博報堂とNTTデータは1月18日、事業会社向けの電力小売の全面自由化に向けたマーケティング・システム・ソリューション業務での協業に正式合意したと発表した。2016年4月に予定されている電力小売の全面自由化により、各家庭で電力会社や電力サービスを選択できるようになる。これに伴い、電力利用に関するマーケティング、その情報をマーケティングに活用する新たなサービスや商品が生まれていくと想定されている。博報堂は、2014年にエネルギーマーケティング推進室を設置し、生活者の電力需要調査や電力マーケティングコンサルティング事業を行っている。一方、NTTデータは電力事業に必要となる需給管理・CISなどの業務・機能をクラウドサービスで提供するアプリケーションプラットフォーム「ECONO-CREA(エコノクレア)」を開発しており、コンサルティング、BPOサービスと併せて2015年からサービス展開している。これまでも両社は、事業者向け業務支援サービスを共同で行っており、協業することで電力小売の全面自由化に伴う事業会社向けサービスの提供に注力する。NTTデータが有するECONO-CREA、各種ビッグデータ基盤および分析ノウハウと、博報堂が有する膨大な生活者データ(ビッグデータ)およびプランニング・ノウハウを掛け合わせることで、電力事業をシステムからマーケティング戦略、プロモーション戦略、事業戦略、IT戦略立案までトータルでサポートしていく。また、生活者の嗜好/行動特性を把握、マーケティングソリューションの提供につなげる。小売電気事業者に加え、電力小売の全面自由化に伴う新規参入会社へのソリューション提供、電力×異業種での新サービス創出なども連携し、推進していく。
2016年01月18日京都大学と和歌山県立医科大学による共同研究グループはこのほど、神経難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因タンパク質の異常構造を、特異的に認識して分解する仕組みを発見したと明らかにした。ALS病態の解明と治療法開発へつながる可能性があるという。同研究は、京都大学大学院 医学研究科の漆谷真准教授らのグループが実施したもので、英国科学誌「Scientific Reports」誌に掲載された。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、随意運動を司る神経がほぼ選択的に死滅し、全身の筋肉の萎縮と筋力低下を進行性にきたす神経難病。重篤な神経難病の一つであるが病態は不明で、根治的な治療法も存在しない。ただ、以前からALSの病巣に異常凝集物が蓄積する現象は知られており、近年 「TDP-43」というタンパク質が主な成分と判明したことから、治療標的として注目を浴びている。研究チームは今回、がん関連タンパク質「von Hippel Lindau(VHL: がん抑制遺伝子の一つ)」と「Cullin2(CUL2)」からなるユビキチンリガーゼ複合体が、ALSで出現する病的なTDP-43と結合し、ユビキチン化とプロテアソームでの分解を促進することを発見した。標識した TDP-43タンパク質を「ユビキチン・プロテアソーム系」(ユビキチンという小さなタンパク質を標識に用いて、標的となるタンパク質を特異的に分解するタンパク質分解機構)に必要な分子を含む細胞破砕液と混ぜてユビキチン化反応を起こし、ReCLIP法という方法でユビキチン化の過程でTDP-43と架橋剤で結合させられたタンパク質を回収。結合を解離させた後に質量解析を行い、アミノ酸配列を同定した。さらに、同定された分子が病的なTDP-43のユビキチン化や分解、さらにALSの病態とどのように関連するかを調べるべく、培養細胞の遺伝子導入実験や独自の抗体を用いたALS患者組織の組織化学解析を行った。質量解析の結果、VHLとCUL2からなるユビキチンリガーゼ複合体が、ALSで出現する病的なTDP-43と結合し、ユビキチン化とプロテアソームでの分解を促進することを発見した。また、TDP-43分子の中で異常構造の目印となる配列(246番グルタミン)を特定。一方で、培養細胞ではVHLタンパク質のみが過剰になると、むしろTDP-43は異常に蓄積し、病的な凝集および封入体形成を促進するというALS病態の悪化を再現した。さらにTDP-43 の機能が低下すると、VHLタンパク量が増加することが確認されたという。ALS患者脊髄の観察により、VHLは「オリゴデンドロサイト」というグリア細胞(神経細胞の周囲にあり、形態維持や栄養補給を行う細胞)内の細胞質に存在し、「グリア細胞質封入体(GCI)」と呼ばれる病的な封入体で異常なTDP-43と共存しており、VHL/CUL2の機能不全が同細胞の凝集体形成の背景にあることが示唆された。以上の結果より、正常人が持つTDP-43タンパク質がALS発症に関係する異常構造体に転換した際に、それを認識し排除する仕組みが存在し、その一つがVHL/CUL2 複合体であることが示されたという。
2016年01月15日NEC(日本電気)は1月12日、欧州における次世代通信規格「5G」の共同研究への参画状況を公開した。NECは、5GPPP(Public-Private Partnership)の共同研究プロジェクトに参画。このプロジェクトでは、欧州における第5世代移動通信方式のコンセプトや技術検討、研究開発の推進が行われている。2015年より本格的な活動が始まっており、2020年以降に5Gを活用した通信インフラの実現を目指し、同プロジェクトは約7億ユーロの資金提供を欧州委員会から受けている。5Gは4G時代より利用拡大が見込まれる大容量データ通信やIoTに関する技術拡張が行われており、4K・8K動画のストリーミング配信、高いデータレートや大きなシステム容量が必要となる映像監視、超低遅延や高い信頼性が求められる自動車運転、膨大な数のIoTデバイスを利用するインフラ監視などをターゲットに据えている。NECは5GPPPの全19プロジェクト中、5つのプロジェクトに参画。うち2つ(SONATA、XHaul)ではプロジェクトリーダーを務めているという。SONATAネットワークサービスのチェーニングやオーケストレーションなどを行う柔軟で拡張性の高い仮想化ネットワークの開発・検証XHaulC-RAN(Centralized-RAN)における無線アクセスとコアネットワーク機能、モバイルバックホール・フロントホールのネットワークデザインの開発5G NORMA基地局からコアネットワークまでに適用できる5Gを活用したネットワークの概念の開発・検証FLEX5G WARE5Gネットワーク向けに拡張性と仮想化を実現するハードウェア、ソフトウェア、プラットフォームの開発Superfluidity通信遅延を短縮化し高速レスポンスを実現するモバイルエッジコンピューティング(MEC、注2)技術の開発同社は「5GをIoTやシームレスなブロードバンドの実現に必要不可欠な要素ととらえて、今後も国内外で研究開発を進めるとともに、さまざまな業種との連携を通して、5Gの実用化に貢献する」としている。
2016年01月12日ロームは1月12日、大学や高等専門学校、公的研究機関に所属する若手研究者を対象にした研究公募制度を創設し、募集を開始すると発表した。対象となるテーマは、センサやパワーデバイス、無線通信など6つの分野。研究費は内容に応じて決定されるが、1件あたり200万円/年が上限で、合計20件程度を採択するとしている。2015年度内に採択し、研究期間は2016年4月に研究開始で、1~2年以内を想定している。研究テーマは以下の通り:光エレクトロニクス・フォトニクス研究分野パワーエレクトロニクス研究分野異種接合研究分野MEMS研究分野省エネLSI研究分野無線通信研究分野研究契約は単年度契約となるが、1年目末時点の状況により1年延長するかどうかが採択される。また、採択テーマの中から研究内容に応じて、研究費の増額や期間の延長などを含む発展共同研究とする精度も準備しているとのこと。採択された場合、半年に1回の研究報告会の実施と、各年度末に研究報告書の作成が求められる。なお、応募用紙は同社Webサイトより応募用紙をダウンロード、必要事項を記入の上、Eメールで提出する。書面による1次審査を通過したテーマについて応募者とローム担当者が面談の上、最終審査を実施する。応募の締め切りは2016年2月29日。
2016年01月12日トヨタ自動車は1月5日、米国に設立した人工知能技術の研究・開発を行う新会社の「Toyota Research Institute(TRI)」の体制および進捗状況を公表した。TRIのCEOであるギル・プラット(Gill A. Pratt)氏が米国ラスベガスで開催されている「CES 2016」にて説明した。TRIは1月、米国カリフォルニア州パロ・アルトおよび、マサチューセッツ州ケンブリッジにそれぞれ拠点を設ける。トヨタは昨年9月、スタンフォード大学およびマサチューセッツ工科大学(MIT)との人工知能の連携研究を行うと公表したが、今回の拠点はそれぞれ両大学の近くに位置しているため、TRIと両大学との結びつきがさらに強いものになると考えているという。下表は現時点における、TRIに参画する主なメンバー、研究者。また、TRIでの研究推進にあたり、さまざまな分野の外部有識者からの助言を受けるための組織として、アドバイザリー・ボードを設置。下表は現時点での主なメンバー。TRIは当面、5年間で約10億ドルの予算のもと主に4つの目標を掲げ、人工知能研究に取り組んでいく。具体的には(1)「事故を起こさないクルマ」をつくるという究極の目標に向け、クルマの安全性を向上させるとともに、(2)これまで以上に幅広い層の方々に運転の機会を提供できるよう、クルマをより利用しやすいものにすべく、尽力していく。また、(3)モビリティ技術を活用した屋内用ロボットの開発に取り組むほか、(4)人工知能や機械学習の知見を利用し、科学的・原理的な研究を加速させることを目指す。一方、スタンフォード大学およびMITとの連携研究についても、具体的な研究を始めるべく合計約30のプロジェクトを立ち上げるなど、着実に歩みを進めている。TRIのプラットCEOは「従来、ハードウェアがモビリティ技術の向上には最も重要な要素であったが、今日ではソフトウェアやデータの重要性が徐々に増している。コンピューター科学やロボット開発の先端で長年の経験のあるメンバーがTRIに参画するが、それでもわれわれはまだスタート地点に立ったばかりだ。トヨタが今回の案件にここまで力を入れているのは、安全で信頼に足る自動運転技術の開発を非常に重要視しているからである。生活のさまざまなシーンにおいて、すべての人々により良いモビリティをご提供することで、より豊かな暮らしの実現に貢献することができると確信している」と語った。
2016年01月06日今回のテーマは「兼業漫画家がはじめてコラムを書いた日」である。私は現在、このように漫画家の傍ら文章の仕事もさせてもらっているが、そもそもコラムを書き始めたきっかけはなんだったのか、という話だ。○コラムニスト・カレー沢薫の誕生簡単に言えば、私を漫画家デビューさせた週刊モーニング初代担当が、私のブログなどを見て「文章も面白いからコラムの連載をしてはどうか」と言い出したのが始まりである。それを真に受けて、連載用のコラムを書き貯め始めたのだが、それから1年ぐらい経っても連載は始まらなかった。その頃にはコラムを書くのは止めて、サバイバルナイフを研ぎ、色とりどりの重火器を集めることに終始していたのだが、それが担当に向かって火を噴く前に、その後任の担当の尽力により初コラム連載がスタートした。(今もモーニングはこの二人が担当である)そこから、他のところでも文章の仕事がもらえるようになった、というわけだ。つまり漫画家になれたのもライターになれたのも、全部モーニング担当らのおかげ、ということだ。ならば平素から「担当殺す」などとうそぶくのは恩知らずも良いところではないかと思われるかもしれないが、私は担当に対し感謝すべきことは非常に感謝しており、ポイントにすると5億点ほど感謝している。しかし殺意ポイントが2兆点あるので、トータルで「殺す」という結論になっているだけである。性格と顔が100点満点のイケメンでも、年収ゼロ・借金100万なら結婚相手としてはマイナス99万9千8百点になるのと同じである。何事もトータルが肝心なのだ。作家と担当の軋轢と言えば、担当に原稿を紛失された、無断使用された、原稿料を横領された、追及したら逆切れされたなど、全く笑えないものも散見される。それに比べれば私の担当がしたことなど全く大したことではなく、むしろ私の逆恨みであることも多いだろう。そして何より、私の担当はこちらが苦言を呈すれば言い訳せずに謝罪してくれるし、刺せば血が出ると思うので、それだけでも有能だ。また、今まで担当に横柄な態度を取られたこともない。不真面目な担当は一人もおらず、真面目すぎてふざけているより性質が悪い人ばかりだ。このように、私は漫画の才能には恵まれなかった分、担当には非常に恵まれている。担当全員を生贄に捧げるので、神は今すぐ私に漫画の才能を授けてほしい。○カレー沢氏のJK時代と「褒め仲間」コラムの仕事を始めたきっかけは、漫画の担当が私に文章の才能を見出したという幻覚症状のおかげだったわけだが、そもそも文章を書き始めたのはいつからかというと、古くは高校生の時に始めたホームページからだと思う。ホームページの内容に関してはもはや説明いらずの「乙女ゲーの二次創作サイト」だが、そこで日記も書いていたのだ。書いている内容は多分今と大差ないと思うが、そこはJKである。顔文字を使ったり、笑って欲しいところではフォントを赤字特大にしたり、語尾に(爆)をつけたりと、今読み返したらリアルに(爆)するものであることは間違いない。当時もその日記を「面白い」と言ってくれる人がいたため、漫画と並行して文章も書き続けてきたのだと思う。しかし、皆さんも「どう見てもカワイくない女同士がお互いを『カワイイカワイイ』と褒め合っている怪奇現象」を1度は見たことがあると思うが、アマチュア創作界隈にも同じ文化がある。自分の作品を読んでもらい、褒めてもらうために、まず相手の作品を読み褒めるのだ。何もしなくても褒めてもらえる上手い人ならともかく、そうでもない者にとってこの褒め仲間というのは大切なものであり、ギブアンドテイクとしては実に正しい。よって、日記を褒められたと言っても、「カレー沢殿!昨夜うpされた新作イラスト爆萌えでござったぞ(核爆)」「いやいやエリザベス閣下(仮名)の裏創作もドチャシコで拙者続きを全裸待機(><)」みたいな褒め合いの中で、「しかしカレー沢殿は日記も面白いでござるな、それがし噴飯ものの腹筋崩壊で候!」みたいなノリで言われた可能性が高く、端的に言えば「そんなに面白くないけどギブアンドテイクのために言った」か、むしろ肝心の二次創作に褒めるところがなかったので、苦し紛れにそこを褒めたと考える方が妥当である。しかし、現に私はそれを真に受けて、漫画だけでなく文章を書き続けていたわけである。そもそも絵を描き始めたのだって、小学二年生の時に絵画コンクールで特選を取り、すごく褒められたため、自分には絵の才能があると錯覚したためだ。教育に携わる方は、「褒めて伸びるタイプもいるが、褒めることによりドンドン道を踏み外す奴もいる」ということをご留意いただければ幸いである。ちなみに担当が面白いと言ってくれたブログだが、ニートだったため、アフィリエイトで稼ぐためにやっていたものである。原動力は常に金と承認欲求、これだけは一貫してブレていない。<作者プロフィール>カレー沢薫漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。連載作品「やわらかい。課長起田総司」単行本は1~2巻まで発売中。10月15日にエッセイ「負ける技術」文庫版を発売した。「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2016年1月12日(火)掲載予定です。
2016年01月05日理化学研究所(理研)は12月31日、理研 仁科加速器研究センター超重元素研究グループの森田浩介グループディレクター(九州大学大学院理学研究院教授)を中心とする研究グループ(森田グループ)が発見した「113番元素」を、国際機関が新元素であると認定し、同グループに同元素の命名権が与えられたと発表した。欧米諸国以外の研究グループに命名権が与えられるのは初めてで、元素周期表にアジアの国としては初めて、日本発の元素が加わることとなる。同グループはこれまで3度、新元素の合成を報告していたが、ロシアと米国の共同研究グループも同元素の合成を別手法により行い、その発見を主張していた。今回の決定は、国際純正・応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)」と「国際純粋・応用物理学連合(IUPAP:International Union of Pure and Applied Physics)」が推薦する委員で組織された合同作業部会「JWP(Joint Working Party)」が、2つの研究グループの研究結果を審議し、森田グループが観測した113番元素が確実に既知の原子核につながっているなどの理由から、発見者であるとIUPAPに報告し、IUPAPがそれを認めたことによる。今後、森田グループは113番元素の名前および元素記号を提案し、それをIUPAC/IUPAPが審査。妥当と認められれば、約1年後に新元素名がIUPAC/IUPAPより発表される予定だという。なお、これまでの研究から元素番号1の水素から同112のコペルニシウムまでの112種類と原子番号114のフレロビウム、原子番号116のリバモリウムの合計114種類が認定されているが、未発見の119番以上の新元素探索や未知の領域にある原子核の探索など、まだ未踏分野が多く残されており、理研では、今後も加速器の改良を進め、そうした研究を進めていきたいとしている。
2015年12月31日産業技術総合研究所(産総研)は12月21日、生きた細胞内に導入したDNAが分解される機構をリアルタイムに可視化する技術を開発したと発表した。同成果は、同研究所 バイオメディカル研究部門 バイオアナリティカル研究グループ 佐々木章 研究員と、北海道大学 先端生命科学研究院 金城政孝 教授ら、理化学研究所 生命システム研究センター 神隆 チームリーダーらの研究グループによるもので、9月24日付けの英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。今回の研究では、最先端の顕微鏡技術であるラスター画像相互相関分光法(ccRICS)の原理を利用し、多数のタイムラプス顕微鏡画像を一括して解析し動画とするプログラムを開発した。これにより、生きた細胞のなかでダイナミックに進行する生命現象である「外来DNAの分解」を時空間的に可視化することに成功した。DNAが分解されたかどうか判別するためには、導入する外来DNAを2色の蛍光色素で標識し、ccRICSで分子の運動を観測する。この2色の蛍光シグナルが同時に変動するか、別々に変動するかを解析することで2色の蛍光色素の分離、すなわちDNAの分解を検出することができる。今回は研究対象としてMEF細胞とHEK293細胞を使用。MEF細胞は遺伝子導入の効率が悪く、HEK293は遺伝子導入によるタンパク質発現が容易な細胞として知られている。この効率の差には、細胞内のDNA分解活性が関与しているという仮説を立て、作製した蛍光標識DNAをMEF細胞とHEK293細胞に注射しccRICSでDNAの分解を可視化した。この結果、MEF細胞ではDNAが細胞質において5分以内に分解を受けており、一方でHEK293では顕著な分解は見られなかった。これは見いだした細胞内でのDNA分解活性が外来遺伝子発現効率と負の相関を持つという仮説を支持することに加え、細胞の種類によって細胞質内のDNA分解活性が異なるという新しい概念の発見であるといえる。また、遺伝子導入に用いるDNAは今回のモデルDNAよりも大きく移動速度が遅いため、細胞質での滞留時間が長くなる。したがって、このような分解を制御することは外来遺伝子発現効率の向上につながる可能性がある。同研究チームは今後、DNAの分解メカニズムがどの分子によって担われているかを明らかにし、遺伝子治療や核酸医薬だけでなく、DNA代謝と疾患の関係などに広く展開していくことを目指すとしている。
2015年12月22日電通は12月1日、電通国際情報サービス(ISID)との共同で、ユーザーが自由にアングルを切り替えて配信映像を視聴可能な「マルチアングルキャッチアップ配信」及び、同サービスを利用する広告配信である「Viewpoint Release Ad(ビューポイント・リリース・アド)」を実施すると発表した。新サービスでは、両社が開発した多視点動画配信ソリューションである「VIXT(ビクスト)」を利用しているとのこと。メディアの多様化とテクノロジーの進化に伴い、これまで両社は、インターネット環境における映像の撮影・編集・記録・配信・視聴の各段階を統合的に捉え直すサービスやソリューションの開発・提供を継続的に行ってきた。VIXTはその1つで、これまであまり注目されてこなかったというユーザーの視点に注目し、多様な角度から同時に撮影した動画コンテンツを、ユーザー自身が自由に視点を切り替えて視聴できるように開発した。ユーザーが個別に編集したコンテンツをソーシャルにシェアできるという特長を持ち、カメラごとの視聴率であるアングル視聴率を計測できることから、ユーザー内での注目度が高いカメラ視点をリアルタイムに把握・共有することも可能としている。新たな広告配信は、テレビ朝日と新日本プロレスリング(新日本プロレス)のコンテンツ協力を受け、マルチアングルと連動した広告配信の1つとして、任意のカメラ視点に広告を配信して広告を視聴するとそのカメラ視点の本編映像を解放するもの。2015年12月1日から2016年1月4日までの期間に、テレビ朝日と新日本プロレスが共同運営するサイトである「新日本プロレスワールド」内で実施する。さらに、複数の映像を1つの画面で同時配信し視聴者が動的に切り替え可能な映像において、アングルごとの視聴ログや配信プレイヤー上の操作ログなどを電通及びISID独自という集計ロジックで計測する。計測内容を詳細に分析することで、マルチアングル配信や360°自由視点映像など同じコンテンツで視聴者が個々に好きな視点やシーンを視聴可能な映像における、広告配信の最適化についても検証していくという。
2015年12月02日東京工業大学は11月30日、高分解能MEMS加速度センサーをCMOS-LSI直上に1チップ集積し、従来のMEMS技術では困難だった1G以下の高分解能検知ををワンチップのMEMSセンサーで実現したことを明かした。同成果は同大異種機能集積研究センターの益一哉 センター長と山根大輔 助教、町田克之 連携教授、東京大学先端科学技術研究センターの年吉洋 教授、NTTアドバンステクノロジらの共同研究によるもので、11月上旬に韓国・釜山で開催された「IEEE SENSORS 2015」で発表した。加速度センサーの検出性能は錘の質量に比例するため、錘サイズ小型化と検出分解能向上にトレードオフが生じる。従来のシリコンMEMS加速度センサーでは、高い検出分解能を得るために錘サイズが増大し、小型化が困難だった。また、汎用的な静電容量型加速度センサーを用いて微小加速度を検出する場合、寄生容量を大幅に低減する必要があるが、シリコンMEMS技術では錘サイズが大きく、センサー回路からなるLSIと集積する際に寄生容量が増大するなどの課題があった。同研究では、高密度の金を錘に用いた小型・高分解能のMEMSデバイスをCMOS-LSI上にワンチップ集積化することで、従来のMEMS加速度センサーと同等のサイズで1G以下の高分解能検知を実現可能とし、錘サイズ小型化と検出分解能向上の両立に成功。MEMSとCMOS-LSIの集積化に半導体微細加工技術と電解金めっきを用いており、超小型・超高分解能加速度センサーの汎用化技術として期待できるという。同研究グループは、超小型・超高分解能の小型加速度センサーの実現は医療・ヘルスケア、インフラ診断、移動体制御、ロボット応用などにおいて新しいデバイス・システム開発につながることが期待できるとしている。
2015年12月01日ベルギーの独立系半導体・ナノテクノロジ―研究機関imecが11月9日、東京で年次事業説明会「imec Technology Forum 2015 Japan」を開催した(図1)。imecは、毎年、この種の催しを、ベルギー、米国、韓国、台湾でも行っており、日本での開催は今年で15回を迎えた。今回のメインテーマは「明日を築く人々のために - スマートリビングを目指して」となっていた。冒頭の基調講演で、imecのCEO兼社長を務めるLuc Van den hove氏が「From the Happy Few to the Happy Many(少数の幸福から多数の幸福へ)」と題してimecの研究方針と今までの成果の一端を紹介した(図2)。○多数の幸福をもたらす"直観的"IoT「今回のimec技術フォーラムのメインテーマは"スマートリビング"である。今から1世紀余り前、1900年当時は大金持ちの豪邸で、執事や召使いが少数の裕福な人々の幸福のために奉仕していた。その後、この状況を変える原動力となったのが半導体をはじめとするテクノロジーだ。テクノロジーには多くの人々の生活を容易にし、健康にし、快適にし、安全にし、持続可能にしてくれる効用がある。昔は、ごくわずかな人の手となり足となって幸福をもたらした執事や召使いの役割を今はスマートデバイスが果たしており、多くの人々の生活の質を向上させてくれる。これからは、スマートデバイスが、より多くの人に幸福をもたらし、安全や健康を保ち、持続可能な社会を実現することに寄与する」と、テクノロジーの力で、より多くの人々に快適で幸せな生活、スマートリビングをもたらすことを研究の目標に掲げた。「そうした未来に向けては、IoT(Internet of Things)をもっと使いやすく、私たちを優しく包み、その存在を誰も意識しないほど環境に溶け込んだ『スマートIoT』にしなければならない。これが、imecが提唱している『Intuitive Internet of Things(I2oT)』、すなわち"直観的な"モノのインターネットである。 誰も指示をせずにその存在を意識さえしないのに、私たちが何を欲しているか、どんな環境下にあるかを理解し、人手を経ずに自動的に何らかの処理を行う。つまり、とても控えめな方法で人々とその周辺環境を見守り、快適で安全、健康で持続可能な環境を提供し、人々を支援してくれるIoTである」とVan den hove氏はIoTの目指すべき方向性を示した。○シニアのために - ウェアラブル端末で健康と安全を守るそして、同氏は、シニアや病人や子供のために、imec はどんな研究を行うか説明した。「I2oTを具現化するための手段として、高齢者(シニア)世代にとってはとりわけ、健康と安全を確保するためのウェアラブル端末が重要である。ウェアラブル端末の市場規模は、2020年までに800億ドルに達すると言われている。 ウェアラブル端末は、それこそ生活に溶け込むような、直観的なものでなくてはならない。そのための要件としては(1)インビジブル(存在を意識させない)、(2)低コスト、(3)超低電力、(4)マルチパラメーター(同時に多項目をセンシングできる)、(5)測定の正確さ、である。imecはかねて心電測定パッチや脳波測定ヘッドホーンはじめ多彩なセンシング技術を開発しており、韓国Samsung Electronicsのシムバンドに採用された実績がある(図3)。imecの姉妹機関であるオランダHolst Centreとは、装着感なく心電や活動量を計測可能で何度も洗濯可能なスマートTシャツ(図4)や大気汚染センシングの実証実験にも取り組んでいる(図5)。今後はシニア世代の健康と安全をそっとサポートする技術として、I2OTウェアラブル端末研究に関する研究にさらに注力する。その要素技術として、ビッグデータ解析や近距離無線通信にも力を入れる。後者ではすでに、業界最小クラスの低消費電力をうたうBLE(Bluetooth Low Energy)技術を開発済みだ。
2015年12月01日米戦略軍の統合宇宙運用センター(JSpOC)は11月25日(現地時間)、米海洋気象庁(NOAA)の気象衛星「NOAA-16」が軌道上で分解したと発表した。詳しい状況はまだ不明だが、スペース・デブリ(宇宙ゴミ)が発生したことが確認されている。JSpOCによると、分解したのは日本時間11月25日17時16分(協定世界時同日8時16分)とされる。JSpOCは世界各地に設けられたレーダーや望遠鏡で、地球の周回軌道上にある大小さまざまな物体の監視を行っている。現時点で、分解の原因は明らかになっていない。考えられる原因として、他の人工衛星やデブリとの衝突や、衛星内の燃料やバッテリーの爆発などが挙げられる。また、発生したデブリの数や軌道も明らかになっていないが、26日朝の段階でJSpOCは「現時点では、NOAA-16の破片が他の衛星に危険を及ぼすことはない」と発表している。ただ、NOAA-16が周回していた高度約850km、軌道傾斜角98度の太陽同期軌道は、地球の大気がほとんどないため、デブリの軌道にもよるが、おおむね年単位で軌道に留まり続けることになると見られる。また、摂動などの影響で軌道も変わるため、いずれ他の衛星などと衝突する可能性がないわけではない。NOAA-16はロッキード・マーティンが開発した気象衛星で、2000年に打ち上げられた。設計寿命は2年とされていたが、その予定をはるかに超えて運用が続けられ、2005年には同じ年の5月に打ち上げられた「NOAA-18」に気象観測ミッションを引き継ぎ、以降は予備機として運用されていた。しかし、2014年6月5日に衛星が故障し、復旧の見込みが立たなかったため、6月9日に運用を終了していた。○同型機はバッテリーの爆発でデブリ化NOAA-16は「タイロスN」という衛星バスを使用して造られているが、このバスを使う衛星の一部には、設計上の欠陥により、配線を留めているハーネスが外れ、配線がバッテリーに触れて短絡(ショート)を起こし、バッテリーが過充電状態となって爆発する可能性があることがわかっている。実際に過去には、「NOAA-6」、「NOAA-7」、「NOAA-8」でバッテリーの爆発が原因と見られる故障が起き、少数ながらデブリが発生したことも確認されている。また、米国防総省の気象衛星「DMSP」のうち、同じタイロスNバスを使っている「DMSP F11」が2004年に、「DMSP F13」が2015年に、バッテリーの爆発が原因と見られる事故によってデブリが発生している。そのため、今回のNOAA-16も同じ原因である可能性がある。参考・Space-Track.Org・JSpOC(@JointSpaceOps)さん | Twitter・POES・NOAA retires NOAA-16 polar satellite
2015年11月26日ニコンは11月24日、研究用倒立顕微鏡「ECLIPSE Ts2R(エクリプスTs2R)」を発売すると発表した。ECLIPSE Ts2Rは、研究用倒立顕微鏡シリーズの新しいラインナップとなるもので、位相差観察、微分干渉観察、NAMC観察に加え、がん細胞や受精卵などの厚みのある標本でも自然なコントラストで観察できる「エンボスコントラスト観察」を開発。ガラス容器だけでなくプラスティック容器にも対応している。また、同社の研究用倒立顕微鏡「ECLIPSE Ti」と比較し、筐体の奥行きと高さを約10%小型化。そのほか、本体前面のボタンのみで透過/落射照明の切り替えとオン/オフが可能になるなど、操作性も向上した。位相差観察モデルの「ECLIPSE Ts2R」が113万3200円から、蛍光観察モデルの「ECLIPSE Ts2R-FL」が229万7100円から(いずれも税別)となっている。発売開始は2016年1月を予定。なお同製品は11月26日~27日に東京で開催される日本受精着床学会、12月1日~4日に神戸で開催される日本分子生物学会、12月12日~15日に米国・サンディエゴで開催される米国細胞生物学会「ASCB」に出展される。
2015年11月24日晩婚化が進み、ひとりのライフスタイルを満喫する「おひとりさま」という言葉も定着しました。しかし、そんなおひとりさまに関するショッキングな研究結果がこのほどオーストラリアで発表され、波紋を広げています。今回は、おひとりさまにとって少々耳の痛いテーマを取り上げます。■ひとり暮らしする人は栄養が偏りやすい傾向オーストラリアにあるクイーンズランド工科大学で運動栄養科学を研究するキャサリン・ハンナ博士とペーター・コリンズ博士は、ひとり暮らしの人と栄養摂取の関連を調べるため、41もの食生活に関する先行研究を分析。その結果、ひとり暮らしをしていると不摂生な食生活に陥りやすい、ということが科学的にも立証されたというのです。研究を指揮してきたハンナ博士は、「今回の研究で、ひとり暮らしをする人はバラエティ豊かな栄養摂取をしていない傾向が強く、2人以上の世帯よりもフルーツや野菜、魚など心身の健康に欠かせない栄養素を持つ食品を買っていないことがわかりました」と研究結果に言及。さらに、「男性よりも女性の方が、ひとり暮らしで不摂生な食生活に陥る傾向が強い」とも指摘しています。これは聞き捨てならない問題です。詳しく見ていきましょう。■おひとりさまの食卓に立ちはだかる3つの壁ひとり暮らしの人が不摂生な食生活に陥りやすい原因として、ハンナ博士らの研究チームは、ひとり暮らしの人の多くには次の3点のうちどれかが不足している、と指摘します。(1)健康的な食生活を送るのに必要な料理の経験や知識(2)自分ひとりのためだけに料理をするモチベーション(時間的・精神的な余裕)(3)バラエティ豊かな食材を買うだけの経済的な余裕ハンナ博士はこう分析します。「たとえば(2)が欠けていると、手抜き料理や、出来合いのものですませたりして主要栄養素を欠いた食事になりがちです。ひとり暮らしにちょうどよい分量の食材を上手に揃え、やりくりするには(1)や(3)も欠かせません。それらをカバーするだけの周囲の協力が得られないこともひとり暮らしのデメリット。たとえば、買い物に一緒に行ってくれる存在があれば、状況は違ってきます。また、(3)はフルーツや野菜、魚をあまり買わないことの説明にもなります。とくにこうした生鮮食品は、より頻繁に買い物したり消費したりする必要があり、上手にやりくりしないと経済的な負担になり得ます」また、ひとり暮らしの心理的な側面も原因になると指摘。たとえば高齢者の場合「孤独」という感情が、不摂生な生活の大きな要因であることを報告しています。■ごはんのまとめ炊きが体重増の落とし穴に!ハッキリ言えば「おひとりさまは太りやすい」という今回の研究報告。これには「心当たりが大いにある」という方も少なくないのでは?さらに日本の場合、ひとり暮らしの自炊生活で落とし穴になりやすいのが「ごはん」。ひとり分、1食分よりもまとめて炊いた方がおいしく炊きあがるもの。小分けして冷凍するなど有効に使えればよいのですが、『Suzie』が読者に行ったアンケートでも、「2~3日分にと思ってごはんを3合炊いたが、晩ごはんを鍋ものにしたらごはんが進みすぎて食べすぎてしまった」(35歳、女性)、「明日の朝用にとごはんを多めに炊いておにぎりを握っても、夜のうちに食べてしまう。誰かと暮らすと自制できるので、結婚にあこがれる」(31歳、女性)などの声が上がっています。■健康的な食生活に協力できる仲間を見つける今回の研究でハンナ博士は、ひとり暮らしの人にとって健康的な食生活を妨げるものを取り除く方法はいくつかある、と言います。「まずは健康的な食生活を手に入れる力、つまり(1)を高めることがとても有効です。また、誰かと食事をとる機会を積極的に作ることも、健康的な食生活を送るためによい方法です」料理の腕を急にアップさせることは難しいですが、同じ目的の友人と定期的に一緒に食事を作って食べれば、お互いにお目付け役になれるばかりでなく食材の有効活用にもなり、料理へのモチベーションアップも期待できます。ただし注意点も。決して非日常のパーティーにはしないこと。かえってカロリー過多になってしまいます。お酒の飲みすぎなどもってのほかです。工夫して、安くておいしくて健康的なおひとりさまライフを送りましょう!(文/よりみちこ)【参考】※How being single could make you FAT: People who live alone ‘eat fewer fruit and veg, bigger portions and more ready meals’―Daily Mail Online
2015年11月10日カネカは11月9日、次世代半導体や太陽光発電に関する研究開発を行うベルギーのimecと包括的な研究協力関係を強化、拡大する3年間の契約を9月1日に締結したと発表した。カネカは、2009年にimecにカネカ太陽電池研究室を設立し、imecの太陽電池研究者と技術交流を行ってきた。また、imecのシリコン太陽電池研究施設を活用し、高変換効率太陽電池セルの研究を進めており、今年9月には銅電極を用いた両面コンタクト型太陽電池の実用セルサイズにおいて変換効率25.1%を達成するなどの成果をあげている。今回の契約は各種研究プロジェクトを速やかに開始するための包括的契約内容を骨子とし、カネカは、同契約によるimecとの研究協力を通して、次世代太陽電池研究に加え、医療機器などのライフサイエンス分野とフィルムエレクトロニクス分野をはじめとする新規技術分野において新しい研究・開発のシーズを探索し、各種研究プロジェクトを立ち上げることを目指すとしている。
2015年11月09日トヨタ自動車(トヨタ)は11月6日、2016年1月に人工知能技術の研究・開発の拠点として、新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.(TRI)」を米カリフォルニア州パロ・アルトに設立すると発表した。新会社は約200名規模となる予定で、今後5年間で約10億ドルを投入する。TRIでは、人工知能技術を通じてビッグデータを活用することで、社会のさまざまな課題を解決し、将来の持続可能なモビリティ社会の実現ならびに、誰もが安心して安全・自由に、より豊かに暮らすことができる社会の実現を目指し、革新的な商品の企画・開発を進めるという。また、新会社のCEOにはトヨタのExecutive Technical Advisorであるギル・プラット氏が就任し、マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学に設立した研究センターとの連携を進めるなど、研究体制を強化していく。プラット氏は「TRIでは、事故を起こさないクルマ、誰もが移動の自由を享受できるモビリティ、高齢者の尊厳ある老後をサポートするロボットなど、人と協調できる人工知能技術の開発に取り組む。さらには、新材料探索・生産管理システムなど幅広い領域での応用に向けた技術開発を行い、社会に貢献したい」とコメントしている。
2015年11月06日トヨタ自動車は11月6日、2016年1月に人工知能技術の研究・開発の拠点として、新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE(TRI)」を米国カリフォルニア州のシリコンバレーに設立し、今後5年間で約10億ドルを投入することを発表した。人工知能技術は、これからの産業技術の基盤を担うとともに、新たな産業を創出すると期待される重要技術である。今後トヨタは、TRIを技術イノベーションの拠点と位置づけ、人工知能技術に関する研究・開発を加速させる。具体的には、人工知能技術を通じてビッグデータを活用することにより、これからの社会が直面するさまざまな課題を解決し、将来の持続可能なモビリティ社会の実現はもとより、誰もが安心して安全・自由に、より豊かに暮らすことができる社会の実現を目指し、革新的な商品の企画・開発を進める方針だ。トヨタのExecutive Technical Advisorであるギル・プラット氏がTRIのCEOに就任し、優秀な研究者を集めるとともに、マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学に設立した研究センターとの連携を進めるなど、研究体制を強化していく。
2015年11月06日マクロミルは10月13日、早稲田大学データサイエンス研究所と共同研究を開始することを発表した。同研究は、「統計学及びマーケティングにおける非集計データの高次利用」がテーマとなっており、マクロミル保有の購買データならびに意識調査データをもとに「データ・サイエンスに関する教材の開発」「数理統計学・機械学習の理論並び実証研究」「消費者行動のモデル化に関する実証研究」「マーケティング実務における意思決定支援のためのデータ活用に関する研究」といった項目が実施される。一部の研究においては、マクロミルのアナリストやリサーチャーが関わり、知見を活かすことで可能性の拡大を目指していくとしている。
2015年10月14日防衛省は9月25日、装備品への適用面から着目される大学、国立研究開発法人などの研究機関や企業などにおける独創的な研究を発掘し、将来有望な研究の育成を目指して2015年度より開始した安全保障技術研究推進制度において9件の研究課題を採択したと発表した。募集期間は2015年7月8日から8月12日で、応募総数は109件。大学などから58件、独立行政法人などの公的研究機関から22件、そして民間企業などから29件の応募があったという。なお、今回採択された9件の研究テーマと研究代表機関は以下の通り。
2015年09月26日米iFixitが第4世代の「Apple TV」の分解レポートを公開した。モジュラー構造の修理しやすいデザインになっており、iFixitは修理可能(Repairability)スコアに8点(最高10点)という高スコアをつけた。第4世代のApple TVはプロセッサにA8を搭載、tvOSで動作し、サードパーティがApple TV向けのアプリを開発できる。発売予定時期は10月下旬だ。パーツや筐体の固定に接着が用いられているのが近年のApple製品の修理を難しくしていたが、第4世代のApple TVでは接着が最小限にとどめられている。底面のふたは爪だけで止められているので簡単に取り外せる。ふたを開けるとロジックボードが現れる。ロジックボードの固定などに用いられているネジは一般的なTorxネジで、ツールの入手が難しい特殊なネジは一切使われていない。第2・3世代モデルの厚みが23ミリであるのに対して第4世代モデルは35ミリと厚みが増したが、A5チップからA8チップにアップグレードされ、ゲームやマルチメディアにより活用されるようになるのが原因であるとiFixitは見ている。ロジックボードを外すと、熱を逃がすための大きなヒートシンクが出てくる。ヒートシンクには電源ユニットが統合されており、電源の熱もヒートシンクが吸収する。電源は第2・3世代の3.4V (1.75A)から12V (0.917A)に変更された。iFixitによると、ヒートシンク/電源とロジックボードがケーブルやコードで結ばれていない。ロジックボードをヒートシンクに固定するネジの軸がケーブルなどの代わりになっているとiFixitは推測している。そのためネジを外すだけで、ケーブルを抜いたりせずに簡単にパーツを取り外して交換できる。リモコン「Siri Remote」はケースが接着されており、Apple TV本体に比べるとケースを外すのが一苦労である。中はICとボタンの基板、充電池(410mAh)とLightningポートの2つのパーツで構成される。電池とLightningポートはしっかりと接着されているが、ロジックボードにハンダ付けされてはいないので「交換の費用は抑えられるだろう」としている。Siri RemotoのチップはARM Cortex-M3を用いたST Microelectronics STM32L 151QD、タッチスクリーンコントローラにiPhone 5シリーズやiPad Airと同じBroadcom BCM5976C1KUB6Gを採用している。
2015年09月23日ジグソーとFFRIは9月16日、IoTセキュリティ分野における提携を発表した。第一弾として、IoTセキュリティの共同研究(IoT-SeC)を開始する。両社はIoT領域において、FFRIの保有するセキュリティ技術・ノウハウの応用・脅威分析や、ジグソーのLinuxコンテナテクノロジーを活用したIoTセキュリティ施策を検討する。IoT-Potを用いた現実脅威の調査と次世代技術、各種膨大なIoTデバイスを用いたリスク分析なども行っていく。また、鍵や証明書のセイフティーロックの機能標準化や各種CPU、チップ活用した仕組みづくりなど、IoTにおけるあらゆるリスクやセキュリティに関しての情報収集および関係各所との連携も図るとしている。
2015年09月17日成り行きで引き受けた「大人の自由研究」。ラズパイを使って『スズメ激写装置』をつくるというテーマのもと見切り発車でスタートしたが、あっさりと動体検知撮影を実現した。残るは仕上げの部分、起動プロセスの自動化や写真の解像度をどうするか。肝心の被写体が不在のまま、作業は進む。○Motionの設定I氏:「さあ、いよいよ大詰めですね」海上:「環境設定に関してはそうですけど、箱はドリキャスのままですよ?」I氏:「箱とか飾り付けは好みの問題だから、いいんじゃないですかね」海上:「もうチョイ本格的に仕上げたかったんですけど」I氏:「スズメを撮影できれば企画的にはOKかな、と。そこ、押さえてますよね?」海上:「……」I氏:「おいおい……」さて、動体検知撮影システム「Motion」の設定である。まずは、/etc/init.d/motion(Motionの起動時に参照される設定ファイル)をnanoで開き、59行あたりにある「--chuid motion」の部分をDELキーで削除、Control-Xを押して上書き保存しよう。なお、カーソル位置の行番号は、Control-Cを押せば画面下部に表示される。$ sudo nano /etc/init.d/motion次に、Motionをデーモン(システムのバックグラウンドで稼働するプログラム、「サービス」と同義)として作動させるための設定を行う。nanoで「/etc/default/motion」を開き、「start_motion_daemon=no」の「no」の部分を「yes」に書き換え、Control-Xで上書き保存すれば完了だ。$ sudo nano /etc/default/motion続いては、Motionの環境設定を。設定ファイルは「/etc/motion/motion.conf」、これもやはりnanoで開き作業を行う。主要な変更点を表1にまとめたので、参考にしてほしい。行番号はControl-Cをタイプし、画面下に「Line 11/638 (1%)」などと表示される情報から確認できる。肝心の解像度だが、利用するWEBカメラにより設定できる値が異なる。第2回で選定した「iBuffalo BSW32KM04WH」に関していえば、指定した値に近い解像度を適用する仕様のようで、width=800/height=400のとき640×360、width=1200/height=800のとき1280×720、width=1280/height=960のとき1280×720という解像度が適用された。個人的には、動体検知という目的に照らすと640×360か640×480がちょうどいいと考えるが、いかがだろう。$ sudo nano /etc/motion/motion.confこれで「sudo service motion start」を実行すれば、新しい設定でMotionが動作を開始する。ただし、毎回実行するのは手間がかかるため、insservコマンドを利用してシステム起動時に自動実行されるサービスとして登録しておこう。これで、Raspberry Piに電源を投入すれば自動的にMotionが起動し、WEBカメラで動体検知撮影できるようになるはずだ。$ sudo insserv motion$ sudo service motion start○ついにアイツが飛んでくる……大団円なるか?待てど暮らせど来ぬ鳥を……と口ずさみながら待つこと6日。昼夜通して待ち続けると、手持ちぶさたで宵待草ならぬ酔待草になってしまいそうだが、スズメは夜間に行動しない。だから日没後にはシステムをシャットダウンしてベランダから撤退、バッテリーを充電して翌朝に備えるというスケジュールで進行した。それにしても、スズメは来ない。肝心なときにかぎって来ない。8月も残すところ10日となり、このままでは夏休みの自由研究という企画が台無しになってしまう。とはいえ、ベランダに餌を撒いても効果はないし、鳥獣保護法により許可なく野鳥を捕獲することは禁止されているしで、打つ手も尽きた。そんなとき、予想外の出来事が。いればうっとうしいがいなけりゃ寂しい夏の風物詩「セミ」がやってきたのだ。まさに奇跡、いつのまにかカメラに収まっている。企画の目的はあくまでスズメだが、不意にフレームインしてきた物体に反応して自動撮影するという企画趣旨は満たした。セミ、いいじゃないか。いいぞ(「孤独のグルメ」風に)!I氏:「なんか、話がうまくないですかね?」海上:「(ギクッ)」I氏:「壁にとまるのならともかく、床ですからね。それもカメラの前」海上:「(ギクギクッ)」I氏:「動体検知だと、前後の写真も撮影されてますよね。見せてもらえません?」海上:「……」I氏:「なんですか、これ。完全なヤラセじゃないですか!」海上:「黒子が写りこんだとでもいいますか」I氏:「どう見ても、あなたの手じゃないですか!」海上:「でも、手の動きはじゅうぶん動体撮影らしさが出ていますよ」I氏:「セミが動かなきゃ! ひょっとして、手にかけました?]海上:「いや、木にとまった状態で事切れていたセミを連れ帰りました」 ※実話I氏:「しょうがないなあ……でも、なにゆえにセミなんです?」海上:「この企画、今回で終わるじゃないですか」I氏:「ええ。そこそこ話題になったのは救いですよ」海上:「話題になれば続編の可能性もなくはない、と」I氏:「可能性はゼロではないかな」海上:「まだ先がある終了、完全終了ではない終了、と」I氏:「はあ」海上:「……セミ・ファイナル」I氏:「延々続けて、そのオチですか」海上:「いやあ、夏らしい企画でビールがうまい。というわけで皆さん、機会があればまたいつか!」
2015年08月24日8月18日、今日は何の日だかご存知だろうか。「米」という字を分解すると「八十八」となることから、「お米の日」とする説があるようだ。実は特定の団体や企業が正式に定めた記念日ではなく(筆者調べ)、自然発生的なもののよう。ちなみに、総務省統計局の「なるほど統計学園」によれば、「お米の日」は8月18日ではなく8月8日。JAグループがお米の消費拡大などを目的とした活動を行っているそうだ。Twitterでもハッシュタグ「#お米の日」を含むつぶやきが多く投稿され、盛り上がりを見せている。キングジムのTwitter公式アカウントは「\白飯最高/ \米の日/ \白飯最高/ \米の字を分解すると八十八/ (以下略)」「(お米好きなので、つい前のめりになってしまいました)」といったツイートを投稿し、米への愛をうかがわせている。\白飯最高/ \米の日/ \白飯最高/ \米の字を分解すると八十八/ \白飯最高/ \八月十八日/ \白飯最高/ \米の日/ \白飯最高/ pic.twitter.com/KLFIAVAUX1— キングジム (@kingjim) 2015, 8月 18そして、ご飯をおいしく炊いてくれる炊飯器への愛は、マイナビニュース 家電fan編集部も負けちゃいない。本日「お米の日」に合わせて掲載したての「どれもウマイ! 高級炊飯器2015年モデルで炊き比べ」では、2015年モデルの炊飯器で炊き比べイベントの様子をレポートしている。筆者も参加したこのイベント。炊きたてご飯は何を使って炊いてもウマイと思って生きてきたけれど、贅沢ながら、炊き比べてみると自分の好みが明確にわかった。読者のみなさんも、炊きたてご飯へのモチベーションを高めていただけたら幸いだ。
2015年08月18日成り行きで引き受けた「大人の自由研究」。ラズパイを使って『スズメ激写装置』をつくるというテーマのもと見切り発車でスタートしたが、大方の予想を裏切りとんとん拍子で進行中。そしてついに、WEBカメラを使った動体検知撮影に漕ぎ着けた。○Wi-Fiが途切れる?I氏:「どうなってるんですか!」海上:「はい?」I氏:「Wi-Fi化してからネットワークがすぐ切れると、読者から質問が来ましたよ!」海上:「それね。『8192cu』というドライバで動くWi-Fiアダプタで起きる現象ですよ」I氏:「型番だけ言われたって、普通の人はわかりませんよ!」海上:「『lsmod』コマンドを実行し、8192cuと表示されるかどうかでわかりますよ」I氏:「で、対策は?」海上:「以下のコマンドラインをSSHクライアントにコピペして実行、その後再起動すればOK」echo "options 8192cu rtw_power_mgnt=0 rtw_enusbss=0" | sudo tee /etc/modprobe.d/8192cu.confI氏:「……確かに、通信が途切れなくなったような。なんですか、これ?」海上:「Wi-Fiアダプタのドライバを読み込むとき、USBの省電力機構を無効化するようにしたんですよ」I氏:「じゃあ、消費電力が増えると」海上:「バッテリーのもちに大きく影響するほどではないです。たびたび通信が途切れるよりいいでしょ?」○いよいよWEBカメラを接続RaspbianをインストールしてUSB Wi-Fiアダプタの設定が完了すれば、あとはWEBカメラシステム「Motion」をインストールするだけ。Raspbianはdebian系のLinuxディストリビューションなので、apt-getコマンドを使えばかんたんにインストールできる。結論からいうと、以下の2行をSSHクライアントで実行すれば準備完了だ。$ sudo apt-get update$ sudo apt-get install motion念のため説明しておくと、1行目ではパッケージ情報が保管されているインデックスファイルを更新し、2行目でMotion本体および依存関係にあるパッケージ群をサーバからインストールしている。Motionは「ffmpeg」や「libav-tools」など映像系のプログラムに依存しているため、AにはBが必要で、Bをインストールしようと思ったらCが必要で、CにはDが必要で……といった事態に陥る。apt-getは、そんな依存関係にあるパッケージを芋づる式にインストールしてくれるのだ。なお、ときどき「Do you want to continue [Y/n]?」などと質問されることがあるが、そのときには「Y」と答えればOK。しばらく放置すれば、多数のパッケージが次々インストールされるはずだ。○ファイルを取り出す準備Motionが撮影した静止画/動画は、microSDカードの空き領域に書き込まれる。それを取り出すには、『スズメ激写装置』でファイル共有サービスを動作させておき、WindowsのエクスプローラやMacのファインダーで操作することが近道だ。しかし、『スズメ激写装置』で使うシステム(Raspbian)では、あらかじめファイル共有サービスがインストールされていないため、手動でセットアップしなければならない。利用する共有サービスは、WindowsでもMacでもシステム標準で対応していることを考慮すれば、Samba(Windowsネットワーク互換のOSSファイル共有機能)が妥当だろう。apt-getを使えば、以下の1行を実行するだけでインストールできる。$ sudo apt-get install sambaネットワーク上で共有する領域の準備も必要。「Motion」の初期値では、/tmp/motionディレクトリに静止画/動画を記録するよう設定されているため、「path=/tmp/motion」とパスを記述しておけばOK。sudoと組みあわせてnanoを起動し、Sambaの設定ファイル(/etc/samba/smb.conf)の末尾へ以下のとおり記述をくわえ上書き保存すれば準備完了だ。$ sudo nano /etc/samba/smb.conf(末尾に追加)[share]path=/tmp/motionread only=no1browsable=yesguest ok = yesforce user = pi設定を有効にするには、Sambaの再起動が必要(sudo service samba restart)。さらに、次回以降『スズメ激写装置』を起動したときSambaを自動的にスタートさせるため、起動スクリプトにもひと手間くわえておこう(sudo update-rc.d samba defaults)。$ sudo service samba restart$ sudo update-rc.d samba defaults○『スズメ激写装置』を起動、すると……これでとりあえずの準備は完了、あとはベランダに『スズメ激写装置』を置き、ひたすら待つのみ。利用するWEBカメラ「iBUFFALO BSW32KM04WH」は予想以上に広角なので、適当な方向に向けておけばおそらくだいじょうぶと思う。ただ、この暑さの中、飛んできてくれるかどうか不安なので、ちょっとしたプレゼント(ヒエとかアワとか)を用意してみた。そうそう、肝心の「Motion」の起動を忘れずに。$ sudo motion -n待つこと4時間。時折ファイルブラウザで「Motion」の撮影状況をチェックするが、特に変化なし。ベランダに置いた植物の葉の揺れか太陽が雲に隠れたことかを検知したのか、数枚の静止画が撮影されていたが、どこにもスズメの姿はない。バッテリーを使い切ったのか、通信が途絶えたところで最初の運用テストを終えた。I氏:「来ないじゃないですか!」海上:「そういわれても。動作検知は期待どおりなんですけどね」I氏:「それに、なんですか、あのドリキャスコントローラの箱は」海上:「お目が高い。Pippin@のコントローラの箱もありますよ」I氏:「そうじゃなくて。もうちょっと"らしさ"ってものがあるでしょ?」海上:「ドリキャスのなにがいけないのかと(略)」I氏:「ともかく、解像度の低さとかタイムスタンプの狂いもどうにかしてくださいよ」海上:「次回、シリーズ最終回。『スズメ激写装置』の変貌ぶりにご期待を!」
2015年08月14日自然科学観察研究会は8月12日、いまどきの小学生の「夏休みの自由研究」事情や「自然との触れ合い」についてのアンケート調査結果を発表した。調査は7月28日~31日、小学生の子どもを持つ母親600人を対象にインターネット上で行われた。「夏休みの宿題として『自由研究』は出されましたか?」と聞いたところ、「提出必須の宿題」「選択の一つとして宿題になっている」との回答がそれぞれ全体の3分の1ずつ占めていた。具体的にどのような自由研究に取り組む予定なのか聞くと、「植物観察」(11.9%)が最も多く、「昆虫観察」(6.6%)、「天体観測」(4.9%)、「生物観察(昆虫以外)」(4.9%)が続いていた。2位の昆虫観察に関し、「あなたのお子さんは『昆虫』を触ることができますか?」という質問では、「触ることができる」と回答したのが51.7%。また、「あなたご自身は『昆虫』が好きですか?」と質問したところ、「苦手」と回答したのは67.8%だった。「子どもが、自然と触れ合うことについてどう思いますか?」と質問すると、「大切だと思い、実際にそういう機会を多くつくっている」(40.5%)、「大切だと思うが、そういう機会がない/つくれていない」(55.2%)、「あまり大切だと思わない」(4.3%)という結果になった。
2015年08月13日成り行きで引き受けた「大人の自由研究」。ラズパイでつくる『スズメ激写装置』、一見順調そうに見えるが……さて。今回は、使い勝手を大きく変える「Wi-Fi化」を進める。○まずはWi-Fiの設定をうだるような暑さの昼下がり、編集部I氏から電話がかかってきた。そこまでダメ人間ではないので、ビールは注いでいない。I氏:「またチマチマと環境設定ですか!?」海上:「ハードウェアを絞り込んでいるからラクですよ」 ※:第2回を参照I氏:「コマンドはほどほどに。一般読者には難しすぎるから」海上:「PCからSSHで遠隔操作すれば、コマンド入力もコピペ対応できますよ」I氏:「とはいえ、viやemacsといったエディタでの作業は必要でしょ」海上:「扱いやすいテキストエディタ『nano』がありますから」I氏:「そうなの?」海上:「……座布団全部、って感じですかね」気を取り直して、Wi-Fiの環境設定に進もう。前回、SSHを使い有線LAN経由でリモートログインするところまで説明したが、そのままでは長いEthernetケーブルを引き回さねばならず、ベランダとはいえ屋外利用には不向き。Wi-Fi化すれば自宅のルータ/アクセスポイントだけでなく、スマートフォンをルータ代わりにできるので(テザリングを応用)、屋外へも持ち出せる。なお、第2回で紹介したUSB Wi-Fiアダプタは2.4GHz通信のみ対応するため、電波法に抵触する心配はない。Wi-Fiの設定だが、SSHでリモートログイン後、まずは「ifconfig」コマンドを実行しよう。第2回で紹介したUSB Wi-Fiアダプタであれば、システムの起動とともにモジュール(ドライバ)が読み込まれ、自動的に「wlan0」というネットワークデバイス名で認識されているはず。この確認ができれば、最初の関門はクリアだ。ネットワークデバイスとして認識されていれば、以下のコマンドラインをPCのテキストエディタへコピー&ペーストし、「○○」部分を接続するWi-Fiアクセスポイント名に、「△△△」部分を接続用パスワードにそれぞれ置き換え、さらにそれを端末画面(SSHクライアント)へコピー&ペーストしよう。もちろん直接入力してもいいが、コマンド入力に不慣れな場合は無理をしないほうがいい。これで、Wi-Fiアクセスポイントの設定は完了だ。wpa_passphrase "○○" "△△△" | sudo tee -a /etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant.conf続いてはIPアドレスの設定を。現在、家庭で利用されているルータ(兼Wi-Fiアクセスポイント)の多くにはDHCPサーバが用意されており、アクセスポイントに接続したクライアントに対しIPアドレスを貸し与える機能がある。IPアドレスは固定でも構わないのだが、『スズメ激写装置』は接続のつど変わる可能性がある変動型のほうが好都合なのだ。その理由は、冒頭にも挙げた「テザリング」。iOSにしてもAndroid OSにしても、テザリング子機(本稿の場合『スズメ激写装置』)に対しIPアドレスを割り振ってくれるため、変動型のほうが運用はラクなのだ。それに、利用するLinuxディストリビューション「Raspbian」は、AvahiというBonjour互換のIPアドレス自動設定機能がデフォルトで稼働しているため、変動型でも不便はない。というわけで、いよいよ「nano」を使いネットワークの設定ファイルを編集する。ファイルは「/etc/network/interfaces」、これを引数として与え実行すればいい(変更には管理者権限が必要なのでsudoを使う)。初期設定でいろいろ定義されているが、それをすべてクリアしたうえでリスト1の内容をコピー&ペーストしよう。有線LANポートはケーブルを接続しないかぎり使わず、ふだんはUSB WI-Fiアダプタで通信するための設定だ。Control-Xとタイプすると、画面下に「Save modified buffer」と確認のメッセージが表示されるので「y」をタイプし、続いて現れる「File Name to Write: /etc/network/interfaces」ではそのままreturnキーを押せばいい。これで、IPアドレスの設定は完了だ。$ sudo nano /etc/network/interfacesリスト1:/etc/network/interfacesauto loiface lo inet loopbackallow-hotplug eth0iface eth0 inet dhcpallow-hotplug wlan0iface wlan0 inet dhcpwpa-conf /etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant.confiface default inet dhcp○ついでにテザリングの設定もこれでWi-Fiの設定はひとまず完了。動作確認のためにも、いちどシステムを停止させ、Ethernetケーブルを抜いたうえで(USB Wi-Fiアダプタだけで)起動するかテストしてみよう。システム停止のコマンドは以下のとおり、Raspberry Pi前面の緑色LEDが10回点滅したことを確認のうえ、電源(USB micro-B)ケーブルを引き抜くこと。$ sudo halt次回Raspberry Piの電源をオンにすると(スイッチがないのでケーブルを接続するのだが)、DHCPサーバから貸し出されたIPアドレスがUSB Wi-Fiアダプタに割り当てられ、そのIPアドレス経由でリモートログインできるようになる。ただし、前述したとおり接続のつど変更されることがあるため、OS Xの場合は以下のとおりBonjour名を指定したほうがいい。Bonjour名はiOSのSSHクライアントアプリ「Serverauditor」でも利用できるので、念のため。$ ssh pi@raspberrypi.local最後に、テザリングの設定を。以下のとおり管理者権限でnanoを起動し、リスト2の内容を追加しよう。ssid行にはスマートフォンの名称を、psk行にはテザリングで使うパスワードを入力すればいい。/etc/network/interfacesのときと同じ要領で上書き保存すれば設定完了、次回システムを起動したときには手もとのスマートフォンがWi-Fiアクセスポイント代わりとなる。なお、テザリングを使う場合、Raspberry Piの電源を入れる前にスマートフォン側で受け入れ体制を準備しておくこと。たとえばiPhoneの場合、『設定』の「インターネット共有」画面にあるスイッチを有効にしたうえで、その画面を表示したまま待機していれば確実だ。$ sudo nano /etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant.confリスト2:/etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant.confに追加network={ssid="Shinobu6" ←スマートフォンの名称psk="suzumechan" ←テザリングのパスワードkey_mgmt=WPA-PSK ←暗号化方式}I氏:「なんだかんだ、ここまで順調じゃないですか」海上:「もうWi-Fiで遠隔操作できるし、スマホがあれば外へ持ち出せるし」I氏:「残る課題はカメラのセットアップと動体検知ですかね」海上:「ですね」I氏:「スズメが飛んでこなかったときのオチも考えといてくださいよ」海上:「(泣)」I氏:「これがほんとのスズメの涙とか、そういうオチはいりませんから」海上:「……(バレたか)」
2015年08月11日成り行きで引き受けた「大人の自由研究」。ラズパイを使って『スズメ激写装置』をつくるというテーマは決めたが、さて。今回は、避けては通れぬ「Linuxのインストール」を進めたい。○味気ない作業だけれどマイナビニュースの担当編集から電話がかかってきた。今回はいやな予感があったので、ビールの用意はしていない。I氏:「ひとつ、お願いなんですけど」海上:「はあ」I氏:「Linuxのインストール、工夫して書いてもらえません? それ自体面白くないので」海上:「避けては通れないんですけどね」I氏:「なんか、こう、自動化みたいなことをすれば?」海上:「どのみち、味気ない単純作業になりますよ」I氏:「そこは、ほら、自由研究らしく創意工夫で」海上:「どうにもなりませんって」I氏:「創意工夫で」と、相変わらずの無茶振りだが、確かにいまどきのLinuxのインストールは面白味がない。特にRaspberry Piの場合、ダウンロードしたLinuxのイメージファイルを解凍、microSDカードに書き込むだけの作業で完了してしまう。とはいえ、Linuxの経験が浅いユーザにとってハードルが高い作業ではあるし、避けて通ることは不可能。端折ってしまうと、カメラのセットアップもうまく行かない……。一理あるな、ということで可能なかぎりGUIで事を進めることに決めた。WindowsとOS Xとでは利用するツールが変わってしまうが、利用する「Raspbian」(Raspberry Pi財団推奨のDebain系Linuxディストリビューション)をWEBブラウザでダウンロードしておき、デスクトップに移動しておくという準備作業を完了しておけば、あとはOS X/Windowsそれぞれの項目に分岐してインストールを進められる、という目算だ。なお、microSDカードは書き込み可能な状態にしておくこと。他用途で使用済のmicroSDカードを流用する場合、すべての領域に書き込めないこともあるため、SDカードフォーマッターで初期化しておこう。書き込めないなど問題が生じる場合は、オプション設定で「論理サイズ調整」をオンにしてからフォーマットを実行すること。これは、OS X/Windowsとも同じだ。○OS Xの場合OS Xには「dd」というデバイスからデバイスへ直接データコピーするコマンドが標準装備されているため、イメージファイルを書き込むための専用ツールを用意する必要はない。しかし、ターミナルでコマンドを実行するスタイルを敬遠するユーザが少なくないことから、GUIツールを使うことにした。まず、microSDカードを装着していない状態から以下に示すフリーソフトウェア「Pi Filler」を起動しよう。その後、画面の指示に従いmicroSDカードを装着、書き込むイメージファイル(2015-05-05-raspbian-wheezy.img、ZIPファイルを解凍したもの)を指定しよう。microSDカードが消去される旨を確認するメッセージが表示されたあと、管理者権限行使のためのパスワードを入力し数分待つと、Raspbianの起動ディスクが完成する。Pi Filler○Windowsの場合Windowsでの作業には、「DD for Windows」がお勧めだ。イメージファイルの選択からmicroSDの指定まですべてGUIで処理できるうえ、メッセージやメニューが日本語化されているので操作に戸惑うことがない。管理者として起動することさえ忘れなければ、つまずくことなくRaspbianをインストールできるはずだ。手順はかんたん、起動後に「ファイル選択」ボタンをクリックしてRaspbianのイメージファイル(事前に解凍しておくこと)を、続いて「ディスク選択」ボタンをクリックして対象ディスクにmicroSDを指定し、「<<書込<<」ボタンをクリックすればOK。これで数分ほど待てば、Raspbianの起動ディスクが完成する。なお、書き込む直前には「対象ディスクより小さなイメージファイルが指定されていますが、よろしいですか?」や「ディスクサイズが4GByteを超えています。よろしいですか?」と確認されるが、いずれも「はい」と答えてかまわない。DD for Windows○まずは起動、ただし操作は「SSH」で完成したmicroSDをRaspberry Piのスロットに差し込み、USB micro-Bケーブルをつなげば「Raspbian」が起動する。HDMIポートにディスプレイを、USBポートにキーボードとマウスをつなげば、Linuxマシンとして使えるRaspberry Piの完成だ。しかし、目指すのはあくまで『スズメ激写装置』。キーボードもマウスも不要、撮影用のUSBカメラと遠隔操作用のWi-Fiアダプタさえあればいい。そこで、若干難易度は高いが、最初から「SSHクライアント」を使い遠隔操作することをお勧めしたい。幸いRaspbianはデフォルトでDHCPサーバとSSHサーバが有効なため、ルータ/HUBとEthernetケーブルをつなげばただちにIPアドレスが割り当てられる。SSHで遠隔操作するためには、Raspberry Piに割り当てられたIPアドレスを知る必要があるが、それには「Fing」というスマートフォンアプリが便利だ。同じLANに接続した状態でアプリを起動し、製造者情報欄に「Raspberry Pi Foundation」とある行を見れば、IPアドレスがわかる。遠隔操作の開始は、OS XならばTerminalで「ssh pi@IPアドレス」(ユーザ名は「pi」、パスワードは「raspberry」)を実行すればOK。Windowsならば「RLogin」などの端末アプリケーションを入手しておこう。SSHクライアントはスマートフォン向けにもいくつか公開されているが、iPhone/Android版ともに無償の「Serverauditor」あたりがお勧めだ。I氏:「今回、これだけですか?」海上:「ですね」I氏:「"山"も"落ち"もないじゃないですか!」海上:「Linuxのインストールという大命題をクリアしましたから」I氏:「インストールがひとつの山、そういいたい?」海上:「落ちをつけたいのはやまやまなんですけどね」I氏:「……次回の件で、またすぐ電話しますから(ガチャッ)」海上:「おちおちビールも飲めんな」
2015年08月06日ワコムは、親子でペンタブレットを使いLINEスタンプ作りを体験するワークショップ「親子で楽しむ自由研究"LINEスタンプ作り"にチャレンジ!」を、東京都・渋谷のLINE 渋谷オフィスにて開催した。これは小学4年生から6年生とその保護者を対象としたイベントで、ペンタブレットで自由に描いた絵をスタンプにしようというもの。(※作成後、スタンプの販売にはLINEの審査および承認が必要になる)。会場となったLINEオフィスには多くの参加者が訪れ、和やかな雰囲気の中、夏休みらしく元気な子供たちの笑顔で賑わった。LINEスタンプ担当の渡辺氏によると、現在販売されているスタンプの数は、40点を1セットとしてなんと15万セット以上。日本のみならず世界中でさまざまなスタンプが制作され、使われているという。作成にあたり渡辺氏は「スタンプは会話やコミュニケーションを盛り上げたり、相手に気持ちを伝えやすくするためのツールです。LINEのやりとりの中ではそれ自体を単体で使用するというよりも、会話の返事などに多く使われる傾向があります。それをふまえ、作成する際は単純に「ケーキ」や「鉛筆」など「絵」を描くのではなく、「OK!」「いまいく~!」「えっ?」など、文字(表情)を加えるのがオススメです」とアドバイスした。さらに、「普段自分が交わしている会話を思い出してシチュエーションに合ったスタンプを作ると、よりたくさんの人に使ってもらえると思います」とも語った。40点の一つひとつをいかに魅力のあるもの=「使いやすいもの」にするかが、人気のあるスタンプを作る秘訣となりそうだ。講師はフリーランスとしてデザインやWebサイト制作を行っているイラストレーター・テラダヒデジ氏。自身が飼っているフレンチブルドックをモチーフとした「ブル男はフレンチブルドッグ」というスタンプシリーズが人気のクリエイターだ。今回参加者が行ったのは、あらかじめ用意された既存の写真(フレンチブルドッグのブル男)にレイヤーを重ね、上からペンで画像をなぞっていき、絵を完成させるというもの。線を整えた後に、着彩用のレイヤーを作成、色や文字をのせていくと完成となる。テラダ氏は、「ペンタブレットは老若男女を問わず誰でもすぐに使える、というのが最大の魅力です。今回、子供たちにも『ペンタブレット』という新しい『道具』に触れてもらいましたが、ペンタブレットは子供達が自由に創造性を発展させていくツールとしてたくさんの可能性を秘めていると思います。柔軟な発想で楽しくスタンプをつくってほしいですね」と語った。ワークショップに家族3人で参加した山口さんは、「普段家で液晶ペンタブレットを使っているので興味があり参加しました。自分でもスタンプを販売しているのですが、ペンタブレットで作成したことがなかったので、新しい刺激やヒントになればと思います。子供達も日頃からペンタブでお絵かきを楽しんでいるのでこういう機会があって嬉しいです」と、参加するきっかけなどを話してくれた。そして山口さんの長女、小学3年生のなつほちゃんは「ペンタブレットはレイヤーで色を塗るのが楽しいです。消す時も消しゴムのかすが出ないし綺麗に消えるから気持ちがいい」と笑顔で答えてくれた。今回のワークショップで使用されたのは、コミックイラスト向けソフト「CLIP STUDIO PAINT PRO」が付属した「Intuos comic」。徹底的にイラストやコミックを描きたい人に向いているモデルだ。子供たちは初めてのぺンタブレットに最初はとまっどっていたものの、すぐになじんでスタンプ作成を楽しんでいる様子。参加者の中には夏休みの自由研究でLINEスタンプを作ろうと思ってきた、という家族や「初めてつかったけど、ニンテンドーDSみたいで思っていたより簡単。すごく楽しい」といった声も聞かれ、夏休みのよい思い出作りができたようだった。
2015年08月04日成り行きで引き受けた「大人の自由研究」。ラズパイを使って『スズメ激写装置』をつくるというテーマは決めたが、さて。実は企画自体も成り行き進行、ポイントを抑えつつも大雑把な流れで研究は進もうとしていた。○必要なパーツを集めようマイナビニュース編集部から電話がかかってきた。これはきっと、ラズパイの件だな。それにしても、なぜ申し合わせたかのようにビールを注いだタイミングで電話をかけてくるのか……I氏:「どうなってるんですか!」海上:「はあ?」I氏:「原稿の件ですよ。読者の記憶に残っているうちに続きを掲載しないと!」海上:「わかりました、わかりましたよ。明日には着手しますから」I氏:「遅い! 最近の学校は、8月中に新学期が始まるんですよ!?」海上:「じゃあなんですか、必要なパーツ集めをいますぐ始めろ、と?」I氏:「この前、通販で一式揃えられるって言っていたじゃないですか。今夜中に注文すれば、明日か明後日には届くでしょ?」海上:「まあそうだけど」I氏:「じゃあ、ヨロシク(ガチャン)」というわけで、夜の夜中に『スズメ激写装置』づくりに必要なパーツ選定を開始。ラズパイの最新型「Raspberry Pi 2 Model B」は当然として、問題は残りのパーツだ。結論から言うと、WEBカメラに「iBUFFALO BSW32KM04WH」、USB Wi-Fiアダプタに「PLANEX GW-USNANO2A」、microSDカードに「SanDisk SDSDQUAN-008G-G4A(海外リテール版)」、ケースやケーブルなど他の品々はあり合わせのものを流用することに。Raspberry Pi 2本体とケースは国内正規代理店のオンラインショップ、WEBカメラなど他の製品はAmazonや楽天で注文した。WEBカメラWEBカメラは、UVC(USB Video Class)に対応した製品を選ぶこと。理由は単純、UVCは多くのOS/カメラアプリケーションでサポートされており、原則ドライバ不要で動作する。Raspberry Pi上で動作するLinuxも例外ではなく、USBポートにカメラの端子を差し込めば認識され、撮影が可能になる。Raspberry Pi対応をうたう製品は(おそらく)存在しないが、UVC対応と記載されていればほぼ確実に動作する。ただし、UVCはカメラ撮影時におけるUSB通信を保証するための規格。扱える動画フォーマットや静止画フォーマットに関する定義はあるが、ホスト側がカメラの性能に追従できるかどうかの保証はなく、オートフォーカスなどの付随機能も動作するとはかぎらない。UVC対応は絶対条件として、画素数やフレームレートなどカメラに搭載されたイメージセンサの性能と、カメラ自体の大きさ/取り回しのよさを基準に製品を選ぶといいだろう。筆者が「iBUFFALO BSW32KM04WH」という製品を選んだ理由だが、UVC対応は当然のこととして(製品WEBページに記載はないが、パッケージには「UVC対応」のシールあり)、スタンドの角度調整やクリップ状に変形できるレイアウトの自由度を考慮した。画素数も320万画素と、スズメの羽毛がくっきり写りそうなレベル。価格も量販店で1,600円程度という水準、CPは申し分ない。USB Wi-FiアダプタRaspberry Pi 2 Model Bには、10/100BASE-TのEthernetポートが1基装備されているが、これは使いたくない。電源(モバイルバッテリー)とつなぐUSB micro-BケーブルとWEBカメラのケーブルは仕方ないとして、USB Wi-Fiアダプタを用意すればEthernetケーブルの取り回しを考えずにすむ。千円ほど出費は増えることになるが、設置場所の自由度は格段に増す。ここでケチってはいけない。USB Wi-Fiアダプタは、ふだん音楽再生用に利用しているRaspberry Piとまったく同じものを購入した。理由は単純、すでに運用していて勝手を知っているからだ。ドライバがRaspbian(『スズメ激写装置』で使う予定のOS)に収録されていることも確認済なので、Wi-Fiアクセスポイントを登録する程度で通信できるようになる。なお、Raspbianには数種類のUSB Wi-Fiアダプタ用ドライバが同梱されているが、そのドライバで稼働するチップのうちRealtek RTL8192CUは「PLANEX GW-USNANO2A」や「I/O DATA WN-G300UA」に、Ralink RT8070は「BUFFALO WLI-UC-GNM」や「Planex GW-USMicroN」に採用されていることを確認している。いずれも親指大の大きさでジャマになりにくいので、今回の自由研究にぴったりといえる。microSDカードどのmicroSDカードでも構わない……ことはないのがRaspberry Piだ。microSDカードは相性問題が多数報告されているため、動作確認が済んだ製品を選ぶことが思わぬトラブルを避ける鉄則といえる。筆者が「SanDisk SDSDQUAN-008G-G4A(海外リテール版)」を選択したのは、こちらのWEBサイト(リンクで動作報告があったことにくわえ、自分自身がすでにオーディオ用途で運用した実績があるからだ。Raspberry Pi 2ではSDHC/SDXCカードも利用できるが、高速規格のUHS-I(Ultra High Speed)には対応していないため、敢えて価格が高いUHS-I対応カードを選ぶ必要はない。ただし、カードのアクセス速度はシステムの起動時間やその後のファイルアクセス、ひいてはシステムパフォーマンスに影響するため、よりスピードクラスが大きいカードを選ぼうmicroSDカードには、2、4、6、10という4段階の速度規格(スピードクラス)があり、数値の大きいほうがより高速にデータアクセスできる。傾向としてClass 4よりは6、6よりは10のほうが高めだが、4GBや8GBといったカード容量であれば価格差はわずかだ。バッテリーバッテリーは、手近にあった「DE-KDD005AA」に決めた。これはどこかで……そう、au/KDDIが2013年秋の対象機種の予約でプレゼントしていたポータブル充電器だ。非売品のため迷ったが、バッテリー容量(2,500mAh)・出力(5V/1A)・ボディカラーいずれも今回の要求スペックを満たしており、大きさ(7×4×2.2cm)と重量(85g)も塩梅なことから、類似製品を買うまでもないと判断したのだ。I氏:「写真見ましたけど、ただつなげただけですかね?」海上:「ですね」I氏:「本当に動くんですよね?」海上:「たぶん」I氏:「たぶんじゃ困るんですよ、たぶんじゃ」海上:「そんなことより、問題はスズメが飛んでくるかどうかで」I氏:「その成り行き任せな性格、ホントどうにかしてくださいよ」海上:「雀百まで踊り忘れず、っていいますからね。あれ? もしもし。もしもーし!」
2015年07月29日夏休みの自由研究で、作りたかったが実現できなかったものがある。それは「電子工作」。モーターによる駆動部があり、スイッチを押すと麦球が光る程度のものだが、いかんせん小遣いが足りなかった。しかしいまは……大人なりに多少の余裕がある。そうだ、いまなら往時を超えるなにかを作れるはずなのだ。○きっかけは一本の電話マイナビニュース編集部から電話がかかってきた。妙だな、急ぎの原稿は昨日送ったはずだけど……電話口は予想どおり担当編集I氏、「いやあ、暑いですね! 夏ですね!」などとのたまっている。いいから早く要件を言ってくれ、キーンと冷えたビールを飲むところなのだから。I氏:「夏といえば!」海上:「はあ?」I氏:「自由研究でしょう!」海上:「ああ、小学生の夏休みの宿題ね」I氏:「なにか作ってみませんか?」海上:「貯金箱とかモーターで動く意味不明物体とか? なんでオッサンの俺が?」I氏:「いやだなあ、とぼけちゃって。アレを使うんですよ、アレを」海上:「アレって?」I氏:「いまが旬のラズパイですよ、ラ・ズ・パ・イ。得意でしょ?」Raspberry Piか。確かに、ここ半年ほど、時間を見つけてはラズパイをイジり倒している。特に、ラズパイをオーディオに活用しようと勝手に命名したプロジェクト「ラズパイ・オーディオ」は、勢い余って電子書籍を出してしまうなど仕事にも影響しはじめた(Amazon Kindleストアで好評発売中!)。だからといって、なぜ夏休みの自由研究なんだ?I氏:「この前、熱く語ってたじゃないですか。いろいろできるって」海上:「そりゃ、まあ。カメラとか計測器とか、周辺機器もいろいろあるし」I氏:「小さくて低消費電力でそこそこパワーがあって、なにより安いですしね」海上:「初期費用はトータルで1万円もあればじゅうぶんかな」I氏:「ほら。自由研究にピッタリじゃないですか。大人の夏休みの自由研究!」海上:「俺に夏休みはないっての」○『スズメ激写装置』を作りたい!という経緯で引き受けてしまった、「ラズパイで大人の夏休みの自由研究」なる珍妙な企画。ラズパイを使うことだけは決まっているものの、最終的になにを作ればいいというのか。オーディオ企画は他誌で進めているから無理で、監視カメラはヒネリがないしそもそも欲しくない。タッチパネルを付けたところで、スマートフォンやタブレットには見た目も操作性も適わないだろう。そこへスズメが1羽飛んできた。ソファーから見えるベランダの床に、ときどき遊びにやってくるかわいいヤツだ。しかしスズメは野性が強く人に慣れない。近くでカメラを構えようものなら、気配を察知して飛び去ってしまうほどだ。まてよ。これだ。目立たない場所にカメラを設置しておき、動体に反応して撮影を開始するようにすればいいのだ。幸い、Linuxには「Motion」というオープンソースのWEBカメラシステムがあり、都合のいいことに動体検知機能を備えている。我が家のベランダに飛んでくる小動物はスズメくらいなものだし、スズメが活動するのは昼間だから光量の心配もいらない。飛んできたスズメに反応して自動的にパシャリ、これですよ。Raspberry Pi向けには、GPIOという40ピンの拡張スロットに接続するタイプのカメラもあるのだが、リボンケーブルなので取り回しが悪くなるし、基盤もレンズ部もむき出しだから後々面倒なことになりそう。USBカメラのほうが安くて取り回しもかんたん、大人だからここは楽をさせてもらいたい。スズメにも反応するんじゃないかな? たぶん。試してないけど。心は少年だから先々のことは気にしない。海上:「てなわけで、『スズメ激写装置』を作りますよ!」I氏:「……もう少し、なんかこう、あるでしょ? グッとくる絵面というものが」海上:「スズメのかわいさたるや(以下略)」I氏:「ああ、もう、わかりましたよ。スズメでいきましょう、スズメで」○そもそも「Raspberry Pi」って?作りたいものはなんとなくわかったけれど、そもそもRaspberry Piって何? 本当にだいじょうぶなの? という声が編集部のある東京・竹橋方面から聞こえてくるので、かんたんに説明しておこう。Raspberry Piは、英国のラズベリーパイ財団が開発および仕様を定義する、ARMアーキテクチャを採用の小型コンピュータ。いわゆるパーソナルコンピュータに求められる機能はカードサイズ(67.6×30mm)の基板にすべて実装されており、4基のUSBポートやGPIOポート(40ピンの入出力端子)で機能を拡張できる。電源はUSB Micro-Bで供給、モバイルバッテリーを使えることがポイントだ。最新モデルは2015年春発売の「Raspberry Pi 2」で、CPUに900MHz/4コアのARM Cortex-A7を採用、メモリはLPDDR2 SDRAM 1GBを積む。初代Raspberry PiはARM 1176JZF-S 700MHz/シングルコア、512MB RAMと、画像処理を任せるには若干心もとない仕様だったが、スマートフォン級の処理性能を持つ最新モデルであれば動体検知や動画撮影も余裕でこなせる。OSにはLinuxを使うつもりだ。間もなくMicrosoftからRaspberry Pi 2対応の「Windows 10 IoT Core」が正式リリースされる予定だが、カメラシステムの管理にGUIは必要ないし、動体検知可能な撮影システムがリリース直後のOSにあるとは思えない。「Motion」を利用できるくLinuxのほうが確実だ。SSHでリモートログインしていくつかコマンドを実行できればそれでじゅうぶん、撮影した静止画/動画はLAN経由で取り出せばいい。さて、次回は『スズメ激写装置』に必要な部品の調達を行う。果たして動きのすばやいスズメを撮影できるのか? 動きの鈍いハムスターあたりでお茶を濁そうとしているのでは? そんな疑念を払拭すべく、諸々検証しながら自由研究を進めていきたい。
2015年07月23日