権力が作り上げた「血穢」という意識…「生理」の歴史を振り返る
このように女性を長としていただいてきたはずの日本だが、生理(月経)はいつしかタブーな存在となり、女性は穢れと見なされるようになっていった。その理由はいったいどこにあるのだろう。そのルーツを、歴史社会学者の田中ひかるさんに解説してもらった。
「太古の昔から血液への恐れがあったことと関連して、もともと世界各地に『月経禁忌』は存在しています。なにしろ、『タブー』そのものの語源が、ポリネシア語で『月経』を意味する『タブ』であるほどですから。ちなみに、世界の三大宗教とされるキリスト教、イスラム教、仏教は、みな月経を穢れと見なしています。いっぽう、古代日本では月経はタブー視されていなかったと考えられています。『古事記』(712年)には、ヤマトタケルノミコトがミヤズヒメのもとを訪ねると、彼女の月経が始まっていたことが、2人の歌とともに記されています。
それでも2人は『婚合した』とあることから、少なくとも律令制(中央集権制度)成立前の日本では、女性の穢れという概念はなかった、というのが、一般的な解釈です」(田中さん・以下同)
■時の権力が作り上げた「血穢」という意識
変化が訪れるのは、平安時代。中国(唐)