ADHDのH(Hyperactivity)=多動・衝動なんて、私にはないと思ってた!出典 : 私は「自閉スペクトラム症(ASD)」と診断されている。でも、ASDであっても、注意欠如多動障害(ADHD)のような衝動性を持っていたり、ADHDと診断されていても、ASDのようなこだわりがあったりする例も少なくない。かくいう私も、注意力が著しく欠如している。「とはいえあれだ、診断はASDだし、私には不注意はあるけど、多動や衝動性(Hyperactivity)はないから…」なんてことを雑談の中でつぶやいたら、「何言ってんの!? あんた、昔から衝動の塊じゃん!!」と、旧友から盛大な反論をされてしまった。彼女から指摘されたのは、20年前の出来事だ。東京で一人暮らしをしていた22歳の私は、失恋に失業、おまけに信頼していた人からの裏切りに遭うというトリプルコンボの不運に見舞われていた。今だったら屁でもない話なのだが、人生経験の少ない若い娘が喰らうには、ちょっとヘビーな出来事であったと言える。たまたま電話をくれた新潟在住の幼馴染が、私の置かれている状況を知り、「今すぐ帰って来な!」と言ってくれた。「わかった、帰る!」そう決めると、私はまず冷蔵庫を確認、日持ちのしないものは食べるなり処分して整理。洗濯物は幸い少なかったので、実家の洗濯機を借りようと、着替えなどと共に鞄に詰め、ブレイカーを落とし、戸締りをしっかりして新潟へと向かった。それから1ヶ月程度、実家で休養した私は生気を取り戻し、再び東京で生活を始めるのだが…。東京の友人たちの間で「希望が失踪した!」と騒ぎになっていた。そう、私は新潟に帰ることを、彼らに伝えるのをうっかり忘れていたのだ。携帯電話が今ほど普及していない時代、皆さぞかし焦ったことだろう。連絡し忘れたのは私の落ち度だ。しかし、れっきとした理由もあるし、これは衝動とはいえないのではないか?と訴えたのだが、「“今すぐ”と言われて、本当に今すぐ帰ろうとして支度を始めるのは衝動の成せる業でしょうよ。ほかのADHDさんだって、衝動なりの理由があるのだろうし」と返されて、私はぐうの音も出なかった。思い返せば「暇だし臨時収入もあったしなぁ」と、思いつきで新幹線に乗って出かけたり、自転車で近所のスーパーに行く途中、「確か今面白そうな展示をしていたはず」と、やはり思いつきで10km先の美術館へと向かうなど、突発的に行動することはしばしばあった。しかし、困りごととして、自分の中で上位に来るのはASDの特性と不注意だったので、ハイパーアクティブさがあるとは考えもしなかったのだ。思い起こせば…あったあった! ハイパーアクティブならではの失敗談出典 : 「私に多動と衝動性が?まっさかぁ~!!」などと笑っていた私だが、困ったことがなかったわけではなかった。時に、私はかなりの感激屋である。映画やテレビドラマ、小説に漫画に音楽に舞台、そして日常のあらゆることに感激し、毎日が大層忙しい。ただ感激して小躍りしたり、泣いているだけなら何の問題もないのだが、私は「この感激を誰かに伝えたい!」という衝動に駆られてしまう。伝えるにしても、SNSか何かに書き散らかしておけばいいものを、誰かに直接メッセージとして長文を送りつけてしまうのだ、しかも「そんな間柄じゃないだろ」という相手に。「冷静になれ」とたしなめられるのだが、そのときは冷静なつもりでいるのだから困りもの。冷静に考え、冷静に文章をつづっているつもりで、翌日辺りに「私は一体何をやっているのだ…!」と顔面蒼白。壁に頭を打ちつけたくなる。とりあえず謝罪のメールを送るが、「迷惑でしたよね?」なんて確認することもできないので、数日の間は不意に思い出しては大量の汗を書くはめになる。この悪癖は気をつけても直らない。加えて、不注意による失くし物、予定の失念なども日常生活に支障をきたすレベルなので、ストラテラ(ADHD用の内服薬)の力を借りている。意外にも? 困ったことばかりではない多動と衝動出典 : 困ることがある一方、ハイパーアクティブさに助けられる面がある。以前、「ASDゆえ、イレギュラーは苦手だが、仕事に関してはある程度対応できるようになった」とコラムで書いた。「急な仕事」が得意というか、好きになったのだ。ルーティンになると強みを発揮するASD特性で磨いてきたライタースキルの土台があったことが前提だが、ADHDの特性も合わせ持っていたことで火事場の馬鹿力が発揮できるようになったのかもしれない。とにかく、「急なんだけど、手伝って!」というような連絡を受け、手元の仕事との兼ね合いを見ながら進行、納期までに仕上げる達成感にドーパミンがドバドバ溢れ出ているのを感じるのだ。そうした依頼の場合、普段自分が手がけない分野のライティングであることも多く、楽しいというのもある。また、過集中のおかげで早く仕上げることができるので、先方にも重宝いただいている。もちろん、出張だって嫌じゃない。むしろ大好きだ。普段自宅にこもって仕事をしていることが多いため、県をまたいだ移動がリフレッシュになるのもある。どんどんお呼びいただきたい。私そっくり、ASDっぽいあの人の、ハイパーアクティブなエピソード出典 : さて、以前やはりコラムに書いた、「私そっくり、ASDっぽい」父には、多動や衝動性があるのだろうか。家族で出かけたとき、目を離すとすぐ父の姿が見えなくなり、母が困っていたことを思い出す。さほど遠くに行くことはないのだが、勝手に単独行動を始めるのだ。立派な多動おじさんである。また、実家で一緒に暮らしていたころは、「おい!お前に食わせたい蕎麦屋が山形の山奥にあるのを思い出したから、今から行くぞ!起きて支度しろ!」と、休日の朝4時半に起こされることがあった。かねてからの予定ではなく、完全にその日の朝に思いついての行動、衝動以外のなにものでもない(お蕎麦、おいしかったです)。そして、父に関する大好きな話がある。6人兄弟の4男として生まれた父の服は、兄たちのお下がりであることが多かった。そのため、自ら働くようになってシャツを仕立てたときは、大いに感激したらしい。嬉しくなってテンションが上がった若き日の父は、なぜか自転車を飛ばして海へ向かい、上半身裸になって、夜の日本海を泳ぎまくったそうだ。少し疲れて岩浜に上がると、風で飛んだのか誰かが持ち去ったのか、新品のシャツはなくなっていたのだった…。「なぜ海?」「どうして泳ぐ?」「シャツをわざわざ紛失の危険に晒した理由は?」など、突っ込みどころ満載ではあるが、ADHD傾向のある若者の、チャーミングなエピソードとして、私の心に残っている。発達障害が遺伝であるかどうか、また、かつての父のように私が可愛いADHD特性のある人間かは別の話として、私が父に似ているという説は、やはり納得の感がある。そして「ADHD、悪くないよなぁ」と笑ってしまうのであった。
2018年08月06日生活の妨げになっていたのは「努力不足」ではなく…出典 : 言語能力に頼って生きている私は、目の前にあるものの形を捉えたり認識したりすることはできるのですが、脳内でそれを再生できません。それによって人の顔が覚えられない、道が分からずしょっちゅう迷子になる、服を着た自分を想像できないため服選びが困難といったことがあります。長い間、それが当たり前だと思って生きました。なので、何もかも一生懸命にやらなければ人並みにこなすことができない自分をでき損ないだと思い続けてきました。しかし、子どもを育てながら発達障害についての勉強をしていくうちに、私に当てはまるそれらは努力不足なのではなく“脳の構造の問題”なのだと気づいて心がかなり楽になりました。同じような特性がある私の子どもたちには、自分自身を卑下することなく生きていってほしいという願いが大きくなるばかりです。そこで、私自身の苦手なことは子どもたちに折に触れて「ママ、こういう理由でこういうことが苦手なの」と伝え、「だからこんな風にしているよ」とどんな風に乗り切っているのかを伝えていくことにしました。この作業を行うことで、私にとっても何を苦手とし、どこにその原因があるのかを真剣に考えるよいきっかけとなっています。今回は、アスペルガー症候群の特性がある主婦の私が、家事の中でもっとも苦痛を感じる「食事の用意」について考えたいと思います。掃除や片付けとは違う、料理の難しさ出典 : どうして食事の用意が私にとって大きな負担となっているのか、改めてじっくりと考えてみることにしました。部屋の片付けや掃除・洗濯は面倒ではあるけれど、そこまで気持ちが重くなる家事ではありません。なぜなら…片付け=決まった位置に戻す掃除=汚れを取り、きれいな状態に戻す洗濯=洗濯機を回して干し、畳んで収納するつまり、どの状態がゴールなのかが始める前から分かっているので、取りかかる前のストレスが少ないのです。では、料理はどうでしょう?食にあまり興味のない私と息子は同じものを食べ続けても平気ですが、娘と夫はそういうタイプではないので、毎日同じ献立というわけにはいきません。そうすると、まず「献立を決める」という難関が立ちはだかっています。これは特性のない人でもとても面倒な作業だと思いますが、私の場合は今口の中にある料理が好きか嫌いかは判断できても、「食材やレシピをから味を想像する」ことができません。つまり、“こういう味になればよい”という「料理のゴール」が皆目分からないのです。できることなら毎日外食や総菜で済ませたいと思うのですが、私や子ども達には卵や乳製品、エビといったいくつもの食物アレルギーがあるため、簡単にはできません。そのため、特にしっかりとしたおかずをつくらなければならない夕方になるといつも憂鬱になるのでした。味をイメージできない!頼っているのは…出典 : そんな私の役に立ってくれているものの一つが、レシピサイトです。私が参考にしているサイトでは、有料会員になるとレシピのランキング表示ができるようになります。そのレシピでご飯をつくった人が「美味しかったよ」「こんな風にアレンジしてみたよ」とレポートを投稿する機能があり、投稿の多い順にレシピを並べ替えられます。味を想像できない私にとって、これはとてもありがたい機能です。多くの人が美味しいと思って何度もつくっているのなら、と安心して調理することができます。上位のいくつかのレシピの中からシンプルな手順のものを選んだら、食材と調味料がすべて揃っているかを入念にチェックします。味を想像できない分、確実にレシピを再現するために1つでも足りない調味料があると、もうつくることはできません。大さじ・小さじ・計量カップ・量りといった道具もレシピに忠実に従って使います。ちなみに、調理工程を記憶することもできないので、1つ終わるごとにレシピサイトをのぞいて手順を確認します。さらには、途中でキッチンを離れてしまうとほかのことに夢中になってしまい、すっかり料理のことを忘れてしまいます。そのため「10分煮る」と書いてあればコンロの前で10分待機するのです。同時に何品も調理することも混乱のもとになるのでできません。やっと1品ができあがったころには疲れてしまいぐったりです。その後、食に興味のある娘が「美味しい」と言ってくれてはじめて1つの料理が「ゴールにたどり着いた」ということになります。調理器具の活用で手順の大幅カットに成功!出典 : 毎日の献立を考えたり、味つけの基準とするべきものが見つかった次の課題は、毎回へとへとになってしまう調理の手順をいかに簡単にするか。そんな私を救ってくれたのは、新しい調理家電でした。みなさんは、ノンフライヤーをご存知でしょうか。油を使わずに揚げものができるというノンフライヤーを、わが家にお迎えしたのは2年ほど前のことです。偏食が激しく、肉といえば鶏の唐揚げしか食べてくれない息子のために導入したのがきっかけでしたが、これが思いのほか私を救ってくれました。とにかく、塩コショウを振りかけた鶏肉をノンフライヤーに放り込んでしまえば、メインの1品ができあがるのです。これならレシピを見なくても手順が覚えられるので、冷蔵庫に鶏肉が入っている日はすごく気が楽になりました。唐揚げ風にしたければ片栗粉をまぶすこと、カレー粉やクレイジーソルト、青のりや鶏がらスープで味付けのバリエーションを広げられることはレシピサイトで覚えました。偏食の息子がもりもり食べてくれるので、大満足です。ノンフライヤーの導入は「私がしんどいところは機械に助けてもらえばいいんだ!」と気づかせてくれました。そして次に購入したのが水なしで自動調理してくれる調理器具です。材料をカットして決められた調味料を投入さえすれば、後はこちらも放っておくだけで料理が完成するという夢のようなグッズです。簡単に買える値段ではなかったのでずいぶん迷いましたが、「コックさんを1人雇ったと思えば安い買い物」というレビューを見て節約を決意。お金を貯めてから購入しました。複雑な手順に惑わされることなく、いつも同じ味のものができあがる。味が分からない私をこれほど安心させてくれる道具はほかにありません。さらに、コンロの前に張りつく必要がなくなったので大助かりです。この2つの調理家電を導入したことで、私の夕食づくりは劇的に楽になりました。外食やお総菜で済ませたり機械を使って楽をすることはなんだか後ろめたいことだと思っていました。しかし、「そこに膨大なエネルギーを注いで疲れ果てるぐらいなら、頼ってしまってもいいじゃないの!」と思えるようになったのは、私にとって大きな進歩でした。後ろめたさを感じずに何かに頼れるようになると、他人が何かに頼っていても責めたり努力を求めたりする気持ちがなくなっていきます。「どんどん頼っていこう!」「もっといい道具があったらいいね!」という方向に思考が進んでいくのです。せっかく便利な道具がたくさんある時代に生まれたのですから、使える道具はどんどん取り入れて使っていけばいいのです。今度はスープを自動でつくってくれる調理器具を買えたらいいなあといろんな情報を仕入れているところです。私のように味が想像できなかったり、手順が多すぎてパニックになってしまう方は、スムーズな生活を送るための手段として、いろんな調理器具の活用を試してみてもいいのではないかなと思います。
2018年05月09日「男は単純だ」「浮気性だ」と世間では言われていますが、それを鵜呑みにしてはいけません。もちろん人によって違うし、真逆の特性を持つ人もいます。間違った思い込みは、恋愛において不利に働きかねません。もっと柔軟に捉えるべき。今回は、“女子が勘違いしている男の特性”について、男性の意見を交えつつご紹介しましょう。文・塚田牧夫大胆露出が好き…なわけではない肌の露出が多い女性を見ると、男はつい目で追ってしまいます。ただこれは、“露出している女性が好きだから”というわけではなく、動物的本能に基づく行為。子孫を残したいという本能が働いて、比較的簡単に体を許してくれそうな容姿の女性に惹かれてしまうのです。男の本音は、「彼女にはそういう格好をして欲しくない」というシビアなもの。胸や脚を大胆にチラつかせれば、男は寄ってくるしチヤホヤされるかもしれません。でもそれは好意からではなく、性欲からの行動です。女性としてそれを“モテる”捉えていいものか、判断は難しいところでしょう。みんなロリコン…なわけではない「男は若い女の子が好き」と言われています。肉体的な若さに惹かれるのかと思いきや、実は精神的なものが大きい。“純粋な女の子が好き”なのです。純粋さを求めると、確率的に若い子の方が多いので、結果的にロリコンと呼ばれることも多くなるわけです。だから男の本音としては、若さよりも、年をとっても清楚で可憐な雰囲気であることが重要。「男はロリコンだから……」とすれた発言をするような女性は、敬遠されてしまう可能性が高いです。誰とでもヤリたい…わけではない「男は浮気性」だの「性欲まみれ」だのよく言われますが、そんなことはありません。実は男はロマンチスト。それは女子以上だと言っても過言ではありません。運命を感じるような相手に出会うと、一気に性欲は収まります。「大事に取っておきたい」と思うようになり、手を出さなくなるのです。だから女性は、本命になりたい相手がいたなら“運命”を感じさせること。男のロマンチストスイッチを押してあげればいい。容易いことではありませんが、とりあえずは勢いに任せてカラダの関係になるのは避けた方がいいかもしれません。“女子が勘違いしている男の特性”についてご紹介しました。男の特性は、時代とともに変化していくものです。ガチガチに考え過ぎると男を取り逃がしたり、自分自身が傷付いたりしかねないので、柔軟さも忘れずに。(C) tugolukof / Shutterstock(C) Olga Kudryashova / Shutterstock(C) coka / Shutterstock
2017年11月12日アセスメントとは?出典 : アセスメントとは、ある問題を解決するために情報を集め、それをもとに問題解決の方法を計画していく一連の流れのことです。アセスメントという言葉は世の中のさまざまな場面で使われており、例えば「環境アセスメント」や「看護アセスメント」のように解決する課題に応じて使われています。・子どもの臨床心理アセスメントとは?上記の様々なアセスメントと同じく、子どもの臨床心理においても「アセスメント」という言葉が使われています。例えば病院で発達障害の診断を受ける前に行う場合、知能検査などの検査だけでなくカウンセリングにおける行動観察・面談などの方法によって情報を集め、子どもの特性を把握し、一人ひとりに合った方法を見つけていくことを言います。一般的にスクールカウンセラーや臨床心理士などの専門家がアセスメントという言葉を使う場合が多いですが、お子さんの特性をさまざまな角度から捉えるという考え方や専門家の視点を知っておくことは日常生活にも役立つでしょう。この記事では、子どもの特性を把握する際の専門家の視点、関係する検査、検査結果を日常生活に活かす方法についてご説明します。子どもの臨床心理アセスメントの目的出典 : 子どもの臨床心理アセスメントの目的は、子ども一人ひとりが自分らしく生活できるようになることです。そのためにお子さんの特性をさまざまな角度から把握し、それをお子さんに合った教育方法につなげる必要があります。子どもの特性を知る代表的なツールとして知能検査や発達検査があります。客観的に子どもの特性を知ることができるというメリットがありますが、その結果や障害の診断名だけで子どもの特性を決めつけてはいけません。あくまで特性を知るための方法の一つなのです。検査結果を参考にしつつ、お子さんがどんな行動をしているのかやなぜその行動をとるのかを把握していくことが、アセスメントの目的です。どんな時にアセスメントをするの?出典 : お子さんの特性をさまざまな角度から把握していくことは、ニーズを見極める時、障害があるかを判断する時、支援の計画を立てる時などにおいて欠かせません。ここでは医療、支援、学校の3つに分けてご説明します。・医療におけるアセスメント医師が子どもの発達に障害があるかを判断する時には、アセスメントが行われます。子どもの場合は専門医のいる小児科や小児発達神経科、児童精神科で受診できます。また、思春期以降の場合は精神科での受診も可能です。医療機関では、面談(観察)や脳波などの生理学的検査、認知・知能などの心理検査、その人のライフスタイルや困難についての質疑応答などから得た情報をもとに、総合的に発達障害かどうかを診断されます。・支援の場におけるアセスメント未就学の子どもの場合、発達相談においてアセスメントが行われます。例えば、ソーシャルワーカーとの面談、医師による診察(任意)、発達検査・知能検査が行われ、療育プランが検討されるといった流れとなります。就学しているお子さんの場合は、通級・特別支援学級などの就学先に通う時や放課後等デイサービスなどの施設を利用する時において同じようにアセスメントが行われます。お子さんの特性をさまざまな角度から把握し、一人ひとりに合った支援方法につなげます。・学校におけるアセスメント学校での困りごとがあった時に相談しやすいのがスクールカウンセラーです。教育現場に近い立場でありながら、臨床心理士の資格を持っていることが多く、客観的なアドバイスをもらうことができるでしょう。スクールカウンセラーは主にお子さんとの面接を通して、特性を把握します。そのほかにお子さんの学校生活での様子を先生から聞いたり、場合によっては実際に授業の様子を観察したりして情報を得ます。また知能検査などの検査結果をこれらの情報をもとに、お子さんの発達や心理状態に関するアドバイスをもらえます。次の章からはカウンセラーなどの専門家が面談や行動観察、知能検査などの検査において、実際にどんな視点でアセスメントを行っているかを具体的に説明していきます。子どもの行動観察の時のアセスメント出典 : 子どもの特性を知るための最も基本的な情報収集として、カウンセリングにおける行動観察があります。服装、姿勢、態度、発言などをチェックすることが、特性を知るヒントになるのです。カウンセラーは、例えばお子さんが目線を合わせられるか、質問に対して答えられているか、極度なやせや肥満ではないか、などについてチェックしています。カウンセラーなどの専門家による行動観察の方法は、大きく分けて自然観察法と実験観察法の2つがあります。・自然観察法子どもの自然な姿を観察する方法です。例えば、待合室での子どもの様子を観察し、参考にするといったことが挙げられます。・実験観察法例えば一定の時間子どもをグループで遊ばせて、その様子を観察する方法などがあります。チェックされているポイントは集団で遊べているか、友達とけんかをしたかどうか、乱暴をしていないか、独り言を言っていたかどうかなどです。小さいお子さんの場合は、遊戯療法室で1人で遊んでいる様子を観察したり、親子や集団で遊んでいるところを観察したりします。母子分離不安が強いかどうか、多動、かんしゃく持ちなどの特徴があるかどうかなどが見つかります。また親子遊びでは、親御さんがお子さんとどのように関わっているかについてもチェックされています。例えばどのように指示を出しているか、どのように子どもの要求を受け止めているかなどです。これをもとに、カウンセラーからお子さんの接し方に関するアドバイスをもらえます。行動観察により、子どもの発達状態や、対人傾向、行動傾向などの情報を得ることができるのです。カウンセラーと子どもの、面接時のアセスメント出典 : 子どもの特性を把握する手段の一つとして、面接があります。面接では、カウンセラーが子どもと対面で話すことで特性を把握します。話している内容はもちろん、話し方、表情、身振り、視線、手足の動きなど、総合的に判断していきます。例えばカウンセラーが「おいくつですか?」と聞いたときに、お子さんが「おいくつですか?」とオウム返しをしてきたり、視線を合わせなかったりした場合、自閉症スペクトラムの可能性があるという仮説を立てることができます。しかしこの情報だけで決めつけることはなく、検査結果や行動観察で得た情報を踏まえて、特性を捉えていくのです。面接ではカウンセラーと子どもの間に信頼を築くことが大切であるため、子どもが緊張しないように座る位置などの工夫がされています。例えば視線恐怖がある子どもの場合、カウンセラーは横並びに座ったり直角に座ったりして、話しやすい環境が整えられています。また初回の面接はお子さんとカウンセラーとで行う面談の他に、どんな悩み事があるのかや、なぜこの相談機関を選んだのか、さらに家族構成や病歴といった基本的な情報を親御さんと共有する場が設けられます。今後の治療について、適用される支援、相談機関の特徴などについても聞くことができます。心配な点があれば、面接の際に質問するとよいでしょう。知能検査などの検査時のアセスメント出典 : 特性を知るためには、知能検査や発達検査などの検査を受ける場合が多いです。しかし記事の前半でもご説明したように、検査結果だけで子どもの特性を判断してはいけません。このような検査は特性を客観的に把握したり、面談や行動観察だけでは分からない特性を見つけたりすることが目的です。ここでは子どもが受ける検査の中でも、代表的な検査をご紹介します。・ビネー式知能検査対象年齢:2歳~成人検査ビネー式知能検査は精神年齢(MA)と生活年齢(CA)の比である比例知能指数(比例IQ)を算出します。生活年齢(CA)とは生まれてからの暦の上での年齢(暦年齢)を指します。一方精神年齢(MA)は、検査で解答できた問題の難易度がどの年齢のレベルにあるかによって判定されます。ビネー式知能検査の中でも代表的であるのが、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)です。検査対象が2歳から成人と幅広く、問題が年齢尺度によって構成されているため、通常の発達レベルと比較することが容易になっています。また、実施の手順が簡便であり、被検査者に精神的・身体的負担がかからないことが大きな特徴となっています。・ウェクスラー式知能検査対象年齢:WISC-Ⅳ5歳~16歳11ヶ月、WAIS-Ⅲ16歳~89歳、WPPSI 3歳10ヶ月~7歳1ヶ月ウェクスラー式知能検査は言語性IQと動作性IQという測定概念を用いて、個人内差(個人の得意不得意)の測定をします。年齢に応じて児童版のWISC、成人用のWAIS、幼児用のWPPSIの3種類があります。個人の能力の特徴をより分析的に捉えることができ、知的障害や発達障害のある人の場合、検査結果に一定の傾向が見られやすくなっています。そのため、知的障害や発達障害の確定診断の際に、参考情報の一つとして用いられることがあります。・K-ABC心理・教育アセスメントバッテリー対象年齢:2歳6ヶ月~12歳11ヶ月K-ABC心理・教育アセスメントバッテリーは、子どもの知的能力を認知処理過程と知識・技能の習得度の両面から評価することが特徴の検査です。検査結果からその子どもが得意な認知処理様式を見つけ、それを実際の指導・教育に活かすことを目的としています。同時処理(情報を全体的に捉える認知特性)と継次処理(情報を順番に理解する認知特性)の個人内の差を明らかにできることから、特異な認知パターンを持つ学習障害のような場合に適用されます。・新版K式発達検査対象年齢:生後100日後から成人年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面の検査に重点が置かれます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。このように子どもが受ける検査にはさまざまな種類があります。心理検査は検査によって分かることも異なるため、どの検査を受けるかはカウンセラーなどの専門家に相談するとよいでしょう。発達障害におけるアセスメント出典 : 発達障害のあるお子さんの特性を知るためには、検査を受けることはもちろんのこと、特に行動観察が重要視されています。例えば暗記がとても得意なのに算数など苦手な教科に全く興味を示さないという学校での様子をきっかけに、学習障害だとわかったパターンなどがあります。またお子さんの行動を観察することは日常生活においても欠かせません。お子さんのご家庭での様子を見て気になる点があれば、保健センター、子育て支援センター、児童相談所、発達障害者支援センターなどに相談しましょう。早めに相談することが、お子さんにあった療育を見つけるきっかけとなるのです。さらに年齢が上がってから特性が明らかになる場合もあるため、子どもの成長につれて、アセスメントも更新していく意識を持つことが大切です。検査結果を見ると障害の重さや数値に目がいきがちですが、それ以外の内容についても理解する必要があります。日常生活では検査結果をもとに、お子さんの苦手なことの原因を把握していくとよいでしょう。例えば「時間の見通しを持てない」という結果が出ていた場合、急かしても子どもは何を急かされているか分からずパニックを起こしてしまうのだと解釈できるかもしれません。「本人の筋緊張が低く姿勢を長時間保てない」という検査結果が出ていたなら、怠けているのではなく、きちんと着席するのが難しいのだと判断できます。このようにお子さんの困難の原因を知ることで、どんな工夫をすればよいのかの見通しにつなげられるでしょう。検査結果でお子さんの行動を見る視点を狭めないようにすることが大切です。さらにお子さんに合った教育方法を見つけていくために、検査結果などの情報を保育士や幼稚園・学校の先生に共有し、お子さんのご家庭での様子と幼稚園や学校での様子の両方を把握するようにしましょう。まとめ出典 : 子どもの臨床心理におけるアセスメントとは検査、行動観察、面談などによってさまざまな角度から子どもの特性を把握し、一人ひとりに合った教育方法を見つけていくことを言います。アセスメントの方法の一つに知能検査などの検査がありますが、検査結果はあくまで客観的に特性を知るためのものです。障害の重さや知能指数の数値だけに注目するのではなく、検査結果をもとに行動と照らし合わせてお子さんの得意・不得意を把握していくことが大切です。またお子さんの行動を知ることは日常生活においても欠かせません。面談や検査でのお子さんの様子を専門家から聞いて知る以外にも、学校ではどうなのか、さらにご家庭ではどうなのか、さまざまな角度から特性を理解してあげることが総合的なアセスメントであると言えるでしょう。参考:松原達哉/編『臨床心理アセスメント』2013年丸善出版参考:「発達 (第131号)」2012年ミネルヴァ書房
2017年06月30日ADHDとは?出典 : (注意欠陥・多動性障害)は、不注意(集中力がない)・多動性(じっとしていられない)・衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状が見られる発達障害のことです。この3つの症状はどのADHDの人にも均等に表れるのではなく、個人差によるところが大きいと言えます。ADHDと一言でいっても不注意優勢型、多動性-衝動性優勢型、すべて表れる混合型などさまざまなタイプがあります。そのため、感じる悩みや困りごととその程度は一人ひとり異なります。ADHDの人の多くは、幼少期から「だらしがない」「落ち着きがない」などと注意された経験があります。それゆえに自分に対する肯定感や人との関係性の構築にネガティブなイメージをもってしまったり、それらが過度になりうつ病や不安障害などの二次障害につながったりすることがあります。ADHDの症状・特性から日常生活のさまざまな場面で悩んだり、困ったりすることがあります。それに伴って、人間関係においても人との信頼関係を築くことに難しさを感じる人は少なくないと言います。人間関係には先輩後輩、友人関係などさまざまな種類がありますが、恋愛や結婚はより親密なコミュニケーションを必要とし、複雑かつ難しいものです。恋愛や結婚などの関係性に結びつけたり、パートナーとの関係を維持したりすることに困難さを感じるADHDの人は一定数いるようです。また、ADHD特性から二次的に生じた自己肯定感の低下や失敗体験のストレスなどから、恋愛や結婚にもマイナスイメージを抱いてしまうこともあります。ですが、ADHD特性は恋愛や結婚においてプラスに映ることもあります。特性は困りごとだけでなく強みになり、周りの人を惹きつけることもたくさんあります。ADHDの人が恋愛・結婚を考える時、その特性ゆえに困ることだけでなく、特性を生かせることも見つけていくことが大切です。参考:岩波明/著『大人のADHD‐もっとも身近な発達障害』2015年/ちくま新書ADHDの人が恋愛で困ることって?出典 : では、その特性ゆえの失敗体験が積み重なったことで、恋愛や結婚に対する悩みや不安につながることがあるようです。幼少期にたくさん叱られた、友達とうまく仲良くできなかったなどの経験から、恋愛に対しても自信を失ってしまうことがあります。まずは、3つの特性がどのような失敗や恋愛・結婚へのネガティブさにつながっていくのかについて説明します。◇不注意(集中力がない)不注意の具体的な特徴としては、忘れ物が多い、片づけや整理整頓が苦手、気が散りやすいなどが言われています。恋愛や結婚で相手との関係性を深めたり維持したりするうえでは、その他にもこのような困り感が考えられます。・大切な約束の日時や記念日などを忘れたり守れなかったりして、パートナーを怒らせてしまう・相手の話を集中して聞くことができず、自分の意見だけ通してしまう・金銭の管理や家事・育児の段取りがうまくできないなど不注意という特性から、そんなつもりはないのにパートナーを怒らせたり悩ませたりすることがあり、そこから「どうしたらいいのだろう…」と困っている当事者の方もいるようです。◇多動性(じっとしていられない)多動性の特性は、落ち着きがない、過度なおしゃべりなどに代表されます。恋愛面ではどのような悩みにつながるのでしょうか。・そわそわして体が動いてしまったり、貧乏ゆすりをしたりするのをやめられず、相手に気ぜわしい、一緒にいて落ち着くことができないなどの印象を与えてしまう・早口だったり一方的に絶え間なく話したりしてしまい、相手との対話がうまくいかない・興味や関心の対象の移り変わりが激しいため、仕事や住居なども転々とすることがあり、パートナーを戸惑わせてしまうなどじっと座っていられない、常に身体のどこかを動かしているなどの目立った多動性は、成長するにつれて、落ち着いていきます。ですが、何となくそわそわしてしまうようなことは大人になっても変わらないと言います。また、多動性は身体の動きだけでなく、話し方や心や気分の移り変わりにも影響するため、コミュニケーションのアンバランスさや気持ちや興味の変動が起こることがあります。◇衝動性(考えずに行動してしまう)衝動性は、恋愛においては自分の「好きだ」という気持ちに正直に行動できたり、思い切って告白したり、プラスに働くこともあります。一方で、気に障ると乱暴になってしまうことがある、順番待ちができないなどと言われますが、恋愛や結婚の場面ではこのようなことがありえます。・その場の雰囲気にそぐわない発言や思いつきの言動をしてしまい、相手を傷つけてしまう・相手への感情や要望を抑えることができず、ストレートにぶつけてしまう・衝動的な行動(急に高価な買い物をしたり、高額契約をしたりするなど)を相談なしにしてしまい、混乱やパートナーとの不和に結びついてしまうなどつい思いつきの発言や感情に任せた行動をしてしまい、それによってパートナーとの関係性が悪くなってしまうことがあります。またそんな失敗やトラブルから、自己嫌悪に陥ってしまうADHDの人は少なくありません。「自分に恋愛・結婚は無理なのではないか」というマイナス思考に陥ってしまうこともあります。ADHDの人は、上で説明した、3つの特性による困りごとが幼い時から多く起こりがちです。そんな失敗体験の繰り返しから、自信をなくしてしまったり、人とどのように接すればよいのかわからなくなってしまったりすることがあります。・幼少期の失敗体験や多く叱られた過去から自己肯定感が低くなり、パートナーに嫌なことをされても嫌と言えなかったり、我慢してしまったりする・「なぜ自分といてくれるのだろう?」など、相手が自分に伝えてくれる好意を信じられなくなってしまう・ちょっとしたミスの繰り返しにより、友人や恋人との信頼関係を持続できない・感謝、反省、共感などの気持ちをうまく表現できない・対人関係への不安から、自分を受け入れてくれた人に依存しやすく自立できないなどこのような、ADHD特性からつながって発生した自信の低下や人付き合いの困難さが、恋愛や結婚に関して辛さを感じる直接的な要因になることがあります。星野仁彦/著『発達障害に気づかない大人たち』/2010年/祥伝社新書ADHDの特性ってこんなに魅力的!特性を魅力として発信するには?出典 : これまでADHDの特性と、恋愛や結婚で何に困るのかを絡めてご紹介してきました。ですが、ADHDの特性がすべてマイナスにはたらくということではありません。むしろ、特性がその人の魅力として、周りを惹きつけることもあります。ADHDの人が得意とされていることは、このようなことが挙げられます。・興味のあることに対して強い情熱を持ち、集中することができる・アイデアが豊富で、固定概念にとらわれず自由に考えられる・行動力がある・素晴らしいひらめきをすることができる・独特の感性をもち、考えることができるなどこのような長所から、一緒にいて楽しい、行動がよめない部分も面白い、考えつかなかったアイディアにはっとさせられる、というような印象を持たれ、プラスに向くことがあります。ADHDの人に純粋さ、子どものような無邪気さ、好奇心旺盛さに魅力を感じるなど、ADHDの特性には魅力的に映る部分が多くあると言います。自分の苦手なことや困り感を認識することと同じくらいに自分の良いところを見つけ、それをアピールできるほどに伸ばしていけたら良いですね。ADHDの人の恋愛・結婚での困りごと解消法って?出典 : の人が恋愛や結婚をする時には、不注意などの代表的な特性をはじめとして、自己肯定感の低さなど、その特性からくる二次的な特性によって、悩んだり困ったりすることがわかりました。このような困りごとに対してどのような解決方法があるのでしょうか。恋愛や結婚において、これまでに紹介したような悩みや不安、疑問が生まれたら、自分がADHDである、またはその傾向にあるということを改めて受け入れていくことが大切です。まずは、ADHDの3大特徴とその具体例に自分を照らし合わせてみることをおすすめします。そうすることで、自分はどの特性が優位に表れているのか、苦手と感じることの背景には何があるのか、はっきりとわかってくると思います。ADHDと一言で言っても、人それぞれ個性があります。まずは自分の特性・個性を理解することから始めてみましょう。ADHDをはじめ発達障害は、認知度や理解が広まってきたとはいえ、未だネガティブなイメージが浸透していたり、当事者自身もマイナスに捉えていたりすることが多々あります。確かにADHD特性ゆえに、日常生活を送る時に難しさを感じる時はあります。ですが、ADHD特性が全てネガティブに映る訳ではありません。例えば、ADHDゆえの衝動性が積極性、行動力につながり、それが他の人から見たら魅力的に映るなど、ADHDの特性が"愛されるポイント"になる場面も多くあります。自分にはどんな特性があって、何を苦手と感じるのかについて把握することはもちろん重要です。それと同じくらい、自分のアピールポイントとなるところも合わせて把握することは重要なことなのです。自分自身で長所を発見するのは難しい、という人は家族や友人、かかりつけの医師、カウンセラーなどに聞いてみるのもいいですね。自分の恋愛における魅力や強みを把握することが、自分に自信をもつきっかけにもなるかもしれません。それが結果的に恋愛や結婚において良い結果につながることがあるのです。「パートナーや好きな人を傷つけたり、怒らせたりしたいわけではないのに、ついまた約束をすっぽかして愛想を尽かされてしまった」「数々の失敗体験から自分に自信が持てず、相手に嫌と言えない」このような気持ちでいる人は少なくないのではないのでしょうか。恋愛や結婚に関しては、答えが一択ではないうえに、誰もが納得するような正解もありません。一人で考えていてもどうしたらよいかわからないことがあると思います。そんな時、恋愛や結婚に関して相談できる人や場を見つけておくことが、恋愛や結婚に関するお悩み解消の手立てとなることがあります。また、自分自身の特性を相手に伝えてみることで、パートナーや周りの人からどのように支えることができるか提案してくれることもあります。例えば、「自分では忘れるつもりはないのに、約束やその日時を忘れてしまうことがある」と伝えたら、「じゃあ約束の日には当日にも改めて連絡しあおう」というような、相手との連携を図るきっかけもできるかもしれません。自分の特性を理解すると、暮らしの中で感じている困り感に対して、ある程度自分で対策できることもあります。◇不注意特性に対する工夫つい約束を忘れてしまう、やるべきことを整理して行動に移すことが難しいなどの不注意に関する特性には、次のような工夫をしてみてはいかがでしょうか。・やらなければいけないことを一つひとつリストアップする・約束事をメモして目に入る場所に貼るなどして、すぐ確認できるようにしておく・便利な道具やアプリなどを活用する(家事が苦手だったら家電を導入する、リマインダー機能に優れたアプリを活用してみる)などこれらの工夫はあくまでも一例です。人によっては合わないものや継続できないものもあると思います。あるやり方1つにこだわるのではなく、自分の中でうまくいかないと思ったら、違う方法を試してみることも大切です。また、相手やパートナーの理解が必要になることもあるので、十分に相談したうえで試してみましょう。◇多動性・衝動性に対する工夫落ち着きがない、自分の感情や要望を抑えられないなどの多動・衝動に関する特性にはこのような工夫が考えられます。・家や職場など、1人で落ち着けるような場所を見つけておき、クールダウンできるような場をもっておく・自己主張の仕方や、相手の言い分と自分の言い分のバランスの取り方など、改めて対人スキルの基本を理解するなどクールダウンできるような場づくりや、対人スキルの学び直しなどは、特に周りの人の理解が大切になってきます。自分だけで何とかしようとするのではなく、自分の特性を伝えたうえで周りからのサポートしてもらうことが重要です。もし、ADHD特性が要因の失敗体験により、物事をひどくマイナスに捉えてしまいがちになったり、自己肯定感が非常に低くなってしまったりしている場合は、認知行動療法を試してみるのも良いかもしれません。認知行動療法とは認知(物事の受け止め方や考え方)に働きかけ、こころを楽にする精神療法の一種です。ADHDそのものより、ADHDによって二次的な障害が発生している場合に有効といえます。認知行動療法は、自分で試してみたり、本やウェブサイトなどで簡単に試してみることもできます。ADHDの診断がついている、またその傾向がある人で、その特性の失敗体験から自信が持てない、辛い思いをしているというような人は、認知行動療法を利用してみるのも一つの手段かもしれません。発達障害当事者の人向けに、悩みを打ち明けたり相談に乗ってもらえたりする場として、数々の自助グループがあります。自助グループには同じような悩みを抱えている人や、その悩みを改善できたというような人がいるので、相談しやすかったり、有効な改善方法に気付けたりできます。以下は、大人のADD&ADHD当事者の自助グループに参加することで、パートナーがADHDに関して理解を示してくれたという、女性の体験談です。夫が”一緒に頑張っていこう”と言ってくれました。最近片づいていないことで文句を言うのが少なくなったと感じていましたが、正直彼がここまで変わるとは思っていなかった。”片づいていない!食器がたまっている!洗濯していない!金の支払いは期限までにちゃんとしろ!”などと文句ばかり言いつづけ、文句以外の会話がほとんどなかった彼がです。今までADHDのことを話すと面倒くさそうな態度で、ADHD関連の本も一度だって聞こうとしなかった。(中略)最近夫はADHDの本も読んでくれるようになりました。そして、"ADHDは君一人の頑張りではよくならないんだろう。家族の理解と手助けが必要だね"って。(星野仁彦/著『発達障害に気づかない大人たち』/2010年/祥伝社新書より引用)参考:星野仁彦/著『発達障害に気づかない大人たち』/2010年/祥伝社新書ADHDの特性は人それぞれであり、またそれによる悩みも人それぞれです。そのため恋愛や結婚におけるパートナーの理解がなかなか得られないこともあります。そんな中、自助グループに参加することで新たな心のよりどころや悩みへの解決策を得ることができたり、この体験談のように、パートナーがADHDを理解するきっかけになったりすることがあります。ADHD当事者向けの自助グループは、全国にあります。食事やお茶をしながら当事者同士で交流するようなグループ、勉強会や講座のようなイベント参加型のグループなど、さまざまな自助グループがあります。楽しそうなイベントや興味深い活動を行っているグループに足を運んでみるのも良いのではないでしょうか。法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)大人(成人)の発達障害当事者のためのピアサポート Necco(ネッコ)愛知発達障害協会HOPEパートナーがADHDの場合、心がけたいこと出典 : では、ADHDのパートナーがいる人は、パートナーのためにどのようなことを心がけるべきなのでしょうか。ADHD当事者には、人によってさまざまな困りごとがあります。そしてそれを乗り越えたり少しでも解消したりしていくには、当事者と付き合っていくパートナー自身のADHDへの理解と協力がとても大切です。パートナーに、自分はADHDであるとカミングアウトされたり、ADHDの傾向がある、などと告白されたら、まずはADHDがどのような発達障害なのか、どんな特性があるのかについて正確に理解するところから始めましょう。発達障害と聞くと、驚いてしまったり、中にはそれだけで相手との距離を取ってしまったりする人もいて、それによって傷ついたことのある当事者もいます。ですが、その原因の一つにはADHDがどういうものなのか、きちんと理解していないことが挙げられます。ADHDについてわかりやすく解説されている書籍やウェブサイトも多数あるので、信頼できる情報源からADHDについての正しい理解を進めていくのも良いですね。ADHDについて理解したうえでも、ADHDのパートナーの意図することがわからなかったり、戸惑ったりすることはあると思います。そんな時は、パートナーとの付き合いが長い人(両親、幼少期からの友人、幼馴染など)にパートナーについての話を聞いてみることをおすすめします。先ほども触れたように、ADHDの特性は幼少期の方が強く表れる場合が多くあります。そのため、ADHDのパートナーを昔から知っている人に話を聞いてみることで、パートナーの特性から来る言動の意図に、より納得できることがあります。また、ADHDのパートナーにかかりつけの病院があったり、なじみの医師・カウンセラーがいたりする場合は、一緒に病院やカウンセリングに行き、話を聞いてみるのも良いかもしれません。ADHDのパートナーと良い関係を築いていくには、お互いが相手のどこに困っているのか、どこをどのように直してほしいのかをこまめに話し合う必要があります。ここで気をつけたいことは、感情的になって相手の嫌なところだけをぶつけてしまわないようにすることです。お互いに嫌な部分を言い合っても、解決策を見出すことはできませんし、何より2人の関係性が悪化してしまいます。ただ喧嘩をするのではなく、2人の間でより良い関係性を築くための作戦会議をする、というような考え方のもとで、話し合うことを心がけましょう。ADHDの人の恋愛体験談出典 : ここで、ADHD当事者の方が実際に経験された恋愛・結婚エピソードをご紹介します。最初は、ADHD当事者の方から寄せられたエピソードです。パートナーには自閉症スペクトラム障害の診断がついているそうです。定型発達の方と付き合った時は、コミュニケーションで食い違いが起きることが多かったのですが、彼とはそのようなことは無いに等しく、遥かに楽です。パートナーは、私の衝動性に振り回されて苦労しているかもしれないですが。彼は「全然苦労とは思わない」と私には言ってくれていますが、100%真に受けず、コントロールする努力は続けていこうと思っています。の人と自閉症スペクトラム障害(ASD)の人という組み合わせのカップルは少なくないと言います。この体験談にもあるように、発達障害当事者同士の組み合わせだと、特性の理解がスムーズにいくことがあり、うまくいくケースがあるようです。また、この方は「衝動性」という自分の特性を理解し、なおかつそれを受け入れてくれるようなパートナーとの信頼関係をつくることができています。だからといって相手の発言によりかかりすぎるのではなく、「自分でもコントロールする努力を続けていこう」とする意識があるという点が、恋愛や結婚に悩むADHDの人すべてに心掛けてほしいことでもありますね。次に、ADD(注意欠陥障害)の傾向があるという女性から送っていただいた体験談です。マルチタスクが苦手な特徴が最も顕著に出るのが恋愛かもしれません。勉学/仕事と恋愛(の比重)をうまく両立できない傾向あり。(中略)<恋愛中の傾向>相手と親密になる恋愛では特にネガティブさが邪魔します。相手が(こんな)自分を好きだというのが信じられなくなる。人間としても女性としても自分が魅力あるとは思えないから。対策として、相手との関係以外に仕事など自分の自信を保てるようなものが絶対必要だと感じてます。前章でも解説したように、ADHDの人は金銭管理や家事・育児の段取りなど、マルチタスクの仕事や複数の物事の同時進行が求められることが苦手な傾向にあります。それが、恋愛においてもあてはまる人がいます。ADHDの人で仕事や勉強をしながら友人などと人づきあいをこなし、そのうえで恋愛をする、というようにすべてのバランスを調整しながら生活するのが困難に感じている人も多いのではないでしょうか。また、ADHDの特性から二次的に起こりがちな自信の低下も客観的に把握することができ、またそれに対してどのように対策していけばいいか自分なりに考えてみることが、恋愛や結婚を上手に進める第一歩となるかもしれません。まとめ出典 : の人は、「不注意」「多動性」「衝動性」という特性、そしてその特性による失敗体験の積み重ねなどから恋愛や結婚においても苦労することがあります。ADHD当事者の人も、パートナーがADHDの人も、恋愛や結婚をうまく進めていくために一番大切なことは、ADHDについて理解することです。自分が悩んでいることがADHDの特性に由来しているということを知るだけでも、悩みの軽減につながったり、解決策が見えてきたりすることがあります。そしてADHDの理解と同時に、自分やパートナーにはどんな特性があり、何が得意で、何が苦手なのかを把握していきましょう。得意なことは魅力・長所としてのびのびと発揮できるようにし、苦手なことは自分で意識して周りのサポートを得たり、工夫をしたりして補っていくことで、恋愛・結婚面での困り感を、相手と支えあいながら乗り越えていきたいですね。
2017年06月29日わが子の顔を思い浮かべる…それってみんなができることなの!?出典 : 「お子様の顔を思い浮かべてください」、と言われたとき、皆さんの頭の中にはどんな表情のお子さんが描かれるでしょうか。笑った顔、怒った顔?泣いた顔でしょうか?残念ながら、私は自分の子どもの顔を思い浮かべることができません。それに気がついたのは、子どもが発達障害と診断され、その特性についてあれこれ学んでいるときでした。「人の顔を覚えられない」発達障害の特性の1つにあげられていたこの項目を見た私は、軽いパニックに陥りました。ちょっと待って!人の顔ってみんな頭に思い浮かべられるの!?えっ!?どういうこと???私、大好きな子どもたちの顔がわからないんだけど…!!!それまで私は、それが普通だと思って生きてきました。多少の違いはあるにせよ、みんな同じような感覚の中で生きているんだと。だから、頭の中に人の顔や映像を浮かべられる人を「特殊な能力を持った人だな、すごいな」と思うことはあっても、自分がその能力に欠けているとは思いもしなかったのです。そんなはずはない!と何度も子どもの顔を思い浮かべようと頑張ってみましたが、無理でした。浮かんでくるのは、漢字やアルファベットで書かれた子どもたちの名前、丸顔・大きな目・への字口、メガネ・奥二重・唇に傷…そんな文字列ばかりだったのです。努力で特性を改善させることにもチャレンジした。でも、できなかった出典 : 数日経って落ち着きを取り戻してから、いろいろと自分について考えてみました。・どうやら私の頭の中は言語で埋め尽くされていること・画像や映像を記憶することができないのを補完するように、記憶ははすべて言語化されていること・親しい人の顔は特徴を言語化して記憶するので、会えば判別できること・誰かと知り合った時にまずフルネームを漢字で教えてもらうのは、似た名前の人と混同しないように、まず記憶の箱にフルネームを漢字で書いたラベルを貼り、そこに相手の特性を言語化したものを放り込んでいくからだということ・よって名前を知らない人の情報は箱がないので整理することができず、特徴も言語化されないので、近所の人や幼稚園の保護者など名前を知らない人の顔は判別できないこと・外国の俳優名が覚えられないのは、カタカナやアルファベットの羅列に意味を持たせられないから・写真を撮るのが好きなのは、記憶にとどめておけない景色を私の代わりに記録してくれるから出典 : ショックから抜け出して頭の中を整理しながら、人とは違うということを知るにつれ、また落ち込む日々が続きました。特徴を言語化して紐付けしていく、というのは私が知らず知らずのうちに身につけた「人を判別する方法」だったのだと思います。そんなことをしなくても、人の顔を思い浮かべられることができれば、どんなに楽なことでしょう。何より愛するわが子の顔を思い浮かべられない、という衝撃が大きすぎて、なんとかあの笑顔を手に入れたいとパーツを1つひとつ思い浮かべる練習をしたりもしましたが、進展はありませんでした。生まれ持った特性というのは、努力ではどうにもならないのだなぁ…と、身に染みて感じているところです。自分の特性を知った今、思うこと出典 : 「人の顔を覚えられない」という特性を知らずに生きてきた40年。学生の頃、新学期の始まりは名簿を覚えるのに必死でした。名簿順に並んで座っている間に、名前と特徴を一致させないと、一体それが誰なのか分からなくなるからです。子どもが幼稚園に入った時は、クラスの名簿を壁に貼ってフルネームを覚えるところから始めました。三つ編みでブランコに乗っているのは誰?と娘に聞いて「Aちゃんだよ」と教えてもらうと、Aちゃんのラベルがついたボックスに「三つ編みでブランコ」などの言語化された情報を放り込んでいくのです。みんなそうしていると思っていた。でもそうじゃなかった。それに気づいた今、私が思うことは「もっと早く自分の特性を知りたかった」ということです。そうすれば、同じような悩みを持つ人の体験談を読んだり、どんな風に工夫しているかを知る手立てになったと思うのです。出来ないことを嘆く時間を「いろんな方法にチャレンジしてみる」という前向きなエネルギーに変えることができていれば、訳の分からない焦燥感に苛まれることも少なかったのかもしれません。自分と同じ辛さを経験しないよう、今わたしが子どもたちにできることは…出典 : そんな自分の経験から、わが子が持っている特性については、早くから「あなたにはこういう傾向があるよ」と伝えることにしています。その上で親子で一緒に工夫し、本人にとってより楽な方法を見つけることができれば、穏やかな日常を過ごせるようになるのではないかと思っています。そんなことを思いながら、今日もまた息子の顔を観察しては、「向かって左側、鼻と口の端を結ぶ直線上、やや内側に淡い色のほくろあり」と言語化した特徴を息子ボックスに放り込んでいます。どれだけ頑張っても、子どもの顔を思い浮かべることはできないのだから、私にできる方法で子どもたちを知っていければいい。そんな私の生き方が、いつか子どもたちの道しるべになればいいな…と、願っています。
2017年01月31日9階から飛び降りを強制した小学校の4年生の女の子、裁判で両親の監督責任はどう問われた?出典 : こんにちは。『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』著者の立石美津子です。2013年、江東区のマンションで起きた事件です。当時4年生だった女の子が、校門前で縄跳びを振り回していた当時2年生の女の子を注意。さらに説教しようと9階建ての自宅マンションの屋上に連れて行き「飛び降りないと殺すぞ。ここから落ちて死んでしまえ」と言いました。それに従った2年生の女の子は飛び降り、木や水槽にぶつかりながら約26メートル下に転落、足や胸の骨を折るなどの全治11週間の重傷を負いました。被害者の両親は4年生の女の子の両親に3千万円の損害賠償を求め、裁判長は両親に監督義務があったと認め、約1,025万円の支払いを命じました。加害者の4年生の女の子は重度の難聴があり、両親は専門のクリニックに通って育て方の指導を受けていました。小野瀬厚裁判長は、このことについては「子育てに相当の努力を払った」と認めています。しかし、女児が事件後にアスペルガー症候群との診断を受けたことを挙げ、「他者が思い通りに動かないと怒りを持つ女児の傾向に気づいておらず、対応は不十分だった」として賠償責任を負うと判断しました。参照: 東京新聞 TOKYO Web, 飛び降り強要加害小4の親に1000万円命令参照: 朝日新聞デジタル, 小2に飛び降り強要、小4両親に1千万円賠償命令「育てにくい子の孤独な子育て」と事件によって追い込まれる親たち出典 : こういう情報が流れると、正しい理解をしていない世間の人から、まるでアスペルガー症候群などの自閉症スペクトラムに代表される発達障害児を持つ親は「将来、そんな事件を起こす可能性がある子」という誤った偏見の目で見られてしまうことがあります。この事件では、当時の報道記事などで明確に発達障害の診断名が書かれていましたが、今は「社会性の問題がありコミュニケーションが苦手と分かった」といった報道のされかたに変わってきています。かつて、新聞やテレビのニュース報道で加害者の精神鑑定の結果を明確に出したことにより様々な誤解を生んだため、現在では報道機関が自主規制を行っているようです。けれども、一度こうした衝撃的な事件が精神障害や発達障害の診断名と共に報道されてしまうと、診断名に対するネガティブなイメージが付着しやすく、誤解や偏見を払拭することは容易ではありません。そのため、発達障害のある子どもの保護者は、ただでさえ育てにくい子の子育てで孤独に悩んでいるのに、さらに追い打ちをかけられ苦しむことになります。参照: シノドス, アスペルガー症候群の特性と犯罪――『アスペルガー症候群の難題』著者による解説 井出草平 / 社会学ルールを忠実に守る子どもたちと、それだけでは通用しない社会の難しさ出典 : アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラムの子どもたちは、他人の気持ちへの想像力や社会性に困難があると言われることが多いですが、一方で、決められたルールを真面目に忠実に守るという、場合によっては長所にもなり得る特性も持っています。ですが、ルールを忠実に守ることにこだわるあまり、自分だけでなく他者にもルールを守ることを強く求めてしまったり、その場に応じた臨機応変な対応が出来ないために、対人トラブルにつながることも少なくないのです。例えば、見知らぬ人であっても横断歩道を赤で渡っている人に「信号無視をしてはならない!」と注意してしまったり、携帯電話を電車内でしている人を許すことができず、声を荒げて怒ってしまうことがあります。これはルール上正しいことです。だから本人にとっては正論なのです。でも、見知らぬ相手から叱られた人はたいてい嫌な思いをします。また、学校生活の中でも正論ばかり振りかざしていると“付き合いの悪いヤツ”と言われ友達作ることもできずトラブルメーカーになることもあります。白と黒だけでない曖昧なグレーな判断が世の中には存在すること、ルールは場合によっては柔軟に変更されたり、例外措置が取られることもあること。これが自閉症スペクトラムの子どもたちにとっては理解が難しいことなのです。はじめは融通がきかない子どもでも、育て方で未来は変わる出典 : ですが、たとえルールへのこだわりが強く融通が効かない子どもでも、適切な支援や教育によって、社会性を獲得していくことは可能です。幼い頃に子どもの発達障害に気付いていれば、本人の特性を理解し、その上で「知らない人がルール違反をしていても声をあげて注意するものではない」と教えていくこともできます。友人であってもルール違反の罰則を厳しくする方が誤っていることも教えることもできます。専門機関でソーシャルスキルトレーニングを受けることもできます。親も、ペアレントトレーニングなどを通して、子どもの特性に応じた関わり方を学んでいけば、「どうしてお前だけ皆とうまく付き合っていけないんだ!」と叱責するのではなく、「どうやったらいいのか」をアドバイスする姿勢で子育てができるようになります。逆に、そうした機会が無ければ、子どもは年中、親や先生から叱られ、友達もできずに「自分は価値がない人間」と自暴自棄になり自己否定し、心の病を発症したり自傷したり、他害に走ることもあります。この事件では両親は難聴の専門クリニックに相談はしていたようですが、発達障害だとは気が付いていなかったようです。「もう少し早く、子どもの特性に気が付く機会があったならば…」と、なんともやりきれない気持ちになります。発達障害そのものが事件を起こすのではないということを、知ってほしい出典 : 二次障害という言葉があります。先天的に脳にあった一次的な発達障害に対して、鬱、家庭内暴力、自殺、他害(反社会的行動・犯罪)など、様々な要因によって二次的に発生した障害や問題を意味する言葉で、これらは後天的に起こります。本人にとって不適切な環境にさらされたことに対するストレス反応としての側面が大きいと思います。発達障害そのものが事件を引き起こすのではなく、本人や周囲がその特性を理解せずに適切な関わり方や環境づくりをできなかったために、二次障害が発生し、冒頭に挙げたような悲しい事件が起こる場合があります。これは、健常児だって生まれたときは天使のような可愛い赤ちゃんでも、育ち方によっては将来犯罪を犯すこともあるのと同じです。そこを理解してもらいたいと思いますが、なかなか一面的にしかクローズアップされないので誤解を招いてしまいます。この事件では親に賠償責任を求める判決が下されました。親の責任はどこまで問えるのか、なんとも考えさせられる事件でした。Upload By 立石美津子立石美津子, 『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』, すばる舎, 2016年
2016年12月12日言葉を認知する方法は、十人十色出典 : 「空」と聞いた時に、あなたは何を思い浮かべますか?まだ子どもが生まれる前に、家族で話をしてみると、青々と広がる空の絵を思い浮かべる人、そこに流れる雲や飛行機が飛んでいく様子まで映像で思い浮かべる人。色々な人がいることがわかりました。そんな話をするまで、「空」と言われたら他人も自分を同じものを思い浮かべているばかり思っていました。そして、言葉の認識がそれぞれで違うことが原因で、行き違いが起きることがあると分かりました。ちなみに私は「空」と言われると、「空」という漢字を思い浮かべます。背景は白、明朝体で、墨で書いたようなどっしりとした字です。残念ながら空の映像を思い浮かべる事はできません。その頃は、「人それぞれで面白いね!」で終わっていたお話ですが、これは発達障害の子どもたちを育てる上で、とても大きな意味があったのです。『医師のつくった「頭のよさ」テスト』とは?出典 : 本田真美著 『医師のつくった「頭のよさ」テスト』2012年、光文社子どもに発達障害の診断が下り、障害について学ぶようになってすぐに出会ったのが、この『医師のつくった「頭のよさ」テスト』という本です。ちょっと誤解が生まれそうなタイトルですが、サブタイトルは「認知特性から見た6つのパターン」となっており、こちらの方が本書の内容を的確に表していると思います。認知特性とは、情報を頭の中で理解・整理・記憶・表現する方法のことで、この本では以下の6つのタイプに分類されています。① 視覚優位者(写真・カメラアイタイプ)② 視覚優位者(三次元映像タイプ)③ 言語優位者(言語映像タイプ)④ 言語優位者(言語抽象タイプ)⑤ 聴覚優位者(聴覚言語タイプ)⑥ 聴覚優位者(聴覚&音タイプ)人にはそれぞれ生まれ持った認知特性があります。すべての認知能力をバランスよく平均的に持ち合わせている人もいれば、いずれかの認知特性だけが特に強く、他の認知特性が弱い人などがいます。同じ物事を見ても、インプットする方法も違えば、アウトプットする方法も違う。発達障害児に限らず、子育てをしていくうえで子どもがどのように物事を処理するタイプの人間なのかを知っていると、親子の衝突がずいぶんと減るのではないかと思います。視覚優位タイプの息子は、耳で聞いた情報を処理するのが苦手で…出典 : さて、我が家の6歳になる息子は、視覚優位のタイプです。目で見た情報を覚えるのは非常に得意ですが、耳から入った情報を処理する能力はとても弱く、会話をしていて何度も同じことを聞きかえしたり、言い間違えがとても多いのです。「ママ、また今度ポテトナルドに行こうね!」「うん、それ多分マクドナルドだよ!」「ママ、チキンマートの角を曲がる道を通ろう!」「うん、ファミリーマートね。OK!」耳で聞いたことしかないお店の名前、お姉ちゃんと話していて知った言葉など、一度も文字で目にしていない言葉はかなりの確率で間違って覚えています。マクドナルドは大好きなポテトのイメージに、ファミリーマートは最近知ったファミチキの味に引っ張られて、なんとなく雰囲気で言葉を当てているようです。私や娘からするとこんな間違い方があることが信じられないのですが、これを理由に息子をバカにしたり、息子の能力を嘆いたりしているわけではありません。これは、認知の方法の個人差にすぎないのです。息子に正確な言葉を耳から入る音声言語で教えても、それをインプットするまでにはとても時間がかかります。ならば、得意な視覚を使えばいい。チラシの裏に「マクドナルド」「ファミリーマート」と書いて見せてあげさえすれば、息子の脳にはきちんと正確な情報が入るのです。「伝え方」を変えるだけで、親子ゲンカが減るかも?出典 : この本に出会うまでは、私は息子に「どうして何度言ってもわからないの!?」と問いただすことが多々ありました。こんなに丁寧に説明しているのに分からないのは、頭が悪いから?何度同じことを言ってもまた同じ質問をするのは、適当に聞き流しているから?そんな風に感じていたのです。もし今、同じようなお悩みを抱えていらっしゃる人がいたら、ぜひ一度この本を手に取ってみて下さい。お子さまと保護者の方の認知特性が異なる場合、伝え方を変えるだけで改善されるかも知れません。
2016年09月01日ゲームにあまりにも夢中になる息子…もしかして中毒?出典 : 息子はパソコンで遊ぶのが大好きです。プログラミングのような作業も交えながら、いつも集中して落ち着いた時間を過ごしています。しかし、勝負ごとが絡むゲームになると、状況は一変!負けそうになると、キーボードやマウスを連打しながら「うおーーーーーーっ!!!」「ぎゃーーーーーーーっ!!!」と叫んだり、暴言を吐いたり、泣きながら呼吸を荒くして髪をかきむしったり、その場を歩き回ったり…そんな息子の姿を見るたびに、私はいつも「ゲームだけでこんなに取り乱してしまうなんて、もしかしてゲーム中毒…?」と心配になっていました。発達障害の特性がこんなところにも!?息子の行動の意外な理由出典 : ゲームが大好きなのは分かりますが、暴れるまでのめりこむ息子を見て、私は少し怖くなってしまいました。ある日、「ちょっと、そんな風になるまでハマっているのは、良くないんじゃないかな?」と息子に恐る恐る聞いてみました。ところが息子の口からは、思いがけない返答がありました。「違うよ!予想外のことが起こったり、予想外の所から予想外のタイミングで予想外のものが出てくるんだよ!!!」えええええっ?!そういう事だったの?!私は息子がゲームに熱中するあまり、うまくいかないときに暴力的な行動をとっているのだとばかり思っていました。でも、単に発達障害の特性からくる「予想外の事が突然起こったことによるパニック」が連続して起こっていただけだったのです。納得すると同時に、ちょっと拍子抜けしてしまいました。確かに、予想外の出来事や、思っていた見通しと違う方向に事が進むというのは、発達障害の息子にとっては苦手なことですよね。分かっていたつもりでしたが、まさか娯楽の中でもそういうストレスを感じていたとは思いもしませんでした。パニックはどんなときに起こる?息子に実際に聞いてみた出典 : 息子は映画も大好きなのですが、映画ではパニックを起こすことはありません。映画も予想外の連続があると思うのですが、なぜ映画ではパニックを起こさないのでしょう?息子に聞いてみたところ、映画は自分がストーリーを操作しているわけではないから、予想外のことが起きても「そういうことも起こるだろうな」と落ち着いていられるけれど、ゲームは自分で操作しているため、予想外の事が起こると「自分がこうやって操作したのに何で?!」とパニックになってしまうそうです。パニックを起こす息子を見て、私もストレスを感じていましたが、原因を知るだけでも少し安心することができました。自分とは違う息子の独特な感性を、また興味深く思えた出来事でした。
2016年08月16日私の父にそっくりな息子出典 : 発達障害は遺伝の要素が強いとは言いますが、それを実感したエピソードがあります。息子と私の父は間違いなく同じ特性を持っています。息子が発達障害の診断を受ける前からずっと、私は息子の様々な行動が私の父にそっくりなことに気付いていました。「動き方がおじいちゃんみたい」「自分勝手な行動がおじいちゃんそっくり」「じっとできないところがおじいちゃんと同じ」と、家族もみんな言っていました。そのせいか、私の父はどの孫よりも息子のことを特別可愛がっていたように思います。私の父と言えば、まずとんでもなく不器用。お皿を割らずに皿洗いができない人です。そして、シングルフォーカス。庭に水やりをしてと頼むと、足元の花を全部ふんづけて水を撒いています。衝動性は凄まじく、思ったことをそのまま口に出すため母が「恥をかかされた」と怒って外出先から泣いて帰ってくるなどしょっちゅうでした。また、残念ながらカッとくると感情のコントロールができないので、家族は大変。多動と多弁は70を超えた今でもそのまま残っており、「ガサガサゴソゴソしないで!」「ちょっと黙って!」と周囲によく注意されています。制御がきかなかった父の幼少期出典 : 父の特性がよく分かる話を、今は亡き祖母がしてくれたことがあります。「幼稚園に入園させたらねえ、毎日手がつけられないほど泣いて叫んで暴れて…。先生たちが困り果てて、結局1ヶ月で退園させられちゃったの。」「家にお客さんがくると、いつもと違う状況に異常にテンションが上がっちゃってね。もうどれだけ注意しても大はしゃぎで、本当に大変だった。」「小学校に上がったら、授業中に鉄棒しに勝手に出ていっちゃったりしてね…」とにかく父は「大変な子」だったようです。問題児だった父を変えたひと言出典 : 幼稚園は強制退園、小学校は立ち歩き脱走ばかりしていた父。小学校低学年までは成績も悪く、勉強も大嫌いな子だったそうです。しかし、最終的には某国立大学を首席で卒業し、表彰式の模様はテレビで放映されました。大学卒業後は企業の営業職として抜群の営業成績をおさめ、リタイア後は法律関係の仕事をしています。周りにずっと「ダメな子」認定されていた父が変わったきっかけは何だったのでしょうか。以前、父が話してくれたことがあります。成績が悪く立ち歩きをする父に、小学校4年生のとき担任の先生がこう言ってくれたそうです。「君は、本当はすごく出来る子なんだよ。僕は知っているよ。」その先生の言葉が、父に革命を起こしたと言います。それまで何をやっても自分はダメだと思っていたけれども、たった1人でも自分を認めてくれる人がいる、それは父の中で大変なことだったのです。それからというもの、父は勉強を含め様々なことに前向きに取り組むようになったそうです。当時、周りと同じことをするのに数倍の努力が必要でしたが、その先生の言葉のおかげで父は努力をし続けることができたと言います。良き大人との出会いが人生を変える出典 : 父のこのエピソードは「窓ぎわのトットちゃん」と重なるものがあります。小学校を退学処分になったトットちゃんに、新しい学校の校長先生が「きみは、ほんとはいい子なんだよ!」と言うという話は有名です。自分を認めてくれる良き大人との出会い、これは、子どもの人生を変えるものです。日常的に自信を失うことが多い発達障害児にとって、こんな言葉をかけてくれる人はどれほど貴重なことでしょう。自分を認めてくれる良き大人、そんな人と子どもが出会うことを信じながら、日々育児に取り組んでいます。
2016年08月06日ケースレーインスツルメンツ(ケースレー)は1月14日、パワーデバイス/モジュールの特性評価に適したソースメータ(SMU)の新製品「2461型」を発表した。価格は94万8000円(税別)。「2461型」は正確に制御された最大10A/100V、1000Wの大電流パルスを生成する機能を備えており、パワー・デバイスの熱効果を抑え、デバイスのインテグリティを保つことができる。また、18ビットのデュアル・ハイスピード・デジタイザにより、デバイス動作応答の波形を前面パネルに表示し迅速に解析することが可能。同製品は実績のある2450型、2460型ソースメータをベースとしており、クラストップのハイレベルなDCおよびパルスの印加/シンクが可能であり、設計を詳細に調べることが可能となっている。また、「2461型」は他のケースレーのグラフィカル・ソースメータ同様、直感的なTouch、Test、Invent技術を採用しているため、操作方法の習得時間が短縮でき、作業効率の向上に貢献するとしている。さらに、オープン・ソース・スクリプト言語を内蔵し、再利用可能でカスタマイズ可能なテスト・ソフトウェアのライブラリが生成でき、さまざまな測定アプリケーションにも対応する。加えて、新しい高速コンタクト・チェック機能では、金属疲労、プローブ先端の汚れ、接続の緩み、破断、リレー不良などによる測定の誤差、製品不良を最小限に抑制する。同社は「2461型」により、確実なテストが可能になり、設計、エンジニアリングの判断を迅速に行うことができるようになるとしている。
2016年01月14日ヨコオは7月13日、産業技術総合研究所発のベンチャー企業であるWafer Integaration(WI)と「次世代型半導体電気特性評価システム」事業で提携し、その第1弾としてコンパクトかつ操作性に優れたダイサイズ半導体電気特性評価装置「DdProber(仮称)」の販売を同月より開始すると発表した。同提携では、製品設計および開発・生産をWIが担当し、ヨコオがシステムの最適化、製品販売、技術サポートを担当する。今回発表した「DdProber(機種名:WI-3000)」は、ダイサイズの半導体チップ上のトランジスタを測定評価する自己検知型AFM(原子間力顕微鏡)方式プローバー。従来のAFM方式では、レーザーを使った光てこにより微小変位を検出して原子間力を測定しており、操作に熟練と長時間が必要な光軸調整が必須であり、装置も大がかりなものとなっていた。これに対し、同製品は原子力間力検出センサーであるピエゾ抵抗を内蔵するカンチレバーによって、針圧変化をカンチレバー自らが検出してAFM操作を行うことや、トランジスタに力制御をかけながら直接コンタクトを取ることができる。そのため、従来の光学系が不要となり、原子力間力検出機構をメンテナンスフリーとするナノレベルのプロービングによる電気特性評価システムを構築することが可能となる。これにより、同システムおよび制御装置のサイズをコンパクトに保つことが可能となった。また、プロービングはPC制御でコントロールされ、トランジスタ測定などの電気測定は、半導体パラメトリックアナライザーでTEGによる通常の電気特性と同じ環境で行うことが可能。具体的には、22nmプロセスのトランジスタ特性を安定的に測定することができるとしている。今後、WIは2017年の完成を目標に、半導体量産現場でも活用できるウエハ対応の「DdProber」の開発を進め、ヨコオは国内拠点の富岡工場に設定を進めている「DdProber評価センター」の運用を8月より開始し、顧客デバイス電気特性評価のデモンストレーションと、顧客向けシステムの最適化を開始する計画だ。
2015年07月13日テクトロニクス社は6月25日、MIPI C-PHY物理レイヤのトランスミッタの特性評価/デバッグに向けたオシロスコープベースのテストソリューションを発表した。同ソリューションは2014年9月に発行されたMIPI C-PHY規格のテスト/測定課題に対応することを可能としたもの。例えば、トランスミッタの特性評価のために設計された解析ソフトウェア「C-PHY Essentials」はレシーバの校正にも使用でき、その場合、さまざまな立上り/立下り時間測定が行え、ストレスのかかったアイを、C-PHYコンプライアンス・テスト仕様で推奨されているDCDなどの異なった障害での校正に用いることができるという。また、ソリューション・パートナーであるMoving Pixelと共に開発したこれらC-PHYソリューションには、4レーンのC-PHYトラフィック・ジェネレータ、シングルレーンのオシロスコープベースC-PHYプロトコル・デコーダ、C-PHYターミネーション・ボードが含まれており、トラフィック・ジェネレータは、レシーバの機能検証にも使用できるほか、プロトコル・デコーダは、オシロスコープ上で実行するC-PHYデコーダとなっている。なお、同社では、このソリューションを活用することで、C-PHY 1.0インタフェースを使用した次世代カメラ技術の開発、設計の詳細な解析、デバッグ、特性評価が可能になると説明している。
2015年06月25日キーサイト・テクノロジー(キーサイト)は3月31日、次世代移動体通信(5G)向けの空間電波伝搬特性測定ソリューションを発表した。同ソリューションでは、ミリ波周波数で最大帯域2GHzの入力信号生成、複数アンテナを使用した多チャネル伝搬測定が可能となる。また、伝送/反射ミリ波サウンディング信号の捕捉による選択したチャネル特性の抽出、オープンFPGAを使用したリアルタイム測定による長時間の連続したデータ収集、さらには指向性の強いアンテナの3次元測定が実現した。具体的には、M8190A任意波形発生器が業界最高のサンプリングレートと分解能を、PSGベクトル信号発生器が業界で最も広帯域のI/Q変調機能を提供する。また、ダウンコンバータおよびシグナル・コンディショニング・モジュールにより、5G研究に必要な確度を備えた、広帯域信号の捕捉/解析用のスケーラブルな構成が可能となる。さらに、5Gベースバンド エクスプロレイション ライブラリにより、現実的なチャネルモデルの抽出とシミュレーションが実現する。キーサイトは、「当社は無線通信技術において世界的なリーダーであり、また最適なソリューションを提供できるベンダーでもあり、お客様と連携し、5Gに必要な無線技術の研究開発をリードしています。この空間電波伝搬特性測定ソリューションは、当社が中心となり4Gから5Gへの進化を推し進めることへの新たな決意表明でもあります」とコメントしている。
2015年03月31日IDTは、超小型のフォームファクタで充電時間を短縮し熱特性を改善するワイヤレス給電レシーバIC「P9027」を発表した。同製品はWPC(Wireless Power Consortium)のQi規格に対応した8Wの電磁誘導レシーバIC。ピーク時にシステムレベルで80%の効率を実現し、全体的な熱特性を改善する。高効率のアーキテクチャによって電力伝達率を向上できるため、スマートフォンやファブレットなどのポータブル機器の充電時間を短縮できる。また、約37mm2のコンパクトサイズのソリューションで、必要なコンデンサの数は競合製品より6個少ないため、基板面積が小さくなりBOM(部品表)コストを削減できる。同製品の独自アライメントガイドは、トランスミッタとの電磁結合を最適化し、コイル間の電力効率を最大にする。可変出力電圧範囲が3V~7Vで、下流のさまざまな電力管理ICを駆動できると同時に、独自の異物検出機能(FOD)によって金属物がある場所でも安全に動作できる。
2015年03月12日Keysight Technologiesの日本法人であるキーサイト・テクノロジーは10月22日、RFパワーアンプ(PA)特性評価/テスト用PXIリファレンスソリューションを発表した。同リファレンスソリューションは、PXI方式の筐体を採用すると同時に、Sパラメータ、高調波歪み、パワー、復調測定機能を備えている。そのため、設置面積が小さいだけでなく、PA+デュプレクサ(PAD)など、次世代PAモジュールの特性評価を短時間で実行でき、高いスループットと測定確度を実現できるように最適化されている。加えて、フィルタやデュプレクサなどパワーアンプ周辺のパッシブデバイスのデザイン検証と製品の量産用特性評価テストにも対応している。また、同ソリューションのデジタルプリディストーション(DPD)アルゴリズムは、長年にわたるユーザーとの連携と同社のSystemVueシミュレーションソフトウェア、N7614B Signal Studio for Power Amplifier Testソフトウェアアプリケーションの要素技術を基に作られている。このDPDアルゴリズムにより、次世代PAモジュールに対してシミュレーションから製造まで一貫性のある測定が可能なソリューションを構築できたという。そして、実証済みのDPDアルゴリズムとルックアップテーブル(LUT)、メモリ多項式機能がリファレンスソリューションのエンベロープトラッキング(ET)テスト機能を補完する。この他、同ソリューションにはETテストに重要な高速波形ダウンロード、正確な同期、自動校正の機能も備わっている。なお、同ソリューションは、SignadyneのSD AOU-H3353や高速PXIe任意波形発生器(AWG)などにも対応しており、業界で最速クラスのエンベロープ波形作成と機器の設置面積の削減を同時に実現するとしている。
2014年10月23日大日本印刷(DNP)は9月30日、総務省家計調査(家計消費調査年報)や国勢調査などのオープンデータを活用してエリアの特性を可視化するサービス「エリアダッシュ」に、新たなレポートメニュー「エリアダッシュV3」を追加したと発表した。このサービスは、年齢・性別・居住形態・家族構成などの属性情報から、生活者を60の属性別集合(クラスター)に分類して地図上に色分け表示するとともに、各クラスターを郵便番号別に抽出。商品やサービスなど約600品目についての購買情報をもとにDNPが独自に構築した家計消費データベース(DB)と、クラスター分析を組み合わせてエリアの特性を抽出できることから、折込チラシやDMなどの効果的な配布エリアの選定が可能となる。今回発売する新しいバージョンには、「商圏設定レポート」「オリジナル商品指数レポート」を追加。商圏調査レポートでは、調査対象の商圏(半径50km以内で任意設定可能)に対し、世代別の人口分布や競合店の位置状況、レスポンス結果などを調査して、その商圏がどのような状態にあるかを考察して分析結果を提供。既存店舗の商圏調査や、今後の出店計画の立案に活用できる。また、オリジナル商品指数レポートでは、訴求対象商品の購入意欲が高いクラスターを分析・特定し、そのクラスター分布状況を表示する。価格は「エリアダッシュV3」の各種レポートが1エリア20万円からとなる(価格は、レポート内容によって変動)。また、同システムをパッケージ化した「エリアダッシュ on MarketAnalyzer」も同日に発売。「エリアダッシュV3」の機能を活用して、自由に地域特有の消費行動や商圏の分析ができる。販売価格は500万円で、初期導入費用10万円、年間保守費用45万円となる。DNPは、エリアプロモーションを積極的に展開する企業に向けて「エリアダッシュV3」の各種レポートメニューと「エリアダッシュ on MarketAnalyzer」を提供し、関連する制作物などを含めて、年間20億円の売上を目指す。
2014年10月01日富士ゼロックスは7月2日、人の視覚特性に基づいて、画像データの色や形状などの"質感"を制御することで、直観的に特定領域の印象を変化させたり、望みの色に加工できる画像質感制御技術を開発したと発表した。同技術は、タブレット端末やタッチモニタなどの画面に表示された画像データを、指でなぞるだけで簡単に切り出すことができ、切り出した特定の領域を望みの色や質感に変えたり、切り出した画像を他の画像に合成することが可能になる技術で、画素データの境界を独自の技術で判別することにより実現した。また、見本画像の特性を元画像に転写する技術により、画像全体の印象を一致させたり、画像領域ごとに個別に印象を一致させることもできる。このような、"質感"の変化は、人の視覚の認知特性に基づいた視認性向上の処理や形状の強調を行うことで実現しているという。これらを実現するために、独自の周波数帯域解析や暗部解析も行っており、人が画像中の特定の物を知覚するにあたって自然な再現を可能にしている。これにより、車や住宅の塗装などのカラーデザインを検討する際、複数の領域の色を複合的にシミュレーションすることができる。例えば、車の外装と内装の組み合わせや、自宅の写真データをもとに屋根と壁の塗装の色の組み合わせなどを、簡単にシミュレーションできる。また、化粧品売り場で購入希望者の顏写真データを取り込んで、肌と口紅のそれぞれの色を、同時にシミュレーションできるため、好みの色の組み合わせを簡単に選ぶことができる。近年、"質感"を認知する脳の働き(質感知覚)が新たな研究分野として注目されており、同社では、画像の視認性、輝度の周波数帯域、色特性を統合した視覚特性が"質感"を再現するために重要な要素であると捉え、今後も"質感"に着目した研究を進めていく。また、同社のユーザーである共創ラボラトリーなどを通じて、ユーザーとともに活用シーンを具現化しながら、実用化に向けた取り組みを行っていく予定とコメントしている。
2014年07月02日放射線医学総合研究所(放医研)は1月23日、放射性セシウム(Cs-137およびCs-134)を可視化するカメラ「特性X線カメラ」の開発に成功したと発表した。成果は、放医研 研究基盤センターの小林進悟研究員らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、1月28日から30日まで開催される応用物理学会・放射線分科会並びに電気学会・原子力技術委員会で共催される研究会「放射線検出器とその応用」で発表される予定だ。東京電力 福島第一原子力発電所(福島原発)の事故による放射性物質は福島県および周辺の地域に飛散し、現在でも除染が必要な状況が続いている。また、福島原発の原子炉廃止措置では放射性物質による汚染を厳重に管理し、作業を進める必要がある。よって、除染作業や汚染管理において、放射性物質の存在を可視化できるカメラは、放射性セシウムの分布状況を把握するための有効な装置の1つと考えられている。これまでさまざまなメーカーや研究機関、大学などにおいて放射性物質を可視化するガンマカメラやコンプトンカメラといった装置の開発が進められ、一部販売もされてきた。Cs-137やCs-134などの放射性セシウムはガンマ線を放出するが、ガンマカメラやコンプトンカメラは、そのガンマ線に感度がある半導体や「シンチレータ」を撮像素子として用いて、ガンマ線を検出することで放射性セシウムを可視化する仕組みだ。シンチレータとは、放射線が物質に衝突した際に物質に移動する放射線の持つ一部のエネルギーを源として、紫外線や可視光線を放出するように成分を調整した物質である。ヨウ化ナトリウムに微量のタリウムを混ぜた「NaI(Tl)」などがその代表。ガンマ線は可視光のおよそ10万から100万倍のエネルギーを持ち、物体を通り抜ける力が強く、検出器に反応せずに透過し、検出されないこともあることから、検出素子を厚くして透過力の高いガンマ線をとらえる必要がある。さらに、視野以外の方向から飛び込んでくるガンマ線を遮ることも必要で、撮像素子の周囲を鉛などの重い材料を使って遮蔽材として囲むことで「ピンホールカメラ」(画像1)構造を取る必要があり、感度の高いガンマカメラは必ず重くなるという欠点があった。ピンホールカメラは、子どもの頃に学校の理科の時間や、科学雑誌の学習教材などで作ったことがある人もいるかも知れないが、簡単にその仕組みを説明すると、箱の中の片側に撮像素子(写真フィルムやCCD)を設置し、反対側に小さな穴(ピンホール)を開けることで構成されている。この時、箱はピンホール以外から光が撮像素子に入り込まないようにするための遮蔽材として働いているというわけだ。写真を撮るということは、光がどの方向から、どのような強度でカメラ(撮像素子)まで到達しているのかを知ることであるが、前者はピンホールの位置と撮像素子が感光した位置を、後者は撮像素子が感光した光の量を測定することで実現できる。このような可視光のピンホールカメラと同様で、ガンマ線を遮る箱とガンマ線に感度のある撮像素子を使えば、ガンマ線で撮像ができるというわけだ(ただし、倒立した画像になる)。福島原発の事故以前から販売されているガンマカメラは一般的に15kg前後と重いが、現地で実用的な感度を得るためには遮蔽材をさらに厚くしなければならず、重いものになると30kgほどになり、機動的な運用を行うのは厳しい状況である。また、重量を増やさずに感度を上げる方法として古くから「コンプトン散乱現象」を利用したコンプトンカメラの研究開発が進められてきた。しかし、コンプトンカメラも短所が存在し、仕組みが複雑なため、実用的な検出素子を製作するとコストの増大を招いてしまうのである。以上のことから、放射性セシウムを可視化することができ、軽量で十分な感度を持ち、さらに低価格といった3つの特徴を兼ね備えたカメラを実現するのは困難だった。放医研は、これまで福島県を中心とした現地でさまざまな活動をしており、その経験から現地に広く普及できるような、軽量、十分な感度、低価格の3拍子そろった放射性物質可視化カメラの開発が重要であると認識するに至ったという。そこで、これまでのガンマカメラやコンプトンカメラの欠点を克服した"第3のカメラ"である特性X線カメラの開発に着手し、現地の関係者や大学などの協力を得て、開発を進めたというわけだ。ガンマカメラやコンプトンカメラは、ガンマ線を検出して放射性セシウムを可視化する。一方で、今回開発された特性X線カメラは、ガンマ線の代わりに、放射性セシウムが放出する「特性X線」を検出することで可視化する原理だ。Cs-137とCs-134の多くはエネルギーが600~800keVのガンマ線を放出するが、32keVの特性X線も放出している。この特性X線はガンマ線と比べると放出量はわずかだが、ガンマ線に比べてエネルギーが低いため、容易に検出したり遮蔽したりできる点に着目したというわけだ。特性X線を検出できる検出素子を厚さ数mmのステンレスなどの遮蔽材で囲うことでピンホールカメラを構成したのが特性X線カメラだ(画像2)。特性X線カメラの特徴は、放射性セシウムからのガンマ線はカメラを透過するようにして、特性X線に対してのみピンホールカメラとして作用するように設計されている点だ。このため、ガンマカメラ(画像3)のように厚く重い遮蔽体や検出素子が必要ないことから軽量となり、特性X線だけをとらえて放射性セシウムを可視化できるというわけである。特性X線カメラとガンマカメラは、遮蔽材の前面に開けられたピンホールを通過した放射線を検出し可視化を行うピンホールカメラであることは一緒だ。ただし前述したように、ガンマカメラの遮蔽材と検出素子は、透過力の高いガンマ線を吸収するように設計されるために重くなる。一方で、特性X線カメラの検出素子および遮蔽材は、特性X線を吸収し、ガンマ線は透過するように設計されている。特性X線は透過力が弱いために、遮蔽材および検出素子は薄くて済むため、特性X線カメラは軽量になるというわけだ。また、放射性セシウムの特性X線(32keV)を高い効率で検出できる検出素子は容易に入手可能である。遮蔽材と同様に、検出素子の種類選択および厚さや大きさ・形状の最適化が行われ、その結果として特性X線を90%以上の効率で検出することが可能となり、ガンマ線への感度は1%以下とされた。これにより、放射性セシウムに高い感度を持つカメラの製作に成功したのである。画像4が試作機で、サイズは225mm×175mm×242mm、本体重量は6.6kgだ。現在除染で使用されているガンマカメラよりも同程度以上に小型・軽量であり、後述のとおりバックグランドと同程度の空間線量率を与える線源であれば5秒前後で識別できる十分な感度を有する。さらに、今回開発された試作機は高価な半導体素子が使用されておらず、入手が容易で比較的安価なシンチレータと「光電子増倍管」(物質に光が当たると電子を放出する「光電効果」を利用した光センサ)を用いることで低コスト化が図られており、販売価格は従来のガンマカメラやコンプトンカメラが1000~3000万円であるのに対し、500万円以下になると見込まれいる。放射線管理区域内(空間線量率0.07μSv/h)において、試験用のCs-137の密封線源(1MBq)を特性X線カメラから約1.3mの距離に置いた場合、特性X線カメラがある位置ではサーベイメータで測定すると空間線量率が約0.05μSv/h増加し0.12μSv/hという測定値が出たことから、放射線管理区域内の空間線量率(0.07μSv/h)と密封線源が与える線量(0.05μSv/h)はほぼ同じ大きさだ。画像5は特性X線カメラの操作パネルを示したもので、左上の屋内風景が前述した条件において5秒間露光したものだ。この条件下では5秒前後で密封線源の方向が探知可能であることが示されている。カメラの使いやすさを考慮して、タブレットPCのタッチパネルから特性X線カメラを操作できるソフトウェアの開発も進められているという。タッチパネル上から、カメラ撮影と保存、放射性物質の分布状況の確認、X線エネルギー情報を確認することが可能だ。これまでの性能評価から現地の居住制限区域(空間線量率3.8-9.5μSv/h)において、直径1.5mにわたり周囲よりも10倍の放射性セシウムが蓄積している場所を、特性X線カメラは3mの距離から10分以内に計測が可能と予測されている。従って、ホットスポットを除染する際の前後で効果の確認に使用すれば有用であると考えられるという。例えば、放医研が開発に携わった高速ホットスポットモニタ「R-eye」によりホットスポットを探索し、特性X線カメラによりホットスポットの可視化と除染後の確認を行うことができると期待されるとした。また、原子炉廃止措置において作業で生じるがれきの汚染確認や作業現場での汚染管理に使用できるものと考えているという。今後は、試作機の製品化に向けて必要な技術の確立を行い、データ解析方法の改善も実施してさらに感度を向上させ、現地での試験を重ねてゆく予定とした。
2014年01月28日