“美容”という道具には、もう振り回されない。「キレイな女」をやめて手に入れた幸せ
そりゃあ……お鼻も高くなるというものだ。
同時に私は「”美しい女であること”が世間における自分の存在価値なのだ」と壮大な勘違いをしてしまった。特に自分に自信のなかった私にとって、人様から手放しに肯定されるという経験は甘露だ。一度味わうとそうそう忘れられない。
もっと認められたい。もっと褒められたい。
私はいっそう美容にのめり込んだ。
百貨店のコスメカウンターに万札を握って通い、体型維持のため毎日追われるようにジムへ行って運動をした。
手を抜くのが怖くて、近所のコンビニにでさえ髪を巻いて八センチのハイヒールで行くようになった。
世間から容姿を評価されることで自分を満たそうとした途端、楽しんでいたはずの美容は私の中で「しなければならない」ものへと変わった。自分に課せられた義務的なものになってしまったのだ。
■「キレイな女」でいることがバカらしくなった日
当然こんな無理は長く続かない。あるとき精神的な限界が来た。SNSを通して仲良くなった友人の彼氏から性的な誘いを受けたのだ。
無理をして自分を騙し騙し「キレイな女」であることを続けようとしていたが、これがきっかけでもう何もかもが嫌になってしまった。