO) 正社員2012年11月第1子出産 → 2013年4月復帰2013年10月社内異動 → 2015年5月第2子出産 → 2016年5月復帰2016年8月退職▼2社目 現在2016年9月 クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン株式会社 正社員■好きな仕事を続けたいのに…育休明けに直面したマミートラックCRA(Clinical Research Associate)とは、新しい薬を開発するために行う治験(臨床試験)を「医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)」や治験実施計画書にのっとって適切に実施されているかを確認し、正確なデータを収集する専門職で、臨床開発モニターとも呼ばれています。出産前に働いていたのは、そんな新薬開発の中核を担う、いわゆる花形のセクションでした。出産前は、臨床開発モニターとして、治験がGCPや治験実施計画書にのっとって適切に実施されているかを確認するため、毎週飛行機で遠い病院まで出張をするような生活をしていました。結婚はしていましたが、そんな仕事柄だったことと、その職である程度のところまで上り詰めたいと思っていたので、しばらく子どもを持つことは考えていませんでした。けれど、年齢を考えると…と思っていた矢先、運よく長女を授かり、2012年11月末に出産。当初は、子どもが1歳になってから仕事に復帰と考えていましたが、1歳児での保育園入園はとても難しいと言われていたこともあり、出産から5カ月後の翌年4月、出産前から申し込んでいた保育園に娘を0歳児で入園させ、職場復帰をはたしました。私の両親が同じマンションに暮らしていたこともあり、両親のサポートを受けて、復帰後も今まで通りモニターの職に戻り、それまでと変わらない仕事をするつもりでいました。週1回ほどある遠方への出張もすべてやる覚悟をし、復帰をしたのです。そこで、上司から言われた言葉は「ゆっくりしていていいからね」でした。0歳児の子どもを持つワーキングマザーへの配慮から出た言葉でそこまで深い意味はなかったかもしれませんが、自分の気合とは裏腹に、職場でも温度差が感じられ、仕事に対する熱が一気に冷めていくように感じました。同じ部署内で臨床開発モニターをサポートする業務をするのですが、「このまま続けても、これまでの仕事に戻ることはできない。ここにいる意味は?」と悩み、大好きだった臨床開発モニターの仕事を離れることを願い出て、異動をしました。異動した先は、マネジメント部署です。今までは臨床開発モニターとして治験に関することだけをしてきましたが、マネジメントとなると人や仕事の管理になるので、会社全体の業務に携わります。マネジメント業務には広い視野が必要で、働くうちに自分の仕事に対する考え方も次第に変わっていきました。異動してしばらく経ったころ、転職してきた方が上司になったんです。その上司は、他社で培ったノウハウを一つずつ丁寧に教えてくれました。例えば、資料に関することであれば、マトリクスの作り方であったり、プレゼンテーションの表現の仕方であったり。この職種では今の会社しか知らない私にとって、他社の違う視点を見せてもらえたことはとてもいい経験になりました。そんな上司の下で引き続き働いて、もっと仕事の幅を広げたかったのですが、ちょうど2人目を懐妊。はじめはモニターの仕事ができないならと異動した部署でしたが、産休に入る頃には、「今度復帰する時は、マネジメントを極めていきたい!」と思うほどになっていました(笑)。 ■「勉強してきます!」と10年勤めた会社を退職2015年5月、男の子を出産し、翌4月に2回目の育休から復帰しました。もともと子どもは男女1人ずつと願っていたので、次こそ仕事をがんばる番だと思っていました。でも、自宅は最寄り駅までバスで40分、そこから保育園を経由して、電車で通うと、勤務地まで片道で2時間ほどかかっていました。子ども2人を育てるようになって、初めて、今までの生活は子どもが1人だったから何とかなっていたと痛感しました。平日の夜は、かろうじて何とか子どもの世話だけはこなしていましたが、それでも早く寝かせることは難しい毎日でした。きちんと睡眠をとらせることに精いっぱいで、それ以上のことは何も子どもたちにしてあげることはできなくて。そんなところに急遽、異動が決まり…。今まで10年間がんばって勤めてきましたが、問題が2つ重なったことで、環境を変えてもいいのかも、と思うようになりました。そして、現在の会社に転職。運よく駅の近くにいい土地を見つけ、家まで購入し、自ら環境をガラリと変えたのです。退職のときは、「いつか自分を育ててくれた方々に恩返しできるように、もっといろいろな世界を見てみたい!」という気持ちで「もっと勉強してきます」と挨拶をしました。転職先の新しい職場環境で仕事をする中、家まで建てるのは想像以上にハードな毎日でした(苦笑)。でも、私自身「大変なことは効率よくギュッと短期間にまとめたい」と思うタイプで、「家を買うことが、新しい仕事を頑張るモチベーションになるのでは」と、あえて厳しいタイミングで、一度に環境を変えることにチャレンジしました。■仕事もプライベートも「がんばる時期」だった1年前、今は…転職後の仕事内容は、以前と同じくCROになります。通常、臨床開発モニターは、臨床データの収集のほか、治験を始めるための申請等の手続き書類の作成まで、1つの案件の1から10まですべてを、1人の臨床開発モニターが担当します。しかし、新しい会社では1人ですべてを抱えるのではなく、専門性をもった人たちがそれぞれの分野で役割を果たせるようなスタイルになっており、私もまた、子育てしながらでも、新薬開発の一部を担えるかもと思っての転職でした。今は臨床開発モニターの一連の仕事の中でも、申請や手続きの部門を担当しています。申請が通らないと治験が始まらないので、この仕事も責任重大。追及するほどに楽しく、やりがいのある仕事です。人に伝えるという点では以前のマネジメント部で培ったことが生きていると感じることも多く、今はこの分業化された「手続き」についての専門性をもっと深めたいと思うようになりました。ようやく転職をして1年が経ちました。転職当時は当然、今まで作り上げてきたネットワークがなくなり、スキルや地位が通用しない0からのスタート。さらに、本来の業務とは関係のない、システムや手続きなど会社独自のルールでもわからないことが多く、それらを誰に聞けばいいのかさえもわからないという状況でした。なかなか仕事が進まず、転職から半年くらいは終わらない仕事を持ち帰り、夜中の3時まで作業をするなんてこともありました。その一方で、購入した家の設計についても、あれこれ考えなくてはなりません。当時、夫はもちろん両親にも心配をかけるほど疲労困憊の毎日でした。でも、今はようやく仕事にも慣れ、駅から近い家も完成し、子どもたちと一緒にごはんを作ったり、夕食後には遊んだり、勉強をしたりする時間を持つことができるようになりました。週末は、近くの海で大好きなサーフィンを家族で楽しめる。そんな、求めていた生活をようやく送れているといった感じがします。<ママの転職 Q&A>Q:転職をして感じたメリットはなんですか?A:何といっても、1.在宅勤務が月に9回、2.コアタイムが11時からのフレックス制で、子どもの通院などでも午前半休を使わなくてもいい、など人事制度が整っている。3.引っ越したこともあり通勤が1時間に短縮、4.通勤時間短縮で、時短勤務(7時間)からフルタイム勤務(7.5時間)へと変更できた点が大きいですね。Q:転職をして家庭環境は変わりましたか?A:在宅勤務が月に9日あるので、平日でも週2日は自宅勤務が可能という環境です。やりくりすれば正社員として働きながら、平日の子どもの習い事にも対応することもできるんです。今までできていなかった分、子どもたちにたくさんの有意義な時間を与えてあげたいと思っています。Q:転職を考えている人へ一言コメントA:転職は単に働く場所が変わるだけではなく、人間関係もガラッと変わるので、仕事を覚えるまで、環境に慣れるまでの期間を長く見込んでおいたほうがいいと思います。大変な時期はできるだけ家族に頼れる体制、ファミサポ、病児保育を整え、もし大変だったり失敗したかなと思うことがあっても、半年間は自分を信じてがんばってほしいです。「大変なことは一度にすませたい」と子どもをできるだけ近い年齢で計画的に出産したり、転職と家購入を同時期にしたり、仕事だけではなくあらゆることを効率的に考え、進めていく信田さん。それでも2回の産休・育休取得中は会社での評価対象ではなくなるため、同期と比べると昇進ができないというジレンマを感じることもあったそうです。「でも、今は仕事も家庭もとても充実した毎日を送っているから、これ以上を求めてはぜいたくですよね~」と笑って話してくれました。現状が「ぜいたく」といえるほど充実した毎日を送っていると言い切るのは、現状以上にただ憧れるのではなく、どんな時でも常に努力してそれに近づき、近づいたときにはまたその先を目標としているから。そんな信田さんだからこそ、きっとこれからもさらに「ぜいたく」と言われるような環境を目指し、努力を続けて自分の手にしていくことでしょう。
2017年10月28日ウーマンエキサイトをご覧のみなさん、こんにちは。tomekkoです。急に涼しくなってきましたね。寒暖差で親子ともども風邪を引いたりしていませんか?今回は、この急な寒さで鼻を垂らしている子どもたちを見ていて思い出した、子育ての洗礼について書きたいと思います。■これぞ保育園児あるある! 保育園児の洗礼長男は1歳で保育園に入園しました。当時は私は時短正社員として復帰したばかりでしたので、母子ともども慣れない環境に悪戦苦闘。毎日戦争でした。そして入園して1ヶ月…そろそろ疲れが出てくる頃の大型連休で、典型的な保育園児の洗礼を受けることになったのです。そう、まだ免疫が不十分な子どもが持ち帰る、菌、菌、菌…!!幸い長男は丈夫で、発熱なども少ない方ではありましたが、連休前に鼻水・咳を伴い発熱。私は復帰早々会社に行けないワーママあるあるを早速経験しました。長男の熱もすぐ下がり、2日程度で回復したので、連休も遊びに行けるかな、とホッとしたのですが…。大変なのはその後!! 免疫がないのは子どもだけじゃなかったんですよねー!!大人の私も、慣れない新生活の疲れに加えて顔面に噴射されるクシャミ…。うつらないわけがない!!さらには頼みの綱の夫までも看病疲れでダウン。なんと大型連休中に、夫婦揃って高熱を出してしまったのです…!!■夫婦そろって風邪でダウン… 子どもの面倒はどうする?我が家は両家の実家も離れており、当時はどちらの親もまだ仕事をしていたので、今日明日でいきなりヘルプ! というわけにもいきませんでした。結局頼れる場がどこにもないまま、夫婦交代でフラフラしながら元気な子どもの相手をして連休を乗り切る、という地獄を見たのです…。そんな経験から、保育園に入ってるかどうかに関わらず、幼子を抱えるワンオペ家庭に一言アドバイスを。いざという時の頼れる場所は事前に確保しておくべし!!保育園も、年中無休ではない園の方が多いですよね。日祝などお休みの場合は頼れません。私の場合、友人家庭なども検討しましたが連休中なので用事もあるだろうし悪いな…。また、まだ保菌者な病み上がりの子を預かってくれというのは言いづらいな…。と躊躇(ちゅうちょ)しました。そんな時にあったらよかったなーと思うのは、休日を問わず、家まで来てくれる地域のファミサポさんやベビーシッターさん。当然ですが事前登録や面談が必要で、今日いきなり必要なのでお願いします! は無理です。こういったよりどころを手間を惜しまず用意しておくと、本当に困った時に助かりますよ。もちろん、親も子も元気な時にこそ、やっておきましょう!
2017年09月26日仕事をするも辞めるも、今までは自分の思いひとつで自由に選択できていたはず。けれど、子どもを持つと環境を替えたいと感じていても、いろいろな絡み合う事情により、一歩を踏み出せる人は多くはないようです。今、ママにとって大きなハードルとなっている「転職」。さまざまなケースのママたちの転職ストーリーを連載で紹介していきます。■熊谷花名さんの「転職するとき」熊谷花名さん プロフィール不動産投資業、広告代理店、ITベンチャーを経て2017年1月株式会社スタディストに入社する。ママでの転職は2回目で、10月に4歳になる女の子のママ。 【熊谷花名さんの出産後の転職歴】▼1社目広告代理店 正社員2013年10月第1子出産 → 2015年4月仕事復帰 → 2015年12月に退職▼2社目 外資系ITベンチャー企業 正社員2016年1月転職 → 2016年12月退職▼3社目 現在2017年1月 株式会社スタディストに正社員として転職■広告代理店でママ1号に! でも…2013年に結婚後、子どもを授かり、産休・育休をとったのは広告代理店にいたときでした。社員の多くが外国人やクリエイターという小さいながらもとてもグローバルで勢いのある会社。私はそこでアカウントマネージャー(法人営業)をしていました。産休・育休の制度こそあるものの、利用したのは私が初めて。そういった会社の中でママ1号となるため、休みに入るまではお腹が大きくなってもハードに働いていました。そのためか切迫早産になりかけてしまったんです。それで半ばドクターストップのような形で産休に入りました。子どもを無事に出産し、その後は育休をとって、子どもが1歳半になった4月に復帰しました。復帰後の仕事は時短で再開できましたが、広告代理店という仕事柄、なかなか早く帰ることもできず、忙しい毎日を送っていました。さらに案件によっては休日のイベント対応や、深夜のサイト公開などに立ち会いが求められることも。その対応をしてしまうとどんどん家庭に影響が出るため、手がけてきた案件の最後の瞬間である成果物を見られないジレンマが大きくなっていきました。家庭も仕事もどちらに対しても中途半端なスタンスでいるような感覚になり、こんな気持ちで続けていても、もう会社に貢献できることがないかもしれないと思い始めるようになりました。「今ここを動かない理由もないし、進まない理由もないよね!」と強く感じ、復帰後半年で退職する決断をしました。 ■ママとして初の転職、いきなり2週間の海外出張!?転職するため大手の就職サイトに登録。いくつか良さそうなところを紹介していただきましたが、今度はちゃんと家庭を優先できる仕事に就きたかったので、「社員で、時短で」と条件を出すとなかなかやりたい仕事、入りたい会社までたどり着くことはできませんでした。そんなとき、知り合いから「外資系のITベンチャー企業で、英語のできる人を探しているけど話を聞いてみない?」と声をかけてもらったんです。事務系の仕事と聞いていたのですが、面談で経歴やその他いろいろと話し込んでいくうちに、その後上司となる人から「熊谷さんはこういうアシスタント業務じゃ満足しないよね?」と言われたんです。そんなことはなかったのですが(笑)、ITに関してまったく知識も経験もない私の“これまで”をすごく買ってくれ、話を進めていくうちに法人営業をすることになりました。入社してまもなく、日本支社長からアメリカの本社に2週間行ってほしいと出張命令が。2歳の子どもを置いて2週間…とても悩みましたが、断れるような状況ではなく、夫もサポートしてくれるとのことだったので思い切って行ってきました。しかし、帰国後家に戻ったときのすさんだ部屋を見たとき、「やっぱりこれはちょっと違う」と思いました。時短勤務だったはずが、実際は常に仕事に追われる生活になってしまっこともあり、入社後1年で退職を決めました。けれど、この会社を経験したおかげで、IT知識ゼロだった私がその後もIT業界に身を置くきっかけになりました。それがあったから今の会社にもつながったと考えると、どの経験も自分にとっては必要だったと思っています。 ■ママとして働く罪悪感に疲れ、次の転職へこれまでの経歴をお話しすると、高校卒業後は、アメリカの大学に進学。卒業後、現地のホテルで働き、1年後にビザが切れて日本に帰ることになりました。タイミング的に日本の新卒採用時期を逃していたので、中途採用のような形で外資系の不動産投資会社へ入社することになりました。そこは金融業だったので、当時、男性は夜中まで働き、女性もキャリア志向の方が多かったです。そこで、いわゆる「社会人たるもの」、「大人としての社会の歩き方」のようなことを教えてもらいました。仕事は4年目まで続けていましたが、アメリカでも学んだホスピタリティマネジメントというか、人を楽しませるという、もともと自分が好きだった仕事に就きたいという思いが芽生えて退職しました。その後、しばらくは旅をしたり、展示会やTV取材などの通訳や英会話講師などフリーランスのような生活をして、わりとのんびり「自分探し」をしていましたね(笑)。その中で、展示会の通訳で知り合った方の経営する会社に誘われて社員となったのが、最初にお話しした広告代理店だったんです。次の外資系ITベンチャー企業への転職も知り合いからの誘いでした。どれも来てほしいと言っていただき、思った以上の待遇で迎え入れてもらえたので、とてもありがたい話ではあったけれど、自分で懸命に転職活動をしてつかみ取った仕事ではありませんでした。それが原因なのか、また転職を考えることに…。自分のやってきたことを否定するつもりはないけれど、子どもに対しては時間をかけてのんびり育ててあげられないこと、会社に対しては「時短で“働かせてもらう”」という引け目を感じ、次第にいろいろなことに罪悪感を抱くようになっていました。そんな時、スマホで何かのニュースを読んでいたら、なんとなく目に留まったのが女性の転職支援を謳っている エスキャリア でした。登録をするとコンサルタントの方がメールをくれるのですが、「私も子どもがいるのでわかります!」なんて言ってくれて、それだけですごく親しみがわきました。■「もっとわがままになっていいんですよ!」のひとことが救ってくれた「紹介したい会社があります」とエスキャリアから連絡をいただいたのですが、いざ面談というときにタイミングが合わず、一度は断りました。それにもかかわらず、また連絡をくださったので会うことになりました。エスキャリアとの面談では、自分のリクエストを聞いてもらえるのですが、最初は「時短であればどんなところでも」とか「やらせてもらえる仕事があれば」などと消極的なことを言ってしました。でも一つ一つ聞き取ってもらっていくうちに、「本当はもっとこうしたい」「本当はこういうことをやりたいと思っている」と、どんどん閉じ込めていた思いを話せるようになりました。するとコンサルタントの方が「もっとわがままになっていいんですよ!」と言ってくださったんです。それを聞いて、今までぎゅっと固くなっていたものが柔らかくほどけていくような感覚になっていきました。そんな時に、紹介してもらった会社が、今働いている スタディスト です。仕事の紹介を受けて、「自分のリクエストが叶っているここで働きたい!」という思いを持つようになりました。でも、前職のようにあまり内容を知らずに入社することは、自分にとっても会社にとってもマイナスになるので、私と同じような時短勤務で働く人に会わせてもらい、仕事の内容をうかがったり、その方が担当しているセミナーにお邪魔してお仕事をのぞいたりと、本当に納得ができるところまで協力していただきました。そして知るほどに「ここでしか働きたくない!」と思うようになり、入社にいたったわけです。現在の仕事は、マニュアル作成・共有プラットフォーム 「Teachme Biz」 という仕事の伝達、情報共有に必要なマニュアルが簡単に作成・共有でき、働き方の効率化を図るクラウドサービスの法人営業をしています。会社のミッションは「伝えることを、もっと簡単に」で、そこに私自身とても共感しています。私も前回の転職では弱気になる自分もいましたし、それは働くママの陥りやすい悩みだと思うんです。でも、非効率ゆえに感じる必要のないネガティブな思いは、こういった当社のサービスのようなものでいくらでも軽減できると思っています。今は、会社のミッションが私個人のミッションでもあり、会社のやっていることと自分のやりたいことが繋がっている心地よさがあります。私が効率よく働くことが自分の時間を作ることになり、家族の笑顔につながります。そしてそんな私の姿が、自社の製品の宣伝になり、娘が将来働く環境にも繋がっていると良いなと思っています。<ママの転職 Q&A>Q:転職をして家庭環境は変わりましたか?A:時短やリモート勤務がOKで、職場自体も前のところより近くなりました。いろいろな希望が叶っている今の職場に変わり、時間にゆとりができましたね。今は保育園の送りは夫が、迎えは私がしています。夫婦の家事分担なんてものはあまりありませんが、4歳になる娘と夫婦で4年かけて作り上げた生活は、「お互いできることをやる」という“ゆとり”ルールででうまく回っています。Q:転職をする際に大切だと思うことは何ですか?A:リクエストは、きちんとあらかじめ伝えることですね。「これを言ったら断られるかも…」と思って言いたいことを言わないまま入社してしまうと、結果それが原因で長く続けられなくなってしまうと思います。周りに迷惑をかけていいというのではなく、子どもがいても欲しいものは手に入れていいという意味で、自分のやりたいことに対しては「わがままになっていいんですよ!」ですね(笑)。Q:仕事をするうえで大切にしていることは何ですか?A:今は時短ですが、仕事の量が少ないわけではありません。だから仕事が終わらないときは時短で帰ったとしても、リモートできっちり仕事は終わらせています。家庭があるので夜中のチャットには参加できないけど、業務時間内にきっちりコミットする「私」、というブランディングをするようにしています。Q:これから転職をしようとする人へ、アドバイスをお願いします!A:転職する理由がないなら、する必要はないと思います。でも、もし今がしんどいなら転職は早めがいいのでは。今が転職のタイミングじゃないとしても、アンテナを張って情報収集したり、転職サイトをのぞいたりといった活動は継続していて損はないと思います。自身の経験からたくさんの思いを語ってくれた熊谷さん。とてもハキハキ、サバサバとしていて、自分のできること、進むべき方向はもうすでにわかってると言い切るような潔さとまっすぐな心意気を随所に感じます。でもその一方で、「仕事を通して以前の私のような働き方をしているママたちを少しでも助けられたら……というのが裏ミッションなんです」という弱い立場を知るからこそ出るそういった言葉が、どんな立場の人も自然に許容している熊谷さんのボーダーレスな人柄そのもので、いままでの多くの引き抜きや採用に繋がっていたのだろうと思わされました。
2017年09月13日「雇用が不安定な主婦パートにとって、正社員と同じように定年まで働ける『無期転換ルール』は、大きな転換点になります」 こう語るのは、労働問題に詳しい旬報法律事務所の梅田和尊弁護士。’18年4月に実質的にスタートする無期転換ルールとは、いったいどんなものだろう。 「パートやアルバイトは、1年や半年など期間を決めて働く、“有期”契約がほとんど。来年4月からは、それを“無期”契約に変更することが可能になる。定年まで働き続けられるということです。これまで契約を打ち切られることを恐れて、セクハラやパワハラを受けても我慢したり、育児や介護の休暇制度などを利用できなかったりした人も、無期雇用契約になることで、安心して働けるようになると期待しています」 そんな「無期転換」を申し込む資格を得るためには条件がある。 「この制度が導入された’13年4月から数えて、同じ会社で通算5年を超えて働いていることが要件です。たとえば、1年契約の人は5回連続して契約更新していること、3年契約の人も最低1度は契約更新をしている必要があります。また、5年間で契約をしていない期間が6カ月以上ある場合は、来年の4月になっても、申込み資格を得ることは、まだできません」 この無期転換ルール、働く側にとっては簡単に解雇されなくなる制度だが、雇う側にとっては厄介な責任も生じるため、今から、さまざまな手を打ってきている企業もあるという。 「それまで契約を更新し続けてきたのに、無期転換が申請できる5年を超える直前に、契約を打ち切る“雇い止め”が起きています。また、5年を超えないように契約期間や更新回数の上限を定めるケースも……」 さらに、転換後の賃金や待遇などにも注意が必要だ。 「無期に転換をしたら、同じ仕事なのに給料が下がったり、勤務時間が増えたりと、待遇が悪化することも予想されます。雇い止めだけでなく、少しでもおかしいと思ったら、近くの労働基準監督署にある『総合労働相談コーナー』などに相談しましょう」 パート主婦にとって無期転換ルールは、どのような変化をもたらしてくれるのだろうか。梅田先生が解説する。 「5年も正社員と同じ仕事をしていながら、給料は差があるなど、パートの待遇には、まだ問題が多いのが現状です。しかし、今回の無期転換ルールは、パートで働く人が申し込めば、会社側は拒むことはできません。労働者を守る権利を行使することは、主婦パートが不当な待遇を受けないための、大きな“武器”となるのです」
2017年09月07日こんにちは。エッセイストで経済思想史家の鈴木かつよしです。2016年の2月に『保育園落ちた日本死ね!!!』と題した匿名のブログが大きな話題を呼んだことは、パピマミ読者のみなさんにとっても記憶に新しいことと思います。政府による少子化対策が始まってから四半世紀がたとうとしていますが、一向に成果が上がらないわが国の現実は、「何か根本的な部分で勘違いをしているんじゃないか?」と思ってしまうほど深刻です。助産婦さん向けの医療専門誌である『助産雑誌』では、2014年に「あなたが有効だと思う少子化対策とは?」という質問に対する回答の調査結果を誌面で発表しましたが、それによるとひと口に「少子化対策」といっても、正社員のママ・パパと非正社員のママ・パパとでは必ずしも同じ少子化対策を求めているわけではない ことが明らかになっています。筆者は、“非正規で働くママ・パパが本当に求めているもの”に目を向けない限り今後も大きな成果は期待できないであろうという理由から、今回は彼女(彼)たちの少子化対策への本音にスポットをあてて考えてみたいと思います。●本音その1……働く女性の多くが非正規なのに正社員しか産休育休の恩恵を受けられない月刊『助産雑誌』2014年3月号・4月号では、“少子化対策に対する声”のひとつとして、次のような“子どものいない既婚女性”の本音を紹介しています。**********『働く女性の多くが派遣・パートなどの非正規雇用にもかかわらず、正規雇用者のみしか産休育休の恩恵を受けられない。共働きしなければ子どもを育てるだけの十分な資金も得られないのに、妊娠したら辞めさせられてしまう』(女性/既婚、子どもなし/31~35歳/非正規雇用=派遣・契約社員)**********たしかに2017年6月27日に厚生労働省が発表した、平成28(2016)年版の『国民生活基礎調査の概況』によると、わが国の“働く女性”の57.8%は「非正規雇用」であることがわかっています。働いている女性の6割は正社員・正職員ではない のです。にもかかわらず、ほとんどの企業で産休や育休の制度は正社員ないしそれに準ずる人にしか適用されていないというのが現実です。これでは“片手落ち”どころか、政策・制度そのものが一部の働く女性しか視野に入れていないということになってしまいます。継続的に働く意思があり勤務態度にも問題ない人であれば、非正社員であっても有給休暇と同じように働く人の権利として産休や育休の制度が適用されるようにするべきです。それすらもできないというのであれば、そのような行政は「本気で子どもたちを育てようとする気や少子化を脱しようとする気がない」と言われても仕方がないのではありませんでしょうか。●本音その2……低すぎる非正社員の賃金で“子どもを大学に行かせられるのか”が不安!『助産雑誌』同号では次のような“子どもがいる非正規雇用のママ・パパ”の本音についても掲載しています。2つご紹介させていただきます。**********『子どもをもつか、もつ場合何人産むかを考えるとき、いちばんネックになるのは「大学に行かせられるか?」だと思うし、共働きする子もち夫婦の多くが「進学の費用を蓄えるため」に働いている気がする』(既婚/子どもあり/非正規雇用=パート・アルバイト)『教育費がいちばんきつい10代の子育てに金銭的支援が少ない。子育てして、自分の財布がさみしくなれば、老後が不安。今のシステムだと次世代が年金を支えるのだから、子育てしない人が得をする。不公平感がある』(女性/既婚、子どもあり/36~40歳/非正規雇用=派遣・契約社員)**********最初の方は性別非公開ですのでパパかもしれません。パパであるにせよママであるにせよ、非正規で働く人に支払われているわが国の企業・団体からの賃金が低すぎることは間違いなく、西欧諸国などで見られる“生活可能賃金”的な概念が完全に欠如している と筆者も思います。正社員のパパやママが必要と考える少子化対策と決定的に違う点は、「少なすぎる収入の問題をどうにかしてほしい」という点でしょう。フランスなどでは「非正社員は経営側の都合でいつでも解雇されるリスクを負っている」という理由から、非正社員の方が正社員よりも時給換算では高くなる賃金を受け取っています。わが国でそこまでの先進的な考え方を求めるのは難しいにしても、フルに働いても月収が10万円台半ばという非正社員に対する賃金の現実は、「非正規は子どもを持つな」と言っているのに等しいと思います。非正規雇用の人の最低時給を生活可能水準に引き上げるとか、給付型奨学金の制度や10代の子どもを持つ非・高収入世帯への現金給付の制度を拡充するといった抜本的な少子化対策を実行していかないことには、わが国の少子化傾向に歯止めをかけることはできないでしょう。●正規雇用の人たちの意見も聞いてみましょう同誌同号に掲載された数多くのママ・パパの“本音”のうち、終わりに正規雇用の人たちの意見もご紹介しておきましょう。**********『まずは待機児童をなんとかしてもらいたいです。私は都内在住で、子どもが1歳で仕事に復帰する際は、近所の保育園は公立・民間とも全滅で、5駅先の保育園まで半年かけて通っていました』(女性/既婚、子どもあり/41~45歳/正規雇用)『子どもは社会全体で育てると言う観念がない国である。「なぜ自分たちが払った税金から助成するのか納得できない」とよく言われる。社会全体がそういう空気であり、支援うんぬんではなくて、そこがいちばんネックであると感じている。義務教育の時点でそういうことを教育する必要性を感じる』(女性/既婚、子どもあり/31~35歳/正規雇用)**********いかがでしょう。何かお気づきになりませんでしょうか。少子化対策として待機児童問題の解消を切望しているのはむしろ正規雇用層の人たち であり、非正規雇用の人たちにとってはそれ以前に「絶対的に収入が少なすぎること」「子どもを持ちたくてもまっとうに育てていけるだけの賃金が得られていないこと」「今後もその希望がないこと」こそが何よりも問題なのだということが、正規雇用の人たちのお話を聞くことによって逆に浮き彫りになったのではないでしょうか。その意味では、二番目の女性のご意見も貴重です。「努力が足りないから非正規雇用から脱することができないのだ。自業自得である」的な見解がネット上などで一定の支持を得るわが国は、少なからず病んでいると筆者も思います。筆者の年齢になってくると、どんなに元気だった人にも等しく“老い”が訪れることが実感として感じられるようになってきます。そのときに世の中が極端な少子化傾向にあったのでは、自分たちが暮らす社会の将来に希望が見えません。しかるべき立場にある人が率先して「子どもは社会全体で育てるもの」という考え方を示すべきです。二番目の正規雇用の女性がおっしゃるように、それこそが根本的な少子化対策であるような気がします。【参考文献】・『助産雑誌(2014年3月号・4月号)』●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)●モデル/KUMI(陸人くん、花音ちゃん)
2017年08月15日こんにちは。「新宿の母二代目、栗原達也(くりはらたつや)」です。今回は、“仕事の相談~リストラについて”話そうと思う。「正社員の口を探しているのに、なかなかない」「短期の仕事やアルバイトはあるけれど、就職ができない」「会社がなくなってしまった」などというつらい仕事の相談は、やはり増えてきている。その中で今回は、リストラされてしまった、リストラされそうだというケースについて、鑑定の場で私が思うことをお知らせしよう。相談者それぞれの状況は深刻なので、簡単には言えないことのほうが多いけれど、リストラされてしまったというとき、まずは、どうしてそうなったのか、どうしてあなただったのか考えてみようと相談者には提案している。たとえば就いていた業務がなくなってしまったとか、自分がその業務については一番役に立たない人間だったということが明らかなら、自分でも納得できるだろう。身の不運を嘆いても、いずれは、ほかに自分を生かせる場所があるに違いないと思えるはずだ。納得できないのは、会社に残ったほかの人と自分の違いがわからなくて、「どうして私だけがこんな目にあうのか?」と理不尽さに苦しめられる場合だ。悪くすると、組織への恨みばかりが募ってしまい、前に進めなくなってしまう。でも、そこにはなんらかの理由があるはずなんだ。同じように働いている10人がいるとしよう。業績が悪化して、その業務に10人置いておくのは人件費がかかりすぎるから減らそうとなる。そこで、能力や年齢が似たようなものだった場合、比べられるのは「その組織にとってどういう存在か」ということだ。 意欲を見せる人、将来性がある人、人間関係づくりが上手な人、ルールをきちんと守る人が好印象なのは、たいていの組織において間違いない。逆を言えば、遅刻や休みが多いなど意欲が感じられない人、グチが多くて将来、組織を引っ張っていくには不安な人、同僚とぶつかったり上司に逆らったりして人間関係がギクシャクする人、やるべきことをやらず自己主張してばかりの人はポイントが低くなり、リストラ対象者になってしまう。そんなマイナスポイントが自分にまったくなかったかどうか、考えてみるのは次の仕事のために必要だ。まるで覚えがなかったら、自分のこれからのために、理由を元上司に聞かせてほしいと頼んでもいいくらいだ。そして、もし、いまリストラされそうになっていて不安なら、先に挙げた好印象ポイントを目指し、形にして見せればいい。当たり前と言えば、当たり前のことだけど、相談者の身近には、それを言ってくれる人がいないんだね。だから、こんなことを言うことも私の役目かもしれないと考えている。誰もが属している場で望まれていることを理解し、自分の力を生かして生き生きと仕事できたらいいのに…と願う毎日だ。 当たりすぎ! 完全鑑定16項目【あなたの人生、この先こうなる!】
2017年07月28日「同一労働同一賃金 」という言葉をご存知ですか?これは、同じ仕事内容であれば、正社員・非正規社員・性別・年齢等に関わらず、同じ額の給料を支払うべきだという考えです。現行の安倍内閣が議論している政策で、2016年12月には実現に向けたガイドラインも作られました。同一労働同一賃金が導入されると、私たちの生活はどのように変わるのでしょうか。メリット・デメリットとともに、生活に与える影響を考えていきましょう。●同一労働同一賃金とは 〜とあるファミリーレストランの例〜「同一労働同一賃金」とはどのようなことなのでしょうか。今回はファミリーレストランを例にして、説明していきます。とあるファミレスチェーン店「P」には現在、以下のメンバーがメインとして働いています。・店長(正社員・Pへ配置されて2年半)・チーフ(正社員・Pへ配置されて1年)・Aさん(50歳パート/Pで勤続10年/時給1,000円)このチェーンでは、本社から各店舗へ店長とチーフを1名ずつ派遣しています。店長・チーフともに全国の店舗をローテーションで回るため、1つの店舗にいるのは長くても3年。したがって、店の日常業務に最も詳しいのは勤続10年のAさんです。特にチーフは昨年この店舗に来たばかりなので、今でもAさんが手取り足取り仕事を教えている状況。チーフとAさんの仕事内容は同じです。しかし、正社員とパートタイムという立場の違いから、給料にはだいぶ差があります。時給換算すると、チーフはおよそ1,800円程度。いっぽう、Aさんは時給1,000円で働いています。Aさんにとっては、この給料差が時々ストレスのようです。「私がパートだからって、不公平じゃない?」とグチをこぼすこともあります。……どこにでもありそうな、ファミリーレストランの状況ですね。さて、ここに「同一労働同一賃金」が適用されるとどうなるでしょうか?厳密なチェックが入ることにはなりますが、Aさんとチーフの仕事内容が同じであると判断されると、チーフとAさんの給料差がなくなります。Aさんはパートのままですが、正社員であるチーフと同額の給料をもらうことができるようになるのです。●正社員への影響同一労働同一賃金は、私たちにどのような影響をもたらすのでしょうか。もうすこし詳しく見ていきましょう。まずは、正社員側への影響です。●給与・賞与が減るおそれがある同一労働同一賃金が実現すると、企業全体の人件費が高くなる可能性があります。先程のファミレスの例でいえば、Aさんにチーフと同額の給料を払わなければならなくなりますね。その額をどこに設定するのかは企業の判断になりますが、現状の間を取って「時給1,400円」とするなら、チーフの給与額は減らされてしまいます。また、チーフの給与は据え置き、Aさんを「時給1,800円」にするなら、「Aさんを賃上げするために、チーフのボーナスをカットする 」という決定がされるかもしれないのです。●人事異動のたびに給料の額が変わる同一労働同一賃金のシステム下では、給料額を「人」ではなく「仕事内容」に紐付けすることになります。同じ社内にいても、異動により仕事内容が変われば、給料の額も変わってしまうのです。各部署を異動することで業務全体を覚え、キャリアアップしていくという日本の企業スタイルにおいては、働く側も会社側も非常に面倒なことといえます。●パート・アルバイトへの影響いっぽう、非正規雇用者はどのような影響があるでしょうか?●給料が増える可能性があるパートやアルバイトでも、正社員と同等に働いているならば、給料が大幅にアップする 可能性が出てきますね。これは同一労働同一賃金制度における最大のメリットです。前述のファミレスPで、Aさんがチーフと同額の給料を貰えれば、Aさんの働くモチベーションは大きくあがるでしょう。●自主的に非正規でいることが難しくなるかもしかし、メリットばかりとも言えません。「正社員と同じ額の給料を払っているのだから、正社員になってくれないか」。企業側からそう求められる可能性も出てきます。パートやアルバイトで働く人が全員、正社員になりたいわけではありません。子育てや介護、さまざまな事情により、自らパートタイマーを選んでいる人もたくさんいるはずです。「事情があって正社員にはなれない」と断ったときに、不当な解雇や給料の減額などをされることも現状ではありえますね。同一労働同一賃金には、その他にもさまざまな問題があります。『同じ仕事してれば、バイトでも正社員と同じ給料もらえるってことですよね。正社員になるメリットがもはや感じられません。同一労働同一賃金の話を聞いて、就活するのやめようかなって正直思いましたもん』(20代女性/学生)『人件費が上がるので、新規の雇用は減るでしょうね。簡単な業務はAIに取ってかわられ、人間の仕事そのものがなくなってくるかも』(40代男性/会社員)『仕事内容が同じだからって、若いフリーターと同じ給料に下げられても困りますよ。こっちは結婚して家も買い、子どももいるんです。未婚のフリーターとは、生活にかかるコストがぜんぜん違う。いま給料が下がったら、やっていけません』(50代男性/飲食チェーン)----------同一労働同一賃金は、労働者間の格差をなくすことが目的ではありません。非正規雇用者への賃金を上げ、消費を活性化させようというのが、この政策の最終的な目標なのです。果たしてその目標は達成できるのでしょうか。私たちの日常に大きく関わる問題だからこそ、当事者意識を持って動向を見守っていきましょうね。【参考リンク】・同一労働同一賃金ガイドライン案 | 厚生労働省(PDF)()●文/パピマミ編集部●モデル/ゆみ
2017年07月27日『ハピキラFACTORY』代表取締役を務めながら、日本を代表する大手企業・ソニー株式会社の正社員として社長直轄の組織で新規事業を手がけている正能 茉優さん。多忙そうなイメージの正能さんですが、時間がなくてストレスを感じたり、寝不足に悩んだりすることはないそうです。「いつも仕事が第一優先というわけでもないので、どんなに仕事が忙しくても寝たいと思ったら寝ます。会いたいと思ったら会います(笑)」「人生配分表」をつくって、Googleカレンダーで時間管理現在は、仕事・家族・趣味・彼氏などの項目ごとに時間配分を決めた「人生配分表」をつくり、それを1週間ごとのGoogleカレンダーに落とし込んで管理しているそうです。Googleカレンダーに刻まれた予定の中には、「仕事」以外にも「友人との遊び」や「デート」の時間もきちんとありました。よほど緊急の仕事がない限り、デートや趣味の時間をつぶして仕事にあてることはないそうです。「自分の人生全体を100%として、例えばそのうち30%がソニー、30%が自分の会社、10%がお友達、7%が彼氏というように、割合を決めて1週間あたりのスケジュールに落とし込んでいくんです。最近は楽しいお仕事を見つけてしまったので、お仕事の割合を増やして、その分他の項目を減らすというように調整しています。たまに彼の割合が減ってしまうこともありますが、信頼関係があれば大丈夫かな。大丈夫だといいな(笑)」パラレルキャリアの魅力は、「人生のパーツが増えること」友人や恋人との時間について話す正能さんは、親近感にあふれた等身大の女性。そんな正能さんに、女性としての「幸福感」を聞いてみました。「自分の会社を上場させたいとか、そういう野心は実はないです。好きな人と好きな場所で好きなことをして暮らす。それが最高の幸せだと思っています。いつかは結婚もしたいし、なれるかわからないけどママにもなりたい。あと、タツタアゲっていう名前のゴールデンレトリーバーも飼いたいんです。でも、お仕事も楽しいから、バランスを取りながら続けたいな」人生の環境の変化に合わせて、仕事のスタイルを変えることができる。それもパラレルキャリアならではの魅力だと正能さんは話します。「女性のキャリアって、結婚に子育てに、親の介護とすごく流動的。だからこそ、いろいろなパーツを持っておいて、それらをうまく組み合わせるのがいいんじゃないかなと思うんです。例えば私だったら、ハピキラFACTORY、ソニー、そして今後はママ、奥さんと、いろいろなパーツを持つことになります。もしソニーの仕事にママがオンされて体力的に厳しいと思ったら、ハピキラFACTORYとママにすればいいし、もちろんママだけだっていいと思うんです」10年後、20年後のキャリアプランは?20代にしてこれだけの実績を構築した正能さんですが、意外にも今後のキャリアプランについて緻密にキャリアプランを練ることはないと話します。「実はそんなに先のことまで考えていないです。何歳までは絶対に働きたいという考えもなく、ただ好きな仕事を好きなバランスでやっていきたいという感覚です。こういう働き方を、私はビュッフェキャリアと呼んでいます。ビュッフェのようにカレーもケーキもパスタも、好きなものを好きなだけ食べるという働き方が一番私には合っているし、幸福だと思います」こんな余裕のある考え方ができるのは、正能さんのこれまでの実績があってこそ。次回は、正能さんが実績をつくるための大きな追い風となったであろう「人脈」の作り方、そして人脈を引き寄せる「セルフブランディング」のコツをお聞きします。<Vol.04に続く>
2017年06月28日限られた時間の中でより多くのお金を稼ぐには、自分の1時間あたりの価値を最大化させる必要がある。そんな考えのもと、代表取締役×大手広告会社正社員というパラレルキャリアをスタートさせた正能さんですが、入社して数年後に思いがけない壁にぶつかることになりました。「当時働いていた広告会社は、世の中のあらゆる業種がクライアントになりうるマルチクライアント制だったため、自身の会社との競業の線引きが難しかったのです。会社の器が小さいわけではなく、業務体系として無理がある。それによって周囲の方々に迷惑をかけたり、自分のやりたいことを妥協したりすることを避けたかったので、悩んだ末に転職を決意しました」ソニー株式会社・新規事業チームとの出会いマルチクライアント制の企業では、パラレルキャリアの実現が難しいと痛感した正能さん。次は自身の会社の業務領域から遠い事業の会社に転職するのがベストだと考えるようになりました。そんなときに、大学のゼミの先輩であるソニー株式会社(以下ソニー)の人と知り合います。彼と話をする中で、彼の所属しているチームのやっていることが、自分のやりたいことに近いのではと気づいたそうです。「世の中には本当は価値があるのに、たまたまその価値を発揮できていないものがたくさんあります。私がハピキラでやりたいことは、環境を変えることでそういった商品の価値を見える化して、発信していくということ。ソニーの新規事業チームの仕事も、まだ商品化できていない基礎技術を発掘し、環境やターゲットを整えることで魅力的な商品にしていくという内容でした」パラレルキャリアは、現場の理解がないと成立しない新規事業チームの業務内容に共感し、ソニーへの入社を決意した正能さん。パラレルキャリアを成立させるために、ソニーでは現場チームとの事前の話し合いを大切にしたそうです。「会社の上層部がどんなに理解してくれても、毎日接する現場の人たちと分かり合えない限り、入社は難しいと思っていました。一緒に働くのは現場の人たちなので、嫌な思いはさせたくないし、自分もしたくない。だから、自分の目指す働き方や生きざまについて、入社前に現場の上長とお話しさせてもらいました」入社前に現場と話し合いを持ち、合意を得たうえで入社を決意。現在は、週5日勤務が基本の正社員として勤務しているそうです。「私のような働き方は、まだまだ珍しい働き方なので、私も含め誰も正解がわからないと思います。こういう働き方もありだよねと、より多くの人に思ってもらえるように、時間をかけながら努力していきたいです」ソニーでの仕事は、不慣れなことも非常に面白く、高いモチベーションを持って働くことができていると正能さんは話します。「ハピキラの仕事はもちろんですが、今はソニーの仕事をこれまで以上に頑張りたいと思っています。ソニーが改めて“世界のソニー”と認知されるきっかけになるような商品を作りたい。もう一度“世界のソニー”にしてみせる、そう思っています」二つの仕事、趣味、恋愛……。多忙な印象の正能さんですが、一体どんな形でスケジュールや目標を管理しているのでしょうか?次回はプライベートな話にも迫ります。<Vol.03に続く>
2017年06月27日こんにちは。エッセイストで経済思想史家の鈴木かつよしです。数か月ほど前でしょうか、Twitterで「非正規社員はエレベーターの使用禁止」という会社があるとの投稿があり、話題になりました。するとその後、「うちの職場は非正規社員の社員食堂の利用が禁止されている」とか「非正規社員が役員クラスの人に挨拶すると管理職から怒られる」など、 明治期から戦前の身分制度を思わせるような話が相次いで投稿され、非正規社員に対して今わが国で起きている差別的な待遇がけっして珍しいものではないことが次第に明らかになってまいりました。そこで今回、筆者の周りで非正規社員として働いている人たちに、「実際にあった非正規社員差別」の例を聞くと同時に、その人たちが差別に負けないためにはどうしたらいいのか について考えてみました。理不尽な非正規社員差別を撲滅するために、ご一緒に考えてみませんか?●濡れ衣を着せる系の非正規社員差別は人として大問題筆者が聞き取りをすすめる中で意外なほど多かった非正規社員差別は、「濡れ衣を着せる」系の差別です。具体例を紹介しましょう。『個人情報が載った書類の紛失を、正社員の所属長によってアルバイトである自分のミスとして課長に報告された。本当は所属長による“うっかり忘れ”が原因だった』(30代男性、アルバイト)『「パッケージに破損がある商品を店頭に品出ししたのはパートのあんただろう」と朝礼の場でみんなの前で正社員のマネージャーから責められた。自分ではないと言ったら、「嘘をついてまで言い逃れしようとする。これだから非正規は困るんだ」と言われた』(40代女性、パート)このように立場の弱い非正規社員の人にミスの責任を押し付けたりありもしない濡れ衣を着せたりする ことは、正規だ非正規だを論じる以前に人として大問題です。その大問題が、わたしたちが思っているよりも高い頻度で日常的に起きているという感触が、聞き取りをすすめていく中で強くなった気がします。●職場の施設の利用を非正規社員にだけ不当に禁止することは法律に抵触する恐れがある「濡れ衣を着せる」系の差別以上に筆者が「多いな」と感じたのは、「正社員が自由に利用している職場の施設の利用を非正規社員にだけ不当に禁止する」という、「利用(使用)禁止」系の非正規社員差別です。下記のような事例を筆者は実際に聞き取りました。『自分の仕事場があるフロアのトイレを利用したら正社員の同僚から「派遣の人は上の階のトイレを使うのよ」と言われた。理由を聞いたら、「トイレでは派遣社員に聞かれていたら困る、正社員どうしの会話が交わされるので、派遣は正社員がほとんど利用しない上の階のトイレを使うことになってるのよ」ということだった』(20代女性、派遣社員)『無料の自動コーヒーサーバーをみんなが使っているので自分も使ったところ、「それは契約社員以上の人だけ飲んでいいの。パートさんは駄目なのよ」と注意された。パートだって同じ仕事に携わる仲間なのに、それはないんじゃないのと思った』(30代女性、パート)こういった「利用(使用)禁止」系の非正規社員差別ですが、筆者の学生時代以来の友人でもある弁護士のK氏(本人の希望で匿名とさせていただきます)に確認したところ、いずれのケースも『労働契約法20条』や『派遣法40条』等に抵触する恐れがある とのことでした。差別を被ったご本人たちにそれを伝えた結果、お二人とも勇気をもって会社のコンプライアンス室に相談し、その後トイレもコーヒーサーバーも利用できるようになったとのことでした。●経済学者が指摘する“今の日本企業の非正規社員差別は戦前回帰の『雇用身分社会』”説ところで、今のわが国の“働く現場”に存在するこのように不合理な「非正規社員差別」について、2015年の段階で一冊の本にまとめ、労働の現場から戦前のような“身分が固定化された社会”への回帰がはじまっている と指摘した経済学者がいます。関西大学名誉教授の森岡孝二先生がその人で、森岡先生は著書である『雇用身分社会』(岩波新書、2015年)の中で、戦後の民主主義社会においては「労働者階級」という言葉で一括りにできた“働く人たち”が1980年代半ば以降の雇用の規制緩和に伴って変質して行き、同じ階級の中に「正社員」「限定正社員」「契約社員」「パート」「アルバイト」「派遣社員」といった雇用形態の違いによる“身分”が生まれて行った ことを指摘しました。この『雇用身分』による収入や付き合う人、食べる物や旅行先、着る服などの違いは学歴による違いなどよりも遥かに歴然としており、なおかつそれは固定化していて、今では広く使われるようになった『格差社会』という言葉の本質はこの『雇用身分社会』であると論じているのです。森岡先生はこの著書の段階ですでに(場合によっては実際の会社名をあげて)派遣社員が社員食堂を使えない事例や正社員とパートでは使うトイレが違う事例などを紹介しながら、戦前の『女工哀史』にみられるような奴隷労働が実は今“ブラック企業”や“ブラックバイト”といった形で復活しつつある ことも指摘しています。●非正規社員差別撲滅には「当たり前のこと」が守られる世の中に戻す必要があるさて、今回のテーマである「非正規社員に対する差別を撲滅する方法」ですが、森岡先生は『雇用身分社会』の中で、「ディセント・ワーク」という概念を提唱して、雇用身分による差別の撲滅を訴えています。「ディセント・ワーク(decent work)とは、「まともな雇用」「良識ある雇用」という意味であり、すなわちそれが「まともな世の中」「良識ある社会」にわが国を戻すうえで必要不可欠だと述べているのです。森岡先生の論を筆者なりに咀嚼して申し上げるならば、具体的にはまず1,000円にすら届かないような非正規社員の人たちの時給を“まともな”時給に法律で改めることでしょう。非正規社員の人たちが1か月間フルで働いても10万円台前半の月収にしかならないような現状は、その事実そのものがすでに「政策による非正規社員差別」です。これでは「まともな生活」ができるわけがありませんし、正社員の人たちが非正規の人たちを自然と見下してしまう大きな原因の一つになってしまっているように思われます。勤務先のコンプライアンス室に訴えて設備を正社員と同じように利用できるようになった二人の実例もご紹介しましたが、20代・30代の若い非正規社員の彼らが少しでも“まともな働き方”を手に入れることができるように、筆者のようなディセント・ワークを享受してきた世代の者が彼らの勇気を後押ししてあげる ことも必要かと思います。「おかしいものはおかしい」と声を上げる彼ら自身の勇気も大切です。でも一人一人の小さな勇気ある行動をより大きなうねりにして制度を改良するところまで行かないと、非正規社員への差別を撲滅することまでは難しいような気がします。【参考文献】・『雇用身分社会』森岡孝二・著●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)●モデル/香南
2017年06月20日皆さんは“限定正社員”という働き方をご存知ですか?アベノミクスの経済成長戦略の一環として比較的最近スタートした制度のため、具体的に“限定正社員”がどういうものか分からないという人も少なくないと思います。限定正社員には“職種限定正社員”と“地域限定正社員”などの種類がありますが、今回は地域限定正社員(エリア限定正社員)についてお話ししていきます。●地域限定正社員とは地域限定正社員について知る前に、限定正社員がどのような背景の中でスタートしたのかを知っておきましょう。今、日本では労働者の3割以上が“非正規労働者”として働いています。非正規労働者は基本的に正社員よりも給与や待遇が低いことが多く、以前は同じ職場で何年働こうが正社員になれない人も大勢いました。しかし、そのことが問題視されるようになり、2013年に労働契約法が改正され、同じ職場で5年以上働いている非正規労働者は申し出をすることで無期契約に切り替えることができるようになりました。ただ、5年以上働いた者を全員正社員にすることは、企業にとってコストのかかることであり、場合によっては経営を圧迫する可能性もあります。そこで検討されたのが、正社員と非正規労働者の“中間”とも言える限定社員なのです。限定社員は無期契約で雇用の安定が得られる 一方、職種や働く地域が限定される等の条件を背負います。地域限定社員の場合は“働く地域”が限定された正社員となります。反対に企業は、無期契約を結ぶ代わりに普通の正社員で雇うよりも人的コストを低く抑えることができます。●地域限定正社員になるメリット●(1)子育てしながら働きやすい地域限定社員になると、転勤になる可能性がないので住み慣れた地域でずっと働き続けることになります。そのため、子育てをしながら働いている人でも、引越しや単身赴任などで家族に負担をかけることなく 生活することができます。●(2)解雇されにくい地域限定正社員に限りませんが、限定正社員は基本的に“正社員”という扱いになります。そのため、企業で特別な解雇相当事由が設定されていない限りは、普通の正社員よりも解雇されやすいということはありません。●地域限定正社員になるデメリット●(1)働いている支社や支店が潰れたら解雇になる地域限定正社員は原則的に“無期契約”となりますが、働ける地域が限定されているため、勤務している支社や支店が潰れたら同時に解雇となる 恐れがあります。●(2)人間関係に悩む可能性も自分が働ける地域に一つしか勤務地がない場合、ずっと同じメンバーで働き続ける可能性があります。そのため、一度人間関係をこじらせてしまうと、転勤や配置転換などで逃げることができずに人間関係に悩まされる こともあります。●子育てとキャリアを両立させたい人にオススメかも子育てをきっかけに仕事を辞めたり、正社員からパート社員になったという人も少なくありません。無職期間ができたことやパート社員になったことでキャリアを継続するのが難しくなったという人もいるでしょう。地域限定正社員の場合は転勤の可能性がないため、安心して働くことができ、かつ正社員としてキャリアを継続させることができます。子育てとキャリアで迷っている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。【参考リンク】・勤務地などを限定した「多用な正社員」の円滑な導入・運用に向けて | 厚生労働省(PDF)()●文/パピマミ編集部●モデル/倉本麻貴(和くん)
2017年06月18日こんにちは。コラムニストの鈴木かつよしです。以前よく耳にした「五月病」という言葉は、最近あまり聞かれなくなったような気がします。今の若い人たちは、せっかく正社員として就職できたのに五月病などといった甘いことを言わないのかもしれません。しかし、5月ごろになってくると「この毎日、どうも違うな」と思ってしまうこともあるようで、「1か月やそこらで憂鬱になっているようでどうする」という気持ちと「でも本当にこの仕事でいいのだろうか」という気持ちのあいだで揺れ動く若者の不安な心理は、昔も今も変わらないように思えます。筆者は35年間の職業生活の半分を“雇われて働く者”として、半分を“自由業・自営業者”として生きてきました。その筆者の経験から、5月の新社会人のみなさんに、みなさんの実際の毎日の生活の中で反すうしていただくとよい言葉 を贈りたいと思います。新社会人のお子さんを持つパパ・ママにも、子育てという日記の最後のページにはさんでおいていただければと存じます。●誰にでも“支配されずに生きる自由”があるが、それは“年中無休”の覚悟を伴う筆者に限らず“脱サラ”を経験したことのある人なら誰でも知っていることではありますが、会社勤めを辞めてしまえば、もう口うるさい上司もいなければ自分の陰口をひそひそ話す同僚もいません。しかし生活はしていかなければなりませんので、さしあたりネット・ショップを開店するにしてもクラウド・ワーキングで稼ぐにしても、自己管理を徹底して損益分岐点以上の収入を得なければすぐに行き詰まってしまいます。カレンダーが数週間先・数か月先まで真っ黒になるくらい次の仕事のスケジュールで埋め尽くされているようでなければ不安で不安でやっていられませんし、納品する商品の品質は100%自分が責任を持たなければなりません。つまり、新社会人のみなさんは今の会社に出勤するのが憂鬱で憂鬱でしょうがないのであれば、誰にでも会社を辞める自由があり組織や上司に支配されずに生きる自由があるのですが、それは即ち“年中無休”で何もかも自分ひとりで自己管理しながら生きていく生活の始まり を意味するということです。廃墟や廃線といった題材の写真で有名な写真家の丸田祥三さんは、今から15年も前に朝日新聞に寄稿されたエッセイの中で、大学を卒業後5年間勤めた会社を辞めたときの心境について次のように書いています。**********『眠れない夜とはお別れだ。もう会社の些事(さじ)を気に病む必要もない、と考えていた私を待っていたのは、自由になった途端に訪れた、一睡もできない夜だった。自由は、ゆっくり眠れる気楽な夜ではなく、一睡もできない苦しい夜を連れてきた』(丸田祥三/50代男性/写真家)・出典『会社を辞めた私から』2002年4月8日付「朝日新聞」夕刊文化欄掲載**********いかがでしょうか?丸田さんが言うように、自由を手に入れるということは面倒でも遅刻ぎりぎりでもとにかく出社さえしてしまえば毎月決まった日にきちんとお給料が振り込まれている今の生活とはさよならするということなのです。●お勤め人の仕事はいちいち“価値”を考えていたらできない。ただ“天職”と思えるか次に、みなさんが今「こんなつまらない仕事をするためにこの会社に入ったつもりはないんだけどな」と思っている日々の仕事ですが、そのようにあなたがやっている仕事の“価値”について考え始めたら、お勤め人の仕事というのはなかなかやっていられません。なぜならば、会社組織の一員として働くことは、人間の体でいう手なら手、足なら足といった一つの部位として働くということですので、そうそう“価値を感じられる面白いこと”ではもともとあり得ないのです。では、どのような心持ちで働くべきなのでしょうか。答えは、手なら手、足なら足といった自分に与えられた役割を“天職”と思って携わる ということです。面白いとかつまらないとかではなく、“仕事は天職”なのです。今、自分がなすべき売り込みなら売り込み、箱詰めなら箱詰め、組み立てなら組み立て、データ入力ならデータ入力、デッサンならデッサン、プログラミングならプログラミング。それを理屈でなく自分の天職と感じながら働くということです。そう感じることさえできればいわゆる“五月病”は克服することができますし、逆に与えられた仕事を天職と感じることができないのであれば、今の会社においてはあなたのスキルが飛躍的に向上していくことは期待しにくいかもしれません。20世紀ドイツの偉大な社会学者であり経済学者でもあるマックス・ウェーバー(1864~1920)は、1917年にミュンヘン大学で行った『職業としての学問』の講演の中で次のように述べています。**********『いまや学問はかつて見られなかったほど専門化が進んでいる。おそらくこの傾向はこれからもずっと続くだろう。私たちはもはや、ただ自分の専門領域に閉じこもることによってしか、学問上で何かを成し遂げることはできない。隣接領域の縄張りを侵すようなことは諦めなければならない』・出典『職業としての学問』マックス・ウェーバー(著)**********近代社会の構造を解明した100年前の天才的な社会学者が、自分が職業として選んだ学問という分野でさえ自分が直接的に携わっている分野の研究をただひたすら黙々と“天職”として追求することしかできないのだと言っているわけです。●そうはいっても入った会社が“ブラック企業”だった場合は我慢せずに辞めることさて、かつてのわが国であれば5月の新社会人のみなさんに贈る言葉はここまででよかったのかもしれませんが、今の時代はここで話を終えるわけにはまいりません。みなさんが入社した会社が運悪く“ブラック企業”だった場合について触れておかなければならないからです。たとえ誰もが名前を聞いたことがあるような有名企業でも、株式を上場しているような大企業であったとしても、従業員が苦痛と感じるような異常な長時間労働が行われていたり、コネ入社組には甘いのにその他の一般の新入社員に対してはセクハラやパワハラが日常的に行われているような会社に入ってしまったのだということが分かった場合は、我慢せずにすみやかに退職する方向で努力してください 。「天職と感じられるようになるまで頑張ろう」などと悠長なことを言っていてはなりません。あなたのお母様もお父様も、あなたを過労死させるために育ててきたわけではないのです。人権を無視した過度な支配に対しては、“逃げる”という方法で闘ってください。こうして考えると、筆者が新入社員だった35年前と比べて今の新社会人のみなさんは、より複雑で厳しい環境の中で日々生きていることが分かります。それでも「自由業で生きるなら年中無休の覚悟を」「職業は天職である」の2点については時代を超えた真実であると、筆者は先人たちの知恵と自分自身の経験から断言できます。ぜひ、反すうしてみていただければと思います。【参考文献】・『職業としての学問』マックス・ウェーバー(著)●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)●モデル/ゆみ
2017年05月23日仕事をするも辞めるも、今までは自分の思いひとつで自由に選択できていたはず。けれど、子どもを持つと環境を替えたいと感じていても、いろいろな絡み合う事情により、一歩を踏み出せる人は多くはないようです。今、ママにとって大きなハードルとなっている「転職」。さまざまなケースのママたちの転職ストーリーを連載で紹介していきます。■吉田奈津美さんの「転職するとき」吉田奈津美さん プロフィール6歳、3歳の二児の母/株式会社メデラ 社員 産後何度かの転職を経て、メデラで働く知人から誘いを受け入社。母親であることはマイナスではなく、メリットと捉えてくれることに共感している。 【吉田奈津美さんの出産後の転職歴】▼1社目 映画配給会社 契約社員2010年5月第1子出産 → 2010年7月仕事復帰 → 2010年8月に退職▼2社目 派遣会社へ登録(派遣先は2社)2011年5月派遣社員として転職2012年4月第2子出産のため産休・育休へ → 2013年7月出産 → 2014年4月仕事復帰 → 2015年1月退職▼3社目 現在2015年2月株式会社メデラへ正社員として転職■産後2ヶ月で復帰→翌月退職が、理想の子育てを考えるきっかけに子どもを産む前から働いていた会社には、制度として産休はありましたが、育休はなかったんです。そこで2010年5月に出産した2か月後の7月には、仕事復帰をすることになりました。復帰早々、体調もまだ完全でない体で、真夏の強い日差しと気温の中での通勤が始まりました。私自身フラフラになりながら会社にたどり着く日々です。それだけでなく、生まれて間もない息子も預けてすぐに体調を崩してしまい、その月は保育園に2週間も行くことができませんでした。そのときに「これはちょっと違う」と感じ、復帰したばかりでしたが会社を辞めることを決めました。退職はしましたが、その会社から在宅でできる仕事を請け、少しの間はフリーランスのような形で仕事をしていました。けれどこの状態を長く続けるつもりはなく、新しい仕事と保育園を探して早く仕事に復帰しようと考えていました。でもそれと同時に前社を辞めたときのように、子どもに負担をかける仕事はしたくない、子どもとの時間をしっかり持ちたいと思うようになり、働き方を模索していました。■「自分を成長させたい」 派遣社員から正社員へ転職そうしているうちに認証保育園が先に決まり、入園の条件として翌月には働き始めなくてはいけなかったので、予め登録していた派遣会社に条件の合う仕事先を紹介してもらい、2011年5月から新たに働き始めました。そこで約2年働いた2013年5月、二人目の出産のため産休に入り、7月に長女を出産しました。派遣会社には育休制度もあったので、それを利用して翌年4月に復帰し、半年近くたった頃メデラに転職し、現在に至ります。一人目の子どもを再び認証保育園に預け、そこからメデラに転職するまでの2年半の間は、派遣会社から紹介される会社に勤めていました。ですが、実はその間もずっと一つの会社で働いていたわけでなく、いくつか仕事先を変えているんです。だから子どもが生まれてから会社が変わった回数で言うともっと多くて、実際はこの6年で4社になります。仕事先を変えるたびに出社時間や勤務形態も変わったりして、それに慣れるまで子どもにも少しは影響があったかもしれません。でも派遣会社から紹介されていたので、仕事をしながらの転職活動をしたわけでもなく、待遇など自分の条件を満たしたところに行くことができたので、精神的な負担で言うと、通常の転職とは違った、守られている感じはありました。小さな子どもを育てながら働くのは大変なことなので、産休育休制度もあり、時短などの条件を満たす会社をすぐに紹介してくれる派遣会社は、当時の自分には合っていて、助かると感じることも多かったです。けれど仕事をしていくうちに、もっと会社の一員として中に入って、責任のある仕事をしたい。自分自身も成長していきたいという思いが大きくなっていました。そんなとき、以前一緒に働いていた友人にメデラに来ることを誘われたんです。■「母でいること」がメリットだった!今までは子どもや家庭を守るため、時短や残業なしなどの条件を優先して仕事選びをしてきました。そうやって仕事と家庭を切り離して二つをうまく両立させるということばかり考えていましたが、そのとき友人に「メデラはママを探している」と言われたんです。子どもがいることは転職においてハンデになるとばかり思っていたのですが、そう言われたときに「そんな考え方、そんな仕事があるのか」というような気付きがあり、今の自分自身の環境を生かせるこの会社で働きたいと思うようになりました。それに、幸いなことに自宅から会社への距離は近くなり、通勤時間も短くなりました。たまに終わらない仕事を多少自宅に持ち帰ることもありますが、基本的には時短勤務で、自分の裁量で仕事にかかることができ、仕事をする上で最大の優先事項として決めた「家族との時間を守る」も以前よりクリアできています。今、メデラに入社してから2年が経ち、責任のある仕事も任されるようになりました。子どもたちも仕事に理解をしてくれて、大切なプレゼンの前日には「ママ、大きな声で言えば大丈夫だよ!」なんて勇気づけてくれたりするんです(笑)。自分のやりたいことと、子どもの成長を信じて、これだけはということだけは曲げずにやっていけば、今がどの場所にいたとしても納得のできるその先に繋がっていくと思っています。<ママの転職 Q&A>Q:転職活動中、「子どもがいること」をネガティブに感じたことは?A:転職期間が長引くと退園させられるとか、保育園のしがらみに転職を躊躇させられることはとても多いと思います。でも譲れないいくつかの条件だけは必ず守り、それ以外多少の妥協ができれば、子どもがいてもいい仕事には巡り合えると思います。Q:仕事を選ぶときの基準はなんですか?A:1)手作りの夕飯を用意できる余裕があるかどうか。魚を焼くだけ、野菜を切ってお皿に並べるだけでもいいので、普段の食事の準備をするところから子どもたちに見せてあげたいと考えています。 2)延長保育には入れない。子どもが友だちと一緒に「バイバイ」と言える時間のお迎えができるようにようにと考えていました。Q:もし1社目の会社を辞めなかったとしたら、どうしていたと思いますか?A:どんな選択をしても、後悔はしたくないので、きっとがんばってやりくりしたりして、その生活にある程度納得はしているとは思います。でも以前の会社は残業もバリバリするような職種で、ロールモデルになるような人もいなかったので、タイミングが違ったとしても転職していたと思います。Q:転職に対して、ご家族の理解はありましたか?A:メデラに転職することを夫に相談したら「行きなよ!」の一言でした。実は同じタイミングで夫も転職をすることになっていたので不安も多少あったのですが、その一言に後押しされました。夫も転職後は早く帰れるようになったので、家族にとって私の転職も夫の転職も、いい選択でしたね。Q:これから転職をしようとする人へ、アドバイスをお願いします!A:自分が大切にしたいことが守れることが前提で、あとは出会い! 不安はあるけれど出会ったら迷わずトライしてほしいですね。人によってそれぞれタイミングもあると思いますが、行けそうなときは「エイ!」と気負わず踏み出してみてもいいのかなと思います。子どもを自分の手で育てることを実感しながら、自分の成長も感じていきたいと新たな会社で正社員になることを選んだ吉田さん。母になるとつい自分のことが二の次になることが多いけれど、「子どもたちはきっと働いている母を誇りに思ってくれていると思う」と自分の成長に妥協しないたくましさは、子どもたちにとっての優しい母であることを支える力になっているようでした。
2017年04月10日『配達員の専用端末に送られた一斉メール』 「ネット通販が普及し物流量が増えているのに、配達員は高齢化し人手不足。物流業界には構造的問題があります」(経済ジャーナリスト・溝上憲文氏)27年ぶりの料金値上げ、宅配総量抑制、巨額の残業代支払い、再配達の有料化……。業界最大手のヤマト運輸が、抜本的な改革を迫られている。この非常事態に、利用者からは「値上げやむなし」の声もあるが、問題はヤマト側にあると、溝上氏は語る。 「宅急便の生みの親である小倉昌男元社長の掲げた『ドライバーは神様であり、会社の代表』という企業理念のもとに成長したヤマト運輸でしたが、経営者が代替わりし、利益より売り上げ至上主義に。結果として、ドライバーがその犠牲者になったわけです。『再配達』『配達時間帯指定』といった過剰なサービスが招いた典型事例で、タコが自分の足を食っている状態です」 その勤務実態を探るべく、都内某所で働くヤマトの配達員を、極秘追跡した。朝、配送センターを出た車は、集荷をしつつ配達に回る。最初の4時間で、なんと100個近い荷物を届けた。午後になると配達はいったん減り、集荷が中心になる。しかし夕方になると再び配達作業が増え、夜まで延々と続く。再配達が集中しているようだ。 何より驚いたのは、配達員の体力。荷物を抱え玄関まで走り、車に戻るときも走る。この日の最後の配達は、夜8時57分。時間帯指定のリミット夜9時まで、火だるま状態で働いていた。神奈川県内を担当する配達員、Aさん(55)に、勤務の実態について聞いた。 「通販関連の荷物が増えているのはたしかです。毎日、アマゾンで買い物するお客様もいますよ。配達員が担当する世帯数は、1区域1000世帯ほど。1日に平均150個の荷物を配達しますが、繁忙期はこれが200個を超えます。時間指定サービスで、もっとも多いのは『午前中』。なので、正午までにおよそ100個を配達しますね。『午前中』指定の荷物のうち、不在で持ち帰る個数は、多いときで20個ほどでしょうか」 Aさんは通常、午前8時から午後9時まで勤務。実際には取れないことが多いが1時間の休憩時間が引かれ、1日12時間労働だ。休日は月に9~10日。正社員だが給料は時給制で、時給1000円前後。家族手当が大きく、妻がいると7万円、子供1人につき1万円がつく。ボーナスは年2回、勤務年数で計算され、夏冬が各50万円ほど。さらに、配達した荷物の個数によって給料が加算される。 「大変なのは、やはり再配達です。『再配達を×時以降に』と連絡があったのに、訪問すると受取人がいないことも。さらに、その荷物がお米や水だったら最悪ですよ。会社から『時間指定は絶対守れ』と厳命されていて、間に合わないと、上司にこっぴどく怒られ、始末書のようなものを書かされます。体力的にもきついけど、正直、精神的な疲労のほうがしんどいです」 今後の改善策についてヤマト運輸広報戦略部は「時間指定の変更などを検討していることは事実ですが、現時点で決定した事項はありません」と回答した。 (週刊FLASH 2017年3月28日、4月4日号)
2017年03月18日こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。子育ても一段落し、再び外へ出て働かれているママのみなさん、お疲れさまです。多くのみなさんはいわゆる“非正規”の立場で働いていらっしゃるかと思いますが、 職場で“正社員”の人から理不尽な扱いを受けて嫌な思いをされた経験 はありませんでしょうか。「正社員同士なら、あんな言い方や怒り方はしないはず。パートのわたしを明らかに見下しているようで不愉快」と感じたことはないでしょうか。筆者の野鳥観察仲間でもある精神科医のA先生は、『現在の労働現場にパートやアルバイトの立場で再登板しようというママは、正社員の冷たい態度の問題に、ある程度心の準備をして臨んだ方がいい』(50代女性/精神科医)とおっしゃっています。A先生のお話を参考にし、筆者の実体験と元々の専門である経済思想史の視点も交えながら、職場で正社員からの理不尽な“見下し”に遭ってしまったときの心の持ち方について考えてみることにしましょう。●1990年代後半を境にしてガラリと変わったわが国の“働く現場”の雰囲気わたくしごとで恐縮ですが、筆者が慶応大学の経済学部を卒業して社会に出た1980年代の初めごろ、わが国の“働く現場”に「正社員だから」とか「非正規だから」といったような、雇用形態の違いによる身分の差別というものは存在しませんでした 。最初に就職した企業は通商産業省(現在の経済産業省)管轄の政策銀行だったのですが、支店長も運転手さんも、正職員も用務担当のパートのおじさん・おばさんも、みな同じ職場で働く対等な仲間の関係だったのです。筆者の記憶では1990年代の半ばごろまでは日本の職場はそういう感じでした。80年代の後半に転職して勤務していたメーカーにはパートの工員さんも多く働いていましたが、会議もミーティングも社員と一緒でしたし、飲みに行くときも一緒。また、社員より金額は少ないとはいえ、社長はパートさんにも「気持ち」と言って賞与を出していましたので、今の非正社員の人たちのようにやるせない疎外感を抱くことはなかった かと思います。そして何よりも、パート勤務の20代・30代の工員さんたちが普通に結婚なさっていました。空気が一変したのは90年代の後半です。相対的に国力が落ちるとともに平成不況が長引く中にあって、わが国の企業は社員全体に対して少しずつの我慢を等しくお願いするといった道は選ばずに、同じ会社で働く労働者を安定した身分の“正社員”と雇用の調整弁としての“非正規”に分けることで乗り切っていく道を選んだのです。それまでの「同じ会社で働く人はみな家族のようなもの」という“経営家族主義”の思想を捨て去り、「会社の正式なメンバーは正社員のみである」という考え方に変えたわけです。ちょうどそのころに医療福祉大学の職員を経て健康食品販売の会社を立ち上げた筆者は、取引先のいろいろな企業を訪問する中で、すっかり変貌したわが国の働く現場の雰囲気に違和感を覚えたものでした。こうして1980年代までは勤労者全体の10%台であった非正規労働者は1999年には25%に急増し、2003年には30%を超え今では働く人の約4割が“非正規” という国になりました(総務省統計局『労働力調査』より)。●正社員も精神的には“幸福ではない”ため、ストレスのはけ口を“非正規攻撃”に向ける前置きが長くなってしまいましたが、このような経緯をもって拡大してきたわが国の“非正規”の歴史を見ると、非正規という働き方が今後ますます増えることはあっても減ることはまずないであろうと考えることができます。再就職ママたちもその雇用形態はよほどのことがない限り非正規での有期雇用契約になるでしょう。前出した精神科医のA先生は言います。『会社の正式メンバーである“正社員”の人たちは、その身分こそ安定してはいるもののそれと引き換えにいわゆる“社畜”として会社に忠誠を尽くすことを暗黙のうちに強いられていますので、慢性的なストレスに苛まれることになります。そのはけ口を会社の中でどこへ向けるかといったら、会社自体が自分たちの正式な仲間とは認めていない“非正規で働く人”に向かうのは、むしろ“必然”だといっても過言ではないでしょう』(50代女性/精神科医)●正社員からあまりにも理不尽な扱いを受けることはパワハラに該当するかも……筆者が知っている40代主婦の女性は、ある倉庫業の会社でピッキングのアルバイトとして働いていたとき、正社員の男性から「今日は消防の査察が入る日なんだよ。この線からちょっとでも商品がはみ出てたら俺たち社員が責任を取らされるんだ。アルバイトにいい加減な仕事をされたら迷惑をこうむるのはこっちなんだよ」と怒鳴られたそうです。でも、こんな失礼な話ってあるでしょうか。まず、今日は消防の査察が入るという情報をアルバイトの人たちは知らされていない。情報さえ社員と同じようにもらってさえいればその通りにやっていたのに、です。そして、誰も社員に迷惑をかけようなどとは思っていないのにこの言われよう。『こういったケースは、れっきとしたパワーハラスメントに該当すると考えられます。正社員のこのような心ない言動によって精神的に深く傷つけられたと感じ心身のバランスを崩してしまったときには、精神科を受診していただければ医師が診断書を書くことが可能ですので、それをもって会社のハラスメント担当部署に報告するというのもひとつの方法です。その際、実際の相手が発した言葉の録音などがあればよりベターです』(50代女性/精神科医)●社会が“非正規”を都合よく利用している以上、非正規の人がいちいち傷ついていては損また、別の女性(40代/主婦)は子どもが高学年になったので10年ぶりに事務のパートとして食料品の商事会社で働きはじめたところ、1か月ほど経ったころに同じ部署で事務として働く正社員の女性同士の、概ね下記のような内容の会話が聞こえてしまったそうです。「○○さんのいるところじゃボーナスの話もできないので息が詰まっちゃうのよね」「奥さんの稼ぎが月5~6万程度のパート収入でやっていけるなんて、旦那さんが高給取りか、それとも目指している生活の水準がよっぽど低いかのどっちかよね」「どうでもいいけどさ、努力してなったわたしたち社員に牙をむくような態度をとらないでほしいわよね。あんたが怠け者だから非正規でしか社会復帰できなかっただけのこと じゃない」いやはや、呆れてしまって言葉も出ませんが、A先生は次のようにおっしゃっています。『社会自体が“非正規雇用”というシステムを都合よく利用し放置している以上、このようなとんでもない意識を持つ正社員の人は残念ですがいなくなりません。だとするならこんな心ない言葉を気にしていちいち傷ついていたら損ですので、正社員の心ない言葉や態度に出くわしても気にならなくなる方法を2つ紹介します』(50代女性/精神科医)●正社員の理不尽な言動にカチンときても自分を見失わないための心の持ち方2箇条それでは最後に、A先生による“正社員の理不尽な言動にカチンときても自分を見失わないための心の持ち方”を2つに要約してみましょう。・非正規の人の方がポテンシャルが高いことを肝に銘じること。日本の正社員のサラリーマンが本業以外で一流のプロフェッショナルになることは時間的にきわめて難しいことですが、非正規の人であれば可能性を持っています 。芥川賞作家の村田沙耶香さんは今でもコンビニでアルバイトを続ける非正規労働者です。・自分が非正規なのは「努力してこなかったから」とか「怠けてきたから」とかでなく、「正社員のサラリーマンになることを至上の価値として生きてこなかったから」にすぎないということを思い出すこと。いかがでしたでしょうか。今すぐ収入につながるような“手に職”はなく、家庭の事情から外で働くにしても短時間の勤務しかできないという場合、正規・非正規の区別を撤廃している会社も、探せばあります。職場再登板ママのみなさんの御活躍をお祈りいたしております。●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)●モデル/貴子(優くん、綾ちゃん)
2017年02月14日こんにちは。婚活コンサルタントの菊乃です。出産などで一度退職された女性が、もう一度正社員として働きたいと思うこと、ありますよね。正社員としてまた働くために、最大のハードルはブランク です。たとえ育児のためであってもブランクがあると非正規雇用ならいざ知らず、正規雇用での採用は厳しくなりがち。大手求職サイトに登録しても、なかなか面接に至りにくいかもしれません。そういったブランクがあるアラフォー女性が正社員として働くための就労支援について、飯田橋駅から徒歩7分の『東京しごとセンター』担当者の方にインタビューさせていただきました。●ブランクのあるアラフォー女性が正社員として働くには『東京しごとセンター』は東京都内で就職を希望する方向けの各種就労支援を行っております。東京都からの委託を受けており、求職者の方のご利用はすべて無料。都内で就職希望であれば他県の方も利用は可能です。利用申し込み後、一人ひとりに専任の就職支援アドバイザーがつき、これまでのお仕事のヒアリングを行います。そこで何を困っているのかを具体的に聞きます。例えばこんな悩みを持っているA子さん(39歳)がいたとします。「独身時代に飲食店で働いていた経験があるぐらい。若いからできたけれど今はあんな体を酷使する仕事は無理。といってデスクワーク経験もないし、ブランクもあって履歴書に書けることがない!」アドバイザーがA子さんの悩みを聞きだします。経験がないため応募できる仕事もないとのこと。A子さんは最も手厚い『東京しごと塾~正社員就職プログラム~』を受講することになりました。これは3か月間9:30~16:30の間、会社員のように朝出勤して、広告代理店という仮想職場で職務実習をうける ことができるもの。参加費は無料で、要件を満たした受講者は1日5,000円の就活支援金 ももらえます。初めの3日間は今後の自分のキャリアをどのように作っていくかキャリアデザインを考えます。その後の職務実習で受講生は25人、5人ずつのチームになり職場の人間関係も疑似体験できます。広告代理店なので、1日のやることが決まっているわけではありません。考えながらスケジュールを作り、タイムマネジメントを学びます。営業なので、企業へのアポの入れ方も本物の会社で練習し、アポイントがとれた企業にもっていくプレゼン資料作り、プレゼン方法、チームワークについても実践で学べます。もちろん、履歴書や職務経歴書、面接の練習も個別で対応。A子さんもだんだん自信が付いてきました。正社員というとハードルが高いものとばかり思っていたそうですが、チームで乗り越える達成感は家事、育児では得難いものでした。「仕事って楽しい!」A子さんにとっては当たり前と思っていた初対面の人と話せることも同じチームの仲間から褒められ、新たな自分を発見できるようになり、世界が広がりました。子どもからも応援されながら、毎朝9:30に飯田橋に行く3か月の実習で、A子さんはスキルアップしただけではなく、とても自己肯定感も高まり無事に正社員として就職しました(A子さんのお話は架空ですが、受講者の7割前後は就職が決まる そうです)。仕事が決まってからも、6か月間は個別に相談できます。『東京しごと塾~正社員就職プログラム~』は年間200名の定員。30~44歳正社員雇用を目標に次のような7つの魅力があります。(1)仕事探しの方法(2)自分の強みを見つける(3)履歴書、職務経歴書の添削(4)面接の練習(5)ビジネスマナー(6)パソコンなどのビジネス基本スキル(7)1日5,000円の就活支援金受給(支給要件あり)A子さんほどブランクもなく、すぐに就職したいという場合は『就活エクスプレス』という5日間の無料研修コースもあります。『就活エクスプレス』では、下記の2コースから自分に合う方を選べます。・適職探索コース:キャリアの振り返り、自己分析、書類の書き方、企業ニーズ等・面接突破コース:キャリアの振り返り、求人ニーズを知る、面接ロールプレイング等こちらは企業の求人情報に明るいジョブコーディネーターからアドバイスを受けることができる他、企業より直接スカウトを受ける可能性もあります。その他、さまざまなサポート・研修が受けられるので、ぜひ困っていたら一人で悩まず相談してみましょう。----------同じような就労支援は全国各地の都道府県にもあります。「ジョブカフェ○○県」など住んでいる都道府県名と「ジョブカフェ」で検索してみましょう。ジョブカフェは若年層の就職支援をワンストップで行う都道府県が設置する施設です。【取材協力/東京しごとセンター】東京都千代田区飯田橋3-10-3お問い合わせは電話03-5211-1571ご利用時間は平日9:00~20:00、土曜日9:00~17:00(事業案内)・『東京しごと塾~正社員就職プログラム~』お問い合わせは電話03-5211-3312・『就活エクスプレス』お問い合わせは電話03-3234-1433・出産、育児、介護からの再就職を目指す方向け『女性しごと応援テラス』お問い合わせは電話03-5211-2855【参考リンク】・ジョブカフェにおける支援 | 厚生労働省()●ライター/菊乃(婚活・恋愛コンサルタント)●モデル/ゆみ
2017年01月12日【女性からのご相談】独身で実家暮らしの姉がおります。仕事もパートらしく少なくとも正社員ではありません。自立しなければ、今の時代は結婚だって無理という菊乃さんのコラムを見て怖くなりました。姉は元の顔立ちが悪いわけじゃありませんが、年相応のおしゃれもしないし、そういう友達もいないようです。実家にいて親とテレビを見て、パートに行ってという生活を繰り返しているだけで結婚もこのままでは無理。親も甘くて、どうしたらいいでしょうか。目次 「働いて」「結婚して」は本人のやる気をなくす幼いおばさんへの接し方3つ幼いおばさんが変わらなかった場合の最悪なパターン●A. 「働いて」「結婚して」は本人のやる気をなくすこんにちは。婚活コンサルタントの菊乃です。お姉さんが実家暮らしの非正規雇用なのですね。困りますよね。ご両親が亡くなってからどうするのか、誰も世話をする人なんかいないし、30代、40代になるにつれてキャリアアップは難しくなりますね。若いフリーターならいざ知らず、社会とのつながりの薄い30代、40代の非正規雇用の女性は女性としての魅力もなく、そのままではパートナーを作ることは難しいです。実家暮らしなら、料理や掃除などの家事、税金等のお金のことなど、生活力全般ないでしょうね。お姉さんのような方は、ただ就職していない、結婚していないだけじゃなくて性格も考え方も全般的に幼い のです。ご相談者様のお姉さんのように、非正規雇用で独身のまま、気が付いたら30代だったという方がたまにご相談にいらっしゃいます(自分の未来のためにお金を出して相談に来るくらいの方は、危機感も持っているのでとてもまともかもしれません)。何を相談したらいいのか、不安はあるけれども、何がわからないかもわかっていないという方が多いです。「結婚しろ」「就職しろ」とは言われたけれど、具体的に何をどうしたらいいか誰も教えてくれないし、わからない。結婚の手前には、プロポーズがあって、その前は交際があって、その前はデートがあるでしょう。そのデート経験だって、おそらく何年もまたは生まれたときから一度もないかもしれません。お姉さんがデートできるような格好でいるのを見たことがありますか?年相応の女性に見えるお化粧はしていますか?そんな幼いおばさんへの接し方として、次の3つを注意してください。●幼いおばさんへの接し方3つ●(1)明日できそうな具体的な行動をアドバイス幼い方の特徴として、先々のことを考えられないというのがあります。子どもは10年後を予想して計画しないでしょう。今のお姉さんには、「結婚しろ」「就職しろ」とハードルの高すぎることを言うのではなく、明日1日あればできるような具体的な行動 を促してみてください。「学生時代から着ている服を捨てて」「お化粧を習って年相応のメイクをしよう」「職安に行って履歴書と職務経歴書を添削してもらって」など。「結婚しろ」「就職しろ」は、心を閉ざすだけでけっして届きません。●(2)過程を褒めるお姉さんは努力をしていないと思いますか?多分、お姉さんなりにしているんです。大人の社会では結果重視ですよね。結果の出ていない頑張りを認めろと言われても甘えでしょう。ところが、幼い人は、「こんなに頑張ったんだから褒めて。結婚しているかしていないか、正規雇用か非正規雇用かだけで人を判断するなんて」と過程を見て欲しがります 。非常にバカバカしいかもしれませんが、もしあなたの助言を聞いて1歩行動したら、就職や結婚にはまだまだ程遠いとしてもそこは褒めてあげてください。●(3)感謝を期待せず、こまめに確認幼い方はやってもらうことが当たり前になっております。「アドバイスをしてもらった」「心配してくれた」とは考えないでしょう。周りへの要求が高いので、「やってもらえなかった」「やってくれなかった」とばかり考えがち。相手からの感謝は期待せず、こまめに確認してください。人並みの行動力があるならば、30代で独身・非正規雇用ということはないのです。忍耐は必要 。または極力関わらず、存在を忘れてしまうのはどうでしょうか?しょせん他人ですし、相談者様はその自分の人生を楽しんでいいのでは。もちろん、最悪のパターンだけ想定して。●幼いおばさんが変わらなかった場合の最悪なパターン甘ったれたお姉さんもご両親も年をとります。その後、どうなるのか?今日、明日は何とかなるけれど、将来はご両親が亡くなった後、社会との絆がない方は孤独死 でしょう。田口ランディという作家のデビュー作『コンセント』は相談者様と同じようなお兄さんが孤独死をして連絡が来るという話でした。ちなみに、マンションで孤独死をした場合は、特殊な清掃担当の業者に依頼して、室内クリーニングを行います。これは敷金で賄えませんので、遺族の負担になるでしょう。清掃費用と大家から「不審死の後は借り手が付かないから」ということで損害賠償を請求されるケースもある とか。お葬式は身内だけで小さなものでいいのでしょうけれど、後処理に数十万円かかるケースも多いらしいです。遠ければ交通費は別途発生します。この知識が役立つことがないことを願っております。【参考リンク】・特殊清掃の実例 | メモリーズ()●ライター/菊乃(婚活・恋愛コンサルタント)
2016年09月29日今や転職や独立は当たり前、働き方が多様化する時代です。実際に社会人になってみないと想像しにくいことではありますが、まずは新卒採用で会社で正社員として働き、ゆくゆくはフリーランスとして独立を視野に入れている人もいるかもしれません。そこで今回は、「フリーランス」という働き方についてじっくり考えてみたいと思います。■フリーランスのメリットとデメリットまずは、フリーランスで働くメリットから考えていきましょう。なんとなくイメージしている人もいるかもしれませんが、やはりフリーランスの魅力は「時間に縛られないこと」。仕事のペースをある程度自分の裁量で決めることができる、これに尽きるのではないでしょうか。「好きな時に寝起きできる」、これは一般企業に入った場合、退職するまでほぼ不可能といえます。毎朝早起き、満員電車で揉みくちゃにされながら通勤なんていうサラリーマンを横目に、ある程度の自由な生活を手に入れることができるのは確かです。また、残業は当たり前でいつも日付が変わるギリギリに帰宅、家に帰っても寝るだけの生活で毎日疲労困憊。こんな働き盛りの社会人にありがちなルーティンとは縁遠い、余裕をもった生活を送れるかもしれません。実際仕事内容が辛いというよりは、こういった環境悪化を理由に3年を待たずして辞めてしまう新入社員も多いよう。いくらお給料がたくさん貰えたとしても、あまりに時間的余裕がない生活では、「自分は一体何のために働いているんだろう……」と、退職を考えてしまうのも無理ないのかもしれません。ならば、フリーランスなら楽して自由な生活を手に入れることができるのでしょうか。いえ、現実はそう甘くありません。まず一般企業に勤める正社員と違って、毎月のお給料が保証されていませんし、全ては自分次第。相当タフな精神力が必要とされます。■独立を決めたらまずやるべき事自由な生活と引き替えに、厳しく険しいフリーランスへの道。後悔しないためには、独立前きちんと事前準備をすることが大切です。まずは、「どの職種で食べていきたいのか」を考えてみましょう。フリーランスとしてやっていくためには、武器になるスキルが必要。これまでの人生で身に付けた技術や経験を活かして仕事をするのが鉄則です。昔から継続している趣味や習い事などを洗い出してみると、ヒントになるかもしれません。例えば、文章を書くのが好きならウェブライター。カメラの腕に自信があるのなら、フリーのカメラマンを目指してもいいでしょう。■「週末フリーランス」のススメかくいう筆者も、将来フリーランスとして独立を目指しています。平日はOLとして働きながら、週末はウェブライターとしてお仕事をもらい、個人ブログを運営しています。この生活を始めて約1年、ようやく副業だけで収入が10万円を超えるようになってきました。いきなりフリーランス一本でやっていくのはかなりリスキー。まずは、「週末フリーランス」として始めることをオススメします。また、フリーランスには向き不向きがあるのも事実。ある程度、制度や組織に縛られていたほうが力が発揮できる人もたくさんいます。フリーランスが本当に自分の性に合っているのか、今一度考えてみて下さい。しかし、会社によっては副業を禁止しているところもあります。また、副業の年間所得金額が20万円を超える場合は、確定申告も必要となってくるので、きちんと下調べをしてから行いましょう。何をするかを決めたら、あとは「行動」あるのみです。目先のことしか考えない安易な理由で始めてしまうと失敗する確率も当然高いものに。よくよく考えてから決断することが大切といえるでしょう。
2016年08月24日【女性からのご相談】3人の子どもを育てながら、正社員として勤続10余年になります。朝食を用意して子どもたちのお弁当を作り、学校に送り出してから出勤。夕方退社して、夕食を準備。休日は掃除洗濯、家族で遠出。ときには出張もありますが、その場合は主人が子どもの面倒を見てくれます。このように、仕事をしながら家事育児もできるというのは、多くの人が知っていることと存じます。しかしながら周りを見てみると、結婚により退職する女性や、もとより専業主婦だという女性が後を絶ちません。ある同僚男性の奥さんは、子どもがいない上まだ若いのに専業主婦なんだとか。「このご時世に? 」と思わず驚いた顔を見せてしまいました。ご主人の稼いだお金を使うことに抵抗を覚えない方々。パートナーと対等になれない夫婦関係、視野が狭いまま終わる人生。この女性は普段、なにをやっているのだろう?なぜ平気でいられるのだろう?多様性を認めるべきだということは理解しています。ただ、子どものいない専業主婦の方々の日常がどうなっているのか、素直に疑問を覚えたので相談してみました。●A. 子どものいない専業主婦の日常は、個性によってさまざまです!ご相談ありがとうございます!ライターのティッシュまみれ子です。毎日、充実した生活を送っている相談者さん。仕事に家事にと大変そうですが、相談者さんにとっては、どれも人生に必要不可欠な要素なのでしょう。そのため、他の人がその要素を必要としないことについて、不思議に思ってしまうのかもしれませんね。今回はリクエストを受けて、子どものいない専業主婦 の方々のお話を伺ってまいりました。さまざまに異なる生活の一側面をご紹介しますので、参考にしてみてくださいね。●子どものいない専業主婦の方々の日常は?●(1)ひたすらのんびりする!『夫の転勤により海外在住です。朝と夕方は愛犬と海辺を散歩。あとは食料品の買い出し、こっちでできた友達とコーヒーショップ。日本にいる弟とスカイプなどなど。ひたすらのんびり していますよ~』(24歳女性/主婦)ゆっくり、贅沢な時間ですね。生活習慣の違う海外生活は大変そうですが、楽しそうでもあります。のんびりしていても刺激がある毎日、ちょっと憧れてしまいますね!●(2)習いごとや勉強に取り組む!『無料の公開講座(オープンレクチャー) を見つけて出かけています』(36歳女性/主婦)『数年前から短歌教室 に通っています。夫のおかげで自費出版もできました。「図太い」「いつか路頭に迷う」と他人様に怒られること、多々あります。そんななか、いつも優しい言葉をかけてくれる夫には、本当に感謝しています』(34歳女性/主婦)いやはや……隣の芝生を青く感じてしまいますね。懐深い旦那さんで、うらやましい限りです。とにかく、学びを得るのはすばらしいこと。そして、お金は大事ですね。ご主人が高収入であれば、心にも余裕が生まれそうです。●(3)趣味は株!『株 ですね。8年前、叔父の指導で始めたのですが、いまでは趣味といえるほどハマッています』(38歳女性/主婦)空いた時間に賢く稼ぐ、というやつですね。株で儲けるなんて、映画のなかだけのファンタジーかと思っていました。数字に強い女性ってかっこいい。賢くなりたいものです。●(4)体を鍛えまくる!『フィットネスクラブ通い 。同じような環境にいる、年の離れた友達が3人もできました。重い腰を上げて本当によかったなと思っています』(26歳女性/主婦)『結婚を機に仕事を辞め、それまで毎日消費していたパワーが有り余ってしまった。現在では、ほとんどの時間をジム でのミッションに費やしています』(32歳女性/元メーカー勤務)ジムやフィットネスクラブは新たな出会いの宝庫なのですね!ボディラインも引き締まるのではないでしょうか。しかし、「ミッション」とは一体……?なんだか厳しそうでドキドキします。●(5)クリエイティブに生活を楽しむ!『掃除洗濯の他ですよね?ペットの世話、ガーデニング、あとは主人に夫婦旅行の計画 を立ててほしいと言われるので、事細かにプランニング。PCと手書きを組み合わせて、旅のしおりを作っています』(29歳女性/元広告代理店勤務)夫婦仲良しで楽しそうです。どこか生活をクリエイトしている感じもすてき。旦那さんとの未来を思い描いている雰囲気が、とても魅力的でした。●(6)ハンドメイドを楽しむ!『学生のころからアクセサリー作り が趣味。昨年からアプリで販売もやってます。まとまった額は稼げないけど楽しい!』(26歳女性/主婦)手作りアクセサリーをネット販売ですね。手先が器用だったり、ミシンが使えたりすれば、ハンドメイドも楽しそうです。●(7)好きな分野でボランティア!『とあるギャラリーのスタッフ を無報酬でやっています。お金が絡んでいないので、肩の力を抜いて楽しんでいます』(29歳女性/主婦)四年制大学卒業と同時にご結婚されたこちらの女性。あるとき立ち寄った画廊にひとめぼれ、ボランティアスタッフに応募したそうです。なんとも豊かな精神性に尊敬の念を覚えます。私だったら、お金がもらえない仕事はつらいかも。●(8)もうすぐ兼業主婦!『料理が得意なので調理師資格を取得 。その後、夫が近所に小さなお店を設けてくれました。なにごとも、人と人との支え合いですね。もうすぐお店のプレオープン。40代にして兼業主婦デビューです』(42歳/主婦)キラキラしすぎで、見ているだけで涙が出てきます。いくつになってもチャレンジの連続なのですね。今後の人生に希望が持てる気がしてきました。●自分とまったく違った他人ほど、貴重な存在です!価値観の違う他人とのふれあいは、ワンダーランドに踏み込むような体験ですよね。「なんであの人はこんな簡単なことができないの?」「なんで私はこんなにがんばっているのに、あの人はがんばらなくても平気なの?」など、憤然と考えてしまうこともあるでしょう。しかし、人生における驚きや発見というものは、自分とまったく違う他人によって最も多く与えられるものではないでしょうか。そして必ず、相談者さんと専業主婦さんとの間には共通点があるはず。心を開いてお喋りしてみれば、もやもやっとした気持ちが、いつかはじけてなくなるかもしれません。貴重な出会いを、大切にしてくださいね。●ライター/ティッシュまみれ子(ライター)
2016年07月12日正社員としての終身雇用がもはや当たり前でなくなり、職場でいくらがんばっても稼げる給料の上限が見えてしまっている現在、不動産投資にトライする人が年々増加しています。民泊ブームや、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに合わせた不動産ブームも、これに拍車をかけている模様。「不動産投資」のキーワードで検索すると、「不動産オーナーになれば、不労所得が得られて老後は安泰ですよ」という業者の決まり文句がたくさん出てきます。しかし不動産投資で成功する人がいる一方、失敗する人も後を絶ちません。いったい、なにが成否を分けるのでしょうか?そのポイントは、これまでの心理状況にあります。■1:自分で勉強せず営業マンの話を鵜呑みにしてしまうパターン&背景不動産投資は普通、必要資金が株や投資信託など他の投資にくらべて高額になります。では、投資する人がみな、きちんと時間をかけて下調べをし、冷静に投資戦略を練りに練っているかというと、実はそうでもありません。むしろ勉強をあまりせず、不動産業者のいいなりになってしまう人が多いのです。日常の食料品や消耗品などの少額の買い物ではあちこちの店を渡り歩き、値段や内容を比較してから買うのに、不動産という大きな買い物になった途端、思考がフリーズして不動産業者のいうことが情報のすべてと思いこんでしまいます。「この物件は空室リスクがほとんどありません」「この物件を逃したらもう他はありません」という不動産業者の甘い言葉に引きずられて投資物件を購入した結果、赤字や借金を抱えて失敗してしまう……。そんなタイプには、「幼少期、親や他人のいうことを鵜呑みにし、自ら冒険をあまりしてこなかった」ような真面目な人が目立ちます。でも冒険する場合は自力で状況を調べ、対策を練ることが必要。そういった習慣がないために、営業マンの言葉を信じてしまうのです。また、不動産業者の顔色をうかがってしまう人もこのタイプ。「なんかアヤシイ」「本当かな」と思っても、押しの強い営業マンに不機嫌な顔をされるのが怖くて聞けないのです。■2:新築物件を建てて損をしてしまうパターン&背景新築物件をイチから建てることを業者から勧められる場合も、最終的には損をします。なぜなら、基本的に新築物件は販促のための人件費やパンフレット費用などのコストが上乗せされているため、中古にくらべて価格が高くなるのです。また、悪質な不動産業者の場合、「これだとコストが安く済みますよ」と安い部材を購入させ、入居希望者が集まらなさそうな安っぽいアパートを建てさせることも。それでも不動産業者には管理料と建築費用が入るので、泣くのは大家だけなのです。さらに、売却を念頭に置いた場合、新築物件は必ず損をします。新築物件は、購入した時点で20%価値が下落するからです。また、売却する場合には「物件の契約価格の3%+6万円」を不動産業者に払わなくてはなりません。収入ダウンや老後のことを考えて不動産投資をはじめるケースが一般的ですが、相続の場面になったとき、お荷物となった物件を売却するのもよくある話。つまり、投資用物件として新築を購入するのは、最初から「負け」の勝負をするようなものなのです。長期的に運用することが前提ならば、需要と供給のバランスで価格が決まる中古物件に投資すべきです。しかし、なぜこんなことが起こるのでしょうか?先述の「これまで親や他人のいいなりになってきた」こともありますが、「イメージや見た目に弱い」「新しいものがとにかく好き」な場合もまた多いのです。普段から見栄を張ってしまうタイプ、ブランドイメージで買い物をしてしまうタイプは、その買い物が合理的かどうかをチェックしないため、ムダにお金を払ってしまう傾向にあるということ。■3:資金計画がないor無理な返済計画を立ててしまうパターン&背景不動産投資をする場合、資金を銀行から借りて不動産賃貸収入から返済をしていくのが一般的なパターンです。実は、不動産投資の最大のリスクはこのローンなのですが、ここで思わぬ痛手を被る人が少なくありません。例えば、短すぎる返済期間で無理な返済計画を立ててしまう、「物件の購入価格=総コスト」と思いこみ、購入後にかかってくる税金やメンテナンス費用などを考慮していないなどがあります。しかし、いちばんまずいのが、「住宅ローンの感覚で不動産投資のローンを組んでしまう」ケースです。住宅ローンの金利は大抵0.8~2%ですが、不動産投資ローンはそれよりずっと高く、最低2%はかかります。また、不動産を登記する際の費用も、居住用住宅を購入する場合の3倍ほどかかります。つまり投資の場合の不動産購入は、通常の住宅ローンとはまったく別物と考えなくてはならないのです。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?予測が甘い、不測の事態に備えないなど理由はいろいろありますが、総じて「最悪の事態を考えたくない」「いいことしか考えたくない」という無意識が働いているためだといえます。実は、奥底には「失敗したらどうしよう」という不安が強く渦巻いているのですが、その不安と向き合うとダメな自分を目にして居場所を失うような感覚に陥るため、あえて考えないようにしているのです。*この他、「契約書を細部までしっかりチェックしない」「借り上げ保証や家賃保証に過度に期待する」「空室リスクを予測していない」などが不動産投資の失敗として挙げられます。いずれも根底にあるのは、「自分の内側にある不安と向き合うのを怖れている」「自分の目や手や足を使って、情報を自ら集め、可能な限り投資のリスクを見極めようとしない」という点です。不動産投資は、株式や投資信託にくらべてはるかにリスキーな投資です。この投資の失敗ひとつのために、一家離散や貧困といった不幸な事態に陥りかねません。不確定要素の高い不動産投資においては、まず自分の力で徹底的にリスクを洗い出し、投資のメリットとデメリットを比較して判断することが必要です。つまり「大人としての責任と覚悟と決断」が求められるのです。「難しいから」「大丈夫だといわれたから」であいまいにするのではなく、ぜひ「それは本当かな?」をクセにして、自分の責任で投資の判断を行うようにしてください。(文/税理士・鈴木まゆ子)
2016年06月30日新年度がはじまって1ヶ月が過ぎました。この時期、職場の人間関係で悩んでいる人も少なくないのではないでしょうか。正社員で働くことを希望する女性向け求人情報サイト『エンウィメンズワーク』の調査によると、30代以下の働く女性の94%は職場でのストレスを抱えており、そのうち47%はストレスの原因として「上司との関係」を挙げているそう。権力をふりかざすパワハラ上司や、部下を徹底的に攻撃するクラッシャー上司などに振り回されると、精神的にまいってしまいますよね。しかし『「自分が絶対正しい!」と思っている人に振り回されない方法』(片田珠美、大和書房)では、職場やプライベートで出会う「大迷惑な人」に振り回されず、ストレスをためない方法が紹介されています。そのなかから、特に上司との関係で使えるコミュニケーションの方法をピックアップしました。■1:「いい人」をやめて心の負担を軽くする「自分が絶対正しい!」と思っている人に振り回されやすいのは、いわゆる「いい人」。素直で純粋、真面目で責任感の強い人ほど「自分が絶対正しい!」と主張する人にとっては恰好の餌食になってしまいます。そんな人は、「プチ悪人の要素」を持ってみることが大切。たとえば少しだけ「疑いの目を持つ」「相手の裏を探る」「反論してみる」「上から目線で相手を見てみる」「小馬鹿にしてみる」などして、意識的に視点を変えてみてください。いままで腹が立つだけだった人が、少し笑えるような存在になったりするのではないでしょうか。また、罪悪感を抱きやすい人も危険!例えば自分が所属するチームで問題が起こったときなどに、「自分の責任だ」「自分がもっとちゃんとやっていれば……」などと考えていると、そこにつけこんだ上司に「君が悪い」「君の責任だ」と責任を押しつけられるはめになります。ミスに責任を感じるのは大切なことですが、仕事において自分ひとりの影響力などたかが知れています。なんでも自分のせいにする癖をやめれば、心の負担も少し軽くなるでしょう。■2:相手の言動の裏にある気持ちを分析するもうひとつのポイントは、相手を分析する癖をつけること。相手と同じ土俵に立って感情で受け止めると、どんどんストレスがたまり、精神的なダメージが大きくなります。ですが、「この人は怒鳴っているけど、本当は自分に非があることを知っているんだな」などと分析できると、無駄に落ち込んだり、イライラしたりすることがなくなります。また、無茶なやり方を押しつけてくる上司を客観的に見てみると、実は新しく赴任したばかりで不安の裏返しで焦っているということがわかったりします。その場合は「部長のマネジメント力はすごいですね。いきなりそのレベルで仕事をするのは難しいので、私たちでもできるやり方があれば教えてもらえませんか?」などと、相手のことを認め、不安を和らげてみてください。すると上司も安心し、「こんなことから始めてはどうだ?」などと態度を改めたりするものです。冷静かつ客観的に相手を観察する目を養いましょう!*本書には「自分が絶対正しい!」と思っている人への対処法のほか、そんな相手のタイプの見分け方、標的になりやすい人の特徴、そして自分が加害者になっていないかのチェックも紹介されています。職場でのコミュニケーションに役立つこと間違いなしです。(文/平野鞠) 【参考】※片田珠美(2015)『「自分が絶対正しい!」と思っている人に振り回されない方法』大和書房※女性の94%は仕事でのストレスを感じている。原因は「職場での人間関係」と「給与の低さ」—エンウィメンズワーク
2016年05月05日IICパートナーズは3月29日、「退職金・企業年金に関する会社員の意識調査」の結果を発表した。対象は20代~50代の正社員1,000名。調査は2016年1月に実施。○退職金・企業年金の用途、82.7%が「老後の必要資金」「退職金・企業年金の用途として想定するもの」を聞いたところ、1位は「老後の必要資金」(82.7%)だった。次いで2位は「住宅ローン等の返済のための資金」(20.7%)、3位は「資産運用の元手」(17.6%)。以降「転職活動中の必要資金」(14.8%)、「老後のボーナス」(14.6%)、「独立開業など退職後の活動費用」(12.3%)と続いた。「退職金・企業年金が老後の生活においてどんな役割を果たすことを期待するか」を質問すると、57.1%で「公的年金の補完(生活費の上乗せ)」が最も多くなった。次いで「万が一の備え(貯蓄)」(27.4%)、「ゆとりをもたらすボーナス(遊興費)」(9.9%)、「わからない・考えてない」(3.2%)が上位にあがった。「勤務先に退職金・企業年金制度がない」と回答した人に対して「老後の生活に備えるため、お勤め先の企業に期待したいこと」を聞いたところ、「退職金・企業年金の充実」(63.8%)が最も多くなった。次いで「老後も働けるしくみ」(50.9%)、「保険・積立など自助努力の補助となるしくみの提供」(30.1%)、「資産形成、生活設計に関する教育、情報提供」(20.4%)と続いた。「務め先において、今後退職金・企業年金制度について何らかの対応してほしいと思うか」を聞いたところ、68.2%で「制度を設けてほしい」が最多だった。次いで「制度は不要だが、その分(給与等に)上乗せしてほしい」(13.1%)、「制度があれば良いと思うが、なくても特に問題はない」(12.1%)となった。
2016年03月29日連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。○貯蓄目標額はとりあえずでもいいから決める!正社員のサラリーマンなら、20代のうちに200~300万円の資産は作っておきたいものです。もちろん、人それぞれ、会社による収入の多寡や、住宅手当や学生時代の奨学金の返済の有無など、家計の事情は異なります。しかし将来結婚するときに標準的にかかる費用や新生活を準備するための費用は大きく違いません。また、マイホームを購入する場合も、住みたい地域と間取りが同じであれば、準備すべき資金はあまり変わりません。20代の社会人は、まず貯蓄習慣を身につけましょう。貯蓄習慣があれば、よりまとまった資金が必要になる30代、40代が楽になります。独身の方は、将来の選択肢がたくさんあって不確定要素も多いため、貯蓄の目的があいまいになりがちです。ですから、とりあえずでもよいので「貯蓄の目標額」を決めましょう。目的があいまいでも、目標が明確であれば、やる気は出てくるものです。家計の収支から考えて非現実的な目標額を設定しても意味がありませんが、ここでは「30歳までに300万円」を貯めるやり方を考えてみましょう。300万円あれば、結婚費用や新婚旅行費用、新生活準備費用などは十分にまかなえ、ある程度貯蓄があるゆとりのある状態で新しい生活をスタートするができるでしょう。○毎月積立額、ボーナス積立額を決める!まずは、毎年の積立額を決めましょう。単純に考えると、毎年積立額は以下の計算式で決まります。毎年積立額=300万円÷(30歳-現在の年齢)たとえば、現在24歳の方の毎年積立額は、300万円÷(30歳-24歳)=50万円となります。次に、毎年積立額を達成するために、毎月の給料や年2回のボーナスからいくら積み立てるかを決めましょう。1年間で50万円を蓄える場合は、毎月1万円とボーナス1回19万円、毎月2万円と1回ボーナス13万円、毎月3万円と1回ボーナス7万円、毎月4.2万円と1回ボーナス0円などの組み合わせがあります。○給与天引きの仕組みを活用する!給与天引きの税金や社会保険料が、高い金額の割に痛みを感じないのと同じように、貯蓄も給与天引きを活用すれば、楽に財産形成をすることができます。■社内預金制度勤務先に社内預金制度があればぜひ活用したいものです。定期預金の標準的な金利が0.01%という超低金利の現在、預金の利息で増やすことはできません。しかし社内預金は優遇金利が設定されているはず。仮に金利が1.0%であったとしても、一般の金利の100倍です。多くの場合、限度額が設けられていますが、断然有利な制度です。できるだけ活用するようにしましょう。■財形貯蓄制度多くの会社には財形貯蓄制度があるはずです。財形貯蓄制度には「一般財形」「住宅財形」「年金財形」の3種類があり、「住宅財形」と「年金財形」には一定額までは利息が非課税になる優遇がありますが、使い道が「住宅取得」や「老後資金」に限定されています。超低金利のため非課税メリットがほとんどない現在は、用途制限がない「一般財形」を選んではいかがでしょうか。■NISA(少額投資非課税制度)給与天引きでNISA(少額制度非課税制度)が活用できるようにした会社が近年増えています。そんな会社に勤務しているのであれば、NISAを活用してはいかがでしょう。NISAは、1年で120万円までの株や投資信託への投資資金から得られる譲渡所得や配当金、分配金などの収益に5年間税金がかからない優遇制度です。値動きのあるリスク商品への投資になるため元本割れの可能性があります。そのため積立額の全部ではなく、一部をNISAに振り向けるようにしましょう。たとえば、毎月3万円の積み立てをする場合、2万円で社内預金や財形貯蓄を活用し、残りの1万円でNISAに活用するといった具合です。NISAでは、販売手数料や信託報酬の安い投資信託を使うとコストがかからないため効率的な運用をすることができます。投資信託などのリスク商品は、元本割れの可能性がある代わりに、預金を上回る高い利回りを期待することができます。20代のうちにある程度の財産形成をしておくと、その後の選択肢が増えます。財産を作ることは経済的な自由を手に入れることにもつながります。まずは目標を設定し、やりくりを工夫して積み立てをスタートしましょう。※写真と本文は関係ありません○執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)FPオフィスワーク・ワークスのHP
2016年03月23日【ママからのご相談】この春から一番下の子どもが小学校へ入学するため、働きに出ることを計画しています。できるだけお金が欲しいので正社員になるべきか、下の子がまだ小さいのでやっぱりパートにした方がいいのか迷っています。どっちが良いのか、何か良いアドバイスがあったら教えてください。●A. 働き方選びのポイントは“社会保険の加入”です。こんにちは、ファイナンシャルプランナーの小澤美奈子です。ご相談をいただきありがとうございます。子どもが少し手を離れるようになると、同時に働き始めるママが増える傾向にあるようです。その際、ご相談者のように、働き方を迷う方は多いことでしょう。働き方選びについては、子育てと両立しやすい職場を選ぶことが大切です。また、加入できる社会保険について考慮することも、重要な視点となります。●正社員とパート社員の違いは何?まずは正社員とパート社員の違いについて、確認してみましょう。“正社員” は期間の定めがない雇用契約で働く社員のことで、“パート社員” は正社員より短い雇用契約で働く社員のことを言います。また、“正社員”の場合は健康保険、厚生年金、雇用保険というような、社会保険に加入するのが一般的です。しかし、“パート社員”の場合は勤務時間などによって、加入できるかできないかが異なります。ほかにも、正社員は責任の重い仕事が割り当てられることが多いのに対し、パート社員は正社員より負担の少ない仕事を与えられることが多いようです。●将来もらえるお金を考えると“正社員”今回のご相談者のように、「できるだけお金を稼ぎたい!」という方は、可能な限り正社員になると良いでしょう。なぜなら、短時間勤務のパート社員と比べ給与が高くなるのはもちろんのことですが、社会保険に加入することで使える制度や将来もらえるお金などに差が出てくる ためです。そこで、社会保険に加入した場合の主なメリットについて確認してみましょう。【例】・雇用保険に加入すると……教育訓練給付金が使える。また、育児休業給付金や失業給付がもらえる。・健康保険に加入すると……出産手当金、ケガや病気などで休業すると傷病手当金などがもらえる。・厚生年金に加入すると……将来もらえる年金額が増える。特に厚生年金は長く入れば入るほど、将来受け取る年金額が増える ということを覚えておきましょう。●パートでも社会保険に入ることは可能パート社員を選ぶと、勤務時間が子育てと合わせやすい、責任の少ない仕事に就いていれば子どもが急に熱を出したときなどに休みやすい、などのメリットがあります。一方、パート社員は社会保険に入ることができないのでは?と思ってしまいがちですが、一定の要件 を満たすことで、パートでも加入することは可能です。“健康保険”や“厚生年金”加入の主な要件は以下の通りです。・1日または1週間の労働時間が正社員の概ね4分の3以上あること・1か月の労働日数が正社員の概ね4分の3以上あることまた、“雇用保険”の場合は、1週間の労働時間が20時間以上、かつ、引き続き31日以上の雇用が見込まれている、という条件を満たすと雇用主側に加入義務が発生します。----------ママの働き方は、ご自身やご家族の希望をいまいちど整理し、優先を考えながら選ぶとよいでしょう。ただし、どうしても迷うようでしたら、最寄りのハローワークやマザーズハローワークなどに相談してみるのも一つの方法です。【参考リンク】・働き方の違い(正規雇用と非正規雇用) | マザーズジョブカフェ()●ライター/小澤美奈子(ファイナンシャルプランナー)
2016年03月04日ロート製薬は2月24日、正社員に収入を伴う兼業(副業)を認める「社外チャレンジワーク制度」を制定したと発表した。2016年4月から、正社員約1,500人のうち勤続3年以上の人を対象に導入する。○社員が発案、「社内ダブルジョブ制度」も導入同制度は、正社員が土日祝日・終業後に収入を伴った仕事に就業することを認めるというもの。会社の枠を超え、より社会へ貢献し自分を磨くための働き方ができるように制定したという。同社は「本業以外に、社外・社会で貢献できるような仕事をやっていくことが人材育成につながり、ロート製薬の中でもさらに活躍できるのではないかという狙いがある」と話している。同時に一つの部署にとどまらず、複数の部門・部署を担当できる「社内ダブルジョブ制度」も導入。「社外チャレンジワーク制度」「社内ダブルジョブ制度」ともに社員からの自発的な立候補により審査される。なお、両制度いずれも社員のプロジェクトによるアイデアにより制定されたという。同社は併せて新たなCI(コーポレートアイデンティティ)「NEVER SAY NEVER」を制定し、新ロゴマークを発表。新ロゴマークに使われた青色は知性、赤色は情熱を表現しているほか、吹き出しデザインは同社の宣言であることや、ロート製薬に流れる血と鼓動を表しているという。
2016年02月26日正社員で働いているから自分を「中流」だと思っている方も、安心はしていられません。いま「中流」でも、やがて「下流」に転落してしまう恐れがあると、『「偽装中流」中間層からこぼれ落ちる人たち』(KKベストセラーズ)の著者・須田慎一朗氏が主張しているのです。須田氏は、数々のTV出演でおなじみの経済ジャーナリストですが、「人並みにがんばっていれば、誰もが報われた時代」はこの先やってこないと断言し、さらに「来る2020年はバラ色の未来ではない。むしろ2020年問題ともいうべき問題が山積している」といいます。2020年問題とはなんなのでしょうか?また、「中流」が「下流」に転落するとは、どういうことなのでしょうか?■銀行に相手にされない人は中流以下!かつて高度経済成長によって、日本には「一億総中流社会」が到来しました。マイホーム、そしてカラーテレビ、クーラー、カーの「3C」を所有することで中流意識を高めていったのです。そしてバブルが崩壊し、終身雇用や年功型賃金など日本型雇用システムが崩れ、格差が拡大して二極化が加速している現在も、中流意識の高さは変わっていないといいます。そこで著者は、どのような人が中流なのか検証しようとしますが、具体的な中流モデルは見つけられなかったといいます。銀行も「富裕層」というカテゴリーは設定しているものの、「中流層」はないというのです。銀行における富裕層とは、地主や企業のオーナー、医師などの資産家。それ以外は中間層でも、貧困層をも含めた「マス(大衆)」としか位置づけていないということ。住宅ローンを貸しつけした人を中流としていたのも過去の話で、90年代以降の超低金利時代になると、小口の顧客は銀行お荷物に。いわゆる中流相手に商売をしても、それでは儲からないというわけです。事実、メガバンクの行員はこういい放ったといいます。「いま、メガバンク各行に中流層だけを意識した商品はない。そういう意味では、われわれが相手にしない先というのが、中流、下流なんでしょうね」つまり「最近、銀行からなんの案内も来ないなぁ」と感じている方は、銀行からは相手にされず、中流以下と見られているということなのです。■年収400万~500万円が「中流」本書によれば、厚生労働省「国民生活基礎調査」に見られる2013年度の1世帯当たりの平均所得金額は528万9,000円で、中央値は415万円。年収400万~500万円が中流と考えられるわけですが、その数はわずか。大多数の世帯が中流に届かない所得水準で暮らし、いまや6人に1人が貧困だというのです。また、高齢者世帯の平均所得金額は300万5,000円と年々下がり、加えて生活保護受給世帯数は15年9月時点で162万9,598世帯と過去最多を更新しています。アベノミクスで景気回復の兆しが見えはじめたといわれますが、その裏では自治体の援助なしでは暮らしが立ち行かない貧困層が年々増加しています。それを押し上げているのが高齢者で、高齢者が下流へと転落する流れは加速しているといいます。さらに、最近の若者は「お金持ちなんかには絶対なれない」とはなから諦めている人も少なくないとか。「物を持つこと=豊か」という図式は価値観が多様化し、まったく成り立たなくなっています。とくに外食、車、国内旅行など、かつては中流ビジネスとして発展した産業は、消費の中核を担う若者の貧困化が原因で疲弊しているのが実状です。いまやひと握りの「上流」と、その他大勢の「下流」しかイメージできなくなっているというのです■「一億総活躍社会」のカラクリとは?下流化した「中流」層が増えている状況下で、安倍首相は2015年9月に経済政策「アベノミクス第2幕」を打ち出し、「新3本の矢」として3つの政策目標を掲げました。「GDP(国内総生産)600兆円の達成」「希望出生率1・8」「介護離職ゼロ」の3本です。これらを実現し、2020年に向けて「一億総活躍社会」を目指そうというのですが、著者はこの経済政策が問題であり、ゆくゆく2020年問題に発展すると予想します。いちばんの問題が、「GDP600兆円の達成」。現在、日本の名目GDPは約490兆円(2014年度)。2020年までの5年間にあと110兆円も増やすのは、毎年3%成長が続かない限り無理でしょう。しかし安倍政権は2020年の東京五輪に照準を合わせ、雇用を増やしてGDPを増やそうと躍起になっているというのです。「一人ひとりの日本人が活躍できる社会」と安倍首相がいう「一億総活躍社会」は、実は「これまで働いてこなかった女性、高齢者、障害者も含めて家族総動員で働かせることによって、世帯全体の収入を上げようしている」のだとか。つまり、いま働いている一人ひとりの賃上げはあきらめ、世帯で収入を上げるという方向に方針転換を図ったということ。子育てと仕事を両立できるようにし、介護離職ゼロを目指すというのです。家族ぐるみで働き「中流」の座を維持できたとしても、それは「偽装中流」でしかないでしょう。2020年問題が、「偽装中流」の人たちをも「下流」に落としかねないというのです。■五輪後の景気悪化が2020年問題に2020年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される年。現在は開催に向けてインフラ整備がはじまり、あらゆる場面で盛り上がっていますが、著者は東京五輪が終わったとたんに、日本は坂道を転がり落ちるような事態に陥る可能性が高いといいます。それが2020年問題だというわけで、人口減少、団塊世代の高齢化による介護関連費用と医療費の財政圧迫、介護離職ゼロを実現するため企業の人件費の増大、空き家問題、また一時的に大量雇用したツケが戻ってくるなど、さまざまな問題が山積。加えて五輪後は、それまでの巨額の財政負担が重石となり、反動による景気悪化が訪れるとも。「いつか景気がよくなるはず」などとお上の政策に期待して待っているだけでは、間違いなく期待外れに終わってしまうと著者。政策の中身を検証し、それが自分や家族にとってプラスなのかどうかを考え、生き方を導き出すことが大事だそうです。*とにもかくにも、政治も経済も無関心ではいけません。よく中身を検証し、自分なりに考え、どう暮らしていくかが大切なのです。「上流」と「下流」に大きく二極化しているのであれば、私たちはすでに「下流」に属しているのかもしれません。そのなかでどう生きていくのか、この4年で考えないといけないなと考えさせられる内容です。ぜひ、手に取ってみてください。(文/森美奈)【参考】※須田慎一朗(2015)『「偽装中流」中間層からこぼれ落ちる人たち』KKベストセラーズ
2016年02月02日マイナビは27日、「2015年冬の賞与に関する実態調査」の結果を発表した。対象は25歳・30歳・35歳の転職意向のある正社員480名。期間は12月15日~18日。○2015年の冬の賞与額、「30万円台」がトップに2015年の冬の賞与額(額面)を聞いたところ、最多は「30万円台」(15.8%)だった。次いで「50万円台」(15.2%)、「10万円台」(14.2%)。全体の平均は58万円となった。業種別の金額をみると、賞与額の平均が一番高かったのは「運輸・交通・物流・倉庫」(平均74万円)。以降、「IT・通信・インターネット」(平均68万円)、「金融・保険」(平均66万円)。「冬の賞与額が転職意向に与える影響」を聞いたところ、全体では、52.7%で「変わらない」が最多となった。また、44.2%が「転職意向は強くなった」 (『かなり強くなった』+『やや強くなった』)、3.1%が「転職意向は低くなった」(『かなり低くなった』+『やや低くなった』)と回答した。冬の賞与額別に回答をみたところ、「転職意向は強くなった(『かなり強くなった』+『やや強くなった』)」の割合が最も高かったのは「30万円未満」(53.3%)だった。次いで、「30万円~50万円台」(40.2%)、「60万円以上」(37.5%)となった。前年と比較した賞与額ごとにみると、「転職意向は強くなった(『かなり強くなった』+『やや強くなった』)」と回答した割合が最も高かったのは「賞与額は減少した」層(68.3%)となった。以降「賞与額は前年と変わらない」(41.2%)、「賞与額は増加した」(36.2%)と続いた。
2016年01月30日