“美容”という道具には、もう振り回されない。「キレイな女」をやめて手に入れた幸せ
■「いい肉を食べる日」専用の口紅があったっていい
さて、そんな私がここ一年の間に新しく始めた「美容」がある。それは「良い肉を食べる日はクリスチャンディオールの真っ赤な口紅を塗る」というものだ。
良い肉を食べる日の朝は時間に余裕をもって鏡に向かい、存分に気合を入れてリップラインを引く。もちろんリップだけ真っ赤にしては浮いてしまうので、他の部分もベースからいつもよりしっかり手間も時間もかけてメイクする。
「今日の私は顔面にクリスチャンディオールをのせている女だぞ」という自己認識の元、思うまま高い肉を食べる時間を楽しむためだ。
たとえ他人からどう見られていようと(そう、たとえ居合わせた誰かに、平日の夜メガハイボールジョッキ片手にひとりで400グラムの塊肉を貪っている小太りで派手な化粧の女だと見られていようと)ぽってりした真っ赤な唇で大口を開けて肉汁滴る霜降りを食らう自分を私はとても気に入っている。
さらに言えば、私は良い肉を食べに行く日にしかその口紅を使わない。すると、口紅をつける=良い肉を食べるという式ができ上がるので、口紅をつけるだけでスイッチが入り、「私にはこれから約束された幸せが待っているのだ」とその日は朝から夢と希望に満ちあふれた輝かしい自分になれるのだ。