初めて尽くしの子育て奮闘記ーー『シンママのはじめて育児は自閉症の子でした』この本の著者は、発達ナビの連載ライターでもある、まるさんです。まるさんの息子リュウくんには、自閉スペクトラム症と軽度知的障害があります。2歳ごろ、保育園の先生から「リュウくんの発達が気になる」と伝えられたことをきっかけに、まるさんはリュウくんに発達障害があることに気づきます。発達支援センター、発達外来、療育…初めて聞く言葉に初めて行く場所、初めてのことばかりで不安になりながらも、「今できることを少しずつ」と奮闘するまるさんと、一歩一歩確実に成長していくリュウくんの姿がたっぷり詰まった一冊です。児童精神科医の岡田俊先生からのアドバイスや解説にも勇気づけられます。発達障害の特性は一人ひとり違います。育児の中で、不安や孤独感を感じることもあるかもしれません。そんなときはぜひこの本を開いてみてください。マイペースで予測不可能、でも楽しい!そんな家族の日常ーー『自閉スペクトラム症 マイペースなきみに家族はすったもんだ』自閉スペクトラム症がある子どもの特性はさまざま。子育てをしていると、振り回されることもあれば、「そんな風に考えるのか!」と新たな気づきが得られることもあるでしょう。この本では、自閉スペクトラム症がある子どもたちとその家族の日常生活でのエピソードがたくさん紹介されています。本書は、「全国手をつなぐ育成会」の機関紙に掲載されていた4コマ漫画をもとに作成されました。「学校」「施設・病院」「行事・外出」「家・日常生活」の4つの章ごとに、困ったこと、できるようになったこと、ほのぼのしたことなど、さまざまなエピソードが掲載されているほか、発達ナビにもご寄稿いただいている井上雅彦先生のコメント、アドバイスも読むことができます。子どもの行動に「すったもんだ」しながらもなんだかんだ楽しい、そんなエピソードに「あるある!」「なるほどそういう視点もあるのか!」など、子どもや自分自身の生活を重ねながら楽しめる一冊になっているのではないでしょうか。自閉スペクトラムとメンタルヘルスの理解と支援ーー『おとなの自閉スペクトラムーメンタルヘルスケアガイド』子どもの自閉スペクトラム症(ASD)については、比較的情報が得やすい時代になったものの、大人の自閉スペクトラム(AS)については、知りたい情報になかなかたどり着けないなんてこともまだまだあるのではないでしょうか。この本では、大島郁葉先生編集、本田秀夫先生監修のもと、数々の先生により、大人の自閉スペクトラム(AS)とそのメンタルヘルスの問題について詳しく記されています。本書では、「障害(disorder)」から切り離して特性をとらえるために「自閉スペクトラム(AS)」という言葉が用いられており、前半では、自閉スペクトラムの感覚、アイデンティティ、パーソナリティ、スティグマなどについて、後半では自閉スペクトラムのトラウマ、不安、抑うつ、依存などのメンタルヘルスの問題と必要な支援について、理解を深められる構成になっています。この本は、当事者にとっても支援者にとっても、知りたかった情報が幅広く網羅されており、かなり読み応えがある一冊になっています。自閉スペクトラムの特性がある成人の方が直面する課題について理解を深めたいと思ったとき、この本は救いの手を差し伸べてくれるのではないでしょうか。子どもと親に向き合う児童精神科の思いーー『僕の児童精神科外来の覚書』精神障害や発達障害、不登校、虐待、子どもたちが抱えるさまざまな課題に向き合う児童精神科とはどんなところなのでしょうか。この本では、児童精神科にはどのような人が来るのか、児童精神科医はどのように子どもや親に向き合うのか、関係機関とどう連携しながら支援を行うのか、就学前、小学校入学時、学校生活、不登校、それぞれの時期に必要な関わり方などについて詳しく書かれています。カルテを見て想像し、診察室に入ってくる子どもを見る。そして実際に話を聞き、面談や検査を通して「診立て」を行い、その後も長期的に関わり続けていく。その一連の流れの中で直面する、難しさや葛藤などについて、児童精神科医の田中康雄先生の率直な思い、言葉がつづられています。児童精神科では、子どもの抱える課題にのみ焦点を当てるのではなく、そこに付随する問題や親が抱える課題にも同時に向き合っていく必要があるそうです。田中康雄先生の言葉と共に、子どもの抱えるさまざまな課題について考えてみてはいかがでしょうか。児童精神科を利用したことがある方も、利用を考えている方も、さまざまな方におすすめの一冊です。科学的な視点から正しくHSPを理解するーー『HSPの心理学』「HSP」という言葉は、近年、国内でも急速に認知度が高まってきました。しかし、さまざまな情報があふれており、いったい何が正しいのか判断することが難しくなっているのが現状です。HSPは「繊細で生きづらい人」というイメージ、ネットにあふれる「HSPあるある」、HSPは「能力」なのか「遺伝」なのか、○○型HSPなどの分類…「HSP」という言葉が、「生きづらさ」の代名詞として使われるほど、そのイメージはどんどん科学的知見からかけ離れたものになってしまっています。そんな現状の問題点を整理し、科学的な根拠をもって改めて「HSPとは何か」について理解を深めるため、書かれたのがこの本です。本書では、HSP研究の第一人者である飯村周平先生により、本来のHSPの定義やHSPの考えられる原因、「環境感受性が高い」「良くも悪くも影響を受けやすい」とはどういうことか、また必要なケアなどについて詳しく説明されています。何らかの生きづらさや困りごとを抱えているとき、その生きづらさの原因に名前が付くと少し安心することもあるかもしれません。しかしそれだけでは、何かが改善するわけではありません。情報があふれている「HSPブーム」の今だからこそ。HSPを科学的な視点から理解することで、自分の困りごと、生きづらさに対する適切な知識、ケアの方法が見えてくるのではないでしょうか。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2022年12月11日特別支援学級の見学と体験Upload By カタバミ自閉スペクトラム症と知的障害のあるまちゃが年長のころ、就学先は特別支援学校と特別支援学級、どちらがまちゃに合っているのかで迷っていました。まずは特別支援学校に見学と体験に行きました。今回は特別支援学級の見学と体験です。初めにまちゃの就学先にと私が考えた特別支援学級の条件は「1、知的障害児用のクラスがあること」と「2、歩いて通える距離なこと」と「3、まちゃが過ごしやすい雰囲気であること」でした。連絡してみるとまず保護者だけで見学のみな学校と、保護者の見学とまちゃの体験を同じ日に行う学校がありました。実際に見学してみると当たり前ですが校舎はそれぞれ造りが違っていて、下駄箱から特別支援学級の教室までが遠い学校も近い学校もあり、私はまちゃの能力を考えて下駄箱から特別支援学級の教室までが近い学校がいいと思いました。それから実際に行ってみて天気が悪い日のことを考え、なるべく短時間でも駐車できる学校がいいなと思いました。でもどの学校も住宅地にあり、大体どこも有料の駐車場に停めてもらった方がよいとのことでした。特別支援学級でのまちゃの反応Upload By カタバミいくつかの特別支援学級に体験・見学に行きましたが、まちゃは人数が極端に少ない特別支援学級では広く空いている空間で走り回りふざけてしまいました。でもいろいろな学年が一緒になって大人数で勉強していた特別支援学級では、その様子を見て何かを感じたらしく、私の隣の席で静かに座っていました。これはお子さんの特性にもよると思いますが、視覚優位のまちゃには大勢の子どもが机に向かっている環境の方が合っているのかもしれないと思いました。席に座ったまちゃが騒がないようにと私が紙と鉛筆を渡したら、まちゃは文字らしきものを絵と混ぜて書いて、私に得意そうに渡してくれました。まちゃは普段いくつかの単語をしゃべるくらいですが、私にはまちゃが「学校ってこういうことをするんでしょ?僕知ってるよ」と言っているように感じました。その様子を見た年配の先生が「じゃあこれはできるかな」とすぐに平仮名のなぞりがきのプリントを数枚持ってきてくださり、まちゃがそれを得意気に完成させると「もうまちゃくんは小学1年生になれますね」と言ってくださいました。いつも表情の少ないまちゃですが、うれしそうだなと感じました。まちゃは自分の気持ちをしゃべることがほとんどないので、小学校に対してどんな気持ちでいるのか私には全く分かりませんでしたが、私が思っているよりも張り切っているのかもしれないと思いました。こんな時期に…療育手帳の更新のための再判定Upload By カタバミまちゃにやる気があるのなら特別支援学級に入れてみようかと思い始めたころに、療育手帳の更新のために発達検査を受けることになりました(前回の療育手帳のための発達検査は3年前でした)。再検査の結果、等級は前回の軽度から中等度になりました。覚悟はしていましたが成長も感じていたのでやはりショックでした。終わってから発達検査をしてくださった臨床心理士の方と話すと、数値は低く出ましたが学ぶ意欲と姿勢があるのは本当にいいところですと褒めてくださり、特別支援学級でもいいのではないかと言っていただけました。私も発達検査の結果だけが全てではないと思っていたのでうれしかったのですが、その後短い期間で専門職の方数人とお会いすることが続き、まちゃの発達検査の数値を知るとみなさん、私の特別支援学級という選択にいったん顔を曇らせました。まちゃをよく見て、いろいろな方の話を聞いてUpload By カタバミ本当にこの時期はたくさんの方のお話を伺いました。1年ほどお世話になっていた言語聴覚士の方からは「特別支援学級ではみんな普通にしゃべっていますから苦労すると思います」と言われました。でも、少しまちゃを診た行動療法の先生からは「この子は発達検査の数字は低く出ますができることは多いタイプですから数字を気にしないことですよ」と言われ、少しまちゃを診た作業療法士の方からは「この数値なら特別支援学校です。でも挑戦させてみることは自由ですよ」と言われました。そして、いつも頼りにしていた地域の相談支援機関の方からは「入学してみて合わなかったきには学校を変えることもできます。ただ特別支援学校から特別支援学級に移動することは難しい場合もあります」と言われました。この機関が主催した、教育センターの方と複数の先輩ママ達から就学先の話を伺う会にも出席しました。熟考した結果、まちゃは「もう1年生になれますね」と言ってくださった特別支援学級に通わせてみることに決め、教育センターからもその決定を認めていただけました。実際に入学したあとで何が起こるのかは分かりません。毎日通う場所から自己を否定され続けて深刻な二次障害を起こしてしまった話も聞きますし、無理をさせて今のまちゃの穏やかさが消えてしまったら取り返しがつかないと思い心配もしていますが、たくさんいろいろな方の話を聞き、まちゃの様子もよく見て考えたので、ひとまずこの決定で悔いはないと思っています。執筆/カタバミ(監修:鈴木先生より)お子さんがどこに通うかどうかは最終的には親御さんが決めることになっています。もちろん本人の意見も大事です。療育手帳が中等度の場合、特別支援学校を選択される方が多いのは事実です。ただ、一旦、特別支援学校に通い始めると地元の特別支援学級には戻れないことが多いです。それならばまずは入学した1年間だけでも地元のお友達と一緒に勉強してみることも一つの手段です。特別支援学校は地元から離れたところにあり、バスで通学するため地元の子どもたちにまちゃさんを知ってもらえる機会がとても少なくなります。地元の子どもたちにまちゃさんが同じ地域にいるということを知ってもらうには最初の1年間だけでも地元の小学校へ通うことはよいと思います。一方で、地元の学校では教員の人数の関係で密に面倒を見られないこともあるので、環境を変えたほうがよいと感じたら早めに特別支援学校へ移る決断も必要です。社会的な教育を受けることで就職につながることも多く、実際特別支援学校は就職率がよいという面があります。
2022年12月09日SAKURA(以下、――):娘は、学校でパニックを起こすことが、まだあるのですが…先生から「パニックを起こした」「泣いた」などの報告があったとき、家で娘に「泣いたの?何があった?」と聞いても、『覚えていない』ということがよくあります。娘は、学校でパニックを起こしても、さほど気にしていない感じがします。娘の学校は、1学年1クラスなので、1年生からずっと同じクラスメイトで、担任の先生曰く、「あーさんのパニックのことは、同級生がもう慣れてしまっている」という感じらしくて、そこまで大騒ぎにはならないそうです。でも、授業を止めてしまうこともたまにあるので、そういうとき、周りを困らせてしまっているということは、認識してほしいんです。「私がパニックを起こしても、みんなが許してくれる」と思ってほしくなくて…。Upload By SAKURA三木先生:来年から中学生ですよね?中学生活の3年間で、もっと視野が広くなるのでは?――たしかに小学校生活でもすごく成長はありました。小学1年生のころは、上履きが脱げただけで泣いていたらしく、最初は、よく学校から電話がありました。それから考えると、あと3年でまた成長していくだろうとは思うのですが…最近は停滞期なので、「3年で間に合うか?」って、ちょっと心配になっちゃって。三木先生:こういうところは、結局、脳の発達待ちな部分がありますからね~。完璧を目指さなくても、中学生のうちに「このくらいできたら、まあまあかなー」ってぐらいなレベルでいいのでは?――そうですかね…なんか、学校で居眠りすることがよくあるそうなんですが、そのとき起こしてくれた子に、逆ギレしちゃうこともあるらしいんです。そういうのを聞いちゃうと、え?大丈夫?って心配になっちゃって。元々、周りの空気とか読めない子なので、逆ギレ後の周りの反応とかも見てないらしくて…。Upload By SAKURA三木先生:「空気を読めてないんじゃないか不安」というのは、今の若者は全体的に傾向として強くありますよね。アニメとか見てても、やたら説明が多かったりしませんか?テレビもテロップが多いですし、「きっちり共通理解できてないとダメだ」みたいな風潮は強いですよね。その結果、説明が過多になることでそもそも「空気を読んでいい感じかどうかを自分で判断する能力」が育ってない人は多いのではと感じます。昔はそういうのあまりなかったんじゃないかなと思っていて。みんな、ストーリーから背景を想像したり、画面の中から状況を読み取ったりしてましたよね。――確かに!昔のアニメとかお笑いとかって、説明がほとんどなかったですね!アニメを見てて、なんでこの人はこんなこと言ったのかな?って思ったら、こうだからかな~ああだからかな~って、勝手に考えてました!Upload By SAKURA三木先生:そういった状況の分析とか、空気が読めるようになるには、土台とトレーニングが必要なんです。土台が弱いうちは、言葉で気持ちを説明していくことが大事になってきます。Upload By SAKURA――そうか~…土台づくり…三木先生:嫌味とか、冗談とか、裏の気持ちが読み取れないんですよね。でも、空気って読まないほうがいいとき、あえて読まないときもありますからねw――あぁ…あります(笑)三木先生:その子のキャラによって、周りに受け入れられることもありますよね。天然寄りの子だね~みたいな感じに捉えられたり。周りとの関係性も影響してきます。Upload By SAKURA――そうか…。私が思うよりも、クラスの子にも、もっとふわっとした感じで捉えられている可能性もある…かもしれませんね。最近、(今のご時世もあって)以前より娘の学校生活とか、友達関係が見えないせいか、実際に見ていないことで、ついやきもきしちゃって…。夫にも神経質って思われてるかも…。思いが強すぎて、暴走してる気がしてます。Upload By SAKURA三木先生:どこまですると、お母さんとあーさんがしんどいかっていうのを、客観視するのが重要です。今の自分の状態を冷静に把握して、自分の感情を除いた観点で見るといいかも。――客観視…結構苦手ですが、頑張ります!執筆/SAKURA
2022年12月07日血液検査で大暴れ現在はなんでも食べられるようになったものの、もともと卵と牛乳アレルギーを持っていたスバルは0歳から定期的に総合病院に通っていました。あまりにも長い待ち時間にも苦労しましたが、何よりも私の頭を悩ませていたのは血液検査!ワクチンなどの注射は平気なスバルですが時間がかかる採血は動いてしまいます。危ないので0歳のころはベッドにぐるぐる巻きにされて看護士さん2人がかりで採血してもらっていました。もちろんその間ギャン泣きです。それから数年…困ったことが起こりました。スバルが大きくなり力をつけてきたため、院内に響く声で泣きながらぐるぐる巻きにされた体をベッドごとガタガタ揺らすのです。私も全体重でベッドを押さえ、ほかの看護士さんも応援に駆けつけ5人がかりで採血しました。Upload By 星あかり採血についてはもちろん事前に説明し、本人も「今日は大丈夫」「注射怖くない」と落ち着いているのですが、いざ採血が始まると怖くなってしまい全然「大丈夫」ではなくなってしまうのでした。どうやら病院のベッドがトラウマになってしまったようでした。歯医者さんはきっと無理病院のベッドがトラウマになったことで同時進行で困っていることがありました。ベッドで治療の代表格、歯医者さんです。採血の様子を見る限り、歯の治療なんて「ぐるぐる巻きで大暴れで流血」な絵面しか想像できませんでした。そのため0歳から3歳までは歯医者さんへは行かず市の健診や、公民館などで行われる移動歯科健診で診てもらっていました。ありがたいことに毎回歯の美しさを褒めていただきホッとしました。「自閉スペクトラム症」と診断されたあとの歯医者さん3歳で「自閉スペクトラム症」と診断されたあと「あの採血での大暴れは特性の一部?」と思いたち、『自閉症 歯医者』で検索してみました。そこで目にしたものは、まさに阿鼻叫喚!壮絶な現場の状況と保護者の苦労の数々…。どうやら発達障害と歯の治療は相性が悪いらしいという現実に心が折れそうでしたが、障害児専門の歯科医院があるというありがたい情報を見つけることができました。しかし最寄りの病院でもバスと電車を乗り継いで行かなければならず、この場所に定期的に通えるかと言われたら現実的ではありませんでした。私にママ友がいたら地域の良い歯医者さんの情報が得られたかもしれないのに…と思いつつもママ友はいないので歯医者さん探しはいったん保留にすることに。運命の出合い幼稚園に入園すると幼稚園で定期的に歯科検診がありました。もしそこで虫歯があると言われたら腹をくくって障害児専門の歯科医院へ行こうと決めました。そして歯のトラブルがないまま5歳になりました。ある日の朝、スバルと近所をお散歩中に偶然歯科医院を見つけました。診療時間前に花壇に水やりをしていたスタッフさんが「おはようございます」と声をかけてくださったので、チャンスとばかりに話しかけることにしました。発達障害のこと、歯医者さん未経験のこと、採血での惨状を伝えたところ、スバルに向かって「病院の中を見学してみる?」と声をかけてくれました。そして私とスバルはスタッフさんに案内してもらいながら院内をくるりと1周し、先生やほかのスタッフさんと挨拶をし、診察の椅子に座らせてもらいました。そこで器具を手に持たせてもらい、何に使う物なのか説明を聞きました。スバルは真剣な顔で頷きながら聞いていました。私はその場で初診の予約を取って帰りました。5歳で初めての歯医者さんスバルもやる気満々で挑んだ初診の日。歯の検査で特に問題がなかったので、この日は歯の掃除とフッ素塗りをしてもらいました。痛い治療ではありませんが、水が出たり空気が出たり回転したり大きな音がしたりと刺激がいっぱい。しかし一つひとつ目の前で見せて説明してから始めてくれるので、スバルは最後まで落ち着いていました。たくさんのスタッフさんに褒めてもらってご機嫌で帰りました。あとから聞いた話ですが、スタッフさんの1人に自閉スペクトラム症のあるお子さんがいて、その子がこの歯科医院に通っているため、先生をはじめとしたみなさんが対応に慣れていたということでした。その後も何度か通い、レントゲンや麻酔の注射や抜歯を経験しましたが、歯医者さんを信頼しきって何でもおまかせで治療が受けられるようになりました。9歳の現在「お母さんは待合室で待ってて!」と1人で勇ましく診察室へ向かうようになりました。Upload By 星あかり血液検査その後大暴れの採血はどうなったかと言うと、5歳の後半にロタウイルスにかかり暴れる気力もないまま採血や点滴したことをきっかけに克服しました。参考にならないと思いますが一応…不幸中の幸いのような出来事ですが、このような克服の仕方もあるようです。執筆/星あかり(監修:初川先生より)歯医者さんに苦手意識を持つお子さんは多いですね。星さんが受診された歯科のように、院内の様子を見せていただいたり、治療についてお子さん自身に説明してくださったりすると、不安なりにも取り乱すほどではないレベルのドキドキ度で臨むことができることはあります。子どもは何歳であれ、その子に向けて語られた大人の言葉を分かろうとします。詳細をすべて理解できなかったとしても、分かるように説明しようとしてくれた、事前に見る・触ることのできるものは試させてくれたということは子どもに届きます。スバルくんの採血克服エピソードに関しては、成長もありますし、また、抵抗できずにそれはそれでつらかったことと思いますが、その結果、治療が奏功した(頑張って採血・点滴に耐えたらいいことがあった)という展開もよい働きを見せたのかもしれませんね。
2022年12月06日特別支援学級か通常学級かUpload By まゆん小学6年生の半ば過ぎ。中学校のクラス選択について、小学校の特別支援学級の先生と話をした。特別支援学級か通常学級か。先生と私の間では太郎の状況の共有がされていた。そして先生が見る太郎と私が見る太郎への見解に差がなかった。先生と私の間では既に一択だった。「中学生になっても特別支援学級」あとは本人の意志の確認のみだった。小学生になる前とは違い、私の中で迷いはなかった。あのときはいろいろなものと葛藤していた。先生からの情報では、太郎が進学する中学校の場合、小学校と違いほぼ通常学級で授業を受けることになると聞いた(※)。私はすごく不安だった。先生も「不安ですよね?私も不安で…中学校に一緒について行きたい気持ちです…」そこまで言ってくださった。中学校では教科毎に先生が違うため、どうしても個別での授業は厳しくなるとのことだった。授業についていけず放心状態になる太郎や、緘黙になる太郎が浮かんできた。それを思うとやはり、心理的なサポートの意味でも特別支援学級が太郎にも私にも良いのではと思った。行き詰まったときの逃げ道を確保したいと思った。(※)地域によって異なりますUpload By まゆん小学6年の太郎に聞いた。中学生になったら特別支援学級と通常学級どっちがいいかと。もちろん内容も説明した。本人が理解したのかもわからないが太郎はこう言った。「わからない」Upload By まゆんそうだよな、わからないよな。形としてそれが目の前にあるわけでもないし、漠然とした未来の説明されてもなぁと私は太郎の言葉を聞いて思った。Upload By まゆん小学校から中学校へと環境が変わるし、とりあえずは特別支援学級を選択して様子を見ようと考えた。時間が経過して太郎が通常学級だけがいいと言うのであればその道も考えよう。そういう考えにまとまった。小学校の入学準備を行っていたのは、太郎の特性がまだグレーと言われているときでした。そして太郎の意思の確認も難しく、私の意志で決めなければならないことから、かなりのプレッシャーを感じていました。ところが今回、中学校へ進む前はそのプレッシャーがほぼありませんでした。太郎の特性を先生も私も理解できており、私の特別支援学級に対するネガティブなイメージも少なくなっていたからだと思います。あとは太郎本人の意思の確認をできるようになったことも大きな違いだと考えます。答えは曖昧でしたが、何も間違えてない答えだと素直に思いました。「わからない」…誰も未来のことなんてわからないですよね。執筆/まゆん(監修:初川先生)中学進学にあたって、通常学級か特別支援学級かという迷い・悩みのエピソードをありがとうございます。同じように悩んでいらっしゃる保護者の方も多いのではと思います。通常学級では、中学から教科担任制、そして1コマ50分の授業となるのが小学校との大きな違いですね。教科ごとに折々に課題が出たり、定期試験前後にドリルやノートの提出があったり、学校として提出物一覧をつくってくださるところも多くありますが、とはいえ、自分で課題や学習のスケジュールを意識しておく必要はあります。小学校までだと宿題は翌日に出すものと思い込んでいるお子さんも多いですが、中学以降はなかなかの量の課題をしばらく後に提出するタイプの宿題も出されるため、宿題は前日にやればよいと思っているお子さんは苦労することもあります。こうしたことは「中1ギャップ」と言われることもありますが、小学校と中学校のそもそもの構造的な違いは結構あるというのが私の印象です。太郎くんは進路選択について「わからない」と答えたとのこと。その通りだと思います。お子さん本人からしたら、まだ見ぬ中学校生活、何をどう選択していいかも難しいですね。中学校の学校公開が開催されていたら、授業参観に行くのも1つです。また、就学相談を通して、中学校の特別支援学級の見学・体験に行ける場合も自治体によってはあるかもしれません。中学校の様子を知る機会がある場合には足を運んでみるのもいいでしょう。
2022年12月03日ママ友から相談された、抑揚のない話し方自閉スペクトラム症と知的障害がある息子を育てていると、同じように自閉スペクトラム症がある子どもを育てている親御さんたちから相談されることがあります。昔からの友人に、自閉スペクトラム症の診断を受けている女の子がいます。3歳当時、言葉はたくさん出ていましたが、独り言の一方通行の言葉ばかりでした。友人は「抑揚のない感情を感じられない一本調子の話し方は、どうすればなおるもの?」と聞いてきました。私は医師でも専門家でもないのでためらいましたが、21年間自閉スペクトラム症のある息子を育ててきた経験から次のように答えました。「コミュニケーションをとりたい、人と関わりたいと思うようにならない限り、抑揚をつけて話すようにはならないと思う。人は『相手にこうしてほしい』という働きかけをしたいという動機があって言葉が出たり、声を大きくしたり、強弱や抑揚をつけたりするものだと思うんだ。だから、独り言の状態にいる限り、抑揚をつける必要もないから一本調子のまんまなんじゃないかな」親の価値観は子どもとは違うかもしれないから私の答えを受けて、友人はこう言いました。「じゃあ、友達をたくさん作って遊ばせたらいいんだ。友達と遊ぶと楽しいから、話し方も変わるかもしれないよね」私は「それは親の価値観であって、子どもが楽しいと感じて、しゃべり方まで変わるかどうかは分からないよ。友達と遊ぶことがストレスになり、1人で遊んでいるのが楽しいことなのであれば、それを潰さないほうがいいんじゃないかな。まだ3歳なんだからこれから経験を重ねていくうちに、自然と育ってくるからそのとき抑揚がでてくるかもしれないし…。」また、加えて次のように話をしました。「その時の言葉がたとえ『触っちゃダメ!』とか『嫌!』といった、拒否する言葉であっても、自分の気持ちをしっかり伝えている言葉であるなら、立派なコミュニケーション。それでよしとすればいいんじゃないかなとも思う」と伝えました。友人とは信頼関係もあるので、ここまで言うことができました。息子の初めてのコミュニケーションUpload By 立石美津子息子は5歳になるころまで、言葉を話しませんでした。発語するようになっても、スーパーではリンゴの棚の前で「ジョナゴールド・津軽・紅玉・シナノゴールド・秋映・王林…」と覚えている品種を順に言うばかり。けれども、「ママ、このリンゴ美味しそうだね。買って~買って~」と言うことはありませんでした。21歳になった息子は、会話はできるようにはなりましたが、相手に共感を求めるこういった言葉は今も言うことはありません。そんな息子でしたが、初めての言葉らしい言葉は5歳のとき、デパートの讃岐うどんのお店に連れて行ったときのこと。息子が食べていたうどんの器には、あと1本だけ、うどんが残っていました。その器を、店員が「お下げいたします」と持って行こうとした瞬間、店員に向かって「まだ食べる!」と大きな声で叫んだのです。自分の意思をはっきりと示し、まっすぐと相手に届く言葉でした。オウム返しはコミュニケーションではない?息子が特別支援学校高等部のころ、自閉スペクトラム症があるクラスメートの親御さんとお子さんと一緒に動物園に行きました。するとそのお友達は、パンダの檻の前で「友達の眼鏡をとってはいけません」「友達の眼鏡をとってはいけません」「友達の眼鏡をとってはいけません」と、授業中に担任から注意された言葉をずっと唱え続けました。なぜずっと先生の言葉をオウム返ししているの?なぜ以前言われた言葉を、動物園という状況で言うの?なぜずっと繰り返し唱えるの?「これはコミュニケーションではない。聞いた言葉をただ繰り返しているだけ」と親御さんは悲しそうに言いました。確かにそうだったのかもしれませんが、もしかしたら、一緒に動物園に来たクラスメートと並んでパンダを見ながら先生に言われた場面を思い出し、「お母さん聞いて、先生が『友達の眼鏡をとってはいけません』と言っていたよ」と伝えたかったのかもしれません。息子やほかの自閉スペクトラム症のある子どもたちのことを知れば知るほど、「抑揚とか声の大きさまで含めた会話を要求したり、期待したりすることは難しいのかな…」「そもそもそうした話し方を期待すること自体、親のエゴなのかな」と思うのです。執筆/立石美津子(監修鈴木先生より)言葉を発せなくとも、お子さんが「あー」とか「いー」とか何か声を出したら、それに反応するように親御さんも「あー」とか「いー」と言うように心がけてみてくださいと、健診の時にお伝えしていました。難聴がなければ母音は認識しているからです。新生児期でも名前で呼んであげることが大切です。例えば、「なおちゃん」と呼ぶと最初の「な:NA」の母音である「A」の音に反応することが分かっています。自閉スペクトラム症のオウム返しは聞いたことを確認する行為とも言われています。「私はこう聞いたけどそれでいいですか」という確認を繰り返し行っているともとらえられます。食べたいときに「まだ食べる」と言えたことは、どこかでそういうシチュエーションがあって記憶されていたのかもしれませんね。いろいろな場所へ連れて行っていろいろな経験をさせることが重要なのです。
2022年12月01日自閉スペクトラム症のある娘の病院受診、準備は前日から自閉スペクトラム症と知的障害の診断を受けている娘のまゆみは、身体の一部に生まれつきの赤アザがあります。痛みなどの症状はありませんが、傷あとが残ってしまう可能性があるため、3ヶ月に一度のレーザー治療を受けています。問題になるのが、元気いっぱいフルパワー状態の娘を連れての病院受診。どの場面を切り取っても困りごとの連続で、受診日が近くなると母の心に緊張が走り始めます。Upload By にれ今回は、わが家の病院受診の際の事前準備と、それでも起こる困りごとについてご紹介したいと思います。前日から当日の朝、まゆみが落ち着いているときに、病院へ行くことを繰り返し伝えます。Upload By にれ自閉スペクトラム症のある子どもへの対応でよく言われるのが、「見通しが立たないと不安になるため、予定を本人にきちんと伝える」というもの。4歳半の現在、まゆみは言葉での意思疎通が難しいため理解できているかは分かりませんが、事前に伝えておくことで心構えができるかもしれない・今は分からなくても伝え続けていたらいつか分かるかもしれないと思い、事前に告知しています。病院に到着するも困りごとの連続でまゆみに事前に病院に行くことを伝え、病院へ向かいます。まずまゆみは、車の窓から病院が見えた時点で大泣きします。もう何回も治療のために病院に来ているため、まゆみ自身も「行かなくてはいけない」との意識があるらしく泣きながらエントランスまで歩いてくれますが、広々としたホールに入ると走り出さずにいられません。受付の機械を操作する間にも手を振りほどいて飛び出してしまいます。「走りません、歩きます。病院には具合の悪い人がいっぱいいるから、静かにね」と伝えますが、ほとんど収まりません。病院の受付のために専用の機械に向かいます。今にもどこか行ってしまいそうなまゆみ。仕方ないので、まゆみには機械と私の間に入ってもらい、両ヒザでまゆみを挟んで逃げ出さないようにガードしつつ、受付を済ませます。Upload By にれ長丁場の待合室。いろいろな「時間つぶしグッズ」を持参して受付を済ませ、待合室に到着します。病院での困りごとの中でも長丁場になる場面です。予約をしていても呼ばれるまでに早くて20分。問診のあと、患部に薬剤を塗ってからレーザー照射まで30分を置かなくてはいけないので、トータルで1時間近く待合室で過ごすことになります。まゆみは活発で動き回るタイプなので、放っておくと走り回ったり、ソファの上で飛び跳ねたりしてしまいます。ここでも「走らないよ。ママと座ろうね」と伝えますが、聞こえていないような顔。そこで、あらかじめ興味を引くような時間つぶしグッズを用意しておきます。わが家では以下のようなものが主流です。Upload By にれ【病院の待ち時間に役立つグッズ】・シールブック・マグネットブック・手遊びに便利な色とりどりのシアー素材の布・プリントアウトした家族写真特に家族写真は、人にあまり関心のなさそうなまゆみも興味を示すので、家族への愛着も深まって待合の時間つぶしにもなるという一石二鳥のアイテムです。スマホ画面で見せてもいいのですが、まゆみの場合はスマホを前にするとアプリや動画を見たがってしまうので、デジタルメディアを緊急時の最終手段にしておきたい考えのわが家はプリントした画像を見せています。これらもしばらくは楽しんでくれますが、そのうち飽きて席を立ってしまうので、私も一緒に立ち上がって歩きます。多動傾向のある子にとってずっと同じ姿勢でいるのはつらいだろうと思ってのことですが、周りの方々に迷惑をかけないよう手はしっかりとホールド。お世話になっている病院は廊下と一体型の待合室なので散歩する感覚で歩くことができますが、待合の小さな病院などではトイレへ行ったりすることで気分を変えることも。とにかく身体を動かして呼ばれるのを待ちます。それでもやはり不安なのか、待っているうちパニックになってしまうことがあります。こうなると移動も抱っこも拒否するので本人が落ち着くのを待つしかありません。院内で騒いでしまい申し訳なくなりますが、本人も自分で自分を励まそうとしているのか、涙と鼻水まみれの顔を真っ赤にしながら「がんばろー!がんばろー!」と全身を硬直させて叫んでいるのを見ると私も涙が出そうになります。いよいよ処置室へ。じっとできない娘の診察はなかなか困難長い待ち時間が終わり、いよいよ処置室に入ります。処置中、母親は室外待機となるので、ドアの向こうのまゆみの叫び声を聞きながら待つのみとなります。レーザーを受ける際はじっとしていないといけないのですが、まゆみが動き出してしまいそうになるので看護士さんが三人がかりで押さえているそうです。ハラハラしますが、できることがないので出てくるのをひたすら待ちます。まゆみの診察時の困難として・指示に従えない・自分の症状を上手く伝えられない・じっとできないなどがあります。アザ治療は行う処置が決まっているのでまだよいのですが、これが何かほかの体調の問題だったらもっと困るだろうな…といつも怖くなります。レーザー治療も、本当は押さえつけたり拘束せずに済めばよいのですが、3ヶ月に一度で流れ作業のように進んでいく大きな病院での治療なので、先生との信頼関係を築いていくのも難しく感じています。Upload By にれ数分でドアが開いて大泣きのまゆみが飛び出してくるので、しっかり抱きとめて思いっきり褒めるのが恒例になっています。まゆみも母親の存在に安心するのか、次第に落ち着いてくるので、なだめながら医師の話を聞き、会計へ向かいます。受付と同様、まゆみをホールドしつつ手早く会計処理します。会計が上がってくるまで時間がかかりそうなときは、売店へ行ってお菓子を買ってあげるなどご褒美タイムにしています。病院がつらい記憶ばかりになると次回にも響いてくるので、全体を通してなるべく楽しく過ごさせたり、うれしいことがあったりするように工夫しています。自閉スペクトラム症のある娘の受診で大切にしている4つのこと以上が、わが家における定期受診の流れです。どの場面を切り取っても内心では汗だくになっていますが、治療を始めたころに比べるとかなりスムーズに処置を受けられるようになりました。大事なことは、準備をしっかりとしておいて子どものペースに巻き込まれないことだと思います。また、あらかじめ障害があることを伝えておくと病院側も相応の準備をしてくれるので、私は初めてかかる病院には必ず伝えるようにしています。・本人に事前に伝える・時間つぶしのための綿密な準備・病院側の協力・つらい記憶ばかりが残らないような工夫(次回の受診に備えて)自閉スペクトラム症のある娘の受診には、この4つが大切だと感じています。困りごとの紹介がメインになってしまいましたが、少しでもお子さんの受診を控えてお困りの方のお役に立てればうれしいです。どの保護者さんもお子さんも、診察を乗り切った後はクタクタになっていると思います。病院を受診した日は、ご自分のこともお子さんのことも大げさなくらいに褒めてほしいと私は思っています。執筆/にれ(監修:三木先生より)ご本人もお母さんもよく頑張っておられますね。いろんな方法を用意して時間を乗り切る工夫をされているのは素晴らしいと思います。また記事でも記載のあるとおり病院との連携も大事な準備の一つです。最近では対応を嫌がられることは少ないと思いますので(というか嫌がるところは願い下げでOKです)、頼んでみましょう。
2022年11月28日気になっていた感覚過敏。疑いから確信へUpload By ゆきみ3歳のときに自閉スペクトラム症と診断を受けた長男けんと。感覚過敏について初めて気になったのは「聴覚」でした。普段聞かない音や、大きな音が特に苦手な様子で、親子教室での手遊びや、お遊戯の音も嫌がり、いつも部屋のすみに逃げていました。そして視覚過敏。2~3歳ころ、暗い場所を怖がり、明るい街灯でいつも眩しそうにしていたのを覚えています。年長の夏、臨床心理士さんに「SP感覚プロファイル」という感覚に関する検査を行っていただきました。すると全ての項目の感覚が「非常に高い」という結果に。以前から苦手な感覚があるという意識はあったものの、可視化された表と説明を受け愕然とし、感覚について深く考えるきっかけとなりました。今回は、聴覚過敏と視覚過敏への対応を振り返ってみたいと思います。聴覚過敏があるけど、イヤーマフはもっと苦手?こども園に通っていたころ、苦手な音が聞こえると教室から逃げて、しばらく戻って来られませんでした。よく通る道にレストランがあったのですが、前を通るのを嫌がりました。換気扇の大きな音がなっている場所だったからのようです。Upload By ゆきみ苦手な音が多いのだなと思い、イヤーマフを購入。しかし触覚過敏もあるようで、耳に触れている感触を嫌がり、好んでつけることはほとんどありませんでした。それでは…と、子ども用の耳栓を購入。こちらは耳の穴に何かを入れるのが嫌な様子。好きな音楽が流れてくれば、耳に触れるものでも少し興味をもつかも…と思い、子ども用の極小サイズイヤホンも試してみました。小さな音量ですが大好きな曲を流している間は興味を示しつけていましたが、やはり苦手だったようで、すぐに外してしまいました。原始的な方法に戻り、苦手な換気扇の音がするレストランの前を、母が耳をふさいで通り過ぎ「嫌な音は耳をふさぐ」と伝え続けたら、自分で耳をふさぐようになってきました。通っていた児童発達支援施設でも、音を嫌がり課題に参加できないときがよくありました。無理にでも課題に参加させようとするのではなく、「怖い気持ちをあらわす絵カードを先生に渡す」「音が怖いから教室を出たい」と先生に伝えるというように、「誰かに伝えて安心できる場所へいく」という方法を根気強く教えてくださいました。視覚過敏で偏食に?苦手な形状があるようで以前はごはんをなんでも食べていましたが、年中の夏ころから、急に給食を食べなくなり、食器にフタをして、食べたいものだけを取り出して食べるようになりました。そして、このころから急に偏食に。原因は分からないのですが、視覚からきている気がしました。Upload By ゆきみ家族、お友達が食べているドロドロした見た目のものは全く見られず、気分が悪くなってしまうように。家での対応として、簡易の卓上パーテーションをつくりました。文房具売り場にあったA3サイズのプラスチックボードを4枚貼り合わせたものですが、これを気にいり、今では見たくないものがあるとき「パーテーションつけて」と教えてくれるようになりました。ほかにも視覚で気になるのは、暗闇、明るい光、特定の色味が苦手というところ。こども園の読み聞かせの時間、絵本によっては走って教室から逃げていってしまったそうです。そこで、見たくないものがあったときは「手で目を隠す」というのを伝え続けました。が…見たくないのに、見てしまうということもあります。そういうときは、大人が手で目を隠してあげるようにしています。小学校入学。年齢があがるにつれての変化小学生になった今でも、たまに学校で怖くて勝手に逃げてしまうときもありますが、「怖いから〇〇したいです」などと、自分の気持ちと、どうしたいかを伝えられるようになってきました。学校の給食の時間は既製品のパーテーションを使い、更に窓側に向いてごはんを食べ、ほかの子の食べているものが見えないようにするなど、先生がご配慮してくださっています。構音障害があるうちの子。苦手が上手く伝えられないので、今はしっかりと周りの支援者の方と、どのような感覚が苦手そうなのかを共有して、安心できる場所をつくっておくことも大事なのかなと思っています。Upload By ゆきみ以前は、怖くてしかったなかったようなものでも、年齢があがるにつれ、「これはこの音だから大丈夫」というように変化しているような気がします。でも、苦手な感覚はたくさんあるので、少しずつでいいので自己防衛ができるようになってくれたらいいなと願っています。執筆/ゆきみ(監修:初川先生より)感覚過敏とそれへの手立てに関するエピソードをありがとうございます。けんとくんは感覚過敏に関する検査を取られたのですね。検査を取ることで客観的に把握できる面はありますが、こうした検査はおそらくお子さんをそばでよく観察されている保護者の方にとっては、確認的な意味合いになると思います。そして感覚過敏への手立てを取るにあたっては、検査はマストではありません。お子さんに感覚過敏があるかもと思ったら、さまざまな手立て・工夫を試してみて、お子さんに合う方法があれば採用してみる、というスタンスでいいと思います。イヤーマフやイヤホンなど、うまく合えば、場面の汎用性も高く、気持ちの面でも安心感が高そうに思われますが、合わないお子さんもいます。けんとくんの合う方法は、耳を手でふさぐ。これは道具を忘れてしまっても使える方法なので、これはこれでよいかなと思います(どの方法もその方法が持つ長所短所ありますし、何よりお子さんに合うかどうかが最優先です)。また、児童発達支援施設にて、初期のうちからカードや言葉で“先生に伝える”ということを大事にご指導されたことも、年齢があがったときにそうしたことが必要となる場面が増えるので、よかったのではと思います(すぐには習得できない、難しいテーマではありますが、伝えることが大事だということを知るのは大切なことですね)。視覚的な過敏についても、ツールを自作され、お子さんに合った方法を模索されたとのこと何よりです。ゆきみさんが書かれている通り、見たくないと思っても見てしまうことはあります(感覚の過敏に限らず、お子さん方にはあると思いますし、おそらく大人でもあると思います)。強烈に注意を引く何かから、自ら率先して注意を逸らすのはなかなか難しいので、大人が目をふさいであげるのも工夫の1つですね。感覚過敏については、成長に伴って緩和される面もあります。ただ、何がどのように緩和されてゆくかは個人差があるのではと思います。また、最近の研究では、不安が高まると感覚過敏が悪化するという報告もあります。その環境への安心安全感や取り組むべき事柄(課題など)の適合度といったものが感覚過敏に影響を与えうるということです。感覚過敏に手立てを取ることはもちろんですが、調子の悪い状況では、その環境設定そのものを見直すきっかけとしてみると良いかもしれません。
2022年11月22日1歳半健診で言葉の遅れを指摘される私が住んでいる地域では1歳半健診で「3つ単語が言えるか」聞かれます。スバルは「あー(Car)、バイ(バイバイ)、ばあ(いないいないばあ)」の3つで挑み再検査となりました。再検査と言っても2歳ごろに電話がかかってきて現在の成長の様子を聞かれるという簡単なものです。たまたま1歳半検診で一緒になったお子さんは「ナナ(バナナ)、パナ(パパ)、パマ(ママ)」で問題なしと言われていたので「はは~ん、私の担当の保健師さんはチェック厳しめの人だったんだな」とそこまで気にしていませんでした。今となってはスバルの3つの言葉は単語ではないと思うのですが、当時は特に気にすることなく「2歳で電話がかかってくるころにはおしゃべり上手になっているだろう」とのんきに考えていました。2歳で発達検査を受けるUpload By 星あかり2歳の誕生日を過ぎたころ、約束通り保健師さんから電話がかかってきました。半年前の私の予定では今ごろスバルはペラペラおしゃべりしているはずでしたが、実際には「ガーキ(トラック)」の単語が増えただけでした。なんなら単語とカウントして良いのかも怪しい1語です。それを保健師さんに正直に話したところ、発達検査を受けにくるように言われました。2歳になっても言葉がほとんど伸びていなかったスバルですが、そのころにはひらがなが10個くらい読めるようになっていました。もともと絵本が大好きなスバルですが、1歳半検診のあとから言葉を伸ばそうと絵本の時間を増やし言葉の成長を促しました。その結果、言える単語はほとんど増えていないのに、ひらがなが読めるようになっていたのです。私は単語が言えないことにほんの少し不安を覚えつつ、「でもひらがなは読めるしな」と言う謎の自信を持って発達検査に挑みました。発達検査では最初から最後まで集中して話が聞けました。言葉に関する項目以外は得意と不得意はあるものの、指示を理解して行動できていました。そして「言葉が遅い以外に問題はないので様子を見ましょう」と言われました。その後2歳から3歳の間に、簡易なものも含めて数回検査がありましたが、毎回「言葉が遅いだけ。様子を見ましょう。」と言われ、私はのんきに「専門家に『言葉が遅いだけ』のお墨付きをもらった」と言葉のままに様子を見守るのでした。絵本の時間をさらに増やした結果2歳を過ぎるとカタコト単語で話していた周りの子たちが軽快にトークを始めてさすがにあせりました。そしてさらに絵本の量を増やす日々…。Upload By 星あかりその結果、3歳の誕生日のころにはひらがな基本の50音が読めるようになりました。しかし単語は1個も増えず。「お」「か」「あ」「さ」「ん」が読めて発音できるのに「おかあさん」が言えない謎の状況に心が折れそうになりました。しかし忘れもしない3歳の誕生日の数日前、黄色い車を指差して「きいろ」と言ったのです!それからまさに「言葉のコップが溢れる」ようにあっという間に単語で会話できるようになりました。「言葉が遅いだけ」と言われていたスバル。言葉の問題をクリアしたら、もう怖いものなし!という訳にもいかず、3歳の誕生日を過ぎてから受けた発達検査で「自閉スペクトラム症」と診断されるのでした。診断がおりてからもまたいろいろなトラブルや問題、そして成長もあり…!そんなスバルとの日常を描いていきたいと思います。執筆/星あかり(監修:鈴木先生より)1歳半健診では有意語1語、3歳児健診では2語文が出れば問題ないというのが私の健診での一つの基準です。中には理解があり集団に入ってから言葉が増えるというお子さんもおり、表出型の言語発達遅滞と考えられています。小児科医が言葉の遅れで最初に確認するのは難聴の有無です。中耳炎やおたふく風邪などに罹患した後に難聴になることがあります。客観的な検査としてはABR(聴性脳幹反応)があります。小児科の神経外来で相談することをお勧めします。親や祖父母が何でもやってあげてしまうと、言葉を発する機会を失いがちです。服を脱いだり、靴を履いたり、いろいろとやらせてあげることも重要です。できないときに初めて「ママ―」と呼べるからです。また、幼少期からテレビなどの電子メディアの見過ぎも要注意です。会話のキャッチボールがなくなってしまい、言葉を発する機会も少なくなってしまいます。見るときは親子で一緒に、会話をしながら見ると良いと思います。
2022年11月14日とりあえず聞いてみよう!思い切って訪問した教育センターUpload By カタバミ自閉スペクトラム症と知的障害があるまちゃには、2歳上にお姉ちゃんがいます。まちゃが年少の秋、お姉ちゃんは年長で、就学の準備を始める時期になっていました。公立の小学校に入学予定でしたが、決められた学区の小学校は家から遠く、学区外の小学校のほうが家から近い距離にありました。また、お姉ちゃんの友達の多くはわが家では学区外にあたる小学校に入学予定だったため、お姉ちゃんは学区外の小学校に行きたがりました。しかし、私は迷いました。お姉ちゃんの小学校を決めるということは、2年後弟のまちゃも同じ小学校に入学する可能性が高いからです。お姉ちゃんが希望している学区外の小学校には知的障害を伴った特別支援学級がありません。でもまだまちゃは年少なので、これから知的発達に変化があるかもしれないとも考えました。迷った末、地域で就学についての相談を受けていた教育センターに行ってみました。就学する本人が年長にならないと就学についての相談は受けつけないと聞いていましたが、きょうだいの就学のタイミングで相談したいと思ったからです。教育センターでは門前払いかもしれないと心配しましたが、丁寧に対応していただけました。説明していただいた中で特に頭に響いたのは「障害者手帳の等級が軽度ならだいたい特別支援学級で、等級がそれ以上なら特別支援学校を選ぶ方が多いです。でもこの地域では保護者の意思が尊重されます」という言葉でした(これはお住まいの地域によって変わってくると思います)。結局、お姉ちゃんの小学校は学区外に決め、まちゃの就学先は様子をみながら決めていくことにしました。障害者手帳の等級が軽度なら特別支援学級?でも…まちゃの障害者手帳には事情がUpload By カタバミまちゃは障害者手帳を幼稚園入園前に取得していて、等級は軽度です。検査したその場では「中度」と言われたのですが、数週間後に正式に出た結果は「身辺自立はできているので軽度」ということでした。まちゃはその場でほとんど検査を受けることができず、ほぼ私からの聞き取りで結果が出たのです。検査をしてくれた先生の言葉を発達センターでまちゃを担当してくれている臨床心理士に報告したら「たしかに中度よりの軽度ですね」と言われました。就学するころに中度になることは十分想像できます。教育センターの方の言葉を思い出し、特別支援学校を選択する可能性はあるのかな?と思いました。それからいろいろと聞くと、検討している特別支援学校では全体的に身辺自立などを教えていることが分かりました。トイレや着替えなど、身辺自立はまあまあできているなら、まちゃは特別支援学級なの?とも思いました。でも、幼稚園の園長先生から「まちゃくんはお母さんやお姉ちゃんの言うことはとても良く聞くんです。ですから園の苦労がなかなか伝わらないのかもしれません」と言われていました。家で身の回りのことが比較的できて穏やかなまちゃは、外では別人のようなのかもしれないとも思っていました。そんなこともあり、特別支援学級、特別支援学校のどちらがまちゃに合いそうなのか、分からずにいました。年中からは近所で評判の良かった児童発達支援事業所に入ることができました。でもそこで就学についてのアドバイスはなく、担当の小児科医からも「然るべき機関と相談してください」と言われました。相変わらずまちゃの発語はほぼ単語のみで、私は家以外でのまちゃを客観的にみてくださる方がいれば相談したい…と思っていました。経験豊富な先生の視点が欲しい。年長から療育園へUpload By カタバミ通っていた児童発達支援事業所がコロナ禍で短縮されたのを機に、思い切って年長から療育園に入園しました。まちゃの発語を増やしたいとも思いましたし、経験豊富な先生から就学先へのアドバイスがほしいとも思っていました。療育園に入園すると見学が比較的自由で、マジックミラー越しに私のいないところでのまちゃの様子をたくさん見ることができました。療育園でのまちゃは自宅ほどではありませんが落ち着いていましたし、念願が叶って、就学担当もされている大ベテランの方が担任をしてくださいました。初夏の面談でその先生から「まちゃくんは45分間座っていられそうなので特別支援学級を考えてみてください」と言われて驚きました。私が「でも言葉をしゃべることができませんし、あまり理解もしていないようです」と言うと先生はうなずいて「でも、まちゃくんの様子なら特別支援学級も視野にいれてもいいと思いますよ。ぜひ考えてみてください」と繰り返しました。面談の際、療育園には教育センターの方も直接来てくださっていました。私は特別支援学校と知的障害クラスがあって家から通える特別支援学級をいくつか見学したいと希望を伝え、見学できることになりました。特別支援学校の見学&体験Upload By カタバミ特別支援学校は親だけの見学の日と、親子が一緒に行って授業を体験する日がありました。親だけの見学の際には校舎を数時間かけて案内・説明してくださる方もいて、何から何まで「しっかりしていて頼れそう」な気がしました。体験時はまちゃも楽しそうで、もっと遊びたいと駄々をこねて寝転がったこともありましたが、先生は全く動じず笑顔で対応してくださってまぶしいほどでした。在校児童にまざって授業も受けましたが、どのお子さんもちゃんと座っていましたし(新学期には無理でしたよ、と説明されました)、授業の内容をよく理解しているなと感じるお子さんもいました。ただ、帰りの準備や着替えなどにたくさん時間をとっているように感じたので、身辺自立はまあまあできるまちゃは持て余す時間も多いかもしれないと思いました(支度が早くすんだお子さんには先生のお手伝いをしてもらったりしますと教えていただきました)。私たちの住んでいる地域では特別支援学級か特別支援学校なのかを選ぶのは保護者の選択によります。特別支援学校、特別支援学級のどちらがまちゃに合いそうなのかまだ判断できすにいましたが、まちゃ年中のころから平仮名や数字の勉強を少しずつ始めていて、数字をそれほど苦もなく覚えていたので、私は学校ではぜひそういった勉強をして欲しいと思っていました。特別支援学校ならまちゃを安心して通わせることができそうだけれど、特別支援学級の様子もぜひ知りたいと思いました。まちゃの就学先を特別支援学級と選択するのは、これより少しあとになってからのことです。執筆/カタバミ(監修:初川先生より)特別支援学校か、特別支援学級か。まちゃくんのお姉さんが就学のタイミング(まちゃくん年少時)から検討を始められたとのこと、とてもよいですね。カタバミさんはきょうだいで違う学校になる可能性も考えていらしたようですが、さまざまな事情からきょうだいは同じ学校でとお考えになる方もいらっしゃるだろうと思うので、上のお子さんの就学時から検討することもありますね。就学相談として受理されるには、お子さんが年長になってからという枠組みの自治体も多いと思います。今回、まちゃくんのご相談を教育センターで聞いてくださったのはなかなかよい計らいだと感じました(正式な相談としてではなく、情報提供として簡単な助言を下さる場合などあると思います)。カタバミさんが、まちゃくんの家での様子のみをふまえて、特別支援学校か特別支援学級かを検討されるのではなく、集団場面(あるいは親である自分のいない場面)でのまちゃくんの様子を知ってそれから判断したいと考えられたこと、とてもよかったと思います。環境によってお子さんのふるまいや居心地は変わります。学校生活に近い環境を見たい、そして、ベテランの先生方にも療育での様子ふまえてご意見うかがいたいと思われたこと、大切な視点ですね。そして、子どもの成長はなかなか大きいので、年長の際にぐんと伸びる場合もあると言えばあります。そのあたりも悩ましいポイントかもしれませんね。就学相談での判定(特別支援学校、特別支援学級など、どこがお子さんに合っているかの判定)は、強制力があるものではなく、あくまでもそれを参考に最終的には保護者・お子さんの希望で就学することができます。もちろん就学相談での判定は各種専門家やこれまでの様子の観察や検査結果などふまえて総合的に出されるものなのでとても意味のあるものです。それをふまえて、就学相談担当(あるいは就学予定先の学校の先生方らなどと)相談しながら最終的に就学先を決めていただければと思います。
2022年11月08日こんにちは、マミヤです。旦那と、自閉スペクトラム症の娘しぇーちゃんと暮らしている主婦です。今回は、娘と旦那の親子関係についてのお話。どうして父である旦那と娘の関係がこじれていったのか、関係修復のため夫婦で試行錯誤した記録です。■我が家はひとりっ子兄弟かひとりっ子のメリットは簡潔に書いてるだけで、もちろん兄弟がいたって仲が悪かったりひとりっ子で寂しいなど、いろいろなご意見があるのは承知しております。我が家は頼れる実家もなく車もなく、出産前からひとりっ子予定だったのが、娘を育てる大変さから「これ絶対ひとりしか私のキャパでは無理だ」となりました。■旦那は産後うつだったのかも!?まさかの赤ちゃん時代からです。旦那はかなり頑張ってくれていました。しかし娘は育てづらい子で、さらに母親に対しこだわりがあるので、旦那が面倒を見ているときは大体泣くか機嫌が悪かったのです。それでも寝かしつけを頑張っていてくれたのは、私を少しでも休ませてくれようとしていたからです、今でも感謝しています。最初は家族3人で寝ていたのですが、旦那は5時間以上トイレが我慢できない人で、産後その音で私が起きて寝れなくなってしまって…(ちなみに、出産前は大丈夫だった)。さらに娘は当時夜2~3回夜泣きで起きる日々…。寝かしつけは、段々交代制に落ち着きました。しかし、旦那が当番の日に号泣する娘。無意識にですが舌打ちしてるのを見かけ、これはもう限界なんだと悟りました。仕事もして、夜も子どもを見て、嫁から休日は公園へ行けと言われ、発達障がいの勉強しろ、子どもを理解しろ、そして子どもには泣かれ…今思えば旦那はキャパオーバーだったんだと思います。そしてこの日から旦那は娘の寝かしつけをしていません。正確には娘に拒否され続けてます。ちなみに生後2ヶ月まで実家にお世話になりましたが、実母は5kg痩せました…。次回に続く「娘と旦那の仲が悪くて困っています」(全11話)は12時更新!
2022年10月27日2歳10ヶ月のとき、知的障害を伴う自閉スペクトラム症と診断された娘Upload By にれはじめまして、にれです。娘のまゆみは、2歳10ヶ月のときに「知的障害を伴う自閉スペクトラム症」と診断されました。「何かほかの子どもと違うかも?」と思い始めた1歳ごろ以降、こちらの働きかけに応じる様子がなかなか見られないまゆみに対し、私は娘が何を感じているのか、考えているのか全く分からないと悩んでいました。母親である私の生きている世界とは全く別のところに意識がいっているように思える子どもだったのです。Upload By にれ2歳半になっても、まゆみの口から出るのは喃語ばかり。でも行動はかなり激しく、テンションが上がると弾かれたピンボールのようにあちこちにぶつかりながら部屋中を走り回っていました。親の制止はもちろん通じません。「私がこの子にルールを教えてあげないと…」と試行錯誤するものの、成果がみられない日々にいっそう悩みは深まっていきました。そんなまゆみでしたが、療育のおかげもあってか3歳ごろから少しずつ言語や社会性の面に成長が見られるようになっていきます。Upload By にれ4歳半となった現在、ようやく社会性がでてきたような気がします。未だ意思疎通の難しいところはあるものの、少しずつ言葉も出てきて簡単な指示なら聞いてくれるようになってきました。現在のまゆみの発達は以下のような状態です。発語:ほぼエコラリア(オウム返し)と何か分からない言葉。ごくたまに自分の感じた一言も。識字:ひらがな、アルファベット大文字、数字の1~30。行動:一時よりは多動も落ち着いた傾向。でも油断すると壁に激突するので要注意。トイレ:絶賛トイトレ中!自分の便で遊んでしまうことがあるので、発見が遅れると悲惨。社会性:挨拶のやりとりや、「かして」「どうぞ」を練習中。困りごと:偏食、こだわり、多動傾向。現在まゆみは単独通所型の療育を2ヶ所利用していて、合わせると週5~6のペースで通っています。最大の課題はやはり集団生活に向けた社会性。来年4月の保育園入所に向けて頑張る毎日です。特性のある子どもを育てていて思うことまゆみが1歳半~3歳くらいのころ、「わが子と気持ちの通じ合う日は来るんだろうか」「まゆみは将来どうなるんだろう」と考えてはよく涙していました。発達に良いとされることを片っ端から試してみたり、まゆみの興味のありそうなものを見つけては飛びついたり、とにかく「まゆみを救ってくれるもの」が何かあるんじゃないかと期待しては失望することの繰り返しで、私はだんだんと疲弊していきました。神経発達症(発達障害)のメカニズムは未だ完全に解明されておらず、ネットで得られる情報も玉石混交です。何かないかと検索しては不確かな情報に踊らされまくった私は、確かな情報を得るために知識をつけようと、大学の通信学部で臨床発達心理学を学び、発達支援などに関する民間資格を取得しました。わが子のためになることなら何でもやってやろうと、鼻息も荒く意気込んでいたのです。けれどそのうち、もっと大事なことに気づきました。知識をつけることはもちろん大事なのですが、一番大事なのは、目の前のわが子をよく観察してたっぷりの愛情を注ぐことだと思うようになりました。当たり前のことなのですが、その当たり前のことに気づけなくなるくらい、「何かしなくちゃ」とかつての私は焦っていたのです。Upload By にれ障害児育児は孤独や焦燥感との戦いでもあると思います。そんな中で、自分も子どもも笑顔でいられる道があるなら、きっとそれが正解なんだと感じています。結果として、真剣に学んだことはまゆみにとっても私自身にとっても正解でした。もし目の前に当時の私と同じように悩んでいる人がいたら、「自分が納得するまでとことん何でもやってみたらいいよ!」と背中を押すでしょう。それは、子どものためというのもありますが、大きくは親としての自分の気持ちを救ってあげることにつながるから、という理由です。最初に通っていた母子通所の療育で、「こんなにやってるけど、まゆみには通じなくて空回りばかりです」とこぼした私に園長先生が言った言葉は、今も私の心の指針になっています。「自分が納得するまでやってみたらいいよ。やりきったら、もし子どもの発達に打ちのめされることがあっても『こんなにやったのに』じゃなくて『ここまでやったから』と思えるようになる」。同じ境遇で悩んでいる方の力になれたらおこがましいかもしれませんが、同じような境遇で悩んでいる親御さんに「あなただけじゃないよ」と伝えたい気持ちで漫画を描き始めました。百人いたら百通りの自閉スペクトラム症があるといわれるくらい、特性の出方に幅があるのが自閉症育児。どこまで私とまゆみの経験がお役に立てるかは分かりませんが、もし少しでも読んだ方の気持ちが軽くなる瞬間があることを願って、コラムを書かせていただこうと思います。まだまだ勉強中の身ではありますが、育児も漫画も「ここまでやった」と思えるように頑張りたいです。これからどうぞよろしくお願いいたします!執筆/にれ(監修:初川先生より)にれさん、最初のコラム(自己紹介とまゆみちゃん・にれさんのこれまでの経緯)をありがとうございます。コラムを拝読して、「分かる、分かる」と共感的に読まれた読者の方も多いのではと感じました。「わが子と気持ちが通じ合う日は来るのだろうか」、その不安と焦りから、さまざま学ばれ、資格まで取得され、にれさんご自身がさまざまな知見・知識を得られたこと。その日々の中で、大事なのは知識ではなく、目の前の子に愛情をいっぱい注ぐことだ、と気づかれたこと。「当たり前のことなのですが」と書かれていますが、しかしながらその境地は、それまでのプロセスあってのことだと思います。お子さんに障害があるとなれば、不安になるのは自然なことです。その障害について知らないことが多いと思いますので、まずは知るところから始めるというのもよかったと思います。発達障害、知的障害については、理解と手立てに関する知見・研究がかなり蓄積されています。知識として知っているだけで、育児というものは手探り感はぬぐえないですが、そうした手探りの育児に少し安心感が伴えるかもしれません。私がにれさんのスタンス・心持ちが素敵だなと思ったのは、その末に「よく観察して愛情をいっぱい注ぐ」に至っていらっしゃること。まゆみちゃんの育ちやつまずきを、すべて「自閉スペクトラム症だから」など、障害という文脈だけで捉えてしまうと、「知的障害のある自閉スペクトラム症の子を育てている」ことに集約されてしまい、お子さんからすると「家に療育の先生がいる」になってしまうこともあるだろうなと予想されます。にれさんが育てているのは、まぎれもなく「にれさんのお子さんのまゆみちゃん」であり、それは障害といった文脈だけですべてが説明できる存在というわけではありません。もちろん障害という文脈も大切ですが、それだけではない家族の営み(親子関係)やまゆみちゃんの日々の生活・育ちがあって、そうしたものすべてを「障害」で回収してしまわずにそのままに受け取っていっていただけたらと思います。これからのコラムも楽しみにしています。
2022年10月27日年長春放課後等デイサービスを調べ始めた市の就学相談を受け、特別支援学級を希望していた自閉スペクトラム症のあるけんとは、こども園に通いながら週に4日、園が終ったあとに通うタイプの発達支援施設に通っていました。集団行動、体を動かすことなど、苦手なことがたくさんあったので、小学生になったら放課後等デイサービスに通わせたいと思い、年長の春ころからどこに通うか調べ始めました。Upload By ゆきみ専門職の先生方がたくさんいらっしゃる人気の施設に問い合わせると、2年待ちくらいとのこと。待機の予約をさせていただくことにしました。ほかの施設にも問い合わせてみると、状況や予約の方法がそれぞれ違うようで「新1年生の予約は受け付けないので2~3月ごろに電話をしてください」というところもありました。運動特化型、お勉強特化型、集団行動を通していろいろな体験をする…などたくさんの施設がありましたが、送迎サービスを行っていないところでは弟の迎えの時間と照らし合わせたりする必要もあり悩みました。そして、いくつか見学に行くことに。環境の変化が苦手なことを考慮し決めたことUpload By ゆきみ夏ごろから、いくつかの放課後等デイサービスに見学に行きました。療育内容、時間帯、送迎の有無などを聞かせていただき、悩む日々。そんなとき、家のポストに入っていた地元のフリーペーパーで「新規オープン」の施設を発見!見学に行くと、けんとの課題である指先を使った制作、粗大運動、ビジョントレーニング、などの課題を行いながらSST(ソーシャルスキルトレーニング)を学んでいけそうで、送迎もあるとのこと。ココだ!と思い、週に4日通うことにしました。体を動かすのが苦手なので、本当は運動特化型の放課後等デイサービスにも通いたかったのですが、小学校生活が始まるだけでも環境の変化で大変そうな気がしたので、まずは1ヶ所の施設にすることに。小学生になり、そこに実際に通ってみて、毎日とても楽しそうにしています。夏休みには公園、消防署、展望室、工場や科学館などへ社会科見学にたくさん連れて行ってくださり、経験を重ねることができました。受け皿がない?構音障害リハビリ探しUpload By ゆきみけんとは構音障害があり、何を言っているのか聞き取るのが難しい子どもです。病院で言語訓練(ST)、作業療法(OT)を月に1回ずつ受けていましたが、小学生からは年齢制限で対象外。年長の春ころから、小学生になってからも受けられるところを探し始めました。インターネットで調べたり、発達支援センター、病院の先生方、発達支援施設の先生方、担当の相談員さんなど、心当たりがないか、とにかく聞いてまわりました。しかし、住んでいる地域には、言語聴覚士さんがいらっしゃって、空きのある放課後等デイサービスも、自費で受けられるところもありません。小学校で受けられるという「ことばの教室」は通級指導教室の子どもだけということで対象外。地域によって制度は異なるかもしれませんが、うちの地域では特別支援学級に通う子どもは、受け皿がないという状況に絶望しました。それでもあきらめずに支援者の方々に何度もお聞きしていたら「そういえば…あそこならいけるかも」と思い出した方が話を通してくださり、ついに見つかりました。家から離れた病院ではあったのですが、とてもありがたく、現在通わせていただいています。保育所等訪問支援を利用して思ったこと児童発達支援事業に通っていたころ、そこに通うほかのお子さんが「保育所等訪問支援」を利用していました。日中多くの時間を過ごしている園や小学校などに、支援員さんが訪問し、担任の先生と直接お話をしてくださったり、子どもの困りごとを見つけてくださったりするということで気になっていました。小学生から利用したいと思い、お世話になっていた児童発達支援事業の方にお願いさせていただき契約。Upload By ゆきみ小学校に通い始めてからのお話ですが…正直、もっと早くこの制度を利用していればよかったと後悔しています。専門の知識をお持ちの支援員さんが対応してくれるので説得力があり、親の立場からお願いしづらい部分もフォローしてくださっているように感じます。私自身も、支援員さんの見解をお聞きして、とても勉強になることや新発見も多いです。子どもが年長になってから、普段の生活に加え、就学に向けての準備が本当にたくさんありました。考えることも多く、頭が混乱してしまうことも正直ありました。そんなときは大好物のお菓子を少し食べてリフレッシュ。とにかくあっという間の1年間でした。執筆/ゆきみ(監修:井上先生より)就学に際して学級選択以外に、お子さんに合った放課後等デイサービスの情報集めや見学など、さまざまな選択を一度にしなければいけないというのは大変だったと思います。ゆきみさんのように、お子さんの特性やニーズに合わせた事業所を地域で探されることは、場合によっては難しいこともありますが、相談支援専門員さんなどに相談していくことで保育所等訪問など、現時点で使えるサービスを発見できることもあります。先輩の親御さんから地域の情報を聞くのも良いかと思います。
2022年10月24日自閉スペクトラム症のある息子にとって虫歯予防は困難ばかり!Upload By みん幼いころのPはおやつなどの間食も多く、一日中冷蔵庫の前やお菓子を置いている戸棚の前で、自分が食べたい物を私に要求していました。私は毎日24時間Pへの対応に疲れ果てていたころだったので、少しでも癇癪を防ぐため、大人しくしてもらいたいがために、おやつを欲しがるだけ与えてしまっていた時期もありました。そんな食生活を続けていたので、いつしかPに虫歯ができてしまいました。Pの虫歯に悩んだ私は、保健センターに問い合わせて障害児の治療も可能な近所の歯科医院を教えてもらい、通院することにしました。そこでは「治療をするにはまだ危険で難しい」という話になり、まずは場所や人に慣れることから始めることになりました。何回か通っていくうちにPも少しずつ慣れて、やっと診察台に乗れるようになったのですが、仰向けになって口を開けて先生に歯磨きをしてもらう段階になると拒否して暴れるので、身体を抑えつけて先生に進行止めの薬を塗ってもらったり歯磨きをしてもらったりしていました。そんなことを繰り返しているうちに、Pは歯科医院への道を通るだけでパニックを起こすようになり、最後は歯科医院の中へ入ることすらできなくなってしまいました。Upload By みんせっかく慣れた歯医者がトラウマになってしまい困った私は…慣れるために時間をかけて1年以上も通っていたはずだったのに、力ずくで抑えつけるという間違った対応の仕方のせいで、歯科医院に慣れるどころか結局はトラウマだけが残ってしまい、虫歯もどんどん進行してしまいました。こうして近所の歯科医院へはこれ以上通院することができなくなり、先生に紹介状を書いてもらって「障害歯科」を予約し、全身麻酔での治療に進むことを決意しました。障害歯科は1日に4組までしか予約を取っていないので、すぐには診てもらえず、予約をしてから3〜4ヶ月ほど待ちました。全身麻酔での治療になるので、事前に麻酔についての説明があり、前日から私もPもしっかりと準備をして、障害歯科へと向かいました。初めて行った障害歯科の雰囲気は、待合室にはPのほかには1人しか来ていないので、とても静かでほかの人に迷惑がかかることもなく周りを気にすることもなく、落ち着いて過ごすことができました。そして対応してくださる先生たちも、障害のある人に対して知識や経験のある先生ばかりで、親子ともにとても安心できました。治療のために全身麻酔をしてPを眠らせるときに、私はとても後悔をしていました。こうなってしまったのもPに虫歯を作った私の責任だ…と、眠ったPの顔を見ながら申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。それから約2時間後、無事に虫歯治療は終了し、Pが麻酔から目覚めると帰宅することができました。私は治療が済んだ安心感と、とりあえずはこれで虫歯の悩みから解放されるのでホッとしていました。1年以上も治療ができない歯科医院へ苦労しながら通って悩んできたけど、もっと早くに障害歯科で治療をする決断を私がしていれば良かったなと思いました。Upload By みんわが子にとって「今」何をどう選択するべきなのか?を親が見極める必要性。思えば長男は虫歯を作ったことがありません。歯磨きをするのも歯科医院へ行くのも親子ともに全く苦労をしたことがなかったのです。でも障害のあるPの虫歯予防と虫歯治療は、どれだけ大変でどれだけ苦労をしたか…と思い返しながら難しさを痛感していました。まずは歯磨きや歯科医院に慣れてほしいと思う私の願いよりも先に、Pの場合はとにかく治療をして、慣れるのはあとから時間をかけてゆっくり始めても良かったのかもしれません。実際、あんなに難しかった歯磨きも、Pが療育を受けながら成長すると、徐々にスムーズにできるようになり、今では自分から「歯磨き」と私に伝えにくるほどになりました。Upload By みん何をするにも、何を選択するにも、その子その子のタイミングがあるのだと思います。Pの発達や状況をしっかりと観察し、今のPの発達段階では何が可能なのか?何が難しいのか?を考え、親の希望するタイミングではなく、P自身のタイミングを見極めながらさまざまな選択をしていけるようになりたいです。執筆/みん(監修:藤井先生より)歯磨きができないならせめてうがいだけでも、とPさんには負担をかけたくないけれど、虫歯予防もしなくてはと、頑張ってこられたみんさん、後悔しながらも、諦めずに向き合われて、今があるのだと思います。Pさんの成長とともに、今では自ら歯磨きをするようになったとのこと、この体験談を通じて、歯磨きを嫌がるお子さんを育て中の親御さんに励ましとなりますね。
2022年10月17日カサンドラ症候群になりやすい人は?治療や対処法などあるの?Upload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンカサンドラ症候群になりやすい人は?カサンドラ症候群とは、家族や身近な人に自閉スペクトラム症(ASD)があることでコミュニケーションを築くことが難しく、対人関係の問題や心身の不調が生じている状態のことです。※カサンドラ症候群は世界的に広く用いられている精神疾患の診断基準『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)には記載がなく、医学的な疾患名ではありません。カサンドラ症候群になりやすい人は、性格的に、真面目、几帳面、完璧主義、忍耐強い、面倒見が良いなどの事例が多いようです。自閉スペクトラム症(ASD)の発現は男性に多いため、パートナーとなる女性側にカサンドラ症候群の発生割合が高いといわれていますが、必ずしも女性だけがカサンドラ症候群になるとは限りません。自閉スペクトラム症(ASD)のある家族が、社会性に欠けた言動をしたとしても、怒ったり放り出したりせず我慢し受け入れようとする忍耐強さがうまく機能せず、偏った関係性が固定化して、カサンドラ症候群へと進行してしまうことがあります。カサンドラ症候群の治療や対処法はあるの?カサンドラ症候群の治療法として、まずは症状として現れている抑うつ症状や不安障害について、薬物療法や認知行動療法などによるアプローチをすることが可能です。ただ、あくまで対症療法です。自閉スペクトラム症(ASD)のある家族や友人との関係性の改善や変化を目指さなければ、根本的な解決にはつながりません。まずは、パートナー同士や家族で孤立しないこと、カサンドラ症候群のある人は相談先を持つことが肝心です。・家族や友人に自閉スペクトラム症(ASD)の診断を強要しない自閉スペクトラム症(ASD)のある人は社会的に適応していることも多く、自身の特性に気づいていない場合もあります。そういった際に、無理に医療機関での受診をすすめると、本人の気持ちを傷つけてしまい、関係がこじれることもあるかもしれません。診断を検討する場合は、特性や症状について話し合ったり、理解している段階を経た上で医療機関に行くようにしましょう。・自閉スペクトラム症(ASD)の特性や対応方法について知る自閉スペクトラム症(ASD)の特性について書籍や情報サイトなどで調べてみましょう。自閉スペクトラム症(ASD)のある人が苦手だったりつらくなったりするきっかけやこだわりへの理解を深めることで、環境調整や自閉スペクトラム症(ASD)のある人が理解しやすいコミュニケーションを行う際に役立ちます。ただ、特性について学んだ知識を自閉スペクトラム症(ASD)のある人に押し付けると、反発を招くことがあります。特性はその人それぞれなので、その人に合った対応方法を取るようにしましょう。・行動の理由を相互理解し、生活上のルールを決めるお互いに話し合いながら行動の理由を教え合い、相手の行動に関する理解を深めます。また、生活の上での決め事、ルールをつくることで相手の意見を尊重することにつながります。・距離を置くことや関係性を変える、相談できる第三者とのつながりをつくる家の中にお互いの個別スペースを持つなど、住環境の変更など物理的な接触回数を減らしてみることも、関係性を変えるきっかけをつくる一つの方法です。また、親子の場合も含めて、発達障害の相談機関のカウンセラーや、主治医など相談にのってもらえる第三者を入れての話し合いをすることなども有効かもしれません。お互いに理解していくための一歩をカサンドラ症候群には医学的な疾患名でないこともあり、自分と自閉スペクトラム症(ASD)がある人との間の個人的な問題であると捉えられて理解が得られず、一人で悩みやつらさを抱え込む方も多いようです。もし、抱えている悩みやつらさがあったら、自閉スペクトラム症(ASD)への理解や知見のある発達障害者支援センターや、発達障害専門外来を持つ精神科などの専門機関に相談してみるとよいでしょう。また、全国にはカサンドラ症候群当事者による自助グループもあり、相談や共感を得ることで、治療につながる例もあるため自分に合う場を探してみるのもよいかもしれません。カサンドラ症候群は、どちらか一方が悪い、どちらか一方が正しいというものではないため、自分や相手を責めたり背負いすぎず、お互いに理解しあうための一歩を踏み出してみましょう。イラスト/taeko
2022年10月11日カサンドラ症候群とは?どんな症状なの?原因は?Upload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンUpload By マンガで分かる発達障害のキホンカサンドラ症候群とは?カサンドラ症候群とは、家族や友人などの身近な人に自閉スペクトラム症(ASD)があることでコミュニケーションが難しく、対立や人間関係での満足感の低下、心的ストレスから不安障害や抑うつ状態に陥っている、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの心身症状が起きている状態を指す言葉です。特に妻や夫といったパートナーに起こる場合が多いといわれていますが、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもを育てる親がカサンドラ症候群になる場合もあります。なお、世界的に広く用いられている精神疾患の診断基準『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)には記載がなく、医学的な疾患名ではありません。カサンドラ症候群以外にも、「カサンドラ情動剥奪障害」「カサンドラ状態」などと表現されることもあります。カサンドラ症候群の症状自閉スペクトラム症(ASD)やカサンドラ症候群に関する研究が多くある英国の心理療法家マクシーン・アストンによると、カサンドラ症候群には以下の要素があるとされています。・少なくともいずれかの家族に、自閉スペクトラム症(ASD)特性などによる、共感性や情緒的表現の障害がある・ 家族との関係において情緒的交流の乏しさを起因とした激しい対立関係、精神または身体の虐待、人間関係の満足感の低下がある・精神的もしくは身体的な不調、症状(自己評価の低下、抑うつ状態、罪悪感、不安障害、不眠症、PTSD、体重の増減など)がある参考書籍:アスペルガーのパートナーと暮らすあなたへ:親密な関係を保ちながら生きていくためのガイドブックさらに、カサンドラ症候群の命名者シャピラの定義では、ここに「その事実を他の人に伝えても理解をしてもらえない、信じてもらえないこと」が加わります。カサンドラ症候群の原因カサンドラ症候群を引き起こす発端には、身近な人の自閉スペクトラム症(ASD)の特性によるトラブルがあるといえます。では一体、カサンドラ症候群の発端となる自閉スペクトラム症(ASD)の特性とはどのようなものなのでしょうか。自閉スペクトラム症(ASD)には「社会性と対人関係・コミュニケーションの困難」「行動や興味の偏り」といった特徴があるといわれています。表面上は問題なく会話できるのですが、その会話の裏側や行間を読むことが苦手です。明確な言葉がないと理解がむずかしく、比喩表現などをそのままの意味で鵜呑みにしてしまう傾向があるため、人の言葉を勘違いしやすく、傷つきやすい面があります。具体的な例としては、曖昧な表現が苦手だったり、不適切な表現を使ってしまうことなどがあります。また、場の空気を読むことに困難さがあり、相手の気持ちを理解したり、それに寄り添った言動が苦手な傾向にあります。そのため、社会的なルールやその場の雰囲気を無視をしたような言動になりがちで、対人関係を上手に築くのが難しい場合がみられます。具体的な例としては、気持ちの理解が苦手なことで相手を傷つけたり、自己中心的と思われる言動や行動をしてしまうことなどがあります。いったん興味を持つと過剰といえるほど熱中する傾向があります。法則性や規則性のあるものを好み、異常なほどのこだわりを見せることもあり、その法則や規則が崩れることを極端に嫌う傾向があります。一方、この特性は逆に強みとして活かすこともできます。具体的な例としては、自分のルールがあったり、興味のあることに対して話し続けてしまうことなどがあります。周囲の人たちは、自閉スペクトラム症(ASD)の特性だと分かっていても、自閉スペクトラム症(ASD)のある人と接していくうちに、うまくコミュニケーションがとれないことに自信をなくしてしまったり、周囲に相談しても理解をしてもらえず、孤独を感じてしまう場合があります。特に、家族は毎日の生活の中で接する機会が多く、家族であればなおさら、心を通わせたいと思う気持ちは強いでしょう。それが難しいときストレスを感じるのは、ある意味当然のことかもしれません。その結果、体調不良や抑うつ状態に陥ってしまうことがあるのです。イラスト/taeko
2022年10月10日ゲーム感覚で楽しめる読み書き指導ーー『マンガでわかる読み書き指導: スモールステップで読めない、書けない子どもを伸ばす』「もしかして読み書きが苦手かもしれない」と思ったとき、どこに相談し、どのような支援をしていけばいいのでしょうか?この本では、読み書きに困難のある5歳のそらちゃんとそらちゃんのお母さんが、作業療法士の児玉先生による読み書き指導を通して少しずつ文字に対する苦手意識を克服していく様子が描かれており、作業療法士の視点から、読み書き困難のある子どもへの指導について分かりやすく紹介されています。文字の読み書きには、文字と音を結びつける、文字と意味を結びつける、文字の形を的確にとらえる、など子どもにとっては難しい要素がたくさん詰まっています。あいうえお表に沿って読み書きの練習をするのではなく、絵カードなどを用いて、語彙を豊かにする、図形を模写する力をつける、絵や音と文字を結びつけたり、文字の数や形、意味を認識する力をつける練習をするなど、読み書きに必要な基礎的な力をスモールステップで身につけていくことが重要です。大切なのは、文字に興味を持てるようにすること。この本では、読み書きが苦手な子どもの特性に合わせ、ゲーム感覚でできるトレーニング、お家でできるトレーニングもたくさん紹介されているので、遊び感覚で一緒に実践してみるのはいかがでしょうか。発達障害のある子どもたちの学校生活について考える、本田秀夫先生の新刊ーー『学校の中の発達障害 「多数派」「平均値」「友達」に合わせられない子どもたち 』発達障害のある子どもの特性を本人や家族がどんなに理解していたとしても、学校の中で多くの人の理解を得ることは難しい、そんな悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この本では、発達ナビにもご寄稿いただいている本田秀夫先生により「発達障害のある子どもの学校生活をサポートするコツ」が紹介されています。厳しい校則、授業を受ける際のルールなど、発達障害のある子どもたちは「学校の標準」に合わせることに苦労することもあります。発達障害のある子どもが安心して学校生活を送れるようにするために、親や先生ができることとは何か、また現在の教育に必要なことは何か、など、さまざまな視点から「発達障害と学校生活」について考えられる一冊になっています。また「子どもが教室を飛び出してしまったら?」「ほかの子どもをたたいてしまったら?」「子どもが宿題をやらないときは?」など学校生活で生じやすい困りごとについて、親ができること、先生ができること、協力してできることがそれぞれ紹介されています。集団生活、たくさんのルール…学校生活は発達障害のある子どもたちにとってハードルが高いことも多く、その過程でつまづいてしまうことも少なくないでしょう。子どもたちやその家族が「学校の標準」に合わせることができないことで悩まずに済むように、また多様な特性を持つ子どもたちがのびのびと学校生活を送れるようにするためには、どんな支援、工夫が必要なのでしょうか。発達障害のある子どもを持つ保護者の方だけでなく、発達障害のある子の支援に関わるさまざまな職業の方におすすめの一冊です。自閉スペクトラム症のあるスバルくんの成長記録ーー『スバルくんは 頭の中 全部言いたくてしょうがない: わが家のハッピーBOYは自閉スペクトラム症』この本では、自閉スペクトラム症のあるスバルくんのお母さん、星あかりさんが、子育ての中で発見したほのぼのエピソードを四コマ漫画で紹介しています。スバルくんは3歳のときに自閉スペクトラム症と診断されました。診断を受ける前のスバルくんの様子、また診断を受けてからの、幼稚園や特別支援学級での様子に至るまで、スバルくんとご家族の笑いあり、涙ありの日常がこと細かに描かれています。星あかりさんはスバルくんが自閉スペクトラム症と診断されてから、さまざまな本を読み自閉スペクトラム症について知識をつけようと奮闘しますが、結局得意なことや苦手なことは一人ひとり異なるのだから「一周まわってスバルはスバル」と受け止めます。発達障害、自閉スペクトラム症と一言で言っても、症状や特性は一人ひとり違います。発達障害のある子どもの子育てにおいては、大変なこともあるけれど、楽しいことや驚かされることもたくさんあるでしょう。誰かと比べるのではなく「この子はこの子」と、個々の子どもの特性に向き合いながら、一日一日を大切に過ごしていけるといいですね。自分の困りごととうまく付き合うには?ーー『特別な支援が必要な子たちの「自分研究」のススメ: 子どもの「当事者研究」の実践』発達障害などの特性があり、日常生活の中で困りごとを抱える子どもたちは、自分の特性を自覚していく過程で、「なんで自分だけできないの?」「自分は普通じゃない」と悩んでしまうこともあるそうです。成長するにつれて、自分の得意なこと、苦手なことを把握することが求められる場面も増えてきますし、困りごとに対する適切な対処方法を知らないと、「できないのは自分のせい」だと思い込み、自己肯定感がどんどん低くなってしまうことも考えられます。この本では、子どもたちが、自分で自分の困りごとを研究する「自分研究」について、実際の例と共に紹介されています。「泣き虫ゴースト」「ペラペラノドン」など自分の困りごとをキャラクターにして、それはどんなとき、どんな場面で表れるのか、どうすればそれを軽減することができるのか、どんな環境、道具があると安心できるのか、などについて、ほかの子どもたちからのアドバイスも踏まえながら、自分で研究します。子どもたちは「お守りをつくる」「ストップと書かれたカードをつくる」「運動する」など多様な対処方法を考えます。イヤだと感じること、苦手なこと、安心できること、落ち着けること…それらは一人ひとり異なります。自分の特性にしっかりと向き合うことで、苦手なこと、困っていることに対する自分なりの対処法を前もって考えておくことができ、「次にこういうことがあっても大丈夫」という安心感を得ることができるのではないでしょうか。児童養護施設や非行少年をテーマに境界知能について考えるーー『傷ついた子を救うためにマンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち4』「もしも同僚が全員ノーベル賞をとっていたら、その中で仕事をしていくことができますか?」この本の主人公、大頭先生は、児童養護施設の職員からこう問われます。発達障害グレーゾーンの子どもや境界知能の子どもたちは、このように求められる「普通」のレベルが高すぎる、負担の大きい環境の中で生活しているとも考えられます。この本は、小学校の先生である大頭先生が、児童養護施設で暮らす生徒の家庭訪問にいく場面から始まります。児童養護施設にはさまざまな理由・背景で入所している子どもたちがいますが、約半数に被虐待経験があるといわれています。この本の中で、虐待を受けた子どもたちは「必要な時に必要なだけ、充電をさせてもらえない」「充電器が当てにならない」状態にあると表現されています。さらに本書では、同じ児童養護施設の卒業生キノシタくんが登場します。キノシタくんは母親からのネグレクトが原因で児童養護施設に入所します。キノシタくんは境界知能レベルにあることが分かっていましたが、適切な支援が行われず、次第に非行に走り、少年院に入ることになります。キノシタくんが非行に走る理由は、決して彼個人の問題だけではないはずです。どのような環境が彼を非行へと追い立てたのでしょうか。この本はベストセラー「ケーキの切れない非行少年たち」の著者である宮口幸治先生によって書かれました。「ケーキの切れない~」でもテーマとなっていた境界知能、グレーゾーンの子どもについて理解を深めるためのシリーズ第4弾がこの作品です。大頭先生と一緒に境界知能や発達障害グレーゾーンの子どもたちの困りごとについて学んでみましょう。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2022年10月09日息子の担当はゆったりとした大ベテラン先生Upload By カタバミまちゃがほぼ2歳半のとき、発達センターで臨床心理士に検査をされたあとで小児科の先生の部屋に入り、いよいよ診察されることになりました。担当の先生はお年を召した大ベテランで優しそうな方でした。息子の日ごろの家での様子を聞かれました。発達検査が10時からで診察室に入ったのはもうお昼に近かったので、息子が空腹でぐずらないか心配でしたが、入ってすぐに大人しく部屋の隅にあったブロックで遊び始めてくれました。診察の最後、まちゃの行動にベテラン先生は⁉︎Upload By カタバミ初めに違和感を抱いたのは「息子さんはスイッチが大好きでしょ」という質問でした。エレベーターのボタンなどが好きなお子さんも多いと思いますが、まちゃそんなことはありません。「そんなことはありません」と正直に答えましたが、そのあと何度も同じことを聞かれました。次に「偏食でしょ。野菜とか苦手だよね」これにも「柔らかく煮れば白菜などはよく食べます」と正直に答えました。「話しても喃語だよね」という先生の問いに「たまにですが単語が出ます」と答える私。私はとにかく正直にまちゃの現状を伝えてしっかり診察してほしかったのです。そのあとおもちゃに飽きたまちゃがやって来て、先生の胸ポケットにたくさんささっていたペンを欲しがり、手を伸ばしました。先生は「これは尖っていて危ないよ」と言ってペンを手で覆い、まちゃが「うわ〜ん」と言いながらゴロンと横になった瞬間「あ!これは癇癪ですよ!これは癇癪です!」と言いながら卓上のメモに何かを書き加えました。私は(これが癇癪?空腹で機嫌が悪いときに欲しい物が手に入らないから怒ったんじゃないの?)と不思議に思いました。ベテラン先生から下された診断名。モヤモヤは増すばかりUpload By カタバミ先生は診察の最後に卓上で書いていたメモ用紙にご自身の判子を押して私に渡しました。そこには「言葉の遅れ(喃語のレベル)、癇癪、自分の興味に向かって動く、マイペース、視線合いにくい、偏食、睡眠障害、発達が横ばい → 自閉スペクトラム症 → 療育」と書いてあり、そのあと幼い子への薬の飲ませ方の工夫について詳しく説明されました。まちゃが治るならと私も必死で聞きました。帰宅後は大ショックでぼんやりしていましたが、処方された薬を言われた通りチョコレートの中に埋めて固めて飲ませました。夫に今日の診察でどう感じたか聞いてみたところ「「君と先生は本当に話がかみ合っていなかったね。俺も口には出さなかったけど、先生の話にはあまり同意できなかったな」と言い、私は先生の質問はまちゃに当てはまらないことも多かったと話しました。担当の先生へのモヤモヤは何日経っても消えませんでした。後日、相談すると…お子さんを発達センターに通わせていた先輩ママに相談したところ、希望すれば担当の先生をかえてもらえることと、ベテラン先生はとてもクセが強いので好き嫌いが分かれることを教えてもらえました。そこで検査をしてくれた臨床心理士に相談し、先生はかえてもらえることになりました。後日、まちゃが発達センターに行くことをすすめてくれた育児支援センターで「カタバミさんごめんなさい。まちゃ君の担当の先生のことを詳しくしらないのにすすめてしまいました」と謝られました。そのときに聞いたほかのママたちが先生に言われたことは私が言われたことよりもさらに驚く内容でした。新たに担当していただいた先生は私への質問も説明も丁寧でまちゃへの投薬はなくなり、私も納得した上で改めて療育が始まりました。Upload By カタバミ最初に診察してくれたベテラン先生の診断通り、まちゃには自閉スペクトラム症がありました。でもこの経験から私は、どんなに肩書きのある方でも、親が違和感や苦痛を覚えるなら"子どもの為に"と我慢して1人で抱え込まずに、いろいろな方の意見を聞いてほかの先生を探しても良いのではないかとお伝えしたいです。執筆/カタバミ(監修:藤井先生より)今後のまちゃさんの成長をみていく上で、カタバミさんが1人にならずに、周りに相談していくことは大事ですね。医師に対して感じた違和感を無視せずに、行動されたことはとても良かったと思います。これからも、医師とだけでなく、療育スタッフ、園の先生、学校の先生など、今後いろいろな方と相談することがあるかと思いますが、困ったときには、ほかの人の意見を聞くことで、別の視点を持つことができることもありますね。
2022年10月06日中学からの在籍クラスの決定。現在、小学6年生の広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、小学2年生から特別支援学級に在籍しています。来年は中学生。中学からの在籍は、私たちの思いと本人の希望が一致し、特別支援学級を選択することにしました。特別支援学級の在籍を申請するため、発達テストを受け、病院で診断書ももらい…学校に提出。後日、教育委員会の先生との面談がありました。私たちの希望がはっきりしていて、診断書もあったため、面談は確認程度の軽いもので終わりました。最終的な決定はまだ先ですが、とりあえず中学からのことは決まり、ホッと一安心。反抗期にお手上げ状態の中に、夫から提案。実は、私たち夫婦は、娘の中学進学に向けて、小学4年生ぐらいから取り組んでいることがありました。遡ること、2年前…。私は当時、突如始まった、娘の特殊な反抗期に頭を抱えていました。・できないことが多いのに、何かと偉そう。・失敗をするとすぐパニックを起こし、「できない!」とくり返す。娘の発達の遅れが分かり、療育を開始し、長く娘の苦手に付き合ってきました。何が苦手か、どうすればスムーズになるか、母としては十分理解していますが、反抗期から、療育グッズも声かけもサポートも嫌がるようになった娘。Upload By SAKURA私は、もうお手上げ状態。毎日のように夫に愚痴を聞いてもらっていると、夫が…Upload By SAKURA「そろそろさ、あーさんに生活力を身につけてもらわない?」と言いました。生活力を上げる?Upload By SAKURAUpload By SAKURA現状をなんとかするため、娘の将来のため、私のため、家族のため、家事を教えて、娘の自立力を上げることで、きっといろんな効果が出ると予想した夫。そこから、娘の生活力向上訓練が始まりました。まずは洗濯から!Upload By SAKURA夫は、ゆっくり丁寧に、洗濯物の干し方を教えてくれました。私は、長いこと家事を一人でこなしてきたため、最初、娘にお願いするということがどうしてもできず、ついつい自分でやってしまうことがありましたが…Upload By SAKURA私がついつい教えるのがめんどくさくて自分でやろうとしてしまうときも、夫は「あーさんのためにならない!」と言って注意してくれました。時間はかかったけど・・・「洗濯物を干す」一般的に考えれば、すぐにできるようになりそうなものですが、娘には難易度が高く…Upload By SAKURAなかなかうまくできず、泣き出したり…それを見て、私の方が諦めそうになったり…娘のやる気がなく、適当にやってしまったり…本当にスムーズにいかない日々でした。しかし、2年経った今、娘は…Upload By SAKURA洗濯機を回す、洗濯物を干す、畳む、片付けるを、完璧に一人でできるようになりました。特に洗濯物の干し方は、夫よりも丁寧で、シワなく干してくれます。Upload By SAKURA娘には、時間をかけて教えることが必要だった。私は子どものころ、手伝いを率先してやった方ではありませんでしたが、小学生のころ、気がついたら洗濯はできたし、料理も自力でなんとかしていました。夫も両親が共働きだったため、一人でなんとかしていたタイプ。Upload By SAKURAそのため、私は子どもたちに「家事をさせる」「覚えさせる」という考えがなく、娘も、そのうちに身につくだろうと思っていました。しかし、夫の提案で、私たちと同じやり方では駄目だと気づかされました。家のことを娘にやらせるようになってから、自立力はかなり上がり、加えて、娘は私に何かをやってもらうとき、「お願いします」と自分から言うようになりました。家事を実際にやることで、大変さが分かったのか、何もしないで反抗するということもなくなりました。Upload By SAKURA何より私は家事が楽になり、心穏やかになりました。娘の場合、「勝手に」「要領よく」何かを身につけるのが難しいことが多く、なんでも時間がかかってしまいますが、時間をかけて教えることで、確実に身につき、自信にもなり、自立力も上がる。今回のことで、やはり娘には、時間をかけて教えることが大切だと分かりました。次は掃除と、料理。今は掃除に取り組み中。手始めに、掃除機から教えています。まだ部屋の真ん中だけかけてしまい、四隅のほこりが溜まったままになっていますが、洗濯も2年かけて、完璧になったので、気長に教えようと思っています。執筆/SAKURA(監修:井上先生より)あーさんが取り組まれたように小学校の後半から生活スキルの練習をされたのは素晴らしいことだと思います。コラムで書かれているように、生活スキルは簡単そうに見えても意外に難しいです。洗濯にしても、洗濯ものによって干し方を変えたり、天気によって干す場所を変えたり、畳み方もしまう場所も衣服によって異なります。身辺自立と違って、できなくてもいいやと思いがちになりますが、自立のためにはとても大事なことです。やりきるためにはご夫婦での協力なども大切になるんでしょうね。あと、重要な生活スキルとして「金銭管理」があります。お小遣いなど少額を扱ううちに身につけておくと良いかと思います。その他、「衣服や靴を購入する」というスキルも店員さんにサイズを出してもらったりというコミュニケーションの経験が重要になります。同様なパターンとして「美容院でカットしてもらう」や「病院で症状を伝える」などもあります。
2022年10月05日自閉スペクトラム症の息子がテレビのニュースを見て「気になるポイント」テレビから、JR山手線が止まっているというニュースが流れました。私はそのニュースを見ながら、予定外のことが起こるとパニックになりやすい息子に「もし、電車が止まってもパニックにならないでね」と伝えました。すると息子は、「夕飯は何時になるのか?」「お風呂は何時に入るのか?」としつこく確認してきます。電車が止まって閉じ込められること以上に、その後予定していたことがどうなるのかがとても気になるようです。電車が止まってどうすればよいのか、どうやって帰ったらいいのかといったことが不安になるのではなく、キッチリカッキリ決めていた予定が狂うことを恐れているようです。「心配するところはそこなのね。予定が崩れるのが不安なのね。」と思いました。さらに…電車が遅延する状況になったわけでもく、自分の身に起こったことでもないのに「夕飯は7時20分」「風呂は8時11分」と予定を組み直そうとしています。いつ電車が止まるかも予測できるものではなく、いつどのくらい止まるか分からないのにです。私はそんな息子の様子を見て、「視点が違うのね。面白いね」と思いました。自分に置き換えて言葉を変えられない自分が泣いたときも、他人を指して言うように「泣いている」と自分を指さして言います。「いってらっしゃい」「いってきます」のやり取りができないのと同じです。私はファミリーサポートの仕事で2歳の子どもを預かっているのですが、あるとき、その子が転びました。息子は「自動的に転んだ」と私に言いました。確かに息子から見たら、ひとりで転んだ様子を見て、自動的に転んだと映ったのでしょう。もしかしたら、自分が突き飛ばしたわけではないと言いたかったのかもしれません。表札への違和感3年前、私の父が亡くなった当日のことです。病院から実家に帰ってきたとき、表札を見た息子。その表札が私の父のフルネームであることに気づいて「(亡くなっていて)いないのに表札外さないのか」と息子から言われました。「みんなが悲しんでいるときに、そんなこと言わないで」と思いました。と同時に悲しみにくれながら息子の言葉を聞いて「そこか!これも息子らしいね。」とも思いました。Upload By 立石美津子同じ献立にこだわる息子の外食時のメニューは、いつも決まっています。どのファミリーレストランに行っても、たらこスパゲッティとほうれん草のソテーとポタージュを注文します。息子の場合は店が違うのはOKみたいです。表現の天才!息子に手伝いを頼んだら「僕は使用中だからダメ」と断られました。別のことをしているので手伝えないという意味です。「嫌だ!」と断られたら腹が立ちますが、こう言われるとそうでもないので不思議です。擬人化や見立て遊びができない幼いころ、ぬいぐるみに「餌をやる」と言っていました。ままごともできませんでした。擬人化したり、見立て遊びをするのは難しいようでした。ジャガイモを「この子」と言われて戸惑う料理教室で、先生から「この子を切ってください」と言われ、「この子」を探している風でした。「子」という表現から、野菜を指しているとは考えつかなかったからです。Upload By 立石美津子しばらくして、それがジャガイモを指していることが分かったのか、ようやくジャガイモを切りはじめました。Upload By 立石美津子殿様じゃないあるとき、威張っている息子に「あんた、殿様だね」と嫌みを言ったら、「殿様じゃない!立石○○だ!(←自分の名前)と言われてしまいました。比喩が分からないようです。まとめまだ息子が4歳ごろのことでしょうか、療育で窓越しに子ども達の様子を見学していたときのことです。隣にいた、あまり親しくない親御さんから「立石さん、今度、産むんだったら定型発達の子どもがいいよね」と同意を求められたことがあります。あのころは…「息子がいらないとは思わないが、普通の子になってほしい」「少しでも皆と同じようにできるようになってほしい」と思っていました。ですが今、私は声を大にして、「今度もこの子がいい」と答えたいです。自閉スペクトラム症の息子は、“普通”という呪縛から解放し、私を自由にしてくれた存在です。これは決して負け惜しみではありません。そして、変わった視点で楽しませてくれます。細かいことですが、息子と暮らしていると、いまだに面白い発見があります。そして、そのように思えるようになったことが、私の成長です。執筆:立石美津子(監修者・鈴木先生より)自閉スペクトラム症のある方は予定の変更が嫌いです。電車が時間通り来ないと時刻表を見せて駅員に苦言を呈すこともあります。自閉スペクトラム症がある人は、自分を基準にものごとを理解する傾向があります。例えば、自閉スペクトラム症がある幼児はバイバイするときにも自分に掌を向けて行うことがよくあります。これは、皆がバイバイするときに自分に掌を向けているからです。また、具体的に言わないと通じにくいため、「あれ取って、それ取って」では分からない場合が多いのです。「白いテーブルの上にある、黒いボールペンを取って、ここまで持ってきてください」と言わないとだめなのです。外来に来た患者さんに「Aくん、こんにちは」と言ったら、僕は「Aくん」ではありません。「A」ですと訂正されることもあります。こだわりや特有の感覚などをいかしてタレントとして活躍し、楽しませてくださっている方もいらっしゃいます。
2022年10月02日実際どうなの?特別支援学級の見学へ自閉スペクトラム症のある長男けんとは、集団行動が苦手、授業中じっとしていられない、集団指示が入らないという「こども園」での様子から、通常学級は難しいと思っていました。特別支援学級とはどういうものなのか、私はほとんど知識がなく、全く見当がつかなかったので就学相談に行き、実際に通う予定の学校に連絡を取り見学させていただくことに。Upload By ゆきみ小規模の小学校で全体の生徒数が少なく、特別支援学級は情緒クラスと知的クラスが1クラスずつということでした。けんとの入る予定になっていた情緒クラスは、担任の先生が1名、サポートの先生が1名、小学4年生以上のお兄さん、お姉さんが在籍していました。特別支援学級に入ると、学校ではずっと特別支援学級で過ごすのだと思っていたのですが、その子どもの特性によって、参加できるところは交流級(通常学級のこと)で授業を受けるとのこと。なんとなくの雰囲気も分かり、質問したいことは全部させていただき少しだけ安心できました。通っている特別支援学級の授業の進め方4月に入学。特別支援学級の1年生はけんと1人でした。最初の1ヶ月ほどは新しい生活に不安定になり疲れやすくなっていましたが、学校自体は楽しんでいた様子。交流級の同級生にも、特別支援学級の子どもたちにも興味を持っていないようで、交流級へ行きたがることはほとんどなく、ほぼ特別支援学級で過ごしていました。学年が違う子どもたちが集まる特別支援学級。その子どもにとっての交流級と同じ時間割で進んでいくため、時間割は子どもによって違います。特別支援学級の教室の側面の黒板に、その日1日の全員の時間割が書いてあり、それに沿って進んでいきます。Upload By ゆきみそれぞれの交流級の授業がけんとは国語、4年生の子が算数、5年生の子が音楽、6年生の子が算数だった場合、まず、交流級で授業を受ける子どもは、交流級へ行きます。サポートの先生がついて行き、人数が多い場合は順番にサポートの先生が回って行くそうです。特別支援学級で受ける子どもは、プリントを解いている間に、担任の先生が順番に教えていく授業スタイルでした。勉強の内容は、その日の交流級と同じものをします。本人に合わせて量などを変えたりすることもあるようです。交流級のお友達に支えられて過ごす授業5月ころ、帰り道に交流級のお友達がけんとに声をかけてくれました。すると、それがうれしかったのか、次の日から「交流級にいきたい」と言いだし、急に授業のほとんどを交流級で受けるようになりました。それと同時にお友達にも興味を持ち、名前や出席番号を覚えだしました。一方的な遊び方ではあるけれど、好きなお友達も数人できたようです。Upload By ゆきみ構音障害で何を言っているのか分かりにくいけんと。先生が聞き取れなかったとき、交流級のお友達が「けんとくん、〇〇って言っているよ」と先生に教えてくれたり、先生のお話しをけんとが理解していないときは「次は体育館に行くんだって」などとお友達が教えてくれたりするそうです。交流級の子たちも慣れてきてくれたようで「けんと君はこういう子ども」という感じで、先生も子どもたちも優しく接してくださっているとのことです。サポートの先生は立ち歩いたときに座るように促してくださったり、今やることを伝えてくださったりしています。まだサポートの先生なしでは交流級で過ごすのは難しいですが、「交流級とはこういうもの」というのを少しずつでも理解してくれたらうれしいです。交流級のスタイルが変化が少なく安心?Upload By ゆきみ現在は、朝の会、休み時間、給食、掃除、帰りの会は特別支援学級で過ごし、サポートの先生がついてくださるときは、ほとんどの授業を交流級で受けています。どの時間をどこで過ごすのかというのは、特別支援学級に在籍する子ども、それぞれで違うそうです。けんとは視覚的に、ほかの人が食べているものに自分の苦手なものがあると具合が悪くなってしまう子なので、給食の時間は必ず特別支援学級でパーテーションをしていただき、外を向いて食べています。休み時間は6年生のお兄ちゃんが遊んでくれているそうで、その子どものお世話になりながら特別支援学級で過ごしています。なぜ、急に交流級で授業を受けるようになったのかな?と疑問に思っていたら、保育所等訪問支援の担当の方に「交流級のスタイルの方が、入れ替わりがない分、変化が少なく安心しやすいのかもしれない」と言われました。確かにそうかもしれない…と納得。まだ小学1年生で始まったばかりの学校生活。本人、学校と相談をしながら、学業だけではなく集団行動や人との関わりかたも学んでいけたらいいなと願っています。※地域、学校の制度によって異なるようです執筆/ゆきみ(監修:井上先生より)小学校1年生から特別支援学級を就学先に考える場合、親御さんもずいぶん悩まれたと思います。他者から情報を聞くだけではなく、自分自身で就学先の学校・学級を見学することはとても大事です。見学は、指定された日もありますが、多くの学校はそれ以外の日も受け付けてくれると思います。担任の先生だけでなく、教頭先生や校長先生に学校の支援体制について質問しておくのも良いと思います。けんとくんの学校のように、特別支援学級に在籍していてもお子さんの状態に合わせて、交流級と特別支援学級との時間の割合を柔軟に対応してくれるところもありますが、先生の人数やサポートの先生の配置などによって困難な学校もあります。学校ごとに異なる場合もありますので、見学に行った際に聞いてみると良いかと思います。
2022年09月24日都市部はとにかく施設の数が多い!でも、子どもの数も多くて…Upload By べっこうあめアマミ息子が3歳のとき、私は娘の出産のため、実家に里帰りをしました。その里帰り中の5ヶ月ほどの間、息子は私の地元の発達支援施設に通っていたのですが、里帰り後は自宅がある東京に戻らなければなりません。里帰り中は、妊娠後期の動きづらさと産後の新生児育児であたふたしながら、東京に戻ってから通う療育先探しをしていました。私の実家がある自治体には、未就学児の療育を行っている発達支援施設は1ヶ所しかありませんでした。でも、里帰り後に暮らす東京の自治体は、調べても調べきれないほど、たくさんの発達支援施設があったのです。「これならどこかに入れるだろう」と思いましたが、現実はそんなに甘くありません。東京に限らず都市部はどこもそうかもしれませんが、施設の数が多いということは、それだけ必要とする子どもの数も多いということです。施設の数が多くても、空きがある施設はなかなか見つかりませんでした。「里帰り後、息子はどうしたらいいのだろう…」半分泣きながら、児童発達支援センターに電話で相談しました。すると、そこの相談支援員さんがすごく親身になってくれて、片っ端から心当たりのある施設に受け入れの相談をしてくれたのです。それでも、なかなか希望条件に合う施設は見つかりません。ですが、最終的にその相談支援員さんが在籍している発達支援施設で、なんとか枠を確保し、息子を受け入れてくれることになりました。療育を続けられることに感謝し、相談支援員さんが神様のように思えました。息子が通った発達支援施設、どんなところだった?Upload By べっこうあめアマミ息子が通うことになった発達支援施設は、児童発達支援を行う施設としては、おそらくその地域で最も大きな規模の施設でした。障害の程度や年齢などによっていくつかのクラスに分けられており、息子が通うことになったのは、中でも最も長時間を過ごせる、手厚いクラスです。療育は親子分離だったので、乳児を連れて療育に付き添うことが難しい私には、とても助かりました。そして、おそらく息子と同じくらいの発達段階のお子さんたちで構成されたクラスだったため、親同士の会話でも共通する悩みが多く、親子共にすぐに打ち解けることができました。臨床心理士さんや作業療法士さんなどのリハビリ専門職の先生が多く在籍しており、クラスで日常的に子どもと接してくれます。療育スケジュールや各種療育のねらいなども、おたよりで丁寧に教えてくださり、定期的に「言語・コミュニケーション」や「認知・行動」の個別指導も入りました。面談もけっこうな頻度でありました。子育てや息子の発達についての悩みを悶々と抱え続けることなく、すぐに気軽に相談できる専門家がいてくれる、という安心感は大きかったです。息子のことだけでなく、私の精神状態なども気にかけてくださり、とても行き届いた支援を行っている、良い施設にご縁をいただいたと思っています。幼稚園と療育の併用で、大きく成長した息子Upload By べっこうあめアマミ息子は幼稚園との並行通園で、この発達支援施設に通いました。幼稚園と療育に通う生活を卒園まで続ける中で、できることがたくさん増えました。中でも目覚ましい成長を見せたのは、身辺の自立に関することです。この施設に通いはじめた当時4歳だった息子は、靴や衣類の着脱を自分でやろうとすることはあるけれど、消極的で、完璧にはできない状態でした。排泄はほぼオムツで、パンツへの移行は全く考えられない状態でした。でも卒園のころには、靴の脱ぎ履きは完全に自立し、衣類の着脱も簡単な声掛けでできるようになったのです。排泄の面でも、トイレでの排泄にかなり慣れ、調子がよければ幼稚園や療育に行っている間だけパンツで過ごせる日もありました。Upload By べっこうあめアマミ人とのコミュニケーション面でも、大きな成長が見られました。息子は結局卒園まで言葉を発することはありませんでしたが、お辞儀や手をたたく、といった簡単なジェスチャーで自分の意思を示すことができるようになりました。そして、人に対して極端に興味が薄かった息子が初めて、「お友達」を意識するようになったのです。関わり方は不器用ですが、「同じクラスのお友達」と認識してじっと目で追ったり、手をつないだりすることができるようになりました。さまざまな療育プログラムに取り組む中で、「実は手先が器用」という息子の得意分野にも気づくことができました。親の私も気づけなかった息子の長所を、先生たちが見つけてくれたのです。ゆっくりだけど確実に成長していった息子の姿に、 うれしさがこみあげました。都市部の療育、ネックになるのは施設の狭さと送迎手段?Upload By べっこうあめアマミ息子が通った発達支援施設は、その地域では規模が大きな施設でしたが、駐車場はありませんでした。その施設に限らず、都市部の発達支援施設で送迎のために使える駐車場があるところは、非常に少ないのではないかと思います。私の経験則になってしまいますが、息子はこれまで、東京で4ヶ所の児童発達支援に通ってきましたが、そのいずれの施設にも駐車場はありませんでした。これは後に利用することになる放課後等デイサービスにも通じますが、自家用車で送迎という選択肢は、基本的に考えられません。そのため、徒歩や自転車で通えるか、送迎サービスが利用できる施設しか、選ぶことが難しかったです。また、先に通っていた地方の発達支援施設に比べると、どうしても敷地の狭さは否めません。広い園庭がある施設はなかなか見かけることがありませんでしたし、お散歩や公園遊びもあるとはいえ、室内活動が中心でした。療育に限らず、幼稚園や保育園、学校などもそうですが、敷地の狭さや駐車場がないところが都市部の施設のデメリットと言えるかもしれません。多彩な療育の種類と選択肢の多さ、人が集まる場所の利点東京で暮らしていると、日常的に通える範囲に発達支援施設が多数あることが多いです。専門的な病院でのリハビリや、専門家の個別療育を受けようと思えば、選択肢はいくつもでてきます。療育の種類もさまざまで、その選択肢の多さは魅力的です。冒頭に書いたように、子どもの数も多いことから利用待機になることもありますが、「選べる」ことは人が集まる場所の利点だと感じます。本来であれば、どこに住んでいても等しく選択肢があるべきだとは思いますが、実際はそうもいかないのかもしれません。もっと世の中に療育の必要性が広がり、より多くの子どもたちが、求めるような支援サービスにつながりやすくなるといいなと思います。執筆/べっこうあめアマミ(監修:初川先生より)地方と都市部、両方の療育機関を利用されたご経験からの都市部での療育機関の特徴をお知らせくださりありがとうございます。東京は特に選択肢の多いエリアです。交通網も発達しているので、遠くから通う方もいらっしゃり、いつも満員御礼状態で稼働している機関も多くあるのが現状ですね。アマミさんがされたように、まずは居住する自治体の発達支援センターなどに問い合わせ、地域の似たようなお子さんを持つ方々がどのような機関を使っているかを聞いてみることが良いかと思います。民間機関の情報は最終的には保護者の方が動いて情報を集めることも出てきますが、地域のつながり、横のつながりからそうした情報が入ってきやすくなるようにしておくと良さそうです。アマミさんのお子さんは幼稚園との並行通所で、出来るようになったことがたくさんあったとのこと、何よりです。子どもの発達が著しい時期に、専門家の働きかけや助言を活用しながら子育てできることはとても心強いですね。
2022年09月22日くるくる回る自閉スペクトラム症のある太郎。回るときはほぼ無言。ときにはスローモーションで回ったりもする。寝る前にはくるくる回り、その後はコミック本をひらいて数分で眠りにつく。それが太郎のここ数年のルーティンだ。くるくると回ってるときの太郎はだいたい穏やかな顔をしている。ときには汗も出るほど回っている。Upload By まゆんあまりにも穏やかな表情で回るものだし、それがもう私たち家族の中では当たり前となっている。発達検査を受けた際、心理師さんやほかの専門家の方から「常同行動を止めたりすることはありますか?」と聞かれたことがある。この質問があるということは、止めてはいけないってことだなと先を読めた。それは私も分かっていたし、ほぼ止めることは今までもしなかった。過去に一度、激しく高速で回ってたときは流石に落ち着くように声がけはした。表情も強ばってたし、心の整理がついてないのが丸見えだったからだ。太郎は大人なしで友達と外で遊ぶことをしなかった。理由は私にもハッキリとは分からないが、外への不安があるのか、家が好きなのか、太郎にしか分からない理由がたくさんあるのだろうと思った。Upload By まゆんくるくるを解釈するある日の休日、家のインターホンがなった。ピンポーン。モニターに写ってたのは太郎の友達だった。私は太郎に声をかけた。「太郎、○○君だよ、対応してー」太郎の顔がこわばった。そして高速でクルクルと回り出した。「太郎とりあえず、ほら、インターホンに答えよう」太郎はカチンコチンにかたまりながらインターホン越しに友達の対応をした。「は、、は、、はいーー!」「太郎ちゃん、遊ぼーー公園行こーー」太郎はしばらくかたまった…。「む……無理!!!」Upload By まゆん友達は少し残念そうな顔をしたが「OK!分かった」Upload By まゆんそう言ってインターホン越しの会話は終わった。くるくるくるくる。くるくるくるくる。どんどんどんどん加速する。太郎はリビングをくるくる高速で回った。いろいろな感情が私には見えた。友達と遊びたい、外へ出るのが不安、遊び方が分からない、突然の誘いで驚いた、友達の誘いを断ってしまった。太郎は口にはしないが私にはそんな風にそのくるくるから勝手に解釈した。あまりにも表情が強ばってるし、高速くるくるだったものだし、見るに見兼ねて太郎に声をかけた。「太郎、急な誘いはびっくりしちゃうから、学校で友達と約束してみたら?準備とかしたら大丈夫かもだよ?」この声掛けに太郎のくるくるがピタッと止まった。「約束!!!してみる!!」名案だ!!的な表情を太郎はした。それからくるくるはゆったりとなり表情も穏やかになった。そして数時間後に太郎はこう言った。「お母さん、チャレンジのチャンスはまだあるよね」なんだか心が癒された。あとがき太郎のくるくるは、寝る前や手持ち無沙汰なときに見かけます。何かに集中してるときは静止してますが、なにをしていいか分からないときや空いた時間にはくるくるくるくると回ってます。本人は「落ち着くのと、回りたいから回る」と言ってました。もう一つのパターンが、イレギュラーな何かが起きたときもくるくると回ります。心の整理をするためなのか気持ちが行動にあらわれてるのか、突然の出来事をその場で言葉にすることが苦手なため、くるくると回るのかなぁと母の私は思いました。常同行動にはさまざまな説がありますが、ホントのところは本人にしか分からないわけで…私にも本当のところは分かっていませんが、私から見た太郎のくるくるはこんなところです。何度か一緒にくるくる回ってみましたが、目が回って気持ち悪くなりました(笑)ある意味すごいと感心しました。執筆/まゆん(監修:鈴木先生より)自閉スペクトラム症のあるお子さんは自己刺激としてくるくる回ったり、ジャンプしたりすることがよくあります。手をひらひらさせる常同運動のあった成人の自閉スペクトラム症のある方は何かを話すタイミングでやっているので止めないでほしいと以前話されていました。よほど他人に迷惑をかけていない限り止める必要はないようです。自閉スペクトラム症・発達性協調運動症の診断の一つとして、OT(作業療法士)が、お子さんを回転盤に乗せて左右に回すことがありますが、自閉スペクトラム症のあるお子さんは回転後に眼振が見られず目が回らないことが多いようです。
2022年09月20日5年前、迷いに迷った在籍クラス。広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、小学6年生。来年の春には、中学校に進学します。現在、特別支援学級に在籍している娘ですが、特別支援学級へ籍を置くようになるまで、いろいろありました。小学1年生のときは、通常学級に在籍していたのですが、友達とのトラブル、授業についていけない、担任からのできないことに対する指摘など、本当にいろいろありました。2年生からの進級先をどうするか決めるときは、親としてたくさん悩んだし、考えて考えて、迷って迷って…頭を抱えました。Upload By SAKURAもうこれ以上考えようがないというところまで考え尽くし、結局最後は「娘が笑顔でいられる道」にしようと思い、2年生から、特別支援学級に在籍することにしました。Upload By SAKURA高学年になったら、通常学級に・・・そう思っていたけれど。当初私は、特別支援学級の在籍は一時的にして、「5、6年生ぐらいまでに通常学級に戻れたらいいな」と考えていました。もちろん絶対そうしよう!と決めていたわけではありませんが、目標があったほうが、私も娘も具体的な療育に取り組みやすいと思っていました。そのため、中学校からの特別支援学級は、あまり考えていませんでした。Upload By SAKURAしかし、2年生、3年生、4年生と特別支援学級で過ごしていくうちに…私の考えは変化していきました。娘にぴったりだった特別支援学級の学習方法。娘は、2年生からずっと、国語と算数だけ特別支援学級で受けています。勉強する場所は違いますが、授業内容は通常学級と同じ内容です。発表などの授業のときは、通常学級でみんなと一緒に行いますし、テストも通常学級と同じものを受け、同じ判断基準で成績表もつけられます。特別支援学級で受ける授業は、娘に合っていたようで、成績はどんどん上がり続け…Upload By SAKURAテストはほとんどが90点台。100点を取ってくることもよくありました。クラスで上位の成績になり、みんなの前で点数を褒められることもありました。娘は、視覚優位で、耳から情報収集は苦手という特性があり、大勢の中で授業を受けると、先生の指示や授業内容をしっかり聞き取ることができません。しかし、特別支援学級で先生と一対一の授業をすると、先生の言ったことがしっかり頭に入ってくるようで、テスト前に特に勉強をしなくても、しっかり答えられるのです。Upload By SAKURA5年生のときの面談で、特別支援学級の先生に…「あーさんは本当に素直に教えたことが響く子です。目を見て、面と向かって教えれば、とても理解も早いです」と言われました。私はこの話を聞いて、「娘の理解しやすい授業スタイルをわざわざ崩すことはないのではないか」と思いました。Upload By SAKURA娘の希望は・・・?念のため、娘に中学校から在籍クラスをどうするか聞いてみると…Upload By SAKURA娘は中学校からも特別支援学級の在籍を希望しました。小学1年生のときは娘は特別支援学級の意味もよく理解しておらず、本心は聞けず…結局、私たち親が決めました。しかし、今回はしっかりとした希望を聞くことができました。もう…自分の意志もしっかりある。今の娘を見ながら、1年生のころの娘を思い出していると感慨深いものがありました。Upload By SAKURA発達テストを受け、診断書も書いてもらえた!中学校からの特別支援学級は、6年生の夏までに決めなければなりません。私はさっそく、動き始めました。判断基準にするため、そして発達外来で診断書をもらうため、発達テストを受けました。Upload By SAKURA結果、IQは平均値で正常でしたが、言語理解(言葉を理解して伝える力)は、平均値より低く、ワーキングメモリー(記憶する力)は、かなり低く、「特に耳で聞いて覚えることが苦手で、口頭の指示で複数のことを言われると、混乱する」ということでした。私たちの認識している通りでした。発達外来の先生からも「少人数制の授業はふさわしい」という診断書をもらい、学校に提出。まだ決定までいっていませんが、少しずつ動いています。Upload By SAKURA娘にとって、一番いい選択。今回の娘の進学先の決定に、迷いはなく、5年前のように、「通常学級のほうがいいのではないか」という考えは全くありませんでした。それは、特別支援学級で過ごした5年間が娘を成長させてくれたことを実感していたからでした。在籍場所にこだわる必要はない。どこで学ぶかではなく、どう過ごし、どう成長するか。そして、そこが楽しいかどうか。娘が笑顔で過ごせるように、中学も引き続きサポートしていきたいと思います。執筆/SAKURA(監修:井上先生より)あーさんが在籍されていたのは自閉症・情緒障害特別支援学級で、基本的には通常学級と同じ内容で進んでいきます。SAKURAさんの書かれていたように、集団の場では学びにくい教科や単元を特別支援学級で、それ以外を通常の学級で学ぶことによって、勉強は分かりやすくなり達成感も得られると思います。中学校は小学校とは異なり、特別支援学級でも教科ごとに先生が変わります。特別支援学級の担任の先生と、各教科を担当する先生との連携を良くして頂いたり、通常学級の方で受ける教科の先生との連携など、連携は複雑になりますが学期ごとに「個別の指導計画」や「個別の教育支援計画」を見直すようにしていくとよいかと思います。中学になると部活もはじまりますね。好奇心旺盛で積極的なあーさんはきっと素敵な中学生になれると思います。
2022年09月07日家庭での教科学習まずはわが家の学習について…なのですが「学習」と言ってもさまざまな「学習」があり、子どもは何をしても学びに繋がると私は考えているので、ここでは少し言い方を変えて「教科学習」についての話をしてみようかと思います。わが家は学校へ行かない選択をした当初から家庭での教科学習を続けています。子どもの心の状態によって教科学習を家庭で続けるかどうか、慎重な判断が必要なケースもあるかと思うのですが、むっくんの場合は教科学習を続けたいという本人の強い希望があったこと。また教科学習を続けることが本人の安心感に繋がると判断できたことから、毎日短時間ですがゆる~く母と一緒に学習を続けることに決めました。しかし親子での教科学習はただでさえ難しいものです。その上、むっくんにはもともと得意と苦手の大きな差、感情のコントロールの難しさ、完ぺき主義などのこだわりもあり、間違えるとキレる、難しいとキレる、苦手だとキレる。初めて習う事に対しては不安からキレる。私がイラっとすれば共鳴してキレる!これは本当のほんとうに難しい!!学習支援に関して私は素人なので、家庭教師など外部の力に頼りたいものの「先生」に対してよいイメージがないむっくんは外部の人を怖がって絶対に嫌だと拒否。仕方がないので私が頑張るのですが、当然うまくできず、何度もぶつかり、やめたくなることもありました、投げ出したこともあります。それでもむっくんは泣きながら、キレながら、おれは絶対勉強する!と頑張ろうとするのです。あるとき「おれがキレても暴れても、お母さんだけは諦めないで!」と言われ私も腹をくくりました。Upload By ウチノコ本気で教科学習と向き合ってみると、本人のWISCなどから見えてくる数値の凸凹、聴覚や視覚言語などの認知特性、同時処理や継次処理などの認知処理様式、情報の入出力方法の情報処理過程など、さまざまなことを考慮して行う必要があることが見えてきました。そういった視点を私が持てたことで、最近では教科や単元の得手不得手に合わせて教材を変えるなどの工夫ができるようになりました。さらにその日の調子で変わる取り組める分量の見極めや苦手な部分をカバーするさまざまな方法や道具。それらを考えて学習プログラムを組めるようになったことで、2年目にしてようやく学習ペースが安定しキレることも減ってきたように感じています。当初の教科学習の目的は「むっくんの心の安定」でしたが、元気になった今は「本人の特性を考慮した学習スタイルの確立」に変わりました。学びたい気持ちが強いのに、自分に合う方法が多数のあり方と違うことがむっくんの苦しさの一つだと私は感じています。だからむっくんに合う学習方法を見つけ出すこと。そしてむっくん自身が自分に合う学習方法を模索する力をつけること。それがとても大切なことのように思うのです。むっくんはそれさえ確立できれば一人で歩いていける子だから、その日まで私がそばで伴走を続けていけたらと考えています。Upload By ウチノコ家庭外との繋がり私たちの場合、学校へ行かない選択後も本が好きなむっくんの希望で図書の授業に私と一緒に参加する学校の部分利用をしていました。それなりに楽しく通っていましたが、一年経ったころからむっくんが「不登校を選んだ友達が欲しい」と言うようになり、フリースクールの利用を開始。そこではいろいろな経験ができるうえ私の付き添いも不要だったので、むっくんと少し離れる時間が欲しい私の気持ちも考慮して、完全不登校に切り替えてフリースクールを優先することに決めました。現在は週に1~2日楽しそうに通っています。あまりに楽しそうなので「もっと通う?」と聞くと「おれは毎日行くと疲れてしまって楽しいとこも楽しくなくなっちゃうから、今のペースがちょうどいい」と話してくれて。彼の想いを尊重しながらちょうどいいペースを模索しています。Upload By ウチノコまた、1度離れた学校ですが今年度の先生が熱心な方だったことから、現在は週に1度担任の先生とタブレット通話の時間を取って繋がりを保っています。むっくんが学校へ行きたいと言うことはありませんが、現在の先生との信頼関係が育っている様子が見られ親以外の大人との関係性が作られていくことをとてもうれしく感じています。さらに、オンラインで好きなことの習い事も始めました。怖がっていた外部の人から学ぶことになり私はハラハラしましたが、こちらも理解ある先生と繋がることができ、とても楽しそうに取り組んでいます。むっくんが不登校を選んだ最終的なきっかけが運動会の練習への不信感だったこともあり、むっくんは「先生」に対して良いイメージを持っていませんでした。それが今、さまざまな大人と関わる中で「先生」にもいろんな人がいること、いろんな教え方があり、いろんな学び方ができることを体験することができています。この経験は今後、彼の視野を広げることに繋がっていくようにも感じています。Upload By ウチノコ過去を振り返って現在、私たちはとても穏やかな日々を送っています。家庭という安全基地に身を置き、頑張れそうなときに自分のタイミングで外の世界と繋がるホームエデュケーションを選択したことで、これまでの私やむっくんの困り感やしんどさが噓のようになくなりました。むっくんに集団生活を強いていたころの困り感は、フィットしない環境に無理に適応させようとしたために起こった部分もあったのだと痛感しています。合わない場にどうやってフィットさせるかばかりではなく、何故フィットしない環境に身を置かねばならないのかという視点の転換も大切なことなのかもしれません。毎日楽しそうに生き生きと暮らすむっくんを見ていると、決まったカリキュラムで、年齢に合わせて一律に進めていくよりも、本人の成長を待ち、本人が進めると感じたタイミングで次のステップに進んでいく現在のスタイルの方がむっくんは幸せを感じられることがよく分かります。関わりに難しさのある子どもだからこそ、これからもたくさんの人の手を借り、たくさんの場所へ行き、彼のペースや気持ちを尊重しながら大切に関わっていこうと思っています。執筆/ウチノコ(監修:初川先生より)ホームエデュケーションを組み立てるまでの試行錯誤、工夫、そして穏やかな生活に至ったプロセスのシェアをありがとうございます。家庭で教科学習を進めるのはなかなか難しいものです。保護者が教えると、お子さんも学習と日頃の仲良しな関係との切り替えも難しく、「分からないからやりたくない」となり、一生懸命教えてくれる保護者からすると「せっかく頑張って教えてるのに!」となり、もめてしまう話を相談場面でもよく聞きます。ウチノコさんがそうされたように、知能検査などで認知発達の特徴が分かっている場合にはそれを活かすのがまずは得策だと思います。検査を施行した心理士などに、検査結果を学習に活かす方法をぜひ聞いてみてください。図書の時間やフリースクールなど、むっくんの意見を聞きながら柔軟に体制を変化させたのも素敵ですね。そして担任の先生とのやりとりや、オンラインでの習い事など、当初では考えられなかったような展開も起きているようですね。人との出会いが何かを変えることがある、「好き」は苦手を超えることがある(興味のあるものなら「先生」に習うことも耐えられる)。これはむっくんだけではなく、いろいろなお子さんにも通じるところですね。さまざまな経験を通じて、むっくんが「いろいろな大人がいる」など世界が広がっていること、何よりだなと感じます。
2022年09月06日いつも家族の中心にいた母が別人になってしまったときのお話私は15歳のときに、人生の大きな壁に遭遇することになりました。当時45歳だった母が、統合失調症という精神疾患になったのです。優しい笑顔が印象的だった母は、ある日から別人のように変わっていきました。Upload By スガカズ母は、感情鈍麻によってだんだんと喜怒哀楽の表情が乏しくなり、他者に共感することが減っていきました。私が話しかけても反応が遅かったり、内容の理解ができず 、会話のキャッチボールが困難になりました。また、物事を進める意欲がなくなり日常生活を送ることが困難になりました。そのうちに、妄想、幻覚(幻聴、幻視)に怯えたり、思考障害によって会話に一貫性がなくなるようになりました。まるで別人のように変わってしまった母…。そのころ15歳だったまだ人生経験の乏しい私は、どのように母と向き合えばいいのか分からず、ただただ困惑しました。その後、自殺未遂や危険を伴う行動など、いろいろありました。その際に、母自らの強い意思により父と離婚することになりました。そして母は、重度の自閉スペクトラム症と知的障害がある7歳上の兄(当時22歳)だけを連れていくと決めて出ていくことになりました。母が動けないので、母方の親戚が代わりに母と兄が暮らせるための手続きなどほとんどおこなってくれました。残された私たち(父、姉、私)はというと、母が統合失調症の幻覚、妄想によって父と関わることを拒否してしまい、父の落ち込みも相当だったため、黙って見守るしかありませんでした。思春期だった私が感じたこと。「手のかからない“きょうだい児”だったから、私は母に捨てられた」Upload By スガカズ母が重度障害のある兄を連れていったという事実は、当時思春期だった私にとってショックでした。なぜなら、3人きょうだいのうちの、兄だけを連れていくということは、私たち(私、姉)からすると「きょうだい児である私(たち)を選ばない」という意味にもなるからです。姉はもう成人していたので、落ち着いてはいましたが…。私はそれまで、親から「我慢して」などと言われた記憶はありません(全くない訳ではないと思いますが、記憶にないので、私にとって悩むほどの内容ではなかったのだろうと思います)。ですが、自分自身で選んでしていたこととして、「重度障害のある兄への対応が優先されるのは重々承知しているから、自分が我慢すれば良い」「母が助かるだろうから、私は手のかからない子でいよう」と思って自分なりに頑張ってきたつもりでした。それなのに、母は離婚する際に私を連れていかない選択をしました。私にとっては、「手のかからない子になった結果、重要な場面で母に捨てられた」と思えてなりませんでした。それでも、今まで「手のかからない子」になる道を選んでいたので、今さら「親を困らせる子」にはなれませんでした。母のことが大好きだっただけに、裏切られたような気がして、本当にショックでした。「生きているだけで良かった」と割り切ることができれば良かったのですが…。両親が離婚した2週間後に私は、公立高校の受験本番を迎えました。そのときの受験した高校には無事合格したのですが、あまりのショックからか受験当日の記憶が全くありません。表面上は、母と穏やかな関係だけど、私自身の心の中は複雑…母と父が離婚してからも私はときどき母と兄の住む家に遊びにいったり、泊まりにいったりしました。兄の様子を見て、一緒に住んでいたころと変わらない様子に安心したのを覚えています。兄が通う作業所での仕事の様子や、家での様子についても母から聞くことができました。自分の中でわだかまりがありつつも、母と私の関係は穏やかでした。1年ほどすると、母に合った薬が見つかったようで、統合失調症の症状が緩和され、母に少しずつ笑顔が戻りました。ただ、いつどんなきっかけで症状が悪化するか分からないのと、「自分は母に選んでもらえなかった」という感情がどうしても消えず、表面上は穏やかな関係でも、私自身の心の中は複雑で、腫物に触れるかのような関係でした。大人になってからだんだんと理解ができるようになった、母のやさしい選択あれから25年が経ちました。今なら重度障害のある兄だけを連れていった母の気もちが分かる気がします。母はできる限り家族それぞれがその人らしく暮らせる選択をしたのだと思います。もし仮に母が私たち(姉と私)を連れて出ていってしまったのなら、姉は自分のために働くのではなく家族を養うために働かなくてはなりませんし、私は高校生という立場の中、ヤングケアラーとなり、外での生活(学校や交友関係など)を楽しむことも、その先の進路などを見据えることも難しかったのではないかと思います。大人になって、母の感じた重圧や不安に気づき思う「十分頑張ってくれた」母はきっと寂しかったのだろうと思います。障害児育児、他人との関わり、自分の体(足に持病があります)が以前より思うようにいかないもどかしさ、寄り添ってほしい身近なパートナー(父)とのコミュニケーションの難しさ(父は生まれつき片耳が聞こえません)。ライフステージが変化する中で、持病がある中さまざまな重圧や不安を日々感じながら3人の子どもを育てていたという事実を想像しました。それは、現在の私とは比べることもできないくらい大変だったことだろうと、今なら簡単に想像がつきます。母が家を出てからの20年間は、紆余曲折ありました。(兄は今から18年ほど前から障害者支援施設に入居することができたため、兄の生活が安定しました)。その20年の間に、母の統合失調症が悪化し、入院したことは何度もあります。そして、現在は母が脳梗塞でなくなって5年が経ちました。Upload By スガカズ母のことを思い出すと、「幸せな人生を送れていたのだろうか?」といまだに思ってしまいます。私自身答えはきっとこの先も出せないだろうと思います。ただ、きょうだい児だった私の立場として、母から得たものはたくさんあります。自分のことは優先してもらえることはなかった気がしますが、母は私を一方的に叱ったりする人ではなかったし、私の人生を否定することは一度もありませんでした。もし私がきょうだい児として、兄と違った関わり方を母に強要されていたのなら、私は自分の人生の意義を見出せなかったり、兄のことも今のように、大事に思えなかったのかもしれません。結婚もしていなかったのかもしれませんし、そうすると、主人や子どもたちに出会えていなかったことでしょう。今の自分はおそらく、発達障害のある子どもたちとさまざまなことに遭遇しながらも、楽しく暮らせている気がします。それは、幼少期より私の母が暖かく見守ってくれていた賜物ではないかと思うのです。母が十分、頑張って私たちを育ててくれた。そんな母が、もし仮に「自分のキャパを越えて頑張り過ぎた(もしくは、我慢しすぎた)結果、心を病んでしまった」のであれば、私はこの母の経験をもとに、自分の人生では、「自分がもっている能力以上に頑張る必要はない」という答えにたどり着きました。今まさに、障害児育児を頑張っている方に、私と母の経験から、「頑張りすぎないで」「自分を大事にして」と心から伝えたいです。執筆/スガカズ(監修:三木先生より)つらいことがあったとき、子どもは結果から理由を類推するしかありません。スガカズさんのように「いい子だったからいけないんだ」という解釈になってしまうことがよくあります。でも大人になって初めて「自分は悪くない」ということが分かることもあります。それもきっと、お母さまがお母さまなりの見守り方をしてくださったからなのでしょうね。
2022年08月30日クジラと法律をこよなく愛する、自閉スペクトラム症の新米弁護士ウ・ヨンウが、同僚や親友など周りの人に支えられながら、彼女ならではの視点で事件を解決に導く法廷ドラマシリーズ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」がNetflixで独占配信中。この度、日本でも“ウ・ヨンウロス”続出の本作で主人公を好演したパク・ウンビンが、役作りをするにあたり本作へ込めた思いと、いま話題を呼んでいる“ウ・ヨンウ式挨拶”の誕生秘話、そして日本へ向けて感謝のメッセージを語るキュートな特別映像が到着した。配信開始後の初週末からNetflixグローバルTOP10(非英語シリーズ)入りし、日本では最終回を迎えた現在でも首位を独走する大ヒット作となっている(8月26日時点)。Netflixシリーズ「恋慕」や「法廷プリンス―イ判サ判―」など数々の作品で安定した演技力を魅せてきたパク・ウンビンが、自閉スペクトラム症の天才新米弁護士ウ・ヨンウを演じた。何に対しても真っすぐで、思ったままを口にするヨンウは、新米弁護士として一流法律事務所に入所する。ピンチのときに必ず助けてくれる同僚のイ・ジュノ(カン・テオ)や、どんなときも傍にいて味方をしてくれる親友のトン・グラミ(チュ・ヒョニョン)など支えてくれる仲間に囲まれ、次第に会社にも馴染んでいく。“ヨンウを演じられるのはパク・ウンビンだけだ”と、製作陣から絶大な信頼を置かれ本作に挑んだパク・ウンビンは、「ヨンウは自閉スペクトラム症の症状がありますが、天才弁護士としての姿も見せなければなりません。ウイークポイントもストロングポイントもある。その2つをどうやって表現するのかしっかり考える必要があり容易ではありませんでした」といままで演じたことのない役柄の難しさを語り、「だからこそ私だけの判断で役作りしてはいけないと思い、自閉スペクトラムの専門家である大学教授のアドバイスを受けました」と役作りを明かした。また、「BTS」をはじめとする著名人らが、ヨンウと親友グラミのオリジナル挨拶をこぞって真似したことで話題になっている“ウ・ヨンウ式挨拶”について聞かれると、「元々台本では少し挨拶の仕方が違いました。トン・グラミ役のチュ・ヒョニョンにどんな挨拶にするか相談したときに、“こうしよう(本編で使われている挨拶)!ウンビンさんどうですか?”と聞いてくれたので、トン・グラミが望むならヨンウはそのままやると合意しました。多くの方がウ・ヨンウとトン・グラミならではの挨拶の仕方を真似してくださり、愛してくださっているようで嬉しいです」と劇中だけでなく、日ごろから気心の知れた2人のやりとりから“ウ・ヨンウ式の挨拶”が生まれたと語った。韓国ブームの熱が年々高まる日本でも、「“私の人生はおかしくて風変りだけど価値があって美しい”って言葉が心に残った...」「主人公はキュートでかわいいし恋愛相手も素敵すぎ!理想の上司に女友達にいい人しかいない!」と大好評の意見がSNSで続出。国境を越えて作品を親しむ日本のファンに向け、ウンビンは「日本で愛されていると聞きとてもうれしいです!」と喜び、「近い国ですが、文化も言語も異なるので、同じように愛されていること自体が不思議でなりません。楽しんでくださりありがとうございます!」と感謝のメッセージ。さらに、Netflixシリーズ『First Love 初恋』や『るろうに剣心』シリーズ、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』などに出演する佐藤健も自身のYouTubeチャンネルで本作にハマっていると公言していることを受け、「『カノジョは嘘を愛しすぎてる』は拝見しましたが、とても面白かったです。有名な俳優さんたちが視聴してくださり、うれしく思います」とコメントしている。Netflixシリーズ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」は独占配信中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:【Netflix映画】ブライト 2017年12月22日よりNetflixにて全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】マッドバウンド 哀しき友情 2017年11月17日よりNetflixにて全世界同時配信【Netflixオリジナルドラマ】オルタード・カーボン 2018年2月2日より全世界同時オンラインストリーミング2月2日(金)より全世界同時オンラインストリーミング【Netflix映画】レボリューション -米国議会に挑んだ女性たち-
2022年08月27日静かな多動Upload By まる息子リュウの発達障害が分かったころから「これは多動なんだな」と思うような動きが見えてきた。座っていられない、大人の静止を聞かずに動き回る、興味の移り変わりが激しく次から次へと興味の対象に向かって動いてしまう。「多動」というとドタバタと足音うるさく走り回ったりするイメージがあったが、息子は静かにフラフラといなくなる。言葉も遅く穏やかな息子は周りからも「静かな多動」と言われてており、「気づいたらいなくなっているので気をつけています」と保育園から言われたことも。初めての新幹線Upload By まる電車や新幹線が大好きな息子。新幹線に乗せてあげたい!と思い、友人親子と新幹線に乗って旅行に行くことになった。ただ多動なことが分かっているのでポータブルDVDやお菓子、ちょっとしたおもちゃなどたくさんアイテムを持参して行くことにした。新幹線のホームに着き、息子はうれしそうに行き来する新幹線を眺める。今まで新幹線は見るだけで乗ったことはなかったので、しばらくして到着した新幹線に「これに乗るよ」と伝え乗り込むととてもうれしそうな顔をしたことが印象的だった。新幹線に乗り込みそこから到着まで約3時間。思っていたより大変だった。その3時間、ほとんど座席に座っていられず歩き回りデッキで過ごすことになったのだ。お菓子もすぐに食べ尽くされ、お気に入りのDVDもおもちゃも興味なし、座席に戻ってもすぐに抜け出してしまう。座席横の通路をひたすらウロウロするのもほかの人に迷惑なのであまり人が来ないデッキにいるのは良かったのだが、移動時間が長かったので付き添っていた私がぐったりしてしまった。私は旅行好きなので全国いろんなところに連れて行きたいけど、飛行機に乗れるのはまだ先だなと実感した。ホームでグルグルUpload By まる息子は現在4歳。休みのたびに電車を見に駅に連れて行くのだが、駅のホームでもひたすら歩き回っている。1ヶ所でじっくり見ることはなく、ちょっと座ったと思えば歩き出し、自動販売機に興味をもったと思えば到着した電車に喜び、反対方向へ歩いたり、階段を登って別のホームへ行ったり「こっちーこっちー」と電車に乗りたいと訴えたり。私としては電車を見たいならベンチに座ってゆっくり見ればいいのに…と思うが仕方なくついて回っている。特に目的がないときは息子が行きたい方向へ電車に乗って行ってみることもよくある。このように飽きるのが早いので、少し電車を見たら電車に乗る → 降りる → また電車を見る → 駅を出るなどと忙しない(ただ息子自ら駅から出たいというのは行き慣れている駅のみ)。1日一緒に出かけると息子について回るのでヘトヘトになってしまう。目的地へGO!Upload By まるところが最近、ちゃんとそれに目的があることが分かった。よく行く数駅先の駅で改札を出て、どこに行くのかと思いながらついて行くと好きなアイスやさんに向かっていってお店の前でうれしそうにしていたり、じぃじの住んでいる駅に降りて自分でじぃじの家の前まで迷わずに行き入りたいと言ったり(仕事で不在だったので会えず、息子は泣いていた)。乗り換えもあるなかなか遠い駅に息子の先導で連れて行かれて、まさかと思ったらたまに行くお店の電車の模型を見たかったようでちゃんとたどり着いたことも。途中でいろいろと寄り道はするけども、息子なりに好きなものにたどり着く道順が分かっているようだ。多動の息子と出かけると一瞬目を離した隙にいなくなるし、ママの買い物に付き合うことがものすごくイヤなようで逃げ回ってしまい、ゆっくり買い物もできずイライラすることも多い。でも息子がきっちり乗り換えをして目的の駅で降り、自ら方向を決めて歩きたどり着いた先に「あっ、これが目的だったのか…」というものがあると息子の「好き」が分かってうれしくなる。それまであっち行くこっち行くと散々振り回されて疲れていても、よくここまでの道を覚えていたね、そんなに好きなんだねと笑顔になってしまう。執筆/まる(監修:藤井先生より)「静かな多動」の動きの中には、リュウさんの目的があったことに気がついたのですね。まるさんが、リュウさんのペースを大事にしながら、見守ってきたからこその発見ですね。一日中お出かけするとヘトヘトになるとのこと、リュウさんの好きを大事にしながらも、まるさんが無理しすぎないように、第三者(療育やクリニックや園など)とも連携しながら、リュウさんの成長を見守っていけるといいですね。リュウさんの「好き」を一緒に楽しむことがこれからもできますように。
2022年08月26日学校大好きなのに…突然の行き渋りUpload By ゆきみ自閉スペクトラム症と診断を受けている長男けんとは、今年度より小学校の特別支援学級1年生。本人の希望により、大好きな算数は必ず、ほかの科目もほとんどの授業を交流級で受けています。7月のある日の朝、急に「学校に行きたくありません」と言い出しました。初めての学校行き渋りにビックリ。話を聞いてみると「体育したくないんだ」「算数もイヤ!」とのことでした。体育に関しては思い当たることがあったので驚きはしなかったのですが、数字と共に生きてきたといってもいいほど数字が大好きで、毎日、算数の授業を楽しみにしていた子だったので驚きました。さらにじっくり理由を聞いてみると「待つんだー」と。構音障害があって上手く言葉で説明できないので、詳しい状況がつかめません。あとで先生にお聞きすることにしました。そして学校は様子見でお休みさせていただくことに。体調は良く、元気だし、お休みだからといって家で好きに遊んでいたら「家は遊べて楽しい」と思うかも…と思い、学校の時間割通りに、ママと少しずつ家庭学習をしました。数日前の予兆!まさかの行き渋りの原因Upload By ゆきみこの数日前の朝「今日は体育はありますか?」と、悲しそうな顔で質問してきました。理由を聞くと「保健室の前の貼り紙が怖くて、前を通れないから、その先にある体育館やプールに行きたくない」とのこと。学校に到着して先生にお伝えすると、実際の貼り紙を見せてくださいました。その内容は…まさかのニコちゃんマーク。「これが怖いの?」とビックリ。自分の感覚では全く怖いと感じないけれど、前を通りたくないほど怖いと感じるのだと分かりました。授業のときに自分で「前を通りたくない」と訴えたらしく、ご配慮くださり、すでに保健の先生が貼り紙を外してくださったとのこと。けんとも貼り紙がないのは分かっているけれど、トラウマで怖がってしまっている様子でした。行き渋りの理由の1つは、この話だろうなと思いました。もう1つの「算数を待つのがイヤ」について電話で先生にお聞きしたら…「算数のプリントなど、解くスピードが速く、すぐに終わるので、みんなが終わるまで待つのがつらいのかもしれない」とのこと。確かに「待つ」のが苦手なので、理由が判明しました。回避方法を選択式で質問してみましたUpload By ゆきみほかの人からすると小さなことかもしれないけれど、きっとけんとにとっては大きなことに感じて行き渋りをしたのだなと思い、回避策・解決策を考えることにしました。「貼り紙が怖い」は先生がすでに取ってくださり、本人も貼り紙がないことを分かっているので、時間をかけて安心感を得ていくしかないだろうなと思い、回避する案をけんとに提案してみました。1.外を通って(保健室の前を通らないで)体育館やプールへ行く2.ママが体育の時間に学校へ行かせていただいて、抱っこして保健室の前を通るけんとは、2を選択。その後、先生に相談させていただいたら、サポートの先生が抱っこしてくださることになりました(けんとも了承してくれました)。続いては「算数の待つ時間」。こちらは先生にご相談する前に私だけで考えられる選択肢を提案してみました。1.特別支援教室で勉強する2.交流級で勉強して、我慢して待つこれは1を選ぶのかな?と予想しましたが、けんとは2を選択。どうしても交流級でお勉強したかったようです。学校側の配慮に感謝待つ時間の過ごし方Upload By ゆきみけんとには「先生とお話をさせてもらうね」と約束をして「明日は学校に行く?」と質問してみると「行く!」と元気いっぱいのお返事が聞けました。少しでも解決策があることが分かり、自分でも納得してくれたのか…理由は分かりませんが「行く」と言ってくれて少し安心しました。その後、保健室の前を無事、歩いて通れるようになったそうです。そして「算数の待つ」問題は…以前からミニホワイトボードを持参させていただいているのですが、先生の提案により待ち時間はそれにお絵描きをさせてくださっているそうです。初めての行き渋りにビックリしましたが、学校もできる範囲の中で対応してくださり、子どもだけでなく私も心強く感じました。始まったばかりの小学校生活。これからも、けんとにとっての困りごとが出てくると思いますが、その都度、学校の先生方やけんととも相談しつつ、行き渋りや不登校、家庭学習することも視野に入れ、受け入れる心の準備もしていこうかなと思っています。執筆/ゆきみ(監修:三木先生より)ご本人がうまく説明できないなか、タイミングを待ちつつも生活を崩さないように対応されたのはとても良い方法だったと思います。また学校の対応も柔軟かつ丁寧で素晴らしいですね。引き続き楽しい学校生活が送れると良いですね。
2022年08月26日《text:Reiko Uehara》「私は自閉スペクトラム症であります」。新人弁護士のウ・ヨンウは初めて立った裁判の冒頭陳述の前に、そう宣言する。そして、「皆さんからすると言動がぎこちないかもしれません。しかし法を愛し、被告人を尊重する心は他の弁護士と変わりません。弁護人として被告人を助け、真実を明かすべく最善を尽くします」と続ける。5歳で刑法をそらんじ、ソウル大のロースクールを首席で卒業した彼女の履歴書の2枚目にも、自閉スペクトラム症である旨が添付されている。この新人弁護士ウ・ヨンウを主人公にした韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」は本国で右肩上がりの高視聴率を獲得し、Netflix日本でも「今日のTV番組TOP1」を独走中。世界では非英語部門のTV番組で配信開始から6週連続でTOP10入り、そのうち2位になったのは一度きりでTOP1に君臨し続けている。昨年の「イカゲーム」を引き合いに出されるほどの盛り上がり方だ。主演を務めるのは、同じくNetflix配信されて人気を博したロマンス時代劇「恋慕」のパク・ウンビン。前作とはまったく違った主人公を見事に演じ、愛すべきニックネームを授けられた登場人物たちとの恋愛や友情と家族愛、さらに国境を越えてリアルかつ身近に存在する社会問題を反映した訴訟を痛快に解決していく様子が、「BTS」らK-POPアイドルや俳優たちをも夢中にさせ、世界中の人々の心をとらえている。様々な配信サービスに毎月登場する新作ドラマのうち、ウ・ヨンウの毎朝のルーティーンを映し出したオープニング・クレジットさえ“スキップ”したくない、それくらい愛おしい良作に出会えることはそう多くない。社会的弱者であり、強者…?自閉スペクトラム症の弁護士が主人公アメリカ、日本でもリメイクされた「グッド・ドクター」では医師、「サイコだけど大丈夫」などにも同様の特徴を持つ画家が登場してきたが、今作では自閉スペクトラム症(ASD)の新人弁護士が描かれる。ウ・ヨンウは刑法・民法などあらゆる法や条項、関連資料を画像で保存したかのように記憶しており、大手法律事務所「ハンバダ」に就職するところから物語は始まる。上司のチョン・ミョンソク弁護士(カン・ギヨン)は当初、弁護士には「話術や社会性が必要」と彼女を雇い入れた「ハンバダ」代表ハン・ソニョン(ペク・ジウォン)に反発するが、人と視線を合わせることはできなくても、部屋に入る前の心の準備に3秒間+深呼吸が必要であっても、ウ・ヨンウは弁護士として天才だ。会話の脈略や相手の感情を理解しながら、誰も気づかない事実を見つけ、粘り強くひたすら被告人の利益を追求していくウ・ヨンウ。おうむ返しと呼ばれる相手の言葉をそのまま繰り返す反響言語も、注意されれば心の中だけに留めることもできる。段取りや争点があらかじめ概ね決まっていることが多い裁判は、ルーティーンや食事(キンパ一択)が変わることを好まず、自分だけの世界に強いこだわりを持つ彼女に向いているのかもしれない。とはいえその一方で、ウ・ヨンウは回転ドアをうまく通り抜けることやペットボトルの蓋を開けることができない。予告もなく想定外のことが起きれば、戸惑い、混乱し不安になる。それに普段は、大好きなクジラのことで頭の中はいっぱいだ。高度な知能と知られざる神秘的な生態、家族愛や帰属意識で結ばれているクジラにウ・ヨンウが惹かれる理由は劇中でも詳しく説明されていくが、ウ・ヨンウこそがクジラのようだ。今作では、クジラ好きの愛らしいウ・ヨンウが困難な訴訟に挑み、世にはびこる不条理や不公平をカッコ悪くもカッコよく成敗しつつ、自身に対する差別や偏見にも向き合っていくのが見どころとなる。今作を手掛けた女性脚本家ムン・ジウォンが語る通り、「ひとたび彼女が事件を担当すれば、視聴者がこれまで見たことのないような展開になります」。そんなウ・ヨンウを熱演したのが、男装の世子を演じた「恋慕」も記憶に新しいパク・ウンビン。シム・ウンギョンらとともに子役から長く活動してきた彼女は、2シーズン続いた「青春時代」(16-17)や、今旬ヨン・ウジンと共演し熱血判事イ・ジョンジュに扮した「法廷プリンス-イ判サ判-」(17)、男性社会の野球界でキャリアウーマンを演じた「ストーブリーグ」(19)などでも知られるが、今回の役を演じきれるかどうか不安で出演を決意するまで1年かかったという。やがて心が決まると、ウ・ヨンウを誠実に演じるため専門家と会い、綿密なリサーチを行って臨み、2022年に記憶される新たな代表作を手に入れることになった。ヨンウとグラミ、親友同士の挨拶がバズるウ・ヨンウを見守るキャラクターたちも魅力的だ。高校時代、お互いいじめられたり、腫れ物のように扱われていたトン・グラミ(チュ・ヒョニョン)とはすぐに親友になった。ヨンウにとってグラミは、父(チョン・ベス)以外に一緒にいて安心を感じられる大切な存在だ。この親友グラミとの挨拶は思わず笑みがこぼれてしまうほど独特で、話題を呼んでいる。「BTS」のRMとジミンが劇中のように挨拶する様子がYouTube上でとらえられると、TikTokなどで拡散。“やってみた”動画も続々と投稿されている。また、ロースクールを首席で卒業し、司法試験にもほぼ満点で合格したヨンウだが、その成績がありながらどこの事務所にも就職できなかったのは、劇中で同僚(であり、もう1人の親友といっていいだろう)チェ・スミン(ハ・ユンギョン)が指摘するように差別以外の何ものでもない。ロースクールのころから“どうせ1位はウ・ヨンウ”と苦い思いをしたものの、見て見ぬふりなどできないのがスミンだ。「ハンバダ」でもペットボトルを開けてあげ、食堂がキンパの日は教えると言う。明るくて温かい「春の日差し」のようなスミンの思いやりは、決して当たり前にできることではない。“腹黒策士”と呼ばれていたクォン・ミヌ(チュ・ジョンヒョク)も、当初は周囲に配慮され、特別扱いされるウ・ヨンウを快く思ってはいなかった。ウ・ヨンウを「弱者ではなく強者」と言い放ったのも彼だった。ウ・ヨンウの頑張りを見守り、逸脱や混乱をその都度整えてくれたのは、“理想の上司”チョン弁護士(カン・ギヨン)だ。彼の寛容な導きなくしてウ・ヨンウの活躍はなかった。裁判を通じて「ハンバダ」の弁護士たち、判事や訴訟関係者の間にもウ・ヨンウに対するリスペクトが広がっていく様は爽快ですらあった。何より、「他人に否定されても自分が愛だと言えば愛です」といった名セリフや初々しいキスシーンで一躍注目俳優となった、カン・テオが演じるイ・ジュノの存在だ。優しく忍耐強くあまりに完璧、その罪深さから韓国では“有罪男”と名づけられた。役名からして「赤い袖先」で大ブレイク中のイ・ジュノ(2PM)と同じ!?入隊間近ながらしっかりと爪痕を残したカン・テオには、いまオファーが殺到中のようだ。ロマンティックばかりじゃいられないウ・ヨンウの恋とキャリア韓国の「KBIZoom」によれば、脚本家のムン・ジウォンは7月26日に行われた記者発表会で、“ウ・ヨンウが弁護士生活を送る上で一番大きな困難は自閉スペクトラム症そのものであり、それによる偏見”と考えた、と語っている。だからこそ、ウ・ヨンウの特徴的な言動と、それによって生じる困難をユーモアを交えながらもきっちり描こうとしたのだと。ムン・ジウォンは今作がドラマ初脚本で、先に第1話でグラミがヨンウに紹介した映画『無垢なる証人』(19)を手掛けている。殺人の容疑者を弁護するヤン弁護士(チョン・ウソン)と、事件の唯一の目撃者である自閉スペクトラム症の少女ジウ(キム・ヒャンギ)との交流を描いた脚本は「第5回ロッテシナリオ公募展」で大賞を獲得した。「あなたは信頼できる人なのか」、ヤン弁護士が彼女の問いに真摯に応えようとすることで、弁護士に憧れを抱いていたジウが“弁護士にはなれなくても、証人としてなら真実を伝えられる”と法廷に立つことを決意する。グラミがモノマネした「弁護士も人間です」は同作の名セリフだ。ムン・ジウォン脚本の『無垢なる証人』(2019)あれから約3年、今作ではついに“韓国初の自閉スペクトラム症の弁護士”が実現することになる。ドラマシリーズ全16話のうち1話~2話をかけ、ウ・ヨンウたちが挑む裁判から現代社会が抱える問題を1つ1つ浮き彫りにしていく。障がい者差別やナチスからつながる優生思想、性差別、移民(脱北者)問題、超学歴社会、根深い家父長制から、日本の報道番組でも見かける大規模道路工事と小さな自治体の対立まで、広く連続性と具体性を持ってこれらを顕在化させたのも視聴者が引き込まれた理由だろう。さらに、第10話で描かれる知的障がいのある女性の恋愛に関する裁判が上記のジュノのセリフに繋がったように、それぞれの案件はウ・ヨンウの恋愛や親子関係、キャリアなどにも大きく影響を与え、彼女の世界を広げていく。存在さえ知らなかった母親との再会に加えて、依頼人の利益をとるか、それとも社会正義(真実)か、弁護士として究極の命題にまで対峙する。ときにはロマンティックなやり方では通用しない、過酷な現実にも向き合わなければならない。例えば、第3話ではある悲劇が起きた兄弟の裁判で、ウ・ヨンウが自閉スペクトラム症であること自体が裁判の争点となってしまう。個人差がさまざまな自閉スペクトラム症についてウ・ヨンウ自身は理解していても、裁判に立つ検事や判事ほか、チョン弁護士でさえ「同じだから、気持ちが分かるでしょ」と彼女に同裁判を担当させた当時は無理解だった。こうした周囲への指摘も、ドキリとするほど的確で辛辣である。そもそも我々が今作のあらすじを知って、「自閉スペクトラム症の女性が弁護士に?」と興味を抱くのも無自覚な差別の裏返しではないのか。とはいえ、今作が素晴らしいのはそういった先入観や偏見、既成概念をことごとく、鋭くもゆっくりと、まるで“ズン、チャッチャッ”のリズムのごとく打ち砕いてくれる点だ。『無垢なる証人』でも触れた“普通ではない”からといって劣っているとは限らない、という動物学者テンプル・グランディンの考えを今作にも登場させながら、“普通ではない”弁護士を通じて1人の人間の独自性を照らしている。世の中は相変わらず不寛容で忙しないが、それでも、今日も大小さまざまなクジラたちが優雅に空を泳いでいるウ・ヨンウの世界を思えば、心にほんのり温かい光が灯る。ウ・ヨンウはもう、ひとりぼっちではないからだ。「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」はNetflixにて配信中(全16話)。(上原礼子)
2022年08月22日