ジャーナリスト。音楽家、アーティストのインタビュー、アート評を中心に活動。女性誌で、表紙からインタビュー、ファッション、美容、書評まで担当した経験を基に、2006年から婚活サイト「エキサイト恋愛結婚」で、お悩み相談への回答コラムや婚活コラムを執筆。著書に「日本の貴婦人」(光文社)など。
まさに芸術の秋たけなわ。お家でまったり聴く音楽もいいけれど、本格的なコンサートホールで生音に触れるひとときは、やはり格別なもの。コンサートの帰りにお酒をたしなみながら余韻にひたるもの素敵な時間です。 新宿のおとなり、初台に位置する東京オペラシティの周囲には、おしゃれなレストランなども多く、気軽にコンサートを楽しめる雰囲気が魅力です。今回は、秋の始まりにぴったりな、今注目のおすすめ3公演をご紹介します。 ファジル・サイ×須川展也の共演による世界初演 「鬼才!天才!ファジル・サイ!」というキャッチコピーで知られる、 トルコ生まれのピアニストで作曲家、ファジル・サイ と、今年、デビュー30周年を迎え、 クラシカル・サクソフォン奏者 として世界の第一線で活躍する 須川展也 のデュオ・コンサート。 曲目は、第1部がサイのソロで、モーツァルトの「ピアノ・ソナタ第11番(トルコ行進曲付き)」そして、「ピアノ・ソナタ第14番」。世界的なセンセーションを巻き起こした彼の「トルコ行進曲」はとても印象的で、まさに渾身の名演奏! 第2部が共演で、感動的なフランクの「ヴァイオリン・ソナタ」、小粋なミヨーの「スカラムーシュ」。そして、完成したばかりのサイ作曲「組曲~アルト・サクソフォンとピアノのための Op.55」の 世界初演 。音楽史の新たなページが開かれる瞬間に、是非立ち合われてはいかがでしょうか。 刺激的で美しい!アンサンブル・ノマドが演奏する現代曲 >>続きを読む アンサンブル・ノマドが演奏する現代曲が刺激的で美しい! クラシックのみならず現代作品を得意とし、世界中で活躍する アンサンブル・ノマド は、ギタリストの佐藤紀雄氏が芸術監督を務める日本を代表する超絶技巧集団。今回、第51回定期演奏会は「再生へ vol.2 死と願望の歌」と題して、ニュージーランドの現代音楽作曲家、ジャック・ボディの3作品を演奏します。 タイトル曲でもある「死と願望の歌」は、作曲家で音楽民族学者でもあるボディが、世界各国からプラント・ハンターのように、 絶滅しつつある音楽を救い出しアレンジ で甦らせたドラマティックな作品。 その中に登場する「カルメン」の「ハバネラ」などを、来日アーティストであるカウンター・テナーのシャオがなまめかしく妖艶に、そしてマオリ族の歌をソプラノのメレが歌うなど、女性讃歌ともいえる曲だそう。いつも洒落た趣向が凝らされ、すぐ満席になってしまうエキサイティングなステージからは、目も耳も離せそうにありません。 世界最高峰「レ・ヴァン・フランセ」の管楽に酔いしれる “フルート”のエマニュエル・パユ、“オーボエ”のフランソワ・ルルー、“クラリネット”のポール・メイエ、“ホルン”のラドヴァン・ヴラトコヴィチ、“バソン”のジルベール・オダン、“ピアノ”のエリック・ル・サージュという、世界最強のスーパースターたちによる “夢のアンサンブル”「レ・ヴァン・フランセ」 の来日公演です。 曲目は、ベートーヴェンのエンタテインメント作品として傑作のひとつである「ピアノと管楽のための五重奏」、色彩豊かで変化に富む軽妙洒脱なプーランクの「六重奏」など。名曲の数々を至上最高の名演奏で、どうぞ心ゆくまで堪能なさってください。 いつもより少しだけオシャレをして、心に染み入る音楽やエキサイティングな舞台を満喫しましょう! ・ 10月11日(土)アンサンブル・ノマド 第51回定期演奏会 ~再生へVol.2 : 死と願望の歌とダンス~ ・ 10月16日(木)サクソフォンの新たな地平1~ファジル・サイ委嘱作品世界初演 ファジル・サイ 須川展也 ・ 10月22日(水)世界最強のスーパースター軍団! 夢の管楽アンサンブル レ・ヴァン・フランセ
2014年10月04日ブレないつもりでいても人の言葉に気持ちが揺らいだり、がんばったことが裏目に出て自分が心もとなく思えたりする時、意志的な主人公の映画を観るとシャキッとしますよね。 単純に、映画と自分を比較はしないかもしれませんが、劇中の女性の潔い生き方や毅然とした態度から刺激を受けることってありませんか? そんな凛とした佇まいの魅力に満ち、100年以上をも遡った時代に、強い意志を持ち続けていた女性たちが主人公の映画を3本、ご紹介いたします。 アナ・ムグラリスがカッコいい「シャネル&ストラヴィンスキー」 20世紀最大のファッション・デザイナー、ココ・シャネルは、生きていたら今年131歳。カール・ラガーフェルドに引き継がれた今も圧倒的な人気を誇ると同時に、シャネル自身が生き方のアイコンとして、現代の女性たちに影響を与え続けている存在です。 「アメリ」のオドレイ・トトゥが若きシャネルを演じた「ココ・アヴァン・シャネル」、名女優、シャーリー・マクレーンが演じる「ココ・シャネル」、本物のシャネルが登場する「シャネル シャネル」など、彼女はいくつもの映画で描かれています。その中でもおすすめなのは、芸術支援に力を注いだシャネルが作曲家ストラヴィンスキーと恋に落ちる、この映画です。 シャネルのCFモデルも務めた主演のアナ・ムグラリスは美しいの一言!印象的なのは、ストラヴィンスキーの生活をバックアップしてあげて、彼にお礼を言われるシーン。口角をちょっと上げただけでサッと踵を返して立ち去るのですが、このシーンだけで、シャネルならこうだろうな! と実感させる凄みがあります。恩着せがましさの一切ないクールさにしびれました。 サウンドトラックが全世界で300万枚以上のセールス >>続きを読む 言葉でなくピアノで伝える「ピアノ・レッスン」の主人公 船から運ばれたピアノが海辺に置かれる印象的な冒頭シーンから始まるこの映画の主人公は、6歳の時に自分の意志で話すことをやめた女性。言葉でなくピアノで自己表現をする謎めいた主人公をホリー・ハンターが好演。 ピアノを通じて、ハーヴェイ・カイテルが演じる現地の男性と、愛と官能の世界へ・・・とめくるめく内容です。 どこにもないようなストーリーなのに、「自分が体験したいと思う映画を作ったの。物語にすっと入れて、夢中で見終えてしまうような…」と語るジェーン・カンピオン監督の術中にまんまとはまってしまいます。 ハッピーエンディングに驚いてしまうくらい不思議な映画ですが、独特な味わいの映像とともに、サウンドトラックを全世界で300万枚以上セールスしたという、マイケル・ナイマンの音楽も筆舌に尽くしがたい魅力があります。 イサム・ノグチを芸術家に育てた女性の人生を描く >>続きを読む イサム・ノグチを芸術家に育てたシングル・マザー「レオニー」 キャッチコピーは「お母さん、私はこの子を連れて日本という国に行きます。」 世界的に有名な天才彫刻家、イサム・ノグチは、ある2人の出会いによってこの世に生を受けます。その2人とは、20世紀初頭のアメリカで売り出し中の詩人、野口米次郎(ヨネ)と、その翻訳を手伝う作家志望のインテリ女性、レオニー・ギルモア。未婚のまま出産をし、100年前の日本で戦争や人種差別、偏見に艱難辛苦の日々を送る母子。そんな中でも、レオニーは幼少からイサムの芸術性を見抜き、成長した彼がコロンビア大学医学部で学ぶのをやめさせてまで、芸術家への道を歩ませます。 一人の男を愛したという運命を潔く受け容れるレオニーの生き方は、日米合作という大作をまとめあげた松井久子監督の生き方にも通じ、世界中でロングラン中。主演は「マッチポイント」などで著名な英国女優、エミリー・モーティマーと中村獅童。美しい陰影が特徴的な撮影監督は「エディット・ピアフ」でセザール賞受賞の永田鉄男、余韻を残す絶妙な音楽は「ネバーランド」でアカデミー賞受賞のヤン・A・カチュマレクと、キャスト、スタッフともに恵まれた傑作。迷える女性に光を与えてくれるエンタテインメントです。 ・ 「シャネル&ストラヴィンスキー」 ・ 「ピアノ・レッスン」 ・ 「レオニー」
2014年09月25日代官山のイル・プルー・シュル・ラ・セーヌは、フィナンシェなどの焼き菓子も最高に美味しいフランス風のケーキ屋さん。クリスマスには、シャンパンクリームのブッシュ・ド・ノエルが人気のパティスリーです。 そこのパティシエ、弓田亨(ゆみたとおる)さんが10年程前、日本の昔ながらのご飯とおかずの本を出版した時は驚いた方も多いはず。先人の知恵に立ち返るから、その名も“ルネサンスごはん”。フレンチ・パティシェの彼が、なぜ日本の家庭料理に言及したのでしょうか? 気づいた人は続けている、これぞ美味しく正しい普遍的な“うちメシ”! 今あらためてその魅力に迫ります。 栄養素の欠落した日本の食を取り戻すため 弓田さんが普段の食事に関心を持ったきっかけは、仕事柄フランスやスペインと行き来する中で、あることに気づいたからなのだそう。それは、「あちらにいると、体のムクミが取れてエネルギッシュで5時間睡眠でも元気なのに、帰国すると、なぜ6~7時間寝ないと疲れが取れないんだろう?」「むこうの子供たちはいつも明るく屈託がなくて元気いっぱいなのに、日本の子供たちは怠そうで心の問題も多い…食べものが関係しているのではないか?」ということ。 調べ始めると自身が子供の頃と違い、箱詰めに便利なよう大きさを揃えるなど 必要のない品種改良 や農薬のために 野菜の栄養素は何分の一にも減少 していることが分かりました。 また、料理番組やレストランが勧めるアク抜きや下茹で処理によって野菜本来の栄養素まで抜けてしまい、失われたうま味を補うために砂糖や調味料を大量に加える……それが家庭料理でも普通になったことが原因だ、と実感した弓田さん。何とか 日本の食を取り戻そう と、試行錯誤を重ねてたどりついたのが “ルネサンスごはん” なのです。 “ルネサンスごはん”の基本の考え方とは? 次のページへ≫ 砂糖・みりん不使用、アク抜き・下茹で不要 ここでルネサンスご飯の基本となる考え方をご紹介します。 <ルネサンスご飯 基本の考え方> 1)先人の残した日本の食、素材に立ち返ること。 乾物 をたくさん使うこと。 2)いりこを中心として、昆布、鰹節などを合わせてダシを取り、ダシも全部食べること。 3)アク抜き・下茹では決してしないこと。米は洗わない、野菜の皮はむかないこと。 4)砂糖・みりんは決して使わないこと。冷凍・電子レンジ・圧力釜はNG。 5)味噌の重要さを再認識すること。 6)化学精製塩を今すぐやめ、海(岩)潮に立ち返ること。また塩を怖がらないこと。 実際にやってみると、食べた瞬間、美味しい! と細胞レベルで体が喜ぶのを実感できると思います。甘くないのに美味しく、体が温まってエネルギーが湧いてくる感じがします。美味しさとは、細胞が必要としている栄養素が摂れた時の満足感と安心感、と弓田さんは語ります。テレビ番組やコンビニなどで培った偽りの美味しさに、私たちは慣れ過ぎてしまったのかもしれません。 「少し面倒かも?」と思うかもしれませんが、実は大して労力もかかりません。うちメシなのだから、面倒だったら絶対続きませんよね。材料はスーパーで買うものでいい、冷蔵庫にあるものでいい、が弓田さんの持論です。食事が正しいなら、デザートのスイーツは楽しむもので、デザートみたいな食事が常食なのはNG、ということなのです。体は食べるもので作られます。自分と家族の健康のために“ルネサンスごはん”、試してみませんか? ・ イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ
2014年09月18日吾亦紅(ワレモコウ)、女郎花(オミナエシ)、撫子(ナデシコ)など、秋の花々を思いおこすとそれだけで、ふさわしい野趣に富んだ素朴な器に活けてみたくなりませんか? ティータイムや食事の時、インテリアにも、さりげなく季節感を演出できたら素敵ですよね。 しっとりした秋にぴったりの民芸の香りがする器に出会うため、以前からお気に入りの中目黒にあるお店「工藝 器と道具 SML」にお邪魔してきました。SMLでは、器以外の展示による企画展もよく行われているのですが、ライフスタイル全般における様々な提案やヒントをたくさんくれるお店です。 野の花を活けても素敵な、土の温かみが伝わるピッチャー 夏の間は、白っぽい色合いや北欧デザインのピッチャーが大活躍でしたが、これからの季節には、吾亦紅を入れた秋らしい 灰釉(かいゆう)ピッチャー の色味が心に馴染みます。お月見の時にススキをいれたら、素敵な演出ができそう。 小鹿田焼(おんたやき)の打ち刷毛目8寸皿 には、定番にしたい魅力が。小鹿田焼の代表的な技法である打ち刷毛目の放射状の模様は、料理がとても映えます。なので和洋問わず、煮物はもちろん、カレーやパスタ、盛り合わせプレートとしても使える万能選手として重宝するはずです。 深いこげ茶色のピッチャーは、冬の間にヘビロテしそう。シチューを入れたル・クルーゼの鍋の隣に置いたり、ドリッパーをのせてコーヒーを落とすのもいいかもしれません。 モダンな小鹿田焼で、洗練された雰囲気に 小鹿田焼は、大分の日田にある江戸時代から続く古い窯場で焼かれています。現在も、一子相伝で昔ながらのやり方を守っている窯場です。 これらの器はすべて、名工と名高い坂本工(たくみ)、創(そう)親子によるもの。ピッチャーは3点とも、父親である工さんの作品です。 左と中央の櫛描(くしがき)ピッチャーは文字通り、櫛状の道具で模様を描いた技法で、和のテイストだけでないモダンな印象も。右の鎬(しのぎ)ピッチャーは、道具を使って表地を削って凹凸模様をつける鎬という技法です。 一番左の流し掛け(ながしがけ)8寸皿は、息子の創さんの作品。 流し掛けも小鹿田焼の代表的な技法ですが、他の作り手だと渋い雰囲気になるところ、24歳と若いながら実力派の創さんの手によると、洋食器のように洗練された味わいに。 マスカットを何房も盛りつけてみたい!と、イメージがわいてきます。 心がほっこり 出西窯(しゅっさいがま)の深い味わい 島根の出雲にあり、民芸の精神を守りながら実直なもの作りを続けている窯場が出西窯。シンプルで素朴なデザインです。 湯呑み茶碗は、焼酎のロックやお湯割りをはじめ、お酒各種、オリーブやナッツ、ディップソースにも合います。ご飯茶碗は、カフェオレボウルや小鉢としてもつかえます。嬉しいのはすべてオーブン、電子レンジ使用可能だというところ。 SMLは店内に置いていない器も多いので、こんなものが好きなんだけど…と尋ねてみると、奥から出てくるかもしれませんよ(笑)。 季節の変化を楽しみに、一度訪れてみてはいかがでしょう。 ・ 工藝 器と道具 SML
2014年09月16日神でなく人の手が創造したもので、一番美しいものと言われると何が思い浮かびますか?音楽、美術、文学、映像…、芸術と呼ばれる中にもいろいろありますが、やはりバレエではないでしょうか。素材である肉体を過酷なまでに鍛錬し、緻密に限定された伝統の中で完成度を競う世界は「人間の肉体は美しい!」と認識させてくれる、他に類を見ない美の殿堂だと思うのです。 両親ともに著名なバレエ・ダンサーという恵まれた資質を持ち、現在、30歳の若さでオペラ座の顔となったマチュー・ガニオ。世界最高峰のバレエ団パリ・オペラ座で、20歳でエトワールという最高位に昇進し、今年で10年。その美しさの魅力に迫ります。 テクニックだけではNG 王子役を踊るため必要なもの 「ダンスール・ノーブル」という言葉をご存じですか?これは美しい容姿と高貴な雰囲気を兼ね備えた、いわゆる「王子」役が似合うダンサーのこと。技術的に優れていても、ワイルド過ぎる容姿では王子役は務まりません。 最近、2015年末の引退を表明して話題になったシルヴィ・ギエムをかつて取材した時、かなり長身で驚いたのですが、彼女は25歳でオペラ座のエトワールを辞めてしまいました。それもやはり長身を生かしたダイナミックなダンス、つまり「ボレロ」などを踊るためだったのか、と納得したものでした。 王子は王子らしく、王女は王女らしく(小柄で)というのは、厳然たるクラシック・バレエの掟です。そして、まさに「ダンスール・ノーブル」を体現しているのがマチューなのです。 彼の日々行っているレッスンを紹介している「パリ・オペラ座エトワール マチュー・ガニオのノーブル・バレエ・クラス」というDVDがあるのですが、これがとても感動的です。それは、彼ほどのスターが、あくまで基本に忠実に丁寧にレッスンを課しているのがわかるから。 男性舞踊手は、高いジャンプなどの大技以外に、女性の身体を支えるリフトといわれる命にかかわる技も必要です。先日「エトワール・ガラ2014」の舞台で観たマチューは、フィッシュ・ダイブという技で、逆さになったままエビ反るバレリーナの身体をほぼヒザだけで支えながら、顔は役柄のままにシャイで爽やかな笑顔をキープしており、至芸だと思いました。 マチューの「清潔なテクニック」のピュアさに癒される 映画「ブラック・スワン」の振りつけをして主演であるナタリー・ポートマンと結婚したバンジャマン・ミルピエが、2014/15シーズンから芸術監督に就任したことでも話題となっているオペラ座。 このDVDでは、前任者ブリジット・ルフェーブルやオペラ座バレエ学校校長エリザベット・プラテルも、マチューの容姿の美しさを褒めています。同時に、技術の高さ、練習熱心な姿勢、性格の良さ、謙虚さなどを口々に言及しています。まるでバレエ・ダンサーは顔が命!とばかりに、美貌だけを話題にしてはいけないかのようです。 とはいえ、以前、英国の2つのロイヤル・バレエ団でプリンシパルを勤めた吉田都さんをインタビューした時、渡欧当初の頃、容姿の違いにものすごく悩んだと伺いました。また、オペラ座初の日本人バレリーナ、藤井美帆さんは「アン・ドゥオール(両脚全体が付け根から足先まで外側に開いている状態)が難しくて苦労しました」とも仰っていました。 バレエとはもともと西洋人のための踊りなので、東洋人では肉体の違いを克服するだけでも大変なようです。マチューは、生まれ持った肉体に慢心せず、さらに磨き抜いていると考えると感慨深いものがあります。 彼のバレエは、DVDの中で「清潔なテクニック」と評されていました。気負いがなく気品がある王道で正統派な美しさは、壮観ですがとてもピュアなのです。その姿は、リクツでなく生きる力と癒しを与えてくれる気がしています。DVDや写真集で、その一端に触れてみてはいかがでしょうか。 ・ マチュー・ガニオ DVD ・ マチュー・ガニオ写真集
2014年09月12日リュート という楽器をご存じですか? 中世からバロックまで愛された弦楽器で、一見ギターのような佇まい。音色もギターに似ています。同様に、見たところも音色もチェロに近い ヴィオラ・ダ・ガンバ という弦楽器の調べも、深い味わいが美しい。しっとりした秋の訪れにふさわしい、リュートとヴィオラ・ダ・ガンバの音源を3枚ご紹介します。 リュートといえばハズせないジョン・ダウランド 16~17世紀、後期ルネッサンス時代、イギリスを代表する作曲家の一人だった ジョン・ダウランド は、自身がリュートの名手でもありました。美しいメロディが特徴の彼のリュート作品集である、その名も 「リュート ワークス」 は、ダウランドの多彩なリュート曲から様々なタイプが網羅されたアンソロジーです。 この中の 「涙のパヴァーヌ」 は非常に有名で、きっとどこかで聴いたことがあるはず。深い情緒をたたえた美しい曲で、もともとはリュート作品ですが、歌曲にもなっており、印象的なメロディは、ギターやリコーダー、ピアノなどで演奏されることも。 優美なカプスペルガーのリュート曲に胸キュン 父親がドイツ貴族だったために、 カプスペルガー というドイツ語の苗字ですが、ヴェネツィア生まれで、1stネームはジョヴァンニ。イタリア初期バロックの作曲家です。やはり自身がリュートの名手。華麗な技巧に富んだ作風で宮廷で人気だったそうですが、リズムが躍動的で演奏もエッジが効いているというか、斬新な印象があり、当時としてはかなり進歩的だったのではないかと推測されます。動きがあって楽しく飽きません。 他に、イタリア・ルネッサンスの作曲家でリュート奏者でもある、 フランチェスコ・ダ・ミラノ のリュート作品もお薦めですし、 ヨハン・セバスチャン・バッハ も、穏やかで美しいリュート曲を書いています。夜、眠る前に聴くとぐっすり! おくゆかしい響きのリュートの音色に魅了され、優美な夢の世界への扉が開きますよ。 サヴァールの弾くヴィオラ・ダ・ガンバは深い癒しに バルセロナ生まれの ジョルディ・サヴァール は、ヴィオラ・ダ・ガンバの第一人者。2013年秋の来日公演も大盛況でした。同じくスペイン生まれで、16世紀ルネッサンスの作曲家・ ディエゴ・オルティス による、スペイン宮廷の高貴な響きを思わせるエレガントな小品集がこの 「ヴィオラ・ダ・ガンバのためのレセルカーダ集」 。ただもう…時間がゆったりと流れていきます。 ディエゴ・オルティス「ヴィオラ・ダ・ガンバのためのレセルカーダ集」 オルガンやハープと織り成す典雅なハーモニーでありながら、すぐ目の前で演奏されているようなリアルな息遣いが感じられて、秋の夜長、心の底から癒されます。サヴァールはたくさん音源を出しているので、ぜひお気に入りを探してみてください。 ・ ジョン・ダウランド「リュート ワークス」 ・ カプスペルガー「タブラチュアによるリュート曲集第1巻」 ・ ディエゴ・オルティス「ヴィオラ・ダ・ガンバのためのレセルカーダ集」
2014年09月04日夏の疲れは残したくないですよね。そんな方にベストなのは 半身浴 です。強烈な日差しに痛めつけられ、過酷なエアコンに冷えて乾ききった砂漠のような肉体と、あまりの暑さにまともな精神状態のキープが難しかったであろう心を、ゆったりと優しく癒してあげましょう。 以前ご紹介させていただいた 「冷えとり健康法」 が教える半身浴は、 38度のぬるめのお湯に、みぞおちから下ぐらいまで浸かり、20分以上入る というもの。温まること以上に体内の病気の原因となりそうな 悪いものや毒素が出てくれるというデトックス効果 がミソ! このひとときを、さらに幸せな気分で過ごすためのお気に入りの入浴剤を3点ご紹介いたします。 アロマドゥースの「バスエッセンス1 (流)」は豊穣で美しい香り “老廃物をしっかり流す” をコンセプトに 8種類の精油が配合 されているアロマドゥースのバスエッセンス。海藻成分との相乗効果で体内の巡りが促され、心身ともにリセット、と説明書には書いてありますが、まさにその通り。しかし何よりもまず、得もいわれぬいい匂いにうっとり! 一言では説明できませんが、女性であることをすごく幸せだと感じさせてくれる、豊穣で美しい香りです。包み込まれるような多幸感で、桃源郷というか、別世界へ翔んでしまいます。 500mLの大きいボトルが¥8,800(税抜)と、決して安くない価格ですが、暑い季節はデトックス効果の高い「バスエッセンス1(流)」を、寒い季節は温め効果の高い「バスエッセンス2(温)」を使っています。両方とも、一度嗅いだら忘れられない香りですよ。 ブルターニュ気分を満喫できる タラソ ド ブルターニュの「アルグマリンソルト」 まだ行ったことはないのですが、フランスのブルターニュ地方が大好きです。クレープでなくそば粉で作るガレット、荒れて厳しい印象のある海辺、ケルトの聖地としてのカルチャー全般も…。そんなブルターニュの天然塩に、海藻保湿成分(ラミナリアディギタータ)が配合された、潮の香のような独特の匂いがする、淡いグリーンの入浴剤がタラソ ド ブルターニュの「アルグマリンソルト」です。 この入浴剤は、荒れた海辺を歩きまわり、ケルティックな世界に想像を巡らせ、果てしない旅に出られる魔法の粉のようなもの。ソルトタイプで使いやすくきっと誰でも楽しめるはず。850g ¥2,600(税抜)です。 「冷え取り健康法」創始者・進藤義晴先生が開発した 植物煮出し液「杉っ子」 進藤先生によると、 夏は心臓の季節 だとか。これまで心臓が働いて 溜めていた疲労 、つまり 毒素 を、汗として一気呵成(いっきかせい)に 吐き出す季節 なのだそうです。汗は大切な役割を担っているんですね。冷房に頼って汗をかかないで過ごしてしまうと、心臓の負担が大きくなってしまうので、汗はどんどんかいたほうがいいそうです。 「杉っ子」は、進藤先生の指導のもとに生まれ、保温効果とともに、毒素、汗を排出するのにもっとも適している入浴剤。1,000mL ¥1,400(税抜)。身体のことを考えたら、これ以上のものはないワン&オンリーの入浴剤だと思います。香料、防腐剤、色素など添加物は一切入っていないので、1本を1ヶ月で使い切るとよいとか、冷蔵庫での保管が望ましいとか、多少の制限はありますが、フワッとした天然のいい香りで心底癒されます。 お気に入りの入浴剤と味わうバスタイムで、ますますキレイに磨きをかけましょう♪ ・ アロマドゥース ・ アルグマリンソルト ・ 杉っ子(ファイブそっくす)
2014年08月29日室町時代から茶道、華道、能などと同様、500年続く香道の志野流20代目家元の若宗匠(わかそうしょう)、つまり息子さんである蜂谷宗苾(はちや・そうひつ)氏が、建築家・黒川雅之氏が主宰するカルチャー講座「モノラボ」でお話しされるというので参加させていただきました。普段はちょっと敷居が高い 「香道」 の世界に潜入です。 「モノが文化を作る。香りにもモノと同じ力がある」と語る黒川氏のバックアップの元、香道を現代に、世界にと広めておられる蜂谷若宗匠は、30代のイマドキ男子。お稽古中の着物姿でなく、素足にウイングチップのお洒落な洋装だと、日に焼けてワイルドな雰囲気のシティボーイさながらで、この方が若宗匠?と失礼ながらガン見してしまいます。 香りを聞くと書いて「聞香」という繊細さこそ“和“の世界 冗談はさておき、気さくな若宗匠のお話が楽しく香道の魅力にグイグイ惹き込まれます。まず驚くのは、香道で使う香木は、 樹木が何らかの原因で傷ついて樹脂が溜まり、数100年経って香木に変化するという自然界の偶然から生まれた天然物 なので、大変貴重で無くなる一方だということ。香道が、茶道や華道に比べて流派が2つしかないのも納得です。 香木は、ラオス、ベトナム、マレー半島などアジアでのみ産出され、中には金の10倍の価値のある香木もあるようです。594年、香木は中国から仏教とともに輸入されましたが、香道は室町時代、東山文化のリーダー、足利義正の側近だった志野守信が初代として体系化して以降、一子相伝、父から子に受け継がれながら、日本で発展してきた日本独自の文化です。 香りをかぐことを、香を聞くと書いて 「聞香」 と呼ぶ繊細さ、道にまで体系化してしまう真摯な姿勢に、日本的なセンスを感じるのは私だけではないでしょう。 「心の耳を澄ませて、自然界からのメッセージを聞く」 聞香の基本は 香りを当てる遊び で、志野流では200種類以上あるそうです。ゲームを楽しむには教養も必要で、記録を残すための 書道 、 和歌を詠む 、などといった素養が求められます。遊びでありながらも香道はまさに 総合芸術 なのです。 香り当てゲームなんて簡単でしょう?と思われるかもしれません。いえいえ、びっくりしますよ。あまりにもそこはかとない幽けき香りなので、最初はどれがどれやら検討がつかないんです。ただ、人間の手が一切入っていない完全に天然の香りなので、ふうっと気持ちが和んでいく心地よさは格別!まさに、この世ならぬ別世界へ連れて行かれます。 蜂谷若宗匠は、「木と会話をしてください」とおっしゃいます。「自然の声を聞くこと。心の耳を澄ませて、自然界からのメッセージを聞くこと」が、まさに聞香だそう。 「365日、春夏秋冬、暑い寒い、雨の日、雪の日、様々な環境で香を聞く。その中で、日々修行して香りの違いがようやく少しずつわかってきます」と。この、たゆたうような時間の推移。すぐ答えを出そうとする現代人の私たちには持てなくなっている身体感覚です。 視覚と聴覚だけで生きている私たちが、取り戻したい嗅覚 若宗匠が自ら、この日の参加者に回してくださった香炉から漂う得も言われぬ薫香に、日常の疲れやストレスがあっさり消え、心が清められて驚きました。まるで魔法!?五感の中でも 嗅覚は他の感覚と違って唯一、脳幹の感情を司る部分へ直接届く とか。だから、匂いって生理的な気分とダイレクトに結びついているんですね。好きな人の匂いとか…。 今、私たちは視覚と聴覚だけで生きていると思います。本来、人間は香りと非常に近い存在でした。匂いで敵が近づくのを察知して逃げられたわけです。目で見て気づいたのでは遅いから…。私たちは、その感覚を長いこと忘れてしまってはいないでしょうか? 21世紀こそ、生きていることを実感できて、心が豊かになれる嗅覚を取り戻そうではありませんか。そんなところにも魅了されて、今、香道を習い始めたいと真剣に考えています。 ・モノラボ ・香道志野流
2014年08月25日豊かな木立ちと緑に囲まれ、恵まれた立地に佇む世田谷美術館。現在は 「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展―印象派を魅了した日本の美」 が開催中です。この世田谷美術館へはいつも、田園都市線用賀駅から美術館へと続くプロムナードと砧公園を通って10数分、散歩しながら向かうのが楽しみなのですが、会期中は用賀駅と美術館を往復する直行バスが出ていると知り、乗ってみたらすぐ着いてしまってびっくり。これは便利です。(休館日は除く) ジャポニスムとは、19世紀半ばの開国以来、日本の文物が浮世絵をはじめ、陶磁器、絹織物、扇子、団扇など、美術品から日用品に至るまで欧米に伝わり大流行しましたが、こうした日本美術や品々が西洋の文化芸術に与えた影響全体を現在はそう呼んでいます。その最たる作品たちに迫ります。 世界初公開! モネの傑作《ラ・ジャポネーズ》の修復後 世界屈指の印象派と日本美術のコレクションを所蔵するボストン美術館が、1年余という渾身の修復プロジェクトを経て、まず最初にお目見えさせたのが今展の日本です。 クロード・モネが最初の妻カミーユを描いた、その名も《ラ・ジャポネーズ》 。壁に散る団扇(うちわ)、手に持った扇子、謡曲「紅葉狩」の一場面が描かれているという赤綸子(あかりんず)と思われるゴージャスな打掛、床には絨毯でなくゴザ? と、たちまち細部に目を奪われてしまいます。 クロード・モネ 《ラ・ジャポネーズ(着物をまとうカミーユ・モネ)》 1876年 1951 Purchase Fund 56.147 この打掛を目の当たりにしたモネに、チャレンジ魂をムラムラとさせたであろう気概が伝わる作品。最新技術の粋を駆使した修復により、1876年完成当時のカンヴァスが蘇ったと思うとドキドキしますね。修復って、別に大したことないんでしょ?と思ったら大間違い。ミケランジェロが描くシスティーナ礼拝堂の天井画は、洗浄によって明るくなったあまり、天動説と地動説の違いほどの衝撃を与えたし、近年、洗浄が完了したダ・ヴィンチの「最後の晩餐」も、皿の中身が確認され、当時の風俗や文化研究に影響を及ぼしています。 西洋人には斬新だった「浮世絵」のシンプルな構図と背景 当時、日本で流行していた美人画に描かれるのは、美しくあることがプロフェッショナルの花魁(おいらん)、芸者たち。それが、西洋人を魅了し、日本といえば“フジヤマ、ゲイシャ”モードが長く続いているのはご存じの通り。浮世絵では、着物や装身具、仕草などは細部まで繊細に描き込まれていますが、顔は全部、線だけで表された誰もが同じツリ目の顔立ち。これが子供の頃は不思議でした。日本人の美意識は個々の顔より細部に宿るのですね。 とはいえ、西洋人もさすがに日本人の顔は取り入れていません。でも、構図や背景には多大な影響を受けました。アメリカで生まれパリで活躍した メアリー・カサット は、熱烈な浮世絵ファン。1803年に描かれた 喜多川歌麿の《母子図 たらい遊》 を、1891年 《湯浴み》 (ゆあみ)という作品に反映させています。線が活かされたシンプルな構図、すっきりしたテクスチャーは、一見西洋画には見えず、とてもおもしろいです。 (左)喜多川歌麿 《(母子図 たらい遊)》 江戸時代 享和3年(1803)頃 William Sturgis Bigelow Collection 11.22154 (右)メアリー・スティーヴンソン・カサット 《湯浴み》 1891年頃 Gift of William Emerson and The Hayden Collection-Charles Henry Hayden Fund 41.806 ゴッホと浮世絵の共通点「装飾性の強い背景」 日本美術に表現された、女性たちの親密な生活空間、つまりインテリアや子どもへの優しいまなざしは、西洋の芸術家たちの心をワシづかみしたみたいです。カサットの《湯浴み》もそうですが、 ゴッホの《子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人》 の背景の壁紙が、 歌川国貞(三代豊国)と歌川広重による《当盛十花撰 夏菊》 に描かれた、花火のように華やかに背景を彩る大輪の菊から影響を受けていたとは、今まで知りませんでした。しばし絵の前に佇んで、ゴッホの胸中に思いを馳せました。 (左)フィンセント・ファン・ゴッホ 《子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人》 1889年 Bequest of John T. Spaulding 48.548 (右)歌川国貞[三代豊国]・歌川広重《当盛十花撰 夏 菊 二代目沢村訥升、初代沢村由次郎 》安政5年(1858) William Sturgis Bigelow Collection 11.42317 この展覧会は、世田谷美術館では2014年9月15日まで。その後、京都市美術館で2014年9月30日~11月30日、名古屋ボストン美術館に2015年1月2日~5月10日、巡回します。傑作揃いをこの機会にぜひ! ・「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展―印象派を魅了した日本の美」 ・ モネ《ラ・ジャポネーズ》の修復プロジェクト最新情報 <料金> ・東京展(世田谷美術館) 一般:¥1,500/ 65歳以上:¥1,200 大高生:¥900 / 中小生:¥500 ・京都展(京都市美術館) 一般:¥1,500/ 大高生:¥1,000 / 中小生:¥500 ・名古屋店(名古屋ボストン美術館) 一般:¥1,300/ 大高生:¥900 ※前売/団体料金は異なります。詳しくは展示会公式サイトをご確認ください。 All photographs(c)2014 Museum of Fine Arts, Boston.
2014年08月15日ソマリアなどとても暑く乾燥した植物が育つのには適さない環境・場所で育ち、黄金の涙のような形の樹脂をだす植物、 フランキンセンス をご存知ですか? フランキンセンスの歴史は香料の中でも最も古く、古代エジプトまで遡るほど。当時は、黄金と同等の価値を持つぐらい貴重なものとして取引されていたとか。また、イエス・キリストが誕生した際に贈られたと言われており、希少で貴重な薫香として扱われていました。 乾燥ケアに最適な植物「フランキンセンス」 フランキンセンスは、 乾燥した肌によい植物 といわれています。フランキンセンスは木の幹に傷をつけて、でてくる樹脂を水蒸気蒸留して成分を抽出するそう。樹脂ははじめ乳白色なのですが、空気に触れるとまるで「黄金の涙」のような形になるのです。 この樹脂は外部から菌や虫などが入るのを防ぎ、傷口を早く閉じるなど自らを保護するための重要な成分。また殺菌性も高く、肌トラブルに効果があるだけでなく、心を穏やかにして呼吸を深くし瞑想状態へと導く効果もあるのだとか。 この樹脂の保護効果を肌へ応用し、乾燥から肌を守るためにフランキンセンスを使っている、ニールズヤードのフランキンセンスシリーズを私は7~8年間愛用しております。その素晴らしい香りと効果は筆舌に尽くしがたいほどです。 もともとローズマリーやクラリセージなどガツンと植物系の匂いが好きだったので、最初に清冽で深いフランキンセンスを嗅いだ時、全身が喜んでいるのがわかって感動しました。そして、この香りとともに生きていけたらいいなあ、と強く実感。できたらすべてオーガニックで… すべての肌トラブルをリセットし、エイジングとメンタルのケアも フランキンセンスシリーズは、フランキンセンスの木が傷ついたところを自分自身で守るために出す樹脂から抽出された、いわば自己免疫力の高い製品。そのため、 肌あれや乾燥、シワ・たるみ などの肌トラブルにとても効果的なのだそう。 また、 マタニティーブルー や精神的に不安な時に 心を落ち着かせて穏やかにしてくれる 効果もあり、いいこと尽くし。妊娠線の予防にもいいそうです。 すべてオーガニックのチカラで、肌本来の美しさを蘇らせるというところが信頼している理由です。 私はこのシリーズを使い始めてからは、肌に乾きを感じたことがなく、肌トラブルとは無縁な日々です。また、香りを確かめながらゆったりと深呼吸をして、使うことを楽しむ習慣がつきました。それは、自分にとってなくてはならない儀式のような素敵なひとときなのです。 スキンケア選びで迷ったら、オーガニックの威力に触れてみることをおすすめしたいです。 ・ ニールズヤードレメディーズ
2014年08月14日写真集が与えてくれる愉しみを、何にたとえたらいいだろう。一生行くことがかなわない旅路の想像を絶する風景も、頭の中の妄想の果てしない場面も、死も生も、喜びも悲しみも、千変万化の変容とともに手の中で見ることができる…その得も言われぬ至福を。 日常生活の中のティータイムのような洒落たひととき、世界中を旅できて、見知らぬ辺境に遊び、人間の深淵に迫り、人生の疲れすら癒してくれる写真集は、なくてはならない美の壺です。昨年、発刊された写真集の中から、お気に入りの3冊を紹介します。 愛ある眼差しを一瞬に込めたドアノーの世界初公開作品 「パリ市庁舎前のキス」 という写真が有名で、東京都写真美術館入口の壁面に飾られるなど、どこかで目にした方も多いかもしれません。日常の小さなドラマを絶妙に写し取り、“パリの写真といえばドアノー”というイメージさえある、フランスを代表するヒューマニズムの写真家ドアノーは、時代を超えて今なお、多くの人々に愛され続けています。 彼が、第2次世界大戦中、疎開していたのがパリから340キロ南西のサン・ソヴァン村。戦後、数年経って、疎開先だったモテイヨン家の娘の結婚式に呼ばれ、プライベートで撮影したのがこの写真集です。未発表作品を世界に先駆けて日本で発刊! ドアノーと一家の親密さが根底にある祝福のドラマがつづられ、新郎が新婦に向ける真っ直ぐな視線の瞬間を捉えた表紙には、愛があふれていて思わずドキドキ。古い映画を観るような魅力的な1冊です。 写真と文章で描かれる名舞台「上海バンスキング」の表と裏 演出家、俳優、美術家でもある串田和美氏と1998年に結婚した写真家の明緒さんは、夫が主宰していた劇団「オンシアター自由劇場」が上演して大ブームとなった「上海バンスキング」を観ていませんでした。周囲から再演を乞われ、それこそ、故・中村勘三郎さんが土下座までしたというその舞台を初めて観たのは、2010年、封印されて16年を経た再演の時でした。 “遅れてきた観客”である彼女が、再演時の様子を写真と文章でつづったが写真集 「わたしの上海バンスキング」 。ジャズシーンが鮮烈で、音楽と演劇を行き来するこの舞台のように「写真と文章が行き来する本にしたかった」と本書発表時のトークで語っておられたのが印象的でした。貴重な美しい写真とともに、串田氏との出会いなども描かれ、そちらもドラマティックです。 死とぎりぎりの息遣いが生の根源を描く「BRETH」 池谷氏の写真を最初に観た時の衝撃は忘れられません。水の中のどこまでも静謐な世界。でも、水中では生きられない人間の凄絶さ、死に隣接しながらも、コポコポという呼吸の水泡とともに飛翔する生への希求、剥き出しの人間の根源のようなものが透けて見えて、息苦しくも強烈な解放感に満たされました。それはどこかしびれるような快感でした。 撮影現場であるスキューバダイビング訓練用のプールでは、2分間、絶対不動の姿勢がとられていたとか。趣味で世界中の海に潜ってきた池谷氏らしい方法論。撮影に6年間を費やしたという写真集 「BRETH」 には、水中でも、水なしでも生きられない無防備な人間の姿が、驚くほど清冽に活写されています。生きることを問い直させられる写真集です。 写真集を繰ることで訪れることのできる、脳内の旅もすごく楽しいですよ。お気に入りの1冊を見つけて、ぜひ、あなただけの見果てぬ旅に出てみませんか? 紹介した写真集 ・ ドアノーの贈りもの 田舎の結婚式 ・ わたしの上海バンスキング ・ BRETH
2014年08月04日夏の到来、夏真っ盛り、夏の終幕を感じるとともに、聴きたくなる音楽というものが存在すると思います。私の場合、夏に聴く頻度が一番多いBGMは、たぶん波の音。都会暮らしですが、海辺に来ているつもりになるのが好きで、その合間に様々な音楽を挟みます。 避暑で林間学校にでも参加している気分で、林の中を歩きまわり、蝉の声に包まれながら冷たいソーダ水にレモンを絞り入れて飲み、読書しながら聴くのも好きです。たとえ、実際にはどこにも旅行しないとしても、それは私にとって、心安らぐプチ・ヴァカンスなのです。そんなひとときにぴったりの音源を、3枚プラスα、ご紹介いたします。 ジョアン・ジルベルト 「Man Who Invented Bossa Nova-Complete 1958-61 」 ボサ・ノヴァは夏にはハズせません。もちろん、1年を通して聴いていますが、夏こそ、ボサ・ノヴァのリズムが全身に染み透ってくるような気がします。海、砂浜、波しぶきにかぶるギターの優しい音色、耳元で囁いているようなさりげない歌声…。涼しげなイメージで、まさに夏らしい風景が次々と浮かんでは消えていきます。 ボサ・ノヴァの生みの親の一人であるジョアン・ジルベルトのは、たくさん持っていますけれど、ここ2年ぐらいはこればかり聴いています。何より心地いい、彼の作品が網羅された珠玉のコンピレーション。これなくして夏は始まらない…そんな1枚です。 エグベルト・ジスモンチ 「Saudações」 これを聴くと、風に巻き上げられながら大自然を旅している気分になります。鬱蒼とした密林、太古の壁画が描かれた洞窟、砂漠が描く風紋がなぜか見えてきちゃうんですよ、脳内に。雄大な景色を浮かばせる音楽が、心をものすごく自由に解き放してくれます。 ジスモンチもジルベルト同様、ブラジル生まれで、様々な音楽の枠をスケール・アウトした、いわゆる専門家に愛されるミュージシャン・オブ・ミュージシャン。自分のルーツを探るため、アマゾンの奥地で原住民と一緒に2年間暮らしたというだけあって、彼の音楽から伝わってくる野生の香り、精神の奥底に届く大地の鼓動のような響きは、プリミティブで魅力的。いつ聴いても新鮮で、夏をドラマティックに彩ってくれることでしょう。 中島ノブユキ 「エテパルマ ~夏の印象~」 中島さんのデビュー盤にして、その名も“夏の印象”。2006年、初めてこの音源を耳にした時は、独特のニュアンスがあまりに素敵で、フランスの映画音楽かと思ってしまいました。詩情にあふれ、ロマンティックで、どことなくアンニュイ。せつない感情を刺激されるのですが、あくまで重くなく語り過ぎず、非常に奥床しいので、聴く側に様々な情景、余韻、残り香といったセンシティブな雰囲気を残します。 旅の思い出、言えなかった言葉、忘れられない記憶、忘却の彼方に消えゆく風景…などが心に満ちてきて、胸がいっぱいになるのです。作曲家らしい独特の味わいがある彼のピアノも大好きで、ピアノソロアルバム「カンチェラーレ」は特にお気に入りですし、最新ピアノソロアルバム「クレール・オブスキュア」も愛聴しています。静謐にして清冽な中島ワールドは、夏を美しく過ごすための必聴盤なのです。 この音源たちは、私たちをどんな旅先にも、一瞬にして送り込んでくれる名盤揃いです。よろしかったら、一緒に夏のプチ・ヴァカンスを楽しんでみませんか? ・ ジョアン・ジルベルト ・ エグベルト・ジスモンチ ・ 中島ノブユキ
2014年08月01日日本全国、有名なお菓子は多々あれど、京都のお菓子を手土産に買う時ほど心奮える時があるでしょうか? 美味しいだけじゃない!スペシャルなんです。 以前、藤原定家の子孫で歌の家として知られる冷泉家を御所の近くに取材した時、「この前の戦争で…」と言われるので、「第二次世界大戦ですか?」と質問すると「いえ、応仁の乱どす」というお答えで、思わず遠い目になってしまいましたが…そんな感じと言いましょうか。 京都の人は、天皇陛下が東京へ移られたとは思っていませんからね。たかだか100年余、ちょっと御出向中ぐらいの感じ方で…。京都は優に1200年以上ですから敵いません。まさしく日本の歴史と伝統を感じさせる京都のお菓子、先日も訪れてきました老舗3店をご紹介しましょう。 1店め: 「松屋常盤」の味噌松風は謡曲「松風」からのネーミング 御所を南に下った辺りに位置する松屋常盤は、360年余の歴史を持つ老舗らしいのれんがなければ通り過ぎてしまいそうな佇まい。 店内に入ってもショーウィンドウはなく、お店の人が待ち受けているわけでもありません。京都の菓子舗はそんなお店が多いです。一箱800円(税込)ですけれど、できたら予約をしておいたほうがよいと思います。 御所はじめ、大徳寺、茶道の家元に納められてきた味噌松風は、白味噌(西京味噌)に小麦粉を練り混ぜて焼き上げたもの。素朴な甘さで香ばしい和風カステラの趣です。 昭和天皇がお好きで、皇太子もよく「お祖父様のお土産に…」と立ち寄られたとか。賞味期限は、買った日を入れて3日間。もちろんもっと保ちますが、差しあげる場合は要注意です。 ●2店め: 「村上開新堂」のロシアケーキは特別な方に差しあげたい! 前回の 「京都散策コース」 でも触れましたが、観光客向けでない閑静な佇まいが魅力的な寺町通り。そこに1907年、創業された西洋菓子舗が「村上開新堂」です。 現在は、昭和初期の洋風建築が現存された建物で、店内は時代を遡った博物館のよう。ここでロシアケーキの小さい箱(2,149円 税込)を購入する時は、なぜかちょっとドキドキするんです。アプリコットジャム、レーズン、チョコなど、3種類が10個入り。優しい味わいにホッとします。 今回は、寺町バニラプリン(467円 税込)も買っちゃいました。柔らかくフルフルしていて、発送ができないそうなんですね。まさに、ここでだけ購入可能。ちなみに、オレンジゼリー(497円 税込)はお取り寄せできるそう。9月初旬までですが。びっくりするのはクッキーで、大きい箱(6,070円 税込)、小さい箱(4,860円 税込)とも、予約は何と2~3ヶ月前まで。付加価値高し! ●3店め: 川端道喜の「水仙ちまき」を食べずして京の菓子を語るなかれ 最初に食べた時、吉野葛だけで作られる独特のテクスチャーと余りに微妙なほの甘さ加減に、しばし絶句しましたよ。食感が美しい! いにしえにワープしてしまうんです。あれっ、本当に今、食べたのかな? と思ってしまうぐらいのはかなさ。“あわい”という古い語句が浮かんだりして…。粽という字も最初、書けなかったんですけどね(笑)。 数百年の歴史を持ち、もともとは、室町後期から明治2年、天皇が東京に移られるまで毎朝、御所に天皇の食事を運んでいたお店だそうです。現在は、やはり、のれんだけの店内で、完全予約制。水仙ちまきは5本入り1束3,900円(税込)です。“和菓子日本一”“究極の手土産”と言われているようですが、ぜひご自分の舌で味わってみることをお薦めします。 ・ 松屋常盤 ・ 村上開新堂 ・ 川端道喜
2014年07月29日いわゆる可愛いだけじゃない、ちょっとファニーな顔立ちの猫が大人気となる 先駆けで、何冊も本が出たり写真展が行われたりしている「まこ」という猫をご存じでしょうか? 「まこという名の不思議顔の猫」というブログがスタートしたのが2006年。翌年、発刊された同名の本でその存在を知り、むさぼるように追っかけ始めますが、みるみるうちに超人気ブログに。 引き取られたばかりの頃は、“ボクシング・ジムに通っている不良のような目つきだった”まこちゃんが、だんだん福々しくなっていく愛らしさと、どんなに眠くても毎晩、飼い主さんをちゃんと玄関までお迎えに出る律儀さにハマりました。 ちょうどブログがポピュラーになり始めた頃で、いろんな猫ブログが始まりましたが、ダントツお洒落! そして、何よりペットに対する一貫したポリシーに感銘を受けました。さりげなくて謙虚で何も押しつけない。でも、動物本位の姿勢を貫いているのです。 ペットショップで買うことを批判するわけでなく、動物シェルターや里親サイトの存在を伝え続ける、まこの飼い主さんご夫妻からは、動物とのつきあい方のみならず、インテリア、ファッション、音楽に至るまで、センスが素敵なので非常に刺激を受けました。 「まこ」サイトは3年間で一旦クローズ。2011年から不定期更新が始まった時は本当に嬉しかった! 現在は4匹の猫が共存するまこ邸。彼らの様子を知るたびにクスッと笑ったりしみじみしたり。ペットサイトにありがちな、ベタッと感傷的じゃないところが好きです。 もう勝手に心の家族の気分(笑)。「まこ」ブログで教えてもらった、里親サイトから猫の姉弟を引き取り、北欧の食器でお茶の時間を過ごし、BGMを楽しんでいるのです。 「まこ」サイトで出合って大好きになったのが、コリーとハスキーから生まれた雑種犬、富士丸との生活を描いた「富士丸な日々」というサイト。飼い主である穴澤賢さんの愛情深いけれど、シャイなゆえにわざとゆる~く表現する独特の文章センスに心をワシづかみされました。 とにかくおもしろい! 富士丸がまこ邸を訪ねるという企画があり、その貴重な映像は永久保存してあるぐらい。というのは、富士丸くんは2009年、7歳で突然亡くなってしまったから。それをブログ知った時は、大人になって初めて号泣しました。 しばらくの時を経て、現在は「大吉」と「福助」という2匹の犬と暮らしている様子が、「Another Days」というブログに描かれています。まだ残してくださっている「富士丸」サイトから入るのを習慣にしているのですが、穴澤さんも、動物に対する姿勢がまこの飼い主さんと同じで、ゆる~く見せつつ、一本ピシッと筋が通っています。これから犬や猫と暮らしてみたいと思っている人にも、役立つ情報が満載。新しいご著書が待たれます。 愛犬家、愛猫家というと、妄信的、狂信的な人もいると思われるかもしれませんが、飼い主のエゴでなく、動物本位に暮らすという人間性の豊かさが共通しているのが、この2つのブログ。 一番大事なことを教えていただいたと思っています。両ブログとも、今まで見たことがないような味わいのある猫や犬の表情に、胸がキュンキュンしっぱなしの魅力的なサイトです。時に辛いことも多々ある、あわただしい日々の中、どんなに癒されていることでしょう。何の面識もないけれど、ここでお礼を言いたいです。 ・ 「まこという名の不思議顔の猫」 ・ 「Another Days」
2014年07月23日私ごとですが「あ~もう~、生きてるのやんなっちゃったなあ~~、ヤバイ、ヤバイ…」という時に落語を聞いて「こんなばかばかしい世界もあるんだもの、もうちょっとだけ生きてみようかな」と思ったことが何度かあります。 どんな落語でもいいわけじゃあない。志ん生に限ります。上手い噺家さんはたくさんいるけれど、古今亭志ん生は別格、究極!上手い下手という評価では収まりきらない。そんな次元を超えて、思いっきり力が抜けて、別世界へ連れて行かれてしまうんです。落語初心者でも必ず虜になる “志ん生落語”の魅力をご紹介しましょう。 ヘビから血が出て、ヘービーチーデーって(絶句)! 落語の聞きどころは、一人の落語家が複数の登場人物を演じ分けて、いわゆるキャラが立つ、シーンが浮かぶところです。 他の古典芸能と同様に、芸を磨いて名人の域に達する見事さというのはもちろんありますけれど、落語の場合は話芸の上手さだけではなく “フラ” といわれるその人の “持って生まれたおかしみ” に大きく左右されるのが特徴です。志ん生はその “フラ” が最高なのです。 たとえば “まくら” といって、これから語る落語の前振り(本編と必ずしも共通する話題から入るとは限りません)があるのですが、そこで「落書きで、ヘビから血が出て、ヘービーチーデー」なんて言ってるんですね、志ん生は。 最初は「なんじゃ、こりゃ?」って感じでした。あまりにくだらなくておかしくて…。「見世物小屋で、命の親だよ、見て行きな、っていうから何かと思ったら、飯茶碗にご飯が一膳」っていうのもありました。 な~んだ、と席を立たないでくださいな(笑)。話の中身がおかしいんじゃないんです。こんな「まくら」から入って語られる志ん生の噺の数々は、筋が語れるほど何度聞いていても、聞くたびに毎回笑ってしまう。まったく飽きない。リクツじゃないのです。 落語初心者にもお薦めしたい、この5本 落語ブームといわれて久しいですが、CDやDVDでダントツに売れているのは、未だに志ん生だとか。亡くなって41年になるのにすごいことです。どれを聞いたらいいか迷うなら、お薦めを5本。「黄金餅」「火炎太鼓」「お直し」「後生鰻」「らくだ」。ああ、自分で言っておきながら、5本は辛い(笑)。次点で「付き馬」「稽古屋」「鰻の幇間」もぜひ! 最低最悪な気分から絶対に救ってくれる、志ん生落語 志ん生のお弟子さんだった故・古今亭円菊師匠から聞いた話ですが、離婚しようと決めた夫婦が寄席で落語を聞いたら、よりがもどってしまったとか。そんな漫画みたいなことが本当にあるんですね。落語を聞いて笑ったらガンが治った、という話も聞いたことがあります。現代に多い鬱病、心が壊れそうな場合などにも効果的なのではないでしょうか。 例えば世を儚んだり、食い詰めたり、下手したら犯罪に手を染めたり…もう、人間、万事休す、といった最低最悪な気分の時ですら、「生きていりゃ何とかなるんじゃないか」と思わせてくれる。もちろん、ハッピーな時はますますハッピーに!それが、志ん生落語の魅力なのです。 彼の噺はもう音源でしか聞けませんが、落語そのものを愉しみたいなら、東京にある5つの寄席、鈴本演芸場、浅草演芸ホール、末広亭、池袋演芸場、国立演芸場に行くもよし、ホール落語に行くもよし、CDやDVD、落語協会などのポッドキャストで聞くもよし。 笑って癒されて、脳ミソがシャッフルされて、自分も周囲も今より必ず幸せになれますって。 ・ 古今亭志ん生の音源など ・ 落語協会 ・ 落語芸術協会
2014年07月15日京都駅に降り立つと、聞こえてくる“はんなり”したやわらかい言葉遣いのせいでしょうか、東京とは違う“たゆたうような時間”がゆったり流れている感じがして思わずにんまりしてしまいます。ああ、今、京都にいる! そう思えることが嬉しくてたまりません。バカンスはもちろん、たとえ仕事であっても、京都は私たちをそんな旅情に誘ってくれます。 つい先日も京都を訪れてきました。今回は、京都をこよなく愛するわたしが厳選した“町屋づくし”の京都散策コースをご紹介します。 1軒め: 300年の歴史を誇る茶舗、一保堂京都本店の喫茶室「嘉木」 京都に着くと、まず訪れることにしているのが、御所の南北に走る寺町通り沿いにある、一保堂の喫茶室「嘉木」。この辺り、骨董屋さんやギャラリーが連なる閑静な佇まいで、いい雰囲気なんですよ。美味しい日本茶でリフレッシュして、旅程をあれこれ考えるのにぴったりです。享保年間(1717年)の創業で、宇治発祥の「宇治製法」で作られ、上品な甘みとまろやかな味わいが特徴の「京銘茶」の老舗は、まさにザ・京都の風格です。 「嘉木」では、大好物の玉露を頼みます。基本は自分で淹れるのですが、スタッフの方が丁寧に教えてくれるから大丈夫。びっくりするのは、1回に使う茶葉の量が、私たちが普段使う3倍はあること。 サーブされるポットのお湯は100度で、一人でも4つ付いてくる小さい湯呑茶碗に、次々入れ替えて冷ましたら、急須に注いで1分半待ちます。これが一煎目で、二煎目以降はそれほど待たずにいただきますが、それぞれ味が異なり、その美味しさに感動! この日は笹屋守栄の「小百合咲く」というお菓子が付いて、くつろいだ気分に…。 2軒め: 「蕎麦屋にこら」でおまかせ蕎麦コースのランチを! 今回、どうしても行きたかったのが、蕎麦好きには避けて通れない「蕎麦屋にこら」です。 ランチのコースメニュー(要予約)は、「蕎麦寿司」「穴子のそばがき蒸」「鱧の南蛮漬け」「そば粉のブリニ 鮎のリエット胡瓜ソース」に「ざるそば」か「かけそば」、「杏仁豆腐」か「そば白玉入りぜんざい」のデザートと、ランチらしからぬゴージャスさ! 契約農家で無農薬栽培された蕎麦100パーセントを石臼で製粉し、つながるぎりぎりまで粗く挽いて香りを保ち、あえてつなぎは一切入れないという「自家製粉粗挽十割蕎麦」は、蕎麦好きにはたまらない美味しさでした。つなぎを入れないと普通はボソボソしているのに、雑味がなくツルッと軽やか! 蕎麦本来の上品な甘みと爽やかな香りを堪能しました。 3軒め 祇園に出現した築100年の町屋建築、「ライカ京都店」 京都お散歩コースの締めくくりは、3月にオープンして以来、気になっていた「ライカ京都店」。京都の中心地でもある祇園の花見小路通り沿いにありながら、あまりに周囲に馴染んでいるので、思わず通り過ぎてしまいそう。 ドイツを代表するカメラの名門ブランドが、伝統的な町屋の梁や柱などを活かした瀟洒なフラッグシップ店を創るとは! その粋なコンセプトは目からウロコの驚きでした。紺色ののれんに付いた赤いLeicaマークが目印です。 店内は、ライカの現行商品がフルラインアップで揃えられ、坪庭をのぞむスタジオやギャラリーが併設、ライカの世界観とライカのあるライフスタイルを展覧できるというもの。 160年の歴史を誇るライカのクラフトマンシップがそこここに生かされ、それが古都・京都と完璧にマッチングした美しさに、しばし現実を忘れ、悠久の時を彷徨いました。カメラファンならずとも楽しめる京都の新しいスポット、ぜひ訪れてみてはいかがでしょう。 ・ 一保堂喫茶室「嘉木」 ・ 蕎麦屋にこら ・ ライカ京都店
2014年07月09日初夏の風が心地よく、腕をむき出しにする季節になると、手首に何か巻きつけたくなるのは女子の本能でしょうか? お洒落心の発露でしょうか? 特に、透明感あふれるビーズ素材がとっても気になります。手元をキラキラさせて、涼やかな風を感じてみた~い! そこで、デンマークで誕生したトロールビーズのカタログをゲット。もともと想像の世界で遊ぶのが大好きなので、おとぎ話や北欧神話に登場する“森の妖精”トロールにはインスピレーションを刺激されまくり。 北欧では、人々の運命に様々な影響を与える存在として伝えられているとか。そんなトロールからのメッセージとして生まれた、多様なチャーム満載のカタログから、自分好みを追及したコーディネートを3つ、発案しました。 その1. 海辺のバカンスにぴったり! 透明感あふれる白っぽいブレス 初夏の風に吹かれながら、海辺を散歩したいなあ。涼しげなシルバーのチェーンに、白と透明なチャームだけをつなげてみたらどうかしら? と、海にまつわる素材にこだわりながら、イメージを膨らませます。海からの贈り物であるパールはもちろん、海の生き物、タツノオトシゴ「シーホース」も可愛いし、「オーシャン」というチャームには、ヒトデや貝が愛らしく絡まっていて、見ているだけで海の香りが漂ってきます。 トータル¥97,740(税込) チャームを少なめにしたり、あるいは、1個から始めて、記念日ごとに増やしていくとか、プライス的にもいろいろ加減できるのが嬉しい 中心は、やはり「マーメイド」にしようかな? デンマーク生まれのアンデルセンの童話「人魚姫」が頭をよぎります。ブレスレットの留め金も、魚がダイナミックに跳ねているデザインの「ビッグフィッシュロック」を選択し、気分はすっかり海辺のバカンス。 その2. 北欧神話の世界に遊ぶ! ナチュラルテイスト&普段遣いのお守りがわり せっかくなら、日常的に毎日着けられるブレスをカスタムしてみたい、という気持ちも募ります。ナチュラルなベージュのレザーをベースに、守護天使のご加護を受けられるよう「ガーディアンエンジェル」というチャームを、まずチョイス! 想像上の動物「グリフィン」は、守護と知恵の象徴だそうで、これらを日々、手首に巻いていれば、お守りのように自分の運命を守ってくれそう。何かいいことがありそうな予感が…。 トータル¥58,320(税込) 自分の星座、頭文字のアルファベット、誕生花といったチョイスも素敵。ベースのレザーは、他にブラック、ブラウン、レッドとボルドーのコンビなど多彩 その3. ロックテイストのブレス パティ・スミスへのオマージュを意識して 普段遣いも欲しいのですが、ロックコンサートに行ったりクラブで踊ったりする時、いつもとは違う、ちょっとハジけたエッジーなブレスをしたい、という気持ちも、実はありまして…。というのは、昨年、感動したパティ・スミスのコンサート、オールスタンディングでしたが、ラッシュアワー並みの混み具合で、何を着ているかより、前方に突き出す腕しか見えないわけですよ。そこにメッセージを込めたい! と強く思いましたね。 また、ぴったりのエックスバイトロールビーズという、黒いラバーと組み合わせるシリーズがあり、チャームも、まさに「ロックンロール」「スター&ハート」「XOXO(ハグ&キス)」と、ロックテイストでカッコいいんです。そこに、自分の星座「キャンサー(蟹座)」をプラスして…と、どんどんイマジネーションが拡がっていきます。 トータル¥77,328(税込) これはシルバーだけで統一しましたが、ゴールドだけ、シルバー+ゴールドの組み合わせもあり。遊び心を満喫させて こんなわがままな妄想を実現したくて、近所のトロールビーズ・ショップへ。丁寧に対応していただいて楽しかったです。何万通りもあるチョイスから、自分だけの“世界にひとつ”をカスタムできる喜び、そして、由来する背景が持つ深さと神秘性こそが、トロールビーズの魅力だと実感しました。あなただったらどんなブレスをカスタムしますか? ・ トロールビーズ
2014年07月03日北鎌倉駅でJRを降り、西口改札を出て左折。紫陽花に見惚れながら舗道を300メートルほど歩くと、見落としてしまいそうな小さな木の案内板に「喫茶ミンカ」の文字が。そこを左折すると奥に、木々や植物の生い茂った小さな館がこつ然と現れます。 まるで古民家のような佇まい。室内は、白い壁にアンティークの調度や古い本たちがあたかも最初から仕組まれたように調和し、香り高いコーヒーのいい匂いが…。研ぎ澄まされた美意識の静謐な空間。友人に誘われて初めて訪れた時は、白洲正子さんみたいなシャープな老婦人が現れそうなところ、楚々とした少女のような女主人が出てきて驚きました。 古い本と秘密の花園めいた緑の庭が与えてくれる究極の癒し 彼女の登場で、それまで孤高な雰囲気さえ漂っていた清冽な室内が、ふんわりとやさしいやすらげる空間へと変容。シアトリカルな演出だなと勝手に想像して感動したのでした。 今年、5周年を迎えた喫茶ミンカは、東京生まれ、東京住まいだった彼女が12年ほど前に鎌倉へ移住し、とても気に入っていたというその家が壊されることになって北鎌倉に引っ越し、改装してオープンさせたお店。今はロケーションが変わってしまったそうですが、「小路の奥に柿の木が見えて、そこに一目惚れ」して決めたとのこと。 その柿の木のある庭から入るのですが、入り口には雨ざらした木箱の中に本が見開きで置かれ、色褪せた「喫茶ミンカ」の文字が、かろうじて読めるか否か…。気づく人だけ気づいてくれればいい…という、あまりにもさりげないおくゆかしいセンス! 何とお洒落なのでしょう。決して広くはないけれど、秘密の花園めいた緑の庭も本だらけの美しい室内も、佇んだ瞬間に、「ここ、大好き! 」と体中の細胞が生き生きしてくるのでした。 改装は大工さん一人に依頼したので一年以上かかったそうですが、古い建物ながら耐震も図られ、前職がグラフィックデザイナーだった女主人のセンスを生かした喫茶店が誕生。デュラス、古井由吉、太宰治、伊藤比呂美らを愛する、もと文学少女の彼女が「普遍的なものが好きなんです」という通り、店内には時代を超えた魅力的な本がたくさん。 読書しながら美味しいコーヒーでくつろいでほしい 予約なし。ランチタイムなし。「喫茶店に予約があったらおかしいでしょう? 」と微笑む女主人は、あくまで喫茶店へのこだわりがあるそう。カフェに押され気味で、喫茶店が少なくなっている現在ですが、「喫茶店のほうが、落ち着いて本が読めると思うんです」とおだやかに語ります。特に、北鎌倉はお店そのものが少ないので、飲食にかかわるのは初めてだったけれど、喫茶店を始めたいと思ったのだとか。 「ですから、ランチタイムや食べものを目当てにいらっしゃるとがっかりなさるかもしれません(笑)。読書しながら美味しいコーヒーでくつろぎたい方に向いていると思います」とのことですが、びっくりするほど美味しいコーヒーだけでなく、ハンドメイドのキャロットケーキがナチュラルで上品な甘さで余りに美味しく、ホールで食べたいほどでした。 できるなら秘密にしておきたい、できたら本当に来たい人だけに来てほしい…と願わずにいられない喫茶ミンカ。すぐ近くには紫陽花寺として有名な明月院、円覚寺、建長寺も。都内から楽々通勤圏内の鎌倉、北鎌倉ですが、北鎌倉駅に降り立った途端、鬱蒼とした木立ちに囲まれた古都の風情が広がって、ちょっとした観光気分に浸れるのが魔法のよう。ぜひ、今度の週末にでも訪れてみませんか? 喫茶ミンカ TEL/0467-50-0221 営業時間/午前11時半~午後5時半 定休日/木曜・金曜
2014年06月27日どこからもお金などいただいておらず、何かのまわし者でもありません(笑)。ただ、人間って本来、身ひとつで完成されてるはずの有機体なんじゃないか…と思い込み、これさえ飲めば美容と健康にバッチリ!といった宣伝文句の物品に散財せずに何とかならないものかと、自ら人体実験を続けております。 以前、 「一生続けたい健康法や生き方に、出合ってますか?」 に書かせていただいた、シルクとコットンの靴下の重ね履き、38度のお風呂にみぞおちから下を20分以上浸かる半身浴、などが基本の「冷え取り」と呼ばれる健康法と同時に、お金がかからなくて、これはいい! と実感しているのが「白湯」。始めて5年目に入りますが、水道代と光熱費はかかるけれど、簡単で自然で本当に心地いいんです。 シンプルで究極のデトックス。体の中から元気にキレイに 朝、起き抜けにコップ1杯の水を飲むといい、というのを何かで知り、長年続けていたのですが、数年前、白湯がいいらしいと聞き、冷えないほうがいいんじゃないか…と思って読み始めたのが、アーユルヴェーダの認定医である医学博士、蓮村誠先生の「白湯 毒出し健康法」でした。デトックス(毒出し)という言葉が市民権を得た頃だと思います。 白湯って何? と思いますよね。私も全然知りませんでした。一言でいえば、「1日3回、10分沸騰させたお湯(白湯)を飲むだけで、体が甦る」。具体的に言うと、白湯が体を温めて代謝や消化力を上げ、未消化物である毒を輩出。それによって痩せたり冷え症や便秘が直ったりする。要するに、体内を大掃除してくれて体の中からキレイになれる、というもの。私にしてみれば、ダイエットのためというより、朝、どうせコップ1杯の水を飲むのなら、よりヘルシーな白湯にしたらいいかも…ぐらいの気持ちでした。 インド伝来のアーユルヴェーダという健康法? 哲学? というのもこの本で知ったのですが、それに関しては実は頭がついていけず、正確には把握できておりません。でも、アーユルヴェーダ式の白湯の作り方は、一応マスターしました。 五臓六腑が喜んでいる感じ。心が落ち着いて幸せ感も… ヤカンに水を入れて強火にかけ、換気扇も回す。沸騰したらフタを取り、10~15分間沸かし続ける。沸いた白湯が飲める程度に冷めてから、少しずつすするように飲む。これだけなんです。朝起き抜けに、夜寝る前に。あるいは朝昼夜と食事中、1日3回150cc(コップ1杯)を目安に少しずつ飲みます。1日の量は700~800ml(コップ5~6杯)程度に。それ以上飲むと、逆に体内に必要な成分まで流れ出てしまうとか。 飲み始めると、美味しいし気持ちが落ち着くので止められなくなりました。まさに、五臓六腑が喜んでいる感じ。飲み続けると、体本来のバランスを取り戻していけるようです。特に、朝一番の白湯は、最も毒が外に出やすい時間帯だそうで、心身を清めてくれます。心が穏やかになってきて、何かを無理にがんばらなくても幸せ感を得られるように…。過剰にがんばってしまうのは、体内のバランスが悪いからだったのですね。 胃腸が丈夫じゃなかったり、お酒があまり強くない友人を家に招いた時も、ドリンクとして白湯かほうじ茶を出すと、とても喜ばれます。腹痛が治まった人もいました。元気になってキレイになれる白湯は、安全なミラクル健康法。よかったら試してみてください。 ・ 「白湯 毒出し健康法」(蓮村誠著/PHP文庫)
2014年06月24日小さい頃、親に連れられて行った能舞台では、怖がって泣いていたらしいのですが、大人になったら、お能が大好きになっていました。歌舞伎も楽しいし、文楽にハマっていた時期もあります。ただ、生々しい俗っぽさが洗練に洗練を重ねてシンプルに行きついた…究極のエンタテインメントって、能しかないと思うのです。 数百年、続いている伝統に畏敬の念を感じるとともに、能楽が与えてくれる静かで激しい世界、静謐な中に込められた清冽なエッセンスに、観るたび、ゾクゾクせずにはおれません。 グローバルな世の中だからこそ、和の美意識を大切にしたい 客席の床下に流れ込む海流と魚群が見事な借景になっていた、幻想的な厳島神社の能、桜の季節のお約束、靖国神社の夜桜能など、様々な舞台を楽しんできましたが、ここ10年ほど、毎年楽しみに通っているのが、宝生流の能楽師、細野ひろみ師が主宰する「あかね会」という能のお教室のおさらい会。友人が通っているので親しみやすさがあり、今年も、友人とお仲間たちのお稽古の成果を発表する舞台を見学してきました。 「素謡」(すうたい)といい、お謡だけの演目も。 右から2人目が、お弟子さんたちに混じった細野ひろみ先生 「四季の能 平明に 清澄に」(樹と匠社)というエッセイ集の著書もある細野先生は、男性中心の能楽界で、女性ということを意識せずに活躍しておられる能楽師。友人は、細野先生の高潔な芸とお人柄に魅せられて、何十年もお稽古に通い続けているそうです。 友人の舞台写真。後ろで、そうそうたる能楽師の先生方が地謡と囃子を務めてくださるのが圧巻 いつもはカジュアルな服装の友人が、着物と袴のいでたちでキリリと舞台に現れると、思わず目を見張ります。お能には、謡(うたい)といって歌う要素と、仕舞(しまい)といって踊りの要素があります。 謡はお腹の底から発声するため、朗々とした力強い声の響きが特徴的で、仕舞は踊りとはいえ、すり足が基本で、一般的な踊りのイメージからすると抑えた静的な動きに見えますが、実際はかなりのハードワーク。 この声と動きに、中世から連綿と続いている歴史の重みを感じてワクワクします。あかね会は発表会でありながら、お弟子さんたちのバックで唄っている地謡(じうたい)や囃子(はやし)の伴奏を務めるのが、プロの能楽師たちという贅沢さ。 素謡(すうたい)といって歌うだけの演目があるのですが、途中から細野ひろみ先生が加わると、その瞬間、舞台がピーンと引き締まるのがわかったり、発表会の最後に、先生のお仲間である素晴らしい能楽師たちの番外仕舞が観られたり、その感動が忘れられなくて、毎年、通い続けてきました。 おさらい会後の番外仕舞で、「岩船」を舞う小倉伸二郎先生。凛々しい舞姿に周囲からため息が 今年も、人間国宝の三川泉先生による「鵜乃段」という仕舞が拝見できて、ほっぺたをつねりそうになりましたよ。三川先生、90歳を越えていらっしゃるとはとても思えないダイナミックな動きに目を奪われました。枯淡の域ではなく華やか! まさに眼福でした。 人間国宝、三川泉先生の「鵜乃段」。峻厳な風格と軽やかさが同居するダイナミックな舞台 一度、体験してみたいお稽古事はお能の謡と仕舞 能なんて観る機会がないし知識もない…という方も、イマジネーションが刺激され、夢うつつなひとときに癒されますから、ぜひ一度、気軽に訪れてみてはいかがでしょう? もし、これから何かお稽古事を体験するのなら、能の謡と仕舞かなあ…と思っています。お能をしている人の姿勢の良さ、自然でこなれた着物の着こなし、立ち居振る舞いの美しさに憧れます。目指したい究極のキレイスタイルかもしれません。とはいえ、お稽古中はジーンズでもOKだそうで、ちょっとホッ…。意外と気楽に体験できそうです。 ・ 宝生会 ・ 能楽協会
2014年06月18日生来無精者で、テレビ番組を毎週観たりするマメさに欠けるTVオンチの私が、久々にハマったのが「植物男子ベランダー」(BSプレミアム)という番組。いとうせいこうさんの原作「ボタニカル・ライフ 植物生活」は読んでいたし、いとうさんの植物愛にも関心はあったけれど、これをテレビ化するという時点でまずびっくり! ハンパない挑戦だと思いましたね。 ベランダーとは、いとうさんがガーデナーに対抗して作った造語。この番組は、田口トモロヲさん演じる、都会の片隅でひっそりと暮らす中年のバツイチ男、自称「ベランダー」が、自分勝手なやり方でベランダで植物を育てることを無上の喜びとしながらも、世話に翻弄されたりする、こっけいな姿を描くドラマなのです。 田口トモロヲさんと松尾スズキさんにハートをワシづかみ フリーライターであるらしい彼は、都心のなかなかお洒落なマンションに住み、リビングルームはベランダに面していて日当たり良し。そこで、ビール片手に植物を愛で、ああでもない、こうでもない、と独自の思い込みと偏愛で世話に没頭。 基本的には、ベランダと馴染みの花屋ぐらいしかシーンが展開しないのですが、それで、ここまでハラハラドキドキさせられるとは! 恐るべしトモロヲさんの悲哀感あふれる魅力に開眼。ちなみに、隣人の植物学者、田中役の古舘寛治さんも落語でいうフラがある人という言葉がぴったりで、持って生まれたようなおかしみや愛嬌があって大好物です。 音楽がまた的を射て感動的で、さあ、始動という時はドアーズの「ハロー、アイ・ラブ・ユー」、花屋で片思いの店員さんに会うシーンではシューベルトの「野ばら」と、出囃子的なBGMも秀逸。ワスレナグサにまつわるエピソードの回で、エンディングに大橋トリオ featuring 矢野顕子の「窓」が流れた時は、思わず不覚にも落涙しちゃいました。 第2話で、もといた会社の先輩だという盆栽好きの茂木梅吉を演じる松尾スズキさんが登場した時、完全にヤラレタ! と思いましたね。突然、訪ねてきて盆栽について薀蓄を垂れたり叱ったりするのですが、ハマリ役というか、もはや演技に見えない! スタッフブログでも「圧倒的怪演で視聴者を慄然とさせた…」とありましたけれど、実にその通り。トモロヲさんと松尾さんにハートをワシづかみされ、耳元には、松尾さんの「盆栽、いいよ~、盆栽…」とつぶやくリフレインがいつまでも消えませんでしたよ。 6月25日、いとうせいこうさんの出演は見逃せない! それで、番組のHPやブログをたまにチェックするようになったんですが、何と6月25日、原作者のいとうせいこうさんがカメオ出演するというではありませんか! 浅草の植木市で盆栽を売る店主の役だとか。 スタッフブログ(バックナンバー4/25)で見た写真では、文士風の粋な着流しスタイル。そこに、我らがトモロヲさんと松尾さんが絡むという…。日本のサブカル界を、いや、もはや日本のカルチャー界の王道を牽引する3巨匠(個人的には“愛すべき中年御三家”と呼ばせていただいております)が、一堂に会するとは! これはぜひともお知らせしたくなりました。この日は空けてあります(笑)。ドラマ以外にも、「多肉 愛の劇場」という多肉植物が擬人化されて昼メロ風に演じる愛憎劇(?)、草冠が付く漢字を松尾さんがアダルトな雰囲気で朗読する「愛しの草冠」、植物が登場する歌が流れる「植物SONGS」など、ミニコーナーも非常に充実。スタッフさんたちが仕事を超えて入れ込んでる感があり、毎回、ただならぬ熱気が伝わってくるのが楽しいです。 この番組のポスターを見たら、いやがおうにもそれを実感できるはず。007ばりに、いえ、トモロヲさんがお好きなブロンソンばりに、嗚呼、銃でなく水やりのホースを銃撃ポーズで構えるハードボイルドなトモロヲさんが! 6月25日、OA予定の「初夏のパノラマ」の巻、今から首を長~くして楽しみに待ってます。 ・ 「植物男子 ベランダー」
2014年06月11日女子ってどうしてモフモフしたものが好きなんでしょ! 猫でも犬でもぬいぐるみでも、そういうものを見ると、とっくに大人になっているにもかかわらず、心の奥底の女のコが反応しちゃうんでしょうか? 思わず駆け寄って行って「可愛い~、モフモフした~い」って、なでなでしたくなっちゃうんですよね。 とはいえ、ファンシーなキャラものや可愛い系は実はあまり得意ではなかったのですが、唯一、ハマってしまったのが、手芸アーティスト、松下さんの作品たち。だって、あまりに自由で遊び心満載でクリエイティブなんですもん。見た途端、欲しい欲しいビーム光線が出まくりに…。不器用で手芸とは無縁だった自分が、別世界に目覚めた瞬間でした。 手触りのぬくもりに癒される手作りの魅力 富ヶ谷の天然酵母パンで有名なパン屋さん、ルヴァンに併設されたギャラリー、ル・シァレで開かれた松下さんの展示会に行ってみました。ベーグルやバゲットやクロワッサンがぬいぐるみになってる! パン棚に置かれてたらまるで本物みたい…なわけないか(笑)。 反対側の壁には、大人気の「くまポフ」シリーズ、くまのストラップがたくさん。ツィード、チェック、ヒョウ柄…、様々な意匠が凝らされたくまポフたちは、モフモフ、ポフポフとしたテクスチャーのほっこりする個性派揃いで、見ているだけで癒されます。 女の子も怪獣で遊んでほしい、と創作された「KAIJU FOR GIRLS」というシリーズも魅力的。円谷プロの怪獣図鑑を元に作られており、リアルなのにエッジが効いています。手触りのあたたかさ、ユーモラスな表情で語りかけるような愛らしさがたまりません。 「旅しゅげい家」松下あつこさん もともとは、著名文学賞作家の本やベストセラーも輩出した敏腕編集者だった松下さん。数年前、ガーディアン・エンジェル(守護天使)のお告げを読み解くオーストラリア在住のヒーラーさんのセッションを受け、「もっと表現するように」と告げられ、手芸家に転向した経歴の持ち主です。 出版社勤務時代は、もの作りにかかわってプロデュースする楽しさはあったけれど、どこか物足りなさがあったとか。それが、「自分は本来、布が好きだった」と気づき、手芸の道へ。誰かに贈るもの、を意味する「aillugib アイルギブ」が彼女のブランド名になり、旅好きなので「旅しゅげい家」と名乗っておられます。 布であっても布の枠にとらわれないスケールアウトした楽しさが、松下さんの作品の魅力です。襟元から長~く伸びるロング・ブローチ、持ち手がドーナツみたいに輪がつながったバッグ、存在感のある携帯ストラップ、様々な動物たち…。子供たちがキャアキャア歓びそうなプレイランドであり、酸いも甘いも噛み分けた大人も満足するアーティストです。 ・ 松下あつこのHP ・ くまポフだけのHP ・ web shop「Vive el momento」
2014年06月05日私が小学生の頃、昼休みに外で遊ばずに教室で本を読んでいると、暗いとか自閉症だとか言われ、仕方なく本を持って外に出て、校庭の隅っこで読んでいました。暗いどころか、本人はイマジネーションの世界に浸ってワクワク楽しんでいたのですが…。 ©evgenyatamanenko - Fotolia.com 時を経て現在、自閉症は先天性の発達障害であるという見方が主流になっています。もちろん「自閉症気味な性格」とか「引きこもりは自閉的傾向…」といった言葉の使われ方もするので、紛らわしいのですが、先天的であるとはっきりしない前は、自閉症の子供に対して、「お母さんが仕事してるからじゃない? 子供がかわいそう」とか、「テレビばかり見せてかまってあげてないんじゃない? 愛情不足よ」などと、誤った認識で、母親が責められてしまうこともあったとか。未だに、そう思っている人もいるかもしれません。 私自身、もしそういう過去がなかったら、自分には全然関係ないとスルーしていたはず。4月2日は国連が定めた世界自閉症啓発デーです。少し前ですが、自閉症をはじめとする発達障害への理解を深めてもらうため、世界中のランドマークを青くライトアップするイベントも行われ、1年でこの日だけ、東京タワーがブルーに染まるのを見てきました。美しかった! このブルーは、未来への希望と自閉症の人が持つ独特の心のあたたかさを表現しており、この日は、Warm Blue day(ウォームブルーデ―)とも呼ばれています。 自閉症のみならず、外見からはわからないけれど、周囲の理解を必要とする病気や障害、症状はたくさんあると思います。難病の初期もそうですし、たとえば、ハンディキャップでなくても妊娠初期、不妊治療中なども。「おなかに赤ちゃんがいます」というマタニティマークをつけていて殴られたり蹴られたりした、というニュースを知って愕然としました。シルバーシートの前にいる時だけ着用、と指導する産婦人科もあるそうです。おなかが大きくなくても大きくても、赤ちゃん連れの人に対しても、笑顔を向けられるといいですね。 三浦春馬さんの熱演が話題になったテレビドラマ「僕のいた時間」で描かれたALS(筋委縮性側索硬化症)への認知度は、上っているでしょうか。三浦さんも読んだというALS患者、藤田ヒロこと藤田正裕さんの著書「99%ありがとう ALSにも奪えないもの」(ポプラ社)は感動的ですが、4年前、30歳で発病してから車椅子になるまでの期間、周囲が難病とわかるまでは、別の意味で大変だったろうと思います。そういう人に対して、サボッている、なまけている、という視線を向けてしまう状況って必ずあると思うから。 目が見えなくて白い杖をついている人が、杖を手で持ち上げたらSOSの合図。周囲にいる人は声をかけてあげてほしいです。そんなことも実は知りませんでした。知らないことがいっぱいあります。知ることで変われることはたくさんあるけれど、でも、重要なのは知識ではないと思うのです。 ちょっとした気遣いや周囲への視線の向け方、感じ方ではないでしょうか? だから逆に、ハンディキャップのある人の独特の動きを見ないふりしたり、知らんぷりしてあげたりすることのほうが優しい場合もあるかもしれませんね。 もちろん自分が疲れていたら、電車で席を譲らなくていいと思うんです。無理して犠牲的になる必要はないし、かといって、お節介になりたくないし、エラそうなこと言いたくないし、何にでも首を突っ込むのがいいわけではないでしょう。でも、世の中が世知辛い、人が冷たくなった、と言われる昨今、周囲の理解を必要としている人たちがいるのなら、せめて、あたたかい視線を持てる自分になれるといいなあ、と思います。 ・ 世界自閉症啓発デー公式HP ・ 藤田ヒロのブログ
2014年05月27日大胆に脚を開いて椅子からずり落ちそうなしどけないポーズ。それでいて表情は淡々と無防備。傍らに猫がいたり、鏡を見たりしているけれど、室内は時が止まったように静謐なまま。スキャンダラスにも見え、耽美な少女愛を思わせるようでいて、描かれた少女たちのもっと向こう側、精神の彼岸のような内省的な場所へと心が降りていく不思議な絵。 1908年、ポーランド人の美術史家の父と画家の母のもと、パリに生まれ、2001年に亡くなるまで独特な具象絵画を描き続け、今なお称賛と誤解が渦巻き、議論のつきない画家、バルテュスの国内最大規模、没後初の大回顧展を、東京都美術館で観てきました。 スキャンダラス? いいえ、「描くことは祈ること」! 1962年、アカデミー・ド・フランスの館長を務めるバルテュスが、パリで開催する日本古美術展のために来日中、若く美しい日本女性と出会い、後年、結婚に至るドラマティックなストーリーは有名ですが、本展は、バルテュスのその妻である節子夫人の全面協力。 そのため、ポンピドゥー・センターやメトロポリタン美術館など、世界的な美術館コレクションのみならず、公開されることの少ない個人蔵の作品も含む、代表作40点余の油絵、日本初公開作品、素描や愛用品など100点を超える作品を紹介する、貴重な展覧会となっています。とはいえ、いざ絵と向き合えば、そこは私とバルテュスだけの世界。 扇情的な姿態でありながらクールな表情が唐突にも思える少女は、無防備な官能? 自己愛? 頭の中がグルグルしつつ、描かれた少女たちの間を彷徨っていると、ほの暗く絶妙な照明の効果も手伝ってか、研ぎ澄まされた美意識の緊張感に胸苦しくなるほど。 油絵なのに光沢のないマットな質感は、バルテュスがフレスコ画を目指して試行錯誤した結果だそう。初期ルネッサンスの巨匠、ピエロ・デラ・フランチェスカに最も影響を受けたという彼らしく、実は普遍性を尊ぶ古典主義的な作風であることが窺えます。 圧巻のミュージアムショップで購入したおみやげたち。上部中央の超美男子は、マン・レイ撮影による22歳のバルテュス。この写真は、本展のために編まれた「バルテュス 猫とアトリエ」(NHK出版)という書籍に載っています。子供のバルテュスが描いた愛猫ミツの絵本が可愛い。 右上のポストカードは「猫と少女」。本展で私が一番好きな絵。 猫好きな彼が、わずか11歳で描いた愛猫ミツ(MITSOU)のインク画に目が吸い寄せられました。その愛らしいこと。「猫は私の守護神であり、私自身、猫の生まれ変わりなのだ」とまで言っていたバルテュス。大人になってから描いた猫たちは、可愛いというより、まるで人間みたいな貌をしているのですが、彼ならではの猫愛を感じて目が離せません。 再現されたアトリエと愛用品のから匂い立つ画家の存在感 本展で非常に興奮したのは、バルテュスが晩年を過ごしたスイス・ロシニエールの「グラン・シャレ」と呼ばれる住居に残るアトリエの再現。在りし日のままに残されている品々が無造作に置かれた室内は、自然光の入る北窓を背に濃密な空気が漂い、「描くことは祈り」と語っていた画家の気迫や懊悩(おうのう)がゾクゾクするほど伝わってくるではありませんか。 鏡の脇に飾られているのは彫刻家、ジャコメッティの写真。彼の死まで続いた2人の友情に、孤高の画家、バルテュスの熱い思いがしのばれます。彼が描いたジャコメッティのデッサンも素晴らしい。口元は微笑んでいるのに、目の奥に深い哀しみが見えるのです。 アトリエとともに、生前の愛用品である着物、ステッキ、愛読書、菩提樹の香水などが展示され、さらに彼の匂いや息遣いまでが感じられ、まさに五感がフルに刺激されました。 ミュージアムグッズがまた、お決まりのポストカードやクリアファイルのみならず、彼が愛飲したダージリンとアールグレイがブレンドされた紅茶、ハチミツ、ハンドソープ、岩絵の具まであり、購買意欲も刺激されまくり。会期中、ぜひ、もう一度訪れたいです。 ・ バルテュス展
2014年05月13日季節の訪れが初夏のプレリュードを奏で始めると、お部屋の雰囲気も変えてみたくなりませんか? 明るい色合いの花束を無造作に投げ入れたピッチャーを置いたり、窓越しの光が降り注ぐコーナーに並べたガラスの置きものたちをピカピカに磨いたり。ちょっとした演出はいろいろ楽しめますが、自分でもびっくりするぐらい変化を味わえるのは、壁面のかなりの面積を占める絵とか写真を飾ること。 自然光の入るリビングルームは、画家の置いた色彩をそのまま楽しめるのが魅力です。 ただでさえ狭いのにとんでもない! と思われますか? 広くないからこそ効果的な方法だと思うのですよ。たとえば、体育館みたいなスペースに壁画がディスプレーされていてもあまり目立たないでしょう? ひとつの壁面を覆い尽くすほどの面積を、お気に入りの絵が占めていると、その美しさを丸ごと享受している豊かな気分になれるんです。 大小様々なフレームをたくさん並べる、パリのカフェやビストロみたいな演出ももちろん素敵! ただ、センスはその飾り方のほうが試されるかもしれません。自分の部屋ですから、時代やスタイルなどあまり気にせずに、好きなものをミスマッチで飾っていいとは思うのですが、互いのフレームが相乗作用を醸し出さないでゴチャゴチャしてるだけだと、だんだん自分もくつろげなくなってしまいそうですから。 廊下はあえて、ほの暗い照明を設置。この「陰影礼賛」には非常に癒されてます。 写真の絵は、コレクションしている大好きな画家、コンドウ・マサコさんの作品。季節や気分によって架け替えて楽しんでいます。大きい絵の場合、飾り方はいたってシンプル。でも、気分はすごく変わります。壁面積以外、集合住宅の扉やエレベーターに入るかどうかは気をつけないといけませんが。大きな美しいものに包まれている心地よさがあって、なぜか目にするたびに新鮮な発見があるのです。朝、起き抜けに見る光でできる陰影と、深夜、ランプの灯りに浮かぶ画像との変化にうっとりせずにはおれません。 壁面なんて絶対無理! という方にこっそりお見せしたいのが、トイレの壁面で遊び心を満喫する方法。尾籠な写真で恐縮ですが、昨年フランシス・ベーコン展を初日に訪れてひどく感激し、持ち帰った多数のチラシを一気に壁面一面貼り。アンディ・ウォーホル気取りでモダンアート心を壁にぶつけてみました(笑)。来客には、出るものも出なくなりそうなどと賛否両論でしたけれど、展覧会の会期中、3ヶ月近く貼り続けていたのはいうまでもありません。一番楽しんだのは自分自身なんですけどね。
2014年04月23日ゴールデン・ウィークが近づいてくると、心待ちにしてしまうのが「ラ・フォル・ジュルネ 熱狂の日」音楽祭です。第1回は「ベートーヴェンと仲間たち」、第2回は「モーツァルトと仲間たち」というように、毎年、テーマとなる作曲家がフィーチャーされてきましたが、今年は開催10回目を迎える記念すべき年。これまで音楽祭を彩った10人の作曲家と仲間たちが、会場である東京国際フォーラムに集結し、17世紀から20世紀に至るクラシック音楽の流れを網羅する、10回目を祝うにふさわしい豪華な音楽祭になりそうです。 (C)三浦興一 クラシック250年間の歴史を楽しめる時間旅行 その10人の作曲家は、ヴィヴァルディ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、ブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、ラヴェル、ガーシュイン。バロックから古典派へ、そしてロマン派、近現代の作曲家へと受け継がれるクラシック音楽の流れが、個々の点から線へと結ばれ、今までとは違った見え方、聴こえ方がしてくるのではないでしょうか。それを体感できる貴重な機会だと思います。 (C)TOKYO INTERNATIONAL FORUM CO., LTD. ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」、チャイコフスキーの「白鳥の湖」、ラヴェルの「ボレロ」、モーツァルトの「レクイエム」、ショパンの「ノクターン第2番」といった超有名曲も、もちろん演奏されますよ!クラシック250年間の歴史を縦横無尽に駆け巡る時間旅行の始まり、始まり~♪ めくるめく音楽の旅へ、さあ、出発しましょうか! (C)三浦興一 ベビー&キッズ大歓迎が嬉しい細やかな配慮の数々 公式プログラムが公開された後に、ピアノの巨匠、マルタ・アルゲリッチの追加公演が発表され、大きな話題となっています(追加公演のチケット一般発売は4/12~)。そういったサプライズや独自の視点がキラリと光る趣向が盛りだくさんなのも、ラ・フォル・ジュルネならでは。 5月3日から5日までの3日間、1公演45分、朝から晩まで様々な演目が開催されます。一流の演奏を1,500円からの低価格で楽しめて、無料イベントも充実しているのが、この音楽祭の特長のひとつでしょう。そして、一般的なクラシックコンサートには入場できない、赤ちゃんや小学以下の子供も参加できるところが、何より大きな魅力だと思います。 キッズプログラム(C)三浦興一 ベビー&キッズ大歓迎で、幼いうちから本物の音楽に触れてほしいと、恒例の「0歳からのコンサート」が、毎朝9:30から開かれています。今年は、優雅なバレエ音楽やダンサブルな「ハンガリー舞曲」が演奏予定。ベビーカーOKなのも嬉しいですね。また、開場・開演時間中は、オムツ交換スペース、授乳室、託児所(有料・要予約)も用意されるとか。 日中、18:30までに開演する公演は、3歳以上のお子さんも入場が可能。大人に交じって鑑賞マナーも学べて、「コンサートデビュー」のいい機会になるのではないでしょうか。 個人的には、毎年聴いている中で、数年前、この音楽祭で出会ったフランスのモディリアーニ弦楽四重奏団がご贔屓。ここ何年かは、演奏家チェックからプログラム選びを楽しんでいます。今年も、彼らが演奏する豊かな音色が魅力的なシューベルトの「弦楽五重奏曲」、モーツァルトとハイドンの「弦楽四重奏曲」などを楽しむつもり。今からワクワクしています。では、ラ・フォル・ジュルネの会場で、ぜひお会いしましょう♪ モディリアーニ弦楽四重奏団 ・ ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭
2014年04月14日まだかまだかと思っていたら、アッという間に開花して、4、5日で満開を迎えてしまった今年の桜。そんな桜を愛でたくて、「東京ベイクルーズ」というお花見クルーズに参加してきました。 芝浦から出航するキャプテン・シン号は、8人乗りの可愛い高速遊覧船。爽やかなブルーとイエローの船体が波しぶきに映える素敵な船です。小さいけれど、競艇並みに80km程の速度が出るとか。 キャプテン・シンとは、船長の石澤真太郎さんのこと。真っ黒に日焼けして、優しくたくましい海の男です。今日はお天気にも恵まれ、最高のお花見日和となりました。さあ、それでは行ってきま~す。 幾重にも咲きこぼれる見事な桜スポット クルージング・コースは、芝浦を出発して天王洲から目黒川に入り、大崎・五反田の街沿いを通り、目黒雅叙園の裏手でUターンする目黒川コース。目黒川沿いは、言わずと知れた桜の名所です。 キャプテン・シン号に乗り込むと、水面が意外に近くてびっくり。スピードを出すと威勢よく水しぶきがあがり、勢いで船が左右に揺れると思わずキャーキャー叫んでしまいます。めちゃめちゃ楽しい! 童心に帰るのか野生に還ってしまうのか、全身で風を受けとめながら航行するのって、何て気持ちがいいのでしょう。 次第に見えてきたのは、桜が束になって幾重にも咲きこぼれる幻想的とすら言える風景。余りの美しさに息を飲みました。その後、歓声が湧きあがる船内。みんな、撮影が忙しくて、逆に言葉少なになるのでした。すれ違う船や両岸の人たちと手を振り合うのも楽しいなあ。 都会のど真ん中なのですが、桜に酔いしれて誰もが優しい気持ちになっているみたい。桜のスポットで、船長がちゃんと船を止めてくれて嬉しかったです。 クルージングがこんなに楽しいとは! またすぐ乗りた~い♪ 帰路、反対方向から堪能する景色はまた趣が違って、沈み始めた太陽に照らされる川面がキラキラと反射し、またしてもうっとり! 夜桜を愛でるナイトクルーズもいいなあ、なんて思ってしまいましたよ。 キャプテン・シンによる観光ガイドも実に楽しく、缶ビールを取り出して飲む人たちもいて、クルージングでのお花見をすっかり満喫しました。 キャプテン・シン号は、「芝浦いりき」に属する船ですが、「芝浦いりき」は、他にパシフィックファミリークラブ号という13人乗りの船も所有。キャプテン・シン号は、乗り合いで1人4,000円から乗船が可能。30,000円で貸し切れるので、お花見でなくても、お誕生日、歓送迎会、記念日クルーズなど、家族で、仲良しグループで、様々に楽しめます。 コースは、他に「東京湾周遊コース」「隅田川・スカイツリーコース」「羽田空港コース」「ゲートブリッジコース」「日本橋川コース」などがあるとか。 パシフィックファミリークラブ号は、チャーターのみで60,000円。スペシャルディナー付きもオーダーできるし、持ち込みもOK。それに、英語通訳ガイド対応というサービスもあるとか。すごい! 船上プロポーズ? 女子会? 結婚記念日? アイデア次第でいろいろな楽しみ方ができそうです。まずはご相談を。 ・ 芝浦いりき
2014年04月03日伝説的なファッション写真家、リリアン・バスマンの名前を、実は知りませんでした。しかし、1948年にハーパーズバザー誌でキャリアをスタートさせ、2012年に94歳で亡くなるまで、半世紀にわたって革新的な写真を撮り続けてきた彼女の作品は、非常に有名で、ポスターやカードなど、どこかで見たことがあるのでした。 1917年、ウクライナ、リトアニアの移民である両親のもと、ニューヨークで生まれたリリアンは、アート・ディレクターとしての教育を受けた後、フォトグラファーに。一度見たら忘れられない、イマジネーションを激しく刺激される独特の雰囲気を持った写真たち。彼女の日本で初めての展覧会「Signature of Elegance リリアン バスマンの仕事」を、銀座のシャネル・ネクサス・ホールで観てきました。 ブラック&ホワイトのシャネルらしい美意識を堪能 薄暗い入り口から入ると、すぐ黒い壁と黒いフレーミングが迫り、余りにも美しい別世界に、耽美な魔法をかけられた気分になります。迷路のように仕組まれたラビリンスをたどりながら、自然な動線で会場の対角線上に進み、ふと振り返った瞬間、突然、黒いラビリンスは真っ白に変貌! そこには、想像もしなかった白い壁に白いフレーミングが迫っているのでした。まるで世界が反転したかのような夢みたいなパラドックス。このモノクロームの魔法にやられ、しばし、その場に立ちつくしました。 思えば、黒と白という世界観はシャネルのイメージそのものではないでしょうか。ロシア・バレエのディアギレフ、コクトー、ピカソ、ストラヴィンスキーらに芸術支援していたココ・シャネル女史が生きていたら、やはりこの展覧会を開いただろうと想像します。 作品は、1948年から2008年の撮影にまで及ぶ、ファッション写真数10点。斬新で視覚的に衝撃のある作品が多く、スタイリッシュで洗練された彼女のまなざしに、どんどん惹き込まれていきます。非常にエキサイティングなひととき。こういう時、なぜか私の脳内に、前世紀を代表する3人の美の賢人たちが登場します。それは、白洲正子、小林秀雄、青山二郎のお3方。大変僭越なのですが、彼らが勝手に私の脳内で会話を始めます。 「私、好きよ。洗練ってこういうことじゃない? 」 「写真の洗練なんてものはない。洗練された写真があるだけだ」 「本当にいいものは、すぐにわかりはしない。最初、ウッと思って、後からじわりと…」 もちろん著作でしか知らない巨匠たちですが、初めて見る美しいものに向かう時、こういう妄想が脳裏をよぎります。あくまで架空の会話なので、どうか悪しからず。とはいえ、私の脳内でこのお3方のかまびすしいこと。思えば洋の東西はともかく、時代背景がほとんどカブッてますし、美意識のベクトルは近いはず。高名な批評家の小林秀雄は、自分と白洲さんは秀才だが、青山は天才だ、と美術評論家の青山二郎のことを評していたとか。おこがましくも私の脳内で、彼らはこの展覧会を洗練の極致であると大絶賛なのでした。 会場デザインが違う京都の巡回展にもぜひ行きたい! 本展は4月10日まで、12:00~20:00(入場無料・無休)。その後、KYOTOGRAPHIE國際写真フェスティバルの公式プログラムとして、西本願寺が設立した龍谷大学大営学舎本館(重要文化財)にて、4月19~5月11日まで巡回展が行われるとのこと。会場デザインが、銀座とは違ったデザインになるそうで、そちらも楽しみです。京都会場では、1940、50年代の貴重なハーパースバザー誌も展示されるとか。京都展も、ぜひ行きたいです。 ・ KYOTOGRAPHIE公式サイト
2014年04月01日最新作は“オトナノテクノ”という触れ込みの「飛ばしていくよ」レコ発ライブ、まさしく世界初演に行ってまいりました。なにぶん初演ゆえ、まだ整わない音響部分などがあるのを気にしながらも笑い飛ばしつつ、矢野さん、とにかく若い! キレイ! サラッサラのボリューミーなブロンドっぽいヘアを惜しげもなく振り乱し、ふんわりしたフェミニンなブラウスをものともせずピアノを弾きまくり、ぷるぷるの白い美肌を薄っすら紅潮させながら歌いまくる彼女は、永遠の少女そのもの。それでいて、母なる大地的なおおらかさが溢れ、会場は深い愛とぬくもりがいっぱい。 1曲目は、CMでもお馴染みの「ISETAN-TAN-TAN」。やはり生で聴くと楽しい~♪ デビューアルバムの名盤「JAPANESE GIRL」から演奏された「電話線」は、21世紀の進化系アレンジが施されたトラックに、軽々と乗る彼女のピアノと歌のピュアさは相変わらずで、さらにパワーアップした1本の線のような思いが伝わってきます。 彼女が吉田美奈子のために書き、吉田美奈子の「FLAPPER」というアルバムに入っている「かたおもい」という曲。若手サウンド・クリエイター、AZUMA HITOMIのアレンジが加わってプリミティブなキラキラ感が増し、胸キュンのゴージャスな響きに酔いしれました。1976年の作だそうですが、古さをまったく感じさせないのがスゴい! 途中、「息が切れる~」と苦笑しているのに、歌いだすとジャストミートさせた音域の力強さがハンパなく、ぐいぐい惹き込まれて、フロアはラッシュアワー時みたいなオールスタンディングなのに、気がつくとガンガン踊ってました、ノリノリで。周囲の方々、ごめんなさい! いや~、久々にライブでこんなに気持ちがアガりましたよ。 新曲「ごはんとおかず」は、最初「ごはんができたよ 2」というタイトルにしようとして、スタッフにあんまりだと言われたとか(笑)。この曲、可愛くて一番大好き♪ 心の奥底にある本質的なことをシンプルに素直に歌にするのが、矢野さんの真骨頂だなあ! とつくづく実感。何より愛があるんですよ、ホント。思わずうるうるしちゃうんです。 「飛ばしていくよ」は、心の中からマグマが突き抜けるように出てきた言葉だとか。「歌うたびに嬉しくてワクワクしちゃう! 」と矢野さん。「行けー、帰ってこなくていいよー」という勢い溢れるサウンドに、会場は熱気と和やかさに包まれました。そんな中でも、ピアノの低音Aの残響を気にしたりと、プロフェッショナルならではの一面も垣間見れて、さらに感動してしまいます。1音に最後までこだわる真剣勝負の姿勢に。 万雷の拍手の中、アンコールは『電話線』。「今日、ぎりぎりだったから、アンコールを用意してなくて…。『電話線』もう一回やるね。これは百万回も演奏してるけど、一度も飽きたことがないの。そして、同じ演奏も2度とないの」という言葉にジーンとしつつ、唯一のアコースティックな演奏にも心がときめくのでした。 少女らしい繊細さとダウン・トゥ・アースな母性が混然一体となっ女性の魅力は、最強だと思います。もちろん、矢野さんみたいな天才じゃなくても、心のピュアさ、可愛さを持ち続けることってできるのでは? それのみならず、包み込むような深い愛情も持てたらいいなあ! と、美意識が研ぎ澄まされ、元気が蘇ったライブでした。 矢野顕子新譜は3月26日、リリース。「飛ばしていくよ」ツアーも始まるので、愛のシャワーを浴びて自分の中の愛情を増量したい方、ぜひチェックしてみてください。 ・ 矢野顕子公式サイト
2014年03月25日人間って本来、自分で自分を直したり癒したりできる有機的に完結した生きものなんじゃないか、身ひとつで完全なはずじゃないか、とずっと思っていたんです。心の奥底からの声に耳を傾け、痛い時は手を当て、ピュアな心を持ち続け周囲と調和して生きられれば、人間が生まれながらに持っている力をちゃんと発揮できるんじゃないか…と。 みんな、とにかく無理してがんばっちゃうでしょう? でも、自分では無理と気づいていない。あるウィルスをやっつける抗生物質が作られると、今度はそれを上まわるウィルスが出てくるとか。無理を重ねることに慣れてしまい、ある時、病を得て、こんなはずじゃないと驚く。そうなるまで放置しておきたくないなあ、と何となく思ってました。 かといって、キレイでお洒落でないと目に留まらない… 20代なら、たとえ体にあんまりよくないとわかっていても、キレイに見せられるなら迷わずやってしまいますよね。瞳の輪郭を大きく見せるというカラコン然り、まつエク然り。 いえいえ、アラフォーだって、幾重にも重ねたツケマ、ジュエリーをぶち込んだネイルアート、カラーを入れたり抜いたり、また入れたりした髪をこれでもかと盛りまくって、10センチのハイヒールを生脚で…たまにはがんばってみたいと思うかもしれません。 でも、自分の生き方と体にいいことのバランスがうまくとれてくるのも、年齢を経た良さだと心から思うのです。自然のままだと辛い部分も出てくるかもしれないけれど、素爪の美しさや染めない髪の色で自己ベストを求めたいなと思ったり、そういう気持ちが、自分や家族、友人たち、自然環境や地球へと広がっていったりするのではないでしょうか。 な~んて壮大なテーマを偉そうに語りたいわけでなく、数年前から始めた「冷えとり」健康法が、やっと自分のライフスタイルに定着してきたので、ご紹介したくなりました。 きっかけは、ナチュラルローソンでふと手に取った「マーマーマガジン」という雑誌。ナチュラル志向のファッション誌かなと思って開き、そこで進藤義晴先生という医師が書いた『万病を治す冷えとり健康法』という本を知ったのです。失礼ながら、こちらの本を先に知っていたら、お洒落さがないので目に留まらずスルーしていたと思います。 半身浴と絹綿靴下重ね履きで驚異のデトックス 人は誰でも上半身に比べて下半身、特に足先が冷えており、心臓に血流が戻りにくい。血液循環が悪いと、様々な病気を引き起こす悪いもの、つまり毒が体にたまる。逆に原因不明の難病でも毒さえ出せば直る、というシンプルな理論で、頭寒足熱を勧めていました。 デトックス(毒出し)方法として、肌に触れるものは天然繊維がよく、特にシルクとコットンの靴下を重ねて履くと排毒作用が最も効果的。38度ぐらいのぬるめのお風呂に、みぞおちから下だけ入る半身浴も効果大で、20分以上~上限は何時間入っていてもOK。食べ過ぎず、くよくよしたり恨んだりしない精神状態を保つと良い…と書かれてました。 高いサプリ、エステ、ジム通いはお金がなければ続けられない。でも、日常的に続けられるもので、靴下代ぐらいなら…とゆる~く始めて気がつけば5年。すべてを守れているわけでもなく、臨機応変のナンチャッテ人生ですが、生き方の指針がある安心感、これを続けていけばいいんだという信頼感、そして、派手さはないけれど確実な効果の実感に勝るものはありません。でも、人に押しつける気はさらさらないんですけどね(笑)。 ・ マーマーマガジン (エムエム・ブックス) ・ 万病を治す冷えとり健康法 (農文協)
2014年03月18日