あ・うん♡(ハート)ぐるーぷ制作・主催、『~近松門左衛門全集より~梅川・忠兵衛』が2023年6月23日 (金) ~2023年6月25日 (日)に博品館劇場(東京都中央区銀座8-8-11)にて上演されます。チケットはカンフェティ(運営:ロングランプランニング株式会社、東京都新宿区、代表取締役:榑松 大剛)にて発売中です。カンフェティにてチケット発売中 公式ホームページ 2020年5月新型コロナの影響により中止、同年「アートにエールを!」ダイジェスト版の上演を経て、今回、脚本・キャストを一新し、満を持しての本公演です。梅川・忠兵衛は大竹一重と宮原奨伍。特別ゲストの横内正、原田大二郎、三浦浩一を中心に、イケメン若手俳優やレギュラー女優陣が二人を華やかに盛り上げます。恋の逃避行をする二人の幻想的な場面や廓の女たちの粋で艶やかな衣裳の数々、激しく華麗な立回り、新感覚の「美しすぎる時代劇」あ・うん♡ぐるーぷならではの「梅川忠兵衛」をお楽しみください。【公演内容】近松門左衛門の名作「冥途の飛脚」をモチーフに、登場人物の職業や生い立ちの設定をアレンジした、あ・うん♡ぐるーぷならではの令和新感覚時代劇。ものがたりは、遊女梅川と若き医者の忠兵衛が運命的な出会いをし、周囲の激しい反対に押し流されそうになりながらも、離れられない二人の切ない恋を主軸に、廓に生きるおんなたち、それを取り巻く男たちの悲喜こもごもを描いています。間宮家の養子 忠兵衛は、日本医学の祖と呼ばれる緒方洪庵から絶対的な信頼を得る門下生であった。学問にしか興味のない堅物の忠兵衛が、運命の相手梅川と出会ったのは新町の遊郭だった。二人は出会った瞬間、互いに強く惹かれあい恋に落ちた…。しかしながら、育ちは武家の娘ながら、金が物言う苦界の遊女になりはてた梅川と、出世を約束された忠兵衛、二人の前に立ちはだかる障害の壁は途方もなく高かった。やがて追いつめられた梅川と忠兵衛は、雪の降りしきる中、ふたりの世界を求めて旅立つのだった。公演概要あ・うん♡(ハート)ぐるーぷ第八回公演『~近松門左衛門全集より~梅川・忠兵衛』公演期間:2023年6月23日 (金) ~2023年6月25日 (日)会場:博品館劇場(東京都中央区銀座8-8-11)■出演者大竹一重横内正/原田大二郎/三浦浩一宮原奨伍/青木玄徳西崎緑まるのめぐみ/藤間秀曄/佐々木健/中牧由美璃娃/藤田真澄/酒井優衣/小山晶士/潮見勇輝高橋健悟/岡将士/御堂耕平/烏羽宏至/松山征司藤村はる美/杉山幸子/荒巻千草/泉鮎子/上倉悠奈西野光/内山智貴/山埜琴音/入江小鳩/平井茉海光希郁人/森隼■スタッフ脚本・演出:さとうしょう/立師・立廻指導:市川猿四郎/音楽:森正明三味線演奏:杵屋栄十郎/演出補佐:まるのめぐみ/日舞・所作指導:藤間秀曄舞台コーディネイター:本田浩之/舞台監督:沙古史朗照明:上川真由美/音響:TEO東京演劇音響/着付:平林美智子かつら:太陽かつら/アドバイザー・ヘアメイク:平間靖彦宣伝美術:emmy/撮影:廣瀬健/映像配信:(株)COLORSCASTING DIRECTOR:TY-promotion詩笛立季/制作・主催:あ・うん♡ぐるーぷ■公演スケジュール6月23日(金) 19:006月24日(土) 11:30 / 16:006月25日(日) 11:30 / 16:00※開場は開演の30分前■チケット料金S席 8,500円A席 7,000円(全席指定・税込)※カンフェティ取扱はA席のみ配信発売(カンフェティ)視聴料:4,000円 6月25日(日)16時ライブ配信開始6月25日(日)公演終了後~アーカイブ配信7月2日(日)23:59まで 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年05月21日2月に国立劇場にて、近松門左衛門の円熟期に書かれた傑作3作品を披露する公演『近松名作集』が上演される。近松門左衛門(1653年~1725年)は、浄瑠璃作者であると同時に日本の近世文学を代表する巨人。国立劇場では、2月の文楽公演において、たびたび『近松名作集』と銘打ち、近松の傑作の数々を上演してきた。本公演は、初代国立劇場さよなら公演の一つとなっており、現在の国立劇場小劇場公演としては最後の『近松名作集』となる。『心中天網島』天満紙屋内の段『心中天網島』は享保5年(1720年)12月に竹本座で初演された。執筆時近松は67歳で、前年に『平家女護島』、翌年には『女殺油地獄』を発表するなど円熟味を増して浄瑠璃作者として最も充実していたころの作品。近松の心中物の多くが、実際に起きた事件を脚色して書かれており、本作も同年10月に大坂・網島の大長寺(大阪市都島区中野町)で起きた心中事件を元に書かれた。近松の心中物の代表作である『曽根崎心中』や『冥途の飛脚』は、若い恋人同士が切羽詰まった状況に追い込まれ心中に邁進していく物語だが、本作で描かれるのは「避けようとしても避けられなかった悲劇」。特に、紙屋治兵衛を愛する二人の女、紀伊国屋小春と妻おさんが、「最悪の悲劇」を避けるために、互いに“義理”を果たそうとする姿が本作品の大きな見どころとなっている。『心中天網島』北新地河庄の段『国性爺合戦』は正徳5年(1715年)11月に竹本座で初演。この前年、義太夫節を確立した近松の盟友竹本義太夫(筑後掾)が没し、竹本座を引き継いだ竹本政太夫(後の二代目竹本義太夫)は、まだ弱冠24歳。この若手の太夫のために本作は書き下ろされた。『国性爺合戦』紅流しより獅子が城の段中国人の父、日本人の母を持ち、台湾で清朝に抵抗した明の遺臣鄭成功を題材に、日本と中国大陸を股にかけた壮大なスケールの物語が繰り広げられる近松の時代物の代表作。そのドラマチックな展開と異国情緒の物珍しさから、初演から足かけ3年、17カ月ものロングランを記録した大ヒット作となった。『国性爺合戦』千里が竹虎狩りの段『女殺油地獄』は『心中天網島』初演の翌年、享保6年(1721年)7月に竹本座で初演され、『天網島』同様、実際に起こった殺人事件をもとに脚色した作品。初演以降はほとんど再演されることのない“埋もれた名作”だったが、明治になり坪内逍遥が近松の再評価をした際に再発見され、まずは歌舞伎で、そして昭和に入ってから文楽で上演され瞬く間に人気作品となった。『女殺油地獄』豊島屋油店の段本作の主人公河内屋与兵衛は、遊ぶ金欲しさによる借金で首が回らなくなり殺人を犯す。忠義や義理のため、やむにやまれず人に手をかけることが多い浄瑠璃のキャラクターの中でも、与兵衛の造形は特に異質だ。衝動的に刃を手にする与兵衛の姿は、現代の“キレる若者”にも通ずる普遍性を帯びており、近松門左衛門の類まれなる先見性を感じさせる。また、人間では表現することが難しい人形ならではの激しい動きで、油にまみれながら繰り広げられる凄惨な殺し場は作品随一の見どころとなっている。『女殺油地獄』河内屋内の段<公演情報>初代国立劇場さよなら公演 2月文楽公演『近松名作集』2023年2月4日(土)~21日(火) 国立劇場 小劇場『近松名作集』ビジュアル■第1部(11:00開演)心中天網島北新地河庄の段天満紙屋内の段大和屋の段道行名残の橋づくし■第2部(15:15開演)国性爺合戦千里が竹虎狩りの段楼門の段甘輝館の段紅流しより獅子が城の段■第3部(18:30開演)女殺油地獄徳庵堤の段河内屋内の段豊島屋油店の段※字幕あり※休憩あり【チケット料金】(各部・税込)1等席:7,000円(学生4,900円)2等席:6,000円(学生4,200円)※障がい者の方は2割引です。(他の割引との併用不可)※車椅子用スペースがございます。問合せ:国立劇場チケットセンター0570-07-9900
2023年01月27日秋元松代の傑作『近松心中物語』を、4月にKAAT神奈川芸術劇場の新芸術監督に就任した長塚圭史が演出。9月20日(月・祝)まで同劇場にて上演され、北九州、豊橋、兵庫、枚方、松本へとツアーが続く。物語の舞台は元禄時代の大阪。飛脚宿亀屋の養子・忠兵衛と見世女郎の梅川、古物商傘屋の婿養子・与兵衛とその妻のお亀という、ふた組の男女の悲恋を描く。長塚がこだわったのは、セットを極力排除したシンプルな舞台。幕開け、そのなにもなかった舞台に、人々が集い、鳴り物と歌によって一気に華やかな遊郭街が立ち上がる。そこに溢れるのは人々の“生”のきらめきであり、これから「心中物語」が展開されるとは思えないほど。だがこの賑やかな“生”があるからこそ、後の“死”がより鮮明に浮かび上がるのだろう。忠兵衛と梅川の出会いは突然。舞台奥から梅川が登場し、ゆっくりと忠兵衛とすれ違う。その一瞬でふたりはお互いに心奪われ、離れがたい存在だと悟るのだ。婿養子という立場にあるためか、それまでは常に奥手でお人よしであった忠兵衛。だが梅川の存在は、そんな忠兵衛を大きく変化させていく。演じるのは田中哲司。梅川に対する実直でひたむきなその姿に、強く心打たれる。梅川役には、数多くのミュージカル作品でヒロインを演じてきた笹本玲奈。忠兵衛への熱い恋心が遊女らしい色気の中に滲み、俳優として新たな一面を垣間見せている。忠兵衛と梅川が王道の悲恋の物語だとするならば、与兵衛とお亀は少し様相が異なる。ふたりはすでに夫婦であり、そこに障壁はないように思えるからだ。またどこか頼りない与兵衛と、与兵衛ひとすじの箱入り娘・お亀のやり取りは、傍から見ればとてもかわいらしい。特に遊女との仲を疑い、その想いを真っすぐ与兵衛にぶつけるお亀の嫉妬ぶりは、つい笑ってしまうほど。演じる松田龍平、石橋静河もそれぞれハマり役だ。しかし身分違いの恋、という点では忠兵衛、梅川と変わらず、ふたりも心中の道を歩んでしまうことになる。演出の長塚は、「死は生を鮮やかに照らします」と語る。ふた組の死を取り巻く、日常を生きる市井の人々の生があってこその、『近松心中物語』なのだろう。ここで起こった事件は悲劇ではあるが、観劇後の胸に残るのは、希望という名の灯だ。人間という生き物はどうしようもないほど情けなく、そしてたくましい。ラスト、劇場に鳴るスチャダラパーのラップは、迷える人々への応援歌のようにも響いた。『近松心中物語』ぴあ半館貸切公演2021年9月10日(金)、9月11日(土)会場:KAAT神奈川芸術劇場ホール取材・文:野上瑠美子
2021年09月07日故・蜷川幸雄が千回を超える上演を重ねた名作『近松心中物語』がKAAT神奈川芸術劇場の新芸術監督に就任した長塚圭史の演出で上演される。開幕前日の9月3日にゲネプロの模様が取材陣に公開された。戦後を代表する劇作家・秋元松代の代表作であり近松門左衛門の『冥途の飛脚』をベースに他作品の要素を加えて作られた本作。元禄時代を舞台に、飛脚宿の養子・忠兵衛(田中哲司)と女郎の梅川(笹本玲奈)、古物商の若旦那・与兵衛(松田龍平)とその妻・お亀(石橋静河)の2組の男女の姿を描き出す。田中が演じる忠兵衛は、真面目が取り柄の飛脚宿の養子だが、親切心で拾ったお金を届けた先が廓で、そこで出会った笹本演じる梅川と深く愛し合うようになる。梅川には、さる金持ちから身請け話が持ち上がるが、忠兵衛は負けじと金策に奔り、やがて身を滅ぼしてゆくことに...…。生真面目であるがゆえに真っ直ぐに生き、愛し、自らを追い詰めていく忠兵衛を田中が好演!互いを運命の相手を想い定めるも、愛だけでは超えることのできない境遇の違い、“金”という現実に逃げ場を失っていくふたりの姿が切なく、そして美しい。一方、松田が演じる与兵衛はお人よしの心優しい男で、石橋演じる妻・お亀から深く深く愛されているが、大店の婿養子という立場に身の置き所のなさを感じている。そんな中、幼なじみである忠兵衛が、梅川の身請けの手付金のため、与兵衛に金を貸してくれと頼みに来る。そこで鍵付きのたんすにしまってあった50両を忠兵衛へ惜しげもなく差し出す与兵衛。そのことで姑の怒りを買い、自身は家を出ることになり、忠兵衛もさらに追い詰められていくことになるのだが…...。先のことを考えないのか? いや、考えた挙句に「まあいいか」と思ってしまうのか?常にのらりくらりとした様子で、他人の頼みに“NO”と言わず、ダメな男なのに目が離せない――そんな与兵衛を松田が魅力的に演じている。もうひとり、なんとも不思議な強い存在感を放っているのが、石橋が演じる与兵衛の妻・お亀である。与兵衛への愛情に一切の迷いも混じりっ気もなく、常に与兵衛にとっての“オンリーワン”であることを望む。古物商の娘という裕福な境遇にありながら、与兵衛が家を追い出され、さらには番所に追われる身になっても、愛は揺るがず、家を捨てても与兵衛と生死を共にしようとする凄まじいまでの“覚悟”を持っている。そんなふたりのやりとりは、いつもどこか噛み合わず、コミカルですらある。2組の男女の間に共通して横たわるのは、善意とけがれなき愛情、そして生まれ育った境遇の違い――“格差”である。愛を成就させるために途方もない金が必要となり、破滅へと追い込まれていく忠兵衛と梅川。婿として身の置きどころのなさを感じ、そんな自らの代わりに“自由”を与えるがごとく、ポンっと忠兵衛に大金を差し出す与兵衛。裕福な暮らしなどあっさりと捨てて、与兵衛について行くことに何よりの幸福を見出すお亀。“格差社会”が叫ばれる現代の人々の心に、2組の恋はどのように響くのか? 長塚の演出、繊細で美しい美術、そしてスチャダラパーによる和楽器を巧みに取り入れた音楽にも注目してほしい。公演は9月20(月・祝) までKAAT神奈川芸術劇場 ホールにて。ほか、福岡、愛知、兵庫、大阪、長野公演あり。取材・撮影・文:黒豆直樹【スタッフ・キャストコメント全文】●長塚圭史(演出)肉体が純粋渇望するもの。『近松心中物語』は大阪新町の見世女郎梅川と飛脚宿の養子忠兵衛の叶わぬ恋を発端に描くドラマです。ふたりは出会い、恋の炎が燃え上がりますが、金に行き詰まり、とうとう身分を捨て、社会の枠組みから飛び出します。秋元さんは身分制度のあった江戸時代の社会を、味わい深い台詞で紡ぎます。見世女郎よりも更に身分の低い、河原で客を取る辻君にも今夜帰る家があること。丁稚の長松や久作は幼いながらも親元を離れ、仕事をして、ご飯を食べていること。不機嫌な小役人にも女房が待っていること。皆、生きる為に、働いて、眠り、暮らしています。そんな当たり前の日常からはみ出していく忠兵衛と梅川。例えどんな地位であれ境遇であれ、私たちは人間であることを求める。心中とありますが、死は生を鮮やかに照らします。このエネルギーが現在の皆様に届けばと思います。KAAT神奈川芸術劇場でお待ちしております。●スチャダラパー(音楽)最初に長塚圭史氏から聞いた構想(近松心中物語を、セットも極力シンプルに、少ない役者達で最後はスチャダラのラップがかかって終わる)が、本当に言った通りの形になったのだから感無量です。●田中哲司(亀屋忠兵衛役)もう少しで舞台初日です。でも、いつ中止になっても悔いの無いよう、舞台稽古の一回一回を本番のつもりでやっています。なので、これまでの舞台とは恐らく本番の重みが違います。今回、完成しつつある長塚圭史君の作り上げた『近松心中物語』はシンプルな装置の上で、個々の役者がさらけ出される舞台です。誰一人として気を抜けない舞台で、それに負けないよう皆頑張っています。今回の舞台、僕は好きです。こういう状況なので、大手を振って観に来てくださいとは言えませんが……大変な中、観に来てくださった方の心を少しでも揺さぶる事が出来るよう頑張ります。●松田龍平(傘屋与兵衛役)明日(9/4)から近松心中物語を公演します。現代から江戸時代へ、心を重ねて観てもらえる作品だと思います。その時代を生きる人々と、その中で、心中することでしか結ばれることができなかった男女の物語をぜひ劇場でご覧ください。長塚さんをはじめスタッフ、役者一同、力を合わせて舞台を盛り上げていきますので、お楽しみに。●笹本玲奈(遊女梅川役)稽古では、忠兵衛、与兵衛、梅川、お亀をはじめとする登場人物たちが、いまよりも自由が制限されている時代背景、生活環境、身分制度の中で、それぞれが一生懸命に生き抜く姿に心動かされ、愛おしさが増す毎日です。時代が違えば良かった事、時代が違っても変わらない事、シンプルなストーリーですが、さまざまな視点から見て楽しむことができる作品です。現代では日常で使われない美しい日本語と、梅川の芯にある強さと愛情深さを大切に、心を込めて演じたいと思います。●石橋静河(傘屋お亀役)日々の稽古でお亀という女性に向き合いながら、何か果てしない可能性のようなものを感じています。毎日新しい発見があり、幕が開いてからもきっとたくさんの気づきがあるだろうと思います。改めて、素敵な役と出会えたことを有り難く感じています。廓の街の華やかさ、儚さを目で耳で、楽しんでいただきたいです。また、お亀・与兵衛の可笑しくも切ない恋のゆくえを見守っていただけたら嬉しいです!●朝海ひかる(傘屋お今、遊女役)長塚さんの演出による新しい『近松心中物語』が、皆様にどの様に届くのか、とてもワクワクしております。現代から元禄へのタイムトリップをどうぞお楽しみください。●石倉三郎(丹波屋八右衛門役)ホントにこの忌ま忌ましいコロナのせいで、徹底的に検査、予防、何を触るにもアルコール消毒! マスク絶対着用、不安感だらけの稽古がやっと明けて、扨漸く無事初日を迎えられる運びと相成りました。この文化の殿堂、横浜のKAATで、嬉しい限りであります。秋元松代作・長塚圭史演出『近松心中物語』。演劇に余り関心のない方でも、充分に楽しめること請け合いです! スタッフ・キャスト、皆懸命に頑張りました。何卒御高覧の程、伏して宜しくお願いお願い申し上げます。
2021年09月04日松田龍平さんが舞台に立つのは数年に一度。今回出演する舞台『近松心中物語』を含め、近年は3作とも長塚圭史さんの演出作。長塚舞台の何が松田さんをとらえるのだろうか。「なんというか…感覚的なことなんですけど、今まで僕が出演させてもらった長塚さんの舞台は、装置を使わずに身ひとつで作る、といった感じの舞台でしたね。体と声を使って、演奏して。シンプルなんですけど、昔からあったであろう芝居の形というか、骨組みがしっかりしている気がして。観客にどう見せたら伝わるか、みたいなところは長塚さんに見てもらって、僕自身は、役と向き合うことに没頭させてもらうという、贅沢な時間でしたね。もちろんシンプルになる分、役者が埋めなくてはならないところは大きくなるわけで、大変さもピカイチだから、楽しみな気持ちと不安な気持ちに挟まれてました。終わってみれば、長塚さんの演出、楽しかったな…みたいな(笑)」胸を軽く叩きながら「本当の思いはここにあって。それが観る人に伝わるかってことに集中できるから、自分には居心地がいいのかもしれない」とも。今回は共演に、以前も長塚作品で共演した田中哲司さんと、親同士の交流を通じて幼い頃からよく知る石橋静河さんが名を連ねる。「哲司さんは包容力が半端ないですね。人生相談とかしたくなりますよ(笑)。本番で台詞が飛んでも助けてくれそうな安心感があるので、その安心感に包まれすぎないように頑張らないとですね。静河はめちゃめちゃまっすぐで素敵なレディです。久々に会うと嬉しくてハグしたくなっちゃうんですけど、『やだ!』って断られてます(苦笑)」松田さんは、その石橋さんと夫婦の役。石橋さん演じるお亀は、恋焦がれる旦那の与兵衛がひょんなことから窮地に陥ったことを知り、共に心中しようと持ちかける。「それまでの与兵衛は、自分の不甲斐なさを盾にお亀と別れたかったんじゃないかと思うんです。家からも離れて乞食になって自由に生きるのもいいなと。でも、お亀が死のうとした時に“お前が死ぬなら一人で死なせはしない”という男気というか、愛はあるんですよね。これから台詞を頭に入れて稽古で芝居を交わすなかで、どんな気持ちになっていくのか気になります。静河の芝居を目の前にしたら、辛くて、ほんと、どうしようもない気持ちになりそうですね。楽しみです」どこかとらえどころがなく、肩の力が抜けた印象を抱いていた。それだけに、松田さんの演技に対して語られるまっすぐな言葉の数々に少し驚かされる。「もう、そろそろ親父と同い年になっちゃうので、どうしようかなと。今まで俳優を続けてきたなかで、僕の指針になっていましたから。ほんとに、新たに面白いことにもっと敏感にならないとですよね。それでも、自分ひとりでバランスを保つのはなかなか難しいですから、皆と一緒に作品を作る機会をいただいて感謝してます」だからなのか、映像でも舞台でも、“役を演じる”のではなく“役としてそこに居る”と思わせる俳優だ。「もっと役に酔いたいですね、もっと役と話さないとだし。役として居ながら、それができるようになれたら楽しいだろうな」KAAT神奈川芸術劇場『近松心中物語』飛脚宿の養子の忠兵衛(田中)は、偶然行き合った遊女・梅川(笹本)と恋に落ちる。しかし、梅川に身請け話が持ち上がり、焦った彼は先に手を打とうと金の工面に奔走し…。9月4日(土)~20日(月)横浜・KAAT神奈川芸術劇場作/秋元松代演出/長塚圭史音楽/スチャダラパー出演/田中哲司、松田龍平、笹本玲奈、石橋静河、朝海ひかる、石倉三郎ほかS席9500円A席6000円ほかチケットかながわ TEL:0570・015・415(10:00 ~18:00)地方公演あり。まつだ・りゅうへい1983年5月9日生まれ、東京都出身。’99年に映画『御法度』でデビュー。最近のおもな出演作に、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』、映画『泣き虫しょったんの奇跡』『影裏』など。※『anan』2021年9月1日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・石井 大ヘア&メイク・赤松絵利(ESPER)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年08月29日初演は、42年前の1979年。戦後を代表する劇作家・秋元松代が、近松門左衛門の『冥途の飛脚』をベースに創作し、蜷川幸雄の演出で千回を超える上演が重ねられて、演劇界の金字塔と評された。その『近松心中物語』が、長塚圭史の演出で新たに立ち上がる。描かれるのは、境遇の違うふた組の男女の、心中へと追い詰められていく恋物語だ。今回はまず、その男側のふたりが登場。遊女・梅川を愛する忠兵衛役の田中哲司と、心中に憧れる妻・お亀に寄り添う与平衛役の松田龍平が、男の胸の内や、名作に挑む思いを語った。哲司さんとの共演は「逆に警戒しています(笑)」(松田)──舞台では、長塚圭史さん演出の『冒した者』(2013年)で共演経験のあるおふたりですが、お互いにどんな印象をお持ちですか。田中これはあくまでも僕の感覚なんですけど、役とか芝居へのアプローチの仕方が、僕とは全然違うところからくるなと思ったんです。芝居で絡んでみて気づいたのですが、独特のものがあってとても刺激になります。なので当時、ふたりで向かい合って座って長いセリフのやりとりをしたのが、すごく楽しかったんですよ。僕はあまりしゃべってなかったです(笑)。ほぼ龍平くんがしゃべってました。だから今回は、忠兵衛が与平衛に、梅川の身請けの手付金を借りに行くシーンでふたりでしゃべるので、そこが楽しみですね。松田『冒した者』ほんと楽しかったなぁ。あの舞台は今も自分の中に大きく残ってますね。哲司さんの佇まいとか、雰囲気に救われていました。実は、最後の通し稽古の途中、ふたりで向かいあってるシーンで、セリフが飛んじゃったんですけど、その時もめちゃくちゃスムーズに助けてもらって。田中そんなことあった? ちゃんと助けられた?松田はい(笑)。サラッと助けてもらったのを覚えてます。だから今回もまた助けてもらえるという安心感で、逆に、またセリフが出てこないみたいなことが起きるんじゃないかと思って、警戒してます(笑)。「与平衛が龍平くんなので安心」(田中)──前回共演されたのが三好十郎さんの戯曲で日本の名作でしたが、今回も伝説の舞台と言われているような名作ですね。田中この『近松心中物語』は、ニナガワカンパニーにいた僕にとっては、本当に敷居が高い作品です。本番の舞台を観たことはないのですが、やっぱり大きな存在なんですよね。しかも、その忠兵衛役をやるので、心して挑まねばならないなと思っています。ただ、与平衛が龍平くんなので安心であったりもします。ちょっと気弱な遊び人で、人に流される与平衛っていうのがすでに見えてくるので。今は、「よし、そっちは大丈夫だ、あとはこっちが頑張ればいい」という感じになれています。松田たくさんの人に愛されてる作品ですから、プレッシャーはありますが、面白くなるに違いないという期待を胸に、これから皆さんと作っていけたらと思っています。ただ、哲司さんが演じる忠兵衛の年齢が20代だって聞いて、大丈夫かなって、さっき話していたんですけど(笑)。田中 (笑)。それを圭史くんに聞いて、そうか、若いから心中できるんだよな、若い命が散っていくから悲しいんだよなと思えるんです。当初それが頭になかったから、このまま稽古に入ってたら危ないところでした。だから、若さゆえっていうところを、動きとか感情の揺れで、ちゃんと出さなきゃいけないなと思いますね。それこそ歌舞伎でも有名な“封印切”のシーンなんかは、はっちゃけてウワーッと。松田オジサンが無理しちゃってる感じに見えないようにしないと(笑)。田中心中へ追い詰められる悲壮感にちゃんとつながるように演じなければと思っています。片や龍平くんの与平衛とお亀には、本当に笑える面白いシーンもあるよね。松田与平衛とお亀では温度差が面白いですよね。お亀は、与兵衛のことが好きで仕方ないと言う感じで、与兵衛は色々うんざりしちゃって、乞食にでもなって、自由に暮らすのも良いかもと思っていて。ふたりが心中に向かっていくところも、お亀のロマンチックモードに、なんとかついていってる感じで(笑)。与平衛は心優しい真っ直ぐな男なんですけど、後先考えず「わかった」と言ってしまうんです。与兵衛は間違ったことはしていないように思うんだけど、なんか、ずれちゃってて。その感じがすごく魅力的なんですよ。──ちなみに、それぞれのお相手となる、梅川役の笹本玲奈さん、お亀役の石橋静河さんの印象は?田中笹本さんは『ピーターパン』の主演でデビューされていて芸歴が長いですし。ミュージカル畑の方だから、どういう感じの芝居でこられるのか、ワクワクしてます。やっぱり思わぬものがきたほうが、予定調和よりも全然楽しいですからね。ふたりでどんなものが作れるか、本当に楽しみにしています。松田僕は石橋さんのことは、親の繋がりもあって小さい頃から知ってるんです。お亀と与兵衛も幼なじみなので、繋がるところがあるのは面白いですし、お芝居するのが楽しみです。描かれていることは、今の時代とまったく変わらない(田中)──身請けのお金が工面できない忠兵衛と、忠兵衛にお金を貸せる与平衛。この物語にはそうした境遇の違いが様々にあって、それを今の格差や貧富の問題につながるものとして描きたいと長塚さんはおっしゃっています。おふたりは、今にどんなものが届く芝居になると思われますか。田中ここに描かれていることは、今の時代とまったく変わらないですよね。忠兵衛は、何百両何千両のお金を扱う仕事をしていながら給料は少なくて、女のために使い込みを働いてしまう。だから、若さもそうですけど、遊女になるしかなかった梅川も含め、貧しいっていうことは強調して出していかないといけないなと思いますね。松田でも、現代で「心中」っていう言葉を聞くと、家族で無理心中。みたいなイメージがありますけど、この時代に、自由に恋愛をすることが出来なかった男女にとって「心中」は最後のチャンスだったのかもしれないですね。心中にポジティブ、みたいな(笑)。哲司さんは「心中」どうですか?田中絶対できない。だから、与平衛の感じはすごくわかります。お客さんも与平衛に共感する人が多いんじゃないかな。でも、龍平くんは、お亀の心臓を突かないといけない。そんなの一発で上手くいかないよね。松田なかなか死ねないみたいな(笑)。それ、芝居でやってみますか?田中稽古でやってみる価値はあるかも。笑いにならない程度に。松田圭史さんにすぐ「それいらないな」って言われそう(笑)。──その長塚さんの演出は、いかがですか。田中厳しくもありやさしくもあり。松田圭史さんは鋭いんですよね、芝居してる時の気持ちが全部バレちゃう感じで。そうなると油断できないし、遅刻も出来ないし、話を聞いてないと怒られるからなー。田中そりゃそうでしょ(笑)。松田でも、今回嬉しいですね。これまで圭史さんとやった2作は、セットが椅子ばかりだったから(笑)。『冒した者』は音楽もなくて、すごい緊張感の中で芝居してたし。『イーハトーボの劇列車』は汽車の音を役者が奏でたり。今回はみんなで楽器で盛り上がったり、色々装置もあって。田中音楽もあるよ。それもスチャダラパーさんが作ってくれる音楽が。松田もうね、本当にありがたいです(笑)。圭史さんの舞台をやると、また一歩踏み出すきっかけをもらえる(松田)──松田さんにとって舞台出演は今回が5作目で、そのうちの3作が長塚さん演出の作品になりますが、舞台に出るときは何か決め手となるポイントがあるんでしょうか。松田舞台は大変ですよね。稽古を重ねて、本番が始まったら何があっても最後まで止まらないし。ちゃんとやり切れるのか、ビビっちゃいますね(笑)。でも、なんだかんだ、これはやらないと勿体ないぞっていう、そういう絶妙なタイミングで、いつも長塚さんに声をかけてもらってる気がしてます。田中しかも龍平くん、圭史くんの中でも大変な作品ばかりやってるよね。松田そうなんですね(笑)。でも、ほんと、稽古から本番にかけて、夢中になって。舞台を終えると、なんだか一歩踏み出せるような感じがあって。──一方田中さんは、数え切れないほど舞台に出ておられます。その中でも、この作品はどんな存在になりそうでしょうか。田中僕も龍平くんと似たような、「これキツイなぁ。でもやるしかないよな」みたいなところはあります。松田ありますね。田中特に圭史くんは、大変な作品をやるときに声をかけてくれるので、ちょっと追い込まれる感じになるんですよね。『浮標』(2011年、12年、16年)も『冒した者』もそうでしたけど、その都度、この年齢になってもこういうことをクリアしなきゃいけないのかっていう気持ちになる。でも、これでまた大きくなれたらいいな、自信になればいいなと思ってやっています。だから今回も、あの忠兵衛をやれたんだ、55歳で20代の忠兵衛をやれたんだって(笑)、また自信になったらいいなと思っています。取材・文:大内弓子撮影:外舘翔太『近松心中物語』キャストインタビュー【後編:梅川&お亀】笹本玲奈さん、石橋静河さんインタビューは8月27日(金)公開予定! 公演パンフレットプレゼントもありますのでお楽しみに!公演情報KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『近松心中物語』2021年9月4日(土)~2021年9月20(日)会場:KAAT神奈川芸術劇場 ホールほか、福岡、愛知、兵庫、大阪、長野公演あり
2021年08月20日2021年9月~10月に神奈川を皮切りに全国で上演されるKAAT神奈川芸術劇場プロデュース公演『近松心中物語』のチケットが本日7月24日(土)10:00より発売される。『近松心中物語』は、戦後を代表する劇作家・秋元松代の名作戯曲。近松門左衛門による人形浄瑠璃『冥土の飛脚』をベースに、いくつかの世話物を織り交ぜて描かれたふた組の男女の物語。蜷川幸雄の演出により1979年に帝国劇場で初演されて大ヒットを記録し、蜷川幸雄の名を全国に知らしめただけでなく、秋元松代は今作で菊田一夫演劇大賞を受賞。その後数々の演出家、キャストにより繰り返し上演されている演劇界の金字塔的作品だ。今回は2021年4月よりKAAT神奈川芸術劇場の芸術監督に就任した長塚圭史が、同劇場のメインシーズン幕開けに自身の演出でおくる。今作の上演を決めた理由について長塚は、秋元松代が横浜出身であり、神奈川県が誇る劇作家であること、2019年に同劇場で上演された秋元のもうひとつの傑作『常陸坊海尊』で演出を手がけた際に「簡潔でありながら非常に味わい深い台詞の魅力に惹かれた」と語り、『近松心中物語』は「身分制度が厳しくお金がものを言う元禄時代にどうしようもなくなって、行き場がなくなって死を選ぶ梅川と忠兵衛、ある程度裕福ながらも心中という物語に恋してしまうお亀と生の執着から逃れられない与兵衛という、ふたつのカップルの様は、今の格差社会においても非常に雄弁なのではないか。若者たちのこの刹那を一生だと思う、永遠だと思うエネルギーも大きく惹かれたところ。やはり死ぬということは生を照らすこと。このことが大きく響けば今の世の中では難しい肉体性みたいのものも大いに堪能できるのではないか」と作品の魅力を語った。『近松心中物語』メインビジュアル遊女・梅川と恋に落ちたことで金に追い詰められていく亀屋忠兵衛を演じる田中哲司は、「忠兵衛という役は本当に自分にとってハードルが高い役。(役の年齢が20代ということにふれ)これはヤバいぞと。もし稽古場でジジくさかったら注意してねと言っています(笑)」と笑いを誘った。忠兵衛を助けるため店の金に手をつけ、家を出ることになった傘屋の婿養子・与兵衛を演じる松田龍平は、「(与兵衛は)すごく筋を通す人だな、と感じます。自分が本当にどうやって生きていきたいのかは分からないんだろうなと。ただ自分の周りにいる大切にしている人に対しての筋は通していて、心中するというのも、自分が死ぬ気はなくても大切な人がそうしたいなら仕方ない、そうしよう、という人なんだなあと。これからせりふを入れて芝居をしながら、役を噛みしめていきたいと思っています。」と意気込んだ。忠兵衛と電撃的な恋に落ちる梅川を演じる笹本玲奈は「和物に挑戦することも初、共演者の方々もはじめましてで、長塚さんの演出も初めてご一緒するので初めてづくしですが、皆にしっかりついていきたい。梅川についてはあまり多くが語られていないですが、せりふの節々から彼女の人柄がうかがえるので、バックグラウンドをしっかりつくっていきたい」とコメント。与兵衛に恋焦がれる妻・お亀を演じる石橋静河は「脚本を読み終わったあとになんてはかないんだ、という気持ちがすごく残って、その最初の印象を大事にしたい。お亀は本当に可愛い人。ただその可愛らしさが同時に危うさも生んでいて、そこが難しいだろうなと思いつつ、余計な事は考えずにただ真っすぐに演じられたらいいなと思います。」と、作品と役への思いを語った。今期のメインシーズンのテーマ“冒(ぼう)”に相応しく、これまでの上演では80人規模の出演者で描かれてきた同戯曲を19人の出演者で描くという挑戦もあり、また、音楽は昨年デビュー30周年を迎えたラップグループ、スチャダラパーが担当(キャストも歌う予定!?)と、元禄時代のふたつの恋物語をどう現代に蘇らせるのか、注目が集まる。『近松心中物語』の上演は9月4日(土)から20日(火)までKAAT神奈川芸術劇場 ホールにて。その後福岡、愛知、兵庫、大阪、長野を巡演する。福岡公演は8月1日(日)より、兵庫・長野公演は8月7日(土)、愛知公演は8/14(土)、大阪公演は8/17(火)よりそれぞれチケット一般発売開始予定。
2021年07月24日舞台『近松心中物語』が2021年9月4日(土)から9月20日(月・祝)までKAAT神奈川芸術劇場で、その後、福岡・北九州、愛知・豊橋、兵庫、大阪・枚方で上演される。田中哲司、松田龍平、笹本玲奈、石橋静河らが出演し、演出は長塚圭史が務める。“演劇界の金字塔”『近松心中物語』『近松心中物語』は、近松門左衛門の「冥土の飛脚」をベースに他作品の要素を盛り込みながら完成させた、作家・秋元松代の戯曲。初演の演出は蜷川幸雄が担当し、これまでに1000回以上も上演されてきた。“演劇界の金字塔”と称される作品でもある。『近松心中物語』で描かれるのは、元禄時代に生きる男女二組の恋物語。はじめは純粋な恋心と親切心だったはずが、そのために金に追い詰められ、世間から逃げ出さざるを得なくなる忠兵衛と梅川、与兵衛とお亀の恋の行く末を描く。田中哲司や松田龍平が出演キャストには個性豊かな俳優が勢揃い。真面目な飛脚宿亀屋の養子・忠兵衛には田中哲司を、古道具商傘屋の婿養子・与兵衛には松田龍平を起用。遊女・梅川は数々のミュージカル作品のヒロインを演じてきた笹本玲奈が、与兵衛の妻・お亀は『あのこは貴族』など話題作に出演する若手実力派女優・石橋静河が演じる。また、石倉三郎や朝海ひかるといったベテラン俳優も参戦。『近松心中物語』は、これまで50人規模のキャストで上演されてきた戯曲だが、今回は19人の出演者が複数の役を演じ分けて上演する。演出はKAAT神奈川芸術劇場芸術監督の長塚圭史演出は、2021年にKAAT神奈川芸術劇場芸術監督に就任した長塚圭史が担当。音楽は、2020年にデビュー30周年を迎えたラップグループ・スチャダラパーが手掛ける。ラップと現代演劇の金字塔『近松心中物語』という異色の組み合わせにも高い期待が募る。『近松心中物語』<あらすじ>元禄時代、大阪・新町(遊郭街)。真面目な飛脚宿亀屋の養子・忠兵衛は、新町の遊女・梅川に出会い、互いに一目で恋に落ちる。梅川に、さるお大尽からの身請け話が持ち上がる。金に困った忠兵衛は、幼馴染みの古道具商傘屋の婿養子・与兵衛に金を借りにいく。与兵衛が快く貸してくれた50両で、梅川の身請けの手付金を払い安堵する忠兵衛と梅川の元に、大尽からの身請けの後金300両が届いてしまう。一方お人よしで心優しい与兵衛は、与兵衛に恋い焦がれる女房のお亀、舅姑とともに、大店の婿養子として身の置き所のない想いを抱いて暮らしていたのだった。忠兵衛と梅川/与兵衛とお亀。華やかな元禄の世に生きる境遇の違う男女二組。恋い焦がれる人と共にいるために心中を選ぶ、それぞれの恋を描く・・・。作品詳細KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『近松心中物語』作:秋元松代演出:長塚圭史音楽:スチャダラパー出演:田中哲司、松田龍平、笹本玲奈、石橋静河、綾田俊樹、石橋亜希子、山口雅義、清水葉月、章平、青山美郷、辻本耕志、益山寛司、延増静美、松田洋治、蔵下穂波、藤戸野絵、福長里恩/藤野蒼生(Wキャスト)、朝海ひかる、石倉三郎美術:石原敬、照明:齋藤茂男、音響:武田安記、衣裳:宮本宣子、ヘアメイク:赤松絵利、振付:平原慎太郎、所作指導:花柳寿楽、音楽アドバイザー:友吉鶴心、演出助手:大澤遊、舞台監督:横澤紅太郎■神奈川公演会場:KAAT神奈川芸術劇場<大ホール>日程:2021年9月4日(土)~9月20日(月・祝)料金:・S席 9,500円、A席 6,000円(全席指定)・<夜割>A席(平日夜割引) 3,000円(※9日と16日のみ)・U24チケット(24歳以下) 4,750円、高校生以下割引 1,000円、シルバー割引(満65歳以上) 9,000円※U24、高校生以下、シルバー割引チケットは7月24日~取扱いチケット発売日:・一般 7月24日(土)・KAme(かながわメンバーズ)先行発売 7月3日(土)チケット取扱:<チケットかながわ>・TEL:0570-015-415(10:00~18:00)・公式サイト・窓口(KAAT神奈川芸術劇場2階 10:00~18:00)<チケットぴあ>・TEL:0570-02-9999(Pコード 506-578)・公式サイト<イープラス>・公式サイト<ローソンチケット>・公式サイト(Lコード31979)問い合わせ先:チケットかながわTEL:0570-015-415(10:00~18:00)■北九州公演会場:北九州芸術劇場中劇場日程:9月25日(土)14:00/18:30、26日(日)13:00料金:一般 8,500円、ユース(24歳以下) 4,500円一般発売日:8月1日(日)問い合わせ先:北九州芸術劇場TEL:093-562-2655(10:00~18:00)■豊橋公演会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール日程:10月1日(金)18:00、2日(土)13:00、3日(日)13:00料金:S席 10,000円、A席 8,000円、B席 6,000円一般発売日:8月14日(土)10:00~問い合わせ先:プラットチケットセンターTEL:0532-39-3090(休館日を除く10:00~19:00)■兵庫公演会場:兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール日程:10月8日(金)18:00、9日(土)13:00、10日(日)13:00料金:A席8,500円、B席5,500円一般発売日:8月7日(土)問い合わせ先:芸術文化センターチケットオフィスTEL:0798-68-0255(10:00~17:00月曜休み※祝日の場合翌日)■枚方公演会場:枚方市総合文化芸術センター関西医大 大ホール日程:10月13日(水)14:00料金:A席7,000円、B席5,000円一般発売日:一般(電話・ウェブ)8月18日(水)10:00より発売残席がある場合、翌日に窓口販売問い合わせ先:枚方市総合文化芸術センター別館TEL:072-843-5551(9:30~20:00、休館日:火曜日 ※祝日を除く)■松本公演会場:まつもと市民芸術館主ホール日程:10月16日(土)13:00料金:一般 6,500円、U18 4,000円(枚数限定)一般発売日:8月7日(土)10:00~問い合わせ先:まつもと市民芸術館チケットセンター(10:00~18:00)TEL:0263-33-2200※チケットは各地とも全席指定
2021年06月19日舞台『近松心中物語』が9月4日(土)より、KAAT神奈川芸術劇場で開幕する。この度、本作のメインビジュアルと公演日程詳細が決定した。現代演劇の金字塔にKAAT神奈川芸術劇新芸術監督・長塚圭史が挑む。彼が2021年メインシーズンの演出第1弾に選んだのは『近松心中物語』。戦後を代表する劇作家・秋元松代の代表作である本作は、近松門左衛門の『冥土の飛脚』をベースに他作品の要素を加え、近松作品の魅力をふんだんに盛り込んだシンプルで力強い言葉と故・蜷川幸雄氏の劇的な演出で観客からの圧倒的支持を得た。現在まで1000回を超えて上演され、演劇界の金字塔と称される。元禄時代、境遇の違うふたつの恋の情景を、華やかな演出で描いたことで人気を博した本作。長塚は格差を問われる現在を深く突き刺す、普遍的な戯曲と捉えて、俳優とともに台詞の魅力を紐解きながら新たな『近松心中物語』を創り上げた。飛脚宿亀屋の養子で、一途でまじめな忠兵衛(田中哲司)が、郭町で偶然出会った遊女・梅川(笹本玲奈)を見初めてしまったことで始まる元禄の悲恋。そのふたりの恋を後押ししようと、自分の店にあった金を無断で貸してしまう、忠兵衛の幼馴染で古道具屋の婿養子・与兵衛(松田龍平)と、与兵衛を心から慕っている女房のお亀(石橋静河)。はじめは純粋な恋心と親切心だったはずが、そのために金に追い詰められ、世間から逃げ出さざるを得なくなる元禄時代の2組の恋の物語は、格差が問われる現代の私たちに驚くほど重なる。こうした想いを反映して、発表されたビジュアルは近松の世話物としては意外性が際立つものとなった。キャストのコメントは以下の通り。田中哲司(亀屋忠兵衛役)『近松心中物語』は蜷川幸雄さんの為に書かれた戯曲であり、完成され熟練された作品です。その秋元松代さんの名作に、最大限の敬意を払いつつ、しかしそれに囚われず、恐れず、真摯な気持ちで取り組んで行こうと思います。これはもう、戦いだと思っています。敵はかなり手強いです。横浜のKAATで、長塚圭史君を始め、座組の皆でぶつかって、令和の時代に元禄の花を咲かせられる様に頑張ります。松田龍平(傘屋与兵衛役)この度『近松心中物語』をやることになりました。長塚さんとは3回目になりますが毎回とても大きな課題を頂けるので、今回も戦々恐々ですが、それを乗り越えて新しい景色をみたいなあと楽しみにしています。座組みの皆とともに夢中になって魅力的な物語を届けられるようがんばります。笹本玲奈(梅川役)近松心中物語の梅川は、いつか和物に挑戦したときに演じてみたいと思う憧れの役でした。今まで様々なバージョンで上演されてきた歴史ある作品に、演出の長塚圭史さんをはじめ素晴らしいキャストの皆様とご一緒出来る事をとても嬉しく思っております。ミュージカルでは洋物のドレスを着用する事が多く、日本人なのに着物を着る機会もこれまで殆ど無かったので勉強しなければいけない事が山ほどありますが、今はお稽古の開始日が待ち遠しく期待で胸が一杯です。石橋静河(お亀役)今回、お亀というとても魅力的な役に出会えたことを嬉しく思います。人とのつながりが希薄な今、お亀のように誰かを好きになるがあまり命を捨ててしまう、ということの意味を考えさせられます。若気の至りと言ってしまえばそれまでですが、人との出会いは、時に命を揺さぶるほどのパワーがあるのだと私は思います。20代も後半に差しかかってきた今の自分の、無知さ愚直さをぶつけながら、この役に挑みたいと思います。■舞台情報『近松心中物語』作:秋元松代演出:長塚圭史音楽:スチャダラパー出演:田中哲司 / 松田龍平、笹本玲奈 / 石橋静河綾田俊樹、石橋亜希子、山口雅義、清水葉月、章平、青山美郷、辻本耕志、益山寛司、延増静美、松田洋治、蔵下穂波藤戸野絵 福長里恩 / 藤野蒼生(Wキャスト)朝海ひかる、石倉三郎<神奈川公演>9月4日(土)~20日(月・祝)会場:KAAT神奈川芸術劇場<ホール>料金(全席指定 / 税込):S席9,500円、A席6,000円(全席指定 / 税込)、[夜割] A席(平日夜割引) 3,000円(※9日と16日のみ)、U24チケット(24歳以下)4,750円、高校生以下割引1,000円シルバー割引(満65歳以上)9,000円(U24、高校生以下、シルバー割引チケットは7月24日より取扱い)チケット発売:一般7月24日(土)詳細: <北九州公演>9月25日(土)14:00~ / 18:30~9月26日(日)13:00~会場:北九州芸術劇場中劇場料金:一般:8,500円、ユース(24歳以下):4,500円一般発売日:8月1日(日)<豊橋公演>10月1日(金)18:00~10月2日(土)13:00~10月3日(日)13:00~会場:穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール料金:S席10,000円、A席8,000円、B席6,000円一般発売日:8月14日(土)10:00~<兵庫公演>10月8日(金)18:00~10月9日(土)13:00~10月10日(日)13:00~会場:兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール料金:A席8,500円、B席5,500円一般発売日:8月7日(土)<枚方公演>10月13日(水)14:00~会場:枚方市総合文化芸術センター関西医大 大ホールA席7,000円、B席5,000円一般発売日:8月18日(水)10:00より発売残席がある場合、翌日に窓口販売<松本公演>10月16日(土)13:00~会場:まつもと市民芸術館主ホール料金:一般:6,500円、U18:4,000円(枚数限定)一般発売日:8月7日(土)10:00~※チケット料金は各地とも全席指定・税込
2021年06月16日舞台『近松心中物語』が9月4日(土)より、KAAT神奈川芸術劇場で開幕する。現代演劇の金字塔にKAAT神奈川芸術劇新芸術監督・長塚圭史が挑む。彼が2021年メインシーズンの演出第1弾に選んだのは『近松心中物語』。戦後を代表する劇作家・秋元松代の代表作である本作は、近松門左衛門の『冥土の飛脚』をベースに他作品の要素を加え、近松作品の魅力をふんだんに盛り込んだシンプルで力強い言葉と故・蜷川幸雄氏の劇的な演出で観客からの圧倒的支持を得た。現在まで1000回を超えて上演され、演劇界の金字塔と称される。元禄時代、境遇の違うふたつの恋の情景を、華やかな演出で描いたことで人気を博した本作。長塚は格差を問われる現在を深く突き刺す、普遍的な戯曲と捉えて、俳優とともに台詞の魅力を紐解きながら新たな『近松心中物語』を創り上げた。主軸となる男女2組には、亀屋忠兵衛に人間味あふれる演技と存在感で長塚からの信頼も厚い田中哲司、そして傘屋与兵衛に映画『御法度』でのデビュー以来、圧倒的な個性と魅力で常に注目を集める松田龍平。遊女梅川には数々のミュージカル作品のヒロインを演じ、舞台を軸に活動の場を広げる笹本玲奈。与兵衛の妻・お亀には、注目の若手実力派女優として多彩に活躍する石橋静河。また、忠兵衛の飛脚屋仲間・丹波屋八右衛門には、確かな存在感と彩りを備える石倉三郎。お亀の母・お今にはストレートプレイでの活躍も光る、元宝塚トップスターの朝海ひかる。そのほか多方面で活躍する個性派俳優が揃った。音楽は、昨年デビュー30周年を迎えたラップグループ・スチャダラパーが担当。ラップとの異色の組み合わせにも期待だ。演出:長塚圭史・コメント元禄の世に咲いた境遇の違う2つの恋の情景は、格差を問われる現在により深く突き刺さります。この戯曲の煌びやかさの本性を改めて炙り出し、台詞の深淵を紐解いて、現在ここに追い詰められた生の肉体を描き出したいのです。金に追い詰められる忠兵衛と梅川のあまりに切ない境涯と、裕福ながらも自ら堕ちることに愛を見出す若いお亀の純真。そしてそうした世間と折り合いがつかぬかのようにこの情景を心に留めて次代へ繋がってゆく与兵衛。この四人の人間模様を現代に抽出したい。神奈川県が生んだ稀代の劇作家秋元松代の代表作。KAAT神奈川芸術劇場初のシーズン制、演出第一弾に決めたことは必然と言って過言ではありません。近松門左衛門の浄瑠璃から元禄の人間模様を力強く現在に描き出した秋元戯曲の台詞の力を体現出来ればと。音楽:スチャダラパー・コメント芸術監督からのご指名により、大役任されました。期待に添えるよう気張っていきます。ANI数々の名優、作家たちによって再演が繰り返されてきた大きな作品の音楽を担当するにあたって、我々としては「まともに立ち向かっても勝てるわけがない」を合言葉に、反則スレスレのカウンターパンチを狙って、頑張っていきたいと思っています。Bose令和と江戸を繋ぐという長塚さんのチャレンジに、何とか力添えになれるよう、スチャダラなりのやり方で頑張りたいと思います。SHINCO■舞台情報『近松心中物語』9月4日(土)~20日(月・祝)会場:KAAT神奈川芸術劇場<ホール>以降、全国ツアーあり
2021年05月13日「書いている間、本当に楽しかったんです。どうしたのかと思うくらい、夢中になってしまいました(笑)」その楽しさが読者にも存分に伝わってくるのが大島真寿美さんの新作『渦 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 魂結(たまむす)び』。江戸時代に実在し、名作「妹背山婦女庭訓」を残した浄瑠璃作者・近松半二の生涯を軽快に描く作品だ。あの名作の作者が歩んだ人生とは?華やかな浄瑠璃の創作をめぐる物語。「もともと歌舞伎が好きで、編集者に歌舞伎の話を書けって言われていたんです。無理だと言ったんですが、ふと『妹背山婦女庭訓』なら書けるなって。これはもともと文楽の演目なので、まず文楽の勉強から始めてみたらこういう話になりました」江戸時代の道頓堀。幼い頃から父に連れられ芝居小屋に通った穂積成章は、浄瑠璃の虜に。親の勧めで浄瑠璃の作者を目指し名前も「近松半二」と決めるものの、芽が出ない。「半二自身の資料はあまりなくて。分からない部分を自由に考えるのも楽しかった。たとえば、半二が遅咲きだったのは本当の話。でも、当時道頓堀で活躍した歌舞伎作者の並木正三(しょうざ)と半二が幼馴染みだったというのは私のフィクション。同世代で道頓堀にいて、知り合いじゃないわけがないと思ったんです」少しずつ成長していく半二の姿に人間味をおぼえる一方、人々の娯楽だった歌舞伎と文楽のライバル関係や道頓堀の様子も興味深く読める。やがて物語は創作をめぐる話として深みを増す。創作者が突き当たる「真っ黒な深淵」や、「渦」といった表現がとても印象深い。「虚構を作る人はみんな、ちょっとした怖さを味わいながら作っていると感じながら書きました。“渦”というのも自然と出てきたんですが、編集者に重要な言葉だと指摘され、これがタイトルになりました」終盤には意外な語り手が登場するなど物語はスケールを増していく。書き終えても、なかなか気持ちが切り替えられなかったという大島さん。「あまりにも切り替わらないから、仕事とは関係なく『妹背山~』の現代語訳を始めました(笑)」そんななか、嬉しいサプライズが。「偶然なんですが、5月に国立劇場で『妹背山~』が久々に通し狂言として上演されるんですよ。奇跡のコラボだと思って興奮してます(笑)」本作を読んで観劇すれば、より深い体験ができるはず!おおしま・ますみ1962年生まれ。’92年「春の手品師」で文學界新人賞を受賞しデビュー。著作に本屋大賞3位の『ピエタ』、直木賞候補にもなった『あなたの本当の人生は』など。『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』江戸時代の大坂・道頓堀。父に連れられ幼少の頃から浄瑠璃に親しんだ少年が、名作「妹背山婦女庭訓」を生み出すまでの紆余曲折とは。文藝春秋1850円※『anan』2019年4月24日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2019年04月22日浄瑠璃・歌舞伎作家の近松門左衛門と竹本義太夫、江戸時代の世を沸かせたふたりの演劇人の交流を、ふたりが世に送り出した作品を絡めて紡ぐ『うつろのまこと-近松浄瑠璃久遠道行』が博品館劇場で開幕した。【チケット情報はこちら】物語は1685年、近松33歳、義太夫35歳。義太夫が近松に本の書き下ろしを依頼するところから始まる。老獪な近松に“青二才”と罵られ、全く相手にされない義太夫。しかし、あるひと言をきっかけに近松が筆を執る……そうして生まれたのが『出世景清』(【出世之章】)。続いて、世話物として確立させた『曽根崎心中』、心中物の代表作『心中天綱島』、それぞれを【名残之章】【生瓢之章】と題す、3つの章からなる本公演。30代から60代後半までの近松を演じるのは伊藤裕一。口跡のよい台詞回しと常に纏った陰のオーラで佇まいの枯れ感に相反し、消えることのない世の中への反骨心、歳を重ねるごとに凄みを増す“書くことに対する執念”を余すところなく表現。近松の作品に宿る言霊の力にいち早く気づいた高潔で実直な義太夫と、その後継の政太夫を全身全霊で演じるのは今拓哉。義太夫の語りを台詞と歌で表現する今の広いレンジの歌声と表現の豊かさに唸る。近松と義太夫のやり取りから、いつしか人形浄瑠璃の劇世界へと移ろう、その“誘い人”は本作の音楽を担当するかみむら周平。かみむら自身によるアナログシンセサイザーの生演奏が、幻想的でありながら、生々しい劇世界を作りあげる。また、時折現れる人形振りも、人形浄瑠璃特有の人形に宿る魂を可視化させる。振付は広崎うらん。そんな劇世界を生きるのは久保田秀敏、戸谷公人、松井勇歩、大月さゆ、中村龍介ら、男と女の情・義理・誇りに翻弄される人間たちを演じる顔ぶれも実に多彩!作・演出は歌舞伎をはじめとする古典作品への造詣が深く、人間を描くことに定評のある西森英行。近松が生み出す言霊、近松の創作魂に火をつける義太夫の言葉、物語の根幹をなすものは言葉。そこに劇作家としての真髄を感じる。そして、いつの世も変わらぬ愚かながら愛おしい人間たちの姿に心打たれ、魂を削るようにして作品を生み出すふたりの壮絶さに打ち震える。舞台という虚構に宿る実(まこと)、これは偉大な先人へのリスペクトであり、今に継承される演劇人の精神なのだろう。本公演は、【出世の章】を発端に、日替わりで【名残】か【生瓢】を上演する2章上演、もしくは3章連続上演というユニークな上演形式をもつ。それぞれが独立した話でありながら、【名残】で見せる義太夫の凄み、すべてが明かされる【生瓢】と、やはりすべてを観たくなるというのが人情。近松の、義太夫の、ふたりの劇世界を生きた人々の血が“たぎる”舞台をお見逃しなく。コンプリートチケットや3章連続上演(Cパターン)の追加公演あり。6月10日(日)まで、東京・博品館劇場にて上演。取材・文:功刀千曉
2018年06月06日2月29日(月)、大阪・梅田のシアター・ドラマシティで『ETERNAL CHIKAMATSU -近松門左衛門『心中天網島』より-』が幕を開けた。深津絵里と中村七之助がW主演し、デヴィッド・ルヴォーが演出する近松門左衛門の代表作『心中天網島』。その魂は、約300年の時を超え、かつて人形浄瑠璃で初演した同じ大阪の地で、観客の胸にダイレクトに飛び込んで来た。休憩20分を含む約3時間近い芝居が、舞台に魅入られてアッと言う間。カーテンコールの拍手は鳴りやまず、総立ちの客席からルヴォーも登場した初日の観劇ルポを。『ETERNAL CHIKAMATSU -近松門左衛門『心中天網島』より-』チケット情報満員の客席。カンカンカン!と半鐘を鳴らす強い鐘の音で一気に消灯。目の前に吊られた歌舞伎幕がスルスルと開き、プロジェクションマッピングの映像だとわかる。その瞬間、ニューヨークの空撮映像が投影、リーマン・ショックのニュースを経て、大阪・道頓堀のネオン界へ。舞台は、大阪・ミナミ。借金と加齢に悩みつつ、「金のため」と売春で稼ぐハル(深津絵里)。常連客で妻子持ちのジロウと恋をしているが、ジロウの兄(音尾琢真)が訪れ離縁を迫る。ののしられ、「金のため」と別れを受け入れたハルは、自暴自棄になって街を歩き、川に行き当たる。遊女の涙であふれたと言われる幻の蜆川(しじみがわ)。そこにかかる幻想の橋の上で、ハルは遊女・小春(中村七之助)と出会い、江戸時代の古い恋の世界へ…。舞台上には小空間を形作る複数の平台。それらの組み合わせで場面転換がスピーディに行われる。近松門左衛門のような人物(中嶋しゅう)の案内で、『心中天網島』の物語に入り込み、眺めているハル。歌舞伎で有名な“河庄”や“しぐれの炬燵”の物語が描かれる中、観客はハルの視点で常に現代と結ばれ、共に江戸の物語を旅するよう。当時の風景や女性の心情がわかりやすく伝わり、近松の世界が新たな色合いで浮かび上がる。途中休憩で観客の顔が語っていた。自分たちは今、なんとおもしろい芝居を観ているのか、と。深津の非の打ちどころのない繊細な演技、歌舞伎の女方の様式美を存分に生かした七之助の魅力、中嶋の達者な案内役。心に闇を抱えて生きる現代人に突き刺さるセリフもいい。「生きているのに、死ぬほど苦しい」「心中を心づくしと言うのなら、死なないですむ心づくしはないのか」。男と女の愛が、死と生の物語が、鮮烈なインパクトを持って立ち上がり、最後には私たちを極上の優しさと切なさで包み込む。安易な予想を瞬時に振り切り、驚きのなかで着地させる見事な結末!「歌舞伎の演目を演出してほしい」と言っていた、かつての十八代目中村勘三郎との約束を、ルヴォーは見事に果たした。この舞台へ、そして息子・七之助の挑戦へ、勘三郎も天上から拍手を贈っているに違いない。取材・文:高橋晴代
2016年03月03日2月29日(月)、大阪・梅田のシアター・ドラマシティで『ETERNAL CHIKAMATSU -近松門左衛門『心中天網島』より-』が幕を開けた。深津絵里と中村七之助がW主演し、デヴィッド・ルヴォーが演出する近松門左衛門の代表作『心中天網島』。その魂は、約300年の時を超え、かつて人形浄瑠璃で初演した同じ大阪の地で、観客の胸にダイレクトに飛び込んで来た。休憩20分を含む約3時間近い芝居が、舞台に魅入られてアッと言う間。カーテンコールの拍手は鳴りやまず、総立ちの客席からルヴォーも登場した初日の観劇ルポを。『ETERNAL CHIKAMATSU -近松門左衛門『心中天網島』より-』チケット情報満員の客席。カンカンカン!と半鐘を鳴らす強い鐘の音で一気に消灯。目の前に吊られた歌舞伎幕がスルスルと開き、プロジェクションマッピングの映像だとわかる。その瞬間、ニューヨークの空撮映像が投影、リーマン・ショックのニュースを経て、大阪・道頓堀のネオン界へ。舞台は、大阪・ミナミ。借金と加齢に悩みつつ、「金のため」と売春で稼ぐハル(深津絵里)。常連客で妻子持ちのジロウと恋をしているが、ジロウの兄(音尾琢真)が訪れ離縁を迫る。ののしられ、「金のため」と別れを受け入れたハルは、自暴自棄になって街を歩き、川に行き当たる。遊女の涙であふれたと言われる幻の蜆川(しじみがわ)。そこにかかる幻想の橋の上で、ハルは遊女・小春(中村七之助)と出会い、江戸時代の古い恋の世界へ…。舞台上には小空間を形作る複数の平台。それらの組み合わせで場面転換がスピーディに行われる。近松門左衛門のような人物(中嶋しゅう)の案内で、『心中天網島』の物語に入り込み、眺めているハル。歌舞伎で有名な“河庄”や“しぐれの炬燵”の物語が描かれる中、観客はハルの視点で常に現代と結ばれ、共に江戸の物語を旅するよう。当時の風景や女性の心情がわかりやすく伝わり、近松の世界が新たな色合いで浮かび上がる。途中休憩で観客の顔が語っていた。自分たちは今、なんとおもしろい芝居を観ているのか、と。深津の非の打ちどころのない繊細な演技、歌舞伎の女方の様式美を存分に生かした七之助の魅力、中嶋の達者な案内役。心に闇を抱えて生きる現代人に突き刺さるセリフもいい。「生きているのに、死ぬほど苦しい」「心中を心づくしと言うのなら、死なないですむ心づくしはないのか」。男と女の愛が、死と生の物語が、鮮烈なインパクトを持って立ち上がり、最後には私たちを極上の優しさと切なさで包み込む。安易な予想を瞬時に振り切り、驚きのなかで着地させる見事な結末!「歌舞伎の演目を演出してほしい」と言っていた、かつての十八代目中村勘三郎との約束を、ルヴォーは見事に果たした。この舞台へ、そして息子・七之助の挑戦へ、勘三郎も天上から拍手を贈っているに違いない。取材・文:高橋晴代
2016年03月03日ロンドンやブロードウェイをはじめ世界をまたにかけ活躍をしつつ、日本でも数多くの作品を送り出している英国出身の演出家デヴィッド・ルヴォー。彼が近松門左衛門の心中ものをベースに作る新作舞台『ETERNALCHIKAMATSU ―近松門左衛門「心中天網島」より―』の制作発表会見が1月27日、都内にて開催された。主演は深津絵里、中村七之助。舞台『ETERNAL CHIKAMATSU』チケット情報もともとは、ルヴォーと故・中村勘三郎さんとで歌舞伎に取り組む約束をしていたそうで、今回の上演について「勘三郎さんと出会えたおかげ」とルヴォーは語る。紡がれる物語は、江戸時代を舞台に遊女小春と紙屋治兵衛、その妻おさんの三角関係を描いた『心中天網島』の世界と、現代日本で売春婦として暮らし、客のジロウと恋に落ちる女性・ハルのストーリーから、“愛”を描き出していくものになるとのこと。「当初話していたものとは違う形になりましたが、勘三郎さんと語ったオリジナルの思いは詰まっている。作品のイメージは、近松作品の登場人物を通して、現代の日本と過去の日本とが手を結ぶというもの。過去と現在の女性ふたりが出会い、相手の中に自分を見つけ、ふたりが愛について探っていく」とルヴォー。ダブルヒロインを務めるのが深津と七之助で、深津がハルを、七之助が小春を演じる。深津は「これまで何度も上演されている近松の物語を、デヴィッドさんがどう演出するのかに興味を抱きました。近松のドロドロした“愛の渦”に身をおけるのかな、と思ったら、私は現代を生きる女性の役でした(笑)。でもデヴィッドさんのあふれ出るアイディアがいたるところに散りばめられているので、とてもユニークな作品になりそうです」と楽しみにしている様子。七之助は「父の遺志を引き継げたことが嬉しく思う。父の思い描いていたものより、もっともっと、スケールの大きいものになっています」と話した。ふたりは初共演になるが、深津が「七之助さんは、すごく軽やかで美しい。美しさではすでに負けているので、そこは足掻かず、その美しさを自分の中に取り入れたい」と話し、共演の伊藤歩も「(七之助の美しさには)降参です、そこを比べられてしまうと…」と語ったところ、七之助が「さっきから公開処刑みたいになってる、やめてください!」と悲鳴を上げ、場内が笑いに沸く一幕も。なお、このダブルヒロインを配したことに関してルヴォーは「女性が女性を演じる、女性を男性が演じる、このふたつが同時に舞台に存在する時に生まれる緊張感や深みも探っていきたいし、そこが面白いポイントになると思う」と期待を話していた。出演はほかに、中嶋しゅう、音尾琢真ら。公演は2月29日(月)から3月6日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、3月10日(木)から27日(日)まで東京・シアターコクーンにて上演。チケットは発売中。
2016年01月27日イギリス人演出家デヴィッド・ルヴォーが近松門左衛門の「心中天網島」を現代劇として企画、演出。谷賢一がルヴォーの原案をもとに脚本を手掛ける。『ETERNAL CHIKAMATSU―近松門左衛門「心中天網島」より―』が、深津絵里と中村七之助のW主演で上演される。『ETERNAL CHIKAMATSU-近松門左衛門「心中天網島」より-』チケット情報物語は小春と治兵衛による心中を核として、現代と江戸時代をパラレルに行き来しつつ展開してゆく。今回、中島歩が近松の世界観を担う重要な役どころに挑む。「心中物というと遠い話の気がするけれど、恋愛と社会が折り合わないのは今もよくある話です。プロットを読んだら現代社会からの逆風がリアルで、身近に起こり得る話だなと感じました。僕の好きなノンフィクションに、『ドナウよ、静かに流れよ』という、ドナウ川に身を投げた日本人留学生男女の話があり、一途な恋心も心中物の魅力のひとつかと」中島は舞台『黒蜥蜴』で2013年俳優デビュー、NHKの朝ドラ『花子とアン』で注目を集めた、期待の新星である。「ルヴォーさんの演出は初めてで全く想像がつかない分、楽しみです。深津さんとも七之助さんとも初共演。おふたりが役にどのように取り組まれるのか、気になりますね。何より歌舞伎俳優さんは所作もきれいでしょうし、盗めるものはできる限り盗みたい」もし、中島が好きな女の子に「一緒に心中して」と言われたらどうするのか?「『嫌だ。ダサくない?もっと違う方法を考えよう』って言います。死ぬか生きるかでいったら、死ぬより生きて、きっと先に楽しいことがあると思う方を選択したい。僕、すごく楽天的で、嫌なことはすぐ忘れるタイプなんです」大学時代はモデルをしながら、立川藤志楼(高田文夫)、立川志らく、春風亭一之輔を輩出した名門落語サークルに所属していた変わり種でもある。「元々、役者になりたかったので、モデルをすれば芝居に出られるようになると素人考えで始めたのですが、そんなチャンスは皆無でしたね。それより落語のほうが楽しかった。亭号は大家主水(だいやもんど)。ダサいでしょう?先輩がつけるので、どうにもならないんですよ。古典落語が中心で、『千早振る』『火焔太鼓』をよくやりました。何が楽しいって、受けた時の気持ち良さ!あれを知ったら、抜けられません。落語は究極のひとり芝居。全部俺の力でやってるぜ!という快感は格別で、その幸せな原体験が今の舞台で役立っています。落語で学んだ江戸時代の感覚は『ETERNAL CHIKAMATSU』にも活かせるはず」公演は2016年2月29日(月)から3月6日(日)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、3月10日(木)から27日(日)まで東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで上演。チケットは東京・大阪共、12月12日(土)より一般発売開始。なお、一般発売に先がけ、先行抽選プレリザーブを実施。受付は11月13日(金)11:00から11月18日(水)11:00まで。取材・文:三浦真紀
2015年11月12日観月ありさが主演を務める舞台『GS 近松商店』(9・10月、大阪・新歌舞伎座にて)の上演が決定した。新歌舞伎座新開場5周年を記念して上演する今作は、近松門左衛門の名作「女殺油地獄」「曽根崎心中」をモチーフに鄭義信が書き下ろした現代劇。2008年上演の「焼肉ドラゴン」で国内の演劇賞を総なめにした鄭が自ら演出も手がける。県道脇にある寂れたガソリンスタンド(GS)を切り盛りしている人妻とその家族。ある事件をきっかけに人妻の元に通うようになった若者を中心に、関西地方のとある田舎町に巻き起こる愛憎劇。平凡な日常を滑稽に描きつつ、現代人の孤独と不安を拡張し「生きるということは」を問いかける。ガソリンスタンドを営む主人公・菊子を演じる観月は関西弁の台詞に挑戦する。「鄭さんに演出していただくことで新しい自分の発見に繋がると思っています」と意気込みを語っている。共演は渡部豪太、小島聖、姜暢雄、朴路美、みのすけ、星田英利、山崎銀之丞、升毅、石田えりら。チケット一般発売は8月1日(土)予定。■新歌舞伎座 新開場五周年記念『GS 近松商店』日時:2015年9月27日(日)から10月14日(水)まで場所:大阪・新歌舞伎座料金:1階席:9,500円/2階席:5,000円/3階席:3,000円/特別席:11,000円作・演出:鄭義信出演:観月ありさ、渡部豪太、小島聖、姜暢雄、朴路美、みのすけ、星田英利、山崎銀之丞、升毅、石田えり ほかチケット一般発売日:8月1日(土)午前10時より新歌舞伎座ほか各種プレイガイドにて発売予定問い合わせ:新歌舞伎座 06-7730-2121(午前10時から午後6時まで)
2015年04月23日